JP2010222192A - 窒化物単結晶の製造方法、テンプレート基板、および窒化物単結晶基板 - Google Patents
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Abstract
【課題】窒化物単結晶膜におけるクラックの発生を抑制する窒化物単結晶膜の製造方法、クラックの発生が抑制された窒化物単結晶基板、およびクラックの発生が抑制された窒化物単結晶膜を備えるテンプレート基板を提供する。
【解決手段】窒化物単結晶膜の製造方法は、(11−20)面からのオフ角が5°以下である下地基板1を準備する工程と、上記下地基板1の主表面上に窒化物単結晶膜3を形成する工程とを備える。前記下地基板1はSiCまたはサファイアからなることが好ましく、また、前記窒化物単結晶膜3を形成する工程における成膜温度範囲は1700℃以上2400℃以下であることが好ましい。これにより、前記テンプレート基板4の窒化物単結晶膜3はクラックの密度が低く、また、前記テンプレート基板4から下地基板1を取り除いた窒化物単結晶基板についても同様に、クラックの密度が低くなる。
【選択図】図2
【解決手段】窒化物単結晶膜の製造方法は、(11−20)面からのオフ角が5°以下である下地基板1を準備する工程と、上記下地基板1の主表面上に窒化物単結晶膜3を形成する工程とを備える。前記下地基板1はSiCまたはサファイアからなることが好ましく、また、前記窒化物単結晶膜3を形成する工程における成膜温度範囲は1700℃以上2400℃以下であることが好ましい。これにより、前記テンプレート基板4の窒化物単結晶膜3はクラックの密度が低く、また、前記テンプレート基板4から下地基板1を取り除いた窒化物単結晶基板についても同様に、クラックの密度が低くなる。
【選択図】図2
Description
本発明は、窒化物単結晶の製造方法、テンプレート基板、および窒化物単結晶基板に関するものであって、より特定的には、クラックの発生を抑制する窒化物単結晶の製造方法、クラックの発生が抑制されたテンプレート基板および窒化物単結晶基板に関するものである。
近年では、化合物半導体単結晶を利用して種々の電子デバイスが作製されている。化合物半導体単結晶のなかでも窒化物単結晶、たとえば六方晶系のAlxGayIn(1−x−y)N(0<x≦1、0≦y<1、x+y≦1)の単結晶は、種種の電子デバイスの作製に用いられる半導体材料である。
ところで、シリコンの単結晶に比べて、六方晶系のAlxGayIn(1−x−y)Nの一例であるAlGaInN系半導体の単結晶は成膜が容易ではない。より具体的には、大口径ウェハを得ることができる大きなAlGaInN系半導体単結晶を作成することが容易ではない。また、AlGaInN系半導体単結晶を高い成長速度で効率よく成膜することが容易ではない。そこで、たとえば以下の特許文献1においては、大口径で高品質のAlGaInN系単結晶を再現性よく安定して提供することが可能な、六方晶系のAlxGayIn(1−x−y)N単結晶の製造方法について開示されている。
特許文献1においては、当該単結晶の成長過程が少なくとも基板の厚み方向に進行する過程と、上記厚み方向に交差する横方向に進行する過程との2段階に変更されることを特徴とする化合物半導体単結晶の製造方法が開示されている。より具体的には、当該単結晶を上記厚み方向に成長させる過程と、上記横方向に成長させる過程とにおいて、結晶成長させる温度の設定値を変更する。このように単結晶を成長させる過程における結晶成長温度を制御することにより、単結晶が成長する方向を制御することができる。したがって、上記厚み方向と上記横方向との両方に関して当該単結晶を高い成長速度で効率よく成長させることができる。このため、比較的大口径で高品質の当該単結晶を形成することができる。
しかしながら特許文献1に開示されている単結晶の製造方法は、当該単結晶を成長させる種結晶として、成長させようとする当該単結晶と同一の化合物半導体からなる種結晶を用いている。上述したように化合物半導体単結晶は成膜が困難であるため、種結晶として用いる化合物半導体単結晶、特に窒化物単結晶は高価であり入手が困難である。このため窒化物単結晶を製造する際には成長させようとする単結晶とは異なる材質からなる種結晶(下地基板)上に当該窒化物単結晶を形成することが多い。この場合、比較的大口径の結晶成長が可能だが、得られる結晶の品質が十分ではない。たとえば、下地基板としてのSiC基板と、その上に成長するAlN結晶との間における格子不整合に起因して、AlN結晶の品質の低下が生じやすい。また、SiC基板とAlN結晶との間における熱膨張係数の差異によるクラックが発生しやすい。特にAlN単結晶は、AlGaInN系単結晶のなかでもクラックが生じやすい問題がある。
