本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態においては、本発明に係る線材成形装置2をコイル製造装置1(図13参照)に適用した場合を例として説明する。すなわち、このコイル製造装置1における第一曲げ機構5と搬送機構4とにより線材成形装置2が構成されている。そして、この第一曲げ機構5による曲げ加工の対象となる対象接続部としての一方側接続部33を含む波形導体3(線状導体3L)が線材に相当する。このコイル製造装置1及びコイル製造方法は、断面形状が方向性を有する線状導体3L(図2参照)を成形して略円筒状の波巻コイル3C(図11参照)を製造するための製造装置及び製造方法である。本実施形態では、1本の連続する線状導体3Lを一方の端部側から順次成形して略円筒状の波巻コイル3Cを製造する。このような略円筒状の波巻コイル3Cは、例えば、回転電機の電機子用コイルとして好適に用いられる。ここで、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。以下では、まず本実施形態に係るコイル製造方法について概略的に説明し、その後、コイル製造装置1の構成及び当該コイル製造装置1を用いて行われる各製造工程の詳細について順に説明する。
1.コイル製造方法の概略
本発明の実施形態に係るコイル製造方法は、図1に示すように、波形導体形成工程P1、調整屈曲工程P2、他方側屈曲工程P3、段差加工工程P4、第一曲げ工程P5、第二曲げ工程P6、及び巻き取り工程P7を有する。また、このコイル製造方法は、各工程間或いは各工程の実行と同時に略矩形波状に形成された線状導体3Lである波形導体3を搬送する搬送工程Pfも有する。図2から図11には、波形導体形成工程P1により略矩形波状に形成された線状導体3Lでなる波形導体3が、調整屈曲工程P2から巻き取り工程P7までの各工程を経て最終的に略円筒状の波巻コイル3Cとなるまでの加工工程を段階的に示している。なお、以下の説明において、コイル周方向CCとは、最終的に形成される略円筒状の波巻コイル3Cの周方向を意味し、コイル径方向CRとは、当該波巻コイル3Cの径方向を意味する。
本実施形態においては、断面形状が方向性を有する線状導体3Lとして、断面形状が矩形状のものを用いる。具体的には、この線状導体3Lは、断面形状が長方形又は正方形であって、線材長さ方向LLに均一な断面形状を有する線状の導体である。この線状導体3Lは、銅やアルミニウム等の塑性加工を行うことが可能な導電性材料により構成され、表面に樹脂やセラミックス等により構成される絶縁皮膜が形成されている。そして、略直線状の線状導体3Lが波形導体形成工程P1に供給される。
波形導体形成工程P1は、図2に示すように、略直線状の線状導体3Lを略矩形波状に形成する工程である。ここでは、略矩形波状に成形された線状導体3Lを波形導体3という。波形導体3は、波幅方向Wに延びる直線状の複数の辺部31と、当該辺部31の波幅方向一方側Waの端部において隣接する2つの辺部31間を1つ置きに順次接続する一方側接続部33と、波幅方向他方側Wbの端部において一方側接続部33により接続されていない隣接する2つの辺部31間を順次接続する他方側接続部35と、を有する。本実施形態では、この波形導体形成工程P1が行われた後の一方側接続部33及び他方側接続部35は、それぞれ辺部31に対して略直交する方向に延びる略直線状に形成されている。ここで、波幅方向Wとは、略矩形波状の波形導体3の振幅方向である。この波幅方向Wは、波形導体3が最終的に略円筒状の波巻コイル3Cとして成形された状態では、コイル軸方向に略平行な方向となる。
また、本実施形態では、1回の波形導体形成工程P1により、略直線状の線状導体3Lが屈曲されて波形1周期PT分の波形導体3が形成される。すなわち、波形導体形成工程P1では、1回の工程で略直線状の線状導体3Lの4箇所を略直角に屈曲して略S字状に成形することにより、波形1周期PT分の波形導体3を形成する。波形1周期PT分の波形導体3には、2本の辺部31と各1本ずつの一方側接続部33及び他方側接続部35とが含まれている。後述するように、本実施形態では、波形導体3はボビン71(図13参照)に2周回巻き取られる構成となっている。そのため、図4及び図5に示すように、波形導体形成工程P1では、ボビン71に巻き取られた状態で径方向内側となる波形導体3の第一周回部3fと、径方向外側となる波形導体3の第二周回部3sとで互いに異なる形状となるように屈曲する。ここでは特に他方側接続部35の形状が異なっている。具体的には、第一周回部3fでは、他方側接続部35(第一周他方側接続部35F)は辺部31に対して単に略直角に屈曲されて形成されている。一方、第二周回部3sでは、他方側接続部35(第二周他方側接続部35S)は、クランク状に2回屈曲されてから辺部31に対して略直角に屈曲されて形成されている。これにより、他方側接続部35の線材長さ方向LLの両端部における辺部31との接続部分に、波幅方向一方側Waへ窪んだ凹部35aが形成されている。
波形導体形成工程P1により略矩形波状に形成された波形導体3は、搬送工程Pfにより間欠搬送される。本実施形態では、当該波形導体3の波形1周期PTを1ピッチとして間欠搬送を行う。この搬送工程Pfでは、波形導体3は、複数の辺部31が含まれる面内における波幅方向Wに略直交する方向を搬送方向Fとして搬送される。本実施形態では、搬送工程Pfによる波形導体3の間欠搬送と波形導体形成工程P1とが交互に実行される。すなわち、波形導体形成工程P1により形成された波形1周期PT分の波形導体3が、1回の波形導体形成工程P1が行われる毎に搬送方向Fへ搬送される。
波形導体形成工程P1の後工程で、調整屈曲工程P2が行われる。本実施形態では、図3に示すように、調整屈曲工程P2は、波形導体形成工程P1に対して3ピッチ(波形3周期)分搬送方向下流側Fbの位置で行われる。図3は、図2に対して2ピッチ間欠搬送した状態を示している。本実施形態では、調整屈曲工程P2は、一方側調整屈曲工程P2aと他方側調整屈曲工程P2bとを有している。本実施形態では、一方側調整屈曲工程P2aと他方側調整屈曲工程P2bとは、搬送方向Fに互いに隣接する一方側接続部33と他方側接続部35とのそれぞれに対して略同時に行う。一方側調整屈曲工程P2aは、一方側接続部33近傍に対して屈曲成形を行う工程であり、他方側調整屈曲工程P2bは、他方側接続部35近傍に対して屈曲成形を行う工程である。これらの調整屈曲工程P2は、波形導体3が最終的に円筒状の波巻コイル3Cとして成形された状態で一方側接続部33及び他方側接続部35のコイル径方向CRの位置が適切な位置となるように、一方側接続部33近傍又は他方側接続部35近傍の屈曲成形を行う工程である。本実施形態では、後述するように、波形導体3はボビン71(図13参照)に2周回巻き取られる構成となっている。そこで、特に他方側調整屈曲工程P2bでは、他方側接続部35が周回毎に異なるコイル径方向CR位置となるように、波形導体3の他方側接続部35近傍に対して周回毎に異なる形状の屈曲成形を行う。
具体的には、一方側調整屈曲工程P2aでは、一方側接続部33を辺部31に対してコイル径方向CR外側へオフセットさせるように屈曲成形を行う。本実施形態では、後述する第一曲げ工程P5による加工位置よりも搬送方向上流側Faでは、波巻コイル3Cとして成形された状態でのコイル径方向CR外側が鉛直上方となる向きで波形導体3が搬送される。よって、この一方側調整屈曲工程P2aでは、一方側接続部33を辺部31に対して鉛直上方へ持ち上げるように屈曲成形を行う。ここでは、一方側接続部33の近傍の辺部31をクランク状に2回屈曲することにより段差部を形成し、一方側接続部33を辺部31に対して鉛直上方へオフセットさせる。なお、図2〜図11では、図における上方が鉛直上方に一致している。この一方側調整屈曲工程P2aでは、波形導体3の異なる周回となる第一周回部3fと第二周回部3sとで共通の形状に屈曲成形を行う。
一方、他方側調整屈曲工程P2bでは、波形導体3の他方側接続部35近傍に対して周回毎に異なる形状の屈曲成形を行う。本実施形態では、第二周回部3sを構成する他方側接続部35(以下「第二周他方側接続部35S」という。)に対しては屈曲成形を行わず、第一周回部3fを構成する他方側接続部35(以下「第一周他方側接続部35F」という。)のみに対して屈曲成形を行う。具体的には、第一周他方側接続部35Fを、辺部31に対してコイル径方向CR外側へオフセットさせるように屈曲成形を行う。すなわち、この他方側調整屈曲工程P2bでは、他方側接続部35を辺部31に対して鉛直上方へ持ち上げるように屈曲成形を行う。この際の他方側接続部35の辺部31に対するオフセット量は、波形導体3を構成する線状導体3Lの線材幅に相等する量とする。なお、ここでの線状導体3Lの線材幅とは、線状導体3Lを構成する線材のコイル径方向CRの幅(厚さ)である。ここでは、他方側接続部35の近傍の辺部31をクランク状に2回屈曲することにより段差部を形成し、他方側接続部35を辺部31に対して鉛直上方へオフセットさせる。
調整屈曲工程P2の後工程で、他方側屈曲工程P3が行われる。本実施形態では、図4に示すように、他方側屈曲工程P3は、他方側調整屈曲工程P2bに対して2ピッチ(波形2周期)分搬送方向下流側Fbの位置で行われる。図4は、図3に対して2ピッチ間欠搬送した状態を示している。他方側屈曲工程P3は、他方側接続部35を含む波形導体3の波幅方向他方側Wbの一部をコイル径方向CR内側(ここでは鉛直下方)へ屈曲させる工程である。ここでは、この他方側屈曲工程P3により屈曲する波形導体3の波幅方向他方側Wbの一部の部位を、他方側端面形成部位37とする。他方側端面形成部位37は、他方側接続部35を全て含むとともに、当該他方側接続部35に近接する辺部31の一部を含んで構成される。また、本実施形態では、他方側端面形成部位37には、他方側調整屈曲工程P2bにより辺部31をクランク状に屈曲してなる段差部も含まれている。そして、この他方側屈曲工程P3では、他方側端面形成部位37を、当該他方側端面形成部位37よりも波幅方向一方側Waの辺部31に対して所定の屈曲角度となるように屈曲する。本実施形態では、この屈曲角度は略直角としており、第一周回部3fと第二周回部3sとで同じ角度としている。
他方側屈曲工程P3の後工程で、段差加工工程P4が行われる。本実施形態では、図5に示すように、段差加工工程P4は、他方側屈曲工程P3に対して1ピッチ(波形1周期PT)分搬送方向下流側Fbの位置で行われる。図5は、図4に対して2ピッチ間欠搬送した状態を示している。段差加工工程P4は、他方側接続部35の線材長さ方向LL(搬送方向F)における一箇所に段差部35bを形成する工程である。本実施形態では、他方側接続部35に波幅方向W(コイル軸方向)の段差部35bを形成する。具体的には、他方側接続部35における段差部35bに対して搬送方向下流側Fbの部分が、それより搬送方向上流側Faの部分に比べて波幅方向他方側Wbに位置するように段差部35bを形成する。図9にも示すように、この段差部35bは、第一周他方側接続部35Fと第二周他方側接続部35Sの双方に形成する。
