図1はこの発明にかかる基板処理装置の一実施形態を示す図である。この基板処理装置は、半導体ウエハなどの基板の表面に例えばSOG(Spin-On-Glass)などの薄膜を形成するための装置(薄膜形成装置)であり、図1はその内部構造を横から見た図である。この装置では、処理チャンバ1の内部に形成される処理空間内に後述する転写ユニットが設置されており、基板表面への薄膜形成は、減圧された処理空間内でこの転写ユニットにより行われる。説明の便宜上、図1に示すようにX、Y、Zの各方向を定義する。
この転写ユニットは、処理チャンバ1を構成する上板11に固定された上側ブロック3と、底板19に固定された下側ブロック5とを備えており、薄膜形成対象である基板Wと、薄膜材料を塗布された薄膜担持体としてのシートフィルムFとを上下ブロック3、5で挟み込むことにより、シートフィルムF上の薄膜を基板Wに転写する。
なお、以下の説明において、各構成要素に付した符号が「3」から始まるものは当該要素が上側ブロック3を構成するものであることを意味する一方、「5」から始まるものは当該要素が下側ブロック5を構成するものであることを意味するものとする。
処理空間SP内は、排気管951を介して処理チャンバ1と接続された真空ポンプ95によって真空排気可能になっている。この真空ポンプ95は装置全体を制御する制御ユニット91に制御されており、制御ユニット91からの動作指令に応じて作動して処理空間SP内を排気減圧することができるようになっている。また、制御ユニット91は真空ポンプ95による処理空間SPからの排気量を調整し、処理空間SP内の圧力(真空度)を制御可能となっている。これにより、薄膜の乾燥状態をコントロールしながら該薄膜を基板Wに転写することができる。処理空間SP内の圧力は、薄膜の種類等に応じて大気圧から数Paまでの範囲内の所定の圧力に設定される。
処理空間SPには、第1、第2プレート34、54が上下に対向して収容されている。第1プレート34は処理チャンバ1を構成する上板11の下面に固定された上ベース部材31によって水平に固定支持されており、第2プレート54の上方に位置している。第1プレート34は基板Wが装着される試料台を構成し、第2プレート54と対向する下面342が基板Wの装着面を形成している。第1プレート34の下面342は円形に形成されている。ここで、薄膜形成対象となる基板Wとしては、例えば円板状に形成された半導体ウエハと、この半導体ウエハ上に電極配線をパターニングした構造を有するものがあり、基板Wのパターン形成面側に絶縁膜などの薄膜が転写される。
第1プレート34の下面342には、基板Wが装着される。第1プレート34は、内部に加熱手段として加熱ヒータ341を具備している。この加熱ヒータ341はヒータコントローラ93と電気的に接続されており、制御ユニット91からの基板温度情報に基づきヒータコントローラ93が加熱ヒータ341を25℃〜200℃の間で加熱制御する。なお、第1プレート34の下面342は石英板で形成されてもよい。
処理チャンバ1の上面を構成する上板11には、処理対象となる基板Wを保持したり該保持を解除することができるとともに、基板Wを上下方向に昇降させることができる基板保持機構300が設けられている。この基板保持機構300では、複数本(この実施形態では2本)のリフタ344が昇降自在で、しかも水平方向に移動自在に支持されている。各リフタ344の下端部には爪部材345が固着されている。爪部材345はその上面が基板Wの周縁部と係合可能に仕上げられ、基板Wを爪部材345上に載置させることができる。
図2は基板保持機構を示す図である。基板保持機構300は、リフタ344に取り付けられた爪部材345を鉛直方向(Z方向)および水平方向(X方向)に所定距離だけ移動させるため、以下のような構造を有している。処理チャンバ1を構成する上板11の上方にはトッププレート312が設けられており、トッププレート312には回転軸が鉛直下向きのステッピングモータ361が取り付けられている。ステッピングモータ361の回転軸にはボールねじ機構362が結合されている。ボールねじ機構362には鉛直方向に延びるシャフト363がフランジ367(後述)を介して取り付けられており、したがって、図2に示すように、制御ユニット91からの制御指令にしたがってステッピングモータ361が回転すると、その回転運動はボールねじ機構362により上下方向(Z方向)の運動に変換されてシャフト363を上下動させる。ボールねじ機構362にはシャフト363の上下動に連動して上下する位置検出用延設部364が設けられる一方、トッププレート312にはこれを検出する位置センサ365が設けられており、この位置センサ365の出力に基づきボールねじ機構362の上下方向位置が制御ユニット91により制御されている。なお、図2は基板保持機構300が最上方位置にあるときの状態を示している。
シャフト363の他方端は、処理チャンバ1の上板11の略中央に穿設された開口部111を通して処理チャンバ1内の処理空間SPにまで入り込んでおり、その下端にはサブプレート366が取り付けられている。また、シャフト363の上端部は拡径されてフランジ367となっており、フランジ367の下面と上板11の上面との間には上下方向(Z方向)に伸縮自在のベローズ368が設けられ、開口部111が塞がれている。このため、ステッピングモータ361が回転すると、ベローズ368の伸縮範囲内でボールねじ機構362、シャフト363、フランジ367およびサブプレート366が一体的に上下動する。このときベローズ368が伸縮することによって処理チャンバ1の気密性が維持されている。
