JP2010209988A - 軸受およびモータ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 玉やころなどの転動体で転がり支持し、潤滑剤として油またはグリースを使用する軸受において、前記軸受の内輪または外輪と前記転動体の間の接触部における前記潤滑剤の中央油膜厚さを0.24μm以下としたものであり、これにより、絶縁破壊はするが電流集中が起こらず、接触部全体で絶縁破壊し、内・外輪の転走面や転動体の表面に損傷が生じない
【選択図】 図6
Description
(1)特許文献1における接触タイプのシールプレートの構造は接触することにより発熱となるうえ、長期の運転に伴い摩耗し接触しなくなりバイパス機能が無くなるという問題がある。
(2)また、特許文献2における絶縁物で被覆する方法では、コーティングに費用がかかったり、樹脂が弾性変形することにより軸受のクリープが生じると言う問題がある。
(3)特許文献3における油膜パラメータΛ値を1〜6となるように油膜厚さを厚くする方法では、Λ値1〜6が絶縁破壊しない根拠が薄弱である(裏付けが弱いのでもしかすると絶縁破壊するかも知れないというリスクがある)し、油膜厚さが厚すぎて回転時にエネルギーロスとなるという問題がある。
(4)特許文献4における絶縁破壊電圧を1V以下とする方法では、これを実現する方法が不明確であるし、小さくはなるにせよ損傷するという問題がある。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、(1)発熱がなく長期の運転でも機能低下せず、(2)費用がかからず軸受のクリープも生じず、(3)明確な実験の裏付けにより効果の信頼性が高いうえにエネルギーロスもなく、(4)実現する方法が明確で全く損傷しない、すなわち電食しない軸受およびモータを提供することを目的とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の軸受が、回転運動または直線運動を行う用途に適用されるモータであることを特徴としている。
請求項3に記載の発明は、請求項2記載のモータにおいて、前記モータは基油の粘度が異なる複数のグリースを詰めた複数のグリースガンを備えることを特徴としている。
請求項4に記載の発明は、請求項2記載のモータにおいて、前記モータに使用される軸受を荷重支持以外の電流バイパス専用に使用することを特徴としている。
請求項5に記載の発明は、請求項2記載のモータにおいて、前記モータに使用される軸受は、軸受の温度を可変することによって油膜厚さを変化させるものであることを特徴としている。
請求項2に記載の発明によると、請求項1記載の軸受を回転運動や直線運動を行うモータに適用することによって電食が生じない。
請求項3に記載の発明によると、請求項2に記載のモータにおいて、粘度の異なる複数のグリースを詰めた複数のグリースガンを備え、運転状況によってグリースを入れ替えることにより、常に電食しない安全な油膜厚さにでき、軸受が電食しない。
請求項4に記載の発明によると、請求項2に記載のモータにおいて、軸受を荷重支持以外の電流バイパス専用に使用することにより、荷重支持の軸受には電流が流れず、軸受が電食しない。
請求項5に記載の発明によると、請求項2に記載のモータにおいて、軸受の温度を可変することにより、油膜厚さを電食しない安全な油膜厚さにすることで、軸受が電食しない。
図1は本発明の実施形態を示す軸受であって、(a)は側断面図、(b)は正面図である。
図1において、1は軸受、11は内輪、12は玉、13は外輪であり、軸受用鋼で出来ている。残る空間部分に図示しないグリースが詰められている。一般的に軸受1は外輪13を固定し、内輪11を回転させる状態で使用することが多いので、この場合を例に説明する。内輪11が停止しているときは内輪11と玉12、玉12と外輪13は直接金属接触している。内輪11の回転に伴い、玉12は自転しながら内輪11の回転速度の約半分の速度で公転する。このときグリースが内輪11と玉12の接触面に巻き込まれ油膜を形成し、電気的に絶縁状態になる。同時に外輪13と玉12の間も同様に油膜を形成し、電気的に絶縁状態になる。この油膜の挙動は、ボールとガラスディスクの組み合わせにより以下のとおりに詳しく調べることができる。
図2は油膜絶縁破壊観察装置の外観を示す概略図である。
