JP2010216633A - ラジアルすべり軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】他の性能を低下させることなく、高荷重作用時においても十分な潤滑油膜の厚みを確保して荷重の負荷容量を増大することが可能なラジアルすべり軸受を提供することである。
【解決手段】大端部軸受30は、潤滑油を介してクランクピン18を支持するラジアルすべり軸受であって、コネクティングロッド10の小端部12及び大端部13の中心を通る中心線αを基準に、少なくとも小端部12側に位置する部分であって、クランクピン18の軸回転方向の上流側に向かって内周断面の中心点の周りに角度Aだけ進んだ内周面31上の位置を最大膨出部33として、角度Bの範囲に亘って内側に膨出した膨出部32を有する。なお、角度Aとしては、16〜21°が好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、ラジアルすべり軸受に係り、特に回転軸と軸受内周面との間に潤滑油が充填され、その潤滑油を介して軸荷重を支持するラジアルすべり軸受に関する。
ラジアルすべり軸受は、ジャーナルすべり軸受とも称され、軸受が支持する回転軸の径方向に垂直な荷重を受けるすべり軸受であって、軸受に作用する荷重の大きさと方向が軸回転等によって変動する動荷重に対する負荷容量が大きいことを特徴とする。ここで、軸受が受ける荷重とは、軸受の内周面に作用する荷重であって、回転軸からの軸荷重を意味する(以下、軸荷重又は単に荷重とする)。動荷重を受ける軸受の代表例として、エンジンのクランクシャフトを支えるラジアルすべり軸受が挙げられる。例えば、ピストンとクランクシャフトとを接続するコネクティングロッドの大端部の軸受には、爆発荷重、往復慣性荷重、回転慣性荷重が加わり、軸荷重の大きさ及び方向が変化する。
一般的に、4ストロークエンジンは、吸気行程、圧縮行程、爆発行程、排気行程の4行程が1サイクルである。軸受内周面において、圧縮上死点では、爆発力によりピストン側(上側)に高荷重が作用し、吸気下死点、排気下死点でも、慣性力により上側、吸気上死点では、慣性力によりピストンの反対側(下側)に高荷重が作用する。このように、各行程により高荷重が作用する位置が変化する。これに伴って回転軸であるクランクピンと軸受内周面との間に介在する潤滑油膜の厚みが変化する。特に、爆発行程による高荷重が作用すると油膜厚みが大幅に薄くなり油膜切れを引き起こすおそれがある。油膜切れが発生した場合にはクランクピンと軸受内周面との摩擦抵抗が増大し、パワーロスが増加すると同時に、軸受内周面に損傷を生じるおそれがある。
このような状況に鑑みて、高荷重作用時の油膜厚みを確保することを目的とした技術が幾つか開発されている。例えば、特許文献1には、クランクピンの断面形状が非真円形であって、この断面形状とすべり軸受との間の軸受隙間の最小位置(最小隙間位置)が、クランクジャーナルの回転中心とすべり軸受の中心とを結ぶ軸線上にないクランクシャフトが開示されている。そして、特許文献1では、クランクピンの断面形状が楕円形状に加工されたものが開示されている。
また、特許文献2には、内燃機関の燃焼行程においてコネクティングロッドの大端部とクランクピンとの間での油膜が薄くなる領域への荷重伝達を抑制するために、その領域に対応する部分の剛性を他の部分よりも低くする非対称形状としたコネクティングロッドが開示されている。特許文献2では、具体的な形態として、コラム部に貫通孔を形成して一部の剛性を低くしたものが開示されている。
特開2003−278739号公報 特開2008−82522号公報
しかし、特許文献1のクランクシャフトは、クランクピンの非真円加工に特殊な技術が必要であって、コスト面から改良の余地がある。また、特許文献2のコネクティングロッドは、油膜が薄くなる領域への荷重伝達を抑制するために、一部の剛性を低減することにより油膜厚みを確保するが、例えば、高強度が要求されるコラム部に貫通孔を形成する必要があり、機械的強度の観点から改良の余地がある。
本発明の目的は、他の性能を低下させることなく、高荷重作用時においても十分な潤滑油膜の厚みを確保して荷重の負荷容量を増大することが可能なラジアルすべり軸受を提供することである。
