本発明において、試料液としては、該液中の陰イオンを検出、定量しようとする液体であれば特に制限されず、例えば、火力又は原子力発電所における復水のようにアンモニア、ヒドラジン又はETAのような弱塩基性の陽イオンを多く含む試料液中の陰イオンの測定に好適に用いることができる。本発明の液中の陰イオン検出装置は、海水リークの常時監視という目的から、発電所の復水循環主系統の内、復水器から復水脱塩装置に至る間の復水中の酸導電率の監視が最も重要であるが、これに加えて、低圧ヒーター、高圧ヒーター、脱気器、ボイラー(PWR型電子力発電所においては蒸気発生器)給水などの復水器出口以外の復水循環主系統、および低圧ヒータードレンや高圧ヒータードレンのような副次的配水系統から採取された水も測定対象とすることができる。
本発明で用いる電気再生式脱陽イオン装置において、脱塩室の少なくとも一部に充填される陽イオン交換体は、複合構造のモノリス状有機多孔質カチオン交換体である。本明細書中、「モノリス状有機多孔質体」を単に「複合モノリス」と、「モノリス状有機多孔質陽イオン交換体」を単に「複合モノリスイオン交換体」と、「モノリス状の有機多孔質中間体」を単に「モノリス中間体」とも言う。
<複合モノリスイオン交換体の説明>
複合モノリスイオン交換体は、複合モノリスにカチオン交換基を導入することで得られるものであり、連続骨格相と連続空孔相からなる有機多孔質体と、該有機多孔質体の骨格表面に固着する直径4〜40μmの多数の粒子体との複合構造体であるか、又は連続骨格相と連続空孔相からなる有機多孔質体と、該有機多孔質体の骨格表面上に形成される大きさが4〜40μmの多数の突起体との複合構造体であって、水湿潤状態で孔の平均直径10〜150μm、全細孔容積0.5〜5ml/gであり、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量0.2mg当量/ml以上であり、イオン交換基が該複合構造体中に均一に分布している。なお、本明細書中、「粒子体」及び「突起体」を併せて「粒子体等」と言うことがある。
有機多孔質体の連続骨格相と連続空孔相(乾燥体)は、SEM画像により観察することができる。有機多孔質体の基本構造としては、連続マクロポア構造及び共連続構造が挙げられる。有機多孔質体の骨格相は、柱状の連続体、凹状の壁面の連続体あるいはこれらの複合体として表れるもので、粒子状や突起状とは明らかに相違する形状のものである。
有機多孔質体の好ましい構造としては、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が水湿潤状態で平均直径30〜150μmの開口となる連続マクロポア構造体(以下、「第1の有機多孔質イオン交換体」とも言う。)及び水湿潤状態で平均の太さが1〜60μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に平均直径が水湿潤状態で10〜100μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体(以下、「第2の有機多孔質イオン交換体」とも言う。)が挙げられる。
第1の有機多孔質イオン交換体の場合、有機多孔質体は、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が水湿潤状態で平均直径30〜150μmの開口(メソポア)となる連続マクロポア構造体である。複合モノリスイオン交換体の開口の平均直径は、モノリスにイオン交換基を導入する際、複合モノリス全体が膨潤するため、乾燥状態の複合モノリスの開口の平均直径よりも大となる。開口の平均直径が30μm未満であると、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、開口の平均直径が大き過ぎると、流体とモノリスイオン交換体との接触が不十分となり、その結果、イオン交換特性が低下してしまうため好ましくない。
なお、本発明では、乾燥状態のモノリス中間体の開口の平均直径、乾燥状態の複合モノリスの空孔又は開口の平均直径及び乾燥状態の複合モノリスイオン交換体の空孔又は開口の平均直径は、水銀圧入法により測定される値である。また、本発明では、水湿潤状態の複合モノリスイオン交換体の空孔又は開口の平均直径は、乾燥状態の複合モノリスイオン交換体の空孔又は開口の平均直径に、膨潤率を乗じて算出される値である。具体的には、水湿潤状態の複合モノリスイオン交換体の直径がx1(mm)であり、その水湿潤状態の複合モノリスイオン交換体を乾燥させ、得られる乾燥状態の複合モノリスイオン交換体の直径がy1(mm)であり、この乾燥状態の複合モノリスイオン交換体を水銀圧入法により測定したときの空孔又は開口の平均直径がz1(μm)であったとすると、水湿潤状態の複合モノリスイオン交換体の空孔又は開口の平均直径(μm)は、次式「水湿潤状態の複合モノリスイオン交換体の空孔又は開口の平均直径(μm)=z1×(x1/y1)」で算出される。また、イオン交換基導入前の乾燥状態の複合モノリスの空孔又は開口の平均直径、及びその乾燥状態の複合モノリスにイオン交換基導入したときの乾燥状態の複合モノリスに対する水湿潤状態の複合モノリスイオン交換体の膨潤率がわかる場合は、乾燥状態の複合モノリスの空孔又は開口の平均直径に、膨潤率を乗じて、複合モノリスイオン交換体の空孔の水湿潤状態の平均直径を算出することもできる。
第2の有機多孔質体イオン交換体の場合、有機多孔質体は、水湿潤状態で平均直径が1〜60μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に平均直径が水湿潤状態で10〜100μmの三次元的に連続した空孔を有する共連続構造である。三次元的に連続した空孔の直径が10μm未満であると、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、100μmを超えると、被処理水と有機多孔質イオン交換体との接触が不十分となり、イオン交換特性が不均一となるため好ましくない。
上記共連続構造の空孔の水湿潤状態での平均直径は、公知の水銀圧入法で測定した乾燥状態の複合モノリスイオン交換体の空孔の平均直径に、膨潤率を乗じて算出される値である。具体的には、水湿潤状態の複合モノリスイオン交換体の直径がx2(mm)であり、その水湿潤状態の複合モノリスイオン交換体を乾燥させ、得られる乾燥状態の複合モノリスイオン交換体の直径がy2(mm)であり、この乾燥状態の複合モノリスイオン交換体を水銀圧入法により測定したときの空孔の平均直径がz2(μm)であったとすると、複合モノリスイオン交換体の空孔の水湿潤状態での平均直径(μm)は、次式「複合モノリスイオン交換体の空孔の水湿潤状態の平均直径(μm)=z2×(x2/y2)」で算出される。また、イオン交換基導入前の乾燥状態の複合モノリスの空孔の平均直径、及びその乾燥状態の複合モノリスにイオン交換基導入したときの乾燥状態の複合モノリスに対する水湿潤状態の複合モノリスイオン交換体の膨潤率がわかる場合は、乾燥状態の複合モノリスの空孔の平均直径に、膨潤率を乗じて、複合モノリスイオン交換体の空孔の水湿潤状態の平均直径を算出することもできる。また、上記共連続構造体の骨格の水湿潤状態での平均太さは、乾燥状態の複合モノリスイオン交換体のSEM観察を少なくとも3回行い、得られた画像中の骨格の太さを測定し、その平均値に、膨潤率を乗じて算出される値である。具体的には、水湿潤状態の複合モノリスイオン交換体の直径がx3(mm)であり、その水湿潤状態の複合モノリスイオン交換体を乾燥させ、得られる乾燥状態の複合モノリスイオン交換体の直径がy3(mm)であり、この乾燥状態の複合モノリスイオン交換体のSEM観察を少なくとも3回行い、得られた画像中の骨格の太さを測定し、その平均値がz3(μm)であったとすると、複合モノリスイオン交換体の連続構造体の骨格の水湿潤状態での平均太さ(μm)は、次式「複合モノリスイオン交換体の連続構造体の骨格の水湿潤状態の平均太さ(μm)=z3×(x3/y3)」で算出される。また、イオン交換基導入前の乾燥状態の複合モノリスの骨格の平均太さ、及びその乾燥状態の複合モノリスにイオン交換基導入したときの乾燥状態の複合モノリスに対する水湿潤状態の複合モノリスイオン交換体の膨潤率がわかる場合は、乾燥状態の複合モノリスの骨格の平均太さに、膨潤率を乗じて、複合モノリスイオン交換体の骨格の水湿潤状態の平均太さを算出することもできる。なお、共連続構造を形成する骨格は棒状であり円形断面形状であるが、楕円断面形状等異径断面のものが含まれていてもよい。この場合の太さは短径と長径の平均である。
