JP2011146300A - 燃料電池セルとその製造方法、およびその製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ガス拡散層のカーボン繊維毛羽から電解質膜を保護しつつ、触媒層とガス拡散層との接合面の面圧が不均一となり発電性能が低下するという課題を効果的に解消することのできる燃料電池セルとその製造方法、およびその製造装置を提供する。
【解決手段】膜電極接合体4の両側にガス拡散層5A,5Bが配されて電極体10を成し、ガス拡散層5A,5Bの端部であって、触媒層2,3の周縁となる箇所に窪み5Aa,5Baが形成され、その窪み5Aa,5Baと触媒層2,3で被覆されていない電解質膜1の露出領域1’とで画成される凹溝に、触媒層2,3から露出領域1’に亘って樹脂材6A,6Bが収容されて、ガス拡散層5A,5Bから突出する毛羽が電解質膜1に突き刺さるのを防護している。
【選択図】図1
【解決手段】膜電極接合体4の両側にガス拡散層5A,5Bが配されて電極体10を成し、ガス拡散層5A,5Bの端部であって、触媒層2,3の周縁となる箇所に窪み5Aa,5Baが形成され、その窪み5Aa,5Baと触媒層2,3で被覆されていない電解質膜1の露出領域1’とで画成される凹溝に、触媒層2,3から露出領域1’に亘って樹脂材6A,6Bが収容されて、ガス拡散層5A,5Bから突出する毛羽が電解質膜1に突き刺さるのを防護している。
【選択図】図1
Description
本発明は、ガス拡散層の周縁に樹脂材を備えた燃料電池セルとその製造方法、およびその製造装置に関するものである。
固体高分子型燃料電池の燃料電池セルは、イオン透過性の電解質膜と、該電解質膜を挟持するアノード側およびカソード側の触媒層とから膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)が形成され、この膜電極接合体とこれを挟持するアノード側およびカソード側のガス拡散層(GDL)とから電極体(MEGA:Membrane Electrode & Gas Diffusion Layer Assembly)が形成され、電極体に燃料ガスもしくは酸化剤ガスを提供するとともに電気化学反応によって生じた電気を集電するための金属多孔体からなるガス流路層とセパレータが電極体の両側に配されて構成されている。なお、セパレータにガス流路溝が形成された燃料電池セルも従来一般のものであり、この形態の場合にはガス流路層となる金属多孔体は不要である。実際の燃料電池スタックは、所要電力に応じた基数の燃料電池セルが積層され、スタッキングされることによって形成されている。
上記する燃料電池では、アノード電極に燃料ガスとして水素ガス等が提供され、カソード電極には酸化剤ガスとして酸素や空気が提供され、各電極では固有のガス流路層(またはセパレータに形成されたガス流路溝)にて面内方向にガスが流れ、次いでガス拡散層にて拡散されたガスが電極触媒層に導かれて電気化学反応がおこなわれるものである。
上記するガス拡散層の形態として、拡散層基材と集電層(MPL:Micro Porous Layer)とから構成されるものは一般に知られるところである。一般には、触媒層は電解質膜よりも狭小な平面積(小さな平面積)を有しており、電解質膜が触媒層にて被覆されていない触媒層の周縁の露出領域には、ポリマー素材の補強膜(もしくは保護フィルム)が配設されており、この補強膜が拡散層基材と電解質膜の間に介在した構造が一般的である。補強膜を触媒層の周縁領域で拡散層基材と電解質膜の間に介在させることにより、触媒層を有する電解質膜(膜電極接合体)とガス拡散層をたとえば100〜130℃程度の高温雰囲気下、1〜3MPa程度の圧縮力で熱圧着する(電解質膜に影響を与えない熱圧着条件)際に、繊維質の拡散層基材の表面から突出する毛羽が電解質膜に突き刺さることを抑止することができる。
上記する補強膜を備えた従来の燃料電池セルの構造を図11に示している。図11において、電解質膜aと、カソード側およびアノード側の触媒層b1、b2と、から膜電極接合体cが形成され、この膜電極接合体cをカソード側およびアノード側のガス拡散層d(拡散層基材d1と集電層d2とから構成される)が挟持して形成される。触媒層b1、b2は電解質膜aに比して狭小であり、電解質膜aが触媒層b1、b2で被覆されていない露出領域にはカソード側およびアノード側の補強膜e1,e2が配され、これらが電解質膜aと拡散層基材d1の間に介在している。また、図示例はガス流路となる金属多孔体fをカソード側およびアノード側に備えたものであり、電極体と金属多孔体fの周縁には、射出成形され、その内部に流体流通用のマニホールドMを有するガスケットgが形成されている。
図示例のごとく、補強膜e1,e2は、その触媒層側端部が触媒層b1、b2にラップ(積層)しているのが一般的である。この補強膜e1,e2は、熱圧着時に拡散層基材の毛羽が電解質膜aに突き刺さると、この突き刺さり箇所がガスのクロスリークを助長することとなり、燃料電池のクロスリーク耐久性が低下し、発電性能の低下に直結するという課題を解消するために設けられている。すなわち、電解質膜aが触媒層b1、b2と接触している領域は、該触媒層b1、b2にて電解質膜aが毛羽の突き刺さりから保護されている一方で、上記する電解質膜aの露出領域は補強膜e1,e2で毛羽の突き刺さりから保護される。ここで、触媒層b1、b2の端部から毛羽が電解質膜aに通じることを回避するべく、図示するように、補強膜e1,e2の端部を触媒層b1、b2に積層させるようにしている。
なお、一般に補強膜は電解質膜や触媒層に比して高剛性であり、硬度も相対的に高いことから、上記する毛羽が突き刺さった場合でも、補強膜を貫通する毛羽の数は極めて少なくなり、結果として、補強膜を介し、電解質膜を介してアノード側とカソード側を毛羽が貫通することが効果的に抑止されている。
しかし、補強膜を用いて毛羽から電解質膜を保護する対策に関し、以下に述べる多くの課題が近年顕在化しており、当該分野において重要な解決課題となっている。
