JP2010218767A - 有機電界発光素子用組成物の製造方法、有機電界発光素子用組成物、有機電界発光素子、有機elディスプレイ及び有機el照明 - Google Patents

有機電界発光素子用組成物の製造方法、有機電界発光素子用組成物、有機電界発光素子、有機elディスプレイ及び有機el照明 Download PDF

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Abstract

【課題】
本発明は、低分子化合物と溶媒とを含有する有機電界発光素子用組成物であって、該組成物を用いて形成した有機層を有する有機電界発光素子の耐久性を高め、長寿命化を図ることができる有機電界発光素子用組成物、及びその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
即ち、本発明は、低分子化合物と溶媒とを含有する有機電界発光素子用組成物であって、該組成物の低分子化合物成分と溶媒成分の一部又は全部を混合した後、60℃以上で、かつ該混合物に含まれる最も沸点の低い溶媒成分の沸点よりも10℃以上低い温度範囲に加熱する工程、又は超音波振動させる工程を含むことを特徴とする、有機電界発光素子用組成物の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、有機電界発光素子用組成物の製造方法、該製造方法で製造された有機電界発光素子用組成物に関する。
本発明はまた、上記組成物を用いて形成される有機層を有する有機電界発光素子、並びにこれを備える有機ELディスプレイ及び有機EL照明に関する。
デジタル放送への完全移行を目前に控え、視認性の高い高画質の表示素子への要求がますます高くなっている現在、次世代表示素子として有機電界発光(electroluminescence:以下「EL」と略称する場合がある。)素子が注目を集めている。
薄い・低電圧・高コントラスト・高速応答・広い視野角などの長所を有する有機電界発光素子であるが、その中小型ディスプレイへの実用化は進んでおり、携帯電話や携帯音楽プレーヤーの表示ディスプレイとして街中でも目にする機会が多くなっている。現在では、テレビのような大型ディスプレイへの実用化に向けた開発が進められている。
実用化されている有機電界発光素子の有機層の形成は、多くの場合、低分子系色素等を真空蒸着により積層することで行なわれている。しかし、真空蒸着法では大面積に均一に製膜することが困難であり、大面積のディスプレイを製造するには課題があった。これに対して、積層型有機電界発光素子の複数の有機層を、スピンコート法、インクジェット法、各種印刷法などの湿式成膜法によって形成する製造法が提案されている。
しかしながら、湿式製膜法により製造された有機電界発光素子は、真空蒸着法により製造された有機電界発光素子に比較して発光効率や駆動寿命が低くなる傾向にある、という問題を有していた。
特許3069139号公報 特開平11−273859号公報
本発明は、低分子化合物と溶媒とを含有する有機電界発光素子用組成物であって、該組成物を用いて形成した有機層を有する有機電界発光素子の耐久性を高め、長寿命化を図ることができる有機電界発光素子用組成物、及びその製造方法と、該組成物を用いて形成された有機層を有する高耐久性かつ長寿命の有機電界発光素子、及びその製造方法、並びに有機ELディスプレイ及び有機EL照明を提供することを課題とする。
本発明者等は鋭意検討した結果、湿式製膜法により製造された有機電界発光素子は、真空蒸着法により製造された有機電界発光素子に比較して発光効率や駆動寿命が低くなる傾向にある原因を以下の通り見出した。
まず、湿式成膜法で形成された有機層中に含有される成分が形成する構造形態が、真空蒸着法で形成された有機層中の構造形態と異なっていることが考えられる。
つまり、同材料を用いた場合、湿式成膜法で形成した有機層の密度は、真空蒸着法で形成した有機層の密度に比べて低くなっていることが推測される。
これは、湿式成膜法で形成された有機層中の成分が、凝集状態になっており、有機層中の密度が不均一に分布してしまっていることが一因と考えられる。さらに、溶媒を含む組成物を用いて湿式成膜法で有機層を形成する場合、各成分の偏析も上記一因と推測される。
これらの知見を元にさらに検討を重ねた結果、該組成物の低分子化合物成分と溶媒成分を混合した後、特定の温度条件で加熱する工程を含む製造方法により製造した組成物を用いて、有機層を形成することにより、上記課題を解決することを見出して、本発明に到達した。
即ち、本発明は、低分子化合物と溶媒とを含有する有機電界発光素子用組成物であって、該組成物の低分子化合物成分と溶媒成分の一部又は全部を混合した後、60℃以上で、かつ該混合物に含まれる最も沸点の低い溶媒成分の沸点よりも10℃以上低い温度範囲に加熱する工程を含むことを特徴とする、有機電界発光素子用組成物の製造方法に存する(「本発明の第一の有機電界発光素子用組成物の製造方法」と称する場合がある)。
また、本発明は、低分子化合物と溶媒とを含有する有機電界発光素子用組成物の製造方法であって、該組成物の低分子化合物と溶媒とを混合した混合物を、超音波振動させる工程を含むことを特徴とする、有機電界発光素子用組成物の製造方法に存する(「本発明の第二の有機電界発光素子用組成物の製造方法」と称する場合がある)。
本発明はまた、上記有機電界発光素子用組成物の製造方法で製造された、有機電界発光素子用組成物、有機電界発光素子、並びに、有機ELディスプレイ及び有機EL照明に存する。
尚、「本発明の有機電界発光素子用組成物の製造方法」とした場合は、「本発明の第一の有機電界発光素子用組成物の製造方法」、及び「本発明の第二の有機電界発光素子用組成物の製造方法」の双方を示すものとする。
本発明の有機電界発光素子用組成物の製造方法で製造された組成物を用いて、湿式成膜法で形成される有機層を有する有機電界発光素子は、高い輝度を有し、また駆動寿命の長い有機電界発光素子が得られる。
本発明の有機電界発光素子の構造の一例を模式的に示す断面図である。
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明は、これらの内容に特定はされない。
本発明の第一の有機電界発光素子用組成物の製造法は、低分子化合物と溶媒とを含有する有機電界発光素子用組成物の製造方法であって、該組成物の低分子化合物と溶媒を混合した混合物を、60℃以上で、かつ該混合物に含まれる最も沸点の低い溶媒の沸点よりも10℃以上低い温度範囲に加熱する工程を含むことを特徴とする、有機電界発光素子用組成物の製造方法である。
また、本発明の第二の有機電界発光素子用組成物の製造方法は、低分子化合物と溶媒とを含有する有機電界発光素子用組成物の製造方法であって、該組成物の低分子化合物と溶媒を混合した混合物を、超音波振動させる工程を含むことを特徴とする、有機電界発光素子用組成物の製造方法である。
<構成>
本発明の有機電界発光素子用組成物は、低分子化合物と溶媒とを含有する組成物である。
[低分子化合物]
本発明における低分子化合物とは、単一の分子量で規定される化合物をいう。
低分子化合物としては、以下の発光性低分子化合物及び/又は電荷輸送性低分子化合物であることが好ましい。
[発光性低分子化合物]
本発明の有機電界発光素子用組成物は、低分子化合物として発光性低分子化合物を含有することが好ましい。
発光性低分子化合物としては、単一の分子量で規定される発光の性質を有する化合物であれば特に制限はなく、公知の材料を適用可能である。例えば、蛍光発光性低分子化合物であってもよく、燐光発光性低分子化合物であってもよいが、内部量子効率の観点から、好ましくは燐光発光性低分子化合物である。
なお、溶媒への溶解性を向上させる目的で、発光性低分子化合物の分子の対称性や剛性を低下させたり、或いはアルキル基などの親油性置換基を導入したりすることが好ましい。
以下、発光性低分子化合物のうち蛍光発光性低分子化合物の例を挙げるが、蛍光発光性低分子化合物は以下の例示物に限定されるものではない。
発光材料のうち蛍光発光材料の例を挙げるが、蛍光発光材料は以下の例示物に限定されるものではない。
青色発光を与える蛍光発光材料(青色蛍光発光材料)としては、例えば、ナフタレン、ペリレン、ピレン、アントラセン、クマリン、クリセン、p−ビス(2−フェニルエテニル)ベンゼン及びそれらの誘導体等が挙げられる。
緑色発光を与える蛍光発光材料(緑色蛍光発光材料)としては、例えば、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、Al(CNO)などのアルミニウム錯体等が挙げられる。
黄色発光を与える蛍光発光材料(黄色蛍光発光材料)としては、例えば、ルブレン、ペリミドン誘導体等が挙げられる。
赤色発光を与える蛍光発光材料(赤色蛍光発光材料)としては、例えば、DCM(4−(dicyanomethylene)−2−methyl−6−(p−dimethylaminostyryl)−4H−pyran)系化合物、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテン等が挙げられる。
燐光発光材料としては、例えば、長周期型周期表(以下、特に断り書きの無い限り「周期表」という場合には、長周期型周期表を指すものとする。)第7〜11族から選ばれる金属を含む有機金属錯体が挙げられる。
周期表第7〜11族から選ばれる金属として、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金等が挙げられる。
錯体の配位子としては、(ヘテロ)アリールピリジン配位子、(ヘテロ)アリールピラゾール配位子などの(ヘテロ)アリール基とピリジン、ピラゾール、フェナントロリンなどが連結した配位子が好ましく、特にフェニルピリジン配位子、フェニルピラゾール配位子が好ましい。ここで、(ヘテロ)アリールとは、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
燐光発光材料として、具体的には、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム、トリス(2−フェニルピリジン)ルテニウム、トリス(2−フェニルピリジン)パラジウム、ビス(2−フェニルピリジン)白金、トリス(2−フェニルピリジン)オスミウム、トリス(2−フェニルピリジン)レニウム、オクタエチル白金ポルフィリン、オクタフェニル白金ポルフィリン、オクタエチルパラジウムポルフィリン、オクタフェニルパラジウムポルフィリン等が挙げられる。
