JP2010216823A - 液中の陰イオンの検出方法及び検出装置 - Google Patents

液中の陰イオンの検出方法及び検出装置 Download PDF

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Abstract

【課題】モノリス強度が高く、通水時の圧力損失を抑さえ、体積当たりのイオン交換容量を大きくとれ、消費電力が小さい液中の陰イオンの検出方法及び検出装置を提供すること。
【解決手段】試料液を電気再生式脱陽イオン装置の脱塩室に通液して、該試料液中の陽イオンを除去した後、該液中の陰イオンを測定する陰イオン検出装置において、該脱塩室に充填される有機多孔質陽イオン交換体が、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が水湿潤状態で平均直径30〜300μmの開口となる連続マクロポア構造体であり、全細孔容積0.5〜5ml/g、水湿潤状態での体積当りの陽イオン交換容量0.4〜5mg当量/mlであり、該連続マクロポア構造体(乾燥体)の切断面のSEM画像において、断面に表れる骨格部面積が、画像領域中25〜50%である液中の陰イオン検出方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、液中の陰イオン検出方法及び検出装置に係り、特に、火力及び原子力発電所における復水器の冷却水(海水)のリークを感知できる塩素イオンに代表される陰イオンの検出方法及び検出装置に関する。
従来、火力及び原子力発電所では、ボイラーで発生した高温、高圧の水蒸気を蒸気タービンに導き、蒸気タービンからの排蒸気は復水器で凝縮して水とし、この復水を再びボイラー給水として使うという水循環を行っている。循環水中には、腐食生成物などの不純物が蓄積してくるので、定常運転時には該腐食生成物などの不純物を除去し、また以下に述べる海水リーク時には塩化ナトリウムを主成分とする不純物を一定時間捕捉して循環水系統を保護するために、復水脱塩装置が設置されている。この循環系での復水器は、蒸気側が減圧されており、冷却水に海水が用いられるので、復水器細管にピンホールが生じたような場合には、海水が蒸気側に侵入し、塩類濃度が著しく上昇する。その結果、復水脱塩装置の負荷が大きくなり、海水リーク量が多くなると、この脱塩装置の許容範囲を越えてしまう。そこで、検塩装置により海水のリークを検知することが必要になる。海水リークを検知する方法のひとつに導電率を測定する方法が知られている。
導電率を測定する方法として、特開2006−167568号公報には、試料液を電気再生式脱陽イオン装置の脱塩室に通液して、該試料液中の陽イオンを除去した後、該液中の陰イオンを測定する陰イオン検出装置において、該脱塩室に充填される陽イオン交換体は、その全部又は一部が、互いにつながっているマクロポアとマクロポアの壁内に平均径が1〜1000μmのメソポアを有する連続気泡構造を有し、全細孔容積が1〜50ml/gであり、陽イオン交換基が均一に分布され、陽イオン交換容量が0.5mg当量/g乾燥多孔質体以上の有機多孔質陽イオン交換体である液中の陰イオン検出方法及びそれに用いる装置が開示されている。
特開2006−167568号公報の液中の陰イオン検出方法は、脱塩室に充填されるカチオン交換体として、粉末状樹脂を使用した場合、弱塩基性成分が液中において比較的長い時間拡散することになり、カチオン交換樹脂充填層における弱塩基性成分の吸着ゾーンが広がり、充填層が大きくなるという問題点を解決したものであって、多孔質陽イオン交換体充填層における弱塩基性成分吸着ゾーンを、陽イオン交換体として粒状陽イオン交換樹脂を用いる場合に比べて、1/3〜1/2程度短く、小型で装置構造を簡略化でき、設置コスト及びランニングコストを低減でき、しかも操作が簡単で安定して正確な常時監視ができるという効果を奏する。なお、特開2006−167568号公報の液中の陰イオン検出方法で用いる有機多孔質陽イオン交換体の詳細な製造方法は、特開2002−306976号公報に開示されている。
特開2006−167568号公報 特開2002−306976号公報
しかしながら、特開2006−167568号公報や特開2002−306976号公報に記載の有機多孔質陽イオン交換体は、モノリスの共通の開口(メソポア)が1〜1,000μmと記載されているものの、全細孔容積5ml/g以下の細孔容積の小さなモノリスについては、油中水滴型エマルジョン中の水滴の量を少なくする必要があるため共通の開口は小さくなり、実質的に開口の平均径20μm以上のものは製造できない。このため、通水時の圧力損失が大きいという問題があった。また、開口の平均径を20μm近傍のものにすると、全細孔容積もそれに伴い大きくなるため、強度が低く、体積当たりのイオン交換容量が低下するため、通電抵抗、すなわち消費電力が大きくなってしまうという問題があった。
従って、本発明の目的は、モノリス強度が高く、通水時の圧力損失を抑さえ、体積当たりのイオン交換容量を大きくとれ、消費電力が小さい液中の陰イオンの検出方法及び検出装置を提供することにある。
かかる実情において、本発明者らは、鋭意検討を行った結果、特開2002−306976号公報記載の方法で得られた比較的大きな細孔容積を有するモノリス状有機多孔質体(中間体)の存在下に、ビニルモノマーと架橋剤を、特定有機溶媒中で静置重合すれば、開口径が大きく、中間体の有機多孔質体の骨格よりも太い骨格を有する骨太のモノリスが得られること、骨太のモノリスにイオン交換基を導入すると、骨太であるが故に膨潤が大きく、従って、開口を更に大きくできること、骨太のモノリスにイオン交換基を導入したモノリスイオン交換体(以下、「第1のモノリスイオン交換体」とも言う。)は、液中の陰イオン検出装置の脱塩室の一部又は全部として用いれば、モノリス強度が高く、通水時の圧力損失を抑さえ、消費電力が小さくできることなどを見出し、本発明を完成するに至った。
また、本発明者らは鋭意検討を行った結果、特開2002−306976号公報記載の方法で得られた大きな細孔容積を有するモノリス状有機多孔質体(中間体)の存在下に、芳香族ビニルモノマーと架橋剤を、特定有機溶媒中で静置重合すれば、三次元的に連続した芳香族ビニルポリマー骨格と、その骨格相間に三次元的に連続した空孔とからなり、両相が絡み合った共連続構造の疎水性モノリスが得られること、この共連続構造のモノリスは、空孔の連続性が高くてその大きさに偏りがなく、流体透過時の圧力損失が低いこと、更にこの共連続構造の骨格が太いためイオン交換基を導入すれば、体積当りのイオン交換容量の大きなモノリス状有機多孔質イオン交換体が得られること、該モノリス状有機多孔質イオン交換体(以下、「第2のモノリスイオン交換体」とも言う。)は、液中の陰イオン検出装置の脱塩室の一部又は全部として用いれば、第1のモノリスイオン交換体と同様に、液中の陰イオン検出装置の脱塩室の一部又は全部として用いれば、モノリス強度が高く、通水時の圧力損失を抑さえ、消費電力が小さくできることなどを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、試料液を電気再生式脱陽イオン装置の脱塩室に通液して、該試料液中の陽イオンを除去した後、該液中の陰イオンを測定する陰イオン検出装置において、該脱塩室に充填される陽イオン交換体は、その全部又は一部が、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が水湿潤状態で平均直径30〜300μmの開口となる連続マクロポア構造体であり、全細孔容積0.5〜5ml/g、水湿潤状態での体積当りの陽イオン交換容量0.4〜5mg当量/mlであり、イオン交換基が該多孔質イオン交換体中に均一に分布しており、且つ該連続マクロポア構造体(乾燥体)の切断面のSEM画像において、断面に表れる骨格部面積が、画像領域中25〜50%である有機多孔質陽イオン交換体であることを特徴とする液中の陰イオン検出方法を提供するものである。
また、本発明は、試料液を電気再生式脱陽イオン装置の脱塩室に通液して、該試料液中の陽イオンを除去した後、該液中の陰イオンを測定する陰イオン検出装置において、該脱塩室に充填される陽イオン交換体は、その全部又は一部が、イオン交換基が導入された全構成単位中、架橋構造単位を0.3〜5.0モル%含有する芳香族ビニルポリマーからなる太さが1〜60μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に直径が10〜100μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体であって、全細孔容積が0.5〜5ml/gであり、水湿潤状態での体積当りの陽イオン交換容量0.3〜5mg当量/mlであり、イオン交換基が該多孔質イオン交換体中に均一に分布している有機多孔質陽イオン交換体であることを特徴とする液中の陰イオン検出方法を提供するものである。
また、本発明は、陽極室と陰極室の間に陽イオン交換体が充填された脱塩室を備え、該陽極室、陰極室及び脱塩室には、それぞれ液の流入配管と流出配管が配設された電気再生式脱陽イオン装置と、該脱塩室流出配管に配設される該処理液の導電率又は比抵抗を測定する測定器と、を備えるものであって、該脱塩室に充填される陽イオン交換体は、その全部又は一部が、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が水湿潤状態で平均直径30〜300μmの開口となる連続マクロポア構造体であり、全細孔容積0.5〜5ml/g、水湿潤状態での体積当りの陽イオン交換容量0.4〜5mg当量/mlであり、イオン交換基が該多孔質イオン交換体中に均一に分布しており、且つ該連続マクロポア構造体(乾燥体)の切断面のSEM画像において、断面に表れる骨格部面積が、画像領域中25〜50%である有機多孔質陽イオン交換体である液中の陰イオン検出装置を提供するものである。
また、本発明は、陽極室と陰極室の間に陽イオン交換体が充填された脱塩室を備え、該陽極室、陰極室及び脱塩室には、それぞれ液の流入配管と流出配管が配設された電気再生式脱陽イオン装置と、該脱塩室流出配管に配設される該処理液の導電率又は比抵抗を測定する測定器と、を備えるものであって、該脱塩室に充填される陽イオン交換体は、その全部又は一部が、イオン交換基が導入された全構成単位中、架橋構造単位を0.3〜5.0モル%含有する芳香族ビニルポリマーからなる太さが1〜60μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に直径が10〜100μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体であって、全細孔容積が0.5〜5ml/gであり、水湿潤状態での体積当りの陽イオン交換容量0.3〜5mg当量/mlであり、イオン交換基が該多孔質イオン交換体中に均一に分布している有機多孔質陽イオン交換体であることを特徴とする液中の陰イオン検出装置を提供するものである。
本発明によれば、モノリス強度が高く、通水時の圧力損失を抑さえ、体積当たりのイオン交換容量を大きくとれ、消費電力を小さくできる。
第1のモノリスイオン交換体におけるモノリスのSEM画像である。 図1のモノリスの表面における硫黄原子の分布状態を示したEPMA画像である。 図1のモノリスの断面(厚み)方向における硫黄原子の分布状態を示したEPMA画像である。 参考例1〜11及び参考例16〜19の差圧係数と体積当たりのイオン交換容量の相関を示す図である。 図1のSEM画像の断面として表れる骨格部を手動転写したものである。 第2のモノリスイオン交換体の共連続構造を模式的に示した図である。 共連続構造におけるモノリス中間体のSEM画像である。 共連続構造を有するモノリスカチオン交換体のSEM画像である。 共連続構造を有するモノリスカチオン交換体の表面における硫黄原子の分布状態を示したEPMA画像である。 共連続構造を有するモノリスカチオン交換体の断面(厚み)方向における硫黄原子の分布状態を示したEPMA画像である。 共連続構造を有する他のモノリスカチオン交換体のSEM画像である。 従来(特開2002−306976号)の有機多孔質体のSEM写真である。 本発明の陰イオン検出装置の一例を示す概略構成図である。
本発明において、試料液としては、該液中の陰イオンを検出、定量しようとする液体であれば特に制限されず、例えば、火力又は原子力発電所における復水のようにアンモニア、ヒドラジン又はETAのような弱塩基性の陽イオンを多く含む試料液中の陰イオンの測定に好適に用いることができる。本発明の液中の陰イオン検出装置は、海水リークの常時監視という目的から、発電所の復水循環主系統の内、復水器から復水脱塩装置に至る間の復水中の酸導電率の監視が最も重要であるが、これに加えて、低圧ヒーター、高圧ヒーター、脱気器、ボイラー(PWR型電子力発電所においては蒸気発生器)給水などの復水器出口以外の復水循環主系統、および低圧ヒータードレンや高圧ヒータードレンのような副次的配水系統から採取された水も測定対象とすることができる。
本発明で用いる電気再生式脱陽イオン装置において、脱塩室の少なくとも一部に充填される有機多孔質陽イオン交換体は、第1のモノリスイオン交換体又は第2のモノリスイオン交換体である。本明細書中、「モノリス状有機多孔質体」を単に「モノリス」と、「モノリス状有機多孔質陽イオン交換体」を単に「モノリスイオン交換体」と、「モノリス状の有機多孔質中間体」を単に「モノリス中間体」とも言う。
<第1のモノリスイオン交換体の説明>