サブプレート366には2箇所の貫通孔3661が穿設されており、その上部にはサブプレート366に対し水平方向に移動自在のスライダ370および該スライダ370の動きを一軸方向(X方向)および所定変位量に規制するスライダガイド369が取り付けられている。スライダ370とスライダガイド369との間にはバネ371が介挿されており、外力が加わらない状態でスライダ370はシャフト363に近い側(図において中央寄り)に付勢されている。スライダ370の下部には前記したリフタ344が取り付けられている。
一方、2つのスライダ370の上部は上方に延びて縦ロッド372となっており、上板11に設けられた中央の開口部111に対して対称な位置に設けられた2つの貫通孔112を貫通して上板11よりも上方にまで達している。縦ロッド372の上端部には、長短2種類の延設部3721、3722が設けられている。より具体的には、縦ロッド372上端部のうちシャフト363に近い側(内側)の側面が上方に向けて延長されて、長く延びた延設部3721となっている。また、縦ロッド372上端部のうちシャフト363から遠い側(外側)の側面には、より短い延設部3722が設けられている。
上板11から貫通孔112を通して上方に突き出した縦ロッド372を覆うように、ハウジング373が上板11に取り付けられている。ハウジング373の内部空間は処理空間SPに連通しており、またその外側側面には貫通孔3731が穿設されている。貫通孔3731には、そのサイズより小さな断面を有する横ロッド374が挿通されている。横ロッド374のうちハウジング373の内部側に進入している一端部には、後述するように縦ロッド372の延設部3722と係合する係合ピン3741が立設されている。
一方、横ロッド374のうちハウジング373から外に向けて突き出した他端部には板状の隔壁形成部材375が取り付けられている。ハウジング373外側面の貫通孔3731の周囲と隔壁形成部材375との間には、横方向(X方向)に伸縮自在のベローズ376が取り付けられている。したがって隔壁形成部材375はベローズ376の伸縮範囲内でX方向に変位可能である。また、ハウジング373の上部にはエアシリンダ377が取り付けられており、制御ユニット91からの制御指令によりエアシリンダ377が作動しピストン3771がX方向に動くと、これに押されて隔壁部材375および横ロッド374が一体的にX方向に動くこととなる。
図3は基板を保持する爪部材の構造を示す図である。リフタ344の下端に取り付けられた爪部材345は、リフタ344に結合されたベース部3451と、止めネジ3453によってベース部3451に固定された先端部材3452とを有している。先端部材3452は基板の外形に合わせて円弧状に形成されるとともに、その先端部は上下方向の厚みが先端ほど薄くなっている。より具体的には、先端部材3452の下面はほぼ平らとなる一方、上面は先端(図において左下方)に近づくにつれて段階的に厚みが減少されて最終的に薄刃状となるように仕上げられている。この先端部が基板Wの下面外周部に当接することによって、基板Wを下方から支持する。
先端部材3452は2ピースに分割されており、それぞれ止めネジ3453によってベース部3451に締結されている。止めネジ3453を緩めることで、基板に対し接近・離間する方向(矢印方向)について2つの先端部材3452の位置決め調整を個別に行うことができる。これにより基板Wが爪部材345に当接する当接部位の面積を小さくすることができるとともに、基板の保持を確実に行うことが可能となる。この実施形態では、上記のように構成された爪部材345を2組設けて、処理対象となる基板Wをその両側から保持する。
次に、基板保持機構300によるリフタ344および爪部材345の上下方向(Z方向)および水平方向(X方向)への駆動について、図2、図4および図5を参照しながら説明する。図2に示した、基板保持機構300が最上方にある状態では、リフタ344も最上方位置にあり、このとき爪部材345の先端は第1プレート34の直下に位置している。このときの爪部材345の位置を「基板装着位置」と称する。
図4は爪部材の水平移動を示す図である。リフタ344が最上方位置にあるとき、縦ロッド372に設けられた延設部3722と、横ロッド374に設けられた係合ピン3741とがハウジング373内においてちょうど係合する位置関係となっている。したがって、隔壁形成部材375をX方向に変位させるとこれに伴って横ロッド374が左右に動くため、横ロッド374に係合した縦ロッド372を左右に移動させることができる。同時に爪部材345もX方向に移動する。つまり、エアシリンダ377を作動させて隔壁形成部材375をX方向に変位させることにより、図4(a)に示すように第1プレート34直下で基板Wを爪部材345により保持した状態と、図4(b)に示すように爪部材345による基板Wの保持を解除した状態とを切り換えることができる。
より詳しくは、爪部材345と連結されたスライダ370がバネ371により爪部材345を基板Wに当接する方向に付勢されているため、エアシリンダ377が作動しない状態では、図4(a)に示すように爪部材345が基板Wの下面外周部を保持した状態となっている。一方、エアシリンダ377が作動して、図4(b)に矢印で示すように、バネ371の付勢力に抗して隔壁形成部材375を外側に向け変位させると、横ロッド374およびこれに係合する縦ロッド372も共に外側に向けて変位し、結果として爪部材345が基板Wから外側に向けて離間し、基板保持を解除する。
