JP2010201751A - 液体噴射装置および液体噴射方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】加熱機構が一旦停止した場合でも、液体噴射ヘッドのヘッド駆動波形をより適切なヘッド駆動波形へと補正可能な液体噴射装置および液体噴射方法を提供すること。
【解決手段】ノズル開口32aから液体を噴射可能な液体噴射ヘッド30と、噴射媒体に付着した液体を加熱して乾燥させる加熱手段60と、液体噴射ヘッド30に存在すると共にノズル開口32aが列状に配置されたノズル列32bが複数設けられるノズルプレート32のうち、液体噴射ヘッド30のリザーバー317に対応する測定部位の温度を非接触方式で測定する温度測定手段50と、温度測定手段50での測定部位の温度の測定結果に基づいて、液体噴射ヘッド30のヘッド駆動波形を補正し、補正後のヘッド駆動波形を液体噴射ヘッド30に印加するヘッド制御手段70と、を具備している。
【選択図】図2

Description

本発明は、液体噴射装置および液体噴射方法に関する。
インクジェット式のプリンターにおいては、印刷速度の高速化の進展に伴って、印刷ヘッドの近傍に、用紙等の印刷媒体の印刷面を乾燥させるための加熱機構を有するタイプが開発されつつある。
ところで、印刷面を乾燥させるために加熱機構を用いる場合、印刷ヘッドの温度上昇を来たす。印刷ヘッドにおいて温度上昇が生じると、インクの粘度が変化してしまうので、印刷ヘッドのヘッド駆動波形を補正する必要が生じる。そこで、印刷ヘッドに温度上昇(温度変化)が生じているか否かを検出すべく、温度検出手段を搭載する必要がある。特許文献1には、そのような温度検出手段として、ヘッドサーミスターを有し、当該ヘッドサーミスターでの検出温度に基づいて、印刷ヘッドのヘッド駆動波形を補正する技術内容について開示されている。
特開平6−182997号公報
上述の特許文献1に示す技術内容によれば、ヘッドサーミスターでの検出温度に基づいて、印刷ヘッドのヘッド駆動波形を補正している。しかしながら、インクは液体であり、その比熱容量から温度上昇が緩やかである。そのため、加熱機構を作動させた場合、ヘッドサーミスターでの検出温度は、インクの実際の温度と比較して、大きなものとなり易い。その結果、インクの実際の温度と、ヘッドサーミスターでの検出温度との間に大きな隔たりが生じる場合がある。サーミスターでの検出温度とインクの実際の温度との間に、大きな隔たりが存在する場合、印刷ヘッドのヘッド駆動波形を、適切に補正することが困難となる。
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、その目的とするところは、液体噴射ヘッドのヘッド駆動波形をより適切なヘッド駆動波形へと補正可能な液体噴射装置および液体噴射方法を提供しよう、とするものである。
上記課題を解決するために、本発明の液体噴射装置の第1の側面は、ノズル開口から液体を噴射可能な液体噴射ヘッドと、噴射媒体に付着した液体を加熱して乾燥させる加熱手段と、液体噴射ヘッドに存在すると共にノズル開口が列状に配置されたノズル列が複数設けられるノズルプレートのうち、液体噴射ヘッドのリザーバーに対応する測定部位の温度を非接触方式で測定する温度測定手段と、温度測定手段での測定部位の温度の測定結果に基づいて、液体噴射ヘッドのヘッド駆動波形を補正し、補正後のヘッド駆動波形を液体噴射ヘッドに印加するヘッド制御手段と、を具備するものである。
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、温度測定手段は、複数の測定部位の温度を測定すると共に、ヘッド制御手段は、複数の測定部位の測定結果の平均値を算出し、その平均値に基づいて、複数のノズル列に対するヘッド駆動波形を一体的に補正し、液体の噴射を制御することが好ましい。
さらに、本発明の他の側面は、上述の発明において、温度測定手段は、複数の測定部位の温度を測定すると共に、ヘッド制御手段は、それぞれの測定部位の測定結果に基づいて、ヘッド駆動波形を複数のノズル列毎に個別に補正し、液体の噴射を制御することが好ましい。
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、温度測定手段は、複数の測定部位の温度を測定すると共に、ヘッド制御手段は、液体の種類毎に複数の測定部位の測定結果の平均値を算出し、その平均値に基づいて、複数のノズル列に対するヘッド駆動波形の補正を液体の種類毎に行い、液体の噴射を制御することが好ましい。
