JP2010196145A - 金属化合物薄膜付シートの製造装置および製造方法 - Google Patents

金属化合物薄膜付シートの製造装置および製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】シート表面に比較的厚い金属化合物薄膜であっても高速でかつシート幅方向の膜厚を均一に形成できる金属化合物薄膜付シートの製造装置ならびに金属化合物薄膜付きシートの製造方法を提供する。
【解決手段】シート案内面3の運動に伴ってシートを搬送する搬送手段と、シート案内面上のシートに向かって金属蒸気を飛散させる蒸発源7と、金属蒸気と反応させるためにガスを導入する反応ガス導入手段15と、金属蒸気がシートに到来する領域を制限するマスク11aとを備え、搬送されるシートに連続的に金属化合物薄膜を形成する製造装置であって、蒸発源とシート案内面とを結ぶ直線方向に関し、反応ガス導入手段により導入されたガスと蒸発源から飛来した金属蒸気とが混在する位置に、金属蒸気がシート幅方向の外部に拡散することを防止する拡散防止手段20を設けてなることを特徴とする金属化合物薄膜付シートの製造装置。
【選択図】図1

Description

本発明は、金属化合物薄膜付シートの製造装置および製造方法に関する。
従来から、プラスチックフィルムに例示されるシート上に薄膜を形成することにより、フィルムコンデンサや磁気記録テープ、包装用フィルム等の素材となる金属蒸着フィルムが製造されている。この製造には、例えば真空槽内で巻状物のプラスチックフィルムを巻き出し、薄膜形成した後に再び巻き取る巻取式蒸着装置(例えば非特許文献1)が用いられる。
その概要を図8を用いて説明する。図8はプラスチックフィルムなどのシート上に連続的に薄膜を形成する薄膜形成装置の構成要素を示した図である。なお、この図8は主要部のみを示し、構造物を収納する真空チャンバや中間ロールは省略してある。さらに、この図8とともに、ガスノズルなどの詳細部は省き、真空チャンバや真空ポンプを記載した全体概略図を図9に示す。
図9において、長尺のシート1は、原反ロール体2から繰り出され、シートの走行方向に沿って回転する円筒状の金属製キャンの表面であるシート案内面3に中間ローラ4、5によって決まる所要の巻き付け角で、巻付点33から剥離点32まで巻き付いた状態で搬送され、その後中間ローラ5を介して巻き取られ、巻取ロール体6を形成する。シート1がシート案内面3上に搬送される際に、走行方向マスク11bで制限される成膜開始点30から成膜終了点31の間の領域において、坩堝7(蒸発源)の中にある蒸着材料8より蒸発した蒸気10がシート1上に付着し、シート1上に薄膜13が形成される。なお蒸発には、例えば誘導加熱や抵抗加熱の原理を利用して蒸着材料を加熱する方式や、電子ビームを蒸着材料に照射して加熱する方式がある。またシート案内面3は主にシート1をシワなく搬送する役目と、シート1が受けた熱負荷を効率よく逃がす役目を持つ。このため例えば公知の熱媒体の循環による温度制御により、所要の温度に制御される。また特に円筒に限らず、ベルト体の上にシートを搬送する方式も見られる。
このような薄膜形成装置を使って金属化合物薄膜を形成する方法として、金属の蒸着材料を溶融し蒸発させ、その途中で酸素などの反応用ガスを導入して金属化合物薄膜をシート上に形成する方法が知られている。
例えば、金属酸化物薄膜付きフィルムとして、ガスバリア性に優れた包装用フィルムの分野で酸化アルミや酸化ケイ素の薄膜つきフィルムが提案されている(例えば特許文献1、2)。特に酸化アルミの蒸着においては、金属アルミを加熱して蒸発させ、その金属蒸気雰囲気に酸素を導入して酸化膜とする方法が一般的である。こうした金属酸化物薄膜付き包装用フィルムでは通常5〜30nm程度の金属酸化物膜をプラスチックフィルムに成膜する方法が提示されている。また、磁気記録材料に使用する強磁性体のCo、CoNi、Feを主成分とする材料の金属酸化物膜を得る方法では、磁気特性を良好にするために、膜厚方向に金属を部分的に酸化させたり、半金属酸化物を得る方法が開示されている(例えば、特許文献3)。さらに、プラスチックフィルムの片面または両面に、金属、半金属及び合金並びにこれらの酸化物及び複合物から選ばれた金属材料からなる強化膜を形成し、これを磁気記録媒体用支持体とする用途も提案されている(例えば、特許文献4、5)。
このように、金属化合物薄膜付シートはその目的に合わせて様々な形態が採用される。そして、ガスバリア性を狙うのであれば膜厚5〜30nm程度で十分な機能が発揮でき、また磁気記録材料の磁気特性を狙うのであれば、膜厚50〜300nmの薄膜の膜厚方向に部分的に酸化させることで充分な特性が得られる。
しかしながら、磁気記録媒体用支持体用の強化膜として支持体強度を上げる場合、金属酸化物薄膜の膜厚を厚く(たとえば50〜300nm程度)しなければならない場合があるにも関わらず、そのような厚い膜では金属を薄膜の厚み方向およびシート幅方向で均一に酸化させることが難しいという問題がある。さらに、このような磁気記録媒体用支持体は低いコストで生産することが求められるが、それには、できる限り高い速度で蒸発量や導入酸素量を増大した状態で蒸着する必要があるものの、その場合は幅方向における膜厚や薄膜の均一性を確保することが困難になる。このような問題を解決するためには、特にシート幅方向の端部においても薄膜の厚み方向の全体を酸化させることができる、酸化反応効率のよい金属酸化物の形成方法が必要であった。
ここで、従来から、金属化合物、特に金属酸化物薄膜を形成するための酸素を導入する方法としていくつかの技術が提案されている。
たとえば、特許文献6には、金属材料にアルミニウムを用い、アルミニウムを加熱し発生させたアルミニウム蒸気の発生量に対して、アルミニウム蒸気の雰囲気中に導入する酸素の量をアルミニウム蒸気量の1.0〜1.5倍の範囲内に調整することで、金属蒸気と酸素の反応に必要十分な量の酸素を供給するという方法が開示されている。
また、特許文献2には、金属材料にアルミニウムを用い、アルミニウム材料を加熱し単位時間当たりに発生させるアルミニウム蒸気の量A(モル/分)と単位時間当たりに導入する酸素の量B(モル/分)との比B/Aを0.1≦B/A<0.3に保持するように酸素の量Bの調節を行う方法が開示されている。この酸素量の調節方法により所望の酸素透過率、水蒸気透過率、全光線透過率を有する透明酸化アルミニウム膜を得ることができるとされている。
しかしながら、従来技術のように発生した金属蒸気量に応じて導入する酸素の量を調節する方法では、シート幅方向の端部の膜厚が中央部に比べ薄くなる不具合が生じる場合がある。すなわち、一般的に坩堝のシート幅方向の幅は成膜幅に対し1からせいぜい1.5倍の長さであるが、シート幅方向の各位置に成膜される薄膜の膜厚は、その位置の直下だけではなく斜め下から飛来する蒸気の量からも影響をうける。しかしながら、シート端部はその斜め下から飛来する蒸気成分が少ない。そのため、シート幅方向の端部では、膜厚が中央部に比べ薄くなり易い。
一方、シートに到達する金属蒸気のシート幅方向の量を均一にするために、成膜幅に対し1.5倍以上に坩堝の幅を長くすることも可能である。しかしながら、この方法では、シートに付着しない金属蒸気が多くなり、金属材料の使用効率の悪化にもなってしまう。また、坩堝幅を長くすると、材料を蒸発させる為に必要なエネルギーが多くなってしまう。
