JP2010212234A - プラズマ発生装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電位0状態で接地されたチャンバー2と、このチャンバー2内に設けられプラズマを発生させるプラズマ発生電極3と、自励式の高周波発振部6と、前記チャンバー2、該チャンバー2に導電形態で一体化されて前記高周波発振部6を覆うように設けられた高周波発振部シールドカバー7とからなるシールド体9と、前記トランス5の中位点と前記チャンバー2を電位0状態で接地してなる中位点接続部8と、前記発振器4に電力を供給する発振器用電源10と、前記チャンバー2内に該チャンバー2と絶縁状態で設けられたワーク電極形成部11と、このワーク電極形成部11にバイアス電圧を印加する前記シールド体9と電位0状態で接地されたバイアス形成用電源12とからなっている。
【選択図】図3
Description
しかしながら、マッチングBOXを用いなくてもインピーダンス整合ができる方法もある。それは周波数を動かす方法である。しかしこれは単一周波数使用の条件から外れ、妨害電波防止対策が必要となる。
高周波発振器から同軸ケーブルでプラズマチャンバーに高周波のエネルギーを給電している。同軸給電線からは、ノーマル・モードによる電磁輻射は起こらないが、コモン・モードの輻射は起こるし、整合が取れず反射波があると一層強く輻射することは一般に知られている。
チャンバー内のプラズマ状態は常時変化するので整合器(マッチングBOX)でインピーダンスのマッチングをとる必要がある。
図8のようにチャンバーとマッチングBOXを一体とし、この間の給電線を省くようにすると図7の場合のような不具合はおこらない。
同軸給電は、同軸の外皮となる金属がチャンバー金属につながれている。チャンバーは金属壁(導体)で囲まれているので、チャンバー内部の電磁波が外部に漏れだすことはない。しかしチャンバー内壁には、同軸芯線から出発した高周波電流の帰還通路による電位差が発生している。そしてこの電流の経路は、プラズマの状態によって変化するので、導体であるチャンバー内壁の電位分布も変化する。この内壁とチャンバー金属はひとつの導体なので、チャンバーの一部を接地(アース)すると、内壁の電位分布により他のチャンバー部位との間には電位差が生じ、これがコモン・モードの高周波源となって外部への輻射が起こる。これはチャンバー金属のどこにアースをとっても同じ結果である。
また図10のように発振器側に別にアースをとっても、チャンバーの電位変動の有無は変わらないし、両方アースにとるとループアンテナを形成して、輻射としては一層悪い結果を生む。
もしシールド効果を得ようとするならば、チャンバー全体をアースに沈めるか、このチャンバー全体および給電線、発振器を電流帰還通路が生じないように絶縁された別の金属(金属外囲器)で覆い(たとえば装置が設置してある部屋全体を金属で覆う)、これを接地すれば妨害電波の輻射は防げるが、コストがかかるという問題がある。
これらの理由で従来の高周波でのプラズマ発生装置は、妨害電波の輻射が起こるので、妨害電波の規制の緩やかなISMバンド(13.56MHz、27.12MHz、40.68MHz、900MHz帯、2.45GHz帯、5.7GHz帯など)にて動作させるようにしている。
この方法の良いところは、直流成分カットのコンデンサを付加すれば、自然と自己バイアス現象が生じ、プラズマシースとワークとの間に電位差が生じ、上記のような成膜が可能となることである。
成膜される膜の厚さや密着度、浸透深さなどは、プラズマの密度やワーク温度処理時間などによって制御されている。
どこにアース点をとっても同じことが言える。また図10のように発振器側にアースをとっても、電位変動の有無は変わらないし、両方アースにとるとループアンテナを形成して、輻射としては一層悪い結果を生む。
一方、自己バイアスを利用した成膜法は、自然現象をうまく利用した形ではあるが、バイアス電圧の調整はできないので、膜の成分や厚さや密着度、浸透深さなどは、プラズマの密度調整(即ち内部気圧や高周波出力の調整など)やワーク温度(別途加熱器で加熱する)、処理時間など、大まかなプロセス条件、それもすべて連携しているので、個々に精密な制御は行えないという不具合がある。
また、従来技術においては、チャンバーは電極となるので、チャンバー内壁に電気的に引着された蒸着膜が積層されて行くので、チャンバー内壁が汚れやすく且つ強靭蒸着膜となるので洗浄して汚れを取り除くこと作業に手間がかかるという問題を持っていた。
