JP2010233198A - オーディオ信号処理回路、フィルタ回路およびそれを用いたオーディオシステム - Google Patents
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Abstract
【課題】フィルタの特性を短時間で切りかえる。
【解決手段】IIR(無限インパルス応答)フィルタ10は、デジタルの入力オーディオ信号Sinに対して、設定された係数COEFFに応じたフィルタリング処理を施す。RAM20は、フィルタ10の係数COEFFを格納する。インタフェース回路30は、外部のプロセッサ202から、フィルタ10の特性を示すパラメータデータPRMを受ける。演算部50は、インタフェース回路30が受けたパラメータデータPRMにもとづき、フィルタ10の係数COEFFを計算し、演算部50に格納する。
【選択図】図1
【解決手段】IIR(無限インパルス応答)フィルタ10は、デジタルの入力オーディオ信号Sinに対して、設定された係数COEFFに応じたフィルタリング処理を施す。RAM20は、フィルタ10の係数COEFFを格納する。インタフェース回路30は、外部のプロセッサ202から、フィルタ10の特性を示すパラメータデータPRMを受ける。演算部50は、インタフェース回路30が受けたパラメータデータPRMにもとづき、フィルタ10の係数COEFFを計算し、演算部50に格納する。
【選択図】図1
Description
本発明は、オーディオ信号処理に関し、特にデジタルフィルタに関する。
カーオーディオ、カーナビゲーションシステム、をはじめとする音声を出力する機能を有するシステム(以下オーディオシステム)には、オーディオ信号に対してさまざまな信号処理を施すオーディオ信号処理回路が搭載される。オーディオ信号処理回路には、オーディオ信号の周波数特性を変化させるための、パラメトリックイコライザ(フィルタ)が内蔵される。オーディオ信号がデジタル形式の場合、たとえばIIR(無限インパルス応答)型のデジタルフィルタが利用される。
2次のIIRフィルタを利用する場合、フィルタの周波数特性は5つの係数によって規定され、それらの値の組み合わせによって、ピーキングフィルタ、ハイパスフィルタ、ローパスフィルタなど様々なフィルタが実現できる。
従来のシステムでは、フィルタの係数の組み合わせを予めコンピュータなどで計算しておき、それらをマイコン(プロセッサ)のROM(Read Only Memory)に書き込んでいた。そしてフィルタの特性を切りかえる度に、マイコンからフィルタに対して係数のセットをバスを介して転送する必要がある。
一般的な電子機器において、フィルタを内蔵するオーディオ信号処理回路と、マイコンの間は、伝送レートがそれほど高くないバスで接続される場合が多い。たとえば代表的なI2C(Inter IC)バスは、4kHz程度の伝送レートを有する。フィルタの各係数を24ビットのデータで定義する場合、24×5=120ビットのデータを転送する必要があるが、これをI2Cバスを介して伝送する場合、非常に長い時間を要することになる。
フィルタの係数の伝送時間、すなわちフィルタの特性の切りかえに要する時間が、オーディオ信号のサンプリング周期を超えると、ユーザに聴感上の違和感を与えるおそれがある。そこで従来のシステムでは、2つのパラメトリックイコライザを2系統設け、2つのイコライザの出力を緩やかに切りかえる(ソフトスイッチ)ことにより、聴感上の違和感を緩和していた(ソフトスイッチ機能)。具体的には、オーディオ信号が一方のイコライザ(メインイコライザ)を通過中に他方のイコライザ(遷移用イコライザ)の係数を更新し、その後、メインイコライザから遷移用イコライザへと出力を緩やかに切りかえる。続いて、休止中のメインイコライザの係数を更新し、その後、遷移用イコライザからメインイコライザへと出力を切りかえる。
このように従来のシステムでは、マイコン側に係数の組を保持するROMが必要となり、コストが高くなること、マイコンからオーディオ信号処理回路への係数の伝送に時間がかかること等の課題であった。
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、短時間で特性を切りかえ可能なフィルタの提供にある。
本発明のある態様のオーディオ信号処理回路は、デジタルの入力オーディオ信号に対して、設定された係数に応じたフィルタリング処理を施すIIR(無限インパルス応答)フィルタと、IIRフィルタの係数を格納するメモリと、外部のプロセッサから、フィルタの特性を示すパラメータデータを受けるインタフェース回路と、インタフェース回路が受けたパラメータデータにもとづき、IIRフィルタの係数を計算し、メモリに格納する演算部と、を備える。
