JP2010215957A - 巻取り式蒸着装置及び巻取り式蒸着方法並びにバリアフィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】フィルム基材の帯電現象による問題を回避しながら、電子ビーム加熱による蒸発物質の蒸着を可能にし、巻取り走行されるフィルム基材に損傷のないバリア性薄膜を安定に成膜できるようにした巻取り式蒸着装置及び巻取り式蒸着方法並びにバリアフィルムを提供する。
【解決手段】電子ビーム19により加熱されて蒸発する蒸発物質を、巻取り走行されるフィルム基材12に蒸着してガスバリア性の薄膜を形成する巻取り蒸着装置において、表面にガスバリア性薄膜を蒸着させたフィルム基材12を、成膜ロール15から剥離直前に加熱する加熱手段と、成膜ロール15に正の電位を印加して、巻出し・巻取り室20内でフィルム基材12が成膜ロール15から剥離された後の、フィルム基材12と成膜ロール15との間にプラズマ27を発生させる電位印加手段とを備える。
【選択図】図2
【解決手段】電子ビーム19により加熱されて蒸発する蒸発物質を、巻取り走行されるフィルム基材12に蒸着してガスバリア性の薄膜を形成する巻取り蒸着装置において、表面にガスバリア性薄膜を蒸着させたフィルム基材12を、成膜ロール15から剥離直前に加熱する加熱手段と、成膜ロール15に正の電位を印加して、巻出し・巻取り室20内でフィルム基材12が成膜ロール15から剥離された後の、フィルム基材12と成膜ロール15との間にプラズマ27を発生させる電位印加手段とを備える。
【選択図】図2
Description
本発明は、電子ビームにより加熱されて蒸発する蒸発物質を、巻取り走行されるフィルム基材に蒸着してガスバリア性の薄膜を形成する巻取り蒸着装置及び巻取り式蒸着方法並びにバリアフィルムに関する。特に、樹脂フィルムと透明酸化膜の組み合わせを代表とする、誘電体からなるフィルム基材にガスバリア性の薄膜を蒸着して成膜する巻取り蒸着装置及び巻取り式蒸着方法並びにこれら装置及び方法により形成されるバリアフィルムに関する。
食品、日用品あるいは医薬品の包装分野では、内容物の変質を防止することが求められてきた。これら内容物の変質は、酸素や水蒸気などのガスが包装材料を透過して内容物と反応することに起因する。このため、包装材料には酸素や水蒸気などのガスを透過させない性質(ガスバリア性)を備えていることが要求される。この要求を満たす包装材には、温度、湿度などに影響されないアルミニウムなどの金属箔やアルミニウム蒸着フィルムが多用されてきた。
ところが、アルミニウムなどの金属箔やアルミニウム蒸着フィルムを用いた包装材料は、ガスバリア性に優れるが、包装材料を透視して内容物を確認することができない。さらに、使用後の廃棄の際は不燃物として処理しなければならず、また、包装後の内容物などの検査の際に金属探知器が使用できないなどの問題を有していた。同様に、包装用途ではなくとも酸素や水蒸気の浸入で耐久性が劣化するようなエレクトロニクス部材等にもガスバリア性が必要とされる。このガスバリア性と同時に可視光線の透過が求められるときは、金属箔やアルミニウム蒸着フィルムでは対応しきれない問題があった。
そこで、これらの問題を克服した包装材料として、最近では酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素などの透明な薄膜を樹脂フィルム基材上に蒸着した蒸着フィルムが上市されている。これらの蒸着フィルムは透明性及び酸素、水蒸気等のガス遮断性を有していることが知られ、金属箔などでは得ることが出来ない透明性、ガスバリア性の両方を有する包装材料として好適とされている。
また、蒸着用基材に長尺な樹脂フィルムを用いることにより、フィルム基材を連続的に巻き取ることが可能となり、ガスバリア性のある包装材料を大量生産することができる。
図1は、従来における巻取り式真空蒸着装置の構成を示す概略図である。この図1において、成膜用の真空チャンバー1内は隔壁2により巻出し・巻取り室1aと成膜室1bとに仕切られている。この巻出し・巻取り室1aと成膜室1bには、それぞれの室を真空に排気する真空ポンプ3a,3bが接続されている。また、真空チャンバー1内には、仕切材2に形成した開口を通して巻出し・巻取り室1aと成膜室1bの両方に周面が臨むように配置された成膜ロール4が回転可能に設けられている。巻出し・巻取り室1a内には、ロール状に巻回された長尺な樹脂フィルム基材5を成膜ロール4に向けて巻出す巻出しロール6と、成膜室1bでガスバリア性薄膜が蒸着された樹脂フィルム基材5を巻き取る巻取りロール7がそれぞれ回転可能に配設されている。また、成膜室1b内には、蒸発材料8Aを収容した耐熱性のるつぼ8、及び、るつぼ8内の蒸発材料8Aに高エネルギーの電子ビーム9aを照射することで加熱蒸発させる電子銃9が配設されている。
図1において、巻出しロール6から巻出されたフィルム基材5は成膜ロール4へ送られる。成膜室1b内では、成膜ロール4の回転につれ成膜室1b内に臨むフィルム基材5の
表面に、電子銃9からの電子ビーム9aにより加熱されてるつぼ8から蒸発する蒸発物質が蒸着され成膜される。そして、成膜された後のフィルム基材5は成膜ロール4の周面から離間され巻取りロール7に順次巻取られる。この時、成膜ロール4は冷却され、蒸発過程で生じた熱によるフィルム基材5の浮きを少なくしている。さらに、この過程で蒸発材料が蒸発中に成膜室内に酸素などの反応性ガスを入れることで比較的容易に酸化物薄膜などを成膜することができ、一般に反応性蒸着と呼ばれている。
表面に、電子銃9からの電子ビーム9aにより加熱されてるつぼ8から蒸発する蒸発物質が蒸着され成膜される。そして、成膜された後のフィルム基材5は成膜ロール4の周面から離間され巻取りロール7に順次巻取られる。この時、成膜ロール4は冷却され、蒸発過程で生じた熱によるフィルム基材5の浮きを少なくしている。さらに、この過程で蒸発材料が蒸発中に成膜室内に酸素などの反応性ガスを入れることで比較的容易に酸化物薄膜などを成膜することができ、一般に反応性蒸着と呼ばれている。
