JP2010205838A - 半導体発光装置の製造方法及び半導体発光装置 - Google Patents

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Kazuyuki Yoshimizu
和之 吉水
Seiichiro Kobayashi
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Abstract

【課題】支持基板から表面白金族金属層及び裏面白金族金属層が剥がれることがない半導体発光装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】成長用基板上に複数の半導体層が積層された積層構造体と、成長用基板とは異なる材質の支持基板と、を半田等の接合材料を介して接合することで半導体発光装置を形成する製造方法において、加熱処理によって支持基板の表面上及び裏面上のそれぞれに表面白金族金属層及び裏面白金族金属層の全体を支持基板と合金化する。
【選択図】図13

Description

本発明は、半導体発光装置の製造方法及び半導体発光装置に関し、特に、半田層による成長用基板と支持基板とを接合する技術を用いた半導体発光装置の製造方法及びこれによって製造される半導体発光装置に関する。
従来から、成長用基板上に複数の半導体層が積層された積層構造体と、成長用基板とは異なる材質の支持基板と、を半田等の接合材料を介して接合する(貼り合わせる)技術を用いて、半導体発光装置を製造する方法が知られている。このような積層構造体と支持基板とを貼り合わせる技術を利用した半導体発光装置の製造方法は、例えば、特許文献1に開示されている。
以下に、従来の半導体発光装置の製造方法について説明する。先ず、n型シリコン(Si)からなる支持基板の表面上及び裏面上のそれぞれに表面金属層及び裏面金属層が形成される。更に、表面金属層の上に金錫(AuSn)層が積層され、支持体部の形成が完了する。次に、ガリウム砒素(GaAs)からなる成長用基板の表面上に、複数の半導体層が積層される。更に、積層された半導体層上に反射電極層及び拡散防止層及び金(Au)を順次積層し、加熱処理を施して発光体部の形成が完了する。なお、支持体部及び発光体部の形成時の加熱温度は、例えば、約摂氏500度(500℃)である。
次に、AuSn層とAu層とが密着され、支持体部及び発光体部に加熱処理が施されることより、支持体部及び発光体部が接合され、接合体が形成される。続いて、エッチングによって接合体から支持基板が除去される。当該除去によって露出した半導体層上に金属が形成され、当該金属に加熱処理が施されることによって表面電極が形成される。なお、支持体部及び発光体部を接合する工程の加熱温度は、例えば、約340℃であり、表面電極を形成する工程の加熱温度は、例えば、約400℃である。
しかしながら、上述する製造方法においては、成長用基板の除去工程時及びチップへの加工工程後の素子抜き取り工程時に、表面金属層及び裏面金属層が支持基板から剥がれてしまう問題があった。
特開2004−270079号公報
本発明は、以上の如き事情に鑑みてなされたものであり、支持基板から表面金属層及び裏面金属層が剥がれることがない半導体発光装置及びその製造方法を提供する。
上述した課題を解決するために、本発明の半導体発光装置の製造方法は、支持基板の表面上及裏面上のそれぞれに白金族元素からなる表面白金族金属層及び裏面白金族金属層を形成するとともに、表面白金族金属層の上に第1の接合金属層を積層して支持体部を形成する工程と、成長用基板の上に発光動作層、電極層及び第2の接合金属層を順次積層して発光体部を形成する工程と、第1の接合金属層と第2の接合金属層とを圧着するとともに加熱し、第1の接合金属層及び第2の接合金属層を溶融させて支持体部及び発光体部を接合して接合体を形成する工程と、表面白金族金属層及び裏面白金族金属層の全体を支持基板と合金化する加熱処理工程と、を有することを特徴とする。
また、上述した課題を解決するために、本発明の半導体発光装置は、支持基板の上方に形成された接合層と、接合層の上に形成された電極層と、電極層の上に形成された発光動作層と、発光動作層の上に形成された外部接続電極と、を備える半導体発光装置であって、支持基板の表面上及び裏面上には、それぞれ、支持基板の構成元素と白金族元素との合金からなる表面合金層及び裏面合金層が形成され、表面合金層及び裏面合金層には、白金族元素のみからなる領域が隣接して存在しないことを特徴とする。
成長用基板上に複数の半導体層が積層された積層構造体と、成長用基板とは異なる材質の支持基板と、を半田等の接合材料を介して接合することで半導体発光装置を形成する製造方法において、加熱処理によって支持基板の表面上及び裏面上のそれぞれに形成された表面白金族金属層及び裏面白金族金属層の全体を支持基板と合金化する。