第1のモノリスイオン交換体は、モノリスにイオン交換基を導入することで得られるものであり、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が水湿潤状態平均直径30〜300μm、好ましくは30〜200μm、特に35〜150μmの開口(メソポア)となる連続マクロポア構造体であり、モノリスイオン交換体の開口の平均直径は、モノリスにイオン交換基を導入する際、モノリス全体が膨潤するため、モノリスの開口の平均直径よりも大となる。開口の平均直径が30μm未満であると、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、開口の平均直径が大き過ぎると、流体とモノリスイオン交換体との接触が不十分となり、その結果、イオン交換特性が低下してしまうため好ましくない。
なお、本発明では、乾燥状態のモノリス中間体の開口の平均直径、乾燥状態のモノリスの開口の平均直径及び乾燥状態のモノリスイオン交換体の開口の平均直径は、水銀圧入法により測定される値である。また、水湿潤状態のモノリスイオン交換体の開口の平均直径は、乾燥状態のモノリスイオン交換体の開口の平均直径に、膨潤率を乗じて算出される値である。具体的には、水湿潤状態のモノリスイオン交換体の直径がx1(mm)であり、その水湿潤状態のモノリスイオン交換体を乾燥させ、得られる乾燥状態のモノリスイオン交換体の直径がy1(mm)であり、この乾燥状態のモノリスイオン交換体を水銀圧入法により測定したときの開口の平均直径がz1(μm)であったとすると、水湿潤状態のモノリスイオン交換体の開口の平均直径(μm)は、次式「水湿潤状態のモノリスイオン交換体の開口の平均直径(μm)=z1×(x1/y1)」で算出される。また、アニオン交換基導入前の乾燥状態のモノリスの開口の平均直径、及びその乾燥状態のモノリスにイオン交換基導入したときの乾燥状態のモノリスに対する水湿潤状態のモノリスイオン交換体の膨潤率がわかる場合は、乾燥状態のモノリスの開口の平均直径に、膨潤率を乗じて、モノリスイオン交換体の空孔の水湿潤状態の平均直径を算出することもできる。
第1のモノリスイオン交換体において、連続マクロポア構造体の切断面のSEM画像において、断面に表れる骨格部面積が、画像領域中、25〜50%、好ましくは25〜45%である。断面に表れる骨格部面積が、画像領域中、25%未満であると、細い骨格となり、体積当りのイオン交換容量が低下してしまうため好ましくなく、50%を超えると、骨格が太くなり過ぎ、イオン交換特性の均一性が失われるため好ましくない。なお、特開2002−346392公報記載のモノリスは、実際には水に対する油相部の配合比を多くして骨格部分を太くしても、共通の開口を確保するためには配合比に限界があり、断面に表れる骨格部面積の最大値は画像領域中、25%を超えることはできない。
SEM画像を得るための条件は、切断面の断面に表れる骨格部が鮮明に表れる条件であればよく、例えば倍率100〜600、写真領域が約150mm×100mmである。SEM観察は、主観を排除したモノリスの任意の切断面の任意の箇所で撮影された切断箇所や撮影箇所が異なる3枚以上、好ましくは5枚以上の画像で行なうのがよい。切断されるモノリスは、電子顕微鏡に供するため、乾燥状態のものである。SEM画像における切断面の骨格部を図1及び図5を参照して説明する。また、図5は、図1のSEM写真の断面として表れる骨格部を転写したものである。図1及び図5中、概ね不定形状で且つ断面で表れるものは本発明の「断面に表れる骨格部(符号52)」であり、図1に表れる円形の孔は開口(メソポア)であり、また、比較的大きな曲率や曲面のものはマクロポア(図5中の符号53)である。図5の断面に表れる骨格部面積は、矩形状の写真領域51中、28%である。このように、骨格部は明確に判断できる。
SEM写真において、切断面の断面に表れる骨格部の面積の測定方法としては、特に制限されず、当該骨格部を公知のコンピューター処理などを行い特定した後、コンピューターなどによる自動計算又は手動計算による算出方法が挙げられる。手動計算としては、不定形状物を、四角形、三角形、円形又は台形などの集合物に置き換え、それらを積層して面積を求める方法が挙げられる。
また、第1のモノリスイオン交換体は、0.5〜5ml/g、好適には0.8〜4ml/gの全細孔容積を有するものである。全細孔容積が0.5ml/g未満であると、単位断面積当りの通水量が小さくなり、処理能力が低下してしまうため好ましくない。一方、全細孔容積が5ml/gを超えると、ポリマーである骨格部分の占める割合が低下し、多孔質体の強度が低下してしまうため好ましくない。本発明のモノリスは、開口の平均直径及び全細孔容積が上記範囲にあり、且つ骨太の骨格であるため、これを電気再生式脱陽イオン水製造装置のイオン交換体の一部または全部として用いた場合、強度が高く、通水差圧が小さく、導電性が向上する。モノリス(モノリス中間体、モノリス、モノリスイオン交換体)の全細孔容積は、乾燥状態でも、水湿潤状態でも、同じである。
なお、第1のモノリスイオン交換体に水を透過させた際の圧力損失は、多孔質体を1m充填したカラムに通水線速度(LV)1m/hで通水した際の圧力損失(以下、「差圧係数」と言う。)で示すと、0.001〜0.1MPa/m・LVの範囲、特に0.001〜0.05MPa/m・LVであることが好ましい。差圧係数および全細孔容積がこの範囲にあれば、これを電気再生式脱陽イオン水製造装置のイオン交換体の一部または全部として用いた場合、通水差圧が小さく、導電性が向上する上に、十分な機械的強度を有しているため好ましい。
第1のモノリスイオン交換体は、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が0.4〜5mg当量/mlのイオン交換容量を有する。特開2003−334560号に記載されているような本発明とは異なる連続マクロポア構造を有する従来型のモノリス状有機多孔質イオン交換体では、実用的に要求される低い圧力損失を達成するために、開口径を大きくすると、全細孔容積もそれに伴って大きくなってしまうため、体積当りのイオン交換容量が低下する、体積当りの交換容量を増加させるために全細孔容積を小さくしていくと、開口径が小さくなってしまうため圧力損失が増加するといった欠点を有していた。それに対して、本発明のモノリスイオン交換体は、開口径を更に大きくすると共に、連続マクロポア構造体の骨格を太くする(骨格の壁部を厚くする)ことができるため、透過時の圧力損失を低く押さえたままで脱塩性能を飛躍的に大きくすることができる。体積当りのイオン交換容量が0.4mg当量/ml未満であると、脱塩性能が低下してしまうため好ましくない。なお、本発明のモノリスイオン交換体の重量当りのイオン交換容量は特に限定されないが、イオン交換基が多孔質体の表面及び骨格内部にまで均一に導入しているため、3〜5mg当量/gである。なお、イオン交換基が表面のみに導入された多孔質体のイオン交換容量は、多孔質体やイオン交換基の種類により一概には決定できないものの、せいぜい500μg当量/gである。
第1のモノリスイオン交換体において、連続マクロポア構造体の骨格を構成する材料は、架橋構造を有する有機ポリマー材料である。該ポリマー材料の架橋密度は特に限定されないが、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.3〜50モル%、好適には0.3〜5モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、50モル%を越えると、多孔質体の脆化が進行し、柔軟性が失われるため好ましくなく、特に、イオン交換体の場合にはイオン交換基導入量が減少してしまうため好ましくない。該ポリマー材料の種類に特に制限はなく、例えば、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリビニルトルエン、ポリビニルベンジルクロライド、ポリビニルビフェニル、ポリビニルナフタレン等の芳香族ビニルポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン等のポリ(ハロゲン化ポリオレフィン);ポリアクリロニトリル等のニトリル系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸グリシジル、ポリアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル系ポリマー等の架橋重合体が挙げられる。上記ポリマーは、単独のビニルモノマーと架橋剤を共重合させて得られるポリマーでも、複数のビニルモノマーと架橋剤を重合させて得られるポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、連続マクロポア構造形成の容易さ、イオン交換基導入の容易性と機械的強度の高さ、および酸・アルカリに対する安定性の高さから、芳香族ビニルポリマーの架橋重合体が好ましく、特に、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体が好ましい材料として挙げられる。
第1のモノリスイオン交換体のイオン交換基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、イミノ二酢酸基、リン酸基、リン酸エステル基等のカチオン交換基が挙げられる。
第1のモノリスイオン交換体において、導入されたイオン交換基は、多孔質体の表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布している。イオン交換基の分布が不均一だと、多孔質イオン交換体内におけるイオンの移動が不均一となり、吸着されたイオンの迅速な排除が阻害されるので好ましくない。ここで言う「イオン交換基が均一に分布している」とは、イオン交換基の分布が少なくともμmオーダーで表面および骨格内部に均一に分布していることを指す。イオン交換基の分布状況は、EPMA等を用いることで、比較的簡単に確認することができる。また、イオン交換基が、モノリスの表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布していると、表面と内部の物理的性質及び化学的性質を均一にできるため、膨潤及び収縮に対する耐久性が向上する。
(第1のモノリスイオン交換体の製造方法)
第1のモノリスイオン交換体は、イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤及び水の混合物を撹拌することにより油中水滴型エマルジョンを調製し、次いで油中水滴型エマルジョンを重合させて全細孔容積が5〜16ml/gの連続マクロポア構造のモノリス状の有機多孔質中間体を得るI工程、ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する架橋剤、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製するII工程、II工程で得られた混合物を静置下、且つ該I工程で得られたモノリス状の有機多孔質中間体の存在下に重合を行い、該有機多孔質中間体の骨格より太い骨格を有する骨太有機多孔質体を得るIII工程、該III工程で得られた骨太有機多孔質体に陽イオン交換基を導入するIV工程、を行なうことにより得られる。
第1のモノリスイオン交換体の製造方法において、I工程は、特開2003−334560号公報や特開2002−306976号公報記載の方法に準拠して行なえばよい。
I工程のモノリス中間体の製造において、イオン交換基を含まない油溶性モノマーとしては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基等のイオン交換基を含まず、水に対する溶解性が低く、親油性のモノマーが挙げられる。これらモノマーの好適なものとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ジビニルベンゼン、エチレン、プロピレン、イソブテン、ブタジエン、エチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。これらモノマーは、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。ただし、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート等の架橋性モノマーを少なくとも油溶性モノマーの一成分として選択し、その含有量を全油溶性モノマー中、0.3〜50モル%、好ましくは0.3〜5モル%とすることが、後の工程でイオン交換基量を多く導入するに際して必要な機械的強度が得られる点で好ましい。
界面活性剤は、イオン交換基を含まない油溶性モノマーと水とを混合した際に、油中水滴型(W/O)エマルジョンを形成できるものであれば特に制限はなく、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等の非イオン界面活性剤;オレイン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等の陰イオン界面活性剤;ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤;ラウリルジメチルベタイン等の両性界面活性剤を用いることができる。これら界面活性剤は1種単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。なお、油中水滴型エマルジョンとは、油相が連続相となり、その中に水滴が分散しているエマルジョンを言う。上記界面活性剤の添加量としては、油溶性モノマーの種類および目的とするエマルジョン粒子(マクロポア)の大きさによって大幅に変動するため一概には言えないが、油溶性モノマーと界面活性剤の合計量に対して約2〜70%の範囲で選択することができる。
