JP2010215845A - 皮革改質剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】皮革に物理強度や染色強度の向上効果等を付与するための皮革改質剤、及びそれを用いた改質皮革の製造方法の提供。
【解決手段】なめし革の分解物又は微粉末を有効成分とする皮革改質剤。
【選択図】なし

Description

本発明はなめし革より製造される皮革改質剤及びこれを用いた改質皮革の製造方法に関する。
牛、豚、鹿、羊、馬、やぎ等の動物の天然皮革は、有史以前から、履物、衣料等に利用されてきた。現在では、靴等の履物類、かばん、ハンドバッグ、衣類・手袋・ベルト等の服飾類、椅子・インテリア・カーシート等の家具類、スポーツ用品の他、馬具、太鼓、手芸用等、日常生活において幅広く使用され、生活用品の重要な素材となっている。
天然皮革の製造は、大別すると、1)準備作業、2)なめし工程、3)再なめし・染色・加脂工程、4)仕上げ工程の4工程に分けることができる。準備作業では、原皮に付着している血液、汚れ、塩分、肉片、脂肪等を除去し、石灰と硫化物で皮を膨潤させ、コラーゲン繊維をほぐすとともに毛を分解除去する。なめし工程では、クロム、アルミニウム、ジルコニウム等の金属なめし剤、植物タンニン、アルデヒド等を用いて皮の蛋白質であるコラーゲンを化学的に固定・安定化させ、腐敗しにくくし、その結果として耐水性、耐熱性、柔軟性、通気性等の優れた特性を革に付与する工程である。再なめし・染色・加脂工程では、用途に応じた特性を革に与え、希望の色に染色し、加脂剤により革に柔軟性や豊満性等の特性を付与する。仕上げ工程は、最終的な革製品として必要な性質を総合的に与えることが目的である。たとえば、色調の調整、平滑性の改善、感触の改善、水、光、化学薬品に対する抵抗性の付与、はっ水性の付与等を目的に革の銀面に塗装等を施すことが行われる。
しかしながら、なめしの種類や方法、或いは原料皮の種類、個体差、部位差、傷等により、強度、風合い、染色性等の物理特性が一定とならないという問題があった。特に、強度に関しては、部位や個体差をできるだけ小さく均一にすると同時に、より高めることが普遍的に求められている。また、皮革は多かれ少なかれ生体由来の部位による組織構造の相違や、傷が存在し、均質な染色は困難であるが、均染性の向上、染色堅ろう性の向上が求められている。
革の強度向上については、加脂剤、再なめし剤、樹脂剤の使用が古くから検討され、例えば、加脂剤ではカチオン性の脂肪族スルフォクロライドを主成分とするもの、4級化脂肪酸トリエタノールアミンエステル塩(特許文献1参照)、アニオン性では脂肪酸アルコールの硫酸エステル化合物、トリグリセライドスルフォン化物等、なめし剤としてはグルタルアルデヒド、オキサゾリジン等のアルデヒド化合物、アクリル系樹脂等、仕上げ剤としてはポリウレタン(特許文献2参照)等が報告されているが、十分な効果は得られていなかった。
しかるところ、本発明者らは、コラーゲンやケラチンなどのタンパク質の分解物等を皮革改質剤として利用することを見出し、一定の効果が得られることを報告している(特許文献3参照)。
また、近年では、環境意識の高まり、消費者への安全性情報開示、国際取引上におけるエコラベル取得の必要性等の面から、皮革産業においても環境問題は避けて通れない課題となっており、環境に優しい薬剤が求められている。
一方、上記により製造された製品革及びそれから製造される最終皮革製品は、そのほとんどが廃棄の際に焼却又は埋立てにより処分されている。その処分費用の問題ばかりでなく、近年の環境意識の高まりもあり、皮革及び皮革製品においても、効果的なリサイクルが求められている。
皮革はコラーゲンが主成分であるので、リサイクルの方法としては分解して肥料とする方法が考えられる。しかし皮革とは上記でも述べた通りなめし工程によってコラーゲンを化学的に安定化させている物であるので、分解する為にはある程度以上のコストをかけざるを得ない。現在、肥料原料はかなり安価で流通しており、皮革を分解して肥料原料とするにはコスト面で実用化が難しいのが現状である。