図2において、21はガラスディスク、22は電極の膜、23はばね、24はボール、25はブラシ、26はプーリー、27はシャフト、28は絶縁物である。油膜絶縁破壊観察装置は、シャフト27の上部先端側にガラスディスク21を固定し、ガラスディスク21の下面にボール24を押し付けるためのばね23を配設すると共に、シャフト27およびボール24にはそれぞれ軸電流を通電するためのブラシ25を当接させるようになっている。シャフト27の後端部にはプーリー26を接続し、外部の図示しない駆動装置によりプーリー26を駆動するようになっている。この装置のガラスディスク21とボール24の接触状態は、軸受の内輪(または外輪)と玉の接触状態の関係を模している。ガラスディスク21の下面には可視光を透過する電極の膜22を被覆している。また、ガラスディスク21の下面にはグリース14を薄く塗りつけている。ボール24を下方のバネ23に抗してガラスディスク21に押しつけ、ガラスディスク21を回転させると、ボールも供回りして自転する。その結果、ボール24とガラスディスク21の間にサブミクロンの油膜が形成される。図3はガラスディスク停止時のカメラ画像であり、図4はガラスディスク回転時のカメラ画像である。
まず、ガラスディスク停止時から説明する。荷重によりガラスディスクとボールは弾性変形し、本評価荷重の場合、直径0.4mm程度の円形で直接接触する。この接触円は弾性変形解析した研究者の名前からヘルツ円と呼ばれており、周知である。
次に、ガラスディスク回転時を説明する。ガラスディスクの回転に伴いボールが共回りし、油がガラスディスクとボールの間に巻き込まれ油膜を形成する。図4は左から油が巻き込まれている様子で中央部分が最も厚い油膜となる。この油膜の厚さは光干渉法で測定できる。図4の場合、干渉縞の縞次数から読み取った中央の油膜厚さは0.93μm、最小油膜厚さ部は0.50μmである。わずか直径0.4mmという小さな面積のヘルツ円のなかにも油膜の厚さは中央油膜厚さや最小油膜厚さと厚さ分布をなし、干渉縞は馬蹄形となる。実際の軸受の場合も同様で、内輪と玉の間、玉と外輪の間で生じる油膜もこのようにヘルツ円のなかで厚さの分布をなす。この油膜絶縁破壊観察装置を用いて印加する電圧を大きくしていくと、ある電圧で絶縁破壊する。この絶縁破壊に伴い観察された発光時のカメラ画像を図5に示している。これより、0.94μmの箇所が2点、絶縁破壊により発光が見られた。発光の直径は10μm程度である。絶縁破壊時の電圧と電流はオシロスコープで測定するという方法で求める。この装置を使って発光と油膜厚さの関係を調べたところ、油膜厚さがある値より大きいと発光することが分かった。逆に言えばある油膜厚さ以下では発光しなかった。
図6は油膜厚さと絶縁破壊開始電圧の関係を表わしたグラフであって、(a)は周速284mm/sec、温度20℃、(b)は周速326mm/sec、温度−10℃、(c)は周速642mm/sec、温度−10℃の条件の下での測定結果である。図6から、最小油膜厚さと中央油膜厚さをエラーバーで示し、発光する油膜厚さを○でプロットしている。発光する/しないの油膜厚さのしきい値は0.24μmであった。
図7は本発明の実施の形態の効果を説明する運転後のボールの拡大写真であって、詳しくは油膜厚さ0.24μm以下で80秒間運転した後の状態を示したものである。図7において、電食痕は残っていない。図8は本発明の実施の形態の効果を説明する運転中の干渉像を示したものである。図8において、中央油膜厚さは0.24μmである。図9は本発明の実施の形態の効果を説明する運転中の電流・電圧の波形データを示したものである。図9において、電圧の増減に併せて電流が流れている。また、電流がゼロ付近で不連続であることから直接接触ではなく、ある電圧まで耐えて絶縁破壊したことが分かる。その電圧をV3として膜の抵抗値、電流、電圧の値から計算して示しているが、約1.5Vである。
比較として、図10は比較例を説明する運転後のボールの拡大写真であって、0.24μmより厚い油膜厚さで80秒間運転した後の状態を示したものである。図10において、電食痕が残っている。図11は比較例を説明する運転中の干渉像を示したものである。図11において、中央油膜厚さ0.65μm、最小油膜厚さ0.41μmと、いずれの油膜厚さも0.24μmより大きい。図12は比較例を説明する運転中の電流・電圧の波形データを示したものである。図12において、普段、電流は流れないが、たまに200mA程度の電流がパルス的に流れている。
中央油膜厚さが0.24μm以下だと油膜は絶縁破壊しても発光しない。これはヘルツ円全体(直径0.4mm)で絶縁破壊するためで、電流密度(=電流/面積)が小さくなりボールやディスクは溶融損傷しない。逆に中央油膜厚さが0.24μmより大きいと油膜はヘルツ円のさらにごく一部(直径10μm)で絶縁破壊し、電流密度が大きくなりボールやディスクに溶融損傷が残る。
つまり本発明のポイントは、軸受の油膜厚さを0.24μm以下とすることで電食を防止するものである。
図において、30はフレーム、31はステータ、32はロータ、33はシャフト、34はL側ブラケット、35は反L側ブラケット、36はL側軸受、37は反L側軸受である。
