JP2010195621A - セメント混和材及びセメント結合材 - Google Patents

セメント混和材及びセメント結合材 Download PDF

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Abstract

【課題】セメントやポゾラン質微粉末の違いによって流動性や強度が変動し易いという課題などを解決したセメント混和材及びセメント結合材を提供する。
【解決手段】ポリプロピレングリコールで表面処理したポゾラン質微粉末、高溶解性の無機酸や有機酸のカルシウム塩の中の一種以上を含有するセメント混和材であり、ポゾラン質微粉末100質量部に対して、ポリプロピレングリコール0.3〜4.0質量部で表面処理してなる前記セメント混和材である。セメントと、ポリプロピレングリコールで表面処理したポゾラン質微粉末、高溶解性の無機酸や有機酸のカルシウム塩の中の一種以上とを含有するセメント結合材である。
【選択図】なし

Description

本発明は、土木、建築分野、特に土木・建築構造物及びコンクリート二次製品で使用されるセメント混和材及びセメント結合材に関する。
高流動性・高強度を得るための基本技術として高減水率を発揮する減水剤が使用されている。なかでも、ポリカルボン酸塩系減水剤(高性能AE減水剤と呼称)の減水率や流動性が注目されている。
このポリカルボン酸塩系減水剤の高減水率を、更に向上する技術として、シリカフュームや20又は10μm以下に分級したフライアッシュ(例えば、特許文献1参照)、石炭ガス化フライアッシュ(例えば、特許文献2参照)などの球状粒子のポゾラン質微粉末を併用する技術も一般化している。
また、無水石膏及び/又はシリカフュームなどの高強度混和材の技術(特許文献3、4参照)を併用することにより、より高い強度のモルタル又はコンクリートの製造も容易となっている。
ポリカルボン酸塩系減水剤は、使用するセメントのロットや銘柄、種類によっては流動性が異なる。これを改善する技術として高溶解性の無機酸や有機酸のカルシウム塩を添加することが行われている(特許文献5、6参照)。
使用するセメントのロットや銘柄及び種類によって流動性が低下する原因は、セメント中に溶解度の高いアルカリ金属硫酸塩の含有量が多いとアルカリ金属硫酸塩のSOイオンが、先にセメント粒子表面などに吸着してポリカルボン酸塩系減水剤の吸着を阻害し、ポリカルボン酸塩系減水剤の分散効果が発揮できないためとされている。
シリカフュームは、流動性と高強度の両方を助長又は発現するポゾラン質微粉末であり、かつ、球状粒子形の重要な成分であるが、数ミクロン以下の超微粉末であることからモルタル又はコンクリートの中で凝集し易く分散性に課題がある。さらに、シリカフュームはシリコン金属やシリコンアロイを電気炉で製造するときに発生するアッシュを捕集した副産物であるために嵩密度が著しく小さいので、輸送効率を高めるために顆粒状に増粒されているために、モルタル又はコンクリート中での分散性がより低下する傾向にある。
一方、嵩密度が小さく、凝集又は圧密固化し易いポゾラン質微粉末にポリプロピレングリコールを添加して粉砕処理するなどして表面処理し、嵩密度を大きくしながら圧密固化を防止する方法が提案されている(特許文献7参照)。
特公平02−049264号公報 特開2001-19527号公報 特開平03−040947号公報 特開平08−301642号公報 特開平11−180746号公報 特開2002−037653号公報 特開2005−263566号公報
