JP2010186717A - 燃料電池セルの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ガスケット成形の際の注入樹脂の樹脂圧によって電解質膜の張り出している箇所が持ち上げられてガスケットの端面に臨み、ガスのクロスリーク路を形成するという課題、ガスケット成形時の高温雰囲気下で電解質膜が収縮し、電極体の中央部位が膨らんだ太鼓状を呈するという課題、の双方を解消できる、燃料電池セルの製造方法を提供する。
【解決手段】第2のガス透過層(ガス拡散層4)の側面、電解質膜1の張り出している箇所1aの側面から、荷重を載荷させた姿勢で該積層体(電極体5)を高温処理する工程と、成形型内に順に、セパレータ、高温処理後の積層体5を収容し、収容された積層体の側方から樹脂を注入して該積層体5の周縁にガスケットを成形して燃料電池セルを形成する工程と、からなり、前記高温処理時の温度が、ガスケット成形時の温度と同じかそれよりも高い温度となっている、燃料電池セルの製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、燃料電池スタックを構成する燃料電池セルの製造方法に関するものである。
固体高分子型燃料電池の燃料電池セルは、イオン透過性の電解質膜と、該電解質膜を挟持するアノード側およびカソード側の触媒層とから膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)が形成され、このMEAとこれを挟持するアノード側およびカソード側のガス拡散層(GDL)とから電極体(MEGA:Membrane Electrode & Gas Diffusion Layer Assembly)が形成され、電極体に燃料ガスもしくは酸化剤ガスを提供するとともに電気化学反応によって生じた電気を集電するための金属多孔体からなるガス流路層とセパレータが電極体の両側に配されて構成されている。なお、セパレータにガス流路溝が形成された燃料電池セルも従来一般のものであり、この形態の場合にはガス流路層となる金属多孔体は不要である。実際の燃料電池スタックは、所要電力に応じた基数の燃料電池セルが積層され、スタッキングされることによって形成されている。
上記構成の燃料電池セルにおいては、膜電極接合体に供給される燃料ガスや酸化剤ガス、さらにはセルの昇温を抑止するための冷却水などの流体をシールするためのガスケットが膜電極接合体およびガス透過層の周縁に形成されている。このガスケットは燃料電池セルごとに形成されており、膜電極接合体およびガス透過層の周縁にガスケットを有した燃料電池セルを所定の基数だけ積層した後にスタッキングがおこなわれている。このガスケット成形は一般に射出成形や圧縮成形にておこなわれており、射出成形を取り上げて説明すると、まず、成形型のキャビティ内にセパレータを収容し、次いで、アノード側もしくはカソード側の一方のガス透過層を収容し、次いで膜電極接合体を収容し、次いでアノード側もしくはカソード側の他方のガス透過層を収容した姿勢で、膜電極接合体およびガス透過層の周縁のガスケット成形用キャビティに樹脂を注入するものである(射出成形)。
上記するセパレータは、たとえばチタンやステンレスからなる2枚のプレートの間に流路が形成されたプレートが介層された3層構造のものや、中間層を樹脂製の枠材とし、2枚のプレートの一方から多数のディンプルや流路を画成するリブを突出させて冷却水流路を形成するものなどがある。この3層構造のセパレータは、当該セル自体のアノード側もしくはカソード側のいずれか一方のセパレータであると同時に、積層姿勢において隣接するセルのアノード側もしくはカソード側の他方のセパレータとなるものである。すなわち、この3層構造セパレータを有する燃料電池セルのセル構成部材は、一つの3層構造セパレータと、アノード側およびカソード側のガス透過層(エキスパンドメタルや金属発泡焼結体などの金属多孔体からなるガス流路層)と、電極体(膜電極接合体およびガス拡散層)と、からなり、複数の燃料電池セルが積層された姿勢において、任意の燃料電池セルは、その両端にアノード側およびカソード側のセパレータを有することとなる。