本発明に係るラジアルすべり軸受は、内周面と回転軸との隙間に充填される潤滑油を介して、回転軸の径方向に沿った軸荷重を受けるラジアルすべり軸受において、内周面の形状は、軸荷重が作用する方向を基準に、回転軸の軸回転方向の上流側に向かって内周断面の中心点の周りに所定角度進んだ内周面上の位置を最大膨出位置として内側に膨出した膨出部を有することを特徴とする。
上記構成によれば、膨出部と回転軸との隙間が小さくなり、ウェッジ効果による油膜圧力の発生範囲が真円軸受に比べて増大して、回転軸の安定位置が真円軸受よりも軸回転方向の下流側に移動する。即ち、真円軸受では、内周面上の一点に軸荷重が集中するが、上記構成では、膨出部の一部及び上記下流側部分に軸荷重が分散する。したがって、油膜に作用する圧力(油膜圧力)が低減され、高荷重作用時においても十分な潤滑油膜の厚みを確保することが可能になる。
また、本発明に係るラジアルすべり軸受は、ピストンに接続される小端部とクランクシャフトに接続される大端部とを有するコネクティングロッドの大端部に用いられ、潤滑油を介してクランクピンを支持するラジアルすべり軸受において、内周面の形状は、コネクティングロッドの小端部及び大端部の中心を通る中心線を基準に、少なくとも小端部側に位置する部分であって、クランクピンの軸回転方向の上流側に向かって内周断面の中心点の周りに所定角度進んだ内周面上の位置を最大膨出位置として内側に膨出した膨出部を有することを特徴とする。
上記構成によれば、特に爆発行程による高荷重作用時において、膨出部によるウェッジ効果により、十分な潤滑油膜の厚みを確保して荷重の負荷容量を増大することが可能になる。即ち、膨出部の一部及び膨出部の下流側部分に軸荷重を分散することができ、油膜厚さの向上及び油膜圧力の低減を図ることができる。
また、膨出部は、前記所定角度が16°〜21°である内周面上の位置のいずれかを最大膨出位置とすることが好ましい。
上記構成によれば、十分な潤滑油膜の厚みを確保して油膜圧力を低減することがさらに容易になる。
また、膨出部は、少なくとも中心線と交差する位置まで膨出すると共に、最大膨出位置から端部に向かうにつれて膨出度合いが小さくなることが好ましい。
上記構成によれば、十分な潤滑油膜の厚みを確保して油膜圧力を低減することがさらに容易になる。
本発明に係るラジアルすべり軸受によれば、他の性能を低下させることなく、高荷重作用時においても十分な潤滑油膜の厚みを確保して荷重の負荷容量を増大することが可能になる。また、本発明に係るラジアルすべり軸受の構成は、コネクティングロッドの大端部軸受以外の軸受に適用した場合にも、荷重の負荷容量を増大させる効果を奏する。
本発明に係る実施の形態におけるコネクティングロッドの大端部軸受及び該軸受が適用されるコネクティングロッドを示す図である。 図1の大端部軸受及び大端部軸受に挿嵌されたクランクピンの要部断面を示す図である。 最大油膜圧力Pmaxが最小となる膨出部の形態(a)、最小油膜厚さHminが最大となる膨出部の形態(b)、膨出部を有さない真円形状の軸受形態(c)を、それぞれ示す図である。 図3に示す各形態において、円周方向角度に対する油膜圧力分布を示す図である。 図3に示す各形態において、円周方向角度に対する油膜厚さ分布を示す図である。 本発明に係る実施の形態における静荷重軸受及び静荷重軸受に挿嵌された回転軸の要部断面を示す図である。
図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。図1は、コネクティングロッドの大端部軸受及び該軸受が適用されるコネクティングロッドを示す図であり、図2は、図1の大端部軸受及び大端部軸受に挿嵌されたクランクピンの要部断面を示す図である。なお、図1、図2を含む各図において、膨出部やクランクピン及び軸受内周面の隙間等のサイズは、実際のサイズよりも大きく記載している。また、クランクピンの軸回転方向をクランクピンの円弧に沿った矢印で示している。
以下では、本発明に係る実施の形態におけるラジアルすべり軸受として、図1に示すコネクティングロッド10の大端部軸受30を例に挙げて説明するが、本発明に係るラジアルすべり軸受は、例えば、カムシャフト用軸受等のその他のエンジン部材用軸受、パワステオイルポンプ用軸受等のサスペンション・ステアリング部材用軸受、車両以外の用途について、例えば、磁気ドラムの主軸軸受等のOA機器用軸受など、種々の軸受に適用することができる。
