JP2010232160A - 照明器具の前面カバー及び照明器具 - Google Patents

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Abstract

【課題】高透過率を長期に亘って維持することができると共に、耐熱性、耐光性、耐摩耗性、耐薬品性等の特性に優れる照明器具の前面カバーを提供する。
【解決手段】基材の表面に表面層を設けて形成される照明器具の前面カバーに関する。表面層は、ジメチルシロキサン基とパーフルオロアルキル基の少なくとも一方を有するアクリル樹脂を含む樹脂組成物からなる。そして表面層は、全表面自由エネルギーが30mJ/m以下でかつ、極性力成分と分散力成分の2成分に分割した際の分散力成分の表面自由エネルギーが25mJ/m以下であり、屈折率が基材よりも小さいことを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、照明器具のグローブなど前面カバーに関するものであり、またこの前面カバーを備えた照明器具に関するものである。
照明器具として、ランプなどの光源を保護したり、光源の光を散乱させたりするために、グローブなどの前面カバーで光源を覆うようにしたものがある。このような照明器具の前面カバーは、屋内外の汚れた空気により表面が汚染され易く、表面に汚れが付着すると光源からの光の透過効率が低下する。このため、照明器具の前面カバーに汚れが付着することを防止するため、従来から種々の防汚技術が適用されている。
例えば、前面カバーの表面に光触媒膜を配置することによって自己洗浄性を付与し、きれいな状態を保つ手法が検討されている。このように光触媒膜を表面に配置して自己洗浄機能を発現させることによって、雨水等の水が掛かる場所であれば汚れを水で洗い流して除去することができるものである。しかしこの場合、除去能力を超えて汚れが付着すると、汚れを除去することができないだけでなく、光触媒の親水性に起因する高表面自由エネルギーが汚れの固着力を高め、固着した汚れを除去するのがむしろ困難になる。また屋外の照明を除いては、照明器具のカバーに直接水がかかることが少ないが、その場合には自己洗浄機能は発現せず、汚れを除去することができない。
一方、照明器具は手が届かないような場所に設置されていることが多く、特に近年の長寿命光源を用いた照明器具ではメンテナンスが定期的に行なわれなくなっている。そのため、長期に亘って高照度を維持するために、前面カバーが高透過率を維持することが必要である。そこで、前面カバーの表面エネルギーを制御することによって汚れの付着性を制御し、汚れが付着し難くするのに加えて、汚れは点状に均一に付着するようにし、広い面積が汚れで覆われないようにすることで、前面カバーの高透過率を長期に亘って確保して、高照度を維持できるようにすることが検討されている。
例えば、表面自由エネルギーを低く制御する技術としては、重合性シリコーン含有モノマーとラジカル重合性モノマーとを共重合したシリコーンを結合鎖の一部とする高分子を含む組成物から作製される被膜を、基材の表面に表面層として形成することによって、低表面エネルギーを実現して水滴の滑落性を高めるようにしたもの(特許文献1参照)や、ケイ素含有化合物とフッ素含有化合物とをゾルゲル反応により反応させて形成される塗膜を表面層として基材の表面に形成するようにしたもの(特許文献2参照)を、挙げることができる。
しかし、特許文献1では耐熱性があまり高くない材料が用いられているために、光源からの発熱が作用する照明器具には不向きであり、しかもスチレン等の芳香族系化合物が使われているので被膜の屈折率が高く、この被膜を照明器具の前面カバーに表面層として形成すると、界面反射が起こり易くなるために高い透過率が得られなくなるという問題がある。
また特許文献2は、撥水性のシランカップリング剤をゾルゲル反応で結合させて塗膜を形成するようにしたものであるが、この方法であると高い耐摩耗性を得ることができないうえ、100%の無機物であるために耐薬品性が弱いという問題がある。
特開2000−230060号公報 特開2003−147202号公報
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、高透過率を長期に亘って維持することができると共に、耐熱性、耐光性、耐摩耗性、耐薬品性等の特性に優れ、光学特性の経時的劣化防止と表面層による低下抑止とを両立することができる照明器具の前面カバー及び照明器具を提供することを目的とするものである。
本発明は、基材の表面に表面層を設けて形成される照明器具の前面カバーに関するものであり、表面層は、ジメチルシロキサン基とパーフルオロアルキル基の少なくとも一方を有するアクリル樹脂を含む樹脂組成物からなり、全表面自由エネルギーが30mJ/m以下でかつ、極性力成分と分散力成分の2成分に分割した際の分散力成分の表面自由エネルギーが25mJ/m以下であり、屈折率が基材よりも小さいことを特徴とするものである。
ジメチルシロキサン基やパーフルオロアルキル基を結合鎖の一部とするアクリル樹脂で表面層を形成することによって、汚れが付着し難く、しかも耐熱性、耐光性、耐摩耗性、耐薬品性等の特性に優れた表面を形成することができるものであり、また表面層の全表面自由エネルギーが30mJ/m以下でかつ、分散力成分の表面自由エネルギーが25mJ/m以下であることによって、表面層に汚れは点状に均一に付着することになり、広い面積が汚れで覆われないようにすることができ、長期に亘って前面カバーの高透過率を確保して、照明器具の高照度を保つことができるものである。さらに、表面層は基材の屈折率よりも小さいものであって、表面層と基材の2層間の界面反射を低減して、前面カバーの高透過率を確保することができるものである。
また本発明は、表面層を形成する樹脂組成物が、上記アクリル樹脂100質量部に対して、3官能と4官能の少なくとも一方のアルコキシシランを20〜200質量部含有することを特徴とするものである。
このように3官能や4官能のアルコキシシランを含有することによって、表面層の耐熱性を向上することができるものである。
また本発明において、上記アクリル樹脂は架橋性部位として水酸基を有しており、この水酸基を有するアクリル樹脂の架橋剤として、アミノ樹脂とイソシアネート樹脂の少なくとも1つを有する架橋剤成分が、表面層を形成する樹脂組成物中に含有されていることを特徴とするものである。