発光材料として用いる化合物の分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常10000以下、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3000以下、また、通常100以上、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは400以上の範囲である。発光材料の分子量が小さ過ぎると、耐熱性が著しく低下したり、ガス発生の原因となったり、膜を形成した際の膜質の低下を招いたり、或いはマイグレーションなどによる有機電界発光素子のモルフォロジー変化を来したりする場合がある。一方、発光材料の分子量が大き過ぎると、発光材料の精製が困難となってしまったり、溶媒に溶解させる際に時間を要したりする傾向がある。
なお、上述した発光材料は、いずれか1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
以下に、発光性低分子化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、Hexは、ヘキシル基を表す。
<発光性低分子化合物の例示>
Figure 2010218767
Figure 2010218767
[電荷輸送性低分子化合物]
本発明の有機電界発光素子用組成物は、低分子化合物として、電荷輸送性低分子化合物を含んでいることが好ましい。
本発明においては、電荷輸送性低分子化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
尚、本発明の有機電界発光素子は、前記組成物を用いて形成された発光層を有し、該発光層において、発光材料をドーパント材料とし、電荷輸送性低分子化合物をホスト材料として用いることが好ましい。
電荷輸送性低分子化合物は、従来有機電界発光素子の発光層に用いられている化合物であればよく、特に発光層のホスト材料として使用されている化合物が好ましい。
電荷輸送性低分子化合物として具体的には、芳香族アミン系化合物、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、オリゴチオフェン系化合物、ポリチオフェン系化合物、ベンジルフェニル系化合物、フルオレン基で3級アミンを連結した化合物、ヒドラゾン系化合物、シラザン系化合物、シラナミン系化合物、ホスファミン系化合物、キナクリドン系化合物、アントラセン系化合物、ピレン系化合物、カルバゾール系化合物、ピリジン系化合物、フェナントロリン系化合物、オキサジアゾール系化合物、シロール系化合物等が挙げられる。
例えば、4,4'−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルで
代表わされる2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5−234681号公報)、4,4',4''−トリス(1−ナフ
チルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン系化合物(J.Lumin.,72−74巻、985頁、1997年)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン系化合物(Chem.Commun.,2175頁、1996年)、2,2',7,7'−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9'−スピ
ロビフルオレン等のフルオレン系化合物(Synth.Metals,91巻、209頁、1997年)、4,4'−N,N'−ジカルバゾールビフェニルなどのカルバゾール系化合物、2−(4−ビフェニリル)−5−(p−ターシャルブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(tBu−PBD)、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール(BND)などのオキサジアゾール系化合物、2,5−ビス(6’−(2’,2”−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール(PyPySPyPy)等のシロール系化合物、バソフェナントロリン(BPhen)、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP、バソクプロイン)などのフェナントロリン系化合物等が挙げられる。
以下に、電荷輸送性低分子化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、式中、Buはブチル基、Etはエチル基を表す。
<電荷輸送性低分子化合物の例示>
Figure 2010218767
[溶媒]
また、溶媒は、発光性低分子化合物及び電荷輸送性低分子化合物が良好に溶解する溶媒であれば特に限定されない。
溶媒の溶解性としては、常温・常圧下で、発光性低分子化合物及び電荷輸送性低分子化合物を、各々、通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上溶解することが好ましい。
以下に溶媒の具体例を挙げるが、本発明の効果を損なわない限り、これらに限定されるものではない。
例えば、n−デカン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリン、ビシクロヘキサン等のアルカン類;トルエン、キシレン、メチシレン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素類;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール、ジフェニルエーテル等の芳香族エーテル類;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル類、シクロヘキサノン、シクロオクタノン、フェンコン等の脂環族ケトン類;シクロヘキサノール、シクロオクタノール等の脂環族アルコール類;メチルエチルケトン、ジブチルケトン等の脂肪族ケトン類;ブタノール、ヘキサノール等の脂肪族アルコール類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル類;等が挙げられる。
中でも好ましくは、アルカン類や芳香族炭化水素類である。これらの溶媒は1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
また、より均一な膜を得るためには、成膜直後の液膜から溶媒が適当な速度で蒸発することが好ましい。このため、溶媒の沸点は通常80℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、また、通常270℃以下、好ましくは250℃以下、より好ましくは沸点230℃以下である。
溶媒の使用量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、有機電界発光素子用組成物100重量部に対して、好ましくは10重量部以上、より好ましくは50重量部以上、特に好ましくは80重量部以上、また、好ましくは99.95重量部以下、より好ましくは99.9重量部以下、特に好ましくは99.8重量部以下である。含有量が下限を下回ると、粘性が高くなりすぎ、成膜作業性が低下する可能性がある。一方、上限を上回ると、成膜後、溶媒を除去して得られる膜の厚みが稼げなくなるため、成膜が困難となる傾向がある。なお、有機電界発光素子用組成物として2種以上の溶媒を混合して用いる場合には、これらの溶媒の合計がこの範囲を満たすようにする。
また、本発明における有機電界発光素子用組成物は、成膜性の向上を目的として、レベリング剤や消泡剤等の各種添加剤を含有してもよい。
(その他に含まれていてもよいもの)
本発明の有機電界発光素子用組成物は、上記低分子化合物の他に、界面活性剤、粘度調製剤、フィラー粒子などが含まれていてもよい。
界面活性剤としては、例えば、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性界面活性剤等、各種のものを用いることができるが、電気的特性に悪影響を及ぼす可能性が低い点で、非イオン性界面活性剤を用いるのが好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、「エマール10」(花王社製)等のアルキル硫酸エステル塩系界面活性剤、同じく「ペレックスNB−L」等のアルキルナフタレンスルフォン酸塩系界面活性剤、同じく「ホモゲノールL−18」、「ホモゲノールL−100」等の特殊高分子系界面活性剤等が挙げられる。これらのうち、特殊高分子系界面活性剤が好ましく、特殊ポリカルボン酸型高分子系界面活性剤が更に好ましい。
又、カチオン性界面活性剤としては、例えば、「アセタミン24」(花王社製)等のアルキルアミン塩系界面活性剤、同じく「コータミン24P」、「コータミン86W」等の
第4級アンモニウム塩系界面活性剤等が挙げられる。これらのうち、第4級アンモニウム塩系界面活性剤が好ましく、ステアリルトリメチルアンモニウム塩系界面活性剤が更に好ましい。
又、非イオン系性面活性剤としては、例えば、「SH8400」(トーレシリコーン社製)、「KP341」(シリコーン社製)等のシリコーン系界面活性剤、「FC430」(住友3M社製)、「F470」(大日本インキ化学工業社製)、「DFX−18」(ネオス社製)等の弗素系界面活性剤、「エマルゲン104P」(花王社製)、「エマルゲンA60」等のポリオキシエチレン系界面活性剤等が挙げられる。これらのうち、シリコーン系界面活性剤が好ましく、ポリジメチルシロキサンにポリエーテル基又はアラルキル基の側鎖が付加された構造を有する、いわゆるポリエーテル変性又はアラルキル変性シリコーン系界面活性剤が更に好ましい。
界面活性剤は2種類以上の組み合わせでも良く、シリコーン系界面活性剤/弗素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤/特殊高分子系界面活性剤、弗素系界面活性剤/特殊高分子系界面活性剤の組み合わせ等が挙げられる。中でも、シリコーン系界面活性剤/弗素系界面活性剤が好ましい。このシリコーン系界面活性剤/弗素系界面活性剤の組み合わせでは、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤/オリゴマー型弗素系界面活性剤等が挙げられる。具体的には、例えば、「TSF4460」(ジーイー東芝シリコーン社製)/「DFX−18」(ネオス社製)、「BYK−300」(ビックケミー社製)/「S−393」(セイミケミカル社製)、「KP340」(信越シリコーン社製)/「F−478」(大日本インキ社製)、「SH7PA」(トーレシリコーン社製)/「DS−401」(ダイキン社製)、「L−77」(日本ユニカー社製)/「FC4430」(住友3M社製)等が挙げられる。
本発明の有機電界発光素子用組成物の界面活性剤の含有量は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、また通常1重量%以下、好ましくは0.2重量%以下である。