この態様によると、プロセッサからオーディオ信号処理回路に対して、パラメータのみを伝送すればよいため、プロセッサ側に係数を保持するROMが不要となる。またパラメータを受けたオーディオ信号処理回路は、数MHzのクロック信号を利用して瞬時に係数を算出できるため、プロセッサから係数を伝送する場合に比べて短時間で、フィルタの特性を変更できる。
ある態様のオーディオ信号処理回路は、インタフェース回路が受信したパラメータデータを格納しておくレジスタをさらに備えてもよい。演算部は、プロセッサから指示されたタイミングで係数を計算し、メモリに格納してもよい。
この場合、外部のプロセッサから、フィルタの特性を変化させるタイミングを制御できる。
この場合、外部のプロセッサから、フィルタの特性を変化させるタイミングを制御できる。
ある態様のオーディオ信号処理回路は、インタフェース回路が受信したパラメータデータを格納しておくレジスタをさらに備えてもよい。演算部は、自動更新モードにおいて、所定の周期で係数を再計算し、メモリに再格納してもよい。
この場合、メモリに保持される係数が壊れた場合であっても、再計算によって正しい係数に再更新されるため、フィルタが予期せぬ周波数特性で長時間動作するのを防止できる。
この場合、メモリに保持される係数が壊れた場合であっても、再計算によって正しい係数に再更新されるため、フィルタが予期せぬ周波数特性で長時間動作するのを防止できる。
パラメータデータは、フィルタの周波数、フィルタのゲイン、フィルタのQ値を示すデータを含んでもよい。
本発明の別の態様は、デジタルの入力オーディオ信号に対してフィルタリング処理を施すフィルタ回路に関する。フィルタ回路は、入力オーディオ信号に対してフィルタリング処理を施す第1IIR(無限インパルス応答)フィルタと、入力オーディオ信号に対してフィルタリング処理を施す第2IIRフィルタと、第1、第2IIRフィルタそれぞれの係数を格納する第1、第2メモリと、外部のプロセッサから、本フィルタ回路の特性を示すパラメータデータを受けるインタフェース回路と、インタフェース回路が受けたパラメータデータに応じたIIRフィルタの係数を計算し、第1、第2メモリの一方に格納する演算部と、βを0≦β≦1なる正の実数とするとき、第1IIRフィルタの出力信号と第2IIRフィルタの出力信号をβ:(1−β)なる比率で重み付け加算するソフトスイッチ回路と、を備える。本フィルタ回路は、第1IIRフィルタがアクティブな第1状態と、第2IIRフィルタがアクティブな第2状態とが切替可能に構成される。第1状態において、本フィルタ回路の特性の変更が指示されるとき、演算部は指示された特性に応じた係数を第2メモリに格納し、続いてβを1から0へと緩やかに変化させる。第2状態において、本フィルタ回路の特性の変更が指示されるとき、演算部は指示された特性に応じた係数を第1メモリに格納し、続いてβを0から1へと緩やかに変化させる。
本発明の別の態様は、オーディオシステムである。このオーディオシステムは、上述のいずれかの態様のオーディオ信号処理回路もしくはフィルタ回路を備える。
オーディオ信号処理回路やフィルタ回路は、一つの半導体基板上に一体集積化されてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのICとして集積化することにより、その面積を削減することができる。
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を、方法、装置などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
本発明のある態様によれば、短時間でフィルタの特性を切りかえることができる。
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
図1は、本発明の実施の形態に係るオーディオ信号処理回路100を搭載したオーディオシステム200の構成を示すブロック図である。オーディオシステム200は、たとえば携帯電話端末、シリコンオーディオプレイヤ、カーオーディオをはじめとする、スピーカやヘッドホン、イヤホンなどから音声を出力可能なシステムである。オーディオシステム200は、オーディオ信号処理回路100、プロセッサ202、音源204、スピーカ206を備える。
スピーカ206は、電気信号を音響波に変換するデバイス(電気音響変換素子)である。音源204は、スピーカ206から出力すべきオーディオ信号Sinをデジタル形式で出力する。
