JP2010216053A - 繊維構造物およびそれを用いた衣料 - Google Patents

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【課題】洗濯耐久性に優れた吸湿発熱性と、保温性と速乾性と着用快適性とを有する繊維構造物およびそれを用いた衣料を提供する。
【構成】ポリアクリル系合成繊維を30重量%以上、47重量%以下、ビスコースレーヨン系繊維を20重量%以上、30重量%以下、カチオン可染ポリエステル繊維を30重量%以上、45重量%以下、ポリウレタン系弾性繊維を3重量%以上、10重量%以下含んでなる繊維構造物。
【選択図】なし

Description

本発明は、吸湿発熱性、保温性、着用快適性とを兼ね備えた繊維構造物およびそれを用いた衣料に関し、特に人間が直接肌に触れる肌着、Tシャツ等に好ましく用いられる繊維構造物に関する。
従来より、保湿性繊維製品としては、布帛にたとえばスクワラン等の保湿成分を後加工によって付与したものが用いられている。しかしながら、これらの後加工は洗濯耐久性に劣る問題があり、その解決策として多量のバインダーを使用することが一般的であった(特開平2−300301)。
バインダーを用いずに洗濯耐久性を向上するものとして、例えば、特開平10−131047号公報、特開2002−88649号公報に記載の技術が挙げられる。特開平10−131047では、合成繊維に機能性蛋白質素材を固着せしめた後、アルカリ水溶液および/またはアニオン界面活性剤水溶液にて後処理を施す方法が、また、特開2002−88649では、セルロース系繊維を含む繊維構造物に対し、金属化合物および天然性機能剤が付与され、かつ架橋改質加工されたセルロース系繊維含有繊維製品が開示されている。
しかしながら、これら従来の技術では、洗濯耐久性が向上しても、直接肌に触れる衣料用途で最も重要な安全性、ソフトさを損ない、洗濯耐久性と着用快適性の両面を満足するものとは言えず、近年の環境負荷軽減の観点からも問題であった。
また、保温性を向上させる手段としては、例えば特公平7−59762号公報に記載されているとおり、裏地、中綿等の保温材、表地の3層構造からなるものが多く知られるが、これらの表地は防風性や保温性を高める目的で使用されているため、着用時に蒸れたり、3層構造であるため、地厚でありインナー等の用途には不向きであるという問題があった。
特開平10−131047号公報 特開2002−88649号公報 特公平7−59762号公報
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ビスコースレーヨンを混紡した糸、ポリアクリル系合成繊維、カチオン可染ポリエステル繊維、ポリウレタン系弾性繊維を使用することで、洗濯耐久性に優れた保温性、着用快適性に優れた繊維構造物を得ることが可能であることを見いだした。
すなわち、本発明は、上記課題を達成することを目的とし、洗濯耐久性に優れた保温性と、着用快適性とを有する繊維構造物およびそれを用いた衣料を提供せんとするものである。
本発明は上記課題を達成するために、以下の構成を有する。
(1) ポリアクリル系合成繊維を30重量%〜47重量%、ビスコースレーヨン系繊維を20重量%以上、30重量%以下、カチオン可染ポリエステル繊維を30重量%以上、45重量%以下、ポリウレタン系弾性繊維を3重量%以上、10重量%以下含んでなる繊維構造物。
(2) 該繊維構造物の吸湿発熱性能が2℃以上である上記(1)記載の繊維構造物。
(3) 該繊維構造物の残留水分率が30%以下になる時間が40分以下である上記(1)または(2)記載の繊維構造物。
(4) 該繊維構造物の保温率が16%以上である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の繊維構造物。
(5) 該ポリアクリル系合成繊維を構成する単繊維の繊度が、0.6デシテックス以上、1デシテックス以下である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の繊維構造物。
(6) 該カチオン可染ポリエステル長繊維が、異形断面を有する繊維を含む上記(1)〜(4)のいずれかに記載の繊維構造物。
(7) 上記(1)〜(6)に記載の繊維構造物を用いた衣料。