さらに、坩堝のシート幅方向端部の蒸発量を多くしてシート端部の膜厚を補おうとすると、蒸発源近傍や蒸発源とシートとの中間域においては、シート幅方向の中央部に対し端部で金属蒸気の密度が高い状態になる。そこへ酸化反応のための酸素ガスを導入すると、金属蒸気が低密度の外部に拡散し、結局中央に比べ端部の膜厚が薄くなってしまう場合がある。具体的には、図8に示す態様において例えば幅方向に1000[mm]以上の長さで金属化合物薄膜を成膜しようとする場合、シートの成膜領域にあたる幅方向マスクの開口部12の端部から内側150[mm]の範囲では、膜厚が部分的に薄くなる現象が顕著であった。従来の巻取式蒸着装置で長尺の薄膜付きシートを製造する場合、シートの端部から5〜30[mm]程度に薄膜を形成しない未蒸着帯を設けることが一般的である。また巻取ロール体で発生する端面の不揃い現象が起こる場合があり、先ほどの未蒸着帯を含め、蒸着工程後のスリット工程でシートの端部から10〜30[mm]の範囲は製品から取り除くことが一般的である。しかし前述のように、シートの端部から150[mm]程度の範囲で膜厚が薄くなる問題があると、端部を30[mm]よりも広い幅で取り除く必要があり、製品の収率を落とすことになる。
また特に、長尺のシートに連続的に金属化合物薄膜を成膜する場合、巻き取った薄膜付シートロール体のシート幅方向の中央部と端部において、巻取ロール体の直径に差ができてしまう。例えば5[μm]のプラスチックフィルムに酸化アルミニウム薄膜を膜厚100[nm]で蒸着した場合、端部の膜厚は中央部に比べ、10〜20[nm]の差を生じる場合がある。この膜厚の差が生じたまま、10,000[m]の長さを蒸着し、コアに巻き取ると、巻取ロール体の直径はシート幅方向において120〜250[μm]程度の差が生じる計算となるが、この差が大きいと巻取ロール体の周方向にシワが生じることになる。またその他にも、この巻取ロール体を使用してシートを高張力下で巻き返しながらドライコーティングやウェットコーティングを行う工程で、前述の幅方向の直径分布に起因するシート幅方向の湾曲が生じ、コーティングムラを引き起こすこともあった。特に、このような巻取ロール体の直径の差が、ロール体幅方向の中央寄りにまで及ぶ場合、具体的には端部から100[mm]の位置より内側で100[μm]以上の差が生じる場合には、前述のシワや搬送時の湾曲が顕著になる。このように端部の膜厚低下が原因となって、さらにシワなどの2次的欠陥を発生してしまう場合があった。
なお、特許文献7には、蒸発源の直上に蒸気流の拡散方向を規制制御する蒸気拡散制御手段を設け、その蒸気拡散制御手段を通過して飛散する蒸気流に向けて、酸素ガスを吹き付けることにより、坩堝からの金属蒸気を効率よくシート上に飛来させ成膜するという方法が開示されている。しかしながら、この方法においても、膜厚を上げたり速度を上げると、金属蒸気が蒸気拡散制御手段を通過した位置において、導入した酸素と金属蒸気が過密な状態になり、外部に拡散するため、結局端部の膜厚が薄くなってしまう場合がある。また特許文献8および特許文献9には、蒸発源とシート案内面との間に蒸発方向に筒状に延びる遮蔽筒を設けて、金属蒸気がシートに入射する角度を規制することにより、蒸着フィルムのガスバリア性を向上させたり、磁性体蒸着膜の保持力を向上させる方法が開示されている。しかしながら、この場合はシートに付着する金属蒸気を制限することになり、蒸発材料の使用効率を下げてしまう場合がある。その効率低下に伴い、目標の膜厚を得るために速度を下げたり、あるいは蒸発源への投入電力を上げたりする必要があり、生産性や生産コストを悪化させる場合がある。
このように従来技術では、シート幅方向端部と中央部とで同等の厚みを有し、かつ、均等に酸化されている厚い膜(例えば厚さ50〜300nm)を高速で成膜することは困難であった。
特開昭62−103359号公報 特開2001−192808号公報 特開昭62−275316号公報 特開2003−129229号公報 特開2007−226943号公報 特開平10−046323号公報 特開平10−105965号公報 特開平6−306607号公報 特開平6−111295号公報
伊保内賢他著、「ポリマーフィルムと機能性膜」、技報堂出版、1991年4月発行、p198〜203
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑み、特に厚い膜であっても均質に金属と反応ガスが反応しかつシート幅方向の膜厚が均一な金属化合物薄膜付シートを高速で製造することができる装置ならびに方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明は、以下の(1)〜(10)のいずれかの構成を特徴とするものである。
(1)シートと接触しながら前記シートを搬送するシート案内面を有し、前記シート案内面の運動に伴って前記シートを搬送する搬送手段と、前記シート案内面上の前記シートに向かって金属蒸気を飛散させる蒸発源と、前記金属蒸気と反応させるためにガスを導入する反応ガス導入手段と、前記金属蒸気がシートに到来する領域を制限するマスクとを備え、搬送される前記シートに連続的に金属化合物薄膜を形成する金属化合物薄膜付シートの製造装置であって、前記蒸発源と前記シート案内面とを結ぶ直線方向に関し、前記反応ガス導入手段により導入されたガスと前記蒸発源から飛来した金属蒸気とが混在する位置に、前記金属蒸気がシート幅方向の外部に拡散することを防止する拡散防止手段を設けてなることを特徴とする金属化合物薄膜付シートの製造装置。
(2)前記拡散防止手段が一対の壁状構造物であり、かつ前記壁状構造物が前記蒸発源のシート幅方向端部よりも内側に張り出していることを特徴とする、前記(1)に記載の金属化合物薄膜付シートの製造装置。
(3)前記シート案内面と前記蒸発源との最短距離をD[m]とすると、前記蒸発源と前記シート案内面とを結ぶ直線方向に関し、前記壁状構造物の長さが0.5D[m]以上であることを特徴とする、前記(2)に記載の金属化合物薄膜付シートの製造装置。
(4)前記マスクの開口部のシート幅方向の長さをA[m]、前記一対の壁状構造物の最短間隔をC[m]としたときに、以下の式を満たすことを特徴とする、前記(2)または(3)に記載の金属化合物薄膜付シートの製造装置。
A<C≦1.2A
(5)前記反応ガス導入手段は、前記蒸発源と前記シート案内面とを結ぶ直線方向に関し、前記壁状構造物が存在する位置にガス導入口を有していることを特徴とする、前記(2)〜(4)のいずれかに記載の金属化合物薄膜付シートの製造装置。
(6)前記拡散防止手段が、ガス供給手段および壁状構造物であり、該壁状構造物が前記ガス供給手段のシート幅方向における外側に設けられてなることを特徴とする、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の金属化合物薄膜形成装置。
(7)前記(1)〜(6)のいずれかに記載の装置を用い、前記蒸発源から前記シートに向けて金属蒸気を飛来させると同時に、前記金属蒸気内にガスを導入し、前記シート上に連続的に金属化合物薄膜を形成することを特徴とする金属化合物薄膜付シートの製造方法。
(8)前記金属がアルミニウムであり、前記ガスが酸素であり、前記金属化合物薄膜が酸化アルミニウム膜であって、前記酸化アルミニウム膜の成膜レートが400[nm/秒]以上であることを特徴とする、前記(7)に記載の金属化合物薄膜付シートの製造方法。
(9)前記金属化合物薄膜の膜厚が50〜300[nm]の範囲内であること特徴とする、前記(8)に記載の金属化合物薄膜付シートの製造方法。
(10)前記(7)〜(9)のいずれかに記載した方法で、シートの両面に金属酸化物薄膜を形成することを特徴とする両面金属化合物薄膜付シートの製造方法。
(11)厚みが10[μm]以下でかつフィルム幅W[mm]が1000[mm]以上であるプラスチックフィルムの少なくとも片面に膜厚50[nm]以上の金属化合物薄膜が成膜された薄膜膜付きフィルムをコアに巻いてなるフィルムロール体であって、巻き長10000[m]あたり、フィルム幅方向に関し、ロール体最大直径との差が100[μm]以内であるロール体直径を有する範囲が、W−100[mm]以上連続して存在することを特徴する金属化合物薄膜付フィルムロール体。
