JP2010215474A - 活性炭の製造方法および該製造方法により得られた活性炭を用いた電気二重層キャパシタ - Google Patents

活性炭の製造方法および該製造方法により得られた活性炭を用いた電気二重層キャパシタ Download PDF

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Abstract

【課題】アルカリ賦活を採用した活性炭の製造方法において、アルカリ賦活剤の使用量を増加させることなく高比表面積化を達成することができる活性炭の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の活性炭の製造方法は、炭化物を有機溶媒で溶出処理する工程、得られた固体残渣をアルカリ賦活する工程、を有することを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、活性炭の製造方法および該製造方法により得られた活性炭を用いた電気二重層キャパシタに関するものである。
現在、活性炭は、高比表面積を有することから電気二重層キャパシタの分極性電極、吸着剤などの用途に利用されている。特に、活性炭を分極性電極に用いた電気二重層キャパシタは、エレクトロニクス分野の進展に伴い、さらなる高性能化が求められている。そして、電気二重層キャパシタの高性能化、特に高容量化のためには、その電極に用いられる活性炭の高比表面積化が必須となっている。
従来、電気二重層キャパシタに用いられる活性炭は、一般にヤシガラ炭化物、フェノール樹脂炭化物、石炭などの原料を水蒸気賦活、薬品賦活することにより製造されている。このような活性炭の製造方法として、例えば、特許文献1には、石炭の溶剤抽出物を不活性雰囲気下で800℃から950℃の温度範囲において加熱し、得られた固体残渣をアルカリ賦活することを特徴とする電気二重層キャパシタ用炭素材の製造方法が開示されている。
特許文献2には、石炭系重質油、石油系重質油および樹脂を熱処理して得られるタール油のうちから選ばれる1または2以上の物質由来のコークスを有機溶媒で抽出処理するときの抽出残分を電極活物質に用いることを特徴とする電気二重層キャパシタ用電極活物質の製造方法が開示されている。しかし、特許文献2は低比表面積である電気二重層キャパシタ用電極活物質の製造を目的としており、得られる電極活物質のBET比表面積は2m2/gと非常に小さい(特許文献2、表1)。このように低比表面積であるにもかかわらず静電容量が高い材料は、充電時に電極が膨張するなどの問題がある。
特開2007−142204号公報 特開2008−135587号公報
一般に、高比表面積を有する活性炭は、薬品賦活、特にアルカリ賦活によって作製される。しかし、アルカリ賦活によって高比表面積化を達成するには、原料を仕込む際にアルカリ金属水酸化物比(アルカリ金属水酸化物/炭素原料)を大きくする必要がある。このようにアルカリ金属水酸化物比を大きくすると、反応容器の腐食や安全性の点で問題があった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、アルカリ賦活を採用した活性炭の製造方法において、アルカリ賦活剤の使用量を増加させることなく高比表面積化を達成することができる活性炭の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の活性炭の製造方法は、炭化物を有機溶媒で溶出処理する工程、得られた固体残渣をアルカリ賦活する工程を有することを特徴とする。アルカリ賦活を行う前に、炭化物を有機溶媒で溶出処理することにより、アルカリ金属水酸化物比が小さくても高比表面積化を達成することができる理由は、必ずしも明らかでないが、有機溶媒で溶出処理して炭化物中に含有される可溶成分を溶出させることにより、得られる固体残渣に賦活反応に活性な点(例えば、エッジ面など)が増加するためではないかと考えられる。
前記炭化物は、石炭ピッチコークス、石油コークス、石炭コークス、石炭およびそれらのか焼物よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。前記有機溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン、キノリン、ピリジン、トルエンおよびテトラヒドロフランよりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
