JP2010195293A - 機体底面構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】 機体の接地時におけるスムーズな制動を
可能とする機体底面構造を提供すること。
【解決手段】 本発明に係る機体底面構造1では、機体の本体部2に設けられた制動部10は、機体の滑走距離が長くなるほど地面に対する摩擦係数が増大するため、機体の滑走距離が短い滑走初期時にはこの摩擦係数は比較的小さくなって動摩擦力が小さくなる。また、機体の滑走距離が長くなるほど制動部10における摩擦係数が増大するため、機体のスムーズな滑走を妨げることなく徐々に動摩擦力が増大して機体を更に減速させることができる。よって、機体の接地時におけるスムーズな制動が可能となる。
【選択図】図1

Description

本発明は、航空機の機体底面構造に関する。
従来、航空機の機体が緊急事態により接地する際、機体を制動するための機体底面構造が提案されている。例えば、特開2001−158398号公報に記載の構造では、機体下部の接地部に靭性の高いモリブデン系合金製の摩擦材を固定し、機体接地時にその摩擦材が地面に接触して地面を磨耗させ、摩擦力を生じることにより機体の制動を可能としている。
特開2001−158398号公報
しかしながら、特許文献1に記載された構造では、機体制動のための摩擦力は得られるものの、靭性の高いモリブデン系合金製の摩擦材を用いているため、例えば機体の速度や地面の状態によっては、得られる摩擦力が過大となることが考えられる。そのため、機体の接地時においてスムーズな制動がなされないという問題があった。
そこで本発明は、このような技術課題を解決するためになされたものであって、機体の接地時におけるスムーズな制動を可能とする機体底面構造を提供することを目的とする。
すなわち本発明に係る機体底面構造は、機体の底部に設けられ、機体が地面に接触しながら滑走する際に地面から受ける摩擦力を利用して機体を制動させる制動部を備え、制動部は、機体の滑走距離が長くなるほど地面に対する摩擦係数が増大することを特徴とする。
本発明に係る機体底面構造によれば、機体が地面に接触しながら滑走する際、機体の底部に設けられた制動部は、地面から受ける摩擦力を利用して機体を制動させる。この制動部は、機体の滑走距離が長くなるほど地面に対する摩擦係数が増大するため、機体の滑走距離が短い滑走初期時にはこの摩擦係数は比較的小さくなり、摩擦力が小さくなる。このため制動部は、滑走初期時には機体をスムーズに滑走させつつ漸次減速させる。
また、機体の滑走距離が長くなるほど制動部における摩擦係数が増大するため、機体のスムーズな滑走を妨げることなく、徐々に摩擦力が増大して機体を更に減速させることができ、機体を停止させることができる。このように、本発明に係る機体底面構造によれば、機体の接地時におけるスムーズな制動が可能となる。
また、本発明に係る機体底面構造において、制動部は、少なくとも第1部材と第2部材とが積層されてなり、第1部材は第2部材よりも上方に配置され、第1部材の地面に対する摩擦係数は、第2部材の地面に対する摩擦係数よりも大きいことが好ましい。
この発明によれば、制動部において、第1部材は第2部材よりも上方に配置されている。すなわち第2部材は、第1部材よりも下方に配置されているため、機体が地面に接触しながら滑走する際、第1部材よりも先に接地して地面からの摩擦力を受ける。この第2部材の地面に対する摩擦係数は、比較的小さくされている。
また、地面からの摩擦力を受けて第2部材の磨耗が進むと、第1部材が露出し、接地して地面からの摩擦力を受ける。この第1部材の地面に対する摩擦係数は、比較的大きくされている。このような構成により、滑走距離に応じて段階的に摩擦係数が増大するため、それに伴って摩擦力は増大し、スムーズな機体の制動がより一層好適に実現される。
また、本発明に係る機体底面構造において、第1部材は、繊維強化樹脂によって形成され、鉛直方向に沿って配置された繊維を第2部材よりも多く含むことが好ましい。
この発明によれば、第2部材の磨耗が進行して第1部材が露出し、接地すると、第1部材は鉛直方向に沿って配置された繊維を第2部材よりも多く含んで形成されているため、地面に対する抵抗が大きくなり、摩擦係数は増大する。よって、機体の速やかな制動が可能となり、機体が停止するまでの滑走距離を短くできる。