特表平9−512844号公報 特開平6−340900号公報 特開2007−91864号公報
本発明は、皮革に物理強度や染色強度の向上効果等を付与するための皮革改質剤、及びそれを用いた改質皮革の製造方法を提供することに関する。
本発明者らは、斯かる実情に鑑み検討したところ、なめし革の分解物及び微粉末を皮革製造中に用いることにより、単にコラーゲンの加水分解物を用いた場合に比べて、強度が高く、優れた物理特性を有する皮革が製造できることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の1)〜5)に係るものである。
1)なめし革の分解物又は微粉末を有効成分とする皮革改質剤。
2)なめし革が、金属なめし剤、タンニン類及びアルデヒド類から選ばれるなめし剤によってなめされた天然皮革である上記1)の皮革改質剤。
3)天然皮革の製造において、なめし革の分解物若しくは微粉末又は上記1)の皮革改質剤で処理する工程を含むことを特徴とする改質皮革の製造方法。
4)なめし革が、金属なめし剤、タンニン類及びアルデヒド類から選ばれるなめし剤によってなめされた天然皮革である上記3)の方法。
5)上記3)又は4)の方法により製造された改質皮革。
本発明によれば、天然皮革の物理特性が改善される皮革改質剤が提供される。すなわち本発明によれば、皮革の強度の向上を始め、厚さの改善、傷の補修効果、均染性又は染色堅ろう性の向上が図られ、均一な物理特性を持つ皮革の製造が可能となる。また、皮革中のコラーゲン量が増え、さらに改質剤中に含まれるクロム塩やタンニンなどのなめし剤が増えたコラーゲンになめし効果を与える事により、風合い等の官能性の改良もなされることから、より快適性に優れた皮革を製造することが可能となる。従って、本発明の改質皮革は、カーシート、ステアリングカバー、ダッシュボード被覆材等内装材等の自動車用、ゴルフ、野球、スキーその他手袋用、野球グローブ、オートバイ用レーシングスーツ等のスポーツ用、ベルト、革衣料、服飾用手袋等の衣料用、靴、鞄、袋物等に広く利用可能である。また、本発明によれば、廃棄皮革の有効利用が図られ、環境保護への貢献もできる。
本発明の皮革改質剤における、「改質」とは、天然皮革の物理特性の向上・均一化を図ることを意味する。具体的には、少なくとも皮革強度の向上を図り、好ましくは更に厚さの改善、傷の補修効果、均染性又は染色堅ろう性の向上、風合いの改善、吸放湿性の付与等を図ることをいう。
本発明において用いられる「なめし革」としては、なめしの種類及び方法は特に限定されず、例えばクロム、アルミニウム、ジルコニウム等の金属なめし剤、植物タンニン等のタンニン類、グルタルジアルデヒド等のアルデヒド類等のなめし剤によりなめされた天然皮革を用いることができるが、金属なめし革が好適である。
斯かるなめし革は、皮革の製造工程中で発生するシェービング屑やトリミング屑、皮革を皮革製品に加工する際に発生するトリミング屑、使用済みの皮革製品などを用いることができる。
なめし革の分解物としては、皮革に存在する化学結合の一部を酸、アルカリ、酵素等により加水分解したものが挙げられる。この場合、皮革中のコラーゲンの分子量が例えば、分子量1,000〜100,000、好ましくは2,000〜10,000までに低分子化されているのが好ましい。
また、なめし革の微粉末としては、なめし革を粒子径が50μm以下、好ましくは25μm以下となるよう、磨砕機等により微粒子化した微粉砕物が挙げられる。
なめし革の分解物又は微粉末を調製する場合は、予め原料であるなめし革を酸又はアルカリ処理して不純物を除去した後、これを加水分解、粉砕等に付すのが好ましい。ここで使用されるアルカリとしては石灰、酸としては塩酸や硫酸等の無機酸が好適に挙げられる。処理時間は数時間から数日を要する。
