JP2010195939A - 有機溶媒分散液、樹脂組成物、及び樹脂成形体、並びに、樹脂成形体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い透明性を有し、吸水性が低く、形状変化やひび割れ等の劣化が起きにくい樹脂成形体を成形可能な有機溶媒分散液、樹脂組成物、及び樹脂成形体、並びに、樹脂成形体の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の有機溶媒分散液は、少なくとも、分散媒中に、メルカプト基含有化合物と、平均粒径が1nm〜20nmである無機ナノ粒子とを含み、前記メルカプト基含有化合物を前記無機ナノ粒子に対して2質量%〜60質量%含むことを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、高い透明性を有し、吸水性が少なく、形状変化やひび割れ等の劣化が起きにくい樹脂成形体を成形可能な有機溶媒分散液、樹脂組成物、及び樹脂成形体、並びに、樹脂成形体の製造方法に関する。
無機ナノ粒子を樹脂中に分散して、樹脂の耐熱性、機械強度(引っ張り、曲げ、圧縮強さ、弾性率、衝撃強さ、寸度安定性、等)、酸素や水のバリア性、等を改良する技術が注目されており、有機・無機ナノコンポジット材料として新規材料が広く研究され、報告されている。
光学材料としての有機・無機コンポジット材料は、利用上、透明度を高く維持することが重要であり、さらに、熱や水分等での変形やひび割れが起きないようにすることが重要である。また、材料としては無色であることが好ましい。
こうした有機・無機コンポジット材料について、表面修飾剤により表面修飾された無機材料と、有機材料との複合材料が知られている。
例えば、表面修飾された無機酸化物を含む透明分散液が開示されている(特許文献1〜3参照)。
即ち、表面修飾剤としては、アルコキシシラン化合物、シロキサン化合物、界面活性剤のいずれかを用いることが開示されている(特許文献1参照)。また、シランカップリング剤、変性シリコーン、界面活性剤のいずれかを用いることが開示されている(特許文献2参照)。また、シランカップリング剤、シリコーンレジンのいずれかを用いることが開示されている(特許文献3参照)。
また、表面処理剤として、シラン系カップリング剤及びチタン系カップリング剤の少なくとも1つを用いる無機微粒子分散組成物が開示されている(特許文献4参照)。
しかしながら、これらの表面修飾剤や表面処理剤は、混合する樹脂によって、組成物にした場合に、無機粒子の分散が不十分で透明度が十分なレベルにならないという問題がある。
また、特許文献1、3、4に開示された表面修飾剤では、無機材料の吸水性を抑えることができず、結果、無機・有機コンポジット材料のひび割れ等の劣化を防止することができないという問題がある。
また、特許文献2に開示された吸着水量の改良レベルでは、高温高湿下でひび割れ等の劣化を防止できないという問題がある。
特開2008−120848号 特開2008−137848号 特開2007−217242号 特開2006−328261号
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、高い透明性を有し、吸水性が低く、形状変化やひび割れ等の劣化が起きにくい樹脂成形体を成形可能な有機溶媒分散液、樹脂組成物、及び樹脂成形体、並びに、樹脂成形体の製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 少なくとも、分散媒中に、メルカプト基含有化合物と、平均粒径が1nm〜20nmである無機ナノ粒子とを含み、前記メルカプト基含有化合物を前記無機ナノ粒子に対して2質量%〜60質量%含むことを特徴とする有機溶媒分散液である。
<2> メルカプト基含有化合物がアルカンチオール、複素環系メルカプト化合物、及びヒドロオキシ基含有メルカプト化合物のいずれかを含む前記<1>に記載の有機溶媒分散液である。
<3> 少なくとも、前記<1>から<2>のいずれかに記載の有機溶媒分散液と、樹脂溶解性の有機溶媒と、樹脂材料と、を含むことを特徴とする樹脂組成物である。
<4> 有機溶媒が疎水性である前記<3>に記載の樹脂組成物である。
<5> 少なくとも、樹脂材料と、メルカプト基含有化合物で表面修飾され、分散された状態で含有される無機ナノ粒子と、を含むことを特徴とする樹脂成形体である。
<6> 分散媒中に、平均粒径が1nm〜20nmである無機ナノ粒子に対して、メルカプト基含有化合物を2質量%〜60質量%混合させて有機溶媒分散液を調製する有機溶媒分散液調製工程と、前記分散媒と置換された樹脂溶解性の有機溶媒に樹脂材料を溶解させて樹脂組成物を調製する樹脂組成物調製工程と、前記樹脂組成物を乾燥させて樹脂成形体を得る樹脂成形工程と、を含むことを特徴とする樹脂成形体の製造方法である。
本発明によると、従来における前記諸問題を解決することができ、本発明は、高い透明性を有し、吸水性が低く、形状変化やひび割れ等の劣化が起きにくい樹脂成形体を成形可能な有機溶媒分散液、樹脂組成物、及び樹脂成形体、並びに、樹脂成形体の製造方法を提供することができる。
(有機溶媒分散液)
本発明の有機溶媒分散液は、少なくとも、メルカプト基含有化合物と、無機ナノ粒子と、分散媒とを含み、必要に応じてその他の成分を含む。本発明の前記有機溶媒分散液は、有機溶媒中に均一性よく分散される。
−メルカプト基含有化合物−