本発明は、ポリカルボン酸塩系減水剤を添加したモルタルやコンクリートは、使用するセメントのロットや銘柄および種類によって流動性が低下する場合があることや、さらに、超微粉末のポゾラン質微粉末はモルタルやコンクリート中で凝集し易く、あるいは増粒された顆粒状のポゾラン質微粉末の分散性の違いによって流動性や強度が変動し易いという課題を解決するものであり、ポリプロピレングリコールで表面処理したポゾラン質微粉末を含有し、かつ、高溶解性の無機酸や有機酸のカルシウム塩とを組み合わせることにより、相乗的により高い流動性とより高い強度が得られ、より少ないポゾラン質微粉末量やポリカルボン酸塩系減水剤量で効果を発揮することを知見し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、(1)ポリプロピレングリコールで表面処理したポゾラン質微粉末と高溶解性の無機酸や有機酸のカルシウム塩の中の一種以上を含有するセメント混和材、(2)ポゾラン質微粉末100質量部に対して、ポリプロピレングリコール0.3〜4.0質量部で表面処理してなる(1)のセメント混和材、(3)セメントと、ポリプロピレングリコールで表面処理したポゾラン質微粉末、高溶解性の無機酸や有機酸のカルシウム塩の中の一種以上とを含有するセメント結合材、(4)セメント100質量部にポリプロピレングリコールで表面処理したポゾラン質微粉末で10〜100質量%置換したポゾラン質微粉末を4〜40質量部配合したもの100質量部に対して、高溶解性の無機酸や有機酸のカルシウム塩の中の一種以上を無水物換算で0.05〜1.0質量部添加したセメント結合材、である。
本発明のセメント混和材及びセメント結合材に依れば、(1)ポリカルボン酸塩系減水剤の、SOイオンに由来する流動性の低下や、ポゾラン質微粉末の凝集などにより、流動性や強度が充分改善できないなどの課題が解決される、(2)少ない減水剤量やポゾラン質微粉末量で良好な流動性や高い強度が得られる、(3)土木建築構造物の建設およびコンクリート二次製品を製造する上で、耐久性が高く、経済的で有利な設計が可能となる。
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明で使用するポゾラン質微粉末とは、流動性を向上させる粒子形が球状のものである。すなわち、電気炉によるシリコン合金や金属シリコン製造時に発生するシリカフューム及びジルコニア由来のシリカフューム、微粉炭焚き火力発電所から副生するフライアッシュを20ミクロン又は10ミクロン以下に分級したもの、ガス化させた石炭を燃焼させる火力発電所から副生する石炭ガス化フライアッシュ、溶融シリカ微粉末などであり、これらの一種又は二種以上が使用される。特に、流動性の改善効果も大きい超微粉末のシリカヒュームは最も好ましく、このシリカフュームをベースに、それよりも粒子径の大きい分級フライアッシュや石炭ガス化フライアッシュ、溶融シリカ微粉末を少量併用すると流動性が向上するので、さらに好ましい。
本発明では、セメント100質量部に対して全ポゾラン質微粉末量として4〜40質量部配合するが、その中の一部〜全部をポリプロピレングリコールで表面処理したポゾラン質微粉末を含有させるものである。ポリプロピレングリコールで表面処理したポゾラン質微粉末の含有量や表面処理するポリプロピレングリコール量によって、高溶解性の無機酸や有機酸のカルシウム塩と併用した場合の、流動性や強度の改善効果の程度は異なるが、この際、ポゾラン質微粉末は4質量部から流動性や強度の改善効果を示し、配合量を多くしてゆくとその改善効果は顕著に大きくなるが、40質量部を超えて配合しても、流動性や強度の改善効果は頭打ちとなるものであり、6〜30質量部がより好ましい。
本発明は、ポリプロピレングリコール(以下、PPGという)で表面処理したポゾラン質微粉末を使用する。
PPGはジオール型とトリオール型があり、その平均分子量が300、400、700、1000、2000、3000、4000程度のものが粘ちょう性の液体として市販されており、これらが使用される。
ポゾラン質微粉末100質量部に対してPPGを0.3〜4.0質量部添加して表面処理する。PPGが0.3質量部未満では無機酸や有機酸のカルシウム塩と併用しても相乗的な流動性や強度の改善効果は小さく、4.0質量部を超えて添加しても改善効果は頭打ちとなる。より好ましくは、0.5〜3.0質量部である。また、同一添加量では、平均分子量が大きい方が改善効果は大きくなる傾向を示す。
