JP2010183685A - 異方性永久磁石片とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電気導体29の外周側に形成されるリング状のキャビティ27内に磁性粉末30を充填し、電気導体29に電流を流してキャビティ27内に円周方向の磁界を発生させることにより磁性粉末30を円周方向に磁気配向させてリング状の異方性永久磁石10を形成する。そして、リング状の異方性永久磁石10を周方向に分割し、異方性永久磁石片1を得る。この異方性永久磁石片1は略リング形状を周方向に分割した形状を有し、配向方向線が略リング形状の外周側に凸の同心円弧状の曲線である。
【選択図】図1
Description
また従来の異方性多極プラスチック磁石の製造金型装置は、キャビティの周囲に強磁性部材で形成された複数の磁芯と永久磁石とが、永久磁石の極が磁芯の両側で同極となるように交互に配置されている(例えば、特許文献2参照)。
図1はこの発明の実施の形態1における異方性永久磁石片の斜視図、図2は図1の異方性永久磁石片(以下、永久磁石片とする)の概略の平面図である。
図1に示すように、ネオジム焼結磁石等から形成される永久磁石片1は、断面が略リング形状を周方向に分割した形状であり、軸方向に延びる柱状に形成されている。図1、2中の永久磁石片1内の矢印は磁化容易軸の方向(磁化されやすい方向)であり、図に示すように磁化容易軸は連続的に変化して、略リング形状の外周側に凸の同心円弧状の曲線となるように形成されている。磁化容易軸の方向は永久磁石成形時の磁場配向により揃えられるものであり、この磁化容易軸の方向線を以下配向方向線と呼ぶ。図2中点線は永久磁石片1から発生する磁束の流れを示す。図からわかるように、配向方向線が略リング形状の外周側に凸の同心円弧状の曲線であるため、磁束は略リング形状の内周方向に流れる。
本実施の形態1では、永久磁石片1の断面形状は、この配向方向線の曲率が大きいほど幅寸法が小さく配向方向線の曲率が小さいほど幅寸法が大きくなる略扇形状であり、扇形の中心側をこの扇形と同心の円弧により切り落とした形状としている。また配向方向線は、略リング形状の中心と同心の円弧状の曲線である。
なお、本実施の形態1では、希土類焼結磁石であるネオジム焼結磁石を永久磁石片1として使用しているが、これに限られるものではなく、フェライト磁石、プラスチック磁石を用いてもよい。
図3に示すように、この製造装置2は、金型20と大電流コネクタ21とパルス電源22とを有している。金型20は、強磁性部材または非磁性部材からなるダイ23と、非磁性部材からなる下パンチ24と、非磁性部材からなる上パンチ25と、芯棒26とにより形成されるリング状のキャビティ27を備えている。芯棒26は、金属またはセラミックなどの円筒からなる外殻28と、その内部に軸方向に延在して配置される電気導体29とにより構成されている。電気導体29は芯棒26の軸方向へ電流を流すためのもので、本実施の形態1では円柱状の銅部材29aから形成されている。そして、銅部材29aの両端はパルス電源22に接続されている。なお、銅部材29aの一方の端部には取り外し可能な大電流コネクタ21が取り付けられ、この大電流コネクタ21を介して銅部材29aとパルス電源22とが接続されている。
図4から図10は本実施の形態1における永久磁石片1の製造方法を説明するための説明図である。まず、図4に示すように、ダイ23、下パンチ24、上パンチ25、芯棒26を所定位置にセットし、芯棒26内の銅部材29aに大電流コネクタ21を取り付けてパルス電源22に接続する。
次に図5に示すように、金型20に形成されるリング状のキャビティ27内に磁性粉末30を充填する。
次に図6に示すように、磁性粉末30をリング状のキャビティ27の円周方向に配向させるため、パルス電源22のスイッチをONにして芯棒26に内蔵された銅部材29aに電流を流す。銅部材29aに電流を流すことにより芯棒26の周りには磁界が発生し、キャビティ27内の磁性粉末30を円周方向に磁気配向させることができる。図6中の白抜きの矢印は電流の方向を示し、黒矢印は白抜き矢印の方向に電流を流した場合の磁界の向きを示している。なお、発生させる電流は、瞬間的に1回流してもよいし、複数回流してもよい。また電流の方向も図中の方向に限られるものではない。また、直流電流だけでなく、電流の方向が交互に反転する交流電流を使用してもよく、時間と共に電流の大きさが減衰する交流電流を使用してもよい。