表面を修飾される無機材料がナノ粒子のような微粒子であると、個々の微粒子の表面に基づく総表面積が非常に大きくなるため、その分、吸水性が高くなり、結果として、これを含む樹脂成形体の形状変化、ひび割れ等の劣化が生じやすい。
本発明における前記メルカプト基含有化合物は、こうした無機ナノ粒子の表面修飾に用いられ、無機ナノ粒子に対する非常に強い吸着性を有し、有機溶媒に溶かしても、無機ナノ粒子から剥がれにくいという特徴を有する。
また、前記メルカプト基含有化合物は、比較的小さい分子量の化合物として形成可能であることから、無機ナノ粒子の表面に対して、密に相互作用させることができ、無機ナノ粒子と水分子とが相互作用することを抑制することができる。
また、前記メルカプト基含有化合物は、分散媒中に混合させるだけで、無機ナノ粒子と相互作用を生じ、熱処理等のプロセスが不要であることから、製造プロセスを簡易にすることが可能となる。
また、メルカプト基含有化合物を用いた場合の予期せぬ効果として、樹脂組成物において、乾燥後の樹脂材料が分解されて、着色が生じることを抑えることができる。
なお、本明細書において、メルカプト基含有化合物とは、官能基−SHを含む化合物を示す。
前記メルカプト基含有化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルカンチオール、複素環系メルカプト化合物、ヒドロキシ基含有メルカプト化合物などが挙げられる。
前記アルカンチオールとしては、特に制限はなく、例えば、1−プロパンチオール、1−ブタンチオール、1−ヘキサンチオール、1−オクタンチオールなどが挙げられる。
前記複素環系メルカプト化合物としては、特に制限はなく、例えば、2−メルカプトピリジン、2−メルカプト−1−メチルイミダゾール、2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、3−メルカプト−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾールなどが挙げられる。
前記ヒドロキシ基含有メルカプト化合物としては、特に制限はなく、例えば、メルカプトエタノール、メルカプト酢酸、p−メルカプトフェノールなどが挙げられる。
これらのメルカプト基含有化合物は、一種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記メルカプト基含有化合物の添加量としては、無機ナノ粒子に対して、2質量%〜60質量%であり、3質量%〜40質量%が好ましく、4質量%〜30質量%が好ましい。
2質量未満であると吸水率の低減が十分でなく、また、60質量%を超えると凝集や相分離が起きて透明性が失われる。
−無機ナノ粒子−
前記無機ナノ粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、金属単体、合金、金属(複合体も含む)酸化物、金属(複合体も含む)硫化物、金属(複合体も含む)窒化物が挙げられる。
前記金属単体としては、例えば、周期律表の4族から11族の元素で構成される単一金属が挙げられ、前記合金としては、これらの単一金属を2種以上含む合金が挙げられる。
前記金属酸化物としては、例えばZnO、GeO、TiO、ZrO、HfO、SiO、Sn、Mn、Ga、Mo、In、Sb、Ta、V、Y、Nb、Fe、Fe、CoOなどが挙げられる。
前記複合金属酸化物としては、例えば、チタンとジルコニウムの複合酸化物、チタンとジルコニウムとハフニウムの複合酸化物、チタンとバリウムの複合酸化物、チタンとケイ素の複合酸化物、チタンとジルコニウムとケイ素の複合酸化物、チタンと錫の複合酸化物、チタンとジルコニウムと錫の複合酸化物などが挙げられる。
前記金属硫化物としては、例えば、CuS、ZnS、AgS、PdS、GaS、CdS、CoS、NiS、SnS、Inなどが挙げられる。
前記複合金属硫化物としては、例えば、CuZnS、CuInS、CuIn0.5Ga0.5などが挙げられる。
前記金属窒化物としては、例えば、GaN、MoN、TiN、ZrN、WN、Siなどが挙げられる。
前記複合金属窒化物としては、例えば、GaInN、AlInGaN、SiTiNなどが挙げられる。
前記複合金属酸化物のうち、Ti系酸化物では、構成する全金属原子の60原子%以上がTiであることが好ましい。また、X線回折スペクトルがルチル型構造を示すことが好ましい。これにより、高屈折率の金属酸化物微粒子分散液が得られる。
前記無機ナノ粒子の製造方法としては、特に制限はなく、公知のいずれの方法も用いることができる。例えば、単一金属及び合金に関する液相合成法として、沈殿法で分類すると、(1)1級アルコールを用いるアルコール還元法、(2)2級、3級、2価又は3価のアルコールを用いるポリオール還元法、(3)熱分解法、(4)超音波分解法、(5)強力還元剤還元法、などを利用することができる。
また、反応系で分類すると、(6)高分子存在法、(7)高沸点溶媒法、(8)正常ミセル法、(9)逆ミセル法、などを利用することができる。
一方、金属酸化物及び複合金属酸化物に関しては、金属塩又は金属アルコキシドを原料に用い、水を含有する反応系において加水分解することにより、所望の無機ナノ微粒子を得ることができる。金属酸化物の合成方法としては、例えば、ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス第37巻4603〜4608頁(1998年)、又はラングミュア第16巻第1号241〜246頁(2000年)に記載の公知の方法を用いることができる。
