JP2010221645A - 木材の改質方法と、これにより得られる改質木材 - Google Patents

木材の改質方法と、これにより得られる改質木材 Download PDF

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聡史 福田
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Abstract

【課題】木材を変形等させることなく心材部の細胞壁も的確に改質させて、厚板材や針葉樹材であっても、染料等の処理剤を心材部にまで的確に含浸固着させるための木材の改質方法を提供する。
【解決手段】処理剤を木材へ含浸させる前処理として、アルカリ水溶液に木材を浸漬する浸漬工程と、容器内を減圧後加圧する含浸工程と、熱処理も兼ねて木材を加熱乾燥させる乾燥工程とを含むことを特徴とする。アルカリ水溶液には、必要に応じてイオン改質剤を添加しておく。アルカリ水溶液は煮沸させることなく、乾燥は70℃以下で行う。
【選択図】図2

Description

本発明は、木材を改質する方法に関する。特に、浸透性を高めて染料や樹脂などの処理剤を心材部にまで良好に含浸させ、また、処理剤を強固に固着させるために木材を改質する方法に関する。
従来から、木材の耐候性、耐水性、防腐性、防虫性、耐光性などの耐久性や、寸法安定性、機械的強度、難燃性、意匠性など、種々の性能の向上を目的として、木材に防腐剤、防蟻剤、樹脂、防炎剤、難燃剤、染料、顔料など、種々の処理剤を含浸させることが多い。特に、高級木工材料として人気の高い広葉樹大径木は、伐採規制や枯渇により入手困難な状況になっており、早急に代替可能な木材開発が必要になっている。そのため、広葉樹の代替材として、成長が早く循環利用可能な針葉樹植林木が注目されている。しかし、針葉樹は色調や材料特性等が広葉樹と異なり、使用目的等にもよるが、一般的にはそのままでは広葉樹材よりも品質が劣る。そこで、木工材料として針葉樹材を利用する場合には、広葉樹材の色調にするための染色などが必要となる。このとき、染色斑や性状向上斑を避けるため、各種処理剤を木材の心材部、すなわち木材の中心部にまで良好に含浸させ、且つ強固に固着させることが重要となる。その必要性は、処理木材が広葉樹材でも針葉樹材でも同様である。
そこで、染料や樹脂などの処理剤を木材へ良好に含浸固着させる技術として、例えば下記特許文献1〜5が提案されている。これらは大きく分けて3つの方法に分類される。第1に、アルカリ剤によって木材中のリグニン等の樹脂成分を溶出除去することで、処理剤の浸透性を向上させる方法。第2に、木材をイオン改質して処理剤の固着性を向上させる方法。第3に、木材の細胞壁(仮道管壁)内にある有縁壁孔を破壊して処理剤浸入路を確保し、浸透性を向上させる方法がある。特許文献1〜3は第1の方法に属し、特許文献3〜4は第2の方法に属し、特許文献5は第3の方法に属する。
具体的には、特許文献1では、木材単板を煮沸したあと、炭酸水素ナトリウムやリン酸水素ナトリウムなどの弱アルカリ溶液に常温又は煮沸温度にて浸漬したのち、染色している。木材としては、厚み1〜15mmの、ジェルトンやホワイトセラヤの広葉樹、又は針葉樹ではあるが広葉樹のようなアガチスを使用している。特許文献2では、木材薄板をアルカリ水溶液で煮沸した後、高温処理に耐え得る特定の黒色染料で染色している。アルカリ剤としては、弱アルカリである炭酸ナトリウムが好ましいとされているが、低濃度であれば強アルカリでも使用可能とされている。木材には、厚み0.8mmの広葉樹であるマカバ薄板を使用している。
特許文献3では、木材単板を染色する際に、染色液に界面活性剤と弱アルカリとを添加している。染色液に弱アルカリを添加することで、染色と同時に木材中の溶出成分や樹脂成分を除去し、且つ界面活性剤によって染料との新和性を向上させている。木材としては、厚み1mmのアガチスを使用している。特許文献4では、木材単板を染色するにあたり、予め木材単板の表面にイオン性基(イオン改質剤)を塗布した後養成することで、予め木材単板の表面にイオン性基を結合させ、染料との親和性を向上させている。
特許文献5は、厚みの大なる板や大径の角材等の木材、特に木材が針葉樹材の場合、木材中の樹脂分や壁孔閉鎖等によって心材部まで充分に処理剤を含浸させることができない、という問題点を解決するものである。これを詳しく説明すると、マツやスギなどの針葉樹材は、伐採後に乾燥させると、常温では木材内部へ処理剤を浸透させることが極端に難しくなる。これは、木材の骨格を形成する細胞壁内にある有縁壁孔が、トールスと呼ばれる弁によって乾燥後閉塞されるためである。有縁壁孔は生育中に水分の通り道となるが、伐採後に木材として乾燥させるとトールスが閉じ、一度トールスによって有縁壁孔が閉じると開かない特性を持っている。特に心材部は、辺材部に比べ多くの色素やリグニン等の疎水性樹脂成分が沈着した死細胞で構成されており、細胞壁を覆ったり細胞壁内に入り込んでいるので、処理剤の浸透が阻害されやすい。
そこで特許文献5では、先ず、木材をリグニンの軟化温度以上の熱水中に浸漬して軟化させた後、該熱水中で木材に圧縮率10〜50%の横圧縮処理と徐圧とを少なくとも5回以上繰り返す。これにより、木材の細胞膜を破壊させることなく壁孔部周囲と壁孔膜を破壊させ、木材本来の復元力を維持させた状態で材内浸透空隙部の拡大を図る。次いで、木材を減圧状態で乾燥してから、浸透空隙部を通じて防腐剤、防虫剤、又は合成樹脂剤等の処理液を含浸させている。これにより、針葉樹であるベイツガの厚板(厚み45mm)に対しても、処理剤を心材部にまで良好に含浸できるとされている。なお、乾燥は、木材の変性を避けるため低温(非加熱)乾燥が好ましいとしている。熱水は、70〜160℃とされている。処理剤を含浸させる際は、減圧加圧法を採用している。
