JP2010232552A - 熱電変換材料及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高いYb充填率(大きい格子定数)のフィルド・スクッテルダイト化合物を用いた従来の性能を上回る高性能熱電変換材料を提供すること。
【解決手段】スクッテルダイト系化合物CoSb3単位格子の空隙にYbが充填された、フィルド・スクッテルダイト系化合物であって、その結晶の格子定数が9.05Å以上であり、該フィルド・スクッテルダイト系化合物の組織及び構造がCoSb3単相であることを特徴とする、高性能熱電変換材料。該高性能熱電変換材料は、原料を秤量する第一工程、秤量した原料を溶解し溶製材を得る第二工程、溶製材を粉化し焼結原料を得る第三工程、焼結原料を加圧・加熱し焼結体を得る第四工程を含む製造方法により製造される。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱を直接電気に変換する熱電変換材料及びその製造方法に関するものであって、該熱電変換材料を用いて製造される熱電モジュールは、特に自動車や各種製造プラント、発電プラント、ゴミ焼却施設などの排熱等、未利用のエネルギーを効率良く電気に変換するもので、本技術により省エネルギーに寄与するとともに、昨今問題となっている二酸化炭素の排出を抑制する効果を有するものである。
熱電変換材料は、その材料の両端に温度差をつけることにより、熱エネルギーを直接電気エネルギーに変換して(ゼーベック効果)取り出せる性質を持つ材料で、その変換効率の高さの指標として下記式(1)で示される性能指数Zが用いられ、この値が大きいほど熱電特性が優れている。
Z=α2σ/κ∝m*3/2HL) (1)
ここで、α:ゼーベック係数(V/K)、σ:電気伝導度(S/m)、κ:熱伝導率(W/mK)、m*:キャリアの有効質量、μH:ホール移動度、κL:格子熱伝導率である。
性能指数Zに絶対温度Tを乗じたZTを無次元性能指数と呼び、この値で熱電変換材料を評価することが多い。また、性能指数の分子を出力因子と言い、これを性能の目安とすることもある。
ところで、これまで研究されてきた熱電変換材料として、スクッテルダイトMX3系化合物(CoSb3,RhSb3,IrSb3)及びこれに希土類元素を充填したフィルド・スクッテルダイトRM4Sb12系化合物(R:La,Ce,Yb;M:Co,Fe)が挙げられる。このスクッテルダイト系化合物は、300℃から600℃の中温度域で高い性能をもつ熱電変換材料である(非特許文献1参照)。
ここで、スクッテルダイト系化合物は、高い移動度、比較的低い熱伝導率をもち、比較的高い熱電特性を示すが、他の熱電変換材料に比べ、格子熱伝導率が高いため、更なる高性能化により高いZTを得るには、スクッテルダイト系化合物の格子熱伝導率の低減が必要である。
そのひとつの方法として、フィルド・スクッテルダイト系化合物を利用することが考えられる。フィルド・スクッテルダイト系化合物は、結晶中に弱く結合した原子をもち、これがまわりの格子振動と無関係に、激しく熱振動する(ガラガラ振動)ため、フォノンが散乱され、格子熱伝導率が大幅に低下する(ラットリング効果)。つまり、このラットリング効果により、式(1)におけるκLを低減させ、高いZTを有する熱電変換材料が得られる。
また、式(1)において、分子の項の出力因子について考えると、ゼーベック係数はキャリア密度の増加に伴い減少し、電気伝導度はキャリア密度の増加に伴い上昇する、これより、出力因子はキャリア密度の最適値で最大値をとる。また、熱伝導率はキャリアによる熱伝導率と格子熱伝導率を足し合わせたものであるため、キャリア密度の増加により、キャリアによる熱伝導率は上昇する。つまり、高いZTを得るには、キャリア密度を調整し、バランスのとれた熱電特性と熱伝導率を得ることが重要である。