また、I工程では、油中水滴型エマルジョン形成の際、必要に応じて重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤は、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は水溶性であっても油溶性であってもよく、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素−塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム−酸性亜硫酸ナトリウム、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。
イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤、水及び重合開始剤とを混合し、油中水滴型エマルジョンを形成させる際の混合方法としては、特に制限はなく、各成分を一括して一度に混合する方法、油溶性モノマー、界面活性剤及び油溶性重合開始剤である油溶性成分と、水や水溶性重合開始剤である水溶性成分とを別々に均一溶解させた後、それぞれの成分を混合する方法などが使用できる。エマルジョンを形成させるための混合装置についても特に制限はなく、通常のミキサーやホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等を用いることができ、目的のエマルジョン粒径を得るのに適切な装置を選択すればよい。また、混合条件についても特に制限はなく、目的のエマルジョン粒径を得ることができる攪拌回転数や攪拌時間を、任意に設定することができる。
I工程で得られるモノリス中間体は、連続マクロポア構造を有する。これを重合系に共存させると、モノリス中間体の構造を鋳型として骨太の骨格を有する多孔構造が形成される。また、モノリス中間体は、架橋構造を有する有機ポリマー材料である。該ポリマー材料の架橋密度は特に限定されないが、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.3〜50モル%、好ましくは0.3〜5モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくない。特に、全細孔容積が10〜16ml/gと大きい場合には、連続マクロポア構造を維持するため、架橋構造単位を2モル%以上含有していることが好ましい。一方、50モル%を越えると、多孔質体の脆化が進行し、柔軟性が失われるため好ましくない。
モノリス中間体のポリマー材料の種類としては、特に制限はなく、前述のモノリスのポリマー材料と同じものが挙げられる。これにより、モノリス中間体の骨格に同様のポリマーを形成して、骨格を太らせ均一な骨格構造のモノリスを得ることができる。
モノリス中間体の全細孔容積は、5〜16ml/g、好適には6〜16ml/gである。全細孔容積が小さ過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの全細孔容積が小さくなりすぎ、通水時の圧力損失が大きくなるため好ましくない。一方、全細孔容積が大き過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの構造が連続マクロポア構造から逸脱するため好ましくない。モノリス中間体の全細孔容積を上記数値範囲とするには、モノマーと水の比を、概ね1:5〜1:20とすればよい。
また、モノリス中間体は、マクロポアとマクロポアの重なり部分である開口(メソポア)の平均直径が乾燥状態で20〜200μmである。開口の平均直径が20μm未満であると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が小さくなり、通水過時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。一方、200μmを超えると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が大きくなりすぎ、被処理水とモノリスイオン交換体との接触が不十分となり、その結果、脱塩効率が低下してしまうため好ましくない。モノリス中間体は、マクロポアの大きさや開口の径が揃った均一構造のものが好適であるが、これに限定されず、均一構造中、均一なマクロポアの大きさよりも大きな不均一なマクロポアが点在するものであってもよい。
II工程は、ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する架橋剤、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製する工程である。なお、I工程とII工程の順序はなく、I工程後にII工程を行ってもよく、II工程後にI工程を行ってもよい。
II工程で用いられるビニルモノマーとしては、分子中に重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒に対する溶解性が高い親油性のビニルモノマーであれば、特に制限はないが、上記重合系に共存させるモノリス中間体と同種類もしくは類似のポリマー材料を生成するビニルモノマーを選定することが好ましい。これらビニルモノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン等の芳香族ビニルモノマー;エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のα-オレフィン;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。これらモノマーは、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明で好適に用いられるビニルモノマーは、スチレン、ビニルベンジルクロライド等の芳香族ビニルモノマーである。
これらビニルモノマーの添加量は、重合時に共存させるモノリス中間体に対して、重量で3〜40倍、好ましくは4〜30倍である。ビニルモノマー添加量が多孔質体に対して3倍未満であると、生成したモノリスの骨格(モノリス骨格の壁部の厚み)を太くできず、体積当りの吸着容量やイオン交換基導入後の体積当りのイオン交換容量が小さくなってしまうため好ましくない。一方、ビニルモノマー添加量が40倍を超えると、開口径が小さくなり、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。
II工程で用いられる架橋剤は、分子中に少なくとも2個の重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒への溶解性が高いものが好適に用いられる。架橋剤の具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート等が挙げられる。これら架橋剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。好ましい架橋剤は、機械的強度の高さと加水分解に対する安定性から、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル等の芳香族ポリビニル化合物である。架橋剤使用量は、ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対して0.3〜50モル%、特に0.3〜5モル%であることが好ましい。架橋剤使用量が0.3モル%未満であると、モノリスの機械的強度が不足するため好ましくない。一方、50モル%を越えると、モノリスの脆化が進行して柔軟性が失われる、イオン交換基の導入量が減少してしまうといった問題点が生じるため好ましくないなお、上記架橋剤使用量は、ビニルモノマー/架橋剤重合時に共存させるモノリス中間体の架橋密度とほぼ等しくなるように用いることが好ましい。両者の使用量があまりに大きくかけ離れると、生成したモノリス中で架橋密度分布の偏りが生じ、イオン交換基導入反応時にクラックが生じやすくなる。
II工程で用いられる有機溶媒は、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒、言い換えると、ビニルモノマーが重合して生成するポリマーに対する貧溶媒である。該有機溶媒は、ビニルモノマーの種類によって大きく異なるため一般的な具体例を列挙することは困難であるが、例えば、ビニルモノマーがスチレンの場合、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリン等のアルコール類;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の鎖状(ポリ)エーテル類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン等の鎖状飽和炭化水素類;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸セロソルブ、プロピオン酸エチル等のエステル類が挙げられる。また、ジオキサンやTHF、トルエンのようにポリスチレンの良溶媒であっても、上記貧溶媒と共に用いられ、その使用量が少ない場合には、有機溶媒として使用することができる。これら有機溶媒の使用量は、上記ビニルモノマーの濃度が30〜80重量%となるように用いることが好ましい。有機溶媒使用量が上記範囲から逸脱してビニルモノマー濃度が30重量%未満となると、重合速度が低下したり、重合後のモノリス構造が本発明の範囲から逸脱してしまうため好ましくない。一方、ビニルモノマー濃度が80重量%を超えると、重合が暴走する恐れがあるため好ましくない。
重合開始剤としては、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は油溶性であるほうが好ましい。本発明で用いられる重合開始剤の具体例としては、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。重合開始剤の使用量は、モノマーの種類や重合温度等によって大きく変動するが、ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対して、約0.01〜5%の範囲で使用することができる。
III工程は、II工程で得られた混合物を静置下、且つ該I工程で得られたモノリス中間体の存在下に重合を行い、該モノリス中間体の骨格より太い骨格を有する骨太のモノリスを得る工程である。III工程で用いるモノリス中間体は、本発明の斬新な構造を有するモノリスを創出する上で、極めて重要な役割を担っている。特表平7−501140号等に開示されているように、モノリス中間体不存在下でビニルモノマーと架橋剤を特定の有機溶媒中で静置重合させると、粒子凝集型のモノリス状有機多孔質体が得られる。それに対して、本発明のように上記重合系に連続マクロポア構造のモノリス中間体を存在させると、重合後のモノリスの構造は劇的に変化し、粒子凝集構造は消失し、上述の骨太のモノリスが得られる。その理由は詳細には解明されていないが、モノリス中間体が存在しない場合は、重合により生じた架橋重合体が粒子状に析出・沈殿することで粒子凝集構造が形成されるのに対し、重合系に多孔質体(中間体)が存在すると、ビニルモノマー及び架橋剤が液相から多孔質体の骨格部に吸着又は分配され、多孔質体中で重合が進行して骨太骨格のモノリスが得られると考えられる。なお、開口径は重合の進行により狭められるが、モノリス中間体の全細孔容積が大きいため、例え骨格が骨太になっても適度な大きさの開口径が得られる。
反応容器の内容積は、モノリス中間体を反応容器中に存在させる大きさのものであれば特に制限されず、反応容器内にモノリス中間体を載置した際、平面視でモノリスの周りに隙間ができるもの、反応容器内にモノリス中間体が隙間無く入るもののいずれであってもよい。このうち、重合後の骨太のモノリスが容器内壁から押圧を受けることなく、反応容器内に隙間無く入るものが、モノリスに歪が生じることもなく、反応原料などの無駄がなく効率的である。なお、反応容器の内容積が大きく、重合後のモノリスの周りに隙間が存在する場合であっても、ビニルモノマーや架橋剤は、モノリス中間体に吸着、分配されるため、反応容器内の隙間部分に粒子凝集構造物が生成することはない。
III工程において、反応容器中、モノリス中間体は混合物(溶液)で含浸された状態に置かれる。II工程で得られた混合物とモノリス中間体の配合比は、前述の如く、モノリス中間体に対して、ビニルモノマーの添加量が重量で3〜40倍、好ましくは4〜30倍となるように配合するのが好適である。これにより、適度な開口径を有しつつ、骨太の骨格を有するモノリスを得ることができる。反応容器中、混合物中のビニルモノマーと架橋剤は、静置されたモノリス中間体の骨格に吸着、分配され、モノリス中間体の骨格内で重合が進行する。
重合条件は、モノマーの種類、開始剤の種類により様々な条件が選択できる。例えば、開始剤として2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、30〜100℃で1〜48時間加熱重合させればよい。加熱重合により、モノリス中間体の骨格に吸着、分配したビニルモノマーと架橋剤が該骨格内で重合し、該骨格を太らせる。重合終了後、内容物を取り出し、未反応ビニルモノマーと有機溶媒の除去を目的に、アセトン等の溶剤で抽出して骨太のモノリスを得る。
次に、上記の方法によりモノリスを製造した後、陽イオン交換基を導入する方法が、得られるモノリスイオン交換体の多孔構造を厳密にコントロールできる点で好ましい。