ここで、本発明において適用されるシートとして代表的なものには、プラスチックフィルムや紙等のシートがある。特にプラスチックフィルムは本発明において好適に用いられる。プラスチックフィルムの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類や、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、アラミド、ナイロンなどの高分子プラスチックフィルムが例示できる。また、プラスチックフィルムは単層でもよく、また2層以上の積層体フィルムでもよい。また、本発明に適用されるシートとしては金属箔でもよく、銅箔、アルミ箔、ステンレス箔などが例示できる。
本発明において、金属化合物薄膜の形成方法としては、真空蒸着法、イオンプレーティング法が挙げられる。中でも真空蒸着法は、成膜レートが数百[nm/秒]の高速成膜が可能であり、好適である。真空蒸着法の蒸発源においては、材料を加熱する方法として、誘導加熱方式の他、抵抗加熱方式、電子ビーム加熱方式などあるが、いずれでも適用可能である。特に電子ビーム加熱方式は、シート幅方向において蒸発量を制御しやすいため、幅方向に均一な金属化合物薄膜を得る方法として最も適した方式である。
本発明において「蒸発源」とは、薄膜の材料となる金属材料を溶融させる容積部分を指す。この蒸発源の周囲に金属材料を収容する容器、断熱材、材料供給装置、加熱用ヒータなどが配置されるが、この蒸発源を加熱する方式により、適宜好適なものが選択されるものであり、特に限定するものではない。
本発明において「成膜レート」とは、シート成膜領域において、シート表面に金属化合物が堆積していく速度のことを指し、具体的にはシートの搬送速度をv[m/秒]、シート表面に堆積した金属化合物薄膜の膜厚をd[nm]、シート成膜領域のシート搬送方向の長さをL[m]としたときに、次式で表される値のことを指す。
(成膜レート)[nm/秒]=(v×d)/L (i)
本発明において「シート案内面」とは、シート上に薄膜を形成する際に、シートの薄膜形成面とは反対の面に接触しながらシートを搬送する薄膜形成装置の構成要素をいう。この「シート案内面」は主にシートをシワなく搬送する役目と、シートが受けた熱を効率よく逃がす役目を持つ。代表的なものとしては、後述する図1に示すように円筒形状のもので、軸を中心に回転しながらシートを搬送するものがある。また特に円筒形状に限らず、ベルト体の上にシートを搬送する方式のものも知られているが、本発明においてはいずれのものでも有効である。
本発明において、「前記蒸発源と前記シート案内面とを結ぶ直線方向に関し、前記反応ガス導入手段により導入されたガスと前記蒸発源から飛来した金属蒸気とが混在する位置」とは、酸素ノズル等の反応ガス導入手段の開口部の向きが、前記直線方向に関し垂直またはシート案内面側に向いているときは、前記直線方向に関し前記開口部よりシート案内面までの範囲を意味する。また酸素ノズル等の反応ガス導入手段の開口部の向きが、前記直線方向に関し蒸発源側に向いているときは、前記直線方向に関し蒸発源よりシート案内面までの範囲を意味する。
本発明においては、金属材料を蒸発させて、その蒸気雰囲気に酸素などの反応ガスを導入して金属化合物の薄膜を設けるが、その金属材料としては、目的の特性が得られれば特に問わないが、アルミおよび/または銅を主体とする材料が、融点も低温であり、安価な材料であるため好適に用いられる。また酸化アルミニウム膜、酸化銅膜はその特性上、ガスバリア性、剛性、熱膨張特性、生産性などが良好であり好ましく用いられる。その他の材料としては、Zn、Sn、Ni、Ag、Co、Fe、Mn、Mg、In、Tiなどの金属も挙げられる。これらの材料の中には酸化物が半導体の性能を有するものとなるSn、Mg、Inなどの材料、またはこれらの合金材料もあるが、薄膜付きシートの用途によって適宜選択されるものであり、本発明の適用を限定するものではない。また反応ガスに酸素を用いる金属酸化物が代表的であるが、窒素を用いる金属窒化物や、炭酸ガスや有機系ガスを用いる金属炭化物にも適用できる。
本発明によれば、後述の実施例と比較例との対比からも明らかなように、たとえば50〜300[nm]という比較的厚い金属化合物薄膜であっても、均質な金属化合物薄膜をシート幅方向にわたってほぼ一定の膜厚で有する金属化合物薄膜付シートを製造できる。
本発明の製造装置の一実施態様を示す巻取式真空蒸着装置の概略構成図である。 本発明の製造装置の一実施態様を示す巻取式真空蒸着装置の概略構成図である。 本発明の製造装置の一実施態様を示す巻取式真空蒸着装置の概略構成図である。 本発明の製造装置の一実施態様を示す巻取式真空蒸着装置の概略構成図である。 本発明の製造装置の一実施態様を示す巻取式真空蒸着装置の概略構成図である。 本発明の製造装置の一実施態様を示す巻取式真空蒸着装置の概略構成図である。 本発明の製造装置の一実施態様を示す巻取式真空蒸着装置の概略構成図である。 従来の巻取式真空蒸着装置の一例を示した概略構成図である。 従来の巻取式真空蒸着装置の一例を示した概略構成図である。 実施例1で成膜した酸化アルミニウム膜の厚み方向の組成分析結果である。 実施例2で成膜した酸化アルミニウム膜の厚み方向の組成分析結果である。 比較例1で成膜した酸化アルミニウム膜の厚み方向の組成分析結果である。 蒸気拡散防止壁を設ける位置の一例を示す巻取式真空蒸着装置の概略構成図である。 蒸気拡散防止壁を設ける位置の一例を示す巻取式真空蒸着装置の概略構成図である。 蒸気拡散防止壁を設ける位置の一例を示す巻取式真空蒸着装置の概略構成図である。 蒸気拡散防止壁を設ける位置の一例を示す巻取式真空蒸着装置の概略構成図である。 実施例1で得られたる酸化アルミニウム膜付きフィルムのロール体の幅方向の直径分布を示す図である。 実施例2で得られたる酸化アルミニウム膜付きフィルムのロール体の幅方向の直径分布を示す図である。 比較例1で得られたる酸化アルミニウム膜付きフィルムのロール体の幅方向の直径分布を示す図である。
以下、本発明の最良の実施形態の例を巻取式蒸着装置に適用した場合を例にとって、金属化合物で代表的な、酸素と金属を反応させながら蒸着する金属酸化物薄膜の形成について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の製造装置の一実施態様を示す巻取式蒸着装置の概要構成図であり、主要部のみを示し、構造物を収納する真空チャンバや中間ロール、原反ロール体や蒸着ロール体は省略してある。また、図2は、図1の左手から見た装置の概略断面図である。なお、従来例と同一または同等の機能を有する構成要素には同一番号を付け、詳細な説明を省略する。
図1に示す巻取式蒸着装置には、シート1と接触しながらシート1を搬送するシート案内面3を有し、シート案内面3の運動に伴って1シートを搬送する、円筒状の金属製キャン等の搬送手段と、シート案内面3上のシート1に向かって金属蒸気を飛散させる坩堝7(蒸発源)が設けられている。シート案内面3と坩堝7との間には、金属蒸気と酸化反応させるための酸素を導入する酸素導入手段(反応ガス導入手段)が設けられ、また、シート1の表面に金属粒子が飛来する領域を制限し、余分な場所に金属蒸気が付着しないように、幅方向マスク11aが設けられている。さらに幅方向マスク11aと坩堝7との間の金属蒸気と酸素とが混在する高さ(すなわち、シート案内面と蒸発源とを結ぶ直線方向に関し、酸素導入手段により導入された酸素と蒸発源から飛来した金属蒸気とが混在する位置)のシート幅方向端部には、金属蒸気がシート幅方向の外側に拡散することを防ぐための一対の蒸気拡散防止壁20(壁状構造物)が設けられている。酸素導入手段は複数個の導入管15がシート幅方向に配列され構成されるとともに、それら複数個の導入管15は、図の上下方向において蒸気拡散防止壁20が存在する位置に酸素導入口が位置するように配置されている。
