JP2010223050A - エンジンの冷却装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】エンジンの損傷を防止できながらも、暖機の促進を図ることができるエンジンの冷却装置を提供する。
【解決手段】冷却液を冷却するラジエータRと、エンジンEのシリンダヘッド8及びシリンダブロック7に冷却液を流通させるヘッド用ジャケット1及びブロック用ジャケット2と、ラジエータRと双方のジャケット1、2とに亘って冷却液を循環させる循環流路Jと、循環流路Jを介して冷却液を流動させるポンプPとを備え、ポンプPの駆動に際して、循環流路Jを、ヘッド用ジャケット1に冷却液を保持しつつブロック用ジャケット2の冷却液を減少させる第1状態と、双方のジャケット1、2に冷却液を保持する第2状態とに切り換える流路切換機構Aを備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、エンジンとラジエータとの間で冷却液を循環させ、エンジンを冷却するエンジンの冷却装置に関する。
従来、この種のエンジンの冷却装置では、エンジンのジャケットの冷却液を冷却するラジエータと、エンジンのジャケットとラジエータとの間で冷却液を循環させる循環流路と、当該循環流路の途中に設けられた貯留タンク及び循環ポンプとを備え、エンジンのジャケットの冷却液出口を貯留タンクの冷却液入口よりも高く配置するものがある。
この冷却装置では、通常運転時には、循環ポンプを駆動させて冷却液を循環させ、エンジンの暖機時、及び、エンジンの停止時には、循環ポンプを停止してエンジンのジャケットの冷却液出口と貯留タンクの冷却液入口との高低差によりジャケットの冷却液を貯留タンクに排出する。
又、その他の冷却装置として、エンジンのジャケットの冷却液を冷却するラジエータと、ジャケットとラジエータとの間で冷却液を循環させる循環流路と、エンジンから冷却液を一旦排出して貯留可能な貯留部と、エンジンと貯留部とを連通する連通流路と、循環流路の途中に設けられた循環ポンプと、連通流路の途中に設けられた注入/排出用ポンプとを備えるものがある。
この冷却装置では、エンジンの暖機完了時には、注入/排出用ポンプを冷却液注入方向に駆動して貯留タンクの冷却液をエンジンのジャケットに注入し、エンジンの停止時には、注入/排出用ポンプを冷却液排出方向に駆動してエンジンのジャケットの冷却液を貯留タンクに排出する。
ところで、エンジンの暖機中に、例えば、急発進をしたり、エンジンを高回転で吹かす等により、エンジンが高負荷状態になる場合がある。このとき、それらの冷却装置では、エンジンの暖機時には、ジャケットに冷却液が存在しないのでエンジンの温度が急上昇する。このため、それらの冷却装置の各部の動作制御を行う電子制御ユニット(ECU)から循環ポンプや注入/排出用ポンプに対してエンジン冷却要求が出され、冷却液がジャケットに供給される。
しかし、冷却要求が出されてから実際に冷却液がジャケットに供給されるまでのタイムロスがあるので、このタイムロス中に高温になったジャケットに冷却液が供給されることになり、エンジンにヒートショックが発生する。
又、冷却液が存在しないジャケットに冷却液が供給された直後はジャケットに気泡が残り易い。そのため、ジャケットの冷却効果が低下し、エンジンにヒートスポットが発生する。
このように、エンジンにヒートショックやヒートスポットが発生すると、エンジン不調の原因となり、場合によっては、エンジンが損傷する虞がある。
そこで、上記不都合を解消するために各種の冷却装置が提案されている。
例えば、特許文献1には、ヘッド用ジャケット及びブロック用ジャケットの冷却液を冷却するラジエータと、ヘッド用ジャケット及びブロック用ジャケットとラジエータとの間で冷却液を循環させる循環流路と、当該循環流路の途中に設けられた循環ポンプと、ヘッド用ジャケットの水温がブロック用ジャケットの水温以下となるようにヘッド用ジャケットの水量とブロック用ジャケットの水量とを分配する水量分配装置とを備える冷却装置が記載されている。