なお、PPGは単にモルタル又はコンクリートを練り混ぜるときに添加しても全く改善効果は示されないものである。
PPGによるポゾラン質微粉末の表面処理方法としては、粉砕機で粉砕又は解砕する方法が好ましく、ポゾラン質微粉末とPPGを混合した後、粉砕機に通すか、粉砕機にポゾラン質微粉末を供給する過程でPPGを滴下しながら粉砕又は解砕して表面処理する。粉砕方式としては、高速回転する刃や突起による剪断粉砕方式やボールミル又は振動ミルなどの磨砕粉砕方式など、いずれでもよいものである。
そして全ポゾラン質微粉末4〜40質量部の中の10〜100質量%をPPGで表面処理したポゾラン質微粉末を置換してセメント混和材の一部とする。10質量%未満の置換量では無機酸や有機酸のカルシウム塩と併用しても相乗効果は小さく、好ましくは、20質量%以上であり、より好ましくは25質量%以上で、置換量が多いほど流動性は向上し、より強度も高くなるものである。すなわち、一定の流動性や強度を得るためには減水剤量が少なくなり、かつ、シリカヒュームなどのポゾラン質微粉末量も少なくて済み、経済的にもなる。
本発明で使用する高溶解性の無機酸、有機酸のカルシウム塩とは、酢酸、硝酸、亜硝酸、チオシアン酸、シアン酸、蟻酸などのカルシウム塩(以下、カルシウム塩という)である。カルシウム塩はSOイオン由来のポリカルボン酸塩系減水剤の流動性の低下を改善するが、ポリプロピレングリコールで表面処理したポゾラン質微粉末などを含有したセメント結合材と併用することにより、相乗的に流動性や強度を改善するものである。
カルシウム塩は、セメント100質量部にポゾラン質微粉末を配合したもの100質量部に対して、無水物換算で0.05〜1.0質量部配合され、0.05質量部未満では流動性改善効果は小さく、配合量が多くなるほど相乗的に流動性を改善するが、1.0質量部を超えて配合してもその効果は頭打ちとなる。好ましくは0.1〜0.5質量部である。
本発明では、より高強度を得るために石膏を使用することは好ましい。使用する石膏は、II型の無水石膏、二水石膏、半水石膏、III型の可溶性無水石膏であり、いずれも使用されるが、天然産やフッ酸発生副生セッコウ、二水石膏、半水石膏、IIIの可溶性無水石膏などを熱処理して得られる、II無水石膏が最も好ましい。
石膏は、アルカリ金属の硫酸塩よりも溶解速度が遅いので高性能AE減水剤の流動性を低下させる原因にはならなく、セメント中のアルミナ成分と反応して、空隙占有率が高く、高い結晶強度を有するエトリンガイトを生成して高強度化を促すものである。
石膏は無水物換算及び純度換算で、セメント100質量部にポゾラン質微粉末を配合したもの100質量部に対して0.5〜6質量部であり、0.5質量部未満では添加効果は小さく、6質量部を超えて配合しても強度の増加は頭打ちとなり、1.0〜4質量部が好ましく、水結合材比が小さくなるほど少ない添加量で効果を発揮する。また、粉末度も特に限定されなく、普通ポルトランドセメントと同等以上であればよい。なお、本発明のセメント混和材を製造する際に、石膏はポゾラン質微粉末と一緒にPPGで表面処理しても、しなくても構わない。
ポゾラン質微粉末の中で球状粒子ではないが、粘土鉱物を熱処理した白土、メタカオリンなどの微粉末、ケイ化木の焼却灰(非晶質SiOが主成分)、ケイソウ土、オパール質シリカ粉末などは、強度を高めるので適宜併用することは好ましい。これらはPPGで表面処理したものでも、しないものでも使用できる。
本発明の対象となるポリカルボン酸塩系減水剤とは、通常、高性能AE減水剤と呼称されるものであり、不飽和カルボン酸モノマーを一成分として含む共重合体又はその塩であり、例えば、ポリアルキレングリコールモノアクリル酸エステル、ポリアルキレングリコールモノメタクリル酸エステル、無水マレイン酸及びスチレンの共重合体やアクリル酸やメタクリル酸塩の共重合体及びこれらの単量体と共重合可能な単量体から導かれた共重合体などが挙げられる。