前記金属塩としては、例えば、所望の金属の塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、有機酸塩などが挙げられる。前記有機酸塩としては、例えば酢酸塩、プロピオン酸塩ナフテン酸塩、オクチル酸塩、ステアリン酸塩、オレイン酸塩、などが挙げられる。
また、前記金属アルコキシドとしては所望の金属のメトキシド、エトキシド、プロポキシド、又はブトキシド等が挙げられる。
特に、ゾル生成法により金属酸化物ナノ粒子を合成する場合においては、例えば、四塩化チタンやチタンテトライソプロポキシドを原料として用いる酸化チタンナノ粒子の合成のように、水酸化物等の前駆体を経由し次いで酸やアルカリによりこれを脱水縮合又は解膠してヒドロゾルを生成させる手順も可能である。
前記無機ナノ粒子合成後に、分散液中の副生塩及び残存原材料物質を、電気透析法や限外ろ過などにより、電気伝導度が100μS/cm以下になるように除去するのが好ましい。
前記無機ナノ粒子の平均粒子径は、小さすぎると該微粒子を構成する物質固有の特性が変化する場合があり、逆に該平均粒子径が大きすぎるとレイリー散乱の影響が顕著となり、複合組成物の透明性が極端に低下する場合がある。従って、本発明で用いられる無機ナノの平均粒子径としては、1nm〜20nmが好ましく、1nm〜10nmが更に好ましく、1nm〜7nmが特に好ましい。
ここで、前記平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)の画像から粒子径を測定し統計学的に処理する方法やX線回折パターンの半値幅から結晶子サイズを求めて平均粒径とする方法などで測定できる。
前記無機ナノ粒子を用いて高屈折率材料とする場合の屈折率は、22℃で589nmの波長において1.9〜3.0であることが好ましく、2.0〜2.8がより好ましく、2.2〜2.7が更に好ましい。
前記屈折率が3.0を超えると、樹脂との屈折率差が大きくなりレイリー散乱を抑制するのが難しくなることがあり、1.9未満であると、本来の目的である高屈折率化の効果が十分得られないことがある。
前記微粒子の屈折率は、例えば、樹脂と複合化した複合物を透明フィルムとして、アッベ屈折計(例えば、アタゴ株式会社製、「DM−M4」)で屈折率を測定し、別途測定した樹脂成分のみの屈折率とから換算する方法、あるいは濃度の異なる金属酸化物微粒子分散液の屈折率を測定することにより微粒子の屈折率を算出する方法などによって見積ることができる。
−分散媒−
前記分散媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、アルコール類を40体積%以下含む水、水を10体積%以下含む炭素数3以下のアルコール類などが挙げられる。
前記水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、純水、水道水、井戸水、湧水、淡水等の他、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、ろ過、イオン交換等が含まれる。したがって、前記水には、精製水、イオン交換水等も含まれる。
前記アルコール類を40体積%以下含む水におけるアルコール類としては、例えば、エタノール、イソプロパノール、1−プロパノール、メタノール、1−ブタノール、tert−ブチルアルコールなどが挙げられる。
前記水を10体積%以下含む炭素数3以下のアルコール類としては、例えば、メタノール、エタノールなどが挙げられる。
なお、本発明の有機溶媒分散液においては、後述する本発明の樹脂組成物における樹脂溶解性の有機溶媒で、前記分散媒を置換させたものを含む。
−その他の成分−
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記メルカプト基含有化合物と併用して、無機ナノ粒子表面に吸着し得る分散剤を添加することが好ましい。
前記分散剤の化合物としては、特に制限はないが、カルボキシ基含有化合物が好ましい。
前記カルボキシ基含有化合物としては、特に制限はなく、例えば、蟻酸、酢酸、安息香酸、p−n−プロピル安息香酸、p−n−ペンチル安息香酸、p−メトキシ安息香酸、フェニル安息香酸などが挙げられる。
前記分散剤の添加量としては、前記メルカプト基含有化合物と同様に、無機ナノ粒子に対して、2質量%〜60質量%が好ましい。
(樹脂組成物)
本発明の樹脂組成物は、少なくとも、本発明の前記有機溶媒分散液と、樹脂溶解性の有機溶媒と、樹脂材料と、を含み、必要に応じて、その他の成分を含む。
−有機溶媒分散液−
前記有機溶媒分散液としては、本発明の前記有機溶媒分散液を用いることができる。
−樹脂材料−
前記樹脂材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂などが挙げられる。
−−熱可塑性樹脂−−
前記熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルカルバゾール、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリチオエーテ、ポリエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記熱可塑性樹脂としては、末端又は側鎖に金属酸化物微粒子と化学結合し得る官能基を有するものが、金属酸化物微粒子の凝集を防止して均一分散を実現できるという点から特に好ましい。前記官能基としては、下記式で表されるものが好適に挙げられる。