皮革の分解物を得るための酸又はアルカリによる加水分解処理は、なめし革を水及び/又はメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の1種又は2種以上の混合物、好ましくは水及び/又はエタノールに溶解し、硫酸、塩酸、酢酸、リン酸等の酸やアルカリを加えて行われる。
当該アルカリとしては、タンパク質やペプチドの加水分解に通常用いられるもの、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、アンモニア等が挙げられる。尚、アルカリ溶液は、アルカリの水溶液であるのが好ましいが、アルコールと水との混合溶媒を用いてもよい。
溶液中における酸又はアルカリの濃度は、酸を用いる場合、通常0.1〜1.0mol/Lとするのが好ましく、アルカリの場合、通常0.2〜1.0mol/Lとするのが好ましい。
加水分解処理は、上記酸又はアルカリ溶液中でなめし革原料を振とう又は攪拌することによって行われる。反応は、通常20〜120℃の範囲内で、0.1〜72時間処理するのが好ましい。
酵素による加水分解は、通常、皮革由来のコラーゲンを0.1〜40重量%の溶液とし、用いる酵素の作用pH域、作用温度域で、酵素を作用させればよい。
加水分解に用いられる酵素としては、コラーゲンを分解できるものであればよく、中性プロテアーゼ、アルカリ性プロテアーゼ、酸性プロテアーゼのいずれでもよく、また動物起源、植物起源あるいは微生物起源の何れでもよい。具体的には、例えば、ペプシン、パパイン、ブロメライン、フィシン等が挙げられる。
斯くして得られたなめし革の加水分解物は、必要に応じて、例えば中和処理、濾過、遠心分離等を用いて分離・精製処理することができ、また水分を除去して濃縮又は粉末化することも可能である。
なめし革の微粉末を得るための微粉砕化は、粒子径を50μm以下、好ましくは25μm以下に微粒化できる手段を用いて行えばよく、その種類は特に限定されるものではないが、例えば石臼、ボールミル、ジェットミルを用いる粉砕法や凍結粉砕法等が挙げられる。
斯くして得られたなめし革の分解物又は微粉末は、皮革中のコラーゲン繊維に付着し、皮革の強度を向上させ、厚さの改善、傷の補修効果を発揮する。そしてその効果は、コラーゲンの加水分解物を用いた場合よりも、風合い等の官能性も改良される(後記実施例、比較例参照)。
従って、なめし革の分解物又は微粉末を有効成分とする製剤は皮革改質剤として有用であり、皮革をこれで処理する工程を含む皮革の製造方法は、改質皮革を得るための方法として有用である。
尚、ここで、皮革とは、牛、豚、鹿、羊、馬、やぎ等の動物皮膚を上記の各種なめし剤によりなめした天然皮革を意味し、本発明においてはその動物種は限定されるものではない。また本発明のなめし革分解物処理の対象となる皮革も、コラーゲン繊維を有し、皮革の分解物又は微粉末が付着し、本発明の効果を発揮し得るものであればその動物種は限定されるものではない。
本発明の皮革改質剤の剤形は、特に限定されるものではないが、液状又は粉末状の形態とするのが好ましい。
液状製剤は、本発明のなめし革の分解物又は微粉末を所望の濃度になるよう、溶媒に溶解することにより調製できる。ここで用いられる溶媒としては、水及び/又はメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の1種又は2種以上の混合物が挙げられる。
斯かる製剤には、硫酸ナトリウム、亜硫酸塩等の中性塩、アスコルビン酸、クエン酸、乳酸等の有機酸、パラオキシ安息香酸エステル類、フェノキシエタノール等の防腐剤、アルコールサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、スルフォサクシネート等の各種界面活性剤等を適宜配合することができる。
粉末状製剤は、上記の液状製剤をスプレードライにて調製するか、或いはなめし革の分解物又は微粉末をそのまま、必要に応じてタルク、酸化亜鉛、シリカ、酸化チタン等のいわゆる助剤を混合して調製することができる。