また、特許文献2には、ヘッド用ジャケット及びブロック用ジャケットの冷却液を冷却するラジエータと、ラジエータの冷却液をブロック用ジャケットを通過させつつヘッド用ジャケットに供給し、ヘッド用ジャケットに供給した冷却液をラジエータに戻す循環流路と、ラジエータの冷却液をブロック用ジャケットを通過させないでヘッド用ジャケットに供給するバイパス流路と、循環流路とバイパス流路との接続箇所に設けられたサーモスタット弁と、当該循環流路の途中に設けられた循環ポンプとを備える冷却装置が記載されている。この装置では、エンジンの暖機時には、サーモスタット弁を閉じ状態とし、ラジエータの冷却液をバイパス流路を介してヘッド用ジャケットに流通させる。このとき、ラジエータの冷却液がブロック用ジャケットを流通しないので、ブロック用ジャケットの冷却液が滞留する。エンジンの暖機完了時には、サーモスタット弁が開き状態となり、ラジエータの冷却液が循環流路を介してヘッド用ジャケット及びブロック用ジャケットを流通する。
特開昭59−213918号公報 特開2008−133772号公報
上記特許文献1では、エンジンの暖機時には、冷却液がヘッド用ジャケット及びブロック用ジャケットを流通する。又、上記特許文献2では、エンジンの暖機時には、冷却液がヘッド用ジャケットを流通し、ブロック用ジャケットでは滞留する。
いずれにせよ、これら特許文献1、2では、エンジンの暖機時には、ヘッド用ジャケット及びブロック用ジャケットに冷却液を保持している。このため、ヘッド用ジャケット及びブロック用ジャケットの冷却液に熱が奪われて暖機促進の効果を十分に得ることができない。
本発明は、上記実情に鑑みて為されたものであって、その目的は、エンジンの損傷を防止しながらも、暖機促進の効果を十分に得ることができるエンジンの冷却装置を提供する点にある。
本発明のエンジンの冷却装置の第1特徴構成は、冷却液を冷却するラジエータと、エンジンのシリンダヘッド及びシリンダブロックに冷却液を流通させるヘッド用ジャケット及びブロック用ジャケットと、前記ラジエータと双方のジャケットとに亘って冷却液を循環させる循環流路と、前記循環流路を介して冷却液を流動させるポンプとを備え、前記ポンプの駆動に際して、前記循環流路を、前記ヘッド用ジャケットに冷却液を保持しつつ前記ブロック用ジャケットの冷却液を減少させる第1状態と、双方のジャケットに冷却液を保持する第2状態とに切り換える流路切換機構を備えた点にある。
エンジンの暖機時には流路切換機構を第1状態に切り換える。つまり、エンジンの燃焼室周りのシリンダヘッド壁面やシリンダブロック壁面からの熱損失が大きく、シリンダヘッドやシリンダブロックの温度が低いと、シリンダブロック壁面におけるエンジンオイルは温度が低いのでエンジンオイルの粘性が高くなり、シリンダブロックとピストンリングやピストンとのフリクションロスが大きくなる。そこで、シリンダブロックにおいて、ブロック用ジャケットの冷却液を減少させることにより、冷却液によって熱が奪われないようにして、シリンダブロックの温度を早く上昇させることができる。これにより、エンジンオイルの温度を早期に高めフリクションロスを小さくして、暖機促進の効果を十分に得ることができる。
一方、シリンダヘッドの壁部が高温の燃焼ガスに曝されるため、シリンダヘッドはシリンダブロックに較べて高温になり易く、ヒートショックが大きくなり易い。又、シリンダヘッドはシリンダブロックよりも上方に位置し、ジャケット構造も入り組んでいるため、ヘッド用ジャケットの冷却液はブロック用ジャケットの冷却液に較べて気泡が残り易く、ヒートスポットが発生し易い。そこで、ヘッド用ジャケットに冷却液を保持することにより、エンジンの暖機中にエンジンが高負荷状態になったとしても、シリンダヘッドの温度の急上昇を防止して、シリンダヘッドにヒートショックが発生することを防止できる。又、ヘッド用ジャケットに冷却液が供給されたとしても、ヘッド用ジャケットに気泡が残ることを防止して、シリンダヘッドにヒートスポットが発生することを防止できる。
通常運転時には流路切換機構を第2状態に切り換える。つまり、双方のジャケットに冷却液を保持することにより、シリンダヘッドおよびシリンダブロックを冷却してエンジンの温度を適正な温度範囲に維持できる。
本発明の第2特徴構成は、前記第1状態として、前記ヘッド用ジャケットに冷却液を滞留または循環させつつ前記ブロック用ジャケットの冷却液を減少させて空気を導入し、前記第2状態として、前記双方のジャケットに冷却液を滞留または循環させる点にある。