上記モノリスに陽イオン交換基を導入する方法としては、特に制限はなく、高分子反応やグラフト重合等の公知の方法を用いることができる。例えば、スルホン酸基を導入する方法としては、モノリスがスチレン-ジビニルベンゼン共重合体等であればクロロ硫酸や濃硫酸、発煙硫酸を用いてスルホン化する方法;モノリスに均一にラジカル開始基や連鎖移動基を骨格表面及び骨格内部に導入し、スチレンスルホン酸ナトリウムやアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸をグラフト重合する方法;同様にグリシジルメタクリレートをグラフト重合した後、官能基変換によりスルホン酸基を導入する方法等が挙げられる。これらスルホン酸基を導入する方法については、クロロ硫酸を用いてスチレン-ジビニルベンゼン共重合体にスルホン酸基を導入する方法が、陽イオン交換基を均一かつ定量的に導入できる点で好ましい。なお、導入するイオン交換基としては、カルボン酸基、イミノ二酢酸基、スルホン酸基、リン酸基、リン酸エステル基等のカチオン交換基が挙げられる。
第1のモノリスイオン交換体は、骨太のモノリスにイオン交換基が導入されるため例えば骨太モノリスの1.4〜1.9倍のように大きく膨潤する。すなわち、特開2002−306976記載の従来のモノリスにイオン交換基が導入されたものよりも膨潤度が遥かに大きい。このため、骨太モノリスの開口径が小さいものであっても、モノリスイオン交換体の開口径は概ね、上記倍率で大きくなる。また、開口径が膨潤で大きくなっても全細孔容積は変化しない。従って、第1のモノリスイオン交換体は、開口径が格段に大きいにもかかわらず、骨太骨格を有するため機械的強度が高い。
<第2のモノリスイオン交換体の説明>
第2のモノリスイオン交換体は、イオン交換基が導入された全構成単位中、架橋構造単位を0.3〜5.0モル%含有する芳香族ビニルポリマーからなる平均太さが水湿潤状態で1〜60μm、好ましくは3〜58μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に平均直径が水湿潤状態で10〜100μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体であって、全細孔容積が0.5〜5ml/gであり、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が0.3〜5mg当量/mlであり、イオン交換基が該多孔質イオン交換体中に均一に分布している。
第2のモノリスイオン交換体は、イオン交換基が導入された太さが1〜60μm、好ましくは3〜58μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に直径が10〜100μm、好ましくは15〜90μm、特に20〜80μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体である。すなわち、共連続構造は図6の模式図に示すように、連続する骨格相61と連続する空孔相62とが絡み合ってそれぞれが共に3次元的に連続する構造60である。この連続した空孔62は、従来の連続気泡型モノリスや粒子凝集型モノリスに比べて空孔の連続性が高くてその大きさに偏りがないため、極めて均一なイオンの吸着挙動が達成できる。また、骨格が太いため機械的強度が高い。
第2のモノリスイオン交換体の骨格の太さ及び空孔の直径は、モノリスにイオン交換基を導入する際、モノリス全体が膨潤するため、モノリスの骨格の太さ及び空孔の直径よりも大となる。この連続した空孔は、従来の連続気泡型モノリス状有機多孔質イオン交換体や粒子凝集型モノリス状有機多孔質イオン交換体に比べて空孔の連続性が高くてその大きさに偏りがないため、極めて均一なイオンの吸着挙動が達成できる。三次元的に連続した空孔の平均直径が水湿潤状態で10μm未満であると、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、100μmを超えると、被処理水と有機多孔質イオン交換体との接触が不十分となり、イオン交換特性が不均一となるので好ましくない。また、骨格の平均太さが水湿潤状態で1μm未満であると、体積当りのイオン交換容量が低下する、機械的強度が低下する等の欠点が生じるため好ましくなく、一方、骨格の太さが大き過ぎると、イオン交換特性の均一性が失われるため好ましくない。
上記記連続構造体の空孔の水湿潤状態での平均直径は、水銀圧入法で測定した乾燥状態のモノリスイオン交換体の空孔の平均直径に、膨潤率を乗じて算出される値である。具体的には、水湿潤状態のモノリスイオン交換体の直径がx2(mm)であり、その水湿潤状態のモノリスイオン交換体を乾燥させ、得られる乾燥状態のモノリスイオン交換体の直径がy2(mm)であり、この乾燥状態のモノリスイオン交換体を水銀圧入法により測定したときの空孔の平均直径がz2(μm)であったとすると、モノリスイオン交換体の空孔の水湿潤状態での平均直径(μm)は、次式「モノリスイオン交換体の空孔の水湿潤状態の平均直径(μm)=z2×(x2/y2)」で算出される。また、イオン交換基導入前の乾燥状態のモノリスの空孔の平均直径、及びその乾燥状態のモノリスにイオン交換基導入したときの乾燥状態のモノリスに対する水湿潤状態のモノリスイオン交換体の膨潤率がわかる場合は、乾燥状態のモノリスの空孔の平均直径に、膨潤率を乗じて、モノリスイオン交換体の空孔の水湿潤状態の平均直径を算出することもできる。また、上記記連続構造体の骨格の水湿潤状態での平均太さは、乾燥状態のモノリスイオン交換体のSEM観察を少なくとも3回行い、得られた画像中の骨格の太さを測定し、その平均値に、膨潤率を乗じて算出される値である。具体的には、水湿潤状態のモノリスイオン交換体の直径がx3(mm)であり、その水湿潤状態のモノリスイオン交換体を乾燥させ、得られる乾燥状態のモノリスイオン交換体の直径がy3(mm)であり、この乾燥状態のモノリスイオン交換体のSEM観察を少なくとも3回行い、得られた画像中の骨格の太さを測定し、その平均値がz3(μm)であったとすると、モノリスイオン交換体の連続構造体の骨格の水湿潤状態での平均太さ(μm)は、次式「モノリスイオン交換体の連続構造体の骨格の水湿潤状態の平均太さ(μm)=z3×(x3/y3)」で算出される。また、イオン交換基導入前の乾燥状態のモノリスの骨格の平均太さ、及びその乾燥状態のモノリスにイオン交換基導入したときの乾燥状態のモノリスに対する水湿潤状態のモノリスイオン交換体の膨潤率がわかる場合は、乾燥状態のモノリスの骨格の平均太さに、膨潤率を乗じて、モノリスイオン交換体の骨格の水湿潤状態の平均太さを算出することもできる。なお、骨格は棒状であり円形断面形状であるが、楕円断面形状等異径断面のものが含まれていてもよい。この場合の太さは短径と長径の平均である。
第2のモノリスイオン交換体は、3次元的に連続した棒状骨格の太さが10μm未満であると、体積当りのイオン交換容量が低下してしまうため好ましくなく、100μmを超えると、脱塩特性の均一性が失われるため好ましくない。モノリスイオン交換体の壁部の定義及び測定方法などは、モノリスと同様である。
また、第2のモノリスイオン交換体は、0.5〜5ml/gの全細孔容積を有する。全細孔容積が0.5ml/g未満であると、単位断面積当りの通水量が小さくなり、通水量を大きく取れないため好ましくない。一方、全細孔容積が5ml/gを超えると、ポリマーである骨格部分の占める割合が低下し、多孔質体の強度が低下してしまうため好ましくない。本発明のモノリスは、開口の平均直径及び全細孔容積が上記範囲にあり、且つ骨太の骨格であるため、これを電気式脱イオン水製造装置の混合イオン交換体の一部として用いた場合、接触面積も大きいため、イオン交換帯長さが短く、且つ低圧力損失となる。なお、モノリス(モノリス中間体、モノリス、モノリスイオン交換体)の全細孔容積は、乾燥状態でも、水湿潤状態でも、同じである。
なお、第2のモノリスイオン交換体に水を透過させた際の圧力損失は、多孔質体を1m充填したカラムに通水線速度(LV)1m/hで通水した際の圧力損失(以下、「差圧係数」と言う。)で示すと、0.001〜0.5MPa/m・LVの範囲、特に0.001〜0.1MPa/m・LVである。差圧係数および全細孔容積がこの範囲にあれば、これをイオン交換膜の設置を省略した電気式脱イオン液製造装置の脱塩領域に用いた場合、通水時の圧力損失を抑制し、処理水水質を向上させる。
第2のモノリスイオン交換体において、共連続構造体の骨格を構成する材料は、全構成単位中、0.3〜5モル%、好ましくは0.5〜3.0モル%の架橋構造単位を含んでいる芳香族ビニルポリマーであり疎水性である。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、5モル%を越えると、多孔質体の構造が共連続構造から逸脱しやすくなる。該芳香族ビニルポリマーの種類に特に制限はなく、例えば、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリビニルトルエン、ポリビニルベンジルクロライド、ポリビニルビフェニル、ポリビニルナフタレン等が挙げられる。上記ポリマーは、単独のビニルモノマーと架橋剤を共重合させて得られるポリマーでも、複数のビニルモノマーと架橋剤を重合させて得られるポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、共連続構造形成の容易さ、イオン交換基導入の容易性と機械的強度の高さ、および酸・アルカリに対する安定性の高さから、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体が好ましい。
第2のモノリスイオン交換体は、水湿潤状態での体積当りの陽イオン交換容量が0.3〜5mg当量/mlのイオン交換容量を有する。特開2002−306976号に記載されているような本発明とは異なる連続マクロポア構造を有する従来型のモノリス状有機多孔質イオン交換体では、実用的に要求される低い圧力損失を達成するために、開口径を大きくすると、全細孔容積もそれに伴って大きくなってしまうため、体積当りのイオン交換容量が低下する、体積当りの交換容量を増加させるために全細孔容積を小さくしていくと、開口径が小さくなってしまうため圧力損失が増加するといった欠点を有していた。それに対して、本発明のモノリスイオン交換体は、三次元的に連続した空孔の連続性や均一性が高いため、全細孔容積を低下させても圧力損失はさほど増加しない。そのため、圧力損失を低く押さえたままで体積当りのイオン交換容量を飛躍的に大きくすることができる。なお、第2のモノリスイオン交換体の乾燥状態における重量当りのイオン交換容量は特に限定されないが、イオン交換基が多孔質体の骨格表面及び骨格内部にまで均一に導入しているため、3〜5mg当量/gである。なお、イオン交換基が骨格表面のみに導入された多孔質体のイオン交換容量は、多孔質体やイオン交換基の種類により一概には決定できないものの、せいぜい500μg当量/gである。
第2のモノリスイオン交換体におけるイオン交換基としては、第1のモノリスイオン交換体におけるイオン交換基と同様であり、その説明を省略する。第2のモノリスイオン交換体において、導入されたイオン交換基は、多孔質体の表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布している。均一分布の定義は、第1のモノリスイオン交換体の均一分布の定義と同じである。
(第2のモノリスイオン交換体の製造方法)
第2のモノリスイオン交換体は、イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤及び水の混合物を撹拌することにより油中水滴型エマルジョンを調製し、次いで油中水滴型エマルジョンを重合させて全細孔容積が16ml/gを超え、30ml/g以下の連続マクロポア構造のモノリス状の有機多孔質中間体を得るI工程、芳香族ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する全油溶性モノマー中、0.3〜5モル%の架橋剤、芳香族ビニルモノマーや架橋剤は溶解するが芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製するII工程、II工程で得られた混合物を静置下、且つI工程で得られたモノリス状の有機多孔質中間体の存在下に重合を行い、共連続構造体を得るIII工程、該III工程で得られた共連続構造体にイオン交換基を導入するIV工程を行うことで得られる。
第2のモノリスイオン交換体におけるモノリス中間体を得るI工程は、特開2002−306976号公報記載の方法に準拠して行なえばよい。
すなわち、I工程において、イオン交換基を含まない油溶性モノマーとしては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、四級アンモニウム基等のイオン交換基を含まず、水に対する溶解性が低く、親油性のモノマーが挙げられる。これらモノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン等の芳香族ビニルモノマー;エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のα-オレフィン;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。これらモノマーの中で、好適なものとしては、芳香族ビニルモノマーであり、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらモノマーは、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。ただし、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート等の架橋性モノマーを少なくとも油溶性モノマーの一成分として選択し、その含有量を全油溶性モノマー中、0.3〜5モル%、好ましくは0.3〜3モル%とすることが、後の工程でイオン交換基量を多く導入するに際して必要な機械的強度が得られる点で好ましい。