次に図7に示すように、上パンチ25を下降させて配向された磁性粉末30を軸方向へ加圧し、リング状の圧粉体31を形成する。
次に図8に示すように、芯棒26内部の銅部材29aに接続されている大電流コネクタ21を取り外し、その後下パンチ24を上昇させる。
次に図9に示すように、さらに下パンチ24を上昇させて圧粉体31を金型20から取り出す。その後熱処理することで圧粉体31を焼結させリング状永久磁石10を形成する。
次に図10(A)に示すように、焼結したリング状永久磁石10の内外周および端面を機械加工により形状仕上げを行い、図10(B)に示すように、リング状永久磁石10をその中心軸から放射状に等分割し永久磁石片1を形成する。
例えば、必要な永久磁石片1の略扇形状の開き角度(中心角)が20度であった場合、1個のリング状永久磁石10から18個の永久磁石片1を切り出すことができる。
なお、1個のリング状永久磁石10を等分割して同じ開き角度の永久磁石片1を切り出すだけでなく、1個のリング状永久磁石10から異なる開き角度の永久磁石片を切りだしてもよく、これにより複数の形状の永久磁石片を一度に製造することができる。
これに対し、上述の本実施の形態1の製造方法のように円周方向に磁気配向したリング状の永久磁石を形成すれば、焼結後もリング状を維持できるため、永久磁石の焼結時の形状歪の発生を抑制できる。そして、焼結後のリング状永久磁石10を分割して永久磁石片1を形成すれば、削り代が小さく材料歩留まりが良い低コストな永久磁石片1を得ることができる。
図12に示すように、本実施の形態1における別例の製造装置2bの芯棒26bは、金属またはセラミックなどの円筒からなる外殻28と、その内部に軸方向に延在して配置される電気導体29とにより構成されている。本実施の形態1の別例の製造装置ではこの電気導体29が複数の導線(互いに絶縁された銅線)を軸方向両端部分で束ねた縒り線29bで形成されている。外殻28と縒り線29bとの間の空間および各導線間の隙間にはエポキシ樹脂などの樹脂32が充填され、縒り線29bが樹脂モールドされている。
磁界を発生させるための電流がパルス電流や交流電流である場合には、表皮効果により電気導体の表面にしか電流が流れない。従って、例えば上記実施の形態1の製造装置2に使用されている銅部材29aでは、見かけ上銅部材29aの断面積が小さくなる。
これに対し、電気導体29を複数の導線を束ねた縒り線29bとすることで、各導線の全ての表面において電流が流れるため、電流が流れる断面積が多くなる。従って電気抵抗を小さくすることができ、芯棒26の発熱を抑えることができる。
図13に示すように、本実施の形態1における他の別例の製造装置2cの芯棒26cは、金属またはセラミックなどの円筒からなる外殻28と、その内部に軸方向に延在して配置される電気導体29とにより構成されている。本実施の形態1の他の別例の製造装置ではこの電気導体29が複数本の導線29cで形成されている。各導線29cはそれぞれ絶縁されており、軸方向端部で着脱可能な大電流コネクタ21に一本一本接続されている。
このような構成により、芯棒26c内部の導線のターン数を稼ぐことができ、より強い磁界を発生させることができる。
また、製造装置2、2b、2cにおいて、ダイ23には、セラミックなどの非磁性かつ絶縁部材を使用してもよく、また鉄、非晶質合金、粉体鉄心、積層鉄心などの強磁性部材を使用してもよい。これらを使用することにより、パルス磁界により発生する渦電流を小さくでき、キャビティ27内の磁界の乱れを低減することができる。
上記実施の形態1の永久磁石辺1と同様、断面形状が外周側も内周側も円形のリング状のキャビティ27を使用して、リング状永久磁石10を配向、成形後(図15(A))、リング状永久磁石10を中心軸から放射状に分割する(図15(B))。さらにこの分割片を並べて固定し、リング状永久磁石10の内周と外周にあたる面を平面研削することにより、図14(A)に示す断面が台形様の略扇形状の永久磁石片1aが得られる(図15(C))。
また、同様の方法でリング状永久磁石10の内周にあたる面のみを平面研削することによって、図14(B)に示す断面が略扇形状の永久磁石片1bが得られる。
また、円周方向に磁気配向されたリング状永久磁石を周方向に分割して形成されているため、配向方向線が略リング形状の外周側に凸の同心円弧状の曲線である永久磁石片を一つ一つ製造する必要がなく、一度に多数の永久磁石片を効率的に製造することができる。
また、円弧状の配向方向を有する永久磁石をリング状にして形成することにより、永久磁石の焼結時の形状歪の発生を防止でき、これを分割して永久磁石片を形成することにより、機械加工時の削り代が少なく材料歩留まりの良い低コストな永久磁石片を得ることができる。