そこで、大口径のAlGaInN系結晶(特にAlN単結晶)を得るために、大口径の異種基板(SiC基板、Al2O3基板など)と形成されるべきAlN単結晶との間にバッファ層として非晶質層を形成したり、転位を遮断するためのマスク層を形成することなどによって良好品質の結晶を形成しようとする方法が試みられてきたが、未だ十分な結晶品質が得られるに至っていない。
本発明は、以上の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、クラックの発生を抑制する窒化物単結晶の製造方法および、クラックの発生が抑制されたテンプレート基板および窒化物単結晶基板を提供することである。
本発明に係る窒化物単結晶の製造方法は、(11−20)面からのオフ角が5°以下である下地基板(つまり主表面が(11−20)面からのオフ角が5°以下である面方位となっている下地基板)を準備する工程と、下地基板の一方の主表面上に、窒化物単結晶膜を形成する工程とを備える。
本発明者は鋭意研究の結果、結晶構造が六方晶である、主表面の面方位が(11−20)面ないし、(11−20)面からのオフ角が5°以下の面方位となっている下地基板の当該主表面上に窒化物単結晶膜を形成すれば、当該窒化物単結晶膜におけるクラックの発生を抑制することができることを見出した。なお、ここで主表面とは、表面のうちもっとも面積の大きい主要な面をいう。
上記下地基板はSiCまたはサファイアからなることが好ましく、上記窒化物単結晶膜はAlxGayIn(1−x−y)Nであることが好ましい。このとき、形成されるAlxGayIn(1−x−y)Nの結晶におけるクラックを少なくすることができ、当該AlxGayIn(1−x−y)Nの結晶の品質を向上させることができる。
なお、当該窒化物単結晶膜を形成する工程における、窒化物単結晶膜の成膜温度範囲は1700℃以上2400℃以下であることが好ましい。特に昇華法を用いて窒化物単結晶膜を形成する場合には、上述した温度範囲において成膜を行なうことにより、スムーズに成膜を行なうことができ、かつクラックが発生する可能性をさらに低減することができる。
本発明に係るテンプレート基板は、(11−20)面からのオフ角が5°以下である主表面を含む下地基板と、上記主表面上に窒化物単結晶膜とを備えるテンプレート基板である。上記窒化物単結晶膜の平均クラック間距離が0.1mm以上である。
上述したように(11−20)面ないし(11−20)面からのオフ角が±5°以下である主表面の面方位を有する下地基板の、当該主表面上に形成された窒化物単結晶膜にはクラックの発生する密度が低い。したがって、当該窒化物単結晶膜の主表面上において形成されるクラック間の平均距離(ここでは長さが100μm以上のクラックについて、隣接するクラック間の距離の平均値を表わす平均クラック間距離を言う)が長くなる。このことから、当該窒化物単結晶膜の結晶の品質を向上させることができる。
上記下地基板はSiCまたはサファイアからなることが好ましく、上記窒化物単結晶膜はAlxGayIn(1−x−y)Nであることが好ましい。このとき、形成されるAlxGayIn(1−x−y)Nの結晶におけるクラックを少なくすることができ、当該AlxGayIn(1−x−y)Nの結晶の品質を向上させることができる。
本発明に係る窒化物単結晶基板は、(11−20)面からのオフ角が5°以下の面方位を有する主表面を備え、平均クラック間距離が10mm以上である。たとえば上述したように(11−20)面からのオフ角が5°以下である面方位を有する下地基板の一方の主表面上に窒化物単結晶膜を形成する。このようにして、上述したテンプレート基板を得ることができる。その後、形成されたテンプレート基板の下地基板を除去することにより、窒化物単結晶膜を単独の窒化物単結晶基板として用いることができる。上述したように(11−20)面からのオフ角が5°以下である下地基板の一方の主表面上に形成した窒化物単結晶膜は、クラックの発生する密度が低い。したがって、特に当該窒化物単結晶基板の平均クラック間距離が10mm以上であれば、種種の電子デバイスを形成するための十分な品質を実現することができる。