アクリル樹脂の水酸基にアミノ樹脂やイソシアネート樹脂を架橋反応させることによって、アクリル樹脂を架橋させて硬化させることができ、表面層の耐薬品性や耐摩耗性を向上することができるものである。
また本発明において、上記アクリル樹脂は、架橋性部位として水酸基とアルコキシ基の両方を有しており、このアクリル樹脂100質量部に対して3官能のアルコキシシランを10〜100質量部、4官能のアルコキシシランを10〜100質量部の量で、表面層を形成する樹脂組成物中に含有されていることを特徴とするものである。
アクリル樹脂を3官能のアルコキシシランと4官能のアルコキシシランを併用して架橋して硬化させることによって、表面層の耐熱性や耐光性などを向上することができるものである。
そして本発明に係る照明器具は、上記の前面カバーを備えて形成されたものである。
本発明によれば、ジメチルシロキサン基やパーフルオロアルキル基を有するアクリル樹脂を含む樹脂組成物で表面層を形成することによって、汚れが付着し難く、しかも耐熱性、耐光性、耐摩耗性、耐薬品性等の特性に優れた表面を形成することができるものであり、また表面層の全表面自由エネルギーが30mJ/m以下でかつ、分散力成分の表面自由エネルギーが25mJ/m以下であることによって、表面層に汚れは点状に均一に付着することになり、広い面積が汚れで覆われないようにすることができ、長期に亘って前面カバーの高透過率を確保して、照明器具の高照度を保つことができるものである。さらに、表面層は基材の屈折率よりも小さいものであって、空気と表面層と基材のそれぞれの界面反射を低減して、前面カバーの高透過率を確保することができるものである。そしてこの結果、光学特性の経時的劣化防止と表面層による低下抑止とを両立することができる照明器具の前面カバーを提供することができるものである。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明が適用される照明器具は、透光性のカバーが前面カバーとして設けられているものであればよく、なんら限定されるものではないが、雨が直接かからず自己洗浄効果が期待できないところに設置される照明器具に適用すると、より有効である。具体的には、公共施設や商業施設、工場、マンションや戸建集宅における屋内やエントランス、軒下等に設置されるものを挙げることができ、器具形態としては、ベースライト、シーリングライト、ブラケット、スポットライト、ダウンライト、トンネル灯などを挙げることができる。
また前面カバーとは、ランプなどの光源の保護や飛散防止、汚染防止などのために、光源の前面でかつ光を取り出す方向に配置したカバーや、意匠性を目的として光源の周りに傘状、筒状、半球状に被せたカバーなどを指すが、勿論これらに限定されるものではない。前面カバーの基材を形成する材料についても透光性の材料であればよいものであって、特に限定されるものではなく、光源から発せられる熱や紫外線の程度、あるいは設置される環境等に応じて適宜選択されるものであり、例えば高耐熱・耐光を要求される用途ではホウ珪酸ガラス、水晶等の酸化ケイ素主体のものやサファイヤなどの酸化アルミ主体のものなどの無機系材料が主として用いられる。耐熱性の要求が比較的低い用途であれば、PMMAなどのアクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン等の透明性の有機系材料が用いられる。
本発明に係る照明器具の前面カバーは、これらの材料で作製される基材の表面に表面層を積層することによって形成されるものであり、以下、この表面層を形成する樹脂組成物について説明する。
樹脂組成物は表面層のマトリックスを形成する主成分としてアクリル樹脂を含有するものであり、このアクリル樹脂として本発明では、ジメチルシロキサン基やパーフルオロアルキル基を分子骨格中に側鎖として有する分子構造のものを用いるものである。ジメチルシロキサン基とパーフルオロアルキル基はいずれか一方を有するものであってもよく、両方を有するものであってもよい。
ジメチルシロキサン基としては次の構造式で表されるものを用いることができる。
Figure 2010232160
またパーフルオロアルキル基は、炭素数が3〜9のものが好ましく、より好ましくは5〜9であり、さらに好ましくは6〜8である。このようなパーフルオロアルキル基としては、例えば、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロヘプチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロノニル基などが挙げられる。
アクリル樹脂の分子骨格にこのようなジメチルシロキサン基やパーフルオロアルキル基が存在することによって、アクリル樹脂をマトリックス成分として形成される表面層への汚れの付着性を制御して、汚れが付着し難くすることができるのに加えて、また表面自由エネルギーを制御して、汚れが付着する際には、汚れが点状に均一に付着するようにすることができ、広い面積が汚れで覆われないようにすることで、前面カバーの高透過率を確保して、照明器具の高照度を保つことが可能になるものである。
ここで、ジメチルシロキサン基とパーフルオロアルキル基は、両者の合計量が、アクリル樹脂(側鎖も含む)中に10〜90質量%の範囲で含有されているのが好ましい。アクリル樹脂中のジメチルシロキサン基やパーフルオロアルキル基の含有量が多すぎると、基材に対する表面層の密着性が低下する傾向がある。逆に含有量が少なすぎると、表面層の表面エネルギーを低下させる効果を有効に得ることができない。このジメチルシロキサン基やパーフルオロアルキル基はアクリル樹脂の分子骨格と直接結合しているため、容易に脱落しないものであり、長期的にも安定して低表面自由エネルギーを維持する表面層を得ることができるものである。
上記のようにジメチルシロキサン基やパーフルオロアルキル基を有するアクリル樹脂で表面層を形成するにあたって、ジメチルシロキサン基やパーフルオロアルキル基によって表面自由エネルギーを制御することができる。ここで、表面自由エネルギーは分散力成分と極性力成分の2成分に分割することができるが、本発明では、分散力成分の表面自由エネルギーと極性力成分の表面自由エネルギーの合計量である全表面自由エネルギーが30mJ/m以下となり、且つ、分散力成分の表面自由エネルギーが25mJ/m以下となるように、表面層を形成するものである。