また、三次元的に連続した骨格の平均直径が1μm未満であると、体積当りのイオン交換容量が低下してしまうため好ましくなく、60μmを超えると、脱イオン特性の均一性が失われるため好ましくない。
複合モノリスイオン交換体の水湿潤状態での孔の平均直径の好ましい値は10〜120μmである。複合モノリスイオン交換体を構成する有機多孔質体が第1の有機多孔質体の場合、複合モノリスイオン交換体の孔径の好ましい値は30〜120μm、複合モノリスイオン交換体を構成する有機多孔質体が第2の有機多孔質体の場合、複合モノリスイオン交換体の孔径の好ましい値は10〜90μmである。
本発明に係る複合モノリスイオン交換体において、水湿潤状態での粒子体の直径及び突起体の大きさは、4〜40μm、好ましくは4〜30μm、特に好ましくは4〜20μmである。なお、本発明において、粒子体及び突起体は、共に骨格表面に突起状に観察されるものであり、粒状に観察されるものを粒子体と称し、粒状とは言えない突起状のものを突起体と称する。図15に、突起体の模式的な断面図を示す。図15中の(A)〜(E)に示すように、骨格表面61から突き出している突起状のものが突起体62であり、突起体62には、(A)に示す突起体62aのように粒状に近い形状のもの、(B)に示す突起体62bのように半球状のもの、(C)に示す突起体62cのように骨格表面の盛り上がりのようなもの等が挙げられる。また、他には、突起体61には、(D)に示す突起体62dのように、骨格表面61の平面方向よりも、骨格表面61に対して垂直方向の方が長い形状のものや、(E)に示す突起体62eのように、複数の方向に突起した形状のものもある。また、突起体の大きさは、SEM観察したときのSEM画像で判断され、個々の突起体のSEM画像での幅が最も大きくなる部分の長さを指す。
本発明に係る複合モノリスイオン交換体において、全粒子体等中、水湿潤状態で4〜40μmの粒子体等が占める割合は70%以上、好ましくは80%以上である。なお、全粒子体等中の水湿潤状態で4〜40μmの粒子体等が占める割合は、全粒子体等の個数に占める水湿潤状態で4〜40μmの粒子体等の個数割合を指す。また、骨格相の表面は全粒子体等により40%以上、好ましくは50%以上被覆されている。なお、粒子体等による骨格層の表面の被覆割合は、SEMにより表面観察にしたときのSEM画像上の面積割合、つまり、表面を平面視したときの面積割合を指す。壁面や骨格を被覆している粒子の大きさが上記範囲を逸脱すると、流体と複合モノリスイオン交換体の骨格表面及び骨格内部との接触効率を改善する効果が小さくなってしまうため好ましくない。なお、全粒子体等とは、水湿潤状態で4〜40μmの粒子体等以外の大きさの範囲の粒子体及び突起体も全て含めた、骨格層の表面に形成されている全ての粒子体及び突起体を指す。
上記複合モノリスイオン交換体の骨格表面に付着した粒子体等の水湿潤状態での直径又は大きさは、乾燥状態の複合モノリスイオン交換体のSEM画像の観察により得られる粒子体等の直径又は大きさに、乾燥状態から湿潤状態となった際の膨潤率を乗じて算出した値、又はイオン交換基導入前の乾燥状態の複合モノリスのSEM画像の観察により得られる粒子体等の直径又は大きさに、イオン交換基導入前後の膨潤率を乗じて算出した値である。具体的には、水湿潤状態の複合モノリスイオン交換体の直径がx4(mm)であり、その水湿潤状態の複合モノリスイオン交換体を乾燥させ、得られる乾燥状態の複合モノリスイオン交換体の直径がy4(mm)であり、この乾燥状態の複合モノリスイオン交換体をSEM観察したときのSEM画像中の粒子体等の直径又は大きさがz4(μm)であったとすると、水湿潤状態の複合モノリスイオン交換体の粒子体等の直径又は大きさ(μm)は、次式「水湿潤状態の複合モノリスイオン交換体の粒子体等の直径又は大きさ(μm)=z4×(x4/y4)」で算出される。そして、乾燥状態の複合モノリスイオン交換体のSEM画像中に観察される全ての粒子体等の直径又は大きさを測定して、その値を基に、1視野のSEM画像中の全粒子体等の水湿潤状態での直径又は大きさを算出する。この乾燥状態の複合モノリスイオン交換体のSEM観察を少なくとも3回行い、全視野において、SEM画像中の全粒子体等の水湿潤状態での直径又は大きさを算出して、直径又は大きさが4〜40μmにある粒子体等が観察されるか否かを確認し、全視野において確認された場合、複合モノリスイオン交換体の骨格表面上に、直径又は大きさが水湿潤状態で4〜40μmにある粒子体が形成されていると判断する。また、上記に従って1視野毎にSEM画像中の全粒子体等の水湿潤状態での直径又は大きさを算出し、各視野毎に、全粒子体等に占める水湿潤状態で4〜40μmの粒子体等の割合を求め、全視野において、全粒子体等中の水湿潤状態で4〜40μmの粒子体等が占める割合が70%以上であった場合には、複合モノリスイオン交換体の骨格表面に形成されている全粒子体等中、水湿潤状態で4〜40μmの粒子体等が占める割合は70%以上であると判断する。また、上記に従って1視野毎にSEM画像中の全粒子体等による骨格層の表面の被覆割合を求め、全視野において、全粒子体等による骨格層の表面の被覆割合が40%以上であった場合には、複合モノリスイオン交換体の骨格層の表面が全粒子体等により被覆されている割合が40%以上であると判断する。また、イオン交換基導入前の乾燥状態の複合モノリスの粒子体等の直径又は大きさと、その乾燥状態のモノリスにイオン交換基導入したときの乾燥状態の複合モノリスに対する水湿潤状態の複合モノリスイオン交換体の膨潤率とがわかる場合は、乾燥状態の複合モノリスの粒子体等の直径又は大きさに、膨潤率を乗じて、水湿潤状態の複合モノリスイオン交換体の粒子体等の直径又は大きさを算出して、上記と同様にして、水湿潤状態の複合モノリスイオン交換体の粒子体等の直径又は大きさ、全粒子体等中、水湿潤状態で4〜40μmの粒子体等が占める割合、粒子体等による骨格層の表面の被覆割合を求めることもできる。
粒子体等による骨格相表面の被覆率が40%未満であると、流体と複合モノリスイオン交換体の骨格内部及び骨格表面との接触効率を改善する効果が小さくなり、イオン交換挙動の均一性が損なわれてしまうため好ましくない。上記粒子体等による被覆率の測定方法としては、モノリス(乾燥体)のSEM画像による画像解析方法が挙げられる。
また、複合モノリスイオン交換体の全細孔容積は、複合モノリスの全細孔容積と同様である。すなわち、複合モノリスにイオン交換基を導入することで膨潤し開口径が大きくなっても、骨格相が太るため全細孔容積はほとんど変化しない。全細孔容積が0.5ml/g未満であると、単位断面積当りの通水量が小さくなり、通水量が大きく取れないため好ましくなく、一方、全細孔容積が5ml/gを超えると、ポリマーである骨格部分の占める割合が低下し、多孔質体の強度が低下してしまうため好ましくない。なお、複合モノリス(モノリス中間体、複合モノリス、複合モノリスイオン交換体)の全細孔容積は、乾燥状態でも、水湿潤状態でも、同じである。
なお、複合モノリスイオン交換体に水を透過させた際の圧力損失は、複合モノリスに水を透過させた際の圧力損失と同様である。
本発明の複合モノリスイオン交換体は、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が0.2mg当量/ml以上、好ましくは0.3〜1.8mg当量/mlのイオン交換容量を有する。体積当りのイオン交換容量が0.2mg当量/ml未満であると、脱塩効率が低下してしまうため好ましくない。なお、本発明の複合モノリスイオン交換体の乾燥状態における重量当りのイオン交換容量は特に限定されないが、イオン交換基が複合モノリスの骨格表面及び骨格内部にまで均一に導入しているため、3〜5mg当量/gである。なお、イオン交換基が骨格の表面のみに導入された有機多孔質体のイオン交換容量は、有機多孔質体やイオン交換基の種類により一概には決定できないものの、せいぜい500μg当量/gである。
本発明の複合モノリスに導入するイオン交換基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、イミノ二酢酸基、リン酸基、リン酸エステル基等のカチオン交換基が挙げられる。
本発明の複合モノリスイオン交換体において、導入されたイオン交換基は、複合モノリスの骨格の表面のみならず、骨格相内部にまで均一に分布している。ここで言う「イオン交換基が均一に分布している」とは、イオン交換基の分布が少なくともμmオーダーで骨格相の表面および骨格相の内部に均一に分布していることを指す。イオン交換基の分布状況は、EPMA等を用いることで、比較的簡単に確認することができる。また、イオン交換基が、複合モノリスの表面のみならず、骨格相の内部にまで均一に分布していると、表面と内部の物理的性質及び化学的性質を均一にできるため、膨潤及び収縮に対する耐久性が向上する。