さらに、本発明の他の側面は、上述の発明において、液体噴射ヘッドは、複数のヘッド本体が並べられて構成されるラインヘッドであると共に、温度測定手段は、複数のヘッド本体のそれぞれにつき少なくとも1箇所以上の温度を測定すると共に、ヘッド制御手段は、ヘッド本体毎に測定部位の測定結果の平均値を算出し、その平均値に基づいて、複数のノズル列に対するヘッド駆動波形の補正をヘッド本体毎に行い、液体の噴射を制御することが好ましい。
また、本発明の他の側面は、ノズル開口から液体を噴射可能な液体噴射ヘッド、および噴射媒体に付着した液体を加熱して乾燥させる加熱手段を備え、当該加熱手段の作動による液体の温度変化に対応する液体噴射方法であって、液体噴射ヘッドに存在すると共にノズル開口が列状に配置されたノズル列が複数設けられるノズルプレートのうち、液体噴射ヘッドのリザーバーに対応する測定部位の温度を非接触方式で測定する温度測定ステップと、温度測定ステップでの測定部位の温度の測定結果に基づいて、液体噴射ヘッドのヘッド駆動波形を補正する補正ステップと、補正ステップで補正されたヘッド駆動波形を液体噴射ヘッドに印加するヘッド制御ステップと、を具備するものである。
本発明の一実施の形態に係るプリンターの概略構成を示す図である。 プリンターと温度センサーの位置関係を示す斜視図である。 図1のプリンターにおける印刷ヘッドの構成を示す分解斜視図である。 図1の印刷ヘッドの構成を示す断面図である。 印刷ヘッドを底面側から見た状態を示す図である。 制御部とそれに接続される周辺構成の概略を示すブロック図である。 ヘッド駆動波形の補正のイメージを示す図である。
以下、本発明の一実施の形態に係る液体噴射装置としてのプリンター10および液体噴射方法について、図1から図7に基づいて説明する。なお、本実施の形態のプリンター10は、インクジェット式のプリンターであるが、かかるインクジェット式プリンターは、インクを噴射して印刷可能な装置であれば、いかなる噴射方法を採用した装置でも良い。
また、以下の説明においては、下方側とは、プリンター10が設置される側を指し、上方側とは、設置される側から離間する側を指す。また、印刷媒体Pが供給される側を給送側(後端側)、印刷媒体Pが排出される側を排紙側(手前側)として説明する。また、後述するキャリッジ21が移動する方向を主走査方向、主走査方向に直交する方向であって印刷媒体Pが搬送される方向を副走査方向とする。
<プリンター10の概略構成>
図1および図2に示すように、プリンター10は、筐体部11と、キャリッジ機構20と、用紙搬送機構40と、温度センサー50と、加熱機構60と、制御部70等を主要な構成要素としている。
これらのうち、キャリッジ機構20は、キャリッジ21と、キャリッジモーター(CRモーター22)と、ベルト23と、歯車プーリ24、従動プーリ25およびキャリッジ軸26(摺動軸に対応)を備えている。これらのうち、キャリッジ21は、各色のインクカートリッジ27を搭載可能としている。また、図1および図2に示すように、キャリッジ21の下面には、インク滴を噴射可能な印刷ヘッド30(液体噴射ヘッドに対応)が設けられている。また、ベルト23は、無端ベルトであり、その一部がキャリッジ21の背面に固定されている。このベルト23は、歯車プーリ24と従動プーリ25とによって張設されている。
また、キャリッジ21は、各色(例えばシアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)のインク(液体に対応)を貯留しているインクカートリッジ27を搭載可能としている。なお、インクカートリッジ27の色数は、上述のような4色に限られるものではなく、シアン、マゼンタ、イエローの3色、または5色以上としても良い。
また、用紙搬送機構40は、図1に示すように、印刷媒体P(噴射媒体に対応)を搬送するためのPFモータ41、および普通紙等の給紙に対応する給紙ローラー42を具備している。また、給紙ローラー42よりも排紙側には、印刷媒体Pを搬送/挟持するための不図示のPFローラー対が設けられている。また、PFローラー対の排紙側には、不図示のプラテンおよび上述の印刷ヘッド30が上下に対向する様に配設されている。
<印刷ヘッド30の構成の詳細について>
上述のキャリッジ機構20の印刷ヘッド30の構成の詳細について、図3〜図5に基づいて説明する。印刷ヘッド30は、図3に示すように、ヘッド本体31と、ノズルプレート32から構成されている。ヘッド本体31は、図3および図4において下から順に、ノズルプレート32の上部に存在する流路形成基板311と、弾性膜312と、絶縁性膜313と、保護基板314とが積層されることにより、構成されている。
