JP2010230575A - クロマトグラフィー用カラムの充填方法 - Google Patents
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Abstract
カラムに分離剤を均一充填し、安定した分離性能を達成すると共に再現性良く分離剤を充填する方法を提供する。
【解決手段】
液体クロマトグラフィー用カラムに充填剤を充填する方法であって、下記(1)〜(4)の工程を経ることを特徴とする充填方法。
(1)合成吸着剤からなる充填剤を水媒体に分散させたスラリーを調製する
(2)スラリーをカラム上部より送入し、カラム内に合成吸着剤を留めて水媒体をカラム下部より排出し、合成吸着剤充填層を形成する
(3)カラム下部より、該水媒体と相溶性を有する極性有機溶媒を上向流で注入しカラム内の水媒体を置換する
(4)該極性有機溶媒と相溶性を有する展開剤をカラム上部より下降流で注入し、極性有機溶媒を置換する
【選択図】 図1
Description
従来、クロマトグラフィー用充填剤をカラムに充填する方法としては、充填剤を適当な液媒体、例えば水に分散させてスラリー化した後、このスラリーをある容量を持ったカラムへ充填し、更に溶媒をガス圧やポンプ圧により送入し充填剤を圧密化させ、その後カラム内の液媒体を展開剤(溶離剤)で置換する方法が知られている。例えば、パッカー内のスラリーに押出液を圧入しカラムに流入させるスラリーの充填方法(特許文献1)、過剰分の樹脂を抜出し還流させる方法(特許文献2)、或いは可動栓を用いた充填方法(特許文献3)などが挙げられる。
このように下降流によりスラリー充填及び液体交換を行った場合には充填状態が均一でないため十分な分離性が発揮されないので、本発明は、充填方法を改良して合成吸着剤を均一充填し、安定した分離性能を達成する充填方法を提供するものである。
即ち、本発明の要旨は、液体クロマトグラフィー用カラムに充填剤を充填する方法であって、下記(1)〜(4)の工程を経ることを特徴とする充填方法に存する。
(1)合成吸着剤からなる充填剤を水媒体に分散させたスラリーを調製する
(2)スラリーをカラム上部より送入し、カラム内に合成吸着剤を留めて水媒体をカラム下部より排出し、合成吸着剤充填層を形成する
(3)カラム下部より、該水媒体と相溶性を有する極性有機溶媒を上向流で注入しカラム内の水媒体を置換する
(4)該極性有機溶媒と相溶性を有する展開剤をカラム上部より下降流で注入し、極性有機溶媒を置換する
充填率%={(充填された合成吸着剤体積)/(カラム容量)}×100
更に、充填率が96〜97%であること;上記(3)工程において、極性有機溶媒の流量は、SV≦2であること;極性有機溶媒は、比誘電率が15〜40の炭素数1〜4の脂肪族アルコール又はアセトニトリルから選ばれること;極性有機溶媒がエタノールであること;合成吸着剤の平均粒径は、100μm〜200μmであること;合成吸着剤は、(メタ)アクリル酸系架橋共重合体であることが挙げられる。
(1)合成吸着剤からなる充填剤を水媒体に分散させたスラリーを調製する
(2)スラリーをカラム上部より送入し、カラム内に合成吸着剤を留めて水媒体をカラム下部より排出し、合成吸着剤充填層を形成する
(3)カラム下部より、該水媒体と相溶性を有する極性有機溶媒を上向流で注入しカラム内の水媒体を置換する
(4)該極性有機溶媒と相溶性を有する展開剤をカラム上部より下降流で注入し、極性有機溶媒を置換する
カラムは、その下端部分に分散板、及び下部導出口を取付け、カラム上部は開放し、カラム下部導出口から水媒体だけが排出されるようにして垂直に設置する。
カラムに充填剤である合成吸着剤が充填されるが、カラムへの充填に先立ち、合成吸着剤の水媒体スラリーを調製する。
合成吸着剤のスラリーは、水媒体に合成吸着剤を分散させることにより調製される。水媒体としては水、特に脱塩水が好適に使用されるが、場合により実質的に水を主成分とするが少量の相溶性のある極性有機溶媒を含んでいてもよい。
スラリー中における合成吸着剤の量は、好ましくは40〜60(容量)%であり、50(容量)%が最も好ましい。この範囲を超えて低すぎるとカラムへの移送・充填に長時間を要し、他方高すぎるとスラリー粘度が高くなり均一な充填層の形成が困難になりやすい。
また、市販品の合成吸着剤を使用する場合、予め合成吸着剤を脱塩水により十分湿潤させておくのが好ましい。
合成吸着剤の使用量は、カラム体積の約10%増の体積(ml)に相当する量を目処に適宜決められる。
