JP2010222669A - 熱間圧延t形鋼およびその製造方法 - Google Patents

熱間圧延t形鋼およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】引張特性と靭性に優れ、且つ安価に製造することが可能な熱間圧延T形鋼を提供する。
【解決手段】C:0.07〜0.23mass%、Si:0.10〜0.50mass%、Mn:0.4〜2.0mass%、P:0.025mass%以下、S:0.01mass%以下、Al:0.005〜0.10mass%、N:0.001〜0.008mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、且つ加工フェライトを含むフェライトとパーライトとからなり、加工フェライトの面積分率が10%以上である金属組織を有する。
【選択図】なし

Description

本発明は、各種船舶(例えば、石炭船、鉱石船、鉱炭兼用船、原油タンカー、LPG船、LNG船、ケミカルタンカー、コンテナ船、ばら積み船、木材専用船、チップ専用船、冷凍運搬船、自動車専用船、重量物船、RORO船、石灰石専用船、セメント専用船など)の構造材、特にロンジ材(縦通材)に好適な熱間圧延T形鋼とその製造方法に関するものである。
船体構造の補強用形鋼として、古くは球平形鋼が用いられていたが、船体の大型化により断面性能の向上と使用鋼材の重量低減とを目的として、不等辺不等厚山形鋼(以下、NABという)が用いられることが多くなってきた。しかし、NABは左右非対称の断面形状であるため、船体を補強する場合に断面性能に方向性を有し、船体外部から水圧などの力を受けると断面内でねじり力が発生する。そのため、構造上要求される性能から、非対称であるがために発生する上記ねじり力に耐え得る断面性能の形鋼を使用しなければならず、より断面積の大きい寸法のものを使用することにより、船体重量が増加するというデメリットをもたらす場合がある。
さらに、近年新造される原油タンカーでは、改正された海洋汚染防止条約により、(a)船底と船側の構造を二重にして座礁や衝突等により船体が破れても原油が流出し難いように構成する二重船殻(ダブルハル)構造、(b)原油タンクを上下の二層に分けて船側だけを二重構造にするとともに、上下のタンクを分ける中間デッキを喫水線より下に配置することにより、下側のタンクの原油の圧力が常に周囲の水圧よりも低く保たれるようにし、座礁等により船底に穴が開いても下側のタンクの原油が浸入する海水の圧力で上に押し上げられてタンク内に閉じ込められるようにしたミッドデッキ構造、のいずれかを採用することが義務づけられている。特に二重船殻内は、積荷がない時に海水を注入して船舶の安定航行を可能とするバラストウォータータンクとして使用される。このため、船底や船壁に配置されるロンジ材は、海水に直接的に浸漬されるので、十分な耐食性を備えるようにするための防錆塗装が施され、この塗膜の密着性を確保することが要求される。
近年では、T形の断面形状で、ウェブを中心として線対称な横断面形状を有するTロンジ材が船体補強用部材として用いられるようになってきた。このTロンジ材としては、厚板を切断し、溶接組立したものが広く使用されており、このようなTロンジ材(以下、「溶接Tロンジ材」という場合がある)はウェブとフランジの接合部に溶接部を有する。この溶接部上に塗装を行った場合、溶接ビードが凹凸を有する形状であるため、塗膜厚みが不均一となり、溶接ままの表面凹凸部分やエッジ部分が選択的に腐食される原因となり、船体構造部材の腐食劣化という重大な問題が発生する。このような不健全な塗膜の形成を防ぐため、溶接Tロンジ材については、溶接ビード部表面が滑らかになるようにグラインダー等を用いた補修が行われ、その後に塗装が行われる。このような塗装前の溶接ビード部の補修は、形鋼の長手方向の全長にわたって補修が必要な部位を検査した上で、人手をかけてグラインダー等で手入れをするため、補修に時間がかかるとともに、人件費の増加によるコスト上昇を招いていた。
一方、このような溶接Tロンジ材に対して、熱間圧延で得られる形鋼をTロンジ材に利用することが行われており、このTロンジ材の場合は、溶接Tロンジ材のような溶接組立がないため、上述したような溶接部の塗装による問題は生じない。
特許文献1には、熱間圧延でH形鋼に成形した後に、ウェブ部を半裁(2分割)して製造されるT形鋼をTロンジ材として使用することが示されている。この方法では、切断後のロンジ材に曲がりが生じやすいため矯正に時間がかかり、このため製造能率が低く、T形鋼の製造コストが高いという問題がある。