上述のヘッド本体31には、圧力発生室315、インク供給路316、リザーバー317等の液体の流路となる部分が形成されている。これらのうち、圧力発生室315は、プリンター10の副走査方向に沿って多数設けられている。なお、隣り合う圧力発生室315の間には、隔壁315aが設けられている。この圧力発生室315は、後述する各ノズル開口32aごとに1つずつ設けられている。
また、インク供給路316は、圧力発生室315とリザーバー317とを結ぶ部分であり、リザーバー317から圧力発生室315にインクを供給するための流路である。そのため、インク供給路316は、圧力発生室315と同じ個数だけ設けられている。図3に示すように、インク供給路316は、圧力発生室315の幅寸法よりも狭い幅寸法の流路径を有して形成されている。そのため、インク供給路316は、圧力発生室315にインクが導入する際に、一定の流路抵抗を生じさせている。
また、インク供給路316と連通するリザーバー317は、複数の圧力発生室315の並びの方向(長手方向)に沿って設けられている。そのため、リザーバー317は、長尺状に設けられていて、例えば1つのノズル列32bに1つ設けられている。リザーバー317は、インク供給路316を介して圧力発生室315にインクが導入される前にインクが導入される部分である。
また、上述の絶縁性膜313上には、それぞれの圧力発生室315ごとに、圧電素子33が設けられている。圧電素子33は、白金とイリジウムとを積層して構成される下電極膜331と、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等を材質とする圧電体層332と、例えばイリジウム(Ir)を材質とする上電極膜333とから構成されている。なお、下電極膜331は共通電極であるため大面積に設けられているものの、圧電体層332および上電極膜333は、各圧力発生室315ごとに1つずつ設けられており、隣り合う圧電体層332、および上電極膜333との間には、所定の間隔の隙間が設けられる状態となる。
また、上電極膜333には、例えば、金(Au)等からなるリード電極334がそれぞれ接続されていて、このリード電極334は、不図示の駆動回路に接続されている。そして、このリード電極334を介して、各圧電素子33に選択的に電圧が印加される。
また、本実施の形態においては、図5に示すように、印刷ヘッド30は、例えば1つのインクカートリッジ27毎に2つずつ、合計8つのノズル列32bを有している。また、リザーバー317は、各ノズル列32b毎に設けられている。すなわち、1つのノズル列32bにつき、1つのリザーバー317が対応するように設けられている。なお、ノズル列32bの個数は合計8つに限られるものではなく、また1つのインクカートリッジ27毎に2つずつ設けられるものでもなく、インクカートリッジ27の色数に応じて、その個数を適宜変更可能である。
<温度センサー50について>
続いて、プリンター10が具備する温度センサー50について説明する。本実施の形態における温度センサー50は、ノズルプレート32のうちリザーバー317に対応する部分(測定部位;図5において破線で囲まれる部分)の温度を、非接触で測定するための手段である。この温度センサー50には、本実施の形態では、サーモグラフィーのカメラ部分51が対応している。サーモグラフィーは、図2に示すようなカメラ部51と、図6に示すような温度算出プログラム74cがCPU72に読み込まれることで構成されている。
これらのうち、カメラ部51は、光学系のレンズ、赤外線検出器、A/D変換部等を具備している。この中で、赤外線検出器としては、HgCdTeまたはInSbを用いた素子、InGaAsフォトダイオード等がある。ノズルプレート32の表面を撮像する場合、その撮像によりレンズを介して赤外線検出器に赤外光が入射されると、赤外線の強さに応じた電気信号に変換され、A/D変換部でアナログ信号からデジタル信号に変換されて、制御部70に向けて出力される。そして、制御部70では、温度算出プログラム74cが起動されて、その温度算出プログラム74cにより、入力されたデジタル信号から、温度分布を色の分布で表した画像データが形成され、測定部位の温度が算出される。
なお、温度センサー50は、サーモグラフィーには限られず、非接触式温度センサーであれば、他の方式を用いるものでも良い。他の方式のものとしては、赤外線放射温度計、光温度計等がある。このうち、赤外線放射温度計は、レンズ、サーモパイル等を具備しており、上述の測定部位から放射される赤外線をレンズで集光してサーモパイル上に照射する。すると、サーモパイルでは、赤外線の強弱に応じた電気信号を出力し、その電気信号を増幅し、さらには所定の補正(リニアライズ補正、物性に応じた放射率補正等)を行った後に後述する制御部70に向けて出力する。