本構成によれば、エンジンの暖機時にヘッド用ジャケットに冷却液を滞留させることにより、シリンダヘッドの温度の急上昇を防止できながらもヘッド用ジャケットの温度を早く高めて暖機効率の向上を図ることができる。また、ヘッド用ジャケットに冷却液を循環させることにより、シリンダヘッドの温度の急上昇を確実に防止できる。通常運転時に双方のジャケットに冷却液を滞留、又は循環させることにより、エンジンの低・中負荷運転時はもちろん、エンジンの高負荷運転時においてもエンジンの温度を適正な温度範囲に維持し易い。
本発明の第3特徴構成は、前記ブロック用ジャケットの冷却液を抜き取ると共に、抜き取った冷却液を貯留可能な貯留機構を更に備えた点にある。
本構成によれば、貯留機構にて抜き取った冷却液を貯留するので、他の循環流路やラジエータを流通する冷却液の流れに影響を及ぼすこと無く、エンジンの暖機を促進することができる。
本発明の第4特徴構成は、前記循環流路が、前記ラジエータから前記エンジンの側に接続する戻り流路と、当該戻り流路から前記ヘッド用ジャケットに分岐する第1流路と、前記戻り流路から前記ブロック用ジャケットに分岐する第2流路とを備え、前記貯留機構を構成する抜取流路が前記ブロック用ジャケットから前記戻り流路に接続され、前記ポンプを、前記戻り流路のうち、前記抜取流路が接続される接続点と、前記第1流路及び前記第2流路に分岐する分岐点との間に備えると共に、前記流路切換機構が、前記第2流路の冷却液の流通と前記抜取流路の冷却液の流通とを選択する弁機構を備えている点にある。
本構成によれば、弁機構により第2流路の冷却液の流通を選択すると、ポンプの駆動により、ラジエータの冷却液は、戻り流路を通過し、第1流路と第2流路とに分岐して、双方のジャケットに冷却液を流通させる。抜取流路の冷却液の流通を選択すると、ポンプの駆動により、ブロック用ジャケットの冷却液は、第2流路、抜取流路、戻り流路、第1流路を通過し、ヘッド用ジャケットに冷却液を流通させる。このように、弁機構を選択するだけの簡単な操作で第1状態と第2状態とを現出させることができる。
本発明の第5特徴構成は、前記流路切換機構が、前記冷却液の温度を検出する温度検出手段を備えると共に、当該温度検出手段にて検出された温度に基づいて、前記弁機構を制御するように構成してある点にある。
本構成によれば、温度検出手段にて検出されたエンジンの温度が低く、エンジンの暖機時と判別したときには、弁機構を制御して第1状態を現出させる。これにより、暖機促進の効果を十分に得ることができ、シリンダヘッドにヒートショックやヒートスポットが発生することを防止できる。温度検出手段にて検出されたエンジンの温度が高く、通常運転時と判別したときには、弁機構を制御して第2状態を現出させる。これにより、エンジンの温度を適正な温度範囲に維持し易い。
第1実施形態における冷却装置の構成と運転状態を示す図である。 第1実施形態における冷却装置の構成と運転状態を示す図である。 第1実施形態における冷却装置の構成と運転状態を示す図である。 第1実施形態における冷却装置の構成と運転状態を示す図である。 第2実施形態における冷却装置の構成と運転状態を示す図である。 第2実施形態における冷却装置の構成と運転状態を示す図である。 第2実施形態における冷却装置の構成と運転状態を示す図である。 第2実施形態における冷却装置の構成と運転状態を示す図である。 別実施形態における接続点及び分岐点の位置関係を示す図である。
〔第1実施形態〕
図1〜図4に示すように、本実施形態に係るエンジンEの冷却装置は、エンジンEのヘッド用ジャケット1及びブロック用ジャケット2の冷却液を冷却するラジエータRと、ヘッド用ジャケット1及びブロック用ジャケット2とラジエータRとの間で冷却液を循環させる循環流路Jと、その循環流路Jを介して冷却液を循環させる循環ポンプP(ポンプの一例)と、循環流路Jのラジエータ側流路5とバイパス流路6との接続点に設けられ、閉鎖時に冷却液をバイパス流路6に循環させ、開放時に冷却液の大部分をラジエータ側流路5に循環させるサーモ弁V1と、を備えている。尚、詳述はしないが、車両の室内の暖房のために冷却液との熱交換を行うヒータコアを備え、該ヒータコアに対して冷却液の循環を許容又は遮断する開閉弁を備えていてもよい。
