本発明の実施形態に係る電源回路および電力変換装置について、図面を参照しながら以下詳細に説明する。本発明の実施形態に係る電源回路を備えた電力変換装置は、ハイブリッド用の自動車や純粋な電気自動車に適用可能であるが、代表例として、本発明の実施形態に係る電源回路を備えた電力変換装置をハイブリッド自動車に適用した場合の制御構成と電力変換装置の回路構成について、図1と図2を用いて説明する。図1はハイブリッド自動車の制御ブロックを示す図である。
本発明の実施形態に係る電源回路を備えた電力変換装置について、自動車に搭載される車載電機システムの車載用電力変換装置、特に、車両駆動用電機システムに用いられ、搭載環境や動作的環境などが大変厳しい車両駆動用インバータ装置を例に挙げて説明する。車両駆動用インバータ装置は、車両駆動用電動機の駆動を制御する制御装置として車両駆動用電機システムに備えられ、車載電源を構成する車載バッテリあるいは車載発電装置から供給された直流電力を所定の交流電力に変換し、得られた交流電力を車両駆動用電動機に供給して車両駆動用電動機の駆動を制御する。また、車両駆動用電動機は発電機としての機能も有しているので、車両駆動用インバータ装置は運転モードに応じ、車両駆動用電動機の発生する交流電力を直流電力に変換する機能も有している。変換された直流電力は車載バッテリに供給される。
なお、本実施形態の構成は、自動車やトラックなどの車両駆動用電力変換装置に備えられる電源回路として最適であるが、これら以外の電力変換装置に備えられる電源回路、例えば電車や船舶、航空機などの電力変換装置、さらに工場の設備を駆動する電動機の制御装置として用いられる産業用電力変換装置、あるいは家庭の太陽光発電システムや家庭の電化製品を駆動する電動機の制御装置に用いられたりする家庭用電力変換装置に備えられる電源回路に対しても適用可能である。また、電力変換装置以外の様々な装置に備えられる電源回路に対しても適用可能である。
図1において、ハイブリッド電気自動車(以下、「HEV」と記述する)110は1つの電動車両であり、2つの車両駆動用システムを備えている。その1つは、内燃機関であるエンジン120を動力源としたエンジンシステムである。エンジンシステムは、主としてHEVの駆動源として用いられる。もう1つは、モータジェネレータ192,194を動力源とした車載電機システムである。車載電機システムは、主としてHEVの駆動源およびHEVの電力発生源として用いられる。モータジェネレータ192,194は例えば同期機あるいは誘導機であり、運転方法によりモータとしても発電機としても動作するので、ここではモータジェネレータと記すこととする。
車体のフロント部には前輪車軸114が回転可能に軸支されている。前輪車軸114の両端には1対の前輪112が設けられている。車体のリア部には後輪車軸(図示省略)が回転可能に軸支されている。後輪車軸の両端には1対の後輪が設けられている。本実施形態のHEVでは、動力によって駆動される主輪を前輪112とし、連れ回される従輪を後輪とする、いわゆる前輪駆動方式を採用しているが、この逆、すなわち後輪駆動方式を採用しても構わない。
前輪車軸114の中央部には前輪側デファレンシャルギア(以下、「前輪側DEF」と記述する)116が設けられている。前輪車軸114は前輪側DEF116の出力側に機械的に接続されている。前輪側DEF116の入力側には変速機118の出力軸が機械的に接続されている。前輪側DEF116は、変速機118によって変速されて伝達された回転駆動力を左右の前輪車軸114に分配する差動式動力分配機構である。変速機118の入力側にはモータジェネレータ192の出力側が機械的に接続されている。モータジェネレータ192の入力側には動力分配機構122を介してエンジン120の出力側およびモータジェネレータ194の出力側が機械的に接続されている。なお、モータジェネレータ192,194および動力分配機構122は、変速機118の筐体の内部に収納されている。
モータジェネレータ192,194は、回転子に永久磁石を備えた同期機であり、固定子の電機子巻線に供給される交流電力がインバータ装置140,142によって制御されることによりモータジェネレータ192,194の駆動が制御される。インバータ装置140,142にはバッテリ136が電気的に接続されており、バッテリ136とインバータ装置140,142との相互において電力の授受が可能である。
本実施形態では、モータジェネレータ192およびインバータ装置140からなる第1電動発電ユニットと、モータジェネレータ194およびインバータ装置142からなる第2電動発電ユニットとの2つを備え、運転状態に応じてそれらを使い分けている。すなわち、エンジン120からの動力によって車両を駆動している場合において、車両の駆動トルクをアシストする場合には第2電動発電ユニットを発電ユニットとしてエンジン120の動力によって作動させて発電させ、その発電によって得られた電力によって第1電動発電ユニットを電動ユニットとして作動させる。また、同様の場合において、車両の車速をアシストする場合には第1電動発電ユニットを発電ユニットとしてエンジン120の動力によって作動させて発電させ、その発電によって得られた電力によって第2電動発電ユニットを電動ユニットとして作動させる。
また、本実施形態では、バッテリ136の電力によって第1電動発電ユニットを電動ユニットとして作動させることにより、モータジェネレータ192の動力のみによって車両の駆動ができる。さらに、本実施形態では、第1電動発電ユニットまたは第2電動発電ユニットを発電ユニットとしてエンジン120の動力あるいは車輪からの動力によって作動させて発電させることにより、バッテリ136の充電ができる。
