JP2010185093A - ヤング率を向上させたマグネシウム合金 - Google Patents
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Abstract
【課題】マグネシウムの結晶構造に於ける原子間距離を縮小してヤング率を向上させること。
【解決手段】六方最密結晶構造から成るマグネシウムに、マグネシウム原子より直径の大きい金属元素原子を前記結晶構造に侵入若しくは当接させ、六方最密構造の高さ方向c軸の原子間距離に前記原子を介在させることで原子間距離を縮小し、ヤング率が原子間距離に反比例することからマグネシウムのヤング率を向上させるものである。前記六方最密構造は3層構造から成り第2層は3個の原子で構成されるから、高さ方向に形成される6個の面に前記原子が侵入する場合前記原子が直接第2層のマグネシウム原子に当接する場合と当接しない場合が生じ、ポテンシャルの異なる形態が現れる。金属元素としてはアルカリ土類、希土類の元素が用いられカルシウム、イットリウムなどが好ましい。
【選択図】図4
【解決手段】六方最密結晶構造から成るマグネシウムに、マグネシウム原子より直径の大きい金属元素原子を前記結晶構造に侵入若しくは当接させ、六方最密構造の高さ方向c軸の原子間距離に前記原子を介在させることで原子間距離を縮小し、ヤング率が原子間距離に反比例することからマグネシウムのヤング率を向上させるものである。前記六方最密構造は3層構造から成り第2層は3個の原子で構成されるから、高さ方向に形成される6個の面に前記原子が侵入する場合前記原子が直接第2層のマグネシウム原子に当接する場合と当接しない場合が生じ、ポテンシャルの異なる形態が現れる。金属元素としてはアルカリ土類、希土類の元素が用いられカルシウム、イットリウムなどが好ましい。
【選択図】図4
Description
本発明は、マグネシウム合金のヤング率を向上させ展伸或いは鍛造などの塑性変形加工を容易にし難燃性も向上させて機械加工時あるいは過酷なブレーキングによる加熱などに対する発火を防止する。
自動車の軽量化及び外観・意匠性の向上を目的として、アルミニウムホイールに代表される軽合金製ホイールを装着する比率が増大している。軽合金製ホイールの製造法は鋳造法及び鍛造法に大別されるが、鍛造品は鋳造品に比べて金属組織が緻密で粘り強さが大きいとされている。一方マグネシウムを素材とする軽合金製ホイールは加工時に延展性及び耐食性がアルミニウムに比べて劣り、更に機械加工時に発火する危険性が指摘されている。しかしアルミニウムに比較して比重が小さくより軽量化した製品を提供するためには欠くことのできない金属である。
マグネシウム金属の結晶構造、原子間の結合力を説明するにあたり、書籍「金属物性学の基礎」(著者:沖 憲典、江口鐵男、発行所:内田老鶴圃)を参照して記載する。マグネシウムは結晶構造が六方最密構造(或いは稠密構造)であり、結晶格子の単位胞は図2(e)図に示す正六角柱と見なすことができる。その構成を模式的に図1を参照して構造を説明すると、図1(a)図に示すようにマグネシウム原子1−1を剛体球と見なしてこれらを互いに接触するように平面上に詰めて並べ一つの層を形成しこれを第1層とすれば、更にその上に同じ直径の剛体球1−2を密接して敷き詰める場合、第1層の窪み2の上に剛体球を配置することになる(同b図)。これを繰り返すと同(c)図に示す第3層の剛体球1−3は第1層と同じ配列になる。この構造から正六角柱に相当する部分を取り出して模式的に立体構造で示すと図2(a)〜(d)図のように分解出来る。図2(c)図は第1層であり中心に位置する剛体球の周りに同じ径の剛体球6個が密接して配置される。窪みは同じく6箇所に形成されるが第2層に同じ径の剛体球を並べると3箇所の窪みにのみ剛体球を配置することができる(図2(b)図)。従って残りの3箇所の窪みは空隙として残される。更に第1層と同じ配列の第3層(図2(a)図)を第2層の上に配置すると図2(d)図に示す六方最密の単位胞の格子が構成される。この構成の特徴は第1層から第3層まで同じ垂直位置の窪みが空隙として残ることである。空隙が連通しないように第3層を配置した構成は面心立方構造と呼ばれて別称が与えられている。各層間の距離は√8/3r(rは剛体球の半径)である。正六角柱における六角形の1辺をaとし、六面体の高さをcとすれば完全な剛体球を積重ねた場合、cとaとの比は、c/a=2×√8/3r/2r=√8/3=1.633(理論値)となる。文献による実測値ではMgの軸比は1.623である。参考までにHeは1.633である。以下の説明に於いて、aと同じ方向を示す場合a軸と記載し、同様にcについてc軸と記載する。