異方性エッチング加工は、俗にいう”深溝加工”であり、イオンの進行方向正面の反応は大きく側面の反応が少ないことから、よりレジストパターンに沿った正確なエッチング加工が可能である。半導体やMEMSにおける部品製造になくてはならない加工法である。
発明の第1の目的は、電磁輻射の起こらない、かつ、チャンバー内壁への強靭蒸着膜形成あるいはエッチングが起こらないプラズマ発生装置を提供することを目的としている。
<請求項1記載の発明>
電位0状態で接地された導電性部材からなるチャンバーと、
このチャンバー内に該チャンバーとは絶縁状態に設けられプラズマを発生させるプラズマ発生電極と、
電力を高周波電力に変えて前記プラズマ発生電極に供給する、発振器とトランスを有する高周波発振部と、
前記チャンバーに導電形態で一体化されて前記高周波発振部を覆うように設けられた、導電性部材からなる高周波発振部シールドカバーと、
前記トランスの中位点と前記チャンバーを電位0状態で接地してなる中位点接続部と、
前記高周波発振部およじ該チャンバー内で生ずる高周波によるノイズ輻射を生じなくさせるための、前記チャンバーと前記高周波発振部シールドカバーとによって形成されてなるシールド体と、
このシールド体と絶縁状態で前記発振器に電力を供給する発振器用電源と、
前記チャンバー内に該チャンバーと絶縁状態で設けられた、ワークを電極状態にするためのワーク電極形成部と、
このワーク電極形成部にバイアス電圧を印加する、前記シールド体と絶縁状態とされ且つ該シールド体と電位0状態で接地されたバイアス形成用電源とからなることを特徴とするプラズマ発生装置である。
「ワーク電極形成部」とは、ワークが導電性である場合で絶縁しないで保持した状態ではワーク自身も電極となってワーク自身による引力蒸着となり、ワークが非電導性である場合は絶縁状態での保持で、ワーク自身は電極状態とはならず、ワーク電極形成部によって引かれ飛んでくるイオンの一部がワーク表面に蒸着するということになる、いずれの場合も技術的範囲に含むものである。
「電力を高周波電力に変えて」の「電力」は直流電力、交流電力、パルス電力など多様な電力形態がある。
プラズマ発生電極が平衡給電である対称電極であるとともに、該対称電極の中位点は接地してなることを特徴とする請求項1に記載のプラズは発生装置。
発振器が自励式高周波発振器であることを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載のプラズマ発生装置である。
チャンバー内に該チャンバーと絶縁状態のダミー電極を設け、このダミー電極にバイアス電圧を印加する、シールド体と絶縁状態とされ且つ該シールド体と電位0状態で接続されたバイアス形成用直流電源を設けてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプラズマ発生装置。
チャンバー内に誘導加熱装置の一部をなす高周波電流が流れるワークコイルを設け、このワークコイルによる誘導加熱によって気化される複数の気化部材を保持する気化部材保持部を設け、気化させようとする気化部材を移動して前記ワークコイルの加熱位置にセットするための気化部材移動手段を設けてなることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載のプラズマ発生装置である。
「気化」には蒸発、昇華のいずれも含まれる。
<請求項1記載の発明の効果>
電位0状態で接地された導電性部材からなるチャンバーと、
このチャンバー内に該チャンバーとは絶縁状態に設けられプラズマを発生させるプラズマ発生電極と、
電力を高周波電力に変えて前記プラズマ発生電極に供給する、発振器とトランスを有する高周波発振部と、
前記チャンバーに導電形態で一体化されて前記高周波発振部を覆うように設けられた、導電性部材からなる高周波発振部シールドカバーと、
前記トランスの中位点と前記チャンバーを電位0状態で接地してなる中位点接続部と、
前記高周波発振部およじ該チャンバー内で生ずる高周波によるノイズ輻射を生じなくさせるための、前記チャンバーと前記高周波発振部シールドカバーとによって形成されてなるシールド体と、
このシールド体と絶縁状態で前記発振器に電力を供給する発振器用電源と、
前記チャンバー内に該チャンバーと絶縁状態で設けられた、ワークを電極状態にするためのワーク電極形成部と、