本発明の皮革改質剤におけるなめし革の分解物又は微粉末の配合量は、本発明の効果を発揮し得る有効量を含有させればよいが、好ましくは1〜50重量%、特に5〜40重量%が特に好ましい。
本発明のなめし革の分解物若しくは微粉末、又は上記の皮革改質剤を用いた皮革の処理は、皮革製造のいずれかの工程において行うことができる。
処理は、本発明のなめし革の分解物又は微粉末を水、アルコール等の溶媒や各種助剤中に混合又は溶解して直接皮革に作用させること、或いは上述したなめし革の分解物又は微粉末含む皮革改質剤を作用させることでもよい。
例えば、なめし革の分解物を用いる場合は、太鼓を用いた水浴中で一定時間処理して、皮革中のコラーゲン線維に浸透させ、必要に応じて、更に塩基性硫酸クロム等の水溶性金属塩、グルタルアルデヒド等のアルデヒド化合物、ポリエチレンイミン、カチオン性ポリアミン樹脂等の架橋剤で処理することにより革中にて高分子化して結合をより強固にすればよい。また、なめし革の微粉末を用いる場合は、当該微粉末をバインダーや油脂等の薬剤と混合し、これを用いて革中のコラーゲン繊維に付着させることにより行うことができる。
なめし革の分解物若しくは微粉末、又は皮革改質剤の添加量は、効果を発揮し得る量であれば特に限定されないが、処理皮革の基準重量(裸皮重量,シェービング重量,乾燥重量)100重量部に対して、なめし革分解物の固形分として1〜50重量部であるのが好ましい。
皮革製造工程において、上記なめし革の分解物若しくは微粉末又は皮革改質剤による処理を適用する時期は、特に限定されるものではなく、1)なめし前の浸酸(ピックル)工程時、2)再なめし工程時、3)中和工程時、4)染色工程時、5)加脂工程時、6)最終水処理工程時、を始め、7)仕上げ工程(スプレー、ロールコーター等)においても可能であるが、いずれの場合においても目的に応じた上記架橋剤の併用が効果的である。
1)なめし前の浸酸(ピックル)工程において行う場合
浸酸は、通常、準備作業の終了した原料皮を、約20℃の水浴に投入し、塩化ナトリウムを添加して数十分間処理した後、1〜2%の硫酸を単独又は0.5〜1%の蟻酸を併用して投入し、数時間処理することにより行われる。
本工程において、なめし革の分解物若しくは微粉末又は皮革改質剤の添加は、例えば、塩化ナトリウム処理に続いて行うことができ、30〜60分処理を行えばよい。
2)再なめし工程時において行う場合
再なめしは、通常、原料皮を、約30℃の水浴中に投入し、有機酸、カチオン性再なめし剤(例えば塩基性硫酸クロム、塩基性硫酸アルミニウム等)を添加することにより行われる。尚、この工程中には、柔軟性付与、薬剤の分散を目的として電解質に安定な薬剤(例えば脂肪酸燐酸エステル化合物、トリグリセライド亜硫酸化油等)等も併用添加することができる。
本工程において、なめし革の分解物若しくは微粉末又は皮革改質剤の添加は、例えば、有機酸処理後(なめし剤添加前)に続いて行うことができ、30〜60分処理を行えばよい。
3)中和工程時において行う場合
中和は、通常、カチオン性の再なめしの後、原料革を約35℃の水浴で洗浄した後、新水浴に投入し、これに中和用薬剤(例えば重曹、蟻酸ソーダ、中和用合成タンニン)を添加し、30〜90分処理し、pHを調整することにより行われる。
本工程において、なめし革の分解物若しくは微粉末又は皮革改質剤の添加は、例えば、中和用薬剤の添加と同時に行うことができる。
4)染色工程時において行う場合
染色は、通常、原料革を約40℃の水浴に投入後、染料浸透化薬剤(例えば0.5〜1%のアンモニア水)で処理し、その後、染色均一化薬剤(例えば1〜3%のフェノールスルホン酸縮合物)で処理した後、希望する色合いの酸性染料を所定量投入することにより行われる。
本工程において、なめし革の分解物若しくは微粉末又は皮革改質剤の添加は、例えば、染色均一化薬剤による処理に続いて行うことができ、30分程度処理を行えばよい。
5)加脂工程時において行う場合