このような装置において、図2に示すように、長尺のシート1が、原反ロール体2から連続的に繰り出され、シートの走行方向に沿って回転する円筒状の金属製キャンの表面であるシート案内面3に中間ローラ4、5によって決まる所要の巻き付け角で、巻付点33から剥離点32まで巻き付いた状態で搬送され、その後中間ローラ5を介して巻き取られ、巻取ロール体6を形成する。
このとき、坩堝7の中にある金属の蒸着材料8を蒸発させると同時に、導入管15より坩堝7から蒸発する金属蒸気10の領域内に酸素を導入する。これにより、シート1がシート案内面3上に搬送される際に、走行方向マスク11bで制限される成膜開始点30から成膜終了点31の間の領域において、坩堝7の中にある蒸着材料8より蒸発した蒸気10がシート1上に付着し、シート1上に薄膜13が形成されるが、かかる薄膜13は、導入管15より金属蒸気10の領域内に導入された酸素により、金属酸化物となる。すなわち、シート1の表面には金属酸化物の薄膜13が形成される。
なお、金属を溶融して蒸発する方法としては、例えば誘導加熱や抵抗加熱の原理を利用して蒸着材料を加熱する高周波誘導加熱法、抵抗加熱法や、電子ビームを蒸着材料に照射して加熱する電子ビーム法などがある。金属酸化物膜の厚膜化のためには、高周波誘導加熱法、電子ビーム法が好ましく用いられ、高融点材料、例えば1500[℃]以上の融点材料であれば電子ビーム法が好ましく用いられる。
また、シート案内面3は主にシート1をシワなく搬送する役目と、シート1が受けた熱負荷を効率よく逃がす役目を持つ。このため例えば公知の熱媒体の循環による温度制御により、所要の温度に制御する。具体的には、エチレングリコールやシリコーンオイルなどの冷媒を利用して、たとえば−20[℃]程度に冷却する。また特に円筒に限らず、ベルト体の上にシートを搬送する方式も適用できる。
そして、金属酸化物薄膜は、シートの片面のみに形成してもよいが、シートの両面に形成することで、例えば磁気テープ用のベースフィルムに使用可能な、強度や寸法安定性を持つシートとなる。
このような本発明と図8に記載した先行技術との大きな相違点は、本発明においては、例えば図1、図3に示すように、シート案内面3と坩堝7との間の金属蒸気と酸素などの反応ガスとが混在する領域高さに、金属蒸気がシート幅方向の外部に拡散することを防止する蒸気拡散防止壁20が設けられている点である。
例えば膜厚50[nm]以上の金属酸化物薄膜を150[m/分]以上のシート搬送速度で成膜する場合、蒸発源からの金属蒸気密度は比較的高い条件となる。このような高い蒸気密度で金属を蒸発させる場合、一般的に、坩堝7の直上の圧力と、それ以外の部分の圧力との差により、蒸気はより圧力の低い坩堝直上の外側に拡散しやすくなる。特に坩堝7の直上においては、シート幅方向端部の外側の領域に圧力の低い空間があり、金属蒸気は比較的拡散しやすいため、特にシートの幅方向端部は金属蒸気が堆積しにくくなる。しかしながら、本発明においては、金属蒸気がシート幅方向の外部に拡散することを防止する蒸気拡散防止壁を設けることにより、薄膜形成に寄与しない領域へ金属蒸気が拡散することを防ぐことができるため、シート幅方向の中央部と端部とでほぼ同等の効率で、シート上に金属酸化物を堆積させることが可能となる。
かかる蒸気拡散防止壁20の高さ方向の配置としては、酸素導入手段である導入管15によって導入される酸素と坩堝7から飛来する金属蒸気とが混在する領域に配置される。導入管15の開口部16から放出された酸素は、導入管15の向きに沿って飛翔する。飛翔した酸素は、坩堝7から飛来した金属蒸気と衝突しながら、あるいは金属蒸気と反応しながらシート案内面3上のシート1の表面に飛来し、金属酸化物薄膜が形成される。そのためここで言う金属蒸気と酸素とが混在する領域とは、酸素と金属蒸気が衝突する領域からシート案内面3上のシート1表面に至る領域までを意味する。
また、蒸気拡散防止壁20のシート幅方向における配置としては、金属蒸気のシート幅方向における両端部、すなわち、蒸発源とシート案内面との間に飛翔している金属蒸気領域の両端部である。かかる領域は、具体的に、シート幅方向における幅方向マスク11aと坩堝7との間の領域となり、少なくともその蒸気拡散防止壁20の一部が、坩堝7の実質的に金属が蒸発している幅よりも内側で、かつマスクの開口部12よりも外側に存在することが好ましい。より好ましくは、図1に示すように、一対の蒸気拡散防止壁20が蒸発源である坩堝7のシート幅方向端部から内側に向かって張り出すような形態が好ましい。
具体的には、シート幅方向に関し、マスクの開口幅をA[m]、図1に示す一対の蒸気拡散防止壁20の間隔(最短距離22)をC[m]としたときに、A≦C≦1.2Aの関係を満足することが好ましい。加えて、実質的に金属が蒸発している幅をB[m]とすると、Bが、A≦B≦1.5×Aを満足する範囲内であり、かつCは、A≦C≦Bの範囲内であることが望ましい。Bについては1.5Aを越えるとシート幅方向端部の膜厚は低下しにくくなるが、マスク等に付着する金属材料が増大し、材料の使用効率が悪くなるため好ましくないためである。より好ましくは、図1に示すように、蒸発源である坩堝7のシート幅方向端部から一対の蒸気拡散防止壁20が内側に向かって張り出すような形態が好ましい。このような張り出し部を設けることにより、成膜されるシート1の表面近傍で金属蒸気や酸素ガスがより拡散しにくくなり、効率のよい端部の膜厚均一化においてより効果的である。そして、張り出し部は、坩堝7とシート案内面3との間において最もシート案内面側に位置し、かつ両端の蒸気拡散防止壁20の張り出し部の間隔、すなわち、両端に設けた蒸気拡散防止壁の最短距離C[m]が上述したようにA≦C≦1.2Aの範囲であることが好ましい。蒸気拡散防止壁の最短距離Cがマスクの開口幅Aより小さいと、シートに付着する蒸気量を阻害してしまう場合がある。また1.2Aよりも大きいと、シートに付着しない金属蒸気や酸素ガスが増大し、金属材料や酸素導入量の使用効率の点で不利となる場合がある。
またシート案内面3と坩堝7とを結ぶ直線方向において、蒸気拡散防止壁20が存在する範囲は、シート案内面と蒸発源との最短距離Dの5割以上を占めることが望ましい。5割未満の場合は、蒸気拡散防止壁20と幅方向マスク11aとの間、および/または蒸気拡散防止壁20と坩堝7との間の隙間からシート幅方向の外側に金属蒸気や酸素が拡散してしまい、結果的にシート幅方向端部の膜厚が中央部に対し薄くなってしまう場合がある。
なお、実質的に金属が蒸発している幅とは、坩堝7内の蒸着材料8に対して蒸発のためのエネルギーを投入している領域の幅のことを指す。例えば電子銃により蒸発させる場合は、坩堝内の金属材料に電子線を照射している領域を指す。蒸発している幅よりも内側に一対の蒸気拡散防止壁20を配置することにより、圧力の低い領域を極力少なくすることができる。蒸気拡散防止壁20を幅方向マスク11aの開口部12より外側にすることは、幅方向マスク11a以外に邪魔する構造物がなく金属蒸気10をシート1に堆積させることを意味し、開口部12の範囲内でより均一な膜厚分布を得やすい構造と言える。そして、幅方向マスク11aと蒸気拡散防止壁20が一体の構造物でもよい。
