JP2010232563A - 多接合型光学素子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】複数の光吸収スペクトルの異なる太陽電池セルを積層した多接合型太陽電池において、太陽電池セルは、両面に開口する貫通孔を有する透明基板上に形成され、透明基板の貫通孔内部及び太陽電池セルの形成されていない側の面が、透明導電膜で被覆されていることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
また、前記太陽電池セルのうちの少なくとも一つの太陽電池セルは、ガラス基板上に形成されたシリコン又はシリコンゲルマニウムの微結晶薄膜からなることを特徴とする。
また、前記太陽電池セルのうちの少なくとも一つの太陽電池セルは、ガラス基板上に形成されたシリコン又はシリコンカーバイドのアモルファス薄膜からなることを特徴とする。
また、前記太陽電池セルのうちの少なくとも一つの太陽電池セルは、サファイア又は窒化ガリウム基板上に形成された窒化インジウムガリウムの単結晶薄膜からなることを特徴とする。
また、前記太陽電池セルのうちの少なくとも一つの太陽電池セルは、ソーダライムガラス基板上に形成されたカルコパイライト薄膜からなることを特徴とする。また、前記太陽電池セルのうちの少なくとも一つの太陽電池セルは、透明プラスチック基板上に形成された有機薄膜からなることを特徴とする。
また、太陽電池セルのうちの少なくとも一つの太陽電池セルは、光が入射する側と反対側の端部太陽電池セルを除く太陽電池セルであることを特徴とする。光が入射する側と反対側の端部太陽電池セルは、透明基板上に設ける必要がない。また、光が入射する側と反対側の端部太陽電池セルを除く太陽電池セルのすべてを本発明のような貫通孔を有する透明基板上に設けることが好ましいが、すべてではなく、少なくとも一つの太陽電池セルを貫通孔のある透明基板上に設けて、他の太陽電池セルの積層構造は従来の構造を用いてもよい。
また、本発明による多接合型太陽電池においては、複数の異なる太陽電池セルをそれぞれ複数の異なる基板上に形成しているため、各太陽電池セルに最適の基板や形成条件を選択することができる。
また、本発明による多接合型太陽電池においては、太陽電池セルをガラス基板、透明な樹脂基板又は透明な結晶基板上に形成しているので、それらの積層の順番により、太陽光を透明基板側から入射しても、その反対側から入射してもほぼ同等の動作をする構造上の自由度を有しているので、入射面とは反対側の面に最適な光反射構造を適宜設けることができる。
また、本発明による多接合型受光素子においては、複数の異なる受光素子をそれぞれ複数の異なる基板上に形成しているため、各受光素子に最適の基板や形成条件を選択することができる。
また、本発明による多接合型受光素子においては、少なくとも光が入射するのと反対側の端部受光素子を除く各受光素子は、ガラス基板、透明な樹脂基板又は透明な結晶基板上に形成されているので、それらの積層の順番により、光を基板側から入射しても、その反対側から入射してもほぼ同等の動作をする構造上の自由度を有すことができる。
また、本発明による多接合型発光素子においては、複数の異なる発光素子をそれぞれ複数の異なる基板上に形成しているため、各発光素子に最適の基板や形成条件を選択することができる。
また、本発明による多接合型発光素子においては、少なくとも光が出射するのと反対側の端部発光素子を除く各受光素子はガラス基板又は透明な樹脂基板又は透明な結晶基板上に形成されているので、それらの積層の順番により、光を基板側から出射しても、その反対側から出射してもほぼ同等の動作をする構造上の自由度を有すことができる。