このような表面白金族金属層及び裏面白金族金属層の全体を支持基板と合金化することにより、支持基板の表面上及び裏面上に白金族金属のみからなる層と合金層とで形成される剥離しやすい界面がなくなり、支持基板の表面及び裏面上における表面白金族金属層及び裏面白金族金属層の剥離を防止することができる。
本発明の実施例である半導体発光装置の各製造工程における断面図である。 本発明の実施例である半導体発光装置の各製造工程における断面図である。 図2の破線に囲まれた領域3の部分拡大図である。 本発明の実施例である半導体発光装置の製造工程における断面図である。 本発明の実施例である半導体発光装置の製造工程における断面図である。 本発明の実施例である半導体発光装置の製造工程における断面図である。 本発明の実施例である半導体発光装置の断面図である。 本発明の実施例である半導体発光装置の上面図である。 Pt層の剥がれ試験についての条件を説明した図である。 Pt層の剥がれ試験において使用される試料の断面図である。 Pt層の剥がれ試験の評価方法を説明した図である。 Pt層の剥がれ試験の試験結果を示した図である。 支持基板及びPt層におけるオージェ電子分光による測定スペクトルである。 支持基板及びPt層におけるオージェ電子分光による測定スペクトルである。 Pt層の剥離及びオージェ電子分光の測定方向を説明するための断面図である。 Pt層における珪素原子の2s軌道の光電子スペクトルである。 Pt層における珪素原子の2s軌道の光電子スペクトルである。 図16(b)のピーク部分を波形分離した拡大図である。 Pt層における白金原子の4f軌道の光電子スペクトルである。 Pt層における白金原子の4f軌道の光電子スペクトルである。
以下、本発明の実施例について添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
(半導体発光装置の製造方法及びその構造)
先ず、図1乃至8を参照しつつ、本発明の実施例である半導体発光装置の構造及びその製造方法について説明する。
ホウ素(B)が添加されたシリコン(Si)からなる支持基板11が準備される(図1(a))。次に、電子線加熱蒸着法によって支持基板11の両面に、金属層として第1の白金(Pt)層(表面白金族金属層)12及び第2のPt層(裏面白金族金属層)13が形成される(図1(b))。第1及び第2のPt層の膜厚は、約30ナノメートル(nm)である。
次に、電子線加熱蒸着法によって第2のPt層13上に、チタン(Ti)層14が形成される。更に、電子線加熱蒸着法によってTi層14上に、第1のNi層15が形成される(図1(c))。Ti層14の膜厚は、例えば、約150nmである。また、第1のNi層15の膜厚は、例えば、約100nmである。本実施例においては、後述する金錫(AuSn)半田層に対して濡れ性が高い第1のNi層15がTi層14上に形成されているが、例えば、パラジウム(Pd)からなる層をTi層14上に形成しても良い。
次に、電子線加熱蒸着法によって第1のNi層15上にAuSn半田層16が形成される(図1(d))。AuSn半田層16のAuとSnとの組成比は、重量比で約8:2、原子数比で約7:3である。また、AuSn半田層16の膜厚は、例えば、約300nmである。本実施例においては、第1のNi層15とAuSn半田層16とから第1の接合金属層が形成されている。本工程の終了により、支持体部20の形成が完了する。
なお、第1のPt層12、第2のPt層13、Ti層14、第1のNi層15及びAuSn半田層16は、スパッタリング、抵抗加熱蒸着又は電子ビーム蒸着などの蒸着法によって形成されても良い。
次に、成長用基板としてn型のガリウム砒素(GaAs)基板21が準備される(図2(a))。続いて、GaAs基板21上に有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)により、AlGaInP系の化合物半導体からなり、且つ、複数の半導体層が積層されることで発光動作層として機能する発光動作層22が形成される(図2(b))。成長条件は、例えば、成長温度が約摂氏700度(700℃)、成長圧力が約10キロパスカル(kPa)である。また、有機金属(MO)ガス用の原料としては、例えば、トリメチルガリウム(TMGa)、トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリメチルインジウム(TMI)が用いられる。V族ガスとしては、例えば、アルシン(AsH3)及びフォスフィン(PH3)が用いられる。不純物添加用の原料としては、例えば、n型不純物としてシラン(SiH4)が用いられ、p型不純物としてジメチルジンク(DMZn)が用いられる。