すなわち、表面自由エネルギーの分散力成分γsdおよび極性力成分γspは、水およびヨウ化メチレンの接触角θや、表面張力γLから、Fowkesの式を拡張したOwensの式およびYoungの式を組み合わせた次の式で算出することができる。
(1+cosθ)・γL/2=(γsd・γLd)1/2+(γsp・γLp)1/2
照明器具に付着する汚れは、水分だけではなく油分も含んだホコリやゴミ、カーボンカスなどもあり、物質の付着性、ハジキ性と相関が高い全表面自由エネルギーだけではなく、油分等のハジキ性の指標となる表面自由エネルギーの分散力成分も制御することによって、あらゆる汚れの付着性、ハジキ性を制御することができるものである。そして上記のように、前面カバーの基材の表面に形成された表面層の、全表面自由エネルギーが30mJ/m以下でかつ、分散力成分の表面自由エネルギーが25mJ/m以下であることによって、表面層の濡れ性を低く保って汚れが付着し難くすることができるものであり、さらに表面層に汚れが付着する際には、汚れが点状に均一に付着して、表面層の広い面積が汚れで覆われないようにすることができるものであり、上記のように前面カバーの高透過率を確保して、照明器具の高照度を保つことが可能になるものである。全表面自由エネルギーが30mJ/mを超えると、また分散力成分の表面自由エネルギーが25mJ/mを超えると、このような効果を十分に得ることができない。このような、表面層における全表面自由エネルギーや分散力成分の表面自由エネルギーの制御は、アクリル樹脂中のジメチルシロキサン基やパーフルオロアルキル基の含有量などを調整することによって、行なうことができるものである。
尚、全表面自由エネルギーや分散力成分の表面自由エネルギーは、小さいほど望ましいので下限は特に設定されないが、全表面自由エネルギーの下限は−CF基が六方最密充填したときの値の6.7mJ/mであり、分散力成分の表面自由エネルギーの下限も6.7mJ/mである。理想的なモデルとしては理論上6.7mJ/mまで表面自由エネルギーは下がることは証明されているが、実用に耐えうるレベルの塗膜としては7.8mJ/m程度が一般的には限界レベルとされている。
本発明において、耐熱性向上のための成分として、表面層を形成する樹脂組成物に、3官能や4官能のアルコキシシランを含有するのが好ましい。3官能アルコキシシランと4官能のアルコキシシランは、いずれか一方を含有するようにしても、両方を含有するようにしても、いずれでもよい。3官能や4官能のアルコキシシランそのままでもよいし、その部分加水分解縮合物でもよく、3官能や4官能のアルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物に理論水量以上の水を加えて得られる加水分解縮合物であってもよいものであり、これらの群から選択される1種以上の化合物を使用することができる。
ここで、3官能のアルコキシシランとは、一般式がR−Si(OR[但しR,Rはアルキル基を表す]で表されるものであり、トリアルコキシシランと呼ばれるケイ素化合物である。このようなケイ素化合物としては、具体的には、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン化合物が挙げられる。
また、4官能のアルコキシシランとは、オルソケイ酸Si(OH)の有機エステルであって、一般式がSi(OR)[但しRはアルキル基を表す]で表されるものであり、テトラアルキルシリケートとも呼ばれ、また単にアルキルシリケートと呼ばれることもある。この一般式におけるアルキル基としては、例えば、直鎖状、分岐状または環状のアルキル基、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基などが挙げられる。これらのアルキル基の有する水素原子の一部をフッ素原子で置換したフッ素化アルキル基であってもよく、また各アルキル基は同一であっても異なっていてもよい。本発明において4官能のアルコキシシランとしては、これらのなかでも、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラsec−ブトキシシラン又はテトラt−ブトキシシランが好適に使用される。
3官能及び4官能のいずれにおいても、特に炭素数1〜4のアルキル基が好適である。表面層における低表面自由エネルギーの発現や、架橋性、耐薬品性等の面からは、メチル基とエチル基の少なくとも一方が好ましく、全てのアルキル基がメチル基であることが更に好ましい。炭素数が4を超えるアルキル基の場合は、本発明の樹脂組成物を均一なコーティング液とするために必要な有機溶剤の量が多くなる場合があり、加えて加水分解性が乏しく、得られる表面層の塗膜のSiOH基(シラノール基)の生成が著しく緩慢となり、架橋性が悪くなる傾向がある。
また4官能アルコキシシランの部分加水分解縮合物としては、例えば、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物であるポリメトキシポリシロキサンとして、三菱化学(株)製の「MKCシリケートMS51」や「MKCシリケートMS56」等を挙げることができる。
また、3官能や4官能アルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物に理論水量以上の水を加えて得られる加水分解縮合物は、上記の各成分の加水分解液として入手することが出来る。ここで、理論水量とは、アルコキシ基に対して0.5倍モルの水量であり、理論水量以上の水の量としては、アルコキシ基に対して0.5〜1倍モルの水量が好ましい。
本発明において、樹脂組成物中の3官能や4官能のアルコキシシランの含有量は、上記のアクリル樹脂100質量部に対して、3官能や4官能のアルコキシシランの合計量として20〜200質量部の範囲が望ましい。3官能や4官能のアルコキシシランの含有量が20質量部未満であると、表面層に十分な耐熱性が発現しない。逆に200質量部を超えると、表面層の耐薬品性が低下する傾向がある。