上記実施の形態1で示した永久磁石片の製造方法は、円周方向に磁気配向されたリング状永久磁石を形成してそれを分割するものであるが、別例の方法は、円周方向に磁気配向されたリング状永久磁石ではなく、図17に示すような極異方性リング磁石100を形成し、これを極数に合わせて分割するものである。なお、極異方性リング磁石100では、各磁極の内周側と、隣接する磁極間の外周側(図17中点線で囲んだ領域)の配向が弱い。従って極異方性リング磁石100を分割して得られた永久磁石片は、上記実施の形態1で示した方法で製造された永久磁石片に比べ配向領域が少なくなる。また、別例の方法では、磁極の境界位置とずれた位置で分割してしまうと、永久磁石片内部に異なる配向方向が混在してしまうため、正確な位置での分割が必要である。なお、図17中矢印は極異方性リング磁石100内部の配向方向線を示す。
上記実施の形態1では、本発明の永久磁石片の形状や、その製造方法について説明したが、本実施の形態2では、上記の永久磁石片を利用した永久磁石型回転子について説明する。
図18はこの発明の実施の形態2における永久磁石型回転子の平面図(以下、回転子とする)である。
図18に示すように、本実施の形態2の回転子4は極数が6極の回転子であり、回転軸40と鉄心片41と永久磁石片42とから構成されている。複数個の鉄心片41は各々電磁鋼板を軸方向に積層してカシメなどで鋼板同士を連結して形成されている。鉄心片41の断面形状は扇形の中心側が切り落とされた略扇形状であり、6個の鉄心片41の略扇形状の外周側円弧が回転子4の外周方向に向くように回転軸40の外周側に周方向等間隔に配置されている。
また、回転子4の極数は6極に限られるものではなく、4、6、8、10、12極等の回転子にも適用することができ、極数が少ないほど永久磁石片に形成される配向方向線の方向による効果を発揮することができる。
まず図20(A)に示すように、例えば射出成形用の金型(図示せず)などの中に、回転軸40の外周側に略扇形状の鉄心片41と略扇形状の永久磁石片42とが円周方向交互になるように隙間を空けて配置する。
次に図20(B)に示すように、回転子4の外周側から回転子4の中心方向へ鉄心片41を押すことによって鉄心片41と永久磁石片42とを当接させる。この時、複数の鉄心片41により形成される回転子4の最外周面の仮想的な円の中心と回転軸40の回転中心とが同一となることが望ましい。
次に図20(C)に示すように、回転軸40と鉄心片41および永久磁石片42とにより形成される空間に、軸方向からPPSなどの樹脂43を射出成形し、回転軸40と鉄心片41と永久磁石片42とが一体となるように固定する。
このように製造された回転子4の外周側から円周方向に交互にN極とS極を形成するための磁界を印加して永久磁石片42を着磁し(図示せず)、本実施の形態2の回転子4が完成する。永久磁石片42の着磁により、鉄心片41は永久磁石片42に吸引され、回転子4の固定強度が高まる。さらに、永久磁石片42の略扇形状の外周側円弧が回転子4の回転軸40方向に向くように配置されることにより永久磁石片42が径方向でテーパ状となるため、鉄心片41が抜け止めとなって、鉄心片41と永久磁石片42との隣接面間を接着しなくても、永久磁石片1が外周方向に抜けることを防止できる。
なお、永久磁石片42とその両隣の鉄心片41の隣接面間にわずかな空隙をもうけ、この空隙を樹脂で満たすことにより、より強固に永久磁石片42と鉄心片41とを固定することができる。
固定方法は樹脂43によるものに限られず、例えば軸方向の両端部に環状の固定板等を設け、リベットなどにより鉄心片41を挟み込んで固定することとしてもよい。
図21は本実施の形態2の他の別例による回転子を示す斜視図であり、図21(A)は他の別例の回転子4bを示す斜視図、図21(B)は回転子4bを構成する鉄心板41bの斜視図、図21(C)は回転子4bを構成する鉄心板41cの斜視図である。なお、この別例の回転子4bの鉄心片以外の構成は上述した本実施の形態2の回転子4の構成と同じであり、同様の部分については同一符号を付して説明を省略する。
図21に示すように、回転子4bの鉄心片41dは電磁鋼板からなる略扇形状の鉄心板41bと、環状の鉄心板41cとを積層してカシメやリベットなどで鋼板同士を連結して形成される。環状の鉄心板41cには永久磁石片42を挿入するための溝41eが設けられており、永久磁石片42は、鉄心片41dの軸方向から挿入することができる。
