JP2010214755A - 流路デバイスの製造方法 - Google Patents

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【課題】微細貫通孔を有する構造体を持つ流路デバイスを安定して作製する方法を提供する。
【解決手段】微細流路3内の一部に微細貫通孔を有する構造体10が微細流路方向に封入されている流路デバイスの製造方法であって、微細流路3内の構造体が封入される部分の少なくとも一部に、微細流路と連通する接着剤または粘着剤封入部4が備えられており、封入部4に接着剤または粘着剤を封入することにより、構造体を固定する流路デバイスの製造方法であり、好ましくは接着剤又は粘着剤の粘度が10,000mPa・s以上で200,000mPa・s以下である流路デバイスの製造方法。
【選択図】図2

Description

本発明は、流路デバイスを安定して作製するための流路デバイスの製造方法に関するものである。
最近はマイクロリアクターやマイクロトータルアナリシスシステム(μTAS)と呼ばれる微細加工技術を利用した化学反応や分離システムの微小化の研究が盛んになっており、マイクロチャネル(微細流路)を持つマイクロチップ上で行う核酸、タンパク質、糖鎖などの分析や合成、微量化学物質の迅速分析、医薬品・薬物のハイスループットスクリーニングへの応用が期待されている。
このようなシステムのマイクロ化の利点としては、(1)化学反応や抗原抗体反応で使用するサンプルや試薬の使用量、廃棄量を低減できる、(2)プロセスに必要な動力源の低減ができる、(3)体積に対する表面積の比率が向上することにより、熱移動・物質移動の高速化が実現でき、その結果、反応や分離の精密な制御、高速・高効率化、副反応の抑制が期待される、(4)同一基板上で多くのサンプルを同時に取り扱うことができる、(5)サンプリングから検出までを同一基板上で実施できる、等のことが挙げられ省スペースで持ち運び可能な安価なシステムの実現が考えられている。
一方、デメリットとしては(1)検出面積が小さくなるため検出感度が低下するケースが多い、(2)マイクロスケールの流体流れでは乱流を発生させることが難しく、試薬等を混合させる場合に拡散混合となり時間を要す、(3)気泡等が発生した場合に表面張力の影響が大きく除去することは難しく測定系に大きな影響を及ぼすことが多い、ことが挙げられる。
このようなメリット、デメリットがある中でマイクロフルイディクス技術は検討され、自動車産業分野では加速センサーや圧力センサー、位置センサー(ジャイロスコープ)等、電気通信業界分野では光導波路、光スイッチ、ミラー、レンズ等、ライフサイエンス産業分野では血液分析、DNA分析、化学犯罪捜査用途等として我々の日常生活で見られる形となっている。その他、食品分野、環境試験分野、軍需分野にもその用途を展開している。
現在開発されているマイクロフルイディクス技術としては、センサー用途が多く、酵素もしくは抗原抗体反応、イオン感応電界効果(ISFET)、マイクロ電極、マイクロカンチレバー、音響波、共鳴を利用したマイクロセンサーが報告されている。用途してはマイクロ電気泳動チップ、マイクロPCR(Plymerase Chain Reaction)チップ、マイクロガスクロマトグラフィチップ、マイクロ液クロマトグラフィチップ、DNA分離チップ等が多く報告されている。
また、サンプリングから分析までを同一チップ上で実施するLab−on−a−Chipの開発も報告されており、炭疽菌や大腸菌に特異な核酸や抗体を用いた多機能バイオチップやグルコースやラクトース等をモニタリングする携帯可能な測定器、抗原抗体反応を用いた臨床検査チップ等が挙げられる。
上記のような流路デバイスの中で、立体構造の微細流路をもつ流路デバイスがある。例えば、非特許文献1では、立体構造をもつ流路デバイスとして、小径のチューブを流路に挿入することで立体流路を実現している。しかしながら、この流路デバイスは、流す流体が、チューブ内の貫通孔を通って、チューブの入口から出口に向かう際に、チューブの貫通孔内を通らずに、チューブの外側を通ってしまう場合があり、安定してチューブからのみの送液が実施できない場合がある。また、流す液体が、チューブの外側を通って逆流し、入口側の溶液に出口側の溶液が混ざってしまう恐れがある。また、チューブが固定されていないため、チューブが流路内で移動してしまい、チューブを安定的に再現性よく挿入でずに、ロット間のばらつきが高くなるなどの不都合があった。
また、ホルダーにガイド部材を固定し、このガイド部材において接着剤で流体流通用のチューブを固定するコネクター構造等が知られている(例えば、非特許文献2)。この方法では、チューブを安定的に再現性よく固定できないことや、デバイス本体の外部にホルダーを取り付けており、さらにその部分に接着剤を使用しているため、デバイスが嵩張ってしまう、外観上好ましくない、などの不都合があった。