ところで、フィルム基材5の巻出し、成膜及び巻取り動作が一連に行われると、巻取りロール7と対応する成膜ロール4のフィルム基材引き出し側箇所において、フィルム基材5に成膜ロール4から引き剥がそうとする張力が働く。そして、この張力とは逆の向きに静電気力で、フィルム基材5が成膜ロール4に密着しようとする力が働く。この場合、張力>静電気力であるなら成膜ロール4からフィルム基材5が剥がれ、フィルム基材5は巻取りロール7に巻取られていく。このときの成膜ロール4とフィルム基材5間の界面には、静電気力に応じた放電が生じフィルム基材5に衝撃を与える。その衝撃により、フィルム基材5または薄膜に損傷が起こり、張力が不安定となるなどの不都合が生じる。
また、張力<静電気力の場合は、フィルム基材5が成膜ロール4の周面から剥がれることがないため、フィルム基材5は成膜ロール4の周面に張り付いたまま成膜ロール4と一体に成膜ロール4のフィルム基材引き出し側(巻取りロール7と対向する側)からフィルム基材の導入側へと巻き込まれ、その結果、フィルム基材の巻取りが不可能となる。これに対処するために、成膜ロール4での剥離箇所の静電気力を減らす方法が多数考えられてきた。この静電気力は電子ビームによって蒸発材料8Aの上部より散乱電子や反跳電子などがフィルム基材5まで到達したものと考えられている。これは、電子ビームを蒸発材料に照射することで急激に静電気力が増大している点から予想できる。さらに生成する薄膜も金属酸化物であると誘電体になるため、散乱電子や反跳電子などが蓄積してしまう。
真空蒸着法の中で、電子ビーム加熱方式は成膜速度が照射面積や電子ビームの電流値として制御し易く、蒸発材料への昇温降温が短時間で行える点で有効であるが、その反面、電子ビームを蒸発材料に照射すると反射や散乱などの現象が起こる。樹脂フィルム基材を巻取りながら電子ビームによる加熱にて蒸発する蒸発物質をフィルム基材に蒸着すると、特に前記現象により帯電現象が起こり数々の悪影響を引き起こす。例えば、樹脂フィルム基材が成膜ロールの周面から剥離される時に両者間に放電が起こり、樹脂フィルム基材の表面に放電痕と呼ばれる絶縁破壊の痕が発生し、樹脂フィルム基材と蒸着膜を劣化させてしまう。具体的には、ピンホールやバリア特性の低下などが挙げられる。
さらに、放電すると静電気力が開放され、張力のバランスが崩れ、巻取りの挙動が不安定となる。帯電が極度に増えるとフィルム基材が成膜ロールから剥がれなくなり、成膜ロールに何重にも巻き込まれてしまう。樹脂の種類によってはフィルムが切れてしまい、時間的影響が大きく生産性を低下させる。
そこで、特許文献1には、巻取り手段により真空の成膜室内を移動する誘電体の長尺基板に、電子ビーム蒸発源から蒸発物質を蒸着する真空蒸着方法において、電子ビーム蒸発源の近傍に設置した電極に電位を印加してこれに放電を発生させ、その放電領域を通過する蒸発物質を正イオン化して蒸着することにより、長尺基板上で負に帯電している蒸発物質から発生した二次電子を電気的に中和する技術が開示されている。ただし、この方法では、イオン発生のための装置が必要なことと、電極を電子ビーム蒸発源の近傍に設置するために、電極への蒸発物質の付着・堆積が避けられず、成膜条件および成膜時間の進行によってイオン中和の最適条件が変わってしまう問題がある。
本発明は、上記のような従来の問題を解決するためになされたもので、フィルム基材の帯電現象による上記問題を回避しながら、電子ビーム加熱による蒸発物質の蒸着を可能にし、併せて、巻取り走行されるフィルム基材に損傷のないバリア性薄膜を安定に成膜できるようにした巻取り式蒸着装置及び巻取り式蒸着方法並びにバリアフィルムを提供することを課題としている。
本発明の請求項1に係る発明は、巻出し・巻取り室と成膜室を有する真空チャンバーと、前記巻出し・巻取り室内を排気して第1の圧力に調節する第1の圧力調節手段と、前記成膜室内を排気して前記巻出し・巻取り室の圧力と異なる第2の圧力に調節する第2の圧力調節手段と、前記巻出し・巻取り室内に配設され、ロール状に巻回された長尺なフィルム基材を巻出す巻出しロールと、円筒面状の周面を有し、前記周面が前記巻出し・巻取り室と前記成膜室の両方に臨むようにして前記真空チャンバー内に回転可能に設けられ、前記巻出しロールから巻出される前記フィルム基材を前記周面に巻き掛けて前記成膜室へ連続的に案内する金属製の成膜ロールと、前記巻出し・巻取り室内に配設され、前記成膜室でガスバリア性薄膜が蒸着された後の前記フィルム基材を巻き取る巻取りロールと、前記成膜室内に配置され蒸発材料を収容する容器と、前記成膜室に設けられ前記蒸発材料に電子ビームを照射して加熱蒸発させることにより前記成膜ロールに巻き掛けられ前記成膜室に位置する前記フィルム基材の表面にガスバリア性薄膜を蒸着させる電子銃と、表面にガスバリア性薄膜を蒸着させた該フィルム基材を、前記成膜ロールから剥離直前に加熱する加熱手段と、前記成膜ロールに正の電位を印加して、前記巻出し・巻取り室内で前記フィルム基材が前記成膜ロールから剥離された後の該フィルム基材と前記成膜ロールとの間にプラズマを発生させる電位印加手段と、を備えることを特徴とする巻取り式蒸着装置である。
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記巻出し・巻取り室の第1の圧力と前記成膜室の第2の圧力との間の圧力比が3.0×10−2以下であることを特徴とする請求項1に記載する巻取り式蒸着装置である。
また、本発明の請求項3に係る発明は、前記真空チャンバー内で前記巻出し・巻取り室と前記成膜室との間に中間室が設けられ、前記中間室内を排気して第3の圧力に調節する第3の圧力調節手段が設けられ、前記成膜ロールに巻き掛けられた前記フィルム基材の一部が前記中間室に位置していることを特徴とする請求項1に記載する巻取り式蒸着装置である。
次に、本発明の請求項4に係る発明は、請求項1乃至3の何れか1項に記載する巻取り式蒸着装置を用いて形成されたことを特徴とするバリアフィルムである。
また、本発明の請求項5に係る発明は、蒸発材料が金属であり、成膜室内に酸素ガスを導入することでフィルム基材に金属酸化物からなるガスバリア性薄膜が成膜されたことを特徴とする請求項4に記載するバリアフィルムである。
また、本発明の請求項6に係る発明は、前記金属酸化物が酸化アルミニウムであることを特徴とする請求項5に記載するバリアフィルムである。