このような観点から、Nolasらは、スクッテルダイト系化合物に希土類元素を充填し、格子熱伝導率の低減効果を報告している(非特許文献2)。また,谷口らは、スクッテルダイト系化合物CoSb3にYbを充填し、格子熱伝導率を低減させ、ZT:0.8を越える高い無次元性能指数が得られたことを報告している(非特許文献3及び特許文献1参照)。また、NolasらはYbxCo4Sb12(X=0.19)の試料でZT:約1.2(600K=327℃において)を報告している(非特許文献4参照)。特許文献2及び3ではYbxCo4Sb12材料に関することが、述べられている。
上述のようにスクッテルダイト系化合物CoSb3にYbを充填し、高性能化を図れるという報告があるものの、格子熱伝導率の低減、キャリア密度の調整を考えると、高いYbの充填率(大きい格子定数)が必要である。
特開2001-135865号公報 特開2007-5544号公報 特開2008-47754号公報
松原覚衛:金属,vol.74,(2004),No.8,11. G.S.Nolas,G.A.Slack,D.T.Morelli,T.M.Tritt and A.C.Ehrlich:J.Appl.Phys.,79(8),15,April,(1996),4002. 谷口英一、長本征泰、田中洋一、小柳剛:熱電シンポジウム'99論文集、(熱電変換研究会、1999)、104. G.S.Nolas,M.Kaeser,R.T.Littleton and T.M.Tritt:Appl.Phys.Lett.,77(12),18,September(2000),1855.
上述のように、非特許文献3及び特許文献1には、スクッテルダイト系化合物CoSb3にYbを充填し、高性能化が図れるという報告があるものの、YbxCo4Sb12組成においてYbの仕込み添加量xは約0.2に達すると、格子定数は9.042Å程度でほぼ飽和しており、無次元性能指数もZT:約0.8で限界値を示している。
また、非特許文献4では、ZT≧1.0の値を報告しているが、その測定温度は600K(=327℃)であり、対象とする温度が低い。また、特許文献2及び3には、YbxCo4Sb12に関する報告があるが、得られたZTが低く(ZT<1.0)、性能が悪い。
従って、高性能の熱電変換材料(ZT≧1.0)を得るには、格子熱伝導率の更なる低減、キャリア密度の調整による出力因子の最適化がある。これには、Ybの高い充填率が必要である。
従って、本発明の目的は、高いYb充填率(大きい格子定数)のフィルド・スクッテルダイト系化合物を用いた従来の性能を上回る高性能熱電変換材料を提供することにある。
本発明者らは、種々検討の結果、揺動炉を用い、溶解した原料に強い撹拌力を加え、より均一で高いYb充填率を有する、高Yb充填フィルド・スクッテルダイト化合物を得ることに成功した。
本発明は、上記目的を、下記の熱電変換材料及びその製造方法を、提供することにより達成したものである。
「スクッテルダイト系化合物のCoSb3単位格子の空隙にYbが充填された、フィルド・スクッテルダイト系化合物からなる熱電変換材料であって、該フィルド・スクッテルダイト系化合物の結晶の格子定数が9.05Å以上であり、該フィルド・スクッテルダイト系化合物の組織及び構造がCoSb3単相であることを特徴とする、高性能熱電変換材料。」
「前記高性能熱電変換材料を製造する方法であって、原料を秤量する第一工程、秤量した原料を溶解し溶製材を得る第二工程、溶製材を粉化し焼結原料を得る第三工程、焼結原料を加圧・加熱し焼結体を得る第四工程を含むことを特徴とする高性能熱電変換材料の製造方法」
「前記第二工程において、揺動炉を用いて溶製材を製造することを特徴とする、前記高性能熱電変換材料の製造方法。」