山梨県工業技術センター研究報告No20(2006)p27-p32 J. Anal. Chem (2001) 371: 270-275
本発明の目的は、微細貫通孔を有する構造体を持つ流路デバイスを安定して作製する方法を提供するものである。
本発明は、以下の通りである。
(1)微細流路内の一部に、微細貫通孔を有する構造体が微細流路方向に封入されている流路デバイスの製造方法であって、前記微細流路内の前記構造体が封入される部分の少なくとも一部に、前記微細流路と連通する封入部が備えられており、前記封入部に接着剤または粘着剤を封入することにより、前記構造体を固定することを特徴とする流路デバイスの製造方法。
(2)前記接着剤又は粘着剤の粘度が10,000mPa・s以上で200,000mPa・s以下である(1)記載の流路デバイスの製造方法。
(3)前記接着剤又は粘着剤がエポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂のいずれかを含むものである(1)又は(2)記載の流路デバイスの製造方法。
(4)前記封入部が、注入孔を少なくとも一つ有している(1)〜(3)いずれか記載の流路デバイスの製造方法。
(5)前記構造体が、円筒状の構造体である(1)〜(4)いずれか記載の流路デバイスの製造方法。
(6)前記構造体が、ガラス、プラスチック、金属、ゴムのいずれかの材料からなる(1)〜(5)いずれか記載の流路デバイスの製造方法。
(7)前記流路デバイスがプラスチック材料から構成されている(1)〜(6)いずれか記載の流路デバイスの製造方法。
本発明の製造方法により、微細貫通孔を有する構造体を持つ流路デバイスを安定して作製することができる。
本発明の流路デバイスの一例の内部構造を示す平面概要図である。 本発明の流路デバイスの一例の内部構造を示す平面概要図である。 本発明の流路デバイスの一例の内部構造を示す平面概要図である。 実施例1の流路デバイスに使用する微細流路を有する基板の平面概要図である。 実施例1の流路デバイスに使用する図4に示す基板と密着する基板の平面概要図である。 実施例1の流路デバイスの内部構造を示す平面概要図である。 比較例1の流路デバイスに使用する微細流路を有する基板の平面概要図である。 比較例1の流路デバイスに使用する図7に示す基板と密着する基板の平面概要図である。 比較例1の流路デバイスの内部構造を示す平面概要図である。
本発明は、微細流路内の一部に、微細貫通孔を有する構造体が微細流路方向に封入されている流路デバイスの製造方法であって、前記微細流路内の前記構造体が封入される部分の少なくとも一部に、前記微細流路と連通する封入部が備えられており、前記封入部に接着剤または粘着剤を封入することにより、前記構造体を固定することを特徴とする流路デバイスの製造方法である。
本発明の実施形態の例を図を用いて説明する。
図1は、本発明の流路デバイスの実施形態の一例の内部構造を示す平面概要図である。図1に示す流路デバイスは、母材1に形成されたインレット2、微細流路3、接着剤または粘着剤封入部4、微細流路3に連通したアウトレット5、そして微細貫通孔を有する構造体10から構成される。構造体10は、微細流路3の流路内に封入されており、微細流路の一部に微細流路と連通する封入部4が存在している。封入部4に接着剤または粘着剤を封入することによって、構造体10は固定されている。
微細流路は少なくとも一方の部材に微細加工を有するマイクロチップ基板の部材2つを貼り合わせことにより形成される。本発明における構造体10を固定する工程は、基板を貼り合わせする前後でどちらも可能である。
基板を貼り合わせする前に構造体10を固定する場合は、微細加工を有するマイクロチップ基板の封入部4に接着剤または粘着剤を封入することで可能である。
貼り合わせした後に構造体10を固定する場合は、図2に示すように、封入部4内に連通する注入孔入口6および注入孔出口7を有するデバイスを作製し、貼り合わせ後に、接着剤または粘着剤を入れたシリンジや分注機を使用することによって、注入孔6から接着剤または粘着剤を注入し、注入孔出口7から接着剤を吐出することで、構造体10を固定できる。注入孔は、少なくとも一つあればよいが、使用上問題がなければ2つ以上あったほうが好ましい。接着剤または粘着剤を封入する部分は、構造体の一部にあればよい。
また、本発明では、図3のように、微細貫通孔を有する構造体10の一部のみを母材内に封入することができる。