コネクティングロッド10は、ピストン11の往復直線運動を図示しないクランクシャフトに伝達して回転運動に変換する部品である。図1に示すように、コネクティングロッド10は、ピストン11側の小端部12と、クランクシャフト側の大端部13と、小端部12と大端部13との間を繋ぐコラム部14とから構成されている。なお、コネクティングロッド10は、ニッケル・クロム鋼、クロム・モリブデン鋼、チタン合金などの材料から構成され、高い機械的強度が要求される部材である。
小端部12は、ピストン11との接続部であって、ピストン11に連結されたピストンピン15が挿通される小端部貫通孔16が形成されている。そして、小端部貫通孔16には、ピストンピン15を支持するための小端部軸受17が設けられる。小端部軸受17は、例えば、爆発行程における高荷重を、ピストン11を介して受けるため、高い負荷容量が要求される。小端部12の運動形態は、コネクティングロッド10全体の往復運動と大端部13の回転運動との合成から揺動運動となるため、小端部軸受17には、軸受内周面の広い範囲に亘って高荷重が作用する。したがって、軸受内周面には、例えば、大端部13に形成される図示しないジェット孔や連通孔から潤滑油が給油され、潤滑油を介して軸荷重を支持する。
大端部13は、クランクシャフトとの接続部であって、クランクシャフトのクランクピン18が挿通される大端部貫通孔19が形成されている。そして、大端部貫通孔19には、クランクピン18を支持するための大端部軸受30が設けられる。なお、大端部13は、コラム部14と一体成形された大端部本体20と大端部本体20に締結されるキャップ21とから構成され、大端部本体20にキャップ21を締結して形成される大端部貫通孔19に半割り構造の大端部軸受30が装着される。
コラム部14は、上記のように、小端部12と大端部13との間を繋ぐ部分であって、一般的に、コラム部14、小端部12、及び大端部本体20は一体成形される。コラム部14には、大端部13から小端部12に潤滑油を供給するために、例えば、図示しない連通孔が形成される。また、クランクピン18は、上記のように、クランクシャフトと大端部13とを接続する軸であって、ピストン11の往復動による力を受けて回転すると共に、その力をクランクシャフトに伝達するための部材である。
上記のように、コネクティングロッド10がピストン11とクランクシャフトのクランクピン18とを連結することにより、エンジンの作動時にピストン11が図示しないシリンダ内を往復運動すると、その往復運動がコネクティングロッド10を介してクランクシャフトの回転運動に変換され、この回転力がエンジン出力として得られる仕組みになっている。
大端部軸受30は、回転軸であるクランクピン18を支持するラジアルすべり軸受である。図1に示すように、大端部軸受30は、半割り構造であり、一般的に、裏金とライニングを接合したバイメタル材が使用される。ライニングの種類としては、大別して、銅−鉛合金とアルミニウム合金が挙げられる。このライニングの表面が軸受摺動面である内周面31である。
クランクシャフトには、給油路が形成されており、この給油路を経て大端部軸受30の軸受摺動面である内周面31に潤滑油が供給される。供給された潤滑油によって、内周面31とクランクピン18との間に油膜が形成され、両部材の摩擦を防止する。なお、この潤滑油は、例えば、コラム部14内に形成される上記の連通孔等を経て小端部軸受17の軸受摺動面(内周面)に供給される。
ここで、潤滑油は、油膜を形成することにより、軸と軸受が焼き付くことなく機関を運転すること、軸と軸受内周面との摩擦損失や磨耗を低減することを主な役割とするが、冷却、洗浄、防錆等の役割も果たしている。なお、潤滑油は、基油に摩擦調整剤、粘度指数向上剤、及び酸化防止剤等が添加されたものである。
軸受摺動面である内周面31は、上記のように、回転軸であるクランクピン18から軸荷重を受ける面である。内周面31とクランクピン18との間には、潤滑油が充填され、軸荷重は、潤滑油を介して内周面31に作用する。内周面31において、高荷重が作用する位置は、小端部12の中心及び大端部13の中心を通る中心線αが交差する位置からクランクピン18の軸回転方向の下流側領域である。ここで、小端部12の中心、大端部13の中心とは、それぞれ、小端部軸受17の内周断面の中心点17C、大端部軸受30の内周断面の中心点30Cである。