特開昭54−113403号公報 特開昭58−147307号公報 特開昭61−53006号公報 特開昭60−104301号公報 特開平7−132505号公報
上述のように、特許文献1〜3ではアルカリ剤によって浸透性を向上させている。しかし、木材をアルカリ水溶液に浸漬しただけでは浸透性の向上に限界があり、実際には数mm程度の広葉樹ないし広葉樹に似た木材薄板でしか、心材部にまで処理剤を良好に含浸できない。したがって、厚み数十mmの厚板や、浸透性が低い針葉樹材に対しては、心材部にまで処理剤を良好に含浸させることが困難となる。しかも、特許文献1及び特許文献2では、木材をアルカリ水溶液で前処理した後、乾燥及び熱処理することなく染色しているので、さらに染料の浸透性や固着性の向上に限界がある。また、木材を浸漬する際にアルカリ水溶液を煮沸しているが、水溶液を煮沸すると木材が変形してしまうおそれがある。煮沸するにはエネルギーコストもかかる。特許文献3では、染色と同時にアルカリ剤を作用させているので、アルカリ剤による改質効果を的確に得られ難く、且つアルカリ剤を心材部にまで浸透させることも難しい。
特許文献3や特許文献4では、木材をイオン改質することで処理剤の定着性を向上させている。しかし、特許文献3では、染色と同時にイオン改質しているので、心材部のイオン改質は難しい。また、特許文献4では、単に木材表面にイオン改質材を塗布しているだけなので、心材部のイオン改質はできない。
これに対し特許文献5では、有縁壁孔を破壊しているので、処理剤を心材部にまで的確に浸透させることはできる。しかし、特許文献5では細胞膜を破壊させることなく機械的圧縮を繰り返すとしているが、実際には細胞膜を全く破壊させることなく圧縮することは難しく、木材に割れや変形が生じるおそれがあり品質保証の面で課題が残る。また、機械的圧縮の前に、木材をリグニンの軟化温度以上の熱水中に浸漬していることによる変形も懸念される。ここで、特許文献5では熱水温度を70〜160℃としているが、リグニンの軟化点は130℃程度であり、浸漬による含水率の増加に伴ってリグニンの軟化点が低下するとしても、70℃程度ではリグニンを確実に軟化させることは難しい。また、アルカリ剤やイオン改質剤によって木材を改質させる場合、低温(非加熱)乾燥では改質効果を十分に担保できない。
そこで、本発明は上記課題を解決するものであって、木材を変形等させることなく心材部の細胞壁も的確に改質させて、厚板材や針葉樹材であっても、処理剤を心材部にまで的確に含浸固着させるための木材の改質方法と、これにより得られる改質木材を提供することを目的とする。
すなわち本発明は、処理剤の浸透性を高めるための木材の改質方法であって、処理剤を木材へ含浸させる前処理として、以下の工程を有する。具体的には、アルカリ剤を溶解したアルカリ水溶液に木材を浸漬する浸漬工程と、前記木材を浸漬しているアルカリ水溶液の入った容器内を減圧した後、前記容器内を加圧して、前記アルカリ水溶液を前記木材内部に含浸させる含浸工程と、前記アルカリ水溶液を含浸させた木材を前記容器から取り出して、熱処理も兼ねて木材を加熱乾燥させる乾燥工程と、を含むことを特徴とする。乾燥工程における熱処理とは、アルカリ剤や必要に応じて添加する後述のイオン改質剤と木材の細胞壁等との反応性を高め、木材の細胞壁等を確実に改質させるための処理である。したがって、ここでの熱処理は、熱により細胞壁が破損することのない程度であれば足り、100℃以上の高温とすることはない。
前処理として前記各工程を経て、前記乾燥工程後の改質木材に、本処理として前記処理剤を含浸させる。その際、処理剤を含む処理溶液がイオン性の溶液であれば、アルカリ水溶液にイオン改質剤を添加することが好ましい。具体的には、処理溶液がアニオン性溶液の場合は、前記アルカリ水溶液にカチオン化剤を添加することが好ましい。処理溶液がカチオン性溶液の場合は、前記アルカリ水溶液にアニオン化剤を添加することが好ましい。一方、処理溶液がノニオン性溶液の場合は、前記アルカリ水溶液のみ、すなわちイオン改質剤を添加することを要しない。処理溶液の性状は、処理剤と共に添加する乳化剤の種類に起因する。
前記浸漬工程ないし含浸工程にかけては、必要に応じてイオン改質剤が添加されたアルカリ水溶液を煮沸させることなく行うことが好ましい。但し、アルカリ水溶液を加熱することを否定するものではない。前記乾燥工程では、70℃以下で加熱することが好ましい。
本発明は、広葉樹材はもちろん、液体浸透性の低い針葉樹材に対しても、好適に適用できる。
また、本発明によれば、上記木材の改質方法によって改質された改質木材や、当該改質木材に処理剤を含浸した木材を提供することもできる。
本発明によれば、アルカリ水溶液を木材に含浸させることで、木材中の油脂分やリグニン等の樹脂成分を分解・可溶化させる。これに伴い、針葉樹にあっては有縁壁孔を閉塞するトールスの壁孔膜も脆化、粗構造化もしくは破壊されて液体浸入路が確保されるので、浸透性が向上する。減圧加圧法によれば、アルカリ水溶液を心材部にまで的確に含浸させることができる。熱処理も兼ねた加熱乾燥を行えば、乾燥によってアルカリ水溶液が濃縮されるので、アルカリ剤や必要に応じて添加されるイオン改質剤の反応効率が向上する。また、乾燥による熱によって、アルカリ剤やイオン改質剤の反応が促進される。
含浸させる処理溶液の性状に応じて、アルカリ水溶液にカチオン化剤やアニオン化剤のイオン改質剤を添加していれば、細胞壁がイオン改質されて処理剤との親和力が向上し、処理剤を強固に固着できる。ノニオン性溶液であればイオン改質剤は不要なので、このような場合にアルカリ水溶液のみとしていれば、コストの無駄を省ける。