ところで、ガス拡散層や触媒層に対して電解質膜の端部は側方に張り出しており、ガスケットが成形された際の姿勢においては、電解質膜の側方へ張り出している箇所がガスケットの内部に埋め込まれた構造を呈するのが一般的である。このような構造を適用する理由として、その一つは、両極のガス拡散層や金属多孔体(ガス流路層)が接触して短絡するのを防止することである。また、他の理由は、一方の極(たとえばカソード極)から他方の極(たとえばアノード極)へ電解質膜の側端をガスが回り込んでクロスリークするのを防止するために、ある程度の張り出し長さを確保し、この張り出し部をガスケット内に埋設させた構造を適用しているというものである。
たとえば、成形型内に一つの3層構造セパレータと、金属多孔体と電極体を収容して型閉めし、電極体の側方に画成されたガスケット用のキャビティ内に樹脂を注入してガスケットを成形する場合において、成形型内で電極体側に流れてきた樹脂の圧力により、側方に張り出した電解質膜の端部が上方に持ち上げられ、これがガスのクロスリーク路を形成してクロスリーク耐久を低下させるという課題が生じていた。
これを図5とその一部を拡大した図6に基づいて説明する。図5は、固定型S1と可動型S2のキャビティ内に電極体eとガス流路層となる金属多孔体f1、f2、および一つの3層構造セパレータgが収容され、ガスケット用の樹脂が注入されている状況を説明したものである。まず、電解質膜aとこれを挟持するカソード側およびアノード側の触媒層b1、b2とから膜電極接合体cが形成され、この膜電極接合体cをカソード側およびアノード側のガス拡散層d1、d2が挟持して電極体eが形成されたものを用意する。ここで、電解質膜aの張り出している箇所a1は電極体eの側方に張り出している。また、セパレータgは、2枚のステンレス製もしくはチタン製のプレートg1、g2と、このプレート間に介在してガスや冷却水などの流体用の流路を画成する中間層g3と、から構成されており、成形型内に、セパレータg、金属多孔体f2、電極体e、金属多孔体f1の順に収容されて型閉めされる。なお、この収容された構成部材のユニットで一つの燃料電池セルが形成されるものである。なお、この3層構造のセパレータgは、それが組み込まれる燃料電池セルのアノード側の金属多孔体f2に燃料ガス(流れ方向Z1)を提供するためのガス流通孔g3aと、セルが積層された姿勢において隣接するセルのカソード側の金属多孔体に酸化剤ガス(流れ方向Z2)を提供するためのガス流通孔g3bを備えている。
型閉めの後に、注入孔Hを介してガスケット成形用のキャビティC内に樹脂が注入される(Y方向)。樹脂が注入されると、キャビティC内で水平方向に張り出した電解質膜aの張り出している箇所a1には、図6で示すようにその樹脂圧が作用し、該張り出している箇所a1は上方に持ち上げられてキャビティCの上面に当接する。特に、高温下で樹脂を射出成形する際に電解質膜aが収縮して波打つため、張り出している箇所a1が上方に持ち上げられ易い。
この姿勢でガスケットが成形されると、電解質膜aはその張り出している箇所a1がガスケットの上面に臨んだ状態となってしまう(張り出している箇所a1の端部が外部に臨む)。このような燃料電池セルを所定の基数だけ接着させることなく積み重ね、スタッキングすることにより、従来の燃料電池は形成されている。燃料電池セル同士を密着させないことにより、たとえば発電不良となった燃料電池セルを抜き出して他の燃料電池セルと入れ替えるといったメンテナンスが可能となる。したがって、一つの燃料電池セルに着目した際に、その構成部材であるアノード側およびカソード側の金属多孔体の一方には3層構造のセパレータがガスケットの射出成形の際に接着しており、他方の金属多孔体には積層姿勢において隣接する燃料電池セルのセパレータが接着されることなく当接した状態となっている。
燃料電池セル同士が接着されることなく積み重ねられているのみの構造であるため、上記するようにそのメンテナンスは可能となる一方で、当該燃料電池セルと隣接セルのセパレータとの間に外部に連通する隙間が生じることは避けられない。それに加えて、上記のごとく電解質膜の張り出している箇所の端部が外部に臨んだ状態となっていることから、電解質膜が外部に通じる状態が形成されることとなり、このことは、ガスのクロスリーク路が形成されることを意味するものであり、燃料電池のクロスリーク耐久低下の一因となるものである。
また、上記する燃料電池セルの製造方法には、さらに他の大きな課題が存在している。それは、ガスケット成形時の高温雰囲気下で電解質膜中の水分が蒸散して該電解質膜が収縮した際に、電解質膜とその両側のガス透過層からなる積層体がその中央側で膨らんでしまい、ガス透過層の全面でセパレータと当接できなくなってしまうという課題である。