界面活性剤は、第1のモノリスイオン交換体のI工程で使用する界面活性剤と同様であり、その説明を省略する。
また、I工程では、油中水滴型エマルジョン形成の際、必要に応じて重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤は、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は水溶性であっても油溶性であってもよく、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、テトラメチルチウラムジスルフィド、過酸化水素−塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム−酸性亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。
イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤、水及び重合開始剤とを混合し、油中水滴型エマルジョンを形成させる際の混合方法としては、第1のモノリスイオン交換体のI工程における混合方法と同様であり、その説明を省略する。
第2のモノリスイオン交換体の製造方法において、I工程で得られるモノリス中間体は、架橋構造を有する有機ポリマー材料、好適には芳香族ビニルポリマーである。該ポリマー材料の架橋密度は特に限定されないが、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.3〜5モル%、好ましくは0.3〜3モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくない。一方、5モル%を超えると、モノリスの構造が共連続構造を逸脱し易くなるため好ましくない。特に、全細孔容積が16〜20ml/gと本発明の中では小さい場合には、共連続構造を形成させるため、架橋構造単位は3モル未満とすることが好ましい。
モノリス中間体のポリマー材料の種類は、第1のモノリスイオン交換体のモノリス中間体のポリマー材料の種類と同様であり、その説明を省略する。
モノリス中間体の全細孔容積は、16ml/gを超え、30ml/g以下、好適には6〜25ml/gである。すなわち、このモノリス中間体は、基本的には連続マクロポア構造ではあるが、マクロポアとマクロポアの重なり部分である開口(メソポア)が格段に大きいため、モノリス構造を構成する骨格が二次元の壁面から一次元の棒状骨格に限りなく近い構造を有している。これを重合系に共存させると、モノリス中間体の構造を鋳型として共連続構造の多孔質体が形成される。全細孔容積が小さ過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの構造が共連続構造から連続マクロポア構造に変化してしまうため好ましくなく、一方、全細孔容積が大き過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの機械的強度が低下したり、体積当たりのイオン交換容量が低下してしまうため好ましくない。モノリス中間体の全細孔容積を第2のモノリスイオン交換体の特定の範囲とするには、モノマーと水の比を、概ね1:20〜1:40とすればよい。
また、モノリス中間体は、マクロポアとマクロポアの重なり部分である開口(メソポア)の平均直径が乾燥状態で5〜100μmである。開口の平均直径が5μm未満であると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が小さくなり、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。一方、100μmを超えると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が大きくなりすぎ、流体とモノリスイオン交換体との接触が不十分となり、その結果、イオン交換特性が低下してしまうため好ましくない。モノリス中間体は、マクロポアの大きさや開口の径が揃った均一構造のものが好適であるが、これに限定されず、均一構造中、均一なマクロポアの大きさよりも大きな不均一なマクロポアが点在するものであってもよい。
第2のモノリスイオン交換体の製造方法において、II工程は、芳香族ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する全油溶性モノマー中、0.3〜5モル%の架橋剤、芳香族ビニルモノマーや架橋剤は溶解するが芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製する工程である。なお、I工程とII工程の順序はなく、I工程後にII工程を行ってもよく、II工程後にI工程を行ってもよい。
第2のモノリスイオン交換体の製造方法において、II工程で用いられる芳香族ビニルモノマーとしては、分子中に重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒に対する溶解性が高い親油性の芳香族ビニルモノマーであれば、特に制限はないが、上記重合系に共存させるモノリス中間体と同種類もしくは類似のポリマー材料を生成するビニルモノマーを選定することが好ましい。これらビニルモノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン等が挙げられる。これらモノマーは、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明で好適に用いられる芳香族ビニルモノマーは、スチレン、ビニルベンジルクロライド等である。
これら芳香族ビニルモノマーの添加量は、重合時に共存させるモノリス中間体に対して、重量で5〜50倍、好ましくは5〜40倍である。芳香族ビニルモノマー添加量が多孔質体に対して5倍未満であると、棒状骨格を太くできず、イオン交換基導入後の体積当りのイオン交換容量が小さくなって、導電性を高めることができなくなる。
II工程で用いられる架橋剤は、分子中に少なくとも2個の重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒への溶解性が高いものが好適に用いられる。架橋剤の具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート等が挙げられる。これら架橋剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。好ましい架橋剤は、機械的強度の高さと加水分解に対する安定性から、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル等の芳香族ポリビニル化合物である。架橋剤使用量は、ビニルモノマーと架橋剤の合計量(全油溶性モノマー)に対して0.3〜5モル%、特に0.3〜3モル%である。架橋剤使用量が0.3モル%未満であると、モノリスの機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、多過ぎると、モノリスの脆化が進行して柔軟性が失われる、イオン交換基の導入量が減少してしまうといった問題点が生じるため好ましくない。なお、上記架橋剤使用量は、ビニルモノマー/架橋剤重合時に共存させるモノリス中間体の架橋密度とほぼ等しくなるように用いることが好ましい。両者の使用量があまりに大きくかけ離れると、生成したモノリス中で架橋密度分布の偏りが生じ、イオン交換基導入反応時にクラックが生じやすくなる。
II工程で用いられる有機溶媒は、芳香族ビニルモノマーや架橋剤は溶解するが芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒、言い換えると、芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーに対する貧溶媒である。該有機溶媒は、芳香族ビニルモノマーの種類によって大きく異なるため一般的な具体例を列挙することは困難であるが、例えば、芳香族ビニルモノマーがスチレンの場合、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ブチルセロソルブ、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の鎖状(ポリ)エーテル類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン等の鎖状飽和炭化水素類;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸セロソルブ、プロピオン酸エチル等のエステル類が挙げられる。また、ジオキサンやTHF、トルエンのようにポリスチレンの良溶媒であっても、上記貧溶媒と共に用いられ、その使用量が少ない場合には、有機溶媒として使用することができる。これら有機溶媒の使用量は、上記芳香族ビニルモノマーの濃度が30〜80重量%となるように用いることが好ましい。有機溶媒使用量が上記範囲から逸脱して芳香族ビニルモノマー濃度が30重量%未満となると、重合速度が低下したり、重合後のモノリス構造が本発明の範囲から逸脱してしまうため好ましくない。一方、芳香族ビニルモノマー濃度が80重量%を超えると、重合が暴走する恐れがあるため好ましくない。
重合開始剤は、第1のモノリスイオン交換体のII工程で用いる重合開始剤と同様であり、その説明を省略する。
第2のモノリスイオン交換体の製造方法において、III工程は、II工程で得られた混合物を静置下、且つ該I工程で得られたモノリス中間体の存在下に重合を行い、該モノリス中間体の連続マクロポア構造を共連続構造に変化させ、骨太骨格のモノリスを得る工程である。III工程で用いるモノリス中間体は、本発明の斬新な構造を有するモノリスを創出する上で、極めて重要な役割を担っている。特表平7−501140号等に開示されているように、モノリス中間体不存在下でビニルモノマーと架橋剤を特定の有機溶媒中で静置重合させると、粒子凝集型のモノリス状有機多孔質体が得られる。それに対して、本発明の第2のモノリスのように上記重合系に特定の連続マクロポア構造のモノリス中間体を存在させると、重合後のモノリスの構造は劇的に変化し、粒子凝集構造は消失し、上述の共連続構造のモノリスが得られる。その理由は詳細には解明されていないが、モノリス中間体が存在しない場合は、重合により生じた架橋重合体が粒子状に析出・沈殿することで粒子凝集構造が形成されるのに対し、重合系に全細孔容積が大きな多孔質体(中間体)が存在すると、ビニルモノマー及び架橋剤が液相から多孔質体の骨格部に吸着又は分配され、多孔質体中で重合が進行し、モノリス構造を構成する骨格が二次元の壁面から一次元の棒状骨格に変化して共連続構造を有するモノリス状有機多孔質体が形成されると考えられる。
反応容器の内容積は、第1のモノリスイオン交換体の反応容器の内容積の説明と同様であり、その説明を省略する。
III工程において、反応容器中、モノリス中間体は混合物(溶液)で含浸された状態に置かれる。II工程で得られた混合物とモノリス中間体の配合比は、前述の如く、モノリス中間体に対して、芳香族ビニルモノマーの添加量が重量で5〜50倍、好ましくは5〜40倍となるように配合するのが好適である。これにより、適度な大きさの空孔が三次元的に連続し、且つ骨太の骨格が3次元的に連続する共連続構造のモノリスを得ることができる。反応容器中、混合物中の芳香族ビニルモノマーと架橋剤は、静置されたモノリス中間体の骨格に吸着、分配され、モノリス中間体の骨格内で重合が進行する。
共連続構造を有するモノリスの基本構造は、平均太さが乾燥状態で0.8〜40μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に平均直径が乾燥状態で8〜80μmの三次元的に連続した空孔が配置された構造である。上記三次元的に連続した空孔の平均の大きさは、水銀圧入法により細孔分布曲線を測定し、細孔分布曲線の極大値として得ることができる。モノリスの骨格の平均太さは、SEM観察を少なくとも3回行い、得られた画像中の骨格の太さを測定して算出すればよい。また、共連続構造を有するモノリスは、0.5〜5ml/gの全細孔容積を有する。
重合条件は、第1のモノリスイオン交換体のIII工程の重合条件の説明と同様であり、その説明を省略する。
IV工程において、共連続構造を有するモノリスにイオン交換基を導入する方法は、第1のモノリスイオン交換体における、モノリスにイオン交換基を導入する方法と同様であり、その説明を省略する。
第2のモノリスイオン交換体は、共連続構造のモノリスにイオン交換基が導入されるため、例えばモノリスの1.4〜1.9倍に大きく膨潤する。また、空孔径が膨潤で大きくなっても全細孔容積は変化しない。従って、第2のモノリスイオン交換体は、3次元的に連続する空孔の大きさが格段に大きいにもかかわらず、骨太骨格を有するため機械的強度が高い。また、骨格が太いため、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量を大きくでき、導電性を高めることができる。
本発明において、陽イオン交換体は、前記第1のモノリスイオン交換体と粒状陽イオン交換樹脂の混床イオン交換体であってもよく、前記第2のモノリスイオン交換体と粒状陽イオン交換樹脂の混床イオン交換体であってもよい。この場合、例えば、電気再生式脱陽イオン装置において、被処理水流入側にモノリスイオン交換体を配置し、下流側に従来の粒状イオン交換樹脂を充填した場合、骨太骨格を有するモノリスイオン交換体の迅速な吸着とイオン排除を備えながら、粒状イオン交換樹脂の大きな充填体積あたりの交換容量のために、発電所における定期点検時の満水保管後の立上げ運転時や、デイリー・スタート・ストップ(DSS)、ウィークリー・スタート・ストップ(WSS)などに伴う被処理水中の陽イオン流入量の変動に対しても、より安定した脱陽イオン処理を行うことが可能となり、汎用性の高い陰イオン検出装置が得られる点で好ましい。前記モノリスイオン交換体と粒状陽イオン交換樹脂の充填割合としては、特に制限されないが、モノリスイオン交換体:粒状陽イオン交換樹脂が、体積割合で1:0.5〜1:10である。