また、サーモグラフィーは、ノズルプレート32の全体を一度だけ撮像する方式であっても良く、ノズルプレート32のそれぞれの測定部位の真下にカメラ部51を位置させて、それぞれの測定部位を個別に撮像する方式を採用しても良い。
図2に示すように、温度センサー50(カメラ部51)は、プリンター10のうち、例えばホームポジション等の非印刷領域に設けられている。加えて、温度センサー50は、印刷ヘッド30と対向する部位に設けられている。そのため、キャリッジ21がCRモーター22の駆動により移動させられると、測定部位であるノズルプレート32のうちリザーバー317に対応する部位(図5において破線で囲まれる部分)と対向可能となっていて、当該測定部位の温度を測定することを可能としている。
<加熱機構60について>
続いて、プリンター10が備える加熱機構60について説明する。加熱機構60は、加熱手段に対応している。この加熱機構60は、図1、図6に示すように、印刷ヘッド30での印刷が実行された印刷媒体P(噴射媒体に対応)の印刷面の加熱乾燥を行わせるための部分である。この加熱機構60は、印刷媒体Pの幅方向の寸法の全てにおいて、加熱乾燥を実行させるだけの大きさを有している。このような加熱機構60としては、例えばマイクロ波を印刷面に照射して、加熱乾燥を実行させるものがある。しかしながら、マイクロ波を印加する以外に、熱風を噴射することにより印刷面を乾燥させるようにしたり、ローラー体を加熱し、そのローラー体に印刷媒体Pを接触させることで、印刷面に付着しているインクを乾燥させるようにしても良い。
<制御部70の構成>
続いて、制御部70の構成について、図6に基づいて説明する。制御部70は、通信インターフェース71と、CPU72と、RAM73と、ROM74と、PTS生成回路75と、ヘッド駆動信号生成回路76と、加熱機構駆動回路77とを具備している。なお、この制御部70は、ヘッド制御手段に対応する。
これらのうち、通信インターフェース71は、コンピューターPCとの間で通信を行うための回路である。CPU72は、各種データや各種プログラムを読み込んで、それら各種プログラムに従って各種の処理を実行する。なお、CPU72には、クロック72aが内蔵されていて、このクロック72aは、後述するPTS生成回路75で生成されるPTSの基準となるクロック信号CLを生成する。
RAM73は、各種のデータを一時的に記憶させる部分である。また、ROM74は、各種のプログラムや各種のデータが記憶されていて、プリンター10の電源をオフにしてもその記憶は維持される。ROM74に記憶されるプログラムとしては、プリンター10の各部の動作を司る印刷制御プログラム74aや、後述するヘッド駆動信号の基準波形データ74bがある。
ROM74には、その他、温度算出プログラム74cおよびヘッド駆動波形補正処理プログラム74dが記憶されている。温度算出プログラム74cは、温度センサー50から出力されるデジタル信号から、温度分布を色の分布で表した画像データを作成し、その画像データに基づいて測定部位の温度を算出する。また、温度算出プログラム74cは、本実施の形態では、ノズルプレート32の測定部位の平均値を算出する。また、ヘッド駆動波形補正処理プログラム74dは、温度算出プログラム74cで算出された温度に基づいて、基準波形データ74bを補正して補正波形データを作成する(温度補正処理を行う)。
PTS生成回路75は、印刷ヘッド30の駆動タイミング信号(Print Timing Signal;以下、PTSと略記する。)を生成するものである。このPTS生成回路75には、図1に示すリニアエンコーダーREからのエンコーダ信号と、上述のクロックからのクロック信号CLと、CPU72で処理される画像データに基づくPTS生成情報とが入力される。そして、これらの信号に基づいて、基準PTSが生成される。
また、ヘッド駆動信号生成回路76は、PTS生成回路75により生成された基準PTSに同期させて、ヘッド駆動信号を生成する部分である。ここで、ヘッド駆動波形補正処理プログラム74dは、算出された温度の平均値に基づいて、基準波形データ74bを補正して補正波形データを作成する。そしてヘッド駆動信号生成回路76では、この補正波形データが入力され、それに基づいて、基準PTSに同期させたヘッド駆動信号が生成される。
加熱機構駆動回路77は、CPU72からの指令に基づいて、加熱機構60の作動を制御するための回路である。なお、加熱機構駆動回路77は、プリンター10の作動中、常に加熱機構60が作動するように制御しても良く、印刷媒体Pへの印刷が実行された際に加熱機構60が作動するように制御しても良い。
<動作>