上記する課題は、以下の理由によるものである。すなわち、たとえば膜電極接合体とその両側に配されるガス拡散層(ガス透過層であり、中央に位置する集電層(MPL)と拡散層基材とからなる)とをホットプレスして電極体(MEGA)を製造するに際し、集電層とこれに当接する膜電極接合体の触媒層がともに、たとえばカーボン素材の無機材料から成形されているために、無機材料同士の界面接着性が十分でない。そのため、ホットプレスしてできる電極体は、ガス拡散層の周縁の拡散層基材と、触媒層の側方から突出する電解質膜とが接着されている、もしくは、拡散層基材と、電解質膜の周縁に一部を触媒層にラップさせるようにして配設された保護フィルムとが接着されているに過ぎない。したがって、ガスケット成形時の高温雰囲気下において電解質膜が収縮した際には、未接着でフリーな中央部位の膜電極接合体とガス拡散層(の集電層)との間に空間ができてしまい、中央が膨らんだ太鼓状を呈するものである。電極体の中央が膨らんだ太鼓状を呈すると、ガス透過層の全面がセパレータに十分に当接することができないため、発電性能の低下と、セル周縁の流体シール性能の低下が齎される。
ここで、当該技術分野における従来の公開技術として、本出願人によってなされた特許文献1を挙げることができ、当該文献には、射出成形に際して、成形型内で電解質膜の端部を押圧部材でセパレータ側に押圧した姿勢で射出成形する技術が開示されている。
上記する公開技術によれば、図5,6で示すガスのクロスリーク路の形成が効果的に抑制される。しかしその一方で、キャビティ内に押圧部材が介在することで注入された樹脂の樹脂流れが阻害されること、押圧部材に作用する樹脂の注入圧に対して該押圧部材の所期の姿勢を保持しながら膜端部をセパレータ側に十分に押さえ付けることが困難である。
さらに、本公開技術をもってしても、上記する2つ目の課題、すなわち、ガスケット成形時の高温雰囲気下において電解質膜が収縮した際に、未接着でフリーな中央部位の膜電極接合体とガス拡散層(の集電層)との間に空間ができてしまい、中央が膨らんだ太鼓状を呈する結果、ガス透過層の全面がセパレータに十分に当接された燃料電池セルを製造できない、という課題を解消することはできない。
特開2008−123885号公報
本発明は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、燃料電池セルを構成する膜電極接合体およびガス透過層の周縁にガスケットを射出成形して燃料電池セルを製造する方法に関し、注入された樹脂の樹脂圧に対して電解質膜の端部が持ち上げられてガスケットの端面に臨み、これがガスのクロスリーク路を形成して燃料電池のクロスリーク耐久を低下させるという課題を簡易な製造方法にて解決することのできる、燃料電池セルの製造方法を提供することを目的とする。さらに、ガスケット成形時の高温雰囲気下において電解質膜が収縮した際に、未接着でフリーな中央部位の膜電極接合体とガス拡散層との間に空間ができてしまい、中央が膨らんだ太鼓状を呈する結果、ガス透過層の全面とセパレータとが十分に当接される燃料電池セルを製造できない、といった課題を簡易な方法によって解消することのできる、燃料電池セルの製造方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成すべく、本発明による燃料電池セルの製造方法は、電解質膜とその両側の触媒層とからなる膜電極接合体と、該膜電極接合体の両側に配された第1のガス透過層および第2のガス透過層と、一方のガス透過層側に配されて前記膜電極接合体やガス透過層よりも側方に張り出しているセパレータと、が積層され、これらの周縁にガスや冷却流体が流通するマニホールドを具備するガスケットが成形されており、電解質膜は第1のガス透過層および/または第2のガス透過層よりも側方へ張り出してガスケット内に埋め込まれている、燃料電池セルの製造方法であって、第1のガス透過層と、膜電極接合体と、第2のガス透過層と、を順に積層し、第2のガス透過層の側方から電解質膜の張り出している箇所が突出している積層体を用意し、該第2のガス透過層の膜電極接合体と当接しない側の側面、および、該電解質膜の張り出している箇所の側面から、荷重を載荷させた姿勢で該積層体を高温処理する第1の工程と、成形型内に順に、前記セパレータと、高温処理後の積層体と、を収容し、成形型内において、収容された積層体の側方から樹脂を注入して該積層体の周縁にガスケットを成形して燃料電池セルを形成する第2の工程と、からなり、前記第1の工程における高温処理時の温度が、前記第2の工程におけるガスケット成形時の温度と同じかそれよりも高い温度である。