段差加工工程P4の後工程で、第一曲げ工程P5及び第二曲げ工程P6が行われる。本実施形態では、図5に示すように、第一曲げ工程P5は、一方側調整屈曲工程P2aに対して4ピッチ(波形4周期)分搬送方向下流側Fbの位置で行われる。一方、図6に示すように、第二曲げ工程P6は、他方側屈曲工程P3に対して3ピッチ(波形3周期)分搬送方向下流側Fbの位置で行われる。第一曲げ工程P5との比較では、第二曲げ工程P6は、第一曲げ工程P5に対して1.5ピッチ(波形1.5周期)分搬送方向下流側Fbの位置で行われる。
第一曲げ工程P5及び第二曲げ工程P6は、図34等に示すように、複数の辺部31がコイル周方向CCに沿って配列されるとともに辺部31の断面形状の向きがコイル径方向CRに対して一定の向きとなるように一方側接続部33及び他方側接続部35を曲げる工程である。これにより、図9から図11等に示すように、この第一曲げ工程P5及び第二曲げ工程P6が終了した波形導体3の部分では、複数の辺部31が、最終的に形成される波巻コイル3Cの略円筒形状の外周面に沿ってコイル周方向CCに配列される。またその状態で、各辺部31の断面形状が、当該波巻コイル3Cの略円筒形状の径方向に沿った向きとなるように形成される。本実施形態では、辺部31の断面形状は矩形状であるので、当該矩形断面における互いに平行な2本の辺がコイル径方向CRに略平行となる向きを、コイル径方向CRに沿った向きとする。ここでは、一方側接続部33を曲げる工程が第一曲げ工程P5であり、他方側接続部35を曲げる工程が第二曲げ工程P6である。第一曲げ工程P5及び第二曲げ工程P6は、いずれも一方側接続部33又は他方側接続部35をコイル径方向CR外側に向かって突状となるように曲げる工程となっている。第一曲げ工程P5の後工程で第二曲げ工程P6を行う。
本実施形態では、第一曲げ工程P5は、図5に示すように、一方側接続部33の略全体を略円弧状に成形する工程である。この第一曲げ工程P5では、一方側接続部33は、コイル径方向CR外側に向かって突状となるように湾曲した略円弧状となるように成形される。この第一曲げ工程P5による成形後における略円弧状の一方側接続部33の曲率半径は、最終的に形成される略円筒状の波巻コイル3Cにおける、一方側接続部33により構成される外周面の半径に等しくなるように成形される。なお、本実施形態では、この第一曲げ工程P5による成形後の一方側接続部33は、当該一方側接続部33の線材長さ方向LL(搬送方向F)における一箇所に段差部33aを有する。この段差部33aは、コイル径方向CRの段差部である。具体的には、一方側接続部33における段差部33aに対して搬送方向下流側Fbの部分が、それより搬送方向上流側Faの部分に比べてコイル径方向CR外側に位置するように段差部33aを形成する。この段差部33aは、第一周回部3fを構成する一方側接続部33(以下「第一周一方側接続部33F」という。)と第二周回部3sを構成する一方側接続部33(以下「第二周一方側接続部33S」という。)の双方に形成する。但し、第一周回部3fと第二周回部3sとでは、一方側接続部33の線材長さ方向LL(搬送方向F)における段差部33aの位置は異なっている。具体的には、第二周一方側接続部33Sに形成された段差部33aの方が、第一周一方側接続部33Fに形成された段差部33aよりも搬送方向上流側Faに位置するように形成されている。このように、第一曲げ工程P5において、一方側接続部33を周回毎に異なる形状となるように成形することにより、図10及び図11に示すように、波形導体3の異なる周回の一方側接続部33が、適切にコイル径方向CRに複数並列配置される。
本実施形態では、第二曲げ工程P6は、図6に示すように、他方側接続部35の一箇所を屈曲して略V字状に成形する工程である。この第二曲げ工程P6では、他方側接続部35は、コイル径方向CR外側に向かって突状となるように屈曲された略V字状となるように成形される。図34にも示すように、この第二曲げ工程P6による成形後における他方側接続部35は、略V字状を構成する直線部分の線材長さ方向LLが、コイル径方向CRに略直交する方向となるように成形される。なお、本実施形態では、他方側接続部35における段差部35bとほぼ同じ位置に、第二曲げ工程P6による屈曲部35cが設定されている。図10に示すように、この第二曲げ工程P6により、第一周他方側接続部35Fと第二周他方側接続部35Sの双方が、略V字状に成形される。但し、第一周回部3fと第二周回部3sとでは、他方側接続部35の屈曲形状は異なっている。
具体的には、図10及び図11に示すように、最終的に形成される略円筒状の波巻コイル3Cの状態で、第一周他方側接続部35Fと第二周他方側接続部35Sとは、コイル径方向CRに互いに隣接して配置される。このような配置構成は、図10の部分拡大図である図12に示すように、波形導体形成工程P1によって第二周他方側接続部35Sに凹部35aが形成されているとともに、他方側調整屈曲工程P2bによって第一周他方側接続部35Fが辺部31に対して波幅方向他方側Wbへオフセットするように屈曲成形されていることにより実現されている。すなわち、第二周他方側接続部35Sの凹部35aに、第一周他方側接続部35Fの波幅方向他方側Wbへオフセットされた部分が入り込むことにより、第一周他方側接続部35Fと第二周他方側接続部35Sとが波幅方向W(コイル軸方向)に同じ位置となるように配置される。この状態で、第二周他方側接続部35Sは、第一周他方側接続部35Fに対してコイル径方向CR外側に隣接配置される。ところで、第二曲げ工程P6による第二周他方側接続部35Sの屈曲成形は、当該第二周他方側接続部35Sが、既に略V字状に屈曲成形された第一周他方側接続部35Fに対してコイル径方向CR外側に配置された状態で行う。そこで、本実施形態では、第二周他方側接続部35Sを、既に屈曲された第一周他方側接続部35Fに沿わせて一箇所で屈曲させることにより、第一周他方側接続部35Fに沿った略V字状となるように成形する。このように、第二曲げ工程P6において、他方側接続部35を周回毎に異なる形状となるように成形することにより、図10から図12に示すように、波形導体3の異なる周回の他方側接続部35が、適切にコイル径方向CRに複数並列配置される。
巻き取り工程P7は、第一曲げ工程P5及び第二曲げ工程P6により曲げ加工を行った波形導体3をボビン71(図13参照)に巻き取る工程である。図2から図12では、ボビン71は省略しているが、図6から図11に示すように、第一曲げ工程P5及び第二曲げ工程P6の双方が終了した波形導体3の部分は、最終的に形成される波巻コイル3Cの略円筒形状に形成される。巻き取り工程P7では、このように略円筒状に成形された波形導体3の部分をボビン71に巻き取っていく。具体的には、図6に示す状態では、搬送方向Fにおける最も下流側の他方側接続部35及び一方側接続部33の双方について第一曲げ工程P5及び第二曲げ工程P6が終了しており、これらの他方側接続部35及び一方側接続部33の両端に接続されている3本の辺部31を含む波形導体3の部分が略円筒状に形成され、ボビン71に巻き取られている。その後、図7に示す第一曲げ工程P5を経て図8に示すように第二曲げ工程P6が行われると、次の波形1周期PT分の波形導体3が巻き取り工程P7によりボビン71に巻き取られる。以降同様に、第一曲げ工程P5及び第二曲げ工程P6が行われることにより、巻き取り工程P7では、波形1周期PT分ずつの波形導体3がボビン71に巻き取られていく。
本実施形態では、第二曲げ工程P6が第一曲げ工程P5の後工程となっており、第二曲げ工程P6が終了した時点で、当該第二曲げ工程P6による加工位置よりも搬送方向下流側Fbの波形導体3が、最終的な波巻コイル3Cの略円筒状に形成される。したがって、本実施形態では、巻き取り工程P7は第二曲げ工程P6と同期して行われ、第二曲げ工程P6の終了と同時に波形1周期PT分の波形導体3の巻き取り工程P7も終了する。この第二曲げ工程P6と巻き取り工程P7とを同時に行う際における波形導体3及びボビン71の動作については後で詳細に説明する。図9から図11に示すように、この巻き取り工程P7では、最終的にはボビン71に波形導体3が2周回巻き取られ、当該2周回の巻き取り後には、波形導体3の異なる周回の辺部31がコイル径方向CRに2本配列される。
2.コイル製造装置の全体の構成
次に、本実施形態に係るコイル製造方法を実行するためのコイル製造装置1の全体の構成について概略的に説明する。本実施形態に係るコイル製造装置1は、図13に示すように、波形導体形成工程P1を実行するための波形導体形成機構11、一方側調整屈曲工程P2aを実行するための一方側調整屈曲機構12、他方側調整屈曲工程P2bを実行するための他方側調整屈曲機構13、他方側屈曲工程P3を実行するための他方側屈曲機構14、段差加工工程P4を実行するための段差加工機構15、第一曲げ工程P5を実行するための第一曲げ機構5、第二曲げ工程P6を実行するための第二曲げ機構6、巻き取り工程P7を実行するための巻き取り機構7、及び搬送工程Pfを実行するための搬送機構4を有する。
本実施形態では、各機構は、波形導体3の搬送方向Fに沿って以下のような順序で配置されている。すなわち、図13に示すように、搬送方向Fにおける最も上流側に波形導体形成機構11が配置されている。また、当該波形導体形成機構11から搬送方向下流側Fbへ向かって、一方側調整屈曲機構12、他方側調整屈曲機構13、他方側屈曲機構14、段差加工機構15の順に配置されている。そして、段差加工機構15に対して搬送方向下流側Fbに、第一曲げ機構5、第二曲げ機構6、及び巻き取り機構7が配置されている。
本実施形態では、第一曲げ機構5は、波形導体3を下方へ湾曲させるように曲げ加工を行う。従って、図6から図10に示すように、第一曲げ機構5による加工位置よりも搬送方向下流側Fbでは、波形導体3の搬送方向Fは次第に下方へ湾曲する方向となっている。第二曲げ機構6は、このように下方へ湾曲してくる波形導体3の搬送方向Fに沿って、第一曲げ機構5による加工位置よりも搬送方向下流側Fbに配置されている。具体的には、第二曲げ機構6は、第一曲げ機構5による加工位置に対して、波形導体3の波形1周期PT分以上(ここでは波形1.5周期分)搬送方向下流側Fbに離れた位置に配置されている。そして、第二曲げ機構6は、波形導体3を略円筒状に成形すべく、波形導体3に対して第一曲げ機構5と同じ方向への曲げ加工を行う。これにより、波形導体3はコイル径方向CR内側へ巻き込むように曲げられ、第二曲げ機構6による加工位置よりも搬送方向下流側Fbの波形導体3の部分が略円筒形状に成形される。巻き取り機構7を構成するボビン71は、第一曲げ機構5の加工位置に対して下方に配置され、第一曲げ機構5及び第二曲げ機構6により曲げられて略円筒状に成形される波形導体3を適切に巻き取ることができるように構成されている。従って、第二曲げ機構6による加工位置よりも搬送方向下流側Fbでは、波形導体3の搬送方向Fは波形導体3がボビン71に巻き取られる方向(ボビン71の回転方向)に沿って湾曲する方向となっている。
搬送機構4は、波形導体3の搬送を行う搬送工程Pfを実行するための機構である。そのため、搬送機構4は、コンベア41及び当該コンベア41を駆動する搬送駆動機構42を備えている。コンベア41は、その搬送面上に波形導体3を載せ、当該波形導体3を搬送方向下流側Fbへ向けて搬送する。ここでは、コンベア41は、波形導体形成機構11から第一曲げ機構5までの間における波形導体3の搬送を行う。搬送駆動機構42は、コンベア41を駆動する機構である。本実施形態では、搬送機構4は、波形導体3の波形1周期PTを1ピッチとして間欠搬送を行う。従って、搬送駆動機構42は、波形導体3の波形1周期PT分に相当する移動量のコンベア41の駆動と停止とを所定の時間間隔で繰り返し行う。以下では、このコイル製造装置1を構成する各機構の構成及び各機構により実行される各製造工程の詳細について説明する。