このワーク電極形成部にバイアス電圧を印加する、前記シールド体と絶縁状態とされ且つ該シールド体と電位0状態で接地されたバイアス形成用電源とからなることを特徴とするプラズマ発生装置であるので、次に述べるような効果を奏する。
すなわち、本発明は原理的に妨害電波の輻射(電磁輻射)のないプラズマ発生機構なのである。この妨害電波の出ないプラズマ発生機構、妨害電波の出ないプラズマ発生方法という考え方こそ本発明の技術的思想である。
また、自励発振でも他励発振でも妨害電波が出ないプラズマ発生装置、方法を実現するとともに、周波数による整合が可能であるので、従来のようなマッチングBOXが不要なプラズマ発生装置、方法を実現するという効果を奏する。
これによって、
[a]高周波発振部をONとし高周波プラズマのみの使用、
[b]高周波プラズマを発生した後でバイアス形成用電源をONとして直流プラズマを発生させ、高周波プラズマと直流プラズマの混合プラズマ状態を形成しての使用、
[c]高周波プラズマを発生した後でバイアス形成用電源をONとして直流プラズマを発生させ、高周波発振部をOFFにして直流プラズマのみでの使用、
という、三つのパターンのプラズマ発生とそれの使用を可能とするものである。
プラズマ発生電極が平衡給電である対称電極であるとともに、該対称電極の中位点は接地してなることを特徴とする請求項1に記載のプラズは発生装置であるので、請求項1に記載の発明と同様な効果を奏するとともに、次に述べるような効果を奏する。
すなわち、非対称電極にすると、高周波中点のズレが生じ、不要輻射をするおそれがあり、それを回避するための回避手段を講じなくてはならない。対称電極(一般的には1対の双極子電極)とすることによって高周波中点のズレをなくし不要輻射のおそれのない装置を実現するという効果を奏する。
この異方性エッチングの特徴を生かす状態は、イオンの速度を上げることができる低気圧状態の方が優れているが低気圧すぎるとプラズマ密度が低下して全体のエッチング速度が低下する。
また、従来の対向板電極型のような簡便な構成によって、高密度プラズマによる低気圧状態での異方性エッチング装置を低コストで実現するものである。
発振器が自励式高周波発振器であることを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載のプラズマ発生装置であるので、請求項1、2のいずれか1項に記載の発明と同様な効果を奏するとともに、次に述べるような効果を奏する。
すなわち、自励発振は、電気的な周波数を動かすことによる整合を行うので、シンプルな回路構成により実現できるとともに、コンデンサやコイルの値を機械的に動かす従来の方法より、はるかに高速、精密な整合動作を可能とし且つ高価なマッチングBOXが不要とできるので高速精密制御、ローコストな装置を実現するという効果を奏する。
チャンバー内に該チャンバーと絶縁状態のダミー電極を設け、このダミー電極に電圧を印加する、シールド体と絶縁状態とされ且つ該シールド体と電位0状態で接続されたバイアス形成用電源を設けてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプラズマ発生装置であるので、請求項1〜3いずれか1項に記載の発明と同様な効果を奏するとともに、次に述べるような効果を奏する。
すなわち、ダミー電極を設けたことにより、該ダミー電極とワーク電極形成部がひとつのチャンバー内にあることになる。負の電圧がかけられた方に浮遊イオンは引着されるので、例えばチャンバー内を減圧状態とし、ワークへのA物質の蒸着が完了したら、ワーク電極形成部への電圧の印加を切り、ダミー電極へ負の電圧をかけたダミー電極に残存A物質イオンを引着(蒸着)させてチャンバー内を瞬時といってよい素早さで清浄化して、ダミー電極への電圧の印加を切り、B物質を気化させてプラズマによりイオン化させ、ワーク電極形成部へ電圧をかけたワークにB物質を引着(蒸着)させるということが行える。
負の直流電源を手動制御あるいは自動制御により自在にコントロールすることが可能であるので、電圧の強さ、通電時間、通電強さの可変、通電と切断のタイミングなどにより、ワークあるいはダミー電極に一瞬にして、間欠的に、あるいは徐々に引着させることがコントロールできるので、蒸着膜の形成を細かくコントロールすることを可能とするものである。