また、上述したような高い蒸気密度の金属蒸気と酸素とを反応させ、かつ薄膜の厚み方向に均一な酸化度合いの薄膜を形成するには、金属蒸気領域の内部まで酸素を均一に導入させる必要がある。本発明者らの知見によれば、金属蒸気領域の内部にまで酸素を行き届かせやすいノズルとして、図2に示すように坩堝7とシート案内面3との間の領域に向けて管状形状の先端を有する導入管15を設けることが適している。さらに薄膜の厚み方向に均一な酸化度合いの金属酸化物薄膜を形成するために、蒸発源のシート搬送方向に関する上流側および下流側の両方に、前述の導入管15を配置することが好ましく、加えてシート幅方向に均一な酸化度合いの金属酸化物薄膜を得るために、シート幅方向に複数の導入管15を配置した方が好ましい。しかし、このような導入管で金属蒸気領域の内部に酸素ガスを導入すると、金属蒸気と酸素ガスとが混在し、さらに気体粒子の密度が高くなり、外部に拡散しやすい状態となる。そのため、酸素と金属蒸気が混在する領域には蒸気拡散防止壁を配置することが好ましい。このとき、蒸気拡散防止壁20は、蒸発源である坩堝7とシート案内面3とを結ぶ直線方向に関して、導入管の開口部16が存在する位置100に(例えば図13、図14)、および/または、その導入管の開口部16が向いている側に(例えば図15、図16、)、配置することが好ましい。
さらに、蒸気拡散防止壁20は、金属蒸気10のシート1への入射角度を規制しないものであることが好ましい。すなわち、シートの走行方向には平行な壁面が存在するものの、シートの走行方向に交差する方向には実質的な壁面が存在しないものであることが好ましい。シートの走行方向に交差する方向に壁面がある蒸気拡散防止壁では、金属蒸気10のシート1への付着効率を低くしてしまい、本発明の目的である高速に成膜することを阻害してしまう場合がある。また本発明者らの知見によれば、特にガスを導入して金属蒸気10と反応させる金属化合物の蒸着の場合、例えば四方を蒸気拡散防止壁で囲んでしまうと、その内部で蒸気やガスが滞留し、蒸発源7からの金属蒸気10の蒸発を妨げてしまい、結果的に成膜レートを低下させてしまう場合がある。そのため、シートの走行方向に交差する方向に実質的な壁面を有する蒸気拡散防止壁は設けず、成膜に使われなかった余分な金属蒸気やガスを真空ポンプで排気することにより、金属蒸気を効率よくシート案内面の方向に飛翔させることが好ましい。なお、本発明においてシート幅方向の端部における蒸気拡散防止壁20は、金属蒸気10や導入するガスの拡散のしやすさをシート幅方向で平均化する目的で設置するものであり、その意味でもシートの走行方向に交差する壁面は必要ではない。
本発明においては、一対の蒸気拡散防止壁の代わりに一対のガス供給手段を拡散防止手段として設けてもよい。すなわち、坩堝より蒸発する金属蒸気のシート幅方向両端部にガスを導入することにより、実質的に金属が蒸発している領域の外側の領域の圧力が上がり、坩堝7から蒸発する金属蒸気10が外側に拡散しにくくなるため、蒸気拡散防止壁を設けた場合と同じ効果が得られる。具体的には、例えば図4に示すように、蒸気拡散防止用ガスノズル21を、坩堝7のシート幅方向両端部に、上方の幅方向マスク11aまたはシート案内面3上のシート1に向けて設ける。こうすることにより、金属蒸気領域の外側にもガス粒子が結果的に存在することになり、両者が衝突して金属粒子が外側に拡散することを防ぐ効果がある。酸化金属薄膜を蒸着する場合には、この蒸気拡散防止用ガスとしては、金属蒸気と反応して酸化金属となる酸素、あるいは金属蒸気とは反応しないヘリウム、アルゴンなどの希ガスが好ましい。
そして、図5に示すように、一対の蒸気拡散防止壁20と一対のガス供給手段(蒸気拡散防止用ガスノズル21)とを併用する場合には、蒸気が外側に向かって拡散しにくくなる他、蒸気拡散防止壁20に堆積する金属蒸気の量が減るため、蒸気拡散防止壁20の堆積金属を除去する手間を軽減できる。なお、この場合は、シート幅方向において蒸気拡散防止壁20を蒸気拡散防止用ガスノズル21の外側に設けることが好ましい。
本発明においては以上のような装置、方法にて蒸発源からシートに向けて金属蒸気を飛来させると同時に、金属蒸気内に酸素などの反応ガスを導入し、シート上に連続的に金属化合物薄膜を形成するが、かかる金属としては上述したような材料を用いることができ、特にアルミニウムを用いて酸化アルミニウム膜の薄膜を形成することが好ましい。
さらに本発明者らは、酸化アルミニウム膜などの金属酸化物薄膜を形成する場合に蒸気拡散を防止する効果を発揮する最適な金属蒸気密度、および蒸発源の大きさやシートの成膜領域の大きさを検討した。その結果、金属酸化物薄膜の成膜レートが400[nm/秒]以上である成膜条件においては、拡散防止の対策がないときにシート幅方向の端部の膜厚が、中央の膜厚と比較して5%以上低下する現象が見られることがあることが判明した。このレベルはシートを巻き取ったときの巻状物の外形が幅方向の端部と中央部で有意差として認識されるレベルであり、このような点で蒸気拡散防止手段の効果を発揮する好適な対象と言える。さらに好ましくは、金属酸化物薄膜の成膜レートが600〜1000[nm/秒]の範囲における適用がよい。成膜レートが600[nm/秒]より大きくなる場合は、シート幅方向の端部の膜厚が、中央の膜厚と比較して10%以上低下する現象が見られ、このレベルになるとシート1枚でも膜厚や薄膜の物性において、幅方向の中央部と端部で有意差として認識されるレベルであり、蒸気拡散防止の効果を発揮するさらに好適な対象といえる。一方、成膜レートが1000[nm/秒]を越える場合は、金属蒸気や酸素ガスの密度が過度に大きくなり、成膜室の圧力が上がってしまう場合がある。
そして、本発明は、膜厚方向に均一な酸化度を形成しにくかった比較的膜厚の厚い成膜において、シート幅方向の薄膜の物性、例えばガスバリア性や薄膜の剛性など、を端部まで均一に発現させる点で特に有効であり、具体的には膜厚50[nm]以上の金属酸化物薄膜の形成の場合に好適である。一方膜厚が300[nm]よりも厚くなると、幅方向マスク11aや蒸気拡散防止手段の影響によりシートに入射する金属蒸気や反応ガスの入射角度が、特にシート幅方向の端部で偏ってしまい、中央部と端部とで薄膜の物性に差が出る可能性があり、本発明の効果が薄くなり好適な対象とはいえなくなる。
また酸化金属薄膜が堆積する速度のパラメータとして、シートの搬送速度[m/分]と薄膜の膜厚[nm]をかけた、ダイナミックレート[nm・m/分]というパラメータが用いられるが、膜厚50〜300[nm]の金属酸化物薄膜を成膜する場合、このダイナミックレートにおいては10000〜30000[nm・m/分]が本発明に好適な成膜条件となる。
以上のような本発明によれば、電気絶縁性シートなどのシートの両面に均質な金属酸化物薄膜を形成することができ、例えば磁気テープ用のベースフィルムに使用可能な、強度や寸法安定性を持つ両面金属酸化物薄膜付シートを高速で得ることができる。
なお、上述したように連続的に得られる金属化合物薄膜付シートはロール体に巻き取られる。具体的には、例えば厚みが10[μm]以下でかつフィルム幅が1000[mm]であるプラスチックフィルムの少なくとも片面に膜厚50[nm]以上の酸化アルミニウム薄膜を成膜した酸化アルミニウム薄膜付フィルムは外径80〜200[mm]のコアに巻きつけることでフィルムロール体となる。このとき、フィルムロール体におけるシワの発生を防ぐためには、巻き長10000[m]あたりのフィルムロール体の直径のシート幅方向における最大−最小値の差が100[μm]以内であることが好ましいが、本発明においては、薄膜の厚みがたとえ50[nm]以上という厚さであってもシート幅方向にわたってほぼ一定の膜厚で薄膜を形成することができるので、フィルムロール体においてもフィルム幅方向に一定範囲の直径を有するものとすることができ、シワの発生を防ぐことができる。また、仮にフィルムロール体の直径のシート幅方向における最大−最小値の差が100[μm]を超えていたとしても、ロール体最大直径との差が100[μm]より大きくなる範囲が、ロール体の幅方向端部から100[mm]の位置より外側であれば、ロール体の周方向に発生するシワや、後工程におけるコーティングムラの原因となる搬送シートの湾曲も発生しにくくなる。すなわち、フィルム幅方向において巻き長10000[m]あたりのロール体最大直径との差が100[μm]以内となる範囲が、W−100[mm]以上連続して存在するものであれば、フィルムロール体の周方向にシワが生じることを防ぐことができる。