3.波形導体形成工程及び波形導体形成機構
まず、波形導体形成工程P1及び波形導体形成機構11について説明する。波形導体形成機構11は、波形導体形成工程P1を実行するための機構であり、略直線状の線状導体3Lを略矩形波状に成形するための屈曲加工を行う機構となっている。図14から図16に示すように、波形導体形成機構11は、線状導体3Lの各部を保持するための第一保持体11aから第五保持体11eまでの5つの保持体を有して構成されている。これら5つの保持体11a〜11eは、それぞれ直線状の線状導体3Lが嵌め込まれて保持される直線状の溝部11fを備えているとともに、第一保持体11aから第五保持体11eまでこの順で直列に連結されている。隣接する2つの保持体間は、回転軸11gを介して相対回転可能な状態で連結されている。
これら5つの保持体11a〜11eは、図14に示すように、全ての保持体の溝部11fが直線状に配列可能に構成されている。2つの保持体間を連結する回転軸11gの中心は、いずれもこの直線状に配列された溝部11fに沿って配置されている。そして、図15及び図16に示すように、5つの保持体11a〜11eは、回転軸11gを回転中心として所定の方向に相対回転し、溝部11f内に保持された線状導体3Lを2つの保持部間で屈曲成形する。この際、2つの保持部間は、所定の方向に略直角に屈曲可能に構成されている。ここでは、図14から図16に示す平面視で、第一保持体11a−第二保持体11b間及び第二保持体11b−第三保持体11c間が時計周りに屈曲され、第三保持体11c−第四保持体11d間及び第四保持体11d−第五保持体11e間が反時計周りに屈曲される。また、これら2つの保持部間には、回転軸11gに対する屈曲方向内側に、円柱状の屈曲型11h(屈曲ピン)が設けられている。従って、図15及び16に示すように、隣接する2つの保持部間が屈曲されることにより、各保持部11a〜11eの溝部11fに保持された線状導体3Lは、各保持部間において屈曲型11hの外周面に沿って屈曲される。なお、図4等に示すように、第二周他方側接続部35Sでは、辺部31との接続部分に凹部35aを形成するため、各回転軸11gの周辺に配置される屈曲型11hの配置等が図示のものとは異なる第二周回部3s用の波形導体形成機構11を用いる。
波形導体形成工程P1では、このような波形導体形成機構11を用いて、直線状の線状導体3Lを、線材長さ方向LLにおける4箇所で略直角に屈曲して略S字状の波形1周期PT分の波形導体3を成形する。この際、線状導体3Lは、円柱状の屈曲型11hの外周面に沿って屈曲されるので、波形導体3の各屈曲部の形状は略円弧状に成形される。なお、屈曲型11hの形状は円柱状に限定されるものではなく、少なくとも線状導体3Lに接する部分に円弧面を有する形状の型であれば好適に用いることができる。従って、例えば、線状導体3Lに接する部分のみが円弧面とされ、他の部分が一又は二以上の平面の組合せからなる外面を有する部材を屈曲型11hとしても好適である。
4.調整屈曲工程及び調整屈曲機構、並びに他方側屈曲工程及び他方側屈曲機構
次に、一方側調整屈曲工程P2a、他方側調整屈曲工程P2b、及び他方側屈曲工程P3、並びにこれらを実行するための一方側調整屈曲機構12、他方側調整屈曲機構13、及び他方側屈曲機構14について説明する。
一方側調整屈曲機構12は、一方側調整屈曲工程P2aを実行するための機構であり、一方側接続部33のコイル径方向CRの位置が適切な位置となるように、一方側接続部33近傍の辺部31の屈曲加工を行う機構となっている。本実施形態では、図3の一方側調整屈曲工程P2aの加工位置における波形導体3の形状に示されるように、一方側調整屈曲機構12は、一方側接続部33の近傍の辺部31をクランク状に2回屈曲することにより段差部を形成し、一方側接続部33を辺部31に対して鉛直上方(コイル径方向CR外側)へオフセットさせる屈曲加工を行う。
他方側調整屈曲機構13は、他方側調整屈曲工程P2bを実行するための機構であり、他方側接続部35のコイル径方向CRの位置が適切な位置となるように、他方側接続部35近傍の辺部31の屈曲加工を行う機構となっている。本実施形態では、図3の他方側調整屈曲工程P2bの加工位置における波形導体3の形状に示されるように、他方側調整屈曲機構13は、他方側接続部35の近傍の辺部31をクランク状に2回屈曲することにより段差部を形成し、他方側接続部35を辺部31に対して鉛直上方(コイル径方向CR外側)へオフセットさせる屈曲加工を行う。
他方側屈曲機構14は、他方側屈曲工程P3を実行するための機構であり、他方側接続部35を含む他方側端面形成部位37をコイル径方向CR内側へ屈曲させる屈曲加工を行う機構となっている。本実施形態では、図4の他方側屈曲工程P3の加工位置における波形導体3の形状に示されるように、他方側屈曲機構14は、他方側端面形成部位37を、当該他方側端面形成部位37よりも波幅方向一方側Waの辺部31に対して所定の屈曲角度(ここでは略直角)となるように屈曲させる屈曲加工を行う。
一方側調整屈曲機構12、他方側調整屈曲機構13、及び他方側屈曲機構14は、いずれも辺部31をコイル径方向CRに屈曲させる屈曲加工を行う機構であり、屈曲方向や屈曲角度が異なるだけであるため、各屈曲機構12〜14を同様の機構を用いて構成することができる。そこで、このような屈曲機構12〜14の具体的構成の例について、図17及び図18に示す他方側調整屈曲機構13の例を用いて説明することとし、一方側調整屈曲機構12及び他方側屈曲機構14の説明は省略する。
図17及び図18に示すように、他方側調整屈曲機構13は、いずれも円柱状の内周型13b(内周ピン)と外周型13c(外周ピン)とが対向配置されているとともに、外周型13cが内周型13bの軸心を回転中心として揺動可能とされた屈曲具13aを備えている。本実施形態では、外周型13cは波幅方向Wの端部側(ここでは波幅方向他方側Wb)へ向かって揺動する。また、他方側調整屈曲機構13は、外周型13cに対して波幅方向Wの中央側(ここでは波幅方向一方側Wa)に配置されて屈曲時に辺部31が線材幅方向LWに移動しないように支持する支持部材13dも備えている。ここでは、支持部材13dは、辺部31を挟んで対向配置された2本の円柱状部材(支持ピン)により構成されている。
そして、図18に示すように、内周型13bと外周型13cとの間及び支持部材13dを構成する2本の円柱状部材の間に辺部31が挿入された状態で、屈曲具13aを揺動させることにより、外周型13cが内周型13bの軸心を回転中心として揺動し、辺部31の一箇所が内周型13bの外周面に沿って屈曲される。これにより、辺部31の線材長さ方向LLの一部が略円弧状に屈曲成形される。支持部材13dは、外周型13cに対して当該外周型13cの揺動方向とは反対側となる波幅方向Wの中央側(波幅方向一方側Wa)において辺部31を挟持し、辺部31が線材幅方向LWの外周型13c側に移動しないように支持している。これにより、支持部材13dは、屈曲加工に際して辺部31に作用する回転モーメントによって、辺部31の屈曲加工位置よりも波幅方向Wの中央側(波幅方向一方側Wa)の部分が回転しないように支持する機能を果たす。なお、内周型13b及び外周型13cの形状は円柱状に限定されるものではなく、少なくとも辺部31に接する部分に円弧面を有する形状の型であれば好適に用いることができる。従って、例えば、辺部31に接する部分のみが円弧面とされ、他の部分が一又は二以上の平面の組合せからなる外面を有する部材を内周型13b又は外周型13cとしても好適である。また、支持部材13dは円柱状部材に限定されるものではなく、直方体形状等の各種形状の部材を用いることができる。
また、屈曲具13a及び支持部材13dは、加工対象の辺部31に対して接近又は離間する方向、ここでは内周型13b及び外周型13cの中心軸に平行な方向に移動可能に構成されている。そして、屈曲具13a及び支持部材13dが辺部31側へ移動した状態で、内周型13bと外周型13cとの間及び支持部材13dを構成する2本の円柱状部材の間に辺部31が挿入されるように構成されている。本実施形態では、屈曲具13a及び支持部材13dは、共通のベース部材13eによって波形導体3の搬送面の高さに支持されている。ここで、支持部材13dは、ベース部材13eに固定されているが、屈曲具13aはベース部材13eに回転可能に支持されている。本実施形態では、ベース部材13eとともに屈曲具13a及び支持部材13dが、加工対象の辺部31に対して接近又は離間する方向に移動可能に構成されている。また、ベース部材13eは、波幅方向Wにも移動可能に構成されている。これにより、他方側調整屈曲機構13は、屈曲具13a及び支持部材13dを辺部31の線材長さ方向LLに移動させ、辺部31の適宜の位置を屈曲可能とされているともに、波形導体3の間欠搬送時には波幅方向Wに波形導体3から離れる方向に移動して波形導体3の搬送を容易とする。また、本実施形態では、他方側接続部35の両端に接続された互いに平行な2本の辺部31を同時に屈曲すべく、2つの他方側調整屈曲機構13が対向配置されている。これら2つの他方側調整屈曲機構13は、互いに鏡対称に配置され、鏡対称に動作する。
他方側調整屈曲工程P2bでは、このような他方側調整屈曲機構13を用いて、図3に示すように、他方側接続部35の近傍の辺部31をクランク状に2回屈曲することにより段差部を形成し、他方側接続部35を辺部31に対して鉛直上方へオフセットさせる。同様に、一方側調整屈曲工程P2aでは、上記他方側調整屈曲機構13と同様の構成である一方側調整屈曲機構12を用いて、図3に示すように、一方側接続部33の近傍の辺部31をクランク状に2回屈曲することにより段差部を形成し、一方側接続部33を辺部31に対して鉛直上方へオフセットさせる。他方側屈曲工程P3では、上記他方側調整屈曲機構13と同様の構成である他方側屈曲機構14を用いて、図4に示すように、他方側接続部35を含む他方側端面形成部位37を、当該他方側端面形成部位37よりも波幅方向一方側Waの辺部31に対して所定の屈曲角度(ここでは略直角)となるように1回屈曲させる。
5.段差加工工程及び段差加工機構
次に、段差加工工程P4及び段差加工機構15について説明する。段差加工機構15は、段差加工工程P4を実行するための機構であり、他方側接続部35の線材長さ方向LL(搬送方向F)における一箇所に段差部35bを形成するための屈曲加工を行う機構となっている。図19及び図20に示すように、段差加工機構15は、いずれも円柱状の内周型15b(内周ピン)と外周型15c(外周ピン)とが対向配置されているとともに、外周型15cが内周型15bの軸心を回転中心として揺動可能とされた屈曲具15aを備えている。本実施形態では、外周型15cは他方側接続部35の線材長さ方向LL一方側(ここでは搬送方向下流側Fb)へ向かって揺動する。また、段差加工機構15は、外周型15cに対して当該外周型15cの揺動方向とは反対側(ここでは搬送方向上流側Fa)に配置されて屈曲時に他方側接続部35が線材幅方向LWに移動しないように支持する支持部材15dも備えている。ここでは、支持部材15dは、他方側接続部35に対して当該他方側接続部35の線材幅方向LWにおける外周型15c側に配置された1本の円柱状部材(支持ピン)により構成されている。更に、段差加工機構15は、外周型15cに対して当該外周型15cの揺動方向側(ここでは搬送方向下流側Fb)に配置されて、屈曲時に他方側接続部35における外周型15cの揺動方向側の部分が屈曲前の他方側接続部35の線材長さ方向LLに平行になるように当接して支持する当接型15eも備えている。ここでは、当接型15eは、他方側接続部35に対して当該他方側接続部35の線材幅方向LWにおける内周型15b側に配置された1本の角柱状部材により構成されている。