本発明の窒化物単結晶の製造方法によれば、当該窒化物単結晶におけるクラックの発生を抑制することができる。また、本発明のテンプレート基板を構成する窒化物単結晶、および窒化物単結晶基板におけるクラックの密度が低くなる。このため、高品質の窒化物単結晶を提供することができる。
以下、図面を参照しながら、本発明の各実施の形態について説明する。なお、各実施の形態において、同一の機能を果たす要素には同一の参照符号を付し、その説明は、特に必要がなければ繰り返さない。
(実施の形態1)
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る窒化物単結晶の製造方法は、下地基板を準備する工程(S10)と、窒化物単結晶膜を形成する工程(S20)とを備えている。これらの工程を実施することにより、図2に示す、下地基板1の一方の(上側の)主表面上に窒化物単結晶膜3が形成されたテンプレート基板4が形成される。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る窒化物単結晶の製造方法は、下地基板を準備する工程(S10)と、窒化物単結晶膜を形成する工程(S20)とを備えている。これらの工程を実施することにより、図2に示す、下地基板1の一方の(上側の)主表面上に窒化物単結晶膜3が形成されたテンプレート基板4が形成される。
下地基板を準備する工程(S10)は、窒化物単結晶膜を成長させる下地として用いる基板を準備する工程である。本発明者は、鋭意研究の結果、窒化物単結晶膜を、当該窒化物単結晶と異なる材料にて構成された下地基板1の一方の主表面上に形成する際には、当該下地基板1の結晶構造が六方晶である場合、(11−20)面ないし、(11−20)面に近い面方位を主表面として有する下地基板1を用いることが好ましいことを見出した。(11−20)面に近い面方位を有する面としては、図3に示す六方晶構造10中に斜線を施した平面である(11−20)面5となす角度を示すオフ角が5°以下である面方位を有する面を用いることが好ましい。なお、たとえば図3に示す(11−20)面5に対して任意の方向のオフ角を有する平面を、当該下地基板1の主表面として用いることができる。
上述したように下地基板1は結晶構造が(11−20)面を有する六方晶からなる材料にて構成されていることが好ましく、なかでもSiCまたはサファイアを用いることが好ましい。テンプレート基板4を構成する窒化物単結晶膜3の結晶構造は六方晶系であるため、窒化物単結晶膜3を形成するために用いる下地基板1についても、六方晶系の材料からなる基板を用いることが好ましい。ただし当該下地基板1の主表面の面方位が、形成される窒化物単結晶膜3におけるクラックの密度などの品質に影響を及ぼす。このためSiCまたはサファイアからなる、主表面が(11−20)面ないし(11−20)面からのオフ角が5°以下の面方位を有する下地基板1を、窒化物単結晶膜3を形成する下地として用いることが好ましい。このようにすれば、形成される窒化物単結晶膜3におけるクラックの発生をさらに抑制することができる。
窒化物単結晶膜を形成する工程(S20)においては、下地基板を準備する工程(S10)において準備した下地基板1の一方の主表面上に窒化物単結晶膜3を形成し、上記図2に示すテンプレート基板4を形成する。ここで形成する窒化物単結晶膜3としては、六方晶系のAlxGayIn(1−x−y)N(0<x≦1、0≦y<1、x+y≦1)を用いることが好ましい。
窒化物単結晶膜3を形成する方法としては、たとえば昇華法やPLD(Pulsed Laser Deposition)(パルス・レーザー堆積)法を用いることが好ましい。ここで、たとえば昇華法を用いて窒化物単結晶膜3としてのAlNの薄膜を形成する場合においては、成膜温度範囲を1700℃以上2400℃以下とすることが好ましい。なお、昇華法を用いてAlNの薄膜を形成する場合においては成膜温度が1700℃以下であればAlNの結晶の成長が抑制される。また、2400℃以上とすると、形成されるAlNの結晶に高い密度のクラックが発生する可能性が高くなる。このため、上述した成膜温度範囲とすることが好ましく、中でも1900℃以上2100℃以下とすることがさらに好ましい。