本実施例で用いた測定法を下記に示す。
(1)金属酸化物薄膜の厚み、および薄膜の断面構造
幅1100[mm]のシート幅方向端部から50mmの位置を始点として、100mm毎に、下記条件にて金属酸化物薄膜の断面観察を行い、両端の測定点を除く中央の各領域について得られた合計9点の薄膜の厚み[nm]の平均値を算出し、両端の測定点の薄膜の厚み[nm](数値の小さい側)と比較した。
測定装置:透過型電子顕微鏡(TEM)H−7100FA型 日立製
測定条件:加速電圧 100[kV]
測定倍率:20万倍
試料調整:超薄膜切片法
観察面 :TD−ZD断面
測定回数:1視野につき3点、3視野を測定した。
(2)表面抵抗値
表面抵抗値の範囲によって、測定可能な装置が異なるため、まずI)の方法で測定を行い、表面抵抗値が低すぎて測定不可能なサンプルをII)の方法で測定した。5回の測定結果の平均値を本発明における表面抵抗値とした。
I)高抵抗率測定
JIS−C2151(1990)に準拠し、下記測定装置を用いて測定する。
測定装置:デジタル超高抵抗/微小電流計R8340 アドバンテスト(株)製
印加電圧:100[V]
印加時間:10秒間
測定単位:Ω
測定環境:温度23℃湿度65%RH
測定回数:5回測定する。
II)低抵抗率測定
JIS−K7194(1994)に準拠し、下記測定装置を用いて測定する。
測定装置:ロレスターEP MCP−T360 三菱化学製
測定環境:温度23℃湿度65%RH
測定回数:5回測定する。
(3)薄膜付シートの全光線透過率
スガ試験機株式会社製の”ヘーズコンピュータHZ−1”装置にて、サンプルをセットして、全光線透過率を測定した。5回の測定を行い、その平均値を本発明における全光線透過率とした。
(4)酸素導入量の測定方法
金属蒸気内に酸素を供給するための導入管に、下記のマスフローコントローラを介して酸素を供給するよう配管し、そのマスフローコントローラの流量を調整して、インラインの光学モニタが所望の透過率になったときの流量表示値を読みとった。
マスフローコントローラ:アドバンスドエナジー社製Aera@FC−7710CD
校正ガス:酸素
最大流量:40[l/分]。
(5)薄膜付シートロール体の直径の測定方法
巻き取った薄膜付シートロール体を、特開2004−286563号公報に記載の3点の接触式変位センサーを用いた測定方法で、ロール体の軸方向にセンサーを相対移動させて、ロール軸方向のフィルムロール体の直径変化量[μm]を計測した。ロール体の全幅において測定で得られたプロファイルから、直径変化量の最大値となる点を求め、そこから幅方向の拡がりにおいて、最大/最小差が100[μm]以内を維持する範囲を算出した。
[実施例1]
電気絶縁性シートとしての厚さ5[μm]、幅1100[mm]のポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製「ルミラー」)の片面に、図1、図2、図7に示す巻取式真空蒸着装置を用い、以下に示す蒸着条件で蒸着した。
(蒸着条件)
・蒸発源の容器:アルミナ製坩堝
・蒸発源加熱方式:電子銃による加熱
・蒸発材料 :アルミニウム
・電子銃の投入パワー:60[kW]
・蒸発源とシート案内面との最短距離:450[mm]
・フィルム搬送方向のマスク開口長:400[mm]
・フィルム幅方向のマスク開口長:1000[mm]。
(フィルム搬送条件)
・搬送速度 :150[m/分]
・フィルム幅:1100[mm]。
(シート案内面条件)
図1に示すように円筒形のシート案内面を使用した。このシート案内面の内部には、シート案内面の表面の温度を調整するための媒体が循環され、装置外部の冷媒循環装置から一定温度の媒体が導入されている。各条件は以下の通り。
・円筒形シート案内面の直径:1000[mm]
・シート案内面内部に流す媒体温度:−20[℃]。
(酸素供給手段条件)
図2に示すように、蒸発源とシート案内面との間の領域に向けて配置した丸断面形状の導入管を下記の条件で配置した。
・導入管15の内径:4[mm](内側断面積:約12.6[mm])
・導入管15の外径:6[mm]
・導入管15の直線部の長さ:30[mm]
・蒸発源の坩堝上面から導入管の開口部までの距離:200[mm]
・導入管15の向き:金属蒸気側に水平方向
・シート幅方向の導入管の本数:20本
・シート幅方向の導入管の間隔:50[mm]の等間隔(両端の導入管の間隔は950[mm])。
(蒸気拡散防止壁の条件)
図1に示すように、蒸発源である坩堝7と幅方向マスク11aとの間に、ステンレス製の蒸気拡散防止壁を下記の条件で設けた。
・シート走行方向の蒸気拡散防止壁の長さ:300[mm]
・坩堝7から蒸気拡散防止壁の最高部までの高さ:400[mm]
・坩堝7から蒸気拡散防止壁の最低部までの高さ:50[mm]
・坩堝7とシート案内面とを結ぶ直線方向における蒸気拡散防止壁の長さ:350[mm]
・蒸気拡散防止壁の最内側と坩堝7のシート幅方向端部の内壁との水平距離:200[mm]
・蒸気拡散防止壁の最内側とマスク開口部との水平距離:30[mm]。
(金属酸化物薄膜の形成)
未蒸着のフィルムロールを図7の原反ロール体2にセットし、中間ローラ4、シート案内面3、中間ローラ5にフィルムを沿わせて、巻取ロール体6にフィルム端部を貼り付けセットした。装置にはシート搬送方向に150[mm]、シート幅方向に1500[mm]の容積部分をもつアルミナ製の坩堝7が、坩堝7の長手方向がフィルム幅方向と同じになるように配置され、これに蒸着材料8としてアルミニウムを20[kg]セットした。その後、蒸着機の巻取室41aおよび成膜室41bを減圧し、成膜室41bの真空圧力が5×10−3[Pa]になるまで排気した。その後、シャッター部材51を閉じた状態にして電子銃加熱方式で坩堝7内のアルミニウムを溶かした。投入した電力は75[kW]であった。アルミニウム材料が全て溶融したことを確認した後、電子銃の電力量を微調整し約60[kW]にした。原反ロール体2の張力を140[N]、巻取ロール体6の張力を140[N]に設定し、シート案内面3と中間ローラ4、5の速度設定により150[m/分]の速度でフィルムの搬送を開始した。その後シャッター部材51を開側にして、アルミニウム蒸着を行った。この状態で成膜室41bの圧力は2.0×10−2[Pa]であった。その後、坩堝7のシート搬送方向に関する巻出側および巻取側の導入管15から酸素を28[l/分]で導入した。酸素を導入するに従い成膜室41bの圧力は3.0×10−2[Pa]となった。この状態で巻取側の監視窓53からフィルムを観察すると茶色がかった透明であった。透過率はシート幅方向に11個配列された光学モニタ52の平均値が30%であった。なお、この光学モニタには、光ファイバ式の透過型の光透過率計(光源の中心波長565[nm])を使用した。この状態で11000m分のフィルム巻取搬送を行い、酸化アルミニウム膜付きフィルムを形成した。その後、シャッター部材51を閉側にして酸素導入を止め、蒸発源加熱用の電子銃への電力供給を切った。そして搬送速度を5[m/分]まで下げ巻取室41aおよび成膜室41bの放圧を行った。
こうして成膜した酸化アルミニウム膜の膜厚は、TEMの断面観察の結果、幅方向の中央部の平均膜厚98[nm]、端部の膜厚92[nm]で、端部の膜厚の落ち込みは中央部の平均膜厚に対して6.1[%]であった。また、中央部の平均膜厚より上記(i)式から求めた成膜レートは、613[nm/秒]であった。この成膜後に取り出した蒸着済みフィルムの全光線透過率は53%であった。表面抵抗値は1.5×10 [Ω/□]であった。また、こうして得られた酸化アルミニウム膜付きフィルムの両端部を20[mm]ずつスリットして、幅1060[mm]、長さ10000[m]の酸化アルミニウム膜付きフィルムを直径167[mm]のコアに巻き返しロール体を得た。得られたロール体の幅方向の直径分布を測定した結果、ロール体直径の最大値との差が100[μm]以内である領域が幅方向中央部に990[mm]にわたって存在した。