また、粘度を調節するために、粘度調製剤が含まれていてもよい。粘度調整剤としては、例えば、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアマイドなどの高分子系増粘剤や、高沸点芳香族やケトン、エステルなどの溶剤型希釈剤が挙げられる。
本発明の有機電界発光素子用組成物の粘度調節剤の含有量は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、また通常1重量%以下、好ましくは0.2重量%以下である。
また、塗布膜厚や電気的特性の調整のために、フィラー粒子が含まれていてもよい。フィラー粒子としては、例えばフタロシアニンやアントラキノンなどの有機顔料、シリカや酸化チタンなどの無機顔料が挙げられる。
本発明の有機電界発光素子用組成物のフィラー粒子の含有量は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、また通常1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下である。
<第一の有機電界発光素子用組成物の製造方法>
本発明の第一の有機電界発光素子用組成物は、組成物に配合される上述の配合成分を混合した混合物を、60℃以上、また該混合物に混合される溶媒の最も低い沸点より10℃以上低い温度以下で、加熱する工程を含むことで製造される。
尚、加熱する工程は、低分子化合物が、溶媒に目視で見えなくなる程度に溶解していてもよく、また目視で確認できる状態で行ってもよい。
本発明における加熱温度は、通常60℃以上、好ましくは100℃以上、さらに好ましくは130℃以上、また、通常混合物に含有される溶媒の内最も低い沸点より10℃低い
温度以下、好ましくは30℃以下、さらに好ましくは50℃以下である。
上記範囲内であると、熱により溶媒分子の運動が激しくなるために低分子化合物分子を溶媒中に分散させる効果が高く、かつ溶媒が沸騰してしまうことなく、低分子化合物分子に与える影響を極力抑える事ができる点で好ましい。
尚、加熱温度については、上記範囲内であれば、一定でもよく変動させて加熱してもよい。
本発明における加熱時間は、通常5分、好ましくは30分以上、さらに好ましくは1時間以上、また、通常10時間以下、好ましくは5時間以下、さらに好ましくは2時間以下である。
上記範囲内であると、低分子化合物分子を溶媒中に均一に分散させるのに十分な時間であり、かつできる限り短い時間で高い生産性で製造することができる点で好ましい。
加熱手段は、特に制限はないが、組成物の加熱には、温度を制御できるホットプレートやオイルバスなどを用いる事ができる。
また、加熱雰囲気においては、加熱する際には、組成物の酸化を防ぐために、組成物の入った容器内の雰囲気の酸素濃度を100ppm以下にしておくことが好ましい。また、組成物への水分の混入も性能を低下させる原因となり得るため、組成物の入った容器内の雰囲気の水分濃度を100ppm以下にしておくことが好ましい。
<さらに加える溶媒>
本発明の有機電界発光素子用組成物の溶媒には、低分子化合物を溶解させる以外の機能を持った溶媒を添加することができる。例えば、溶媒の蒸発速度を上げるために、より低沸点の溶媒を添加すること等が挙げられる。このように、添加溶媒の沸点が、低分子化合物を溶解させる主要な溶媒の沸点よりも低い場合には、上記の加熱終了した後から加える事で、加熱温度を高い温度に保つ事ができる。
上記さらに加える溶媒としては、例えば、トリデカン、ドデカン、3-メチルウンデカン、2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタン、デカン、2-メチルノナン、3-メチルノナン、4-メチルノナン、5-メチルノナンなどが挙げられる。
<第二の有機電界発光素子用組成物の製造方法>
本発明の第二の有機電界発光素子用組成物の製造方法は、低分子化合物と溶媒とを含有する有機電界発光素子用組成物の製造方法であって、該組成物の低分子化合物と溶媒とを混合した混合物を、超音波振動させる工程を含むことを特徴とする。
本発明における、超音波振動させる手段は、特に制限はないが、超音波洗浄器などの超音波発生器を用いる事ができる。
また、本発明における振動条件は、通常15kHz以上、好ましくは20kHz以上、さらに好ましくは28kHz以上、また、通常400kHz以下、好ましくは200kHz以下、さらに好ましくは100kHz以下であり、この範囲内で変動させながら超音波を照射すると、さらに好ましい。
低周波数では溶媒中に生じる気泡の破裂による衝撃波により、大きな構造体を細かくする事が出来、高周波数ではより微細な構造体に作用する事ができる。周波数を変動させる事で、広い範囲の大きさの構造体に対して作用する事ができる。
本発明における振動時間は、通常1分以上、好ましくは5分以上、さらに好ましくは10分以上、また、通常1時間以下、好ましくは30分以下、さらに好ましくは15分以下である。
上記範囲内であると、低分子化合物分子を溶媒中に均一に分散させるのに十分な時間で
あり、かつできる限り短い時間で高い生産性で製造することができる点で好ましい。
本発明における振動雰囲気は、超音波の照射は組成物の入った容器を水中に浸して行うため、組成物へと水分が混入する事を防ぐために、しっかりとシールされた容器に組成物を入れておく事が好ましい。さらには、容器内の雰囲気を水分濃度100ppm以下、酸素濃度100ppm以下に抑えておく事が好ましい。
<有機電界発光素子>
以下に、本発明の方法で製造される有機電界発光素子の層構成及びその一般的形成方法等について、図1を参照して説明する。
図1は本発明にかかる有機電界発光素子の構造例を示す断面の模式図であり、図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は正孔阻止層、7は電子輸送層、8は電子注入層、9は陰極を各々表す。
尚、本発明において湿式成膜法とは、例えば、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、インクジェット法、ノズルプリント法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等湿式で成膜される方法をいう。これらの成膜方法の中でも、スピンコート法、スプレーコート法、ノズルプリント法、インクジェット法が好ましく、中でも、ノズルプリント法、及びインクジェット法が特に好ましい。これは、有機電界発光素子に用いられる塗布用組成物特有の液性に合うためである。
(基板)
基板1は有機電界発光素子の支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシート等が用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン等の透明な合成樹脂の板が好ましい。合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意する必要がある。基板のガスバリア性が小さすぎると、基板を通過した外気により有機電界発光素子が劣化することがあるので好ましくない。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
(陽極)
陽極2は発光層側の層への正孔注入の役割を果たすものである。
この陽極2は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/又はスズの酸化物等の金属酸化物、ヨウ化銅等のハロゲン化金属、
カーボンブラック、或いは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等により構成される。
陽極2の形成は通常、スパッタリング法、真空蒸着法等により行われることが多い。また、銀等の金属微粒子、ヨウ化銅等の微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末等を用いて陽極2を形成する場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散させて、基板1上に塗布することにより陽極2を形成することもできる。さらに、導電性高分子の場合は、電解重合により直接基板1上に薄膜を形成したり、基板1上に導電性高分子を塗布して陽極2を形成することもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
陽極2は通常は単層構造であるが、所望により複数の材料からなる積層構造とすることも可能である。
陽極2の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが好ましい。この場合、陽極2の厚みは通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下程度である。不透明でよい場合は陽極2の厚みは任意であり、陽極2は基板1と同一でもよい。また、さらには、上記の陽極2の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
陽極2に付着した不純物を除去し、イオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させることを目的に、陽極2表面を紫外線(UV)/オゾン処理したり、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ処理したりすることは好ましい。
(正孔注入層)
正孔注入層3は、陽極2から発光層5へ正孔を輸送する層であり、通常、陽極2上に形成される。
本発明に係る正孔注入層3の形成方法は真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよく、特に制限はないが、ダークスポット低減の観点から正孔注入層3を湿式成膜法により形成することが好ましい。
正孔注入層3の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。
<湿式成膜法による正孔注入層の形成>
湿式成膜により正孔注入層3を形成する場合、通常は、正孔注入層3を構成する材料を適切な溶剤(正孔注入層用溶剤)と混合して成膜用の組成物(正孔注入層形成用組成物)を調製し、この正孔注入層形成用組成物を適切な手法により、正孔注入層3の下層に該当する層(通常は、陽極)上に塗布して成膜し、乾燥することにより正孔注入層3を形成する。
(正孔輸送性化合物)
正孔注入層形成用組成物は通常、正孔注入層の構成材料として正孔輸送性化合物及び溶剤を含有する。
正孔輸送性化合物は、通常、有機電界発光素子の正孔注入層に使用される、正孔輸送性を有する化合物であれば、重合体などの高分子化合物であっても、単量体などの低分子化合物であってもよいが、高分子化合物であることが好ましい。