具体的な発光動作層22の構造は、図3に示されているように、n型クラッド層22a、活性層22b及びp型クラッド層22cから構成されている。具体的な製造工程は、以下の通りである。
先ず、組成が(AlxGa1-xyIn1-yP(0≦x≦1、0<y≦1)で、Siの濃度が約3.0×1017cm-3のn型クラッド層22aが、GaAs基板21上に形成される。例えば、n型クラッド層22aの組成は、(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pである。なお、n型クラッド層22aの膜厚は、例えば、約1000nmである。
次に、組成が(AlxGa1-xyIn1-yP(0≦x≦1、0<y<1)の活性層22bが、n型クラッド層22a上形成される。ここで、x及びyの値は、活性層22bのバンドギャップがn型クラッド層22a及びp型クラッド層22cのバンドギャップよりも小さくなるように設定される。例えば、活性層22bは、井戸層が(Al0.15Ga0.850.5In0.5P又は(Al0.1Ga0.90.5In0.5Pであり、障壁層が(Al0.5Ga0.50.5In0.5Pである量子井戸を有する構造である。なお、活性層22bは、単一構造(バルク構造)であっても良い。また、活性層22bの膜厚は、例えば、約200〜500nmである。活性層22bは、本実施例の組成に限定されるものではなく、例えば、アルミニウムを含まないInGaP系からなる層(すなわち、x=0)であっても良い。例えば、InGaP系の活性層としては、In0.5Ga0.5Pがある。
次に、組成が(AlxGa1-xyIn1-yP(0≦x≦1、0<y≦1)で、亜鉛(Zn)の濃度が約5.0×1017cm-3のp型クラッド層22cが、活性層22b上に形成される。例えば、p型クラッド層22cの組成は、(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pである。なお、p型クラッド層22cの膜厚は、例えば約1000nmである。かかる工程を経て、発光動作層22の形成が完了する。なお、発光動作層22は、単純なpn接合からなる層や、シングルへテロ構造であっても良い。
また、GaAs基板21とn型クラッド層22aとの間に、n型GaAsバッファ層(図示せず)が下地として形成されも良い。この場合には、GaAs基板21上にシリコン等の不純物が添加されることにより、n型GaAsバッファ層が形成される。n型GaAsバッファ層の膜厚は、例えば、約200nmである。
次に、スパッタリングにより、発光動作層22上に反射電極層として金−亜鉛(AuZn)層23が堆積される(図2(c))。AuZn層23は、発光動作層22において発生した光を光取り出し面側に反射する。これにより、半導体発光素子の光取り出し効率を向上させることができる。
次に、反応性スパッタリングにより、AuZn層23上に第1の窒化タンタル(TaN)層24が形成される。続いて、反応性スパッタリングにより、第1のTaN層24上にチタン−タングステン(TiW)層25が形成される。更に、反応性スパッタリングにより、TiW層25上に第2のTaN層26が形成される(図2(d))。例えば、第1のTaN層24の膜厚は約200nmであり、TiW層25の膜厚は約100nmであり、第2のTaN層26の膜厚は約100nmである。第1のTaN層24、TiW層25及び、第2のTaN層26は、後述する接合部材(共晶材料)が拡散によってAuZn層23に侵入することを防止する。第2のTaN層26の形成後、発光動作層22とAuZn層23とのオーミック接合を得るために、窒素雰囲気下で約500℃の加熱処理が施される。
次に、電子線加熱蒸着法によって第2のTaN層26上に、第2のNi層27が形成される。更に、電子線加熱蒸着法によって第2のNi層27上に、Au層28が形成される(図2(e))。例えば、第2のNi層27の膜厚は約100nmであり、Au層28の膜厚は約30nmである。なお、第2のNi層27及びAu層28は、スパッタリング、抵抗加熱蒸着又は電子ビーム蒸着などの蒸着法によって形成されても良い。本実施例においては、第2のNi層27とAu層28とから第2の接合金属層が形成されている。本工程の終了により、発光体部30の形成が完了する。