原子が集まって分子や結晶を構成するときこれらの間に強い結合力が生じている。この結合力により原子がある一定の間隔を保って分子や結晶を形成しているのは、原子間の距離がそれ以上近づけばお互いの間に斥力が働き、それ以上遠ざかれば引力が働くとされている。これを2原子間のポテンシャル(位置エネルギー)V(r)の観点から表すと、次のように例示することができる。
V(r)=−a/rm+b/rn (a,b>0,n>m)
右辺の第1項は引力、第2項は斥力の項であり、rは原子間距離、a,b,m,nは力に関係する定数である。このV(r)をrの関数として描けば図3に示す曲線になる。原子間の力はF=−dV/drで表されるから2原子間の平均距離をr0とすれば、
r<r0では斥力が働き、F>0、即ちdV/dr<0、
r>r0では引力が働き、F<0、即ちdV/dr>0、
r=r0では斥力と引力が釣り合って力は働かず、F=0即ちdV/dr=0となる。
従って、r=r0でV(r)は最小になっている。原子を平衡位置から、わずか移動させると平衡位置から近づいても遠ざかってもポテンシャル(位置エネルギー)が高くなるので、結局原子はポテンシャルが最小のエネルギー的に安定な位置に落ち着くことになる。原子の結合については共有結合、イオン結合、金属結合、分子結合、水素結合の5種類が定義されている。
V(r)=−a/rm+b/rn (a,b>0,n>m)
右辺の第1項は引力、第2項は斥力の項であり、rは原子間距離、a,b,m,nは力に関係する定数である。このV(r)をrの関数として描けば図3に示す曲線になる。原子間の力はF=−dV/drで表されるから2原子間の平均距離をr0とすれば、
r<r0では斥力が働き、F>0、即ちdV/dr<0、
r>r0では引力が働き、F<0、即ちdV/dr>0、
r=r0では斥力と引力が釣り合って力は働かず、F=0即ちdV/dr=0となる。
従って、r=r0でV(r)は最小になっている。原子を平衡位置から、わずか移動させると平衡位置から近づいても遠ざかってもポテンシャル(位置エネルギー)が高くなるので、結局原子はポテンシャルが最小のエネルギー的に安定な位置に落ち着くことになる。原子の結合については共有結合、イオン結合、金属結合、分子結合、水素結合の5種類が定義されている。
金属の弾性は上述した原子間の結合力によって起こり、結合力のポテンシャルV(r)から導くことができる。代表的な弾性率の一つであるヤング率を原子論的な見地から説明する。ヤング率εは、ε=f(応力)/e(歪み)で表される。ヤング率は個体の伸びに対する弾性率である。長さがlで切り口面積がAの個体試料を長さ方向にΔlだけ伸ばした状態に保つには、復元力に釣り合う力Fで引っ張っていなければならない。この時の伸びの割合即ち歪みeは、e=Δl/lで、単位面積あたりの力、即ち応力はf=F/Aで与えられる。歪みが小さい場合には、歪みeは応力に比例し、e=f/εが成り立つ。この定数εがヤング率であり、材料固有の定数である。
また、前記弾性は原子間の結合力によって起こり、結合力のポテンシャルV(r)から導かれ、間隔r0で一列に並んだ原子を一様に引っ張って間隔rにした場合を考える。原子間のポテンシャルV(r)をテイラー展開の二次の項までを表すと次のようになる。
V=V0+α(r−r0)2/2
ここでαは弾性率に関係した定数である。これはV(r)の形を放物線で置換したもので、平衡原子間隔r0付近では殆ど正確な近似である。原子間隔がr0からrになったときの力Fは次式で示される。
F=−α(r−r0)