また、本発明の請求項7に係る発明は、前記酸化化合物が酸化珪素であることを特徴とする請求項5に記載するバリアフィルムである。
次に、本発明の請求項8に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載する巻き取り式蒸着装置を用いて、長尺なフィルム基材をロール状に巻回してなる巻出しロールと、成膜後のフィルム基材を巻き取る巻取りロールを巻出し・巻取り室に配設し、前期巻出し・巻取り室と成膜室を排気により一定の圧力に調節し、前記巻出しロールからフィルム基材を巻出し、巻出された前記フィルム基材を金属製の成膜ロールの周面に巻き掛けながら前記成膜室へ連続的に案内し、前記成膜ロールに巻き掛けられて前記成膜室に臨む前記フィルム基材の表面に電子銃からの電子ビームにより加熱され蒸発された蒸発物質を蒸着してガスバリア性薄膜を形成し、表面にガスバリア性薄膜を蒸着させた該フィルム基材を、前記成膜ロールから剥離直前に加熱手段により加熱し、前記電位印加手段から前記成膜ロールに正の電位を印加することにより、前記巻出し・巻取り室内で前記フィルム基材が前記成膜ロールから剥離された後の該フィルム基材と前記成膜ロールとの間にプラズマを発生させながら、成膜後のフィルム基材を巻取りロールに巻き取ることを特徴とする巻取り式蒸着方法である。
また、本発明の請求項9に係る発明は、前記巻出し・巻取り室の第1の圧力と前記成膜室の第2の圧力との間の圧力比が3.0×10−2以下であることを特徴とする請求項8に記載する巻取り式蒸着方法である。
また、本発明の請求項10に係る発明は、前記巻出し・巻取り室と前記成膜室との間に中間室が設けられ、前記中間室内を排気して第3の圧力に調節する第3の圧力調節手段が設けられ、前記成膜ロールに巻き掛けられた前記フィルム基材の巻き掛け範囲のうち、前記成膜室に位置する巻き掛け範囲の領域を除く他の巻き掛け範囲の領域が前記中間室に曝されていることを特徴とする請求項8に記載する巻取り式蒸着方法である。
次に、本発明の請求項11に係る発明は、請求項8乃至10の何れか1項に記載する巻取り式蒸着方法を用いて形成されたことを特徴とするバリアフィルムである。
また、本発明の請求項12に係る発明は、蒸発材料が金属であり、前記成膜室内に酸素ガスを導入することで前記フィルム基材に金属酸化物からなるガスバリア性薄膜を成膜することを特徴とする請求項11記載のバリアフィルムである。
また、本発明の請求項13に係る発明は、前記金属酸化物が酸化アルミニウムであることを特徴とする請求項12記載のバリアフィルムである。
また、本発明の請求項14に係る発明は、前記酸化化合物が酸化珪素であることを特徴とする請求項12記載のバリアフィルムである。
本発明の巻取り式蒸着装置及び方法においては、成膜ロールに電位印加手段から正の電位を印加して、巻出し・巻取り室内でフィルム基材が成膜ロールから剥離された後の当該フィルム基材と成膜ロールとの間にプラズマを発生させる。この場合、フィルム基材は、電子ビーム加熱による反射電子や散乱電子によって帯電(カソード(陰極))している。そこで、成膜ロールをアノード(陽極)となるように成膜ロールに強制的にプラス電位を与えることで、成膜ロールからフィルム基材が剥離した後の成膜ロールとフィルム基材との間の領域に安定なグロープラズマを発生させることができる。また、表面にガスバリア性薄膜を蒸着させた当該フィルム基材を、成膜ロールから剥離直前に加熱手段により加熱
し、蒸着時に冷却されたフィルムの温度を高くすることで、フィルム(誘電体)内の電子移動度を高めて、帯電した静電気を放電し易くし、成膜ロールからの剥離をより容易に行うことが出来る。これにより、従来のような剥離放電によるガスバリア性薄膜への放電痕や従来のような帯電による成膜ロールへのフィルム基材の巻き込みを防止することができ、バリアフィルムの生産の安定化およびバリア性を向上できる。
し、蒸着時に冷却されたフィルムの温度を高くすることで、フィルム(誘電体)内の電子移動度を高めて、帯電した静電気を放電し易くし、成膜ロールからの剥離をより容易に行うことが出来る。これにより、従来のような剥離放電によるガスバリア性薄膜への放電痕や従来のような帯電による成膜ロールへのフィルム基材の巻き込みを防止することができ、バリアフィルムの生産の安定化およびバリア性を向上できる。
また、本発明においては、巻出し・巻取室の圧力と成膜室の圧力との圧力比が3.0×10−2以下であることで、成膜室でのプラズマ発生を防止することができる。これにより、巻取室内のみにグロープラズマが生成され、成膜ロールとフィルム基材との間の剥離放電を効果的に緩和することができる。
また、本発明においては、中間室を設けることで、巻出し・巻取室にてガスを導入しても成膜室の圧力上昇を抑制することができる。
また、本発明のバリアフィルムにおいては、酸化アルミニウムの蒸発速度が遅いが、アルミニウム金属材料と酸素ガスを用いて反応性蒸着を用いた方が成膜速度を速くすることができる。特に、酸化アルミニウム膜は透明性に優れており、食品用包装材料として用いたときに、容易に内容物の確認を行うことができ、好ましい。
また、本発明のバリアフィルムにおいては、酸化珪素や酸化マグネシウムの蒸発速度が速いため、反応性蒸着を用いるよりも通常の加熱蒸着を用いた方が成膜速度を速くすることができる。特に、酸化珪素膜はバリア性に優れており、さらにはバリア性能の維持、つまり、耐久性に優れ、好ましい。
本発明の巻取り式蒸着装置を一実施形態に基づいて、図2を用いて以下に詳細に説明する。
図2は、本発明の巻取り式蒸着装置の一実施形態の構成を示す概略図である。巻取り式蒸着装置10は、成膜用の真空チャンバー11、巻出しロール13、巻取りロール14、金属製の成膜ロール15、電子銃16、蒸発材料18を収容するるつぼ17、巻出し・巻取り室20、成膜室21、中間室22、第1〜第3の真空ポンプ23〜25、プラズマ発生用直流電源26等を含んで構成される。
巻出し・巻取り室20、成膜室21及び中間室22は、真空チャンバー11内を第1及び第2の隔壁28,29により上下方向に3つに仕切ることで構成される。巻出し・巻取り室20には、巻出し・巻取り室20内を排気して第1の圧力に調節する第1の真空ポンプ23(特許請求の範囲1に記載の第1の圧力調節手段に相当する)が接続されている。また、成膜室21には、成膜室21内を排気して第2の圧力に調節する第2の真空ポンプ24(特許請求の範囲1に記載の第2の圧力調節手段に相当する)が接続されている。さらに、中間室22には、中間室22内を排気して第3の圧力に調節する第3の真空ポンプ25(特許請求の範囲3に記載の第3の圧力調節手段に相当する)が接続されている。