まず、膜電極接合体とガス拡散層を接合する際、補強膜が電解質膜等に比して相対的に高剛性であるため、触媒層と補強膜の剛性差に起因して、膜電極接合体の触媒層面と補強膜が配設された面との間に段差が生じ、補強膜が配設された面が過面圧領域となり、発電領域である触媒層面には所望の面圧が作用しない、という不具合が生じ、燃料電池の発電性能が低下する要因となる。
つまり、膜電極接合体cとガス拡散層dを接合する際、図示のごとく膜電極接合体cの上下から圧縮力Pが作用するが、補強膜が電解質膜等に比して相対的に高剛性であるため、補強膜e1,e2が積層している電極体箇所A(補強膜の積層箇所)が相対的に多くの割合の圧縮力を負担することとなり、それに起因して、触媒層b1,b2のうち、主に発電領域である電極体箇所A以外の箇所Bには所望の圧縮力が作用せず、燃料電池の発電性能が低下する可能性がある。
また、上記の段差の発生は同時に、補強膜の内側で、膜電極接合体とガス拡散層に囲まれた領域に隙間が発生することに繋がり、燃料電池使用時には前記隙間に水溜りが発生する。したがって、たとえば氷点下等の低温時の使用環境下では前記隙間の水が凍結し、水の体積膨張により、膜電極接合体が損傷するおそれもある。
つまり、図示のごとく、ガス拡散層と触媒層が接触しない箇所G、および、ガス拡散層と電解質膜が接触しない箇所Hが存在することになり、その箇所G,Hに対応する膜電極接合体cは、面圧が生じない無面圧領域となる。そして、その箇所G,Hには水溜りが発生し、たとえば氷点下等の低温時の使用環境下では前記隙間の水が凍結し、膜電極接合体cが損傷する可能性がある。
また、燃料電池スタックは複数の燃料電池セルが積層され、スタッキングされて形成されるものであるが、このスタッキング時の圧縮力は各燃料電池セルに伝達され、図示のごとく膜電極接合体cに対してその上下から圧縮力Pとして作用する。ここで、図示のごとく補強膜e1,e2が触媒層b1、b2と積層している場合、一般的には、相対的に高剛性の補強膜が積層している電極体箇所A(補強膜の積層箇所)が相対的に多くの割合の圧縮力を負担することとなり、それに起因して、他の電極体箇所には所期の圧縮力が作用しなくなるという課題が生じ得る。
あるいは、補強膜が触媒層に積層してなる電極体箇所Aでは面圧が過度に高くなり、その外側の補強膜が存在する領域は、該補強膜が電解質膜等に比して高剛性であるがゆえに過面圧領域となる。その一方で、電極体箇所Aの内側は、ガス拡散層と触媒層が接触しない箇所Gが存在することにより、この箇所Gに対応する電極体箇所には面圧が作用せず、面圧無領域が形成される。
そして、一般に、この面圧無領域より内側は発電領域であり、それよりも外側の過面圧領域は非発電領域であるが、この非発電領域に過大な面圧が作用し、そのために、発電領域に十分な圧縮力が作用しない、さらには図示のごとく面圧無領域が生じてしまう、という不具合が生じ、燃料電池の発電性能を著しく低下させる要因となることは理解に易い。
また、前記補強膜はガス拡散層の外縁表面から突出する毛羽から電解質膜を保護する目的で配設されるので、一般に、平面視方形等の補強膜シートから触媒層部を抜いた中抜き矩形形状を有するものである。そのため、製造工程の観点から見ると、膜電極接合体に中抜き矩形形状の補強膜を配設する際、例えばロール搬送等を使用しても補強膜全体にかかるテンションを均一化することが困難であり、その課題解決のためにテンションコントロールに適した高度な製造装置が必要とされる、という課題もある。
さらに、補強膜は、その材料基板となる補強膜シートから触媒層部を抜く製法で形成されるのが一般的であるが、その場合、その中抜き矩形形状の補強膜を抜き取った後の中抜き部は廃棄処分されることになってしまう。そのため、補強膜の製品製造時における補強膜シートの歩留まりが低下してしまい、原材料費の抑制、ひいては製造コストの抑制が困難となる、という課題も有している。
本発明は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、ガス拡散層の毛羽の突き刺さりによる電解質膜のクロスリーク路の形成を抑止する樹脂材を備えた燃料電池用セルにおいて、ガス拡散層のカーボン繊維毛羽から電解質膜を保護しつつ、触媒層とガス拡散層との接合面の面圧が不均一となって発電性能が低下するという課題や、膜電極接合体上に発生する隙間に水溜りができ、低温時の水の体積膨張によって膜電極接合体を損傷するという課題、スタッキング時の圧縮力の多くの割合を触媒層の外側が過度に負担し、そのために、発電領域に十分な圧縮力が作用しなくなるという課題、さらには、本来的に発電領域であるはずの電極体の一部に面圧が作用せず、そのために発電量が低くならざるを得ないという課題、のすべてを効果的に解消することのできる、燃料電池セルとその製造方法、およびその製造装置を提供することを目的とする。
前記目的を達成すべく、本発明による燃料電池セルは、電解質膜と、これよりも狭小な平面積で該電解質膜の両側で当接する触媒層と、から膜電極接合体が形成され、該膜電極接合体の両側にガス拡散層が配されてなる燃料電池セルであって、前記膜電極接合体の両側に配される前記ガス拡散層のうちの少なくとも一方の該ガス拡散層の端部であって、該ガス拡散層が前記膜電極接合体に配された際に前記触媒層の周縁となる箇所には窪みが形成されており、前記窪みと前記電解質膜とで画成される凹溝に樹脂材が配され、前記ガス拡散層における前記膜電極接合体と反対側の面が平坦面を成しているものである。
本発明の燃料電池セルは、その一部を触媒層に積層させていた補強膜を廃し、ガス拡散層の端部に配された窪みと電解質膜とで画成される凹溝に樹脂材を完全に収容させた構成を適用することにより、従来構造の燃料電池セルと同様に、ガス拡散層の毛羽の突き刺さりによる電解質膜におけるクロスリーク路の形成を抑止できることに加えて、発電領域に所望の面内均一な圧縮力を作用させることを実現できるものである。