この点で、ダミー電極にダミー電極用電源を設け、これとは別にワーク電極形成部にはワーク電極用電源を設けるという、それぞれ別個の電源を設けることにより、電圧の強さ、通電時間、通電強さの可変、通電と切断のタイミングなどを、例えばダミー電極とワーク電極形成部の両方に電圧をかけながら微妙にコントロールして、より高品質な蒸着膜や機能的な蒸着膜の形成などを可能とすることができるものである。
さらに、この作業を合金成膜時に適用すると、
たとえば 清浄化−A物質成膜−清浄化−B物質成膜−清浄化−・・・のような工程が可能になり、各工程の前段階で短時間で高清浄化が行われるので、目的の物質が単独に制御、成膜されるため、合金組成が正確になるばかりか、膜の厚さ、深さなどが個々に正確かつ高品質に制御できる。
また、プラズマ発生装置の一形態であるプラズマ蒸着膜形成装置にあっては効率性に優れた生産能力の高い成膜装置を実現する。
チャンバー内に誘導加熱装置の一部をなす高周波電流が流れるワークコイルを設け、このワークコイルによる誘導加熱によって気化される複数の気化部材を保持する気化部材保持部を設け、気化させようとする気化部材を移動して前記ワークコイルの加熱位置にセットするための気化部材移動手段を設けてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプラズマ発生装置であるので、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明と同様な効果を奏するとともに、次に述べるような効果を奏する。
すなわち、例えば異なる材質の気化部材を後先に分けて、ワークコイルが複数の場合は同時に気化させ、あるいは一方を先に気化させながら他方を後から気化させるなどのことができるという効果を奏する。
電位0状態で接地された導電性部材からなるチャンバー2と、このチャンバー2内に該チャンバー2とは絶縁状態に設けられてプラズマを発生させる電極A、電極Bからなる双極子電極(対称電極)であるプラズマ発生電極3と、直流電力を高周波電力に変えて前記プラズマ発生電極3に供給する、発振器4とトランス5を有する自励式の高周波発振部6(他励式でもよい)と、前記チャンバー2に導電形態で一体化されて前記高周波発振部6を覆うように設けられた、導電性部材からなる高周波発振部シールドカバー7と、前記トランス5の中位点と前記チャンバー2を電位0状態で接地してなる中位点接続部8と、前記高周波発振部6およじ該チャンバー2内で生ずる高周波によるノイズ輻射を生じなくさせるための、前記チャンバー2と前記高周波発振部シールドカバー7とによって形成されてなるシールド体9と、このシールド体9と絶縁状態で前記発振器4に電力を供給する発振器用電源10と、前記チャンバー2内に該チャンバー2と絶縁状態で設けられた、ワーク14を電極状態にするためのワーク電極形成部11と、このワーク電極形成部11に負の電圧を与える、前記シールド体9と絶縁状態とされ且つ該シールド体9と電位0状態で接地された負の直流電源12とからなっている。
図4において、チャンバー2内を減圧したり、排気をしたりするための真空ポンプ(図示せず)に連絡された減圧部18が設けられ、チャンバー2内にアルゴン、窒素、酸素ガスなどを送り込むためのガス注入部19が設けられている。
一方、エネルギー供給としてのAC電源線や制御線を通しての漏えい輻射の問題もあるが、これらは本装置のようにプラズマを発生させる装置に限らず、すべての高周波を利用する機器の共通問題であり、これらの漏洩対策や不要輻射低減の技術は、現在では基本的に解決されているレベルにある。
また、ワーク形成用電極に印加するバイアスには、直流バイアス、交流バイアス、パルスバイアスなどいろいろなバイアス方法がある。
一方、自励発振は、周波数変換法の1種であり(自励・他励、インバーター)、交流から交流へ変換していることもある。直流から交流に変換したほうが簡単なので、ACからACであっても一旦中間では直流にするという、発振器には直流電源で電力を供給するのが現在では一般的である。
電離した気体(プラズマ状態)には電子、+イオン、ラジカルが存在するが、高周波(RF)電力を上げると、電子、イオンの電極間移動が早くなり、衝突、再結合の頻度が高まり密度が濃くなる(プラズマ密度の上昇)。
(1)チャンバーと該チャンバーと導電形態で一体化された高周波発振部シールドカバーによりシールド体を形成している構成であり、シールド体とエネルギー供給源は高周波的には何の接続もなく給電線を全く無くした形となり、給電線がないので給電線からの妨害電波の輻射はないとともに、プラズマへの高周波電力を双極子電極から平衡供給している。すなわちノーマル・モードの電波輻射もコモン・モードの電波輻射も起こらない構成となっている。よって装置全体を覆う別囲体を必要としないで電波障害を起こさないプラズマ発生装置を実現する。すなわち、妨害電波の輻射(電磁輻射)のないプラズマ発生機構なのである。