バッテリ136はさらに補機用のモータ195を駆動するための電源としても使用される。補機としてはたとえばエアコンディショナーのコンプレッサを駆動するモータ、あるいは制御用の油圧ポンプを駆動するモータであり、バッテリ136からインバータ装置43に直流電力が供給され、インバータ装置43で交流の電力に変換されてモータ195に供給される。インバータ装置43はインバータ装置140や142と同様の機能を持ち、モータ195に供給する交流の位相や周波数、電力を制御する。たとえばモータ195の回転子の回転に対し進み位相の交流電力を供給することにより、モータ195はトルクを発生する。一方、遅れ位相の交流電力を発生することで、モータ195は発電機として作用し、モータ195は回生制動状態の運転となる。このようなインバータ装置43の制御機能はインバータ装置140,142の制御機能と同様である。モータ195の容量がモータジェネレータ192,194の容量より小さいので、インバータ装置43の最大変換電力がインバータ装置140,142より小さいが、インバータ装置43の回路構成は基本的にインバータ装置140や142の回路構成と同じである。
インバータ装置140、インバータ装置142およびインバータ装置43さらにコンデンサモジュール500は電気的に密接な関係にある。さらに発熱に対する対策が必要な点が共通している。また装置の体積をできるだけ小さく作ることが望まれている。これらの点から以下で詳述する電力変換装置は、インバータ装置140,142およびインバータ装置43さらにコンデンサモジュール500を電力変換装置の筐体内に内蔵している。この構成により、小型で信頼性の高い装置が実現できる。
またインバータ装置140、インバータ装置142およびインバータ装置43さらにコンデンサモジュール500を一つの筐体に内蔵することで、配線の簡素化やノイズ対策で効果がある。またコンデンサモジュール500とインバータ装置140、インバータ装置142およびインバータ装置43との接続回路のインダクタンスを低減でき、スパイク電圧を低減できると共に、発熱の低減や放熱効率の向上を図ることができる。
次に、図2を用いてインバータ装置140、インバータ装置142あるいはインバータ装置43の電気回路構成を説明する。尚、図1〜図2に示す実施形態では、インバータ装置140、インバータ装置142あるいはインバータ装置43をそれぞれ個別に構成する場合を例に挙げて説明する。インバータ装置140、インバータ装置142あるいはインバータ装置43は同様の構成で同様の作用を為し、同様の機能を有しているので、ここでは、代表例としてインバータ装置140の説明を行う。
本実施形態に係る電力変換装置200は、バッテリ136から供給される直流電力を交流電力に変換し、モータジェネレータ192へ供給すると共に、モータジェネレータ192によって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ136へ供給し、バッテリ136を充電する。電力変換装置200は、インバータ装置140とコンデンサモジュール500とを備え、インバータ装置140は、半導体回路であるインバータ回路144と制御部170とを有している。また、インバータ回路144は、上アームとして動作するIGBT328(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)およびダイオード156と、下アームとして動作するIGBT330およびダイオード166と、からなる上下アーム直列回路150を複数有し(図2の例では3つの上下アーム直列回路150)、それぞれの上下アーム直列回路150の中点部分(中間電極169)から交流端子159を通してモータジェネレータ192への交流電力線(交流バスバー)186と接続する構成である。また、制御部170はインバータ回路144を駆動制御するドライバ回路174と、ドライバ回路174へ信号線176を介して制御信号を供給する制御回路172と、制御回路172およびドライバ回路174へ電源線179を介して電源を供給する電源回路178とを有している。
上アームと下アームのIGBT328,330は、スイッチング用パワー半導体素子であり、制御部170から出力された駆動信号を受けて動作し、バッテリ136から供給された直流電力を三相交流電力に変換する。この変換された電力はモータジェネレータ192の電機子巻線に供給される。
インバータ回路144は3相ブリッジ回路により構成されており、3相分の上下アーム直列回路150,150,150がそれぞれ、バッテリ136の正極側と負極側に電気的に接続されている直流正極端子314と直流負極端子316の間に電気的に並列に接続されている。
本実施形態では、スイッチング用パワー半導体素子としてIGBT328,330を用いることを例示している。IGBT328,330は、コレクタ電極153,163、エミッタ電極(信号用エミッタ電極端子155,165)、ゲート電極(ゲート電極端子154,164)を備えている。IGBT328,330のコレクタ電極153,163とエミッタ電極との間にはダイオード156,166が図示するように電気的に接続されている。ダイオード156,166は、カソード電極およびアノード電極の2つの電極を備えており、IGBT328,330のエミッタ電極からコレクタ電極に向かう方向が順方向となるように、カソード電極がIGBT328,330のコレクタ電極に、アノード電極がIGBT328,330のエミッタ電極にそれぞれ電気的に接続されている。スイッチング用パワー半導体素子としてはMOSFET(金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ)を用いてもよい、この場合はダイオード156やダイオード166は不要となる。
上下アーム直列回路150は、モータジェネレータ192の電機子巻線の各相巻線に対応して3相分設けられている。3つの上下アーム直列回路150はそれぞれU相、V相、W相に対応し、IGBT328のエミッタ電極とIGBT330のコレクタ電極163とを接続する中間電極169、交流端子159を介してモータジェネレータ192へのU相、V相、W相を形成している。上下アーム直列回路は電気的に並列接続されている。上アームのIGBT328のコレクタ電極153は正極端子(P端子)157を介してコンデンサモジュール500の正極側コンデンサ電極に、下アームのIGBT330のエミッタ電極は負極端子(N端子)158を介してコンデンサモジュール500の負極側コンデンサ電極にそれぞれ電気的に接続(直流バスバーで接続)されている。各アームの中点部分(上アームのIGBT328のエミッタ電極と下アームのIGBT330のコレクタ電極との接続部分)にあたる中間電極169は、モータジェネレータ192の電機子巻線の対応する相巻線に、交流端子159および交流コネクタ188を介して電気的に接続されている。
