以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
(第1の実施の形態)
まず、斜視図である図1、及びII−II方向から見た断面図である図2を参照して、第1の実施の形態に係るガス物性値測定システムに用いられるマイクロチップ8について説明する。マイクロチップ8は、キャビティ66が設けられた基板60、及び基板60上にキャビティ66を覆うように配置された絶縁膜65を備える。基板60の厚みは、例えば0.5mmである。また、基板60の縦横の寸法は、例えばそれぞれ1.5mm程度である。絶縁膜65のキャビティ66を覆う部分は、断熱性のダイアフラムをなしている。
さらにマイクロチップ8は、絶縁膜65のダイアフラムの部分に設けられた発熱抵抗体61と、発熱抵抗体61を挟むように絶縁膜65のダイアフラムの部分に設けられた第1の測温抵抗素子62及び第2の測温抵抗素子63と、基板60上に設けられたガス温度センサ64と、を備える。ガス温度センサ64も電気抵抗素子等からなる。
発熱抵抗体61は、キャビティ66を覆う絶縁膜65のダイアフラムの部分の中心に配置されている。発熱抵抗体61は、電力を与えられて発熱し、発熱抵抗体61に接する雰囲気ガスを加熱する。発熱抵抗体61に隣接して設けられた第1の測温抵抗素子62及び第2の測温抵抗素子63は、発熱抵抗体61が発熱していないときの発熱抵抗体61近傍の局所的な温度を、参照温度TRとして検出する。ガス温度センサ64は、発熱抵抗体61から第1の測温抵抗素子62及び第2の測温抵抗素子63より遠方に配置されている。ガス温度センサ64は、発熱した発熱抵抗体61と熱的に平衡な雰囲気ガスのガス温度を、平衡ガス温度として検出する。ガス温度センサ64は、絶縁膜65を介して発熱抵抗体61から隔離されて、熱伝導性の基板60上に設けられている。そのため、第1の測温抵抗素子62及び第2の測温抵抗素子63と比較して、ガス温度センサ64は、発熱抵抗体61の発熱から受ける影響が少ない。
基板60の材料としては、シリコン(Si)等が使用可能である。絶縁膜65の材料としては、酸化ケイ素(SiO2)等が使用可能である。キャビティ66は、異方性エッチング等により形成される。また発熱抵抗体61、第1の測温抵抗素子62、第2の測温抵抗素子63、及びガス温度センサ64のそれぞれの材料には白金(Pt)等が使用可能であり、リソグラフィ法等により形成可能である。
図3に示すように、発熱抵抗体61の一端には、例えば、オペアンプ170の+入力端子が電気的に接続され、他端は接地される。また、オペアンプ170の+入力端子及び出力端子と並列に、抵抗素子161が接続される。オペアンプ170の−入力端子は、直列に接続された抵抗素子162と抵抗素子163との間、直列に接続された抵抗素子163と抵抗素子164との間、直列に接続された抵抗素子164と抵抗素子165との間、又は抵抗素子165の接地端子に電気的に接続される。各抵抗素子162−165の抵抗値を適当に定めることにより、例えば5.0Vの電圧Vinを抵抗素子162の一端に印加すると、抵抗素子163と抵抗素子162との間には、例えば2.4Vの電圧VL3が生じる。また、抵抗素子164と抵抗素子163との間には、例えば1.9Vの電圧VL2が生じ、抵抗素子165と抵抗素子164との間には、例えば1.4Vの電圧VL1が生じる。
抵抗素子162及び抵抗素子163の間と、オペアンプの−入力端子との間には、スイッチSW1が設けられており、抵抗素子163及び抵抗素子164の間と、オペアンプの−入力端子との間には、スイッチSW2が設けられている。また、抵抗素子164及び抵抗素子165の間と、オペアンプの−入力端子との間には、スイッチSW3が設けられており、抵抗素子165の接地端子と、オペアンプの−入力端子との間には、スイッチSW4が設けられている。
オペアンプ170の−入力端子に2.4Vの電圧VL3を印加する場合、スイッチSW1のみが通電され、スイッチSW2,SW3,SW4は切断される。オペアンプ170の−入力端子に1.9Vの電圧VL2を印加する場合、スイッチSW2のみが通電され、スイッチSW1,SW3,SW4は切断される。オペアンプ170の−入力端子に1.4Vの電圧VL1を印加する場合、スイッチSW3のみが通電され、スイッチSW1,SW2,SW4は切断される。オペアンプ170の−入力端子に0Vの電圧VL0を印加する場合、スイッチSW4のみが通電され、スイッチSW1,SW2,SW3は切断される。したがって、スイッチSW1,SW2,SW3,SW4の開閉によって、オペアンプ170の−入力端子に0V又は3段階の電圧のいずれかを印加可能である。そのため、スイッチSW1,SW2,SW3,SW4の開閉によって、発熱抵抗体61の発熱温度を3段階に設定可能である。
図1及び図2に示す発熱抵抗体61は、温度によって抵抗値が変化する。発熱抵抗体61の発熱温度THと、発熱抵抗体61の抵抗値RHの関係は、下記(1)式で与えられる。
RH = RSTD×[1+α(TH-TSTD) + β(TH-TSTD)2] ・・・(1)
ここで、TSTDは標準温度を表し、例えば20℃である。RSTDは標準温度TSTDにおける予め計測された抵抗値を表す。αは1次の抵抗温度係数、βは2次の抵抗温度係数を表す。また、発熱抵抗体61の抵抗値RHは、発熱抵抗体61の駆動電力PHと、発熱抵抗体61の通電電流IHから、下記(2)式で与えられる。
RH = PH / IH 2 ・・・(2)
あるいは発熱抵抗体61の抵抗値RHは、発熱抵抗体61にかかる電圧VHと、発熱抵抗体61の通電電流IHから、下記(3)式で与えられる。
RH = VH / IH ・・・(3)
ここで、発熱抵抗体61の発熱温度THは、発熱抵抗体61と雰囲気ガスの間が熱的に平衡になったときに安定する。なお、熱的に平衡な状態とは、発熱抵抗体61の発熱と、発熱抵抗体61から雰囲気ガスへの放熱とが釣り合っている状態をいう。平衡状態において、下記(4)式に示すように、発熱抵抗体61の駆動電力PHを、発熱抵抗体61の発熱温度THと雰囲気ガスの平衡ガス温度TOとの差で割ることにより、雰囲気ガスの放熱係数MOが得られる。なお、放熱係数MOの単位は、例えばW/℃である。
MO = PH / (TH - TO) ・・・(4)
発熱抵抗体61の通電電流IHと、駆動電力PH又は電圧VHは計測可能であるため、上記(1)乃至(3)から発熱抵抗体61の発熱温度THが算出可能である。また、雰囲気ガスの平衡ガス温度TOは、図1に示すガス温度センサ64で測定可能である。したがって、図1及び図2に示すマイクロチップ8を用いて、雰囲気ガスの放熱係数MOが算出可能である。
マイクロチップ8は、マイクロチップ8の底面に配置された断熱部材18を介して、雰囲気ガスが充填されるチャンバ等に固定される。断熱部材18を介してマイクロチップ8をチャンバ等に固定することにより、マイクロチップ8の温度が、チャンバ等の内壁の温度変動の影響を受けにくくなる。断熱部材18の熱伝導率は、例えば10W/(m・K)以下である。
