JP2010220488A - 細胞培養物移送器具 - Google Patents
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Abstract
ヒト及び動物の疾病、傷病の治療に用いる細胞培養物の移植操作において、従来の支持体や運搬投与器具に代わる簡便な操作性を有する器具を提供する。
【解決手段】
少なくとも1つの開口を備えた疎水性の細胞培養物保持表面を有する細胞培養物保持部と、該開口を介して液体を吸引することができる、該細胞培養物保持部の細胞培養物保持表面とは反対の側に配置された吸液部とを備え、前記開口が、前記細胞培養物を前記細胞培養物保持部に接触させたときに、該細胞培養物が前記細胞培養物保持表面と少なくとも1つの接点を有するよう構成されている器具の提供により、細胞培養物の移植操作を極めて簡便、迅速、かつ確実に行うことを可能とした。
【選択図】 図2
Description
これらの原因と重症度に応じて弁形成術や置換術、冠動脈バイパス術、左室形成術、機械的補助循環などが適用される。
重症心筋梗塞等においては、心筋細胞が機能不全に陥り、さらに線維芽細胞の増殖、間質の線維化が進行し心不全を呈するようになる。心不全の進行に伴い、心筋細胞は傷害されてアポトーシスに陥るが、心筋細胞は殆ど細胞分裂をおこさないため、心筋細胞数は減少し心機能の低下もさらに進む。
このような重症心不全患者に対する心機能回復には細胞移植法が有用とされ、既に自己骨格筋芽細胞による臨床応用が欧米で開始されている。
しかし、培養細胞移動治具の細胞付着部の表面上に存在する細胞接着性タンパク質(例えばフィブリン)に接着した培養細胞をそこから剥離させることは容易ではない。培養細胞を適用しようとする部位と培養細胞の接着がより強くなければ細胞接着性タンパク質から培養細胞は剥離しないと考えられる。前記特許文献2において培養細胞移動治具の細胞付着部から培養細胞を剥離するためには、細胞付着部と培養細胞との付着力を弱めるとの課題が示されたのみで、この課題を具体的に解決する手段は明示されていない。したがって、この細胞培養移動治具は細胞付着部に接着した培養細胞を剥離することが難しく、操作性という点で問題があった。
この問題を改善すべく、特許文献4の運搬投与器具が提供されたが、その構造は、円筒状の外筒と、該外筒内に軸線方向へ摺動可能に支持されたスライド部材と、シート状の治療用物質を支持してスライド部材の先端部に設けられ、外筒の先端部から突出された自由状態では平面状の展開形状に保たれ、スライド部材の摺動移動に応じて外筒の内部方向に移動されたときに該外筒の先端部に当接して筒状に変形しながら外筒内に収納されるシート支持部材とを有するもので、未だ複雑であり、簡便な操作性を有する移植用器具とは言い難い。
(2)中空のハウジングをさらに備え、吸液部が該ハウジングの内部に配置され、該ハウジングの少なくとも1つの外面が細胞培養物保持部として構成されている、上記(1)の器具。
(3)細胞培養物保持表面が、細胞培養物を送達する部位より疎水性である、上記(1)または(2)の器具。
(4)細胞培養物保持表面の開孔率が、その面積に対し5〜90%である、上記(1)〜(3)のいずれかの器具。
(5)細胞培養物保持部が、単孔体、多孔体またはメッシュの形態を有する、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の器具。
(6)開口壁の厚みが0.1〜2.0mmである、上記(1)〜(5)のいずれかの器具。
(7)吸液部が吸液性材料を含む、上記(1)〜(6)のいずれかの器具。
(8)吸液性材料が、多孔体、不織布、ポリマー材、パルプ材および紙材からなる群から選択される1種または2種以上の材料を含む、上記(7)の器具。
(9)操作ハンドルをさらに備えた、上記(1)〜(8)のいずれかの器具。
(10)ハウジングが、含水した吸液性材料の排液操作を行うための、外部から操作可能な可動板を内部に配する、上記(7)〜(9)のいずれかの器具。
(11)ハウジングが、吸液性材料の交換を行うための開閉部を有する、上記(7)〜(10)のいずれかに記載の器具。
(12)細胞培養物を回収および送達するための方法であって、
(I)上記(1)〜(11)のいずれかの器具を提供するステップ、
(II)前記器具の細胞培養物保持部を液体中に遊離した細胞培養物に接触させるステップ、
(III)細胞培養物を、吸液部による液体の吸引と共に細胞培養物保持部に吸着させて回収するステップ、
(IV)細胞培養物を細胞培養物保持部に吸着させたまま、細胞培養物保持表面より親水性である標的部位まで移動させるステップ、
を含む前記方法。
(13)標的部位が、その表面に水分を実質的に有しない、上記(12)の方法。