加脂は、通常、染色工程浴で行う場合は製造する製品革の目的に沿った所定の加脂剤を染色浴に添加して処理し、その後、蟻酸を投入することにより行われる。
本工程において、なめし革の分解物若しくは微粉末又は皮革改質剤の添加は、例えば加脂剤の添加と同時に行えばよい。
6)最終水処理工程時に行う場合
最終水処理は、防水処理等の特殊な加工を行う場合に行われるが、通常、その直前すなわち加脂工程の後に、原料革を約45℃の水浴に入れ、その後防水剤(例えば、2〜5%アルキル燐酸エステル)、蟻酸、金属塩(例えば、塩基性硫酸クロム等)、場合により脂肪酸の金属化合物(例えば、ステアリン酸アルミニウム等)を添加して処理を行い、最後
に水浴で洗浄することにより行われる。
本工程において、なめし革の分解物若しくは微粉末又は皮革改質剤の添加は、例えば、防水剤の添加前に行うことができ、30分程度処理を行えばよい。
7)仕上げ工程時に行う場合
仕上げ工程は、大別すると、(i)傷の補修、薬剤吸収均一化目的の目止めコート、(ii)皮膜形成着色目的の中間コート、(iii)感触付与、表面保護のトップコート、の各作業がある。仕上げ用薬剤の溶媒は水及び、メチルセルロース、ブチルセルロースを主剤とする混合溶剤を使用する2種類があり、作業環境等の問題から水溶媒系が主流になっている。
(i)目止めコートは、パラフィンワックスを主剤とする可塑剤、アクリル、ウレタン等を主剤とする樹脂バインダー、ミルクカゼインを主剤とする皮膜補強助剤及び水等を混合した薬剤液をスプレー、あるいはローラーコーター、ブラシ等で表面に塗布し、常温あるいは熱風で乾燥、その後ロールアイロン、ハイドローリックプレス等のアイロン機械で加熱しながら圧力を塗装表面に加えて皮膜を形成し面を平滑化する工程である。
本工程において、なめし革の分解物若しくは微粉末又は皮革改質剤は、例えば、目止めコートに先立ち、架橋剤及び水と共に混合し、塗布、乾燥、アイロンすること、或いは皮革改質製剤を単独又は架橋剤と共に目止め用薬剤に混合して使用することができる。
(ii)中間コートは、パラフィンワックスを主剤とする可塑剤、アクリル、ウレタン等を主剤とする樹脂バインダー、有機又は無機顔料、ミルクカゼインを主剤とする皮膜補強助剤等を混合した薬剤液を塗布し、乾燥、アイロンを行う工程である。
本工程において、なめし革の分解物若しくは微粉末又は皮革改質剤は、例えば、単独又は架橋剤と共に中間コート混合薬剤に添加することができる。
(iii)トップコートは、シリコン等を主剤とする感触剤、酢酸セルロースを主剤とするラッカー乳化液、パラフィンワックスを主剤とする可塑剤、ミルクカゼインを主剤とする皮膜補強助剤及び水を混合した薬剤液を塗布し、乾燥、アイロンを行う工程である。
本工程において、なめし革の分解物若しくは微粉末又は皮革改質剤は、例えば、単独又は架橋剤と共にトップコート混合薬剤に添加することができる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また濃度を示す%は、質量%濃度である。
製造例1
クロムなめし革のシェービング屑を、その重量の5倍重量の2%硫酸水溶液中に加え、70℃にて攪拌しながら30時間加水分解し溶解させた。溶解液に水酸化ナトリウムを適量添加してpHを3.1に調整し、5,000rpmで15分間遠心分離し沈殿と上清を得た。得られた上清には、皮革由来のコラーゲンタンパク質が11.8%、クロム塩が0.6%含まれている事が確認された。この上清をクロムなめし革分解物とし試験例1に使用した。
製造例2
クロムなめし革のシェービング屑を、その重量の5倍重量の2%硫酸水溶液中に加え、70℃にて攪拌しながら30時間加水分解し溶解させた。溶解液に水酸化ナトリウムを適量添加してpHを6.5に調整し、5,000rpmで15分間遠心分離し沈殿と上清を得た。得られた上清には、皮革由来のコラーゲンタンパク質が11.9%、クロムが0.6%含まれている事が確認された。この上清をクロムなめし革分解物とし試験例2及び3に使用した。
製造例3