次に、支持体部20のAuSn半田層16と、発光体部30のAu層28と、が対向した状態で、支持体部20及び発光体部30が密着される。その後、密着した支持体部20及び発光体部30が窒素雰囲気下で熱圧着される(図4)。熱圧着の条件は、例えば、圧力が約1メガパスカル(MPa)、温度が約340℃、圧着時間が約10分間である。この熱圧着によって、AuSn半田層16が溶融し、第2のNi層27及びAu層28が、溶融しているAuSn半田層16に溶解する。更に、AuSn半田層16のAu及びSn及びAu層28のAuが、第1のNi層15及び第2のNi層27に拡散して吸収される。更に、溶融したAuSn半田層16が固化することにより、AuSnNiからなる接合層51が形成される。これにより支持体部20と発光体部30とが接合され、接合体60が形成される(図5)。なお、接合材料(第1のNi層15、AuSn層16、第2のNi層27及びAu層28)、接合時の雰囲気、接合温度及び接合時間は、上述した条件に限られることはなく、酸化等により接合強度を劣化させなければ、支持体部20と発光体部30とを接合することができる他の条件であっても良い。
次に、アンモニア水と過酸化水素水との混合液を用いたウエットエッチングにより、接合体60からGaAs基板21が除去される。GaAs基板21が除去されることにより、発光動作層22の表面が露出する(図6)。なお、GaAs基板21の除去は、ドライエッチング、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)、機械的研削など、又はこれらを組み合わせた方法によって行われても良い。
次に、発光動作層22上にレジストが塗布される。塗布されたレジストが所望の電極パターンになるように、パターニングが施される。パターニングされたレジストの開口部分に、電子線加熱蒸着法によって金・ゲルマニウム・ ニッケル(AuGeNi)が蒸着される。その後に、レジストを除去すること(リフトオフ法)で、所望の形状のAuGeNiが形成される。更に、AuGeNi及び接合体60に対して、窒素雰囲気下で約400℃の加熱処理が施される。これによってAuGeNiと発光動作層22との合金化が図られ、発光動作層22と良好なオーミック接合した外部接続電極71が形成される。更に、本工程を経ることにより、第1のPt層12及び第2のPt層13の全体が支持基板11とシリサイド化(合金化)し、第1の合金層(裏面合金層)72及び第2の合金層(表面合金層)73が形成される。本工程の終了により、半導体発光装置100が完成する(図7)。
外部接続電極71の形状は、例えば、図8に示されているような格子状の線状電極71aと、線状電極の中心部に位置する円状のボンディングパッド71bと、から構成される。なお、電子線加熱蒸着法によって蒸着される外部接続電極71の材料はAuGeNiに限られず、例えば、AuSnNi、AuSn、AuGe等であっても良い。
なお、上述した製造方法は一例にすぎず、例えば、第1のPt層12及び第2のPt層13を形成した後に、第1のPt層12及び第2のPt層13の全体を支持基板と合金化(シリサイド化)するための加熱処理を施しても良い。
以下に、第1のPt層12及び第2のPt層13の全体を支持基板と合金化することで支持基板の表裏面上における剥離が防止されることを説明する。更に、Pt層を支持基板とシリサイド化するためだけの加熱処理を行わずに、その後の製造上の加熱処理によってPt層全体を支持基板とシリサイド化することができる理由も説明する。
(引き剥がしによるPt層の膜厚の評価)
次に、図9乃至図15を参照しつつ、上述した製造方法によって形成された半導体発光装置100の第1及び第2のPt層と支持基板11との間に良好な密着性が得られ、第1及び第2のPt層が支持基板11から剥がれることがないことを説明する。
支持基板(BがドープされたSi基板)上からのPt層の剥がれを確認するために、支持基板の表面及び裏面の各々に25、50、100、200nmの4種類の膜厚を有するPt層が形成され、全ての支持基板に対して340℃で10分間の加熱処理が実施され(第1の加熱処理)、更に各膜厚のPt層を備える支持基板毎に350℃、400℃、450℃、500℃の4種類の加熱温度で、各180秒間の加熱処理が実施(第2の加熱処理)された(図9参照)。ここで、第1の加熱処理においては、上述した製造方法における支持体部20と発光体部30とを貼り合わせる工程(図4)の加熱条件が想定されている。また、第2の加熱処理においては、上述した製造方法における外部接続電極71と発光動作層22とのオーミック接合のための加熱条件が想定されている。なお、支持基板の表面とは鏡面研磨が施された面であり、裏面とはエッチング処理が施された(鏡面研磨が施されていない)面である(図10参照)。以下において、支持基板の表面に形成されるPt層を表面Pt層と、裏面に形成されるPt層を裏面Pt層と称する。
次に、具体的な評価手順について図11を参照しつつ詳細に説明する。先ず、3インチの支持基板が4枚準備され、準備された各支持基板が4分割され、分割後の支持基板の自然酸化膜が除去される。その後に、電子加熱蒸着法により、Pt層(表面Pt層及び裏面Pt層)が支持基板の表面及び裏面に形成される。ここで、Pt層の膜厚は、準備された3インチの支持基板毎に25、50、100、200nmの4種類である。すなわち、同じPt層の膜厚を備える4分の1サイズの支持基板が4枚形成される。