さらに、マイクロチップ8は、熱伝導性の基板60の温度を一定に保つ補助ヒータを備えていてもよい。基板60の温度を一定に保つことにより、発熱抵抗体61が発熱する前のマイクロチップ8の近傍の雰囲気ガスの温度が、基板60の一定の温度と近似する。そのため、発熱抵抗体61が発熱する前の雰囲気ガスの温度の変動が抑制される。温度変動が一度抑制された雰囲気ガスを発熱抵抗体61でさらに加熱することにより、より高い精度で放熱係数MOを算出することが可能となる。補助ヒータにも電気抵抗素子等が使用可能である。また、基板60上に配置されたガス温度センサ64が、補助ヒータを兼ねていてもよい。
図4に示すように、ガス温度センサ64は、抵抗ブリッジ回路の一部をなしている。抵抗ブリッジ回路は、ガス温度センサ64と直列に接続された抵抗素子181と、ガス温度センサ64及び抵抗素子181と並列に接続された抵抗素子182,183を備える。ここで、ガス温度センサ64の抵抗値をRr、抵抗素子181,182,183の固定された抵抗値をそれぞれR181,R182,R183とする。抵抗ブリッジ回路には、オペアンプ171が接続されている。ガス温度センサ64を補助ヒータとして機能させる場合、抵抗素子181とガス温度センサ64との間のブリッジ電圧V2aが、抵抗素子182と抵抗素子183との間のブリッジ電圧V2bと等しくなるよう、ブリッジ駆動電圧V1がフィードバック制御される。これにより、ガス温度センサ64の抵抗値Rrが一定となり、ガス温度センサ64が補助ヒータとして一定の温度で発熱する。
ただし、図2に示すキャビティ66上のダイアフラムは、基板60に接していない。そのため、補助ヒータを用いて基板60の温度を一定に保っても、ダイアフラムに設けられた発熱抵抗体61近傍の温度は、雰囲気ガスの温度に応じて変動しうる。図5は、チャンバ内に導入される雰囲気ガスの温度を−10℃から50℃まで変動させた場合の、第1の測温抵抗素子62及び発熱抵抗体61に対し第1の測温抵抗素子62と対称な位置に配置された第2の測温抵抗素子63で測定された発熱抵抗体61近傍の温度の平均値の例を示す。なお、測温抵抗素子は必ずしも複数である必要はない。ただし、発熱抵抗体61に対し対称に配置された第1の測温抵抗素子62と第2の測温抵抗素子63測温抵抗素子の平均値を採用することにより、物性値の算出精度をより一層高めることが可能となる。例えば、外乱等により、発熱抵抗体61で加熱された雰囲気ガスの温度が発熱抵抗体61を中心として均等とならない場合には、発熱素子に対し対称に設置された複数の測温抵抗素子62、63の温度の平均値に基づいて被測定ガスの物性値を算出することにより、物性値の算出精度をより一層高めることが可能となる。また、図5において、ガス温度センサ64を補助ヒータとして60℃で発熱させており、発熱抵抗体61は発熱させていない。この例においては、雰囲気ガスの温度が10℃変化すると、発熱抵抗体61近傍の温度はおおむね0.5℃変化している。
図6は、ガス温度センサ64を補助ヒータとして60℃で発熱させながら、雰囲気ガスの温度を−10℃から50℃まで変動させた場合に、図2に示す発熱抵抗体61を用いて算出された放熱係数MOの例を示す。図6は、雰囲気ガスの温度が変動することにより、算出される放熱係数MOも変動することを示している。
図5及び図6に示した結果に基づいて作成した図7は、発熱前の発熱抵抗体61近傍の温度変動が、算出される放熱係数MOの値に影響しうることを示している。そのため、雰囲気ガスの放熱係数MOを計測する場合には、発熱抵抗体61を発熱させる前に、発熱抵抗体61近傍の温度を参照温度TRとして記録することが好ましい。
また、図7に示すように、ある雰囲気ガスについて、複数の参照温度TRに対する放熱係数MOを予め計測すれば、参照温度TRと放熱係数MOとの関係を示す近似式等を作成可能である。近似式は、一次、二次、又は高次の関数である。以下、近似式が、下記(5)式で与えられる一次関数である場合を説明する。
MO = s×TR + u ・・・(5)
(5)式において、s、uは、最小自乗法等により算出された定数である。ここで、任意の参照温度TR_mにおける雰囲気ガスの放熱係数MO_mは、下記(6)式で与えられる。
MO_m = s×TR_m + u ・・・(6)
また、例えば60℃等の所定の参照温度TR_sにおける放熱係数MO_sは、下記(7)式で与えられる。
MO_s = s×TR_s + u ・・・(7)
(6)式及び(7)式より、所定の参照温度TR_sにおける放熱係数MO_sは、下記(8)式で与えられる。
MO_s = MO_m - s (TR_m - TR_s) ・・・(8)
例えば、下記(9)式を用いて、任意の参照温度TR_mにおける雰囲気ガスの放熱係数MO_mの値を、参照温度が60℃の場合における放熱係数MO_sの値に換算することが可能となる。
MO_s = MO_m - s (TR_m - 60) ・・・(9)
次に、雰囲気ガスが混合ガスであり、混合ガスが、ガスA、ガスB、ガスC、及びガスDの4種類のガス成分からなっていると仮定する。ここで、ガスAの体積率VA、ガスBの体積率VB、ガスCの体積率VC、及びガスDの体積率VDの総和は、下記(10)式で与えられるように、1である。
VA+VB+VC+VD=1 ・・・(10)
また、ガスAの単位体積当たりの発熱量をKA、ガスBの単位体積当たりの発熱量をKB、ガスCの単位体積当たりの発熱量をKC、ガスDの単位体積当たりの発熱量をKDとすると、混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qは、各ガス成分の体積率に、各ガス成分の単位体積当たりの発熱量を乗じたものの総和で与えられる。したがって、混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qは、下記(11)式で与えられる。なお、単位体積当たりの発熱量の単位は、例えばMJ/m3である。
Q = KA×VA+ KB×VB+ KC×VC+KD×VD ・・・(11)
また、ガスAの放熱係数をMA、ガスBの放熱係数をMB、ガスCの放熱係数をMC、ガスDの放熱係数をMDとすると、混合ガスの放熱係数MIは、各ガス成分の体積率に、各ガス成分の放熱係数を乗じたものの総和で与えられる。したがって、混合ガスの放熱係数MIは、下記(12)式で与えられる。
MI = MA×VA+ MB×VB+ MC×VC+MD×VD ・・・(12)
さらに、ガスの放熱係数は発熱抵抗体61の発熱温度THに依存するので、混合ガスの放熱係数MIは、発熱抵抗体61の発熱温度THの関数として、下記(13)式で与えられる。
MI (TH)= MA(TH)×VA+ MB(TH)×VB+ MC(TH)×VC+MD(TH)×VD ・・・(13)
したがって、発熱抵抗体61の発熱温度がTH1のときの混合ガスの放熱係数MI(TH1)は下記(14)式で与えられる。また、発熱抵抗体61の発熱温度がTH2のときの混合ガスの放熱係数MI(TH2)は下記(15)式で与えられ、発熱抵抗体61の発熱温度がTH3のときの混合ガスの放熱係数MI(TH3)は下記(16)式で与えられる。なお、発熱温度TH1、発熱温度TH2、発熱温度TH3は異なる温度である。
MI (TH1)= MA(TH1)×VA+ MB(TH1)×VB+ MC(TH1)×VC+MD(TH1)×VD ・・・(14)