本発明の高性能熱電変換材料は、スクッテルダイト系化合物のCoSb3単位格子の空隙に、Ybが充填されたフィルド・スクッテルダイト系化合物からなり、高いYb充填率を有し、その組織及び構造がCoSb3単相構造をとる。そのため、従来の性能を上回る熱電変換材料である。
図1は、実施例1及び比較例1で製造したYbxCo4Sb12フィルド・スクッテルダイト化合物の粉末X線回折測定による結果を示す図である。 図2(a)は、実施例1で製造したYbxCo4Sb12フィルド・スクッテルダイト化合物の断面組織を示す光学顕微鏡写真(×200)であり、図2(b)は、比較例1で製造したYbxCo4Sb12フィルド・スクッテルダイト化合物の断面組織を示す光学顕微鏡写真(×200)である。 図3は、実施例1及び比較例1で製造したYbxCo4Sb12フィルド・スクッテルダイト化合物の格子定数(Å)とYbの仕込み添加量xとの関係を示す図である。 図4は、実施例1及び比較例1で製造したYbxCo4Sb12フィルド・スクッテルダイト化合物のゼーベック係数(mV/K)と温度(℃)との関係を示す図である。 図5は、実施例1及び比較例1で製造したYbxCo4Sb12フィルド・スクッテルダイト化合物の電気伝導度(S/cm)と温度(℃)との関係を示す図である。 図6は、実施例1及び比較例1で製造したYbxCo4Sb12フィルド・スクッテルダイト化合物の出力因子(パワーファクター)(W/cmK2)と温度(℃)の関係を示す図である。 図7は、実施例1及び比較例1で製造したYbxCo4Sb12フィルド・スクッテルダイト化合物の熱伝導率(W/mK)と温度(℃)との関係を示す図である。 図8は、実施例1及び比較例1で製造したYbxCo4Sb12フィルド・スクッテルダイト化合物の格子熱伝導率(W/mK)と温度(℃)との関係を示す図である。 図9は、実施例1及び比較例1で製造したYbxCo4Sb12フィルド・スクッテルダイト化合物のキャリアによる熱伝導率(W/mK)と温度(℃)との関係を示す図である。 図10は、実施例1及び比較例1で製造したYbxCo4Sb12フィルド・スクッテルダイト化合物のキャリア密度(l/cm3)と温度(1000/K)との関係を示す図である。 図11は、実施例1及び比較例1で製造したYbxCo4Sb12フィルド・スクッテルダイト化合物の無次元性能指数ZTと温度(℃)との関係を示す図である。 図12は、溶解方法の違い(実施例1:揺動炉、比較例2:ボックス炉)による無次元性能指数ZTの変化を示す図である。 図13は、実施例1及び比較例3で製造したYbxCo4Sb12フィルド・スクッテルダイト化合物の格子定数(Å)とYbの仕込み添加量xとの関係を示す図である。 図14は、実施例1及び比較例3で製造したYbxCo4Sb12フィルド・スクッテルダイト化合物のゼーベック係数(mV/K)と温度(℃)との関係を示す図である。 図15は、実施例1及び比較例3で製造したYbxCo4Sb12フィルド・スクッテルダイト化合物の電気伝導度(S/cm)と温度(℃)との関係を示す図である。 図16は、実施例1及び比較例3で製造したYbxCo4Sb12フィルド・スクッテルダイト化合物の出力因子(パワーファクター)(W/cmK2)と温度(℃)の関係を示す図である。 図17は、実施例1及び比較例3で製造したYbxCo4Sb12フィルド・スクッテルダイト化合物の熱伝導率(W/mK)と温度(℃)との関係を示す図である。 図18は、実施例1及び比較例3で製造したYbxCo4Sb12フィルド・スクッテルダイト化合物の格子熱伝導率(W/mK)と温度(℃)との関係を示す図である。 図19は、実施例1及び比較例3で製造したYbxCo4Sb12フィルド・スクッテルダイト化合物のキャリアによる熱伝導率(W/mK)と温度(℃)との関係を示す図である。 