Pt層形成後に、4分の1サイズの各支持基板に対して、340℃、10分間の第1の加熱処理が施される。第1の加熱処理後に、膜厚の異なるPt層を備える支持基板毎に350℃、400℃、450℃又は500℃のいずれかの加熱温度で、180秒間の第2の加熱処理が施される。なお、上述した半導体発光装置の製造方法においては、外部接続電極71と発光動作層22とのオーミック接合のための加熱温度は400℃に設定されているが、本評価においては、合金温度によるPt層の密着度を確認するために上記4種類の温度条件とした。
次に、4分の1サイズの各支持基板が粘着シートに貼り付けられる。ここでの貼り付けにおいては、裏面Pt層が粘着シートに貼り付けられ、表面Pt層が上側に位置する。支持基板が粘着シートに貼り付けられた後に、支持基板が0.35mm角でダンシングされる。なお、当該ダイシングにより、裏面Pt層も0.35mm角でダイシングされる。当該ダイシング後に、裏面Pt層が上面に位置するように、支持基板が他の粘着シートに転写される(すなわち、当該他の粘着シートと表面Pt層とが貼り合わされる)。ここで、当該転写よってシリサイド化の不十分な裏面Pt層が粘着シートに残り、シリサイド化が十分な裏面Pt層は支持基板とともに他の粘着シートに転写されることになる。すなわち、当該転写によって裏面Pt層の剥離評価を実施することができた。
裏面Pt層の剥離評価後に、表面Pt層が上面に位置するように、支持基板が他の粘着シートに転写される(すなわち、当該他の粘着シートと裏面Pt層とが貼り合わされる)。当該転写においても上記転写同様に、シリサイド化の不十分な表面Pt層が粘着シートに残り、シリサイド化が十分な表面Pt層は支持基板とともに他の粘着シートに転写されることになる。これにより、表面Pt層の剥離評価を実施することができた。
図12は、上述した表面Pt層及び裏面Pt層の剥離評価の結果を示した表である。図12から判るように、表面Pt層及び裏面Pt層の膜厚が25、50nmの場合には、表面Pt層及び裏面Pt層が支持基板から剥がれることがなかった。これは、表面Pt層及び裏面Pt層が支持基板と十分にシリサイド化し、表面Pt層及び裏面Pt層と支持基板との間において良好な密着性が得られていることを示している。表面Pt層及び裏面Pt層が100nmの場合には、表面Pt層のみが支持基板から剥がれ、裏面Pt層は支持基板から剥がれなかった。また、表面Pt層及び裏面Pt層が200nmの場合には、表面Pt層及び裏面Pt層が支持基板から剥がれてしまった。表面Pt層及び裏面Pt層が100nmの場合において、表面Pt層と裏面Pt層との間に上記のような結果の差異が生じた理由としては、支持基板11の表面は鏡面研磨が施されているために、表面Pt層が剥がれやすくなっていることが考えられる。なお、図12における剥がれあり(×)とは、4分の1のサイズの支持基板内において、0.35mm角の素子の1つでもPt層が剥離している状態のことである。
次に図13(a)、(b)及び図14(a)、(b)、(c)を参照しつつ加熱前後におけるPt層のオージェ電子分光法(AES:Auger Electron Spectroscopy)による評価結果を説明する。Pt層の膜厚を50nm又は200nmとし、第1及び第2加熱処理(400℃、180秒間)の前後で評価した。図13(a)は、Pt層の膜厚が50nmであって、第1及び第2の加熱処理前の支持基板及びPt層におけるAES深さ方向スペクトルである。図13(b)は、Pt層の膜厚が50nmであって、第1及び第2の加熱処理後の支持基板及びPt層におけるAES深さ方向スペクトルである。図14(a)は、Pt層の膜厚が200nmであって、第1及び第2の加熱処理前の支持基板及びPt層におけるAES深さ方向スペクトルである。図14(b)、(c)は、Pt層の膜厚が200nmであって、第1及び第2の加熱処理後の剥離の発生したサンプルの支持基板及びPt層におけるAES深さ方向スペクトルである。図14(b)は加熱処理後に剥離の発生しなかった領域(図15における矢印140b参照)におけるAES深さ方向スペクトルであり、図14(c)は加熱処理後に剥離の発生した領域(図15における矢印140c参照)におけるAES深さ方向スペクトルである。
図13(a)、(b)から示されているように、Pt層の膜厚が50nmのサンプルにおいては、第1及び第2の加熱後にPt層全体が支持基板とシリサイド化し、支持基板上にはシリサイド層(Pt−Si)のみが形成されていることが判った。すなわち、支持基板の表裏面上には、Ptのみからなる層(すなわち、シリサイド化していないPt層)は存在していないことが判った。これより、支持基板上のシリサイド層には、Ptのみからなる層が隣接して存在しないことも示された。