蒸着済みフィルムの酸化アルミニウム膜のシート幅方向の膜厚分布測定結果を図10に、また、得られたロール体の直径分布を図17に示す。そして、この酸化金属薄膜付フィルムの蒸着条件および評価結果を表1にまとめる。
[実施例2]
図5、図6、図7に示す巻取式真空蒸着装置を用い、以下の点を変更した以外は実施例1と同様にして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製「ルミラー」)の片面に金属酸化物薄膜を形成した。
(蒸着条件)
・蒸発源の容器:アルミナ製坩堝
・蒸発源加熱方式:電子銃による加熱
・蒸発材料 :アルミニウム
・電子銃の投入パワー:60[kW]
・蒸発源とシート案内面との最短距離:450[mm]
・フィルム搬送方向のマスク開口長:400[mm]
・フィルム幅方向のマスク開口長:1000[mm]。
(蒸気拡散防止壁の条件)
図5に示すように、蒸発源である坩堝7と幅方向マスク11aとの間に、ステンレス製の蒸気拡散防止壁を下記の条件で設けた。
・シート走行方向の蒸気拡散防止壁の長さ:300[mm]
・坩堝7から蒸気拡散防止壁最高部までの高さ:400[mm]
・坩堝7から蒸気拡散防止壁最低部までの高さ:50[mm]
・坩堝7とシート案内面とを結ぶ直線方向における蒸気拡散防止壁の長さ:350[mm]
・蒸気拡散防止壁の最内側と坩堝7のシート幅方向端部の内壁との水平距離:150[mm]
・蒸気拡散防止壁の最内側とマスク開口部との水平距離:80[mm]。
(蒸気拡散防止用ガスノズルの条件)
図5、図6に示すように、蒸発源である坩堝7と幅方向マスク11aとの間で、かつ蒸気拡散防止壁20の内側に、蒸気拡散防止用ガスノズル21として、丸断面の導入管を下記の条件で配置した。蒸気拡散防止用ガスノズル21はシート幅方向の両側に配置した。
・蒸気拡散防止用ガスノズル21の内径:4[mm](内側断面積:約12.6[mm])
・蒸気拡散防止用ガスノズル21の外径:6[mm]
・蒸気拡散防止用ガスノズル21の開口部の向き:鉛直方向から45°の角度で、シート幅方向の内側の向き
・蒸気拡散防止用ガスノズル21の開口部数:6
・蒸気拡散防止用ガスノズル21の開口部配置:坩堝からの高さが100、200、300[mm]の位置となるように開口部を設けたノズルユニットを、シート搬送方向に坩堝の中心を対称に100[mm]の間隔を設けて配置する。
・導入ガス:酸素。
(金属酸化物薄膜の形成)
未蒸着のフィルムロールを図4の原反ロール体2にセットし中間ローラ4、シート案内面3、中間ローラ5にフィルムを沿わせて、巻取ロール体6にフィルム端部を貼り付けセットした。装置にはシート搬送方向に150[mm]、シート幅方向に1500[mm]の容積部分をもつアルミナ製坩堝7が、坩堝の長手方向がフィルム幅方向と同じになるように配置され、これに蒸着材料8としてアルミニウムを20[kg]セットした。その後、蒸着機の巻取室41aおよび成膜室41bを減圧し、成膜室41bの真空圧力が5×10−3[Pa]になるまで排気した。その後、シャッター部材51を閉じた状態で電子銃加熱方式で坩堝7内のアルミニウムを溶かした。投入した電力は75[kW]であった。アルミニウム材料が全て溶融したことを確認した後、電子銃の電力量を微調整し約60[kW]にした。原反ロール体2の張力を140[N]、巻取ロール体6の張力を140[N]に設定し、シート案内面3と中間ローラ4、5の速度設定により150[m/分]の速度でフィルムの搬送を開始した。その後シャッター部材51を開側にして、アルミニウム蒸着を行った。この状態で真空計10の圧力は2.0×10−2[Pa]であった。その後、坩堝のシート搬送方向に関する上流側および下流側の導入管15から酸素を26[l/分]で導入した。また蒸気拡散防止用ガスノズル21の酸素導入量は3[l/分]とした。酸素を導入するに従い成膜室41bの圧力は3.5×10−2[Pa]となった。この状態で巻取側の監視窓53からフィルムを観察すると茶色がかった透明であった。透過率はシート幅方向に11個配列された光学モニタ52の平均値が30%であった。この状態で11000[m]分のフィルム巻取搬送を行い酸化アルミニウム膜付きフィルムを形成した。その後、シャッター部材51を閉側にして酸素導入を止め、蒸発源加熱用の電子銃への電力供給を切った。そして搬送速度を5[m/分]まで下げ巻取室41aおよび成膜室41bの放圧を行った。
こうして成膜した酸化アルミニウム膜の膜厚は、TEMの断面観察の結果、幅方向の中央部の平均膜厚99[nm]、端部の膜厚96[nm]で、端部の膜厚の落ち込みは3.0[%]であった。また、中央部の平均膜厚より(i)式から求めた成膜レートは、619[nm/秒]であった。この成膜後に取り出した蒸着済みフィルムの全光線透過率は55%であった。表面抵抗値は2.7×10 [Ω/□]であった。また、こうして得られた酸化アルミニウム膜付きフィルムの両端部を20[mm]ずつスリットして、幅1060[mm]、長さ10000[m]の酸化アルミニウム膜付きフィルムを直径167[mm]のコアに巻き返しロール体を得た。得られたロール体の幅方向の直径分布を測定した結果、ロール体直径の最大値との差が100[μm]以内である領域が幅方向中央部に1010[mm]にわたって存在した。
蒸着済みフィルムの酸化アルミニウム膜のシート幅方向の膜厚分布測定結果を図11に、また、得られたロール体の直径分布を図18に示す。そして、この酸化金属薄膜付フィルムの蒸着条件および評価結果を表1にまとめる。
[比較例1]
電気絶縁性シートとしての厚さ5[μm]、幅1100[mm]のポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製「ルミラー」)の片面に、蒸気拡散防止手段のない図8、図9に示す巻取式真空蒸着装置を用いて、以下に示す蒸着条件で蒸着した。
(蒸着条件)
・蒸発源の容器:アルミナ製坩堝
・蒸発源加熱方式:電子銃による加熱
・蒸発材料 :アルミニウム
・電子銃の投入パワー:60[kW]
・蒸発源とシート案内面との最短距離:450[mm]
・フィルム搬送方向のマスク開口長:400[mm]
・フィルム幅方向のマスク開口長:1000[mm]。
(フィルム搬送条件)
・搬送速度 :150[m/分]
・フィルム幅:1100[mm]。
(シート案内面条件)
図9に示すように円筒形のシート案内面3を使用した。このシート案内面3の内部には、シート案内面の表面の温度を調整するための媒体が循環され、装置外部の冷媒循環装置から一定温度の媒体が導入されている。各条件は以下の通り。
・円筒形シート案内面の直径:1000[mm]
・シート案内面内部に流す媒体温度:−20[℃]。
(酸素供給手段条件)
図8に示すように、蒸発源とシート案内面との間の領域に向けて配置した丸断面形状の導入管を下記の条件で配置した。
・導入管15の内径:4[mm](内側断面積:約12.6[mm])
・導入管15の外径:6[mm]
・導入管15の直線部の長さ:30[mm]
・蒸発源の坩堝上面から導入管の開口部までの距離:200[mm]
・導入管15の向き:金属蒸気側に水平方向
・シート幅方向の導入管の本数:20本
・シート幅方向の導入管の間隔:50[mm]の等間隔(両端の導入管の間隔は950[mm])。
(金属酸化物薄膜の形成)