本発明の複合モノリスイオン交換体は、その厚みが1mm以上であり、膜状の多孔質体とは区別される。厚みが1mm未満であると、多孔質体一枚当りのイオン交換容量が極端に低下してしまうため好ましくない。該複合モノリスイオン交換体の厚みは、好適には3mm〜1000mmである。また、本発明の複合モノリスイオン交換体は、骨格の基本構造が連続空孔構造であるため、機械的強度が高い。
本発明の複合モノリスイオン交換体は、イオン交換基を含まない油溶性モノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する第1架橋剤、界面活性剤及び水の混合物を撹拌することにより油中水滴型エマルジョンを調製し、次いで油中水滴型エマルジョンを重合させて全細孔容積が5〜30ml/gの連続マクロポア構造のモノリス状の有機多孔質中間体を得るI工程、ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する第2架橋剤、ビニルモノマーや第2架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製するII工程、II工程で得られた混合物を静置下、且つ該I工程で得られたモノリス状の有機多孔質中間体の存在下で重合を行うIII工程、III工程で得られたモノリス状有機多孔質体にイオン交換基を導入するIV工程、を行い、モノリス状有機多孔質体を製造する際に、下記(1)〜(5):
(1)III工程における重合温度が、重合開始剤の10時間半減温度より、少なくとも5℃低い温度である;
(2)II工程で用いる第2架橋剤のモル%が、I工程で用いる第1架橋剤のモル%の2倍以上である;
(3)II工程で用いるビニルモノマーが、I工程で用いた油溶性モノマーとは異なる構造のビニルモノマーである;
(4)II工程で用いる有機溶媒が、分子量200以上のポリエーテルである;
(5)II工程で用いるビニルモノマーの濃度が、II工程の混合物中、30重量%以下である;の条件のうち、少なくとも一つを満たす条件下でII工程又はIII工程を行うことにより得られる。
(モノリス中間体の製造方法)
本発明のモノリスの製造方法において、I工程は、イオン交換基を含まない油溶性モノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する第1架橋剤、界面活性剤及び水の混合物を撹拌することにより油中水滴型エマルジョンを調製し、次いで油中水滴型エマルジョンを重合させて全細孔容積が5〜30ml/gの連続マクロポア構造のモノリス中間体を得る工程である。このモノリス中間体を得るI工程は、特開2002−306976号公報記載の方法に準拠して行なえばよい。
イオン交換基を含まない油溶性モノマーとしては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、四級アンモニウム基等のイオン交換基を含まず、水に対する溶解性が低く、親油性のモノマーが挙げられる。これらモノマーの好適なものとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ジビニルベンゼン、エチレン、プロピレン、イソブテン、ブタジエン、エチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。これらモノマーは、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する第1架橋剤としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、エチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。これら架橋剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。好ましい第1架橋剤は、機械的強度の高さから、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル等の芳香族ポリビニル化合物である。第1架橋剤の使用量は、ビニルモノマーと第1架橋剤の合計量に対して0.3〜10モル%、特に0.3〜5モル%、更に0.3〜3モル%であることが好ましい。第1架橋剤の使用量が0.3モル%未満であると、モノリスの機械的強度が不足するため好ましくない。一方、10モル%を越えると、モノリスの脆化が進行して柔軟性が失われる、イオン交換基の導入量が減少してしまうといった問題点が生じるため好ましくない。
界面活性剤は、イオン交換基を含まない油溶性モノマーと水とを混合した際に、油中水滴型(W/O)エマルジョンを形成できるものであれば特に制限はなく、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等の非イオン界面活性剤;オレイン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等の陰イオン界面活性剤;ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤;ラウリルジメチルベタイン等の両性界面活性剤を用いることができる。これら界面活性剤は1種単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。なお、油中水滴型エマルジョンとは、油相が連続相となり、その中に水滴が分散しているエマルジョンを言う。上記界面活性剤の添加量としては、油溶性モノマーの種類および目的とするエマルジョン粒子(マクロポア)の大きさによって大幅に変動するため一概には言えないが、油溶性モノマーと界面活性剤の合計量に対して約2〜70%の範囲で選択することができる。
また、I工程では、油中水滴型エマルジョン形成の際、必要に応じて重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤は、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は水溶性であっても油溶性であってもよく、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素−塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム−酸性亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。
イオン交換基を含まない油溶性モノマー、第1架橋剤、界面活性剤、水及び重合開始剤とを混合し、油中水滴型エマルジョンを形成させる際の混合方法としては、特に制限はなく、各成分を一括して一度に混合する方法、油溶性モノマー、第1架橋剤、界面活性剤及び油溶性重合開始剤である油溶性成分と、水や水溶性重合開始剤である水溶性成分とを別々に均一溶解させた後、それぞれの成分を混合する方法などが使用できる。エマルジョンを形成させるための混合装置についても特に制限はなく、通常のミキサーやホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等を用いることができ、目的のエマルジョン粒径を得るのに適切な装置を選択すればよい。また、混合条件についても特に制限はなく、目的のエマルジョン粒径を得ることができる攪拌回転数や攪拌時間を、任意に設定することができる。
I工程で得られるモノリス中間体は、連続マクロポア構造を有する。これを重合系に共存させると、そのモノリス中間体の構造を鋳型として連続マクロポア構造の骨格相の表面に粒子体等が形成したり、共連続構造の骨格相の表面に粒子体等が形成したりする。また、モノリス中間体は、架橋構造を有する有機ポリマー材料である。該ポリマー材料の架橋密度は特に限定されないが、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.3〜10モル%、好ましくは0.3〜5モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくない。一方、10モル%を越えると、多孔質体の脆化が進行し、柔軟性が失われるため好ましくない。