真空チャンバー11内には、第2の隔壁29に形成された開口及び第1の隔壁28に形
成した開口を通して、巻出し・巻取り室20から中間室22を貫通して成膜室21に臨む円筒状の周面を有する成膜ロール15が第1及び第2の隔壁28,29と平行に配置されている。この成膜ロール15は支持軸151を介して真空チャンバー11に回転可能に支持されている。
成した開口を通して、巻出し・巻取り室20から中間室22を貫通して成膜室21に臨む円筒状の周面を有する成膜ロール15が第1及び第2の隔壁28,29と平行に配置されている。この成膜ロール15は支持軸151を介して真空チャンバー11に回転可能に支持されている。
支持軸151は、その両端に樹脂製の電気絶縁材を介してフランジ結合した軸部(図示せず)を有し、この両端の軸部は、真空チャンバー11に設けた軸受部(図示せず)に回転可能に軸承されている。これにより、支持軸151を含めた成膜ロール15を接置電位から電気的に絶縁するようになっている。これは、フィルム基材引出し側である成膜ロール15の箇所において、成膜ロール15の周面から剥離したフィルム基材12と成膜ロール15との間でのプラズマの発生を容易にするためである。樹脂製の電気絶縁材に用いられる材質は、特に指定されないが、電気絶縁性、耐熱性、耐衝撃性、剛性、耐疲労性、耐溶剤性などに優れたポリアセタール樹脂を用いることが好ましい。
巻出しロール13は、巻出し・巻取り室20内に成膜ロール15へのフィルム基材12の導入側に対向して成膜ロール15と平行に、かつ回転可能に配設され、長尺なフィルム基材12がロール状に巻回されている。また、巻取りロール14は、巻出し・巻取り室20内に成膜ロール15へのフィルム基材12の引き出し側に対向して成膜ロール15と平行に、かつ回転可能に配設され、成膜室21でガスバリア性薄膜が蒸着された後のフィルム基材12を巻き取るようになっている。
巻出しロール13から巻出されるフィルム基材12はガイド用のフリーローラ13aを介して成膜ロール15の導入部位に向け連続的に案内され、中間室22内及び成膜室21内に臨むようにして成膜ロール15の周面に少なくとも180度の角度範囲に亘り巻き掛けられている。この場合、成膜ロール15に巻き掛けられたフィルム基材12の巻き掛け範囲のうち、成膜室21内に位置する巻き掛け範囲の領域を除く他の巻き掛け範囲の領域が中間室22に臨むようになっている。
また、成膜室21でガスバリア性薄膜が蒸着された後のフィルム基材12は、巻き取り室に設けられた加熱手段としてのヒーター30により、成膜ロール15から剥離直前に加熱され、ガイド用のフリーローラ14aを介して巻取りロール14に巻き取られるようになっている。ここで、フィルムの加熱手段としては、上記した非接触のヒーター以外にも接触タイプのロールヒーター等が使用可能であり、基材フィルムの温度が80℃を超えない範囲で加熱可能なものを用いる。
るつぼ17は、成膜室21に臨むフィルム基材12の巻き掛け範囲の領域A1に対向して成膜室21内に配置されている。また、電子銃16は、これから発生する電子ビーム19がるつぼ17内の蒸発材料18に有効に照射し得るようにして成膜室21に配設される。
プラズマ発生用直流電源26(特許請求の範囲1に記載の電位印加手段に相当する)は、成膜ロール15に正の電位を印加して、巻出し・巻取り室20内で、成膜ロール15の周面から剥離した後のフィルム基材12と成膜ロール15との間にプラズマを発生させるためのものである。この直流電源26の正極は図示省略の摺接子を介して支持軸151に接続され、直流電源26の負極は接置電位に接続されている。
次に、本発明の巻取り式蒸着方法の一実施形態における動作について説明する。
巻出しロール13からフィルム基材12を巻出し、フリーローラ13aを介して成膜ロール15の導入部位に向け連続的に案内する。巻出されたフィルム基材12は成膜ロール15の回転に伴い成膜ロール15の周面に図2に示す状態に巻き掛けられて成膜室21へ連続的に案内される。ここで、電子銃16から発生する電子ビーム19をるつぼ17内の蒸発材料18に照射することにより蒸発材料18を加熱し蒸発させる。るつぼ17から蒸発する蒸発物質は、成膜ロール15の矢印方向への回転に伴い成膜ロール15に巻き掛けられながら成膜室21に臨むフィルム基材12の表面に蒸着され、ガスバリア性薄膜が順次形成される。そして、ガスバリア性薄膜が形成された後のフィルム基材12は、成膜ロール15から剥離直前にヒーター30により加熱され、フリーローラ14aを介して巻取りロール14に順次巻き取られる。
一方、直流電源26から成膜ロール15に正の電位が印加されると、巻取りロール14と対向する成膜ロール15のフィルム基材引出し側である巻出し・巻取り室20内で、成膜ロール15の周面から剥離された後のフィルム基材12と成膜ロール15との間にプラズマ27が発生する。これにより、前述したフィルム基材の加熱効果と合わせて、剥離放電によるガスバリア性薄膜への放電痕や帯電による成膜ロールへのフィルム基材の巻き込みを防止する。
樹脂製フィルム基材12は、電子ビーム加熱による反射電子や散乱電子によって帯電している。この帯電は電子ビームの加速電圧によるエネルギーにて、樹脂製フィルム基材12の内部まで打ち込まれてしまう。また、成膜ロール15に巻き掛けられた樹脂製フィルム基材12の内部に電子は滞留し、剥離時に放電することで開放される。逆に、開放されずに静電気力によって樹脂製フィルム基材12が成膜ロール15に密着し続けていると樹脂製フィルム基材12は成膜ロール15に巻き込まれる。この問題を回避するために、成膜ロール15に正の電位を印加して成膜ロール15と樹脂フィルム基材12との間の剥離放電する部分にプラズマを発生させる。これにより、帯電した樹脂フィルム基材は電子を多く蓄積し、対極があれば、放電が始まると考えられる。この場合、樹脂フィルム基材自体をカソード(陰極)、成膜ロール15をアノード(陽極)となるように成膜ロール15に強制的に正の電位を与えて、安定なグロープラズマを発生させる。さらに、剥離直前のフィルム基材の温度を上げてやることで、フィルムの電子移動度を高くして放電し易くする。これにより、樹脂フィルム基材と成膜ロールの間で剥離放電よりも低い電圧で帯電が開放されることなる。また、成膜ロール15と樹脂フィルム基材12が接触している部分はプラズマが発生せずに、フィルム基材が剥離してからプラズマが発生する。これは、剥離放電の絶縁破壊を防止するためには好都合である。