一対の平衡電極(双極子電極)により発生したプラズマと、ワーク電極形成部の間に負の直流電源を用意してワーク電極形成部にバイアス電圧を与えるようにしてある。これにより、従来、成膜に利用されてきた自己バイアス現象と同じ効果が得られるので、シールド体のシールド機能は生きたままワークへの成膜を可能にするという効果を奏する。
これによって、
[a]高周波発振部をONとし高周波プラズマのみの使用。
[b]高周波プラズマを発生した後でバイアス形成用電源をONとして直流プラズマを発生させ、高周波プラズマと直流プラズマの混合プラズマ状態を形成しての使用。
[c]高周波プラズマを発生した後でバイアス形成用電源をONとして直流プラズマを発生させ、高周波発振部をOFFにして直流プラズマのみでの使用。
という、三つのパターンのプラズマ発生とそれの使用を可能とするものである。
この動作を用いると、たとえば処理初期の段階でチャンバー2内プラズマに混在する複数の様々な金属イオンをすべてダミーに付着させることができる。すなわち清浄化を行うことができる。
クリーン化されたのちにチヤンバー2内に目的の金属元素を発生、これをプラズマに注入してイオン化させる。切替スイッチ22をきりかえてワーク電極形成部11を負電極、ダミー電極21をアースにすれば、今度は目的の金属イオンのみワーク電極形成部11に向かい、ワークに付着させることができる。
もしプラズマ中にA、B、Cなどの金属イオンが混在していると、ワーク電極形成部11を負(陰極)にした時、ワーク電極形成部11に付着する金属原子は、これらのイオン濃度に比例して付着するとは限らない。バイアス電圧や処理時間で、付着成分の比率や浸透深さを制御するのは難しい。金属原子の重さや電極までの距離が関係するからである。しかし単一の金属イオンでは、バイアス電圧と時間でこの単一成分の量や浸透深さを制御することはやさしい。
それゆえチャンバー2内にはいつも単一元素イオンのみが存在するようにし、ワーク台に付着させるようなしくみがほしい。プラズマ発生装置30はそれを実現したものである。誘導加熱装置26を用いて、減圧チャンバー2内で原材料を加熱、昇華(気化)させプラズマ中に拡散させる。
そして複数金属を順次選択加熱できるように原材料支持部28を原材料交換メカ機能を有するものにするのもよい。
次にチャンバー2内に残っている+Aイオン(金属イオン)を、バイアス形成用電源24の電圧印加よってダミー電極21を陰極にして該ダミー電極21に浮遊する+Aイオンを付着清浄化し、バイアス形成用電源24の電圧印加を停止する。
今度は原材料支持部28を動かして原料物質Bを加熱昇華させ、バイアス形成用電源25の電圧印加を行いワーク14に付着させる。
おなじようにチャンバー2内に残っている+Bイオンは、ダミー電極21に付着させクリーンにする。以下同様に+Cイオンを発生付着させても良いし、また+Aイオンに戻って、層を厚くしたり、複合化したりもできる。またこれを繰り返してもよい。
このようにすると、ワークの表面に、個々の金属の付着量や深さを正確に制御された合金膜がつくれる。
付記の装置の目的は、チャンバー内を再真空や気体の入れ替えなしに清浄化してそのまま次の蒸着やエッチングを可能とするプラズマ発生装置を提供することを目的としている。
<付記1の装置>
チャンバーと、
このチャンバー内に設けられプラズマを発生させるプラズマ発生電極と、
高周波電流を前記プラズマ発生電極に供給する高周波発振器と、
前記チャンバー内に該チャンバーとは絶縁状態で設けられたダミー電極と、
このダミー電極にバイアス電流を供給する、前記チャンバーと絶縁状態とされバイアス形成用電源とからなることを特徴とするプラズマ発生装置。
自励式の高周波発振器によるものに限定されず、図7〜図10に示す他励式の高周波発振器によるプラズマ発生装置も付記1の装置の技術的範疇に含むものである。