実際の燃料電池スタックは、本発明の燃料電池セルが所定基数積層され、スタッキングされることで形成される。ここで、本発明の燃料電池セルにおいては、画成された凹溝に樹脂材が収容されることにより、当該ガス拡散層における膜電極接合体と反対側の面が平坦面を成すことができる。すなわち、従来構造の燃料電池セルのように、触媒層に補強膜がラップする箇所で段差が生じるということがないため、スタッキング時に燃料電池セルの電極体構成部材には、スタッキング時の圧縮力が面内均一に作用することになる。したがって、従来構造の燃料電池セルの有する課題、すなわち、スタッキング時の圧縮力の多くの割合を触媒層の外側が過度に負担して、発電領域に十分な圧縮力が作用しなくなるという課題や、本来的に発電領域であるはずの電極体の一部に面圧が作用せず、そのために発電量が低くならざるを得ないという課題、を効果的に解消することができる。
なお、その端部に配された窪みと電解質膜とで画成される凹溝に樹脂材を備えるガス拡散層が、アノード側とカソード側の双方に設けられた形態であってもよいし、アノード側もしくはカソード側のいずれか一方にのみ当該ガス拡散層が配された形態であってもよい。いずれか一方の電極に当該ガス拡散層が形成され、他方の電極には従来一般の補強膜を有するガス拡散層が形成されるものであっても、従来の非発電領域に生じ得る過度な面圧は効果的に緩和できる。さらに、当該ガス拡散層が形成された電極の他方の電極において、ガス拡散層からの毛羽の突き刺さりに起因した電解質膜を貫通する貫通孔(ガスのクロスリーク路となる)が形成されないことを前提として、補強膜を廃した構造としてもよい。
さらに、本発明の燃料電池セルの構造は、膜電極接合体のアノード側とカソード側の双方に拡散層基材と集電層からなるガス拡散層を具備する形態、アノード側とカソード側のいずれか一方は集電層のみを具備する(拡散層基材が廃された)形態の双方を含んでいる。また、本明細書では、これらのいずれの形態も電極体と称呼している。また、電極体の両側にガス流路溝が形成されたセパレータが直接配された形態は勿論のこと、いわゆるフラットタイプのセパレータと電極体の間に、ガス流路層(エキスパンドメタル等の金属多孔体)が配された形態を含むものである。
また、本発明による燃料電池セルの製造方法は、電解質膜と、これよりも狭小な平面積で該電解質膜の両側で当接する触媒層と、から膜電極接合体が形成され、該膜電極接合体の両側にガス拡散層が配されてなる燃料電池セルの製造方法であって、前記膜電極接合体の両側に配される前記ガス拡散層のうちの少なくとも一方の該ガス拡散層のうち、該ガス拡散層が前記膜電極接合体に配された際に該ガス拡散層の端部であって前記触媒層よりも周縁に位置する箇所に窪みを形成し、該窪みに樹脂材を配して前記ガス拡散層を形成する、第1の工程、前記第1の工程にて形成された前記ガス拡散層を、前記膜電極接合体の両側のうちの少なくとも一方に、前記樹脂材が前記電解質膜に当接するように配して燃料電池セルを製造する、第2の工程、からなるものである。
ここで、本発明による燃料電池セルの製造方法は、前記第1の工程において、前記ガス拡散層にプレス加工を実施して前記窪みを形成し、該窪みに対応する箇所の前記ガス拡散層の密度を、該ガス拡散層の他の箇所の密度に比して高くしておき、前記窪みに樹脂を注入し、硬化させて前記樹脂材を形成するものであることが好ましい。
この製法形態によれば、プレス加工を実施してガス拡散層の端部となる部分に窪みが形成され、該窪みに対応する箇所に繊維質の高密度領域が形成される。この高密度領域では、ガス拡散層の繊維質の配列が緻密なものとなるため、前記第1の工程において窪みに樹脂材を配してガス拡散層を形成する際に、ガス拡散層の端部からガス拡散層の発電面へ樹脂材が浸透漏れするのを、ガス拡散層の端部の緻密に配列された繊維質が抑制することができる。
したがって、ガス拡散層の端部からガス拡散層内へ樹脂材が浸透漏れし、発電領域内で硬化して燃料電池セルの発電性能が低下する、という現象を効果的に抑制することができる。さらに、ガス拡散層の端部からガス拡散層内へ樹脂材が浸透して、注入された樹脂材の形状が安定しないという課題も解消されるので、ガス拡散層の端部において、より一層形状の安定した樹脂材を形成することができ、ガス拡散層が膜電極接合体に配された際に、当該ガス拡散層における膜電極接合体と反対の面に、容易かつ安定的に平坦面を形成することができる。
さらに、本発明による燃料電池セルの製造方法は、前記第1の工程において、連続して提供されるガス拡散層シートに連続してプレス加工を実施して複数のガス拡散層用の前記窪みを形成し、形成された該窪みに連続して樹脂を注入して前記樹脂材を形成し、該樹脂材が形成された複数の前記ガス拡散層を含む前記ガス拡散層シートを、単一のガス拡散層ごとに裁断加工して複数の前記ガス拡散層を形成するものであるのが好ましい。
この形態製法によれば、連続して提供されるガス拡散層シートに、連続したプレス加工を実施して複数のガス拡散層用の窪みが形成され、形成された当該窪みには連続して樹脂が注入されて樹脂材が形成されることから、例えば、ガス拡散層シートに樹脂材を格子状に形成し、かつ、この格子状に形成された樹脂材の一辺を共有するようにして、単一のガス拡散層が各々隣接した状態で、ガス拡散層シートに複数形成される。そして、その共有された格子を構成する樹脂材の一辺の途中で裁断加工されることで、複数のガス拡散層を含むガス拡散層シートから、枠状の樹脂材を有する単一のガス拡散層を複数形成することができる。つまり、樹脂材が配された複数のガス拡散層を個別に製造するよりも、一度の裁断加工で同時に複数のガス拡散層を形成することができるので、ガス拡散層の生産効率の向上に繋がる。また、複数のガス拡散層をガス拡散層シートに隣接して形成することができるので、ガス拡散層製造時のガス拡散層シートの歩留まりを向上させることも可能となり、原材料費を抑制して、ガス拡散層の製造コストの抑制にも繋がる。