この場合(r−r0)は伸びの大きさであり、r0は元の長さであるから、歪みeは次式で表される。
(r−r0)/r0=e
また、面積r0×r0(=r2)のところに、力Fと絶対値が等しく方向が反対の力−Fが働くと考えれば、応力fは次式で表される。
−F/r0 2=f
更にこの式を書き直すと
f=αe/r0となりヤング率εは、ε=α/r0と表すことができる。
このことからヤング率εは原子間結合力の係数αに比例していることが分かる。上記したヤング率は一列に間隔r0で並んだ原子を一様に引っ張って間隔をrにした場合を示したのであるが、原子間距離をr0としてこれを一辺の長さとする立方体に応力が加えられた場合のフックの法則ではヤング率E=a(n−1)/(r0)4と表すことができる。a,nは原子の種類に依存する定数であり原子間距離が小さくなればヤング率は大きくなる。上記いずれの場合も原子間距離が小さくなればヤング率は向上する。
V=V0+α(r−r0)2/2
ここでαは弾性率に関係した定数である。これはV(r)の形を放物線で置換したもので、平衡原子間隔r0付近では殆ど正確な近似である。原子間隔がr0からrになったときの力Fは次式で示される。
F=−α(r−r0)
この場合(r−r0)は伸びの大きさであり、r0は元の長さであるから、歪みeは次式で表される。
(r−r0)/r0=e
また、面積r0×r0(=r2)のところに、力Fと絶対値が等しく方向が反対の力−Fが働くと考えれば、応力fは次式で表される。
−F/r0 2=f
更にこの式を書き直すと
f=αe/r0となりヤング率εは、ε=α/r0と表すことができる。
このことからヤング率εは原子間結合力の係数αに比例していることが分かる。上記したヤング率は一列に間隔r0で並んだ原子を一様に引っ張って間隔をrにした場合を示したのであるが、原子間距離をr0としてこれを一辺の長さとする立方体に応力が加えられた場合のフックの法則ではヤング率E=a(n−1)/(r0)4と表すことができる。a,nは原子の種類に依存する定数であり原子間距離が小さくなればヤング率は大きくなる。上記いずれの場合も原子間距離が小さくなればヤング率は向上する。
沖 憲典、江口鐵男著 「金属物性学の基礎」内田老鶴圃出版 1999年
解決しようとする問題点は、マグネシウム合金が鍛造加工の際に加熱しても延展性に限界があり割れが発生しやすい点である。
マグネシウム金属は縦弾性係数即ちヤング率が低く延展性に乏しい。例えば鋼のヤング率は210Gpa、アルミニウムは70Gpaであるのに対してマグネシウム合金は45Gpaである。上述したようにヤング率は個体の伸びに対する弾性率であるから所定の歪みを与えるのに大きな応力を必要とし延展し難い材料である。マグネシウムは格子形状が正六角柱形状の六方最密構造であり、歪みを与えると六角柱の六角形を形成する面のみが滑り,加熱することで六面体も滑りやすくなる。加熱して鍛造し易くする理由の一つであるが充分とは云えない。本発明ではマグネシウムと好ましくは結晶構造の異なる金属元素をマグネシウム金属に添加することで六方最密構造に変化を与え面積r0 2に加えられる応力に分力が生じ個々の単位胞が動きやすい性質を付与するものである。添加する金属元素としては周期表からMgを含むアルカリ土類金属(Be,Ca,Sr,Ba,Ra)が好ましく、希土類金属(Sc,Y,La)も耐熱性の点から対象とされる。アルカリ土類元素としてはCaが最も好ましい。450℃以下では結晶構造が面心立方構造であり450℃以上では六方最密であって原子が遊離しやすい性質を有している。マグネシウムと同じ結晶構造より他の面心立方或いは体心立方構造の方が原子をマグネシウム結晶構造に侵入若しくは当接させる可能性が高い。Beは六方最密であるが延展性良好であり、Srは面心立方、Baは体心立方で反応性が高く柔らかい性質である。希土類ではYが好ましく融点が高いので耐熱性が向上する利点もあるが結晶構造がMgと同じであるため原子が遊離しにくい傾向にあるが、Scは面心立方と六方最密の双方を形成する。Laは350℃以上で面心立方であり、350℃以下で六方最密となりCaと異なる温度特性を有している。