オーディオ信号処理回路100は、音源204から出力されるオーディオ信号Sinを受け、これに所定の信号処理を施し、スピーカ206へと出力する。
本実施の形態において、オーディオ信号処理回路100は、少なくとも、オーディオ信号Sinの周波数特性を変化させるフィルタとしての機能を備えている。図1には、フィルタに関するブロックのみが示されている。フィルタブロックの後段には、デジタルのオーディオ信号をアナログのオーディオ信号に変換するデジタル/アナログ変換回路、あるいは、アナログのオーディオ信号を増幅するアンプなどが設けられてもよい。
オーディオ信号処理回路100は、フィルタ10、RAM20、インタフェース回路30、レジスタ40、演算部50を備える。
フィルタ10は、デジタルの入力オーディオ信号Sinに対して、設定された係数に応じたフィルタリング処理を施すIIR(無限インパルス応答)フィルタである。たとえばフィルタ10は2次であり、係数COEFFとしては、[b0,b1,b2,a1,a2]が設定可能となっている。
図1には、単一のフィルタのみが示されるが、オーディオ信号処理回路100は、カスケードに接続された複数のフィルタ10を含んでもよい。この場合、各フィルタ10の係数COEFFは独立に設定可能となっている。ただしフィルタ10の個数は1個でもよい。複数のフィルタ10が設けられる場合、以下で説明するレジスタ40およびRAM20は、フィルタごとの領域を有している。
具体的にはフィルタ10は、遅延素子D1〜D4、加算器ADD1、ADD2、乗算器M1〜M5を備える。遅延素子D1〜D4は、入力されたデータを1サンプリング時間、遅延させ、乗算器M1〜M5は、入力されたデータに、設定された係数COEFFを掛ける。
遅延素子D1はオーディオ信号S1を遅延させる。遅延素子D2は、遅延素子D1の出力データを遅延させる。乗算器M1は、オーディオ信号Sinに係数b0を掛ける。乗算器M2、M3はそれぞれ、遅延素子D1、D2の出力データに係数b1、b2を掛ける。加算器ADD1は、乗算器M1〜M3の出力データを加算する。
遅延素子D3は出力オーディオ信号Soutを遅延させる。遅延素子D4は、遅延素子D3の出力データを遅延させる。乗算器M4、M5はそれぞれ、遅延素子D3、D4の出力データに、係数a1、a2を掛ける。加算器ADD2は、加算器ADD1の出力データおよび乗算器M4、M5の出力データを加算する。
なお、フィルタ10の構成は例示であって、2次以外のIIRフィルタであってもよい。
RAM20には、フィルタ10の係数COEFF[b0,b1,b2,a1,a2]が格納される。インタフェース回路30は、外部のプロセッサ202から、I2Cバス(BUS)を介して、フィルタ10の特性を示すパラメータデータPRMを受ける。パラメータデータPRMは、フィルタ10の係数COEFFに対応するデータではなく、フィルタ10の形式および周波数特性を示すデータを含んでいる。たとえばフィルタ10が、ピーキングフィルタ、ローブーストフィルタ、ハイブーストフィルタ、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタが切りかえ可能である場合、パラメータデータPRMは、フィルタ形式を指定するデータ(タイプデータDT)、周波数を指定するデータ(周波数データDF(Hz))、ゲインを指定するデータ(ゲインデータDG(dB))、Q値を指定するデータ(Q値データDQ)を含んでもよい。
インタフェース回路30は、受信したパラメータデータPRMを、レジスタ40に格納する。
演算部50は、インタフェース回路30がレジスタ40に格納したパラメータデータPRMにもとづき、フィルタ10の係数COEFF[b0,b1,b2,a1,a2]を算出する。演算部50には、フィルタの形式ごとに関数が定義され、もしくは演算回路が実装されており、データDF、DG、DQを満足する係数COEFF[b0,b1,b2,a1,a2]を計算する。
一例として、タイプデータDTがピーキングフィルタを指定する場合、中間値として、以下のA、ω、sn、cs、αを演算する。なおFsはオーディオ信号Sinのサンプリングレートを示し、たとえば48kHz程度に設定される。サンプリングレートFsが固定されるシステムでは、値Fsはオーディオ信号処理回路100の内部に保持されている。サンプリングレートFsが変動する場合、パラメータデータPRMにはサンプリングレートを示すデータDFSが含まれてもよい。
A=10(DG/40)
ω=2×π×DF/Fs
sn=sin(ω)
cs=cos(ω)
α=sn/(2×DQ)
ω=2×π×DF/Fs
sn=sin(ω)
cs=cos(ω)
α=sn/(2×DQ)
