JP2010202904A - 機械構造用鋼およびその製造方法ならびに機械構造用部品 - Google Patents

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Abstract

【課題】冷間加工性を保持させつつ、部品加工後において、強度特性に優れると共に、硬さのばらつきが少なく、さらに、クランクシャフト等のような大きな部品を製造することもできる機械構造用鋼、および、その製造方法、ならびに、その機械構造用鋼を加工してなる機械構造用部品を提供する。
【解決手段】C:0.005〜0.045質量%、Si:0.005〜0.05質量%、Mn:0.4〜1質量%、P:0.05質量%以下、S:0.005〜0.05質量%、Al:0.005〜0.03質量%、N:0.01〜0.02質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、N固溶量は0.008質量%以上であり、化合物状態のN量は0.002質量%以上であり、フェライト相の組織分率は95%以上であり、フェライト相の結晶粒は、平均結晶粒径が5〜20μm、アスペクト比が0.5〜2であることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、冷間加工により機械構造用部品に製造される機械構造用鋼およびその製造方法ならびに機械構造用部品に関する。
自動車等の機械構造用部品であるボルト・ナット、ピニオンギヤ、ステアリングシャフト、バルブリフター、コモンレール等は、近年、軽量化のために高強度化が要求されている。
一方、自動車用変速機や差動装置等の各種歯車伝達装置に利用されるクランクシャフト、コンロッド、トランスミッションギヤ等の機械構造用部品は、一般に、鋼材に熱間鍛造等の熱間加工を施した後、切削加工を施すことによって最終形状に仕上げられる。このような機械構造用部品においても、製造工程におけるCO2の排出量削減のため、熱間加工に代えて冷間加工による鍛造で製造することが要求されている。
冷間加工は、熱間加工と異なり高温下での工程ではないため、冷却による形状、寸法の変化が小さいためこれらの精度がよいという利点がある。一方、熱間加工に比べて変形抵抗が高く変形能が小さいため、加工時に鋼材や金型に割れが発生し易いという難点がある。冷間加工により製造される機械構造用部品には、加工性を低下させないことが必要である。
鋼材の高強度化手法の一つとして、結晶粒の微細化が有効であることが知られている。結晶粒の微細化には、冷間加工や温間加工によって加工ひずみを付与して結晶粒を直接微細化させる方法、動的再結晶させる方法、加熱後の急冷や加熱冷却を繰り返す相変態熱処理を利用する方法等が用いられる。
前記のような手法によって微細化させた場合の降伏強度は、Hall-Petchの関係で整理することができ、結晶粒を細かくするほど高強度化することができる。ただし、結晶粒を微細化するに従い鋼材の加工性が劣化する問題がある。そこで、以下に示されるような手法を用いた冷間加工性に優れた鋼材や部品が考案されている。
例えば、特許文献1には、C量を所定範囲に制限した鋼に350〜800℃の範囲内で温間加工を施した後、冷間加工を施すことによって、平均結晶粒径を500nm以下のフェライト主相組織とし、強度と冷間加工性を両立させた鋼線または棒鋼が開示されている。本発明では、まず、平均粒径が1〜2μmのフェライト主相組織を得るため、温間加工を施している。温間加工を施す理由は、冷間加工のみで500nm以下とすると、結晶粒が分断され、加工後の結晶粒の形態が複雑になるが、適切な温間加工を施すと、結晶粒は分断されず、且つ結晶粒が成長しないため、冷間加工性が損なわれないためである。
また、特許文献2には、パーライト組織とした高炭素鋼に伸線加工を施すことにより、パーライトラメラ間隔を微細化、かつ均一化して引張強度を向上させた極細鋼線が開示されている。本発明では、パーライト組織からなる鋼材を伸線加工することで高強度化を達成しており、その強度はパーライトのラメラ間隔に起因するものであるとしている。本手法では、パーライト組織の加工硬化を利用しており、強度と加工性を両立することができる。なお、本発明では、得られる部品の強度は、加工硬化に応じたものであり、また、一般にパーライト組織の伸線加工の場合には、動的ひずみ時効によって加工性が劣化するため、動的ひずみ時効を避けるような温度、速度、成分を用いる必要がある。
また、特許文献3には、成分を特定した鋼材に、熱処理と加工を同時に施すことによってオーステナイト逆変態を生じさせ、オーステナイト粒径を微細化し、その後の急冷によって微細マルテンサイト組織を得る鋼材の製造方法が開示されている。なお、本発明では、オーステナイトが逆変態できる温度域での加工を規定しており、さらに、NはAlNとして析出させ、結晶粒微細化に寄与させるために用いている。
特開2005−320629号公報 特開2007−262496号公報 特開2000−144244号公報
しかしながら、前記した技術に関しては、以下に示す問題がある。
結晶粒を微細化することで、高強度化を図ることができるものの、結晶粒を微細化するに従い鋼材の加工性が劣化する問題がある。また、特許文献1,2に開示された微細組織の鋼材とするためには、総減面率の大きな温間加工や伸線加工を施す必要があり、装置の制約上、加工前の鋼は大きさに限界があるため、得られる鋼材は大幅に縮小された結果、線状や棒状になる。また、特許文献3に開示された逆変態を生じさせる処理方法は、1パスの加工率が極めて大きく、工業的に製造が困難であるという問題がある。
さらに、従来の技術においては、結晶粒の整粒化に基づく部品加工後の硬さのばらつきについて考慮されておらず、得られる部品の品質が劣化しやすい傾向にある。
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、冷間加工性を保持させつつ、部品加工後において、強度特性に優れると共に、硬さのばらつきが少なく、さらに、クランクシャフト等のような大きな部品を製造することもできる機械構造用鋼、および、その製造方法、ならびに、その機械構造用鋼を加工してなる機械構造用部品を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するため、以下の事項について検討した。
本発明の課題の一つは、冷間加工による高強度化の促進と冷間加工性の両立である。鋼材の強度を向上させるためには、硬質相(マルテンサイト、パーライト、ベイナイト等)が必要であり、冷間加工性を向上させるためには軟質相(フェライト)が必要である。強度と冷間加工性を両立させるためには、硬質相と軟質相を適切な比率、分布とする方法が考えられる。しかし、本発明で対象としている冷間加工時には、ひずみの増加に伴い硬質相と軟質相の界面で、割れが発生しやすいという問題がある。冷間加工性を向上させるためには、変形時の応力集中の起点である硬質相と軟質相の界面を減らせばよいが、軟質相のみでは高強度化することができず、硬質相のみでは硬すぎて冷間加工時の金型寿命が大きく劣化してしまう。
硬質相のみの場合の金型寿命向上には、マルテンサイトでは焼もどし、ベイナイトやパーライトでは焼なましによって、固溶C(固溶状態としてのC)や(微細)セメンタイトによる強度向上分を減少させることが有効である。また、マルテンサイトの場合は二次硬化する元素を添加した後、高温で焼もどすことによって強度をあまり損なわず、冷間加工性を向上させることができる。しかし、熱処理を施すことは、部品の寸法精度を変化させてしまうため、その後の寸法調整加工が必要であり、製造工程が増えてしまう。一方、軟質相のみの場合の強度向上には、結晶粒微細化、固溶強化、粒子分散強化が有効である。しかし、これらの強化機構を付与すると冷間加工時の変形抵抗が増大してしまい、硬質相のみの場合まで強度を向上させようとすると、金型寿命が大きく劣化してしまう。