本発明に使用する接着剤又は粘着剤は、粘度が10,000mPa・s以上で200,000mPa・s以下であることが好ましい。下限値未満では封入部に注入したときに、流路部分へ接着剤又は粘着剤が展開してしまうため、好ましくない。上限値を超えると 封入部に接着剤又は粘着剤が充填されずに詰まってしまう恐れがある。接着剤及び粘着剤の種類は、特に限定はなく、使用方法によって適宜選ばれるが、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂又はウレタン系樹脂であることが好ましい。これらの樹脂は、粘度が高いため、封入部に注入した際に、液量を調整しやすい。また、用途に応じて、光硬化性の樹脂も適宜用いることができる。
構造体の形状としては、微細の貫通孔を有するものであれば限定されないが、流路に封入しやすい形状であることが好ましい。例えば、円筒状(チューブ状)であれば、流路に封入しやすく、好ましい。円筒状の場合、外径50〜1000μm、内径1〜999μm程度のものが好ましい。
構造体の材質としては、特に限定されないが、好ましくは、鋼鉄、ステンレス、真鍮、銅、ニッケル、アルミ等の金属、ナイロン、ポリエチレン、フッ素、シクロオレフィン、PEEK、PES、PP、フロロカーボン、PI、PE等のプラスチック、シリコンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、PDMS、フッ素ゴム、ポリウレタンゴム等のゴム、ガラス等が挙げられる。
本発明の流路デバイスの母材は、プラスチック材料から構成されていることが好ましい。プラスチックの材質としては、種々のプラスチック材料を選択することが可能であり、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアセテート、ビニル−アセテート共重合体、スチレン−メチルメタアクリレート共重合体、アクリルニトリル−スチレン共重合体、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ナイロン、ポリメチルペンテン、シリコン樹脂、アミノ樹脂、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルイミド、フッ素樹脂、ポリイミド等が挙げられるが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、環状ポリオレフィン、ポリメチルメタアクリレート、ポリカーボネート、ナイロンが好ましい。また、これらの材料を混ぜた混合材も使用することができる。また、これらのプラスチック材料に、顔料、染料、酸化防止剤、難燃剤等の添加物を適宜混合してもよい。
本発明の流路デバイスにおける微細流路は、サンプルや試薬の使用量あるいは廃液の排出量、かつ、熱移動・物質移動の高速化の観点から、幅は1μm以上1000μm以下が好ましく、深さは1μm以上500μm以下が好ましい。但し、これらマイクロチャネルの流路設計は検出対象物、利便性を考慮に適宜設計されるため上記に限定はしない。また、マイクロチャネルの機能としてマイクロディバイス、具体的には、膜、ポンプ、バルブ、センサー、モーター、ミキサー、ギア、クラッチ、マイクロレンズ、電気回路等を装備したり、複数本のマイクロチャネルを同一基板上に加工することにより複合化することが可能である。
本発明の流路デバイスにおける封入部は、どんな形状のものであってもよいが、接着剤又は粘着剤を封入しやすい形状、すなわち平面形状は円型か四角型であることが好ましい。平面のサイズは、0.5mm以上100mm以下であることが好ましい。下限値未満では、封入される接着剤又は粘着剤が少ないため、チューブを安定して固定できない恐れがある。上限値を超えると、接着剤又は粘着剤の量が多く、ハンドリングが難しくなるため好ましくない。深さは、連通する流路の深さによって適宜選ばれるが、1μm以上1000μm以下であることが好ましい。
本発明の流路デバイスにおける注入孔は、どんな形状であってもよいが、シリンジなどで注入しやすい円筒状であることが好ましい。寸法は、封入部の形状・サイズ、または、シリンジのサイズによって適宜選ばれるが、円筒状である場合は、円の内径は0.1mmφ〜5mmφであることが好ましい。
本発明における流路デバイスの微細流路の一部に生理活性物質を固定化することができる。生理活性物質としては、核酸、タンパク質、糖鎖、糖タンパク等が挙げられるが検出対象物の特性により適宜、最適な生理活性物質を選択することができる。また、同一流路上に複数の生理活性物質を固定化してもよく、同じ流路デバイスに違う流路を作製して別々に生理活性物質を固定しても良い。生理活性物質を流路デバイスの流路表面に固定化するために表面に表面改質、例えば官能基の導入、機能材料の固定化、親水性の付与、および疎水性の付与等を実施したりすることも可能である。
以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