また、本発明による燃料電池セルの製造装置は、電解質膜と、これよりも狭小な平面積で該電解質膜の両側で当接する触媒層と、から膜電極接合体が形成され、該膜電極接合体の両側にガス拡散層が配されてなる燃料電池セルにおいて、前記膜電極接合体の両側に配される前記ガス拡散層のうちの少なくとも一方の該ガス拡散層の端部であって、該ガス拡散層が前記膜電極接合体に配された際に前記触媒層の周縁となる箇所には窪みが形成されており、該窪みと前記電解質膜とで画成される凹溝に樹脂材が配され、前記ガス拡散層における前記膜電極接合体と反対側の面が平坦面を成している、燃料電池セルの製造装置であって、連続して提供されるガス拡散層シートに連続してプレス加工を実施して複数のガス拡散層用の前記窪みを形成する加圧機と、形成された前記窪みに連続して樹脂を注入して前記樹脂材を形成する注入機と、前記樹脂材が形成された複数の前記ガス拡散層を含む前記ガス拡散層シートを、単一のガス拡散層ごとに裁断加工する裁断機と、からなるものである。
本発明の製造装置を構成する加圧機は、プレス加工を実施して、例えば、ガス拡散層シートに平面視方形のガス拡散層の輪郭に沿う枠状の窪みを隣接するように形成するものであり、本発明の製造装置を構成する注入機は、当該窪みに連続して樹脂材を注入して、複数の隣接する枠状の樹脂材を形成するものであり、本発明の製造装置を構成する裁断機は、その単一のガス拡散層ごとに当該樹脂材に沿ってガス拡散層シートを裁断加工するものである。つまり、単一のガス拡散層が各々隣接した状態で、ガス拡散層シートに複数形成され、その単一のガス拡散層を枠状に取り囲むようにガス拡散層シート上に樹脂材が格子状に形成され、隣接するガス拡散層は格子状に形成された樹脂材の一辺を共有している。そして、その共有された格子を構成する樹脂材の一辺の途中で裁断加工されることで、複数のガス拡散層を含むガス拡散層シートから、枠状の樹脂材を有する単一のガス拡散層が複数形成される。本製造装置によれば、一度の裁断加工で同時に複数のガス拡散層を形成することができるので、ガス拡散層の生産効率を向上させることができる。また、複数のガス拡散層をガス拡散層シートに隣接して形成できるので、ガス拡散層製造時のガス拡散層シートの歩留まりを向上させることができ、原材料費の抑制、ひいてはガス拡散層の製造コストの抑制を図ることができる。
以上の説明から理解できるように、本発明の燃料電池セルとその製造方法によれば、ガス拡散層の端部に配された窪みと電解質膜とで画成される凹溝に樹脂材が収容されてなる電極体を有する燃料電池セルが得られることで、ガス拡散層の毛羽の突き刺さりによる電解質膜におけるクロスリーク路の形成を抑止しながら、発電領域に所望の面内均一な圧縮力を作用させることが可能となり、発電性能に優れた燃料電池を提供することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、図示例は、カソード側およびアノード側の双方に補強膜が配されたセル構造を示しているが、ガス拡散層からの毛羽の突き刺さりに起因した電解質膜におけるクロスリーク路が形成されないことを前提として、アノード側もしくはカソード側のいずれか一方にのみ当該ガス拡散層が配された形態であってもよい。つまり、いずれか一方の電極に当該ガス拡散層が形成され、他方の電極には従来一般の補強膜を有するガス拡散層が形成されるものであっても、従来の非発電領域に生じ得る過度な面圧は効果的に緩和できる。さらに、当該ガス拡散層が形成された電極の他方の電極において、補強膜を廃した構造としてもよい。また、図示する電極体の両側(上下)に不図示のセパレータが配されて、本発明の燃料電池セルが構成されるが、そのセパレータも種々の形態をとり得るものである。例えば、第1のプレート(たとえばカソード側プレート)、中間層(もしくは中間プレート)、第2のプレート(たとえばアノード側プレート)が積層してなる3層構造のセパレータや、一側面にガス用溝流路が形成され、他側面に冷却媒体用流路が形成された、従来一般のセパレータを挙げることができる。
図1は、本発明の燃料電池セルを構成する電極体を示した縦断面図であり、図2は、図1で示す電極体において、膜電極接合体とガス拡散層の接合方法を説明した図である。
図1で示す電極体10は、電解質膜1と、カソード側およびアノード側の触媒層2,3と、から形成される膜電極接合体4を、カソード側およびアノード側のガス拡散層5A,5Bが挟持して、その全体が大略構成されるものである。
ここで、触媒層2,3は電解質膜1に比してそれらの面積が狭小であり、したがって、電解質膜1の両側の触媒層2,3の周縁には該触媒層2,3が存在しない露出領域1’が形成されている。
そして、膜電極接合体4の両側に配されるガス拡散層5A,5Bの端部であって、触媒層2,3の周縁となる箇所に窪み5Aa,5Baが形成され、その窪み5Aa,5Baと露出領域1’とで画成される凹溝に、触媒層2,3から露出領域1’に亘って樹脂材6A,6Bが収容されて、ガス拡散層5A,5Bから突出する毛羽が電解質膜1に突き刺さるのを防護している。
ここで、上記する電極体10は、図2で示すように、予め形成された膜電極接合体4の両側にガス拡散層5A,5Bが配されて、熱圧着等されることで製造される。より具体的には、電解質膜1の両側にカソード側およびアノード側の触媒層2,3が接合された膜電極接合体4を予め準備し、端部の窪みに樹脂材6A,6Bを有するガス拡散層5A,5Bを膜電極接合体4の両側に配し、該樹脂材6A,6Bが触媒層2,3の周縁に配されるようにして当接させ、熱圧着することで接合して、電極体10が製造される。
ここで、膜電極接合体4を構成する電解質膜1は、たとえば、スルホン酸基やカルボニル基を持つフッ素系イオン交換膜、置換フェニレンオキサイドやスルホン化ポリアリールエーテルケトン、スルホン化ポリアリールエーテルスルホン、スルホン化フェニレンスルファイドなどの非フッ素系のポリマーなどから形成される。