MI (TH2)= MA(TH2)×VA+ MB(TH2)×VB+ MC(TH2)×VC+MD(TH2)×VD ・・・(15)
MI (TH3)= MA(TH3)×VA+ MB(TH3)×VB+ MC(TH3)×VC+MD(TH3)×VD ・・・(16)
ここで、発熱抵抗体61の発熱温度THに対して各ガス成分の放熱係数MA(TH),MB(TH),MC(TH),MD(TH)が非線形性を有する場合、上記(14)乃至(16)式は、線形独立な関係を有する。また、発熱抵抗体61の発熱温度THに対して各ガス成分の放熱係数MA(TH),MB(TH),MC(TH),MD(TH)が線形性を有する場合でも、発熱抵抗体61の発熱温度THに対する各ガス成分の放熱係数MA(TH),MB(TH),MC(TH),MD(TH) の変化率が異なる場合は、上記(14)乃至(16)式は、線形独立な関係を有する。さらに、(14)乃至(16)式が線形独立な関係を有する場合、(10)式及び(14)乃至(16)式は線形独立な関係を有する。
図8は、天然ガスに含まれるメタン(CH4)、プロパン(C3H8)、窒素(N2)、及び二酸化炭素(CO2)の放熱係数と発熱抵抗体61の発熱温度の関係を示すグラフである。発熱抵抗体61の発熱温度に対して、メタン(CH4)、プロパン(C3H8)、窒素(N2)、及び二酸化炭素(CO2)のそれぞれのガス成分の放熱係数は線形性を有する。しかし、発熱抵抗体61の発熱温度に対する放熱係数の変化率は、メタン(CH4)、プロパン(C3H8)、窒素(N2)、及び二酸化炭素(CO2)のそれぞれで異なる。したがって、混合ガスを構成するガス成分がメタン(CH4)、プロパン(C3H8)、窒素(N2)、及び二酸化炭素(CO2)であるである場合、上記(14)乃至(16)式は、線形独立な関係を有する。
(14)乃至(16)式中の各ガス成分の放熱係数MA(TH1),MB(TH1),MC(TH1),MD(TH1),MA(TH2),MB(TH2),MC(TH2),MD(TH2),MA(TH3),MB(TH3),MC(TH3),MD(TH3)の値は、計測等により予め得ることが可能である。したがって、(10)式及び(14)乃至(16)式の連立方程式を解くと、ガスAの体積率VA、ガスBの体積率VB、ガスCの体積率VC、及びガスDの体積率VDのそれぞれが、下記(17)乃至(20)式に示すように、混合ガスの放熱係数MI(TH1),MI(TH2),MI(TH3)の関数として与えられる。なお、下記(17)乃至(20)式において、nを自然数としてfnは、関数を表す記号である。
VA=f1[MI (TH1), MI (TH2), MI (TH3)] ・・・(17)
VB=f2[MI (TH1), MI (TH2), MI (TH3)] ・・・(18)
VC=f3[MI (TH1), MI (TH2), MI (TH3)] ・・・(19)
VD=f4[MI (TH1), MI (TH2), MI (TH3)] ・・・(20)
ここで、上記(11)式に(17)乃至(20)式を代入することにより、下記(21)式が得られる。
Q = KA×VA+ KB×VB+ KC×VC+KD×VD
= KA×f1[MI (TH1), MI (TH2), MI (TH3)]+ KB×f2[MI (TH1), MI (TH2), MI (TH3)]
+ KC×f3[MI (TH1), MI (TH2), MI (TH3)]+KD×f4[MI (TH1), MI ( TH2), MI (TH3)] ・・・(21)
上記(21)式から明らかなように、混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qは、発熱抵抗体61の発熱温度TH1,TH2,TH3における混合ガスの放熱係数MI(TH1),MI(TH2),MI(TH3)を変数とする方程式で与えられる。したがって、混合ガスの発熱量Qは、gを関数を表す記号として、下記(22)式で与えられる。
Q = g[MI (TH1), MI (TH2), MI (TH3)] ・・・(22)
よって、ガスA、ガスB、ガスC、及びガスDからなる混合ガスについて、予め上記(22)式を得れば、ガスAの体積率VA、ガスBの体積率VB、ガスCの体積率VC、及びガスDの体積率VDが未知の検査対象混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qを容易に算出可能であることを、発明者らは見出した。具体的には、発熱抵抗体61の発熱温度TH1,TH2,TH3における検査対象混合ガスの放熱係数MI(TH1),MI(TH2),MI(TH3)を計測し、(22)式に代入することにより、検査対象混合ガスの発熱量Qを一意に求めることが可能となる。
なお、混合ガスのガス成分は、4種類に限定されることはない。例えば、混合ガスがn種類のガス成分からなる場合、まず、下記(23)式で与えられる、発熱抵抗体61の少なくともn−1種類の発熱温度TH1,TH2,TH3,・・・,THn-1に対する混合ガスの放熱係数MI(TH1),MI(TH2),MI(TH3),・・・,MI(THn-1)を変数とする方程式を予め得る。そして、発熱抵抗体61のn−1種類の発熱温度TH1,TH2,TH3,・・・,THn-1に対する、n種類のガス成分のそれぞれの体積率が未知の検査対象混合ガスの放熱係数MI(TH1),MI(TH2),MI(TH3),・・・,MI(THn-1)を計測し、(23)式に代入することにより、検査対象混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qを一意に求めることが可能となる。
Q = g[MI (TH1), MI (TH2), MI (TH3), ・・・, MI (THn-1)] ・・・(23)
ただし、混合ガスが、ガス成分としてメタン(CH4)、プロパン(C3H8)に加えて、jを自然数として、メタン(CH4)とプロパン(C3H8)以外のアルカン(CjH2j+2)を含む場合、メタン(CH4)とプロパン(C3H8)以外のアルカン(CjH2j+2)を、メタン(CH4)とプロパン(C3H8)の混合物とみなしても、(23)式の算出には影響しない。例えば、エタン(C2H6)、ブタン(C4H10)、ペンタン(C5H12)、ヘキサン(C6H14)を、下記(24)乃至(27)式に示すように、それぞれ所定の係数を掛けられたメタン(CH4)とプロパン(C3H8)の混合物とみなして(23)式を算出してもかまわない。
C2H6 = 0.5 CH4 + 0.5 C3H8 ・・・(24)
C4H10 = -0.5 CH4 + 1.5 C3H8 ・・・(25)
C5H12 = -1.0 CH4 + 2.0 C3H8 ・・・(26)
C6H14 = -1.5 CH4 + 2.5 C3H8 ・・・(27)
したがって、zを自然数として、n種類のガス成分からなる混合ガスが、ガス成分としてメタン(CH4)、プロパン(C3H8)に加えて、メタン(CH4)とプロパン(C3H8)以外のz種類のアルカン(CjH2j+2)を含む場合、少なくともn−z−1種類の発熱温度における混合ガスの放熱係数を変数とする方程式を求めてもよい。