そこで、冷間加工時の変形抵抗をあまり増加させず、冷間加工後の部品強度を大きく向上させる手法について検討した結果、固溶N(固溶状態としてのN)は、ある範囲においては冷間加工時の変形抵抗を増加させず、冷間加工後の部品強度はN固溶量(固溶状態としてのN量)に応じて増加することを見出した。これは、Nがある一定量以上固溶すると、固溶Nが凝集し、拡散するための活量が低下するためと推定している。固溶Nは冷間加工中に動的ひずみ時効によって変形抵抗を増大させるが、活量が低下していることで、変形抵抗の増加分は小さい。ただし、動的ひずみ時効によって可動転位は急激に増加している。この可動転位の増加によって、転位セルの形成が促進され、結果として、周りと十分な結晶方位差を持つ結晶粒となる。したがって、Nを一定量以上固溶させることは、変形抵抗以上に部品強度を向上できることが明らかとなった。この効果は、完全なフェライト単相組織である必要は必ずしも無く、わずかにセメンタイトを析出させても同等の特性を得ることができることがわかった。さらに、結晶粒径とアスペクト比、硬さのばらつき等について検討した結果、本発明に至ることができた。
すなわち、本発明に係る機械構造用鋼は、C:0.005〜0.045質量%、Si:0.005〜0.05質量%、Mn:0.4〜1質量%、P:0.05質量%以下、S:0.005〜0.05質量%、Al:0.005〜0.03質量%、N:0.01〜0.02質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、N固溶量は0.008質量%以上であり、化合物状態のN量は0.002質量%以上であり、フェライト相の組織分率は95%以上であり、フェライト相の結晶粒は、平均結晶粒径が5〜20μm、アスペクト比が0.5〜2であることを特徴とする。
このように、極低炭素鋼とすることにより、主組織をフェライト相として冷間加工性を付与することができる。そして、溶製中の脱酸、脱硫のためにMnを添加し、一方、脱酸元素であるSiは冷間加工性を低下させないように、同じく脱酸元素であるAlはNの固溶量を低減させないように、それぞれ微量の添加とする。また、Nを十分に固溶させることで、軟質のフェライト組織を、冷間加工後に加工硬化分以上に強度を増加させることができる。また、Nを化合物状態として所定量以上析出させることで、結晶粒の粗大化が防止され、整粒化が促進される。さらに、フェライト相の結晶粒径(以下、適宜、フェライト結晶粒径という)を所定範囲に規定することで、変形抵抗を増加させずに、結晶粒内で均一に転位が増殖し、フェライト結晶粒のアスペクト比を所定範囲に規定することで、結晶粒が均一に微細化する。
また、本発明に係る機械構造用鋼において、前記組成がさらに、Cr:2質量%以下、およびMo:2質量%以下のうち1種以上を含有してもよい。
Cr,Moを添加することにより、機械構造用鋼の冷間加工性および冷間加工後の強度が向上する。
また、本発明に係る機械構造用鋼において、前記組成がさらに、Ti:0.2質量%以下、Nb:0.2質量%以下、およびV:0.2質量%以下のうち1種以上を含有してもよい。
Ti,Nb,Vを添加することにより、これらの窒素化合物が形成され、フェライト結晶粒の整粒化が促進されることで、部品強度のばらつきが抑制され、さらに、機械構造用鋼の冷間加工後の靭性、耐割れ性が向上する。
また、本発明に係る機械構造用鋼において、前記組成がさらに、B:0.005質量%以下を含有してもよい。
Bを添加することにより、不可避的に含有されるPのフェライト粒界偏析による粒界強度の低下が抑制される。
また、本発明に係る機械構造用鋼において、前記組成がさらに、Cu:5質量%以下、Ni:5質量%以下、およびCo:5質量%以下のうち1種以上を含有してもよい。
Cu,Ni,Coを添加することにより、機械構造用鋼のひずみ時効を促進させて冷間加工後の強度が向上する。
また、本発明に係る機械構造用鋼において、前記組成がさらに、Ca:0.05質量%以下、REM:0.05質量%以下、Mg:0.02質量%以下、Li:0.02質量%以下、Pb:0.5質量%以下、およびBi:0.5質量%以下のうち1種以上を含有してもよい。
これらの元素を添加することにより、機械構造用鋼の冷間加工性および冷間加工後の被削性が向上する。
本発明に係る機械構造用鋼の製造方法は、前記記載の組成を有する合金を溶解する溶解工程と、前記溶解工程で溶解された溶解物を鋳造する鋳造工程と、前記鋳造工程で鋳造された鋳塊を、1050〜1250℃に加熱した後、圧延または鍛造することで熱間加工する熱間加工工程と、前記熱間加工工程で熱間加工された熱間加工材を、950〜1100℃で、60〜7200sec保持する加熱保持工程と、前記加熱保持工程で加熱保持された加熱保持材を、0.5〜15℃/secの冷却速度で500℃以下まで冷却する冷却工程と、を含むことを特徴とする。
または、本発明に係る機械構造用鋼の製造方法は、前記記載の組成を有する合金を溶解する溶解工程と、前記溶解工程で溶解された溶解物を鋳造する鋳造工程と、前記鋳造工程で鋳造された鋳塊を、1050〜1250℃に加熱した後、圧延または鍛造することで熱間加工し、その後室温まで冷却する熱間加工工程と、前記熱間加工工程で熱間加工された熱間加工材を、950〜1100℃で、60〜7200sec保持する加熱保持工程と、前記加熱保持工程で加熱保持された加熱保持材を、0.5〜15℃/secの冷却速度で500℃以下まで冷却する冷却工程と、を含むことを特徴とする。
これらのような機械構造用鋼の製造方法によれば、熱間加工により、AlNが分解または溶解され、加熱保持により機械構造用鋼がオーステナイト化し、AlNが再析出する。そして、その後の冷却により、AlNによってフェライト結晶粒の成長が抑制され、結晶粒が整粒化される。これらにより、冷間加工性に優れ、部品加工後において、強度に優れると共に、硬さのばらつきの小さい前記記載の機械構造用鋼が製造される。
本発明に係る機械構造用部品は、前記記載の機械構造用鋼を、開始温度200℃未満で冷間加工して製造されたことを特徴とする。
このような機械構造用部品は、良好な強度および硬度を有し、かつ硬さのばらつきが抑制されたものである。
本発明の機械構造用鋼は、冷間加工性を十分に有し、また、ある程度の大きさの鋼材に容易に製造可能である。さらに、結晶粒が均一に微細化しているため、部品加工後において、強度や硬度に優れ、かつ硬さのばらつきが抑制された部品を製造することができる。
また、本発明の機械構造用鋼の製造方法では、前記したような、冷間加工性に優れ、また、強度や硬度に優れ、かつ硬さのばらつきが抑制された部品を得ることができる機械構造用鋼を製造することができる。
さらに、本発明の機械構造用部品は、本発明の機械構造用鋼を用いて冷間加工したものであり、冷間加工時に割れが発生せず、歩留まりが向上し、また、所要の強度および硬度を示すものである。そのため、部品の軽量化を可能とするものである。さらに、硬さのばらつきが小さく、品質に優れたものである。
次に、本発明に係る機械構造用鋼およびその製造方法ならびに機械構造用部品について詳細に説明する。
≪機械構造用鋼≫
機械構造用鋼は、所定量のC、Si、Mn、P、S、Al、Nを含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる。さらに必要に応じて、他の成分を含有してもよい。
そして、固溶Nが所定量以上であり、化合物Nが所定量以上であり、フェライト相の組織分率、平均結晶粒径、および、アスペクト比を所定に規定したものである。
以下、具体的に説明する。
<C:0.005〜0.045質量%>