このように、本発明により、容易、迅速且つ確実に、細胞培養物を患部に移植(貼付)することが可能となる。
また、本発明の器具は、構成が簡易であり、滅菌処理(例えば、エチレンオキサイドガスなど)が可能で、且つ操作性も極めて良好である。
細胞培養物保持部は、細胞培養物を吸着・保持する部分(吸着および/または保持する部分)である。細胞培養物が補填材料や支持材料を含む場合、細胞培養物は、これに含まれる細胞やその産生物と細胞培養物保持部との保持性により保持される。保持部は、吸着・保持した細胞培養物と、吸液部との境をなす構造であり、吸液部と別部材であっても同一部材であってもよい。別部材である場合、保持部は所定の厚みを有する任意の形状を有することができる。保持部は、例えば、平面状、凹面状、凸面状、メッシュ状であってもよく、柔軟であっても、硬質であってもよい。本発明の好ましい態様において、保持部は、後述のハウジングの一部として構成してもよい。また、吸液部と同一部材である場合、保持部は、吸液部の一部に所定の深さの孔や溝を形成することにより構築することができる。ここで、保持部の厚み、または、吸液部に設けた孔や溝の深さは、好ましくは0.1〜2.0mm、より好ましくは0.1〜1.0mmである。本発明の一態様において、保持部の外径は、1.0〜10cmであることが好ましく、2.0〜6.0cmであることがより好ましい。
吸液性材料としては、特に限定されないが、可逆的に吸液および排液を構造的に行うことができる材料が好ましい。すなわち、吸液はするが排液ができない材料より吸液ができおよび排液ができる材料が好ましい。吸液および排液ができる材料として、例えば、吸液排液性ポリマーが挙げられる。具体的には、ポリウレタン、ポリウレタンフォーム、ポリウレタンスポンジ、ポリプロピレンウレタンスポンジ、ナイロン不織布、メラミンフォーム、綿状パルプ、吸液紙などがあげられるが、これらの例示に限定されるものではない。
また、本発明の一態様において、本発明の器具は滅菌可能な材料で構成されることが好ましい。滅菌手法としては、限定することなく、エチレンオキサイドガスなどによるガス滅菌、オートクレーブ滅菌、煮沸滅菌などが挙げられる。別の態様において、本発明の器具は、滅菌された状態で提供される。
本発明の器具は、使い捨て(ディスポーザブル)であっても、再使用可能なものであってもよい。この場合、本発明の器具の全体が使い捨てであっても、再使用可能であってもよく、または、その一部、例えば、吸液部や吸液性材料のみが使い捨てであり、残りの部分が再使用可能であってもよい。
本発明の器具はまた、透明もしくは半透明の材料で構成することもできる。これにより、器具の操作者は、器具越しに細胞培養物や送達部位の位置や状態を視認することができ、視線や姿勢を変えずに作業することが可能となる。
また、本発明の器具は、ヒト及び動物の疾病、傷病の治療に用いる細胞培養物の移植操作に限らず、液中に遊離した種々の材料の回収および送達に用いることができる。したがって、本発明の器具は、医療用途に限られず、研究用途や工業用途にも用いることができる。
(I)前記器具を提供するステップ、
(II)前記器具の細胞培養物保持部を液体中に遊離した細胞培養物に接触させるステップ、
(III)細胞培養物を、吸液部による液体の吸引と共に細胞培養物保持部に吸着させて回収するステップ、
(IV)細胞培養物を細胞培養物保持部に吸着させたまま、細胞培養物保持表面より親水性である標的部位まで移動させるステップ、
を含む細胞培養物を回収および送達するための方法に関する。
上記ステップ(IV)において、移動は好ましくは空気中で行う。
(V)細胞培養物を標的部位に接触させ、これにより細胞培養物を保持部から剥離するステップ、
(VI)細胞培養物を目的とする面に移植するステップ、
を含んでもよい。
前記方法はさらにまた、上記ステップ(V)の前に、(V’)標的部位の水分を実質的に除去するステップを含んでもよい。したがって、同ステップの後の標的部位は、その表面に水分を実質的に有しないものとなる。
図1は本発明の器具Aの側部概略図と、培養液に浸漬中の細胞培養物側部概略図、図2は本発明の器具Aの側部断面図、図3は本発明の器具Aの保持部下面図、図4は本発明の器具Aの上面図、図5A、Bは本発明の器具Aのハウジング部の側部断面で、含水した吸液性材料の排液操作を示した概略図、図6A、Bは本発明の器具Aの正面部で、吸液性材料の交換の際に開閉する操作を示した概略図である。図7A、B、C、Dは、本発明の器具Aの側部概略図で、培養液に浸漬中の細胞培養物とともに、器具Aを用いた細胞培養物の吸着、保持、剥離(移植)の様子を示した概略図である。図8は、図3とは異なる形状の開口を示した保持部下面図である。図9は、吸液部と保持部が別部材からなる、ハウジングを有さない本発明の器具の下面図および側面図である。図10は、吸液部と保持部が同一部材からなる、ハウジングを有さない本発明の器具の下面図および側面図である。