図5は基板保持機構が最下方に移動した状態を示す図である。ステッピングモータ361およびボールねじ機構362の作動によりシャフト363が下方に移動しベローズ368が収縮した状態では、リフタ344も下方に移動し爪部材345は第1プレート34の直下から下方に大きく離間した位置(退避位置)にある。このとき、図5に示すように、縦ロッド372の上部に設けた延設部3722も下方に下がっており、横ロッド374に設けられた係合ピン3741との係合は解除されている。このため、エアシリンダ377が作動したとしてもその駆動力は縦ロッド372には伝達されず、爪部材345は動かない。そして、爪部材345はもともと基板Wに当接する方向に付勢されているため、基板Wを保持した状態が維持されることとなる。この状態では、処理済みの基板Wを外部に搬出することができる。
また基板Wが保持されていない状態では、1対の爪部材345は第1プレート34から下方に離間した位置で、しかも基板を載置可能な互いの距離を保持している。したがって、この状態で外部から基板Wを搬入し、爪部材345に保持させることができる。そして、制御ユニット91からステッピングモータ361に上昇指令が与えられると、リフタ344が上方に移動して爪部材345上に載置された基板Wを第1プレート34の下面342に密着させる。これにより、爪部材345が基板装着位置に位置決めされ、第1プレート34に基板Wが装着される。
爪部材345が基板装着位置に位置決めされた状態では、縦ロッド372の延設部3722と横ロッド374の係合ピン3741とが再び係合して、爪部材345の水平移動が可能となる。なお、縦ロッド372に設けられた長い方の延設部3721は、縦ロッド372が上昇したときに縦ロッド372の延設部3722と確実に係合するように、横ロッド374の係合ピン3741を案内するガイドとしての機能を有する。
このように、この実施形態において爪部材345を第1プレート34直下から下方に退避させた状態では、縦ロッド372と横ロッド374との係合が切り離されるとともに、爪部材345が基板Wに当接する方向に付勢されているため、基板Wの保持を解除することができない。言い換えれば、この実施形態における基板保持の解除は、基板Wが第1プレート34の直下に保持されているときにのみ許可されている。このようにすることで、エアシリンダ377の誤動作や故障に起因する不要な保持解除によって基板Wが落下することが防止される。
図1に戻って処理ユニットの説明を続ける。第2プレート54は、移動方向Z(鉛直方向)に沿って昇降自在に設けられた昇降ユニット52に装備され、第1プレート34の下方に軸線を一致させて対向して配置されている。昇降ユニット52は底板19に取り付けられた下ベース部材51を有し、下ベース部材51上に第2プレート54が固定支持されている。第2プレート54はシートフィルムFが装着される転写板を構成し、第1プレート34と対向する上面は石英板5421により形成されて、該石英板5421の上面542がシートフィルムFの装着面を形成している。第2プレート54の上面542は円形に形成されている。また石英板5421の上面周縁部はテーパー加工されてテーパー面が設けられている。シートフィルムFは基板Wより大きい円形に形成され、その表面(薄膜形成面)には薄膜が形成されている。また、第2プレート54の上面542の平面サイズはシートフィルムFの平面サイズよりも小さく形成されている。
このシートフィルムFは後述する上側挟持部および下側挟持部によって移動方向Zに挟み込まれることによって保持されており、第2プレート54はシートフィルムFの裏面(シートフィルムの両主面のうち薄膜形成面に対して反対の非薄膜形成面)側に配置されている。また、第2プレート54には加熱手段として加熱ヒータ541が内蔵されている。この加熱ヒータ541はヒータコントローラ94と電気的に接続されており、制御ユニット91からの基板温度情報に基づきヒータコントローラ94が加熱ヒータ541を25℃〜200℃の間で加熱制御する。
シートフィルムFは、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)もしくはETFE(エチレンテトラフルオロエチレン)などの可撓性を有し、また可塑性を有する有機材料からなるシート状のフィルムである。
昇降ユニット52は、下ベース部材51の下面中央部に一体に垂設された支持軸513を有している。支持軸513は移動方向Zに沿って昇降自在に軸支され、加重モータ53によって昇降されるように構成されている。すなわち、支持軸513の下端には加重モータ53が接続されており、制御ユニット91からの動作指令に応じて加重モータ53が作動することで、昇降ユニット52を移動方向Zに沿って昇降させることができる。昇降ユニット52の昇降により、下ベース部材51上に支持された第2プレート54が移動方向Zに沿って昇降する。
また、この実施形態ではシートフィルムFのハンドリング性を向上させるために図6に示すように一対のリングRup,Rdwを用いて一体化したリング体RFを形成し、このリング体RFの状態でシートフィルムFの搬送を実行している。以下では、図6および図7を参照しつつ、シートフィルムFのハンドリング構成について説明する。
図6はリング体およびリング体を挟持する構成を説明するための断面図である。このリング体RFは、上リングRupと下リングRdwとでシートフィルムFの周縁部を全周にわたって挟み込むことによってシートフィルムFを保持したものである。上リングRupと下リングRdwとは同一形状を有する円環状部材であり、シートフィルムFを挟んで上リングRupおよび下リングRdwを配置させることにより、シートフィルムFを磁力吸着により保持可能となっている。