さらに、該第1の太陽電池セル17の上に、両面に開口部を備える貫通孔を有してかつ貫通孔内部及び基板面が透明導電膜6で被覆されているガラス基板2が配置されている。ガラス基板2の上に、p型微結晶シリコン膜8/i型微結晶シリコンゲルマニウム膜9/n型微結晶シリコン膜10の順で積層された3層のp型i型n型の微結晶膜からなる第2の太陽電池セル18が形成されている。
さらに、該第2の太陽電池セル18の上に、両面に開口部を備える貫通孔20を有してかつ貫通孔内部及び基板面が透明導電膜6で被覆されているガラス基板2が配置されている。ガラス基板2の上に、p型アモルファスシリコン膜13/i型アモルファスシリコン膜14/n型アモルファスシリコン膜15の順で積層された3層のp型i型n型のアモルファスシリコン膜からなる第3の太陽電池セル19が形成されている。第3の太陽電池セル19の上に透明導電膜6が形成されている。
図1の多接合型太陽電池において、図の上方から太陽光が入射すると、上方に位置する、光吸収スペクトルが短波長側にある半導体層又は禁制帯幅の広い方の半導体層(第3の太陽電池セル19)により太陽光の短波長成分が吸収される。この半導体層を透過した長波長成分の多い太陽光は、より下方に位置する光吸収スペクトルが長波長側にある半導体層又は禁制帯幅の狭い方の半導体層(第2の太陽電池セル18)に吸収される。さらにこの半導体層を透過したより長波長成分の多い太陽光が、より下方に位置する、光吸収スペクトルがより長波長側にある半導体層又は禁制帯幅のより狭い方の半導体層(第1の太陽電池セル17)に吸収される。こうして全体として太陽光スペクトルが効果的に吸収されて、太陽電池の光電変換効率が増大する効果がある。また、貫通孔内部20及び透明基板に被覆されている透明導電膜6により、それぞれ太陽電池セルが接合により電気的に接続されている。
第1実施例に係る太陽電池は、単結晶シリコンゲルマニウム太陽電池セルおよび微結晶シリコンゲルマニウム太陽電池セルおよびアモルファスシリコン太陽電池セルの積層からなる。
まず、ガラス基板上の単結晶シリコンゲルマニウム太陽電池セルを以下の手順で作製する。
米国コーニング社の開発したSiOG(ガラス上単結晶シリコン薄膜)またはGeOG(ガラス上単結晶ゲルマニウム薄膜)を基板として用いる。ガラスは無アルカリで厚さ0.7mmとし、深さ0.65mmで直径が0.1mmから0.5mmの大きさで単結晶膜に向かって狭まる方向のテーパー状の穴を、波長800nm、パワー260mJのフェムト秒レーザー光を1個に付き70,000回照射して、2mmから5mmの間隔で2次元的に配置して設ける。ここで、上記穴の作製方法はレーザー光に限定されるものではなく、エッチング、サンドブラストおよび機械的ドリルを用いてもよい。単結晶のシリコンまたはゲルマニウム薄膜はp+型で、厚さ200nm、面方位(100)とする。
次に、ガラス基板の裏面(穴のある面)の開口部以外をレジスト等でマスキングしてから、希釈したフッ酸(HF)でガラスをエッチングし、穴を貫通させる。
この単結晶シリコンゲルマニウム太陽電池セルは、波長1μm前後で光電変換効率が最大となる。なお、単結晶シリコンゲルマニウムの成長方法は熱CVD法に限定されるものではなく、分子線エピタキシー(MBE)法やプラズマ励起化学的気相堆積(PECVD)法を用いてもよい。
次に、ガラス基板上の微結晶シリコンゲルマニウム太陽電池セルを以下の手順で作製する。