本発明により、耐久性のある保湿性を有し、かつ、生地厚が薄くても、保温性と吸放湿性を具備するため、着用快適性を目的とした肌着、Tシャツ等として好適に用いられる繊維構造物およびそれを用いた衣料を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明においては、ポリアクリル系合成繊維を30重量%〜47重量%の割合で含有する。ポリアクリル系合成繊維を30重量%〜47重量%の割合で含有することにより、繊維構造物に優れた保温性を付与することができるのである。かかるポリアクリル系合成繊維を構成する単繊維の繊度は、0.6〜2.2デシテックスであることが好ましい。よりソフトな風合いと保温性向上のためには、細繊度のほうが好ましいが、0.6デシテックス未満では、紡績性が困難となる場合があり、また紡績糸の強力低下をまねく可能性がある。また2.2デシテックスを越えると、特に肌に直接着用するインナーウエア等としては風合いが堅くなる傾向がある。これらのことからポリアクリル系合成繊維の単繊度はさらには0.6デシテックス以上、1デシテックス以下が好ましい。
本発明の繊維構造物は、ビスコースレーヨン系繊維を20重量%〜40重量%の割合で含有する。ビスコースレーヨン系繊維をこの割合で含有することにより、耐久性に優れた保湿性を有する繊維構造物を得ることができる。中でも、天然蛋白質を含むビスコースレーヨンを用いることが好ましく、この場合湿潤耐久性に特に優れる。天然蛋白質としてはたとえば、牛乳中に含まれる蛋白質が好ましく用いられる。牛乳中に含まれるタンパク質(天然アミノ酸)としては、チロシン、トリプトファン、バリン、フェニルアラニン、プリロン、ロイシン、アラニン、イソロイシン、セリン、トレオニン、リジン、グリシン、ヒスチジン、アスパラギン酸、アルギニン、グルタミン酸、シスチン、メチオニン等が挙げられる。天然蛋白質は、本発明の繊維構造物100gに対して、700mg〜1500mgの割合で用いられていることが好ましい。
本発明の繊維構造物は、カチオン可染ポリエステル繊維を30重量%〜45重量%の割合で含有する。カチオン可染ポリエステル繊維を用いることで、通常のポリエステル繊維に比べ低温で染めることが可能であることから、ポリアクリル系合成繊維と同一の染料で染めることが可能となる。また、105℃〜115℃で優れた発色性と堅牢度が得られるため、ポリウレタン系弾性繊維の熱による劣化を防止することができる。
また、カチオン可染ポリエステル繊維として、異形断面を有する繊維を含むことが好ましい。これにより、発汗時に編地が汗を吸い込んでも速やかに乾燥し、身体の冷えを防止するという効果を奏する。本発明において、「異型断面を有する繊維を含む」とは、断面形状の異なる2種以上の繊維を用いることを意味する。たとえば、丸断面繊維とともに、丸断面以外の断面を有する繊維を用いる場合や、丸断面以外の異形断面を有する繊維のみからなる場合であって、異なる異形断面を有するものを2種以上用いる場合等を含む。これにより多くの微細な空間を形成し、表面張力により吸い上げた水分の拡散速度を向上させることができる。
また、カチオン可染ポリエステル繊維の単糸繊度は0.8〜1.8デシテックスであることが、吸汗性に優れるため好ましい。中でも、単糸繊度が1.0デシテックス以下であれば、異形断面を有する繊維を含まず、繊維断面が均一の繊維のみを用いた場合であっても、吸汗性に優れる。
さらに、本発明の繊維構造物においては、ポリウレタン系弾性繊維を3重量%〜10重量%の割合で用いる。これにより、適度な伸度と編み地ループ間の空隙を増すことができ、これにより身体の動きにスムースに追従し、より着用快適性を向上させるという効果を奏する。
本発明の繊維構造物は、以下の性能を有することが好ましい。
(1)吸湿発熱性能が2.0℃以上
(2)残留水分率が30%以下になる時間が40分以下
(3)保温率16.0%以上
ここで各性能の評価方法は以下のとおりである。
(1) 吸湿発熱性
密閉した容器の中に約10cm×10cm大きさの試料を取り付け、試料の温度が測定できるように表面温度計センサーを取り付け記録計で読み取る。試料温度測定開始後に、測定室内20℃下の室内雰囲気中からシリカゲル容器を通過させた乾燥空気(湿度10%RH以下)を送入して試料を乾燥させる。試料を30分以上乾燥させ試料温度が安定した時の表面温度Aに対して、その後イオン交換水を通した湿度約90%RHの空気を約30分間送入している間の試料表面温度最高到達温度Bを読み取り、その差B−Aを吸湿発熱性能(℃)とした。