以上のような構成を有するプリンター10を用いて、印刷媒体Pに印刷を実行する場合、印刷ヘッド30が主走査方向に移動しつつ、印刷ヘッド30から印刷媒体Pに向けてインクを噴射する。そして、1走査分の印刷が終了すると、印刷媒体Pを紙送りの1ピッチ分だけ副走査方向に向けて搬送する。この1ピッチ分の搬送処理が終了した後に、再び同じ動作を繰り返すことにより、印刷媒体Pの全体に対して、印刷が実行される。
ここで、印刷ヘッド30よりも、紙送り方向の下流側には、加熱機構60が設けられていて、印刷媒体Pへの印刷が為される際には、当該加熱機構60が作動する。そのため、印刷媒体Pの印刷面が加熱機構60に差し掛かると、印刷面に対する加熱乾燥が為される。そのため、印刷ヘッド30も、加熱機構60の作動により、温度が上昇する等の影響を受ける。
その場合、印刷ヘッド30の所定の基板に取り付けられているヘッドサーミスター付近(ヘッド駆動信号生成回路76)も、加熱機構60の作動によって容易に加熱される。一方、インクは液体であり、その比熱容量から温度上昇が緩やかである。そのため、ヘッドサーミスター付近の温度は、インクの実際の温度と比較し、インクの温度が飽和するまでの間、その差異が大きなものとなり、インクの実際の温度と、ヘッドサーミスター付近の検出温度との間に大きな隔たりが生じる。
一方、上述の測定部位を温度センサー50で測定する場合、リザーバー317に多くのインクが蓄えられる関係上、測定温度はインクの実際の温度に対応する温度を指し示す。そこで、本実施の形態では、印刷ヘッド30のノズルプレート32のうちリザーバー317に対応する部分(測定部位;図5において破線で囲まれる部分)を、温度センサー50で測定する。そして、温度センサー50で測定が為されると、その測定値が制御部70に出力される。
なお、温度センサー50で温度測定を行う場合、CRモーター22を駆動させて、キャリッジ21を非印刷領域に向けて移動させる。この移動は、所定の時間毎、または1枚の印刷媒体Pへの印刷が終了するとき等、所定のタイミング毎に為される。そして、キャリッジ21を非印刷領域へ向けて移動させる場合、リニアエンコーダーREの出力に基づいて、温度センサー50が図5に示すそれぞれの測定部位と順次対向するように、CRモーター22の駆動を制御する。例えば、図5に示すように、測定部位が合計8つある場合、8つの測定部位の1つずつと順次対向するように、CRモーター22の駆動を制御する。
そして、温度センサー50が、それぞれの測定部位と対向している状態において、ノズルプレート32の測定部位の温度測定を行う。そして、合計8つの測定部位の温度の測定値が、制御部70に向けて順次出力される。そして、制御部70では、合計8つの測定部位の温度の平均値を算出する。
また、CPU72では、ヘッド駆動波形補正処理プログラム74dが実行される。このヘッド駆動波形補正処理プログラム74dでは、測定された温度の平均値に基づいて基準波形データ74bを補正して、補正後のヘッド駆動波形を生成する。すなわち、補正波形データを作成する。図7は、補正波形データを作成するイメージであるが、温度によってインク粘度は変化する。一般的には、低温環境下ではインク粘度は増大し、逆に高温環境下ではインク粘度は減少する。そこで、低温環境下ではインク粘度が増大するため、基準波形データ74bに対して、補正波形データは大きくなるように補正処理を行う(図7;符号Aで示される破線の補正結果参照)。逆に、高温環境下ではインク粘度が減少するため、基準波形データ74bに対して、補正波形データは小さくなるように補正処理を行う(図7;符号Bで示される一点鎖線の補正結果参照)。
なお、この補正処理を組み込むための事前の実験では、高温の測定ポイントと低温の測定ポイントとでインク粘度の変化を測定し、その間で線形的にインク粘度が変化するものとして、温度に応じて所定の割合で線形的に補正波形データが大小するような補正処理を行っても良い。また、インク粘度の変化を温度毎に測定し、測定されたインク粘度に応じた補正テーブルを持たせ、その補正テーブルに応じて補正波形データが大小するような補正処理を行うようにしても良い。
以上のようにして補正波形データが作成されると、ヘッド駆動信号生成回路76では、この補正波形データが入力され、それに基づいて、PTSに同期させたヘッド駆動信号が生成される。そして、印刷ヘッド30(圧電素子33)は、ヘッド駆動信号に基づいて駆動され、ノズル開口32aからインクが噴射される。
<効果>
以上のような構成のプリンター10によれば、加熱機構60が作動している状況下であっても、インクの実際の温度に近い温度を測定することが可能となる。すなわち、従来のように印刷ヘッド30のヘッド駆動信号生成回路76等のようなヘッド基板に存在する、ヘッドサーミスターでの検出温度を用いる場合、その検出温度は、インクの実際の温度と著しい乖離が生じている。これに対して、上述のように、所定の測定部位に対して温度センサー50を用いて温度測定を行う場合、そのような乖離が生じるのを防止可能となる。