Cは、フェライト単相とするため、極力低減する必要がある。ただし、Cが極端に少ないと、溶製中の脱酸が困難になる。すなわち、C量が0.005質量%未満では、溶製時にガス欠陥が発生し易くなり、そこを起点に割れが発生し易くなる。また、歩留まりが劣化する。したがって、C量は、0.005質量%以上とする。なお、好ましくは、0.01質量%以上、より好ましくは、0.015質量%以上である。また、本発明の機械構造用鋼の場合、C量が0.045質量%までは、実質的にフェライト単相の粒界に微細セメンタイトがわずかに存在する組織となる。しかし、C量が0.045質量%を超えると、セメンタイトがパーライトを形成するようになり、フェライト−パーライトの複相組織となる。パーライトは硬質相であるため、冷間加工性を劣化させる。したがって、C量は、0.045質量%以下とする。なお、好ましくは、0.043質量%以下、より好ましくは、0.04質量%以下である。
<Si:0.005〜0.05質量%>
Siは、溶製中の脱酸元素として有効な元素である。ただし、Si量が0.005質量%未満では、脱酸の効果が発揮されず、溶製時にガス欠陥が発生し易くなり、そこを起点に割れが発生し易くなる。したがって、Si量は、0.005質量%以上とする。なお、好ましくは、0.007質量%以上、より好ましくは、0.01質量%以上である。一方、Siは、フェライト相を固溶強化させるため、変形抵抗の増大、冷間加工性の低下を生じさせる。Si量が0.05質量%を超えると、その傾向が顕著に見られはじめる。したがって、Si量は、0.05質量%以下とする。なお、好ましくは、0.04質量%以下、より好ましくは、0.03質量%以下である。
<Mn:0.4〜1質量%>
Mnは、溶製中の脱酸、脱硫元素として有効な元素である。また、Sと結合することで機械構造用鋼の変形能を向上させることができ、フェライト相を固溶強化させる効果を有している。ただし、Mn量が0.4質量%未満では、脱酸、脱硫の効果が十分に発揮できず、冷間加工性が低下しはじめる。したがって、Mn量は、0.4質量%以上とする。なお、好ましくは、0.42質量%以上、より好ましくは、0.45質量%以上である。一方、Mn量が1質量%を超えると、固溶強化による変形抵抗が顕著に増大するため、冷間加工性を低下させる。したがって、Mn量は、1質量%以下とする。なお、好ましくは、0.98質量%以下、より好ましくは、0.95質量%以下である。
<P:0.05質量%以下>
Pは、不可避的に不純物として含有する元素であるが、Pは、フェライト粒界に偏析し、冷間加工性を劣化させる。また、Pはフェライトを固溶強化させ、変形抵抗を増大させる。従って、冷間加工性の観点からは極力低減することが望ましいが、極端な低減は製鋼コストの増加を招く。また、0質量%とすることは製造上困難である。したがって、P量は、0.05質量%以下(0質量%を含まない)とする。なお、好ましくは、0.04質量%以下、より好ましくは、0.03質量%以下である。
<S:0.005〜0.05質量%>
Sは、不可避的に不純物として含有する元素であるが、Feと結合すると、FeSとして粒界上に膜状に析出するため、冷間加工性を劣化させる。従って、全量をMnと結合させ、MnSとして析出させる必要がある。ただし、S量が0.005質量%未満では、被削性が劣化する。したがって、S量は、0.005質量%以上とする。なお、好ましくは、0.007質量%以上、より好ましくは、0.01質量%以上である。一方、S量が0.05質量%を超えると、MnSの析出量が増えるため、冷間加工性が劣化する。したがって、S量は、0.05質量%以下とする。なお、好ましくは、0.04質量%以下、より好ましくは、0.03質量%以下である。
<Al:0.005〜0.03質量%>
Alは、溶製中の脱酸元素として有効な元素である。また、熱間圧延(鍛造)後の熱処理時に、AlをAlNとして析出させることができる。ただし、Al量が0.005質量%未満では、溶製中の脱酸が不十分となり、ガス欠陥が生じ易くなり、そこを起点に割れが発生し易くなる。また、AlNが析出しにくくなるため、結晶粒が整粒化しにくくなる。したがって、Al量は、0.005質量%以上とする。なお、好ましくは、0.007質量%以上、より好ましくは、0.01質量%以上である。一方、Al量が0.03質量%を超えると、熱処理中に固溶Nと結合しやすくなり、N固溶量を減少させ、ひずみに対する降伏および引張強度の増加割合を低下させる。したがって、Al量は、0.03質量%以下とする。なお、好ましくは、0.028質量%以下、より好ましくは、0.025質量%以下である。
<N:0.01〜0.02質量%>
本発明に係る機械構造用鋼において、N(窒素)は鋼中に固溶して、後記するように機械構造用鋼を冷間加工(冷間鍛造)した後の強度を向上させる。また、化合物Nとして、再熱処理によって析出させることで、結晶粒の粗大化を防止し、整粒化を促進させる。ただし、N量が0.01質量%未満では、このN固溶量、または、化合物N量を十分に得られない。したがって、N量は、0.01質量%以上とする。なお、好ましくは、0.0105質量%以上、より好ましくは、0.011質量%以上である。一方、N量が0.02質量%を超えると、N固溶量が過剰になって冷間加工性を劣化させる。したがって、N量は、0.02質量%以下とする。なお、好ましくは、0.019質量%以下、より好ましくは、0.018質量%以下とする。なお、Nは鋼の溶融工程で大気中から不可避的に混入するため、精錬工程で調整してN含有量を制御することができる。また、成分として含有される金属元素(例えばMn)の窒素化合物を添加してもよい。
機械構造用鋼は、さらに必要に応じて、以下の成分を含有してもよい。
<Cr:2質量%以下、およびMo:2質量%以下のうち1種以上>
Cr、Moは、冷間加工後の部品強度と冷間加工性を向上させる効果を有するので、所定量に限って選択的に添加することが可能である。ただし、Cr、Mo量は、それぞれ2質量%を超えると、変形抵抗が増大し、かえって冷間加工性が劣化する。したがって、Cr、Mo量は、それぞれ2質量%以下(0質量%を含まない)とする。なお、好ましくは、1.5質量%以下、より好ましくは、1質量%以下である。一方、Cr、Mo添加の効果を得るため、Cr量は、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上がさらに好ましい。また、Mo量は、0.04質量%以上が好ましく、0.12質量%以上がより好ましい。
<Ti:0.2質量%以下、Nb:0.2質量%以下、およびV:0.2質量%以下のうち1種以上>
Ti、Nb、Vは、Nと結合することでN化合物を形成して結晶粒を整粒・微細化させ、冷間加工後に得られる部品の強度ばらつきを抑制するために有効な元素である。ただし、これらの元素は、Nとの親和力が強いため、それぞれ0.2質量%を超えると、N化合物が過剰に形成され、N固溶量が低下してしまう。したがって、Ti、Nb、V量は、それぞれ0.2質量%以下(0質量%を含まない)とする。なお、好ましくは、0.15質量%以下、より好ましくは、0.1質量%以下である。一方、Ti、Nb、V添加の効果を得るため、Ti、Nb、V量は、それぞれ、0.001質量%以上が好ましく、0.002質量%以上がより好ましく、0.003質量%以上がさらに好ましい。
<B:0.005質量%以下>
Bは、フェライト粒界に集まる傾向があり、Pのフェライト粒界偏析による粒界強度の低下を抑制するのに有効である。ただし、Bは、Nとの親和力が強いため、0.005質量%を超えると、BNを形成し、N固溶量が低減すると共に、フェライト粒界に過剰に偏析したBNが粒界強度を低減させる。したがって、B量は、0.005質量%以下(0質量%を含まない)とする。なお、好ましくは、0.0035質量%以下、より好ましくは、0.002質量%以下である。一方、B添加の効果を得るため、B量は、0.0002質量%以上が好ましく、0.0004質量%以上がより好ましく、0.0006質量%以上がさらに好ましい。