モノリス中間体の全細孔容積は、5〜30ml/g、好適には6〜28ml/gである。全細孔容積が小さ過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの全細孔容積が小さくなりすぎ、流体透過時の圧力損失が大きくなるため好ましくない。一方、全細孔容積が大き過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの構造が不均一になりやすく、場合によっては構造崩壊を引き起こすため好ましくない。モノリス中間体の全細孔容積を上記数値範囲とするには、モノマーと水の比(重量)を、概ね1:5〜1:35とすればよい。
このモノマーと水との比を、概ね1:5〜1:20とすれば、モノリス中間体の全細孔容積が5〜16ml/gの連続マクロポア構造のものが得られ、III工程を経て得られる複合モノリスの有機多孔質体が第1の有機多孔質体のものが得られる。また、該配合比率を、概ね1:20〜1:35とすれば、モノリス中間体の全細孔容積が16ml/gを超え、30ml/g以下の連続マクロポア構造のものが得られ、III工程を経て得られる複合モノリスの有機多孔質体が第2の有機多孔質体のものが得られる。
また、モノリス中間体は、マクロポアとマクロポアの重なり部分である開口(メソポア)の平均直径が乾燥状態で20〜100μmである。開口の平均直径が20μm未満であると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が小さくなり、通水過時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。一方、100μmを超えると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が大きくなりすぎ、水の流路が均一に形成されにくくなるため好ましくない。モノリス中間体は、マクロポアの大きさや開口の径が揃った均一構造のものが好適であるが、これに限定されず、均一構造中、均一なマクロポアの大きさよりも大きな不均一なマクロポアが点在するものであってもよい。
(複合モノリスの製造方法)
II工程は、ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する第2架橋剤、ビニルモノマーや第2架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製する工程である。なお、I工程とII工程の順序はなく、I工程後にII工程を行ってもよく、II工程後にI工程を行ってもよい。
II工程で用いられるビニルモノマーとしては、分子中に重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒に対する溶解性が高い親油性のビニルモノマーであれば、特に制限はない。これらビニルモノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン等の芳香族ビニルモノマー;エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のα-オレフィン;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。これらモノマーは、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明で好適に用いられるビニルモノマーは、スチレン、ビニルベンジルクロライド等の芳香族ビニルモノマーである。
これらビニルモノマーの添加量は、重合時に共存させるモノリス中間体に対して、重量で3〜40倍、好ましくは4〜30倍である。ビニルモノマー添加量が多孔質体に対して3倍未満であると、生成したモノリスの骨格に粒子体を形成できず、イオン交換基導入後の体積当りのイオン交換容量が小さくなってしまうため好ましくない。一方、ビニルモノマー添加量が40倍を超えると、開口径が小さくなり、流体透過時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。
II工程で用いられる第2架橋剤は、分子中に少なくとも2個の重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒への溶解性が高いものが好適に用いられる。第2架橋剤の具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート等が挙げられる。これら第2架橋剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。好ましい第2架橋剤は、機械的強度の高さと加水分解に対する安定性から、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル等の芳香族ポリビニル化合物である。第2架橋剤の使用量は、ビニルモノマーと第2架橋剤の合計量に対して0.3〜20モル%、特に0.3〜10モル%であることが好ましい。架橋剤使用量が0.3モル%未満であると、モノリスの機械的強度が不足するため好ましくない。一方、20モル%を越えると、モノリスの脆化が進行して柔軟性が失われる、イオン交換基の導入量が減少してしまうといった問題点が生じるため好ましくない。
II工程で用いられる有機溶媒は、ビニルモノマーや第2架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒、言い換えると、ビニルモノマーが重合して生成するポリマーに対する貧溶媒である。該有機溶媒は、ビニルモノマーの種類によって大きく異なるため一般的な具体例を列挙することは困難であるが、例えば、ビニルモノマーがスチレンの場合、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ブチルセロソルブ、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の鎖状(ポリ)エーテル類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン等の鎖状飽和炭化水素類;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸セロソルブ、プロピオン酸エチル等のエステル類が挙げられる。また、ジオキサンやTHF、トルエンのようにポリスチレンの良溶媒であっても、上記貧溶媒と共に用いられ、その使用量が少ない場合には、有機溶媒として使用することができる。これら有機溶媒の使用量は、上記ビニルモノマーの濃度が5〜80重量%となるように用いることが好ましい。有機溶媒使用量が上記範囲から逸脱してビニルモノマー濃度が5重量%未満となると、重合速度が低下してしまうため好ましくない。一方、ビニルモノマー濃度が80重量%を超えると、重合が暴走する恐れがあるため好ましくない。
重合開始剤としては、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は油溶性であるほうが好ましい。本発明で用いられる重合開始剤の具体例としては、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。重合開始剤の使用量は、モノマーの種類や重合温度等によって大きく変動するが、ビニルモノマーと第2架橋剤の合計量に対して、約0.01〜5%の範囲で使用することができる。
III工程は、II工程で得られた混合物を静置下、且つ該I工程で得られたモノリス中間体の存在下、重合を行い、複合モノリスを得る工程である。III工程で用いるモノリス中間体は、本発明の斬新な構造を有するモノリスを創出する上で、極めて重要な役割を担っている。特表平7−501140号等に開示されているように、モノリス中間体不存在下でビニルモノマーと第2架橋剤を特定の有機溶媒中で静置重合させると、粒子凝集型のモノリス状有機多孔質体が得られる。それに対して、本発明のように上記重合系に連続マクロポア構造のモノリス中間体を存在させると、重合後のモノリスの構造は劇的に変化し、粒子凝集構造は消失し、上述の特定の骨格構造を有するモノリスが得られる。
反応容器の内容積は、モノリス中間体を反応容器中に存在させる大きさのものであれば特に制限されず、反応容器内にモノリス中間体を載置した際、平面視でモノリスの周りに隙間ができるもの、反応容器内にモノリス中間体が隙間無く入るもののいずれであってもよい。このうち、重合後のモノリスが容器内壁から押圧を受けることなく、反応容器内に隙間無く入るものが、モノリスに歪が生じることもなく、反応原料などの無駄がなく効率的である。なお、反応容器の内容積が大きく、重合後のモノリスの周りに隙間が存在する場合であっても、ビニルモノマーや架橋剤は、モノリス中間体に吸着、分配されるため、反応容器内の隙間部分に粒子凝集構造物が生成することはない。