ただし、前記式中、R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアルキニル基、置換若しくは無置換のアリール基、−SOH、−OSOH、−COH、又はSi(OR15m116 3−m1(ただし、R15及びR16は、それぞれ独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアルキニル基、又は置換又は無置換のアリール基を表し、m1は1〜3の整数を表す)を表す。
ここで、前記「化学結合」とは、例えば、共有結合、イオン結合、配位結合、水素結合等が挙げられ、官能基が複数存在する場合は、それぞれ金属酸化物微粒子と異なる化学結合を形成しうるものであってもよい。化学結合を形成しうるか否かは、有機溶媒中において熱可塑性樹脂と金属酸化物微粒子とを混合したときに、熱可塑性樹脂の官能基が金属酸化物微粒子と化学結合を形成しうるか否かで判定する。熱可塑性樹脂の官能基は、そのすべてが金属酸化物微粒子と化学結合を形成していてもよいし、一部が金属酸化物微粒子と化学結合を形成していてもよい。
前記熱可塑性樹脂の質量平均分子量は、1,000〜500,000が好ましく、3,000〜300,000がより好ましく、10,000〜100,000が更に好ましい。
前記質量平均分子量が、500,000以下であることにより、成形加工性が向上する傾向にあり、1,000以上とすることにより力学強度が向上する傾向にある。
ここで、前記熱可塑性樹脂の質量平均分子量は、例えば、「TSKgel GMHxL」、「TSKgel G4000HxL」、「TSKgel G2000HxL」(いずれも、東ソー株式会社製の商品名)のカラムを使用したGPC分析装置により、溶媒テトラハイドロフラン、示差屈折計検出によるポリスチレン換算で表した分子量である。
前記熱可塑性樹脂において、金属酸化物微粒子と結合する官能基はポリマー鎖1本あたり平均0.1〜20個が好ましく、0.5〜10個がより好ましく、1〜5個が更に好ましい。前記官能基の含有量がポリマー鎖一本あたり平均20個以下であれば、熱可塑性樹脂が複数の金属酸化物微粒子に配位して溶液状態で高粘度化やゲル化が起こるのを防ぎやすい傾向がある。また、ポリマー鎖一本あたり平均官能基の数が0.1個以上であれば、金属酸化物微粒子を安定に分散させやすい傾向がある。
前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、80℃〜400℃が好ましく、130℃〜380℃がより好ましい。前記ガラス転移温度が、80℃以上の樹脂を用いれば十分な耐熱性を有する光学部品が得られやすくなり、ガラス転移温度が400℃以下の樹脂を用いれば成形加工が行いやすくなる傾向がある。
−硬化性樹脂−
前記樹脂が硬化性樹脂である場合に熱又は活性エネルギー線の作用によって硬化するも公知の構造を利用できる。具体的には、ラジカル反応性基(例えば(メタ)アクリロイル基、スチリル基、アリル基等の不飽和基)、カチオン反応性基(エポキシ基、オキセタニル基、エピスルフィド基、オキサゾリル基等)、反応性シリル基(例えば、アルコキシシリル基など)を有するモノマー、プレポリマー等が挙げられる。
その他、特開平5−148340号公報、特開平5−208950号公報、特開平6−192250号公報、特開平7−252207号公報、特開平9-110979号公報、特開平9−255781号公報、特開平10−298287号公報、特開2001−342252号公報、特開2002−131502号公報などに記載の硫黄を含有する硬化性樹脂も好適に用いることができる。
このような樹脂材料としては、更に、下記構造式(1)〜(3)からなるコポリマーが好ましい。構造式(1)〜(3)における、n、m、lの数値はそれらの総数を1とした場合の重合比である。
ただし、前記構造式(1)中、Rは、CHCOOH、(CHCOOH、(CHCOOHを示し、nは、0.01〜0.03を示す。
ただし、前記構造式(2)中、Xは、H、Clを示し、mは、0.77〜0.89を示す。
ただし、構造式(3)中、Rは、H、CHを示し、lは、0.1〜0.3を示す。
−有機溶媒−
前記有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、親水性有機溶媒、疎水性有機溶媒など各種の有機溶媒を挙げられるが、疎水性有機溶媒が好ましい。
前記親水性有機溶媒としては、特に制限はなく、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、アセチルアセトン、アセトン、アニリン、アリルアルコール、エタノールアミン、エチレングリコール、1−オクタノール、グリセリン、p−クロロトルエン、シクロヘキサノール、ジメチルスルホキサイド、トリエタノールアミン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
前記疎水性有機溶媒とは、極性又は非極性を問わず、水の溶解度が2g/100g以下である有機溶媒を意味し、例えば、シクロへキサン、ヘキサン、ヘプタン、n−オクタン、n−デカン、酢酸ブチル、酢酸ヘキシル、イソオクタン、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサン、トルエン、n−ヘキサノールなどが挙げられる。
−その他の成分−
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、均一分散性、成形時の流動性、離型性、耐候性等観点から適宜各種添加剤を配合してもよい。