また、特許文献2,3には、熱間圧延して得られたT形鋼(以下、「圧延T形鋼」という場合がある)そのものをTロンジ材として使用することが示されている。しかし、これらの文献はTロンジ材用の圧延T形鋼の形状や製造方法を開示しているだけであり、強度・靭性に優れた圧延T形鋼が得られるとは限らない。
さらに、特許文献4には、Tロンジ材に適した圧延T形鋼として、C:0.01〜0.2mass%、Si:0.001〜1mass%、Mn:0.1〜3mass%、Al:0.001〜0.2mass%、残部Fe及び不純物からなり、不純物としてP:0.03mass%以下、S:0.03mass%以下を含むとともに、下記(1)式により規定されるPcmの値が0.23mass%以下である鋼組成を有し、且つウェブの先端が圧延ロールによる圧下をされた圧延面であることを特徴とする熱間圧延T形鋼が開示されている。
Pcm=C+(Si/30)+(Mn/20)+(Cu/20)+(Ni/60)+(Cr/20)+(Mo/15)+(V/10)+5B …(1)
しかしながら、Pcmは溶接低温割れの対策の判断に用いられる指標であり、Pcmが0.23mass%以下であっても、必ずしも強度や靭性などの機械的性質が良好なT形鋼が得られるとは限らない。
特開2002−301501号公報 特開平11−342401号公報 特開2007−331027号公報 特開2008−254063号公報
船舶に用いられる厚鋼板は、使用鋼材量の低減化によるコスト削減および安全性確保の観点から、高強度化が進められており、降伏応力YSが315MPa以上で、且つ好ましくは引張強さTSが440MPa以上の高強度材が使用されるようになってきている。一方、船舶のロンジ材等に使用される鋼材、なかでも、NABやT形鋼などの熱間圧延形鋼は、同じ船舶に用いられる厚鋼板などと比較して断面形状・寸法が複雑であるため、材質造り込みの方法として、厚鋼板と同様の制御圧延・加速冷却プロセス(TMCP)を採用することは困難である。特に、圧延途中での曲がりや反りに配慮しながら、材質の造り込みを行う必要があるため、降伏応力YSが315MPa以上の高強度形鋼とするためには、形鋼独自の製造技術を検討する必要がある。
したがって本発明の目的は、ロンジ材などの船体構造材に好適な圧延T形鋼であって、引張特性と靭性に優れ且つ安価に製造することが可能な熱間圧延T形鋼を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、そのような熱間圧延T形鋼を安定的に製造することができる製造方法を提供することにある。
本発明者らは、成分組成と金属組織を種々変化させた熱間圧延T形鋼を製造し、優れた引張特性(特に降伏応力YSが315MPa以上)と靭性を有する熱間圧延T形鋼を得るために研究を重ねた結果、特定の成分組成を有し且つ適量の加工フェライトを含むフェライトとパーライトとからなる金属組織を有することが有効であること、また、このような高強度熱間圧延T形鋼を得るには、熱間圧延におけるAr点以下での累積圧下率と仕上温度を最適化することが有効であることを見出した。
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、以下を要旨とするものである。
[1]C:0.07〜0.23mass%、Si:0.10〜0.50mass%、Mn:0.4〜2.0mass%、P:0.025mass%以下、S:0.01mass%以下、Al:0.005〜0.10mass%、N:0.001〜0.008mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、且つ加工フェライトを含むフェライトとパーライトとからなり、加工フェライトの面積分率が10%以上である金属組織を有することを特徴とする熱間圧延T形鋼。
[2]上記[1]の熱間圧延T形鋼において、さらに、Cr:0.20mass%未満、Cu:0.5mass%以下、Ni:0.25mass%以下、Mo:0.5mass%以下、Co:1.0mass%以下の中から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする熱間圧延T形鋼。
[3]上記[1]または[2]の熱間圧延T形鋼において、さらに、W:0.5mass%以下、Nb:0.1mass%以下、Ti:0.1mass%以下、Zr:0.1mass%以下、V:0.2mass%以下の中から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする熱間圧延T形鋼。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかの熱間圧延T形鋼において、さらに、B:0.003mass%以下を含有することを特徴とする熱間圧延T形鋼。