コンデンサモジュール500は、IGBT328,330のスイッチング動作によって生じる直流電圧の変動を抑制する平滑回路を構成するためのものである。すなわち、コンデンサモジュール500は、バッテリ136からの直流電力を平滑化してIGBT328,330へ供給するために、電力変換装置200に搭載されている。コンデンサモジュール500の正極側コンデンサ電極にはバッテリ136の正極側が、コンデンサモジュール500の負極側コンデンサ電極にはバッテリ136の負極側がそれぞれ直流コネクタ138を介して電気的に接続されている。これにより、コンデンサモジュール500は、上アームIGBT328のコレクタ電極153とバッテリ136の正極側との間と、下アームIGBT330のエミッタ電極とバッテリ136の負極側との間で接続され、バッテリ136と上下アーム直列回路150に対して電気的に並列接続される。
制御部170はIGBT328,330を作動させるためのものであり、他の制御装置やセンサなどからの入力情報に基づいて、IGBT328,330のスイッチングタイミングを制御するためのタイミング信号を生成する制御回路172と、制御回路172から出力されたタイミング信号に基づいて、IGBT328,330をスイッチング動作させるためのドライブ信号を生成するドライブ回路174と、バッテリ136からの入力電圧を異なる電圧に変換し、電源として出力する電源回路178とを備えている。
制御回路172は、IGBT328,330のスイッチングタイミングを演算処理するためのマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と記述する)を備えている。マイコンには入力情報として、モータジェネレータ192に対して要求される目標トルク値、上下アーム直列回路150からモータジェネレータ192の電機子巻線に供給される電流値、およびモータジェネレータ192の回転子の磁極位置が入力されている。目標トルク値は、不図示の上位の制御装置から出力された指令信号に基づくものである。電流値は、電流センサ180から出力された検出信号に基づいて検出されたものである。磁極位置は、モータジェネレータ192に設けられた回転磁極センサ(不図示)から出力された検出信号に基づいて検出されたものである。本実施形態では3相の電流値を検出する場合を例に挙げて説明するが、2相分の電流値を検出するようにしても構わない。
制御回路172内のマイコンは、目標トルク値に基づいてモータジェネレータ192のd,q軸の電流指令値を演算し、この演算されたd,q軸の電流指令値と、検出されたd,q軸の電流値との差分に基づいてd,q軸の電圧指令値を演算し、この演算されたd,q軸の電圧指令値を、検出された磁極位置に基づいてU相、V相、W相の電圧指令値に変換する。そして、マイコンは、U相、V相、W相の電圧指令値に基づく基本波(正弦波)と搬送波(三角波)との比較に基づいてパルス状の変調波を生成し、この生成された変調波をPWM(パルス幅変調)信号としてドライバ回路174に出力する。すなわち、制御回路172は、マイコンが行う演算の結果に基づいて、ドライバ回路174の動作を制御するための制御信号であるPWM信号をドライバ回路174に出力する。
ドライバ回路174は、下アームを駆動する場合、PWM信号を増幅し、これをドライブ信号として、対応する下アームのIGBT330のゲート電極に、上アームを駆動する場合、PWM信号の基準電位のレベルを上アームの基準電位のレベルにシフトしてからPWM信号を増幅し、これをドライブ信号として、対応する上アームのIGBT328のゲート電極にそれぞれ出力する。これにより、各IGBT328,330は、入力されたドライブ信号に基づいてスイッチング動作する。その結果、インバータ回路144においてバッテリ136からの直流電力が交流電力に変換、またはモータジェネレータ192からの交流電力が直流電力に変換される。すなわち、ドライバ回路174は、制御回路172からPWM信号として出力される制御信号に基づいて、スイッチング素子であるIGBT328,330を駆動するための駆動信号であるドライブ信号を出力する。このドライブ信号に基づいて、IGBT328,330は、直流電力を交流電力に変換、または交流電力を直流電力に変換するためのスイッチング動作を行う。
電源回路178は、バッテリ136から直流コネクタ138およびコンデンサモジュール500を介して入力された直流電圧を異なる電圧、たとえば15Vに変換することにより、制御回路172およびドライバ回路174が動作するための電源を生成する。電源回路178によって生成された電源は、電源線179を介して制御回路172およびドライバ回路174へ供給され、制御回路172およびドライバ回路174内の各種回路の動作に用いられる。
また、制御部170は、異常検知(過電流、過電圧、過温度など)を行い、上下アーム直列回路150を保護している。このため、制御部170にはセンシング情報が入力されている。たとえば、各アームの信号用エミッタ電極端子155,165からは各IGBT328,330のエミッタ電極に流れる電流の情報が、対応する駆動部(IC)に入力されている。これにより、各駆動部(IC)は過電流検知を行い、過電流が検知された場合には対応するIGBT328,330のスイッチング動作を停止させ、対応するIGBT328,330を過電流から保護する。上下アーム直列回路150に設けられた温度センサ(不図示)からは上下アーム直列回路150の温度の情報がマイコンに入力されている。また、マイコンには上下アーム直列回路150の直流正極側の電圧の情報が入力されている。マイコンは、それらの情報に基づいて過温度検知および過電圧検知を行い、過温度あるいは過電圧が検知された場合には全てのIGBT328,330のスイッチング動作を停止させ、上下アーム直列回路150(引いては、この回路150を含む半導体モジュール)を過温度あるいは過電圧から保護する。