表面層を形成する樹脂組成物中のアクリル樹脂は、分子構造中に上記のようにジメチルシロキサン基とパーフルオロアルキル基のうち少なくとも一方を有するが、アクリル樹脂の分子構造中には、さらに架橋性部位として水酸基を有していてもよい。この場合、水酸基と反応する硬化剤として、樹脂組成物中にアミノ樹脂とイソシアネート樹脂のうち少なくとも一方を含有させることによって、アクリル樹脂を架橋させて硬化させることができ、表面層の低表面自由エネルギーを長期に亘って維持することが可能になるものである。また表面層は架橋密度が高まって緻密な層になるので、耐薬品性や耐摩耗性を向上することができるものである。アミノ樹脂とイソシアネート樹脂はいずれか一方を用いる他、両方を併用することもできる。
アクリル樹脂中の水酸基の含有量は特に限定されるものではないが、10〜200mgKOH/gの範囲が好ましく、更に好ましくは50〜150mgKOH/gの範囲である。水酸基価が低すぎると、得られる塗膜の架橋密度が低下して、硬度が低い表面層になる傾向がある。逆に水酸基価が高すぎると、硬い塗膜の表面層が得られるが、アクリル樹脂と溶剤との相溶性が低下し、樹脂安定性が劣る傾向がある。
またイソシアネート樹脂としては、例えば、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4(または2,6)−ジイソシアネート、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−(イソシアナトメチル)シクロヘキサンなどの環状脂肪族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネ−ト、ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類;リジントリイソシアネ−トなどの3価以上のポリイソシアネートなどのような有機ポリイソシアネートそれ自体、またはこれらの各有機ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等との付加物、あるいは上記したような各有機ジイソシアネート同士の環化重合体(例えばイソシアヌレート)、ビウレット型付加物などが挙げられる。これらのなかでもヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートが好適である。これらは、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
樹脂組成物中のイソシアネート樹脂の含有量は、イソシアネート樹脂中に含まれるイソシアネート基(NCO)が、アクリル樹脂中の水酸基(OH)に対して、NCO/OHの当量比で、0.2〜2.0の範囲となるように、より好ましくは0.5〜1.5の範囲となるように、設定するのが好ましい。
またアミノ樹脂としては、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、グリコールウリル樹脂、尿素樹脂などを用いることができ、このうちメラミン樹脂やベンゾグアナミン樹脂が好ましい。
このメラミン樹脂及びベンゾグアナミン樹脂としては、アルキルエーテル化したものが好ましい。他の型のもの、即ちイミノ型やメチロール型のものは、上記のように3官能や4官能のアルコキシシランを樹脂組成物中に含有させた場合、アルコキシシラン化合物の部分加水分解縮合物をシランカップリング剤で処理したとしても、このイミノ型メラミン樹脂や、メチロール型メラミン樹脂と反応し易く、塗料貯蔵安定性が低下するので好ましくない。アルキルエーテル化メラミン樹脂のうち、メトキシ基とブトキシ基の少なくとも一方で置換されたメラミン樹脂が特に好ましい。このものは塗料貯蔵安定性の点に加えて、メラミン樹脂が疎水性となるため、表面層の塗膜を形成した際に、メラミン樹脂が塗膜上層部に偏在して、表層の架橋密度が高くなることで、内部への汚染物質の浸透を抑制することができ、耐汚染性が良好になるものである。メトキシ基やブトキシ基で置換されたメラミン樹脂とは、i−ブチル基またはn−ブチル基単独で、あるいはブチル基とメチル基とでエーテル化したメラミン樹脂である。
樹脂組成物中のアミノ樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、アクリル樹脂の固形分に対して、10〜50質量%の範囲に設定するのが好ましく、更に好ましくは15〜40質量%の範囲である。アミノ樹脂の量が多いと硬く脆い膜になる傾向があり、アミノ樹脂の量が少ないと架橋度が不足して十分な硬度が得られなかったり、耐薬品性が低くなったりする傾向がある。
また、表面層を形成する樹脂組成物中のアクリル樹脂は、分子構造中に上記のようにジメチルシロキサン基とパーフルオロアルキル基のうち少なくとも一方を有するが、アクリル樹脂の分子構造中には、さらに架橋性部位として水酸基とアルコキシ基の両方を有していてもよい。この場合、水酸基やアルコキシ基と反応する硬化剤として、樹脂組成物中に3官能のアルコキシシランと4官能のアルコキシシランを含有させることによって、アクリル樹脂を架橋させて硬化させることができ、耐熱性や耐光性において特に優れた表面層を形成することができるものである。
上記の実施の形態では、3官能や4官能のアルコキシシランを耐熱性向上のフィラーとして含有させたが、本実施の形態では、アクリル樹脂を3官能のアルコキシシランと4官能のアルコキシシランを併用して硬化させることによって、耐熱性や耐光性に優れた塗膜からなる表面層を形成するようにしたものである。ここで、3官能のアルコキシシランのみで硬化させる場合には十分な架橋性が得られないものであり、一方、4官能のアルコキシシランのみで硬化させる場合には、架橋が過度になって剛直な塗膜となり、柔軟性が低くなって塗膜にクラックが発生し易くなる。このため、3官能のアルコキシシランと4官能のアルコキシシランを併用するものである。
アクリル樹脂中に含有されるアルコキシ基としては、次の構造式で表されるものを用いることができる。
−Si(OR)
−Si(R)(OR)
−Si(R)(OR)
上記の構造式において、Rは炭化水素基を表すものであり、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基、3−フェニルプロピル基等のアラルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;クロロメチル基、γ−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換炭化水素基;γ−メタクリロキシプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基、γ−メルカプトプロピル基等の置換炭化水素基等を例示することができる。