厚さ0.3mmのパイレックス(登録商標名)ガラス基板に、深さ0.25mmで直径が0.02mmから0.1mmの深くなるほど狭くなるテーパー形状の穴を、波長800nm、パワー260mJのフェムト秒レーザー光を1個に付き25,000回照射して1mmから2mmの間隔で2次元的に開ける。このパイレックス(登録商標名)ガラス基板の穴の開いていない面上に、酸化ガリウムをドープした酸化亜鉛(ZnO)の透明導電膜を、三酸化二ガリウム(Ga2O3)を5.7重量%含むZnOをターゲットとして、アルゴン雰囲気中で高周波スパッタ法により厚さ300nm堆積する。
p型の不純物ドーピングにはフォスフィン(PH3)、n型にはジボラン(B2H6)をそれぞれ水素で希釈して用いる。
次に、ガラス基板の裏面(穴のある面)の開口部以外をレジスト等でマスキングしてから、希釈したフッ酸(HF)でガラスをエッチングし、透明導電膜が露出するまで穴を貫通させる。さらに、ガラスの裏面に厚さ300nmの非晶質が支配的な水素ドープ酸化インジウム(In2O3)透明導電膜を同様にマグネトロンスパッタ法で堆積する。裏面の透明導電膜は貫通孔内部にも埋め込まれ、ガラス表面の透明導電膜と電気的に接触する。裏面の平坦性を向上するため。さらに研磨処理を施してもよい。
次に、ガラス基板上のアモルファスシリコンセルを以下の手順で作製する。
厚さ0.3mmのパイレックス(登録商標名)ガラス基板に、深さ0.25mmで直径が0.02mmから0.1mmの深くなるほど狭くなるテーパー形状の穴を、上記と同様にして1mmから2mmの間隔で2次元的に開ける。このパイレックス(登録商標名)ガラス基板の穴の開いていない面上に、酸化ガリウムをドープした酸化亜鉛の透明導電膜を上記と同様にして厚さ300nm堆積する。
このようにして作製した単結晶シリコンゲルマニウム太陽電池セル、微結晶シリコンゲルマニウム太陽電池セルおよびアモルファスシリコン太陽電池セルを以下の手順で接合する。
単結晶シリコンゲルマニウム太陽電池セル表面、微結晶シリコンゲルマニウム太陽電池セルの表面および裏面、アモルファスシリコン太陽電池セル裏面に形成されたそれぞれの透明導電膜にプラズマ処理を施す。プラズマ処理は、アルゴンあるいは酸素雰囲気(全圧約10Pa)下において120秒間イオン照射して行う。
積層した3接合セル上面の透明導電膜上に櫛歯状または格子状の電極を、下面のガラス基板上全面に貫通孔の奥まで達する電極を、それぞれ銀またはアルミニウムを真空蒸着して形成する。
図2の多接合型太陽電池において、図の下方から太陽光が入射すると、波長500nm付近およびそれより短波長のスペクトル成分が主としてアモルファスシリコン太陽電池セルに吸収され、それを透過したスペクトル成分のうち波長650nm付近およびそれより短波長のスペクトル成分が主として微結晶シリコンゲルマニウム太陽電池セルに吸収され、さらにそれを透過した長波長側のスペクトル成分は波長1μm付近を中心として単結晶シリコンゲルマニウム太陽電池セルに吸収される。ここで、ガラス基板および透明導電膜は着目している光波長の領域では透明で、ほとんど吸収による損失は発生しない。各セルで吸収された太陽光成分はそれぞれ電流に変換され、透明導電膜で直列接続されているのでそれらを合成した電力を効率よく上下の電極から取り出すことができる。
本実施例も、アモルファスシリコン太陽電池セル、微結晶シリコンゲルマニウム太陽電池セルおよび単結晶シリコンゲルマニウム太陽電池セルの積層からなる。