例えば、表面処理剤、可塑化剤、帯電防止剤、分散剤、離型剤等を挙げることができる。
また前記熱可塑性樹脂以外に前記官能基を有さない樹脂を添加してもよく、このような樹脂の種類に特に制限はないが、前記熱可塑性樹脂と同様の光学物性、熱物性、分子量を有するものが好ましい。
(樹脂成形体)
本発明の前記樹脂成形体は、少なくとも、樹脂材料と、無機ナノ粒子とを含むものとしてなる。
−無機ナノ粒子−
前記無機ナノ粒子としては、メルカプト基含有化合物で表面修飾され、分散された状態で含有されてなる。
前記メルカプト基含有化合物及び無機ナノ粒子としては、本発明の前記有機溶媒分散液における、前記メルカプト基含有化合物及び前記無機ナノ粒子を用いることができる。
−樹脂材料−
前記樹脂材料としては、本発明の前記樹脂組成物における樹脂材料を用いることができる。
前記樹脂成形体の含水率は、3%以下であることが好ましく、1%以下がより好ましい。
前記含水率が3%を超えると、高温条件下で水の膨張、気化による体積変化が生じ成形体内部に歪を発生させ光散乱による透明性の低下を生じさせることがある。
ここで、含水率は、例えば、カールフィッシャー法により測定することができる。
具体的には、溶解した樹脂中に、無機ナノ粒子有機溶媒分散液を混合して均一分散液にする。その後、乾固して粉末化し、さらに、真空下で120℃15時間乾燥する。乾燥後、25℃80%RH下に24時間放置して、一定量計量したものの水分量をカールフィッシャー法により測定して求めることができる。装置は、平沼産業株式会社製カールフィッシャー水分計(AQV−2100)を用いることができる。
高屈折率を目的にした前記樹脂成形体の波長589nmにおける屈折率は、1.60以上であることが好ましく、1.65以上であることがより好ましく、1.67以上であることが更に好ましい。レンズの薄肉化や撮影ユニットの小型化を図るにはレンズ材料の高屈折率化が求められるが、市販されている熱可塑性樹脂では屈折率は1.6程度である。前記屈折率が、1.60未満であると、樹脂単体でも実現可能であり、コストの面から複合材料成形体のメリットは少なくなる。
前記屈折率は、例えばアッベ屈折計(アタゴ株式会社製、「DR−M4」)にて、波長589nmの光について求めることができる。
また、厚さ1mmの前記樹脂成形体における、波長600nmの光に対する光透過率(フレッシュ透過率)としては、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましい。
前記光透過率が80%以上であると、透明性が必要な種々の用途に用いることができる。
ここで、前記厚光透過率は、厚さ1.0mmの円盤状に形成された樹脂成形体を作製し、分光光度計(U−3310、(株)日立ハイテクノロジー製)で測定した値である。
前記メルカプト基含有化合物で表面修飾された無機ナノ粒子の前記成形体における含有量としては、5体積%以上が好ましく、10体積%〜20体積%がより好ましい。
前記含有量が5体積%未満であると、成形体が十分に高い屈折率が得られないことがある。
前記樹脂成形体のガラス転移温度としては、100℃〜400℃であることが好ましく、130℃〜380℃であることがより好ましい。
前記ガラス転移温度が、100℃以上であれば十分な耐熱性が得られやすく、400℃以下であれば成形加工を行いやすくなる傾向がある。
(樹脂成形体の製造方法)
本発明の樹脂成形体の製造方法は、有機溶媒分散液調製工程と、樹脂組成物調製工程と、樹脂成形工程とを含み、必要に応じて、その他の工程を含んでなる。
前記樹脂成形体の製造方法は、表面修飾剤としてメルカプト基含有化合物を用いるため、表面処理剤としてシランカップリング剤等を用いる場合とは異なり、表面処理に熱処理が不要であり、製造プロセスを簡易化することができる。
−有機溶媒分散液の調製工程−
前記有機溶媒分散液の調製工程は、分散媒中に、平均粒径が1nm〜20nmである無機ナノ粒子に対して、メルカプト基含有化合物を2質量%〜60質量%混合させて有機溶媒分散液を調製する工程である。
前記混合の方法としては、特に制限はないが、均一な分散液とする観点から、温度25℃〜80℃で、攪拌することが好ましい。
なお、前記分散媒、前記無機ナノ粒子、前記メルカプト基含有化合物、前記有機溶媒としては、本発明の前記有機溶媒分散液及び前記樹脂組成物において説明した事項のすべてを適用することができる。
−樹脂組成物調製工程−
前記樹脂組成物調製工程は、前記分散媒と置換された樹脂溶解性の有機溶媒に樹脂材料を溶解させて樹脂組成物を調製する工程である。
なお、前記有機溶媒、前記樹脂材料、前記樹脂組成物としては、本発明の前記樹脂組成物において説明した事項のすべてを適用することができる。
−樹脂成形工程−
前記樹脂成形工程は、前記樹脂組成物を乾燥させて樹脂成形体を得る工程である。
前記乾燥の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
なお、前記樹脂成形体としては、本発明の前記樹脂成形体において説明したすべての事項を適用することができる。
−その他の工程−
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
<Ti−Sn−Zr複合酸化物の有機溶媒分散液の調製>