なお、(23)式の算出に用いられた混合ガスのガス成分の種類と、単位体積当たりの発熱量Qが未知の検査対象混合ガスのガス成分の種類が同じ場合に、検査対象混合ガスの発熱量Qの算出に(23)式を利用可能であることはもちろんである。さらに、検査対象混合ガスがn種類より少ない種類のガス成分からなり、かつ、n種類より少ない種類のガス成分が、(23)式の算出に用いられた混合ガスに含まれている場合も、(23)式を利用可能である。例えば、(23)式の算出に用いられた混合ガスが、メタン(CH4)、プロパン(C3H8)、窒素(N2)、及び二酸化炭素(CO2)の4種類のガス成分を含む場合、検査対象混合ガスが、窒素(N2)を含まず、メタン(CH4)、プロパン(C3H8)、及び二酸化炭素(CO2)の3種類のガス成分のみを含む場合も、検査対象混合ガスの発熱量Qの算出に(23)式を利用可能である。
さらに、(23)式の算出に用いられた混合ガスが、ガス成分としてメタン(CH4)とプロパン(C3H8)を含む場合、検査対象混合ガスが、(23)式の算出に用いられた混合ガスに含まれていないアルカン(CjH2j+2)を含んでいても、(23)式を利用可能である。これは、上述したように、メタン(CH4)とプロパン(C3H8)以外のアルカン(CjH2j+2)を、メタン(CH4)とプロパン(C3H8)の混合物とみなしても、(23)式を用いた単位体積当たりの発熱量Qの算出に影響しないためである。
ここで、図9に示す第1の実施の形態に係るガス物性値測定システム20は、発熱量の値が既知のサンプル混合ガスが充填されるチャンバ101と、複数の異なる発熱温度で発熱する図1及び図2に示す発熱抵抗体61を用いて、サンプル混合ガスの複数の放熱係数の値を計測する図9に示す計測機構10と、を備える。さらに、ガス物性値測定システムは、発熱抵抗体61が発熱していないときの発熱抵抗体61近傍のサンプル混合ガスの参照温度TRに基づいて、サンプル混合ガスの複数の放熱係数の値を補正する補正モジュール321と、サンプル混合ガスの既知の発熱量の値、及び補正された複数の放熱係数の値に基づいて、発熱抵抗体の複数の発熱温度における放熱係数を独立変数とし、発熱量を従属変数とする発熱量算出式を作成する式作成モジュール302とを備える。なお、サンプル混合ガスは、複数種類のガス成分を含む。
計測機構10は、サンプル混合ガスが注入されるチャンバ101内に配置された、図1及び図2を用いて説明したマイクロチップ8を備える。マイクロチップ8は、断熱部材18を介してチャンバ101内に配置されている。チャンバ101には、サンプル混合ガスをチャンバ101に送るための流路102と、サンプル混合ガスをチャンバ101から外部に排出するための流路103と、が接続されている。
それぞれ発熱量が異なる4種類のサンプル混合ガスが使用される場合、図10に示すように、第1のサンプル混合ガスを貯蔵する第1のガスボンベ50A、第2のサンプル混合ガスを貯蔵する第2のガスボンベ50B、第3のサンプル混合ガスを貯蔵する第3のガスボンベ50C、及び第4のサンプル混合ガスを貯蔵する第4のガスボンベ50Dが用意される。第1のガスボンベ50Aには、流路91Aを介して、第1のガスボンベ50Aから例えば0.2MPa等の低圧に調節された第1のサンプル混合ガスを得るための第1のガス圧調節器31Aが接続されている。また、第1のガス圧調節器31Aには、流路92Aを介して、第1の流量制御装置32Aが接続されている。第1の流量制御装置32Aは、流路92A及び流路102を介してガス物性値測定システム20に送られる第1のサンプル混合ガスの流量を制御する。
第2のガスボンベ50Bには、流路91Bを介して、第2のガス圧調節器31Bが接続されている。また、第2のガス圧調節器31Bには、流路92Bを介して、第2の流量制御装置32Bが接続されている。第2の流量制御装置32Bは、流路92B,93,102を介してガス物性値測定システム20に送られる第2のサンプル混合ガスの流量を制御する。
第3のガスボンベ50Cには、流路91Cを介して、第3のガス圧調節器31Cが接続されている。また、第3のガス圧調節器31Cには、流路92Cを介して、第3の流量制御装置32Cが接続されている。第3の流量制御装置32Cは、流路92C,93,102を介してガス物性値測定システム20に送られる第3のサンプル混合ガスの流量を制御する。
第4のガスボンベ50Dには、流路91Dを介して、第4のガス圧調節器31Dが接続されている。また、第4のガス圧調節器31Dには、流路92Dを介して、第4の流量制御装置32Dが接続されている。第4の流量制御装置32Dは、流路92D,93,102を介してガス物性値測定システム20に送られる第4のサンプル混合ガスの流量を制御する。
第1乃至第4のサンプル混合ガスのそれぞれは、例えば天然ガスである。第1乃至第4のサンプル混合ガスのそれぞれは、例えばメタン(CH4)、プロパン(C3H8)、窒素(N2)、及び二酸化炭素(CO2)の4種類のガス成分を含む。
図9に示すマイクロチップ8の図1及び図2に示す第1の測温抵抗素子62及び第2の測温抵抗素子63は、第1のサンプル混合ガスがチャンバ101内に充填された後、発熱抵抗体61が発熱していないときの、発熱抵抗体61の近傍の温度を参照温度TRとして測定する。ここで、発熱抵抗体61が発熱していないときとは、例えば、発熱抵抗体61を発熱させる直前である。なお、第1の測温抵抗素子62及び第2の測温抵抗素子63のいずれか一方のみを用いて、参照温度TRを計測してもよい。発熱抵抗体61に対し対称に配置された第1の測温抵抗素子62と第2の測温抵抗素子63測温抵抗素子の参照温度TRとして平均値を採用することにより、参照温度TRの精度をより高めることが可能となる。例えば、外乱等により、発熱抵抗体61で加熱された雰囲気ガスの温度が発熱抵抗体61を中心として均等とならない場合には、発熱素子に対し対称に設置された複数の測温抵抗素子62、63の温度の平均値に基づいて参照温度TRを算出することにより、参照温度TRの算出精度をより高めることが可能となる。
発熱抵抗体61は、図9に示す駆動回路303から駆動電力PHを与えられる。駆動電力PHを与えられることにより、図1及び図2に示す発熱抵抗体61は、例えば、100℃、150℃、及び200℃で発熱する。マイクロチップ8のガス温度センサ64は、100℃で発熱する発熱抵抗体61と熱的に平衡な第1のサンプル混合ガスの平衡ガス温度TOH=100、150℃で発熱する発熱抵抗体61と熱的に平衡な第1のサンプル混合ガスの平衡ガス温度TOH=150、200℃で発熱する発熱抵抗体61と熱的に平衡な第1のサンプル混合ガスの平衡ガス温度TOH=200を検出する。
図9に示すチャンバ101から第1のサンプル混合ガスが除去された後、第2乃至第4のサンプル混合ガスがチャンバ101に順次充填される。第2乃至第4のサンプル混合ガスのそれぞれがチャンバ101に充填された後、マイクロチップ8の図1及び図2に示す第1の測温抵抗素子62及び第2の測温抵抗素子63は、発熱抵抗体61を発熱させる直前の発熱抵抗体61の近傍の温度を参照温度TRとして測定する。また、マイクロチップ8は、第2乃至第4のサンプル混合ガスのそれぞれの、発熱抵抗体61の発熱温度100℃,150℃,200℃に対する平衡ガス温度TOH=100,TOH=150,TOH=200を検出する。