また、本発明には、上記製造方法により得られた活性炭を用いたことを特徴とする電気二重層キャパシタも含まれる。
本発明によれば、アルカリ賦活を採用した活性炭の製造方法において、アルカリ賦活剤の使用量を増加させることなく高比表面積化を達成することができる。
本発明の活性炭の製造方法は、炭化物を有機溶媒で溶出処理する工程、得られた固体残渣をアルカリ賦活する工程、を有することを特徴とする。
まず、本発明に用いられる炭化物について説明する。
前記炭化物としては、特に限定されず、例えば、石炭ピッチコークス、石油コークス、石炭コークス、ニードルコークス、石炭などの炭化物;木材、おが屑、木炭、ヤシガラ、セルロース系繊維、合成樹脂(例えばフェノール樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、PAN)、石油ピッチ、コールタールピッチ、メソフェーズピッチなどの炭素質物質の炭化物が挙げられる。これらの炭化物は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記炭素質物質の炭化処理は、通常、不活性ガス雰囲気下で加熱処理することによりなされる。該炭化処理の温度は、400℃以上が好ましく、より好ましくは500℃以上であり、950℃以下が好ましく、より好ましくは900℃以下である。また、炭化処理時間は、0.5時間以上が好ましく、より好ましくは1.0時間以上であり、4.0時間以下が好ましく、より好ましくは3.0時間以下である。
本発明において、前記炭化物としては、石炭ピッチコークス、石油コークスおよび石炭コークス、石炭が好適である。石炭ピッチコークス、石油コークスおよび石炭コークスを素材として用いることは、これらが低価格であること、安定して大量に入手できることなどの点で有利である。ここで、前記石炭ピッチコークスとは、コールタールを蒸留しタール軽油などを得る際の釜残のコールタールピッチを炭化したものであり、ディレード・コーキング法で作られたものが好適である。前記石油コークスとは、石油の重質留分を500℃程度の高温で熱分解(コーキング)して得られる固形の炭化物であり、ディレード・コーキング法で作られたものが好適である。また、前記炭化物としては、石炭ピッチコークス、石油コークスおよび石炭コークスのか焼物を用いてもよい。
なお、石炭ピッチコークスの具体例を商品名で示すと、例えば、三菱化学社製石炭ピッチコークスが挙げられる。前記石油コークスの具体例を商品名で示すと、例えば、テキサコ社製ディレードコークスが挙げられる。
前記炭化物の平均粒子径は10mm以下が好ましく、より好ましくは5mm以下、さらに好ましくは2mm以下である。炭化物の平均粒子径が10mm以下であれば、炭化物の比表面積を大きくすることができ、溶出処理において賦活反応に活性な点をより増加させることができる。なお、炭化物の平均粒子径の下限は特に限定されるものではないが、平均粒子径が小さすぎると粉体のハンドリングが困難となる(例えば、作業時に粉体が舞い上がってしまう)傾向がある。そこで、粉体のハンドリングをより良好とするために、炭化物の平均粒子径は1μm以上が好ましく、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。ここで、本願において平均粒子径とは、水に分散させた試料を、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、島津製作所製の「SALD(登録商標)−2000」)により測定して、求められる体積平均粒子径である。
次に、本発明の活性炭の製造方法について詳細に説明する。前述したように、本発明の活性炭の製造方法は、炭化物を有機溶媒で溶出処理する工程、得られた固体残渣をアルカリ賦活する工程、を有することを特徴とする。