このように、本実施の形態においては、温度センサー50を用いて、所定の測定部位で温度測定を行っているので、インクの実際の温度との間の隔たりが、ほとんど存在しない状態となるか、または隔たりが存在しても従来と比較して非常に小さなものとなる。そのため、印刷ヘッド30のヘッド駆動波形を、その温度下のインク粘度に対応したものへと適切に補正することが可能となる。
また、印刷ヘッド30のノズル開口32aからのインクの噴射が適正化され、インクが多く噴射され過ぎたり、逆にインクの噴射量が少なくなってしまう、といった不具合が発生するのを防止可能となる。すなわち、インク粘度に適したヘッド駆動波形へと調整可能となるため、安定したインク量を噴射し続けることが可能となる。その結果、プリンター10の稼動直後といった過渡期の状況下においても、安定した印刷品質を得ることが可能となる。
また、従来の構成を用いる場合、ノズルプレート32の真下に加熱機構60が存在する場合、インクの実際の温度とヘッドサーミスターでの検出温度との間に差が生じるため、噴射直前のインクの温度を測定することが困難となっている。しかしながら、本実施の形態では、ノズルプレート32の直下に加熱機構60が存在する場合でも、上述の非接触方式の温度センサー50を用いれば、簡便かつ精度良く、インクの温度を測定することが可能となる。
さらに、本実施の形態では、ノズルプレート32のうち、リザーバー317に対応する測定部位の温度を、温度センサー50を用いて測定している。ここで、リザーバー317は、大容量のインクが蓄えられる部位であり、ノズルプレート32のうちリザーバー317に対応する部位(図5において破線で囲まれる部分)は、大面積でノズルプレート32に対向している。そのため、測定部位の温度は、インクの実際の温度との間の隔たりが、ほとんど存在しない状態となるか、または隔たりが存在しても従来と比較して非常に小さなものとすることが可能となる。また、上述の測定部位の温度を測定する場合、インクの供給経路の中で、最もノズル開口32aに近い部位の温度を測定することになり、実際に噴射される間際のインクの温度を測定可能となる。
また、本実施の形態では、温度センサー50での測定、および温度算出プログラム74cでの処理により、ノズルプレート32のうちリザーバー317に対応する複数の測定部位の温度が測定され、それらの平均値が算出される。そして、ヘッド駆動波形補正処理プログラム74dでは、その平均値に基づいて、複数のノズル列32bに対するヘッド駆動波形を一体的に補正して補正波形データを作成し、その補正波形データに基づいてインクの噴射を制御している。そのため、印刷ヘッド30の内部に存在する、ヘッド駆動回路を簡略化することが可能となり、コストを低減することが可能となる。
<変形例>
以上、本発明の一実施の形態について述べたが、本発明は、これら以外にも、種々変形可能である。以下、それについて述べる。
上述の実施の形態では、温度算出プログラム74cでの処理により、ノズルプレート32のうちリザーバー317に対応する複数の測定部位の温度が測定され、それらの平均値を算出している。そして、ヘッド駆動波形補正処理プログラム74dでは、その平均値に基づいて、複数のノズル列32bに対するヘッド駆動波形を一体的に補正して補正波形データを作成し、その補正波形データに基づいてインクの噴射を制御している。
しかしながら、このように温度の平均値を算出する方式ではなく、例えば、上述の複数の測定部位の温度の測定結果に基づいて、ヘッド駆動波形をそれぞれのノズル列32b毎に個別に補正して、インクの噴射を制御するようにしても良い(平均値算出に対する変形例1)。この場合、温度算出プログラム74cでは、全ノズル列32bの測定温度の平均値を算出しない。また、ヘッド駆動波形補正処理プログラム74dでは、複数の測定部位の測定結果に基づいて、それぞれの測定部位に対応する補正波形データを作成する。このようにすれば、より精度良く、ヘッド駆動波形を補正することが可能となる。
すなわち、それぞれのノズル列32bからインクを噴射すると、水冷効果が発生して実際のインクの温度は低下してしまう。そのため、特定の色のインクの使用量が多い場合、その特定の色に対応するインクの温度が、他の色のインクよりも低下してしまい、各色のインクの間で、インク粘度のバラ付きが生じる結果となる。そのため、ヘッド駆動波形を全て一体的に補正する場合、インクの噴射量にバラ付きを生じさせる結果となり、インクが多く噴射され過ぎたり、逆にインクの噴射量が少なくなってしまう、という弊害が生じる。