未蒸着のフィルムロールを図9の原反ロール体2にセットし中間ローラ4、シート案内面3、中間ローラ5にフィルム1を沿わせて、巻取ロール体6にフィルム端部を貼り付けセットした。装置にはシート搬送方向に150[mm]、シート幅方向に1500[mm]の容積部分をもつアルミナ製の坩堝7が、坩堝の長手方向がフィルム幅方向と同じになるように配置され、これに蒸着材料8としてアルミニウムを20[kg]セットした。その後、蒸着機の巻取室41aおよび成膜室41bを減圧し、成膜室41bの真空圧力が5×10−3[Pa]になるまで排気した。その後、シャッター部材51を閉じた状態で電子銃加熱方式で坩堝7内のアルミニウム8を溶かした。投入した電力は75[kW]であった。アルミニウム材料が全て溶融したことを確認した後、電子銃の電力量を微調整し約60[kW]にした。原反ロール体2の張力を140[N]、巻取ロール体6の張力を140[N]に設定し、シート案内面3と中間ローラ4、5の速度設定により150[m/分]の速度でフィルムの搬送を開始した。その後シャッター部材51を開側にして、アルミニウム蒸着を行った。この状態で成膜室41bの圧力は2.0×10−2[Pa]であった。その後、坩堝7のシート搬送方向に関する上流側および下流側のピンホール型ノズル20から酸素を32[l/分]で導入した。酸素導入に応じて成膜室41bの圧力は3.2×10−2[Pa]であった。この状態で巻取側の監視窓53からフィルムを観察すると茶色がかった透明であった。透過率はシート幅方向に11個配置した光学モニタ52の平均値が30%であった。この状態で11000[m]分のフィルム巻取搬送を行い酸化アルミニウム膜付きフィルムを形成した。その後、シャッター部材51を閉側にして酸素導入を止め、蒸発源加熱用の電子銃への電力供給を切った。そして搬送速度を5[m/分]まで下げ巻取室41aおよび成膜室41bの放圧を行った。
こうして成膜した酸化アルミニウム膜の膜厚は、TEMの断面観察の結果、幅方向の中央部の平均膜厚98[nm]、端部の膜厚82[nm]で、端部の膜厚の落ち込みは中央部の平均膜厚に対して16.3[%]であった。また、中央部の平均膜厚より(i)式から求めた成膜レートは、613[nm/秒]であった。この成膜後に取り出した蒸着済みフィルムの全光線透過率は61%であった。表面抵抗値は4.2×10 [Ω/□]であった。また、こうして得られた酸化アルミニウム膜付きフィルムの両端部を20[mm]ずつスリットして、幅1060[mm]、長さ10000[m]の酸化アルミニウム膜付きフィルムを直径167[mm]のコアに巻き返しロール体を得た。得られたロール体の幅方向の直径分布を測定した結果、ロール体直径の最大値との差が100[μm]以内である領域が幅方向中央部に860[mm]に亘って存在した。
蒸着済みフィルムの酸化アルミニウム膜のシート幅方向の膜厚分布測定結果を図12、また、得られたロール体の直径分布を図19に示す。そして、この酸化金属薄膜付フィルムの蒸着条件および評価結果を表1にまとめる。
Figure 2010196145
本発明は、電気絶縁性のプラスチックフィルムを対象とする真空蒸着に非常に好適であるが、紙や金属箔等のウェブの真空蒸着などにも応用でき、その応用範囲が、これらに限られるものではない。
1 シート
2 原反ロール体
3 シート案内面
4 中間ローラ(巻出側)
5 中間ローラ(巻取側)
6 巻取ロール体
7 坩堝(蒸発源)
8 蒸着材料
10 蒸気
11a 幅方向マスク
11b 走行方向マスク
12 開口部
13 薄膜
15 導入管
16 導入管の開口部
18 分岐部
19 酸素供給配管
20 蒸気拡散防止壁
21 蒸気拡散防止用ガスノズル
22 蒸気拡散防止壁間隔
24 隔壁
25 シート搬送方向
26 シートの成膜領域
29 ガス導入経路
30 成膜開始点
31 成膜終了点
32 剥離点
33 巻付点
41 減圧室
41a 巻取室
41b 成膜室
42 真空ポンプ
42a 巻取室用真空ポンプ
42b 成膜室用真空ポンプ
43 バルブ
44 ガスボンベ
45 減圧弁
46 ガス流量調整器
51 シャッター部材
52 光学モニタ
53 覗き窓
100 開口部が存在する位置

Claims (11)

  1. シートと接触しながら前記シートを搬送するシート案内面を有し、前記シート案内面の運動に伴って前記シートを搬送する搬送手段と、前記シート案内面上の前記シートに向かって金属蒸気を飛散させる蒸発源と、前記金属蒸気と反応させるためにガスを導入する反応ガス導入手段と、前記金属蒸気がシートに到来する領域を制限するマスクとを備え、搬送される前記シートに連続的に金属化合物薄膜を形成する金属化合物薄膜付シートの製造装置であって、前記蒸発源と前記シート案内面とを結ぶ直線方向に関し、前記反応ガス導入手段により導入されたガスと前記蒸発源から飛来した金属蒸気とが混在する位置に、前記金属蒸気がシート幅方向の外部に拡散することを防止する拡散防止手段を設けてなることを特徴とする金属化合物薄膜付シートの製造装置。
  2. 前記拡散防止手段が一対の壁状構造物であり、かつ前記壁状構造物が前記蒸発源のシート幅方向端部よりも内側に張り出していることを特徴とする請求項1に記載の金属化合物薄膜付シートの製造装置。
  3. 前記シート案内面と前記蒸発源との最短距離をD[m]とすると、前記蒸発源と前記シート案内面とを結ぶ直線方向に関し、前記壁状構造物の長さが0.5D[m]以上であることを特徴とする請求項2に記載の金属化合物薄膜付シートの製造装置。
  4. 前記マスクの開口部のシート幅方向の長さをA[m]、前記一対の壁状構造物の最短間隔をC[m]としたときに、以下の式を満たすことを特徴とする請求項2または3に記載の金属化合物薄膜付シートの製造装置。
    A<C≦1.2A
  5. 前記反応ガス導入手段は、前記蒸発源と前記シート案内面とを結ぶ直線方向に関し、前記壁状構造物が存在する位置にガス導入口を有していることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の金属化合物薄膜付シートの製造装置。
  6. 前記拡散防止手段が、ガス供給手段および壁状構造物であり、該壁状構造物が前記ガス供給手段のシート幅方向における外側に設けられてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の金属化合物薄膜形成装置。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の装置を用い、前記蒸発源から前記シートに向けて金属蒸気を飛来させると同時に、前記金属蒸気内にガスを導入し、前記シート上に連続的に金属化合物薄膜を形成することを特徴とする金属化合物薄膜付シートの製造方法。
  8. 前記金属がアルミニウムであり、前記ガスが酸素であり、前記金属化合物薄膜が酸化アルミニウム膜であって、前記酸化アルミニウム膜の成膜レートが400[nm/秒]以上であることを特徴とする請求項7に記載の金属化合物薄膜付シートの製造方法。
  9. 前記金属化合物薄膜の膜厚が50〜300[nm]の範囲内であること特徴とする請求項8に記載の金属化合物薄膜付シートの製造方法。
  10. 請求項7〜9のいずれかに記載した方法で、シートの両面に金属酸化物薄膜を形成することを特徴とする両面金属化合物薄膜付シートの製造方法。
  11. 厚みが10[μm]以下でかつフィルム幅W[mm]が1000[mm]以上であるプラスチックフィルムの少なくとも片面に膜厚50[nm]以上の金属化合物薄膜が成膜された薄膜膜付きフィルムをコアに巻いてなるフィルムロール体であって、巻き長10000[m]あたり、フィルム幅方向に関し、ロール体最大直径との差が100[μm]以内であるロール体直径を有する範囲が、W−100[mm]以上連続して存在することを特徴する金属化合物薄膜付フィルムロール体。
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