本実施例では、モータの反L側軸受37に中央油膜厚さが0.24μm以下の軸受を、L側軸受36に比較として中央油膜厚さが0.30μm以下の軸受を組み込んだ。
このモータを1年間耐久試験した。図14は試験後のL側軸受36と反L側軸受37の外輪の転走面の写真を示しており、(a)は本発明、(b)は比較例である。図14において、本発明(a)の反L側軸受には電食痕が生じず、比較(b)のL側軸受に電食痕が生じていることが分かる。ガラスディスクとボールの組合せで調べたと同じく、実機の軸受およびこの軸受を組み込んだモータでも中央油膜厚さが0.24μm以下の軸受を用いれば電食しない。
図15において、L側ブラケット34の外部に複数のグリースガン38を設置したもので、このグリースガン38には基油の粘度が異なるグリースが詰め込まれている。油膜厚さはグリース基油の粘度、温度、回転速度によって変化させることができる。ユーザの仕様用途によって温度、回転速度で決まる油膜厚さが、電食が発生する危険な油膜厚さになる場合、グリース基油の粘度を変更して安全油膜厚さに調整し、電食が発生しないようにできる。
図16において、通常の荷重支持用のL側軸受36の外部に中央油膜厚さが0.24μm以下の軸受39を設けたものである。この軸受で電流がバイパスされるので、荷重支持用の軸受には電流が流れない。
図17において、L側ブラケット34の周囲にバンドヒータ40を巻き付けている。先に述べたとおり、油膜厚さはグリース基油の粘度、温度、回転速度で決まる。ユーザの仕様用途でグリース基油の粘度、回転速度が変えられないときは、このバンドヒータでグリースを加熱し、油膜厚さが0.24μm以下となるように制御する。
11 内輪
12 玉
13 外輪
14 グリース
21 ガラスディスク
22 電極の膜
23 ばね
24 ボール
25 ブラシ
26 プーリー
27 シャフト
28 絶縁物
29 ブラシ
30 フレーム
31 ステータ
32 ロータ
33 シャフト
34 L側ブラケット
35 反L側ブラケット
36 L側軸受
37 反L側軸受
38 グリースガン
39 電流バイパス目的の軸受
40 バンドヒータ
Claims (5)
- 玉またはころなどの転動体で転がり支持し、潤滑剤として油またはグリースを使用する軸受において、前記軸受の内輪または外輪と前記転動体の間の接触部における前記潤滑剤の中央油膜厚さを0.24μm以下としたことを特徴とする軸受。
- 請求項1記載の軸受が、回転運動または直線運動を行う用途に適用されることを特徴とするモータ。
- 前記モータは、基油の粘度が異なる複数のグリースを詰めた複数のグリースガンを備えることを特徴とする請求項2記載のモータ。
- 前記モータに使用される軸受を荷重支持以外の電流バイパス専用に使用することを特徴とする請求項2記載のモータ。
- 前記モータに使用される軸受は、軸受の温度を可変することによって油膜厚さを変化させるものであることを特徴とする請求項2記載のモータ。
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JP2009055599A JP2010209988A (ja) | 2009-03-09 | 2009-03-09 | 軸受およびモータ |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2014228378A (ja) * | 2013-05-22 | 2014-12-08 | ファナック株式会社 | モータ軸受の電食の度合いを推定するモータ制御装置、およびその方法 |
Citations (3)
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JPH1028350A (ja) * | 1996-07-10 | 1998-01-27 | Hitachi Ltd | 交流電動機 |
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JP2006112586A (ja) * | 2004-10-18 | 2006-04-27 | Mitsubishi Heavy Ind Ltd | 機械装置の給油管理装置、グリスガン装置及び給油監視用のicタグ |
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2009
- 2009-03-09 JP JP2009055599A patent/JP2010209988A/ja active Pending
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