カルシウム金属の前記c軸及びa軸の軸比c/aは1.638(実測値)であり、マグネシウム金属の軸比c/aが1.623(実測値)であることから置換型固溶体若しくは格子間型固溶体を生じさせ易い関係にある。マグネシウム金属に亜鉛(Zn)を添加したAZ系マグネシウム合金は機械加工が容易であり広く使用されているが、亜鉛の結晶構造は同じく六方最密構造でそのc/a軸比は1.856でありカルシウム金属に比較してやや大きい。上述したように原子間距離r0のヤング率εは、ε=α/r0で表されるが、本発明に於ける原子間距離の縮小は六方最密構造のc軸に於ける原子間距離の縮小であり、AZ系マグネシウム合金において、マグネシウム(Mg)結晶格子のc軸に於ける原子間距離を縮小してヤング率を向上させたマグネシウム合金を提供するものである。
前記マグネシウム金属に対する前記カルシウム金属の添加量は重量比で0.2〜10%が好ましい範囲であり、0.2%未満の場合延展性の向上は顕著でなく、10%を越えると格子欠陥が生じる確率が高くなる傾向を示す。
マグネシウムの原子半径は150[pm]であり、a軸格子定数は320[pm]、c軸の格子定数は520[pm]であるが、カルシウム金属の原子半径は180[pm]でありカルシウム原子が六方細密構造のc軸に接近もしくは侵入すれば、マグネシウム原子とカルシウム原子の間に新たな原子間距離が生じて原子間距離を縮小させることができる。
また、前記カルシウム金属を添加したAZ系マグネシウム合金は難燃性が向上して機械加工時の発火を防止することが出来る。カルシウムが酸素と結合し緻密な酸化被膜を形成し燃焼を抑制するからである。
更に750℃以上で溶融したAZ系マグネシウム合金にカルシウム金属粉末を重量比で0.2〜10%添加して連続押出し鋳造を行い、窒素ガス雰囲気下で急冷して円柱状などのビレットを制作し、該ビレットを用いて鍛造成形する。更に引抜き、押出し、圧延などの加工を行い展伸材として種々の工業製品部材に利用出来る。更にこれらの鋳造ビレット或いは展伸材を予め1軸若しくは2軸以上の方向に加圧して鍛造することにより金属結晶粒径の緻密化を図り均質な鍛造製品を提供出来る。ヤング率の向上に伴い各種工業製品部材の鍛造成形が容易になり、車両及び航空機の躯体と軽量化した構造部材は振動の吸収のほか軽量化して慣性を微少化し運動性能を向上させるから車両及び航空機の車輪用ホイールに好適なマグネシウム合金を提供出来る。航空機に限らず空中を飛行するロケット、宇宙を飛行するシャトルなど所謂飛翔体の構造材に利用出来る。展伸材をメガネフレームに使用すれば種々の形状に加工が容易になりマグネシウムフレームの発展に寄与出来る。
本発明によれば、マグネシウム合金のヤング率が従来の同合金に比較して、c軸の格子定数が520[pm]から、後述する様にマグネシウムの六方最密構造の第2層に位置するマグネシウム原子にカルシウム原子が当接した場合を考慮すると少なくとも0.77cに縮小されるので、この部分のヤング率は23%改善される。これをマグネシウムのヤング率:45[GPa]で評価すると少なくとも50[GPa]以上に改善されたマグネシウム合金を提供出来る。このようなマグネシウム合金を用いて製造されたマグネシウム合金製ホイールはF1レースなど過激なレースに於いてより安全で軽量なホイールを提供出来る。
本発明は、一例としてAZ系マグネシウム合金(AZ80)に対して、カルシウム金属を重量比で0.2〜10%添加して、置換型固溶体若しくは侵入型固溶体と成しカルシウム原子の直径がマグネシウム金属の直径より大きいことを利用してポテンシャルの低減化を図りマグネシウム原子間の距離を縮小し、ヤング率を向上させる。なお前記元素Y(イットリウム)も原子半径はCaと同じ180[pm]であり、原子間距離の縮小については同等の効果を示す。
合金化する各金属の物性は、マグネシウムが比重1.74、融点650℃であり、アルミニウムは比重2.70、融点660.1℃であり、亜鉛は比重7.14、融点419.5℃であるのに対して、カルシウムは比重1.55、融点851℃であり、各金属が溶融状態で互いに溶け合い、また固溶状態に於いても種々の割合で固溶し合う状態が必要であり全率固溶体が求められる。他にAZ80に含有される鉄、ニッケル、マンガンなどを考慮すると、溶解炉の温度は少なくとも750℃以上は必要であり十分な対流を誘起させる必要がある。