アモルファスシリコン太陽電池セルの形成方法は、アモルファスシリコン層の形成までは第1の実施例と同様である。次に、ガラス基板の裏面(穴のある面)の開口部以外をレジスト等でマスキングしてから、希釈したフッ酸(HF)でガラスをエッチングし、透明導電膜が露出するまで穴を貫通させる。さらに、ガラスの裏面に厚さ300nmの非晶質が支配的な水素ドープ酸化インジウム透明導電膜を同様にマグネトロンスパッタ法で堆積する。裏面の透明導電膜は、貫通孔内部にも埋め込まれ、ガラス表面の透明導電膜と電気的に接触する。それから、アモルファスシリコン層上に、厚さ100nmの非晶質が支配的な水素ドープ酸化インジウム透明導電膜をマグネトロンスパッタ法で堆積する。その後真空中200℃で2時間アニール処理し、両面の透明導電膜を多結晶化する。
微結晶シリコンゲルマニウム太陽電池セルの形成方法は、微結晶シリコンゲルマニウム層の形成までは第1の実施例と同様である。次に、ガラス基板の裏面(穴のある面)の開口部以外をレジスト等でマスキングしてから、希釈したフッ酸でガラスをエッチングし、透明導電膜が露出するまで穴を貫通させる。さらに、ガラスの裏面に厚さ300nmの非晶質が支配的な水素ドープ酸化インジウム透明導電膜を同様にマグネトロンスパッタ法で堆積する。裏面の透明導電膜は貫通孔内部にも埋め込まれ、ガラス表面の透明導電膜と電気的に接触する。その後真空中200℃で2時間アニール処理し、透明導電膜を多結晶化する。それから、微結晶シリコンゲルマニウム層上に、厚さ100nmの非晶質が支配的な水素ドープ酸化インジウム透明導電膜をマグネトロンスパッタ法で堆積する。
単結晶シリコンゲルマニウム太陽電池セルは、単結晶シリコンゲルマニウム薄膜の形成までは第1の実施例と同様である。次に、ガラス基板の裏面(穴のある面)の開口部以外をレジスト等でマスキングしてから、希釈したフッ酸(HF)でガラスをエッチングし、穴を貫通させる。それから、ガラスの裏面に厚さ300nmの非晶質が支配的な水素ドープ酸化インジウム透明導電膜を同様にマグネトロンスパッタ法で堆積する。裏面の透明導電膜は貫通孔内部にも埋め込まれ、p+型単結晶シリコンまたはゲルマニウム膜と電気的に接触する。その後真空中200℃で2時間アニール処理し、透明導電膜を多結晶化する。
このようにして作製したアモルファスシリコン太陽電池セルおよび微結晶シリコンゲルマニウム太陽電池セルおよび単結晶シリコンゲルマニウム太陽電池セルを以下の手順で接合する。
アモルファスシリコン太陽電池セル表面、微結晶シリコンゲルマニウム太陽電池セルの表面および裏面、単結晶シリコンゲルマニウム太陽電池セル裏面に形成されたそれぞれの透明導電膜にプラズマ処理を施す。
次にプラズマ処理した非晶質性と多結晶性の透明導電膜同士が合わさるように、アモルファスシリコン太陽電池セル、微結晶シリコンゲルマニウム太陽電池セル、単結晶シリコンゲルマニウム太陽電池セルの順に3つのセルを大気中で積み重ねる。その後の接合の手順は第1の実施例と同様である。
積層した3接合セル上面の単結晶シリコンゲルマニウム全面に電極を、下面のガラス基板上透明導電膜に貫通孔と重ならない櫛歯状または格子状の電極を、それぞれ銀またはアルミニウムを真空蒸着して形成する。
(第1セルの製造方法)
まず、シリコン基板上の単結晶シリコン太陽電池セル17を以下の手順で作製する。
CZ法で作製したp型で抵抗率1μcm、厚さ0.2mmのシリコンウエハ43に燐(P)を拡散してpn接合を形成する。拡散はPOCl3を窒素でバブリングし、温度900℃で10分間行う。その後、端面および裏面のn型層は機械的に除去する。裏面は、太陽光を散乱させて吸収効率を向上させるため、さらに水酸化ナトリウムの5%溶液中で温度80℃で10分間処理し、テクスチャ構造を形成してもよい。
この単結晶シリコンセルは、波長800nm前後で太陽電池セルの光電変換効率が最大となる。
次に、微結晶シリコンセルを以下の手順で積層する。