また、第1、第2プレート34、54の周囲には、一対のリングRup,Rdwを上下から挟み込んでリング体RFを保持する上クランプ35および下クランプ55が設けられている。上クランプ35および下クランプ55はそれぞれ、一対のリングRup,Rdwとほぼ同じ内径を有する円環状部材であり、上クランプ35の外径が一対のリングRup,Rdwの外径よりも小さく形成される一方、下クランプ55の外径が一対のリングRup,Rdwの外径よりも大きく形成されている。
このような構成により、上クランプ35および下クランプ55によってリング体RFが上下方向(移動方向Z)に挟んで保持されると、結果的にシートフィルムFは上リングRupおよび上クランプ35からなる上側挟持部UHと、下リングRdwおよび下クランプ55からなる下側挟持部DHとにより保持(挟持)された状態となる(図6(b))。つまり、下側挟持部DHに載置されたシートフィルムFが上側挟持部UHにより上方から押圧されることによって該シートフィルムFが下側挟持部DHと上側挟持部UHとにより挟持される。以下、下側挟持部DHと上側挟持部UHとをあわせて「一対の挟持部」という。
一対の挟持部UH,DHに挟持されたシートフィルムFは第1プレート34と第2プレート54との間に配置される。具体的には、薄膜が形成されたシートフィルムFの表面(薄膜形成面)が第1プレート34に対向する一方、シートフィルムFの裏面(非薄膜形成面)側が第2プレート54に対向するように、シートフィルムFが一対の挟持部UH,DHにより挟持される。
図7は図1のA−A’切断面を上方から見たときの薄膜形成装置を示す図である。2つのクランプのうち下クランプ55は、底板19に立設された複数本(この実施形態では3本)の円柱体よりなるクランプ受け555上に水平姿勢で支持される。クランプ受け555は第2プレート54の上面542の中心を通り移動方向Zに伸びる軸(以下、単に「中心軸」という)J回りに互いに等角度(120°)間隔で放射状に配置されている。下クランプ55の上面周縁部(円環部)にはリング体RFの下端部(下リングRdw)を収容可能な内部に向けて窪んだ窪部551が形成されている(図6(a))。そして、リング体RFの下端部を窪部551に収容させることによって、窪部551の周囲を取り囲む周面部552によってリング体RFの水平方向の移動を規制することができる。
また、下ベース部材51上には、複数本(この実施形態では3本)の突き上げピン56が中心軸J回りに互いに等角度(120°)間隔で放射状に、しかも円周方向に沿ってクランプ受け555の間に位置するように立設されている。一方、下クランプ55の下面には各突き上げピン56に対応して突き上げピン56の先端部を挿入させることが可能なピン挿入孔553(図1)が形成されている。このため、昇降ユニット52が上昇駆動されると、突き上げピン56の先端部がピン挿入孔553に挿入されるとともに、突き上げピン56の先端部と後端部との間に形成された段差面が下クランプ55の下面と当接する。これにより、突き上げピン56と下クランプ55(一対の挟持部UH,DH)とが互いに係合する。この状態で昇降ユニット52がさらに上昇駆動されると、下クランプ55がクランプ受け555から離れ、突き上げピン56と下クランプ55とが係合した状態で一体的に上昇する。これにより、第2プレート54と一対の挟持部、つまり上側挟持部UHおよび下側挟持部DHとが一定の位置関係を保ったまま上昇する。
図8は突き上げピンと下クランプとが係合した状態を示した図である。突き上げピン56と下クランプ55とが係合した時点では、第2プレート54が一対の挟持部UH,DHに挟持されたシートフィルムFに接触して該シートフィルムFが上方に突き上げられる。これにより、シートフィルムFが緊張し、該シートフィルムFに張力を発生させることができる。ここで、第2プレート54の上面542が円形に形成されるとともに、一対の挟持部UH,DHによりシートフィルムFの周縁部が全周にわたって保持(挟持)されているため、シートフィルムFに対して周方向に均一な張力を付与することができる。
また、この実施形態では、突き上げピン56が下クランプ55と係合する係合部位の第2プレート54に対する移動方向Zにおける相対距離(以下、単に「相対距離」という)Dを調整することによって、シートフィルムFに発生させる張力の大きさをコントロールすることが可能となっている。具体的には、突き上げピン56の先端部と後端部との間に形成された段差面(突き上げピン56が下クランプ55と係合する係合部位)から第2プレート54の上面542までの距離(相対距離D)を調整することにより、シートフィルムFに発生させる張力の大きさを変更することが可能となっている。つまり、相対距離Dに応じて、第2プレート54がシートフィルムFと接触を開始してから突き上げピン56と下クランプ55とが係合するまでの間にシートフィルムFが第2プレート54によって移動方向Zに沿って突き上げられる量(以下、単に「突き上げ量」という)Qが変化する。したがって、相対距離Dが調整されることで、突き上げ量Qを変更し、シートフィルムFに発生する張力の大きさを調整することができる。
図9は突き上げピンの構造を示す図である。下ベース部材51には移動方向Zに沿って貫通孔511が形成されており、貫通孔511に突き上げピン56が挿通されている。これにより、その先端側に係合部位(段差面)が設けられた突き上げピン56が下クランプ55(一対の挟持部UH,DH)に向けて突設される。突き上げピン56の後端部561にはネジ溝が刻まれる一方、貫通孔511の内壁には突き上げピン56のネジと螺合するネジ溝が刻まれている。また、下ベース部材51の上面側に2つのナットからなるダブルナット516が突き上げピン56の後端部561に螺嵌されており、ダブルナット516により突き上げピン56が下ベース部材51に緩みなく締め付け固定される。突き上げピン56の先端部562は下クランプ55のピン挿入孔553に挿入可能とされている。そして、突き上げピン56の先端部562がピン挿入孔553に挿入されることで、突き上げピン56の後端部561と先端部562とを結合する段差面563(係合部位)が下クランプ55の下面554に当接する。段差面563と下クランプ55の下面554とは平行に形成され、面接触状態で当接する。