インバータ回路144の上下アームのIGBT328,330の導通および遮断動作が一定の順で切り替わり、この切り替わり時にモータジェネレータ192の固定子巻線に発生する電流は、ダイオード156,166を含む回路を流れる。
上下アーム直列回路150は、図示するように、Positive端子(P端子、正極端子)157、Negative端子(N端子、負極端子)158、上下アームの中間電極169に接続されている交流端子159、上アームの信号用端子(信号用エミッタ電極端子)155、上アームのゲート電極端子154、下アームの信号用端子(信号用エミッタ電極端子)165、下アームのゲート端子電極164、を備えている。また、電力変換装置200は、入力側に直流コネクタ138を有し、出力側に交流コネクタ188を有して、それぞれのコネクタ138と188を通してバッテリ136とモータジェネレータ192にそれぞれ接続される。また、モータジェネレータへ出力する3相交流の各相の出力を発生する回路として、各相に2つの上下アーム直列回路を並列接続するようにした回路構成の電力変換装置であってもよい。
図3、4において、200は電力変換装置、10は上部ケース、11は金属ベース板、12は金属製の筐体、13は冷却水入口配管、14は冷却水出口配管、420は下カバー、16は下部ケース、17は交流ターミナルケース、18は交流ターミナル、19Aは冷却ジャケット、19は冷却ジャケット19A内の冷却水流路、20は制御回路基板で制御回路172を保持している。21は外部との接続のためのコネクタ、22は駆動回路基板でドライバ回路174および電源回路178を保持している。300はパワーモジュール(半導体モジュール部)で2個設けられており、それぞれのパワーモジュールにはインバータ回路144が内蔵されている。700は積層導体板、800はOリング、304は金属ベース、188は交流コネクタ、314は直流正極端子、316は直流負極端子、500はコンデンサモジュール、502はコンデンサケース、504は正極側コンデンサ端子、506は負極側コンデンサ端子、514はコンデンサセル、をそれぞれ表す。
図3は、本発明の実施形態に係る電力変換装置の全体構成の外観斜視図を示す。本実施形態に係る電力変換装置200は、上面あるいは底面が略長方形の筐体12と、筐体12の短辺側の外周の1つに設けられた冷却水入口配管13および冷却水出口配管14と、筐体12の上部開口を塞ぐための上部ケース10と、筐体12の下部開口を塞ぐための下部ケース16とを有する。筐体12の底面あるいは上面の形状を略長方形としたことで、車両への取り付けが容易となり、また生産し易い効果がある。
電力変換装置200の長辺側の外周にはモータジェネレータ192や194との接続に用いる2組の交流ターミナルケース17が設けられる。交流ターミナル18は、パワーモジュール300とモータジェネレータ192、194とを電気的に接続するために用いられる。パワーモジュール300から出力される交流電流は、パワーモジュール300と接続された交流ターミナル18を介して、電力変換装置200の外部にあるモータジェネレータ192、194へ出力および伝達される。交流ターミナル18は、正極側コンデンサ端子504および負極側コンデンサ端子506から最も近い筐体12の側面と対向する筐体12の側面に配置されている。このような配置とすることで、パワーモジュール300から出力される交流電力と、バッテリ136からコンデンサモジュール500を介して入力される直流電力とが相互に影響し合うのを防止できる。
コネクタ21は、筐体12に内蔵された制御回路基板20(制御回路172)に接続されている。外部からの各種信号は、コネクタ21を介して、制御回路基板20に搭載された制御回路172に伝送される。直流(バッテリ)負極側接続端子部510と直流(バッテリ)正極側接続端子部512は、バッテリ136からの直流電力をコンデンサモジュール500へ入力するための直流入力端子であって、バッテリ136とコンデンサモジュール500とを電気的に接続する。ここで本実施形態では、コネクタ21は、筐体12の短辺側の外周面の一方側に設けられる。一方、直流(バッテリ)負極側接続端子部510と直流(バッテリ)正極側接続端子部512は、コネクタ21が設けられた面とは反対側の短辺側の外周面に設けられる。つまり、コネクタ21と、直流(バッテリ)負極側接続端子部510および直流(バッテリ)正極側接続端子部512とは、互いに対向する筐体12の側面にそれぞれ離れて配置されている。これにより、直流(バッテリ)負極側接続端子部510から筐体12に侵入し、さらにコネクタ21まで伝播するノイズを低減することができ、制御回路基板20によるモータの制御性を向上させることができる。
図4は、本発明の実施形態に係る電力変換装置の全体構成を各構成要素に分解した斜視図である。
図4に示すように、筐体12の中ほどには、内部に冷却水流路19が形成される冷却ジャケット19Aが設けられる。この冷却ジャケット19A(冷却水流路19)は、パワーモジュール300とコンデンサモジュール500の間に設置される。冷却ジャケット19Aの上面には流れの方向に並んで2組の開口400と402が形成されている。2組の開口400と402を塞ぐように2個のパワーモジュール300が冷却ジャケット19Aの上面に固定されている。各パワーモジュール300には放熱のためのフィンが設けられており、各パワーモジュール300のフィンはそれぞれ冷却ジャケット19Aの開口400と402から冷却水流路19中に突出している。