本発明の製造方法において、炭化物を有機溶媒で溶出処理することにより、アルカリ賦活剤量を増加させることなく高比表面積化を達成できる理由は、必ずしも明らかでないが以下のように考えられる。すなわち、炭化物を有機溶媒で溶出処理することにより、炭化物に含有される炭素前駆体成分(ピレン、ナフタセン、ペリレンなど)の少なくとも一部が有機溶媒へと溶出し、得られる固体残渣の表面に炭素前駆体成分が抜けた後の穴が無数に形成される。このように無数の穴が形成されることにより、固体残渣の表面には、賦活反応に活性な点(例えば、エッジ面など)が増加するため、アルカリ賦活剤量を増加させることなく高比表面積化が達成されると考えられる。
前記炭化物を有機溶媒で溶出処理する工程とは、炭化物中に含有される炭素前駆体成分の少なくとも一部を有機溶媒に溶出させる工程である。
本工程に用いられる有機溶媒としては、前記炭化物に含有される炭素前駆体成分(ピレン、ナフタセン、ペリレンなど)を溶解し得るものであれば特に限定されず、N−メチル−2−ピロリドン、キノリン、ピリジン、トルエン、テトラヒドロフラン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、シクロヘキサン、キシレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、アセトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、2−プロパノールなどを用いることができる。これらの有機溶媒は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、本発明の効果を損なわない程度に、有機溶媒に水を含有させてもよい。これらの中でも、有機溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、キノリン、ピリジン、トルエンおよびテトラヒドロフランよりなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、特にN−メチル−2−ピロリドンが好適である。理由は明らかでないが、有機溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンを用いることにより、賦活反応に活性な点(エッジ面など)がより多く形成されると考えられる。
なお、用いられる炭化物によって含有する炭素前駆体成分が異なるが、例えば、石炭ピッチコークスの炭化物に含まれる炭素前駆体成分の中で脱離しやすいものとしては、ピレン、ナフタセン、ペリレンなどが挙げられ、これらを溶出するための有機溶媒としてはN−メチル−2−ピロリドンが好適である。
前記溶出処理の方法としては、炭化物を有機溶媒に浸漬して超音波処理する方法;炭化物を有機溶媒に浸漬して撹拌する方法;ソックスレー抽出法などを挙げることができ、これらの中でも、炭素前駆体成分をより効率よく溶出させることができるため、炭化物を有機溶媒に浸漬して超音波処理する方法が好適である。
前記超音波処理を行う場合、有機溶媒の温度は20℃以上が好ましく、より好ましくは30℃以上、さらに好ましくは40℃以上であり、100℃以下が好ましく、より好ましくは90℃以下、さらに好ましくは80℃以下である。また、前記超音波処理を行う場合、処理時間は0.5時間以上が好ましく、より好ましくは1時間以上、さらに好ましくは2時間以上、特に好ましくは3時間以上であり、50時間以下が好ましく、より好ましくは40時間以下、さらに好ましくは30時間以下である。
なお、溶出処理した後、例えば、濾過することにより固体残渣のみを取り出すことができる。なお、濾取した固体残渣は、窒素雰囲気下あるいは真空下にて、20℃〜300℃で、0.5時間〜24時間乾燥させることが好ましい。
前記超音波処理を行う場合、有機溶媒の使用量は、特に限定されないが、炭化物と有機溶媒との質量比(有機溶媒/炭化物)を、2以上とすることが好ましく、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上であり、40以下とすることが好ましく、より好ましくは30以下、さらに好ましくは20以下である。
アルカリ賦活工程は、前記固体残渣と、アルカリ賦活剤とを混合し、加熱することにより賦活処理を行う工程である。ここで、「賦活処理」とは、固体残渣の表面に細孔を形成して、比表面積および細孔容積を大きくする処理である。