具体的には、BASFポゾリス(株)社商品名「レオビルドSP8SV/8RV,8HV,8HUなどのレオビルドSP8シリーズ」、日本シーカ(株)社商品名「シーカメント1100NT、1100NTRなどのシリーズ」、竹本油脂(株)社商品名「チュポールHPシリーズ,チュポールSR、チュポールSSP−104、チュポールNV−Gシリーズ」、グレースケミカルズ(株)社商品名「スーパー200、300,1000シリーズ」、花王(株)社商品名「マィティ21WH,21LV,21VS,21HF,21HP,マィティ3000S,3000Hシリーズ」、(株)フローリック社商品名「SF500S,SF500R、SF500H,SF500SKなどのSF500シリーズ」、その他、高強度用、超高強度用として市販されているものが使用される。
ポリカルボン酸塩系減水剤の、モルタル又はコンクリートに使用する量は、目的、用途により任意に決定され、特に限定されないものである。
本発明では、主に、設計基準強度100N/mm以上の超高強度を対象とするので、モルタルやコンクリートの水結合材比(練り混ぜ水+ポリカルボン酸塩系減水剤/本発明のセメント結合材)は25質量%以下とすることが好ましい。本発明では、作業性を維持しながら12質量%程度まで低下させることが出来る。また、モルタルやコンクリートの製造に使用する細骨材や粗骨材の種類や最大寸法は特に限定されなく、適宜、好ましいものを組み合わせて用いる。
本発明のセメント混和材や結合材を用いて、モルタルやコンクリートを製造する際に使用するセメントの種類は、普通、早強、中庸熱、低熱、白色、耐硫酸塩などの各種ポルトランドセメント及びフライアッシュ(分級していない)セメント、高炉スラグセメントなどの混合セメントである。
流動性の観点では混合セメントや低熱、中庸熱、耐硫酸塩セメントが好ましく、初期強度の観点からでは普通、早強、超早強、中庸熱セメント、混合セメントが好ましい。
本発明のセメント混和材や結合材を使用して、モルタルやコンクリートを製造する際に、必要によって、凝結調節剤や、消泡剤および自己収縮を低減するために収縮低減剤及び/又は膨張材を適量併用することが出来る。また、曲げ強度や靱性を高めるために有機繊維や金属繊維、ガラス繊維その他の補強用繊維が利用できる。
さらに、本発明のセメント混和材や結合材を用いて製造したモルタルやコンクリートは蒸気養生してもしなくても良いし、オートクレーブ養生も可能であり、養生方法は特に制限されない。
以下、本発明を実施例にて詳細に説明するが、これらに限られるものではない。
実施例で使用する材料と試験項目とその方法を以下にまとめて示す。
「使用材料」
(1)銘柄の異なるセメント
C−I:普通ポルトランドセメント(5銘柄の内、平均的なフロー値を示した銘柄)
C−II:普通ポルトランドセメント(5銘柄の内、最もフロー値の出なかった銘柄)
(2)細骨材:安山岩砕砂(5mm下、以下、Sという)
(3)粗骨材:安山岩砕石,最大寸法(13mm、以下、Gという)
(4)ポゾラン質微粉末(以下、Pozz.という)
A:シリカフューム、顆粒状、表面処理なし
B:AをPPGで表面処理
C:分級フライアッシュ(20μ以下)、表面処理なし
D:CをPPGで表面処理
なお、PPGによる表面処理は、後記するPPGイ、ロ、ハを使用し、振動ミルで、定量フィードするベルトコンベアー上のポゾラン質微粉末に滴下しながら、粉砕・解砕する方法によって行った。
(5)石膏:II型無水石膏(CSという。天然産、 粉末度4000cm/g)
(6)高溶解性の無機酸、有機酸のカルシウム塩(以下、Ca塩という)
A:酢酸カルシウム
B:蟻酸カルシウム
C:亜硝酸カルシウム
(7)PPG
イ:平均分子量300、ジオール型
ロ:平均分子量1000、ジオール型
ハ:平均分子量3000、トリオール型
(8)ポリカルボン酸塩系減水剤