図14(a)、(b)から示されているように、Pt層の膜厚が200nmのサンプルにおいては、第1及び第2の加熱後にPt層全体が支持基板とシリサイド化していないことが判った。すなわち、支持基板の表裏面上には、Ptのみからなる層が残っていることが判った。また、図14(c)には、Ptのみからなる層が見られないことから、剥離がPtのみからなる層とシリサイド層との界面で発生していることが判った。
図12の結果並びに図13(a)、(b)及び図14(a)、(b)、(c)のスペクトルから、剥離の無いサンプルはPt層の全体が支持基板とシリサイド化していることが判った。更に、支持基板から剥離した部分は、Ptのみからなる層であることが判った。以上のことから、支持基板の表裏面に形成したPt層の全体を支持基板とシリサイド化することで、支持基板の表裏面で発生する剥離を防止することができると考えられる。すなわち、支持基板の表裏面で発生する剥離を防止するためには、Pt層の膜厚及びPt層を支持基板とシリサイド化するための加熱条件(加熱温度及び時間)が重要であることが考えられる。
また、上記の結果から、表面Pt層及び裏面Pt層を50nm以下に調整することにより、第1の加熱処理及び第2の加熱処理が施されれば、表面Pt層及び裏面Pt層の全体を支持基板とシリサイド化するための加熱処理が不要になることがいえる。すなわち、表面Pt層及び裏面Pt層を50nm以下に調整すれば、接合時の加熱処理及び外部接続電極71の形成時の加熱処理より、表面Pt層及び裏面Pt層の全体を支持基板とシリサイド化することができる。従って、表面Pt層及び裏面Pt層を支持基板とシリサイド化するためだけの加熱処理が不要になり、半導体発光装置自体の製造時間の短縮化を図ることができるメリットがある。
(X線光電子分光法による評価)
Pt層の膜厚を50nm及び200nmとし、第1及び第2加熱処理(400℃)の前後におけるPt層をX線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)によって分析した。以下に、かかる分析結果(XPS光電子ワイドスペクトル)を用いて、Pt層のシリサイド化について説明する。なお、本分析における第2の加熱処理の条件は、400℃で180秒間である。また、Pt層が形成された支持基板を、以下において試料と称する。
図16(a)は、Pt層の膜厚が50nmであって、第1及び第2の加熱処理前のPt層における珪素原子の2s軌道(以下、Si2sと記載する)の光電子スペクトルである。図16(b)は、Pt層の膜厚が50nmであって、第1及び第2の加熱処理後のPt層におけるSi2sの光電子スペクトルである。図17(a)は、Pt層の膜厚が200nmであって、第1及び第2の加熱処理前のPt層におけるSi2sの光電子スペクトルである。図17(b)は、Pt層の膜厚が200nmであって、第1及び第2の加熱処理後のPt層におけるSi2sの光電子スペクトルである。なお、横軸は結合エネルギーであり、縦軸はカウント/秒である。
図16(a)及び図17(a)から判るように、Pt層の膜厚が50nm又は200nmであって、第1及び第2の加熱処理前の試料においては、Si2s光電子スペクトルのピークが検出されなかった。図16(b)及び図17(b)から判るように、Pt層の膜厚が50nm又は200nmであって、第1及び第2の加熱処理後の試料においては、Si2s光電子スペクトルのピークが検出された。いずれの場合も、検出されたピークの位置は、153.84eVであった。
図16(b)に示されたSi2s光電子スペクトルのピーク部分は、図18に示されているように、153.88eVと151.77eVに波形分離が行えた。ここで、153.88eVのピークは、一般に知れるSiO2のSi2s光電子スペクトルのピークの位置と一致していた。また、151.77eVのピークは、一般に知れる白金・シリコン(Pt2Si)のSi2s光電子スペクトルのピークの位置と一致していた。
図19(a)は、Pt層の膜厚が50nmであって、第1及び第2の加熱処理前のPt層における白金原子の4f軌道(以下、Pt4fと記載する)の光電子スペクトルである。図19(b)は、Pt層の膜厚が50nmであって、第1及び第2の加熱処理後のPt層におけるPt4fの光電子スペクトルである。図20(a)は、Pt層の膜厚が200nmであって、第1及び第2の加熱処理前のPt層におけるPt4fの光電子スペクトルである。図20(b)は、Pt層の膜厚が200nmであって、第1及び第2の加熱処理後のPt層におけるPt4fの光電子スペクトルである。なお、横軸は結合エネルギーであり、縦軸はカウント/秒である。