厚さ0.3mmのパイレックス(登録商標名)ガラス基板2に、直径が0.02mmから0.1mmのテーパー形状の貫通孔を、波長800nm、パワー260mJのフェムト秒レーザー光を1個に付き30,000回照射して1mmから2mmの間隔で2次元的に開ける。ここで、ガラス基板の穴開け方法はフェムト秒レーザーに限定されるものではなく、サンドブラストやエッチング、機械的ドリルを用いてもよい。
以上のようにして作製した図4に示す多接合型太陽電池に上面から太陽光を照射すると、波長600nm付近およびそれより短波長のスペクトル成分が主として微結晶シリコン太陽電池セル(第2の太陽電池セル)に吸収され、それを透過した長波長側のスペクトル成分は波長800nm付近を中心として単結晶シリコン太陽電池セル(第1の太陽電池セル)に吸収される。ここで、ガラス基板および透明導電膜は着目している光波長の領域では透明で、ほとんど吸収による損失は発生しない。各セルで吸収された太陽光成分はそれぞれ電流に変換され、透明導電膜で直列接続されているのでそれらを合成した電力を効率よく上下の電極から取り出すことができる。
単結晶シリコン太陽電池セルは第3実施例と同様にして作製する。ただし、n型シリコン層の表面上の透明導電膜は、厚さ100nmの非晶質が支配的な水素ドープ酸化インジウム(In2O3)透明導電膜をマグネトロンスパッタ法で堆積する。
厚さ0.3mmの半絶縁性砒化ガリウム基板44上に、有機金属化学的気相成長(MOCVD)で厚さ500nm、キャリア濃度1x1018cm-3のp+型砒化アルミニウムガリウム(Al0.3Ga0.7As)45、厚さ5nmのp+型砒化アルミニウム(AlAs)46、厚さ1μm、キャリア濃度1x1017cm-3のp型砒化ガリウム(GaAs)47、厚さ500nm、キャリア濃度3x1018cm-3のn型砒化ガリウム(GaAs)48、厚さ50nm、キャリア濃度1x1018cm-3のn+型砒化アルミニウムガリウム(Al0.3Ga0.7As)49、厚さ50nmのn+型砒化ガリウム(GaAs)48を順次成長する。なお、成長方法はMOCVD法に限られるものではなく、分子線エピタキシー(MBE)法によってもよい。
このようにして作製した単結晶シリコン太陽電池セルおよび単結晶砒化ガリウム太陽電池セルを以下の手順で接合する。
単結晶砒化ガリウム太陽電池セル裏面および単結晶シリコン太陽電池セル表面に形成されたそれぞれの透明導電膜にプラズマ処理を施す。
次にプラズマ処理した非晶質性と多結晶性の透明導電膜同士が合わさるように、単結晶砒化ガリウム太陽電池セル、単結晶シリコン太陽電池セルの順に2つのセルを大気中で積み重ねる。その後の接合の手順は第1の実施例と同様である。
積層した2接合セル上面の砒化ガリウム上に櫛歯状または格子状のアルミニウム電極を、下面のシリコン基板上全面にアルミニウム電極を、それぞれ真空蒸着して形成する。
以上のようにして作製した図5に示す多接合型太陽電池に上面から太陽光を照射すると、波長880nm以下のスペクトル成分が主として単結晶砒化ガリウム太陽電池セルに吸収され、それを透過した長波長側のスペクトル成分は単結晶シリコン太陽電池セルに吸収される。ここで、半絶縁性砒化ガリウム基板は自由キャリアによるドルーデ吸収は少なく波長900nm以上の光に対しては透明で、透明導電膜も着目している光波長の領域では透明であるので、ほとんど吸収による損失は発生しない。各セルで吸収された太陽光成分はそれぞれ電流に変換され、透明導電膜で直列接続されているのでそれらを合成した電力を効率よく上下の電極から取り出すことができる。
カルコパイライト太陽電池セルは以下の手順で作製する。