そして、図20に示すように、内周型15bと外周型15cとの間に他方側接続部35が挿入された状態で、屈曲具15aを揺動させることにより、外周型15cが内周型15bの軸心を回転中心として揺動し、他方側接続部35の一箇所が内周型15bの外周面に沿って屈曲される。この際、他方側接続部35における外周型15cの揺動方向側の部分が内周型15b側に旋回しようとするが、当該部分が当接型15eに当接することにより当該部分の旋回が抑えられる。これにより、他方側接続部35における外周型15cの揺動方向側の部分は、屈曲前の他方側接続部35の線材長さ方向LLに平行に保持され、他方側接続部35の線材長さ方向LL(搬送方向F)における一箇所に段差部35bが形成される。具体的には、他方側接続部35における段差部35bに対して搬送方向下流側Fbの部分が、それより搬送方向上流側Faの部分に比べて波幅方向他方側Wb(内周型15b側)に位置するように段差部35bが形成される。支持部材15dは、外周型15cに対して当該外周型15cの揺動方向とは反対側(ここでは搬送方向上流側Fa)において、他方側接続部35が線材幅方向LWの外周型15c側に移動しないように支持している。これにより、支持部材15dは、屈曲加工に際して他方側接続部35に作用する回転モーメントによって、他方側接続部35の屈曲加工位置対して外周型15cの揺動方向とは反対側の部分が回転しないように支持する機能を果たす。なお、内周型15b及び外周型15cの形状は円柱状に限定されるものではなく、少なくとも他方側接続部35に接する部分に円弧面を有する形状の型であれば好適に用いることができる。従って、例えば、他方側接続部35に接する部分のみが円弧面とされ、他の部分が一又は二以上の平面の組合せからなる外面を有する部材を内周型15b又は外周型15cとしても好適である。また、支持部材15d及び当接型15eの形状も上記の例に限定されるものではなく、各種形状の部材を用いることができる。
また、屈曲具15a、支持部材15d、及び当接型15eは、加工対象の他方側接続部35に対して接近又は離間する方向、ここでは内周型15b及び外周型15cの中心軸に平行な方向に移動可能に構成されている。そして、屈曲具15a、支持部材15d、及び当接型15eが他方側接続部35側へ移動した状態で、内周型15bと外周型15cとの間に他方側接続部35が挿入されるように構成されている。本実施形態では、屈曲具15a、支持部材15d、及び当接型15eは、共通のベース部材15fによって支持されている。ここで、支持部材15d及び当接型15eは、ベース部材15fに固定されているが、屈曲具15aはベース部材15fに回転可能に支持されている。本実施形態では、ベース部材15fとともに屈曲具15a、支持部材15d、及び当接型15eが、加工対象の他方側接続部35に対して接近又は離間する方向に移動可能に構成されている。
6.第一曲げ工程及び第一曲げ機構
次に、第一曲げ工程P5及び第一曲げ機構5について説明する。第一曲げ機構5は、第一曲げ工程P5を実行するための機構であり、一方側接続部33をコイル径方向CR外側に向かって突状となるように曲げる加工を行う機構となっている。本実施形態では、図5の第一曲げ工程P5の加工位置における波形導体3の形状に示されるように、第一曲げ機構5は、一方側接続部33の略全体を略円弧状に湾曲成形する湾曲加工を行う。
図21から図24に示すように、第一曲げ機構5は、略円弧状の固定成形面55を有する固定型51と、固定成形面55に対向する略円弧状の可動成形面56を有し、所定の揺動支点53を中心に揺動可能に構成された可動型52と、を備えている。そして、搬送機構4(図13参照)により、固定成形面55と可動成形面56との間に波形導体3の一方側接続部33が搬送供給される。ここで、搬送機構4は、固定成形面55の搬送方向上流側端部55aの接線に略一致するように設定された搬送線57に沿って波形導体3の一方側接続部33を搬送する構成とされている。そして、可動型52の揺動支点53は、搬送線57よりも可動型52側であって、固定成形面55の搬送方向上流側端部55aよりも搬送方向上流側Faに配置されている。固定型51及び可動型52は、一方側接続部33を固定成形面55と可動成形面56との間で加圧してコイル周方向CC(図11参照)に沿って湾曲した略円弧状に成形する。この第一曲げ工程P5及び第一曲げ機構5では、波形導体3の一方側接続部33が曲げ加工の対象となる対象接続部である。また、この対象接続部としての一方側接続部33を含む波形導体3(線状導体3L)は線材であり、この線材を略円弧状に成形するための装置を線材成形装置2とすると、第一曲げ機構5と搬送機構4とにより線材成形装置2が構成される。
固定型51は、ベース部材59に固定された型であり、略円弧状の固定成形面55を有している。この固定型51は、固定成形面55の搬送方向上流側端部55aの接線が、波形導体3の一方側接続部33が搬送される搬送線57に略一致するような位置に配置されている。固定成形面55は、可動型52(可動成形面56)側に向かって突状となる略円弧状とされている。固定成形面55の曲率半径は、最終的に形成される略円筒状の波巻コイル3Cにおける、一方側接続部33により構成される外周面の半径にほぼ等しく設定されている。但し、本実施形態では、固定成形面55は、当該面の延在方向に段差部55bを有している。従って、ここでは固定成形面55の段差部55b以外の円弧状面の曲率半径が上記のとおりに設定されている。なお、段差部55bは、搬送方向下流側Fbの部分が、それより搬送方向上流側Faの部分に比べて径方向外側に位置するように設定されている。
第一曲げ機構5は、固定成形面55の搬送方向上流側端部55a付近に、波形導体3を保持する保持機構54を備えている。本実施形態においては、保持機構54は、搬送線57側に対向する面に形成された凹溝54aを有し、固定型51に一体的に固定された柱状の保持部材により構成されている。そして、凹溝54a内に波形導体3の辺部31が挿入されることにより、波形導体3の当該辺部31が搬送方向Fに移動しないように保持される。これにより、第一曲げ機構5による一方側接続部33の加工時に、保持機構54よりも搬送方向上流側Faの波形導体3が第一曲げ機構5側(搬送方向下流側Fb)に引き込まれることを防止し、第一曲げ工程P5が搬送方向上流側Faの各工程に影響を与えることを効果的に抑制できる。
可動型52は、ベース部材59に支持された揺動支点53を中心に揺動可能に構成された型であり、固定成形面55に対向する略円弧状の可動成形面56を有している。可動成形面56は、固定成形面55の形状に対応する形状、具体的には、可動型52が固定型51側へ揺動した状態で、固定成形面55との間に一方側接続部33の線材幅と同程度の一定の隙間を有して固定成形面55に対向する形状とされている。従って、可動成形面56は、固定型51(固定成形面55)側に向かって凹状となる略円弧状とされている。可動成形面56の曲率半径は、上述した固定成形面55と同様に、最終的に形成される略円筒状の波巻コイル3Cにおける、一方側接続部33により構成される外周面の半径にほぼ等しく設定されている。但し、本実施形態では、可動成形面56は、当該面の延在方向に段差部56bを有している。従って、ここでは可動成形面56の段差部56b以外の円弧状面の曲率半径が上記のとおりに設定されている。なお、段差部56bは、搬送方向下流側Fbの部分が、それより搬送方向上流側Faの部分に比べて径方向外側に位置するように設定されている。また、本実施形態では、可動型52におけるベース部材59に接する側とは反対側の側面にガイド部58が設けられている。このガイド部58は、図24に示すように、固定型51側へ向かうに従って可動型52から離れる側へ傾斜した傾斜ガイド面58aを有している。これにより、ガイド部58は、一方側接続部33が固定成形面55から波幅方向他方側Wbへはみ出している場合には、可動型52が固定型51側へ揺動した際に、傾斜ガイド面58aが一方側接続部33に接して当該一方側接続部33を固定成形面55側へ押し込む機能を果たす。
可動型52の揺動支点53は、搬送線57よりも可動型52側であって、固定成形面55の搬送方向上流側端部55aよりも搬送方向上流側Faの領域内に配置されている。本実施形態では、更に、揺動支点53は、固定成形面55の搬送方向下流側端部55cの接線である固定成形面下流側接線55dよりも固定型51側に配置されている。すなわち、ここでは、揺動支点53は、搬送線57と固定成形面下流側接線55dとの間であって、固定成形面55の搬送方向上流側端部55aよりも搬送方向上流側Faの領域内に配置されている。図23には、この領域を支点配置可能領域5Aとして示している。可動型52の揺動支点53は、この支点配置可能領域5A内のいずれかの位置に配置される。揺動支点53をこのような支点配置可能領域5A内に配置することにより、可動型52及び可動成形面56は、固定型51及び固定成形面55に対して、図25の(a)から(e)に示すような位置関係で揺動する。これらの図から明らかなように、揺動支点53を支点配置可能領域5A内に配置すると、可動成形面56と固定成形面55との距離D5が、搬送方向上流側端部55aにおいて最も短くなるように設定される。従って、図25の(c)及び(d)に表れているように、可動型52の揺動方向における固定型51側の終端位置の直前での可動成形面56と固定成形面55との距離D5も、搬送方向上流側端部55aにおいて最も短くなるように設定されている。これにより、第一曲げ機構5による一方側接続部33の加工時に、一方側接続部33の搬送方向上流側Faの端部がそれより搬送方向下流側Fbの部分に比べて先に固定型51と可動型52との間に挟まれて動きにくい状態とされる。従って、第一曲げ工程P5を実行するに際して、第一曲げ機構5よりも搬送方向上流側Faの波形導体3が第一曲げ機構5側(搬送方向下流側Fb)に引き込まれることを防止し、第一曲げ工程P5が搬送方向上流側Faの各工程に影響を与えることを効果的に抑制できる。また、揺動支点53をこのような支点配置可能領域5A内に配置すると、一方側接続部33の表面に対して摺動する方向の可動成形面56の動きが非常に少なく抑えられるので、一方側接続部33の表面に設けられた絶縁皮膜の傷付き等を抑制することができる。
第一曲げ工程P5では、図25の(a)から(e)に示すように、可動型52が固定型51側へ揺動することにより、固定成形面55と可動成形面56との間に搬送供給された波形導体3の一方側接続部33が固定成形面55と可動成形面56との間で加圧され、固定成形面55と可動成形面56との間の隙間の形状に沿った略円弧状となるように湾曲成形される。この際、固定成形面55及び可動成形面56は、上記のとおり、それぞれ段差部55b、56bを有している。従って、一方側接続部33には、これらの段差部55b、56bの形状に従って図5に示すような段差部33aが形成される。