賦活処理に使用されるアルカリ賦活剤としては、アルカリ金属化合物が好ましい。前記アルカリ金属化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどの水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウムなどの炭酸塩などが挙げられる。これらのアルカリ賦活剤は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水酸化カリウムが好適である。
前記アルカリ賦活剤の使用量は、賦活される前記固体残渣とアルカリ賦活剤との質量比(アルカリ賦活剤/固体残渣)を、1以上とすることが好ましく、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2.0以上であり、4.5以下とすることが好ましく、より好ましくは4.0以下、さらに好ましくは3.5以下である。
また、アルカリ賦活剤を添加する際、固体残渣との混合を十分とするために、アルカリ賦活剤を水溶液として使用しても良い。このときの水の使用量は、アルカリ賦活剤の0.05質量倍〜10質量倍が好ましい。なお、アルカリ賦活剤を水溶液として使用する場合には、賦活処理のための加熱を行う前に、アルカリ賦活剤水溶液に由来する水分の突沸防止のため、賦活処理における加熱温度よりも低温での加熱処理を行って、水分を除去しておくことが好ましい。
賦活処理を行う際の加熱温度は600℃以上が好ましく、より好ましくは650℃以上であり、950℃以下が好ましく、より好ましくは900℃以下である。また、賦活処理を行う際の加熱時間は0.1時間以上が好ましく、より好ましくは1.5時間以上であり、3.5時間以下が好ましく、より好ましくは3時間以下である。なお、加熱時の雰囲気は、アルゴン、ヘリウム、窒素などの不活性ガス雰囲気が好ましい。
本発明の製造方法には、前記有機溶媒での溶出処理工程およびアルカリ賦活工程に加えて、洗浄工程、熱処理工程、粉砕工程を含ませてもよい。
洗浄工程は、賦活工程後の活性炭を洗浄し、乾燥させる工程である。賦活工程後の活性炭の表面には、アルカリ賦活剤として使用した水酸化アルカリ金属などが付着しているので、このような付着物を除去するために活性炭の洗浄を行う。
活性炭の洗浄としては、水洗、酸洗浄などを挙げることができる。
水洗方法は、特に限定されないが、例えば、活性炭を水に投入し、必要に応じて撹拌、分散させた後、濾取することにより行うことが好ましい。前記撹拌、分散は、機械的撹拌、気体吹込み、超音波照射によって行うことができるが、加熱煮沸させることによっても行うことができる。水洗時の水温は、30℃以上が好ましく、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上である。撹拌、分散時間は0.5時間以上が好ましく、より好ましくは1時間以上、さらに好ましくは1.5時間以上である。
酸洗浄は、無機酸、有機酸などを含有する洗浄液を用いて行う洗浄である。なお、洗浄液の溶媒は特に限定されないが、通常は水である。酸洗浄を行うことによって、アルカリ賦活剤として使用した水酸化アルカリ金属などを効率よく除去できる。
前記無機酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、炭酸などが挙げられる。これらの無機酸は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。無機酸を使用する場合、洗浄液中の無機酸濃度は、0.5mol/L以上が好ましく、より好ましくは1.0mol/L以上、さらに好ましくは1.5mol/L以上であり、3.5mol/L以下が好ましく、より好ましくは3.0mol/L以下、さらに好ましくは2.5mol/L以下である。無機酸を用いた酸洗浄の方法は、特に限定されないが、例えば、活性炭と、無機酸を含有する洗浄液とを混合して、50℃〜100℃の温度で、30分間〜120分間撹拌することにより行うことが好ましい。