本発明の燃料電池セルの製造方法は、たとえば、第2のガス透過層、膜電極接合体、第1のガス透過層が積層されて積層体を成し、これらの側方周縁にガスケットを成形する製造方法に関し、ガスケット成形の前段階で、この積層体に対して構成部材の積層方向に荷重を載荷し、この荷重載荷姿勢でガスケット成形時の温度と同じかそれよりも高い温度で高温処理することにより、電解質膜が水分蒸散によって収縮した際に、載荷荷重によってその中央領域が膨らむのを抑止しながら、電解質膜を収縮させることができる。
そして、この積層体においては、セパレータに当接しない第2のガス透過層よりも電解質膜の端部が側方へ張り出している(張り出している箇所)が、上記する載荷荷重は、この張り出している箇所にも付与され、この姿勢で高温処理されることにより、該張り出している箇所を波打たせることなく、水分蒸散に伴って熱収縮させ、相対的に高剛性の張り出している箇所を形成することができる。このため、射出成形の際に流れてくる樹脂の樹脂圧によってセパレータの存在しない側(通常は成形型の上方)にこの張り出している箇所が持ち上げられ、成形型のキャビティ内空面にこの端部が通じるのを抑止することができる。
ここで、上記する積層体は、膜電極接合体のアノード側とカソード側の双方に拡散層基材と集電層からなるガス拡散層を具備する形態、アノード側とカソード側のいずれか一方は集電層のみを具備する(拡散層基材が廃された)形態の双方を含んでいる。また、本明細書では、これらのいずれの形態も電極体と称呼している。また、本製造方法が製造対象とする燃料電池セルにおいては、いわゆるフラットタイプのセパレータと電極体の間に、ガス流路層(エキスパンドメタル等の金属多孔体)が配された構造の他にも、電極体の両側にガス流路溝が形成されたセパレータが直接配された従来一般のセル構造を含むものである。さらに、「(第1、第2の)ガス透過層」とは、ガス拡散層とガス流路層の双方を含む意味である。したがって、ガス流路層を具備しないセル形態において、「ガス透過層」は「ガス拡散層」を意味するものであり、ガス拡散層とガス流路層の双方を具備するセル形態において、「ガス透過層」は「ガス拡散層」と「ガス流路層」の双方もしくはいずれか一方を意味するものである。
また、膜電極接合体とガス透過層(のたとえばガス拡散層)との接着は、たとえばホットプレスにておこなうものであるが、この接着方法に関しては、以下の2つの方法を挙げることができる。
その一つの方法は、前記第1の工程における高温処理の際に、積層された膜電極接合体と第1、第2のガス透過層が接着される方法である。これは、膜電極接合体とガス透過層との接着を、第1の工程における高温処理時の温度、すなわち、第2の工程におけるガスケット成形時の温度と同じかそれよりも高い温度で実行するものである。たとえば、膜電極接合体とガス拡散層を100℃程度でホットプレスして、双方を接着させるのが一般的である場合において、それよりも高いガスケット成形時の温度である、たとえば130℃程度でホットプレスするものである。この際に、積層体の上側に位置する第2のガス透過層の上面と、この第2のガス透過層の側方から張り出している、電解質膜の張り出している箇所の上面と、に所望重量の錘を載荷させたり、プレス機やロボットハンド等で所望の押圧力でこれらの上面を押圧する。
また、膜電極接合体とガス透過層(のたとえばガス拡散層)との接着の他の方法は、前記第1の工程において、まず、膜電極接合体と第1、第2のガス透過層を高温処理して接着させることで積層体を形成し、次いで、荷重を載荷させた姿勢で該積層体を該接着時の温度よりも高い温度で高温処理する方法である。この方法は、膜電極接合体とガス拡散層等とのホットプレスによる接着工程と、電解質膜をガスケット成形時以上の高温雰囲気で収縮させる工程を分離したものである。
上記する製造方法で製造された所定数の燃料電池セルを積層し、所望の圧縮力にてスタッキングすることにより、燃料電池(燃料電池スタック)が製造される。
上記する本発明の製造方法によって製造された燃料電池セルからなる燃料電池は、家庭用の定置型燃料電池や車載用燃料電池など、その適用分野は他方面に亘るが、特に、近時その生産が拡大しており、車載機器に一層の高性能化を要求する電気自動車やハイブリッド車に好適である。