pH0.5の酸性条件下において、無機ナノ粒子として、SnOを10mol%及びZrOを17mol%含むTi−Sn−Zr複合酸化物ナノ粒子の5質量%水分散液100mlを合成した。このTi−Sn−Zr複合酸化物ナノ粒子の平均粒径は、6nmであった。
次いで、前記水分散液に、酢酸を6質量%になるように添加した後、分散液中の副生塩及び残存原料物質を電気透析により電気伝導度100μS/cm以下になるまで除去した。
この水分散液に対して、1−プロパノール300mlにp−プロピル安息香酸2.5g及びメルカプト基含有化合物として1−プロパンチオール1.0gを溶解し、上記の水分散液100mlを添加して攪拌し、均一に分散させた。
次に、以下に示す方法で酢酸ブチルへの溶媒置換を行った。
即ち、この分散液を35℃、45〜25hPaの条件で減圧乾固した後、酢酸ブチルを添加して、100mlの分散液を得た。これにより、透明で安定な5質量%のTi−Sn−Zr複合酸化物ナノ粒子分散液とし、実施例1における有機溶媒分散液(a1)を調製した。
<樹脂組成物の調製>
Ti−Sn−Zr複合酸化物ナノ粒子が11体積%、下記構造の3元系コポリマーからなる樹脂材料が65体積%になる量、Ti−Sn−Zr複合酸化物ナノ粒子分散液(a1)と樹脂材料溶液を攪拌混合し、実施例1における樹脂組成物(a2)を調製した。
<樹脂成形体の成形>
この樹脂組成物前記室温で1時間攪拌した後、100℃の送風で乾燥し、実施例1における樹脂成形体(a3)を成形した。
(実施例2)
<Ti−Sn−Zr複合酸化物の有機溶媒分散液の調製>
実施例1において、メルカプト基含有化合物として1−プロパンチオール1.0gを、2−メルカプトピリジン1.0gに代えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2における有機溶媒分散液(b1)を得た。
<樹脂組成物の調製>
実施例1において、有機溶媒分散液(a1)を有機溶媒分散液(b1)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2における樹脂組成物(b2)を調製した。
<樹脂成形体の成形>
実施例1において、樹脂組成物(a2)を樹脂組成物(b2)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2における樹脂成形体(b3)を成形した。
(実施例3)
<Ti−Sn−Zr複合酸化物の有機溶媒分散液の調製>
実施例1において、メルカプト基含有化合物として1−プロパンチオール1.0gを1−オクタンチオール1.0gに代えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3における有機溶媒分散液(c1)を得た。
<樹脂組成物の調製>
実施例1において、有機溶媒分散液(a1)を有機溶媒分散液(c1)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3における樹脂組成物(c2)を調製した。
<樹脂成形体の成形>
実施例1において、樹脂組成物(a2)を樹脂組成物(c2)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3における樹脂成形体(c3)を成形した。
(実施例4)
<Ti−Sn−Zr複合酸化物の有機溶媒分散液の調製>
実施例1において、メルカプト基含有化合物として1−プロパンチオール1.0gをメルカプトエタノール1.0gに代えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4における有機溶媒分散液(d1)を得た。
<樹脂組成物の調製>
実施例1において、有機溶媒分散液(a1)を有機溶媒分散液(d1)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4における樹脂組成物(d2)を調製した。
<樹脂成形体の成形>
実施例1において、樹脂組成物(a2)を樹脂組成物(d2)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4における樹脂成形体(d3)を成形した。
(実施例5)
<ZnOの有機溶媒分散液の調製>
室温で、酢酸亜鉛の水溶液を攪拌しながら、水酸化ナトリウムの水溶液を添加した後、加熱熟成してZnOの5質量%ナノ粒子水分散液を得た。平均粒径は10nmであった。この水分散液に、酢酸を6質量%になるように添加した後、電気伝導度100μS/cm以下になるまで、電気透析により副生塩及び残存原料を除去した。
次に、上記の分散液の分散媒である水から、実施例1と同様の方法で酢酸ブチルへの溶媒置換を行った。これにより、酢酸ブチルを分散媒とした透明で安定な5質量%のZnOナノ粒子分散液からなる実施例5における有機溶媒分散液(e1)を調製した。
<樹脂組成物の調製>
実施例1において、有機溶媒分散液(a1)を有機溶媒分散液(e1)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5における樹脂組成物(e2)を調製した。
<樹脂成形体の成形>
実施例1において、樹脂組成物(a2)を樹脂組成物(e2)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5における樹脂成形体(e3)を成形した。
(実施例6)
<Ptの有機溶媒分散液の調製>
以下に示す逆ミセル法により、Ptナノ粒子分散液からなる有機溶媒分散液を調製した。