そしてこれらの中間値を用いて、
b0=(1+A×α)/(1+(α/A))
b1=−2×cs/(1+(α/A))
b2=(1−(α/A))/(1+(α/A))
a1=2×cs/(1+(α/A))=−b1
a2=−(1−(α/A))/(1+(α/A))=−b2
b0=(1+A×α)/(1+(α/A))
b1=−2×cs/(1+(α/A))
b2=(1−(α/A))/(1+(α/A))
a1=2×cs/(1+(α/A))=−b1
a2=−(1−(α/A))/(1+(α/A))=−b2
演算部50は、計算した係数COEFF[b0,b1,b2,a1,a2]をRAM20に格納する。なお、当業者によれば、フィルタの形式が異なればそれに応じた計算式を用いればよいことが理解されよう。
演算部50は、プロセッサ202から指定されたタイミングで係数COEFF[b0,b1,b2,a1,a2]を計算する。たとえばプロセッサ202はオーディオ信号処理回路100に対し、パラメータデータPRMに加えて、フィルタ10の係数COEFFを更新するタイミングを示すデータ(更新データDU)を出力する。
そして、オーディオ信号処理回路100がプロセッサ202からすべてのパラメータデータPRMを受信した後、演算部50は、更新データDUが示すタイミングで係数COEFFを算出し、RAM20に格納する。RAM20に新たな係数COEFFを格納すると、フィルタ10の特性は瞬時に切りかわる。
またオーディオ信号処理回路100は、自動更新モードと呼ばれる動作が可能となっている。自動更新モードでは、レジスタ40のパラメータデータPRMが変更されたか否かにかかわらず、所定の周期で係数COEFFを再計算し、RAM20に格納する。
複数のフィルタ10が設けられる場合、自動更新モードにおいて、オーディオ信号処理回路100は複数のフィルタの係数COEFFを巡回的に更新する。
自動更新モードでは、プロセッサ202からオーディオ信号処理回路100に対して、更新データDUを送出する必要がない。その代わりに、オーディオ信号処理回路100に対して、自動更新モードへの遷移を指示するデータが出力される。
以上がオーディオ信号処理回路100の構成である。続いてその動作を説明する。図2は、図1のオーディオシステム200の動作を示すタイムチャートである。
時刻t0以前、RAM20には初期状態の係数COEFFが格納されており、フィルタ10は設定された係数COEFFにもとづいて、オーディオ信号Sinをフィルタリングしている。
時刻t0以前、RAM20には初期状態の係数COEFFが格納されており、フィルタ10は設定された係数COEFFにもとづいて、オーディオ信号Sinをフィルタリングしている。
時刻t0に、ユーザがフィルタ10の特性を変更する。そうすると、プロセッサ202はオーディオ信号処理回路100に対して、新たな特性を示すパラメータデータPRMの伝送を開始する。時刻t1に、すべてのパラメータPRMがレジスタ40に格納される。時刻t0〜t1の期間はI2Cバスの伝送レートに制限されるため、オーディオ信号Sinのサンプリングレートよりも格段に長くなる。
時刻t0〜t1の期間も、フィルタ10は、引き続き初期値として設定された係数COEFFにもとづいてフィルタリングを行う。
更新データDUが示すタイミング、もしくは自動更新モードで設定されるタイミングである時刻t2に、演算部50はレジスタ40の格納されたパラメータデータPRMにもとづいて、係数COEFFを演算し、RAM20に格納する。オーディオ信号処理回路100がたとえば24.576MHz程度で動作する。これはサンプリングレートFSの512倍である。演算部50は、サンプリングレートよりも格段に速い時間ですべての係数COEFFの計算を終え、RAM20の係数COEFFを更新することができる。時刻t2の直後にRAM20の係数COEFFが更新されると、フィルタ10の特性が瞬時に切りかわる。
このように、実施の形態に係るオーディオシステム200によれば、フィルタ10が参照するRAM20上の係数COEFFをサンプリングレートFSよりも速く(サンプリング時間1/FSより短い時間で)更新できるため、短時間でフィルタの特性を切りかえることができる。
図1のオーディオ信号処理回路100の効果は、従来のシステムの動作と比較することによりさらに明確となる。従来のシステムでは、プロセッサ側がフィルタの係数COEFFを保持しており、これを4kHzと低速なI2Cバスを介してオーディオ信号処理回路に伝送する。かかるシステムでは、フィルタ10が参照するRAM20に格納される係数COEFFは、ひとつずつ順に更新されていくため、すべての係数の更新が完了するまでの時間は、オーディオ信号のサンプリング時間1/FSよりも格段に長くなる。この場合、フィルタ10の特性が時間的に不連続かつ段階的に変化していくため、ユーザに聴感上の不快感を与えることになる。これを防止するためには、上述したソフトスイッチ機能を設ける必要があり、回路規模が増大する。