<Cu:5質量%以下、Ni:5質量%以下、およびCo:5質量%以下のうち1種以上>
Cu、Ni、Coは、いずれも機械構造用鋼をひずみ時効させ、冷間加工後の部品強度を向上させるのに有効である。ただし、Cu、Ni、Co量は、それぞれ5質量%を超えると、効果が飽和し、また、冷間加工後の割れも促進される。なお、好ましくは、4質量%以下、より好ましくは、3質量%以下である。一方、Cu、Ni、Co添加の効果を得るため、Cu、Ni、Co量は、それぞれ、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上がさらに好ましい。
<Ca:0.05質量%以下、REM:0.05質量%以下、Mg:0.02質量%以下、Li:0.02質量%以下、Pb:0.5質量%以下、およびBi:0.5質量%以下のうち1種以上>
Ca、REM(希土類金属元素)、Mg、Liは、MnS等の硫化物系介在物を球状化させ、鋼の冷間加工性を高めると共に、被削性向上に寄与する元素である。ただし、Ca、REMは、0.05質量%を超えて、Mg、Liは、0.02質量%を超えて過剰に添加しても、その効果が飽和し、添加量に見合う効果が期待できず経済的に不利である。したがって、Ca、REM量は、それぞれ、0.05質量%以下(0質量%を含まない)とする。なお、好ましくは、0.03質量%以下、より好ましくは、0.01質量%以下である。また、Mg、Li量は、それぞれ、0.02質量%以下(0質量%を含まない)とする。なお、好ましくは、0.01質量%以下、好ましくは、0.005質量%以下である。なお、希土類金属元素として具体的に、Ce,La,Nd等の元素が挙げられ、本明細書におけるREMの含有量とは、これらのすべての希土類金属元素の含有量の合計を指す。
また、Pb、Biは、被削性向上に寄与する元素である。ただし、Pb、Biは、0.5質量%を超えると、圧延疵等の製造上の問題を生じる。したがって、Pb、Bi量は、それぞれ、0.5質量%以下(0質量%を含まない)とする。なお、好ましくは、0.4質量%以下、より好ましくは、0.3質量%以下である。
一方、Ca、REM、Mg、Li、Pb、Bi添加の効果を得るため、Ca、REM量は、それぞれ、0.0005質量%以上が好ましく、0.001質量%以上がより好ましく、0.0015質量%以上がさらに好ましい。Mg、Li量は、それぞれ、0.0001質量%以上が好ましく、0.0003質量%以上より好ましく、0.0005質量%以上がさらに好ましい。Pb、Bi量は、それぞれ、0.01質量%以上が好ましく、0.03質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上がさらに好ましい。
<N固溶量:0.008質量%以上>
機械構造用鋼中に固溶したN(固溶N)は、冷間加工時に発生する動的ひずみ時効によって、より多くの転位を導入させ、結晶粒の微細化を促進させ、降伏および引張強度を増加させる。また、冷間加工後には、静的ひずみ時効によって、加工硬化分以上に部品強度を向上させることができる。N固溶量が0.008質量%未満では、静的ひずみ時効による強度向上の効果を十分に得ることができない。したがって、N固溶量は、0.008質量%以上とする。なお、好ましくは、0.0085質量%以上、より好ましくは、0.009質量%以上である。一方、N固溶量が過剰になると、動的ひずみ時効の影響が顕著になり、変形抵抗が増大し、冷間加工性が劣化する。N固溶量は前記組成におけるN含有量以下となるので、N固溶量の上限値は前記N含有量の上限値すなわち0.02質量%に収束される。このようなN固溶量は、前記のN含有量およびAl含有量のそれぞれの制限を満足し、かつ後記するように製造時の熱間加工(圧延、鍛造)温度、および冷却工程での冷却速度を制御することにより、制御される。
<化合物N量:0.002質量%以上>
化合物Nとは、主にAlNの状態でのNのことを指す。Nは、熱間圧延(鍛造)時に一部、または全量が固溶し、再熱処理によって、その析出量が調整される。この析出量は、溶解度積の式やThermo-Calcによる計算によって推測することができる。また、実際のAlN量は、固溶Nを抽出残さによって測定する際の残さ部分に相当する。
本発明に係る機械構造用鋼は、フェライト単相をベース組織としているため、熱処理によって結晶粒が容易に粗大化する。結晶粒が粗大化すると、結晶粒毎のひずみ時効による強化分がばらつくため、部品にしたとき、強度ばらつきが生じてしまう。化合物Nは、再熱処理の際、この結晶粒の粗大化を防止し、整粒化を促進させることができる。化合物N量が0.002質量%未満では、十分な結晶粒の整粒化効果が得られず、結晶粒径、アスペクト比のいずれか、あるいは共に所定範囲から外れ、硬さばらつきを抑制することができない。したがって、化合物N量は、0.002質量%以上とする。なお、好ましくは、0.0025質量%以上、より好ましくは、0.0030質量%以上である。なお、前記のとおり、N固溶量の上限値は前記N含有量の上限値、すなわち0.02質量%に収束される。そのため、固溶Nを0.008質量%以上に確保するためには、化合物N量は0.012質量%以下となる。
次に、前記N固溶量、化合物N量の算出について説明する。
N固溶量の値は、JIS G 1228に準拠し、鋼中の全N量から全N化合物における窒素量(すなわち、化合物N量)を差し引くことで算出する。
鋼中の全N量の算出は、不活性ガス融解法−熱伝導度法を用いる。すなわち、供試鋼素材からサンプルを切り出し、サンプルをるつぼに入れ、不活性ガス気流中で融解してNを抽出し、熱伝導度セルに搬送して熱伝導度の変化を測定する。
鋼中の全N化合物における窒素量の算出は、アンモニア蒸留分離インドフェノール青吸光光度法を用いる。すなわち、供試鋼素材からサンプルを切り出し、10%AA系電解液(鋼表面に不働態皮膜を生成させない非水溶媒系の電解液であり、具体的には10%アセチルアセトン、10%塩化テトラメチルアンモニウム、残部:メタノール)中で、定電流電解を行なう。次に、約0.5gサンプルを溶解させ、不溶解残渣(N化合物)を穴サイズが0.1μmのポリカーボネート製のフィルタでろ過する。不溶解残渣を硫酸、硫酸カリウムおよび純Cuチップ中で加熱して分解し、ろ液に合わせる。この溶液を水酸化ナトリウムでアルカリ性にした後、水蒸気蒸留を行い、留出したアンモニアを希硫酸に吸収させる。そして、フェノール、次亜塩素酸ナトリウムおよびペンタシアノニトロシル鉄(III)酸ナトリウムを加えて青色錯体を生成させ、光度計を用いて、その吸光度を測定する。
上記の方法によって求めた鋼中の全N量から全N化合物における窒素量を差し引くことで鋼中のN固溶量を算出する。
<フェライト層の組織分率:95%以上>
本発明に係る機械構造用鋼は、冷間加工性を付与するために軟質のフェライト相を主組織とする(実質的にフェライト単相)。フェライト単相とすることで、機械構造用鋼を冷間加工して機械構造用部品を製造する際に、組織全体が同時にかつ均一に変形・硬化するので、全体として変形抵抗の上昇が抑えられ、冷間加工性が劣化しない。また、検討の結果、必ずしも完全なフェライト単相組織でなくてもよく、全組織中のフェライト層の面積率(フェライト組織分率)が全組織に対して95%以上であればよい。一部粒界にセメンタイトが析出していても、それが球状化していれば冷間加工性を劣化させないためである。フェライト相の面積率が95%未満になると、フェライトとセメンタイトとの界面が割れの起点となり易く、冷間加工性が劣化する。したがって、フェライト組織分率は、95%以上とする。なお、好ましくは、96%以上、より好ましくは、97%以上である。