第一曲げ機構5は、波形導体3の一方側接続部33に接近又は離間する方向、ここでは波幅方向Wに移動可能であって一方側接続部33側へ移動した状態で固定型51と可動型52との間に一方側接続部33が挿入されるように構成されている。本実施形態では、図22に示すように、第一曲げ機構5の各部を支持するベース部材59が、搬送機構4やボビン71を支持する支持フレーム77に対して波幅方向Wに相対的に移動可能とされている。これにより、第一曲げ機構5を構成する固定型51、可動型52、及び保持機構54が一体的に波幅方向Wに移動可能とされている。そして、第一曲げ機構5は、搬送機構4による波形導体3の間欠搬送に同期して、当該間欠搬送時に波形導体3から離間する方向(波幅方向一方側Wa)に移動し、間欠搬送後の波形導体3の停止時に波形導体3に接近する方向(波幅方向他方側Wb)に移動するように構成されている。
また、本実施形態では、第一曲げ工程P5では、周回毎に異なる形状となるように一方側接続部33を成形する。具体的には、上記のとおり、第一周回部3fを構成する第一周一方側接続部33Fと第二周回部3sを構成する第二周一方側接続部33Sとで、一方側接続部33の線材長さ方向LL(搬送方向F)における段差部33aの位置が異なるように成形する。これは、図10及び図11に示すように、波形導体3の異なる周回の一方側接続部33が、適切にコイル径方向CRに複数並列配置されるようにするためである。そこで、図示は省略するが、第一曲げ機構5は、異なる形状で一方側接続部33を曲げる複数の成形型を周回毎に交換可能に備える構成となっている。具体的には、固定型51及び可動型52の組を複数組備え、周回毎に交換可能な構成としている。例えば、ベース部材59が波形導体3の搬送面に直交する軸周りに回転可能に支持され、当該ベース部材59の複数の面のそれぞれに固定型51及び可動型52を含む第一曲げ機構5が備えられた構成とすると好適である。
図26(a)は第一曲げ工程P5による加工前の状態及び加工中のボビン71の移動軌跡を示し、図26(b)は第一曲げ工程P5による加工後の状態を示している。この図26に示すように、第一曲げ工程P5では、第一曲げ工程P5の加工位置を中心として波形導体3の搬送方向下流側Fbの部分が旋回するように加工を行う。ここで、第一曲げ工程P5の加工位置としては、第一曲げ工程P5により加工される一方側接続部33の実際に曲がっている位置が相当する。本実施形態では、上記のとおり、固定成形面55と可動成形面56との間で一方側接続部33が加圧されるに従い、一方側接続部33の各部が次第に湾曲されて最終的に略円弧状に形成される。この際、第一曲げ工程P5の加工位置は、固定成形面55及び可動成形面56と一方側接続部33との当接状態に応じて一方側接続部33の線材長さ方向LLに移動する。第一曲げ工程P5では、このように移動する第一曲げ工程P5の加工位置を中心として、当該加工位置より搬送方向下流側Fbの波形導体3の部分がコイル径方向CR内側へ向かって旋回する。
ところで、波形導体3は、第一曲げ工程P5の加工位置より搬送方向下流側Fbにおいてボビン71に巻き掛けられて保持されている。具体的には、第一曲げ工程P5の加工位置より搬送方向下流側Fbの一部の辺部31が、ボビン71の外周面71Cに設けられた挿入溝75に挿入されて保持されている。そこで、第一曲げ工程P5を実行するに際しては、このようなボビン71に巻き掛けられている波形導体3の部分の移動軌跡に応じてボビン71の中心軸71Aを移動させる。図26(a)には、このようなボビン71の中心軸71Aの理想的な移動軌跡を第一理想移動軌跡E1として一点鎖線で示している。この第一理想移動軌跡E1に従ってボビン71の中心軸71Aを移動させれば、第一曲げ工程P5の加工位置より搬送方向下流側Fbの波形導体3がほとんど弾性変形しない状態で第一曲げ工程P5を行うことができる。但し、本実施形態では、ボビン移動機構73を簡略化するため、ボビン71の中心軸71Aを直線状の移動軌跡である直線移動軌跡E4に沿って移動させることとしている。この直線移動軌跡E4は、第一理想移動軌跡E1に近似して設定された直線状の軌跡であり、ここでは、略円弧状となっている第一理想移動軌跡E1の始点と終点とを結ぶ直線状の軌跡として設定している。波形導体3は比較的大きい弾性を有しており、第一理想移動軌跡E1に対する直線移動軌跡E4のずれは、第一曲げ工程P5の加工位置より搬送方向下流側Fbの波形導体3の弾性変形領域内に収まっている。従って、このような直線移動軌跡E4に沿ってボビン71の中心軸71Aを移動させても、波形導体3が塑性変形することはない。
7.第二曲げ工程及び第二曲げ機構、並びに巻き取り工程
次に、第二曲げ工程P6及び第二曲げ機構6について説明する。第二曲げ機構6は、第二曲げ工程P6を実行するための機構であり、他方側接続部35をコイル径方向CR外側に向かって突状となるように曲げる加工を行う機構となっている。本実施形態では、図6の第二曲げ工程P6の加工位置における波形導体3の形状に示されるように、第二曲げ機構6は、他方側接続部35の一箇所を屈曲して略V字状に屈曲成形する屈曲加工を行う。この第二曲げ工程P6及び第二曲げ機構6では、波形導体3の他方側接続部35が曲げ加工の対象となる対象接続部である。また、この対象接続部としての他方側接続部35を略V字状に屈曲成形する第二曲げ工程P6が接続部曲げ工程であり、そのための第二曲げ機構6が接続部曲げ機構である。
図21、図22、及び図27に示すように、本実施形態では、第二曲げ機構6は、いずれも円柱状の内周型62(内周ピン)と外周型63(外周ピン)とが対向配置されているとともに、外周型63が内周型62の軸心を回転中心として揺動可能とされた屈曲具61を備えている。そして、第二曲げ工程P6では、他方側接続部35の一箇所を内周型62に沿わせて屈曲させることにより、他方側接続部35の線材長さ方向LLの一部を略円弧状に成形して他方側接続部35の全体を略V字状とする屈曲成形を行う。この際、他方側接続部35を挟んで内周型62に対向するように配置した外周型63を、内周型62の軸心を回転中心として揺動させて他方側接続部35を屈曲させる。本実施形態では、外周型63は搬送方向上流側Fa(線材長さ方向LL他方側)へ向かって揺動する。また、第二曲げ機構6は、他方側接続部35における外周型63に対して搬送方向下流側Fb(線材長さ方向LL一方側)の部分を少なくとも線材幅方向LWの外周型63側に移動しないように支持するための支持部材64を備えている。すなわち、この支持部材64は、線材長さ方向LLにおける外周型63の揺動方向とは反対側であって線材幅方向LWにおける外周型63側を支持するように配置される。ここでは、支持部材64は、他方側接続部35に接するように配置された円柱状部材(支持ピン)により構成されている。
そして、図27に示すように、第二曲げ工程P6では、内周型62と外周型63との間に他方側接続部35が挿入された状態で、屈曲具61を揺動させることにより、外周型63が内周型62の軸心を回転中心として揺動し、他方側接続部35の一箇所が内周型62の外周面に沿って屈曲される。これにより、他方側接続部35の線材長さ方向LLの一部が略円弧状に屈曲成形される。支持部材64は、外周型63に対して当該外周型63の揺動方向とは反対側となる搬送方向下流側Fbにおいて他方側接続部35の外周型63側の側面に当接し、他方側接続部35が線材幅方向LWの外周型63側に移動しないように支持している。これにより、支持部材64は、屈曲加工に際して他方側接続部35に作用する回転モーメントによって、他方側接続部35の屈曲加工位置よりも搬送方向下流側Fbの部分が回転しないように支持する機能を果たす。なお、内周型62及び外周型63の形状は円柱状に限定されるものではなく、少なくとも他方側接続部35に接する部分に円弧面を有する形状の型であれば好適に用いることができる。従って、例えば、他方側接続部35に接する部分のみが円弧面とされ、他の部分が一又は二以上の平面の組合せからなる外面を有する部材を内周型62又は外周型63としても好適である。また、支持部材64は円柱状部材に限定されるものではなく、直方体形状等の各種形状の部材を用いることができる。
また、屈曲具61及び支持部材64は、加工対象の他方側接続部35に対して接近又は離間する方向、ここでは内周型62及び外周型63の中心軸に平行な方向(ここでは波幅方向W)に移動可能に構成されている。そして、屈曲具61及び支持部材64が他方側接続部35側へ移動した状態で、内周型62と外周型63との間に他方側接続部35が挿入されるとともに、支持部材64が他方側接続部35に接するように構成されている。本実施形態では、図21及び図22に示すように、屈曲具61及び支持部材64は、共通のベース部材65によって支持されている。本実施形態では、ベース部材65はボビン71に支持された第二曲げ機構支持軸78によって支持されている。ここで、支持部材64は、ベース部材65に固定されているが、屈曲具61はベース部材65に回転可能に支持されている。本実施形態では、ベース部材65とともに屈曲具61及び支持部材64が、加工対象の他方側接続部35に対して接近又は離間する方向、具体的には波幅方向Wに移動可能に構成されている。本実施形態では、ベース部材65は、第二曲げ機構支持軸78に沿って当該第二曲げ機構支持軸78の軸方向に移動可能に構成されている。そして、第二曲げ機構6は、第一曲げ工程P5に同期して、第一曲げ工程P5による曲げ加工によって図26(a)に示すようにボビン71が移動する際に波形導体3から離間する方向(波幅方向他方側Wb)に移動し、第一曲げ工程P5の終了後に波形導体3に接近する方向(波幅方向一方側Wa)に移動するように構成されている。なお、後述するように、第二曲げ工程P6は搬送工程Pfの間欠搬送と同期して行われるので、当該間欠搬送は、第二曲げ機構6が波形導体3に接近する方向に移動した状態で行われる。第二曲げ機構6のベース部材65は第二曲げ機構支持軸78を介してボビン71に支持されているので、いずれの場合にも、第二曲げ機構6はボビン71と共に移動する。
図9から図12に示すように、本実施形態では、ボビン71(図21参照)には波形導体3が2周回巻き取られる。そこで、第二曲げ工程P6では、周回毎に異なる形状となるように他方側接続部35を成形する。具体的には、上記のとおり、第一周回部3fを構成する第一周他方側接続部35Fと第二周回部3sを構成する第二周他方側接続部35Sとで、略円弧状に屈曲される屈曲部35cの曲率半径が異なるように成形する。これは、図12等に示すように、波形導体3の異なる周回の他方側接続部35が、適切にコイル径方向CRに複数並列配置されるようにするためである。そこで、第二曲げ機構6は、他方側接続部35に対する第二曲げ工程P6を行う成形型を周回毎に交換可能に備える構成となっている。具体的には、屈曲具61及び支持部材64の組を複数組備え、周回毎に交換可能な構成としている。図示は省略するが、例えば、ベース部材65に2組の屈曲具61及び支持部材64が設けられ、当該ベース部材65が第二曲げ機構支持軸78を中心として回転することにより、異なる屈曲具61及び支持部材64の組が他方側接続部35に対して屈曲加工を行う位置に移動可能に構成されていると好適である。