クロムなめし革のシェービング屑を、その重量の5倍重量の2%硫酸水溶液中に加え、70℃にて攪拌しながら5時間加水分解し溶解させた。溶解液に水酸化ナトリウムを適量添加してpHを4.5に調整し、300メッシュでの濾過を行い、スプレードライヤーにて粉体とした。この粉体をクロムなめし革分解物とし比較例1に使用した。
試験例1 クロムなめし革分解物(硫酸により分解)による皮革の処理1
常法により処理した羊ウエットブルーをドラム中に入れ、ウエットブルー100重量部に対して150重量部の水と0.2%のギ酸で洗浄した。これに100重量部の水とクロム革分解物(製造例1で調整)を5%,10%,20%(有効成分量換算)添加し30℃で30分回転し、さらに5%のクロムなめし剤を添加し60分回転させ再なめしを行った。その後2%中和用合成タンニン剤と1%炭酸水素ナトリウムを添加して60分回転し中和を行った。50℃の水(200重量部)で水洗した後、100重量部の水と乳化した加脂剤(3.5%)を加えて50℃で60分加脂を行った。ギ酸を添加して15分間定着処理を行い、その後水洗、馬掛け、ガラ干し、味入れ、バイブレーション、ネット張りを行った。
得られた革について、クロムなめし革分解物溶液のみを添加せず同様に処理した革をコントロールとして、JIS K 6550革試験方法に基づき試験した結果、及び柔らかさをソフトネステスターで測定した結果を表1に示す。
Figure 2010215845
表1に示すとおり、革の厚さが向上し、引張強度も最大で約1.3倍の上昇効果がみられた。引裂強度は逆に低下する結果となったが、これは処理革中にクロム鞣し革分解物が入り込み組織が密になり、処理革が硬くなった事が要因であると考えられる。
試験例2 クロムなめし革分解物による皮革の処理2
常法により処理した羊ウエットブルーをドラム中に入れ、ウエットブルー100重量部に対して150重量部の水と0.2%のギ酸で洗浄した。これに100重量部の水とクロム革分解物(製造例2で調整)を5%,10%,20%(有効成分量換算)添加し30℃で30分回転し、さらに5%のクロムなめし剤を添加し60分回転させ再なめしを行った。その後2%中和用合成タンニン剤と1%炭酸水素ナトリウムを添加して60分回転し中和を行った。50℃の水(200重量部)で水洗した後、100重量部の水と乳化した加脂剤(3.5%)を加えて50℃で60分加脂を行った。ギ酸を添加して15分間定着処理を行い、その後水洗、馬掛け、ガラ干し、味入れ、バイブレーション、ネット張りを行った。
得られた革について、クロム革分解物のみを添加せず同様に処理した革をコントロールとして、JIS K 6550革試験方法に基づき試験した結果、及び柔らかさをソフトネステスターで測定した結果を表2に示す。
Figure 2010215845
表2に示すとおり、引張強さにおいて約1.3倍の強度向上が得られた。また表1と同様、柔らかさの低下が得られ、処理革中にクロム鞣し革分解物が入り込み組織が密になった事が推定される。
試験例3 クロムなめし革分解物による皮革の処理3
以下の方法を基本処理(コントロール)とする。
常法により処理した羊クラストをドラム中に入れ、クラスト100重量部に対して1000重量部の水と1%のアンモニア,2%アニオン界面活性剤を添加し、60℃で120分水戻しを行った。500重量部の水で2回水洗後、300重量部の水と2%の均染剤、1%の染料で55℃40分染色を行った。10%の乳化した加脂剤を添加し60分回転した後、ギ酸を添加して定着処理を行った。
コントロールの処理に以下の要領でクロム革分解物を添加した。(i)均染剤と染料を添加する前に、10%のクロム革分解物を添加し20分回転した。(ii)ギ酸での定着処理直後に20%クロム革分解物を添加し20分回転した。(iii)ギ酸で定着処理をし、水洗した後に新たに300重量部の水で浴を張りこれに20%クロム革分解物を添加し20分回転した。
得られた革について、JIS K 6550革試験方法に基づき試験した結果、柔らかさをソフトネステスターで測定した結果を表3に示す。また、得られた革の染料の定着性を目視で判定した結果を表4に示す。