このような構成によれば、ダブルナット516を緩めて突き上げピン56の頭部564を回転させていくことで、下ベース部材51の上面から段差面563までの移動方向Zにおける長さLが調整される。すなわち、突き上げピン56と下クランプ55とが互いに係合している状態では、下ベース部材51と下クランプ55(一対の挟持部UH,DH)との間の間隙が調整される。そして、下ベース部材51の上面から段差面563までの移動方向Zにおける長さLを所定の長さに調整した後、ダブルナット516を締めることによって突き上げピン56を下ベース部材51に固定する。このように、下ベース部材51の上面から段差面563までの移動方向Zにおける長さLが調整されることで、相対距離Dが調整される。これにより、突き上げ量Qを変更し、シートフィルムFに発生する張力の大きさを自在に、しかも簡素な構成により調整することができる。したがって、使用するシートフィルムFの種類や膜厚に応じて最適な張力をシートフィルムFに与えることができる。
再び図1に戻って説明を続ける。下クランプ55の下面周縁部には下クランプ55の水平方向における位置を固定するために、複数本の位置決めピン514が下方に延びるように取り付けられている。これら位置決めピン514は下ベース部材51に移動方向Zに沿って形成された貫通孔512に挿通されている。位置決めピン514と貫通孔512の内壁との間にはボールスプライン機構等が介在しており、位置決めピン514はボールスプライン機構等を介して移動方向Zに沿ってのみ可動(昇降)自在に支持される。つまり、下クランプ55は移動方向Zに直交する方向(水平方向)に移動するのを規制されながら下ベース部材51に対して移動方向Zに沿って昇降自在に支持される。このような構成によれば、昇降ユニット52(第2プレート54)を移動方向Zに沿って移動させたとしても、水平方向において第2プレート54と下クランプ55(一対の挟持部UH,DH)との間の相対位置関係を確実に固定することができる。このため、第2プレート54と一対の挟持部UH,DHとが互いに水平方向にずれるのを防止することができる。
また、もう一方のクランプ、つまり上クランプ35は昇降自在に支持された複数本のロッド356の下端に固着されている。この実施形態では、3本のロッド356が中心軸J回りに互いに等角度(120°)間隔で放射状に、上クランプ35から上方に伸びるように設けられている。複数本のロッド356の各々には、上クランプ35を移動方向Zに沿って昇降駆動させるためのエアシリンダ357が連結されている。そして、制御ユニット91からの動作指令に応じてエアシリンダ357が作動することで、上クランプ35を移動方向Zに沿って昇降させることができる。具体的には、上クランプ35を上昇させて第2プレート54に対するリング体RFの搬入出を可能とする一方、上クランプ35を下降させて下クランプ55とでリング体RFを挟持して固定することができる。
このエアシリンダ357は、処理チャンバ1の上部に取り付けられた円板状のプレート312に配設されており、エアシリンダ357から発生するパーティクル等の汚染物質が処理空間SP内に混入するのを防止することができる。なお、上クランプ35を昇降駆動させる駆動機構としては、エアシリンダに限らず、エアシリンダ以外の他の昇降駆動用アクチュエータを用いるようにしてもよい。
また、エアシリンダ357と、該エアシリンダ357に圧縮空気を供給するための圧縮空気供給源との間には調圧弁358が介装されている。そして、制御ユニット91からの動作指令に応じて調圧弁358の開度が調整されることにより、ロッド356の推力を一定に保つことが可能となっている。この実施形態では、支持軸513が移動方向Zにおいて受ける加重圧力を検出する荷重センサ96が設けられており、後述するようにして荷重センサ96によって検出された加重圧力に基づいて制御ユニット91が調圧弁358の開度を調整し、ロッド356の推力を一定に保つようにフィードバック制御する。これにより、下クランプ55に載置されたリング体RFを上クランプ35により一定の押圧力で押圧することができる。すなわち、下側挟持部DH上に配置されたシートフィルムFを上側挟持部UHにより上方から一定の押圧力で押圧することが可能となっている。
次に、上記した薄膜形成装置の動作について図10ないし図12を参照しつつ説明する。図10ないし図12は図1の薄膜形成装置の動作を説明するための模式図である。本実施形態においては、処理空間SPへの基板WおよびシートフィルムFの搬入に先立って、各突き上げピン56において、下ベース部材53の上面から段差面563までの移動方向Zにおける長さLが使用されるシートフィルムFの種類や膜厚等に応じて予め調整されているものとする。
最初に第1プレート34側に基板Wが搬入される。すなわち、制御ユニット91はステッピングモータ361に下降指令を与え、図10(a)に示すように、爪部材345を第1プレート34から下方に退避した退避位置に位置決めする。それに続いて、薄膜を形成すべき基板Wがチャンバ外壁に設けられた扉(図示せず)を通じて処理空間SP内に搬入され、爪部材345の上に載置される。その後、制御ユニット91はステッピングモータ361に対して上昇指令を与え、爪部材345を基板装着位置に移動させて基板Wの上面(非パターン形成面)を第1プレート34の下面342に密着させた状態で基板Wを位置決めする(図10(b))。これにより、第1プレート34に基板Wが装着され、薄膜転写のための位置(処理位置)に位置決めされる。