巻取り室20内にガスを導入することで、巻取り室20内の圧力を上げ、成膜ロール15でのプラズマを発生し易くすることができる。また、巻取り室20と成膜室21の間に中間室23を設けることで、巻取り室20にガスを導入しても成膜室21の圧力上昇を抑制することができる。一般的に真空蒸着圧力は低いほど好ましいが、プラズマの発生しやすい圧力は1[Pa]〜10−2[Pa]程度であるため、成膜室21と巻取り室20の圧力比は2.0×10−2[Pa]以上あれば巻取り室20のガスにより、成膜室21でのプラズマが発生することを防ぐことができる。これにより、巻取り室20内のみグロープラズマ27を生成し、成膜ロール15と樹脂フィルム基材12との間の剥離放電を効果的に緩和することができる。
成膜ロール15は通常は接地電位となるが、本実施の形態では、成膜ロール15の支持軸151の両端に樹脂製の電気絶縁材を介してフランジ結合した軸部(図示せず)を設け、この両端の軸部を真空チャンバー11に設けた軸受部(図示せず)に回転可能に軸承することにより、成膜ロール15を接置電位から電気的に浮いた状態にすることができる。
また、成膜ロール15に正の電位を印加するために用いる直流電源26は、グロープラズマ27を維持できる電圧・電流の容量があればよく、特に限定がなく公知の直流電源を
使用することができる。また、安定なグロープラズマを発生するためには300V、10A程度の電源容量があれば充分である。しかし、時には異常グロー放電からアーク放電に移行する場合もあるが、その際に電源が自動的にグロー放電に復帰できるようにすることが好ましい。
使用することができる。また、安定なグロープラズマを発生するためには300V、10A程度の電源容量があれば充分である。しかし、時には異常グロー放電からアーク放電に移行する場合もあるが、その際に電源が自動的にグロー放電に復帰できるようにすることが好ましい。
樹脂製のフィルム基材12は、特に限定されるものではなく公知のものを使用することができる。例えばポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル系(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド系(ナイロン−6、ナイロン−66等)、ポリスチレン、エチレンビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネイト、ポリエーテルスルホン、アクリル、セルロース系(トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース等)などが挙げられるが特に限定されない。用途や要求物性により適宜選定をすることが望ましく、限定をする例ではないが、医療用品、薬品、食品等の包装には、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ナイロンなどがコスト的に用いやすく、電子部材、光学部材等の極端に水分を嫌う内容物を保護する包装には、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド類などの高いガスバリア性を有する基材を用いることが望ましい。また、フィルム基材の厚みは限定するものではないが、用途に応じて、6μmから200μm程度が使用しやすい。
フィルム基材に成膜される一般的な酸化薄膜はアモルファス構造であり、酸化度を上げると透明性が増加する。しかしながら、透明性を上げるとガスバリア性が低下してしまう。酸化度を上げる方法は、酸素ガスを導入することなどが考えられるが、バリア性は透明になれば悪くなり、光吸収がある膜のほうがバリア性は高くなる傾向がある。
また、バリア性の酸化珪素膜や酸化マグネシウム膜を成膜する際に使用される蒸発材料には一酸化珪素や酸化マグネシウムを使用し、酸化アルミニウム膜はアルミニウムを蒸発材料として酸素ガスによる反応性蒸着にて成膜をすることが多い。蒸発速度が高い一酸化珪素や酸化マグネシウム材料に比べ、酸化アルミニウムは蒸発速度が低いため、アルミニウム金属材料からの反応性蒸着法の方が成膜速度を速くすることができるからである。
以下に、本発明の具体的な実施例について説明する。
<実施例1>
フィルム基材に厚さが25μmのPET(ポリエチレンテレフタレート、東レ社製T60)フィルムを用い、電子銃の加速電圧を40kV、ビーム電流を0.25Aとして酸化珪素材料(SiO、キヤノンオプトロン社製)を電子ビームにより加熱した。プラズマ発生用直流電源(MDX−10K,Advanced Energy社)を用いて、その負極を接地電位に、正極を成膜ロールに接続することで、成膜ロールに正電位を印加する。巻取り室にはArガスを150sccm導入して、巻取り室の圧力を0.80Pa、成膜室の圧力を1.1×10−2Pa、中間室の圧力を3.0×10−3Paとした。この時のプラズマ発生用直流電源の電圧を200Vとし、電子銃によって加熱・蒸着したPETフィルムの成膜ロールの引き出し側にグロープラズマを生成した。この場合、プラズマ発生用直流電源から供給される電流は0.15Aだった。酸化珪素薄膜の膜厚が40nmとなるように巻取速度を調整して、電子ビーム加熱蒸着を行った。なお、蒸着後のフィルム基材は成膜ロールから剥離直前に表面温度で50℃となるよう加熱した。