III工程において、反応容器中、モノリス中間体は混合物(溶液)で含浸された状態に置かれる。II工程で得られた混合物とモノリス中間体の配合比は、前述の如く、モノリス中間体に対して、ビニルモノマーの添加量が重量で3〜40倍、好ましくは4〜30倍となるように配合するのが好適である。これにより、適度な開口径を有しつつ、特定の骨格を有するモノリスを得ることができる。反応容器中、混合物中のビニルモノマーと架橋剤は、静置されたモノリス中間体の骨格に吸着、分配しされ、モノリス中間体の骨格内で重合が進行する。
重合条件は、モノマーの種類、開始剤の種類により様々な条件が選択できる。例えば、開始剤として2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、20〜100℃で1〜48時間加熱重合させればよい。加熱重合により、モノリス中間体の骨格に吸着、分配したビニルモノマーと架橋剤が該骨格内で重合し、該特定の骨格構造を形成させる。重合終了後、内容物を取り出し、未反応ビニルモノマーと有機溶媒の除去を目的に、アセトン等の溶剤で抽出して特定骨格構造のモノリスを得る。
上述の複合モノリスを製造する際に、下記(1)〜(5)の条件のうち、少なくとも一つを満たす条件下でII工程又はIII工程行うと、本発明の特徴的な構造である、骨格表面に粒子体等が形成された複合モノリスを製造することができる。
(1)III工程における重合温度が、重合開始剤の10時間半減温度より、少なくとも5℃低い温度である。
(2)II工程で用いる第2架橋剤のモル%が、I工程で用いる第1架橋剤のモル%の2倍以上である。
(3)II工程で用いるビニルモノマーが、I工程で用いた油溶性モノマーとは異なる構造のビニルモノマーである。
(4)II工程で用いる有機溶媒が、分子量200以上のポリエーテルである。
(5)II工程で用いるビニルモノマーの濃度が、II工程の混合物中、30重量%以下である。
(上記(1)の説明)
10時間半減温度は重合開始剤の特性値であり、使用する重合開始剤が決まれば10時間半減温度を知ることができる。また、所望の10時間半減温度があれば、それに該当する重合開始剤を選択することができる。III工程において、重合温度を低下させることで、重合速度が低下し、骨格相の表面に粒子体等を形成させることができる。その理由は、モノリス中間体の骨格相の内部でのモノマー濃度低下が緩やかとなり、液相部からモノリス中間体へのモノマー分配速度が低下するため、余剰のモノマーがモノリス中間体の骨格層の表面近傍で濃縮され、その場で重合したためと考えられる。
重合温度の好ましいものは、用いる重合開始剤の10時間半減温度より少なくとも10℃低い温度である。重合温度の下限値は特に限定されないが、温度が低下するほど重合速度が低下し、重合時間が実用上許容できないほど長くなってしまうため、重合温度を10時間半減温度に対して5〜20℃低い範囲に設定することが好ましい。
((2)の説明)
II工程で用いる第2架橋剤のモル%を、I工程で用いる第1架橋剤のモル%の2倍以上に設定して重合すると、本発明の複合モノリスが得られる。その理由は、モノリス中間体と含浸重合によって生成したポリマーとの相溶性が低下し相分離が進行するため、含浸重合によって生成したポリマーはモノリス中間体の骨格相の表面近傍に排除され、骨格相表面に粒子体等の凹凸を形成したものと考えられる。なお、架橋剤のモル%は、架橋密度モル%であって、ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対する架橋剤量(モル%)を言う。
II工程で用いる第2架橋剤モル%の上限は特に制限されないが、第2架橋剤モル%が著しく大きくなると、重合後のモノリスにクラックが発生する、モノリスの脆化が進行して柔軟性が失われる、イオン交換基の導入量が減少してしまうといった問題点が生じるため好ましくない。好ましい第2架橋剤モル%の倍数は2倍〜10倍である。一方、I工程で用いる第1架橋剤モル%をII工程で用いられる第2架橋剤モル%に対して2倍以上に設定しても、骨格相表面への粒子体等の形成は起こらず、本発明の複合モノリスは得られない。
((3)の説明)
II工程で用いるビニルモノマーが、I工程で用いた油溶性モノマーとは異なる構造のビニルモノマーであると、本発明の複合モノリスが得られる。例えば、スチレンとビニルベンジルクロライドのように、ビニルモノマーの構造が僅かでも異なると、骨格相表面に粒子体等が形成された複合モノリスが生成する。一般に、僅かでも構造が異なる二種類のモノマーから得られる二種類のホモポリマーは互いに相溶しない。したがって、I工程で用いたモノリス中間体形成に用いたモノマーとは異なる構造のモノマー、すなわち、I工程で用いたモノリス中間体形成に用いたモノマー以外のモノマーをII工程で用いてIII工程で重合を行うと、II工程で用いたモノマーはモノリス中間体に均一に分配や含浸がされるものの、重合が進行してポリマーが生成すると、生成したポリマーはモノリス中間体とは相溶しないため、相分離が進行し、生成したポリマーはモノリス中間体の骨格相の表面近傍に排除され、骨格相の表面に粒子体等の凹凸を形成したものと考えられる。
((4)の説明)
II工程で用いる有機溶媒が、分子量200以上のポリエーテルであると、本発明の複合モノリスが得られる。ポリエーテルはモノリス中間体との親和性が比較的高く、特に低分子量の環状ポリエーテルはポリスチレンの良溶媒、低分子量の鎖状ポリエーテルは良溶媒ではないがかなりの親和性を有している。しかし、ポリエーテルの分子量が大きくなると、モノリス中間体との親和性は劇的に低下し、モノリス中間体とほとんど親和性を示さなくなる。このような親和性に乏しい溶媒を有機溶媒に用いると、モノマーのモノリス中間体の骨格内部への拡散が阻害され、その結果、モノマーはモノリス中間体の骨格の表面近傍のみで重合するため、骨格相表面に粒子体等が形成され骨格表面に凹凸を形成したものと考えられる。
ポリエーテルの分子量は、200以上であれば上限に特に制約はないが、あまりに高分子量であると、II工程で調製される混合物の粘度が高くなり、モノリス中間体内部への含浸が困難になるため好ましくない。好ましいポリエーテルの分子量は200〜100000、特に好ましくは200〜10000である。また、ポリエーテルの末端構造は、未修飾の水酸基であっても、メチル基やエチル基等のアルキル基でエーテル化されていてもよいし、酢酸、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸等でエステル化されていてもよい。
((5)の説明)
II工程で用いるビニルモノマーの濃度が、II工程中の混合物中、30重量%以下であると、本発明の複合モノリスが得られる。II工程でモノマー濃度を低下させることで、重合速度が低下し、前記(1)と同様の理由で、骨格相表面に粒子体等が形成でき、骨格相表面に凹凸を形成されることができる。モノマー濃度の下限値は特に限定されないが、モノマー濃度が低下するほど重合速度が低下し、重合時間が実用上許容できないほど長くなってしまうため、モノマー濃度は10〜30重量%に設定することが好ましい。
III工程で得られた複合モノリスは、連続骨格相と連続空孔相からなる有機多孔質体と、該有機多孔質体の骨格表面に固着する多数の粒子体又は該有機多孔質体の骨格表面上に形成される多数の突起体との複合構造体である。有機多孔質体の連続骨格相と連続空孔相は、SEM画像により観察することができる。有機多孔質体の基本構造は、連続マクロポア構造か、共連続構造である。
複合モノリスにおける連続マクロポア構造は、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が乾燥状態での平均直径20〜100μmの開口となるものであり、複合モノリスにおける共連続構造体は、平均の太さが乾燥状態で0.8〜40μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に乾燥で平均直径が8〜80μmの三次元的に連続した空孔とからなるものである。
IV工程は、III工程で得られた複合モノリスにイオン交換基を導入する工程である。この導入方法によれば、得られる複合モノリスイオン交換体の多孔構造を厳密にコントロールできる。