一方、第2プレート54側では、シートフィルムFがリング体RFにより挟持された状態で処理空間SP内に搬入される。ここで、リング体RFを構成する一対のリングRup,Rdwに挟まれたシートフィルムFの表面(薄膜形成面)には予め薄膜が形成されており、薄膜形成面を上方に向けてシートフィルムFが搬入される。このとき、上クランプ35はリング体RFの搬入を妨げることのないように上方に退避している。また、第2プレート54の上面542は下クランプ55(リング体RFが載置される載置面)の下方に位置している。このため、シートフィルムFが搬入される際に、シートフィルムFと第2プレート54とが接触するのを回避することができる。その結果、シートフィルムFに張力が発生していない状態で薄膜が部分的に乾燥して薄膜の均一な乾燥が阻害されてしまうのを防止することができる。
そして、リング体RFが下クランプ55上に載置された後、上クランプ35が下降して下クランプ55に載置されたリング体RFが上クランプ35によって押圧される(図10(c))。これによって、シートフィルムFの周縁部が全周にわたって所定の押圧力で均一に押圧され、シートフィルムFにしわや折り曲げが発生するのを防止しながら、シートフィルムFが一対の挟持部、つまり上側挟持部UHおよび下側挟持部DHにより挟持された状態となる。
こうして、基板WおよびシートフィルムFの搬入が完了すると、制御ユニット91は装置各部を制御し、以下に示すように薄膜を基板Wに転写する転写工程を実行する。まず、真空ポンプ95による処理空間SPの排気減圧を開始する。また、ヒータコントローラ93によって加熱ヒータ341に通電して第1プレート34を加熱して基板Wを所望の温度に加熱するとともに、ヒータコントローラ94によって加熱ヒータ541に通電して第2プレート54を加熱してシートフィルムFを所望の温度に加熱する。
そして、処理空間SPが所望の圧力まで減圧されると、制御ユニット91より加重モータ53に信号が送られ、昇降ユニット52(第2プレート54)の上昇駆動を開始する。第2プレート54が上昇すると、一対の挟持部UH,DHに挟持されたシートフィルムFの裏面(非薄膜形成面)と第2プレート54の上面542とが接触して第2プレート54にシートフィルムFが装着される。このとき、第2プレート54の上面542の平面サイズはシートフィルムFの平面サイズよりも小さく形成されているため、第2プレート54上面542の全面がシートフィルムFにより覆われる。そして、第2プレート54の上面542がシートフィルムFに接触した状態で第2プレート54がさらに上昇すると、シートフィルムFが緊張し、該シートフィルムFに張力が発生する。つまり、一対の挟持部UH,DHに挟持されたシートフィルムFに第2プレート54が突き当てられてシートフィルムFに張力が発生する。その結果、シートフィルムFが加熱ヒータ541によって加熱され、熱膨張により伸張して弛んでいても、その弛みが取り除かれる。
また、昇降ユニット52の上昇によって突き上げピン56がクランプ受け555上に載置された下クランプ55と係合する(図11(a))。これによって、移動方向Zにおける下クランプ55(一対の挟持部UH,DH)に対する第2プレート54の相対位置が固定される。その結果、シートフィルムFに発生する張力の大きさが決定されて固定される。また、第2プレート54の上昇により、下クランプ55(一対の挟持部UH,DH)がクランプ受け555から突き上げピン56に受け渡される。
そして、第2プレート54の上昇とともに一対の挟持部UH,DHがシートフィルムFを挟持しながら移動方向Zに沿って変位する。このとき、上クランプ35に連結されたロッド356がエアシリンダ357内に後退してストロークが短くなると、エアシリンダ357内の圧力が上昇してロッド356の推力が増大する。その結果、シートフィルムFに対する押圧力が増大し、荷重センサ96によって検出される加重圧力が上昇する。そこで、制御ユニット91は荷重センサ96によって検出される加重圧力が一定となるように調圧弁358の開度を調整し、ロッド356の推力を一定に保つようにフィードバック制御する。つまり、シートフィルムFに対する押圧力が一定になるように、つまり第2プレート54がシートフィルムFに接触する前にシートフィルムFに与えられた押圧力に等しくなるように、制御ユニット91からの動作指令によって調圧弁358が制御される。そして、制御ユニット91は昇降ユニット52を上昇させるとともに、シートフィルムFへの押圧力が一定となるように調圧弁358を制御しながらロッド356をエアシリンダ357内に後退させてストロークを短くしていく。これにより、第2プレート54の上昇を阻害することなく、かつ一対の挟持部UH,DHによりシートフィルムFが良好かつ確実に保持される。
また、下クランプ55(一対の挟持部)と突き上げピン56とが互いに係合した状態で一対の挟持部UH,DHと第2プレート54とが一体的に移動方向Zに沿って移動することで、決定された張力をシートフィルムFに付与した状態を維持したままシートフィルムFが上昇する。つまり、第2プレート54と一対の挟持部UH,DHとが一定の位置関係を保ったまま上昇するので、シートフィルムFに与えられた張力の大きさが変化するのを防止することができる。このため、シートフィルムFに張力を安定して与えながらシートフィルムFを基板Wに近接させていくことができる。