これに対して、図1のオーディオ信号処理回路100では、フィルタ10の特性の切りかえ時間は、サンプリング時間1/FSより短いため、ソフトスイッチ機能を設けずとも、ユーザに与える聴感上の違和感を従来より低減できる。ただし、フィルタ10の変更前後の特性が著しく異なることが想定される場合、ソフトスイッチ機能を設けてノイズを緩和してもよい。
また、図1のオーディオシステム200によれば、プロセッサ202側に係数COEFFを格納するROMを設ける必要がないため、システム全体のサイズを削減できる。
また、自動更新モードを設けることによりRAM20に保持される係数COEFFが壊れた場合であっても、再計算によって直ちに正しい係数COEFFに再更新されるため、フィルタ10が予期せぬ周波数特性で長時間動作するのを防止できる。
また、図1のオーディオシステム200によれば、プロセッサ202がレジスタ40内のパラメータデータPRMにアクセスすることも可能であるため、プロセッサ202側からオーディオ信号処理回路100の状態を把握することが可能となる。
上述の実施の形態では、フィルタの係数を瞬時に切りかえる構成を説明したが、本発明はこれに限定されず、以下で説明するソフトスイッチと組み合わせてもよい。
図3は、ソフトスイッチが可能なフィルタ10cの構成を示すブロック図である。フィルタ10cは、第1フィルタ10a、第2フィルタ10b、第1RAM20a、第2RAM20b、第1乗算器12a、第2乗算器12b、加算器14を備える。図3には、単一のチャンネルのみが示され、実際には、チャンネルごとにフィルタ10cが設けられる。第1乗算器12a、第2乗算器12b、加算器14は、第1フィルタ10aの出力信号と第2フィルタ10bの出力信号を、変更可能な比率で重み付け加算するソフトスイッチ回路を形成する。
第1フィルタ10aおよび第2フィルタ10bはそれぞれ、図1で示した構成を有する。第1フィルタ10aは、第1RAM20aに格納された係数を参照し、オーディオ信号Sinをフィルタリングする。同様に第2フィルタ10bは、第2RAM20bに格納された係数を参照し、オーディオ信号Sinをフィルタリングする。第1RAM20aおよび第2RAM20bに格納される係数は、図1の演算部50によって計算される。
第1乗算器12aは、第1フィルタ10aの出力に、遷移パラメータβ(0≦β≦1)を乗算する。第2乗算器12bは、第2フィルタ10bの出力に、遷移パラメータ(1−β)を乗算する。遷移パラメータβの値は、シーケンサ16によって制御される。加算器14は、第1乗算器12aの出力と第2乗算器12bの出力を加算する。
β=1のとき、第1フィルタ10aがアクティブとなり、フィルタ10cの出力は第1フィルタ10aの出力と同じとなる。β=0のとき、第2フィルタ10bがアクティブとなり、フィルタ10cの出力は第2フィルタ10bの出力と同じとなる。
β=1のとき、第1フィルタ10aがアクティブとなり、フィルタ10cの出力は第1フィルタ10aの出力と同じとなる。β=0のとき、第2フィルタ10bがアクティブとなり、フィルタ10cの出力は第2フィルタ10bの出力と同じとなる。
図3のフィルタ10cは、その係数を切りかえるたびに、βの値を0から1の間で変化させ、第1フィルタ10aと第2フィルタ10bを交互にアクティブとする。遷移レジスタ18には、現在、フィルタ10a、10bのいずれがアクティブかを示すフラグFLG1が格納される。具体的には、フラグFLG1が0のとき、第1フィルタ10aがアクティブであり、1のとき、第2フィルタ10bがアクティブである。
以上がフィルタ10cの構成である。続いてその動作を説明する。図4は、図3のフィルタ10cの動作を示すタイムチャートである。
時刻t0以前に、フラグFLG1は0であり、オーディオ信号Sinは、第1フィルタ10aを経由する。
時刻t0以前に、フラグFLG1は0であり、オーディオ信号Sinは、第1フィルタ10aを経由する。
時刻t0に、プロセッサ202から、フィルタ10cの新たなパラメータPRM(周波数、ゲイン、Q値等)が指示される。演算部50は、新たなパラメータPRMを受け、それに応じた係数COEFFを計算し、非アクティブな第2フィルタ10bに付随する第2RAM20bに格納する。つまり非アクティブな第2フィルタ10bの係数が変更される。またフラグFLG1の値が0から1に書き換えられる。