浸漬工程及び含浸工程においてアルカリ水溶液を煮沸させなければ、木材の変形を避けることができる。また、70℃以下で加熱乾燥すれば、効率良く熱処理(アルカリ剤やイオン改質剤の反応促進)及び乾燥(濃縮)させながらも、木材の変形を避けることができる。また、水分が急激に蒸発してアルカリ剤等が固形化することも避けられる。処理対象である木材を、従来では処理剤の均一含浸が困難であった針葉樹とすれば、本発明による効果が大きい。
本発明によれば、処理剤を木材へ含浸させる前処理として上記のような各工程を経ることで、心材部を含めて木材全体に亘って細胞壁等を確実に改質することができる。これにより、得られた改質木材に本処理として各種処理剤を含浸させたとき、例え厚板や針葉樹材であっても、当該処理剤を心材部にまで的確且つ均一に含浸させることができる。したがって、本発明を活用すれば、厚板の染色加工品、防炎・難燃木材、撥水、高強度、耐摩耗性をもった高機能性樹脂加工木材などの新しい木質材料を用いた製品化が可能となる。例えば、従来品の薄板染色木材を樹脂で貼り付けた木材製品に比較すると、厚板内部まで均一に染色加工した染色木材は、木工加工での自由度が格段に高くなり、しかも従来品に比べて高堅牢度に染色した木材が得られる。また、厚板染色加工品をスライスし薄板を集成材表面に接着した製品の場合は、色の突き合わせ等でも色むらの問題がなくなるので、大ホール用長尺幅広建築資材やフローリングなど利用範囲が拡大できる。また、本発明を樹脂加工や防炎・難燃加工に応用した製品は、建築資材用あるいは車輌内装用などの新用途開拓にも十分活用できる効果が得られる。
木材の細胞構造図である。 アルカリ剤の作用を示す有縁壁孔の要部拡大図である。 前処理の相違に基づく処理溶液含浸量を示すグラフである。 前処理の相違に基づく染色状態の違いを表す木材の断面写真である。 カチオン化剤の改質効果を示すグラフである。 アニオン化剤の改質効果を示すグラフである。 乾燥温度の相違に基づく処理溶液含浸量を示すグラフである。 従来技術の効果を示す木材の断面写真である。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、これに限られず本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。本発明は、処理剤の浸透性を高めるため、処理剤を木材へ含浸させる前処理として、木材の細胞壁等を改質している。より詳しくは、乾燥させた木材の骨格を形成する死細胞内に、各種処理剤を十分かつ容易に拡散浸透させ、且つ強固に定着させるため、木材を化学的に改質する方法である。
最終的に木材へ含浸させる処理剤としては、必要に応じて木材の耐候性、耐水性、防腐性、防虫性、耐光性などの耐久性や、寸法安定性、機械的強度、難燃性、意匠性など、種々の性能の向上を目的とするものであれば、特に限定されない。例えば、防腐剤、防蟻剤、防炎剤、難燃剤などの薬剤、樹脂、及び染料や顔料などの着色剤などを例示できる。これらは1種のみを含浸させてもよいし、2種以上を混合含浸させてもよい。防腐剤を含浸させれば防腐性が向上し、防蟻剤を含浸させれば防虫性(防蟻性)が向上し、防炎剤や難燃剤を含浸させれば難燃性が向上する。樹脂を含浸さる効果は種々あり、耐候性、耐水性、耐光性などの耐久性や、機械的強度、難燃性のほか、必要に応じてプレス加工(圧密加工)した際の寸法安定性などが向上する。染料や顔料は木材を染色(着色)するものであり、意匠性が向上する。また、染料や顔料によって染色することで、針葉樹を広葉樹の代替品化することも行われる。
樹脂としては、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、ユリア系樹脂、アミノ樹脂、グリオキザール樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリルウレタン系樹脂、及びレゾルシノール系樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。防腐剤や防蟻剤としては、フェノール類・無機フッ化物系、アルキルアンモニウム化合物系、銅・アゾール化合物系等の有機系や、ポリデン塩、グリン塩等の無機定着型、硼砂等の硼素系、トリアゾール系、ピレスロイド系などが挙げられる。防腐剤としては、NaF等のフッ化物、NaHAsO等の砒素化合物、KCr等のクロム化合物、ペンタクロルフェノール、トリクロルフェノール、ニトロフェノールなどが挙げられる。防炎剤としては、リン化合物、りん窒素化合物、ハロゲン化合物などが挙げられる。難燃剤としては、ホウ酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、炭酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、ケイ酸塩、硝酸塩、水酸塩などが挙げられる。各種処理剤は、水や有機溶媒に溶解させた溶液として、又は水等の溶媒に分散させた分散液の状態で木材に含浸させる。処理剤は、水溶性又は乳化剤によってエマルジョン化(液体分散液)できるものが好ましい。固形の処理剤が分散した固体分散液では、木材への浸透性が劣るからである。