前記エンジンEは、内部にピストン(図示しない)等が収められるシリンダが形成された例えば鋳鉄製のシリンダブロック7と、このシリンダの上部を構成する例えばアルミ合金製のシリンダヘッド8と、を備えている。エンジンEには、冷却液の液温を検出する温度検出手段としての温度センサ9が設けられている。シリンダブロック7の内部には、ブロック用ジャケット2が形成されている。ブロック用ジャケット2によりエンジンEの燃焼室壁部を冷やすことができる。シリンダヘッド8の内部には、ヘッド用ジャケット1が形成されている。ヘッド用ジャケット1により、上記燃焼室壁部や排気弁、点火プラグ(図示しない)等を冷やすことができる。
前記循環流路Jは、ラジエータRを通過させるラジエータ側流路5と、ラジエータRをバイパスするバイパス流路6と、ラジエータ側流路5及びバイパス流路6とヘッド用ジャケット1及びブロック用ジャケット2とを接続するエンジン側流路10と、を備えている。尚、ラジエータ側流路5は、大量の冷却液を効率的に循環させて冷却することを可能にするために、バイパス流路6と比較して大きい通路断面積を有する。
前記ラジエータ側流路5は、ラジエータRの出口に接続する流路11と、ラジエータRの入口に接続する流路12とを備えている。前記エンジン側流路10は、流路11とバイパス流路6との接続点から延びる流路13と、当該流路13から分岐してヘッド用ジャケット1の入口1aに接続する流路14(第1流路の一例)と、当該流路13から分岐してブロック用ジャケット2の入口2aに接続する流路15(第2流路の一例)と、ヘッド用ジャケット1の出口1bに接続する流路17と、ブロック用ジャケット2の出口2bに接続する流路18と、流路17と流路18とが合流して流路12とバイパス流路6との接続点に延びる流路16と、を備えている。
これにより、流路11および流路13が、ラジエータRからエンジンEの側に接続する戻り流路24を構成し、流路12および流路16が、エンジンEの側からラジエータRに接続する往き流路25を構成する。前記ラジエータRの上部から延びる流路20が貯留部4としてのリザーバタンク4aの上部に接続している。リザーバタンク4aの下部から延びる流路21がバイパス流路6に接続している。リザーバタンク4aの上部から延びる流路22が流路18に接続している。
前記流路15には、三方弁V2(弁機構の一例)が設けられている。当該三方弁V2から延びる流路19(抜取流路の一例)が流路13に接続している。流路19には、逆止弁V3が設けられている。これにより、冷却液のラジエータRの出口の側からブロック用ジャケット2の入口2aの側への流通を遮断する。流路13のうち、流路19が接続される接続点CPと、流路14及び流路15に分岐する分岐点SPとの間に循環ポンプPが設けられている。流路18には、逆止弁V4が設けられている。これにより、ヘッド用ジャケット1の出口1bの側からブロック用ジャケット2の出口2bの側への流通を遮断する。流路22の途中には、逆止弁V5が設けられている。これにより、ブロック用ジャケット2の出口2bの側からリザーバタンク4aの側への流通を遮断する。
前記ブロック用ジャケット2から冷却液を抜き取って、抜き取った冷却液をリザーバタンク4aに貯留するには、図1に示すように、サーモ弁V1が閉じ状態になった状態で、循環ポンプPを駆動させ、三方弁V2を閉じ状態にする。ブロック用ジャケット2の冷却液は、流路15、流路19、流路13を通って循環ポンプPに流れ込む。循環ポンプPから送り出された冷却液は、流路13、流路14を通ってヘッド用ジャケット1に流れ込む。ヘッド用ジャケット1の冷却液は、流路17、流路16を通ってラジエータRに流れ込む。ラジエータRの冷却液は、流路20を通ってリザーバタンク4aに貯まる。
このように、流路15のうち三方弁V2と入口2aとの間、流路19、流路13のうち接続点CPと分岐点SPとの間、流路14、流路17、流路16、流路20等が、ブロック用ジャケット2とリザーバタンク4aとに亘って冷却液を流通させる連通流路3を構成し、その連通流路3、循環ポンプP、リザーバタンク4aが、ブロック用ジャケット2から冷却液を抜き取って、抜き取った冷却液をリザーバタンク4aに貯留する貯留機構Bを構成する。流路16の冷却液の一部は、バイパス流路6、流路13、流路14を通ってヘッド用ジャケット1に戻る。このため、循環ポンプPを駆動させてブロック用ジャケット2の冷却液をヘッド用ジャケット1を通過させつつリザーバタンク4aに貯めるときに、冷却液の一部がヘッド用ジャケット1に戻ってしまう。しかし、上述したように、バイパス流路6の通流抵抗はラジエータ側流路5の通流抵抗よりも大きいため、ヘッド用ジャケット1に戻る冷却液の量は少ない。