続いてシーケンサ16は、遷移パラメータβを時間とともに1から0へと緩やかに変化させる。その結果、第1フィルタ10aがアクティブな状態から、第2フィルタ10bがアクティブな状態へと緩やかに変化する。時刻t1にβが0となると、第2フィルタ10bがアクティブとなる。
しばらく時間が経過した時刻t2に、再びプロセッサ202からフィルタ10cから新たなパラメータPRMが指示される。演算部50は新たなパラメータPRMに応じた係数COEFFを計算し、非アクティブな第1フィルタ10aに付随する第1RAM20aに格納する。
続いてシーケンサ16は、遷移パラメータβを時間とともに0から1へと緩やかに変化させる。その結果、第2フィルタ10bがアクティブな状態から、第1フィルタ10aがアクティブな状態へと緩やかに変化する。時刻t3にβが1となると、第1フィルタ10aがアクティブとなる。そしてフラグFLG1の値が0に変更される。
以上がフィルタ10cの動作である。このフィルタ10cは、パラメータPRMを変更するのに要する時間が短くて済むという利点を有する。この利点は、以下で説明する比較技術との対比によって明確となる。図4の下段には、比較技術における動作を示すタイムチャートが示される。
比較技術では、第1フィルタ10aをメインフィルタとして、第2フィルタ10bを遷移用フィルタとして固定的に使用する。比較技術では、以下の4つの状態を順に遷移する。
1.通常状態φ0
第1フィルタ10aがアクティブとなっている。この状態でフィルタ10cのパラメータPRMの変更が指示されると、新しい係数COEFFが計算され、遷移用フィルタである第2フィルタ10bの第2RAM20bに書き込まれる。
第1フィルタ10aがアクティブとなっている。この状態でフィルタ10cのパラメータPRMの変更が指示されると、新しい係数COEFFが計算され、遷移用フィルタである第2フィルタ10bの第2RAM20bに書き込まれる。
2.遷移実行状態φ1
通常状態において、遷移レジスタのフラグFLG1を0から1に書き換えると、遷移実行状態φ1に移る。遷移実行状態φ1に移ると、遷移パラメータβが1から0へと緩やかに変化する。遷移パラメータβが0となると、次の遷移終了状態φ2に移る。
通常状態において、遷移レジスタのフラグFLG1を0から1に書き換えると、遷移実行状態φ1に移る。遷移実行状態φ1に移ると、遷移パラメータβが1から0へと緩やかに変化する。遷移パラメータβが0となると、次の遷移終了状態φ2に移る。
3.遷移終了状態φ2
遷移終了状態φ2では、第2RAM20bに設定された係数COEFFが第1RAM20aにコピーされる。また第2フィルタ10b内の遅延素子D1〜D4の値が、第1フィルタ10a内の対応する遅延素子D1〜D4にコピーされる。遅延素子D1〜D4はメモリ(RAM)である。さらに係数βが0から1へと瞬時に切りかえられる。この処理を経て、第1フィルタ10aがアクティブとなる。
遷移終了状態φ2では、第2RAM20bに設定された係数COEFFが第1RAM20aにコピーされる。また第2フィルタ10b内の遅延素子D1〜D4の値が、第1フィルタ10a内の対応する遅延素子D1〜D4にコピーされる。遅延素子D1〜D4はメモリ(RAM)である。さらに係数βが0から1へと瞬時に切りかえられる。この処理を経て、第1フィルタ10aがアクティブとなる。
4.遷移終了状態φ3
その後、遷移レジスタのフラグFLG1を0に戻すと、通常状態φ1に戻る。
その後、遷移レジスタのフラグFLG1を0に戻すと、通常状態φ1に戻る。
比較技術では、第2RAM20bに格納される係数COEFFと、遅延素子(RAM)D1〜D4に格納される値をコピーする必要があるため、遷移に要する時間が長くなる。これに対して図4の上段の動作によれば、コピー処理が不要となるため、遷移時間を短くできる。
一般的にフィルタは、複数個カスケードに接続される場合が多いが、図4の上段の動作は、カスケード接続される個数が少ないほど(好ましくは1個)、有利である。またチャンネル数が多いアプリケーションほど有利であるといえる。
実施の形態にもとづき、本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能である。
100…オーディオ信号処理回路、200…オーディオシステム、10…フィルタ、20…RAM、30…インタフェース回路、40…レジスタ、50…演算部、202…プロセッサ、204…音源、206…スピーカ。
Claims (7)
- デジタルの入力オーディオ信号に対して、設定された係数に応じたフィルタリング処理を施すIIR(無限インパルス応答)フィルタと、