正孔輸送性化合物としては、陽極2から正孔注入層3への電荷注入障壁の観点から4.5eV〜6.0eVのイオン化ポテンシャルを有する化合物が好ましい。正孔輸送性化合物の例としては、芳香族アミン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ベンジルフェニル誘導体、フルオレン基で3級アミンを連結した化合物、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体、シラナミン誘導体、ホスファミン誘導体、キナクリドン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチエニレンビニレン誘導体、ポリキノリン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、カーボン等が挙げられる。
尚、本発明において誘導体とは、例えば、芳香族アミン誘導体を例にするならば、芳香族アミンそのもの及び芳香族アミンを主骨格とする化合物を含むものであり、重合体であっても、単量体であってもよい。
正孔注入層3の材料として用いられる正孔輸送性化合物は、このような化合物のうち何れか1種を単独で含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。2種以上の正孔輸送性化合物を含有する場合、その組み合わせは任意であるが、芳香族三級アミン高分子化合物1種又は2種以上と、その他の正孔輸送性化合物1種又は2種以上とを併用することが好ましい。
上記例示した中でも非晶質性、可視光の透過率の点から、芳香族アミン化合物が好ましく、特に芳香族三級アミン化合物が好ましい。ここで、芳香族三級アミン化合物とは、芳香族三級アミン構造を有する化合物であって、芳香族三級アミン由来の基を有する化合物も含む。
芳香族三級アミン化合物の種類は特に制限されないが、表面平滑化効果による均一な発光の点から、重量平均分子量が1000以上、1000000以下の高分子化合物(繰り返し単位が連なる重合型化合物)がさらに好ましい。芳香族三級アミン高分子化合物の好ましい例として、下記式(I)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物が挙げられる。
Figure 2010218767
(式(I)中、Ar及びArは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Ar〜Arは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Yは、下記の連結基群の中から選ばれる連結基を表す。また、Ar〜Arのうち、同一のN原子に結合する二つの基は互いに結合して環を形成してもよい。
Figure 2010218767
(上記各式中、Ar〜Ar16は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は任意の置換基を表す。))
Ar〜Ar16の芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基としては、高分子化合物の溶解性、耐熱性、正孔注入・輸送性の点から、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、チオフェン環、ピリジン環由来の基が好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環由来の基がさらに好ましい。
Ar〜Ar16の芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基は、さらに置換基を有していてもよい。置換基の分子量としては、通常400以下、中でも250以下程度が好ましい。置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基などが好ましい。
及びRが任意の置換基である場合、該置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、シリル基、シロキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基などが挙げられる。
式(I)で表される繰り返し単位を有する芳香族三級アミン高分子化合物の具体例としては、国際公開第2005/089024号パンフレットに記載のものが挙げられる。
また、正孔輸送性化合物としては、ポリチオフェンの誘導体である3,4-ethylenedioxythiophene(3,4-エチレンジオキシチオフェン)を高分子量ポリスチレンスルホン酸中で重合してなる導電性ポリマー(PEDOT/PSS)もまた好ましい。また、このポリマーの末端をメタクリレート等でキャップしたものであってもよい。
正孔注入層形成用組成物中の、正孔輸送性化合物の濃度は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、膜厚の均一性の点で通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上、また、通常70重量%以下、好ましくは60重量%以下、さらに好ましくは50重量%以下である。この濃度が大きすぎると膜厚ムラが生じる可能性があり、また、小さすぎると成膜された正孔注入層に欠陥が生じる可能性がある。
(電子受容性化合物)
正孔注入層形成用組成物は正孔注入層の構成材料として、電子受容性化合物を含有していることが好ましい。
電子受容性化合物とは、酸化力を有し、上述の正孔輸送性化合物から一電子受容する能力を有する化合物が好ましく、具体的には、電子親和力が4eV以上である化合物が好ましく、5eV以上の化合物である化合物がさらに好ましい。
このような電子受容性化合物としては、例えば、トリアリールホウ素化合物、ハロゲン化金属、ルイス酸、有機酸、オニウム塩、アリールアミンとハロゲン化金属との塩、アリールアミンとルイス酸との塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物等が挙げられる。さらに具体的には、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンダフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート等の有機基の置換したオニウム塩(国際公開2005/089024号パンフレット);塩化鉄(III)(特開平11−251067号公報)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等の高原子価の無機化合物;テトラシアノエチレン等のシアノ化合物、トリス(ペンダフルオロフェニル)ボラン(特開2003−31365号公報)等の芳香族ホウ素化合物;フラーレン誘導体;ヨウ素;ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、ショウノウスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン等が挙げられる。
これらの電子受容性化合物は、正孔輸送性化合物を酸化することにより正孔注入層の導電率を向上させることができる。
正孔注入層或いは正孔注入層形成用組成物中の電子受容性化合物の正孔輸送性化合物に対する含有量は、通常0.1モル%以上、好ましくは1モル%以上である。但し、通常100モル%以下、好ましくは40モル%以下である。
(その他の構成材料)
正孔注入層の材料としては、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述の正孔輸送性化合物や電子受容性化合物に加えて、さらに、その他の成分を含有させてもよい。その他の成分の例としては、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良
剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(溶剤)
湿式成膜法に用いる正孔注入層形成用組成物の溶剤のうち少なくとも1種は、上述の正孔注入層の構成材料を溶解しうる化合物であることが好ましい。また、この溶剤の沸点は通常110℃以上、好ましくは140℃以上、中でも200℃以上、通常400℃以下、中でも300℃以下であることが好ましい。溶剤の沸点が低すぎると、乾燥速度が速すぎ、膜質が悪化する可能性がある。また、溶剤の沸点が高すぎると乾燥工程の温度を高くする必要があし、他の層や基板に悪影響を与える可能性がある。
溶剤として例えば、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、アミド系溶剤などが挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル、等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル、等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、3−イロプロピルビフェニル、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、メチルナフタレン等が挙げられる。
アミド系溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、等が挙げられる。
その他、ジメチルスルホキシド、等も用いることができる。
これらの溶剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
(成膜方法)
正孔注入層形成用組成物を調製後、この組成物を湿式成膜により、正孔注入層3の下層に該当する層(通常は、陽極2)上に塗布成膜し、乾燥することにより正孔注入層3を形成する。
成膜工程における温度は、組成物中に結晶が生じることによる膜の欠損を防ぐため、10℃以上が好ましく、50℃以下が好ましくい。
成膜工程における相対湿度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.01ppm以上、通常80%以下である。
成膜後、通常加熱等により正孔注入層形成用組成物の膜を乾燥させる。加熱工程において使用する加熱手段の例を挙げると、クリーンオーブン、ホットプレート、赤外線、ハロゲンヒーター、マイクロ波照射などが挙げられる。中でも、膜全体に均等に熱を与えるためには、クリーンオーブン及びホットプレートが好ましい。
加熱工程における加熱温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り、正孔注入層形成用組成物に用いた溶剤の沸点以上の温度で加熱することが好ましい。また、正孔注入層に用いた溶剤が2種類以上含まれている混合溶剤の場合、少なくとも1種類がその溶剤の沸点以上の温度で加熱されるのが好ましい。溶剤の沸点上昇を考慮すると、加熱工程においては、好ましくは120℃以上、好ましくは410℃以下で加熱することが好ましい。