吸液性材料11を有しない態様において、吸液は、例えば、シリンジなどの吸液機構により行うことができる。
これは、保持部12に吸着した細胞培養物4の表面は、空気(気体)と接しているが、細胞培養物4に浸漬液5(液体)が含まれているところ、気体は液体よりも分子密度が小さいことから、細胞培養物4には、空気側の分子からではなく、浸漬液5内側の分子からのみ引っ張られる表面張力が働くこととなる。こうして、細胞培養物4を浸漬液5とともに吸着させることで、優れた保持効果を得ることができる。
ハウジングを有しない態様において、上記排液操作は、例えば、吸水部を手で圧迫することにより行うことができる。
この器具Aの効果を確認するために、次の実験を行った。
保持部12の直径φ4cm、高さ2cm、側面厚3.0mm、上面厚3.0mm、保持部厚1.0mmの中空直方体の疎水性ハウジング(テフロン(登録商標))に、保持部12の表面積に対し20%の開口率となるよう直径φ1.0mmの孔を均等に配した。このハウジング内部に空間占有率90%となるようポリウレタンスポンジを収納し、器具1を得た。
市販の細胞培養物の支持体(CellShifterTM、セルシード製、直径φ3cm)を用意し、これを器具2とした。
器具1および2について、それぞれ、直径φ2.7〜3.1cm、厚さ400〜470μmの細胞培養物を、吸着、保持、移植(貼付)の一連の操作を行った。
1・・・ハウジング
11・・・吸液性材料
12・・・保持部
121・・・保持表面
13・・・開口
131・・・開口壁(厚み)
14・・・排液口
15・・・上面
16・・・溝
17・・・前面
18・・・開閉部
19・・・法線
2・・・ハンドル
21・・・軸
3・・・排液操作部
31・・・可動板
θ・・・傾斜角度
4・・・細胞培養物
5・・・浸漬液
6・・・容器
7・・・患部
Claims (13)
- 液体中に遊離した状態の細胞培養物を回収および送達するための器具であって、少なくとも1つの開口を備えた疎水性の細胞培養物保持表面を有する細胞培養物保持部と、該開口を介して液体を吸引することができる、該細胞培養物保持部の細胞培養物保持表面とは反対の側に配置された吸液部とを備え、前記開口が、前記細胞培養物を前記細胞培養物保持部に接触させたときに、該細胞培養物が前記細胞培養物保持表面と少なくとも1つの接点を有するよう構成されている、前記器具。
- 中空のハウジングをさらに備え、吸液部が該ハウジングの内部に配置され、該ハウジングの少なくとも1つの外面が細胞培養物保持部として構成されている、請求項1に記載の器具。
- 細胞培養物保持表面が、細胞培養物を送達する部位より疎水性である、請求項1または2に記載の器具。
- 細胞培養物保持表面の開孔率が、その面積に対し5〜90%である、請求項1〜3のいずれかに記載の器具。
- 細胞培養物保持部が、単孔体、多孔体またはメッシュの形態を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の器具。
- 開口壁の厚みが0.1〜2.0mmである、請求項1〜5のいずれかに記載の器具。
- 吸液部が吸液性材料を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の器具。
- 吸液性材料が、多孔体、不織布、ポリマー材、パルプ材および紙材からなる群から選択される1種または2種以上の材料を含む、請求項7に記載の器具。
- 操作ハンドルをさらに備えた、請求項1〜8のいずれかに記載の器具。
- ハウジングが、含水した吸液性材料の排液操作を行うための、外部から操作可能な可動板を内部に配する、請求項7〜8のいずれかに記載の器具。
- ハウジングが、吸液性材料の交換を行うための開閉部を有する、請求項7〜9のいずれかに記載の器具。
- 細胞培養物を回収および送達するための方法であって、
(I)請求項1〜11のいずれかに記載の器具を提供するステップ、
(II)前記器具の細胞培養物保持部を液体中に遊離した細胞培養物に接触させるステップ、
(III)細胞培養物を、吸液部による液体の吸引と共に細胞培養物保持部に吸着させて回収するステップ、
(IV)細胞培養物を細胞培養物保持部に吸着させたまま、細胞培養物保持表面より親水性である標的部位まで移動させるステップ、
を含む前記方法。 - 標的部位が、その表面に水分を実質的に有しない、請求項12に記載の方法。
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