前記IIRフィルタの係数を格納するメモリと、
外部のプロセッサから、前記フィルタの特性を示すパラメータデータを受けるインタフェース回路と、
前記インタフェース回路が受けた前記パラメータデータにもとづき、前記IIRフィルタの係数を計算し、前記メモリに格納する演算部と、
を備えることを特徴とするオーディオ信号処理回路。 - 前記インタフェース回路が受信した前記パラメータデータを格納しておくレジスタをさらに備え、
前記演算部は、前記プロセッサから指示されたタイミングで前記係数を計算し、前記メモリに格納することを特徴とする請求項1に記載のオーディオ信号処理回路。 - 前記インタフェース回路が受信した前記パラメータデータを格納しておくレジスタをさらに備え、
前記演算部は、自動更新モードにおいて、所定の周期で前記係数を再計算し、前記メモリに再格納することを特徴とする請求項1または2に記載のオーディオ信号処理回路。 - 前記パラメータデータは、前記フィルタの周波数、前記フィルタのゲイン、前記フィルタのQ値を示すデータを含むことを特徴とする請求項1に記載のオーディオ信号処理回路。
- 請求項1から4のいずれかに記載のオーディオ信号処理回路を備えることを特徴とするオーディオシステム。
- デジタルの入力オーディオ信号に対してフィルタリング処理を施すフィルタ回路であって、
前記入力オーディオ信号に対してフィルタリング処理を施す第1IIR(無限インパルス応答)フィルタと、
前記入力オーディオ信号に対してフィルタリング処理を施す第2IIRフィルタと、
前記第1、第2IIRフィルタそれぞれの係数を格納する第1、第2メモリと、
外部のプロセッサから、本フィルタ回路の特性を示すパラメータデータを受けるインタフェース回路と、
前記インタフェース回路が受けた前記パラメータデータに応じたIIRフィルタの係数を計算し、前記第1、第2メモリの一方に格納する演算部と、
βを0≦β≦1なる正の実数とするとき、前記第1IIRフィルタの出力信号と前記第2IIRフィルタの出力信号をβ:(1−β)なる比率で重み付け加算するソフトスイッチ回路と、
を備え、
本フィルタ回路は、前記第1IIRフィルタがアクティブな第1状態と、前記第2IIRフィルタがアクティブな第2状態とが切替可能に構成され、
前記第1状態において、本フィルタ回路の特性の変更が指示されるとき、前記演算部は指示された特性に応じた係数を前記第2メモリに格納し、続いて前記ソフトスイッチ回路はβを1から0へと緩やかに変化するように構成され、
前記第2状態において、本フィルタ回路の特性の変更が指示されるとき、前記演算部は指示された特性に応じた係数を前記第1メモリに格納し、続いて前記ソフトスイッチ回路はβを0から1へと緩やかに変化させるように構成されることを特徴とするフィルタ回路。 - 請求項6に記載のフィルタ回路を備えることを特徴とするオーディオシステム。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2009231383A JP2010233198A (ja) | 2009-03-05 | 2009-10-05 | オーディオ信号処理回路、フィルタ回路およびそれを用いたオーディオシステム |
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Family Applications (1)
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JP2009231383A Pending JP2010233198A (ja) | 2009-03-05 | 2009-10-05 | オーディオ信号処理回路、フィルタ回路およびそれを用いたオーディオシステム |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2013016908A (ja) * | 2011-06-30 | 2013-01-24 | Rohm Co Ltd | 正弦波発生装置、デジタル信号プロセッサ、および音声出力装置 |
JP2017126830A (ja) * | 2016-01-12 | 2017-07-20 | ローム株式会社 | オーディオ用のデジタル信号処理装置ならびにそれを用いた車載オーディオ装置および電子機器 |
-
2009
- 2009-10-05 JP JP2009231383A patent/JP2010233198A/ja active Pending
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