冷却ジャケット19Aの下面にはアルミ鋳造を行いやすくするための開口404が形成されており、開口404は下カバー420で塞がれている。また冷却ジャケット19Aの下面には補機用のインバータ装置43が取り付けられている。補機用のインバータ装置43は、図2に示すインバータ回路144と同様の回路が内蔵されており、インバータ回路144を構成しているパワー半導体素子を内蔵したパワーモジュールを有している。補機用のインバータ装置43は、内蔵しているパワーモジュールの放熱金属面が冷却水流路19の下面に対向するようにして、冷却ジャケット19Aの下面に固定されている。また、パワーモジュール300と筐体12との間には、シールをするためのOリング800が設けられ、さらに下カバー420と筐体12との間にもOリング802が設けられる。本実施形態ではシール材をOリングとしているが、Oリングの代わりに樹脂材・液状シール・パッキンなどを代用しても良く、特に液状シールを用いた場合には電力変換装置200の組立性を向上させることができる。
さらに冷却ジャケット19Aの下方には、下部ケース16が設けられ、下部ケース16にはコンデンサモジュール500が設けられている。コンデンサモジュール500は、その金属製ケースの放熱面が下部ケース16の底板内面に接するように、下部ケース16の底板内面に固定されている。この構造により、冷却ジャケット19Aの上面と下面とを利用して、パワーモジュール300およびインバータ装置43を効率良く冷却することができ、電力変換装置全体の小型化に繋がる。コンデンサモジュール500には、複数の正極側コンデンサ端子504と負極側コンデンサ端子506が交互に設けられている。
冷却水入出口配管13,14からの冷却水が冷却水流路19を流れることによって、併設されている2個のパワーモジュール300が有する放熱フィンが冷却され、2個のパワーモジュール300全体が冷却される。冷却ジャケット19Aの下面に設けられた補機用のインバータ装置43も同時に冷却する。
さらに冷却水流路19が設けられている筐体12が冷却されることにより、筐体12の下部に設けられた下部ケース16が冷却され、コンデンサモジュール500の熱が下部ケース16および筐体12を介して冷却水に熱的に伝導され、コンデンサモジュール500が冷却される。
パワーモジュール300の上方には、パワーモジュール300とコンデンサモジュール500とを電気的に接続するための積層導体板700が配置される。すなわち、コンデンサモジュール500は、正極側コンデンサ端子504、負極側コンデンサ端子506および積層導体板700を介してパワーモジュール300と接続される。正極側コンデンサ端子504、負極側コンデンサ端子506および積層導体板700は、後述する金属ベース板11によって分割された筐体12内の2つの空間のうち、駆動回路基板22(ドライバ回路174)、パワーモジュール300およびコンデンサモジュール500が搭載されている空間内に設けられている。この積層導体板700は、2つのパワーモジュール300に跨って、2つのパワーモジュール300の幅方向に幅広に構成されている。さらに、積層導体板700は、コンデンサモジュール500の正極側端子と接続される正極側導体板と、負極側端子と接続される負極側導体板と、正極側端子と負極側端子との間に配置される絶縁部材によって構成される。これにより積層導体板700の積層面積を広げることができるので、パワーモジュール300からコンデンサモジュール500までの寄生インダクタンスの低減を図ることができる。また、一つの積層導体板700を2つのパワーモジュール300に載置した後、積層導体板700とパワーモジュール300とコンデンサモジュール500との電気的な接続を行うことが出来るので、パワーモジュール300を2つ備える電力変換装置であっても、その組立工数を抑えることができる。
積層導体板700の上方には制御回路基板20と駆動回路基板22とが配置されている。駆動回路基板22には図2に示すドライバ回路174および電源回路178が搭載され、制御回路基板20には図2に示すCPUを有する制御回路172が搭載されている。また、駆動回路基板22と制御回路基板20の間には金属ベース板11が配置されている。このような配置により、筐体12の内部空間が金属ベース板11によって2つの空間に分割される。また、分割された2つの空間のうち、一方の空間内には制御回路基板20(制御回路172)が搭載され、もう一方の空間内には駆動回路基板22(ドライバ回路174、電源回路178)、パワーモジュール300およびコンデンサモジュール500が搭載される。なお、ドライバ回路174および電源回路178は、制御回路172とパワーモジュール300の間に搭載される。
金属ベース板11は、両基板22,20に搭載される回路群の電磁シールドの機能を奏すると共に、駆動回路基板22と制御回路基板20とに発生する熱を逃がし、冷却する作用を有している。なお、金属ベース板11は、上部ケース10と筐体12の間に挟みこまれて設置される。このように筐体12の中央部に冷却ジャケット19Aを設け、その一方の側に車両駆動用のパワーモジュール300を配置し、また他方の側に補機用のパワーモジュール43を配置することで、少ない空間で効率良く冷却でき、電力変換装置全体の小型化が可能となる。冷却ジャケット19Aを、筐体12と一体にアルミ鋳造で作ることにより、冷却ジャケット19Aは冷却効果に加え機械的強度を強くする効果がある。またアルミ鋳造により筐体12と冷却ジャケット19Aとを一体成型構造としたので、熱伝導が良くなり冷却効率が向上する。
駆動回路基板22には、金属ベース板11を通り抜けて、制御回路基板20の回路群との接続を行う基板間コネクタ23が設けられている。また、制御回路基板20には外部との電気的接続を行うコネクタ21が設けられている。コネクタ21を利用して、電力変換装置の外部に設けた車載バッテリ136、すなわちリチウム電池モジュールとの間で信号の伝送が行われる。リチウム電池モジュールから電池の状態を表す信号やリチウム電池の充電状態などの信号が制御回路基板20に送られてくる。図2に示す信号線176および電源線179(図4では不図示)が基板間コネクタ23に結線され、制御回路基板20からインバータ回路のスイッチングタイミング信号が駆動回路基板22に伝達され、駆動回路基板22はゲート駆動信号を発生してパワーモジュールのそれぞれのゲート電極に印加する。