加熱工程において、加熱温度が正孔注入層形成用組成物の溶剤の沸点以上であり、かつ塗布膜の十分な不溶化が起こらなければ、加熱時間は限定されないが、好ましくは10秒以上、通常180分以下である。加熱時間が長すぎると他の層の成分が拡散する傾向があり、短すぎると正孔注入層が不均質になる傾向がある。加熱は2回に分けて行ってもよい。
<真空蒸着法による正孔注入層の形成>
真空蒸着により正孔注入層3を形成する場合には、正孔注入層3の構成材料(前述の正孔輸送性化合物、電子受容性化合物等)の1種又は2種以上を真空容器内に設置されたるつぼに入れ(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼに入れ)、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度まで排気した後、るつぼを加熱して(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼを加熱して)、蒸発量を制御して蒸発させ(2種以上の材料を用いる場合はそれぞれ独立に蒸発量を制御して蒸発させ)、るつぼと向き合って置かれた基板の陽極2上に正孔注入層3を形成させる。なお、2種以上の材料を用いる場合は、それらの混合物をるつぼに入れ、加熱、蒸発させて正孔注入層3を形成することもできる。
蒸着時の真空度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1×10−6Torr(0.13×10−4Pa)以上、通常9.0×10−6Torr(12.0×10−4Pa)以下である。 蒸着速度は、本発明の効果を著しく損なわない
限り限定されないが、通常0.1Å/秒以上、通常5.0Å/秒以下である。蒸着時の成膜温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、好ましくは10℃以上で、好ましくは50℃以下で行われる。
[正孔輸送層]
本発明の正孔輸送層は、前記正孔注入層上に形成される。
正孔輸送性化合物が、モノマーである場合、分子量は、通常5000以下、好ましくは2500以下であり、また好ましくは300以上、さらに好ましくは500以上である。分子量がこの上限を超えると、不純物の高分子量化によって精製が困難となる場合があり、また分子量がこの下限を下回ると、ガラス転移温度及び、融点、気化温度などが低下するため、耐熱性が著しく損なわれる場合がある。
正孔輸送性化合物が、オリゴマー又はポリマーである場合、その重量平均分子量は、通常3,000,000以下、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下であり、また通常1,000以上、好ましくは2,500以上、より好ましくは5,000以上である。分子量がこの上限を超えると、不純物の高分子量化によって精製が困難となる恐れがあり、また分子量がこの下限を下回ると、成膜性が低下する恐れがあり、ガラス転移温度、融点及び気化温度が低下するため、耐熱性が著しく損なわれる恐れがある。
正孔輸送性化合物が、オリゴマー又はポリマーである場合、その分散度Mw/Mn(Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)は、通常3.0以下、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0以下であり、好ましくは1.0以上、さらに好ましくは1.1以上、特に好ましくは1.2以上である。分散度がこの上限を上回ると精製が困難となる、溶媒溶解性が低下する、成膜性が低下するといった不具合の恐れがある。
尚、本発明における重量平均分子量(及び数平均分子量)はSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)測定により決定される。SEC測定では高分子量成分ほど溶出時間が短く、低分子量成分ほど溶出時間が長くなるが、分子量既知のポリスチレン(標準試料)の溶出時間から算出した校正曲線を用いて、サンプルの溶出時間を分子量に換算することによって、重量平均分子量(及び数平均分子量)が算出される。
(1−1−2.構造)
正孔輸送層を形成する材料としては、正孔輸送能が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが好ましい。そのために、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、正孔移動度が大きく、安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが好ましい。また、多くの場合、発光層に接するため、発光層からの発光を消光したり、発光層との間でエキサイプレックスを形成して効率を低下させたりしないことが好ましい。
このような正孔輸送層の材料としては、従来、正孔輸送層の構成材料として用いられている材料であればよく、例えば、前述の正孔注入層に使用される正孔輸送性化合物として例示したものが挙げられる。また、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、カルバゾール誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体等の含窒素芳香族化合物誘導体;トリフェニルアミン誘導体;シロール誘導体;オリゴチオフェン誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが挙げられる。その中でも、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、カルバゾール誘導体等の含窒素芳香族誘導体;トリフェニルアミン誘導体、シロール誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが好ましく、特に、トリフェニルアミン誘導体がより好ましい。
また、例えば、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリアリールアミン誘導体、ポリビニルトリフェニルアミン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリアリーレン誘導体、テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン誘導体、ポリアリーレンビニレン誘導体、ポリシロキサン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)誘導体等が挙げられる。これらは、交互共高分子化合物、ランダム高分子化合物、ブロック高分子化合物又はグラフト共高分子化合物のいずれであってもよい。また、主鎖に枝分かれがあり末端部が3つ以上ある高分子や、所謂デンドリマーであってもよい。
中でも、ポリアリールアミン誘導体やポリアリーレン誘導体が好ましい。
ポリアリールアミン誘導体としては、下記式(II)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物であることが好ましい。特に、下記式(II)で表される繰り返し単位からなる高分子化合物であることが好ましく、この場合、繰り返し単位それぞれにおいて、Ar又はArが異なっているものであってもよい。
Figure 2010218767
(式(II)中、Ar及びArは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。)
置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの、6員環の単環又は2〜5縮合環由来の基及びこれらの環が2環以上直接結合で連結してなる基が挙げられる。
置換基を有していてもよい芳香族複素環基としては、例えばフラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環由来の基及びこれらの環が2環以上直接結合で連結してなる基が挙げられる。
溶解性、耐熱性の点から、Ar及びArは、各々独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、ピレン環、チオフェン環、ピリジン環、フルオレン環からなる群より選ばれる環由来の基やベンゼン環が2環以上連結してなる基(例えば、ビフェニル基やターフェニル基)が好ましい。
中でも、ベンゼン環由来の基(フェニル基)、ベンゼン環が2環連結してなる基(ビフェニル基)及びフルオレン環由来の基(フルオレニル基)が好ましい。
Ar及びArにおける芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アシル基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シリル基、シロキシ基、シアノ基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基などが挙げられる。
ポリアリーレン誘導体としては、前記式(II)におけるArやArとして例示した置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基などのアリーレン基をその繰り返し単位に有する高分子化合物が挙げられる。
ポリアリーレン誘導体としては、下記式(III−1)及び/又は下記式(III−2)からなる繰り返し単位を有する高分子化合物が好ましい。
Figure 2010218767
(式(III−1)中、Ra、Rb、R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、フェニルアルキル基、フェニルアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、アルキルフェニル基、アルコキシフェニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、又はカルボキシ基を表す。t及びsは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。t又はsが2以上の場合、一分子中に含まれる複数のRa又はRbは同一であっても異なっていてもよく、隣接するRa又はRbどうしで環を形成していてもよい。)
Figure 2010218767
(式(III−2)中、R及びRは、それぞれ独立に、上記式(III−1)におけるRa、Rb、R又はRと同義である。r及びuは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。r又はuが2以上の場合、一分子中に含まれる複数のR及びRは同一であっても異なっていてもよく、隣接するR又はRどうしで環を形成していてもよい。Xは、5員環又は6員環を構成する原子又は原子群を表す。)