有効成分濃度27質量%の市販品、高強度・超高強度用(以下、PCという)
(9)水(W)
「試験項目とその方法」
(1)モルタルフローの測定
JIS R 5201に準じた。但し、抜き上げたときのフロー値を測定した。また、測定は、フローテーブルの上に50×50×2tcmのアクリルガラス板を乗せて、その上で行った。
(2)モルタルの成型、強度の測定方法
圧縮強度はφ5×10cmの型枠に、流し込み成型又はテーブル振動成型(フロー値が240mm以下と小さい)し、所定の養生後、強度測定した。
(3)コンクリートの成型、圧縮強度の測定
圧縮強度はφ10×20cmの型枠に、流し込み成型又はテーブル振動成型(フロー値が240mm以下と小さい)し、所定の養生後、強度測定した。
なお、モルタル又はコンクリートの練り混ぜは、セメント結合材、カルシウム塩、細骨材や、細骨材と粗骨材を30秒間空練りした後、ポリカルボン酸塩系減水剤を溶解した練り混ぜ水を添加して練り混ぜた。モルタルの場合は、JIS R5201によるモルタルミキサで約1L分練り混ぜ、コンクリートはオムニミキサで10L分練り混ぜた。
「実施例1」
セメント100質量部に対して、全ポゾラン質微粉末量と、PPG処理していないポゾラン質微粉末A又はCと、A又はCをPPGで表面処理したポゾラン質微粉末B又はDとの置換比率を任意に変えて配合して便宜上、実施例ではセメント結合材とし、カルシウム塩として酢酸カルシウムを使用してモルタルを練り混ぜた。
なお、ポゾラン質微粉末の表面処理は、ポゾラン質微粉末100質量部に対して、ロのPPGを1.0質量部添加して行った。モルタルの配合は、セメント結合材100質量部に対して細骨材を100質量部とし、水結合材比(水+ポリカルボン酸塩系減水剤/セメント結合材)は16質量%とした。また、セメント結合材100質量部に対する、ポリカルボン酸塩系減水剤量は3質量部、酢酸カルシウムを無水物換算で0.2質量部の一定量を添加して、モルタルを練り混ぜ、モルタルフローと圧縮強度を測定した。
供試体の養生方法は、打設後、標準養生を翌日まで行い、脱型して75℃×20時間蒸気養生し、蒸気養生室で翌日まで徐々に冷却して、材齢3日で強度測定した。このときの強度は標準養生の材齢91日に相当する強度となり、短期間に、ほぼ、セメント結合材の有する100%の強度が発現する。
その結果を、表1、2、3に示す。
表1、2、3より、実施例、比較例共に、ポゾラン質微粉末の配合量を多くするとフロー値と強度が向上する。しかし、比較例では、ポゾラン質微粉末をPPGで処理してもしなくても、カルシウム塩と併用しなければ、フロー値に顕著な差はない(実験No.1-1〜No.1-7と実験No.1-8〜No.1-14の比較)。また、PPG処理しないポゾラン質微粉末とカルシウム塩との組み合わせでは、フロー値と強度は向上する(実験No.1-1〜No.1-7と実験No.1-15〜No.1-21の比較)が、フロー値で観ると、大きくてもその差は40mm程度である(実験No.16とNo.1-20の比較)。
本発明において、PPG処理していないポゾラン質微粉末をPPG処理したポゾラン質微粉末で置換して、カルシウム塩を併用した場合は、その置換率を高くしてゆくほど、流動性や強度の改善効果は相乗的に大きくなり、置換率が10質量%から改善効果が認められる(実験No.1-15〜No.1-21と実験No.1-22〜No.1-63の比較)。そして、置換率20質量%以上が好ましく、より好ましくは25質量%以上であることが分かる。また、このときのポゾラン質微粉末の配合量は4質量部でも効果は示されるが、6質量部からより顕著に改善効果が示される(実験No.1-15、No.16、No.1-22、No.23、No.1-29、No.1-30、No.1-36、No.1-37の比較)。ポゾラン質微粉末量は30〜40質量部で流動性も強度の改善効果も頭打ちとなる傾向が示される(例えば、実験No.1-20、No.21、No.1-27、No.28、No.1-34、No.1-35、No.1-41、No.1-42の比較)ことから、40質量部以下、6〜30が好ましいことが分かる。