前記有機酸としては、例えば、ギ酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、酢酸、プロピオン酸などを挙げることができる。これらの有機酸は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記有機酸を含有する洗浄液中の有機酸の濃度は、1vol%以上が好ましく、より好ましくは2vol%以上、さらに好ましくは5vol%以上であり、100vol%以下が好ましく、より好ましくは80vol%、さらに好ましくは60vol%以下である。有機酸の濃度を1vol%以上とすることによって、有機酸による金属成分除去効果を得られるが、濃度が高くなりすぎると、製造コストが高くなるので好ましくない。有機酸を用いた酸洗浄の方法は、例えば、活性炭と、有機酸を含有する洗浄液とを混合して、得られた混合物を20℃〜80℃の温度で、1分間〜120分間撹拌することにより行うことが好ましい。洗浄後の活性炭は、50℃〜120℃で、0.5時間〜2.0時間乾燥させることが好ましい。
本発明の製造方法においては、洗浄工程として、酸洗浄と水洗とを行うことが好ましく、より好ましくは酸洗浄を行った後、水洗を複数回行う態様である。
熱処理工程は、賦活工程後あるいは洗浄工程後の活性炭を、さらに不活性ガス雰囲気下で熱処理する工程である。活性炭に熱処理を行うことにより、活性炭の表面の官能基量を調整することができる。
前記熱処理としては、賦活工程直後の活性炭を不活性ガス雰囲気下で熱処理する態様;賦活工程後の活性炭を、酸洗浄および/または水洗した後、不活性ガス雰囲気下で熱処理する態様などを挙げることができる。前記不活性ガスとしては、例えば、アルゴン、窒素、ヘリウムなどを使用することができる。また、前記熱処理温度は、特に限定されないが、好ましくは400℃以上1000℃以下である。
粉砕工程は、活性炭の粒径を調整するための粉砕を行う工程である。活性炭の粉砕方法は、特に限定されるものでなく、ディスクミル、ボールミル、ビーズミルなどを用いて行えばよい。なお、活性炭の平均粒子径は1μm以上とすることが好ましく、より好ましくは2μm以上であり、15μm以下とすることが好ましく、より好ましくは10μm以下である。平均粒子径が余りに小さいと、電極における集電板と電極材料層との結着性が悪くなり、実用的な結着性を保持するためには電極材料層に要するバインダー量が増加するおそれがある。
本発明の製造方法で得られる活性炭の比表面積は1200m2/g以上が好ましく、より好ましくは1500m2/g以上であり、3500m2/g以下が好ましく、より好ましくは3000m2/g以下である。ここで、本発明において比表面積とは、多孔質炭素の窒素吸着等温線を測定するBET法により求められる値である。
本発明の製造方法で得られる活性炭の平均細孔径は10nm以上が好ましく、より好ましくは12nm以上であり、30nm以下が好ましく、より好ましくは25nm以下である。ここで、本発明において平均細孔径とは、BJH法により求められる値である。
本発明の製造方法で得られる活性炭の全細孔容積は0.5cm3/g以上が好ましく、より好ましくは0.6cm3/g以上であり、2.0cm3/g以下が好ましく、より好ましくは1.8cm3/g以下である。ここで、本発明において全細孔容積とは、相対圧P/P0(P:吸着平衡にある吸着質の気体の圧力、P0:吸着温度における吸着質の飽和蒸気圧)が0.93までの窒素吸着量を測定するBET法により求められる値である。
なお、本発明の製造方法によって得られる活性炭の平均細孔径、比表面積、全細孔容積などは、炭化物の種類、有機溶媒による溶出処理条件や、賦活工程における加熱条件などを適宜変更することによって、所望の範囲とすればよい。
本発明の製造方法により得られる活性炭は、電気二重層キャパシタ用電極材料として用いることができ、当該電極材料を使用して、電気二重層キャパシタ用電極や電気二重層キャパシタを製造することが可能である。
次に、本発明の電気二重層キャパシタについて説明する。本発明の電気二重層キャパシタは、前記の製造方法により得られた活性炭を用いたことを特徴とする。
電気二重層キャパシタ用電極は、例えば、活性炭、導電性付与剤、およびバインダーを混練し、さらに溶媒を添加してペーストを調製し、このペーストをアルミ箔などの集電板に塗布した後、溶媒を乾燥除去したものが挙げられる。
前記電気二重層キャパシタ用電極に使用されるバインダーとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系高分子化合物や、カルボキシメチルセルロース、スチレン−ブタジエンゴム、石油ピッチ、フェノール樹脂などを使用することができる。また、導電性付与剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどを使用することができる。