また、本発明に係る機体底面構造において、第1部材は熱可塑性樹脂によって形成され、第2部材は熱硬化性樹脂によって形成されていることが好ましい。
この発明によれば、熱硬化性樹脂によって形成された第2部材は、滑走初期時に接地して地面からの摩擦力を受けると、熔出することなく磨耗する。その後、熱可塑性樹脂によって形成された第1部材が露出し接地すると、地面との摩擦熱により第1部材が加熱され、熱可塑性樹脂が熔出する。そしてこの熔出した熱可塑性樹脂により更に大きい摩擦力が生じ、機体の速やかな制動が可能となる。
また、本発明に係る機体底面構造において、制動部は、機体の本体部から突出して設けられたアンカー部材を介して機体に取り付けられていることが好ましい。
この発明によれば、機体が地面に接触しながら滑走する際、制動部が地面からの摩擦力を受け、その磨耗が進むと、機体の本体部から突出して設けられたアンカー部材が露出して接地することとなる。この露出したアンカー部材が抵抗となって機体は大きな摩擦力を受けるため、機体の速やかな制動が可能となる。
本発明に係る機体底面構造によれば、機体の接地時におけるスムーズな制動が可能となる。
本発明の第一実施形態に係る機体底面構造の側断面図である。 図1の機体底面構造による機体の制動を示す模式図である。 図1の機体底面構造が機体制動時に磨耗した状態を示す図である。 第二実施形態に係る機体底面構造の側断面図である。 図4の機体底面構造が機体制動時に磨耗した状態を示す図である。 第三実施形態に係る機体底面構造の側断面図である。 図6の機体底面構造が機体制動時に磨耗した状態を示す図である。
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(第一実施形態)
図1は、第一実施形態に係る機体底面構造の側断面図である。図1に示す機体底面構造1は、機体Aの胴体の底部に設けられた制動部10を備えている。この制動部10は、機首部の下方から機体前後方向の中央部付近まで延設されており、図1ではその一部を拡大して示している。
制動部10は、機体幅方向に所定の幅を有する板状の部材であり、機体Aの胴体を形成する本体部2に取り付けられている。制動部10は、第1部材としてのキャビン側EA材11と、第2部材としての底面側EA材12とが積層されてなり、キャビン側EA材11は底面側EA材12の上方に配置されている。すなわち、制動部10において、キャビン側EA材11は上層を、底面側EA材12は下層を構成している。なお、ここでいう「EA」は「Energy Absorption」の略語であり、「EA材」は「エネルギー吸収材」を意味する。
キャビン側EA材11及び底面側EA材12は、繊維強化樹脂の一種である炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastics;以下の説明においては「CFRP」という。)によって形成されている。また、キャビン側EA材11と底面側EA材12とにおいて、各CFRPに含まれる炭素繊維の向きが異なっている。
より具体的に説明すると、キャビン側EA材11は、鉛直方向に沿って配置された炭素繊維を底面側EA材12よりも多く含んでいる。また底面側EA材12は、例えば斜め方向や水平方向に沿って配置された炭素繊維を多く含んでいる。また、底面側EA材12は、キャビン側EA材11に比して強度が弱く磨耗しやすい性状とされている。
このため、キャビン側EA材11が地面に対して前後方向すなわち図1の左右方向に摺動接触する場合、鉛直方向に沿って配置された炭素繊維が抵抗となって大きい動摩擦力が生じる。一方、底面側EA材12が地面に対して前後方向に摺動接触する場合、キャビン側EA材11が摺動接触する場合に比して、動摩擦力は小さくなる。すなわち、キャビン側EA材11の地面に対する動摩擦係数は、底面側EA材12の地面に対する動摩擦係数よりも大きくされている。
以上の構成を有する制動部10は、緊急時において、機体Aの胴体が地面に接触しながら滑走する際に地面から受ける摩擦力を利用して機体を制動させる機能を有している。以下、その機能について詳述する。
以下の説明では、機体が前傾した状態でその機首部から接地する場合について説明する。図2では、機体Aが地面Gに接触しながら地面Gの上を滑走する様子を、右から左に向けて経時的に示している。まず、ステップS1に示すように、機体底面構造1を備えた機体Aが、前傾した状態にて、所定の速度で地面Gに接触する。