Xの具体例としては、酸素原子、置換基を有していてもよいホウ素原子、置換基を有していてもよい窒素原子、置換基を有していてもよいケイ素原子、置換基を有していてもよいリン原子、置換基を有していてもよいイオウ原子、置換基を有していてもよい炭素原子又はこれらが結合してなる基である。
また、ポリアリーレン誘導体としては、下記式(III−1)及び/又は下記式(III−2)からなる繰り返し単位に加えて、さらに下記式(III−3)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
Figure 2010218767
(式(III−3)中、Ar〜Arは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。v及びwは、それぞれ独立に0又は1を表す。)
Ar〜Arの具体例としては、前記式(II)における、Ar及びArと同様である。
上記式(III−1)〜(III−3)の具体例及びポリアリーレン誘導体の具体例等は、特開2008−98619号公報に記載のものなどが挙げられる。
また、正孔輸送性化合物としては、ポリチオフェンの誘導体である3,4-ethylenedioxythiophene(3,4-エチレンジオキシチオフェン)を高分子量ポリスチレンスルホン酸中で重合してなる導電性ポリマー(PEDOT/PSS)もまた好ましい。また、このポリマーの末端をメタクリレート等でキャップしたものであってもよい。
(1−1−4.不溶化基)
本発明にかかる正孔輸送性化合物は、上記構造に、不溶化基を有する化合物であることが好ましい。つまり、正孔輸送層は、不溶化基を有する化合物を不溶化して得られる層であることが好ましい。
不溶化基とは、熱及び/又は活性エネルギー線の照射により反応する基であり、反応後
は反応前に比べて有機溶媒や水への溶解性を低下させる効果を有する基である。
本発明においては、不溶化基は、脱離基又は架橋性基であることが好ましい。
(1−1−4−1.架橋性基)
また、本発明にかかる正孔輸送性化合物は、不溶化基として、架橋性基を有していることが、熱及び/又は活性エネルギー線の照射により起こる反応(不溶化反応)の前後で、溶媒に対する溶解性に大きな差を生じさせることができる点で好ましい。
ここで、架橋性基とは、熱及び/又は活性エネルギー線の照射により近傍に位置するほかの分子の同一又は異なる基と反応して、新規な化学結合を生成する基のことをいう。
架橋性基としては、不溶化がしやすいという点で、例えば、架橋性基群Tに示す基が挙げられる。
[架橋性基群T]
Figure 2010218767
(式中、R〜Rは、各々独立に、水素原子又はアルキル基を表す。Ar31は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。)
エポキシ基、オキセタン基などの環状エーテル基、ビニルエーテル基などのカチオン重合によって不溶化反応する基が、反応性が高く不溶化が容易な点で好ましい。中でも、カチオン重合の速度を制御しやすい点でオキセタン基が特に好ましく、カチオン重合の際に素子の劣化をまねくおそれのあるヒドロキシル基が生成しにくい点でビニルエーテル基が好ましい。
シンナモイル基などアリールビニルカルボニル基、ベンゾシクロブテン環由来の基などの環化付加反応する基が、電気化学的安定性をさらに向上させる点で好ましい。
また、架橋性基の中でも、不溶化後の構造が特に安定な点で、ベンゾシクロブテン環由来の基が特に好ましい。
架橋性基は分子内の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基に直接結合してもよいが、2価の基を介して結合してもよい。この2価の基としては、−O−基、−C(=O)−基又は(置換基を有していてもよい)−CH−基から選ばれる基を任意の順番で1〜30個連結してなる2価の基を介して、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基に結合することが好ましい。
(1−1−4−2.脱離基)
本発明にかかる正孔輸送材料は、不溶化基として、脱離基を有していることが不溶化後(解離反応後)の電荷輸送能に優れる点で好ましい。
ここで、脱離基とは、結合している芳香族炭化水素環から70℃以上で解離し、さらに溶媒に対して可溶性を示す基をいう。ここで、溶媒に対して可溶性を示すとは、化合物が
熱及び/又は活性エネルギー線の照射によって反応する前の状態で、常温でトルエンに0.1重量%以上溶解することをいい、化合物のトルエンへの溶解性は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上である。
このような脱離基として好ましくは、芳香族炭化水素環側に極性基を形成せずに熱解離する基であり、逆ディールスアルダー反応により熱解離する基であることがより好ましい。
またさらに、100℃以上で熱解離する基であることが好ましく、300℃以下で熱解離する基であることが好ましい。
脱離基の具体例は、以下の通りであるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
脱離基が2価の基である場合の具体例は、以下の<2価の脱離基群A>の通りである。
<2価の脱離基群A>
Figure 2010218767
脱離基が1価の基である場合の具体例は、以下の<1価の脱離基群B>の通りである。
<1価の脱離基群B>
Figure 2010218767
不溶化性化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれであってもよいが、成膜性が優れる点で、ポリマーであることが好ましい。不溶化性化合物は1種のみを有していてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で有していてもよい。
不溶化性化合物としては、不溶化基を有する正孔輸送性化合物を用いることが好ましい。正孔輸送性化合物としては、上記の例示したものが挙げられ、これら正孔輸送性化合物に対して、不溶化基が主鎖又は側鎖に結合しているものが挙げられる。特に不溶化基は、アルキレン基等の連結基を介して、主鎖に結合していることが好ましい。また、特に正孔輸送性化合物としては、不溶化基を有する繰り返し単位を含む高分子化合物であることが好ましく、上記式(II)や式(III−1)〜(III−3)に不溶化基が直接又は連結基を介して結合した繰り返し単位を有する高分子化合物であることが好ましい。
湿式成膜法で正孔輸送層4を形成する場合は、上記正孔注入層3の形成と同様にして、
正孔輸送層形成用組成物を調製した後、湿式成膜後、加熱乾燥させる。
正孔輸送層形成用組成物には、上述の正孔輸送性化合物の他、溶剤を含有する。用いる溶剤は上記正孔注入層形成用組成物に用いたものと同様である。また、成膜条件、加熱乾燥条件等も正孔注入層3の形成の場合と同様である。
真空蒸着法により正孔輸送層を形成する場合もまた、その成膜条件等は上記正孔注入層3の形成の場合と同様である。
正孔輸送層4は、上記正孔輸送性化合物の他、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良剤などを含有していてもよい。
正孔輸送層4はまた、架橋性化合物を架橋して形成される層であってもよい。架橋性化合物は、架橋性基を有する化合物であって、架橋することにより網目状高分子化合物を形成する。
この架橋性基の例を挙げると、オキセタン、エポキシなどの環状エーテル由来の基;ビニル基、トリフルオロビニル基、スチリル基、アクリル基、メタクリロイル、シンナモイル等の不飽和二重結合由来の基;ベンゾシクロブテン由来の基などが挙げられる。
架橋性化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれであってもよい。 架橋性
化合物は1種のみを有していてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で有していてもよい。
架橋性化合物としては、架橋性基を有する正孔輸送性化合物を用いることが好ましい。正孔輸送性化合物としては、上記の例示したものが挙げられ、これら正孔輸送性化合物に対して、架橋性基が主鎖又は側鎖に結合しているものが挙げられる。特に架橋性基は、アルキレン基等の連結基を介して、主鎖に結合していることが好ましい。また、特に正孔輸送性化合物としては、架橋性基を有する繰り返し単位を含む重合体であることが好ましく、上記式(II)や式(III−1)〜(III−3)に架橋性基が直接又は連結基を介して結合した繰り返し単位を有する重合体であることが好ましい。
架橋性化合物を架橋して正孔輸送層4を形成するには、通常、架橋性化合物を溶剤に溶解又は分散した正孔輸送層形成用組成物を調製して、湿式成膜により成膜して架橋させる。
正孔輸送層形成用組成物には、架橋性化合物の他、架橋反応を促進する添加物を含んでいてもよい。架橋反応を促進する添加物の例を挙げると、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシムエステル化合物、アゾ化合物、オニウム塩等の重合開始剤及び重合促進剤;縮合多環炭化水素、ポルフィリン化合物、ジアリールケトン化合物等の光増感剤;などが挙げられる。
また、さらに、レベリング剤、消泡剤等の塗布性改良剤;電子受容性化合物;バインダー樹脂;などを含有していてもよい。
正孔輸送層形成用組成物は、架橋性化合物を通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下含有する。
このような濃度で架橋性化合物を含む正孔輸送層形成用組成物を下層(通常は正孔注入層3)上に成膜後、加熱及び/又は光などの電磁エネルギー照射により、架橋性化合物を架橋させて網目状高分子化合物を形成する。
成膜時の温度、湿度などの条件は、前記正孔注入層3の湿式成膜時と同様である。
成膜後の加熱の手法は特に限定されない。加熱温度条件としては、通常120℃以上、好ましくは400℃以下である。
加熱時間としては、通常1分以上、好ましくは24時間以下である。加熱手段としては特に限定されないが、成膜された層を有する積層体をホットプレート上に載せたり、オーブン内で加熱するなどの手段が用いられる。例えば、ホットプレート上で120℃以上、1分間以上加熱する等の条件を用いることができる。
光などの電磁エネルギー照射による場合には、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、赤外ランプ等の紫外・可視・赤外光源を直接用いて照射する方法、あるいは前述の光源を内蔵するマスクアライナ、コンベア型光照射装置を用いて照射する方法などが挙げられる。光以外の電磁エネルギー照射では、例えばマグネトロンにより発生させたマイクロ波を照射する装置、いわゆる電子レンジを用いて照射する方法が挙げられる。照射時間としては、膜の溶解性を低下させるために必要な条件を設定することが好ましいが、通常、0.1秒以上、好ましくは10時間以下照射される。