筐体12の上端部と下端部には開口が形成されている。これら開口は、それぞれ上部ケース10と下部ケース16を、例えばネジやボルト等の締結部品で筐体12に固定することにより塞がれる。筐体12の高さ方向の中央には、内部に冷却水流路19が設けられる冷却ジャケット19Aが形成されている。冷却ジャケット19Aの上面開口をパワーモジュール300で覆い、下面開口を下カバー420で覆うことにより、冷却ジャケット19Aの内部に冷却水流路19が形成される。組み立て途中に冷却水流路19の水漏れ試験を行う。水漏れ試験に合格した場合に、次に筐体12の上部と下部の開口から基板やコンデンサモジュール500を取り付ける作業を行うことができる。このように筐体12の中央に冷却ジャケット19Aを配置し、次に筐体12の上端部と下端部の開口から必要な部品を固定する作業が行える構造を採用しており、生産性が向上する。また冷却水流路19を最初に完成させ、水漏れ試験の後その他の部品を取り付けることが可能となり、生産性と信頼性の両方が向上する。
電源回路178の回路構成を図5に示す。電源回路178は、パルス出力回路201、ゲート抵抗202、トランジスタ203、トランス204、ダイオード205、電解コンデンサ206、ブリーダ抵抗207、分圧抵抗208、電流検知抵抗211、ローパスフィルタ212、抵抗213、コンデンサ214、抵抗215、コンデンサ216、電界効果トランジスタ(FET)219、ツェナーダイオード220、抵抗221、ダイオード222、ダイオード223、抵抗224、コンデンサ226およびツェナーダイオード227を備える。
パルス出力回路201は、トランジスタ203へ所定の最小パルス幅以上のパルス幅を有するパルス信号(PWM信号)を出力するための回路であり、複数の入出力端子を有するICにより構成される。パルス出力回路201の入出力端子の構成を図6に示す。パルス出力回路201は、COMP端子251、FB端子252、CS端子253、RC端子254、GND端子255、OUT端子256、Vcc端子257およびREF端子258を有する。
COMP端子251およびFB端子252は、分圧抵抗208から信号線210を介してフィードバック信号を入力するための端子である。COMP端子251に接続された抵抗213の抵抗値およびコンデンサ214の容量値により、フィードバック信号のゲインが決定される。CS端子253は、電流検知抵抗211の電圧をローパスフィルタ212を介して検出するための端子である。この電圧に基づいて、電流検知抵抗211に流れる電流値(トランジスタ203に流れる電流値)が求められる。RC端子254およびREF端子258は、抵抗215の抵抗値とコンデンサ216の容量値に応じてパルス出力回路201が出力するパルス信号の周期を決定するための端子である。OUT端子256は、パルス信号を出力するための端子である。OUT端子256から出力されるパルス信号のパルス幅は、CS端子253において検出される電圧値と、COMP端子251およびFB端子252において検出されるフィードバック信号とに基づいて決定される。GND端子255はグランド218に接続され、Vcc端子257にはパルス出力回路201が動作するための電源が供給される。
ゲート抵抗202は、パルス出力回路201とトランジスタ203の間に接続されている。パルス出力回路201のOUT端子256から出力されたパルス信号は、ゲート抵抗202を介してトランジスタ203のゲート端子に入力される。すなわち、ゲート抵抗202は、ゲート端子を入力端子としてトランジスタ203へパルス信号が入力される際の入力抵抗として作用する。
トランジスタ203は、高耐電圧型の電界効果トランジスタ(FET)であり、ゲート端子はゲート抵抗202を介してパルス出力回路201のOUT端子256に、ソース端子は電流検知抵抗211を介してグランド218に、ドレイン端子はトランス204の1次コイルを介してバッテリ136にそれぞれ接続されている。トランジスタ203は、パルス出力回路201のOUT端子256からゲート端子に入力されるパルス信号に基づいて、オン状態とオフ状態とを交互に切り換えるスイッチング動作を行う。
トランス204は、1次コイルと2次コイルとを有する。1次コイル側にはバッテリ136とトランジスタ203が接続されており、2次コイル側には出力端子209が設けられている。出力端子209は、図2の電源線179に接続されている。トランジスタ203のゲート端子にパルス信号が入力されているとき、すなわちゲート端子の電圧がHレベルであるときには、トランジスタ203がオン状態となり、トランス204の1次コイルに電流が流れる。一方、トランジスタ203のゲート端子にパルス信号が入力されていないとき、すなわちゲート端子の電圧がLレベルであるときには、トランジスタ203がオフ状態となり、トランス204の1次コイルに電流が流れない。このようにして、トランジスタ203が行うスイッチング動作に応じてトランス204の1次コイルの電流が制御される。
ダイオード205は、トランス204の2次コイル側に流れる電流の向きを制限する。電解コンデンサ206は、トランス204の2次コイル側に流れる電流によって電荷が蓄積される。電解コンデンサ206に蓄積された電荷は、出力端子209における電源の出力に用いられる。ブリーダ抵抗207は、無負荷時に出力端子209における電源出力を安定化する。分圧抵抗208は、前述のフィードバック信号の出力に用いられる。
電流検知抵抗211は、前述のようにパルス出力回路201において電流値を検出するために用いられる。ローパスフィルタ212は、パルス出力回路201のCS端子253における検出値から高周波成分を除去する。抵抗213およびコンデンサ214は前述のようにフィードバック信号のゲインを決定し、抵抗215およびコンデンサ216は前述のようにパルス信号の周期を決定する。