また、PLD法を用いて窒化物単結晶膜3としてのAlNの薄膜を形成する場合においては、上記成膜温度範囲を700℃以上1200℃以下とすることが好ましい。この場合、成膜温度が700℃以下であればAlNの結晶の成長が抑制される。また、1200℃以上とすると、形成されるAlNの結晶に高い密度のクラックが発生する可能性が高くなる。このため、上述した成膜温度範囲とすることが好ましい。また、上述した温度範囲は、窒化物単結晶膜3としてAlGaInN膜を形成する場合にも適用できる。
以上の各手順により、図2に示す、(11−20)面からのオフ角が5°以下である面方位を有する主表面である、SiCまたはサファイアからなる下地基板1の主表面上に形成された窒化物単結晶膜3を備えるテンプレート基板4が形成される。当該テンプレート基板4の窒化物単結晶膜3としての六方晶系のAlxGayIn(1−x−y)N(0<x≦1、0≦y<1、x+y≦1)の結晶、またはテンプレート基板4から分離した単独の窒化物単結晶膜3の結晶における平均クラック間距離は0.1mm以上であることが好ましい。なお、上記平均クラック間距離は10mm以上であることがより好ましい。
(実施の形態2)
実施の形態1に述べたテンプレート基板4は、下地基板1の一方の主表面上に窒化物単結晶膜3が形成された構成を備える。このように下地基板1を備えるテンプレート基板4は、種種の電子デバイスの材料に用いることができる。しかし、下地基板1を取り除いた窒化物単結晶膜3の単体からなる、図5に示す窒化物単結晶基板7についても、テンプレート基板4と同様に、種種の電子デバイスの材料に用いることができる。
実施の形態1に述べたテンプレート基板4は、下地基板1の一方の主表面上に窒化物単結晶膜3が形成された構成を備える。このように下地基板1を備えるテンプレート基板4は、種種の電子デバイスの材料に用いることができる。しかし、下地基板1を取り除いた窒化物単結晶膜3の単体からなる、図5に示す窒化物単結晶基板7についても、テンプレート基板4と同様に、種種の電子デバイスの材料に用いることができる。
上述した窒化物単結晶基板7の製造方法としては、図4に示すように、下地基板を準備する工程(S10)と窒化物単結晶膜を形成する工程(S20)とを行なった後に、下地基板を除去する工程(S30)を行なう。下地基板を準備する工程(S10)と窒化物単結晶膜を形成する工程(S20)との具体的な手順は上述した図1に示す当該各工程の方法と同様である。すなわち上述した各工程を行なうことによりテンプレート基板4を形成する。
そのあと下地基板を除去する工程(S30)において、テンプレート基板4の下地基板1を除去することにより窒化物単結晶膜3を単独で残す。なお、下地基板1を除去する方法は、従来周知の任意の方法を用いることができるが、たとえばエキシマレーザを用いたアブレーションによる除去法などの手法を用いることができる。この窒化物単結晶膜3を窒化物単結晶基板7として用いれば、テンプレート基板4と同様に、種種の電子デバイスの材料として用いることができる。
なお、上述したテンプレート基板4の窒化物単結晶膜3や窒化物単結晶基板7は、いずれも(11−20)面からのオフ角が5°以下である下地基板上に形成されているため、クラックの発生密度が極めて低くなっている。具体的には、たとえば平均クラック間距離を10mm以上とすることができる。このように、テンプレート基板4の窒化物単結晶膜3や窒化物単結晶基板7の平均クラック間距離が10mm以上であれば、当該窒化物単結晶膜3や窒化物単結晶基板7は、種種の電子デバイスの材料として、良好な品質を提供することができる。
たとえば上記のテンプレート基板4の窒化物単結晶膜3や窒化物単結晶基板7は、発光ダイオード、レーザダイオード、整流器、バイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ、HEMT、温度センサ、圧力センサ、放射線センサ、可視・紫外光センサ、弾性表面波デバイスなどの電子デバイスの材料に用いられる。平均クラック間距離の大きい、高品質な窒化物単結晶膜3や窒化物単結晶基板7を用いることにより、上述した発光ダイオードやレーザダイオードなどの電子デバイスの歩留まりが向上する。さらに、上述したクラックの密度が低い窒化物単結晶膜3や窒化物単結晶基板7をたとえば発光ダイオードやレーザダイオードなどの光学素子に用いれば、光の波長変換効率や放熱特性の高い光学素子を形成することができる。また、たとえば上記窒化物単結晶膜3や窒化物単結晶基板7を圧力センサに用いれば、高性能の圧電素子を形成することができる。