また、アクリル樹脂中のアルコキシ基の含有量は特に限定されるものではないが、アクリル樹脂中に1〜30質量%の範囲で含有されているのが好ましい。アクリル樹脂中のアルコキシシリル基の含有量が少なすぎると、架橋密度が小さくなって塗膜硬度が低くなる傾向があり、含有量が多すぎると、硬い塗膜の表面層を得ることができるが、クラックが入り易くなる傾向がある。
そして樹脂組成物中のアルコキシシランの含有量は、アクリル樹脂100質量部に対して3官能のアルコキシシランを10〜100質量部の範囲、4官能のアルコキシシランを10〜100質量部の範囲が好ましく、3官能及び4官能のアルコキシシランの含有量をこの範囲に設定することによって、低表面自由エネルギーの維持性、耐摩耗性、耐熱性、耐光性、耐薬品性、密着性等に優れた塗膜で表面層を形成することができるものである。
上記のように調製される樹脂組成物を基材の表面に塗布して乾燥・硬化させることによって表面層を形成することができるものであり、基材の最外面にこのような表面層を有する照明器具の前面カバーを作製することができるものである。
樹脂組成物の塗布方法は、特に限定されるものではないが、スプレーコ−ティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法、刷毛塗り、スポンジ塗り等の方法を好適に用いることができる。また、塗布することだけに限定されるものではなく、樹脂組成物をシート状に成形したものを基材に積層したり、金型の内面に樹脂組成物を吹き付けておき、この金型で基材を成形することによって積層したりすることもできるものであり、あるいは樹脂組成物を不織布等に含浸してプレス等で成型する方法も可能である。また樹脂組成物の硬化方法は、特に限定されるものではないが、表面層に要求される硬化被膜性能や、基材の耐熱温度、生産性等に応じて常温(室温放置)での硬化や、焼付けによる硬化など、任意に選択することができる。さらに、表面層の膜厚についても、特に制限はないが、通常は0.1〜50μm程度であればよい。
上記のように基材の表面に表面層を被覆して照明器具の前面カバーを形成するにあたって、表面層の屈折率が基材の屈折率よりも小さくなるように、基材に対する表面層の屈折率を調整するものである。屈折率は、直進する光線が異なる媒質の境界で進行方向の角度を変える割合のことを示すものであり、前面カバーの基材を構成する材料よりも、屈折率が低い表面層を最表層に配置することによって、光の取り出し効率(光束)を高めることができるものである。すなわち、基材が空気に直接接すると、基材と空気の界面の屈折率差が大きいが、基材より屈折率が低い表面層を最表層に配置することによって、空気層と表面層の界面の屈折率差、表面層と基材の界面の屈折率差が小さくなるため、界面反射が抑えられて透過率が高くなり、光の取り出し効率が上がるものである。尚、本発明の樹脂組成物は基材に対して片面にだけ配置しても効果は得られるが、基材の両面に配置するとより高い取り出し効率が得られる。屈折率の測定方法は特に限定しないが、分光エリプソメトリーなどが高精度で測定できる手法として知られている。
ここで、照明器具の表面カバーの基材を形成する主な材料の屈折率は次の通りである。
・ホウ珪酸ガラス:1.51
・水晶:1.54
・サファイヤ:1.77
・アクリル樹脂:1.49
・ポリカーボネート:1.58
・ポリスチレン:1.59
このように、表面カバーの基材の屈折率は最も低いもので1.49である。従って本発明において、表面層の屈折率は1.49よりも小さいことが好ましい。
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
(実施例1−1)
基材として、ホウ珪クラウンガラスガラス(住田光学ガラス社製「BK7」:屈折率1.51、厚さ2mm)を用いた。
そして、パーフルオロアルキル基(パーフルオロヘキシル基)を側鎖に有するアクリル樹脂(フロロテクノロジー社製「フロロサーフFG−5040」)を、基材の表面に、乾燥後の塗装膜厚が0.2μmになるようにスプレー塗装にて塗布し、100℃で20分加熱することによって、基材の表面に表面層を形成した塗装板を得た。
(実施例1−2)
基材として、アクリル板(日本テストパネル社製:屈折率1.49、厚さ2mm)を用いた。その他は、実施例1−1と同様にして塗装板を得た。
(実施例2−1)
テトラメトキシシランのオリゴマー(三菱化学株式会社製「メチルシリケート51」)を3.1質量部とり、これにメチルアルコール95質量部を添加して、撹拌しながら緩やかに0.1Nの硝酸水溶液を滴下し、溶液を60℃に1時間を要して昇温させることによって、4官能のアルコキシシラン加水分解物溶液を調製した。この加水分解物溶液の固形分は1.6質量%であった。
このように調製した4官能のアルコキシシランの加水分解物溶液100質量部と、パーフルオロアルキル基(パーフルオロオクチル基)を側鎖に有するアクリル樹脂(フロロテクノロジー製「フロロサーフFG−4010」:固形分5質量%)100質量部とを混合し、5分間攪拌することによって、樹脂組成物のコーティング液を調製した。
そして実施例1−1と同じガラス基材の表面に、乾燥後の塗装膜厚が0.2μmになるようにこのコーティング液をスプレー塗装にて塗布し、100℃で20分加熱することによって、基材の表面に表面層を形成した塗装板を得た。
(実施例2−2)
実施例1−2と同じアクリル板基材を用いるようにした他は、実施例2−1と同様にして塗装板を得た。
(実施例3−1)
メチルトリメトキシシラン(信越シリコーン株式会社製「KBM−13」)を3.1質量部とり、これにメチルアルコールを95質量部添加して、撹拌しながら緩やかに0.1Nの硝酸水溶液を滴下し、溶液を60℃に1時間を要して昇温させることによって、3官能のアルコキシシラン加水分解物溶液を調製した。この加水分解物溶液の固形分は1.5質量%であった。
このように調製した3官能のアルコキシシランの加水分解物溶液100質量部と、パーフルオロアルキル基を有するアクリル樹脂(上記のフロロテクノロジー製「フロロサーフFG−4010」)100質量部とを混合し、5分間攪拌することによって、樹脂組成物のコーティング液を調製した。