(2) 残留水分率が30%以下になる時間(速乾性)
約10cm×10cmの大きさの試料を20℃×65%RH下の雰囲気中で試料を24時間放置後に質量G(g)を読み取り、同雰囲気中でこの試料に約0.3gの水を滴下させ、滴下直後の質量Go(g)を読み取り、滴下後の経過時間毎の質量Gx(g)を読み取る。滴下直後の質量に対して次式で求めた残留水分率(%)が30%になった時間(分)を求めた。
残留水分率(%)={(Gx−G)/(Go−G)}×100
(3) 保温率
(株)加藤鉄工所の精密迅速熱物性測定装置「サーモラボII型」(俗称KES F−7)を用い熱版温度40℃の熱版表面上に試料を接触する状態に置き、5分間ウォーミングアップを行い安定状態にする。安定状態確認後、測定を開始し、60秒間の消費電力Wを読み取る。別に熱版に試験片を取り付けない状態で熱版温度40℃で5分間ウオーミングを行い安定状態確認後、測定を開始し、60秒間の消費電力Woを読み取る。これらで求めた消費電力を{(Wo−W)/Wo}×100の計算式で保温率(%)を求めた。
本発明における繊維構造物の形態としては、織物、編物、不織布等布帛であればいかなる形態であってもよい。また、繊維構造物を構成する繊維どうしは、混繊、混紡、混織、交織、交編等したものが用いられる。
さらに本発明の繊維構造物においては、上記のポリアクリル系合成繊維、ビスコースレーヨン系繊維、カチオン可染ポリエステル繊維、ポリウレタン系弾性繊維の他に、カチオン可染ではない通常のポリエステル系繊維や、ポリエステルに第3成分を共重合したポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、アセテート繊維、綿、麻、パルプなどの天然セルロース繊維、ビスコースレーヨン以外の再生セルロース繊維、ウールなどのタンパク質繊維等も用いることができる。
本発明の繊維構造物はTシャツ、ブルゾン、スラックス、スカート等の上着、タイツ、スパッツ、キャミソール、パンツ等の下着等の衣料の他、身体に装着する衣料であれば特に限定されず、種々のものに好ましく用いられる。
実施例1
ビスコースに、脱脂粉乳の28重量%水溶液を添加して紡糸したビスコースレーヨンステープル1.4デシテックス、38mmを35重量と、テトラアルキルアジピン酸塩を0.4owf%付与したアクリルステープル0.7デシテックス、38mm65重量%とを、カードミックスで混綿して1/64s紡績糸を得た。
この紡績糸と、断面ミックス(丸断面繊維と星形断面繊維とを使用)カチオン可染ポリエステル84デシテックス−48フィラメントと、ポリウレタン系弾性繊維22デシテックスとを、釜径76.2cm、ゲージ数28本/2.54cm、ウエル数40、コース数62、組織天竺で交編して生機を得た。
得られた生機を連続リラックス/精練―乾燥(175℃、25秒)−セット−タッキング−染色(液流染色115℃)−乾燥(112℃)−セットの工程により染色加工し、生地重量比でポリアクリル38重量%、ビスコースレーヨン20重量%、断面ミックスカチオン可染ポリエステル34重量%、ポリウレタン8重量%、目付165g/mの生地を得た。
上記実施例1で得た生地の吸湿発熱性、保温性、速乾性、着心地性を評価した。
その結果を表1に示す。吸湿発熱性、保温性、速乾性、着心地性とも良好であり、衣料用途、特にインナーウエアとして具備すべき高い機能性を有するものが得られた。
各性能の評価方法は以下のとおりである。
(1) 吸湿発熱性
密閉した容器の中に約10cm×10cm大きさの試料を取り付け、試料の温度が測定できるように表面温度計センサーを取り付け記録計で読み取る。試料温度測定開始後に、測定室内20℃下の室内雰囲気中からシリカゲル容器を通過させた乾燥空気(湿度10%RH以下)を送入して試料を乾燥させる。試料を30分以上乾燥させ試料温度が安定した時の表面温度Aに対して、その後イオン交換水を通した湿度約90%RHの空気を約30分間送入している間の試料表面温度最高到達温度Bを読み取り、その差B−Aを吸湿発熱性能(℃)とした。
(2) 残留水分率が30%以下になる時間(速乾性)
約10cm×10cmの大きさの試料を20℃×65%RH下の雰囲気中で試料を24時間放置後に質量G(g)を読み取り、同雰囲気中でこの試料に約0.3gの水を滴下させ、滴下直後の質量Go(g)を読み取り、滴下後の経過時間毎の質量Gx(g)を読み取る。滴下直後の質量に対して次式で求めた残留水分率(%)が30%になった時間(分)を求めた。