厚さ0.3mmのソーダライムガラス基板に、深さ0.25mmで直径が0.02mmから0.1mmの深くなるほど狭くなるテーパー形状の穴をフェムト秒レーザー光を照射して1mmから2mmの間隔で2次元的に開ける。このガラス基板の穴の開いていない面上に、酸化ガリウムをドープした酸化亜鉛の透明導電膜を高周波スパッタ法により厚さ300nm堆積する。次に、n型の硫化硫黄を抵抗加熱蒸着法で厚さ50nm堆積し、さらに所望の組成のカルコパイライト化合物(Cu(In,Ga)(S,Se)2)を厚さ1.5μmで各元素の同時蒸着法により堆積する。なお、カルコパイライト化合物の堆積はスパッタ法やセレン化/硫化法によってもよい。
以上のようにして作製した多接合型太陽電池に上面から太陽光を照射すると、短波長のスペクトル成分から順次上部の太陽電池セルに吸収され、それを透過した長波長成分は順次下部の太陽電池セルに吸収される。ここで、ガラス基板および透明導電膜は着目している光波長の領域では透明で、ほとんど吸収による損失は発生しない。各セルで吸収された太陽光成分はそれぞれ電流に変換され、透明導電膜で直列接続されているのでそれらを合成した電力を効率よく上下の電極から取り出すことができる。
窒化インジウムガリウム太陽電池セルは以下の手順で作製する。
厚さ0.3mmのサファイア(Al2O3)基板に、深さ0.25mmで直径が0.02mmから0.1mmの深くなるほど狭くなるテーパー形状の穴をパワー100W、パルス幅1msのYAGレーザー光を照射して1mmから2mmの間隔で2次元的に開ける。このガラス基板の穴の開いていない面上に、有機金属化学的気相成長(MOCVD)で厚さ1μm、キャリア濃度5x1018cm-3のn+型窒化ガリウム(GaN)、厚さ200nmのi(アンドープ)型窒化インジウムガリウム(In0.05Ga0.95N)、厚さ100nm、キャリア濃度5x1017cm-3のp型窒化ガリウム(GaN)を順次成長する。なお、成長方法はMOCVD法に限られるものではなく、ハイドライド気相成長(HVPE)法によってもよい。
単結晶シリコンゲルマニウム太陽電池セルおよび微結晶シリコンゲルマニウム太陽電池セルの作製方法は、第1の実施例においてp型層とn型層を入れ換える以外は同様である。
積層した3接合セル上面の窒化ガリウム層上に櫛歯状または格子状のニッケル(Ni)電極を、下面のガラス基板上全面に貫通孔の奥まで達する銀(Ag)またはアルミニウム(Al)電極を、それぞれ真空蒸着して形成する。
以上のようにして作製した多接合型太陽電池に上面から太陽光を照射すると、波長400nm以下のスペクトル成分が主として単結晶窒化インジウムガリウム太陽電池セルに吸収され、それを透過したスペクトル成分のうち波長650nm付近およびそれより短波長のスペクトル成分が主として微結晶シリコンゲルマニウム太陽電池セルに吸収され、さらにそれを透過した長波長側のスペクトル成分は波長1μm付近を中心として単結晶シリコンゲルマニウム太陽電池セルに吸収される。ここで、サファイア基板およびガラス基板および透明導電膜は着目している光波長の領域では透明で、ほとんど吸収による損失は発生しない。各セルで吸収された太陽光成分はそれぞれ電流に変換され、透明導電膜で直列接続されているのでそれらを合成した電力を効率よく上下の電極から取り出すことができる。
次に、有機薄膜太陽電池セルを以下の手順で作製する。
厚さ0.3mmのポリイミド基板上に、厚さ300nmの非晶質が支配的な水素ドープ酸化インジウム透明導電膜をマグネトロンスパッタ法で堆積する。その後真空中200℃で2時間アニール処理し、透明導電膜を多結晶化する。次に、スピンコートと加熱乾燥により、厚さ30nmのポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスルフォン酸スチレン(PEDOT:PSS)膜を形成する。それから、真空蒸着法により厚さ25nmの亜鉛フタロシアニン(ZnPc)、厚さ25nmのフラーレン(C60)、厚さ6nmのバソクプロイン(BCP)を順次堆積する。なお、堆積方法は真空蒸着法に限られるものではなく、スプレーコート法によってもよい。