そして実施例1−1と同じガラス基材の表面に、乾燥後の塗装膜厚が0.2μmになるようにこのコーティング液をスプレー塗装にて塗布し、100℃で20分加熱することによって、基材の表面に表面層を形成した塗装板を得た。
(実施例3−2)
実施例1−2と同じアクリル板基材を用いるようにした他は、実施例3−1と同様にして塗装板を得た。
(実施例4−1)
ジメチルシロキサン基と架橋基として水酸基を側鎖に有するアクリル樹脂(富士化成工業株式会社製「ZX−022」:固形分46質量%、水酸基価120)を100質量部、イソシアネート樹脂(旭化成ケミカルズ株式会社製「TPA100」:固形分100質量%)を20質量部、酢酸エチルを100質量部、酢酸ブチルを100質量部、およびイソホロンを30質量部混合し、5分間攪拌することによって、樹脂組成物のコーティング液を調製した。
そして実施例1−1と同じガラス基材の表面に、乾燥後の塗装膜厚が1μmになるようにこのコーティング液をスプレー塗装にて塗布し、100℃で30分加熱することによって、基材の表面に表面層を形成した塗装板を得た。
(実施例4−2)
実施例1−2と同じアクリル板基材を用いるようにした他は、実施例4−1と同様にして塗装板を得た。
(実施例5−1)
ジメチルシロキサン基と架橋基として水酸基を側鎖に有するアクリル樹脂(上記の富士化成工業株式会社製「ZX−022」)を100質量部、メラミン樹脂(三井化学株式会社製「ユーバン122」:固形分60質量%)を20質量部、メラミン樹脂の触媒としてドデシルスルホン酸(三井化学株式会社製「キャタリスト6000」)を3質量部添加し、さらに酢酸エチル70質量部、酢酸ブチル70質量部、n−ブタノール70質量部、およびダイアセトンアルコール30質量部を混合し、5分間攪拌することによって、樹脂組成物のコーティング液を調製した。
そして実施例1−1と同じガラス基材の表面に、乾燥後の塗装膜厚が1μmになるようにこのコーティング液をスプレー塗装にて塗布し、110℃で20分加熱することによって、基材の表面に表面層を形成した塗装板を得た。
(実施例5−2)
実施例1−2と同じアクリル板基材を用いるようにした他は、実施例5−1と同様にして塗装板を得た。
(実施例6−1)
パーフルオロアルキル基(パーフルオロオクチル基)と架橋基として水酸基を側鎖に有するアクリル樹脂(関東電化工業株式会社製「KD−220」:固形分30質量%、水酸基価60)100質量部と、イソシアネート樹脂(上記の旭化成ケミカルズ株式会社製「TPA100」)7質量部と、酢酸エチル100質量部と、酢酸ブチル100質量部と、およびイソホロン30質量部とを混合し、5分間攪拌することによって、樹脂組成物のコーティング液を調製した。
そして実施例1−1と同じガラス基材の表面に、乾燥後の塗装膜厚が1μmになるようにこのコーティング液をスプレー塗装にて塗布し、100℃で30分加熱することによって、基材の表面に表面層を形成した塗装板を得た。
(実施例6−2)
実施例1−2と同じアクリル板基材を用いるようにした他は、実施例6−1と同様にして塗装板を得た。
(実施例7−1)
パーフルオロアルキル基と架橋基として水酸基を側鎖に有するアクリル樹脂(上記の関東電化工業株式会社製「KD−220」)100質量部と、メラミン樹脂(上記の三井化学株式会社製「ユーバン122」)15質量部と、メラミン樹脂の触媒としてドデシルスルホン酸(三井化学株式会社製「キャタリスト6000」)3質量部を添加し、さらに酢酸エチル40質量部と、酢酸ブチル40質量部と、n−ブタノール40質量部と、およびダイアセトンアルコール20質量部を混合し、5分間攪拌することによって、樹脂組成物のコーティング液を調製した。
そして実施例1−1と同じガラス基材の表面に、乾燥後の塗装膜厚が1μmになるようにこのコーティング液をスプレー塗装にて塗布し、110℃で20分加熱することによって、基材の表面に表面層を形成した塗装板を得た。
(実施例7−2)
実施例1−2と同じアクリル板基材を用いるようにした他は、実施例7−1と同様にして塗装板を得た。
(実施例8−1)
ジメチルシロキサン基と架橋基として水酸基を側鎖に有するアクリル樹脂(上記の富士化成工業株式会社製「ZX−022」)100質量部と、メラミン樹脂(上記の三井化学株式会社製「ユーバン122」)20質量部と、実施例2で調製した4官能のアルコキシシラン加水分解物溶液600質量部と、ダイアセトンアルコール30質量部を加えて混合し、5分間攪拌することによって、樹脂組成物のコーティング液を調製した。この樹脂組成物のコーティング液において、アクリル樹脂100質量部に対して4官能アルコキシシランが20質量部含有されている。
そして実施例1−1と同じガラス基材の表面に、乾燥後の塗装膜厚が0.5μmになるようにこのコーティング液をスプレー塗装にて塗布し、110℃で20分加熱することによって、基材の表面に表面層を形成した塗装板を得た。
(実施例8−2)
実施例1−2と同じアクリル板基材を用いるようにした他は、実施例8−1と同様にして塗装板を得た。
(実施例9−1)
4官能のアルコキシシラン加水分解物溶液の配合量を150質量部に変更するようにした他は、実施例8−1と同様にして樹脂組成物のコーティング液を調製した。この樹脂組成物のコーティング液において、アクリル樹脂100質量部に対して4官能アルコキシシランが5質量部含有されている。
そして実施例1−1と同じガラス基材の表面に、乾燥後の塗装膜厚が0.5μmになるようにこのコーティング液をスプレー塗装にて塗布し、110℃で20分加熱することによって、基材の表面に表面層を形成した塗装板を得た。
(実施例9−2)
実施例1−2と同じアクリル板基材を用いるようにした他は、実施例9−1と同様にして塗装板を得た。
(実施例10−1)
ジメチルシロキサン基と水酸基を有するアクリル樹脂の配合量を10質量部、4官能のアルコキシシラン加水分解物溶液の配合量を860質量部に変更するようにした他は、実施例8−1と同様にして樹脂組成物のコーティング液を調製した。この樹脂組成物のコーティング液において、アクリル樹脂100質量部に対して4官能アルコキシシランが300質量部含有されている。
そして実施例1−1と同じガラス基材の表面に、乾燥後の塗装膜厚が0.5μmになるようにこのコーティング液をスプレー塗装にて塗布し、110℃で20分加熱することによって、基材の表面に表面層を形成した塗装板を得た。
(実施例10−2)