図19(a)、(b)及び図20(a)、(b)から判るように、Pt層の膜厚が50nmであって、第1及び第2の加熱処理後の試料においては、Pt4f光電子スペクトルのピーク強度が他の試料のピーク強度よりも弱かった。また、Pt層の膜厚が50nmであって第1及び第2の加熱処理後の試料を除いた残りの試料においては、Pt4f光電子スペクトルのピーク強度がほぼ同等であった。Pt層の膜厚が50nmの試料において、加熱処理前のPt4fのピークの位置は70.89eV〜70.97eVであったが、加熱処理後のPt4fのピークの位置は72.06eVであった。ここで、加熱処理後のPt4fのピークの位置は、一般に知れるPt2SiのPt4f光電子スペクトルの強度のピークの位置と一致していた。
以上の分析結果より、Pt層の膜厚が200nmの場合には、加熱処理後においてもPt層と支持基板とのシリサイド化が十分に進行していないと考えられる。一方、Pt層の膜厚が25nmの場合には、加熱処理によってPt層と支持基板とのシリサイド化が十分に進み、Pt2Siが形成された。また、支持基板の表面に拡散したSiは酸素と結合することによりSiO2になったと考えられる。
以上の剥離試験及び分析の結果から、支持基板の表裏面に形成されるPt層の膜厚の違いにより、Pt層と支持基板とのシリサイド化の進行度合いが異なることが判った。また、Pt層全体が支持基板とシリサイド化していない場合には、Ptのみからなる層(シリサイド化していないPt層)とシリサイド層(Pt−Si)との界面付近における膜質の差が生じていることが判った。更に、かかる膜質の差により、シリサイド化していないPt層がシリサイド層から剥離していると考えられる。このことから、支持基板の表裏面に形成したPt層の全体を支持基板とシリサイド化することで、支持基板の表裏面で発生する剥離を防止することができると考えられる。すなわち、支持基板の表裏面で発生する剥離を防止するためには、Pt層の膜厚及びPt層を支持基板とシリサイド化するための加熱条件(加熱温度及び時間)が重要であると考えられる。
また、表面Pt層及び裏面Pt層を50nm以下に調整することにより、第1の加熱処理及び第2の加熱処理が施されれば、表面Pt層及び裏面Pt層の全体を支持基板とシリサイド化することができるといえる。すなわち、表面Pt層及び裏面Pt層を50nm以下に調整し、接合時の加熱処理及び外部接続電極の形成時の加熱処理を行えば、表面Pt層及び裏面Pt層の全体を支持基板とシリサイド化することができる。これにより、表面Pt層及び裏面Pt層の全体を支持基板とシリサイド化するためだけの加熱処理が不要になる。
更に、表面Pt層及び裏面Pt層の膜厚が25nm未満になると、加熱処理等
によって表面に拡散したSiが酸素と結合し、支持基板上の全面にSiO2が形成されてしまう。このようなSiO2の形成により、半導体発光部との電気的な導通を得ることが不可能になるため、SiO2の形成の観点からは表面Pt層及び裏面Pt層の膜厚を25nm以上にする必要がある。
以上のことから、表面Pt層及び裏面Pt層の膜厚を25nm〜50nmの範囲内で調整することがより好ましく、かかる範囲内に表面Pt層及び裏面Pt層の膜厚を調整すれば、後の製造工程である接合体の形成時及び外部接続電極形成時の加熱処理により、表面Pt層及び裏面Pt層の全体を支持基板とシリサイド化することができる。すなわち、表面Pt層及び裏面Pt層を支持基板とシリサイド化するためだけの加熱処理が不要になり、半導体発光装置の製造時間及び製造コストを削減することができる。
なお、支持基板上に形成される表面白金族金属層及び裏面白金族金属層が他の白金族元素であるNi及びPdにおいても、上記範囲内の膜厚にすることにより、Pt層と同様の効果を得ることができる。これは、Ni及びPdのシリサイドの形成温度が約300℃であり、活性化エネルギーが1.5eVあり、成長速度の時間依存性がt1/2あり、これらの3つの事項がPtと同等の特性であるためである。従って、持基板上に形成される表面白金族金属層及び裏面白金族金属層は、Pt、Ni又はPdのうちの少なくとも2つを組み合わせた合金から構成されている場合にも、上記範囲内の膜厚にすることにより、Pt層と同様の効果を得ることができる。
以上のように、本発明においては、成長用基板上に複数の半導体層が積層された積層構造体と、成長用基板とは異なる材質の支持基板と、を半田等の接合材料を介して接合することで半導体発光装置を形成する製造方法において、加熱処理によって支持基板の表面上及び裏面上のそれぞれに表面白金族金属層及び裏面白金族金属層の全体を支持基板と合金化する。
このような表面白金族金属層及び裏面白金族金属層の全体を支持基板と合金化することにより、支持基板の表面上及び裏面上に白金族金属のみからなる剥離しやすい層がなくなり、支持基板の表面及び裏面上における剥離を防止することができる。