積層した3接合セル上面のBCP層上に櫛歯状または格子状のマグネシウム・銀合金(Mg:Ag)電極を、下面のガラス基板上全面に貫通孔の奥まで達する銀(Ag)またはアルミニウム(Al)電極を、それぞれ真空蒸着して形成する。
以上のようにして作製した多接合型太陽電池に上面から太陽光を照射すると、波長550nm付近およびそれより短波長のスペクトル成分が主として有機薄膜太陽電池セルに吸収され、それを透過したスペクトル成分のうち波長650nm付近およびそれより短波長のスペクトル成分が主として微結晶シリコンゲルマニウム太陽電池セルに吸収され、さらにそれを透過した長波長側のスペクトル成分は波長1μm付近を中心として単結晶シリコンゲルマニウム太陽電池セルに吸収される。ここで、ポリイミド基板およびガラス基板および透明導電膜は着目している光波長の領域では透明で、ほとんど吸収による損失は発生しない。各セルで吸収された太陽光成分はそれぞれ電流に変換され、透明導電膜で直列接続されているのでそれらを合成した電力を効率よく上下の電極から取り出すことができる。
2、ガラス基板
3、p型単結晶シリコン膜又はゲルマニウム膜
4、i型単結晶シリコンゲルマニウム膜
5、n型単結晶シリコンゲルマニウム膜
6、透明導電膜
8、p型微結晶シリコン膜
9、i型微結晶シリコンゲルマニウム膜又はシリコン膜
10、n型微結晶シリコン膜
13、p型アモルファスシリコン膜
14、i型アモルファスシリコン膜
15、n型アモルファスシリコン膜
17、第1の太陽電池セル
18、第2の太陽電池セル
19、第3の太陽電池セル
20、貫通孔
42、n型単結晶シリコン拡散層
43、p型単結晶シリコン基板
44、半絶縁性砒化ガリウム基板
45、p型砒化アルミニウムガリウム膜
46、p型砒化アルミニウム膜
47、p型砒化ガリウム膜
48、n型砒化ガリウム膜
49、n型砒化アルミニウムガリウム膜
51、太陽電池の第1のセル
52、絶縁膜
53、開口穴
54、太陽電池の第2のセル
60、透明電極膜
61、単結晶シリコン基板
62、透明性エポキシ樹脂
63、金属電極
65、単結晶シリコン太陽電池セル
66、絶縁性透明基板
67、カルコパイライト化合物薄膜
68、カルコパイライト太陽電池セル
Claims (16)
- 複数の光吸収スペクトルの異なる太陽電池セルを積層し電気的に接続した多接合型太陽電池であって、
前記太陽電池セルのうちの少なくとも一つの太陽電池セルは、貫通孔を有する透明基板上に形成され、
前記透明基板の貫通孔内部及び前記透明基板の太陽電池セルの形成されていない側の面は透明導電膜で被覆され、
太陽電池セルは光吸収波長の最も短いセルから光が入射するよう吸収波長の順に各セルを積層して接合されていることを特徴とする多接合型太陽電池。 - 前記太陽電池セルのうちの少なくとも一つの太陽電池セルは、光が入射するのと反対側の端部太陽電池セルを除く太陽電池セルであることを特徴とする請求項1記載の多接合型太陽電池。
- 前記透明基板は、ガラス基板、樹脂基板、多結晶基板又は単結晶基板のうちのいずれか1つ以上から選択されることを特徴とする請求項1記載の多接合型太陽電池。
- 前記太陽電池セルのうちの少なくとも一つの太陽電池セルは、ガラス基板上に形成されたシリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、シリコン錫又はシリコンゲルマニウム錫の単結晶薄膜からなることを特徴とする請求項1記載の多接合型太陽電池。