塩化白金酸カリウム(KPtCl)(和光純薬(株)製)5.32gを水240mlに溶解した金属塩水溶液に、エーロゾルOT(東京化成(株)製)100gをデカン(和光純薬(株)製)800mlに溶解したアルカン溶液を添加、混合して逆ミセル溶液(A)を調製した。
次いで、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)(和光純薬(株)製)2.42gを水240mlに溶解した還元剤水溶液に、エーロゾルOT(東京化成(株)製)100gをデカン(和光純薬(株)製)800mlに溶解したアルカン溶液を添加、混合して逆ミセル溶液(B)を調製した。
(B)を高速攪拌しながら、(A)を素早く添加し、10分後に、メルカプト基含有化合物として、メルカプトエタノール(和光純薬(株)製)0.5gを添加して、40℃で2時間熟成した。
冷却後、水/エタノール(1:1)の混合溶媒を添加して、相分離させ、ナノ粒子を含む水相部分を取り出して、限外ろ過で水を追添しながら、副生塩及び残存原料を除去した。最終電気伝導度が100μS/cm以下で総量が50mlになるようにして、アルコールを約5質量%含む水分散媒に分散した5質量%のPtナノ粒子分散液を調製した。平均粒径は6nmであった。また、残存するメルカプトエタノールは0.26gであった。
次に、上記の分散液の主たる分散媒である水から、以下に示す方法でシクロヘキサンへの溶媒置換を行った。
1−プロパノール150mlに、メルカプト基含有化合物として1−オクタンチオール0.5gを溶解し、上記の水分散液50mlを添加して攪拌し、均一分散液とした。この分散液を35℃、45〜25hPaの条件で減圧乾固した後、シクロヘキサンを添加して、分散液50mlを得た。これにより、シクロヘキサンのみを分散媒とした透明で安定な5質量%のPtナノ粒子分散液とし、実施例6における有機溶媒分散液(f1)を調製した。
<樹脂組成物の調製>
実施例1において、有機溶媒分散液(a1)を有機溶媒分散液(f1)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例6における樹脂組成物(f2)を調製した。
<樹脂成形体の成形>
実施例1において、樹脂組成物(a2)を樹脂組成物(f2)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例6における樹脂成形体(f3)を成形した。
(実施例7)
<Cu−In−Ga複合硫化物の有機溶媒分散液の調製>
以下に示す逆ミセル法により、Cu−In−Gaの複合硫化物ナノ粒子からなる有機溶媒分散液を調製した。
塩化銅(CuCl・2HO)(和光純薬(株)製)1.02g、塩化インジウム(InCl・4HO)(和光純薬(株)製)0.88g及び塩化ガリウム(GaCl)(和光純薬(株)製)0.53gを水240mlに溶解した金属塩水溶液に、エーロゾルOT(東京化成(株)製)100gをデカン(和光純薬(株)製)800mlに溶解したアルカン溶液を添加、混合して逆ミセル溶液(C)を調製した。
次いで、硫化ナトリウム(NaS・9HO)(和光純薬(株)製)8.64gを水240mlに溶解した還元剤水溶液に、エーロゾルOT(東京化成(株)製)100gをデカン(和光純薬(株)製)800mlに溶解したアルカン溶液を添加、混合して逆ミセル溶液(D)を調製した。
(D)を高速攪拌しながら、(C)を素早く添加し、10分後に、メルカプト基含有化合物として2.0gの1−オクタンチオール(和光純薬(株)製)を添加して、40℃で2時間熟成した。
冷却後、水/エタノール(1:1)の混合溶媒を添加して、相分離させ、ナノ粒子を含む油相部分を取り出して、遠心分離とシクロヘキサンへの再分散を3回繰り返して、最終的に、シクロヘキサンに分散した5質量%のCu−In−Gaの複合硫化物ナノ粒子(
CuIn0.5Ga0.5)分散液とし、実施例7における有機溶媒分散液(g1)40mlを調製した。平均粒径は、12nmであった。残存の1−オクタンチオールは1.1gであった。
<樹脂組成物の調製>
実施例1において、有機溶媒分散液(a1)を有機溶媒分散液(g1)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例7における樹脂組成物(g2)を調製した。
<樹脂成形体の成形>
実施例1において、樹脂組成物(a2)を樹脂組成物(g2)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例7における樹脂成形体(g3)を成形した。
(実施例8)
<Ti−Sn−Zr複合酸化物の有機溶媒分散液の調製>
実施例1において、メルカプト基含有化合物である1−プロパンチオールの添加量を1.0gから2.0gに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例8における有機溶媒分散液(h1)を調製した。
<樹脂組成物の調製>
実施例1において、有機溶媒分散液(a1)を有機溶媒分散液(h1)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例8における樹脂組成物(h2)を調製した。
<樹脂成形体の成形>
実施例1において、樹脂組成物(a2)を樹脂組成物(h2)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例8における樹脂成形体(h3)を成形した。
(比較例1)
<Ti−Sn−Zr複合酸化物の有機溶媒分散液の調製>