以上の説明から理解できるように、本発明の燃料電池セルの製造方法によれば、ガスケット成形に先行して、このガスケット成形時の温度以上の温度で、膜電極接合体とガス透過層からなる積層体を高温処理しておくだけの極めて簡易な方法により、射出成形の際に電解質膜の張り出している箇所が樹脂圧によって持ち上げられてガスケットの外面に臨み、これがクロスリーク路を形成して燃料電池のクロスリーク耐久を低下させるという課題を効果的に解消することができる。さらには、ガスケット成形前に、電解質膜からその水分を蒸散させ、しかも、積層体の中央を膨らんだ姿勢とすることなく電解質膜を収縮させることができるため、電解質膜収縮後のガス透過層の全面とセパレータを十分に当接させることができ、ガスのシール性能に優れ、発電性能に優れた燃料電池を製造することができる。
電極体から側方に張り出す電解質膜の張り出している箇所、および上方のガス拡散層の双方に荷重を載荷した姿勢で、高温処理している状況を説明した模式図である。 成形型内でガスケットを成形している状況を説明した縦断面図である。 燃料電池セルを積層する前の状態を説明した縦断面図である。 燃料電池セルを積層し、スタッキングされた状態を説明した縦断面図である。 従来の方法によって、成形型内でガスケットを成形している状況を説明した縦断面図である。 図5において、電解質膜の張り出している箇所が樹脂圧によって上方に持ち上げられている状況を説明した拡大図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、電極体から側方に張り出す電解質膜の張り出している箇所、および上方のガス拡散層の双方に荷重を載荷した姿勢で、高温処理している状況を説明した模式図である。
まず、電極体5の構成を概説すると、この電極体5は、電解質膜1と、カソード側およびアノード側の触媒層2,2’と、から膜電極接合体3が形成され、これをカソード側およびアノード側のガス拡散層4,4’(ガス透過層)が挟持して形成されている。
なお、触媒層2,2’は電解質膜1に比してそれらの面積が狭小であり、したがって、電解質膜1の両側の触媒層2,2’の周縁には該触媒層2,2’が存在しない露出領域が形成され、この露出領域には、カソード側およびアノード側の不図示の保護フィルムが配されて、ガス拡散層4,4’から突出する毛羽が電解質膜1の露出領域に突き刺さるのを防護している。
ここで、膜電極接合体3を構成する電解質膜1は、たとえば、スルホン酸基やカルボニル基を持つフッ素系イオン交換膜、置換フェニレンオキサイドやスルホン化ポリアリールエーテルケトン、スルホン化ポリアリールエーテルスルホン、スルホン化フェニレンスルファイドなどの非フッ素系のポリマーなどから形成される。
また、触媒層2,2’は、触媒が担持された導電性担体(粒子状のカーボン担体など)と、電解質と、分散溶媒(有機溶媒)と、を混合して触媒溶液(触媒インク)を生成し、これを電解質膜1やガス拡散層4,4’等の基材に塗工ブレードにて層状に引き伸ばして塗膜を形成し、温風乾燥炉等で乾燥することで触媒層が形成される。ここで、触媒溶液を形成する電解質は、プロトン伝導性ポリマーである、有機系の含フッ素高分子を骨格とするイオン交換樹脂、例えばパーフルオロカーボンスルフォン酸樹脂、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリスルフィド、スルホン化ポリフェニレン等のスルホン化プラスチック系電解質、スルホアルキル化ポリエーテルエーテルケトン、スルホアルキル化ポリエーテルスルホン、スルホアルキル化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホアルキル化ポリスルホン、スルホアルキル化ポリスルフィド、スルホアルキル化ポリフェニレンなどのスルホアルキル化プラスチック系電解質などを挙げることができる。なお、市販素材としては、ナフィオン(Nafion)(登録商標、デュポン社製)やフレミオン(Flemion)(登録商標、旭硝子株式会社製)などを挙げることができる。