[5]上記[1]〜[4]のいずれかの熱間圧延T形鋼において、さらに、Ca:0.01mass%以下、REM:0.015mass%以下、Y:0.1mass%以下の中から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする熱間圧延T形鋼。
[6]上記[1]〜[5]のいずれかに記載の成分組成を有する鋼素材を熱間圧延してT形鋼を製造する方法であって、鋼素材を1000〜1350℃に加熱した後、Ar点以下での累積圧下率を10〜80%、圧延仕上温度を(Ar点−30℃)〜(Ar点−180℃)とする条件で熱間圧延し、その後、放冷することを特徴とする熱間圧延T形鋼の製造方法。
本発明の熱間圧延T形鋼は、引張特性と靭性に優れ、しかも、厚板鋼板を溶接して製造されるT形鋼や、H形鋼などの形鋼のウェブを切断して製造されるT形鋼に比べて、安価に製造することができる。このため、特にロンジ材などの船体構造材として好適なT形鋼である。
また、本発明の製造方法によれば、そのような熱間圧延T形鋼を安定的に製造することができる。
まず、本発明の熱間圧延T形鋼の成分組成について説明する。
・C:0.07〜0.23mass%
Cは、鋼の強度を高めるのに有効な元素であり、本発明では所望の強度を得るために0.07mass%以上含有させる必要がある。一方、0.23mass%を超える添加は、溶接熱影響部(HAZ)の靭性を低下させる。このためC含有量は0.07〜0.23mass%とする。なお、後述する加工フェライトによって強度と靭性を両立させる観点からは、C含有量は0.08〜0.20mass%が好ましい。
・Si:0.10〜0.50mass%
Siは、脱酸剤として、また、鋼の強度を高めるために添加される元素であり、本発明では0.10mass%以上添加する。しかし、0.50mass%を超える添加は、鋼の靭性を低下させるので、Si含有量の上限は0.50mass%とする。
・Mn:0.4〜2.0mass%
Mnは、熱間脆性を防止し、鋼の強度を高める効果がある元素であり、0.4mass%以上添加する。しかし、2.0mass%を超える添加は、鋼の靱性および溶接性を低下させるため、Mn含有量の上限は2.0mass%とする。好ましいMn含有量は0.5〜1.6mass%である。
・P:0.025mass%以下
Pは、鋼の母材靭性、溶接性および溶接部靭性を低下させる有害な元素であり、できるかぎり低減するのが好ましい。特に、P含有量が0.025mass%を超えると、母材靭性および溶接部靭性の低下が大きくなる。よって、P含有量は0.025mass%以下とする。好ましいP含有量は0.014mass%以下である。
・S:0.01mass%以下
Sは、鋼の靭性および溶接性を低下させる有害な元素であるので、できるかぎり低減することが好ましく、本発明では0.01mass%以下とする。
・Al:0.005〜0.10mass%
Alは、脱酸剤として添加される元素であり、0.005mass%以上添加する必要がある。しかし、0.10mass%を超えて添加すると、粗大な酸化物系介在物が鋼中に存在するようになるため、靭性が却って低下するので、Al含有量の上限は0.10mass%とする。
・N:0.001〜0.008mass%
Nは、鋼の靭性に対して有害な成分である。したがって、靭性の向上を図るためには、Nはできるだけ低減することが望ましく、0.008mass%以下とする。しかし、工業的には、Nを0.001mass%未満に低減するのは難しい。よって、N含有量は0.001〜0.008mass%とする。
本発明の熱間圧延T形鋼は、上記成分組成に加えて、さらに下記A〜D群の中から選ばれる少なくとも1つの群の元素を含有することができる。
・A群;Cr:0.20mass%未満、Cu:0.5mass%以下、Ni:0.25mass%以下、Mo:0.5mass%以下、Co:1.0mass%以下の中から選ばれる1種または2種以上
Crは、鋼の強度を高めるのに有効な元素であり、必要に応じて添加することができる。しかし、0.20mass%以上添加すると、溶接部靭性を低下させるので、Crを添加する場合には、上記値を上限として添加する。一方、上記の効果を得るためには、0.01mass%以上添加することが好ましい。より好ましいCr含有量は0.02〜0.15mass%である。