図4に示すように、30mm×70mm、厚さ1.0mmの寸法の飽和環状ポリオレフィン樹脂製の板状材料を切削加工して、幅410μm、深さ300μmのマイクロチャネル30(微細流路:断面形状は四角型)、2mmφ、深さ500μmの接着剤封入部40を形成した。
図5に示すように、30mm×70mm、厚さ1.0mmの寸法の飽和環状ポリオレフィン樹脂製の板状材料を切削加工して、1mmφ貫通のインレット20、1mmφ貫通のアウトレット50、0.5mmφ貫通の注入孔入口60、0.5mmφ貫通の注入孔出口70を形成した。
図4の基板のマイクロチャネル30部分に、外径400μmφ、内径300μmφのPEEKチューブ100を挿入した後に、図5の基板を熱溶着させた。その後、シリンジを用いて、2液性のエポキシ系接着剤の混合液(粘度37,000mPa・s) を注入孔入口60から抽入し、注入孔出口70から接着剤が吐出するまで封入した。このとき、接着剤封入部40は、接着剤で満たされていた。このようにして、図6に示す流路デバイスを作製した。
上記で得られた流路デバイスのPEEKチューブの先端に位置するデバイス表面に、キズを入れてマークしておき、その後、数十回流路デバイス本体を、激しく振った。その後に、PEEKチューブの位置を再度確認したところ、PEEKチューブの先端は、マークしておいた箇所と同じ位置にあった。これは、PEEKチューブが、接着剤により固定されていることを意味する。
また、上記で得られた流路デバイスのインレット20より、赤インクを送液したところ、赤インクは、チューブの先端からのみ排出された。これは、送液された赤インクは、接着剤封入部40に封入されている接着剤によってせき止められていることを示している。
(比較例1)
図7に示すように、30mm×70mm、厚さ1.0mmの寸法の飽和環状ポリオレフィン樹脂製の板状材料を切削加工して、幅410μm、深さ300μmのマイクロチャネル31(微細流路:断面形状は四角型であった)を形成した。
図8に示すように、30mm×70mm、厚さ1.0mmの寸法の飽和環状ポリオレフィン樹脂製の板状材料を切削加工して、1mmφ貫通のインレット21、1mmφ貫通のアウトレット51を形成した。
図7の基板のマイクロチャネル31部分に、外径400μmφ、内径300μmφのPEEKチューブ101を挿入した後に、図8の基板を熱溶着させ、図9に示す流路デバイスを作製した。
上記で得られた流路デバイスのPEEKチューブの先端に位置するデバイス表面に、キズを入れてマークしておき、その後、数十回流路デバイス本体を、激しく振った。その後に、PEEKチューブの位置を再度確認したところ、PEEKチューブの先端は、マークしておいた箇所と同じ位置にはなかった。
また、上記で得られた流路デバイスのインレット21より、赤インクを送液したところ、赤インクは、チューブの先端から排出されたが、それ以外に、チューブの外側も赤インクで充填されていた。これは、赤インクが、チューブの内部を通らずに、チューブの外側からも送液されていることを示している。
1、10、11 母材
2、20、21 インレット
3、30、31 微細流路
4、40 封入部
5、50、51 アウトレット
6、60 注入孔入口
7、70 注入孔出口
10、100、101 微細貫通孔を有する構造体

Claims (7)

  1. 微細流路内の一部に、微細貫通孔を有する構造体が微細流路方向に封入されている流路デバイスの製造方法であって、前記微細流路内の前記構造体が封入される部分の少なくとも一部に、前記微細流路と連通する封入部が備えられており、前記封入部に接着剤または粘着剤を封入することにより、前記構造体を固定することを特徴とする流路デバイスの製造方法。
  2. 前記接着剤又は粘着剤の粘度が10,000mPa・s以上で 200,000mPa・s以下である請求項1記載の流路デバイスの製造方法。
  3. 前記接着剤又は粘着剤がエポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂のいずれかを含むものである請求項1又は2記載の流路デバイスの製造方法。
  4. 前記封入部が、注入孔を少なくとも一つ有している請求項1〜3いずれか記載の流路デバイスの製造方法。
  5. 前記構造体が、円筒状の構造体である請求項1〜4いずれか記載の流路デバイスの製造方法。
  6. 前記構造体が、ガラス、プラスチック、金属、ゴムのいずれかの材料からなる請求項1〜5いずれか記載の流路デバイスの製造方法。
  7. 前記流路デバイスがプラスチック材料から構成されている請求項1〜6いずれか記載の流路デバイスの製造方法。
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