含浸させる処理剤を含む処理溶液を、乳化剤によってエマルジョンとする場合、乳化剤の種類は処理剤の特性や用途などによって、ノニオン系、アニオン系、カチオン系のいずれかで使い分ける。例えば、水に不溶な処理剤でアニオン性に保つことで凝集しないもの、もしくは水溶液中でアニオン性を示す顔料、染料、一般的な熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、防炎剤、難燃剤などの場合はアニオン系の乳化剤を使用し、水に不溶な処理剤でカチオン性に保つことで凝集しないもの、もしくはカチオン性にしたアクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ナイロン樹脂、防腐剤などの場合はカチオン系の乳化剤を使用し、水に不溶な処理剤でイオン化したエマルジョンを用いると凝集沈殿もしくはターリングしやすい処理剤の場合はノニオン系の乳化剤を使用する。アニオン系乳化剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩類、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩類、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩類、モノオクチルスルホコハク酸ナトリウム,ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム,ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸エステル塩、及びアルカンスルホン酸塩及びその誘導体などを例示できる。カチオン系乳化剤としては、例えばドデシルアンモニウムクロリドなどのアルキルアミン塩類や、トリメチルドデシルアンモニウムブロミドなどの4級アンモニウム塩類などを例示できる。ノニオン系乳化剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、脂肪酸ポリオキシエチレンラウリルエステルなどの脂肪酸ポリオキシエチレンエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンラウリルエステルなどのポリオキシエチレンソルビタンエステル類などを例示できる。これらの乳化剤は、同系であれば1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
処理対象である木材の樹種は特に限定されず、例えばスギ、エゾマツ、カラマツ、クロマツ、トドマツ、ヒメコマツ、イチイ、ネズコ、ハリモミ、イラモミ、イヌマキ、モミ、サワラ、トガサワラ、アスナロ、ヒバ、ツガ、コメツガ、ヒノキ、イヌガヤ、トウヒ、イエローシーダー(ベイヒバ)、ロウソンヒノキ(ベイヒ)、ダグラスファー(ベイマツ)、シトカスプルース(ベイトウヒ)、ラジアータマツ、イースタンスプルース、イースタンホワイトパイン、ウェスタンラーチ、ウェスタンファー、ウェスタンヘムロック、タマラックなどの針葉樹材や、アスベン、アメリカンブラックチェリー、イエローポプラ、ウォールナット、カバザクラ、ケヤキ、シカモア、シルバーチェリー、タモ、チーク、チャイニーズエルム、チャイニーズメープル、ナラ、ハードメイプル、ヒッコリー、ピーカン、ホワイトアッシュ、ホワイトオーク、ホワイトバーチ、レッドオーク、アカシア、ユーカリなどの広葉樹材を使用することができる。好ましくは、針葉樹材である。針葉樹材は広葉樹材に比べて処理剤含浸が困難であり、本発明による効果が大きいからである。針葉樹材の中でも、マツやスギなどの成長が早く循環利用可能な針葉樹植林木が好ましい。
また、木材の形態は特に限定されず、集成材、LVL(単板積層材)、合板、無垢材など、種々の製材を使用できる。形状としては、角材よりも板材が好ましい。より好ましくは、厚み10〜40mm程度の厚板とする。薄板であれば確実に心材部まで改質できることは当然であるが、本発明では厚み数十mmの厚板でも心材部まで良好に改質できるため、その効果が大きいからである。但し、厚みが40mm程度を超えると、心材部の改質信頼性は低くなる。広葉樹であれば、厚み25mm程度の厚板でも確実に心材部を改質でき、針葉樹であれば厚み20mm程度の厚板でも確実に心材部を改質できる。次に、本発明の具体的手順について説明する。
(浸漬工程)
浸漬工程では、木材を、アルカリ剤を溶解したアルカリ水溶液に浸漬する。アルカリ剤としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、セスキ炭酸ナトリウム、セスキケイ酸ナトリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラ硼酸ソーダ、リン酸水素ナトリウム、及び酢酸ソーダなどの弱アルカリ剤を使用する。アルカリ剤の作用が強すぎると、木材自体の脆化やセルロース結晶自体が収縮膨潤し、有縁壁孔を含む各細胞壁自体が変形する可能性がある。水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、メタケイ酸ナトリウム、及びオルソケイ酸ナトリウムなどの強アルカリ剤を使用することもできるが、その場合は、弱アルカリを使用する場合よりも低濃度(1/3程度以下の濃度)で使用する。これらアルカリ剤は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を混合使用してもよい。水溶液中のアルカリ剤濃度は、樹種や木材寸法などに応じて適宜調整すればよい。例えば弱アルカリ剤を使用する場合、水溶液中の弱アルカリ剤濃度は0.01〜2重量%程度とすればよい。好ましくは、0.1〜0.5重量%程度である。水溶液中の弱アルカリ剤濃度が0.01重量%未満では、アルカリ剤による改質効果を得られ難い。水溶液中の弱アルカリ剤濃度が2重量%を超えると、細胞壁が変形するおそれがある。また、本発明では乾燥工程を経ることを前提としているので、一般的なアルカリ剤処理濃度よりも水溶液中の弱アルカリ剤濃度を低く調整することができる。したがって、弱アルカリ剤濃度の上限が0.5重量%程度でも、良好な改質効果を得られる。