ダミー電極を設けたことにより、該ダミー電極とワーク電極形成部がひとつのチャンバー内にあることになる。電圧がかけられた方に浮遊イオンは引着されるので、例えばチャンバー内を減圧状態とし、ワークへのA物質の蒸着が完了したら、ワーク電極形成部へのバイアス電圧の印加を切り、ダミー電極へバイアス電圧をかけたダミー電極に残存A物質イオンを引着(蒸着)させてチャンバー内を瞬時といってよい素早さで清浄化して、ダミー電極へのバイアス電圧の印加を切り、B物質を気化させてプラズマによりイオン化させ、ワーク電極形成部へバイアス電圧をかけたワークにB物質を引着(蒸着)させるということが行える。
バイアス形成用電源を手動制御あるいは自動制御により自在にコントロールすることが可能であるので、バイアス電圧の強さ、通電時間、通電強さの可変、通電と切断のタイミングなどにより、ワークあるいはダミー電極に一瞬にして、間欠的に、あるいは徐々に引着させることがコントロールできるので、蒸着膜の形成を細かくコントロールすることを可能とするものである。
この点で、ダミー電極にダミー電極用バイアス形成用電源を設け、これとは別にワーク電極形成部にはワーク電極用バイアス形成用電源を設けるという、それぞれ別個のバイアス形成用電源を設けることにより、バイアス電圧の強さ、通電時間、通電強さの可変、通電と切断のタイミングなどを、例えばダミー電極とワーク電極形成部の両方に電流を流しながら電流量を微妙にコントロールして、より高品質な蒸着膜や機能的な蒸着膜の形成などを可能とすることができるものである。
さらに、この作業を合金成膜時に適用すると、
たとえば 清浄化−A物質成膜−清浄化−B物質成膜−清浄化−・・・のような工程が可能になり、各工程の前段階において短時間で高清浄化が行われるので、目的の物質が単独に制御、成膜されるため、合金組成が正確になるばかりか、膜の厚さ、深さなどが個々に正確かつ高品質に制御できる。
チャンバー内に誘導加熱装置の一部をなす高周波電流が流れるワークコイルを設け、このワークコイルによる誘導加熱によって気化される複数の気化部材を保持する気化部材保持部を設け、気化させようとする気化部材を移動して前記ワークコイルの加熱位置にセットするための気化部材移動手段を設けてなることを特徴とする付記1の装置記載のプラズマ発生装置。
<付記2の装置の効果>
付記1の装置記載の装置の効果と同様な効果を奏するとともに、例えば異なる材質の気化部材を後先に分けて、ワークコイルが複数の場合は同時に気化させ、あるいは一方を先に気化させながら他方を後から気化させるなどのことができるという効果を奏する。
チャンバーが電位0状態で接地され、
プラズマ発生電極が前記チャンバー内に該チャンバーとは絶縁状態に設けられた、電極間にプラズマを発生させるプラズマ発生電極であり、
このシールド体と絶縁状態で前記発振器に電力を供給する発振器用電源を設け、
高周波発振器が前記発振器用電源からの電力を高周波電力に変えて前記プラズマ発生電極に供給するとともに、発振器とトランスを有する自励式の高周波発振部であり、
前記チャンバーに導電形態で一体化されて前記高周波発振部を覆うように、導電性部材からなる高周波発振部シールドカバーが設けられ、
前記トランスの中位点と前記チャンバーを電位0状態で中位点接続部とで接地し、
前記高周波発振部およじ該チャンバー内で生ずる高周波によるノイズ輻射を生じなくさせるための、前記チャンバーと前記高周波発振部シールドカバーとによってシールド体を形成し、
前記チャンバー内に該チャンバーと絶縁状態で、ワークを電極状態にするためのワーク電極形成部を設け、
前記ワーク電極形成部にバイアス電圧を印加する、前記シールド体と絶縁状態とされ且つ該シールド体と電位0状態で接地されたバイアス形成用電源を設け、
ダミー電極に電力を供給する電源が、シールド体と絶縁状態とされ且つ該シールド体と電位0状態で接続されてバイアス電圧を印加するバイアス形成用電源であることを特徴とする付記1、2の装置いずれか記載のプラズマ発生装置。
付記1、2の装置いずれか記載の装置の効果と同様な効果を奏するとともに、次に述べるような効果を奏する。
(1)本装置は、チャンバーと該チャンバーと導電形態で一体化された高周波発振部シールドカバーによりシールド体を形成している構成であり、シールド体とエネルギー供給源は高周波的には何の接続もなく給電線を全く無くした形となり、給電線がないので給電線からの妨害電波(ノーマル・モード)の輻射はないとともに、金属などの導体であるシールド体自体が電位を持たない(電極とならない)ように、プラズマへの給電(エネルギー注入)を平衡電極からとしてシールド体壁を高周波電流が流れない電流通路としない(電位の偏りが生じない)構成としているので、コモン・モードの発生も起こらないという効果を奏する。すなわちノーマル・モードの電波障害もコモン・モードの電波障害も起こらない、よって装置全体を覆うコストと接地体積を必要とする別囲体を必要としないで電波障害を起こさないプラズマ発生装置を実現する。