実施例1−2と同じアクリル板基材を用いるようにした他は、実施例10−1と同様にして塗装板を得た。
(実施例11−1)
テトラメトキシシランのオリゴマー(三菱化学株式会社製「メチルシリケート51」)を3.1質量部と、メチルトリメトキシシラン(信越シリコーン株式会社製「KBM−13」)を3.1質量部とり、これにメチルアルコールを95質量部添加して、撹拌しながら緩やかに0.1Nの硝酸水溶液を滴下し、溶液を60℃に1時間を要して昇温させることによって、3官能と4官能のアルコキシシラン加水分解物溶液を調製した。この加水分解物溶液の固形分は3.0質量%であった。
このように調製した3官能と4官能のアルコキシシラン加水分解物溶液770質量部と、ジメチルシロキサン基と架橋基として水酸基及びアルコキシ基(トリメトキシ基)を側鎖に有するアクリル樹脂(富士化成工業株式会社製「ZX−022H」:固形分46質量%、水酸基価120)100質量部と、ダイアセトンアルコール30質量部とを加えて混合し、5分間攪拌することによって、樹脂組成物のコーティング液を調製した。この樹脂組成物のコーティング液において、アクリル樹脂100質量部に対して3官能及び4官能アルコキシシランが50質量部含有されている。
そして実施例1−1と同じガラス基材の表面に、乾燥後の塗装膜厚が0.5μmになるようにこのコーティング液をスプレー塗装にて塗布し、110℃で20分加熱することによって、基材の表面に表面層を形成した塗装板を得た。
(実施例11−2)
実施例1−2と同じアクリル板基材を用いるようにした他は、実施例11−1と同様にして塗装板を得た。
(比較例1−1)
実施例1−1と同じガラス基材の表面に、パーフルオロアルキル基を有する化学吸着単分子膜(有限会社かがわ学生ベンチャー社製「WR−LIVE2−III」)を乾燥後の塗装膜厚が0.005μm程度になるようにスプレー塗装にて塗布し、100℃で30分加熱して、塗装板を得た。
(比較例1−2)
実施例1−2と同じアクリル板基材を用いるようにした他は、比較例1−1と同様にして塗装板を得た。
(比較例2−1)
側鎖を持たないアクリル樹脂(三井化学株式会社「アルマテックスL1043」:固形分40質量%)100質量部とキシレン200質量部を混合し、5分間攪拌することによって、コーティング液を調製した。
そして実施例1−1と同じガラス基材の表面に、乾燥後の塗装膜厚が1μmになるようにこのコーティング液をスプレー塗装にて塗布し、110℃で20分加熱することによって、基材の表面に表面層を形成した塗装板を得た。
(比較例2−2)
実施例1−2と同じアクリル板基材を用いるようにした他は、比較例2−1と同様にして塗装板を得た。
(比較例3−1)
架橋基として水酸基を有するアクリル樹脂(DIC株式会社製「52−668BA」:固形分45質量%、水酸基価24)100質量部と、イソシアネート樹脂(上記の旭化成ケミカルズ株式会社製「TPA100」)4質量部と、酢酸エチル100質量部と、酢酸ブチル100質量部と、およびイソホロン30質量部とを混合し、5分間攪拌することによって、コーティング液を調製した。
そして実施例1−1と同じガラス基材の表面に、乾燥後の塗装膜厚が1μmになるようにこのコーティング液をスプレー塗装にて塗布し、100℃で30分加熱することによって、基材の表面に表面層を形成した塗装板を得た。
(比較例3−2)
実施例1−2と同じアクリル板基材を用いるようにした他は、比較例3−1と同様にして塗装板を得た。
(比較例4−1)
架橋基として水酸基を有し、側鎖を持たないフッ素アクリル樹脂(旭硝子株式会社「ルミフロンLF100」:固形分50質量%、水酸基価26)100質量部と、イソシアネート樹脂(上記の旭化成ケミカルズ株式会社製「TPA100」)5質量部と、キシレン50質量部と、メソイソブチルケトン150質量部を混合し、5分間攪拌することによって、コーティング液を調製した。
そして実施例1−1と同じガラス基材の表面に、乾燥後の塗装膜厚が1μmになるようにこのコーティング液をスプレー塗装にて塗布し、100℃で30分加熱することによって、基材の表面に表面層を形成した塗装板を得た。
(比較例4−2)
実施例1−2と同じアクリル板基材を用いるようにした他は、比較例4−1と同様にして塗装板を得た。
(比較例5−1)
架橋基としてグリシジル基を有するエポキシ樹脂(大阪ガスケミカル株式会社製「オグソールEG」:エポキシ当量294g/ep)100質量部と、エポキシ硬化剤(新日本理化株式会社製「リカシッド MH−700」)180質量部と、トルエン100質量部と、キシレン100質量部とを混合し、5分間攪拌することによって、コーティング液を調製した。
そして実施例1−1と同じガラス基材の表面に、乾燥後の塗装膜厚が1μmになるようにこのコーティング液をスプレー塗装にて塗布し、100℃で60分加熱した後に、さらに120℃で30分加熱することによって、基材の表面に表面層を形成した塗装板を得た。
(比較例5−2)
実施例1−2と同じアクリル板基材を用いるようにした他は、比較例5−1と同様にして塗装板を得た。
(比較例6−1)
実施例1−1と同じガラス基材の表面に、光触媒コーティング(パナソニック電工株式会社製「フレッセラP」)を乾燥後の塗装膜厚が0.1μmとなるように塗装し、100℃で10分間硬化させることにより、塗装板を得た。
(比較例6−2)
実施例1−2と同じアクリル板基材の表面に、まず接着層のプライマ(パナソニック電工株式会社製「ASプライマ」)を乾燥後の塗装膜厚が0.5μmとなるように塗装し、100℃で10分間硬化させ、次にガード層となる無機樹脂(パナソニック電工株式会社製「フレッセラN」)を乾燥後の塗装膜厚が1μmとなるように塗装し、100℃で10分間硬化させた。さらにこの上に、光触媒コーティング(パナソニック電工株式会社製「フレッセラP」)を乾燥後の塗装膜厚が0.1μmとなるように塗装し、100℃で10分間硬化させることにより、塗装板を得た。
(比較例7)
何も塗装していない実施例1−1と同じホウ珪クラウンガラスガラス(住田光学ガラス社製「BK7」:屈折率1.51、厚さ2mm)を試料板とした。
(比較例8)
何も塗装していない実施例1−2と同じアクリル板(日本テストパネル社製:屈折率1.49、厚さ2mm)を試料板とした。