組織を判別する方法としては、光学顕微鏡での観察が一例として挙げられる。また、組織を観察する位置としては、機械構造用鋼の表面から機械構造用部品を製造する際の冷間加工方向(圧縮方向)の長さ(縮径して円柱形状に加工した場合は当該円柱の直径)の1/4の深さの位置が好ましく、その近傍の複数視野(例えば5視野)を観察して、得られた組織分率の平均で判定することができる。具体的には、機械構造用鋼を、前記観察位置を切断面に含むように切り出して、切断面を鏡面に研磨した後、ナイタール液(3%硝酸エタノール溶液)で腐食させ、腐食面を光学顕微鏡にて100倍程度で観察し、白く見える領域がフェライト相である。組織分率を求めるには、例えば、光学顕微鏡写真上からランダムに複数点(例えば100点)を選び、各点の組織を判別して、フェライト相の点数の全点数に対する百分率を算出すればよい。あるいは、光学顕微鏡写真を市販の画像解析ソフトで処理して白い領域の面積率を求めてもよい。
なお、このようなフェライト組織分率は、Cの含有量により制御する。
<フェライト相の平均結晶粒径が5〜20μm>
本発明に係る機械構造用鋼では、冷間加工による部品強化能を向上させるため、初期の結晶粒径とアスペクト比を規定している。通常、結晶粒径が小さいと引張強度が高くなることは、Hall-Petchの関係によって説明がなされている。また、ひずみが付与されると結晶粒が微細化する。この結晶粒の微細化には、転位の増殖が関与しており、例えば、熱間加工の場合、転位が増殖と合体・消滅を繰り返すため、結晶粒が微細化しにくい(その分、変形抵抗も増加しない)。一方、析出強化で転位を増殖させやすくした場合には、転位は増殖しやすいものの、変形抵抗も大きく増加する。そこで、固溶Nに着目すると、変形抵抗をあまり増加させず、転位を増殖させやすい傾向があることが明らかとなった。ただし、フェライト相の初期の平均結晶粒径が5μm未満では、結晶粒の微細化によって初期の変形抵抗が増加してしまう。したがって、フェライト相の平均結晶粒径は、5μm以上とする。なお、好ましくは、7μm以上、より好ましくは、9μm以上である。一方、平均結晶粒径が20μmを超えると、結晶粒内で不均一に転位が増殖し、硬さのばらつきが大きくなってしまう。したがって、フェライト相の平均結晶粒径は、20μm以下とする。なお、好ましくは、18μm以下、より好ましくは、16μm以下である。フェライトの結晶粒は、前記の組織の判別と同じ位置の複数視野を観察位置として、組織の判別と同様にナイタール液で腐食させた切断面を光学顕微鏡にて1000倍程度で観察することによって検出することができる。結晶粒径を求めるには、例えば、光学顕微鏡写真に直線を引き、この直線と交差する結晶粒界の数をカウントし、この結晶粒界の数で直線の長さを割れば、当該光学顕微鏡写真上の結晶粒の平均粒径を算出できる。
<結晶粒のアスペクト比:0.5〜2>
冷間加工によって結晶粒を均一に微細化するためには、結晶粒のアスペクト比も重要である。アスペクト比が0.5未満または2を超えるというのは、結晶粒が縦横のいずれかに伸張していることを表している。このような状態の結晶粒が存在すると、不均一に転位が増殖し、組織の硬さがばらついてしまう。したがって、フェライト相のアスペクト比は、0.5以上とする。なお、好ましくは、0.6以上、より好ましくは、0.7以上である。また、フェライト相のアスペクト比は、2以下とする。なお、好ましくは、1.8以下、より好ましくは、1.6以下である。
アスペクト比についての測定は、例えば、以下のように行うことができる。
前記結晶粒測定に用いたサンプルを使用し、前記の組織の判別と同じ位置の複数視野を観察位置として、組織の判別と同様にナイタール液で腐食させた切断面を光学顕微鏡にて1000倍程度で観察することにより行う。次に、撮影した写真に対して、水平線、垂直線を引き、線と交差した結晶粒界の数をカウントする。そして、圧延方向に対して、水平方向の結晶粒径を垂直方向の結晶粒径で除し、アスペクト比を算出し、複数視野の平均値をこのサンプルのアスペクト比(平均アスペクト比)とする。
なお、前記したような結晶粒、アスペクト比は、成分組成(Al、N等)、熱間加工温度、加熱保持条件等により制御する。
以上説明したとおり、本発明の機械構造用鋼は、(1)組織をフェライト単相としていること、(2)化合物Nを所定範囲に含有させ、フェライト相の結晶粒径とアスペクト比を所定範囲とすること、(3)固溶Nを所定範囲に含有させることで、動的ひずみ時効と静的ひずみ時効を積極的に生じさせることを、特徴としている。
すなわち、(1)によって組織全体を均一な強度とし、(2)のN化合物が存在する状態から熱間圧延(鍛造)後に所定条件で熱処理を施すことによって、フェライト相の結晶状態を適正に調整している。このような状態の組織とすることで、固溶Nを組織全体に均一に分散させることができ、組織全体に均一に動的ひずみ時効を発生させることができる。動的ひずみ時効は、転位の増殖と固着を促進させることができるので、ひずみの付与に伴う結晶粒の微細化を、通常の鋼よりも促進させることができ、結果として、加工後の部品強度を著しく向上させることができる。
≪機械構造用鋼の製造方法≫
機械構造用鋼の製造方法は、溶解工程と、鋳造工程と、熱間加工工程と、加熱保持工程と、冷却工程と、を含むものである。
以下、各工程について説明する。
<溶解工程>
溶解工程は、前記記載の組成を有する合金を溶解する工程である。
合金を溶解する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いればよい。例えば、真空誘導炉を用いることができる。
<鋳造工程>
鋳造工程は、前記溶解工程で溶解された溶解物を鋳造する工程である。
溶解物を鋳造する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いればよい。例えば、連続鋳造法や、半連続鋳造法を用いることができる。
<熱間加工工程>
熱間加工工程は、前記鋳造工程で鋳造された鋳塊を、1050〜1250℃に加熱した後、圧延または鍛造することで熱間加工する工程である。
または、前記鋳造工程で鋳造された鋳塊を、1050〜1250℃に加熱した後、圧延または鍛造することで熱間加工し、その後室温まで冷却する工程である。
本発明に係る機械構造用鋼では、1回目の熱間圧延(鍛造)でAlNを分解、あるいは、溶解させて微細にする必要がある。未溶解AlNが粗大である場合、次工程で、そのAlNが起点となり、粗大AlNが析出してしまい、十分な結晶粒の整粒効果が得られない。熱間加熱工程での加熱温度が1050℃未満では、AlNを十分に分解、あるいは、溶解することができない。したがって、熱間加熱工程での加熱温度は、1050℃以上とする。なお、好ましくは、1075℃以上、より好ましくは、1100℃以上である。一方、AlNの分解は、温度が高いほど進行しやすいが、1250℃を超えると、AlNの分解に対する効果が飽和するだけでなく、ビレットの端部が変形してしまい、熱間圧延(鍛造)が困難になる。したがって、熱間加熱工程での加熱温度は、1250℃以下とする。なお、好ましくは、1225℃以下、より好ましくは、1200℃以下である。
圧延または鍛造後は、次工程の温度(950〜1100℃)まで冷却するか、あるいは、室温まで冷却した後、加熱保持工程での加熱を実施する。その際の冷却速度は、任意の冷却速度でよいが、再びAlNが析出しないようにする必要があることから、1℃/sec以上の冷却速度が推奨される。冷却方法は、放冷、空冷、風冷、障壁風冷、水冷等、一般的な冷却方法が用いられる。冷却速度の上限は特に規定しないが、製造条件に合わせて適宜決定すればよい。なお、例えば、圧延設備と熱処理設備が別々の場所にある場合等、設備の関係上、連続的の処理できない場合には、熱間加工後に室温まで冷却する。