電気二重層キャパシタは、一般的には、電極、電解液、およびセパレータを主要構成とし、一対の電極間にセパレータが配置した構造となっている。前記電解液としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、メチルエチルカーボネートなどの有機溶剤に、アミジン塩を溶解した電解液;過塩素酸の4級アンモニウム塩を溶解した電解液;4級アンモニウムやリチウムなどのアルカリ金属の四フッ化ホウ素塩や六フッ化リン塩を溶解した電解液;4級ホスホニウム塩を溶解した電解液などが挙げられる。また、前記セパレータとしては、例えば、セルロース、ガラス繊維、または、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンを主成分とした不織布、クロス、微孔フィルムが挙げられる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
[評価方法]
1.比表面積、全細孔容積および平均細孔径
活性炭0.2gを200℃にて真空加熱した後、窒素吸着装置(Micromeritics社製、「ASAP−2400」)を用いてN2ガス吸着法による吸着等温線を求め、BET法により比表面積および全細孔容積を求めた。また、平均細孔径は、BET法により求められた比表面積および全細孔容積を用いて、下記式(1)に基づいて算出した。
Figure 2010215474
2.電気二重層キャパシタの静電容量
充放電装置(楠本化成株式会社製、「ETAC(登録商標) Ver4.4」)の充放電端子をキャパシタのアルミニウム板に接続し、集電板間電圧が2.5Vになるまで40mAの定電流充電を行い、続けて、2.5Vの定電圧で30分間充電した。充電後、定電流(放電電流=0.010A)で電気二重層キャパシタの放電を行わせた。このとき、電気二重層キャパシタの電圧がV1、V2となるまでに要した放電時間t1、t2を測定した。そして、下記式(2)を用いて電気二重層キャパシタの質量基準静電容量を求めた。
Figure 2010215474
I:0.010(A)
t1:電気二重層キャパシタ電圧がV1となるまでに要した放電時間(sec)
t2:電気二重層キャパシタ電圧がV2となるまでに要した放電時間(sec)
m:電極を構成する電極材料層の総質量(g)
V1:2.0(V)
V2:1.0(V)
3.電気二重層キャパシタの内部抵抗
上記静電容量の評価と同じ条件でキャパシタの充電を行った後、定電流(放電電流=0.010A)でキャパシタの放電を行わせた。このとき、電気二重層キャパシタの電圧がV1、V2となるまでに要した放電時間t1、t2を測定した。そして、下記式(3)を用いて電気二重層キャパシタの内部抵抗を求めた。
Figure 2010215474
V0:2.5(V)
V1:2.0(V)
V2:1.0(V)
t1:電気二重層キャパシタ電圧がV1となるまでに要した放電時間(sec)
t2:電気二重層キャパシタ電圧がV2となるまでに要した放電時間(sec)
I:0.010(A)
活性炭
製造例1
炭化物としての石炭ピッチコークス(三菱化学社製、石炭ピッチコークス、平均粒子径75μm未満)30gを、有機溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(キシダ化学社製)150gを用いて溶出処理した。溶出処理は、炭化物を有機溶媒に浸漬し、液温を60℃に保持し、超音波洗浄器(BRANSONIC社製、「Model 3510」(周波数;42kHz、超音波;130W))を用いて0.5時間超音波を照射することにより行った。溶出処理後、処理液を濾過し、濾過物を110℃で12時間乾燥させて固体残渣を得た。
得られた固体残渣20gに対して、水酸化カリウム50g(水酸化カリウム/固体残渣(質量比)=2.5)を添加し、十分に混合した。次いで、混合物を窒素雰囲気下、800℃で2時間加熱し、賦活処理を行った。
得られた賦活物とカリウム成分の混合物に、水1.6Lと塩酸(濃度:35質量%)0.4Lを加え、100℃で2時間加熱後、賦活物を濾取することにより塩酸洗浄を行った。その後、塩酸洗浄を終えた賦活物に水2Lを加え、100℃に加熱して2時間煮沸した後、賦活物を濾取することにより温水洗浄を行った。同様の操作を繰り返して温水洗浄をさらに1回行った。