尚、バイパス流路6の途中に開閉弁を設けてあれば、ヘッド用ジャケット1に戻る冷却液を完全に遮断することができる。前記リザーバタンク4aに冷却液が貯まるのに伴ってリザーバタンク4aのエアは、流路22、流路18を通ってブロック用ジャケット2に流れ込む。つまり、ブロック用ジャケット2には、抜けた冷却液の代わりにエアが導入される。
前記ヘッド用ジャケット1およびブロック用ジャケット2とラジエータRとの間で冷却液を循環させるには、図4に示すように、サーモ弁V1が開き状態になった状態で、前記循環ポンプPを駆動させ、三方弁V2を開き状態にする。ラジエータRの出口から出た冷却液は、流路11、流路13を通って循環ポンプPに流れ込む。循環ポンプPから送り出された冷却液は、流路13を通って流路14及び流路15に分流する。流路14の冷却液は、ヘッド用ジャケット1、流路17を通る。流路15の冷却液は、ブロック用ジャケット2、流路18を通る。流路17及び流路18の冷却液は、流路16に合流してラジエータRの入口に戻る。
以上の構成により、循環ポンプPを駆動させ、三方弁V2を閉じ状態にすることにより、ヘッド用ジャケット1に冷却液を循環させつつブロック用ジャケット2の冷却液を抜取流路19を介して抜き取って、抜けた冷却液の代わりにエアを導入する第1状態に切り換わる。循環ポンプPを駆動させ、三方弁V2を開き状態にすることにより、第1流路14及び第2流路15を介してヘッド用ジャケット1及びブロック用ジャケット2に冷却液を循環させる第2状態に切り換わる。このように、三方弁V2が、循環流路Jを第1状態と第2状態とに切り換える流路切換機構Aを構成する。
前記循環ポンプPは、回転数の制御が可能な電動のウォーターポンプである。この循環ポンプPは、冷却液の液温に応じて連続的に回転数が変化するように制御され、ヘッド用ジャケット1及びブロック用ジャケット2とラジエータRとの間で循環する冷却液の単位時間当たりの流量を増加させる。これにより、冷却液の液温を適正温度に維持することができる。尚、後述するECU(図示しない)が、燃料噴射量、エンジン回転数、エンジン温度、あるいはその組み合わせに応じて回転数が変化するように循環ポンプPを制御してもよい。循環ポンプPは、遠心式や容積式等、種々のポンプが適用可能である。
前記サーモ弁V1は、冷却液の温度に応じて自動的に開閉する弁である。冷却液の液温が所定温度未満のときには、サーモ弁V1が閉じ状態となり、冷却液がバイパス流路6に循環する。冷却液の液温が所定温度以上のときには、サーモ弁V1が開き状態となり、冷却液の大部分がラジエータ側流路5に循環する。これにより、エンジンEの暖機時には、冷却液がラジエータRを通過しないので暖機を促進できる一方、エンジンEの暖機完了時には、冷却液の大部分がラジエータRを通過するので、エンジンEを冷却できる。尚、冷却液がより多くラジエータ側流路5に循環するように、バイパス流路6の途中に制御弁を設けてもよい。
次に、本実施形態に係るエンジンEの冷却装置の制御構成について説明する。
前記流路切換機構Aは、温度センサ9、制御機構(図示しない)等をさらに備えている。制御機構は、本実施形態に係るエンジンEの冷却装置の各部の動作制御を行う電子制御ユニット(ECU)であり、温度センサ9を含む車両の各部に備えられた各種のセンサ等からの情報に基づいて、循環ポンプP、三方弁V2を含むエンジンEの冷却装置の各部に対して制御信号を送信し、それらの各部の動作制御を行う。
(エンジン始動時)
エンジンEの始動直後は、シリンダブロック7の暖機を促進しながらも、シリンダヘッド8にヒートショックやヒートスポットが発生することを防止する必要がある。特に、アルミ合金製のシリンダヘッド8は熱に弱いので、ヒートショックやヒートスポットの発生を防止する必要がある。