上記の実施例1−1〜11−1及び実施例1−2〜11−2、比較例1−1〜6−1及び比較例1−2〜6−2で作製した塗装板、比較例7〜8の試料板について、次の項目の評価を行なった。ただし、(2)の屈折率の評価のみ、シリコンウェハー上に形成した樹脂組成物の塗膜について評価を行い、その他については各実施例及び各比較例で作製した塗装板や試料板について評価した。結果を表1及び表2に示す。また表1,2に性能が合格のものを「○」、不合格のものを「×」と表示した。
(1)表面自由エネルギー
接触角計(協和界面科学社製「DM500」)を用いて、水、およびジヨードメタンを、塗装板の表面層あるいは試料板の表面に滴下した際の接触角を求め、下記の式にそれぞれの接触角を代入して表面エネルギーの分散力成分(γsd)、極性力成分(γsp)を算出し、全表面自由エネルギーと分散力成分の表面自由エネルギーを求めた。
(1+cosθ)・γL/2=(γsd・γLd)1/2+(γsp・γLp)1/2
(2)表面層の屈折率
シリコンウェハー上にコーティング液を塗布して約100nmの膜厚で塗膜を形成し、大塚電子株式会社製分光エリプソメータ「FE−5000」を用いて塗膜の屈折率を測定して、これを表面層の屈折率とした。
(3)透過率
株式会社日立ハイテクノロジーズ社製分光光度計「U−4100」で、積分球を用いた全光線透過率を測定した。
(4)カーボンブラック(CB)水懸濁液吹付け後の透過率
カ−ボン水の汚染試料水を、塗装板の表面層や試料板の表面全体に均一にかかるように、霧吹きで吹き付け、90℃に約15分間保つことによって、水分を蒸発させて乾燥した。この後に、上記(3)と同様にして透過率の測定を実施した。なお、汚染試料水は、排ガスを想定してカーボンブラック水懸濁液を使用した。カ−ボンブラック水懸濁液については、カーボンブラック(デグサ社製「FW2」:平均粒子径13μm、比表面積460g/m)3gを純水に分散させて全質量を300gとしたものを用いた。
(5)磨耗100回後の、カーボンブラック(CB)水懸濁液吹付け後の透過率
大同理科製作所株式会社製「ウォッシャビリティ磨耗性試験装置」に取り付けられた洗浄用スポンジを1kg荷重にて往復回数100回で擦る摩耗試験を実施した後、上記の(4)のカーボンブラック水懸濁液吹付け後の透過率測定を実施した。
(6)カーボンブラック(CB)+水+油懸濁液吹付け後の透過率
汚染試料液であるカーボンブラック+水+油を均一に分散した懸濁液を、塗装板の表面層や試料板の表面全体に均一にかかるように、霧吹きで吹き付け、90℃に約15分間保つことによって、水分を蒸発させて乾燥した。この後に、上記(3)と同様にして透過率の測定を実施した。なお、汚染試料液は、(4)と同様、排ガスを想定してカーボンブラックを用い、水に加えて、油も混合して懸濁液を作製した。カ−ボンブラック+水+油懸濁液については、カーボンブラック(デグサ社製「FW2」:平均粒子径13μm、比表面積460g/m)3gと純水250gと水溶性切削油(協同油脂株式開社製「エマルカットB−50」)47gを混合して均一に分散させて全質量を300gとしたものを用いた。
(7)耐光性
株式会社オーク製作所製高圧水銀灯照射装置「UV−300」を用い、波長360nmの紫外線強度が40mW/cmになるよう設定して、24時間照射した。そして光照射前後の色差ΔEabを、コニカミノルタ社製分光測色計「CM−3600d」で測定して、評価の指標とした。色差ΔEabが3以下の場合を合格とした。尚、本評価はガラスを基材とするものに対してのみ行なった。
(8)耐熱性
200℃の乾燥機に72時間保持して加熱処理を行なった。そして光照射前後の色差ΔEabを、コニカミノルタ社製分光測色計「CM−3600d」で測定して、評価の指標とした。色差ΔEabが3以下の場合を合格とした。尚、本評価はガラスを基材とするものに対してのみ行なった。
(9)耐薬品性
試験液として、5%炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業(株)製)水溶液を用い、塗装板の表面層や試料板の表面に1cm×1cmに切断したキッチンペーパーを重ね、試験液をキッチンペーパー上に滴下し、時計皿を被せて静置して、24時間後放置した。そして24時間経過後の塗膜の外観を、次の判断基準で評価した。
外観の変化が全くない:○
滴下していたところが枠として跡がある:△
塗膜が剥離に至る:×
Figure 2010232160
Figure 2010232160
表1,2にみられるように、各実施例のものは、汚染後の透過率が高く、また耐光性、耐熱性、耐薬品性にも優れることが、確認される。

Claims (5)

  1. 基材の表面に表面層を設けて形成される照明器具の前面カバーであって、表面層は、ジメチルシロキサン基とパーフルオロアルキル基の少なくとも一方を有するアクリル樹脂を含む樹脂組成物からなり、全表面自由エネルギーが30mJ/m以下でかつ、極性力成分と分散力成分の2成分に分割した際の分散力成分の表面自由エネルギーが25mJ/m以下であり、屈折率が基材よりも小さいことを特徴とする照明器具の前面カバー。
  2. 表面層を形成する樹脂組成物が、上記アクリル樹脂100質量部に対して、3官能と4官能の少なくとも一方のアルコキシシランを20〜200質量部含有することを特徴とする請求項1に記載の照明器具の前面カバー。
  3. 上記アクリル樹脂は架橋性部位として水酸基を有しており、この水酸基を有するアクリル樹脂の架橋剤として、アミノ樹脂とイソシアネート樹脂の少なくとも1つを有する架橋剤成分が、表面層を形成する樹脂組成物中に含有されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の照明器具の前面カバー。
  4. 上記アクリル樹脂は、架橋性部位として水酸基とアルコキシ基の両方を有しており、このアクリル樹脂100質量部に対して3官能のアルコキシシランを10〜100質量部、4官能のアルコキシシランを10〜100質量部の量で、表面層を形成する樹脂組成物中に含有されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の照明器具の前面カバー。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の前面カバーを備えて成ることを特徴とする照明器具。
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