実施例1において、メルカプト基含有化合物である1−プロパンチオール1.0gを添加しないこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1における有機溶媒分散液(i1)を調製した。
<樹脂組成物の調製>
実施例1において、有機溶媒分散液(a1)を有機溶媒分散液(i1)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1における樹脂組成物(i2)を調製した。
<樹脂成形体の成形>
実施例1において、樹脂組成物(a2)を樹脂組成物(i2)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1における樹脂成形体(i3)を成形した。
(比較例2)
<Ti−Sn−Zr複合酸化物の有機溶媒分散液の調製>
実施例1において、メルカプト基含有化合物である1−プロパンチオールの添加量を、1.0gから6.0gに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2における有機溶媒分散液(j1)を調製した。
<樹脂組成物の調製>
実施例1において、有機溶媒分散液(a1)を有機溶媒分散液(j1)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2における樹脂組成物(j2)を調製した。
<樹脂成形体の成形>
実施例1において、樹脂組成物(a2)を樹脂組成物(j2)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2における樹脂成形体(j3)を成形した。
(比較例3)
<Ti−Sn−Zr複合酸化物の有機溶媒分散液の調製>
実施例1において、メルカプト基含有化合物である1−プロパンチオール1.0gを、シランカップリング剤であるビニルトリメトキシシラン1.0gに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3における有機溶媒分散液(k1)を調製した。
<樹脂組成物の調製>
実施例1において、有機溶媒分散液(a1)を有機溶媒分散液(k1)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3における樹脂組成物(k2)を調製した。
<樹脂成形体の成形>
実施例1において、樹脂組成物(a2)を樹脂組成物(k2)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3における樹脂成形体(k3)を成形した。
<吸水率の測定>
実施例1〜8及び比較例1〜3における樹脂成形体を、真空中で120℃24時間乾燥した。乾燥した樹脂組成物を25℃85%RHの恒温恒湿室内に保持してから、平沼産業株式会社製カールフィッシャー水分計(AQV−2100)で吸水率を測定した。結果を下記表1に示す。
<フレッシュ透過性の測定>
実施例1〜8及び比較例1〜3における樹脂成形体を、180℃プレスにより1mm厚で直径10mmの円板状とした。この1mm厚円板の樹脂成形体に対して、(株)日立ハイテクノロジーズ製の分光光度計(U−3310)で測定して波長600nmの点の透過率を求めることにより測定した。結果を下記表1に示す。
<ひび割れの評価>
前記1mm厚円板の樹脂成形体を、60℃90%RHの条件で1週間保存後、ひび割れについて下記の基準により評価を行った。結果を下記表1に示す。
−評価基準−
5:なし、4:わずかにあり、3:あり、2:かなり多い、1:全面に見られる
上記表1から明らかなように、実施例1〜8の樹脂成形体は、比較例1〜3の樹脂成形体に比較して、水分量が少なく、透明であり、高湿下でのひび割れも少ない良好な性能を示した。
本発明の有機溶媒分散液は、高い透明性を有し、吸水性が低く、形状変化やひび割れ等の劣化が起きにくい樹脂成形体を成形可能であるため、該樹脂成形体は、例えば、各種成形体、有機無機コンポジット材料、塗料、印刷用無機顔料インク、導電性膜、電磁シールド等の機能性膜用塗布液などに適用することができる。

Claims (6)

  1. 少なくとも、分散媒中に、メルカプト基含有化合物と、平均粒径が1nm〜20nmである無機ナノ粒子とを含み、前記メルカプト基含有化合物を前記無機ナノ粒子に対して2質量%〜60質量%含むことを特徴とする有機溶媒分散液。
  2. メルカプト基含有化合物がアルカンチオール、複素環系メルカプト化合物、及びヒドロオキシ基含有メルカプト化合物のいずれかを含む請求項1に記載の有機溶媒分散液。
  3. 少なくとも、請求項1から2のいずれかに記載の有機溶媒分散液と、樹脂溶解性の有機溶媒と、樹脂材料と、を含むことを特徴とする樹脂組成物。
  4. 有機溶媒が疎水性である請求項3に記載の樹脂組成物。
  5. 少なくとも、樹脂材料と、メルカプト基含有化合物で表面修飾され、分散された状態で含有される無機ナノ粒子と、を含むことを特徴とする樹脂成形体。
  6. 分散媒中に、平均粒径が1nm〜20nmである無機ナノ粒子に対して、メルカプト基含有化合物を2質量%〜60質量%混合させて有機溶媒分散液を調製する有機溶媒分散液調製工程と、
    前記分散媒と置換された樹脂溶解性の有機溶媒に樹脂材料を溶解させて樹脂組成物を調製する樹脂組成物調製工程と、
    前記樹脂組成物を乾燥させて樹脂成形体を得る樹脂成形工程と、
    を含むことを特徴とする樹脂成形体の製造方法。
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