なお、アルカリ水溶液には、必要に応じてイオン改質剤を添加しておく。イオン改質剤を添加するのは、処理溶液がイオン性(アニオン性又はカチオン性)溶液の場合である。したがって、処理用液がノニオン性(非イオン性)溶液であれば、イオン改質剤を添加する必要はない。イオン改質剤としては、カチオン化剤とアニオン化剤とがある。上述のように、用途等に応じて使用する乳化剤の種類によって、処理剤を含む処理溶液がアニオン性溶液の場合はアルカリ水溶液にカチオン化剤を添加し、処理溶液がカチオン性溶液の場合はアルカリ水溶液にアニオン化剤を添加する。
カチオン化剤としては、代表的にはセルロース反応型アミン塩酸塩やトリアジン基を有する4級アンモニウム塩を例示できる。詳しくは、アルキルアンモニウム塩系やピリジニウム塩系の低分子化合物、ジシアンジアミド系、ポリアミン系、ポリカチオン系等の高分子化合物がある。アルキルアンモニウム塩系としては、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、オクダデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ジメチルラウリルアンモニウムクロライド、ラウリルメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、オクタデシルジメチルエチルアンモニウムブロミド、オクタデセニルトリメチルアンモニウムブロミドなどがある。ピリジニウム塩系としては、ラウリルピリジニウムクロライド、ステアリルアミドメチルピリジニウムクロライドなどがある。高分子化合物のカチオン化剤としては、ジシアンジアミドのホルマリン縮合物、ジシアンジアミド−ポリアルキレンポリアミン重縮合物、ポリアルキレンポリアミン、ポリアルキレンポリアミンとグアニジン誘導体との縮合物、ポリエチレンイミン類、ポリアミドポリアミン類、ポリ−4−ビニルピリジン塩酸塩、ポリアクリロニトリルなどの第3級アミンポリマー、ジメチルアミン−エピクロルヒドリン縮重合物、2−メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩ポリマー、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド系ポリマー、ポリエピクロルヒドリン―トリメチルアミン反応物、ポリアルキレンポリアミン類のエポキシ化合物による4級化物のポリマー、アクリルアミド及びこれと共重合可能なカチオン性単量体の共重合物、1−ビニルイミダゾールの4級化物重合体、4級アンモニウム塩基を有するカチオン性重合体、アミノアルキルアクリルアミド系ポリマーの4級塩などの4級アンモニウム塩タイプポリマー 、ビニルピロリドンとジメチルアミノエチルメタクリレートの共重合化物の4級化物、ビニルピロリドンとメタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩の共重合物などがある。これらは、1種のみを使用してもよいし、2種以上を混合使用してもよい。
アニオン化剤としては、代表的にはカルボキシル基を持つ水溶性ポリマー又はその塩を挙げることができる。カルボキシル基を持つ水溶性ポリマー又はその塩としては、下記化学式1や化学式2で示されるモノマー単位よりなるポリマーのうちカルボキシル基又はその塩を持つものがある。


化学式1及び化学式2中、R1、R、R3は互いに独立した水素、アルキル、アリール、ヒドロキシル、アルケニル、アラルキル、又はアルカリール基である。それらは1又はそれ以上のハロゲン、ヒドロキシル、スルフェート、スルホン酸、リン酸又はカルボン酸基(または対応するスルホン酸、リン酸、カルボン酸エステル)、又はその組み合わせにより任意に置換されていてもよい。化学式1及び化学式2中Xは、水素、アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、又はアルカリール基であり、それらは1又はそれ以上のハロゲン、ヒドロキシル、 スルフェート、スルホン酸、リン酸又はカルボン酸基(または対応するスルホン酸、リン酸、カルボン酸エステル)、又はその組み合わせにより任意に置換されていてもよい。例えば、ポリオキシアルキレン−C (R1)2R4Yの式中R4は、アルキレンまたはポリオキシアルキレン、またはそれらの組み合わせで、Yは−SO3H、−O−SO3H、−CO2H、−PO3H、−O−PO3H又はそれらの塩(ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム)である。