上述した図1のフローチャートに基づく窒化物単結晶の製造方法を用いて、SiCからなる下地基板1(図2参照)の一方の主表面上に、窒化物単結晶膜3(図2参照)としてのAlGaInNの単結晶を形成することによりテンプレート基板4を形成した。
まず、図1に示す下地基板を準備する工程(S10)として、4H−SiC結晶からなり、主表面の面方位を種種に変更した複数の、20mm角のSiC基板を準備した。
なお従来は、たとえば主表面の面方位が(0001)面に沿った4H−SiC結晶からなる基板の主表面上にAlGaInNの単結晶層を成長させ、当該単結晶層を所望の面方位に沿った主表面を有する基板となるようスライスすることにより、所望の面方位を有する主表面を備える単結晶基板を得ていた。しかし上記方法において成長しうる単結晶層の厚みには制限があるため、上記のように単結晶層をスライスすることにより得られる単結晶基板のサイズは最大15mm角程度であった。しかし本発明においては、既存の各種面方位を持つ基板を下地基板1として準備した。このため当該下地基板1の主表面のサイズとして20mm角のものを用いている。したがって、得られる単結晶層のサイズも20mm角となり、従来の単結晶層をスライスすることにより得られる単結晶基板のサイズよりも大きなサイズの単結晶層(あるいは単結晶基板)を得ることができる。
(0001)面からのオフ角が「1°以下」、「5°以下」、「10°以下」である主表面の面方位を有する上記SiCの下地基板1を、それぞれ3枚ずつ準備した。なお、ここで「1°以下」とは、主表面が(0001)面となす角度が1°以下であることを意味し、「5°以下」とは、主表面が(0001)面となす角度が1°を超え5°以下であることを意味し、「10°以下」とは、主表面が(0001)面となす角度が5°を超え10°以下であることを意味する。またこれらの下地基板1における面方位の基準を示す(0001)面をここでは「基準面」と呼ぶことにする。
同様に基準面が(10−10)面であり、基準面からのオフ角が「1°以下」、「5°以下」、「10°以下」である主表面の面方位を有するSiCの下地基板1をそれぞれ3枚ずつ準備した。さらに同様に、基準面が(11−20)面であり、基準面からのオフ角が「1°以下」、「5°以下」、「10°以下」である主表面の面方位を有する上記SiCの下地基板1を、それぞれ3枚ずつ準備した。
次に図1に示す窒化物単結晶膜を形成する工程(S20)を以下の手順で行なった。上述した各種面方位を有するSiCの下地基板1のうちの1枚を、昇華法による成膜が可能な成膜装置の内部に配置し、当該成膜装置が搭載する、成膜したい薄膜の原料をセットするための坩堝にAlGaInNの焼結体原料をセットした。坩堝にセットしたAlGaInNと、下地基板1の成膜を行ないたい主表面とが対向するように配置した状態で、当該成膜装置の内部を排気した上で窒素ガスで充填し、坩堝を上記原料が昇華する温度にまで加熱する一方、下地基板1の温度を2000℃まで加熱した。このようにしてAlGaInNの焼結体原料からAlGaInNを昇華させた。この結果、下地基板1の一方の主表面上に、図2に示す窒化物単結晶膜3が成長することで、テンプレート基板4が形成された。
上記処理を行なった後、成膜装置の内部を冷却した上で、テンプレート基板4を成膜装置から取り出した。上記と同様の処理を、下地基板を準備する工程(S10)において準備したすべての下地基板1に対して行ない、テンプレート基板4を形成した。なお、テンプレート基板4における窒化物単結晶膜3の厚みは約1mmであった。