Cu、Ni、MoおよびCoは、いずれも鋼の強度を高める元素であり、必要とする強度に応じて選択して添加することができる。しかし、Cu、Moは0.5mass%、Niは0.25mass%、Coは1.0mass%をそれぞれ超えて添加すると、却って靭性が低下するため、Cu、Ni、Mo、Coを添加する場合には、上記値を上限として添加する。一方、上記のような効果を得るためには、Cu、Niは0.005mass%以上、Mo、Coは0.01mass%以上添加することが好ましい。
・B群;W:0.5mass%以下、Nb:0.1mass%以下、Ti:0.1mass%以下、Zr:0.1mass%以下、V:0.2mass%以下の中から選ばれる1種または2種以上
W、Nb、Ti、ZrおよびVは、いずれも鋼の強度を高める元素であり、必要とする強度に応じて選択して添加することができる。しかし、Wは0.5mass%、Nb、Ti、Zrは0.1mass%、Vは0.2mass%をそれぞれ超えて添加すると、却って靭性が低下するため、W、Nb、Ti、Zr、Vを添加する場合には、上記値を上限として添加する。一方、上記のような効果を得るためには、W、Nb、Ti、Zrは、それぞれ0.001mass%以上、Vは0.002mass%以上添加することが好ましい。
・C群;B:0.003mass%以下
Bは、鋼の強度を高める元素であり、必要に応じて添加することができる。しかし、0.003mass%を超えて添加すると、靭性が却って低下するので、Bを添加する場合には、上記値を上限として添加する。一方、上記のような効果を得るためには、0.0002mass%以上添加するのが好ましい。
・D群;Ca:0.01mass%以下、REM:0.015mass%以下、Y:0.1mass%以下の中から選ばれる1種または2種以上
Ca、REMおよびYは、いずれも溶接熱影響部の靭性向上に効果のある元素であり、必要に応じて選択して添加することができる。しかし、Ca:0.01mass%、REM:0.015mass%、Y:0.1mass%を超えて添加すると、却って靭性の低下を招くので、Ca、REM、Yを添加する場合には、上記値を上限として添加する。一方、上記のような効果を得るためには、Caは0.0002mass%以上、REMは0.0002mass%以上、Yは0.0001mass%以上添加するのが好ましい。
本発明の熱間圧延T形鋼の上記以外の成分は、Feおよび不可避的不純物である。但し、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、上記以外の成分を含有することを妨げない。
次に、本発明の熱間圧延T形鋼の金属組織について説明する。
本発明の熱間圧延T形鋼の金属組織は、加工フェライトを含むフェライトとパーライトとからなり、加工フェライトを面積分率(金属組織全体での面積分率)で10%以上含むものである。
船体構造用鋼板、とりわけ降伏応力YSが315MPa以上の高強度厚鋼板の製造では、一般に、低炭素当量として高い溶接性を付与した鋼素材を、制御圧延と制御冷却を組み合わせたTMCP(Thermo-mechanical control Process)を採用し、第2相として硬質のベイナイト組織を導入することで高強度化を達成している。そして、低温靭性が求められる場合や、厚肉化への要求に対しては、上記制御圧延および制御冷却の条件を最適化することで対応している。したがって、このような厚鋼板の金属組織は、通常、フェライト+ベイナイト組織である。
一方、船体構造用の熱間圧延形鋼では、例えば、断面が矩形でないNABの場合には短辺と長辺の幅や厚さが異なるために、必然的に圧延時や冷却時に温度の不均一が発生する。特に、制御冷却(加速冷却)を適用した強度調整は、残留応力が不均一となり、ねじれや曲がり、反りを誘発して寸法精度の低下を招き、圧延後の矯正負荷が増大してしまう。このため、残留応力形鋼に第2相として硬質のベイナイト組織を導入して高強度化を図る制御冷却(加速冷却)技術を適用することは困難である。これについては、圧延T形鋼など熱間圧延形鋼全般に言えることである。
したがって、熱間圧延形鋼においては、圧延後の加速冷却を行うことなく、降伏応力YS:315MPa以上且つ引張強さTS:440MPa以上の高強度を達成するには、通常の圧延組織であるフェライト+パーライト組織で高強度化を図る必要がある。フェライト+パーライト組織で高強度化を実現する手法としては、第2相のパーライト分率を増やす方法、フェライト組織を一層細粒化する方法、フェライトを固溶強化や析出強化して硬くする方法、(α+γ)2相域で圧延してフェライトの一部を高転位密度化する方法(すなわち、加工フェライトを利用する方法)、などが考えられる。