なお、それぞれのサンプル混合ガスがn種類のガス成分を含む場合、マイクロチップ8の図1及び図2に示す発熱抵抗体61は、少なくともn−1種類の異なる発熱温度で発熱させられる。ただし、上述したように、メタン(CH4)及びプロパン(C3H8)以外のアルカン(CjH2j+2)は、メタン(CH4)及びプロパン(C3H8)の混合物とみなしうる。したがって、zを自然数として、n種類のガス成分からなるサンプル混合ガスが、ガス成分としてメタン(CH4)及びプロパン(C3H8)に加えてz種類のアルカン(CjH2j+2)を含む場合は、発熱抵抗体61は、少なくともn−z−1種類の異なる発熱温度で発熱させられる。
さらに図9に示す計測機構10は、マイクロチップ8に接続された放熱係数算出モジュール301を備える。放熱係数算出モジュール301は、上記(4)式に示すように、図1及び図2に示すマイクロチップ8の発熱抵抗体61の第1の駆動電力PH1を、発熱抵抗体61の第1の発熱温度TH(ここでは100℃)と第1乃至第4のサンプル混合ガスのそれぞれの平衡ガス温度TOH=100との差で割る。これにより、発熱温度100℃の発熱抵抗体61と熱的に平衡なときの第1乃至第4のサンプル混合ガスのそれぞれの放熱係数MIの値が算出される。
また、図9に示す放熱係数算出モジュール301は、マイクロチップ8の図1及び図2に示す発熱抵抗体61の第2の駆動電力PH2を、発熱抵抗体61の第2の発熱温度TH(ここでは150℃)と第1乃至第4のサンプル混合ガスのそれぞれの平衡ガス温度TOH=150との差で割る。これにより、発熱温度150℃の発熱抵抗体61と熱的に平衡なときの第1乃至第4のサンプル混合ガスのそれぞれの放熱係数MIの値が算出される。
さらに、図9に示す放熱係数算出モジュール301は、マイクロチップ8の図1及び図2に示す発熱抵抗体61の第3の駆動電力PH3を、発熱抵抗体61の第3の発熱温度TH(ここでは200℃)と第1乃至第4のサンプル混合ガスのそれぞれの平衡ガス温度TOH=200との差で割る。これにより、発熱温度200℃の発熱抵抗体61と熱的に平衡なときの第1乃至第4のサンプル混合ガスのそれぞれの放熱係数MIの値が算出される。
図9に示すガス物性値測定システム20は、CPU300に接続された放熱係数記憶装置401をさらに備える。放熱係数算出モジュール301は、算出した放熱係数MIの値に、図1及び図2に示す第1の測温抵抗素子62及び第2の測温抵抗素子63が測定した、発熱抵抗体61が発熱する前の発熱抵抗体61の近傍の参照温度TRの値を関連付け、放熱係数記憶装置401に保存する。上述したように、参照温度TRに応じて、図9に示す放熱係数算出モジュール301によって算出される放熱係数MIの値は変動しうる。これに対し、第1の実施の形態に係るガス物性値測定システム20によれば、算出した放熱係数MIの値に参照温度TRの値が関連付けられて保存されるため、算出した放熱係数MIの値を正確に評価することが可能となる。
図9に示すCPU300には、補正条件記憶装置400がさらに接続されている。補正条件記憶装置400は、予め取得された放熱係数と参照温度との関係を保存する。例えば、補正条件記憶装置は、予め取得された放熱係数と参照温度との関係を表す式として、上記(8)式に示す、任意の参照温度TR_mにおける放熱係数MO_sを、所定の参照温度TR_sにおける放熱係数MO_sに換算する補正式を保存する。補正モジュール321は、例えば放熱係数記憶装置401に保存されている放熱係数MIの値と参照温度TRの値とを上記(8)式の変数MO_m,TR_mに代入し、放熱係数の値を、60℃等の一定の参照温度における放熱係数の値に換算する。これにより、チャンバ101に導入されたサンプル混合ガスの温度に依存する放熱係数の測定値の変動を補正することが可能となる。以後、換算された放熱係数を、補正された放熱係数と呼ぶ。
式作成モジュール302は、例えば第1乃至第4のサンプル混合ガスのそれぞれの既知の発熱量の値、発熱温度100℃における補正された放熱係数の値、発熱温度150℃における補正された放熱係数の値、及び発熱温度200℃における補正された放熱係数の値を収集する。さらに式作成モジュール302は、収集した発熱量及び放熱係数の値に基づいて、A. J Smola及びB. Scholkopf著の「A Tutorial on Support Vector Regression」(NeuroCOLT Technical Report (NC−TR−98−030)、1998年)に開示されているサポートベクトル回帰、重回帰分析、及び特開平5−141999号公報に開示されているファジィ数量化理論II類等を含む多変量解析により、発熱温度100℃における放熱係数、発熱温度150℃における放熱係数、及び発熱温度200℃における放熱係数を独立変数とし、発熱量を従属変数とする発熱量算出式を算出する。なお、放熱係数算出モジュール301及び式作成モジュール302は、中央演算処理装置(CPU)300に含まれている。
ガス物性値測定システム20は、CPU300に接続された式記憶装置402をさらに備える。式記憶装置402は、式作成モジュール302が作成した発熱量算出式を保存する。さらにCPU300には、入力装置312及び出力装置313が接続される。入力装置312としては、例えばキーボード、及びマウス等のポインティングデバイス等が使用可能である。出力装置313には液晶ディスプレイ、モニタ等の画像表示装置、及びプリンタ等が使用可能である。
次に、図11に示すフローチャートを用いて第1の実施の形態に係る発熱量算出式の作成方法について説明する。なお、以下の例では、第1乃至第4のサンプル混合ガスを準備し、図9に示すマイクロチップ8の発熱抵抗体61を、100℃、150℃、及び200℃に発熱させる場合を説明する。
(a)ステップS100で、図10に示す第2乃至第4の流量制御装置32B−32Dの弁を閉じたまま、第1の流量制御装置32Aの弁を開き、図9に示すチャンバ101内に第1のサンプル混合ガスを導入する。次に、ステップS101で、図1及び図2に示す第1の測温抵抗素子62及び第2の測温抵抗素子63は、発熱前の電力が与えられていない発熱抵抗体61の近傍の温度を、参照温度TRとして測定する。
(b)ステップS102で、図9に示す駆動回路303は、マイクロチップ8の図1及び図2に示す発熱抵抗体61に第1の駆動電力PH1を与え、発熱抵抗体61を100℃で発熱させる。発熱抵抗体61が100℃で発熱している間、ガス温度センサ64は、発熱抵抗体61と熱的に平衡な第1のサンプル混合ガスの平衡ガス温度TOH=100を検出する。検出された平衡ガス温度TOH=100に基づき、図9に示す放熱係数算出モジュール301は、発熱温度100℃における第1のサンプル混合ガスの放熱係数の値を算出する。その後、放熱係数算出モジュール301は、発熱温度100℃における第1のサンプル混合ガスの放熱係数の値を、参照温度TRに関連付けて、放熱係数記憶装置401に保存する。その後、駆動回路303は、発熱抵抗体61に対する第1の駆動電力PH1の提供を停止する。