また、下クランプ55と突き上げピン56とは、突き上げピン56の先端部562が下クランプ55のピン挿入孔553に挿入されることで係合している。このため、下クランプ55と突き上げピン56とが係合した状態で移動方向Zに沿って移動する際に、互いの位置関係がずれるのを防止することができる。
そして、第2プレート54がさらに上昇すると、シートフィルムF上の薄膜が基板Wに当接する(図11(b))。これとほぼ同時に、爪部材345を側方に退避させて爪部材345による基板保持を解除する(図11(c))。これによりシートフィルムF上の薄膜と基板Wとが密着し、基板Wへの薄膜の転写が開始される。さらに、処理空間SPを排気減圧したまま、基板WとシートフィルムFとが所定の加重で一定時間互いに押し付けられる。その間も基板WとシートフィルムFは所定の温度となるように加熱されている。薄膜が基板Wに押し付けられている間もシートフィルムFは一対の挟持部UH,DHにより挟持されながら、一定の張力、つまり下クランプ55と突き上げピン56とが係合することによって決定された張力が付与された状態となっている。このため、シートフィルムFにしわや折り曲げが発生するのを防止して、平坦で均一な膜厚の薄膜を基板Wに形成することができる。
そして、一連の加重操作が終了して転写処理が完了すると、ヒータコントローラ93、94により加熱ヒータ341、541の作動を停止させて第1、第2プレート34,54の加熱を停止する。続いて、加重の状態が零となるように制御ユニット91から加重モータ53に信号を送り、昇降ユニット52および一対の挟持部UH,DH(上クランプ35、リング体RF、下クランプ55)を一体的に下降させる(図12(a))。すなわち、制御ユニット91はシートフィルムFに対する押圧力が一定となるように調圧弁358を制御しながらロッド356をエアシリンダ357内から進出させてストロークを長くしていく。その後、昇降ユニット52が下降し、上クランプ35により上方から押圧された状態で下クランプ55およびリング体RFがクランプ受け555上に受け渡される(図12(b))。さらに、昇降ユニット52が下降し、昇降ユニット52(第2プレート54)が転写前の初期位置に復帰すると、突き上げピン56が下クランプ55から離れる。また、上クランプ35によるリング体RFへの押圧が解除される(図12(c))。これにより、下クランプ55およびリング体RFがクランプ受け555上に支持された状態となる。
こうして、第2プレート54が転写前の初期位置に戻った後、真空ポンプ95を停止させる。なお、上記のようにして薄膜の密着が完了すると、基板Wは薄膜を挟んでシートフィルムFと一体となっており、この一体化状態のままリング体RFを処理チャンバ1から取り出し、シートフィルムFを剥離する剥離装置(図示せず)に搬送する。
図13は薄膜転写過程の詳細を示す図である。より詳しくは、図13(a)は第1および第2プレート34および54と基板Wとの寸法関係を示す図である。また図13(b)、図13(c)はそれぞれ、図11(b)、図11(c)から上クランプ35および下クランプ55等を除いた主要部のみを表した図である。図13(a)に示すように、第1プレート34の下面342の直径R1は基板Wの直径R2と同じまたはこれより少し小さく造られている。こうすることで、基板Wを平坦に保ったまま第1プレート34と第2プレート54とで挟み込むことができる。
一方、第2プレート54の上部を構成する石英板5421の上面周縁部は角が落とされたテーパー状に加工されている。これにより第2プレート54の角に当たるシートフィルムFがスムーズに湾曲するので、第2プレート54の上面でシートフィルムFが浮き上がったりしわを生じることが防止されている。また、第2プレート54の角でシートフィルムFに傷をつけることもない。第2プレート54の上面542の直径R4は基板Wの直径、より厳密には、基板Wの下面周縁部のうち爪部材345と当接する当接部位を除いた部分の直径R3よりも少し小さくなるように造られている。テーパー部を除く第2プレート54本体の直径R5は基板Wの直径より大きくても差し支えない。
この実施形態の薄膜転写過程では、図13(b)に示すように、第2プレート54の押し上げにより、リング体RFに把持されたシートフィルムFの端部が相対的に下方に引っ張られた状態となっている。つまり、第2プレート54よりも外側では、シートフィルムFの表面FPは、第2プレート54上のシートフィルムFの上面を延長した仮想的な平面VPよりも下方に後退した形となっている。すなわち、第2プレート54よりも外側で、仮想平面VPとシートフィルムFの表面FPとの間には、シートフィルムFの後退により楔型の断面形状および第2プレート54の中心に対し回転対称な形状を有する退避空間ESが形成されている。
このとき、上記寸法関係としていること、および、爪部材345の下面を平らにかつその先端部を薄刃状に仕上げていることにより、図13(c)に示すように、第2プレート54をさらに押し上げてシートフィルムFを基板Wに密着させた状態でも、爪部材345とシートフィルムFとが接触しない。すなわち、第2プレート54の上面542の直径R4が、基板Wの下面のうち爪部材345に当接する当接部位を除いた部分の直径R3よりも小さいため、シートフィルムFは当接部位よりも内側(基板中心に近い側)で下方に折り曲げられて下方に後退している。そして、後退したシートフィルムFと基板Wの下面との間に薄い爪部材345が入り込み、シートフィルムFに接触することなく基板Wの保持を続けることができる。