上記方法のうち、フェライトを細粒化する方法は、降伏応力YSを上昇させるには有利であるが、引張強さTSの上昇は小さいため、この手法のみでは十分な高強度化は図れない。また、パーライト分率を増加させる方法は、Cを多量に添加する必要があるが、Cの過度な添加は溶接性の低下を招くため好ましくない。また、固溶強化元素や析出強化元素を添加してフェライトを強化する方法は、合金元素の多量添加により溶接性の低下を招いたり、素材コストの上昇を招いたりする。一方、加工フェライトの活用は、Cや合金元素の添加を最小限に抑え、溶接性を維持した状態で、降伏応力YSおよび引張強さTSを上昇させることができる。すなわち、加工フェライトを利用する方法は、熱間圧延後、制御冷却(加速冷却)することなく高強度化を図ることができるので、船体構造用の熱間圧延形鋼の製造時における固有の問題である圧延、冷却時の曲がりや反りの発生を抑えながら、高強度化することが可能である。そこで、本発明では、熱間圧延形鋼の高強度化手段として、鋼の金属組織を、適量の加工フェライトを含むフェライト+パーライト組織とする方法を採用することとした。
ここで、加工フェライトとは、Ar変態点以下の(α+γ)2相域での熱間圧延によって形成された加工歪が導入されたフェライトのことであり、扁平化した加工フェライトをトレースし、金属組織中に占める面積を定量化し、その面積分率を測定することができる。
加工フェライトの面積分率(金属組織全体での面積分率)が10%未満では、鋼の強化が十分に得らない。一方、加工フェライトの面積分率が70%を超えると、強度上昇が飽和すると共に、(α+γ)の2相域圧延時の荷重増大に伴うロール割損リスクが増大するため、加工フェライトの面積分率は70%以下が好ましい。
なお、本発明が規定する金属組織は、T形鋼のフランジから組織観察用の試料を採取し、板厚1/4部の金属組織を倍率200倍程度の光学顕微鏡で観察して同定する。加工フェライトの面積分率の具体的な求め方は、後述する実施例に記載のとおりである。
次に、本発明の圧延T形鋼の好ましい製造方法について説明する。
上述した成分組成を有する鋼を常法に従い溶製し、鋳造することでスラブやブルームなどの鋼素材を得る。この鋼素材を加熱炉で加熱した後、熱間圧延してT形鋼とするが、この際の鋼素材の加熱温度は1000〜1350℃とする。加熱温度が1000℃未満では変形抵抗が大きく、熱間圧延が難しくなる。一方、1350℃を超える加熱は、表面痕の発生原因となったり、スケールロスや燃料原単位が増加したりするので好ましくない。より好ましい加熱温度は1100〜1300℃である。
熱間圧延では、Ar点以下での累積圧下率を10〜80%とする。Ar点を超える温度での圧延では、鋼の金属組織が加工フェライトを含まないものとなり、必要な強度、靭性を確保することができない。同様に、Ar点以下での累積圧下率が10%未満では、加工フェライトの生成量が少ないため、強靭化効果が小さい。一方、Ar点以下での累積圧下率が80%を超えると、圧延荷重が増大して圧延が困難となったり、圧延のパス回数が増えて生産性の低下を招いたりする。Ar点以下でのより好ましい累積圧下率は10〜60%である。
また、熱間圧延の仕上温度は(Ar点−30℃)〜(Ar点−180℃)とする。圧延仕上温度が、(Ar点−30℃)を超えると(α+γ)2相域圧延による強靭化効果が十分に得られず、一方、(Ar点−180℃)未満では、変形抵抗の増大により圧延荷重が増加し、圧延することが困難となる。
上記のようなAr点以下での累積圧下率や加工フェライトの面積分率を確保するためには、例えば、ユニバーサル圧延機:U、エッジャー圧延機:Eとした場合、これらをU−E−Uと配置した圧延設備において、リバース圧延による圧延を少なくとも2パス以上実施して熱間圧延T形鋼を製造することが好ましい。また、ユニバーサル圧延機やエッジャー圧延機を複数台配置した圧延設備の場合には、1パス以上実施することで熱間圧延T形鋼を製造してもよい。
なお、以上のような熱間圧延では、圧延温度の調整を目的として被圧延材を圧延機前で待機させて放冷(空冷)してもよいが、圧延能率向上のために、圧延前や圧延パス間において被圧延材を水冷し、圧延温度調整のための待機時間を減らしてもよい。
熱間圧延後の冷却は、放冷(空冷)が好ましい。これにより、圧延後の冷却不均一から生じる曲がりや反りといった形鋼の形状変化を抑えることができ、圧延後の製品に対する矯正の負荷を軽減することができる。
表1および表2に示した成分組成を有する鋼を真空溶解炉または転炉で溶製した後、鋳造してブルームとし、このブルームを加熱炉に装入して加熱した後、表3および表4に示す条件で熱間圧延し、同表に示すサイズの圧延T形鋼を製造した。