PPG処理したポゾラン質微粉末を分級フライアッシュとした場合は、ポゾラン反応に乏しいので強度的には大きな効果はないが、フロー値で60mm以上の改善効果がある(実験No.1-64〜No.66とNo.1-67〜No.69の比較)。また、シリカフュームと分級フライアッシュにおいて、PPG処理したものとしないものの、異なった粒子径同士の組み合わせでは、より大きな流動性の改善効果が示される(実験No.1-70,No1-.71と実験No.1-47,No.1-54の比較)。
Figure 2010195621
Figure 2010195621
Figure 2010195621
「実施例2」
セメント100質量部に対して、ポゾラン質微粉末を20質量部とし、その中のポゾラン質微粉末Aと、AをPPGで表面処理したポゾラン質微粉末Bの質量比率を65/35として、セメント結合材100質量部に対してカルシウム塩の種類と添加量を変えて、実施例1と同様の試験を行った結果を4、5に示す。ただし、表面処理したポゾラン質微粉末は、実施例1と同じものを使用し、比較例はポゾラン質微粉末Aのみを20質量部配合した。なお、この際、フロー値の最も小さいC−IIセメント銘柄についても比較した。
表4、5より、カルシウム塩は0.05質量部から流動性と強度改善効果が示し、その種類に拘わらず0.1質量部以上で、より顕著となり、配合量が多くなるほど、より相乗的に流動性と強度が改善される。また、0.5質量部以上配合しても流動性や強度改善効果が頭打ちとなることも分かる(例えば、実験No.2-1〜No.2-7とNo.2-8〜No.2-15)。したがって、カルシウム塩の添加量は0.05〜1.0質量部であり、好ましくは0.1〜0.5質量部である。なお、カルシウム塩の中でも酢酸カルシウムは他のカルシウム塩よりも改善効果が大きく(実験No.2-10〜No.2-14とNo.2-16〜No.2-25の比較)、また、カルシウム塩の配合量が多くなり過ぎると流動性や強度が低下してくる理由は、カルシウム塩自身が強力なセメントの凝結硬化促進剤であるためと考えられる。
最もフロー値の出ないセメント銘柄C−IIを使用した実験No.2-26〜33においても、平均的フロー値のセメント銘柄C−Iを用いた実験No.2-8〜No.2-15と同様の傾向を示し,特に,カルシウム塩が0.1質量部以上でモルタルの自己充填に必要とされる240mm以上のフロー値が容易に得られ、好ましいカルシウム塩の量は0.1〜0.5質量部であることが示される。
Figure 2010195621
Figure 2010195621
「実施例3」
セメント100質量部にポゾラン質微粉末を20質量部とし、表面処理していないポゾラン質微粉末Aと、AをPPGの平均分子量と添加量を変えて表面処理したポゾラン質微粉末Bの質量比率を65/35とした。そしてこのセメント結合材100質量部に対して、カルシウム塩として酢酸カルシウムを0.2質量部の一定量を添加し、実施例1と同様の試験を行った結果を表6に示す。
ただし、比較例はセメント100質量部に対して、ポゾラン質微粉末Aを20質量部、酢酸カルシウム0.2質量部を配合した。
表6より、ポゾラン質微粉末の表面処理のPPG量が0.3質量部以上で、カルシウム塩と併用した場合に流動性や強度の改善効果を示し、0.5質量部以上で、より相乗的に改善効果を示すが、PPGを3〜4質量部と多くしてもその改善効果は頭打ちとなる(例えば、実験No.3-1〜No.3-8)。したがって、PPG量は、0.3〜4質量部であり、より好ましくは0.5〜3質量部である。
また、PPGの平均分子量を変えた場合は、平均分子量が高くなると、より相乗的に改善効果が示される傾向にある(例えば、実験No.3-10〜No.3-13とNo.3-15〜No.3-18)。また、ジオール型、トリオール型の差は明らかでない)。