FET219、ツェナーダイオード220、抵抗221およびダイオード222は、後述するように、電源回路178の起動時にバッテリ136からの電力を用いてパルス出力回路201のVcc端子257に電源を供給するための回路を構成する。ダイオード223は、電源回路178の起動後に、パルス出力回路201のVcc端子257に対する電源の供給元をバッテリ136から出力端子209へと切り替える。抵抗224は、パルス出力回路201のVcc端子257における電源の電圧を調節する。コンデンサ226は、パルス出力回路201の電源バイパスコンデンサであり、ツェナーダイオード227は、パルス出力回路201のVcc端子257の電圧を安定化する。
トランジスタ203がオン状態になったときのトランス204の1次コイルに流れる電流Iは、下記の式(1)によって表される。式(1)において、Vはトランス204の1次コイル側に印加される電圧、Lはトランス204のインダクタンス、tはトランジスタ203がオン状態となってからの経過時間である。
I=(V/L)×t (1)
上記の式(1)によって表される電流Iがトランス204の1次コイルに流れ始めると、2次コイルの巻き方向とは逆方向の電圧が2次コイル側に生じる。しかし、この電圧はダイオード205の逆方向電圧であるため、2次コイル側には電流が流れない。一方、電流Iの増加に伴って電流検知抵抗211の電圧が上昇する。この電圧は前述のようにパルス出力回路201のCS端子253において検出され、その検出結果に基づいて電流Iが求められる。
パルス出力回路201は、CS端子253において検出した電圧が所定のしきい値を超えると、OUT端子256からのパルス信号を停止して、トランジスタ203のゲート端子の電圧をLレベルとする。すると、トランジスタ203がオン状態からオフ状態に切り換えられ、トランス204の1次コイルに流れていた電流が遮断される。このとき、2次コイルの巻き方向と同じ方向の電圧が、1次コイルと2次コイルの巻数比に応じた変圧比で2次コイル側に生じる。この電圧はダイオード205の順方向電圧であるため、2次コイル側に電流が流れ、電解コンデンサ206に電荷が蓄積される。その結果、出力端子209の電圧が上昇する。出力端子209の電圧は、分圧抵抗208および信号線210を介して、パルス出力回路201のCOMP端子251およびFB端子252へフィードバック信号として入力される。このフィードバック信号に基づいて、パルス出力回路201はOUT端子256から出力するパルス信号のパルス幅、すなわちPWM信号のデューティを、たとえば出力端子209の電圧が15Vとなるように制御する。
以上説明したような動作が電源回路178において所定の周期で繰り返し行われることにより、バッテリ136からの入力電圧が異なる電圧に変換され、2次コイル側の出力端子209に伝えられる。これにより、バッテリ136の電圧とは異なる電圧の電源が出力端子209から出力され、電源線179を介して制御回路172およびドライバ回路174へ供給される。
なお、電源回路178に入力されるバッテリ136からの電圧は、前述のように図1,2のモータジェネレータ192の駆動にも用いられる。すなわち、電源回路178への入力電圧は、モータジェネレータ192を駆動するための駆動電圧と共用されている。この入力電圧はモータジェネレータ192の駆動に応じて変動するが、上記のような電源回路178の動作により、電源出力の電圧を一定に制御することができる。
ところで、パルス出力回路201がOUT端子256から出力するパルス信号には、前述のように最小パルス幅が予め設定されている。この最小パルス幅でパルス信号が出力されたときの、トランジスタ203のゲート電圧(ゲート−ソース間電圧)Vgと、ドレイン端子に流れる電流Idとの関係を図7、8に示す。図7は、ゲート抵抗202がないときのパルス信号電圧Vout、ゲート電圧Vgおよびドレイン電流Idの例を示す図であり、図8は、ゲート抵抗202があるときのパルス信号電圧Vout、ゲート電圧Vgおよびドレイン電流Idの例を示す図である。なお、ドレイン電流Idは、前述の式(1)によって表されるトランス204の1次コイルに流れる電流Iと等しい。
図7の例において、符号261に示すようにパルス信号電圧VoutがLレベルからHレベルに変化すると、ゲート電圧Vgが符号262に示すように変化する。すなわち、パルス信号電圧Voutの立ち上がりと同時にゲート電圧Vgが上昇した後、所定のゲートオンしきい値電圧Vthを超えると、ゲート電圧Vgの傾きが変化して小さくなる。その後、図7に示す期間Tterを経過した後に、ゲート電圧Vgの傾きが変化して再び大きくなり、パルス信号電圧Voutの立ち下り時点まで上昇する。このゲート電圧Vgの傾きが小さくなっている期間Tterは、テラス期間と呼ばれる。なお、テラス期間の長さは、トランジスタ203のゲート−ドレイン間およびゲート−ソース間の寄生容量に応じて決定される。
パルス信号が出力されてから最小パルス幅Tomminが経過して、パルス信号電圧VoutがHレベルからLレベルに変化すると、その時点からゲート電圧Vgが下降していく。このゲート電圧Vgは、ゲートオンしきい値電圧Vth付近で一旦停止して一定期間維持された後、再び下降していく。
上記のようなゲート電圧Vgの変化により、ドレイン電流Idは符号263に示すように変化する。すなわち、ゲート電圧Vgがゲートオンしきい値電圧Vthを超えた時点からドレイン電流Idが上昇していく。このドレイン電流Idの上昇は、ゲート電圧Vgが下降に転じた後も、ゲート電圧Vgがゲートオンしきい値電圧Vthを下回るまで継続する。ゲート電圧Vgがゲートオンしきい値電圧Vthを下回ると、ドレイン電流Idが急激に下降し、アンダーシュートを生じた後に0となる。
上記のドレイン電流Idは、ゲート電圧Vgおよびゲートオンしきい値電圧Vthを用いて、以下の式(2)によって表される。式(2)において、kは定数である。
Id=k(Vg−Vth)2 (2)
式(2)で表されるように、ドレイン電流Idはゲート電圧Vgとゲートオンしきい値電圧Vthの差の2乗に比例する。したがって、ゲート電圧Vgがゲートオンしきい値電圧Vthを大きく超えると、ドレイン電流Idが急激に上昇して大電流となるため、トランジスタ203には高い耐電流性能が要求されることとなる。しかし、トランジスタ203の耐電流性能を上げることは、電源回路178の大型化および高コスト化につながるおそれがある。