具体的には、ピストン11の往復運動回数が少ないときには、中心線αとの交差位置付近に潤滑油の油膜厚さが最も薄くなる最小油膜厚さ位置が生じる。一方、ピストン11の往復運動が激しくなるほど、クランクピン18の回転数が高くなり、クランクピン18は、上記交差位置から軸回転方向にずれて偏心するため、軸回転方向の下流側領域に最小油膜厚さ位置がシフトする。例えば、後述する図3(c)に示すように、軸回転速度が2000rpmのときには、中心線αとの交差位置から軸回転方向の下流側に進んだ位置において、潤滑油の油膜厚みが最も薄くなり(最小油膜厚さ位置)、油膜切れが生じるおそれがある。
ここで、中心線αは、上記のように、小端部軸受17の内周断面の中心点17C及び大端部軸受30の内周断面の中心点30Cを通る線であって、軸荷重の作用方向は、中心線αに沿った方向となる。具体的に、クランクピン18の軸荷重の作用方向は、圧縮上死点(吸気下死点、排気下死点)では、中心線αに沿ってピストン11側に向かう方向、吸気上死点では、中心線αに沿ってピストン11と反対側に向かう方向である。なお、後述する図4に示すように、軸受の円周方向角度に対して油膜圧力分布をプロットしたときに、油膜圧力分布の合力は、軸荷重と等しく反対方向となる(バランスする)。
図1に示すように、大端部軸受30は、油膜切れを防止するために、内周面31上に膨出部32を有することを特徴とする。膨出部32は、大端部軸受30の内側、即ちクランクピン18側に対して、他の内周面31よりも膨らんだ部分であり、その部分におけるクランクピン18と内周面31との隙間は狭くなる。したがって、ウェッジ効果によりクランクピン18の軸荷重は、膨出部32の一部に対して作用することになる。
膨出部32は、中心線αを基準として、少なくとも小端部12側に位置する部分であって、クランクピン18の軸回転方向の上流側に向かって内周断面の中心点30Cの周りに所定角度進んだ内周面31上の位置を最大膨出部33として形成される。なお、吸気上死点では、ピストン11と反対側の内周面31にも高荷重が作用するので、図2に点線で示すように、小端部12と反対側に位置する部分にも、膨出部32を設けることができる。同図に示すように、2つの膨出部32を設ける場合には、互いに対向する位置に設けることが好ましい。
最大膨出部33は、膨出部32の中で最も内側に膨らんだ部分である。膨出部32は、最大膨出部33を中心として、所定の範囲に亘って形成される。即ち、詳しくは図2に示すように、膨出部32は、最大膨出部33のみが膨出しているのではなく、最大膨出部33から端部に向かうにつれて膨出度合いが小さくなるように緩やかに膨出している。なお、最大膨出部33の膨出長さは、軸受のサイズ等によっても異なるが、大端部軸受30では、数μm程度であることが好ましい。
最大膨出部33は、上記のように、中心線αを基準として決定される。具体的には、図2に示すように、中心線αからクランクピン18の軸回転方向の上流側に向かって内周断面の中心点30Cの周りに上記所定角度である角度Aだけ進んだ内周面31上の位置が最大膨出部33となる。ここで、角度Aとしては、16〜21°であることが好ましい。角度Aがこの範囲であれば、十分な潤滑油膜の厚みを確保して最大油膜圧力を低減することがさらに容易になる。
円周断面における膨出部32の範囲を規定する角度Bは、60°以上であることが好ましく、上記のように、膨出部32は、最大膨出部33から端部に向かうにつれて膨出度合いが小さくなるように、且つ少なくとも中心線αと交差する位置まで膨出することが好ましい。また、図2に示すように、膨出部32は、油膜厚み確保、加工性向上等の観点から、最大膨出部33を中心として左右両端までの長さが同等であることが好ましい。角度Bがこの範囲であれば、十分な潤滑油膜の厚みを確保して油膜圧力を低減することがさらに容易になる。なお、膨出部32は、クランクピン18の軸方向に沿って均一な形状を維持し、通常、該軸方向の軸受両端に亘って形成される。