また、分散溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、プロピレンカーボネート、酢酸エチルや酢酸ブチルなどのエステル類、芳香族系あるいはハロゲン系の種々の溶媒を挙げることができ、さらには、これらを単独で、もしくは混合液として使用することができる。さらに、触媒が担持された導電性担体に関し、この導電性担体としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーなどの炭素材料のほか、炭化ケイ素などに代表される炭素化合物などを挙げることができ、この触媒(金属触媒)としては、たとえば、白金や白金合金、パラジウム、ロジウム、金、銀、オスミウム、イリジウムなどのうちのいずれか一種を使用することができ、好ましくは白金または白金合金を使用するのがよい。さらに、この白金合金としては、たとえば、白金と、アルミニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、ガリウム、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、バナジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、チタンおよび鉛のうちの少なくとも一種との合金を挙げることができる。
また、ガス拡散層4,4’は、拡散層基材と集電層(MPL)からなるものであり、拡散層基材としては、電気抵抗が低く、集電を行えるものであれば特に限定されるものではないが、たとえば、導電性無機物質を主とするものを挙げることができ、この導電性無機物質としては、ポリアクリロニトリルからの焼成体、ピッチからの焼成体、黒鉛及び膨張黒鉛等の炭素材やこれらのナノカーボン材料、ステンレススチール、モリブデン、チタン等を挙げることができる。また、拡散層基材の導電性無機物質の形態は特に限定されるものではなく、たとえば繊維状あるいは粒子状で用いられるが、ガス透過性の点から無機導電性繊維であって、特に炭素繊維が好ましい。無機導電性繊維を用いた拡散層基材としては、織布あるいは不織布いずれの構造のものも使用することができ、カーボンペーパーやカーボンクロスなどを挙げることができる。織布としては、平織、紋織、綴織など、特に限定されるものではなく、不織布としては、抄紙法、ニードルパンチ法、ウォータージェットパンチ法によるものなどが挙げられる。さらに、この炭素繊維としては、フェノール系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維などを挙げることができる。さらに、集電層はアノード側、カソード側の触媒層2,2’から電子を集める電極の役割を果たすとともに、生成水を排水する撥水作用を奏するものであり、導電性材料である、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、金、銀、銅及びこれらの化合物または合金、導電性炭素材料などと、フッ素樹脂(PTFE)などから形成できる。
なお、図1において、電解質膜1の張り出している箇所1aの側面(図では上面および下面)とガス拡散層4,4’の周縁(の下面および上面)の間に、たとえばPTFE成分の接着媒体等を介在させ、図示のごとくホットプレスすることにより、電解質膜1とガス拡散層4,4’との接着がおこなわれる。
さらに、不図示の保護フィルムは、ポリテトラフルオロエチレン、PVDF(二フッ化ポリビニル)、ポリエチレン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、コポリアミド、ポリアミドエラストマ、ポリイミド、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマ、シリコーン、シリコンゴム、シリコンベースのエラストマなどから形成されるものである。
図1に戻り、電極体5を発熱台Eの上に載置し、電極体5の側方から張り出した電解質膜1の張り出している箇所1aの上面、および、ガス拡散層4の上面に荷重錘Dを載荷させ(圧縮荷重:P,P’でガス拡散層4、張り出している箇所1aを圧縮)、この姿勢で、発熱台Eを以後のガスケット成形の際の成形型内温度である130℃程度で所定時間、高温処理する。この荷重錘Dを載荷した状態で所定時間高温処理することにより、張り出している箇所1aを含む電解質膜1の全体を波うちさせることなく、水分蒸散に伴って収縮変形させる。