Figure 2010195621
「実施例4」
セメント結合材として実施例1の実験No.1-20とNo.1-47に、石膏の配合量を変えて調製し、石膏を加えたセメント結合材と細骨材の比率及び水結合材比(水+ポリカルボン酸塩系減水剤/セメント+ポゾラン質微粉末又はセメント+ポゾラン質微粉末+石膏)、セメント結合材に対するポリカルボン酸塩系減水剤の添加量を変えてモルタルフロー値が300±20mmとなるようにしたモルタル配合を表7に示す。そして実施例1と同様の試験を行った結果を表8に示す。
表7、8より、本発明の相乗効果は、水結合材比に関係なく発揮され、モルタルフロー値を一定とすると、いずれの水結合材比においても、少ないポゾラン質微粉末量と少ないポリカルボン酸塩系減水剤量で高い強度が得られることが分かる。また、水結合材比25質量%以下とすることで、設計基準強度100N/mm2以上の高流動・高強度モルタルが得られる(実験No.4-1,No.4-3,No.4-8,No.4-10,No.4-14,No.4-16)。
石膏の強度的効果は、水結合材比25質量%では4〜6質量部、水結合材比20質量%は2.5〜4質量部、水結合材比16質量%の場合は1.5〜3質量部、水結合材比12質量%では1〜2質量部でピークに達し、30〜10N/mm2強の強度増進効果が示される。なお、水結合材比12質量%では0.5質量部でも強度は高くなる(実験No.4-3〜No.4-23)。したがって、石膏量は無水物換算で0.5〜6質量部、好ましくは1.0〜4.0質量部であり、水結合材比が小さくなるほど少ない石膏量で効果を発揮する。
ポゾラン質微粉末を併用しないで、石膏を単独で配合した場合も、同一フロー値を得るためのポリカルボン酸塩系減水剤量は多くなる。
Figure 2010195621
Figure 2010195621
「実施例5」
実施例4の実験No.4-6、No.4-12、No.4-18とNo.4-22のモルタル7.0Lを秤り採り、粗骨材を3.0Lと練り混ぜ(モルタル0.7m/m、粗骨材0.3m/m(800kg/m、密度2.66g/cm)のコンクリート)、高流動コンクリートを作製し、スランプフロー値と圧縮強度を測定した結果を表9に示した。
なお、供試体の養生方法は実施例1と同様にした。
表9より、本発明の効果は、コンクリートとした場合も充分得られる。
Figure 2010195621
本発明のセメント混和材及びセメント結合材は、(1)ポリカルボン酸塩系減水剤の、SOイオンに由来する流動性の低下や、ポゾラン質微粉末の凝集などにより、流動性や強度が充分改善できないなどの課題が解決される、(2)少ない減水剤量やポゾラン質微粉末量で良好な流動性や高い強度が得られる、(3)土木建築構造物の建設およびコンクリート二次製品を製造する上で、耐久性が高く、経済的で有利な設計が可能となる、などの効果を奏するので、土木、建築分野で幅広く使用される。

Claims (4)

  1. ポリプロピレングリコールで表面処理したポゾラン質微粉末と高溶解性の無機酸や有機酸のカルシウム塩の中の一種以上を含有することを特徴とするセメント混和材。
  2. ポゾラン質微粉末100質量部に対して、ポリプロピレングリコール0.3〜4.0質量部で表面処理してなる請求項1のセメント混和材。
  3. セメントと、ポリプロピレングリコールで表面処理したポゾラン質微粉末、高溶解性の無機酸や有機酸のカルシウム塩の中の一種以上とを含有することを特徴とするセメント結合材。
  4. セメント100質量部にポリプロピレングリコールで表面処理したポゾラン質微粉末で10〜100質量%置換したポゾラン質微粉末を4〜40質量部配合したもの100質量部に対して、高溶解性の無機酸や有機酸のカルシウム塩の中の一種以上を無水物換算で0.05〜1.0質量部添加したセメント結合材。
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