また、陽イオン交換体は、脱塩領域を形成する第1の陽イオン交換体部と、該脱塩領域のイオン排除側に隣接して配設され脱塩領域に導入された被処理液の一部が透過する該第1の陽イオン交換体部の通液抵抗より大きい第2の陽イオン交換体部とからなる複合イオン交換体であれば、脱塩室と電極室を区画するイオン交換膜を省略することができる点で好ましい。第1の陽イオン交換体部としては、第1のモノリスイオン交換体又は第1のモノリスイオン交換体と陽イオン交換樹脂の混合体、あるいは第2のモノリスイオン交換体又は第2のモノリスイオン交換体と陽イオン交換樹脂の混合体が挙げられる。第2の陽イオン交換体部としては、通液抵抗が第1の陽イオン交換部よりも高いものであればよく、例えば特開2002−306976号公報に記載の気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分(メソポア)が開口となる連続気泡構造のモノリスイオン交換体、所定の太さの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に形成される三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造のモノリスイオン交換体、連続骨格相と連続空孔相からなる有機多孔質体と該有機多孔質体の骨格表面に形成される多数の突起体との複合構造からなるモノリスイオン交換体及び気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分(メソポア)が開口となる連続気泡構造の骨格部の表層部が多孔構造であるモノリスイオン交換体などが挙げられる。
上記の複合イオン交換体において、第2の陽イオン交換体部の通液抵抗が、該脱塩領域を形成する第1の陽イオン交換体部の通液抵抗より大きいため、別途の特段の流路分配手段を設けなくとも、脱塩領域に流入した試料液の大部分が脱カチオン液として脱塩領域から流出し、被処理液の一部が液透過領域に透過する。
また、脱塩領域を形成する第1の陽イオン交換体部と液透過領域を形成する第2の陽イオン交換体部は同じもの、すなわち脱塩領域と液透過領域を単一のモノリスで形成し、且つ液透過領域から透過した流出液の流路に、流量調節手段を配設するものであってもよい。すなわち、液透過領域に装填される多孔質イオン交換体の通液抵抗は、脱塩領域に充填される陽イオン交換体部の通液抵抗と同じであっても、流量調節手段によって、透過液と脱イオン液の流量をより所望の割合に調整することができる。これにより、脱塩領域用モノリスと液透過領域用モノリスをそれぞれ個別に製造する必要がない点で都合が良い。単一のモノリスは、第1のモノリスイオン交換体または第2のモノリスイオン交換体である。この場合、流量調節手段がないと、液透過領域に流れる流量が多くなり、脱塩液の収量が低下してしまう。また、被処理液の流量に対する液透過領域を透過する透過液の流量比率は、例えば2〜30%、好ましくは4〜30%である。流量調節手段としては、流量調節弁、アリフィス等が挙げられる。
また、脱イオン室に充填する第1のモノリスイオン交換体または第2のモノリスイオン交換体に替えて、第1のモノリスイオン交換体または第2のモノリスイオン交換体と一体となるようにモノリスの一方の側面に緻密層を形成させた複合多孔質イオン交換体を用いれば、電気再生式脱陽イオン水製造装置を作製する際、該緻密層側のイオン交換膜を省略することもできる。このような複合多孔質イオン交換体を陽イオン交換体として使用する場合には、前記の電気再生式脱陽イオン装置の構成の内、イオン交換膜の一部または全部を省略し、装置構成をより簡略化することもできる。
ここでいう緻密層とは、多孔質ポリマーの骨格の高分子材料と同じ高分子材料よりなり、水の透過を阻止する機能を有する層をいう。緻密層を有する複合多孔質イオン交換体は、例えば、中間モノリスを製造する際、前記油中水滴型エマルジョンを一部が疎水性材料で構成された容器に充填した後静置して、該疎水性材料の表面に油溶性モノマーの連続膜を形成せしめた後重合させるか、または前記油中水滴型エマルジョンを重合させて多孔質ポリマーを得た後、緻密層を形成させる表面部分に、必要に応じて重合開始剤を添加した油溶性モノマーを塗布して、再度重合させて得られる複合多孔質重合体に、前記と同様の方法によってイオン交換基を導入して製造することができる。更に、本発明の電気再生式脱陽イオン水製造装置の脱イオン室に充填する陽イオン交換体と開口(メソポア)の平均径が1μm未満、好ましくは0.5μm未満である公知の多孔質イオン交換体とを組み合わせて用いることで、イオン交換膜を省略することもできる。上記メソポアの平均径が1μm未満、好ましくは0.5μm未満である多孔質イオン交換体は、メソポア径が著しく小さいため、通常の運転条件では、イオンは透過するが水の透過は極めて僅かとなり、イオン交換膜を代替しうるものとなる。
本発明の実施の形態における陰イオンの検出装置を図13を参照して説明する。図13は陰イオンの検出装置の一例を示す概略構成図である。図13において、陰イオンの検出装置10は、電気再生式脱陽イオン装置10aと、脱塩室流出配管32に配設される処理液の導電率又は比抵抗を測定する測定器10bとからなり、電気再生式脱陽イオン装置10aは、陽極室1と陰極室2の間に、二枚のカチオン交換膜5、5で区画された陽イオン交換体3が充填される脱塩室4を備え、陽極室1、陰極室2及び脱塩室4には、それぞれ液の流入配管11、21、31と流出配管12、22、32が配設されている。
図13において、脱塩室4は、被処理液流入側にモノリスイオン交換体35が、処理液流出側には球状陽イオン交換樹脂36が、それぞれ、充填体積比率1:1で充填されている。すなわち、モノリスイオン交換体35と球状陽イオン交換樹脂36は通水方向にモノリスイオン交換体相と球状陽イオン交換樹脂層が積層された層状体である。モノリスイオン交換体とイオン交換樹脂との層状体は、モノリスイオン交換体がスポンジ状の一体構造物であるため、イオン交換樹脂と混ざることがなく、室内においてイオン交換膜等の区画手段を用いなくとも相状に充填できる。また、被処理水流入配管31は脱塩室の陰極側のカチオン交換膜近傍に流入口がくるように付設され、処理水流出配管32は脱塩室の陽極側のカチオン交換膜近傍であって、流入口から遠い側に流出口がくるように付設されている。これにより、直流電場の印加は、排除されるイオンが該陽イオン交換体内における通水方向に対して逆方向に泳動するため、被処理液中の陽イオンを確実に除去できる。また、陰極室流入配管21は脱塩室流入配管31から分岐しており、陽極室流入配管11は測定器流出配管16と接続している。
図13の陰イオンの検出装置10において、被処理液が脱塩室4に流入すると、試料中に含まれるアンモニアやヒドラジン成分はカチオン交換体3に捕捉され、カチオン交換膜5を透過し、陰極室2に移動し、陰極水である試料液と共に系外へ排出される。陽極室1の陽極水は測定器10bの流出水であり、これには水素イオン以外の陽イオン成分はなく陽極室1から脱塩室4へは水素イオン以外に移動はない。このため、処理水は水素イオン以外の陽イオン成分の混入はない。ここで、試料液に少量の塩化ナトリウムが混入した場合、例えば1mgNH/l中の数μgNaCl/lの増加であるため、試料液自身の導電率はほとんど変化しない。一方、処理水はアンモニアやヒドラジンなどのカチオン成分は除去されるもののClは除去されない。従って、導電率はClが混入した分だけ変化する。この導電率は酸導電率の変化であるため、当該変化量は同当量のNaClの変化よりも大きい。なお、導電率は比抵抗の逆数であり、どちらを測定してもよい。
本発明の陰イオンの検出装置は、図13の陰イオン検出装置に限定されず、例えば、前記の脱塩領域と液透過領域を備えた複合イオン交換体又は緻密層を備えた複合多孔質イオン交換体を使用すれば、二枚のカチオン交換膜の設置を省略することができ、更にコストを低減できる。また、脱塩室中、被処理液の流通方向は直流電場の印加が、排除されるイオンが該陽イオン交換体内における通水方向に対して直行方向であってもよい。また、陽極水は、陰イオン測定器の流出水ではなく、別途の配管から供給される純水であってもよい。
本発明の陰イオンの検出装置の電気再生式脱陽イオン装置の脱塩室の全部に多孔質陽イオン交換体、特に第1のモノリスイオン交換体または第2のモノリスイオン交換体を充填した場合、モノリス強度が高く、通水時の圧力損失を抑さえ、体積当たりのイオン交換容量を大きくとれ、消費電力を小さくできる。また、特開2006−167568号に記載の弱塩基性成分吸着ゾーンを短くできる、安定して正確な常時監視が可能で、かつ構造が簡単で且つ小型化でき安価に製造できるという特有の効果はそのまま保持している。
また、更に被処理水流入側にモノリスを配置し、下流側に従来の粒状イオン交換樹脂を充填した場合、該モノリスの迅速な吸着とイオン排除を備えながら、粒状イオン交換樹脂の大きな充填体積当りの交換容量のために、発電所における定期点検時の満水保管後の立上げ運転時や、DSS、WSSなどに伴う被処理水中の陽イオン流入量の変動に対しても、より安定した脱陽イオン処理を行うことが可能となる。
次に、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって本発明を制限するものではない。
<第1のモノリスイオン交換体の製造(参考例1)>
(I工程;モノリス中間体の製造)
スチレン19.2g、ジビニルベンゼン1.0g、ソルビタンモノオレエート(以下SMOと略す)1.0gおよび2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.26gを混合し、均一に溶解させた。次に,当該スチレン/ジビニルベンゼン/SMO/2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)混合物をTHF1.8mlを含有する180gの純水に添加し、遊星式撹拌装置である真空撹拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて5〜20℃の温度範囲において減圧下撹拌して、油中水滴型エマルションを得た。このエマルションを反応容器に速やかに移し、密封後静置下で60℃、24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、イソプロパノールで抽出した後、減圧乾燥して、連続マクロポア構造を有するモノリス中間体を製造した。該モノリス中間体のマクロポアとマクロポアが重なる部分の開口(メソポア)の水銀圧入法により測定した平均直径は56μm、全細孔容積は7.5ml/gであった。
(モノリスの製造)
次いで、スチレン49.0g、ジビニルベンゼン1.0g、1-デカノール50g、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.5gを混合し、均一に溶解させた(II工程)。次に上記モノリス中間体を外径70mm、厚さ約20mmの円盤状に切断して、7.6g分取した。分取したモノリス中間体を内径90mmの反応容器に入れ、当該スチレン/ジビニルベンゼン/1-デカノール/2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)混合物に浸漬させ、減圧チャンバー中で脱泡した後、反応容器を密封し、静置下60℃で24時間重合させた。重合終了後、厚さ約30mmのモノリス状の内容物を取り出し、アセトンでソックスレー抽出した後、85℃で一夜減圧乾燥した(III工程)。
このようにして得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を1.3モル%含有したモノリス(乾燥体)の内部構造を、SEMにより観察した結果を図1に示す。図1のSEM画像は、モノリスを任意の位置で切断して得た切断面の任意の位置における画像である。図1から明らかなように、当該モノリスは連続マクロポア構造を有しており、連続マクロポア構造体を構成する骨格が比較例の図12のものと比べて遥かに太く、また、骨格を構成する壁部の厚みが厚いものであった。
次ぎに、得られたモノリスを主観を排除して上記位置とは異なる位置で切断して得たSEM画像2点、都合3点から壁部の厚みと断面に表れる骨格部面積を測定した。壁部の厚みは1つのSEM写真から得た8点の平均であり、骨格部面積は画像解析により求めた。なお、壁部は前述の定義のものである。また、骨格部面積は3つのSEM画像の平均で示した。この結果、壁部の平均厚みは30μm、断面で表れる骨格部面積はSEM画像中28%であった。また、水銀圧入法により測定した当該モノリスの開口の平均直径は31μm、全細孔容積は2.2ml/gであった。結果を表1及び表2にまとめて示す。表1中、仕込み欄は左から順に、II工程で用いたビニルモノマー、架橋剤、I工程で得られたモノリス中間体、II工程で用いた有機溶媒を示す。
(モノリスカチオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、外径70mm、厚み約15mmの円盤状に切断した。モノリスの重量は27gであった。これにジクロロメタン1500mlを加え、35℃で1時間加熱した後、10℃以下まで冷却し、クロロ硫酸145gを徐々に加え、昇温して35℃で24時間反応させた。その後、メタノールを加え、残存するクロロ硫酸をクエンチした後、メタノールで洗浄してジクロロメタンを除き、更に純水で洗浄して連続マクロポア構造を有するモノリスカチオン交換体を得た。