また、その他のアニオン化剤として、ポリアクリル酸、ポリアコニット酸、ポリイタコン酸、ポリシトラコン酸、ポリフマル酸、ポリマレイン酸、ポリメタコン酸、ポリ−α−ヒドロキシアクリル酸、スルホン化ポリマレイン酸、無水マレイン酸−長鎖アルキレン共重合体、無水マレイン酸−スチレン共重合体、無水マレイン酸−メチルビニルエーテル共重合体、無水マレイン酸−エチレン共重合体、無水マレイン酸−エチレンクロスリンク共重合体、無水マレイン酸−酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸−アクリロニトリル共重合体、無水マレイン酸−アクリル酸エステル共重合体、無水マレイン酸−ブタジエン共重合体、無水マレイン酸−イソプレン共重合体、無水マレイン酸と一酸化炭素から誘導されるポリ−β−ケトカルボン酸、無水マレイン酸−スチレン共重合体のN−(3−アミノプロピル)−モルホリン半アミド、無水マレイン酸−3a,4,5,6,7,7aヘキサヒドロ−4,7−メタノイデン共重合体、マロン酸−メチレン共重合体、メタコン酸−フマル酸共重合体、エチレングリコール−エチレンテレフタレート共重合体、1−ブテン−2,3,4−トリカルボン酸−イタコン酸−アクリル酸共重合体、NTA,EDTAなどの酸とエチレングリコールから誘導されるカルボキシポリエステル、ポリアルデヒドカルボン酸、エポキシコハク酸のcis−異性体、ポリ[N,N−ビス(カルボキシメチル)アクリルアミド]、ポリ(オキシカルボン酸)、デンプンコハク酸あるいはマレイン酸あるいはテレフタル酸エステル、セルロース―コハク酸エステル、イタコン酸−エチレン共重合体、イタコン酸−アコニット酸共重合体、イタコン酸−マレイン酸共重合体、イタコン酸−アクリル酸共重合体、ポリ−α−ヒドロキシカルボン酸、ポリ(3−ヒドロキシメチル−ヘキサメチレン−1,3,5−トリカルボン酸)、ポリ(4−メトキシ−テトラメチレン−1,2-ジカルボン酸)、ポリ(テトラメチレン−1,2-ジカルボン酸)、アルギン酸ソーダ、カルボシメチルセルロース、カルボキシスターチ、ジカルボキシスターチ、ジカルボキシメチルスターチ、これらのポリカルボン酸の塩などを挙げることができる。これらは、1種のみを使用してもよいし、2種以上を混合使用してもよい。
イオン改質剤の添加量も、樹種や木材寸法などに応じて適宜調整すればよく、アルカリ水溶液中のイオン改質剤濃度は0.02〜4重量%程度とすればよい。好ましくは、1〜3重量%程度である。また、アルカリ剤とイオン改質剤とを合わせた薬剤総量は、水溶液中1〜5重量%程度、好ましくは2〜4重量%程度とすればよい。イオン改質剤や薬剤総量が上記範囲より外れた場合の問題点は、アルカリ剤について説明した問題と同じである。
(含浸工程)
含浸工程では、木材を浸漬しているアルカリ水溶液の入った容器内を減圧した後、容器内を加圧して、アルカリ水溶液を木材内に含浸させる。したがって、含浸容器は、密封耐圧容器とする。含浸工程において減圧加圧法を用いれば、木材の脱気と、アルカリ水溶液の木材内への含浸を助長させる相乗効果がある。減圧時には、できるだけ真空度を高めることが好ましい。木材中の空気を確実に脱気させるためである。具体的な内圧は特に限定されないが、目安としては、内圧0.5〜10kPa程度とする。このとき、減圧に伴って飽和蒸気圧が低下し、アルカリ水溶液の沸点が低下するので、アルカリ水溶液が沸騰しない程度に水温を調整する。真空度にもよるが、常温(室温)以下(0〜25℃)の低温で脱気することが好ましい。
一方、加圧時の圧力は、減圧時の圧力との差が大きい方が好ましい。加圧によって浸透性が向上するからである。加圧時の具体的な内圧も特に限定されないが、目安としては、0.5〜3MPa程度とする。加圧時は常温で行うことができるが、アルカリ水溶液が沸騰しない範囲で加熱することが好ましい。アルカリ水溶液を加熱することで、アルカリ剤の反応が促進されるからである。具体的には、加圧時は25〜70℃程度で行うことができる。好ましくは50〜70℃程度である。アルカリ水溶液の温度が70℃を超えると、木材が変形するおそれがある。減圧加圧含浸は、30分〜3時間程度行えばよい。
(乾燥工程)
乾燥工程では、熱処理を兼ねて加熱乾燥する。つまり、熱処理と乾燥とを同時に行う。具体的には、70℃以下で緩慢乾燥する。乾燥温度が70℃を超えると、木材が変形したり、水分が急激に蒸発してアルカリ剤等が固形化したりするおそれがある。アルカリ剤等が固形化すると、処理剤の浸透性が阻害されてしまう。乾燥温度の下限は、加熱条件である限り特に限定されないが、50℃以上が好ましい。乾燥温度が50℃未満では、アルカリ剤やイオン改質剤の反応促進効果が低くなる。好ましくは、60℃以上である。乾燥工程は、乾燥と同時に熱処理も行うので、72〜96時間かけて緩慢乾燥することが好ましい。
(作用)
次に本発明の前処理による作用について説明する。先ず、木材の細胞構造は、図1及び図2(a)に示すように、木材の骨格を形成する細胞壁(仮道管壁)10の一部には、生育中に水分の通り道となる有縁壁孔11が存在する。有縁壁孔11は、トールス12によって開閉し、当該トールス12は、壁孔膜13によって支持されている。細胞壁10は、セルロース50%、ヘミセルロース20〜30%、リグニン20〜30%、その他成分によって構成されている。
木材を、必要に応じてイオン改質剤が添加されたアルカリ水溶液に含浸し、耐圧容器内を減圧すると、木材中から空気が脱気される。これにより、アルカリ水溶液が浸透し易くなる。しかるのち、耐圧容器内を加圧すると、その圧力によってアルカリ水溶液が木材の心材部にまで均一に強制的に含浸していく。すると、アルカリ剤によって木材中の油脂分やリグニン等の樹脂成分が分解・可溶化する。同時に、図2(b)に示すように、針葉樹にあっては、トールス12及び有縁壁孔11の脆化もしくは粗構造化と同時に、壁孔膜13も脆化もしくは粗構造化、あるいは破壊されることで、トールス12が有縁壁孔11から離接して開栓され、液体浸入路が確保される。これにより、アルカリ水溶液が細胞壁10内へ浸入し、当該部分の樹脂成分がさらに分解・可溶化される。また、アルカリ水溶液にイオン改質剤が添加されていれば、当該イオン改質剤によって細胞壁10が化学的に改質される。具体的には、アルカリ水溶液にカチオン化剤が添加されていれば、当該カチオン化剤が細胞壁10内のセルロース結晶構造体中に固着し、細胞壁10がカチオン化する。一方、アルカリ水溶液にアニオン化剤が添加されていれば、当該アニオン化剤が細胞壁10内のセルロース結晶構造体中に固着し、細胞壁10がアニオン化する。