(c)ステップS103で、駆動回路303は、図1及び図2に示す発熱抵抗体61の発熱温度の切り替えが完了したか否か判定する。発熱温度150℃及び発熱温度200℃への切り替えが完了していない場合には、ステップS101に戻り、第1の測温抵抗素子62及び第2の測温抵抗素子63は、参照温度TRを測定する。次にステップS102で、図9に示す駆動回路303は、図1及び図2に示す発熱抵抗体61を150℃で発熱させる。図9に示す放熱係数算出モジュール301は、発熱温度150℃における第1のサンプル混合ガスの放熱係数の値を算出し、参照温度TRに関連付けて、放熱係数記憶装置401に保存する。その後、駆動回路303は、発熱抵抗体61に対する駆動電力の供給を停止する。
(d)再びステップS103で、図1及び図2に示す発熱抵抗体61の発熱温度の切り替えが完了したか否か判定する。発熱温度200℃への切り替えが完了していない場合には、ステップS101に戻り、第1の測温抵抗素子62及び第2の測温抵抗素子63は、参照温度TRを測定する。次にステップS102で、図9に示す駆動回路303は、図1及び図2に示す発熱抵抗体61を200℃で発熱させる。図9に示す放熱係数算出モジュール301は、発熱温度200℃における第1のサンプル混合ガスの放熱係数の値を算出し、参照温度TRに関連付けて、放熱係数記憶装置401に保存する。その後、駆動回路303は、発熱抵抗体61に対する駆動電力の供給を停止する。
(e)発熱抵抗体61の発熱温度の切り替えが完了した場合には、ステップS103からステップS104に進む。ステップS104で、サンプル混合ガスの切り替えが完了したか否かを判定する。第2乃至第4のサンプル混合ガスへの切り替えが完了していない場合には、ステップS100に戻る。ステップS100で、図10に示す第1の流量制御装置32Aを閉じ、第3乃至第4の流量制御装置32C−32Dの弁を閉じたまま第2の流量制御装置32Bの弁を開き、図9に示すチャンバ101内に第2のサンプル混合ガスを導入する。
(f)第1のサンプル混合ガスと同様に、ステップS101乃至ステップS103のループが繰り返される。放熱係数算出モジュール301は、発熱温度100℃における第2のサンプル混合ガスの放熱係数の値、発熱温度150℃における第2のサンプル混合ガスの放熱係数の値、及び発熱温度200℃における第2のサンプル混合ガスの放熱係数の値を算出する。さらに放熱係数算出モジュール301は、算出した放熱係数の値に参照温度TRを関連付けて、放熱係数記憶装置401に保存する。
(g)その後、ステップS100乃至ステップS104のループが繰り返される。これにより、発熱温度100℃、150℃、200℃のそれぞれにおける第3のサンプル混合ガスの放熱係数の値、及び発熱温度100℃、150℃、200℃のそれぞれにおける第4のサンプル混合ガスの放熱係数の値が、参照温度TRに関連付けられて、放熱係数記憶装置401に保存される。
(h)ステップS105で、補正モジュール321は、補正条件記憶装置400から、例えば上記(8)式を読み出す。次に、補正モジュール321は、放熱係数記憶装置401に保存されている放熱係数MIの値と参照温度TRの値とを上記(8)式に代入し、放熱係数の値を、60℃等の一定の参照温度における補正された放熱係数の値に換算する。ステップS106で、入力装置312から式作成モジュール302に、第1のサンプル混合ガスの既知の発熱量の値、第2のサンプル混合ガスの既知の発熱量の値、第3のサンプル混合ガスの既知の発熱量の値、及び第4のサンプル混合ガスの既知の発熱量の値を入力する。また、式作成モジュール302は、放熱係数記憶装置401から、発熱温度100℃、150℃、200℃のそれぞれにおける第1乃至第4のサンプル混合ガスの補正された放熱係数の値を読み出す。
(i)ステップS107で、第1乃至第4のサンプル混合ガスの発熱量の値、及び発熱温度100℃、150℃、200℃のそれぞれにおける第1乃至第4のサンプル混合ガスの補正された放熱係数の値に基づいて、式作成モジュール302は、重回帰分析を行う。重回帰分析により、式作成モジュール302は、発熱温度100℃における放熱係数、発熱温度150℃における放熱係数、及び発熱温度200℃における放熱係数を独立変数とし、発熱量を従属変数とする発熱量算出式を算出する。その後、ステップS108で、式作成モジュール302は作成した発熱量算出式を式記憶装置402に保存する。また、式作成モジュール302は、放熱係数を補正する際の一定の参照温度の値も式記憶装置402に保存し、第1の実施の形態に係る発熱量算出式の作成方法を終了する。
以上示したように、第1の実施の形態に係る発熱量算出式の作成方法によれば、発熱量の値が未知の計測対象混合ガスの放熱係数を複数の発熱温度に対して計測し、計測対象混合ガスの発熱量の値を一意に算出可能な発熱量算出式を作成することが可能となる。また、発熱量算出式を作成する際に用いられる放熱係数の値は、発熱前の発熱抵抗体61近傍の温度によって変動する場合がある。これに対し、第1の実施の形態に係る発熱量算出式の作成方法によれば、算出された放熱係数の値を、一定の参照温度における放熱係数の値に補正する。そのため、発熱前の発熱抵抗体61近傍の温度に依存せず、正確な発熱量算出式を作成することが可能となる。
(第2の実施の形態)
図12に示すように、第2の実施の形態に係るガス物性値測定システム20のCPU300には、熱伝導率記憶装置411が接続されている。ここで、図13は、発熱抵抗体に2mA、2.5mA、及び3mAの電流を流した際の、混合ガスの放熱係数と熱伝導率の関係を示す。図13に示すように、混合ガスの放熱係数と熱伝導率は一般に比例関係にある。そこで、図12に示す熱伝導率記憶装置411は、チャンバ101に導入されるガスの放熱係数と熱伝導率との対応関係を、近似式あるいはテーブル等で予め保存する。
第2の実施の形態に係るCPU300は、熱伝導率算出モジュール322をさらに含む。熱伝導率算出モジュール322は、放熱係数記憶装置401から補正された放熱係数の値を読み出し、熱伝導率記憶装置411からガスの放熱係数と熱伝導率との対応関係を読み出す。さらに熱伝導率算出モジュール322は、ガスの補正された放熱係数の値と、ガスの放熱係数と熱伝導率との対応関係とに基づいて、チャンバ101に導入されたガスの熱伝導率を算出する。
第2の実施の形態に係るガス物性値測定システム20のその他の構成要素は、第1の実施の形態と同様であるので、説明は省略する。第2の実施の形態に係るガス物性値測定システム20によれば、補正された放熱係数に基づいて、ガスの正確な熱伝導率の値を算出することが可能となる。
(第3の実施の形態)
図14に示すように、第3の実施の形態に係るガス物性値測定システム20のCPU300には、濃度記憶装置412がさらに接続されている。ここで、図15は、ガス温度TOが0℃、20℃、及び40℃のときのプロパンガスの放熱係数と濃度との関係を示す。図15に示すように、ガスの放熱係数とガスの濃度とは、一般に比例関係にある。そこで、図14に示す濃度記憶装置412は、チャンバ101に導入されるガスの放熱係数と濃度との対応関係を、近似式あるいはテーブル等で予め保存する。