図28は、第二周他方側接続部35Sに対する第二曲げ工程P6を行う成形型としての屈曲具61及び支持部材64の構成を示している。この屈曲具61及び支持部材64は、図27に示される第一周他方側接続部35Fに対する第二曲げ工程P6を行う成形型とは、内周型62、外周型63、及び支持部材64の配置が異なっている。すなわち、図28に示される屈曲具61は、図27に示される屈曲具61に比べて、内周型62と外周型63との間隔が2倍に広がっており、内周型62と外周型63との間に2本の他方側接続部35が挿入可能な構成となっている。また、支持部材64は、第一周他方側接続部35Fに対してコイル径方向CR外側に隣接配置される第二周他方側接続部35Sの外周型63側の側面に接する位置に配置されている。そして、第二曲げ工程P6における第二周他方側接続部35Sの曲げ加工に際しては、2周回分の他方側接続部35(第一周他方側接続部35F及び第二周他方側接続部35S)を挟んで内周型62に対向するように配置した外周型63を、内周型62の軸心を回転中心として揺動させることにより、既に屈曲された第一周他方側接続部35Fに沿わせて第二周他方側接続部35Sの一箇所を屈曲させる。これにより、第一周他方側接続部35Fと第二周他方側接続部35Sとが、適切にコイル径方向CRに並列配置される。
図29に示すように、本実施形態では、第二曲げ工程P6により他方側接続部35を屈曲成形する際には、ボビン71を回転及び移動させて波形導体3をボビン71に巻き取る巻き取り工程P7も同期して行われる。この際、搬送工程Pfによる波形導体3の間欠搬送もこれらに同期して行われる。図29(a)は第二曲げ工程P6による加工前の状態及び加工中のボビン71の移動軌跡を示し、図29(b)は第二曲げ工程P6による加工後の状態、並びに第二曲げ工程P6及び搬送工程Pfの間欠搬送に伴うボビン71の移動軌跡を示している。この図29に示すように、第二曲げ工程P6では、他方側接続部35を挟んで内周型62に対向配置された外周型63を、内周型62の軸心を回転中心として搬送方向上流側Faへ向かって揺動させて他方側接続部35を屈曲させる加工を行う。これにより、第二曲げ工程P6では、第二曲げ機構6の内周型62を基準として見たときには、当該内周型62を中心として他方側接続部35の搬送方向上流側Faの部分がコイル径方向CR内側へ向かって旋回する。但し本実施形態では、図29(a)に示すように、第二曲げ工程P6に同期してボビン71が回転及び移動することにより、静止している第一曲げ機構5を基準として見たときには、当該内周型62を中心として他方側接続部35の搬送方向下流側Fbの部分がコイル径方向CR内側へ向かって旋回するように移動する。
ところで、波形導体3は、第二曲げ工程P6による加工位置に対して搬送方向下流側Fb(他方側接続部35の線材長さ方向LL一方側)においてボビン71に巻き掛けられて保持されている。具体的には、第二曲げ工程P6による加工位置より搬送方向下流側Fbの辺部31が、ボビン71の外周面71Cに設けられた挿入溝75に挿入されて保持されている。そして、第二曲げ工程P6により他方側接続部35の屈曲加工を行うのと同期してボビン71を回転及び移動させることにより、第二曲げ工程P6による加工位置に対して搬送方向上流側Fa(他方側接続部35の線材長さ方向LL他方側)に隣接する辺部31がボビン71の挿入溝75に挿入されて保持される。これにより波形導体3がボビン71に巻き取られる巻き取り工程P7が行われる。
図29(a)には、第二曲げ工程P6による他方側接続部35の屈曲加工及び巻き取り工程P7を行う際におけるボビン71の中心軸71Aの理想的な移動軌跡を第二理想移動軌跡E2として一点鎖線で示している。第二理想移動軌跡E2は、第二曲げ工程P6に際して、当該第二曲げ工程P6による加工位置よりも搬送方向上流側Faの波形導体3の位置が変化しないようにボビン71の中心軸71Aを移動させた軌跡である。この第二理想移動軌跡E2は、内周型62の軸心付近を中心とした円弧状の軌跡となる。この第二理想移動軌跡E2に従ってボビン71の中心軸71Aを移動させれば、第二曲げ工程P6の加工位置より搬送方向上流側Fbの波形導体3がほとんど弾性変形しない状態で第二曲げ工程P6を行うことができる。また、第二曲げ工程P6に際しては、ボビン71の回転も行う。この際のボビン71の回転角度は、第二曲げ工程P6による他方側接続部35の屈曲角度にほぼ等しい。このようなボビン71の回転によって、図29(a)及び(b)に示すように、第二曲げ工程P6による加工位置より搬送方向下流側Fbの辺部31がボビン71の挿入溝75に保持された状態のまま、第二曲げ工程P6による加工位置に対して搬送方向上流側Faに隣接する辺部31がボビン71の挿入溝75に挿入されて保持される。ここでは、当該加工対象の他方側接続部35に対して搬送方向上流側Faに隣接する一方側接続部33は既に第一曲げ工程P5により湾曲加工された状態となっているので、第二曲げ工程P6を行うことにより、当該第二曲げ工程P6による加工位置に対して搬送方向上流側Faに隣接する2本の辺部31がほぼ同時にボビン71の挿入溝75に挿入されて保持される。
また、本実施形態では、第二曲げ工程P6及び巻き取り工程P7と同期して搬送工程Pfによる波形導体3の間欠搬送も行われる。そこで、当該間欠搬送と同期して、当該間欠搬送による波形導体3の移動量に応じたボビン71の移動も行う。ここでは、ボビン71は、第一曲げ工程P5による加工前の波形導体3の搬送方向と平行な方向の移動量が当該間欠搬送の搬送量に応じた移動量となるように移動される。図29(b)には、この間欠搬送に応じてボビン71を移動させる際におけるボビン71の中心軸71Aの理想的な移動軌跡を間欠搬送軌跡E3として一点鎖線で示している。この間欠搬送軌跡E3は、第一曲げ工程P5による加工前の波形導体3の搬送方向と平行な直線状の軌跡となる。この間欠搬送軌跡E3に従ってボビン71の中心軸71Aを移動させれば、波形導体3がほとんど弾性変形しない状態で搬送工程Pfによる波形導体3の間欠搬送を行うことができる。
本実施形態では、第二曲げ工程P6、巻き取り工程P7、及び搬送工程Pfによる波形導体3の間欠搬送を同期して行う。これらの各工程を同時に行う際におけるボビン71の中心軸71Aの理想的な移動軌跡は、上述した第二理想移動軌跡E2と間欠搬送軌跡E3とを組み合わせた軌跡となる。但し、本実施形態では、ボビン移動機構73を簡略化するため、ボビン71の中心軸71Aを直線状の移動軌跡である直線移動軌跡E4に沿って移動させることとしている。この直線移動軌跡E4は、第二理想移動軌跡E2と間欠搬送軌跡E3とを組み合わせた軌跡に近似して設定された直線状の軌跡であり、第二理想移動軌跡E2の始点と間欠搬送軌跡E3の終点とを結ぶ直線状の軌跡として設定している。この軌跡は、第一曲げ工程P5を行う際の第一理想移動軌跡E1に近似した直線移動軌跡E4に一致している。波形導体3は比較的大きい弾性を有しており、第二理想移動軌跡E2と間欠搬送軌跡E3とを組み合わせた軌跡に対する直線移動軌跡E4のずれは、第二曲げ工程P6の加工位置より搬送方向上流側Faの波形導体3の弾性変形領域内に収まっている。従って、このような直線移動軌跡E4に沿ってボビン71の中心軸71Aを移動させても、波形導体3が塑性変形することはない。
ところで、本実施形態では、ボビン71には波形導体3が2周回巻き取られ、波形導体3の第二周回部3sを構成する一方側接続部33及び他方側接続部35にも、第一周回部3fと同様に第一曲げ工程P5及び第二曲げ工程P6がそれぞれ行われる。図30には、このような第二周回部3sに対する第一曲げ工程P5を行う際の波形導体3の状態及びボビン71の移動軌跡を、第一周回部3fに関する図26と同様に示している。図30(a)に示すように、第一曲げ工程P5では、第二周回部3sを構成する第二周一方側接続部33Sに対しても、第一周回部3fを構成する第一周一方側接続部33Fと同様に、第一曲げ工程P5の加工位置を中心として波形導体3の搬送方向下流側Fbの部分が旋回するように加工を行う。この際、波形導体3は、第二曲げ工程P6の加工位置より搬送方向下流側Fbの辺部31が、ボビン71の挿入溝75に挿入されて保持されている。第一曲げ工程P5を実行するに際しては、上記のとおり、第一理想移動軌跡E1に近似して設定された直線移動軌跡E4に沿ってボビン71の中心軸71Aを移動させる。これにより、図30(b)に示すように、第一周回部3fを構成する第一周他方側接続部35Fのコイル径方向CR外側に、第二周回部3sを構成する第二周他方側接続部35Sが隣接して配置される。この際、第一周他方側接続部35Fは第二曲げ工程P6により既に屈曲成形されて屈曲部35cを有しているが、第二周他方側接続部35Sは屈曲部35cを有しておらず、ボビン軸方向視で略直線状のままである。
図31には、第二周回部3sに対する第二曲げ工程P6、巻き取り工程P7、及び搬送工程Pfの間欠搬送を同期して行う際の波形導体3の状態及びボビン71の移動軌跡を、第一周回部3fに関する図29と同様に示している。この図31に示すように、第二周回部3sに対する第二曲げ工程P6では、既に屈曲された第一周他方側接続部35Fと略直線状の第二周他方側接続部35Sとを内周型62と外周型63との間に挟んで状態で、外周型63を、内周型62の軸心を回転中心として搬送方向上流側Faへ向かって揺動させる。これにより、既に屈曲された第一周他方側接続部35Fに沿わせて第二周他方側接続部35Sの一箇所を屈曲させる加工を行う。この第二曲げ工程P6と同期してボビン71を回転及び移動させることにより、第二曲げ工程P6による加工位置に対して搬送方向上流側Faに隣接する第二周回部3sの2本の辺部31が、ボビン71の挿入溝75に挿入されて保持される。これにより波形導体3がボビン71に巻き取られる巻き取り工程P7が行われる。この第二周回部3sの巻き取り工程P7により、ボビン71には波形導体3が2周回巻き取られ、ボビン71の挿入溝75内には辺部31がコイル径方向CRに2本配列される。
ところで、図29から図31にも示すように、ボビン71は第一曲げ機構5に対して下方に配置されている。第二曲げ機構6は、第一曲げ機構5による加工位置よりも搬送方向下流側Fbで次第に下方へ湾曲する方向となっている波形導体3の搬送方向Fに沿って、波形導体3の波形1周期PT分以上第一曲げ機構5に対して搬送方向下流側Fbに離れた位置に配置されている。具体的には、第二曲げ機構6は、第一曲げ機構5に対して1.5ピッチ(波形1.5周期)分搬送方向下流側Fbの位置に配置されている。また、本実施形態では、第二曲げ機構6は、波形導体3の搬送方向Fに沿ってボビン71の最下端位置71Lよりも搬送方向上流側Fa側の位置に配置されている。
8.巻き取り工程及び巻き取り機構
次に、巻き取り工程P7及び巻き取り機構7について説明する。巻き取り機構7は、巻き取り工程P7を実行するための機構であり、上述した第一曲げ工程P5及び第二曲げ工程P6により曲げ加工を行った波形導体3をボビン71に巻き取るための機構である。上記のとおり、ボビン71は、第一曲げ工程P5、第二曲げ工程P6、及び搬送工程Pfに同期して回転及び移動が行われる(図26及び図29〜図31参照)。そこで、本実施形態では、図21及び図22に示すように、巻き取り機構7は、第一曲げ工程P5及び第二曲げ工程P6により曲げ加工を行った波形導体3を巻き取るボビン71と、ボビン71を中心軸71A周りに回転可能とするボビン回転機構72と、ボビン71の中心軸71Aを所定の移動軌跡に沿って移動可能とするボビン移動機構73と、を有している。本実施形態では、ボビン71は、2枚の円板状部材を互いに同心かつ平行な位置関係となるように連結して構成している。