Figure 2010215845
表3に示す通り、より後の製造工程で用いるほど剛軟度の上昇が認められ、処理革中にクロム鞣し革分解物が入り込み組織が密になった事が推定される。
Figure 2010215845
染色前に革分解物を処理することにより、革への染料の吸着量がコントロールに比べて増大し、染色性が向上することが確認できた。
また染色加脂の直後に処理すると、コントロールでは吸着し切れず染色浴中に残存していた染料が革へ吸着され、より染色性を向上させることが出来た。
染色加脂、水洗後の処理では、水洗時に洗い切れなかったわずかな残存染料が吸着し、やはり染色性の向上が認められた。
比較例1 加水分解コラーゲンおよびクロムなめし革分解物による皮革の処理
常法により処理した羊ウエットブルーをドラム中に入れ、ウエットブルー100重量部に対して150重量部の水と0.2%のギ酸で洗浄した。これに100重量部の水とA:25重量部の水(コントロール),B:25重量部の40%加水分解コラーゲン水溶液,C:25重量部の40%クロム革分解物(製造例3で調整)を添加し30℃で30分回転し、さらに5%のクロムなめし剤を添加し60分回転させ再なめしを行った。その後2%中和用合成タンニン剤と1%炭酸水素ナトリウムを添加して60分回転し中和を行った。50℃の水(200重量部)で水洗した後、100重量部の水と黒色の染料(1%)、および乳化した加脂剤(3.5%)を加えて50℃で60分間染色・加脂を行った。ギ酸を添加して15分間定着処理を行い、その後水洗、馬掛け、ガラ干し、味入れ、バイブレーション、ネット張りを行った。
得られた革について、クロムなめし革分解物のみを添加せず同様に処理した革をコントロールとして、厚さをJIS K 6550革試験方法、柔らかさをソフトネステスターで測定した結果を表5に、分光測色計にて黒色の染料の定着性を測定した結果を表6に示す。
Figure 2010215845
表5に示す通り、加水分解コラーゲンを添加した場合よりもクロムなめし革分解物を添加した場合の方が厚さが増加する事が確認された。また、革がより固くなる効果も加水分解コラーゲン処理の場合よりもクロム革分解物処理の場合の方が高い事が確認された。これは、革の組織中にクロム鞣し革分解物が入り込み密になる事ばかりではなく、原料となったクロムなめし革に含まれていた各種薬剤の効果によると思われる。
Figure 2010215845
L*a*b*表色系では、明度をL*、色相と彩度を表す色度をa*、b*で表す。L*は0〜100までの値をとり、0が暗く、100が明るいことを意味する。a*、b*は、色の方向を示しており、a*の正の値は赤方向、負の値は緑方向、b*の正の値は黄方向、負の値は青方向を示す。数値が大きくなるに従って色あざやかになり、0に近いとくすんだ色となる。すなわち、明度で比較すると、コントロールが一番明るく、加水分解コラーゲン処理、クロム革分解物処理の順に暗くなり、クロム革分解物処理が最も黒く染まっている事になる。
上記より、加水分解コラーゲン処理を行うよりも、クロム革分解物を処理した方が染料の定着性が向上する事がわかった。

Claims (5)

  1. なめし革の分解物又は微粉末を有効成分とする皮革改質剤。
  2. なめし革が、金属なめし剤、タンニン類及びアルデヒド類から選ばれるなめし剤によってなめされた天然皮革である請求項1記載の皮革改質剤。
  3. 天然皮革の製造において、なめし革の分解物若しくは微粉末又は請求項1記載の皮革改質剤で処理する工程を含むことを特徴とする改質皮革の製造方法。
  4. なめし革が、金属なめし剤、タンニン類及びアルデヒド類から選ばれるなめし剤によってなめされた天然皮革である請求項3記載の方法。
  5. 請求項3又は4記載の方法により製造された改質皮革。
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