第3の実施の形態に係るCPU300は、濃度算出モジュール323をさらに含む。濃度算出モジュール323は、放熱係数記憶装置401から補正された放熱係数の値を読み出し、濃度記憶装置412からガスの放熱係数と濃度との対応関係を読み出す。さらに濃度算出モジュール323は、ガスの補正された放熱係数の値と、ガスの放熱係数と濃度との対応関係とに基づいて、チャンバ101に導入されたガスの濃度を算出する。
第3の実施の形態に係るガス物性値測定システム20のその他の構成要素は、第1の実施の形態と同様であるので、説明は省略する。第3の実施の形態に係るガス物性値測定システム20によれば、ガスの補正された放熱係数に基づいて、ガスの濃度の正確な値を算出することが可能となる。
(第4の実施の形態)
図16に示すように、第4の実施の形態に係るガス物性値測定システム21は、発熱量の値が未知の計測対象混合ガスが充填されるチャンバ101、複数の異なる発熱温度で発熱する、図1及び図2に示す発熱抵抗体61を用いて、計測対象混合ガスの複数の放熱係数の値を計測する、図16に示す計測機構10と、を備える。さらに、ガス物性値測定システム21は、発熱抵抗体61が発熱していないときの発熱抵抗体61近傍の計測対象混合ガスの参照温度TRに基づいて、計測対象混合ガスの複数の放熱係数の値を補正する補正モジュール321、複数の発熱温度における放熱係数を独立変数とし、発熱量を従属変数とする発熱量算出式を保存する式記憶装置402、及び発熱量算出式の複数の発熱温度における放熱係数の独立変数に、計測対象混合ガスの補正された放熱係数の値を代入し、計測対象混合ガスの発熱量の値を算出する発熱量算出モジュール305を備える。
式記憶装置402は、第1の実施の形態で説明した発熱量算出式を保存する。ここでは、例として、発熱量算出式の作成のために、メタン(CH4)、プロパン(C3H8)、窒素(N2)、及び二酸化炭素(CO2)を含む天然ガスがサンプル混合ガスとして使用された場合を説明する。また、発熱量算出式は、発熱温度100℃における放熱係数、発熱温度150℃における放熱係数、及び発熱温度200℃における放熱係数を独立変数としているものとする。
第4の実施の形態においては、例えば、未知の体積率でメタン(CH4)、プロパン(C3H8)、窒素(N2)、及び二酸化炭素(CO2)を含む、発熱量が未知の天然ガスが、計測対象混合ガスとして、チャンバ101に導入される。図16に示すマイクロチップ8の図1及び図2に示す第1の測温抵抗素子62及び第2の測温抵抗素子63は、計測対象混合ガスがチャンバ101内に充填された後、発熱抵抗体61が発熱していないときの、発熱抵抗体61の近傍の温度を参照温度TRとして測定する。
発熱抵抗体61は、図16に示す駆動回路303から駆動電力PHを与えられる。駆動電力PHを与えられることにより、図1及び図2に示す発熱抵抗体61は、100℃、150℃、及び200℃で発熱する。マイクロチップ8のガス温度センサ64は、100℃で発熱する発熱抵抗体61と熱的に平衡な計測対象混合ガスの平衡ガス温度TOH=100、150℃で発熱する発熱抵抗体61と熱的に平衡な計測対象混合ガスの平衡ガス温度TOH=150、200℃で発熱する発熱抵抗体61と熱的に平衡な計測対象混合ガスの平衡ガス温度TOH=200を検出する。
図16に示す放熱係数算出モジュール301は、上記(1)乃至(4)式で説明した方法に従って、発熱温度100℃で発熱する発熱抵抗体61と熱的に平衡な計測対象混合ガスの放熱係数の値を算出する。また、放熱係数算出モジュール301は、発熱温度150℃で発熱する発熱抵抗体61と熱的に平衡な計測対象混合ガスの放熱係数の値、及び発熱温度200℃で発熱する発熱抵抗体61と熱的に平衡な計測対象混合ガスの放熱係数の値を算出する。放熱係数算出モジュール301は、算出した放熱係数MIの値に、参照温度TRの値を関連付け、放熱係数記憶装置401に保存する。
図16に示す補正モジュール321は、放熱係数記憶装置401に保存されている計測対象混合ガスの放熱係数MIの値と参照温度TRの値とを上記(8)式に代入し、放熱係数の値を、60℃等の一定の参照温度における補正された放熱係数の値に換算する。発熱量算出モジュール305は、発熱量算出式の放熱係数の独立変数に、計測対象混合ガスの補正された放熱係数の値を代入し、計測対象混合ガスの発熱量の値を算出する。
CPU300には、発熱量記憶装置403がさらに接続されている。発熱量記憶装置403は、発熱量算出モジュール305が算出した計測対象混合ガスの発熱量の値を保存する。第4の実施の形態に係るガス物性値測定システム21のその他の構成要件は、図9で説明した第1の実施の形態に係るガス物性値測定システム20と同様であるので、説明は省略する。
次に、図17に示すフローチャートを用いて、第4の実施の形態に係る発熱量の算出方法について説明する。なお、以下の例では、図16に示すマイクロチップ8の発熱抵抗体61を、100℃、150℃、及び200℃に発熱させる場合を説明する。
(a)ステップS200で、図16に示すチャンバ101内に計測対象混合ガスを導入する。ステップS201で、図1及び図2に示す第1の測温抵抗素子62及び第2の測温抵抗素子63は、発熱前の発熱抵抗体61の近傍の温度を参照温度TRとして測定する。次に、ステップS202で、駆動回路303は、マイクロチップ8の図1及び図2に示す発熱抵抗体61に第1の駆動電力PH1を与え、発熱抵抗体61を100℃で発熱させる。発熱抵抗体61が100℃で発熱している間、ガス温度センサ64は、発熱抵抗体61と熱的に平衡な計測対象混合ガスの平衡ガス温度TOH=100を検出し、図16に示す放熱係数算出モジュール301は、発熱温度100℃における計測対象混合ガスの放熱係数の値を算出する。その後、放熱係数算出モジュール301は、発熱温度100℃における計測対象混合ガスの放熱係数の値を、参照温度TRに関連付けて、放熱係数記憶装置401に保存する。その後、駆動回路303は、発熱抵抗体61に対する第1の駆動電力PH1の提供を停止する。
(b)ステップS203で、図16に示す駆動回路303は、図1及び図2に示す発熱抵抗体61の発熱温度の切り替えが完了したか否か判定する。発熱温度150℃及び発熱温度200℃への切り替えが完了していない場合には、ステップS201に戻り、第1の測温抵抗素子62及び第2の測温抵抗素子63は、参照温度TRを測定する。次にステップS202で、図16に示す駆動回路303は、図1及び図2に示す発熱抵抗体61を150℃に発熱させる。図16に示す放熱係数算出モジュール301は、発熱温度150℃における計測対象混合ガスの放熱係数の値を算出し、参照温度TRに関連付けて、放熱係数記憶装置401に保存する。その後、駆動回路303は、発熱抵抗体61に対する駆動電力の供給を停止する。
(c)再びステップS203で、図1及び図2に示す発熱抵抗体61の発熱温度の切り替えが完了したか否か判定する。発熱温度200℃への切り替えが完了していない場合には、ステップS201に戻り、第1の測温抵抗素子62及び第2の測温抵抗素子63は、参照温度TRを測定する。次にステップS202で、図16に示す駆動回路303は、図1及び図2に示す発熱抵抗体61を200℃に発熱させる。図16に示す放熱係数算出モジュール301は、発熱温度200℃における計測対象混合ガスの放熱係数の値を算出し、参照温度TRに関連付けて、放熱係数記憶装置401に保存する。その後、駆動回路303は、発熱抵抗体61に対する駆動電力の供給を停止する。