マグネシウムの結晶構造を立体模式図で図2に示す。同(e)図に原子の中心位置を小球で示した。マグネシウムの結晶構造は六方最密構造であり正六角柱で示される。正六角形の一辺の長さをaとしこの方向をa軸とする。第1層と同じ垂直位置にある第3層の原子間の距離をcとしてこの方向をc軸とする。マグネシウムの原子を半径150[pm]の剛体球と見なして前述の剛体球を密に敷き詰めた第1層と第3層に於けるc軸の原子間距離cは理論値を採用するとc/a=1.633として490[pm]となる。
図4(a)図は、前記a軸の斜視図であり第1層のマグネシウム原子1−1と第2層の同原子1−2及び第3層の同原子1−3の配置を示し正六角柱の一つの面を示している。カルシウム原子3の中心は、第2層のマグネシウム原子1−2の中心位置と同一水平軸上にありa軸の面に直交した位置で当接しており、各2個の1−1及び1−3の原子の中央に位置して前記原子1−1及び1−3とは接触していない。マグネシウム原子1−3とカルシウム原子の中心との距離R0は作図上で求めるとR0=0.77cになり長さは0.77×490=377.3[pm]となる。第1層と第3層の原子間距離cより23%縮小されたことになる。この場合にはカルシウム原子3の中心は第2層の原子1−2の中心と同一水平位置で接触しており原子間距離はカルシウム原子の半径180[pm]とマグネシウム原子の半径150[pm]の和であり330[pm]である。
上記の状態でカルシウム原子3が第2層のマグネシウム原子1−2に当接しながらどの程度回動できるかを検証した。図4(b)図はカルシウム原子3がマグネシウム原子1−2の中心水平面を矢印Bの方向に回動した場合マグネシウム原子1−3の片方に当接した位置を示している。図示していないが第1層のマグネシウム原子1−1にも同様に当接している。他方のマグネシウム原子1−3に当接する場合を含めると前記回動移動距離a1は作図上で0.83aに相当する。マグネシウム原子の半径150[pm]とすればa=300[pm]であり、a1=0.83×300=249[pm]となる。カルシウム原子3が回動してマグネシウム原子1−3のいずれか片方に当接したときこれら原子の中心位置の距離R1は各原子の半径の和であり、R1=150+180=330[pm]となる。c軸の原子間距離が490[pm]としているので330/490=0.67となり約33%原子間距離を縮小したことになる。なお上記(b)図の中で符号4及び5はマグネシウム原子1−3とカルシウム原子3の当接した箇所に於ける各剛体球の水平断面を示しており作図上必要な断面である。
図4(c)図は、原子1−2の中心水平位置に当接しているカルシウム原子3を矢印Aで示す垂直方向上方へ回動させ第3層のマグネシウム原子1−3の双方に当接した場合の斜視図である。図示していないが同様にカルシウム原子3を下方へ回動させ第1層のマグネシウム原子1−1に当接させた場合の回動距離の合計c1は作図上0.29cであり、c1=0.29×490=142.1[pm]となる。マグネシウム原子1−3とカルシウム原子3が当接したときの原子間距離R2はこれら原子の半径の和であり330[pm]となる。この場合も前記と同様に約33%原子間距離を縮小したことになる。なお符号6及び7はマグネシウム原子1−3とカルシウム原子3の当接箇所の垂直面に於ける断面を示している。