塩酸洗浄1回と温水洗浄2回を経た賦活物を、110℃で2時間乾燥した。乾燥後の賦活物を、ディスクミルを用いて粉砕し、平均粒子径が8μmとなるように調整し、活性炭No.1を得た。得られた活性炭No.1について、比表面積を測定した。結果を表1に示した。
製造例2
溶出処理において、超音波照射時間を6時間に変更したこと以外は製造例1と同様にして、活性炭No.2を得た。得られた活性炭No.2について、比表面積を測定した。結果を表1に示した。
製造例3
溶出処理において、超音波照射時間を18時間に変更したこと以外は製造例1と同様にして、活性炭No.3を得た。得られた活性炭No.3について、比表面積を測定した。結果を表1に示した。
製造例4
溶出処理を行わなかったこと以外は製造例1と同様にして、すなわち、炭化物としての石炭ピッチコークス(三菱化学社製、石炭ピッチコークス、平均粒子径75μm未満)をそのままアルカリ賦活処理して活性炭No.4を得た。得られた活性炭No.4について、比表面積を測定した。結果を表1に示した。
Figure 2010215474
表1に示すように、アルカリ賦活処理の前に、活性炭を有機溶媒で溶出処理した活性炭No.1〜3は、溶出処理を行っていない活性炭No.4に比べて、高比表面積化が図られていることがわかる。また、活性炭No.1〜3は、アルカリ賦活処理については同条件で行っているが、溶出処理条件が異なるため、比表面積が異なっている。このことから、アルカリ賦活処理前に有機溶媒で溶出処理することにより、アルカリ賦活剤量を増加させることなく、高比表面積化が図れることがわかる。
電気二重層キャパシタ
前記で得た活性炭No.1〜4のいずれか1種4.0gに、ポリテトラフルオロエチレン粉末(市販のPTFE粉末)0.5gとアセチレンブラック0.5gとを混合し、ペースト状態になるまで混練した。次いで、ミニブレンダーで粉砕し、目開き500μmのステンレス鋼製篩により篩い分けし、篩の通過分を集めた。前記篩の通過分を、直径1インチの金型に入れ、500kg/cm2の圧力でプレス成形して、直径1インチ、厚み0.5mmのコイン型の電極を作製した。
得られたコイン型電極を、真空下、200℃で1時間乾燥した後、窒素ガスを流通させたグローブボックス内で電解液(テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートが1mol/Lのプロピレンカーボネート溶液)を電極に真空含浸させた。この電極を使用して、電解液を含浸させたセパレータ(Celgard社製「セルガード(登録商標) ♯3501」)を2枚の電極で挟み、電極をOリングで囲繞した後、更にアルミニウム板で挟んで電気二重層キャパシタNo.1〜4を作製した。得られた電気二重層キャパシタNo.1〜4の質量基準静電容量、内部抵抗を測定した。結果を表2に示した。
Figure 2010215474
表2に示すように、本発明の活性炭の製造方法により得られた活性炭No.1〜3を用いた電気二重層キャパシタNo.1〜3は、実用レベルの質量基準静電容量、内部抵抗を有しており、活性炭No.1〜3が電気二重層キャパシタ用電極材料に好適であることがわかる。
本発明の製造方法は、活性炭の高比表面積化に有用である。

Claims (4)

  1. 炭化物を有機溶媒で溶出処理する工程、得られた固体残渣をアルカリ賦活する工程、を有することを特徴とする活性炭の製造方法。
  2. 前記炭化物が、石炭ピッチコークス、石油コークス、石炭コークス、石炭およびそれらのか焼物よりなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の活性炭の製造方法。
  3. 前記有機溶媒が、N−メチル−2−ピロリドン、キノリン、ピリジン、トルエンおよびテトラヒドロフランよりなる群から選択される少なくとも1種である請求項1または2に記載の活性炭の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法により得られた活性炭を用いたことを特徴とする電気二重層キャパシタ。
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