また、触媒層2,3は、触媒が担持された導電性担体(粒子状のカーボン担体など)と、電解質と、分散溶媒(有機溶媒)と、を混合して触媒溶液(触媒インク)を生成し、これを電解質膜1やガス拡散層5A,5B等の基材にたとえば塗工ブレードにて層状に引き伸ばして塗膜を形成し、温風乾燥炉等で乾燥することで触媒層が形成される。
ここで、電解質膜1及びガス拡散層5A,5Bに比して、触媒層2,3が低剛性であるのが一般的であり、したがって、圧縮力に対する変形量が相対的に大きいものである。このことを勘案すれば、図2に示す如く、ガス拡散層5A,5Bと膜電極接合体4とを接合する前の状態において、ガス拡散層5A,5Bにおける膜電極接合体4側の接合面と、樹脂材6A,6Bにおける膜電極接合体4側の接合面は共に平坦面であるのが好ましい。この構成とすることで、スタッキング時に各燃料電池セルに付与される圧縮力を、少なくとも触媒層2,3の全面に均一に作用させることができる。
また、膜電極接合体4とガス拡散層5A,5Bの間には、従来構造の補強膜を使用した燃料電池セルの場合に生じうる段差が解消されることから、その段差から生じる膜電極接合体4上の隙間内の水溜りの発生も抑制され、特に低温時の使用における膜電極接合体4の損傷を抑制することも可能となる。
ここで、触媒溶液を形成する電解質は、プロトン伝導性ポリマーである、有機系の含フッ素高分子を骨格とするイオン交換樹脂、例えばパーフルオロカーボンスルフォン酸樹脂、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリスルフィド、スルホン化ポリフェニレン等のスルホン化プラスチック系電解質、スルホアルキル化ポリエーテルエーテルケトン、スルホアルキル化ポリエーテルスルホン、スルホアルキル化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホアルキル化ポリスルホン、スルホアルキル化ポリスルフィド、スルホアルキル化ポリフェニレンなどのスルホアルキル化プラスチック系電解質などを挙げることができる。なお、市販素材としては、ナフィオン(Nafion)(登録商標、デュポン社製)やフレミオン(Flemion)(登録商標、旭硝子株式会社製)などを挙げることができる。また、分散溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、プロピレンカーボネート、酢酸エチルや酢酸ブチルなどのエステル類、芳香族系あるいはハロゲン系の種々の溶媒を挙げることができ、さらには、これらを単独で、もしくは混合液として使用することができる。さらに、触媒が担持された導電性担体に関し、この導電性担体としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーなどの炭素材料のほか、炭化ケイ素などに代表される炭素化合物などを挙げることができ、この触媒(金属触媒)としては、たとえば、白金や白金合金、パラジウム、ロジウム、金、銀、オスミウム、イリジウムなどのうちのいずれか一種を使用することができ、好ましくは白金または白金合金を使用するのがよい。さらに、この白金合金としては、たとえば、白金と、アルミニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、ガリウム、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、バナジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、チタンおよび鉛のうちの少なくとも一種との合金を挙げることができる。
また、ガス拡散層5A,5Bは、拡散層基材と集電層からなるものであり、拡散層基材としては、電気抵抗が低く、集電を行えるものであれば特に限定されるものではないが、たとえば、導電性無機物質を主とするものを挙げることができ、この導電性無機物質としては、ポリアクリロニトリルからの焼成体、ピッチからの焼成体、黒鉛及び膨張黒鉛等の炭素材やこれらのナノカーボン材料、ステンレススチール、モリブデン、チタン等を挙げることができる。また、拡散層基材の導電性無機物質の形態は特に限定されるものではなく、たとえば繊維状あるいは粒子状で用いられるが、ガス透過性の点から無機導電性繊維であって、特に炭素繊維が好ましい。無機導電性繊維を用いた拡散層基材としては、織布あるいは不織布いずれの構造のものも使用することができ、カーボンペーパーやカーボンクロスなどを挙げることができる。織布としては、平織、紋織、綴織など、特に限定されるものではなく、不織布としては、抄紙法、ニードルパンチ法、ウォータージェットパンチ法によるものなどが挙げられる。さらに、この炭素繊維としては、フェノール系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維などを挙げることができる。さらに、集電層はアノード側、カソード側の触媒層3,2から電子を集める電極の役割を果たすとともに、生成水等を排水する撥水作用を有するものであり、導電性材料である、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、金、銀、銅及びこれらの化合物または合金、導電性炭素材料と、フッ素樹脂(PTFE)などから形成できる。
また、ガス拡散層5A,5Bの上下面には不図示のガス流路層が配されるが、そのガス流路層は、エキスパンドメタルや金属発砲焼結体などの金属多孔体から形成されており、この発砲焼結体においては、チタンやステンレス、銅、ニッケル等の耐食性に優れた金属素材が使用されるのがよく、さらには、ステンレス中にクロム炭化物や鉄−クロム炭化物などを分散した発泡体であってもよい。