加熱及び光などの電磁エネルギー照射は、それぞれ単独、あるいは組み合わせて行ってもよい。組み合わせる場合、実施する順序は特に限定されない。
このようにして形成される正孔輸送層4の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。
{発光層}
発光層は、前記正孔輸送層がある場合は、正孔輸送層の上に、また正孔輸送層がない場合は、正孔注入層の上に形成される。
発光層について、材料及び成膜方法については、前記[低分子化合物]の項に記載の材料及び成膜方法と同様である。また、好ましい具体例及び条件なども同様である。
即ち、本発明の有機電界発光素子は、前述した製造方法にて調製された有機電界発光素子用組成物を用い、インクジェット法又はノズルプリンティング法にて、湿式塗布して形成された層を有することが好ましく、また該層は発光層であることが好ましい。
{正孔阻止層}
発光層5と後述の電子注入層8との間に、正孔阻止層6を設けてもよい。正孔阻止層6は、発光層5の上に、発光層5の陰極9側の界面に接するように積層される層である。
この正孔阻止層6は、陽極2から移動してくる正孔を陰極9に到達するのを阻止する役割と、陰極9から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送する役割とを有する
正孔阻止層6を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いことが挙げられる。このような条件を満たす正孔阻止層の材料としては、例えば、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2−メチル−8−キノラト)アルミニウム−μ−オキソ−ビス−(2−メチル−8−キノリラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(特開平11−242996号公報)、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール誘導体(特開平7−41759号公報)、バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(特開平10−79297号公報)などが挙げられる。更に、国際公開第2005−022962号公報に記載の2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も、正孔阻止層6の材料として好ましい。
なお、正孔阻止層6の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
正孔阻止層6の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成できる。
正孔阻止層6の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
{電子輸送層}
発光層5と後述の電子注入層8の間に、電子輸送層7を設けてもよい。
電子輸送層7は、素子の発光効率を更に向上させることを目的として設けられるもので、電界を与えられた電極間において陰極9から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送することができる化合物より形成される。
電子輸送層7に用いられる電子輸送性化合物としては、通常、陰極9又は電子注入層8からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し注入された電子を効率よく輸送することができる化合物を用いる。このような条件を満たす化合物としては、例えば、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−ヒドロキシフラボン金属錯体、5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5645948号明細書)、キノキサリン化合物(特開平6−207169号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5−331459号公報)、2−t−ブチル−9,10−N,N’−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。
なお、電子輸送層7の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
電子輸送層7の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
電子輸送層7の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。
{電子注入層}
電子注入層8は、陰極9から注入された電子を効率良く発光層5へ注入する役割を果たす。電子注入を効率よく行なうには、電子注入層8を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましい。例としては、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属等が用いられ、その膜厚は通常0.1nm以上、5nm以下が好ましい。
更に、バソフェナントロリン等の含窒素複素環化合物や8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体に代表される有機電子輸送化合物に、ナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウム等のアルカリ金属をドープする(特開平10−270171号公報、特開2002−100478号公報、特開2002−100482号公報などに記載)ことにより、電子注入・輸送性が向上し優れた膜質を両立させることが可能となるため好ましい。この場合の膜厚は、通常、5nm以上、中でも10nm以上が好ましく、また、通常200nm以下、中でも100nm以下が好ましい。
なお、電子注入層8の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
電子注入層8の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
{陰極}
陰極9は、発光層5側の層(電子注入層8又は発光層5など)に電子を注入する役割を果たすものである。
陰極9の材料としては、前記の陽極2に使用される材料を用いることが可能であるが、効率良く電子注入を行なうには、仕事関数の低い金属が好ましく、例えば、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属又はそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。
なお、陰極9の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
陰極9の膜厚は、通常、陽極2と同様である。
さらに、低仕事関数金属から成る陰極9を保護する目的で、この上に更に、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層すると、素子の安定性が増すので好ましい。この目的のために、例えば、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。なお、これらの材料は、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
{その他の層}
本発明に係る有機電界発光素子は、その趣旨を逸脱しない範囲において、別の構成を有していてもよい。例えば、その性能を損なわない限り、陽極2と陰極9との間に、上記説明にある層の他に任意の層を有していてもよく、また、任意の層が省略されていてもよい。
<電子阻止層>
有していてもよい層としては、例えば、電子阻止層が挙げられる。
電子阻止層は、正孔注入層3又は正孔輸送層4と発光層5との間に設けられ、発光層5から移動してくる電子が正孔注入層3に到達するのを阻止することで、発光層5内で正孔と電子との再結合確率を増やし、生成した励起子を発光層5内に閉じこめる役割と、正孔注入層3から注入された正孔を効率よく発光層5の方向に輸送する役割とがある。特に、発光材料として燐光材料を用いたり、青色発光材料を用いたりする場合は電子阻止層を設けることが効果的である。
電子阻止層に求められる特性としては、正孔輸送性が高く、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いこと等が挙げられる。更に、本発明においては、発光層5を本発明に係る有機層として湿式成膜法で作製する場合には、電子阻止層にも湿式成膜の適合性が求められる。このような電子阻止層に用いられる材料としては、F8−TFBに代表されるジオクチルフルオレンとトリフェニルアミンの共重合体(国際公開第2004/084260号パンフレット)等が挙げられる。
なお、電子阻止層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
電子阻止層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
さらに陰極9と発光層5又は電子輸送層7との界面に、例えばフッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF2)、酸化リチウム(Li2O)、炭酸セシウム(II)(CsCO3)等で形成された極薄絶縁膜(0.1〜5nm)を挿入することも、素子の効率を向上させる有効な方法である(Applied Physics Letters, 1997年, Vol.70, pp.152;特開平10−74586号公報;IEEE Transactions on Electron Devices, 1997年,Vol.44, pp.1245;SID 04 Digest, pp.154等参照)。
また、以上説明した層構成において、基板以外の構成要素を逆の順に積層することも可能である。例えば、図1の層構成であれば、基板1上に他の構成要素を陰極9、電子注入層8、電子輸送層7、正孔阻止層6、発光層5、正孔輸送層4、正孔注入層3、陽極2の順に設けてもよい。
更には、少なくとも一方が透明性を有する2枚の基板の間に、基板以外の構成要素を積層することにより、本発明に係る有機電界発光素子を構成することも可能である。