上記複合モノリスにカチオン交換基を導入する方法としては、特に制限はなく、高分子反応やグラフト重合等の公知の方法を用いることができる。例えば、スルホン酸基を導入する方法としては、複合モノリスがスチレン-ジビニルベンゼン共重合体等であればクロロ硫酸や濃硫酸、発煙硫酸を用いてスルホン化する方法;複合モノリスに均一にラジカル開始基や連鎖移動基を骨格表面及び骨格内部に導入し、スチレンスルホン酸ナトリウムやアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸をグラフト重合する方法;同様にグリシジルメタクリレートをグラフト重合した後、官能基変換によりスルホン酸基を導入する方法等が挙げられる。これらのスルホン酸基を導入する方法については、クロロ硫酸を用いてスチレン-ジビニルベンゼン共重合体にスルホン酸基を導入する方法が、イオン交換基を均一かつ定量的に導入できる点で好ましい。なお、導入するイオン交換基としては、カルボン酸基、イミノ二酢酸基、スルホン酸基、リン酸基、リン酸エステル基等のカチオン交換基が挙げられる。
本発明において、陽イオン交換体は、前記複合モノリスイオン交換体と粒状陽イオン交換樹脂の混床イオン交換体である。この場合、例えば、電気再生式脱陽イオン装置において、被処理水流入側にモノリスイオン交換体を配置し、下流側に従来の粒状イオン交換樹脂を充填した場合、複合モノリスイオン交換体の迅速な吸着とイオン排除を備えながら、粒状イオン交換樹脂の大きな充填体積あたりの交換容量のために、発電所における定期点検時の満水保管後の立上げ運転時や、デイリー・スタート・ストップ(DSS)、ウィークリー・スタート・ストップ(WSS)などに伴う被処理水中の陽イオン流入量の変動に対しても、より安定した脱陽イオン処理を行うことが可能となり、汎用性の高い陰イオン検出装置が得られる点で好ましい。前記複合モノリスイオン交換体と粒状陽イオン交換樹脂の充填割合としては、特に制限されないが、複合モノリスイオン交換体:粒状陽イオン交換樹脂が、体積割合で1:0.5〜1:10である。
また、陽イオン交換体は、脱塩領域を形成する第1の陽イオン交換体部と、該脱塩領域のイオン排除側に隣接して配設され脱塩領域に導入された被処理液の一部が透過する該第1の陽イオン交換体部の通液抵抗より大きい第2の陽イオン交換体部とからなる複式イオン交換体であれば、脱塩室と電極室を区画するイオン交換膜を省略することができる点で好ましい。第1の陽イオン交換体部としては、複合モノリスイオン交換体又は複合モノリスイオン交換体と陽イオン交換樹脂の混合体が使用できる。第2の陽イオン交換体部としては、通液抵抗が第1の陽イオン交換部よりも高いものであればよく、例えば特開2002−306976号公報に記載の気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分(メソポア)が開口となる連続気泡構造のモノリスイオン交換体、所定の太さの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に形成される三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造のモノリスイオン交換体、連続骨格相と連続空孔相からなる有機多孔質体と該有機多孔質体の骨格表面に形成される多数の突起体との複合構造からなるモノリスイオン交換体及び気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分(メソポア)が開口となる連続気泡構造の骨格部の表層部が多孔構造であるモノリスイオン交換体などが挙げられる。
上記の複式イオン交換体において、第2の陽イオン交換体部の通液抵抗が、該脱塩領域を形成する第1の陽イオン交換体部の通液抵抗より大きいため、別途の特段の流路分配手段を設けなくとも、脱塩領域に流入した試料液の大部分が脱カチオン液として脱塩領域から流出し、被処理液の一部が液透過領域に透過する。
また、脱塩領域を形成する第1の陽イオン交換体部と液透過領域を形成する第2の陽イオン交換体部は同じもの、すなわち脱塩領域と液透過領域を単一のモノリスで形成し、且つ液透過領域から透過した流出液の流路に、流量調節手段を配設するものであってもよい。すなわち、液透過領域に装填される多孔質イオン交換体の通液抵抗は、脱塩領域に充填される陽イオン交換体部の通液抵抗と同じであっても、流量調節手段によって、透過液と脱イオン液の流量をより所望の割合に調整することができる。これにより、脱塩領域用モノリスと液透過領域用モノリスをそれぞれ個別に製造する必要がない点で都合が良い。単一のモノリスは、複合モノリスイオン交換体である。この場合、流量調節手段がないと、液透過領域に流れる流量が多くなり、脱塩液の収量が低下してしまう。また、被処理液の流量に対する液透過領域を透過する透過液の流量比率は、例えば2〜30%、好ましくは4〜30%である。流量調節手段としては、流量調節弁、アリフィス等が挙げられる。
また、脱イオン室に充填する複合モノリスイオン交換体に替えて、複合モノリスイオン交換体と一体となるように複合モノリスイオン交換体の一方の側面に緻密層を形成させた複合モノリスイオン交換体を用いれば、電気再生式脱陽イオン水製造装置を作製する際、該緻密層側のイオン交換膜を省略することもできる。このような緻密層を有する複合モノリスイオン交換体を陽イオン交換体として使用する場合には、前記の電気再生式脱陽イオン装置の構成の内、イオン交換膜の一部または全部を省略し、装置構成をより簡略化することもできる。
ここでいう緻密層とは、多孔質ポリマーの骨格の高分子材料と同じ高分子材料よりなり、水の透過を阻止する機能を有する層をいう。緻密層を有する複合モノリスイオン交換体は、例えば、中間モノリスを製造する際、前記油中水滴型エマルジョンを一部が疎水性材料で構成された容器に充填した後静置して、該疎水性材料の表面に油溶性モノマーの連続膜を形成せしめた後重合させるか、または前記油中水滴型エマルジョンを重合させて多孔質ポリマーを得た後、緻密層を形成させる表面部分に、必要に応じて重合開始剤を添加した油溶性モノマーを塗布して、再度重合させて得られる複合多孔質重合体に、前記と同様の方法によってイオン交換基を導入して製造することができる。更に、本発明の電気再生式脱陽イオン水製造装置の脱イオン室に充填する陽イオン交換体と開口(メソポア)の平均径が1μm未満、好ましくは0.5μm未満である公知の多孔質イオン交換体とを組み合わせて用いることで、イオン交換膜を省略することもできる。上記メソポアの平均径が1μm未満、好ましくは0.5μm未満である多孔質イオン交換体は、メソポア径が著しく小さいため、通常の運転条件では、イオンは透過するが水の透過は極めて僅かとなり、イオン交換膜を代替しうるものとなる。
本発明の実施の形態における陰イオンの検出装置を図14を参照して説明する。図14は陰イオンの検出装置の一例を示す概略構成図である。図14において、陰イオンの検出装置10は、電気再生式脱陽イオン装置10aと、脱塩室流出配管32に配設される処理液の導電率又は比抵抗を測定する測定器10bとからなり、電気再生式脱陽イオン装置10aは、陽極室1と陰極室2の間に、二枚のカチオン交換膜5、5で区画された陽イオン交換体3が充填される脱塩室4を備え、陽極室1、陰極室2及び脱塩室4には、それぞれ液の流入配管11、21、31と流出配管12、22、32が配設されている。
図14において、脱塩室4は、被処理液流入側にモノリスイオン交換体35が、処理液流出側には粒状陽イオン交換樹脂36が、それぞれ、充填体積比率1:1で充填されている。すなわち、モノリスイオン交換体35と粒状陽イオン交換樹脂36は通水方向にモノリスイオン交換体相と粒状陽イオン交換樹脂層が積層された層状体である。モノリスイオン交換体とイオン交換樹脂との層状体は、モノリスイオン交換体がスポンジ状の一体構造物であるため、イオン交換樹脂と混ざることがなく、室内においてイオン交換膜等の区画手段を用いなくとも相状に充填できる。また、被処理水流入配管31は脱塩室の陰極側のカチオン交換膜近傍に流入口がくるように付設され、処理水流出配管32は脱塩室の陽極側のカチオン交換膜近傍であって、流入口から遠い側に流出口がくるように付設されている。これにより、直流電場の印加は、排除されるイオンが該陽イオン交換体内における通水方向に対して逆方向に泳動するため、被処理液中の陽イオンを確実に除去できる。また、陰極室流入配管21は脱塩室流入配管31から分岐しており、陽極室流入配管11は測定器流出配管16と接続している。