アルカリ水溶液を木材へ十分含浸させたところで、当該木材を加熱乾燥する。すると、木材中の水分が蒸発することでアルカリ剤水溶液が濃縮され、木材中の樹脂成分がさらに分解される。同時に、加熱温度によってイオン改質剤等の熱処理が行われ、樹脂成分の分解や細胞壁のイオン化改質等が促進される。木材を十分に緩慢乾燥させたところで、改質木材が得られる。得られた改質木材には、使用目的等によって求められる性状の付与ないし向上させるため、本処理として染料や樹脂などの処理剤を含む処理溶液を、公知の方法に基づいて木材に含浸させればよい。このとき、処理溶液がアニオン性であれば、事前に細胞壁10がカチオン化されているので処理溶液との親和性が良好であり、処理剤が強固に固着する。逆に、処理溶液がカチオン性であれば、事前に細胞壁10がアニオン化されているので処理溶液との親和性が良好であり、処理剤が強固に固着する。これにより、全体的に均一に性状が改良ないし付与された木材を得ることができる。
<試験1>
アルカリ剤種と処理溶液含浸量との関係を比較検討した。アルカリ水溶液として、強アルカリである0.2%水酸化ナトリウム溶液と、弱アルカリである0.4%炭酸ナトリウム溶液を使用した。これらのアルカリ水溶液には、それぞれ市販のセルロース反応型エポキシアミン塩酸塩系カチオン化剤(阪本薬品工業社製、SY−GTA80)を加え、アルカリ剤とカチオン化剤とを合わせた薬剤濃度が2重量%となるように調整した。両アルカリ水溶液を、20℃で真空減圧2kPaに30分間保持し、その後60℃に昇温して、加圧1MPaで30分間、密閉容器内でそれぞれ針葉樹ラジアタパイン材に含浸させた。アルカリ水溶液を含浸後、60℃で熱処理及び乾燥処理を72時間行い、改質木材を得た。各改質木材に対して、市販の顔料(カーボンブラック)を10重量%添加したアニオン性溶液をアルカリ水溶液と同様の含浸条件で含浸し、ラジアタパイン材に対する処理溶液含浸量(kg/m3)を調べた。強アルカリを使用した木材を木材1とし、弱アルカリを使用した木材を木材2とする。また、比較例として、アルカリ水溶液を含浸させず未改質のラジアタパイン材(未処理材)に対して、木材1や木材2と同様に顔料溶液を含浸させた木材3と、木材1や木材2と同様にアルカリ水溶液を含浸させたが、乾燥せずに顔料溶液を含浸させた木材4の、処理溶液含浸量(kg/m3)も調べた。その結果を図3に示す。
図3の結果から、弱アルカリを使用した木材2には、処理溶液が良好に含浸されていた。一方、強アルカリを使用した木材1は、弱アルカリ濃度に対して1/2の濃度としても、木材2ほどの含浸量が得られなかった。一方、木材2と木材3とを比較すると、木材2の方が含浸量は多く、強アルカリによってもある程度の改質効果があることがわかる。このような結果から、アルカリ剤としては弱アルカリが好ましく、強アルカリを使用することはできるが、その場合は、弱アルカリを使用する場合の濃度に対して1/2よりもっと低い濃度、例えば1/3以下の濃度とすることが必要であることがわかった。また、前処理において乾燥工程を経ていない木材4には、殆ど処理溶液は含浸していなかった。これにより、前処理工程において乾燥工程を経ることで、飛躍的に含浸量を増量できることが確認された。
<試験2>
次に、木材内部の改質効果の実証試験を行った。試験木材として厚み20mmのラジアタパイン厚板を使用した。木材5は、0.4%炭酸ナトリウム溶液に、薬剤総量が2重量%となるように顔料を溶解させたアルカリ顔料液に10分間浸漬した後、室温で乾燥させた。木材6は、木材4と同様の条件で浸漬した後、60℃で乾燥させた。木材7は、アルカリ剤未添加の2重量%顔料溶液に浸漬し、20℃の真空減圧2kPaで30分間保持し、その後60℃に昇温して加圧1MPaで30間保持して処理溶液を含浸させた。木材8は、0.4%炭酸ナトリウム水溶液に、薬剤総量2重量%となるように市販のセルロース反応型エポキシアミン塩酸塩系カチオン化剤(阪本薬品工業社製、SY−GTA80)を加え、木材6と同じ条件の減圧加圧法によってアルカリ水溶液を含浸させた。アルカリ水溶液を含浸後、60℃で熱処理及び乾燥処理を72時間行い、乾燥させた。得られた改質木材に対して、市販の顔料(カーボンブラック)を2重量%含むアニオン性溶液をアルカリ水溶液と同じ条件で含浸させ、60℃で乾燥させた。木材9は、木材7と同じ条件で加圧減圧含浸、乾燥させ、処理用液として市販のセルロース反応染料(住化ケミテックス社製、スミフィックスプラ、ネイビーブルー3GF150%gran)を2重量%含むアニオン性溶液を使用した。なお、木材8,9が本発明の実施例に相当し、木材5〜7は本発明に対する比較例に相当する。木材5〜9の断面写真を図4に示す。
図4の結果から、木材5及び木材6は、木材を予め改質することなく、顔料と同時にアルカリ剤を含浸させているので、室温あるいは60℃の熱処理で乾燥をしても、処理溶液は、心材部はもちろん殆ど木材内部にまで浸透せず表面のみが染色されたにすぎなかった。したがって、アルカリ剤と処理剤とを同時に含浸させても、目的とする厚板染色には不適であった。木材7は、減圧加圧含浸法によって含浸させたので、浸透しやすい晩材部分には処理溶液は含浸されているが、予めアルカリ改質を行っていないので、厚板内部全体に亘って均一に処理溶液を浸透させることはできなかった。これに対し、木材8及び木材9は、いずれも厚板内部全体に亘って均一に染色されていた。これにより、前処理としてアルカリ水溶液を減圧加圧含浸させ、熱処理と共に乾燥させれば、アルカリ水溶液が心材部を含めて木材内部全体に均一含浸され、木材全体が均一に改質されることが確認できた。