フィルム基材に厚さが25μmのPET(ポリエチレンテレフタレート、東レ社製T60)フィルムを用い、電子銃の加速電圧を40kV、ビーム電流を0.25Aとして酸化珪素材料(SiO、キヤノンオプトロン社製)を電子ビームにより加熱した。プラズマ発生用直流電源(MDX−10K,Advanced Energy社)を用いて、その負極を接地電位に、正極を成膜ロールに接続することで、成膜ロールに正電位を印加する。巻取り室にはArガスを150sccm導入して、巻取り室の圧力を0.80Pa、成膜室の圧力を1.1×10−2Pa、中間室の圧力を3.0×10−3Paとした。この時のプラズマ発生用直流電源の電圧を200Vとし、電子銃によって加熱・蒸着したPETフィルムの成膜ロールの引き出し側にグロープラズマを生成した。この場合、プラズマ発生用直流電源から供給される電流は0.15Aだった。酸化珪素薄膜の膜厚が40nmとなるように巻取速度を調整して、電子ビーム加熱蒸着を行った。なお、蒸着後のフィルム基材は成膜ロールから剥離直前に表面温度で50℃となるよう加熱した。
<実施例2>
実施例1と同様なフィルム基材と電子ビーム加熱条件でアルミニウム(純度99.9%)を加熱し、酸素ガスを480sccm(10−6m3/min.)導入して、反応性蒸着を行った。この場合、実施例1と同様に成膜ロールに酸化アルミニウム膜が30nmとな
るように巻取速度を調整し、実施例1と同様に蒸着後のフィルム基材が成膜ロールから剥離直前に表面温度で50℃となるようフィルム基材加熱を行った。プラズマ発生用直流電源は200V,0.15Aで成膜ロールの引き出し側にプラズマを発生させた。巻取り室にはArガス150sccm(10−6m3/min.)を導入し、巻取り室の圧力を0.80Pa、成膜室の圧力を2.3×10−2Pa、中間室の圧力を4.3×10−3Paとして電子ビーム加熱蒸着を行った。
実施例1と同様なフィルム基材と電子ビーム加熱条件でアルミニウム(純度99.9%)を加熱し、酸素ガスを480sccm(10−6m3/min.)導入して、反応性蒸着を行った。この場合、実施例1と同様に成膜ロールに酸化アルミニウム膜が30nmとな
るように巻取速度を調整し、実施例1と同様に蒸着後のフィルム基材が成膜ロールから剥離直前に表面温度で50℃となるようフィルム基材加熱を行った。プラズマ発生用直流電源は200V,0.15Aで成膜ロールの引き出し側にプラズマを発生させた。巻取り室にはArガス150sccm(10−6m3/min.)を導入し、巻取り室の圧力を0.80Pa、成膜室の圧力を2.3×10−2Pa、中間室の圧力を4.3×10−3Paとして電子ビーム加熱蒸着を行った。
<実施例3>
実施例1と同様なフィルム基材と酸化珪素材料、電子ビーム加熱条件、プラズマ条件、ガス導入条件、圧力条件で酸化珪素膜が80nmとなるように巻取速度を調整して、実施例1と同様に蒸着後のフィルム基材が成膜ロールから剥離直前に表面温度で50℃となるよう加熱し、電子ビーム加熱蒸着を行った。
実施例1と同様なフィルム基材と酸化珪素材料、電子ビーム加熱条件、プラズマ条件、ガス導入条件、圧力条件で酸化珪素膜が80nmとなるように巻取速度を調整して、実施例1と同様に蒸着後のフィルム基材が成膜ロールから剥離直前に表面温度で50℃となるよう加熱し、電子ビーム加熱蒸着を行った。
<実施例4>
実施例1と同様なフィルム基材と酸化珪素材料、電子ビーム加熱条件、プラズマ条件、巻取り室のガス導入条件を同じにし、中間室にArガスを導入し、圧力条件変化させた。中間室へのArガス流量を30sccm(10−6m3/min.)を導入し中間室の圧力を8.2×10−2Paとし、巻取り室の圧力を0.80Pa、成膜室の圧力を2.4×10−2Paとした。この時、酸化珪素膜が40nmとなるように巻取速度を調整して、実施例1と同様に蒸着後のフィルム基材が成膜ロールから剥離直前に表面温度で50℃となるよう加熱し、電子ビーム加熱蒸着を行った。
実施例1と同様なフィルム基材と酸化珪素材料、電子ビーム加熱条件、プラズマ条件、巻取り室のガス導入条件を同じにし、中間室にArガスを導入し、圧力条件変化させた。中間室へのArガス流量を30sccm(10−6m3/min.)を導入し中間室の圧力を8.2×10−2Paとし、巻取り室の圧力を0.80Pa、成膜室の圧力を2.4×10−2Paとした。この時、酸化珪素膜が40nmとなるように巻取速度を調整して、実施例1と同様に蒸着後のフィルム基材が成膜ロールから剥離直前に表面温度で50℃となるよう加熱し、電子ビーム加熱蒸着を行った。
<実施例5>
中間室22と成膜室21との間の隔壁28を取り外し、成膜室と巻取室との間の隔壁1枚で仕切られている形にし、実施例1と同様なフィルム基材と酸化珪素材料、加熱条件、プラズマ条件、ガス導入条件、フィルム基材加熱条件で、酸化珪素膜厚が40nmとなるように巻取速度を調整して、電子ビーム加熱蒸着を行った。この時の巻取り室の圧力を0.80Pa、成膜室の圧力を1.2×10−1Paとした。
中間室22と成膜室21との間の隔壁28を取り外し、成膜室と巻取室との間の隔壁1枚で仕切られている形にし、実施例1と同様なフィルム基材と酸化珪素材料、加熱条件、プラズマ条件、ガス導入条件、フィルム基材加熱条件で、酸化珪素膜厚が40nmとなるように巻取速度を調整して、電子ビーム加熱蒸着を行った。この時の巻取り室の圧力を0.80Pa、成膜室の圧力を1.2×10−1Paとした。
以下に、本発明の比較例について説明する。
<比較例1>
直流電源の電圧を0Vとして、プラズマを発生しないこと、フィルム基材を加熱しないこと以外は実施例1と同様なフィルム基材と酸化珪素材料、電子ビーム加熱条件、ガス導入条件、圧力条件で酸化珪素膜が40nmとなるように巻取速度を調整して、電子ビーム加熱蒸着を行った。
直流電源の電圧を0Vとして、プラズマを発生しないこと、フィルム基材を加熱しないこと以外は実施例1と同様なフィルム基材と酸化珪素材料、電子ビーム加熱条件、ガス導入条件、圧力条件で酸化珪素膜が40nmとなるように巻取速度を調整して、電子ビーム加熱蒸着を行った。
<比較例2>
アルゴンガスを導入せずに巻取り室の圧力を4.2×10−3Pa、成膜室の圧力を3.0×10−3Pa、中間室の圧力を1.0×10−3Paとし、フィルム基材を加熱しないこと以外は実施例1と同様なフィルム基材と酸化珪素材料、電子ビーム加熱条件、ガス導入条件、圧力条件で酸化珪素膜が40nmとなるようにした。直流電源は電圧200Vで0Aとなり、成膜ロールにはプラズマが発生しない状態で電子ビーム加熱蒸着を行った。