引張特性については、フランジからJIS1A号引張試験片を採取し、降伏応力YS、引張強さTS、伸びElを測定した。
母材の衝撃特性(靱性)については、フランジからJIS−Z−2242に記載の2mmVノッチシャルピー衝撃試験片を採取し、−20℃でのシャルピー衝撃試験における吸収エネルギーを測定した。
溶接部の衝撃特性(靱性)については、フランジを20kJ/cmの入熱で突合せ多層盛り溶接(GMAW)したHAZ中央部から、JIS−Z−2242に記載の2mmVノッチシャルピー衝撃試験片を採取し、−20℃でのシャルピー衝撃試験における吸収エネルギーを測定した。母材の吸収エネルギーが31J/cm以上で、且つ溶接部の吸収エネルギーが47J/cm以上であれば、衝撃特性は良好と判断した。
また、製造されたT形鋼のフランジから組織観察用の試料を採取し、板厚1/4部の金属組織を倍率200倍の光学顕微鏡で3視野観察し、フェライト部のトレースを行った。その後、画像解析ソフトにより、フェライト粒の短軸、長軸およびアスペクト比を求めた。得られた結果から、アスペクト比が2.0以上のものを(α+γ)2相域圧延で生成した加工フェライトと定義し、それぞれの加工フェライトの面積を楕円と仮定して算出し、金属組織中に占める面積を定量化し、加工フェライトの面積分率を求めた。
圧延温度は、圧延機出側に設置された放射温度計で測定した。測定部位はフランジ外面部である。なお、表3および表4の仕上温度は、最終圧延パスの圧延機出側での圧延温度を指す。
表5および表6に、上記のようにして測定した引張特性、衝撃特性および金属組織を示す。これによれば、No.1〜11、No.20〜29の本発明例は、良好な引張特性、衝撃特性を有している。これに対して、本発明の成分組成を満足しないNo.12の比較例は降伏応力YSおよび引張強さTSが低く、同じくNo.13〜15の比較例は溶接部の衝撃特性が劣っている。また、No.16〜19の比較例は、本発明の成分組成は満足するものの、金属組織が加工フェライトを含まないか、若しくは加工フェライトを含んでいてもその面積分率が少ないため、降伏応力YSおよび引張強さTSが低い。
Figure 2010222669
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Claims (6)

  1. C:0.07〜0.23mass%、Si:0.10〜0.50mass%、Mn:0.4〜2.0mass%、P:0.025mass%以下、S:0.01mass%以下、Al:0.005〜0.10mass%、N:0.001〜0.008mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、且つ加工フェライトを含むフェライトとパーライトとからなり、加工フェライトの面積分率が10%以上である金属組織を有することを特徴とする熱間圧延T形鋼。
  2. さらに、Cr:0.20mass%未満、Cu:0.5mass%以下、Ni:0.25mass%以下、Mo:0.5mass%以下、Co:1.0mass%以下の中から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の熱間圧延T形鋼。
  3. さらに、W:0.5mass%以下、Nb:0.1mass%以下、Ti:0.1mass%以下、Zr:0.1mass%以下、V:0.2mass%以下の中から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の熱間圧延T形鋼。
  4. さらに、B:0.003mass%以下を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱間圧延T形鋼。
  5. さらに、Ca:0.01mass%以下、REM:0.015mass%以下、Y:0.1mass%以下の中から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱間圧延T形鋼。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の成分組成を有する鋼素材を熱間圧延してT形鋼を製造する方法であって、
    鋼素材を1000〜1350℃に加熱した後、Ar点以下での累積圧下率を10〜80%、圧延仕上温度を(Ar点−30℃)〜(Ar点−180℃)とする条件で熱間圧延し、その後、放冷することを特徴とする熱間圧延T形鋼の製造方法。
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