残留水分率(%)={(Gx−G)/(Go−G)}×100
(3) 保温率
(株)加藤鉄工所の精密迅速熱物性測定装置「サーモラボII型」(俗称KES F−7)を用い熱版温度40℃の熱版表面上に試料を接触する状態に置き、5分間ウォーミングアップを行い安定状態にする。安定状態確認後、測定を開始し、60秒間の消費電力Wを読み取る。別に熱版に試験片を取り付けない状態で熱版温度40℃で5分間ウオーミングを行い安定状態確認後、測定を開始し、60秒間の消費電力Woを読み取る。これらで求めた消費電力を{(Wo−W)/Wo}×100の計算式で保温率(%)を求めた。
(4) 着心地性
身体の動きにスムースに追従し、圧迫感が少なく、逆にたるみ感もない特に優れた状態を優(◎)、良好な状態を良(○)、やや不良(△)、不良(×)とした。
実施例2
ビスコースに脱脂粉乳28重量%水溶液を添加して紡糸したビスコースレーヨンステープル1.4デシテックス、38mmを35重量%と、テトラアルキルアジピン酸塩を0.4owf%付与したアクリルステープル1.0デシテックス、38mmを65重量%とをカードミックスで混綿して1/64s紡績糸を得た。
この紡績糸と、星形断面カチオン可染ポリエステル84デシテックス−96フィラメントと、ポリウレタン系弾性繊維とを、釜径76.2cm、ゲージ数28本/2.54cm、ウエル数42本/2.54cm、コース数58本/2.54cm、天竺組織で交編し、生機を得た。
得られた生機を連続リラックス/精練―乾燥(175℃、25秒)−セット−タッキング−染色(液流染色115℃)−乾燥(112℃)−セットの工程により染色加工し、生地重量比でポリアクリル40重量%、ビスコースレーヨン21重量%、星形断面カチオン可染ポリエステル36重量%、プリウレタン系弾性繊維3重量%、目付145g/mの生地を得た。
得られた生地の吸湿発熱性、保温性、速乾性、着心地性を評価した。その結果を表1に示す。その結果、吸湿発熱性、保温性、速乾性、着心地性とも実施例1同様に高い機能性のものが得られた。速乾性については星形断面カチオン可染ポリエステルとして単糸繊度が1.0デシテックス以下のハイマルチ加工糸を使用することで、断面ミックス加工糸と同様の性能が得られることが確認された。
比較例1
実施例1において、紡績糸としてビスコースレーヨンステープルを用いずに、アクリルステープルのみを用いて紡績糸を得た以外は、実施例1と同様にして生地を得た。
得られた生地を用いて同様に評価した結果、表1に示すように、保温性はあるものの、吸湿発熱性、着用快適性に劣ることが確認できた。
比較例2
実施例1において、紡績糸として綿100%の紡績糸を用いた以外は、実施例1と同様にして生地を得た。
得られた生地を用いて同様に評価した結果、表1に示すように、速乾性、着用快適性に劣ることが確認できた。
これは、綿の比率に対し断面ミックスカチオン可染ポリエスエルの比率が適正でないために速乾性に影響している事、ポリウレタン系弾性繊維の混率が多すぎると、身体への締め付け増加による着用時の自由度を阻害している為と思われる。
Figure 2010216053

Claims (7)

  1. ポリアクリル系合成繊維を30重量%以上、47重量%以下、ビスコースレーヨン系繊維を20重量%以上、30重量%以下、カチオン可染ポリエステル繊維を30重量%以上、45重量%以下、ポリウレタン系弾性繊維を3重量%以上、10重量%以下含んでなる繊維構造物。
  2. 該繊維構造物の吸湿発熱性能が2℃以上である請求項1記載の繊維構造物。
  3. 該繊維構造物の残留水分率が30%以下になる時間が40分以下である請求項1または2記載の繊維構造物。
  4. 該繊維構造物の保温率が16%以上である請求項1〜3のいずれかに記載の繊維構造物。
  5. 該ポリアクリル系合成繊維を構成する単繊維の繊度が、0.6デシテックス以上、1デシテックス以下である請求項1〜3のいずれかに記載の繊維構造物。
  6. 該カチオン可染ポリエステル長繊維が、異形断面を有する繊維を含む請求項1〜4のいずれかに記載の繊維構造物。
  7. 請求項1〜6に記載の繊維構造物を用いた衣料。
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