工程(1)で調製された水媒体に合成吸着剤が分散したスラリーは、攪拌しながらカラム壁面に沿って流下させながら注入し、下降流で沈降させることにより充填層を形成し、カラム下部の導出口から水媒体を排出させる。水媒体の排出により生じた合成吸着剤層面の上位の空間部へスラリーを再度注入し、水媒体を排出する操作を、合成吸着剤層の上面がカラム上端に達するまで繰り返して行う。その際、合成吸着剤は、下式で示される充填率が少なくとも94%、好ましくは96〜97%となるように充填する。
充填率%={(充填された合成吸着剤体積)/(カラム体積)}×100
ここで、充填された合成吸着剤体積は、以下により算出する。
(A)スラリー調製に先立ち、カラム体積の約10%増の体積(ml)に相当する量の合成吸着剤を脱塩水に十分湿潤させ、湿潤した合成吸着剤体積(a)をメスシリンダーにより測定しておく(ml)。
(B)スラリーをカラムに注入・充填し、充填終了時の残りのスラリー中の合成吸着剤体積(b)をメスシリンダーで測定する(ml)。
(充填された合成吸着剤体積)=(a)−(b)
合成吸着剤が上記充填率を満たすためには、充填終了持の近辺でカラムに外部よりかすかな振動を与える等して注意深く充填する分離剤量を調整するのが好ましい。
工程(2)において合成吸着剤が充填されたカラムには、その上端部分に分散板、及びカラム上部導出口を取り付ける。また、カラム下端部分に圧送用の配管を接続し、配管の反対側にはポンプなどで置換液を圧送することができるようにし、カラム上端部分に排出用の配管を接続させる。
カラム下端部分に設けられた配管を介して水媒体と相溶性を有する極性有機溶媒を置換液として上向流で注入しカラム内の水媒体を置換する。
極性有機溶媒は、空間速度(SV)≦2、好ましくはSV=0.5〜1で注入されるが、本発明方法では上向流で注入することが必須である。公知方法のように置換液を下降流で供給し溶媒置換した場合は、充填剤が上下方向に対し不均一な充填となるので良好な分離性能が得られないが、本発明の如く、上向流で溶媒置換した時は、分離剤の充填層が均一となり良好、かつ、繰り返し充填において同一分離性能が得られる。
置換液としての極性有機溶媒は、具体的にはカラム体積の3倍以上、好ましくは3〜6倍量の溶媒をカラムに上向流で通液させる。
Aは繰り返し充填を行っても同じ分離性能を得ることができ、特に、擬似移動床法のように同一性能のカラムが必要とされる場合に効果が期待できる。BはAと比較し、大きな差はないように見えるが、リーディングの程度や分離度が充填毎に変化してしまうため、擬似移動床法においてAよりも性能が低下してしまう。Cは明らかにピーク形状が異なり、また、充填毎にテーリングやピーク割れ等、ピーク形状が変化してしまい安定した分離性能を得ることができない。
なお、カラムの分離性能は、後述の実施例1に記載の「カラム性能試験」法によりおこなった。
溶媒置換されたカラム上端部分に圧送用の配管を接続し直し、カラム下端部分に排出用の配管を接続する。
工程(3)で極性有機溶媒により溶媒置換された充填カラムに、該極性有機溶媒と相溶性を有する展開剤をカラム上部より下降流で注入し、極性有機溶媒を置換する。
カラム上端部分の配管から、カラムクロマトグラフィー分離に使用される展開剤を下降流、空間速度≦2でカラム体積の3〜6倍量通液する。
この工程により充填操作は終了する。
(メタ)アクリル酸エステル系架橋(共)重合体からなる合成吸着剤は、上記の特性を満たす限り市販品から適宜選定することができるが、その具体的製品例としては、ダイヤイオン HP1MG、HP2MG等、MCI GEL CHP2MGM、CHP2MG、CHP2MGF、CHP2MGA、CHP2MGY等、セパビーズ FP−HG、SP2MGS等(以上三菱化学社製;商品名)、アンバーライト XAD7、XAD7HP、アンバークロム CG−71等(以上、ローム・アンド・ハース社製;商品名)等があげられる。
予め脱塩水により湿潤させたメタクリル酸エステル系合成吸着剤SP2MGS(商品名:三菱化学社製:平均粒子径140μm)800mlに同容量の脱塩水を加えて撹拌し、50(容量)%スラリーを調製した。
底部に分散板(フィルター)が装着された、内径43mm×高さ540mmのSUS製カラム(内容積:784ml)を垂直に設置した。上記スラリーを、このカラムの上部入口から内壁に沿って流下させながら注入し、カラム上端入口まで到達したら、スラリーの注入を止め、液面が合成吸着剤層の上面付近に達するまでカラム下部に設けられた出口から水を抜き出す。この様なスラリーの注入、水の抜き出し操作を合成吸着剤層面がカラム上端面と同じになるまで繰り返す。この時の残ったスラリー中の合成吸着剤量を測定した結果、合成吸着剤の充填率は96.5%であった。