このように、軸方向の一部に環状の鉄心板41cを挟むことで、鉄心片41dは軸方向の一部において環状に結合されることとなり、鉄心片41dを一体で取り扱うことができる。従って、鉄心片が個々ばらばらの場合に比べ、各鉄心片を別々にハンドリングしたり整列させたりする必要がなく生産性が向上する。
図に示すように、本実施の形態2では永久磁石片42の配向方向線が回転子4の回転軸(回転中心)方向に凸形状の円弧状であるため、発生する磁束の多くは回転子4の外周方向へ向かって流れている。これに対し比較例1の回転子4cでは、永久磁石片42cの配向方向線が一軸方向であるため、発生する磁束は回転子4c外周方向へ流れるとともに、回転軸(回転中心)方向へも流れて漏れ磁束となっている。このように、永久磁石片の配向方向線を回転子の回転軸方向に凸形状の円弧状とすることにより、回転軸方向への漏れ磁束を低減させ、外周表面の磁束密度を増加させることができる。
なお、本実施の形態2の永久磁石片42のように、配向方向線が永久磁石片42の周方向に対向する2辺に対して直交するようにすれば、永久磁石片42から発生する磁束が鉄心片41との接辺に対して直交するように流れるため、より強い磁力を回転子4外周表面へ発生させることができる。
なお、本実施の形態2の略扇形状の永久磁石片42を使用する場合にも、永久磁石片42の位置決め用に鉄心片41に比較例1の突起410cのような突起を設けてもよく、永久磁石片42の配向方向線が円弧状であることにより、外周表面の磁束密度を増加させる効果を得ることができる。
このように、永久磁石片の形状を板状から断面略扇形状とすること、また配向方向線を一軸方向から円弧状とすることで、回転子の外周表面に発生する磁力を増大させることができる。
図25(A)は、本実施の形態2の永久磁石片42の回転軸40方向の漏れ磁束を現した磁界解析結果であり、図中右側に示す回転子4の点線内の領域の解析結果を図中左側に拡大して示している。図25(B)は、比較例1の永久磁石片42cの回転軸40c方向の漏れ磁束を現した磁界解析結果であり、図中右側に示す回転子4cの点線内の領域の解析結果を図中左側に拡大して示している。解析結果中の矢印は漏れ磁束を示し、図からわかるように、本実施の形態2の永久磁石片42の回転軸40方向の漏れ磁束が比較例1に比べて大幅に減少している。
なお、永久磁石片の形状は実施の形態2で使用した形状に限られるものではなく、永久磁石片の配向方向線が回転子の回転軸方向に凸の円弧状の曲線であれば、回転子の外周表面で発生する磁力を増加させることができる。
上記実施の形態2では、本発明の永久磁石片を利用した回転子について説明したが、永久磁石片の利用はこれに限られるものではない。本実施の形態3では本発明の永久磁石片を利用した磁界発生装置5について説明する。図26はこの発明の実施の形態3における磁界発生装置5の概念図である。
なお、永久磁石片の形状は上記実施の形態3で使用した形状に限られるものではなく、永久磁石片の配向方向線が磁界発生装置の外周側に凸の円弧状の曲線であれば、磁界発生装置のキャビティ内に発生する磁力を増大させることができる。
27 キャビティ、29,29a,29b,29c 電気導体、30 磁性粉末、
42 永久磁石片、54 永久磁石片。
Claims (5)
- 略リング形状を周方向に分割した形状を有し、配向方向線が上記略リング形状の外周側に凸の同心円弧状の曲線であることを特徴とする異方性永久磁石片。
- 上記永久磁石片の断面形状は、配向方向線の曲率が大きいほど幅寸法が小さく、配向方向線の曲率が小さいほど幅寸法が大きい形状であることを特徴とする請求項1に記載の異方性永久磁石片。
- 上記永久磁石片の配向方向線は、上記永久磁石片の周方向に対向する2辺に対して直交することを特徴とする請求項1または2に記載の異方性永久磁石片。
- 円周方向に磁気配向されたリング状の異方性永久磁石を周方向に分割して形成することを特徴とする異方性永久磁石片の製造方法。
- 電気導体の外周側に形成されるリング状のキャビティ内に磁性粉末を充填する工程と、上記電気導体に電流を流して上記キャビティ内に円周方向の磁界を発生させることにより上記磁性粉末を円周方向に磁気配向させてリング状の異方性永久磁石を形成する工程と、上記リング状の異方性永久磁石を周方向に分割する工程とを備えたことを特徴とする異方性永久磁石片の製造方法。
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