図20は、実施例1及び比較例3で製造したYbxCo4Sb12フィルド・スクッテルダイト化合物のキャリア密度(l/cm3)と温度(1000/K)との関係を示す図である。 図21は、実施例1及び比較例3で製造したYbxCo4Sb12フィルド・スクッテルダイト化合物の無次元性能指数ZTと温度(℃)との関係を示す図である。 図22は、実施例1、比較例4及び比較例5で製造したYbxCo4Sb12フィルド・スクッテルダイト化合物の粉末X線回折測定による同定結果を示す図である。 図23(a)は、比較例4で製造したYbxCo4Sb12フィルド・スクッテルダイト化合物の断面組織を示す光学顕微鏡写真(×200)であり、図23(b)は、比較例5で製造したYbxCo4Sb12フィルド・スクッテルダイト化合物の断面組織を示す光学顕微鏡写真(×200)である。 図24は、実施例1、比較例4及び比較例5で製造したYbxCo4Sb12フィルド・スクッテルダイト化合物の格子定数とYbの仕込み添加量xとの関係を示す図である。 図25は、実施例1、比較例4及び比較例5で製造したYbxCo4Sb12フィルド・スクッテルダイト化合物のゼーベック係数(mV/K)と温度(℃)との関係を示す図である。 図26は、実施例1、比較例4及び比較例5で製造したYbxCo4Sb12フィルド・スクッテルダイト化合物の電気伝導度(S/cm)と温度(℃)との関係を示す図である。 図27は、実施例1、比較例4及び比較例5で製造したYbxCo4Sb12フィルド・スクッテルダイト化合物の出力因子(パワーファクター)(W/cmK2)と温度(℃)との関係を示す図である。
以下、本発明について好ましい実施形態に基づき説明する。
先ず、本発明の高性能熱電変換材料について説明する。
本発明の高性能熱電変換材料は、Ybの添加効果を最大限生かすため、スクッテルダイト系化合物のCoSb3単位格子の空隙に、Ybを充填して格子定数を9.05Å以上、好ましくは9.05〜9.06Åとなるようにした高Yb充填フィルド・スクッテルダイト系化合物である。該フィルド・スクッテルダイト系化合物は、高いYb充填率(大きい格子定数)を有しているため、ラットリング効果が強くなり、格子熱伝導率は大幅に低減され、キャリア密度は増加し、出力因子は最適値をとる。
本発明において、前記フィルド・スクッテルダイト系化合物の格子定数は、粉末X線結晶回折法から得られるデータを基に、ブラッグ条件:2d・sinθ=λ、d:格子定数、λ:X線の波長、θ:入射角(反射角)より求める。
また、前記フィルド・スクッテルダイト系化合物は、異相の析出による、熱電特性の低下を防ぐため、その組織及び構造がCoSb3単相である必要がある。
次に、本発明の熱電変換材料の好ましい製造方法を、前記フィルド・スクッテルダイト系化合物の組織及び構造がCoSb3単相である場合について説明する。
本発明の熱電変換材料の製造方法は、原料を秤量する第一工程、秤量した原料を溶解し溶製材を得る第二工程、溶製材を粉化し焼結原料を得る第三工程、焼結原料を加圧・加熱し焼結体を得る第四工程を含む。
以下、各工程順に説明する。
<第一工程>
本工程では、原材料であるYb、Co及びSb粉末を用意し、これらを所定量秤量する。これら原材料のうち、Ybは、強い酸化性を有しているため密閉容器中で、不活性雰囲気下で秤量するとよい。用いられるYb、Co及びSbの純度は、それぞれ99.9〜99.99%、99.99〜99.999%及び99.99〜99.999%である。またこれらの好ましい混合比は、Yb:Co:Sb=0.5〜0.6:3.8〜4.2:11.8〜12.2(mol)である。
<第二工程>