そこで、エンジンEの始動に際して、ヘッド用ジャケット1に冷却液を循環させつつブロック用ジャケット2の冷却液を抜き取る第1状態にしておく。具体的には、イグニッションキー(図示しない)にてエンジンEを始動した時や、スマートキー(図示しない)にてドア(図示しない)のロックを解除した時に、三方弁V2を閉じ状態にし、循環ポンプPを駆動させる。このとき、冷却液の液温は所定温度未満であり、サーモ弁V1が閉じ状態になっている(図1を参照)。これにより、ブロック用ジャケット2の冷却液がヘッド用ジャケット1を通過しつつリザーバタンク4aに排出される。
尚、循環ポンプPの負荷をECUがモニターして、循環ポンプPがエアを吸い込んだときに生じる循環ポンプPの負荷の変動によりブロック用ジャケット2の冷却液の水抜きが完了したと判断したり、あるいは、循環ポンプPを作動させてから所定時間経過後にブロック用ジャケット2の冷却液の水抜きが完了したと判断して、循環ポンプPを停止してもよい。これにより、循環ポンプPがエアを吸い込むことが少なくなり、循環ポンプPの耐久性及び作業性が向上する。
又、坂道を走行するときに車両が傾斜姿勢になってもエア抜きや冷却液の出し入れをスムーズに行うために、リザーバタンク4aの位置をラジエータRやエンジンEよりも高くしてある。
(暖機運転時)
ブロック用ジャケット2の冷却液の水抜きが完了すると、エンジンEの暖機が完了するまでブロック用ジャケット2から冷却液が抜き取られた状態に維持する必要がある。そこで、ブロック用ジャケット2の冷却液の水抜きが完了すると、循環ポンプPを停止し、三方弁V2を閉じ状態に維持する。このとき、冷却液の液温は所定温度未満であり、サーモ弁V1が閉じ状態になっている(図2を参照)。ヘッド用ジャケット1がブロック用ジャケット2よりも高い位置に設けられているが、ヘッド用ジャケット1の冷却液がブロック用ジャケット2に戻ることはない。流路15に設けられた三方弁V2及び流路19に設けられた逆止弁V3がブロック用ジャケット2への流れを遮断するからである。これにより、ブロック用ジャケット2から冷却液が抜き取られ、ヘッド用ジャケット1に冷却液が滞留する状態に維持できる。このため、シリンダヘッド8にヒートショックやヒートスポットが発生したり、シリンダヘッド8が損傷することを防止しながらも、エンジンEの燃焼室周りの熱損失を低減し、シリンダヘッド8及びシリンダブロック7の温度を早く上昇させて、フリクションロスを低くすることができる。
(暖機運転完了時)
エンジンEが始動した後、時間の経過と共にエンジンEの燃焼室壁面の温度が上昇する。このとき、エンジンEの過熱を防止するために、ヘッド用ジャケット1及びブロック用ジャケット2に冷却液を流通させる第2状態にする必要がある。そこで、温度センサ9にて検出された液温がエンジンEが過熱する虞が生じる温度になったときに循環ポンプPを駆動させ、三方弁V2を開き状態にする。このとき、循環する冷却液の液温は依然として所定温度未満であり、サーモ弁V1が閉じ状態になっている(図3を参照)。リザーバタンク4aの冷却液は、流路21、バイパス流路6、流路13を通って循環ポンプPに流れ込む。循環ポンプPから送り出された冷却液は、流路13を通って流路14及び流路15に分流する。流路14の冷却液は、ヘッド用ジャケット1、流路17を通る。流路15の冷却液は、ブロック用ジャケット2を通る。このとき、ブロック用ジャケット2に流れ込んだ冷却液によってブロック用ジャケット2のエアは流路18に押し出される。流路17の冷却液及び流路18に含まれるエアは、流路16に合流してラジエータRに流れ込む。ラジエータRのエアは、流路20を通ってリザーバタンク4aに貯まる。これにより、ブロック用ジャケット2のエアがリザーバタンク4aに抜け、ブロック用ジャケット2に冷却液が供給される。
(通常運転時)
エンジンEを適正な温度に維持するためにシリンダヘッド8及びシリンダブロック7を冷やす必要がある。そこで、循環ポンプPを駆動状態に維持し、三方弁V2を開き状態に維持する。このとき、冷却液の液温は所定温度以上になり、サーモ弁V1が開き状態になる(図4を参照)。これにより、ヘッド用ジャケット1及びブロック用ジャケット2とラジエータRとの間で冷却液が循環し、シリンダヘッド8及びシリンダブロック7を冷やしてエンジンEの温度を適正な温度範囲に維持する。
(エンジン停止時)