形成した窒化物単結晶膜3としてのAlGaInNの単結晶の主表面を、光学顕微鏡により観察し、当該AlGaInNの単結晶におけるクラックの発生状況を確認した。具体的には、AlGaInNの単結晶の主表面について、1mm角の視野で観察し、クラックの有無、存在するクラックの長さを測定した。なお、クラックの長さが100μm以上であるときクラックが存在すると判断し、隣り合う当該クラックの間隔(距離)をクラック間距離として測定した。上記の処理をAlGaInNの単結晶の主表面全体に対して5箇所で行ない、計測された各クラック間距離の平均値を「平均クラック間距離」として計測した。上記の測定、計測を各テンプレート基板4におけるAlGaInNの単結晶に対して行なった。そして上述した各下地基板1の基準面およびオフ角ごとに分類し、各分類の3枚の下地基板1の平均クラック間距離の平均値を記録した。その結果を以下の表1から表3に示す。
表1から表3において、「平均クラック間距離」とは、各分類の下地基板1の3枚分における平均クラック間距離の平均値を示す。表1から表3に示すとおり、下地基板1の材質はSiCである。基準面(0001)面からのオフ角が10°以下(5°を超え10°以下)である面方位を有する下地基板1の主表面上に形成したAlGaInNの単結晶における「平均クラック間距離」を1として、他の各分類における「平均クラック間距離」の値を相対的に表現している。
表1から表3に示すとおり、オフ角の大きさがほぼ等しい場合、基準面が(0001)面よりも(10−10)面、(10−10)面よりも(11−20)面である方が、平均クラック間距離が長くなっている。また、同一の基準面を有する下地基板1同士で比較した場合、オフ角が「1°以下」の場合と「5°以下」の場合とでは大きな差異は見られないものの、オフ角が「5°以下」の場合よりも「10°以下」の場合の方が平均クラック間距離が短くなっている。このことから、基準面からのオフ角をある程度小さくした方が平均クラック間距離を長くすることができるといえる。すなわち、基準面からのオフ角を小さく、特に5°以下にすることにより、クラックの発生する密度を低くすることができるといえる。また、基準面を(11−20)面とした場合が、最もクラック間距離を大きくできる(つまりクラックの発生密度を低減できる)ことがわかる。
なお、上記の各表においては平均クラック間距離を相対値で表現しているが、具体的には、基準面が(11−20)面でありオフ角が5°以下である面方位を有する下地基板1の主表面上に形成したAlGaInNの単結晶における平均クラック間距離は約10mmであった。
図6および図7の写真は、縦方向および横方向ともに約1mmの範囲を示しており、複数施された上向きないし下向きの矢印は、クラックの発生した箇所を示す。図6に示す、形成されるAlGaInNの単結晶の、(0001)面に近い面方位を有する主表面上にはクラックの発生の密度が高い。しかし(0001)面と(11−20)面とは結晶構造上、直角であるため、(11−20)面には(0001)面上に発生するクラックの成分は存在しない。また、図7に示すように形成されるAlGaInNの単結晶の(10−10)面は(0001)面よりもクラックの発生の密度が低い。このため図7よりも広域に観察を行なった結果を図8に示している。形成されるAlGaInNの単結晶の(10−10)面のクラックの成分は一部が(11−20)面上において観察されるが、(11−20)面上におけるクラックの密度は(0001)面や(10−10)面におけるクラックの密度よりも低くなる。
実施例2においては、上述した図1のフローチャートに基づく窒化物単結晶の製造方法を用いて、サファイアからなる下地基板1(図2参照)の一方の主表面上に、窒化物単結晶膜3(図2参照)としてのAlGaInNの単結晶を形成することによりテンプレート基板4を形成した。
まず図1に示す下地基板を準備する工程(S10)として、サファイア(Al2O3)からなり、主表面の面方位を種種に変更した複数の、20mm角のサファイア基板を下地基板1(図2参照)として準備した。上述した実施例1と同様に、基準面(0001)面、(10−10)面、(11−20)面のそれぞれに対するオフ角が「1°以下」、「5°以下」、「10°以下」である下地基板1をそれぞれ3枚ずつ準備した。