(d)発熱抵抗体61の発熱温度の切り替えが完了した場合には、ステップS203からステップS204に進む。ステップS204で、補正モジュール321は、式記憶装置402に保存されている、発熱量算出式を作成する際に用いられた参照温度の値を読み出す。次に、補正モジュール321は、放熱係数記憶装置401に保存されている放熱係数MIの値と参照温度TRの値とを上記(8)式に代入し、放熱係数の値を、発熱量算出式を作成する際に用いられた参照温度における放熱係数の値に補正する。ステップS205で、図16に示す発熱量算出モジュール305は、式記憶装置402から、発熱温度100℃、150℃、及び200℃における放熱係数を独立変数とする発熱量算出式を読み出す。また、発熱量算出モジュール305は、放熱係数記憶装置401から、発熱温度100℃、150℃、及び200℃のそれぞれにおける計測対象混合ガスの補正された放熱係数の値を読み出す。
(e)ステップS206で、発熱量算出モジュール305は、発熱量算出式の独立変数に発熱温度100℃、150℃、及び200℃のそれぞれにおける計測対象混合ガスの補正された放熱係数の値を代入し、計測対象混合ガスの発熱量の値を算出する。その後、発熱量算出モジュール305は、算出した発熱量の値を発熱量記憶装置403に保存し、第4の実施の形態に係る発熱量の算出方法を終了する。
以上説明した第4の実施の形態に係る発熱量算出方法によれば、高価なガスクロマトグラフィ装置や音速センサを用いることなく、計測対象混合ガスの放熱係数の測定値から、計測対象混合ガスの混合ガスの発熱量の値を測定することが可能となる。
天然ガスは、産出ガス田によって炭化水素の成分比率が異なる。また、天然ガスには、炭化水素の他に、窒素(N2)や炭酸ガス(CO2)等が含まれる。そのため、産出ガス田によって、天然ガスに含まれるガス成分の体積率は異なり、ガス成分の種類が既知であっても、天然ガスの発熱量は未知であることが多い。また、同一のガス田由来の天然ガスであっても、発熱量が常に一定であるとは限らず、採取時期によって変化することもある。
そのため、従来は、天然ガスの使用料金を徴収する際には、天然ガスの使用発熱量でなく、使用体積に応じて課金する方法がとられていた。しかし、天然ガスは由来する産出ガス田によって発熱量が異なるため、使用体積に課金するのは公平でない。これに対し、第4の実施の形態に係る発熱量算出方法を用いれば、ガス成分の種類が既知であるが、ガス成分の体積率が未知であるために発熱量が未知の天然ガス等の混合ガスの発熱量を、簡易に算出することが可能となる。そのため、公平な使用料金を徴収することが可能となる。
また、ガラス加工品の製造業においては、ガラスを加熱加工する際、加工精度を一定に保つために、一定の発熱量を有する天然ガスが供給されることが望まれている。そのためには、複数のガス田由来の天然ガスのそれぞれの発熱量を正確に把握し、総ての天然ガスの発熱量が同一になるよう調整した上で、ガラスの加熱加工工程に天然ガスを供給することが検討されている。これに対し、第4の実施の形態に係る発熱量算出方法を用いれば、複数のガス田由来の天然ガスのそれぞれ発熱量を正確には把握することが可能となるため、ガラスの加熱加工精度を一定に保つことが可能となる。
さらに、第4の実施の形態に係る発熱量算出方法によれば、天然ガス等の混合ガスの正確な発熱量を容易に知ることが可能となるため、混合ガスを燃焼させる場合に必要な空気量を適切に設定することが可能となる。そのため、無駄な二酸化炭素(CO2)の排出量を削減することも可能となる。
(実施例)
まず、図18に示すように発熱量の値が既知の28種類のサンプル混合ガスを用意した。28種類のサンプル混合ガスのそれぞれは、ガス成分としてメタン(CH4)、エタン(C2H6)、プロパン(C3H8)、ブタン(C4H10)、窒素(N2)、及び二酸化炭素(CO2)のいずれか又は全部を含んでいた。例えば、No.7のサンプル混合ガスは、90vol%のメタン、3vol%のエタン、1vol%のプロパン、1vol%のブタン、4vol%の窒素、及び1vol%の二酸化炭素を含んでいた。また、No.8のサンプル混合ガスは、85vol%のメタン、10vol%のエタン、3vol%のプロパン、及び2vol%のブタンを含み、窒素及び二酸化炭素を含んでいなかった。また、No.9のサンプル混合ガスは、85vol%のメタン、8vol%のエタン、2vol%のプロパン、1vol%のブタン、2vol%の窒素、及び2vol%の二酸化炭素を含んでいた。次に、28種類のサンプル混合ガスのそれぞれの放熱係数の値を、発熱温度100℃、150℃、及び200℃で計測した。なお、例えばNo.7のサンプル混合ガスは6種類のガス成分を含んでいるが、上述したように、エタン(C2H6)とブタン(C4H10)は、メタン(CH4)とプロパン(C3H8)の混合物とみなしうるので、放熱係数の値を3種類の発熱温度で計測しても問題ない。その後、28種類のサンプル混合ガスの発熱量の値と、計測された放熱係数の値に基づいて、サポートベクトル回帰により、放熱係数を独立変数とし、発熱量を従属変数とする、発熱量を算出するための1次方程式、2次方程式、及び3次方程式を作成した。
発熱量を算出するための1次方程式を作成する際には、キャリブレーション・ポイントは、3乃至5個を目安に、適宜決定できる。作成された1次方程式は下記(28)式で与えられた。28種類のサンプル混合ガスの発熱量を(28)式で算出し、真の発熱量と比較したところ、最大誤差は2.1%であった。
Q = 39.91 - 20.59×MI (100℃) - 0.89×MI (150℃) + 19.73×MI (200℃) ・・・(28)
発熱量を算出するための2次方程式を作成する際には、キャリブレーション・ポイントは、8乃至9個を目安に、適宜決定できる。28種類のサンプル混合ガスの発熱量を作成された2次方程式で算出し、真の発熱量と比較したところ、最大誤差は1.2乃至1.4%であった。
発熱量を算出するための3次方程式を作成する際には、キャリブレーション・ポイントは、10乃至14個を目安に、適宜決定できる。28種類のサンプル混合ガスの発熱量を作成された3次方程式で算出し、真の発熱量と比較したところ、最大誤差は1.2%未満であった。図19及び図20に示すように、10個のキャリブレーション・ポイントを取って作成された3次方程式で算出された発熱量は、真の発熱量に良好に近似した。
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施の形態及び運用技術が明らかになるはずである。例えば、第1及び第4の実施の形態においては、発熱抵抗体の複数の発熱温度における混合ガスの放熱係数の値を用いたが、代わりに、混合ガスの複数の発熱温度における熱伝導率を用いて、発熱量算出式の作成及び発熱量の算出を行ってもよい。また、上記(8)式に示した補正式は、ガス種ごとに用意されることが好ましいが、混合ガスの場合は、ガス成分ごとの補正式を平均化した補正式を用いてもよい。この様に、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。