エンジンEの停止時には循環ポンプPも停止し、三方弁V2を開き状態に維持する。停止直後のエンジンEは高温となっているため、ヘッド用ジャケット1及びブロック用ジャケット2に冷却液を滞留させた状態としておき、エンジンEの冷却効果を維持させる。尚、エンジンEの停止時に、循環ポンプPをしばらく運転してヘッド用ジャケット1及びブロック用ジャケット2に冷却液を循環させた後に停止させることとすれば、エンジンEの冷却が一層促進され、デッドソークによるエンジンEの過熱状態の発生をより確実に防止することができる。
〔第2実施形態〕
この実施形態では、第1実施形態の構成と異なる構成についてのみ説明し、同じ構成については説明を省略する。
上記第1実施形態では、前記流路15に三方弁V2を設け、当該三方弁V2から延びる流路19に逆止弁V3を設けていた。しかし、図5〜図8に示すように、本実施形態では、三方弁V2に代えて第1二方弁V6(弁機構の一例)を設け、流路15のうち第1二方弁V6とブロック用ジャケット2の入口2aとの間から延びる流路19の途中に逆止弁V3に代えて第2二方弁V7(弁機構の一例)を設けてある。
次に、本実施形態に係るエンジンEの冷却装置の制御構成について説明する。
(エンジン始動時)
エンジンEの始動に際して、ヘッド用ジャケット1に冷却液を循環させつつブロック用ジャケット2の冷却液を抜き取る第1状態にしておく。具体的には、イグニッションキー(図示しない)にてエンジンEを始動した時や、スマートキー(図示しない)にてドア(図示しない)のロックを解除した時に、第1二方弁V6を閉じ状態にし、第2二方弁V7を開き状態にし、循環ポンプPを駆動させる。このとき、冷却液の液温は所定温度未満であり、サーモ弁V1が閉じ状態になっている(図5を参照)。これにより、ブロック用ジャケット2の冷却液がヘッド用ジャケット1を通過しつつリザーバタンク4aに排出される。
(暖機運転時)
ブロック用ジャケット2の冷却液の水抜きが完了すると、循環ポンプPを停止し、第1二方弁V6を閉じ状態に維持し、第2二方弁V7を閉じ状態にする。このとき、冷却液の液温は所定温度未満であり、サーモ弁V1が閉じ状態になっている(図6を参照)。これにより、ブロック用ジャケット2に冷却液が存在せず、ヘッド用ジャケット1に冷却液が滞留する状態に維持できる。
(暖機運転完了時)
エンジンEが始動した後、時間の経過と共にエンジンEの燃焼室壁面の温度が上昇する。このとき、循環ポンプPを駆動させ、第1二方弁V6を開き状態にし、第2二方弁V7を閉じ状態に維持する。このとき、循環する冷却液の液温は依然として所定温度未満であり、サーモ弁V1が閉じ状態になっている(図7を参照)。これにより、ブロック用ジャケット2のエアがリザーバタンク4aに抜け、ブロック用ジャケット2に冷却液が供給される。
(通常運転時)
循環ポンプPを駆動状態に維持し、第1二方弁V6を開き状態に維持し、第2二方弁V7を閉じ状態に維持する。このとき、循環する冷却液の液温は所定温度以上になり、サーモ弁V1が開き状態になる(図8を参照)。これにより、ヘッド用ジャケット1及びブロック用ジャケット2とラジエータRとの間で冷却液が循環する。さらに、通常運転時に第1二方弁V6の流量を絞ることでブロック用ジャケット2の側に流れる冷却液の流量を絞ることができる。特に、高負荷運転時には、例えばヘッド用ジャケット1の側に流れる流量とブロック用ジャケット2の側に流れる流量との割合を7:3の割合にする等、ヘッド用ジャケット1の側に流れる流量をブロック用ジャケット2の側に流れる流量よりも多くすることにより、シリンダヘッド8を重点的に冷やすことができる。
(エンジン停止時)
エンジンEの停止時には、循環ポンプPも停止し、三方弁V2を開き状態に維持する。停止直後のエンジンEは高温となっているため、ヘッド用ジャケット1及びブロック用ジャケット2には冷却液を滞留させた状態としておき、エンジンEの冷却効果を維持させる。
〔別実施形態〕
(1)上記各実施形態では、エンジンEに冷却液の液温を検出する温度センサ9を設ける構成を例示した。しかし、温度センサ9は、冷却液の液温を検出するものではなく、エンジンEの燃焼室周りの壁温を検出するものでもよい。