また、表面白金族金属層及び裏面白金族金属層の膜厚を25nm以上50nm以下で形成する。このような表面白金族金属層及び裏面白金族金属層の膜厚調整により、その後の接合体形成及び外部電極形成工程における加熱処理のみで、表面白金族金属層及び裏面白金族金属層の全体を支持基板と合金化することができる。
これにより、表面白金族金属層及び裏面白金族金属層の全体を支持基板と合金化するためだけに行われる加熱処理を削減できるので、半導体発光装置の製造時間の短縮及び製造コストの削減を容易に図ることがでる。また、表面白金族金属層及び裏面白金族金属層の全体を支持基板と合金化することができるので、信頼性に優れ且つコスト削減がされた半導体装置を提供することができる。
11 支持基板
12 第1のPt層(表面白金族金属層)
13 第2のPt層(裏面白金族金属層)
14 Ti層
15 第1のNi層
16 AuSn層
20 支持体部
21 GaAs基板
22 発光動作層
23 AuZn層
24 TaN層
25 TiW層
26 TaN層
27 第2のNi層
28 Au層
20 発光体部
60 接合体
71 外部接続電極
72 第1の合金層(裏面合金層)
73 第2の合金層(表面合金層)
100 半導体発光装置

Claims (10)

  1. 支持基板の表面上及裏面上のそれぞれに白金族元素からなる表面白金族金属層及び裏面白金族金属層を形成するとともに、前記表面白金族金属層の上に第1の接合金属層を積層して支持体部を形成する工程と、
    成長用基板の上に発光動作層、電極層及び第2の接合金属層を順次積層して発光体部を形成する工程と、
    前記第1の接合金属層と前記第2の接合金属層とを圧着するとともに加熱し、前記第1の接合金属層及び前記第2の接合金属層を溶融させて前記支持体部及び前記発光体部を接合して接合体を形成する工程と、
    前記表面白金族金属層及び前記裏面白金族金属層の全体を前記支持基板と合金化する加熱処理工程と、を有することを特徴とする半導体発光装置の製造方法。
  2. 前記表面白金族金属層及び前記裏面白金族金属層の膜厚は、25ナノメートル以上50ナノメートル以下であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記接合体から前記成長用基板を除去するとともに、前記除去工程により露出した前記発光動作層の露出面上に金属を形成し、加熱して外部接続電極を形成する工程を更に有し、前記加熱工程は前記接合体の形成時の加熱処理及び前記外部接続電極の形成時の加熱処理からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
  4. 前記接合体の形成時における加熱温度は、摂氏340度以上であることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
  5. 前記外部接続電極の形成時における加熱温度は、摂氏400度以上であることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
  6. 前記支持基板はシリコン基板であり、当該2つの加熱処理によって前記表面白金族金属層及び前記裏面白金族金属層の全体を前記支持基板とシリサイド化することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1に記載の製造方法。
  7. 前記表面白金族金属層及び前記裏面白金族金属層が白金からなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1に記載の製造方法。
  8. 支持基板の上方に形成された接合層と、
    前記接合層の上に形成された電極層と、
    前記電極層の上に形成された発光動作層と、
    前記発光動作層の上に形成された外部接続電極と、を備える半導体発光装置であって、
    前記支持基板の表面上及び裏面上には、それぞれ、前記支持基板の構成元素と白金族元素との合金からなる表面合金層及び裏面合金層が形成され、
    前記表面合金層及び前記裏面合金層には、前記白金族元素のみからなる領域が隣接して存在しないことを特徴とする半導体発光装置。
  9. 前記表面合金層及び前記裏面合金層は、前記接合層及び前記外部接続電極の各々の形成工程時の加熱処理によって、前記支持基板の表面上及び裏面上に予め形成された前記白金族元素からなる層の全体を支持基板と合金化することで形成されることを特徴とする請求項8に記載の半導体発光装置。
  10. 前記支持基板はシリコン基板であり、前記表面合金層及び前記裏面合金層はシリサイド層であることを特徴とする請求項9に記載の半導体発光装置。
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