また、基板以外の構成要素(発光ユニット)を複数段重ねた構造(発光ユニットを複数積層させた構造)とすることも可能である。その場合には、各段間(発光ユニット間)の界面層(陽極がITO、陰極がAlの場合は、それら2層)の代わりに、例えば五酸化バナジウム(V25)等からなる電荷発生層(Carrier Generation Layer:CGL)を設けると、段間の障壁が少なくなり、発光効率・駆動電圧の観点からより好ましい。
更には、本発明に係る有機電界発光素子は、単一の有機電界発光素子として構成してもよく、複数の有機電界発光素子がアレイ状に配置された構成に適用してもよく、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構成に適用してもよい。
また、上述した各層には、本発明の効果を著しく損なわない限り、材料として説明した以外の成分が含まれていてもよい。
<有機ELディスプレイ及び有機EL照明>
本発明の有機ELディスプレイ及び有機EL照明は、上述のような本発明の有機電界発光素子を用いたものである。本発明の有機ELディスプレイ及び有機EL照明の型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社、平成16年8月20日発行、時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で、本発明の有機ELディスプレイ及び有機EL照明を形成することができる。
次に、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
(実施例1)
図1に示す有機電界発光素子を作製した。
ガラス基板1上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を120nmの厚さに堆積したもの(三容真空社製、スパッタ成膜品)を、通常のフォトリソグラフィー技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして陽極2を形成した。パターン形成したITO基板を、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄、超純水による水洗の順で洗浄後、圧縮空気で乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
まず、下記構造式(P1)に示す繰り返し構造を有する正孔輸送性高分子2重量%と、下記構造式(B1)に示す4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート0.8重量%を、溶媒としての安息香酸エチルに溶解した後、孔径0.2μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製メンブレンフィルターを用いて濾過し、塗布組成物を作製した。この塗布組成物を上記ガラス基板上にスピンコートした。スピンコートは気温23℃、相対湿度58%の大気中で行い、ス
ピナ回転数は1500rpm、スピナ時間は30秒とした。スピンコート後、ホットプレート上で80℃、1分間加熱乾燥した後、オーブンにて常圧大気雰囲気中、230℃で180分間加熱した。このようにして、膜厚30nmの正孔注入層3を形成した。
Figure 2010218767
次に、下記構造式(P2)に示す繰り返し構造を有する正孔輸送性高分子0.4重量%を、溶媒としてのトルエンに、窒素雰囲気グローブボックス中にて溶解した後、孔径0.2μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製メンブレンフィルターを用いて濾過し、塗布組成物を作製した。この塗布組成物を先の正孔注入層3の上にスピンコートした。スピンコートは窒素雰囲気グローブボックス中で行い、スピナ回転数は1500rpm、スピナ時間は30秒とした。スピンコート後、窒素グローブボックス中のホットプレート上で130℃、60分間加熱し、膜厚20nmの正孔輸送層4を形成した。
Figure 2010218767
次に、下記構造式(C1)で表される低分子化合物25mg、下記構造式(C2)で表される化合物25mg、及び、下記構造式(C3)で表される化合物2.5mgをバイアル瓶に取り分けた後、窒素雰囲気グローブボックス中で、溶媒であるシクロヘキシルベンゼン1mlを加え、軽く攪拌した後、窒素雰囲気グローブボックス中のホットプレート上で130℃1時間の加熱処理を行った。この本発明の有機電界発光素子用組成物を、先の正孔輸送層4の上にスピンコートにて60nmの厚さに塗布し、発光層5を形成した。スピンコートは窒素雰囲気グローブボックス中で行い、スピナ回転数は1500rpm、スピナ時間は120秒とした。その後、内部を減圧することのできるチャンバー内にあるホットプレート上で、チャンバーを真空度0.01MPaに減圧して、130℃で1時間加熱乾燥した。
Figure 2010218767
次に、正孔注入層3と正孔輸送層4及び発光層5を塗布成膜した基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、油回転ポンプにより装置の粗排気を行った後、装置内の真空度が4.3×10−4Paになるまでクライオポンプを用いて排気し、下記構造式(C4)で表される化合物を真空蒸着法によって積層した。蒸着時の真空度は2.1×10−5〜3.6×10−5Pa、蒸着速度は0.8〜1.2Å/秒の範囲で制御し、膜厚5nmの膜を発光層の上に積層して正孔阻止層6を形成した。
Figure 2010218767
次いで同装置内に配置されたセラミック製ルツボに入れた、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウムを加熱して蒸着を行った。蒸着時の真空度は2.7×10−5〜3.4×10−5Pa、蒸着速度は0.8〜1.2Å/秒の範囲で制御し、膜厚30nmの膜を正孔阻止層5の上に積層して電子輸送層7を形成した。
ここで、電子輸送層7までの蒸着を行った素子を蒸着装置から取り出し、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極2のITOストライプと直交するように素子に密着させて、別の真空蒸着装置内に設置して、有機層蒸着時と同様にして装置内の真空度が6.3×10−5Pa以下になるまで排気した。
電子注入層8として、フッ化リチウム(LiF)を、モリブデンボートを用いて、蒸着速度0.09〜0.15Å/秒、真空度4.1×10−5〜7.8×10−5Paで制御して、0.5nmの膜厚で電子輸送層の上に成膜した。次に、アルミニウムを同様にモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度0.6〜7.0Å/秒、真空度2.4×10−5〜12×10−5Paで制御して、膜厚80nmのアルミニウム層を形成して陰極9を形成した。以上の電子注入層、及び陰極の蒸着時の基板温度は室温に保持した。
引き続き、素子が保管中に大気中の水分等で劣化することを防ぐため、以下に記載の方法で封止処理を行った。窒素グローブボックス中で、23mm×23mmサイズのガラス
板の外周部に、約1mmの幅で光硬化性樹脂30Y−437(スリーボンド社製)を塗布し、中央部に水分ゲッターシート(ダイニック社製)を設置した。この上に、陰極形成を終了した基板を、蒸着された面が乾燥剤シートと対向するように貼り合わせた。その後、光硬化性樹脂が塗布された領域のみに紫外光を照射し、樹脂を硬化させた。以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。
得られた有機電界発光素子を、直流電圧により初期輝度が4,000cd/mとなる電流密度にて定電流駆動したときの寿命試験の結果を表1に示す。LT80とは、初期輝度に対して80%の輝度に低下するまでの時間を意味する。
表1に示すが如く、本発明の有機電界発光素子の製造方法により製造された有機電界発光素子は、駆動寿命がながいことが分かる
(比較例1)
発光層5を形成するための低分子組成物を作製する際、低分子化合物C1、C2、C3を取り分けたバイアル瓶に溶媒であるシクロヘキシルベンゼン1mlを加えた後、加熱処理を行わず攪拌するだけで作製した他は、実施例1と同様にして有機電界発光素子を作製し、同様に駆動寿命試験を行った結果を表1に示した。
Figure 2010218767

Claims (13)

  1. 低分子化合物と溶媒とを含有する有機電界発光素子用組成物の製造方法であって、
    該組成物の低分子化合物と溶媒とを混合した混合物を、
    60℃以上で、かつ該混合物に含まれる最も沸点の低い溶媒の沸点よりも10℃以上低い温度範囲に加熱する工程を含むことを特徴とする、有機電界発光素子用組成物の製造方法。
  2. 前記加熱する工程において、加熱時間が5分以上であることを特徴とする、請求項1に記載の有機電界発光素子用組成物の製造方法。
  3. 前記加熱する工程終了後、沸点が、沸点≦(最高加熱温度+10℃)を満たす溶媒を、混合することを特徴とする、請求項1又は2に記載の有機電界発光素子用組成物の製造方法。
  4. 低分子化合物と溶媒とを含有する有機電界発光素子用組成物の製造方法であって、
    該組成物の低分子化合物と溶媒とを混合した混合物を、
    超音波振動させる工程を含むことを特徴とする、有機電界発光素子用組成物の製造方法。
  5. 前記低分子化合物が、発光性低分子化合物又は電荷輸送性低分子化合物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機電界発光素子用組成物の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機電界発光素子用組成物の製造方法により製造されたことを特徴とする、有機電界発光素子用組成物。
  7. 請求項6に記載の組成物を用いて製造することを特徴とする、有機電界発光素子の製造方法。
  8. 請求項7に記載の製造方法で、前記組成物をインクジェット法又はノズルプリント法にて湿式塗布することを特徴とする、有機電界発光素子の製造方法。
  9. 請求項7又は8に記載の方法により製造された有機電界発光素子。
  10. 基板上に、陽極、陰極、及び該陽極と該陰極の間に1層又は2層以上の有機層を有する有機電界発光素子において、該有機層の少なくとも1層が、請求項6に記載の有機電界発光素子用組成物を用いて形成される層であることを特徴とする、有機電界発光素子。
  11. 前記組成物を用いて形成される層が、発光層であることを特徴とする、請求項10に記載の有機電界発光素子。
  12. 請求項9又は10に記載の有機電界発光素子を備えることを特徴とする、有機ELディスプレイ。
  13. 請求項9又は10に記載の有機電界発光素子を備えることを特徴とする、有機EL照明。
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