さらに、樹脂材6A,6Bは、従来構造の補強膜で使用される電解質や触媒層に比して高剛性かつ硬度の高い熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂であればよく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、PVDF(二フッ化ポリビニル)、ポリエチレン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、コポリアミド、ポリアミドエラストマ、ポリイミド、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマ、シリコーン、シリコンゴム、シリコンベースのエラストマなどが挙げられる。
そして、既述のガス流路層の上下面には、例えば、ステンレスやチタンからなるカソード側プレート,アノード側プレートと、その間に、金属素材もしくは樹脂素材で冷却水等の冷却媒体用流路が形成された中間層(中間プレート)が介層された、3層構造のセパレータが配されて、燃料電池セルが構成される。
次に、本発明の燃料電池セルを構成する電極体のガス拡散層の製造方法のうち、第1の工程を図3から図9を参照して説明する。
図3に示す加圧機20は、単一のガス拡散層の輪郭に沿う枠状の窪みを形成するための成形用ポンチ11bが全周に配された、平面視方形の加圧加工用プレスダイ11aを有しており、該プレスダイ11aはピストンロッド12に接続され、該ピストンロッド12は上下駆動用のリニアアクチュエータ13に上下方向に摺動可能に接続されている。ここで、加圧機20の下方に位置する下冶具51にガス拡散層シート5aが位置決めされ、ガス拡散層シート5aに枠状の窪みを形成するための準備状態が完了する。
ガス拡散層シート5aが下冶具51に位置決めされると、次いで、加圧機20のリニアアクチュエータ13によってピストンロッド12が下方向に摺動し、成形用ポンチ11bがガス拡散層シート5aに接触し、さらに押圧することで、単一のガス拡散層の輪郭に沿う窪み5baがガス拡散層シート5bに形成される(図4参照)。
そして、加圧機20のリニアアクチュエータ13によってピストンロッド12は上方向に摺動し、加圧機20からのガス拡散層シート5bへの圧縮力が除荷されるが、ガス拡散層シート5bは押圧された窪み5baの形状を保持したまま下冶具51上に保持される。図5に示すように、単一のガス拡散層の輪郭に沿う樹脂注入用の窪み5caを有するガス拡散層シート5cが下冶具51に形成され、その後、窪み5caが形成されたガス拡散層シート5cは、樹脂を注入する工程に送られる。
なお、本発明の一実施の形態では、ガス拡散層シートへの窪み形成を加圧機を用いて実施したが、当該窪みの形成には、例えばリュータによる切削加工やレーザ加工等、その他の加工方法を用いることもできる。しかし、プレス加工を実施してガス拡散層シートに窪みを形成すると、当該窪みに対応する箇所に繊維質の高密度領域が形成されるため、後述の樹脂注入過程において、当該窪みに対応する箇所からガス拡散層シートの発電面へ樹脂材が浸透漏れするのを効果的に抑制できるという作用が奏される。
次に図6には、樹脂タンク25に貯蔵された樹脂6がパイプ24を介して樹脂材給液用ポンプ23に配給され、さらにパイプ22を介して樹脂をガス拡散層に塗布するためのディスペンサ21に配給される、樹脂注入機30が示されている。ここで、パイプ22,24は、樹脂配給中にその硬化を防止し樹脂を溶解状態で配給するためのヒータ22a,24aで被覆されており、樹脂タンク25は、樹脂貯蔵中にその硬化を防止する樹脂溶解用のヒータ25aで被覆されている。また、ディスペンサ21は、不図示のXY移動ロボットにより、ガス拡散層シートの単一のガス拡散層の輪郭に沿う枠状の窪み上を、予め設定された速度で走査するように設定されている。
この樹脂を注入する工程においては、図6で示すように、溶解した樹脂がタンク25からパイプ24を介して樹脂材供給ポンプ23に配給され、樹脂材配給ポンプ23から溶解した樹脂が定量的にパイプ22を介してディスペンサ21に配給される。そして、ディスペンサ21がガス拡散層シート上を予め設定された位置と速度で走査し、溶解した樹脂材6dがガス拡散層シート5dの窪み5daに正確に注入される。次いで、樹脂材6dを注入されたガス拡散層シート5dは不図示の冷却装置に送られ、ガス拡散層シート5dと共に冷却されて硬化する。窪み5daに樹脂材6dが配されたガス拡散層シート5dは、次いで、ガス拡散層シート5dを裁断する工程へと送られる。
図7に示す裁断機40は、単一のガス拡散層に形成された枠状の樹脂材に沿ってガス拡散層を裁断するための裁断用切刃31bが全周に配された、平面視方形の裁断用ダイ31aを有しており、該裁断用ダイ31aはピストンロッド32に接続され、該ピストンロッド32は上下駆動用のリニアアクチュエータ33に上下方向に摺動可能に接続されている。ここで、既述の加工の後、下冶具51上で送られてきたガス拡散層シート5eは、裁断機40の下方に位置する下冶具51に位置決めされ、ガス拡散層シート5eをガス拡散層ごとに裁断するための準備状態が完了する。
ガス拡散層シート5eが下冶具51に位置決めされると、裁断機40のリニアアクチュエータ33によってピストンロッド32が下方向に摺動し、裁断用切刃31bがガス拡散層シート5eの樹脂材6eに接触し、その途中で裁断が実行される。そして、図8に示すように、単一のガス拡散層の輪郭に沿う窪み5faに、裁断された樹脂材6fを有する単一のガス拡散層5fが形成される。
なお、下冶具51は、ピストンロッド32が最も下降した際に裁断用切刃31bの少なくとも先端の一部が下冶具51内に進入可能な凹溝(不図示)を有しているのが好ましい。この形態によれば、裁断用切刃31bがガス拡散層シートの裏面を通過してガス拡散層シートを裁断することが可能となり、図8に示す裁断加工において、より確実に枠状の樹脂材6fに沿ってガス拡散層シートを裁断し、単一のガス拡散層5fを作成することができる。
そして、裁断機40のリニアアクチュエータ33によりピストンロッド32は上方向に摺動し、ガス拡散層5fは裁断された樹脂材6fを有したまま下冶具51上に保持され、図9に示すように、単一のガス拡散層の輪郭に沿う枠状の樹脂材6gを有するガス拡散層5gが形成される。