ボビン回転機構72は、ボビン71を回転可能に支持するボビン支持軸79と、第一曲げ工程P5及び第二曲げ工程P6に同期してボビン71を所定角度回転させるための図示しないステッピングモータ等の回転駆動機構とを有して構成されている。なお、ボビン支持軸79の軸心がボビン71の中心軸71Aとなる。ボビン支持軸79は、支持フレーム77に支持されている。ここでは、ボビン支持軸79は、波幅方向Wに平行となるように支持フレーム77に支持されている。ボビン移動機構73は、本実施形態では、ボビン71の中心軸71Aを直線移動軌跡E4に沿って移動可能とするための機構として構成されている。そのため、ボビン移動機構73は、支持フレーム77に設けられたボビン移動溝73aと、当該ボビン移動溝73aに沿ってボビン支持軸79を移動させるための図示しないステッピングモータとボールねじとを組み合わせた機構等の直動駆動機構とを有して構成されている。ボビン移動溝73aは、上述した直線移動軌跡E4に平行に設けられている。上記のとおり、第一曲げ工程P5及び第二曲げ機構6の双方において直線移動軌跡E4に沿ってボビン71の中心軸71Aを移動させる構成としたことにより、支持フレーム77に設けられたボビン移動溝73aを直線状とすることが可能となっており、ボビン移動機構73の簡略化が図られている。
図32に示すように、ボビン71の外周面71Cには、波形導体3の辺部31が保持される辺部保持機構74が当該ボビン71の周方向に沿って複数設けられている。辺部保持機構74は、ボビン71の外周面71Cに形成されて波形導体3の辺部31が挿入される挿入溝75と、当該挿入溝75に挿入された辺部31を係止する係止部材76とを有する。挿入溝75は、ボビン71の外周面71Cに、周方向に沿って一定間隔で複数(ここでは8個)設けられている。各挿入溝75には、当該溝の搬送方向下流側Fb(ボビン71の巻取り方向側)に傾斜案内面75aが形成されている。この傾斜案内面75aは、第二曲げ工程P6と同期して行われる巻き取り工程P7に際して、辺部31が挿入溝75に挿入され易くするための案内用の傾斜面となっている。なお、本実施形態では、ボビン71を構成する2枚の円板状部材のそれぞれの外周面71Cに挿入溝75が形成されている。
本実施形態では、係止部材76は、挿入溝75に挿入された辺部31を傾斜案内面75a側(搬送方向下流側Fb)から押圧して係止する部材である。挿入溝75の傾斜案内面75aが設けられていない側の面は、ボビン71の径方向に平行な面となっているため、係止部材76は、当該面との間に辺部31を挟んで係止する。ここでは、第一周回部3fを構成する辺部31を係止するための第一係止部材76Fと、第二周回部3sを構成する辺部31を係止するための第二係止部材76Sとが備えられている。図32(a)には第一係止部材76Fの構成を示し、図32(b)には第二係止部材76Sの構成を示している。図33に示すように、第一係止部材76Fと第二係止部材76Sとは、ボビン71の軸方向に並列配置されている。なお、本実施形態では、第一係止部材76F及び第二係止部材76Sの組がボビン71の軸方向に2組配列されており、各辺部31をその線材長さ方向LLにおける2箇所で係止する構成となっている。第一係止部材76Fは、挿入溝75内におけるボビン径方向内側(コイル径方向CR内側)に配置される第一周回部3fの辺部31の高さに合致する高さの押圧面を有し、当該押圧面により第一周回部3fの辺部31のみを押圧するように構成されている。第二係止部材76Sは、挿入溝75内におけるボビン径方向外側(コイル径方向CR外側)に配置される第二周回部3sの辺部31の高さに合致する高さの押圧面を有し、当該押圧面により第二周回部3sの辺部31のみを押圧するように構成されている。また、第二係止部材76Sは、第二周回部3sの辺部31がボビン径方向外側へ抜けることを防止するための抜け止め突部76aを備えている。
図32に示すように、各係止部材76(第一係止部材76F及び第二係止部材76Sのそれぞれ)は、付勢機構76bと、係止解除機構76cとを備えている。また、各係止部材76は、所定の支軸76dを中心として揺動可能にボビン71に支持されている。付勢機構76bは、各係止部材76を係止方向に付勢する機構であり、本実施形態では、弾性部材(図示の例ではねじりコイルばね)を用いて構成している。ここで、係止方向とは、係止部材76が辺部31を押圧する方向である。係止解除機構76cは、付勢機構76bによる付勢力に抗して各係止部材76を係止解除方向に移動(ここでは揺動)させる機構である。本実施形態では、係止解除機構76cは、各係止部材76を係止解除方向に揺動させる方向に押圧する動作を行う係止解除軸と、当該係止解除軸を軸方向に動作させる図示しないエアシリンダ等の駆動機構とを有して構成されている。
上記のとおり、巻き取り工程P7は、第二曲げ工程P6と同期して行われる。すなわち、第二曲げ工程P6は、当該第二曲げ工程P6による加工位置より搬送方向下流側Fbの辺部31がボビン71に設けられた辺部保持機構74に保持された状態で行われる。そして、第二曲げ工程P6により他方側接続部35の屈曲加工を行うのと同期してボビン71を回転及び移動させることにより、第二曲げ工程P6による加工位置に対して搬送方向上流側Faに隣接する2本の辺部31がボビン71の辺部保持機構74に挿入されて保持され、巻き取り工程P7が行われる。したがって、辺部保持機構74は、辺部31が挿入溝75に挿入される時に係止部材76を係止解除方向に移動させ、辺部31が挿入溝75に挿入された後に係止部材76を係止方向に移動させることにより辺部31を保持する。ここで、辺部保持機構74は、第一係止部材76Fと第二係止部材76Sの2つを備えている。そこで、辺部保持機構74は、第一周回部3fの辺部31が挿入溝75に挿入される際には第一係止部材76F及び第二係止部材76Sの双方を係止解除状態とし、当該第一周回部3fの辺部31が挿入溝75に挿入された後に第一係止部材76Fのみを係止状態とする。その後、第二周回部3sの辺部31が挿入溝75に挿入されるまでは第二係止部材76Sを係止解除状態に維持し、第二周回部3sの辺部31が挿入溝75に挿入された後に第二係止部材76Sを係止状態とする。これにより、第二周回部3sの辺部31が挿入溝75に挿入される際に、既に挿入されている第一周回部3fの辺部31が挿入溝75から飛び出すことを規制できる。
9.波巻コイルの形状
以上に説明したコイル製造方法の各工程を波形導体3の全体に対して行うことにより、ボビン71には、波形導体3を略円筒状に成形してなる波巻コイル3Cが巻き取られた状態となる。そして、ボビン71を取り外すことで、図11及び図34に示すような所定形状の波巻コイル3Cが得られる。この波巻コイル3Cは、断面形状が方向性を有する(ここでは断面矩形状の)線状導体3Lを略矩形波状に成形するとともに略円筒状に成形してなっている。また、この波巻コイル3Cは、コイル軸方向に延びる直線状の複数の辺部31と、軸方向一方側(波幅方向一方側Wa)の端部においてコイル周方向CCに隣接する2つの辺部31間を1つ置きに順次接続する一方側接続部33と、軸方向他方側(波幅方向他方側Wb)の端部において一方側接続部33により接続されていないコイル周方向CCに隣接する2つの辺部31間を順次接続する他方側接続部35と、を有している。
そして、上述した第一曲げ工程P5と第二曲げ工程P6とを行うことにより、一方側接続部33及び他方側接続部35のそれぞれにおける線材長さ方向LLのいずれか一方側がコイル径方向CR内側へ曲げられ、コイル径方向CR外側に向かって突状となるように形成される。言い換えれば、一方側接続部33及び他方側接続部35は、略円筒状の波巻コイル3Cのコイル周方向CCに沿った湾曲形状又は屈曲形状に形成される。これにより、図34に示すように、波形導体3の複数の辺部31が、最終的に形成される波巻コイル3Cの略円筒形状のコイル周方向CCに沿って配列されるとともに、各辺部31の断面形状の向きがコイル径方向CRに対して一定の向きとなる。ここで、辺部31の断面形状の向きがコイル径方向CRに対して一定の向きとなった状態とは、コイル周方向CCに複数配列される波巻コイル3Cの複数の辺部31の全てがコイル径方向CRに対して同じ向きに揃った状態である。言い換えれば、複数の辺部31の方向性を有する断面が、波巻コイル3Cの軸心を中心として放射状に配列された状態に等しい。本実施形態では、辺部31の断面形状の向きに関して、略円筒状に形成する前の略平面状の波形導体3の面に略直交する方向を基準方向とし、当該基準方向がコイル径方向CRに沿った向きとなるようにしている。より具体的には、辺部31の矩形断面の外縁を構成する4本の辺の内、互いに平行な2本の辺がコイル径方向CRに沿った向きすなわちコイル径方向CRに略平行な向きとなり、残りの2本の辺がコイル径方向CRに略直交する向きとなるようにしている。上記のとおり、波巻コイル3Cが回転電機の電機子用コイルである場合には、第一曲げ工程P5及び第二曲げ工程P6による曲げ加工後の辺部31の位置及び断面形状の向きは、各辺部31が電機子コアの所定のスロットに挿入された状態を基準として決定される。図34に示すような辺部31の配置及び断面形状の向きは、円筒状の電機子コアの内周面に周方向に所定間隔で複数配置されたスロット、特に当該電機子コアの軸方向に延びるとともに径方向に沿って放射状に配置された溝状のスロットに挿入されるのに適したものとなっている。
この波巻コイル3Cでは、一方側接続部33が、コイル径方向CR外側に向かって突状となるように略全体が略円弧状に成形された円弧状接続部とされている。一方、他方側接続部35は、コイル径方向CR外側に向かって突状となるように一箇所で屈曲されて略V字状に成形されたV字状接続部とされている。この他方側接続部35は、線材長さ方向LLの一部のみが略円弧状に形成された屈曲部35cを有している。そして、この屈曲部35cの両側にそれぞれ直線状に延びる直線状部を有して全体が略V字状とされている。この直線状部は、コイル径方向CRに略直交する方向を線材長さ方向LLとしている。また、この波巻コイル3Cでは、他方側接続部35を含む波形導体3の波幅方向他方側Wbの一部が、コイル径方向CR内側へ屈曲された他方側端面形成部位37とされている。本実施形態では、他方側端面形成部位37は、コイル軸方向(波幅方向W)に直交する面に略平行となるようにコイル径方向CR内側へ屈曲されている。そして、このような他方側端面形成部位37のコイル径方向CR内側端部を他方側接続部35が構成している。すなわち、他方側接続部35は一方側接続部33に比べてコイル径方向CR内側に配置され、そのため他方側接続部35の線材長さは一方側接続部33に比べて短くなっている。本実施形態の構成では、このようにコイル径方向CR内側に配置されて線材長さも短い他方側接続部35を、加工が容易であって加工機構(第二曲げ機構6)も小型化が容易なV字状接続部とし、製造性を高めている。
また、本実施形態では、波巻コイル3Cを構成する波形導体3は第一周回部3fと第二周回部3sとを有しており、ボビン71に2周回巻き取られる構成となっている。そのため、波巻コイル3Cは、辺部31、一方側接続部33、及び他方側接続部35が、それぞれコイル径方向CRに2本ずつ配列されるように2周回巻かれて構成されている。従って、波形導体3の異なる周回の2本の辺部31がコイル径方向CRに互いに隣接して配列されている。一方側接続部33及び他方側接続部35についても同様であり、波形導体3の異なる周回の2本の一方側接続部33がコイル径方向CRに互いに隣接して配列され、波形導体3の異なる周回の2本の他方側接続部35がコイル径方向CRに互いに隣接して配列されている。