アルゴンガスを導入せずに巻取り室の圧力を4.2×10−3Pa、成膜室の圧力を3.0×10−3Pa、中間室の圧力を1.0×10−3Paとし、フィルム基材を加熱しないこと以外は実施例1と同様なフィルム基材と酸化珪素材料、電子ビーム加熱条件、ガス導入条件、圧力条件で酸化珪素膜が40nmとなるようにした。直流電源は電圧200Vで0Aとなり、成膜ロールにはプラズマが発生しない状態で電子ビーム加熱蒸着を行った。
<比較例3>
直流電源の電圧を0Vとし、プラズマを発生しないことと、フィルム基材を加熱しないこと以外は実施例2と同様なフィルム基材と酸化珪素材料、電子ビーム加熱条件、ガス導入条件、圧力条件で酸化アルミニウム膜が40nmとなるように巻取速度を調整して、電子ビーム加熱蒸着を行った。
直流電源の電圧を0Vとし、プラズマを発生しないことと、フィルム基材を加熱しないこと以外は実施例2と同様なフィルム基材と酸化珪素材料、電子ビーム加熱条件、ガス導入条件、圧力条件で酸化アルミニウム膜が40nmとなるように巻取速度を調整して、電子ビーム加熱蒸着を行った。
<比較例4>
アルゴンガスを導入せずに巻取り室の圧力を6.4×10−3Pa、成膜室の圧力を5.8×10−3Pa、中間室の圧力を1.5×10−3Paとし、フィルム基材を加熱しないこと以外は実施例1と同様なフィルム基材と酸化珪素材料、電子ビーム加熱条件、ガス導入条件、圧力条件で酸化アルミニウム膜が40nmとなるようにした。直流電源は電圧200Vだが電流は0Aとなり、成膜ロールにはプラズマが発生しない状態で電子ビーム加熱蒸着を行った。
アルゴンガスを導入せずに巻取り室の圧力を6.4×10−3Pa、成膜室の圧力を5.8×10−3Pa、中間室の圧力を1.5×10−3Paとし、フィルム基材を加熱しないこと以外は実施例1と同様なフィルム基材と酸化珪素材料、電子ビーム加熱条件、ガス導入条件、圧力条件で酸化アルミニウム膜が40nmとなるようにした。直流電源は電圧200Vだが電流は0Aとなり、成膜ロールにはプラズマが発生しない状態で電子ビーム加熱蒸着を行った。
上記実施例1〜5で作成したバリアフィルムの評価結果と、上記比較例1〜4で作成したバリアフィルムの評価結果を表1に示す。ここで、膜厚は、X線反射法によって測定(リガク社製、ATX−G)した。また、水蒸気透過率は、モダンコントロール社製(MOCON PERMATRAN W3/33)を用いて、40℃−90%RH雰囲気下で測定した。また、酸素透過率は、モダンコントロール社製(MOCON OX−TRAN2/20)を用いて、30℃―70%RH雰囲気下で測定した。また、目視による傷の評価は、放電による流れ方向に垂直な傷があるかどうか判断した。また、表1において、O.R.は測定限界以上示す。また、圧力比は、成膜室圧力/巻取室圧力で表される。
<比較結果>
表1から明らかなように、実施例1〜5までは、水蒸気透過率が4g/m2−day以下となり、また、酸素透過率が5cc/m2−day以下となり、バリアフィルムのバリア性能が発揮されていることが確認された。
表1から明らかなように、実施例1〜5までは、水蒸気透過率が4g/m2−day以下となり、また、酸素透過率が5cc/m2−day以下となり、バリアフィルムのバリア性能が発揮されていることが確認された。
また、巻出し・巻取室の圧力と成膜室の圧力との圧力比を3.0×10−2以下とすることで、成膜室でのプラズマ発生を防止することができ、巻取室内のみにグロープラズマが生成され、成膜ロールとフィルム基材との間の剥離放電を効果的に緩和することができるとともに、剥離放電によるフィルム基材及び蒸着膜へのピンホール等の傷の発生をなくすことができた。
これに対して、比較例1〜4では、PETからなるフィルム基材に放電によるピンホール等の傷が残っており、いずれも十分なバリア性能が得られないことが確認された。
成膜ロールを絶縁し、電圧を印加できるようにし、さらに蒸着後のフィルム基材を成膜ロールから剥離直前に加熱することで、生産性も高く、安価にバリア性を持つ蒸着フィルムが提供できる。食品、日用品、医薬品等の包装分野あるいは非包装分野での酸素および水蒸気を遮断が必要な部材分野に広く適応できる。
1・・・真空チャンバー 1a・・・巻出し・巻取り室 1b・・・成膜室
2・・・隔壁(仕切り材) 3a、3b・・・真空ポンプ 4・・・成膜ロール 5・・・フィルム基材 6・・・巻出しロール 7・・・巻取りロール
8・・・るつぼ 8A・・・蒸発材料 9・・・電子銃 9a・・・電子ビーム
10・・・巻取り式蒸着装置(本発明) 11・・・真空チャンバー
12・・・フィルム基材 13・・・巻出しロール 13a・・・フリーロール
14・・・巻取りロール 14a・・・フリーロール 15・・・成膜ロール
16・・・電子銃 17・・・るつぼ 18・・・蒸発材料
19・・・電子ビーム 20・・・巻出し・巻取り室 21・・・成膜室
22・・・中間室 23・・・第1の真空ポンプ 24・・・第2の真空ポンプ
25・・・第3の真空ポンプ 26・・・プラズマ生成用直流電源
27・・・プラズマ 28,29・・・隔壁 30・・・フィルム基材加熱ヒーター151・・・成膜ロールの支持軸
2・・・隔壁(仕切り材) 3a、3b・・・真空ポンプ 4・・・成膜ロール 5・・・フィルム基材 6・・・巻出しロール 7・・・巻取りロール
8・・・るつぼ 8A・・・蒸発材料 9・・・電子銃 9a・・・電子ビーム
10・・・巻取り式蒸着装置(本発明) 11・・・真空チャンバー
12・・・フィルム基材 13・・・巻出しロール 13a・・・フリーロール
14・・・巻取りロール 14a・・・フリーロール 15・・・成膜ロール
16・・・電子銃 17・・・るつぼ 18・・・蒸発材料
19・・・電子ビーム 20・・・巻出し・巻取り室 21・・・成膜室
22・・・中間室 23・・・第1の真空ポンプ 24・・・第2の真空ポンプ
25・・・第3の真空ポンプ 26・・・プラズマ生成用直流電源
27・・・プラズマ 28,29・・・隔壁 30・・・フィルム基材加熱ヒーター151・・・成膜ロールの支持軸
Claims (14)
- 巻出し・巻取り室と成膜室を有する真空チャンバーと、
前記巻出し・巻取り室内を排気して第1の圧力に調節する第1の圧力調節手段と、
前記成膜室内を排気して前記巻出し・巻取り室の圧力と異なる第2の圧力に調節する第2の圧力調節手段と、