得られたカチオン交換体の反応前後の膨潤率は1.7倍であり、体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で0.67mg当量/mlであった。水湿潤状態での有機多孔質イオン交換体の開口の平均直径を、有機多孔質体の値と水湿潤状態のカチオン交換体の膨潤率から見積もったところ54μmであり、モノリスと同様の方法で求めた骨格を構成する壁部の平均厚みは50μm、骨格部面積はSEM写真の写真領域中28%、全細孔容積は2.2mlであった。また、該モノリスカチオン交換体のナトリウムイオンに関するイオン交換帯長さは、LV=20m/hにおいて22mmであった。また、水を透過させた際の圧力損失の指標である差圧係数は、0.016MPa/m・LVであった。その結果を表2にまとめて示す。
次に、モノリスカチオン交換体中のスルホン酸基の分布状態を確認するため、EPMAにより硫黄原子の分布状態を観察した。結果を図2及び図3に示す。図2は硫黄原子のカチオン交換体の表面における分布状態を示したものであり、図3は硫黄原子のカチオン交換体の断面(厚み)方向における分布状態を示したものである。図2及び図3より、スルホン酸基はカチオン交換体の骨格表面及び骨格内部(断面方向)にそれぞれ均一に導入されていることがわかる。
<第1のモノリスイオン交換体の製造(参考例2〜11)>
(モノリスの製造)
スチレンの使用量、架橋剤の種類と使用量、有機溶媒の種類と使用量、スチレン及びジビニルベンゼン含浸重合時に共存させるモノリス中間体の多孔構造、架橋密度および使用量を表1に示す配合量に変更した以外は、参考例1と同様の方法でモノリスを製造した。その結果を表1及び表2に示す。なお、参考例2〜11のSEM画像(不図示)及び表2から、参考例2〜11のモノリスの開口の平均直径は22〜70μmと大きく、骨格を構成する壁部の平均厚みも25〜50μmと厚く、骨格部面積はSEM画像領域中26〜44%と骨太のモノリスであった。
(モノリスカチオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、それぞれ参考例1と同様の方法でクロロ硫酸と反応させ、連続マクロポア構造を有するモノリスカチオン交換体を製造した。その結果を表2に示す。参考例2〜11のモノリスカチオン交換体の開口の平均直径は46〜138μmであり、骨格を構成する壁部の平均厚みも45〜110μmと厚く、骨格部面積はSEM画像領域中26〜44%であり、イオン交換帯長さも従来のものよりも短く、差圧係数も低い値を示した。また、体積当りの交換容量も大きな値を示した。また、参考例8のモノリスカチオン交換体については、機械的特性の評価も行なった。
(モノリスカチオン交換体の機械的特性評価)
参考例8で得られたモノリスカチオン交換体を、水湿潤状態で4mm×5mm×10mmの短冊状に切り出し、引張強度試験の試験片とした。この試験片を引張試験機に取り付け、ヘッドスピードを0.5mm/分に設定し、水中、25℃にて試験を行った。その結果、引張強度、引張弾性率はそれぞれ45kPa、50kPaであり、従来のモノリスカチオン交換体に比べて格段に大きな値を示した。また、引張破断伸びは25%であり、従来のモノリスカチオン交換体よりも大きな値であった。
<第2のモノリスイオン交換体の製造(参考例12)>
(I工程;モノリス中間体の製造)
スチレン5.4g、ジビニルベンゼン0.17g、ソルビタンモノオレエート(以下SMOと略す)1.4gおよび2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.26gを混合し、均一に溶解させた。次に、当該スチレン/ジビニルベンゼン/SMO/2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)混合物を180gの純水に添加し、遊星式撹拌装置である真空撹拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて5〜20℃の温度範囲において減圧下撹拌して、油中水滴型エマルションを得た。このエマルションを速やかに反応容器に移し、密封後静置下で60℃、24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、メタノールで抽出した後、減圧乾燥して、連続マクロポア構造を有するモノリス中間体を製造した。このようにして得られたモノリス中間体(乾燥体)の内部構造をSEM画像(図7)により観察したところ、隣接する2つのマクロポアを区画する壁部は極めて細く棒状であるものの、連続気泡構造を有しており、水銀圧入法により測定したマクロポアとマクロポアが重なる部分の開口(メソポア)の平均直径は70μm、全細孔容積は21.0ml/gであった。
(共連続構造モノリスの製造)
次いで、スチレン76.0g、ジビニルベンゼン4.0g、1-デカノール120g、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.8gを混合し、均一に溶解させた(II工程)。次に上記モノリス中間体を直径70mm、厚さ約40mmの円盤状に切断して4.1gを分取した。分取したモノリス中間体を内径75mmの反応容器に入れ、当該スチレン/ジビニルベンゼン/1-デカノール/2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)混合物に浸漬させ、減圧チャンバー中で脱泡した後、反応容器を密封し、静置下60℃で24時間重合させた。重合終了後、厚さ約60mmのモノリス状の内容物を取り出し、アセトンでソックスレー抽出した後、85℃で一夜減圧乾燥した(III工程)。
このようにして得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を3.2モル%含有したモノリス(乾燥体)の内部構造をSEMにより観察したところ、当該モノリスは骨格及び空孔はそれぞれ3次元的に連続し、両相が絡み合った共連続構造であった。また、SEM画像から測定した骨格の太さは10μmであった。また、水銀圧入法により測定した当該モノリスの三次元的に連続した空孔の大きさは17μm、全細孔容積は2.9ml/gであった。その結果を表3及び4にまとめて示す。表4中、骨格の太さは骨格の直径で表した。
(共連続構造モノリス状カチオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、直径75mm、厚み約15mmの円盤状に切断した。モノリスの重量は18gであった。これにジクロロメタン1500mlを加え、35℃で1時間加熱した後、10℃以下まで冷却し、クロロ硫酸99gを徐々に加え、昇温して35℃で24時間反応させた。その後、メタノールを加え、残存するクロロ硫酸をクエンチした後、メタノールで洗浄してジクロロメタンを除き、更に純水で洗浄して共連続構造を有するモノリスカチオン交換体を得た。
得られたカチオン交換体を一部切り出し、乾燥させた後、その内部構造をSEMにより観察したところ、当該モノリスカチオン体は共連続構造を維持していることを確認した。そのSEM画像を図8に示す。また、該カチオン交換体の反応前後の膨潤率は1.4倍であり、体積当りのイオン交換容量は水湿潤状態で0.74mg当量/mlであった。水湿潤状態でのモノリスの連続空孔の大きさを、モノリスの値と水湿潤状態のカチオン交換体の膨潤率から見積もったところ24μmであり、骨格の直径は14μm、全細孔容積は2.9ml/gであった。
また、水を透過させた際の圧力損失の指標である差圧係数は、0.052MPa/m・LVであった。更に、該モノリスカチオン交換体のナトリウムイオンに関するイオン交換帯長さを測定したところ、LV=20m/hにおけるイオン交換帯長さは16mmであり、市販の強酸性カチオン交換樹脂であるアンバーライトIR120B(ロームアンドハース社製)の値(320mm)に比べて圧倒的に短いばかりでなく、従来の連続気泡構造を有するモノリス状多孔質カチオン交換体の値に比べても短かった。その結果を表4にまとめて示す。
次に、モノリスカチオン交換体中のスルホン酸基の分布状態を確認するため、EPMAにより硫黄原子の分布状態を観察した。その結果を図9及び図10に示す。図9及び図10共に、左右の写真はそれぞれ対応している。図9は硫黄原子のカチオン交換体の表面における分布状態を示したものであり、図10は硫黄原子のカチオン交換体の断面(厚み)方向における分布状態を示したものである。図9左側の写真中、左右傾斜して延びるものが骨格部であり、図10左側の写真中、2つの円形状は骨格の断面である。図9及び図10より、スルホン酸基はカチオン交換体の骨格表面及び骨格内部(断面方向)にそれぞれ均一に導入されていることがわかる。
<第2のモノリスイオン交換体の製造(参考例13〜15)>
(共連続構造を有するモノリスの製造)
スチレンの使用量、架橋剤の使用量、有機溶媒の使用量、スチレン及びジビニルベンゼン含浸重合時に共存させるモノリス中間体の多孔構造、架橋密度及び使用量を表3に示す配合量に変更した以外は、参考例12と同様の方法で共連続構造を有するモノリスを製造した。なお、参考例15は内径75mmの反応容器に代えて、内径110mmの反応容器を用いた以外は、参考例12と同様の方法で行ったものである。その結果を表3及び表4に示す。
(共連続構造を有するモノリスカチオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、それぞれ参考例12と同様の方法でクロロ硫酸と反応させ、共連続構造を有するモノリスカチオン交換体を製造した。その結果を表4に示す。また、得られた共連続構造を有するモノリスカチオン交換体の内部構造は、不図示のSEM画像及び表4から参考例13〜15で得られたモノリスカチオン交換体はイオン交換帯長さは従来のものより短く、差圧係数も低い値を示した。また、単位体積当りの交換容量も従来のものより大きな値を示した。また、参考例13のモノリスカチオン交換体については、機械的特性の評価も行なった。
(モノリスカチオン交換体の機械的特性評価)
参考例13で得られたモノリスカチオン交換体を、水湿潤状態で4mm×5mm×10mmの短冊状に切り出し、引張強度試験の試験片とした。この試験片を引張試験機に取り付け、ヘッドスピードを0.5mm/分に設定し、水中、25℃にて試験を行った。その結果、引張強度、引張弾性率はそれぞれ23kPa、15kPaであり、従来のモノリスカチオン交換体に比べて格段に大きな値を示した。また、引張破断伸びは50%であり、従来のモノリスカチオン交換体よりも大きな値であった。
参考例16
(連続マクロポア構造を有するモノリス状有機多孔質体(公知品)の製造)
特開2002−306976号記載の製造方法に準拠して連続マクロポア構造を有するモノリス状有機多孔質体を製造した。すなわち、スチレン19.2g、ジビニルベンゼン1.0g、SMO1.0gおよび2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.26gを混合し、均一に溶解させた。次に,当該スチレン/ジビニルベンゼン/SMO/2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)混合物を180gの純水に添加し、遊星式撹拌装置である真空撹拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて5〜20℃の温度範囲において減圧下撹拌して、油中水滴型エマルションを得た。このエマルションを反応容器に速やかに移し、密封後静置下で60℃、24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、イソプロパノールで抽出した後、減圧乾燥して、連続マクロポア構造を有するモノリス状有機多孔質体を製造した。
このようにして得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を3.3モル%含有した有機多孔質体の内部構造を表すSEMは、図12と同様の構造であった。図12から明らかなように、当該有機多孔質体は連続マクロポア構造を有しているが、連続マクロポア構造体の骨格を構成する壁部の厚みは実施例に比べて薄く、また、SEM画像から測定した壁部の平均厚みは5μm、骨格部面積はSEM画像領域中10%であった。また、水銀圧入法により測定した当該有機多孔質体の開口の平均直径は29μm、全細孔容積は、8.6ml/gであった。その結果を表5にまとめて示す。表1、2及び5中、メソポア直径は開口の平均直径を意味する。また、表1〜5中、厚み、骨格直径、空孔の値はそれぞれ平均を示す。
(連続マクロポア構造を有するモノリス状有機多孔質カチオン交換体(公知品)の製造)
上記の方法で製造した有機多孔質体を、外径70mm、厚み約15mmの円盤状に切断した。有機多孔質体の重量は6gであった。これにジクロロメタン1000mlを加え、35℃で1時間加熱した後、10℃以下まで冷却し、クロロ硫酸30gを徐々に加え、昇温して35℃で24時間反応させた。その後、メタノールを加え、残存するクロロ硫酸をクエンチした後、メタノールで洗浄してジクロロメタンを除き、更に純水で洗浄して連続マクロポア構造を有するモノリス状多孔質カチオン交換体を得た。得られたカチオン交換体の反応前後の膨潤率は1.6倍であり、体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で0.22mg当量/mlと参考例1〜15に比べて小さな値を示した。水湿潤状態での有機多孔質イオン交換体のメソポアの平均直径を、有機多孔質体の値と水湿潤状態のカチオン交換体の膨潤率から見積もったところ46μmであり、骨格を構成する壁部の平均厚み8μm、骨格部面積はSEM画像領域中10%、全細孔容積は、8.6ml/gであった。また、水を透過させた際の圧力損失の指標である差圧係数は、0.013MPa/m・LVであった。結果を表5にまとめて示す。また、参考例15で得られたモノリスカチオン交換体については、機械的特性の評価も行なった。