- 前記太陽電池セルのうちの少なくとも一つの太陽電池セルは、ガラス基板上に形成されたシリコン又はシリコンゲルマニウムの微結晶薄膜からなることを特徴とする請求項1記載の多接合型太陽電池。
- 前記太陽電池セルのうちの少なくとも一つの太陽電池セルは、ガラス基板上に形成されたシリコン又はシリコンカーバイドのアモルファス薄膜からなることを特徴とする請求項1記載の多接合型太陽電池。
- 前記太陽電池セルのうちの少なくとも一つの太陽電池セルは、シリコン又はゲルマニウムの単結晶基板上に形成されたシリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、シリコン錫又はシリコンゲルマニウム錫の単結晶薄膜からなることを特徴とする請求項1記載の多接合型太陽電池。
- 前記太陽電池セルのうちの少なくとも一つの太陽電池セルはガラス基板上に形成され、隣接する太陽電池セルと透明導電膜を介した陽極接合法により積層されていることを特徴とする請求項5記載の多接合型太陽電池。
- 前記太陽電池セルのうちの少なくとも一つの太陽電池セルは、隣接する太陽電池セルと互いの透明導電膜を接合することにより積層されていることを特徴とする請求項1記載の多接合型太陽電池。
- 前記太陽電池セルのうちの少なくとも一つの太陽電池セルは、砒化ガリウム単結晶基板上に形成された砒化ガリウム、砒化ガリウムアルミニウム又は燐化インジウムガリウムの単結晶薄膜からなることを特徴とする請求項1記載の多接合型太陽電池。
- 前記太陽電池セルのうちの少なくとも一つの太陽電池セルは、サファイア基板上に形成された窒化インジウムガリウムの単結晶薄膜からなることを特徴とする請求項1記載の多接合型太陽電池。
- 前記太陽電池セルのうちの少なくとも一つの太陽電池セルは、ソーダライムガラス基板上に形成されたカルコパイライト薄膜からなることを特徴とする請求項1記載の多接合型太陽電池。
- 前記太陽電池セルのうちの少なくとも一つの太陽電池セルは、透明プラスチック基板上に形成された有機薄膜からなることを特徴とする請求項1記載の多接合型太陽電池。
- 前記透明導電膜は、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛、酸化ガリウム、酸化マグネシウム又は酸化カドミウムから選択される1種又は2種以上を含む金属酸化物からなることを特徴とする請求項1記載の多接合型太陽電池。
- 複数の光吸収スペクトルの異なる受光素子を積層し電気的に接続した多接合型受光素子において、
前記受光素子のうちの少なくとも一つの受光素子は、貫通孔を有する透明基板上に形成され、
前記透明基板の貫通孔内部及び前記透明基板の受光素子の形成されていない側の面は透明導電膜で被覆され、
受光素子は光吸収波長の最も短い受光素子から光が入射するよう吸収波長の順に各受光素子を積層して接合されていることを特徴とする多接合型受光素子。 - 複数の光吸収スペクトルの異なる受光素子を積層し電気的に接続した多接合型発光素子において、
前記発光素子のうちの少なくとも一つの発光素子は、貫通孔を有する透明基板上に形成され、
前記透明基板の貫通孔内部及び前記透明基板の発光素子の形成されていない側の面は透明導電膜で被覆され、
発光素子は光吸収波長の最も短い発光素子から光が入射するよう吸収波長の順に各発光素子を積層して接合されていることを特徴とする多接合型発光素子。
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