<試験3>
次に、カチオン化剤による改質効果の実証試験を行った。木材としては、試験1における木材1〜3を使用し、それぞれ試験1と同様の条件にて種々のアニオン性処理溶液を含浸させた。処理溶液としては、顔料2重量%アニオン性溶液、顔料10重量%アニオン溶液、セルロース用反応染料(住化ケミテックス社製、スミフィックスプラ、ネイビーブルー3GF150)2重量%アニオン性溶液、含金属錯塩染料(山田化学工業社製、酸性媒染染料)2重量%アニオン性溶液を使用した。各木材での表面染色濃度を、K/S:クベルカムンク式=(1−R)2/2R(0<R<1)400〜700nm、分光反射率の最小値で求めた。その結果を図5に示す。
図5の結果では、顔料及び含金属錯塩染料を含浸させた場合、木材3、木材1、木材2の順で染色濃度が高くなっていた。これは、試験1における処理用液含浸量の関係とも対応しており、木材を予めイオン改質することで、染料等を強固に固着できることが確認できた。一方、セルロース用反応染料を含浸させた場合、木材3の方が木材1よりも染色濃度が高かった。セルロース用反応染料は、本来的に木材に対する染色性が高いため、木材を予めイオン改質していなくても染色濃度は高い。しかし、強アルカリによって処理すると、反って染色性が阻害されることが確認された。その一方で、木材2の染色濃度は木材3よりも高く、的確に木材を改質していれば、本来的に染色性の高いセルロース用反応染料でも、さらに良好に染色できることが確認できた。
<試験4>
次に、アニオン化剤による木材内部の改質効果の実証試験を行った。ここでも木材1〜3を使用したが、アニオン化剤として市販のスルホン酸塩基を持つ低粘度ポリビニルアルコール系のポリマー(日本合成化学工業社、ゴーセラン)0.5重量%溶液を使用した点が異なる。処理溶液としては、2%カチオン染料(マラカイトグリーン試薬)溶液を含浸させた。染色した木材1〜3の表面染色濃度(K/S)を、図6に示す。図6の結果から、試験3(カチオン化剤)と同様にアニオン化剤によっても木材を良好に改質できる傾向を確認できた。
<試験5>
次に、乾燥温度の違いによる影響について評価した。ここでは、処理溶液含浸量が最も多かった木材2に対して、乾燥温度を60〜100℃の間で種々変化させた場合の処理用液含浸量を求めた。その結果を図7に示す。図7の結果から、乾燥温度が70℃以下であれば、処理溶液を十分に含浸させられることがわかる。一方、乾燥温度が80℃以上では、処理溶液含浸量が低下していた。これは、水分が急激に蒸発してアルカリ剤等の薬剤の一部が固形化し、浸透性が阻害されたからと考えられる。また、木材の状態を観察すると、乾燥温度70℃以下では木材に変形は全く認められなかったが、乾燥温度が80〜90℃では若干の変形が確認され、乾燥温度が100℃では変形量が大きかった。
<予備試験>
特許文献2を参考に、従来含浸法による効果について予備的に評価した。アルカリ水溶液として0.4重量%炭酸ナトリウム溶液を使用した。当該アルカリ水溶液に、厚み0.7mm(木材10)、1mm(木材11)、3mm(木材12)、5mm(木材13)、10mm(木材14)のラジアタパイン材を、それぞれ常温にて1日浸漬し、乾燥させることなく、続いて顔料2重量%溶液に常温にて6時間浸漬したあと、乾燥させた。得られた各木材の断面写真を図8に示す。図8の結果から、従来の含浸法では、厚み0.7mm(木材10)であれば心材部まで染色できるが均一ではなかった。また、厚み1mm(木材11)では心材部は殆ど染色されておらず、厚み3mm(木材12)を超えると、表面にしか染色できなかった。
10 細胞壁
11 有縁壁孔
12 トールス
13 壁孔膜

Claims (7)

  1. 処理剤の浸透性を高めるための木材の改質方法であって、
    処理剤を木材へ含浸させる前処理として、
    アルカリ剤を溶解したアルカリ水溶液に木材を浸漬する浸漬工程と、
    前記木材を浸漬しているアルカリ水溶液の入った容器内を減圧した後、前記容器内を加圧して、前記アルカリ水溶液を前記木材内部に含浸させる含浸工程と、
    前記アルカリ水溶液を含浸させた木材を前記容器から取り出して、熱処理も兼ねて木材を加熱乾燥させる乾燥工程と、
    を含むことを特徴とする、木材の改質方法。
  2. 前記乾燥工程後の改質木材に前記処理剤を含浸させる際の処理溶液が、
    アニオン性溶液の場合は前記アルカリ水溶液にカチオン化剤を添加し、
    カチオン性溶液の場合は前記アルカリ水溶液にアニオン化剤を添加し、
    ノニオン性溶液の場合は前記アルカリ水溶液のみとする、請求項1に記載の木材の改質方法。
  3. 前記浸漬工程及び含浸工程を、アルカリ水溶液を煮沸させることなく行う、請求項1または請求項2に記載の木材の改質方法。
  4. 前記乾燥工程では70℃以下で加熱される、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の木材の改質方法。
  5. 前記木材が針葉樹である、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の木材の改質方法。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の木材の改質方法によって改質された、改質木材。
  7. 請求項5に記載の改質木材に処理剤が含浸された、木材。





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