次に、収縮変形した電解質膜1を有する電極体5(膜電極接合体3とカソード側およびアノード側のガス拡散層4,4’とからなる、高温処理後の積層体)と、カソード側およびアノード側のガス流路層となる金属多孔体6,6’(ガス透過層)と、3層構造のセパレータ7を用意し、図2で示すように、固定型S1と可動型S2とからなる成形型のキャビティ内に下方から順に、セパレータ7、アノード側の金属多孔体6’、電極体5、カソード側の金属多孔体6を移載して型閉めする。なお、この成形型内の積層姿勢において、金属多孔体6’とガス拡散層4’をまとめて第1のガス透過層、金属多孔体6とガス拡散層4をまとめて第2のガス透過層と称呼することもでき、電解質膜1の張り出している箇所1aは、この第2のガス透過層よりも側方に張り出していることが分かる。
ここで、3層構造のセパレータ7は、ステンレスやチタンからなる金属プレート71,72と、その間に、金属素材で冷却水流路やガス流路が形成された中間層73が介層されたものである。なお、樹脂素材の枠材を中間層とし、2枚の金属プレートの一方のプレートから多数のディンプル、もしくは流路画成用のリブが突出された形態であってもよい。
なお、図示するセパレータ7では、自身が構成要素となる燃料電池セルのアノード側の多孔体6'に燃料ガスを供給するためのガス流路73aと、セルの積層姿勢において隣接するセルのカソード側の多孔体6に酸化剤ガスを供給するためのガス流路73bが形成されており、さらには、不図示の冷却水流路が中間層73に形成されている
次いで、固定型S1に開設された注入孔Hを介して、樹脂をガスケット成形用キャビティC内に注入する(Y方向)。なお、図2の断面はガスケットにマニホールドが形成される箇所で切断した断面である。ここで、注入される樹脂としては、ブチル系ゴムやウレタン系ゴム、シリコーンRTVゴム、耐メタノール性を有するエポキシ系樹脂、エポキシ変性シリコーン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、炭化水素樹脂などを挙げることができる。
図5で示す従来の製造方法と異なり、本発明の製造方法では、電解質膜1の張り出している箇所1aが荷重載荷下でガスケット成形時と同程度の温度にて高温処理されて熱収縮し、相対的に張り出し長さが短く、しかも、高剛性の張り出している箇所1aとなっているために、電極体1の側方から流れてきた樹脂の樹脂圧によって該端部1aが上方に持ち上げられることがない。また、仮に持ち上げられたとしても、熱収縮後の張り出している箇所1aは相対的に高剛性となっていること、その張り出し長さも相対的に短くなっていること、から、キャビティCの内面にその端部が到達する虞はない。
一方、このガスケット成形により、成形型内のセパレータ7の表面上にガスケットが直接成形されることから、セパレータ7とガスケット8の密着領域は十分に接着され、したがって、これらの界面が外部に流体連通することはない。このことから、図5で示すように、ガスケットのうち、セパレータと接着しない側の表面に電解質膜の張り出している箇所の端部が臨んでこれが外部と流体連通し、ガスのクロスリーク路を形成するという問題は生じ得ない。
図3は、図1,2の方法で製造された2つの燃料電池セル10,10を示しており、より具体的には、これらが積層される前の状態を示している。なお、たとえば300基の燃料電池セル10,…を積層して燃料電池スタックを形成する場合には、図1,2の方法でそれぞれの燃料電池セルを製造し、各燃料電池セル10のセパレータを具備しない側に積層姿勢で隣接する燃料電池セル10のセパレータ7を上載するようにして300基の燃料電池セル10,…を積層し、スタッキングが実行される。
図4は、複数の燃料電池セル10,…が積層され、スタッキングされた後の2つの燃料電池セル10,10を取り出して図示したものである。なお、射出成形されてできたガスケット8にマニホールドMが形成され、無端のシールリブ8aがマニホールドMを囲繞するようにガスケット8の上面(セパレータ7の存在しない面)に形成される。
図4から明らかなように、積層姿勢の各燃料電池セル10,…がスタッキングされた際に、任意の燃料電池セル10は、自身の構成部材であるセパレータ7と隣接する燃料電池セル10のセパレータ7がその両側に配される構造となる。スタッキングされることによってマニホールドM周りのシールリブ8aが隣接する燃料電池セル10のセパレータ7にて潰され、シール構造が形成される。