膨出部32の形成方法としては、次のような方法が挙げられる。例えば、軸受メタルの鋳造工程において厚み分布を形成する方法、裏金に厚み分布を形成する方法、裏金の背面にめっき等で数μmオーダーの肉盛りを施す方法、裏金の背面にシム等でかさ上げを施す方法等によって、膨出部32を簡便・安価に形成することができる。
図3〜図5を用いて、膨出部32の形態を変更した場合、具体的には、最大膨出部33の位置を規定する角度Aを変更した場合における油膜圧力分布、油膜厚さ分布の変化について説明する。ここで、図3(a)は、実施例1として、最大油膜圧力Pmaxが最小となる膨出部32の形態、図3(b)は、実施例2として、最小油膜厚さHminが最大となる膨出部の形態、図3(c)は、比較例として、膨出部32を有さない真円形状の軸受形態をそれぞれ示す図である。また、図4は、図3に示す各形態において、横軸に円周方向角度、縦軸に油膜圧力をとり、各円周方向角度に対する油膜圧力分布を示した図であり(実施例1を細かい点線、実施例2を粗い点線、比較例を実線で示す。図5においても同様。)、図5は、縦軸に油膜厚さをとり、円周方向角度に対する油膜厚さ分布を示した図である。なお、円周方向角度とは、軸受の内周断面において、中心点30Cから図3の右側に向かって引いた中心線αに垂直な線(垂線:図示せず)と内周面31上の任意の位置から中心点30Cに対して引いた線(角度線:図示せず)とがなす角度を意味し(任意の位置における円周方向角度)、角度線と垂線とが一致する位置の円周方向角度を0°、角度線と中心線αとが一致する位置の円周方向角度を90°とする。
油膜圧力(図4)等の解析条件としては、いずれも同一条件であり、クランクピン18の直径が44mm、軸荷重が100kN、軸回転速度が2000rpm、内周面31とクランクピン18との平均隙間が20μm、潤滑油粘度が10mPa・sとした。また、最大膨出部33の膨出長さは、3μm、角度Bは、60°とした。なお、油膜圧力及び油膜厚さの値は、公知の流体潤滑計算(レイノルズ方程式)により算出した。
図3(a)に示すように、実施例1の膨出部32は、角度Aが21°(角度Bが60°、最大膨出長さが3μm)として形成される。このような膨出部32を有する構成によれば、図4に示すように、最大油膜圧力Pmaxを0.72GPaまで低減することが可能になり、膨出部32を有さない比較例の軸受(図3(c))よりも大幅にPmaxを低減(58%減)できることがわかる。また、最小油膜厚みHminについても、0.268μm(比較例)から0.465μmまで向上させることができる。
一方、図3(b)に示すように、実施例2の膨出部32は、角度Aが16°と実施例1の場合よりも小さく設定されている。角度B及び最大膨出長さについては、実施例1と同様に、60°、3μmである。このような膨出部32を有する構成によれば、図5に示すように、最小油膜厚さHminを0.67μmまで増加することが可能になり、膨出部32を有さない比較例の軸受(図3(c))よりも大幅にHminを増加(150%増)できることがわかる。また、最大油膜圧力Pmaxについても、1.69GPa(比較例)から1.02GPaまで低減させることができる。
図4及び図5に示すように、実施例の大端部軸受30は、油膜圧力、油膜厚さを示すピークが2つ存在し、ピークが1つしか存在しない比較例の軸受とは軸荷重の作用の仕方が大きく異なっている。即ち、実施例の大端部軸受30では、膨出部32の効果によって、軸荷重が分散されている。なお、軸回転速度が上昇すると、油膜圧力のピーク位置が軸回転方向の下流側にシフトし、軸回転速度が減少すると、油膜圧力のピーク位置が軸回転方向の上流側にシフトするが、Pmaxを低減・Hminを増加するために好適な角度Aの範囲等は殆ど変化しない。
以上のように、大端部軸受30は、コネクティングロッド10の小端部12及び大端部13の中心を通る中心線αを基準に、少なくとも小端部12側に位置する部分であって、クランクピン18の軸回転方向の上流側に向かって内周断面の中心点の周りに角度Aだけ進んだ内周面31上の位置を最大膨出部33として、角度Bの範囲に亘って内側に膨出した膨出部32を有するので、膨出部32とクランクピン18との隙間が小さくなってウェッジ効果が発現することにより、高荷重作用時においても十分な潤滑油膜の厚みを確保して荷重の負荷容量を増大することが可能になる。