本行程では、第一工程で秤量したYb、Co及びSb粉末を溶解法により、焼結原料となる溶製材を製造する。この時、試料の溶解には、揺動炉を用いることが好ましい。揺動炉を用いて溶解した原料に強い撹拌力、好ましくは左右に毎分10〜80往復、更に好ましくは毎分20〜50往復、揺動を加えることで、凝固中の温度分布による、原料中の各元素の分布の不均一性からくる、熱電特性のムラの防止、更に、YbのCoSb3単位格子の空隙への侵入を促進できる。また溶解法における好ましい条件は、Ar雰囲気下、溶解圧力が-0.08〜-0.05MPa、溶解温度が好ましく1000〜1200℃、溶解時間が100〜200時間である。
<第三工程>
本行程では、第二工程で製造された溶製材を粉砕及び分級(粉化)して焼結原料を製造する。溶製材の粉砕は、例えばアルミナ乳鉢等を用いる。また粉砕は、得られる焼結原料の粒径が50〜100μmの範囲となるようにする。
<第四工程>
本行程では、第三工程で製造された焼結材料を加熱及び加圧し焼結体を作製する。焼結材料の加熱及び加圧は、例えばホットプレス、放電プラズマ法等を用いて行う。焼結材料の加熱及び加圧の条件は、Ar雰囲気下、焼結圧力が350〜450kgf/cm2、焼結温度が好ましく600〜700℃、焼結時間が3〜10時間である。
後述する実施例1において、より具体的に説明するが、上記方法により製造されるスクッテルダイト系化合物に関し、格子定数、その組織及び構造は、以下のようにして確認された。即ち、図3に、YbxCo4Sb12組成において、Ybの仕込み添加量xが0.3及び0.5とした試料の格子定数を示した。これより、Yb仕込み添加量xが0.5の試料は、格子定数が9.053Åであり、高いYb充填率を持つフィルド・スクッテルダイト化合物であることがわかる。また、上述試料のX線回折測定による、構造の同定結果を図1に示す。これより、Yb仕込み添加量xが0.5の試料は、CoSb3単相構造を有する。上述試料の組織を図2(a)に示す。これより、組織はほぼ均一で、単相組織である。このように、Yb仕込み添加量xが0.5の試料は、格子定数が9.05Å以上で、その組織及び構造はCoSb3単相である。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されない。
実施例 1
先ず、Co粉末(レアメタリック社製、純度99.99%)を13.2190g、Sb粉末(レアメタリック社製、純度99.99%)を81.9294g、Yb粉末(レアメタリック社製、純度99.9%)を4.8543g秤量し、これらをアンプル管に挿入する。ここで、Yb粉末は、強い酸化性を考慮して、グローボックスの中で、不活性ガス(N2)雰囲気下で秤量し、アンプル管に挿入した。
次に、アンプル管に不活性ガス(Ar)を導入し封入した。このアンプル管を揺動炉(新和工業製)にセットし、左右に毎分20往復揺動で撹拌して溶解し、原料となるYb仕込み添加量xが0.5のYb0.5Co4Sb12化合物(フィルド・スクッテルダイト化合物)からなる溶製材を作製した。尚、溶解の条件は、溶解圧力が-0.05MPa、溶解温度が1100℃、溶解時間が100時間である。
次に、この溶製材を、乳鉢(アルミナ製)を用いて、粉砕及び分級して、焼結原料を作製した(粒径50〜100μm)。この焼結原料を黒鉛型に充填し、400kgf/cm2,700℃×600minでホットプレス(富士電波工業製FUJIDEMPACE 50)し、Yb0.5Co4Sb12化合物(フィルド・スクッテルダイト化合物)の焼結体を得た。
得られた焼結体を粉砕し、X線回折装置(リガク製RAD-RX)を用いて、粉末X線回折測定を行った。その結果図1のように、CoSb3単相であった。また、このデータを基に求めた格子定数は9.053Åであった。これより、高いYb充填率を有したYb0.5Co4Sb12化合物が得られたことが確認された。
また、得られた焼結体を研磨し、光学顕微鏡(×200)にて観察した組織は、図2(a)のようであり、緻密で空隙が少なく、ほぼ単相組織であった。