<加熱保持工程>
加熱保持工程は、前記熱間加工工程で熱間加工された熱間加工材を、950〜1100℃で、60〜7200sec保持する工程である。
前記の熱間加工工程で鋼材の形作りをした後、結晶粒の整粒化のための熱処理を実施する必要がある。950〜1100℃で加熱することで、鋼材をオーステナイト化し、この温度で60〜7200sec保持することで、再びAlNが析出する。そして、その後冷却すると、オーステナイト粒界からフェライトが析出し始める。このフェライトは冷却中の温度の低下と共に次第に成長していくが、N化合物(AlN)が結晶粒の成長を抑制し、結晶粒を整粒化することができる。加熱温度が950℃未満では、AlNの析出量が多くなりすぎ、N固溶量を低下させてしまう。したがって、加熱保持工程での加熱温度は、950℃以上とする。なお、好ましくは、975℃以上、より好ましくは、1000℃以上である。一方、1100℃を超えると、AlNの析出量が十分ではなく、その後の冷却工程で結晶粒が不均一に粗大化してしまう。したがって、加熱保持工程での加熱時間は、1100℃以下とする。なお、好ましくは、1090℃以下、より好ましくは、1080℃以下である。
前記温度における保持時間は、60〜7200secとする。保持時間が60sec未満では、AlNが析出するのに十分な時間を確保することができない。したがって、保持時間は、60sec以上とする。なお、好ましくは、120sec以上、より好ましくは、300sec以上である。一方、保持時間が7200secを超えると、AlNが粗大、且つまばらな析出状態となってしまい、十分な整粒効果を得ることができない。したがって、保持時間は、7200sec以下とする。なお、好ましくは、6600sec以下、より好ましくは、6000sec以下とする。
<冷却工程>
冷却工程は、前記加熱保持工程で加熱保持された加熱保持材を、0.5〜15℃/secの冷却速度で500℃以下まで冷却する工程である。
結晶粒を整粒化するためには、500℃以下まで、0.5〜15℃/secの冷却速度で冷却する必要がある。冷却速度が0.5℃/sec未満では、冷却中にAlNが成長し、まばらな分布状態となってしまうため、十分な整粒効果を得ることができない。したがって、冷却速度は、0.5℃/sec以上とする。なお、好ましくは、0.75℃/sec、好ましくは、1℃/sec以上とする。一方、冷却速度が15℃/secを超えると、オーステナイト粒界だけでなく、粒内からもフェライトが析出し始める。このフェライトはある方位に沿って成長しやすいため、アスペクト比が規定を満たさなくなり、冷間加工後に硬さのばらつきが生じるようになる。また、結晶粒が微細化しすぎてしまう。したがって、冷却速度は、15℃/sec以下とする。なお、好ましくは、12.5℃/sec以下、好ましくは、10℃/sec以下とする。
本発明に係る機械構造用鋼の製造方法は、以上説明したとおりであるが、本発明を行うにあたり、前記各工程に悪影響を与えない範囲において、前記各工程の間あるいは前後に、例えば、鋳造工程と熱間加工工程の間に行う鍛造工程や、鋳塊や熱間加工材等を切断する切断工程や、ごみ等の不要物を除去する不要物除去工程等、他の工程を含めてもよい。
≪機械構造用部品≫
本発明に係る機械構造用部品は、前記機械構造用鋼を、開始温度200℃未満で冷間加工(冷間鍛造)して製造される。開始温度が200℃以上で加工されると、動的ひずみ時効が発生しやすくなることで、変形抵抗の増大、加工性の劣化を招くと共に、静的ひずみ時効による強化が不十分になるからである。冷間加工後は、切削等、公知の方法で所望の形状に仕上げる。
以上のようにして得られる機械構造用部品は、前記機械構造用鋼を開始温度200℃未満で冷間加工(加工初期温度が200℃未満の状態から冷間加工)して部品とした後の転位セルサイズとひずみ量の関係が(1)式を満たし、かつ、部品の硬さが(2)式を満たすものである。
1/√d≧0.25ε+2・・・(1)
式(1)において、d:冷間加工後の転位セルサイズ(μm)、ε:冷間加工時のひずみ量である。
15≧(硬さ(Hv)の最大値)−(硬さ(Hv)の最小値)・・・(2)
前記の成分、初期組織を満足する機械構造用鋼に冷間加工を施すと、(1)式に示すように転位セルサイズが細かくなる。転位セルサイズと強度は相関関係にあることが知られており、転位セルサイズが大きいと、部品強度が低下してしまう。初期組織を満足しない場合、付与したひずみに対して結晶粒径が(1)式を満たさず、ひずみに対して大きいままである。なお、(1)式において、好ましくは、1/√d≧0.25ε+2.1であり、より好ましくは、1/√d≧0.25ε+2.2である。
この式(1)、(2)は、以下の理由に基づき構築したものである。
本発明者らが実験的なデータに基づき、転位セルサイズと冷間加工時のひずみ量の関係、および、部品の硬さのばらつきについて検討を重ねた結果、機械構造用鋼の成分組成や組織等を所定に規定し、この機械構造用鋼から得られる機械構造用部品が式(1)を満足することで、従来品よりも、より少ないひずみで、高強度化が可能となり、式(2)を満足することで、従来品よりも、硬さのばらつきが小さくなることを見出したことから、このような関係式とした。
機械構造用部品は、前記記載の機械構造用鋼を冷間加工して得られたものであるため、冷間加工時に割れが発生せず、歩留まりが向上し、また、所要の強度および硬度を示すと共に、硬さのばらつきが少ないものである。なお、機械構造用部品は、前記機械構造用鋼を開始温度200℃未満で冷間加工(冷間鍛造)して製造される。200℃以上で加工されると、動的ひずみ時効が発生しやすくなることで、変形抵抗の増大、加工性の劣化を招くと共に、静的ひずみ時効による強化が不十分になるからである。冷間加工後は、切削等、公知の方法で所望の形状に仕上げる。
この冷間加工部品の具体例としては、ボルト・ナット、ピニオンギヤ、ステアリングシャフト、バルブリフター、コモンレール等を製造するための冷間加工用鋼、さらには、これまで熱間鍛造によって加工されていたクランクシャフト、コンロッド、トランスミッションギヤ等が挙げられる。本発明の機械構造用鋼は、冷間加工(冷間鍛造)によってこれらの冷間加工部品を製造する素材として有用である。また、冷間加工により製造するため、部品製造工程におけるCOの排出量を削減することができる。そして、これらの冷間加工部品は、軽量化しても所要の高強度を有するものである。
以下、本発明の実施例について、比較例と比較して具体的に説明する。
表1〜3に記載の成分組成からなる供試材No.1〜68の供試鋼を調製し、この供試鋼150kgを真空誘導炉で溶解して、上面:φ245mm、下面:φ210mm×長さ480mmのインゴットに鋳造した。このインゴットを、1150〜1250℃で3hrのソーキングの後、155mm角の四角材に熱間鍛造して、長さ600mm程度に切断し、155mm角×600mm長さのビレットとした。
次に、表1、2に示す供試材No.1〜54については、このビレットを、ダミービレット(155mm角×9〜10m長さ)に溶接し、ダミービレットごと、表1、2に示す熱間加工温度で加熱して、φ80mmの丸棒に圧延(熱間加工)し、一部については、任意の冷却速度で室温まで冷却した(その他については、次工程の加熱保持温度まで冷却した)。その後、表1、2に示す温度・保持時間で熱処理を行い、表1、2に示す冷却速度で、500℃以下まで冷却し、熱間圧延材を作製した。
次に、表3に示す供試材No.55〜68については、このビレットを、表3に示す熱間加工温度で加熱して、φ80mmの丸棒材に鍛造(熱間加工)し、一部については、任意の冷却速度で室温まで冷却した(その他については、次工程の加熱保持温度まで冷却した)。その後、表3に示す温度・保持時間で熱処理を行い、表3に示す冷却速度で、500℃以下まで冷却し、熱間鍛造材を作製した。