一方、図8の例においては、符号271に示すようにパルス信号電圧VoutがLレベルからHレベルに変化すると、ゲート電圧Vgが符号272に示すように変化する。このゲート電圧Vgにおけるテラス期間Tterは図7の場合よりも長く、パルス信号電圧Voutの立ち下り時点の先まで続いている。すなわち、ゲート抵抗202をパルス出力回路201のOUT端子256とトランジスタ203のゲート端子の間に設けることにより、テラス期間Tterを延長することができる。このときのゲート抵抗202の抵抗値は、パルス出力回路201よりパルス信号が出力されてからトランジスタ203のゲート電圧Vgにおけるテラス期間Tterが終了するまでの時間が最小パルス幅Tonminを超えるように決定される。
具体的には、下記の式(3)を満たすようにゲート抵抗202の抵抗値Rgが決定される。式(3)において、Voutはパルス信号の電圧、Vthはトランジスタ203のスイッチング動作のしきい値電圧(ゲートオンしきい値電圧)、Tonminはパルス信号の最小パルス幅、QGmaxはトランジスタ203の最大蓄積電荷(ゲート端子において蓄積される電荷の最大値)をそれぞれ表す。なお、パルス信号電圧Vout、しきい値電圧Vth、最小パルス幅Tonminおよび最大蓄積電荷QGmaxは、トランジスタ203の特性に応じてそれぞれ定まる値である。
Rg>(Vout−Vth)×Tonmin/QGmax (3)
式(3)を満たすゲート抵抗202の抵抗値を採用することで、パルス信号の出力からゲート電圧Vgにおけるテラス期間Tterの終了までの時間が最小パルス幅Tonminを超えると、ドレイン電流Idは符合273に示すように変化する。このドレイン電流Idは、図7のものに比べて上昇の度合いが小さく、最高点も低い。したがって、トランジスタ203に要求される耐電流性能を軽減することができる。
次に、電源回路178の起動時の動作について説明する。電源回路178が既に起動している状態では、パルス出力回路201のVcc端子257に対して、出力端子209から出力された電源がダイオード223および抵抗224を介して供給される。しかし、電源回路178の起動時には、まだ出力端子209において電源が出力されていないため、これを使用することができない。したがって、以下に説明するようにして、バッテリ136からの電力を用いてパルス出力回路201のVcc端子257に電源を供給する。
バッテリ136が立ち上がると、抵抗221を介してFET219のゲート電圧が上昇する。このゲート電圧が所定のしきい値を超えると、FET219がオン状態となる。すると、バッテリ136からの電圧がFET219、ダイオード222および抵抗224を介して、パルス出力回路201のVcc端子257に供給される。こうして供給されたバッテリ136からの電圧を電源としてパルス出力回路201が動作を開始すると、バッテリ136からの入力電圧がトランス204により変換され、出力端子209へ出力される。なお、FET219のゲート電圧がツェナーダイオード220の降伏電圧を超えると、ツェナーダイオード220が導通してゲート電圧がそれ以上は上昇しなくなる。出力端子209において所定の出力電圧が得られた後は、ダイオード223が導通し、パルス出力回路201のVcc端子257に対する電源の供給元がバッテリ136から出力端子209へと切り替えられる。
以上説明した実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)電力変換装置200に搭載された電源回路178は、バッテリ136からの入力電圧を異なる電圧に変換し、電源として出力する。この電源回路178において、パルス出力回路201によりパルス信号が出力されてからトランジスタ203のゲート−ソース端子間電圧Vgにおけるテラス期間Tterが終了するまでの時間が、パルス信号の最小パルス幅Tonminを超えるように、ゲート抵抗202の抵抗値Rgが決定される。このようにしたので、トランジスタ203のドレイン電流Idを下げることができ、その結果、トランジスタ203に要求される耐電流性能を軽減することができる。
(2)トランジスタ203を電界効果トランジスタとし、ゲート抵抗202をそのゲート端子に接続することとしたので、トランジスタ203において良好なスイッチング動作特性を得ることができる。
(3)ゲート抵抗202の抵抗値Rgは、パルス信号の電圧Vout、トランジスタ203のスイッチング動作のしきい値電圧Vth、最小パルス幅Tonminおよびトランジスタ203の最大蓄積電荷QGmaxに基づいて、式(3)を満たすように決定される。これにより、パルス信号が出力されてからトランジスタ203のゲート−ソース端子間電圧Vgにおけるテラス期間Tterが終了するまでの時間が確実に最小パルス幅Tonminを超えるように、電源回路178を設計することができる。
(4)バッテリ136から電源回路178への入力電圧は、モータジェネレータ192を駆動するための駆動電圧と共用される。したがって、モータジェネレータ192が駆動可能な状態である限り、電源回路178から電源を供給して電力変換装置200を動作させることができる。
(5)なお、バッテリ136から電源回路178への入力電圧はモータジェネレータ192の駆動に応じて変動するが、電源回路178は出力する電源の電圧を一定に制御することができる。
(6)電源回路178から出力される電源は、モータジェネレータ192の駆動を制御するための制御回路172に供給される。したがって、電力変換装置200は、この電源を用いて制御回路172を動作させてモータジェネレータ192の駆動を制御することができる。
なお、以上説明した実施形態と変形例の一つ、もしくは複数を組み合わせることも可能である。変形例をどのように組み合わせることも可能である。
以上の説明はあくまで一例であり、本発明は上記実施形態の構成に何ら限定されるものではない。