(従来のモノリスカチオン交換体の機械的特性評価)
参考例16で得られたモノリスカチオン交換体について、参考例8の評価方法と同様の方法で引張試験を行った。その結果、引張強度、引張弾性率はそれぞれ28kPa、12kPaであり、参考例8のモノリスカチオン交換体に比べて低い値であった。また、引張破断伸びも17%であり、本発明のモノリスカチオン交換体よりも小さかった。
参考例17〜19
(連続マクロポア構造を有するモノリス状有機多孔質体の製造)
スチレンの使用量、ジビニルベンゼンの使用量、SMOの使用量を表5に示す配合量に変更した以外は、参考例16と同様の方法で、従来技術により連続マクロポア構造を有するモノリス状有機多孔質体を製造した。結果を表5に示す。また、参考例19のモノリスの内部構造は不図示のSEMにより観察した。なお、参考例19は全細孔容積を最小とする条件であり、油相部に対してこれ以下の水の配合では、開口が形成できない。参考例17〜19のモノリスはいずれも、開口径が9〜18μmと小さく、骨格を構成する壁部の平均厚みも15μmと薄く、また、骨格部面積はSEM画像領域中最大でも22%と少なかった。
(連続マクロポア構造を有するモノリス状有機多孔質カチオン交換体の製造)
上記の方法で製造した有機多孔質体を、参考例16と同様の方法でクロロ硫酸と反応させ、連続マクロポア構造を有するモノリス状多孔質カチオン交換体を製造した。結果を表5に示す。開口直径を大きくしようとすると壁部の厚みが小さくなったり、骨格が細くなったりする。一方、壁部を厚くしたり、骨格を太くしようとすると開口の直径が減少する傾向が認められた。その結果、差圧係数を低く押さえると体積当りのイオン交換容量が減少し、イオン交換容量を大きくすると差圧係数が増大した。
なお、参考例1〜11及び参考例16〜19で製造したモノリスイオン交換体について、差圧係数と体積当りのイオン交換容量の関係を図4に示した。図4から明らかなように、参考例1〜11に対して公知の参考例16〜19は差圧係数とイオン交換容量のバランスが悪いことがわかる。一方、参考例1〜11は体積当りのイオン交換容量が大きく、更に差圧係数も低いことがわかる。
参考例20
スチレン27.7g、ジビニルベンゼン6.9g、アゾビスイソブチロニトリル(ABIBN)0.14g及びソルビタンモノオレエート3.8gを混合し、均一に溶解させた。次に、当該スチレン/ジビニルベンゼン/アゾビスイソブチロニトリル/ソルビタンモノオレエート混合物を450mlの純水に添加し、ホモジナイザーを用いて2万回転/分で2分間攪拌し、油中水滴型エマルジョンを得た。乳化終了後、油中水滴型エマルジョンをステンレス製のオートクレーブに移し、窒素で十分置換した後密封し、静置下60℃で24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、イソプロパノールで18時間ソックスレー抽出し、未反応モノマーとソルビタンモノオレエートを除去した後、40℃で一昼夜減圧乾燥した。このようにして得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を14モル%含有した有機多孔質体11.5gを分取し、ジクロロエタン800mlを加え、60℃で30分加熱した後、室温まで冷却し、クロロ硫酸59.1gを徐々に加え、室温で24時間反応させた。その後、酢酸を加え、多量の水中に反応物を投入し、水洗、乾燥して多孔質カチオン交換体を得た。この多孔質体のイオン交換容量は、乾燥多孔質体換算で4.4mg当量/g、湿潤体積換算で、0.32mg当量/mlであり、EPMAを用いた硫黄原子のマッピングにより、スルホン酸基が多孔質体に均一に導入されていることを確認した。また、SEM観察の結果、この有機多孔質体の内部構造は連続気泡構造を有しており、平均径30μmのマクロポアの大部分が重なり合い、マクロポアとマクロポアの重なりで形成されるメソポアの孔径は5μmであり、全細孔容積は、10.1ml/g、BET比表面積は10m/gであった。
参考例21
II工程で用いる有機溶媒の種類をポリスチレンの良溶媒であるジオキサンに変更したことを除いて、参考例1と同様の方法でモノリスの製造を試みた。しかし、単離した生成物は透明であり、多孔構造の崩壊・消失が示唆された。確認のためSEM観察を行ったが、緻密構造しか観察されず、連続マクロポア構造は消失していた。
(陰イオン検出装置)
図1に示した装置が安定して正確な被検水中の陰イオンの検出定量ができることを確認した。陰極にはSUS304製の網目板を、陽極にはチタン製網目板に白金を被覆したものを用い、二枚の陽イオン交換膜5、5に密着させて配置した。二枚の陽イオン交換膜5、5は、いずれもスチレン−ジビニルベンゼン共重合体母体にスルホン酸基を導入した強酸性陽イオン交換膜(ネオセプタ CMX(徳山曹達社製))を使用した。両電極のイオン交換膜接触面との反対側をそれぞれ陰極室2、陽極室1とした。前記二枚の陽イオン交換膜5、5で仕切られた脱陽イオン室4には、被処理水流入側に参考例8のモノリスイオン交換体35を充填し、下流側にスチレン−ジビニルベンゼン共重合体母体にスルホン酸基を導入した球状強酸性陽イオン交換樹脂36(アンバーライトIR120B)を充填した。脱陽イオン室形状は、50mm×50mm×100mmの直方体であり、モノリスイオン交換体35及び球状強酸性陽イオン交換樹脂36を体積比で1:1で充填した。脱陽イオン室4からの処理水流出配管32を導電率計10b(フォックスボロ製875CR(モニター)、同871CC(センサー))に接続し、該導電率計10bからの流出水を陽極室1の入口に接続して、陰イオン検出装置10を構成した。
(陰イオン検出方法)
陰イオン検出装置10を用いて、発電所の定常運転時における海水リーク検知能を模擬水によって確認した。被処理水としては、比抵抗18.2MΩ・cm純水にアンモニアを濃度1mgNH/lとなるように溶解したものを使用した。被処理水の流量は、50l/hであり、陽極、陰極間に印加した直流電流は1.0A、電圧は32Vであった。また、通水差圧は15kPaであった。その結果、陰イオン検出装置10は、塩化ナトリウム5μg/lを検出、定量可能であり、火力および原子力発電所における海水リークの連続監視装置として、充分な性能を有していることが分かった。
参考例8のモノリスイオン交換体に代えて、参考例15のモノリスイオン交換体とした以外は、実施例1と同様の方法で行った。陽極、陰極間に印加した直流電流は1.0A、電圧は32Vであった。また、通水差圧は9.6kPaであった。その結果、陰イオン検出装置10は、塩化ナトリウム5μg/lを検出、定量可能であり、火力および原子力発電所における海水リークの連続監視装置として、充分な性能を有していることが分かった。
比較例1
参考例8のモノリスイオン交換体に代えて、参考例20のモノリスイオン交換体を使用した以外は、実施例1と同様の方法で行った。陽極、陰極間に印加した直流電流は1.0A、電圧は40Vであった。また、通水差圧は210kPaであった。
更に、火力発電所におけるウィークリー・スタート・ストップ(WSS)を想定し、被処理水中の陽イオン濃度が高い場合にも陰イオン検出装置10が安定して脱陽イオン性能を発揮することを確認した。すなわち、被処理水中の陽イオンをアンモニア2mgNH/l、ヒドラジン10mgN/lとし、塩化ナトリウム無配合とし、運転時間100時間とした以外は、実施例1と同様の陰イオン検出装置を用い、同様の方法で行った。その結果、100時間に渡る連続運転で、処理水導電率は0.06μS/cm以下を保持し、本例の陰イオン検出装置が被処理水中の陽イオン負荷上昇時にも、安定して脱陽イオン処理が可能であることを確認した。
被処理水中の陽イオンをアンモニア2mgNH/l、ヒドラジン10mgN/lとし、塩化ナトリウム無配合とし、運転時間100時間とした以外は、実施例2と同様の陰イオン検出装置を用い、同様の方法で行った。その結果、100時間に渡る連続運転で、処理水導電率は0.06μS/cm以下を保持し、本例の陰イオン検出装置が被処理水中の陽イオン負荷上昇時にも、安定して脱陽イオン処理が可能であることを確認した。
参考例、実施例及び比較例から、陰イオン検出定量10は、モノリス強度が高く、通水時の圧力損失が低く、消費電力を小さくできる。
1 陽極室
2 陰極室
3 陽イオン交換体
4 脱陽イオン室
5 陽イオン交換膜
10 陰イオン検出装置
10a 電気再生式脱陽イオン装置
10b 測定器(比抵抗計又は導電率計)
11 陽極水流入配管
12 陽極水流出配管
21 陰極水流入配管
22 陰極水流出配管
31 被処理水流入配管
32 処理水流出配管
51 矩形状の写真領域
52 断面に表れる骨格部
53 マクロポア
61 骨格相
62 空孔相

Claims (7)

  1. 試料液を電気再生式脱陽イオン装置の脱塩室に通液して、該試料液中の陽イオンを除去した後、該液中の陰イオンを測定する陰イオン検出装置において、該脱塩室に充填される陽イオン交換体は、その全部又は一部が、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が水湿潤状態で平均直径30〜300μmの開口となる連続マクロポア構造体であり、全細孔容積0.5〜5ml/g、水湿潤状態での体積当りの陽イオン交換容量0.4〜5mg当量/mlであり、イオン交換基が該多孔質イオン交換体中に均一に分布しており、且つ該連続マクロポア構造体(乾燥体)の切断面のSEM画像において、断面に表れる骨格部面積が、画像領域中25〜50%である有機多孔質陽イオン交換体であることを特徴とする液中の陰イオン検出方法。
  2. 試料液を電気再生式脱陽イオン装置の脱塩室に通液して、該試料液中の陽イオンを除去した後、該液中の陰イオンを測定する陰イオン検出装置において、該脱塩室に充填される陽イオン交換体は、その全部又は一部が、イオン交換基が導入された全構成単位中、架橋構造単位を0.3〜5.0モル%含有する芳香族ビニルポリマーからなる太さが1〜60μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に直径が10〜100μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体であって、全細孔容積が0.5〜5ml/gであり、水湿潤状態での体積当りの陽イオン交換容量0.3〜5mg当量/mlであり、イオン交換基が該多孔質イオン交換体中に均一に分布している有機多孔質陽イオン交換体であることを特徴とする液中の陰イオン検出方法。
  3. 前記陽イオン交換体は、前記有機多孔質陽イオン交換体と粒状陽イオン交換樹脂の混床陽イオン交換体であることを特徴とする請求項1又は2記載の液中の陰イオン検出方法。
  4. 発電所の復水器の冷却水のリークを測定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液中の陰イオン検出方法。
  5. 陽極室と陰極室の間に陽イオン交換体が充填された脱塩室を備え、該陽極室、陰極室及び脱塩室には、それぞれ液の流入配管と流出配管が配設された電気再生式脱陽イオン装置と、
    該脱塩室流出配管に配設される該処理液の導電率又は比抵抗を測定する測定器と、
    を備えるものであって、該脱塩室に充填される陽イオン交換体は、その全部又は一部が、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が水湿潤状態で平均直径30〜300μmの開口となる連続マクロポア構造体であり、全細孔容積0.5〜5ml/g、水湿潤状態での体積当りの陽イオン交換容量0.4〜5mg当量/mlであり、イオン交換基が該多孔質イオン交換体中に均一に分布しており、且つ該連続マクロポア構造体(乾燥体)の切断面のSEM画像において、断面に表れる骨格部面積が、画像領域中25〜50%である有機多孔質陽イオン交換体であることを特徴とする液中の陰イオン検出装置。
  6. 陽極室と陰極室の間に陽イオン交換体が充填された脱塩室を備え、該陽極室、陰極室及び脱塩室には、それぞれ液の流入配管と流出配管が配設された電気再生式脱陽イオン装置と、
    該脱塩室流出配管に配設される該処理液の導電率又は比抵抗を測定する測定器と、
    を備えるものであって、該脱塩室に充填される陽イオン交換体は、その全部又は一部が、イオン交換基が導入された全構成単位中、架橋構造単位を0.3〜5.0モル%含有する芳香族ビニルポリマーからなる太さが1〜60μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に直径が10〜100μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体であって、全細孔容積が0.5〜5ml/gであり、水湿潤状態での体積当りの陽イオン交換容量0.3〜5mg当量/mlであり、イオン交換基が該多孔質イオン交換体中に均一に分布している有機多孔質陽イオン交換体であることを特徴とする液中の陰イオン検出装置。
  7. 前記陽イオン交換体は、前記有機多孔質陽イオン交換体と粒状陽イオン交換樹脂の混床陽イオン交換体であることを特徴とする請求項5又は6記載の液中の陰イオン検出装置。
JP2009060656A 2009-03-13 2009-03-13 液中の陰イオンの検出方法及び検出装置 Active JP5486204B2 (ja)

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