さらに、N固溶量、化合物N量、フェライト相の組織分率(フェライト組織分率)、平均結晶粒径、アスペクト比等について、以下の方法により測定した。これらの結果を表1〜3に示す。なお、表中、本発明の範囲を満たさないものについては、数値に下線を引いて示す。
<N固溶量>
供試材から切り出したサンプルで、前記JIS G 1228に準拠する不活性ガス融解法−熱伝導度法で算出した全N量から、アンモニア蒸留分離インドフェノール青吸光光度法で算出した全N化合物における窒素量を差し引いてN固溶量を測定した。
<化合物N量>
アンモニア蒸留分離インドフェノール青吸光光度法を用いて算出した。具体的には、まず、供試材からサンプルを切り出し、10%AA系電解液(鋼表面に不働態皮膜を生成させない非水溶媒系の電解液であり、具体的には10%アセチルアセトン、10%塩化テトラメチルアンモニウム、残部:メタノール)中で、定電流電解を行なった。次に、約0.5gサンプルを溶解させ、不溶解残渣(N化合物)を穴サイズが0.1μmのポリカーボネート製のフィルタでろ過し、不溶解残渣を硫酸、硫酸カリウムおよび純Cuチップ中で加熱して分解し、ろ液に合わせた。この溶液を水酸化ナトリウムでアルカリ性にした後、水蒸気蒸留を行い、留出したアンモニアを希硫酸に吸収させた。そして、フェノール、次亜塩素酸ナトリウムおよびペンタシアノニトロシル鉄(III)酸ナトリウムを加えて青色錯体を生成させ、光度計を用いて、その吸光度を測定した。この結果から、全N化合物における窒素量を算出した。
<フェライト組織分率、および、フェライト結晶粒径の測定方法>
前記それぞれの丸棒材(熱間圧延材、熱間鍛造材)の表面から円柱の直径の1/4の深さの位置かつ軸方向中央近傍を観察できるように、供試材を円柱の軸に沿って(半円柱形状に)切断して樹脂に埋め込み、切断面をエメリー紙およびダイヤモンドバフで鏡面に研磨し、ナイタール液(3%硝酸エタノール溶液)で腐食させた。腐食面を光学顕微鏡で観察して構成組織および結晶粒を判別した。組織解析は、100倍で5箇所(5視野)の写真を撮影し、これらの写真に対して、画像解析ソフト(Image Pro Plus、Media Cybernetics社製)を用いて画像を2値化して、白色の領域をフェライト相として各写真の面積率を算出し、5視野の平均値をフェライト組織分率とした。結晶粒径の測定は、1000倍で5箇所(5視野)の写真を撮影し、写真に直線を引き、この直線と交差する結晶粒界の数をカウントして結晶粒径の平均値を算出し、さらに5視野の平均値を平均粒径とした。
<アスペクト比>
前記結晶粒測定に用いた丸棒材を使用し、前記の組織の判別と同じ位置の5視野を観察位置として、組織の判別と同様にナイタール液で腐食させた切断面を光学顕微鏡にて1000倍程度で観察した。次に、撮影した写真に対して、水平線、垂直線を引き、線と交差した結晶粒界の数をカウントした。そして、圧延方向に対して、水平方向の結晶粒径を垂直方向の結晶粒径で除し、アスペクト比を算出し、5視野の平均値を平均アスペクト比とし、ここでのアスペクト比とした。
Figure 2010202904
Figure 2010202904
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前記それぞれの丸棒材(熱間圧延材、熱間鍛造材)を、冷間加工にて表4〜6に示すひずみ量となるようにドロー加工して、φ75mm〜φ10.5mmに縮径された丸棒状(円柱形状)の機械構造用部品の加工試験品(冷間鍛造材)を作製した。
これらの冷間鍛造材(供試材)について、転位セルサイズ、強度の測定を行うと共に、以下の評価を行った。
<転位セルサイズ>
得られた供試材について、転位セルサイズの測定を行った。
供試材の表面から円柱の直径の1/4の深さの位置かつ軸方向中央近傍を観察できるように、供試材を円柱の軸に沿ってスライス状に切断し、化学研磨を施してTEMサンプルを作製した。次に、30000倍で5箇所(5視野)の写真を撮影し、写真の加工方向に対して垂直方向に直線を引き、この直線と交差する転位セル壁の数をカウントして転位セルサイズを算出し、さらに5視野の平均値を平均転位セルサイズとし、ここでの転位セルサイズとした。
<転位セルサイズとひずみ量の関係>
前記転位セルサイズから、転位セルサイズとひずみ量の関係を求めた。前記(1)式を満たすものを、部品加工後の強度が良好「○」、満たさないものを不良「×」として、評価した。
<強度>
供試材の中心部(円柱の軸近傍)からJIS14A号の引張試験片(標点φ8mmの棒状試験片)を切り出し、「JIS Z 2201 金属材料引張試験片」に準拠した引張試験方法で引張試験を実施し、降伏応力(降伏強度)(0.2%耐力(MPa))、および、引張強度(TS(MPa))を測定した。なお、供試材の中心部から試験片を切り出すとは、供試材の円柱の軸と棒状試験片の円柱の軸とが略一致するということである。
<硬さのばらつき>
まず、冷間鍛造材のビッカース硬さを測定した。冷間鍛造材の円柱の軸(冷間鍛造前の試験片の軸と同)に沿って切断して、樹脂に埋め込んで試料として調整した。この試料について、冷間鍛造材の円柱の軸方向中央における直径の1/4位置の任意の5点のビッカース硬さを測定し、5点の平均値を冷間加工後硬さHvとした。また、これらのうち、硬さの最大値(最大硬さ)と硬さの最小値(最小硬さ)の差分を求めた。そして、この差が15以下のものを、硬さのばらつきが小さいもの「○」、15を超えるものを、大きいもの「×」として、評価した。
<冷間加工性の評価>
前記それぞれの丸棒材(熱間圧延材、熱間鍛造材)を、1600tプレスを用い、端面を拘束した状態で、表4〜6に示す開始温度で、ひずみ速度10/secの冷間鍛造により試験片の軸方向に80%まで圧縮して、機械構造用部品の加工試験品(冷間鍛造材)を作製した。なお、加工ひずみ速度は、加工中(塑性変形中)のひずみ速度の平均値とした。なお、圧縮率は、機械構造用鋼の圧縮方向長をH0、圧縮後(機械構造用部品)の圧縮方向長をHとして表したとき、(H0−H)/H0×100で算出される。そして、冷間鍛造により割れの発生した冷間鍛造材を「×」、割れのない冷間鍛造材を「○」として、評価した。
これらの試験結果において、得られた加工試験品(供試材)について割れがないものを、冷間加工性に優れたものと判定し、かつ前記式(1)に示す条件を満足すると共に、硬さのばらつきが小さいものを、総合判定を「○」と表示した。一方、割れが生じた場合、前記式(1)に示す条件を満足しない場合、耐ばらつき性が不良の場合のいずれか一つ以上に該当する場合は、総合判定を「×」と表示した。これらの結果を表4〜6に示す。なお、表中、本発明の範囲を満たさないものについては、数値に下線を引いて示す。
Figure 2010202904
Figure 2010202904
Figure 2010202904
表4〜6に示すとおり、本発明の範囲を満たす供試材は、加工中は良好な冷間加工性を確保し、加工後は必要な硬度、強度を得ることができることが分かった。さらに、硬さのばらつきが小さいことが分かった。すなわち、本発明の実施例(供試材No.1〜31、55〜64)は、総合判定が「○」であり、得られた加工試験品について割れがなく、優れた冷間加工性を示し、さらに前記式(1)に示す条件を満足すると共に、優れた耐ばらつき性を有している。これに対して、前記のいずれかの条件を満足しない比較例(供試材No.32〜54、65〜68)は、以下の結果となった。