これに対して、上述のように、ヘッド駆動波形をそれぞれのノズル列32b毎に個別に補正して、インクの噴射を制御する場合、インクの噴射量の適正化を図ることが可能となり、安定したインク量を噴射し続けることが可能となる。その結果、プリンター10の稼動直後といった過渡期の状況下においても、安定した印刷品質を得ることが可能となる。
また、温度の平均値を算出するのに対する他の変形例(平均値算出に対する変形例2)としては、インクの種類毎(例えば色毎)に、測定結果の平均値を算出し、その種類毎の平均値に基づき、ヘッド駆動波形を補正して補正波形データを作成するようにしても良い。このようにする場合、例えば図5では、インクの色の種類は4つであるため、2つのノズル列32b毎に、合計4つの補正波形データが作成される状態となる。
このようにしても、インクの噴射量は、色種毎に為され、同じ色種のノズル列32b同士では、水冷効果も同様に発生するため、インクの実際の温度の差異もほとんどない。そのため、インクの種類毎に測定結果の平均値を算出する方式を採用しても、インクの噴射量の適正化を図ることが可能となり、安定したインク量を噴射し続けることが可能となる。その結果、プリンター10の稼動直後といった過渡期の状況下においても、安定した印刷品質を得ることが可能となる。
さらに、本実施の形態では、液体噴射ヘッドとして、主走査方向に移動する方式の印刷ヘッド30を用いている。しかしながら、液体噴射ヘッドは、かかる走査方式の印刷ヘッド30に限られるものではなく、長尺状のラインヘッドとしても良い。この場合、ラインヘッドに対しても、ヘッド駆動波形を、その温度下のインク粘度に対応したものへと適切に補正することが可能となり、インクの噴射が適正化され、安定した印刷品質を得ることが可能となる。
なお、液体噴射ヘッドとしてラインヘッドを用いる場合、色またはインク種類毎に、インクの温度を測定し、その測定結果に基づいてヘッド駆動波形を補正して、補正波形データを作成するようにしても良い。また、ラインヘッドが、複数の短尺のヘッド本体が並べられて構成される場合、それぞれのヘッド本体につき少なくとも1箇所以上の温度を温度センサーを用いて測定し、それぞれのヘッド本体毎に測定部位の測定結果の平均値を算出する。そして、その平均値に基づいて、複数のノズル列に対するヘッド駆動波形の補正をヘッド本体毎に行い、液体の噴射を制御するようにしても良い。このようにすれば、ヘッド本体毎に補正波形データが作成されるので、ヘッド駆動回路の構成を簡略化することが可能となる。また、複数の短尺のヘッド本体のノズル列毎、またはインクの種類毎にヘッド駆動波形の補正を行うようにしても良い。
また、上述の実施の形態では、例えば図2に示すように、温度センサー50が1つのみ設けられる構成について開示されている。しかしながら、温度センサー50の個数は1つには限られず、複数設けるように構成しても良い。複数設ける場合の例としては、例えば、測定部位毎に設ける場合があり、またインクの種類毎に設ける場合がある。また、上述の実施の形態では、温度センサー50は、非接触式のものを用いているが、ノズルプレート32の測定部位の温度に影響を与えない場合には、接触式の温度センサーを用いるようにしても良い。
また、上述の実施の形態では、温度センサー50はサーモグラフィーであり、プリンター10が具備する制御部70の温度算出プログラム74cでは、画像処理を行って、測定部位の温度を算出している。しかしながら、かかる画像処理に基づく測定部位の温度算出を、プリンター10側で行わずに、コンピューターPC側で行うように構成しても良い。この場合、プリンター10側の処理負荷を軽減可能である。
また、上述の各実施の形態における液体噴射装置としてのプリンター10は、プリンター単独の機能を有する構成のみならず、スキャナ装置やコピー装置のような、複合的な機器の一部であっても良い。さらに、上述の実施の形態においては、インクジェット方式のプリンター10に関して説明している。しかしながら、プリンター10としては、液体を噴射可能なものであれば、インクジェット方式のプリンターには限られない。例えば、ジェルジェット方式のプリンター等、種々のプリンターに対して、本発明を適用することが可能である。
また、上述の実施の形態では、液体噴射装置を、インクジェット式のプリンター10に具体化しているが、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。
さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を噴射する流状体噴射装置であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