実施例1では、第2層のマグネシウム原子1−2が正六角柱のc軸に於ける6面のうち3面の中央正面に前記原子1−2が位置しているが、本例では第2層のマグネシウム原子が正面に位置していない残りの3面について検証する。図2(d)図で示した六方最密結晶構造を中心軸の周りに60度回転させて、a軸中央正面に第2層のマグネシウム原子が位置しない状態を図4(d)図に斜視図で示した。第1層のマグネシウム原子1−1と第3層のマグネシウム原子1−3はそれぞれ2個配列されており、前記6面のうち一つの面を示している。該面の中央にはカルシウム原子3が正六角柱の中心へ向かって接近して前記一つの面に侵入し、マグネシウム原子1−1及び1−3に当接した状態を示している。マグネシウム原子とカルシウム原子が当接した箇所を確定するため該当接箇所の水平断面を8及び9に示す。当然のことながらカルシウム原子3は4個(各2個のマグネシウム原子1−1及び1−3)のマグネシウム原子と当接し最も安定な位置を占めている。この状態に於けるカルシウム原子とマグネシウム原子の原子間距離R3はそれぞれの半径の和であり、0.67c=330[pm]に相当している。しかしながら、図4(a)図と(d)図を比較すると六方最密構造の中心からカルシウム原子3の中心位置までの距離が大きく異なっている。中心線からの距離d1とd2を比較するとd2/d1=0.75であり第2層のマグネシウム原子の位置により大きく異なることが分かる。ポテンシャルエネルギー値から見れば(d)図の方が25%安定な位置で結合している。第2層のマグネシウム原子1−2には接近しているが接触するまでには至っておらず半径方向でカルシウム原子3と0.128a=38.4[pm]の間隙が生じている。これはマグネシウム原子半径の25.6%に相当する距離である。マグネシウム原子に対してカルシウム原子が大きいことを利用してマグネシウム単位胞のいずれの箇所にもカルシウム原子を安定した位置に侵入させることが可能となる。
以上説明したように、カルシウム原子3が正六角柱のc軸方向6面のうち3面についてカルシウム原子3が侵入した状態を示したが、侵入可能な範囲は垂直方向で0.29c、水平方向で0.83cであり侵入可能な空間は意外と広いことが分かる。
本発明によれば、一例としてカルシウム原子を添加することにより六方最密構造から成るマグネシウム結晶格子c軸の原子間距離を縮小させてこの部分のヤング率を向上させ、マクロ的にはマグネシウム合金の塑性変形を容易ならしめる効果が得られるから、各種構造部材、車両或いは航空機の車輪としてマグネシウム合金製ホイールの提供が容易になり、カルシウムの添加量が大きくなるのでマグネシウム合金の難燃性が大きく向上する。
1 マグネシウム原子
2 窪み
3 カルシウム原子
4 当接箇所のマグネシウム原子水平断面
5 当接箇所のカルシウム原子水平断面
2 窪み
3 カルシウム原子
4 当接箇所のマグネシウム原子水平断面
5 当接箇所のカルシウム原子水平断面
Claims (7)
- マグネシウム合金において、マグネシウムにアルカリ土類若しくは希土類に属する少なくとも1種の金属を0.2〜10%添加し、該金属の元素原子をマグネシウム結晶格子に侵入若しくは当接させることで、該結晶格子の原子間距離を縮小しヤング率を向上させたマグネシウム合金。
- 前記ヤング率が50Gpa以上である請求項1に記載のマグネシウム合金。
- 請求項1又は2のいずれか1項に記載されたマグネシウム合金を鋳造により成形したビレット。
- 請求項1又は2のいずれか1項に記載されたマグネシウム合金を押出し、引抜き、圧延のうちいずれか一つを用いて加工した展伸材。
- 請求項3又は4のいずれか1項に記載のビレット又は展伸材を予め鍛造成形した予備鍛造ビレット。
- 請求項3〜5のいずれか1項に記載されたビレット、展伸材、予備鍛造ビレットのうちいずれか一つを用いて鍛造成形された飛翔体用部材。
- 請求項3〜5のいずれか1項に記載されたビレット、展伸材、予備鍛造ビレットのうちいずれか一つを用いて鍛造成形された車両及び航空機用軽合金製ホイール。
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Cited By (1)
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KR101839703B1 (ko) * | 2016-10-04 | 2018-04-27 | 포항공과대학교 산학협력단 | 고성형성 마그네슘 합금의 설계 방법과 고성형성 마그네슘 합금 |
Citations (6)
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