次に図1に示す窒化物単結晶膜を形成する工程(S20)を以下の手順で行なった。上述した各種面方位を有するサファイアの下地基板1のうちの1枚を、PLD法による成膜が可能な成膜装置の内部に配置し、当該成膜装置が搭載する、ターゲット受け皿部にAlGaInNの焼結体原料をセットした。ターゲット受け皿部にセットしたAlGaInNと、下地基板1の成膜を行ないたい主表面とが対向するように載置した状態で、当該成膜装置の内部を排気した上で窒素ガスで充填し、AlGaInNの焼結体原料に対してArFが発振するエキシマレーザを照射する。また、下地基板1を約1000℃に加熱する。当該エキシマレーザを照射することにより、上記AlGaInNの焼結体原料の表面温度が急激に上昇し、当該表面からの爆発的な原料粒子の放出を伴うプラズマ(アブレーションプラズマ:プルームとも言う)が生成される。プラズマ中に含まれるアブレーション粒子は、再結合や雰囲気ガスとの衝突、反応などにより状態を変化させながら下地基板1の主表面に到達し、当該主表面上にてAlGaInN膜である窒化物単結晶膜3を形成する。このようにしてテンプレート基板4を形成した。
上記処理を行なった後、成膜装置の内部を冷却した上で、テンプレート基板4を成膜装置から取り出した。上記と同様の処理を、下地基板を準備する工程(S10)において準備したすべての下地基板1に対して行ない、テンプレート基板4を形成した。なお、テンプレート基板4における窒化物単結晶膜3の厚みは約10μmであった。
形成した窒化物単結晶膜3としてのAlGaInNの単結晶の主表面を、上述した実施例1と同様に光学顕微鏡により観察し、当該AlGaInNの単結晶におけるクラックの発生状況を確認した。その結果を以下の表4から表6に示す。
表4から表6においても、「平均クラック間距離」とは、各分類の下地基板1の3枚分における平均クラック間距離の平均値を示す。表4から表6に示すとおり、下地基板1としてサファイア基板を用いた場合においても、SiC基板を用いた場合と同様に、オフ角の大きさがほぼ等しい場合、基準面が(0001)面よりも(10−10)面、(10−10)面よりも(11−20)面である方が、平均クラック間距離が長くなっている。また、同一の基準面を有する下地基板1同士で比較した場合、オフ角が「1°以下」の場合と「5°以下」の場合とでは大きな差異は見られないものの、オフ角が「5°以下」の場合よりも「10°以下」の場合の方が平均クラック間距離が短くなっている。このことから、基準面からのオフ角を小さくした方が平均クラック間距離を長くすることができるといえる。すなわち、基準面からのオフ角を小さく、特に5°以下にすることにより、クラックの発生する密度を低くすることができるといえる。
なお、上記の各表においては平均クラック間距離を相対値で表現しているが、具体的には、基準面が(11−20)面でありオフ角が5°以下である面方位を有する下地基板1の主表面上に形成したAlGaInNの単結晶における平均クラック間距離は約0.1mmであった。
以上のように本発明の各実施の形態および各実施例について説明を行なったが、今回開示した各実施の形態および各実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明は、窒化物単結晶の品質を向上する技術として、特に優れている。
1 下地基板、3 窒化物単結晶膜、4 テンプレート基板、5 (11−20)面、7 窒化物単結晶基板、10 六方晶構造。
Claims (8)
- (11−20)面からのオフ角が5°以下である下地基板を準備する工程と、
前記下地基板の一方の主表面上に、窒化物単結晶膜を形成する工程とを備える、窒化物単結晶の製造方法。 - 前記下地基板はSiCまたはサファイアからなる、請求項1に記載の窒化物単結晶の製造方法。
- 前記窒化物単結晶膜がAlxGayIn(1−x−y)Nである、請求項1または2に記載の窒化物単結晶の製造方法。
- 前記窒化物単結晶膜を形成する工程における、前記窒化物単結晶膜の成膜温度範囲が1700℃以上2400℃以下である、請求項1〜3のいずれ1項に記載の窒化物単結晶の製造方法。
- (11−20)面からのオフ角が5°以下である主表面を含む下地基板と、
前記主表面上に形成された窒化物単結晶膜とを備え、
前記窒化物単結晶膜の平均クラック間距離が0.1mm以上である、テンプレート基板。 - 前記下地基板はSiCまたはサファイアからなる、請求項5に記載のテンプレート基板。
- 前記窒化物単結晶膜がAlxGayIn(1−x−y)Nである、請求項5または6に記載のテンプレート基板。
- (11−20)面からのオフ角が5°以下の面方位を有する主表面を備え、
平均クラック間距離が10mm以上である、窒化物単結晶基板。
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