10…プリンター、20…紙送り機構、30…印刷ヘッド(液体噴射ヘッドに対応)、31…ヘッド本体、32…ノズルプレート、32a…ノズル開口、32b…ノズル列、50…温度センサー(温度測定手段に対応)、51…カメラ部、60…加熱機構(加熱手段に対応)、70…制御部(ヘッド制御手段に対応)、72…CPU、72a…クロック、73…RAM、74…ROM、74a…印刷制御プログラム、74b…基準波形データ、74c…温度算出プログラム、74d…ヘッド駆動波形補正処理プログラム、75…PTS生成回路、76…ヘッド駆動信号生成回路、77…加熱機構駆動回路、317…リザーバー、P…印刷媒体(噴射媒体に対応)

Claims (6)

  1. ノズル開口から液体を噴射可能な液体噴射ヘッドと、
    噴射媒体に付着した上記液体を加熱して乾燥させる加熱手段と、
    上記液体噴射ヘッドに存在すると共に上記ノズル開口が列状に配置されたノズル列が複数設けられるノズルプレートのうち、上記液体噴射ヘッドのリザーバーに対応する測定部位の温度を非接触方式で測定する温度測定手段と、
    上記温度測定手段での上記測定部位の温度の測定結果に基づいて、上記液体噴射ヘッドのヘッド駆動波形を補正し、補正後の上記ヘッド駆動波形を上記液体噴射ヘッドに印加するヘッド制御手段と、
    を具備することを特徴とする液体噴射装置。
  2. 請求項1記載の液体噴射装置において、
    前記温度測定手段は、複数の前記測定部位の温度を測定すると共に、
    前記ヘッド制御手段は、複数の前記測定部位の測定結果の平均値を算出し、その平均値に基づいて、複数の前記ノズル列に対する前記ヘッド駆動波形を一体的に補正し、前記液体の噴射を制御する、
    ことを特徴とする液体噴射装置。
  3. 請求項1記載の液体噴射装置において、
    前記温度測定手段は、複数の前記測定部位の温度を測定すると共に、
    前記ヘッド制御手段は、それぞれの前記測定部位の測定結果に基づいて、前記ヘッド駆動波形を複数の前記ノズル列毎に個別に補正し、前記液体の噴射を制御する、
    ことを特徴とする液体噴射装置。
  4. 請求項1記載の液体噴射装置において、
    前記温度測定手段は、複数の前記測定部位の温度を測定すると共に、
    前記ヘッド制御手段は、前記液体の種類毎に複数の前記測定部位の測定結果の平均値を算出し、その平均値に基づいて、複数の前記ノズル列に対する前記ヘッド駆動波形の補正を前記液体の種類毎に行い、前記液体の噴射を制御する、
    ことを特徴とする液体噴射装置。
  5. 請求項1記載の液体噴射装置において、
    前記液体噴射ヘッドは、複数のヘッド本体が並べられて構成されるラインヘッドであると共に、
    前記温度測定手段は、複数の前記ヘッド本体のそれぞれにつき少なくとも1箇所以上の温度を測定すると共に、
    前記ヘッド制御手段は、前記ヘッド本体毎に前記測定部位の測定結果の平均値を算出し、その平均値に基づいて、複数の前記ノズル列に対する前記ヘッド駆動波形の補正を前記ヘッド本体毎に行い、前記液体の噴射を制御する、
    ことを特徴とする液体噴射装置。
  6. ノズル開口から液体を噴射可能な液体噴射ヘッド、および噴射媒体に付着した上記液体を加熱して乾燥させる加熱手段を備え、当該加熱手段の作動による上記液体の温度変化に対応する液体噴射方法であって、
    上記液体噴射ヘッドに存在すると共に上記ノズル開口が列状に配置されたノズル列が複数設けられるノズルプレートのうち、上記液体噴射ヘッドのリザーバーに対応する測定部位の温度を非接触方式で測定する温度測定ステップと、
    上記温度測定ステップでの上記測定部位の温度の測定結果に基づいて、上記液体噴射ヘッドのヘッド駆動波形を補正する補正ステップと、
    上記補正ステップで補正された上記ヘッド駆動波形を上記液体噴射ヘッドに印加するヘッド制御ステップと、
    を具備することを特徴とする液体噴射方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2012218169A (ja) * 2011-04-04 2012-11-12 Seiko Epson Corp 液体噴射装置、及び液体噴射装置の制御方法
JP2016010977A (ja) * 2015-09-09 2016-01-21 セイコーエプソン株式会社 液体噴射装置、及び液体噴射装置の制御方法

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