上述の焼結体から3w×1.5t×20L(mm)の試験片を切り出し、ゼーベック係数(mV/K)及び電気伝導度(S/cm)を測定し、出力因子(パワーファクター)(W/cmK2)を算出した。この結果を図4、5及び6に示す。これより、Yb0.5Co4Sb12化合物は、高い性能を示していることが明らかとなった。
上述の焼結体からφ10×1.5t(mm)の試験片を作製し、これを用いて、レーザーフラッシュ法により熱拡散率を求め、また示差熱分析法により比熱を求め、これらのデータから得られた熱伝導率(W/cmK)を図7に示した。これより、Yb0.5Co4Sb12化合物は比較的低い熱伝導率を有している。次に、ヴィーデマン-フランツ則より、キャリアによる熱伝導率(W/cmK)を算出した。この結果を図9に示した。
このキャリアによる熱伝導率を、上述の測定した熱伝導率から差し引くことにより、格子熱伝導率(W/cmK)を算出した。この結果を図8に示した。格子熱伝導率はYb0.5Co4Sb12化合物で、大幅に低下することが明らかになり、これは、高いYbの充填率により、ラットリング効果が強くなったことに起因すると考えられる。キャリアによる熱伝導率はYb0.5Co4Sb12化合物では、大きな値を示した。これより、高いYbの充填率による、キャリア密度の上昇が示唆される。
そこで、上述の焼結体から□10×1.0t(mm)の試験片を作製し、これを用いてキャリア密度(l/cm3)を測定した。その結果を図10に示す。これより、Yb0.5Co4Sb12化合物では、高いYbの充填率により、キャリア密度が上昇していることが明らかとなった。
以上のように、組織及び構造はCoSb3単相で、高いYbの充填率により、ラットリング効果により、格子熱伝導率が低減され、キャリア密度のバランスが良く、高いパワーファクターが得られ、比較的低いキャリアによる熱伝導率が得られるため、出力因子、熱伝導率より求めた無次元性能指数(図11)は、高いものであり、Yb0.5Co4Sb12化合物は熱電性能において、優れたものであることが確認された。
比較例1
Yb仕込み添加量xが0.3のYb0.3Co4Sb12化合物を作製するために、Co粉末を13.4815g、Sb粉末を83.5513g、Yb粉末を2.9710g秤量し、試料を作製する以外は、実施例1とすべて同一の工程により、Yb0.3Co4Sb12化合物焼結体を得た。
得られた焼結体について、実施例1と同様にして粉末X線回折測定を行った。その結果を図1に示す。また、実施例1と同様にして、格子定数、ゼーベック係数(mV/K)、電気伝導度(S/cm)、出力因子(パワーファクター)(W/cmK2)、熱伝導率(W/cmK)、格子熱伝導率(W/cmK)、キャリアによる熱伝導率(W/cmK)及びキャリア密度(l/cm3)を求めた。これらの結果を図3乃至10に示す。
Yb仕込み添加量xが0.3である比較例1で得られた焼結体は、実施例1のYb0.5Co4Sb12化合物試料と比較して、光学顕微鏡にて観察した組織は、図2(b)のようであり、単相組織であった。また格子定数は9.044Åであり、低い値であった(図3)。出力因子も低く(図6)、格子熱伝導率は高い値を示した(図8)。また、キャリア密度も低い値であった(図10)。この結果、無次元性能指数(図11)は低く、性能は低いものであった
比較例2
試料溶解の際、ボックス炉(定置型電気炉:モトヤマ製MS−7686)を使用する以外は、実施例1とすべて同一の工程により、Yb0.5Co4Sb12化合物焼結体を得た。
得られた焼結体について、実施例1と同様にして格子定数、ゼーベック係数(mV/K)、電気伝導度(S/cm)、出力因子(パワーファクター)(W/cmK2)、熱伝導率(W/cmK)、格子熱伝導率(W/cmK)、キャリアによる熱伝導率(W/cmK)及びキャリア密度(l/cm3)を求めた。