上記の製造方法によって形成されたガス拡散層5gは、図2に示す如く、予め形成された膜電極接合体と接合する工程に送られ、端部に形成された樹脂材がカソード側およびアノード側の触媒層の周縁に配されるようにして膜電極接合体と接合され、本発明の燃料電池セルを構成する電極体が形成される。
次に、本発明の燃料電池セルの製造装置を図10を参照して概説する。なお、この製造装置は、主として、燃料電池セルを構成するガス拡散層の製造に供されるものである。図示する製造装置1000は、連続的に、プレス加工と、樹脂の注入と、ガス拡散層シートの裁断を実行するものであり、下冶具501上に配されたガス拡散層シート502は、連続的に当該製造装置1000に提供されるようになっている。
製造装置1000は、加圧機100と、樹脂注入機200と、樹脂硬化機300と、裁断機400と、から構成されている。
ここで、加圧機100は、回転棒101と回転式加圧機102を有しており、この回転棒101と回転式加圧機102は、下冶具501とその下冶具501上に配されたガス拡散層シート502の双方が、これらと当接しながら通過できる間隔を有しており、かつ、各々が反対回りに回転するものである。また、回転式加圧機102は、その表面に、単一のガス拡散層の輪郭に沿う窪みをガス拡散層シート502に枠状に形成するための凸部103を有しているものである。
樹脂注入機200は、不図示の樹脂タンクから配給された溶解した樹脂を、ガス拡散層シート502の単一のガス拡散層の輪郭に沿う窪み503に注入して塗布するためのディスペンサ201を有しており、そのディスペンサ201の先端201aは、単一のガス拡散層の窪み503上の走査線L200に沿って、その走査線L200上の始点L200aから矢印Aの方向に予め設定された速度で走査するものである。
樹脂硬化機300は、樹脂注入機200を用いてガス拡散層シート502の窪み503に注入された樹脂材504を冷却させるための冷却手段を有するものである。
裁断機400は、回転棒401と回転式裁断機402を有しており、この回転棒401と回転式裁断機402は、下冶具501とその上に配された樹脂材504を有するガス拡散層シート502の双方が、これらと当接しながら通過できる間隔を有しており、かつ、各々が反対回りに回転するものである。また、回転式裁断機402は、その表面に、硬化した樹脂材505に沿ってガス拡散層シート502を裁断するための切刃403を有している。
製造装置1000において、下冶具501上に配されたガス拡散層シート502は、回転式加圧機102に当接しながら、回転棒101と回転式加圧機102の間を連続的に通過し、提供される。ここで、回転棒101および回転式加圧機102は、提供されたガス拡散層シート502を、提供された側とは反対側に送り出すように、各々が反対回りに回転する。そして、ガス拡散層シート502が回転棒101と回転式加圧機102との間を通過する際に、回転式加圧機102に設けられた凸部103がガス拡散層シート502を押圧し、単一のガス拡散層の輪郭に沿う窪み503がガス拡散層シート502に格子状に形成される。
窪み503が形成されたガス拡散層シート502は、連続して樹脂を注入する工程に送られる。図10で示す樹脂を注入する工程では、ディスペンサ201の先端201aが予め設定された走査線L200に沿って、予め設定された速度で走査し、ガス拡散層シート502に形成された窪み503に、ディスペンサ201が連続的にその先端201aから溶解した樹脂を注入し塗布する。なお、ディスペンサ201による溶解した樹脂の注入は、連続的に提供されるガス拡散シート502の搬送中に実施されるものである。
溶解した樹脂材504を有するガス拡散層シート502は、連続して樹脂を硬化する工程に送られ、樹脂硬化機300が有する冷却手段によって、窪み503に塗布された溶解した樹脂材504は冷却硬化し、単一のガス拡散層の輪郭に沿った枠状の樹脂材505がガス拡散層シート502上に形成される。
そして、硬化した樹脂材505を有するガス拡散層シート502は、連続してガス拡散層シートを裁断する工程に送られ、硬化した樹脂材505に沿って回転式裁断機402と当接しながら、回転棒401と回転式裁断機402との間を連続的に通過し、提供される。ここで、回転棒401および回転式裁断機402は、提供されたガス拡散層シート502を提供された側とは反対側に送り出すように、各々が反対回りに回転する。そして、ガス拡散層シート502が回転棒401と回転式裁断機402との間を通過する際に、その回転式裁断機402に設けられた切刃403が、ガス拡散層シート502の硬化した樹脂505に沿ってガス拡散層シート502を裁断し、単一のガス拡散層507の輪郭に沿って枠状の樹脂材506を有するガス拡散層507が、連続的に形成される。
この製造装置によれば、回転式加圧機102の回転によって、連続して提供されるガス拡散層シート502に連続してプレス加工を実施して複数のガス拡散層用の窪み503を格子状に形成することが可能となり、ピストンロッドの上下動によってガス拡散層シート502が加圧される加圧機を用いた製造装置と比較して、生産効率を向上させることができる。
さらに、回転裁断機402でガス拡散層シート502の裁断を実施すれば、連続して提供される複数のガス拡散層を含むガス拡散層シート502を、連続して裁断して単一のガス拡散層507を複数作成できる。したがって、回転式加圧機102を用いて窪みを形成する装置に加えて、回転式裁断機402を用いてガス拡散層シート502を裁断すれば、より一層生産効率を向上させることができる。
また、隣接するガス拡散層が格子状に形成された樹脂材の一辺を共有しつつ、ガス拡散層シートに連続的に形成することができるので、その共有された格子を構成する樹脂材の一辺の途中で裁断することで、複数のガス拡散層を含むガス拡散層シートから、枠状の樹脂材を有する単一のガス拡散層を複数形成することができる。したがって、ガス拡散層製造時のガス拡散層シートの歩留まりを向上することが可能となり、ガス拡散層の製造コストの抑制を図ることができる。