言い換えれば、基板Wを保持する爪部材345は押し上げられたシートフィルムFの端部に接触しないようできるだけ薄く、しかも下面を平らに形成されている。これと対応して、シートフィルムFの端部は爪部材345に接触しない程度にまで押し下げられる。こうすることによって、薄膜転写時にシートフィルムF上の薄膜に爪部材345が接触して薄膜を損傷したり、シートフィルムFを傷つけることがない。シートフィルムFに傷が付いていると、後工程である基板WからのシートフィルムFの剥離工程において、その傷からシートフィルムFが破れて良好に剥離することができないことがある。上記のようにすることで、このような問題を未然に防止することができる。
以上のように、この実施形態では、処理チャンバ1の上部に突出して設けられ内部が処理空間SPと連通するハウジング373の側面に設けた貫通孔3731に、水平方向(X方向)に伸縮自在のベローズ376を介して隔壁形成部材375を取り付けている。そして、この隔壁形成部材375を処理空間外部に設けたエアシリンダ377により駆動することで、処理空間SP内で隔壁形成部材375と連結された爪部材345を水平移動させ、処理空間SP内での基板Wの保持およびその解除を行っている。このため、処理チャンバ1の気密性を保ちながら、外部からの操作により基板の保持・解除を行うことができる。
また、爪部材345を装着したリフタ344を支持するサブプレート366を、ベローズ368を介してチャンバ外まで延びるボールねじ機構362およびシャフト363の上下動により上下させているので、やはり処理チャンバ1の気密性を保持しながら、爪部材345を上下動させて保持された基板Wを昇降させることができる。
また、隔壁形成部材375の水平移動に伴って水平移動する横ロッド374と、ボールねじ機構362およびシャフト363の昇降に伴って上下動する縦ロッド372とを機械的にリンクさせた構造としているので、爪部材345を上下および左右方向に二次元的に移動させることができる。
また、爪部材345については、基板Wと当接する方向に予め付勢しているため、外力が作用しない状態でも基板保持状態を維持することができ、基板Wの保持に動力を必要とせず、また故障等による基板Wの落下を防止することができる。また、爪部材345を下降させ基板Wを第1プレート34から退避させた状態では、縦ロッド372と横ロッド374との連結が解除されるようにしているので、エアシリンダ377の誤動作により爪部材345が開き基板Wが落下することがない。
また、爪部材345を先端部が薄くしかも下面が平らになるように形成するとともに、第2プレート54の上面542の直径R4を、爪部材345と当接する当接部位を除いた基板Wの直径R3よりも小さくし、さらに薄膜を担持するシートフィルムFを、端部を引っ張り下方に後退させた状態で押し上げるようにしているので、シートフィルムFが基板Wに密着した状態でも、基板Wを保持する爪部材345とシートフィルムFとの間には隙間が保たれ、両者が接触することがなく、シートフィルムFや薄膜の損傷が防止されている。
また、爪部材345の下部に突出した部分がないので、爪部材345の下部と第2プレート54との間が広く取れ、転写ユニットのメンテナンスや、搬送ロボットによる基板Wの搬入・搬出作業時の利便性の向上も期待できる。
以上説明したように、この実施形態においては、第1プレート34および第2プレート54がそれぞれ本発明の「第1プレート」および「第2プレート」として機能している。また第2プレート54の上面542が本発明の「担持体載置面」に相当している。また、爪部材345が本発明の「基板保持部材」として機能している。また、シートフィルムFが本発明の「薄膜担持体」に相当している。
また、この実施形態においては、上クランプ35、下クランプ55、上リングRupおよび下リングRdwが一体として本発明の「保持空間形成手段」として機能している。また、これらと第2プレート54とを一体的に昇降させる昇降ユニット52が、本発明の「昇降手段」として機能している。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、第2プレート54の上面周縁部にテーパー部を設けることでシートフィルムFの折れ曲がりがスムーズになるようにしているが、これに代えて、周縁部に丸みを持たせた、つまり周縁部を上に凸の曲率を有する曲面としてもよい。第1プレート34の下面周縁部についても同様である。
また、上記実施形態では、爪部材345の上面を先端に向けて段階的に削り落とすことによって、必要な強度を得ながら先端部を薄く下面を平らにしているが、このような形状に限定されず、例えば、十分な強度が得られるのであれば、爪部材全体を薄板状に形成してもよい。また、上記実施形態では、基板の外縁に沿った円弧状に仕上げられた2組の爪部材によって基板を把持するようにしているが、保持爪の数や形状はこれに限定されるものではなく任意である。また、本実施形態では爪部材345の先端部材を2ピースに分割しているが、これも必須の要件ではない。
また、上記実施形態においては、シートフィルムFに発生させる張力の大きさをしたベース部材51上に立設した突き上げピン56によって調整しているが(図8)、以下に示すように、下クランプ55の下面に突き当てピンを立設し、これにより位置調整を行うようにしてもよい。
図14は位置調整機構の他の例を示す図である。図14に示す態様では、下クランプ55の下面に、下方に向かって突出する突き当てピン560が立設されている。下ベース部材51が上昇すると、突き当てピン560の下端が下ベース部材51の上面に当接し、これにより下ベース部材51と下クランプ55との位置関係が規定される。このような態様では、突き当てピン560の長さによって相対距離D(図8)を調整しシートフィルムFの張力を調整することができる。