供試材No.32は、C含有量が下限値未満のため、加工後に割れが発生した。供試材No.33は、C含有量が上限値を超えるため、フェライト組織分率が下限値未満となり、加工後に割れが発生した。供試材No.34は、Si含有量が下限値未満のため、加工後に割れが発生した。供試材No.35は、Si含有量が上限値を超えるため、加工後に割れが発生した。供試材No.36は、Mn含有量が下限値未満のため、加工後に割れが発生した。
供試材No.37は、Mn含有量が上限値を超えるため、加工後に割れが発生した。供試材No.38は、P含有量が上限値を超えるため、加工後に割れが発生した。供試材No.39は、S含有量が上限値を超えるため、加工後に割れが発生した。供試材No.40は、Al含有量が下限値未満のため、加工後に割れが発生した。さらに、化合物N量が下限値未満となり、平均結晶粒径が上限値を超え、硬さのばらつきが大きかった。供試材No.41は、Al含有量が上限値を超えるため、N固溶量が下限値未満となり、式(1)の条件を逸脱した。
供試材No.42は、C含有量、Si含有量が上限値を超え、N含有量、N固溶量が下限値未満であり、また、フェライト組織分率が下限値未満であり、加工後に割れが発生し、式(1)の条件を逸脱し、硬さのばらつきが大きかった。なお、供試材No.42は、一般的なフェライト-パーライト鋼(S25C(フェライト分率:70〜80%))のため、フェライト組織分率が低いものであり、また、硬さのばらつきが大きいものである。供試材No.43は、N含有量、N固溶量が下限値未満のため、式(1)の条件を逸脱した。
供試材No.44は、N含有量が上限値を超えるため、加工後に割れが発生した。供試材No.45は、熱間加工温度が下限値未満のため、N固溶量が下限値未満となり、式(1)の条件を逸脱した。供試材No.46は、加熱保持温度が下限値未満のため、N固溶量が下限値未満となり、式(1)の条件を逸脱した。供試材No.47は、加熱保持温度が上限値を超えるため、化合物N量が下限値未満となり、平均結晶粒径が上限値を超え、硬さのばらつきが大きかった。
供試材No.48は、加熱保持温度が下限値未満のため、N固溶量が下限値未満となり、式(1)の条件を逸脱した。供試材No.49は、加熱保持温度が上限値を超えるため、化合物N量が下限値未満となり、平均結晶粒径が上限値を超え、硬さのばらつきが大きかった。供試材No.50は、加熱保持時間が下限値未満のため、化合物N量が下限値未満となり、平均結晶粒径が上限値を超え、硬さのばらつきが大きかった。供試材No.51は、加熱保持時間が上限値を超えるため、平均結晶粒径が上限値を超え、硬さのばらつきが大きかった。
供試材No.52は、冷却速度が下限値未満のため、平均結晶粒径が上限値を超え、硬さのばらつきが大きかった。供試材No.53は、冷却速度が上限値を超えるため、平均結晶粒径が下限値未満となり、また、アスペクト比が上限値を超え、硬さのばらつきが大きかった。供試材No.54は、冷間鍛造開始温度が下限値を超えるため、加工後に割れが発生した。
供試材No.65は、C含有量、Si含有量が上限値を超えるため、フェライト組織分率が下限値未満となり、加工後に割れが発生した。また、Nが下限値未満であり、Al含有量が上限値を超えるため、N固溶量が下限値未満となり、式(1)の条件を逸脱した。供試材No.66は、C含有量が上限値を超えるため、フェライト組織分率が下限値未満となり、加工後に割れが発生した。供試材No.67は、Mn含有量が上限値を超えるため、加工後に割れが発生した。供試材No.68は、N含有量、N固溶量が下限値未満のため、式(1)の条件を逸脱した。
以上、本発明に係る機械構造用鋼およびその製造方法ならびに機械構造用部品について最良の実施の形態および実施例を示して詳細に説明したが、本発明の趣旨は前記した内容に限定されるものではない。なお、本発明の内容は、前記した記載に基づいて広く改変・変更等することができることはいうまでもない。

Claims (9)

  1. C:0.005〜0.045質量%、Si:0.005〜0.05質量%、Mn:0.4〜1質量%、P:0.05質量%以下、S:0.005〜0.05質量%、Al:0.005〜0.03質量%、N:0.01〜0.02質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、
    N固溶量は0.008質量%以上であり、
    化合物状態のN量は0.002質量%以上であり、
    フェライト相の組織分率は95%以上であり、
    フェライト相の結晶粒は、平均結晶粒径が5〜20μm、アスペクト比が0.5〜2であることを特徴とする機械構造用鋼。
  2. 前記組成がさらに、Cr:2質量%以下、およびMo:2質量%以下のうち1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の機械構造用鋼。
  3. 前記組成がさらに、Ti:0.2質量%以下、Nb:0.2質量%以下、およびV:0.2質量%以下のうち1種以上を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の機械構造用鋼。
  4. 前記組成がさらに、B:0.005質量%以下を含有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の機械構造用鋼。
  5. 前記組成がさらに、Cu:5質量%以下、Ni:5質量%以下、およびCo:5質量%以下のうち1種以上を含有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の機械構造用鋼。
  6. 前記組成がさらに、Ca:0.05質量%以下、REM:0.05質量%以下、Mg:0.02質量%以下、Li:0.02質量%以下、Pb:0.5質量%以下、およびBi:0.5質量%以下のうち1種以上を含有することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の機械構造用鋼。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の組成を有する合金を溶解する溶解工程と、
    前記溶解工程で溶解された溶解物を鋳造する鋳造工程と、
    前記鋳造工程で鋳造された鋳塊を、1050〜1250℃に加熱した後、圧延または鍛造することで熱間加工する熱間加工工程と、
    前記熱間加工工程で熱間加工された熱間加工材を、950〜1100℃で、60〜7200sec保持する加熱保持工程と、
    前記加熱保持工程で加熱保持された加熱保持材を、0.5〜15℃/secの冷却速度で500℃以下まで冷却する冷却工程と、を含むことを特徴とする機械構造用鋼の製造方法。
  8. 請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の組成を有する合金を溶解する溶解工程と、
    前記溶解工程で溶解された溶解物を鋳造する鋳造工程と、
    前記鋳造工程で鋳造された鋳塊を、1050〜1250℃に加熱した後、圧延または鍛造することで熱間加工し、その後室温まで冷却する熱間加工工程と、
    前記熱間加工工程で熱間加工された熱間加工材を、950〜1100℃で、60〜7200sec保持する加熱保持工程と、
    前記加熱保持工程で加熱保持された加熱保持材を、0.5〜15℃/secの冷却速度で500℃以下まで冷却する冷却工程と、を含むことを特徴とする機械構造用鋼の製造方法。
  9. 請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の機械構造用鋼を、開始温度200℃未満で冷間加工して製造されたことを特徴とする機械構造用部品。
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