なお、上記においては、本発明に係るラジアルすべり軸受として、大端部軸受30を例に挙げて説明したが、図6に示すように、回転軸の軸回転速度が緩やかで軸の偏心が無視でき、大きな重力による軸荷重が一方向に作用する静荷重軸受40についても、内周面41上に膨出部42を設けることにより、十分な潤滑油膜の厚みを確保して荷重の負荷容量を増大することが可能になる。ここで、図6は、矢印の方向に重力Gによる軸荷重が作用する静荷重軸受40を示す模式図である。なお、同図では、膨出部42が存在しない場合の回転軸の位置を点線、膨出部42を有する静荷重軸受40における回転軸44の位置を実線で示している。
図6に示すように、静荷重軸受40は、内周面41に対して軸荷重である重力Gが作用する方向を基準として、回転軸44の軸回転方向の上流側に向かって内周断面の中心点40Cの周りに角度Aだけ進んだ内周面41上の位置を最大膨出部43とする膨出部42を有する。膨出部42は、最大膨出部43から両端部に向かって徐々に膨出度合いが小さくなるように緩やかに膨出している。このような膨出部42を設けることで、ウェッジ効果による油膜圧力の発生範囲が真円軸受に比べて増大して、回転軸44の安定位置が真円軸受よりも軸回転方向の下流側に移動する。したがって、油膜圧力は、膨出部42の一部及び上記下流側部分に軸荷重が分散することにより、Pmaxが低減して高荷重作用時においても十分な潤滑油膜の厚みを確保することが可能になる。
また、軸受の円周方向角度に対する油膜圧力のピーク値が複数存在する場合、即ち高荷重の作用位置が複数存在する場合には、例えば、各高荷重作用方向を基準として軸回転方向の上流側に膨出部を設ける、或いは最大荷重の作用方向を基準として膨出部を設けることができる。後者の場合に、最大荷重の作用方向が回転軸の回転数等により経時的に変化するときには、回転軸の回転停止時における荷重作用方向を基準として膨出部を設けることが好ましい。なお、Pmaxを低減・Hminを増加するために好適な角度Aの範囲等は、膨出部の形成位置等が変化した場合にも適用することができる。
10 コネクティングロッド、11 ピストン、12 小端部、13 大端部、14 コラム部、15 ピストンピン、16 小端部貫通孔、17 小端部軸受、18 クランクピン、19 大端部貫通孔、20 大端部本体、21 キャップ、30 大端部軸受、31 内周面、32 膨出部、33 最大膨出部、40 静荷重軸受、41 内周面、42 膨出部、43 最大膨出部、44 回転軸、α 中心線、17C 小端部軸受の内周断面の中心点、30C 大端部軸受の内周断面の中心点、40C 静荷重軸受の内周断面の中心点。

Claims (4)

  1. 内周面と回転軸との隙間に充填される潤滑油を介して、回転軸の径方向に沿った軸荷重を受けるラジアルすべり軸受において、
    内周面の形状は、
    軸荷重が作用する方向を基準に、回転軸の軸回転方向の上流側に向かって内周断面の中心点の周りに所定角度進んだ内周面上の位置を最大膨出位置として内側に膨出した膨出部を有することを特徴とするラジアルすべり軸受。
  2. ピストンに接続される小端部とクランクシャフトに接続される大端部とを有するコネクティングロッドの大端部に用いられ、潤滑油を介してクランクピンを支持するラジアルすべり軸受において、
    内周面の形状は、
    コネクティングロッドの小端部及び大端部の中心を通る中心線を基準に、少なくとも小端部側に位置する部分であって、クランクピンの軸回転方向の上流側に向かって内周断面の中心点の周りに所定角度進んだ内周面上の位置を最大膨出位置として内側に膨出した膨出部を有することを特徴とするラジアルすべり軸受。
  3. 請求項1又は2に記載のラジアルすべり軸受において、
    膨出部は、
    前記所定角度が16°〜21°である内周面上の位置のいずれかを最大膨出位置とすることを特徴とするラジアルすべり軸受。
  4. 請求項2に記載のラジアルすべり軸受において、
    膨出部は、
    少なくとも中心線と交差する位置まで膨出すると共に、最大膨出位置から端部に向かうにつれて膨出度合いが小さくなることを特徴とするラジアルすべり軸受。
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