図14の陰イオンの検出装置10において、被処理液が脱塩室4に流入すると、試料中に含まれるアンモニアやヒドラジン成分はカチオン交換体3に捕捉され、カチオン交換膜5を透過し、陰極室2に移動し、陰極水である試料液と共に系外へ排出される。陽極室1の陽極水は測定器10bの流出水であり、これには水素イオン以外の陽イオン成分はなく陽極室1から脱塩室4へは水素イオン以外に移動はない。このため、処理水は水素イオン以外の陽イオン成分の混入はない。ここで、試料液に少量の塩化ナトリウムが混入した場合、例えば1mgNH3/l中の数μgNaCl/lの増加であるため、試料液自身の導電率はほとんど変化しない。一方、処理水はアンモニアやヒドラジンなどのカチオン成分は除去されるもののCl−は除去されない。従って、導電率はCl−が混入した分だけ変化する。この導電率は酸導電率の変化であるため、当該変化量は同当量のNaClの変化よりも大きい。なお、導電率は比抵抗の逆数であり、どちらを測定してもよい。
本発明の陰イオンの検出装置は、図14の陰イオン検出装置に限定されず、例えば、前記の脱塩領域と液透過領域を備えた複合イオン交換体又は緻密層を備えた複合モノリスイオン交換体を使用すれば、二枚のカチオン交換膜の設置を省略することができ、更にコストを低減できる。また、脱塩室中、被処理液の流通方向は直流電場の印加が、排除されるイオンが該陽イオン交換体内における通水方向に対して直行方向であってもよい。また、陽極水は、陰イオン測定器の流出水ではなく、別途の配管から供給される純水であってもよい。
本発明の陰イオンの検出装置の電気再生式脱陽イオン装置の脱塩室の全部に複合モノリスイオン交換体を充填した場合、モノリス強度が高く、通水時の圧力損失を抑さえ、体積当たりのイオン交換容量を大きくとれ、消費電力を小さくできる。また、特開2006−167568号に記載の弱塩基性成分吸着ゾーンを短くできる、安定して正確な常時監視が可能で、かつ構造が簡単で且つ小型化でき安価に製造できるという特有の効果はそのまま保持している。
また、更に被処理水流入側に複合モノリスイオン交換体を配置し、下流側に従来の粒状イオン交換樹脂を充填した場合、該複合モノリスイオン交換体の迅速な吸着とイオン排除を備えながら、粒状イオン交換樹脂の大きな充填体積当りの交換容量のために、発電所における定期点検時の満水保管後の立上げ運転時や、DSS、WSSなどに伴う被処理水中の陽イオン流入量の変動に対しても、より安定した脱陽イオン処理を行うことが可能となる。
次に、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって本発明を制限するものではない。
参考例1
(I工程;モノリス中間体の製造)
スチレン9.28g、ジビニルベンゼン0.19g、ソルビタンモノオレエート(以下SMOと略す)0.50gおよび2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.26gを混合し、均一に溶解させた。次に,当該スチレン/ジビニルベンゼン/SMO/2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)混合物を180gの純水に添加し、遊星式撹拌装置である真空撹拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて5〜20℃の温度範囲において減圧下撹拌して、油中水滴型エマルションを得た。このエマルションを反応容器に速やかに移し、密封後静置下で60℃、24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、イソプロパノールで抽出した後、減圧乾燥して、連続マクロポア構造を有するモノリス中間体を製造した。水銀圧入法により測定した該モノリス中間体のマクロポアとマクロポアが重なる部分の開口(メソポア)の平均直径は40μm、全細孔容積は15.8ml/gであった。
(複合モノリスの製造)
次いで、スチレン36.0g、ジビニルベンゼン4.0g、1-デカノール60g、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.4gを混合し、均一に溶解させた(II工程)。重合開始剤として用いた2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)の10時間半減温度は、51℃であった。モノリス中間体の架橋密度1.3モル%に対して、II工程で用いたスチレンとジビニルベンゼンの合計量に対するジビニルベンゼンの使用量は6.6モル%であり、架橋密度比は5.1倍であった。次に上記モノリス中間体を外径70mm、厚さ約20mmの円盤状に切断して、3.2g分取した。分取したモノリス中間体を内径73mmの反応容器に入れ、当該スチレン/ジビニルベンゼン/1-デカノール/2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)混合物に浸漬させ、減圧チャンバー中で脱泡した後、反応容器を密封し、静置下60℃で24時間重合させた。重合終了後、厚さ約30mmのモノリス状の内容物を取り出し、アセトンでソックスレー抽出した後、85℃で一夜減圧乾燥した(III工程)。
このようにして得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる複合モノリス(乾燥体)の内部構造を、SEMにより観察した結果を図1〜図3に示す。図1〜図3のSEM画像は、倍率が異なるものであり、モノリスを任意の位置で切断して得た切断面の任意の位置における画像である。図1〜図3から明らかなように、当該複合モノリスは連続マクロポア構造を有しており、連続マクロポア構造体を構成する骨格相の表面は、平均粒子径4μmの粒子体で被覆され、全粒子体等による骨格表面の粒子被覆率は80%であった。また、粒径3〜5μmの粒子体が全体の粒子体に占める割合は90%であった。
また、水銀圧入法により測定した当該複合モノリスの開口の平均直径は16μm、全細孔容積は2.3ml/gであった。その結果を表1及び表2にまとめて示す。表1中、仕込み欄は左から順に、II工程で用いたビニルモノマー、架橋剤、有機溶媒、I工程で得られたモノリス中間体を示す。また、粒子体等は粒子で示した。
(複合モノリスカチオン交換体の製造)
上記の方法で製造した複合モノリスを、外径70mm、厚み約15mmの円盤状に切断した。モノリスの重量は19.6gであった。これにジクロロメタン1500mlを加え、35℃で1時間加熱した後、10℃以下まで冷却し、クロロ硫酸98.9gを徐々に加え、昇温して35℃で24時間反応させた。その後、メタノールを加え、残存するクロロ硫酸をクエンチした後、メタノールで洗浄してジクロロメタンを除き、更に純水で洗浄して複合モノリスカチオン交換体を得た。
得られたカチオン交換体の反応前後の膨潤率は1.3倍であり、体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で1.11mg当量/mlであった。水湿潤状態での有機多孔質イオン交換体の開口の平均直径を、有機多孔質体の値と水湿潤状態のカチオン交換体の膨潤率から見積もったところ21μmであり、同様の方法で求めた被覆粒子の平均粒径は5μmであった。なお、全粒子体等による骨格表面の粒子被覆率は80%、全細孔容積は2.3ml/gであった。また、粒径4〜7μmの粒子体が全体の粒子体に占める割合は90%であった。また、水を透過させた際の圧力損失の指標である差圧係数は、0.057MPa/m・LVであり、実用上要求される圧力損失と比較して、それを下回る低い圧力損失であった。更に、イオン交換帯長さは9mmであり、著しく短い値を示した。結果を表2にまとめて示す。
次に、複合モノリスカチオン交換体中のスルホン酸基の分布状態を確認するため、EPMAにより硫黄原子の分布状態を観察した。その結果を図4及び図5に示す。図4及び図5共に、左右の写真はそれぞれ対応している。図4は硫黄原子のカチオン交換体の表面における分布状態を示したものであり、図5は硫黄原子のカチオン交換体の断面(厚み)方向における分布状態を示したものである。図4及び図5より、スルホン酸基はカチオン交換体の骨格表面及び骨格内部(断面方向)にそれぞれ均一に導入されていることがわかる。
参考例2〜5
(複合モノリスの製造)