10.その他の実施形態
(1)上記の実施形態では、辺部31の断面形状は矩形状である場合において、波形導体3を略円筒状の波巻コイル3Cに形成した状態で辺部31の矩形断面における互いに平行な2本の辺がコイル径方向CRに沿った向きとなるように第一曲げ工程P5及び第二曲げ工程P6を行う場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、略円筒状の波巻コイル3Cに形成した状態で、辺部31の断面形状の向きがコイル径方向CRに対して一定の向きとされていればよい。言い換えれば、コイル周方向CCに複数配列される波巻コイル3Cの複数の辺部31の全てがコイル径方向CRに対して一定の向きに揃った状態とされていればよい。従って、例えば、辺部31の断面形状は矩形状である場合において、当該矩形断面における互いに平行な2本の辺がコイル径方向CRに対して所定角度で傾斜した向きとなるようにすることも、本発明の実施形態の一つである。
(2)また、断面形状が方向性を有する線状導体3Lは、断面形状が矩形状であるものに限定されるものではなく、断面形状が円形以外の各種断面形状の線状導体3Lを用いることができる。従って、例えば、断面形状が、多角形状、楕円形状、円形状の一部を直線状に切除した形状等のような輪郭が直線と曲線とで構成される形状等の線状導体を用いることができる。また、断面形状が、互いに平行な2つの辺を備え、その他の部分が円弧面等の曲面や多角形面で構成された形状の線状導体を用いることも、本発明の好適な実施形態の一つである。これらの各種断面形状の線状導体3Lにおいて、各辺部31についてコイル径方向CRに対して一定の向きとなる断面形状の向きをいずれの方向とするかは、波巻コイル3Cの使用目的に応じて適宜設定すると好適である。いずれにしても、最終的な波巻コイル3Cが形成された状態で、波巻コイル3Cの複数の辺部31の全てがコイル径方向CRに対して同じ向きとなるようにされる。なお、断面形状が、互いに平行な2つの辺を備える形状である場合には、当該平行な2つの辺がコイル径方向CRに直交する向きとなるように構成すると特に好適である。また、この場合において、当該平行な2つの辺がコイル径方向CRに平行な向き、より詳しくは平行な2つの辺の対称中心線がコイル径方向CRに一致する向きとなるように構成しても好適である。また、この場合においても、平行な2つの辺がコイル径方向CRに対して所定角度で傾斜した向きとなるようにしてもよい。
(3)上記の実施形態では、ボビン71に波形導体3を2周回巻き取る場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。従って、ボビン71に波形導体3を1周回だけ巻き取って1周回分の波巻コイル3Cを製造し、或いは、ボビン71に波形導体3を3周回以上巻き取って3周回分以上の波巻コイル3Cを製造する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。波形導体3を複数周回巻き取る場合には、辺部31、一方側接続部33、及び他方側接続部35は、それぞれコイル径方向CRに複数配列される。
(4)上記の実施形態において説明した各工程の順序は一例であり、適宜入れ替えることは可能である。例えば、一方側調整屈曲工程P2a、他方側調整屈曲工程P2b、他方側屈曲工程P3、及び段差加工工程P4の順序は、適宜入れ替え可能である。また、コイル製造方法が、これら4つの工程の一部又は全部を備えない構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。更に、コイル製造方法が波形導体形成工程P1を備えず、予め矩形波状に形成された波形導体3が供給され、当該波形導体3に対して所定の加工を行う構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。また、第一曲げ工程P5と第二曲げ工程P6の順序を入れ替えることも、本発明の好適な実施形態の一つである。このように、コイル製造方法の工程の内容や順序が変更された場合には、コイル製造装置1の各工程を実行するための各機構の配置も適宜変更される。
(5)上記の実施形態では、第二曲げ工程P6及び巻き取り工程P7と同期して搬送工程Pfの間欠搬送を行う場合を例として説明した。しかし、これらは別個に行うことが可能であり、第二曲げ工程P6及び巻き取り工程P7を行った後で搬送工程Pfを行い、或いは搬送工程Pfを行った後で第二曲げ工程P6及び巻き取り工程P7を行う構成としても好適である。
(6)上記の実施形態では、一方側接続部33が略全体が略円弧状に成形された円弧状接続部とされ、他方側接続部35が一箇所で屈曲されて略V字状に成形されたV字状接続部とされている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。従って、一方側接続部33及び他方側接続部35の双方がV字状接続部とされ、又は一方側接続部33及び他方側接続部35の双方が円弧状接続部とされる構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。また、一方側接続部33がV字状接続部とされ、他方側接続部35が円弧状接続部とされる構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。また、一方側接続部33及び他方側接続部35の少なくとも一方が、略円弧状や略V字状以外の形状に曲げ成形される構成とすることも可能である。
(7)上記の実施形態では、第一曲げ機構5の可動型52の揺動支点53が固定型51に対して固定された位置となっている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。従って、図35に示すように、可動型52の可動成形面56が固定型51の固定成形面55に対して接近又は離間する方向に、揺動支点53を往復動可能とする往復動機構53Aを更に備える構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。図示の例では、往復動機構53Aは、一方側接続部33の線材長さ方向LL(ここでは搬送方向Fに略平行な方向)に交差する方向(ここでは略直交する方向)に揺動支点53を往復移動させる。この往復動機構53Aとしては、例えば、揺動支点53を往復移動させるための図示しないステッピングモータとボールねじとを組み合わせた機構等の直動駆動機構を用いることができる。このような往復動機構53Aを備えることにより、可動型52が固定型51から離間した位置では固定成形面55と可動成形面56との間に一方側接続部33を搬送供給することが容易となる。そして、このような搬送供給の容易性を確保しつつ、可動型52が固定型51に接近した位置では、搬送方向上流側端部55aにおける可動成形面56と固定成形面55との距離D5をより短く設定することができる。従って、往復動機構53Aを備えない場合に比べて、第一曲げ機構5による一方側接続部33の加工時に、一方側接続部33の搬送方向上流側Faの端部がそれより搬送方向下流側Fbの部分に比べて先に固定型51と可動型52との間に挟まれて動きにくい状態とすることが容易となる利点がある。なお、このような往復動機構53Aを備える場合には、少なくとも可動型52の可動成形面56が固定型51側へ接近した状態で、揺動支点53が上述した支点配置可能領域5A内に配置されるように構成すると好適である。
(8)上記の実施形態では、固定成形面55及び可動成形面56が、それぞれの成形面の延在方向に段差部を一つ有する場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。従って、固定成形面55及び可動成形面56がそれぞれの成形面の延在方向に段差部を有しない略円弧状面である構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。また、固定成形面55及び可動成形面56が、それぞれの成形面の延在方向に段差部を複数有する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
(9)上記の実施形態では、第二曲げ工程P6(第二曲げ機構6)の加工位置が、第一曲げ工程P5(第一曲げ機構5)の加工位置に対して1.5ピッチ(波形1.5周期)分搬送方向下流側Fbの位置に設定されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。但し、第二曲げ工程P6の加工位置は、波形導体3の搬送方向Fに沿って波形1周期PT分以上第一曲げ工程P5の加工位置に対して搬送方向下流側Fbに離れた位置とすることが望ましい。また、ボビン71が第一曲げ工程P5の加工位置に対して下方に配置される場合には、第二曲げ工程P6の加工位置は、波形導体3の搬送方向Fに沿ってボビン71の最下端位置71Lよりも搬送方向上流側Faの位置とすることが望ましい。図36には、このような第二曲げ工程P6の加工位置の一例として、第二曲げ工程P6(第二曲げ機構6)の加工位置が第一曲げ工程P5(第一曲げ機構5)の加工位置に対して2.5ピッチ(波形2.5周期)分搬送方向下流側Fbの位置に設定されている場合の各部の位置関係を示している。
(10)第二曲げ工程P6の構成は、上記の実施形態の構成には限定されるものではなく、例えば、第一曲げ工程P5と同様に、略V字状の成形面をそれぞれ備えた固定型と可動型とを用い、固定型と可動型との間で他方側接続部35を加圧して略V字状に屈曲成形する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
(11)上記の実施形態では、第一曲げ工程P5を行う際、及び第二曲げ工程P6、巻き取り工程P7、及び搬送工程Pfを行う際の双方で、ボビン71を直線移動軌跡E4に沿って移動させる構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。従って、ボビン71を上述した第一理想移動軌跡E1、第二理想移動軌跡E2、及び間欠搬送軌跡E3のそれぞれに沿って移動させる構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合、ボビン移動機構73は、このようなボビン71の移動を可能とすべく、例えばXYテーブル等のような平面状の任意の位置にボビン71を移動させることが可能な機構を用いて構成すると好適である。
(12)上記の実施形態では、搬送工程Pfにおいて波形導体3の波形1周期PTを1ピッチとして間欠搬送を行う場合を例として説明したが、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。従って、搬送工程Pfにおいて、例えば、波形導体3の波形0.5周期分等のように波形1周期PT分以外の長さを1ピッチとして間欠搬送を行う構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。また、搬送工程Pfにおいて、波形導体3を一定速度で連続的に搬送する構成とすることも可能である。この場合、各工程は、波形導体3の搬送方向に移動可能な構成とされると好適である。