プラズマはその発生させる体積や分布状態、電子密度などで、電気的条件が変わるが、本装置にあっては周波数や注入パワーをその用途に応じて自由に選択できるという、高周波ノイズ輻射(漏洩電磁波)を考慮することなく使用するプラズマ発生に適した周波数を自由に選択可能なプラズマ発生装置を実現するものである。
また、蒸着物が高価なものであれば、その消耗量を軽減するとともに壁から回収を容易にできる。
これにより、ワーク電極形成部に電流を流さず、ダミー電極に電流を流す状態にすると、一瞬にして、間欠的に、あるいは徐々にチャンバー内の残存イオンを電圧がかけられたダミー電極に引着してチャンバー内の清浄化を実現することが可能にできるという効果を奏する。これによって、従来技術のようにチャンバー内の気体を入れ替える、真空操作を繰り返すことなく、他部材の蒸着膜形成への移行時間を短時間で行うことができ、プラズマ蒸着膜形成装置にあって効率性に優れた生産能力の高いプラズマ発生装置を実現する。
「電力を高周波電力に変えて」の「電力」は直流電力、交流電力、パルス電力など多様な電力形態がある。
2:チャンバー、
3:プラズマ発生電極、
4:発振器、
5:トランス、
6:高周波発振部、
7:高周波発振部シールドカバー、
8:中位点接続部、
9:シールド体、
10:発振器用電源、
11:ワーク電極形成部、
12:バイアス形成用電源、
13:耐蝕壁、
14:ワーク、
15:中位点、
18:減圧部、
19:ガス注入部、
21:ダミー電極、
22:切替スイッチ、
23:プラズマ発生装置、
24:バイアス形成用電源、
25:バイアス形成用電源、
26:誘導加熱装置、
27:ワークコイル、
28:原材料支持部、
30:プラズマ発生装置。
Claims (5)
- 電位0状態で接地された導電性部材からなるチャンバーと、
このチャンバー内に該チャンバーとは絶縁状態に設けられプラズマを発生させるプラズマ発生電極と、
電力を高周波電力に変えて前記プラズマ発生電極に供給する、発振器とトランスを有する高周波発振部と、
前記チャンバーに導電形態で一体化されて前記高周波発振部を覆うように設けられた、導電性部材からなる高周波発振部シールドカバーと、
前記トランスの中位点と前記チャンバーを電位0状態で接地してなる中位点接続部と、
前記高周波発振部およじ該チャンバー内で生ずる高周波によるノイズ輻射を生じなくさせるための、前記チャンバーと前記高周波発振部シールドカバーとによって形成されてなるシールド体と、
このシールド体と絶縁状態で前記発振器に電力を供給する発振器用電源と、
前記チャンバー内に該チャンバーと絶縁状態で設けられた、ワークを電極状態にするためのワーク電極形成部と、
このワーク電極形成部にバイアス電圧を印加する、前記シールド体と絶縁状態とされ且つ該シールド体と電位0状態で接地されたバイアス形成用電源とからなることを特徴とするプラズマ発生装置。 - プラズマ発生電極が平衡給電である対称電極であるとともに、該対称電極の中位点は接地してなることを特徴とする請求項1に記載のプラズは発生装置。
- 高周波発振器が自励式高周波発振器あることを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載のプラズマ発生装置。
- チャンバー内に該チャンバーと絶縁状態のダミー電極を設け、このダミー電極にバイアス電圧を印加する、シールド体と絶縁状態とされ且つ該シールド体と電位0状態で接続されたバイアス形成用直流電源を設けてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプラズマ発生装置。
- チャンバー内に誘導加熱装置の一部をなす高周波電流が流れるワークコイルを設け、このワークコイルによる誘導加熱によって気化される複数の気化部材を保持する気化部材保持部を設け、気化させようとする気化部材を移動して前記ワークコイルの加熱位置にセットするための気化部材移動手段を設けてなることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載のプラズマ発生装置。
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