なお、図示する製造装置では、提供されるガス拡散層シート502に作成されるガス拡散層の配列が一列となるように、単一のガス拡散層の輪郭に沿う窪み503が梯子状に形成され、樹脂材が注入されているが、そのガス拡散層および窪みの配列はそれに限定されるものではなく、例えば、ガス拡散層シートに複数列のガス拡散層が同時に形成されるように、単一のガス拡散層の輪郭に沿う窪みがガス拡散層シートに格子状に形成される形態でもよい。
また、ここで説明する製造方法は、ガス拡散層シートが下冶具上を、窪みを形成する工程、樹脂を注入する工程、裁断する工程へと順次送られる形態であるが、ガス拡散層シートが下冶具上の同じ位置に固定されたまま、加圧機、樹脂注入機、裁断機が順次ガス拡散層シート上に配置され、単一のガス拡散層が形成される形態であってもよい。さらに、ここで説明する製造方法では、窪みを形成する工程、樹脂を注入する工程、裁断する工程で、各々別の製造機械(加圧機、樹脂注入機、裁断機)を用いて加工を実施しているが、例えば、一つの製造機械を使用し、その機械の一部を構成する加圧機用成形用ポンチ、注入機用ディスペンサ、裁断機用切刃を、各々の製造工程段階に応じて置換する形態であってもよい。
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
1…電解質膜、1’…電解質膜の露出領域、2…カソード側の触媒層、3…アノード側の触媒層、4…膜電極接合体、5A…カソード側のガス拡散層、5B…アノード側のガス拡散層、5Aa…カソード側の窪み、5Ba…アノード側の窪み、6A…カソード側の樹脂材、6B…アノード側の樹脂体、10…電極体、20,100…加圧機、30,200…樹脂注入機、40,400…裁断機、51,501…下冶具、101…回転棒、102…回転式加圧機、103…回転式加圧機の凸部、201…ディスペンサ、201a…ディスペンサの先端、300…樹脂硬化機、401…回転棒、402…回転式裁断機、403…回転式加圧機の切刃、502…ガス拡散層シート、503…窪み、504…溶解した樹脂材、505…硬化した樹脂材、506…枠状の樹脂材、507…ガス拡散層、1000…製造装置
Claims (5)
- 電解質膜と、これよりも狭小な平面積で該電解質膜の両側で当接する触媒層と、から膜電極接合体が形成され、該膜電極接合体の両側にガス拡散層が配されてなる燃料電池セルであって、
前記膜電極接合体の両側に配される前記ガス拡散層のうちの少なくとも一方の該ガス拡散層の端部であって、該ガス拡散層が前記膜電極接合体に配された際に前記触媒層の周縁となる箇所には窪みが形成されており、
前記窪みと前記電解質膜とで画成される凹溝に樹脂材が配され、
前記ガス拡散層における前記膜電極接合体と反対側の面が平坦面を成している、燃料電池セル。 - 電解質膜と、これよりも狭小な平面積で該電解質膜の両側で当接する触媒層と、から膜電極接合体が形成され、該膜電極接合体の両側にガス拡散層が配されてなる燃料電池セルの製造方法であって、
前記膜電極接合体の両側に配される前記ガス拡散層のうちの少なくとも一方の該ガス拡散層のうち、該ガス拡散層が前記膜電極接合体に配された際に該ガス拡散層の端部であって前記触媒層よりも周縁に位置する箇所に窪みを形成し、該窪みに樹脂材を配して前記ガス拡散層を形成する、第1の工程、
前記第1の工程にて形成された前記ガス拡散層を、前記膜電極接合体の両側のうちの少なくとも一方に、前記樹脂材が前記電解質膜に当接するように配して燃料電池セルを製造する、第2の工程、からなる、燃料電池セルの製造方法。 - 前記第1の工程において、前記ガス拡散層にプレス加工を実施して前記窪みを形成し、該窪みに対応する箇所の前記ガス拡散層の密度を、該ガス拡散層の他の箇所の密度に比して高くしておき、前記窪みに樹脂を注入し、硬化させて前記樹脂材を形成する、請求項2に記載の燃料電池セルの製造方法。
- 前記第1の工程において、連続して提供されるガス拡散層シートに連続してプレス加工を実施して複数のガス拡散層用の前記窪みを形成し、形成された該窪みに連続して樹脂を注入して前記樹脂材を形成し、該樹脂材が形成された複数の前記ガス拡散層を含む前記ガス拡散層シートを、単一のガス拡散層ごとに裁断加工して複数の前記ガス拡散層を形成する、請求項2または3に記載の燃料電池セルの製造方法。
- 電解質膜と、これよりも狭小な平面積で該電解質膜の両側で当接する触媒層と、から膜電極接合体が形成され、該膜電極接合体の両側にガス拡散層が配されてなる燃料電池セルにおいて、前記膜電極接合体の両側に配される前記ガス拡散層のうちの少なくとも一方の該ガス拡散層の端部であって、該ガス拡散層が前記膜電極接合体に配された際に前記触媒層の周縁となる箇所には窪みが形成されており、該窪みと前記電解質膜とで画成される凹溝に樹脂材が配され、前記ガス拡散層における前記膜電極接合体と反対側の面が平坦面を成している、燃料電池セルの製造装置であって、
連続して提供されるガス拡散層シートに連続してプレス加工を実施して複数のガス拡散層用の前記窪みを形成する加圧機と、
形成された前記窪みに連続して樹脂を注入して前記樹脂材を形成する注入機と、
前記樹脂材が形成された複数の前記ガス拡散層を含む前記ガス拡散層シートを、単一のガス拡散層ごとに裁断加工する裁断機と、からなる、燃料電池セルの製造装置。
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
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A300 | Application deemed to be withdrawn because no request for examination was validly filed |
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