前記巻出し・巻取り室内に配設され、ロール状に巻回された長尺なフィルム基材を巻出す巻出しロールと、
円筒面状の周面を有し、前記周面が前記巻出し・巻取り室と前記成膜室の両方に臨むようにして前記真空チャンバー内に回転可能に設けられ、前記巻出しロールから巻出される前記フィルム基材を前記周面に巻き掛けて前記成膜室へ連続的に案内する金属製の成膜ロールと、
前記巻出し・巻取り室内に配設され、前記成膜室でガスバリア性薄膜が蒸着された後の前記フィルム基材を巻き取る巻取りロールと、
前記成膜室内に配置され蒸発材料を収容する容器と、
前記成膜室に設けられ前記蒸発材料に電子ビームを照射して加熱蒸発させることにより前記成膜ロールに巻き掛けられ前記成膜室に位置する前記フィルム基材の表面にガスバリア性薄膜を蒸着させる電子銃と、
表面にガスバリア性薄膜を蒸着させた該フィルム基材を、前記成膜ロールから剥離直前に加熱する加熱手段と、
前記成膜ロールに正の電位を印加して、前記巻出し・巻取り室内で前記フィルム基材が前記成膜ロールから剥離された後の該フィルム基材と前記成膜ロールとの間にプラズマを発生させる電位印加手段と、
を備えることを特徴とする巻取り式蒸着装置。 - 前記巻出し・巻取り室の第1の圧力と前記成膜室の第2の圧力との間の圧力比が3.0×10−2以下であることを特徴とする請求項1記載の巻取り式蒸着装置。
- 前記真空チャンバー内で前記巻出し・巻取り室と前記成膜室との間に中間室が設けられ、前記中間室内を排気して第3の圧力に調節する第3の圧力調節手段が設けられ、前記成膜ロールに巻き掛けられた前記フィルム基材の一部が前記中間室に位置していることを特徴とする請求項1記載の巻取り式蒸着装置。
- 請求項1乃至3の何れか1項に記載の巻取り式蒸着装置を用いて形成されたことを特徴とするバリアフィルム。
- 蒸発材料が金属であり、成膜室内に酸素ガスを導入することでフィルム基材に金属酸化物からなるガスバリア性薄膜を成膜することを特徴とする請求項4記載のバリアフィルム。
- 前記金属酸化物が酸化アルミニウムであることを特徴とする請求項4記載のバリアフィルム。
- 前記酸化化合物が酸化珪素であることを特徴とする請求項8記載のバリアフィルム。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載する巻き取り式蒸着装置を用いて、
長尺なフィルム基材をロール状に巻回してなる巻出しロールと、成膜後のフィルム基材を巻き取る巻取りロールを巻出し・巻取り室に配設し、
前期巻出し・巻取り室と成膜室を排気により一定の圧力に調節し、
前記巻出しロールからフィルム基材を巻出し、巻出された前記フィルム基材を金属製の成
膜ロールの周面に巻き掛けながら前記成膜室へ連続的に案内し、
前記成膜ロールに巻き掛けられて前記成膜室に臨む前記フィルム基材の表面に電子銃からの電子ビームにより加熱され蒸発された蒸発物質を蒸着してガスバリア性薄膜を形成し、表面にガスバリア性薄膜を蒸着させた該フィルム基材を、前記成膜ロールから剥離直前に加熱手段により加熱し、
前記電位印加手段から前記成膜ロールに正の電位を印加することにより、前記巻出し・巻取り室内で前記フィルム基材が前記成膜ロールから剥離された後の該フィルム基材と前記成膜ロールとの間にプラズマを発生させながら、成膜後のフィルム基材を巻取りロールに巻き取ることを特徴とする巻取り式蒸着方法。 - 前記巻出し・巻取り室の第1の圧力と前記成膜室の第2の圧力との間の圧力比が3.0×10−2以下であることを特徴とする請求項8に記載する巻取り式蒸着方法。
- 前記巻出し・巻取り室と前記成膜室との間に中間室が設けられ、前記中間室内を排気して第3の圧力に調節する第3の圧力調節手段が設けられ、前記成膜ロールに巻き掛けられた前記フィルム基材の巻き掛け範囲のうち、前記成膜室に位置する巻き掛け範囲の領域を除く他の巻き掛け範囲の領域が前記中間室に曝されていることを特徴とする請求項8に記載する巻取り式蒸着方法。
- 請求項8乃至10の何れか1項に記載する巻取り式蒸着方法を用いて形成されたことを特徴とするバリアフィルム。
- 蒸発材料が金属であり、成膜室内に酸素ガスを導入することでフィルム基材に金属酸化物からなるガスバリア性薄膜を成膜することを特徴とする請求項11記載のバリアフィルム。
- 前記金属酸化物が酸化アルミニウムであることを特徴とする請求項12記載のバリアフィルム。
- 前記酸化化合物が酸化珪素であることを特徴とする請求項12記載のバリアフィルム。
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---|---|---|---|
JP2009062836A JP2010215957A (ja) | 2009-03-16 | 2009-03-16 | 巻取り式蒸着装置及び巻取り式蒸着方法並びにバリアフィルム |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2010215957A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN115198245A (zh) * | 2022-07-18 | 2022-10-18 | 浙江弘康半导体技术股份有限公司 | 一种氧化物高阻隔膜、制备的方法以及真空卷绕镀膜设备 |
CN118028761A (zh) * | 2024-04-12 | 2024-05-14 | 山东省宝丰镀膜有限公司 | 一种卷绕式磁控阴极主辊蒸发成膜系统 |
-
2009
- 2009-03-16 JP JP2009062836A patent/JP2010215957A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN115198245A (zh) * | 2022-07-18 | 2022-10-18 | 浙江弘康半导体技术股份有限公司 | 一种氧化物高阻隔膜、制备的方法以及真空卷绕镀膜设备 |
CN118028761A (zh) * | 2024-04-12 | 2024-05-14 | 山东省宝丰镀膜有限公司 | 一种卷绕式磁控阴极主辊蒸发成膜系统 |
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