ビニルモノマーの使用量、架橋剤の使用量、有機溶媒の種類と使用量、III工程で重合時に共存させるモノリス中間体の多孔構造、架橋密度と使用量及び重合温度を表1に示す配合量に変更した以外は、参考例1と同様の方法でモノリスを製造した。その結果を表1及び表2に示す。また、複合モノリス(乾燥体)の内部構造を、SEMにより観察した結果を図6〜図13に示す。図6〜図8は参考例2、図9及び図10は参考例3、図11は参考例4、図12及び図13は参考例5のものである。なお、参考例2については架橋密度比(2.5倍)、参考例3については有機溶媒の種類(PEG;分子量400)、参考例4についてはビニルモノマー濃度(28.0%)、参考例5については重合温度(40℃;重合開始剤の10時間半減温度より11℃低い)について、本発明の製造条件を満たす条件で製造した。図6〜図13から参考例3〜5の複合モノリスの骨格表面に付着しているものは粒子体というよりは突起体であった。突起体の「粒子平均径」は突起体の大きさ(最大径)の平均径である。図6〜図13及び表2から、参考例2〜6のモノリス骨格表面に付着している粒子の平均径は3〜8μm、全粒子体等による骨格表面の粒子被覆率は50〜95%であった。また、参考例2が粒径3〜6μmの粒子体が全体の粒子体に占める割合は80%、参考例3が粒径3〜10μmの突起体が全体の粒子体に占める割合は80%、参考例4が粒径3〜5μmの粒子体が全体の粒子体に占める割合は90%、参考例5が粒径3〜7μmの粒子体が全体の粒子体に占める割合は90%であった。
(複合モノリスカチオン交換体の製造)
上記の方法で製造した複合モノリスを、それぞれ参考例1と同様の方法でクロロ硫酸と反応させ、複合モノリスカチオン交換体を製造した。その結果を表2に示す。参考例2〜5における複合モノリスカチオン交換体の連続細孔の平均直径は21〜52μmであり、骨格表面に付着している粒子体等の平均径は5〜13μm、全粒子体等による骨格表面の粒子被覆率も50〜95%と高く、差圧係数も0.010〜0.057MPa/m・LVと小さい上に、イオン交換帯長さも8〜12mmと著しく小さな値であった。また、粒径5〜10μmの粒子体が全体の粒子体に占める割合は90%であった。
参考例6
(モノリスの製造)
ビニルモノマーの使用量、架橋剤の使用量、有機溶媒の種類と使用量、III工程で重合時に共存させるモノリス中間体の使用量を表1に示す配合量に変更した以外は、実施例1と同様の方法でモノリスを製造した。その結果を表1及び表2に示す。なお、不図示のSEM写真から骨格表面には粒子体や突起体の形成は全く認められなかった。表1及び表2から、本発明の特定の製造条件と逸脱する条件、すなわち、上記(1)〜(5)の要件から逸脱した条件下でモノリスを製造すると、モノリス骨格表面での粒子生成が認められないことがわかる。
(モノリスカチオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、参考例1と同様の方法でクロロ硫酸と反応させ、モノリスカチオン交換体を製造した。結果を表2に示す。得られたモノリスカチオン交換体のイオン交換帯長さは26mmであり、参考例1〜5と比較して大きな値であった。
参考例7〜9
(モノリスの製造)
ビニルモノマーの使用量、架橋剤の使用量、有機溶媒の種類と使用量、III工程で重合時に共存させるモノリス中間体の多孔構造、架橋密度および使用量を表1に示す配合量に変更した以外は、参考例1と同様の方法でモノリスを製造した。その結果を表1及び表2に示す。なお、参考例7については架橋密度比(0.2倍)、参考例8については有機溶媒の種類(2-(2-メトキシエトキシ)エタノール;分子量120)、参考例9については重合温度(50℃;重合開始剤の10時間半減温度より1℃低い)について、本発明の製造条件を満たさない条件で製造した。結果を表2に示す。参考例7、9のモノリスについては骨格表面での粒子生成はなかった。また、参考例8では単離した生成物は透明であり、多孔構造が崩壊、消失していた。
(モノリスカチオン交換体の製造)
参考例8を除き、上記の方法で製造した有機多孔質体を、参考例6と同様の方法でクロロ硫酸と反応させ、モノリスカチオン交換体を製造した。その結果を表2に示す。得られたモノリスカチオン交換体のイオン交換帯長さは23〜26mmであり、参考例1〜5と比較して大きな値であった。
参考例10
(多孔質カチオン交換体(公知)の製造)
スチレン27.7g、ジビニルベンゼン6.9g、アゾビスイソブチロニトリル0.14g及びソルビタンモノオレエート3.8gを混合し、均一に溶解させた。次に、当該スチレン/ジビニルベンゼン/アゾビスイソブチロニトリル/ソルビタンモノオレエート混合物を450mlの純水に添加し、ホモジナイザーを用いて2万回転/分で2分間攪拌し、油中水滴型エマルジョンを得た。乳化終了後、油中水滴型エマルジョンをステンレス製のオートクレーブに移し、窒素で十分置換した後密封し、静置下60℃で24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、イソプロパノールで18時間ソックスレー抽出し、未反応モノマーとソルビタンモノオレエートを除去した後、40℃で一昼夜減圧乾燥した。このようにして得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を14モル%含有した多孔質体5gを分取し、テトラクロロエタン500gを加え、60℃で30分加熱した後、室温まで冷却し、クロロ硫酸25gを徐々に加え、室温で24時間反応させた。その後、酢酸を加え、多量の水中に反応物を投入し、水洗、乾燥して多孔質カチオン交換体を得た。この多孔質体のイオン交換容量は、乾燥多孔質体換算で4.0mg当量/gであり、EPMAを用いた硫黄原子のマッピングにより、スルホン酸基が多孔質体に均一に導入されていることを確認した。また、不図示のSEM観察の結果、この多孔質体の内部構造は、連続気泡構造を有しており、平均径30μmのマクロポアの大部分が重なり合い、マクロポアとマクロポアの重なりで形成されるメソポアの直径の平均値は5μm、全細孔容積は、10.1ml/gであった。また、上記多孔質体を10mmの厚みに切り出し、水透過速度を測定したところ、14,000l/分・m2・MPaであった。
(陰イオン検出装置)
図14に示した装置が安定して正確な被検水中の陰イオンの検出定量ができることを確認した。陰極にはSUS304製の網目板を、陽極にはチタン製網目板に白金を被覆したものを用い、二枚の陽イオン交換膜5、5に密着させて配置した。二枚の陽イオン交換膜5、5は、いずれもスチレン−ジビニルベンゼン共重合体母体にスルホン酸基を導入した強酸性陽イオン交換膜(ネオセプタ CMX(徳山曹達社製))を使用した。両電極のイオン交換膜接触面との反対側をそれぞれ陰極室2、陽極室1とした。前記二枚の陽イオン交換膜5、5で仕切られた脱陽イオン室4には、被処理水流入側に参考例2の複合モノリスカチオン交換体35を充填し、下流側にスチレン−ジビニルベンゼン共重合体母体にスルホン酸基を導入した粒状強酸性陽イオン交換樹脂36(アンバーライトIR120B)を充填した。脱陽イオン室形状は、50mm×50mm×100mmの直方体であり、複合モノリスカチオン交換体35及び粒状強酸性陽イオン交換樹脂36を体積比で1:1で充填した。脱陽イオン室4からの処理水流出配管32を導電率計10b(フォックスボロ製875CR(モニター)、同871CC(センサー))に接続し、該導電率計10bからの流出水を陽極室1の入口に接続して、陰イオン検出装置10を構成した。
(陰イオン検出方法)
陰イオン検出装置10を用いて、発電所の定常運転時における海水リーク検知能を模擬水によって確認した。被処理水としては、比抵抗18.2MΩ・cm純水にアンモニアを濃度1mgNH3/lとなるように溶解したものを使用した。被処理水の流量は、50l/hであり、陽極、陰極間に印加した直流電流は1.0A、電圧は31Vであった。また、通水差圧は28kPaであった。その結果、陰イオン検出装置10は、塩化ナトリウム5μg/lを検出、定量可能であり、火力および原子力発電所における海水リークの連続監視装置として、充分な性能を有していることが分かった。
比較例1
参考例2の複合モノリスカチオン交換体に代えて、参考例10のモノリスイオン交換体を使用した以外は、実施例1と同様の方法で行った。陽極、陰極間に印加した直流電流は1.0A、電圧は40Vであった。また、通水差圧は210kPaであった。
更に、火力発電所におけるウィークリー・スタート・ストップ(WSS)を想定し、被処理水中の陽イオン濃度が高い場合にも陰イオン検出装置10が安定して脱陽イオン性能を発揮することを確認した。すなわち、被処理水中の陽イオンをアンモニア2mgNH3/l、ヒドラジン10mgN2H4/lとし、塩化ナトリウム無配合とし、運転時間100時間とした以外は、実施例1と同様の陰イオン検出装置を用い、同様の方法で行った。その結果、100時間に渡る連続運転で、処理水導電率は0.06μS/cm以下を保持し、本例の陰イオン検出装置が被処理水中の陽イオン負荷上昇時にも、安定して脱陽イオン処理が可能であることを確認した。
参考例、実施例及び比較例から、陰イオン検出定量10は、モノリス強度が高く、通水時の圧力損失が低く、消費電力を小さくできる。