図示するマニホールドMは燃料ガスが流入するマニホールドであり、供給された燃料ガスは3層構造セパレータ7の中間層73からプレート71に亘って形成された供給ガス流路73aを介してアノード側の多孔体6’に供給される(Z1方向)。一方、ガスケット8の他の断面には酸化剤ガスが流入する別途のマニホールドが形成されており、この別途のマニホールドを介して酸化剤ガスが流入し、セパレータ7の中間層73からプレート72に亘って形成された供給ガス流路73bを介して隣接セルのカソード側の金属多孔体6に供給される(Z2方向)。
上記する本発明の燃料電池セルの製造方法によれば、射出成形時の樹脂圧によって電解質膜の張り出している箇所が持ち上げられ、該張り出している箇所の端部がセパレータと接着していない側のガスケットの端面に臨んで外部と流体連通し、ガスのクロスリーク路となることが効果的に抑止される。さらには、ガスケット成形時の高温雰囲気下で電解質膜が水分蒸散によって収縮した際に、電極体はその中央で膨らむことなく、電解質膜の収縮になじみながら該電解質膜とガス拡散層との接着がおこなわれることから、電極体と金属多孔体、およびセパレータを積層した際に、電極体や金属多孔体、セパレータは、それらの全面で相互に当接することができる。そのため、十分な発電可能領域(面積)を補償でき、部材間の未接触領域(高抵抗領域)を排除でき、高い発電性能を担保することができる。
なお、実際に電気自動車等に車載される燃料電池システムは、燃料電池(燃料電池スタック)と、水素ガスや空気を収容する各種タンク、これらのガスを燃料電池に提供するためのブロア、燃料電池を冷却するためのラジエータ、燃料電池で生成された電力を蓄電するバッテリ、この電力で駆動する駆動モータ等から大略構成されるものである。
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
1…電解質膜、1a…端部、2…カソード側の触媒層、2’…アノード側の触媒層、3…膜電極接合体、4…カソード側のガス拡散層(ガス透過層)、4’…アノード側のガス拡散層(ガス透過層)、5…電極体、6…カソード側の多孔体(ガス透過層)、6’…アノード側の多孔体(ガス透過層)、7…セパレータ、71、72…プレート、73…中間層、8…ガスケット、10…燃料電池セル、M…マニホールド、S1…固定型、S2…可動型、H…注入孔、C…キャビティ

Claims (4)

  1. 電解質膜とその両側の触媒層とからなる膜電極接合体と、
    該膜電極接合体の両側に配された第1のガス透過層および第2のガス透過層と、
    一方のガス透過層側に配されて前記膜電極接合体やガス透過層よりも側方に張り出しているセパレータと、が積層され、これらの周縁にガスや冷却流体が流通するマニホールドを具備するガスケットが成形されており、電解質膜は第1のガス透過層および/または第2のガス透過層よりも側方へ張り出してガスケット内に埋め込まれている、燃料電池セルの製造方法であって、
    第1のガス透過層と、膜電極接合体と、第2のガス透過層と、を順に積層し、第2のガス透過層の側方から電解質膜の張り出している箇所が突出している積層体を用意し、該第2のガス透過層の膜電極接合体と当接しない側の側面、および、該電解質膜の張り出している箇所の側面から、荷重を載荷させた姿勢で該積層体を高温処理する第1の工程と、
    成形型内に順に、前記セパレータと、高温処理後の積層体と、を収容し、成形型内において、収容された積層体の側方から樹脂を注入して該積層体の周縁にガスケットを成形して燃料電池セルを形成する第2の工程と、からなり、
    前記第1の工程における高温処理時の温度が、前記第2の工程におけるガスケット成形時の温度と同じかそれよりも高い温度である、燃料電池セルの製造方法。
  2. 前記第1の工程における高温処理の際に、積層された膜電極接合体と第1、第2のガス透過層が接着される、請求項1に記載の燃料電池セルの製造方法。
  3. 前記第1の工程では、膜電極接合体と第1、第2のガス透過層を高温処理して接着させることで前記積層体を形成し、次いで、荷重を載荷させた姿勢で該積層体を該接着時の温度よりも高い温度で前記高温処理する、請求項1に記載の燃料電池セルの製造方法。
  4. 前記ガス透過層が、ガス拡散層、もしくは、金属多孔体からなるガス流路層、もしくはそれらの積層体のいずれか一方からなる、請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池セルの製造方法。
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