(2)上記各実施形態では、エンジンEの始動時に、ヘッド用ジャケット1に冷却液を循環させつつブロック用ジャケット2の冷却液を抜き取る構成を例示した。しかし、温度センサ9にて検出された温度が所定温度以上であると、エンジンEの始動時であってもブロック用ジャケット2に冷却液を保持する状態にしておいてもよい。
(3)上記各実施形態では、流路22には逆止弁V5が設けられている構成を例示した。しかし、エア抜きをすばやく行うために、所定の系統圧以上の場合に閉弁して冷却液を流し、所定の系統圧以下の場合に開弁してエアを流す弁にしたり、オリフィスにしてもよい。
(4)上記第2実施形態では、暖機運転時に循環ポンプPを停止してヘッド用ジャケット1に冷却液を滞留させる構成を例示した。しかし、循環ポンプPを駆動させてヘッド用ジャケット1に冷却液を循環させてもよい。この場合、シリンダヘッド8からの熱損失は増加し、暖気促進の効果は目減りする方向であるが、暖機中の急激な高負荷運転に対するエンジンの信頼性はさらに高まる。
(5)上記各実施形態では、リザーバタンク4aを設ける構成を例示した。しかし、リザーバタンク4aを省略してもよい。このとき、ブロック用ジャケット2から抜き取られた冷却液を貯めることができるようラジエータ容量を大きくするなどの構成が可能である。
(6)図9に示すように、戻り流路24のうち第1流路14及び第2流路15に分岐する分岐点が2つある場合がある。このとき、上流側の分岐点を本発明の分岐点SPとし、循環ポンプPを戻り流路24のうち接続点CPと分岐点SPとの間に備える。
本発明は、ヘッド用ジャケット1及びブロック用ジャケット2の冷却液を冷却するラジエータRと、ラジエータRと双方のジャケット1、2との間で冷却液を循環させる循環流路Jと、循環流路Jを介して冷却液を流動させる循環ポンプPとを備える各種のエンジンEの冷却装置に適応可能である。
1 ヘッド用ジャケット
2 ブロック用ジャケット
7 シリンダブロック
8 シリンダヘッド
9 温度検出手段
14 第1流路
15 第2流路
19 抜取流路
24 戻り流路
A 流路切換機構
B 貯留機構
CP 接続点
E エンジン
J 循環流路
P ポンプ
R ラジエータ
SP 分岐点
V2、V6、V7 弁機構

Claims (5)

  1. 冷却液を冷却するラジエータと、
    エンジンのシリンダヘッド及びシリンダブロックに冷却液を流通させるヘッド用ジャケット及びブロック用ジャケットと、
    前記ラジエータと双方のジャケットとに亘って冷却液を循環させる循環流路と、
    前記循環流路を介して冷却液を流動させるポンプとを備え、
    前記ポンプの駆動に際して、前記循環流路を、前記ヘッド用ジャケットに冷却液を保持しつつ前記ブロック用ジャケットの冷却液を減少させる第1状態と、双方のジャケットに冷却液を保持する第2状態とに切り換える流路切換機構を備えたエンジンの冷却装置。
  2. 前記第1状態として、前記ヘッド用ジャケットに冷却液を滞留または循環させつつ前記ブロック用ジャケットの冷却液を減少させて空気を導入し、
    前記第2状態として、前記双方のジャケットに冷却液を滞留または循環させる請求項1に記載のエンジンの冷却装置。
  3. 前記ブロック用ジャケットの冷却液を抜き取ると共に、抜き取った冷却液を貯留可能な貯留機構を更に備えた請求項1又は2に記載のエンジンの冷却装置。
  4. 前記循環流路が、前記ラジエータから前記エンジンの側に接続する戻り流路と、当該戻り流路から前記ヘッド用ジャケットに分岐する第1流路と、前記戻り流路から前記ブロック用ジャケットに分岐する第2流路とを備え、
    前記貯留機構を構成する抜取流路が前記ブロック用ジャケットから前記戻り流路に接続され、
    前記ポンプを、前記戻り流路のうち、前記抜取流路が接続される接続点と、前記第1流路及び前記第2流路に分岐する分岐点との間に備えると共に、
    前記流路切換機構が、前記第2流路の冷却液の流通と前記抜取流路の冷却液の流通とを選択する弁機構を備えている請求項3に記載のエンジンの冷却装置。
  5. 前記流路切換機構が、前記冷却液の温度を検出する温度検出手段を備えると共に、当該温度検出手段にて検出された温度に基づいて、前記弁機構を制御するように構成してある請求項4に記載のエンジンの冷却装置。
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