ボックス炉(定置型電気炉)を用いて得られた比較例2の焼結体は、実施例1のYb0.5Co4Sb12化合物試料と比較して、格子定数は9.047Åであり、低い値であった(表1)。このため、無次元性能指数(図12)は低く、性能は低いものであった。
比較例3
Yb仕込み添加量xが0.2のYb0.2Co4Sb12化合物を作製するために、Co粉末を13.6155g、Sb粉末を84.3858g、Yb粉末を1.9988g秤量し、試料を作製する以外は、実施例1とすべて同一の工程により、Yb0.2Co4Sb12化合物焼結体を得た。
得られた焼結体について、実施例1と同様にして格子定数、ゼーベック係数(mV/K)及び電気伝導度(S/cm)、出力因子(パワーファクター)(W/cmK2)、熱伝導率(W/cmK)、格子熱伝導率(W/cmK)、キャリアによる熱伝導率(W/cmK)及びキャリア密度(l/cm3)を求めた。これらの結果を図13乃至20に示す。
Yb仕込み添加量xが0.2である比較例3の焼結体は、実施例1のYb0.5Co4Sb12化合物試料と比較して、格子定数は9.042Åであり、低い値であった(図13)。出力因子も低く(図16)、格子熱伝導率は高い値を示した(図18)。また、キャリア密度も低い値であった(図20)。この結果、無次元性能指数(図21)は低く、性能は低いものであった
比較例4
Yb仕込み添加量xが0.7であるYb0.7Co4Sb12化合物を作製するために、Co粉末を12.9674g、Sb粉末を80.3698g、Yb粉末を6.6643g秤量し、試料を作製する以外は、実施例1とすべて同一の工程により、Yb0.7Co4Sb12化合物焼結体を得た。
比較例5
Yb仕込み添加量xが1.0であるYb1.0Co4Sb12化合物を作製するために、Co粉末を12.6080g、Sb粉末を78.1381g、Yb粉末を9.2577g秤量し、試料を作製する以外は、実施例1とすべて同一の工程により、Yb1.0Co4Sb12化合物焼結体を得た。
比較例4及び5で得られた焼結体について、実施例1と同様にして粉末X線回折測定を行った。その結果を図22に示す。また、実施例1と同様にして、格子定数、ゼーベック係数(mV/K)、電気伝導度(S/cm)及び出力因子(パワーファクター)(W/cmK2)を求めた。これらの結果を図24乃至27に示す。
Yb仕込み添加量xが0.7の試料(比較例4)及びYb仕込み添加量xが1.0の試料(比較例5)は、実施例1のYb0.5Co4Sb12化合物試料と比較して、共に高い格子定数であった(図24)。しかし、Yb仕込み添加量xが0.7及び1.0の試料には共に異相が析出しており(図23)、X線回折より、析出物はSb2Co,YbSb2であると考えられる。このため、出力因子も低く(図27)、Yb仕込み添加量xが0.7及び1.0の試料は、共に性能は低いものであった

Claims (3)

  1. スクッテルダイト系化合物のCoSb3単位格子の空隙に、Ybが充填されたフィルド・スクッテルダイト系化合物からなる熱電変換材料であって、該フィルド・スクッテルダイト系化合物の結晶の格子定数が9.05Å以上であり、該フィルド・スクッテルダイト系化合物の組織及び構造がCoSb3単相であることを特徴とする、高性能熱電変換材料。
  2. 請求項1記載の高性能熱電変換材料を製造する方法であって、
    原料を秤量する第一工程、秤量した原料を溶解し溶製材を得る第二工程、溶製材を粉化し焼結原料を得る第三工程、焼結原料を加圧・加熱し焼結体を得る第四工程を含むことを特徴とする高性能熱電変換材料の製造方法。
  3. 前記第二工程において、揺動炉を用いて溶製材を製造することを特徴とする、請求項2記載の高性能熱電変換材料の製造方法。
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