続いて、ステップS2に示すように、機体Aの胴体全体が接地することとなり、これと同時に機体底面構造1の制動部10が接地する。より詳しくは、制動部10の下層を構成する底面側EA材12が地面Gに接触しながら、機体Aは地面G上を滑走する。ここで、底面側EA材12は、地面Gに対する動摩擦係数が小さくされているため、制動部10が地面Gから受ける動摩擦力は比較的小さくなる。このため、前のめりやロールオーバーが防止されつつ、機体Aは安定した姿勢にてスムーズに減速する。
こうして機体Aが減速する過程において、底面側EA材12は、地面Gからの動摩擦力を受けながら磨耗する。そして、底面側EA材12の磨耗が進み摩滅に至ると、制動部10の上層を構成するキャビン側EA材11が露出して地面Gに接触し、図2のステップS3に示す状態となる。図2では、磨耗が進んだ制動部10の図示を省略しているが、その拡大図を図3に示す。
図3に示すように、キャビン側EA材11が地面Gに速度Vにて接触した状態においては、鉛直方向に沿って配置された炭素繊維が露出し、キャビン側EA材11は地面Gから動摩擦力を受ける。これによって、炭素繊維のマイクロバックリングによる破壊が進行し、地面Gに対するキャビン側EA材11の動摩擦係数はさらに増大し、大きな動摩擦力Fが生じる。その結果、機体Aは大きく減速し、図3のステップS4に示す停止状態となる。
以上説明したように、本実施形態に係る機体底面構造1によれば、機体Aが地面Gに接触しながら滑走する際、機体Aの底部に設けられた制動部10は、地面Gから受ける動摩擦力Fを利用して機体Aを制動させる。この制動部10は、機体Aの滑走距離が長くなるほど地面Gに対する摩擦係数が増大するため、機体Aの滑走距離が短い滑走初期時にはこの摩擦係数は比較的小さくなり、動摩擦力Fが小さくなる。このため制動部10は、滑走初期時には機体Aをスムーズに滑走させつつ漸次減速させる。
また、機体Aの滑走距離が長くなるほど制動部10における摩擦係数が増大するため、機体Aのスムーズな滑走を妨げることなく、徐々に動摩擦力Fが増大して機体Aを更に減速させることができ、機体Aを停止させることができる。このように、機体底面構造1によれば、機体Aの接地時におけるスムーズな制動が可能となる。
また、機体底面構造1によれば、底面側EA材12は、キャビン側EA材11よりも下方に配置されているため、機体Aが地面Gに接触しながら滑走する際、キャビン側EA材11よりも先に接地して地面Gからの動摩擦力Fを受ける。この底面側EA材12の地面Gに対する摩擦係数は、比較的小さくされている。
地面Gからの摩擦力Fを受けて底面側EA材12の磨耗が進むと、キャビン側EA材11が露出し、接地して地面Gからの動摩擦力Fを受ける。このキャビン側EA材11の地面Gに対する摩擦係数は、比較的大きくされている。このような構成により、滑走距離に応じて段階的に摩擦係数が増大するため、それに伴って動摩擦力Fは増大し、スムーズな機体Aの制動がより一層好適に実現される。
また、機体底面構造1によれば、底面側EA材12の磨耗が進行してキャビン側EA材11が露出し、接地すると、キャビン側EA材11は鉛直方向に沿って配置された繊維を底面側EA材12よりも多く含んで形成されているため、地面Gに対する抵抗が大きくなり、摩擦係数は増大する。よって、機体Aの速やかな制動が可能となり、機体Aが停止するまでの滑走距離を短くできる。
従来の航空機における機体の衝撃吸収構造あるいは姿勢制御構造においては、機体が高速で接地した場合、滑走距離が長くなり、スムーズに停止させることは難しかった。また、従来のEA材は潰れ方向のエネルギーを瞬時に吸収する能力において優れていたが、摩擦や磨耗といった現象に対して望ましい特性が実現されたものはなかった。さらには、逆噴射やパラシュート等を用いたブレーキ機構では、機体を効果的に制動し得る制動力を確保することが難しかった。
本実施形態の機体底面構造1によれば、緊急時における装置の操作等は必要とせずに、機体底面のEA構造を利用した安定かつスムーズな制動を行うことが可能となる。
(第二実施形態)