その後、図3に示す如く配管をし直し、カラム上部よりヘキサン/エタノール(容量混合比90:10)溶液を下降流・SV=2で供給し、カラム内をヘキサン/エタノール溶液に置換し、カラム充填を終了した。
充填カラムの分離性能の再現性を確認するため、上記と同じ操作により複数(4本)の充填カラムを作成した。
得られた合成吸着剤を充填したカラムを用い、フタル酸ジブチル及びフタル酸ジエチルをサンプルとしたクロマトグラフィーによる分離性能を評価した。その結果、分離曲線は良好なピーク形状となり、また、作成した4本のカラムすべてにおいて、同じ分離性能が得られた。
試験は、得られた合成吸着剤の充填カラムを液体クロマトグラフィー装置(GILSON製分取クロマト装置)に設置した。フタル酸ジブチル及びフタル酸ジエチルをヘキサン/エタノール溶液(容量混合比90:10)に、それぞれの濃度が0.5重量%となるように溶解した溶液をサンプルとした。カラムにサンプル10mlを注入し、溶離液として上記ヘキサン/エタノール溶液を、60ml/分で通液した。その結果、立ち上がりもシャープで20分及び28分に2個のピークを有する良好な分離曲線が得られた(図1:A参照)。
実施例1において、合成吸着剤の充填率を93%とし、カラム内を水からエタノールに置換する操作を下降流・SV=0.75で行った以外は同じ操作を行い、複数の充填カラム(4本)を調製した。得られたカラムの性能試験を行ったところ、同じ操作で充填したカラムであるにもかかわらず、カラムの充填毎にピークの形状が変化してしまい、溶離時間まで変動してしまうことが確認され、再現性が得られなかった。
実施例1において、カラム内を水からエタノールに置換する操作を下降流・SV=0.75で行った以外は同じ操作を行い、複数の充填カラム(4本)を調製した。得られた充填カラムにつきクロマトグラフィーによる性能試験を行ったところ、溶離時間は再現性のある結果が得られたが、リーディングが確認された充填カラム、リーディングが確認されない充填カラムがあり、かつ、リーディングの程度も充填毎に異なる結果であった。
B:充填率96.5%、置換液を下降流・SV=0.75で注入したカラムでの分離曲線
C:充填率93.0%、置換液を下降流・SV=0.75で注入したカラムでの分離曲線
Claims (8)
- 液体クロマトグラフィー用カラムに充填剤を充填する方法であって、下記(1)〜(4 )の工程を経ることを特徴とする充填方法。
(1)合成吸着剤からなる充填剤を水媒体に分散させたスラリーを調製する
(2)スラリーをカラム上部より送入し、カラム内に合成吸着剤を留めて水媒体をカラム下部より排出し、合成吸着剤充填層を形成する
(3)カラム下部より、該水媒体と相溶性を有する極性有機溶媒を上向流で注入しカラム内の水媒体を置換する
(4)該極性有機溶媒と相溶性を有する展開剤をカラム上部より下降流で注入し、極性有機溶媒を置換する - 上記工程(2)において、スラリーをカラム上部より送入し、カラム内に合成吸着剤を留め水媒体をカラム下部より排出する際、カラム内の合成吸着剤は、下式で示される充填率が少なくとも94%であることを特徴とする請求項1に記載の充填方法。
充填率={(充填された合成吸着剤体積)/(カラム容量)}×100 - 充填率が96〜97%であることを特徴とする請求項2に記載の充填方法。
- 上記(3)工程において、極性有機溶媒の流量は、SV≦2であることを特徴とする請求項1又は2に記載の充填方法。
- 極性有機溶媒は、比誘電率が15〜40の炭素数1〜4の脂肪族アルコール又はアセトニトリルから選ばれることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の充填方法。
- 極性有機溶媒がエタノールであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の充填方法。
- 合成吸着剤の平均粒径は、100μm〜200μmであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の充填方法。
- 合成吸着剤は、(メタ)アクリル酸系架橋共重合体であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の充填方法。
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