図4は、第二実施形態に係る機体底面構造の側断面図である。図4に示す機体底面構造20は、図1に示した機体底面構造1とは、制動部21の上層を構成するキャビン側EA材22は熱可塑性樹脂によって形成され、下層を構成する底面側EA材23は熱硬化性樹脂によって形成されている点で異なっている。なお、キャビン側EA材22及び底面側EA材23がCFRPによって形成されている点では、同様である。
このような機体底面構造20によれば、熱硬化性樹脂によって形成された底面側EA材23は、滑走初期時に接地して地面Gからの動摩擦力を受けると、熔出することなく磨耗する。その後、熱可塑性樹脂によって形成されたキャビン側EA材22が露出し接地すると、地面Gとの摩擦熱によりキャビン側EA材22が加熱され、熱可塑性樹脂が熔出あるいは軟体化する(図5参照)。そしてこの熔出あるいは軟体化した熱可塑性樹脂22aにより更に大きい動摩擦力Fが生じ、機体Aの速やかな制動が可能となる。
(第三実施形態)
図6は、第三実施形態に係る機体底面構造の側断面図である。図6に示す機体底面構造30は、図1や図4に示した先の実施形態に係る機体底面構造1,20とは、制動部31が本体部2から突出して設けられたアンカー部材32を介して機体Aに取り付けられている点で異なっている。制動部31としては、CFRPからなる板材等を用いることができる。より具体的には、機体底面構造30は、この制動部31に埋設されたアンカー部材32が、機体Aの胴体を形成する本体部2に溶接等により固定された構造とされている。
このような機体底面構造30によれば、機体Aが地面Gに接触しながら滑走する際、制動部31が地面Gからの動摩擦力を受け、その磨耗が進むと、機体Aの本体部2から突出して設けられたアンカー部材32が露出して接地することとなる(図7参照)。この露出したアンカー部材32が抵抗となって機体Aは大きな動摩擦力Fを受けるため、機体Aの速やかな制動が可能となる。
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明に係る機体底面構造は、上記実施形態に限られるものではない。例えば、上記第一及び第二実施形態では制動部は2層からなる場合について説明したが、単一の層や3層以上の層からなっていてもよい。また、制動部は、段階的に摩擦係数が増大するような構成に限られず、無段階で連続的に摩擦係数が増大するような構成であってもよい。
また、上記第一実施形態では、キャビン側EA材11及び底面側EA材12は、CFRPによって形成されている場合について説明したが、CFRP以外の繊維強化プラスチックであってもよいし、FRP以外の合成樹脂等によって形成されていてもよい。
1,20,30…機体底面構造、2…本体部、10,21,31…制動部、11,22…キャビン側EA材(第1部材)、12,23…底面側EA材(第2部材)、32…アンカー部材、A…機体、F…摩擦力、G…地面。

Claims (5)

  1. 機体の底部に設けられ、前記機体が地面に接触しながら滑走する際に前記地面から受ける摩擦力を利用して前記機体を制動させる制動部を備え、
    前記制動部は、前記機体の滑走距離が長くなるほど前記地面に対する摩擦係数が増大することを特徴とする、機体底面構造。
  2. 前記制動部は、少なくとも第1部材と第2部材とが積層されてなり、
    前記第1部材は前記第2部材よりも上方に配置され、
    前記第1部材の地面に対する摩擦係数は、前記第2部材の地面に対する摩擦係数よりも大きいことを特徴とする、請求項1記載の機体底面構造。
  3. 前記第1部材は、繊維強化樹脂によって形成され、鉛直方向に沿って配置された繊維を前記第2部材よりも多く含むことを特徴とする、請求項2記載の機体底面構造。
  4. 前記第1部材は熱可塑性樹脂によって形成され、前記第2部材は熱硬化性樹脂によって形成されていることを特徴とする、請求項2記載の機体底面構造。
  5. 前記制動部は、前記機体の本体部から突出して設けられたアンカー部材を介して前記機体に取り付けられていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項記載の機体底面構造。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016088121A (ja) * 2014-10-29 2016-05-23 株式会社日本自動車部品総合研究所 観測装置

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