JP2010181275A - 疾患の検出方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】C末端アルギニン欠損型C3a濃度を疾患マーカーとして、癌又は腺腫を簡便に検出する方法の提供。
【解決手段】血清中のC3a濃度を疾患マーカーとする方法であって、前記疾患が癌又は腺腫であり、(a)被験者から採血された血液試料を、室温で保存することにより凝固させる工程と、(b)工程(a)の後、前記血液試料の血清成分のC末端アルギニン欠損型C3a濃度を測定する工程と、(c)工程(b)において得られた測定値を基準値と比較し、当該測定値が当該基準値よりも大きい場合には被験者が癌又は腺腫に罹患していると判断し、当該測定値が当該基準値よりも小さい場合には罹患していないと判断する工程とを有し、前記血液試料が採血された時点から、工程(b)におけるC末端アルギニン欠損型C3a濃度の測定開始時点までの前記血液試料及びその血清成分を室温に置いた時間が、基準時間範囲内の時間である疾患の検出方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、血中のC3a濃度を疾患マーカーとして、疾患を検出する方法に関する。より具体的には、血清中のC末端アルギニン欠損型C3a濃度を疾患マーカーとして、癌又は腺腫を検出する方法に関する。
C3aは、血中の体液性免疫成分である補体の一種であり、C5aとともに、アナフィラトキシンと呼ばれている分子量9000、78アミノ酸からなるタンパク質である。1975年にTony E.らによってクローニングされた分子であり、感染症や炎症性疾患に罹患することにより、血中濃度が上昇することが報告されている。なお、血液中において、C末端のアルギニンが欠損した状態(C末端アルギニン欠損型C3a)で最も安定に存在することが報告されている。
また、近年、プロテオミクス技術の進歩により、血中の微量タンパク質の網羅的な解析が可能となり、癌検体(癌患者から採取された検体)と健常検体(健常者から採取された検体)とを用いた、血液検体での飛行時間型質量分析装置(TOF−MS;Time−of−flight mass spectrometry)を用いた網羅的なプロテオミクス解析により、特定の臓器の癌では、血中のC末端アルギニン欠損型C3a濃度が健常者と比較して高いことがわかってきた。例えば、大腸癌については、血清中のC末端アルギニン欠損型C3a濃度が健常人群と比較して大腸癌群で上昇していることが報告されており、一定の濃度のカットオフ値を設定することで大腸癌のスクリーニングができる可能性が示されている(例えば、非特許文献1、特許文献1参照。)。
C3aは、巨大な補体成分のC3から、古典経路(C1酵素)又はレクチン経路(MASP酵素)によって、それぞれ切り出されて産生される、C3タンパクのαへリックスの一部であるが、C3からC3aを切り出すC1酵素やMASP酵素等のプロテアーゼは、血液中にも存在する。このため、採血後に、血液試料中のC3からC3aが生じ、さらにすぐさま内因性の血清カルボキシペプチダーゼNによりC末端のアルギニンが除去されC末端アルギニン欠損型C3aが生じるため、血液試料中のC末端アルギニン欠損型C3a量が時間経過に伴い増大する傾向がある。例えば、血液試料中のC3切断後産物量は、採血後に比べて、37℃で一日経過後には数倍になり、このような採血後保存による血液試料中のC3切断後産物量の増大は、EDTAやクエン酸等のプロテアーゼ阻害剤を添加した場合であっても抑制されないが、一方で、4℃保存であれば、C3切断後産物濃度の上昇は抑制されること等が報告されている(例えば、非特許文献2参照。)。また、室温保存された血液試料中のC末端アルギニン欠損型C3a濃度の上昇は、個体差が大きい、という特徴もある。実際に、本発明者らの実験によれば、健常者から採取された血液試料同士であっても、室温で4時間保存した場合の血液試料中のC末端アルギニン欠損型C3a濃度は、保存前の濃度と比べて、活性が高い人の場合では2.5倍、活性の低いヒトの場合には1倍(ほとんど上昇しない)、という結果が得られた。
このため、従来は、血液中のC末端アルギニン欠損型C3a濃度を測定するための血液試料は、採血後のC末端アルギニン欠損型C3a濃度の上昇を抑制し得るような方法で保存・調製すべきと考えられている。例えば、血液試料中のC末端アルギニン欠損型C3a量を測定するための市販のキットの1つであるQuidel社製のC3a EIA kitでは、添付のプロトコールにおいて、EDTANa入りの真空採血管に採血し、迅速に4℃、2000×g、15分間の条件で遠心分離し、上清として得られる血漿成分を、すぐに測定に供することが好ましく、直ぐに測定しない場合には、当該血漿成分を、4時間以内であれば氷中で、それより長時間であれば−70℃で保存することを推奨している。このように、採血後速やかにEDTANaを添加し、低温で保存することにより、生体内での血液中のC末端アルギニン欠損型C3a濃度をより精度よく測定できるようにしている。
その他、セリンプロテアーゼの阻害剤であるFuthan(メシル酸ナファモスタット)とEDTAとを採血後の血液試料に添加することによって、室温保存の血液試料であってもC末端アルギニン欠損型C3a濃度の上昇を抑制し得ることが報告されている(例えば、非特許文献3参照。)。また、Futhan/EDTA入りの真空採血管(テルモヨーロッパ社製等)も市販されており、例えば、Human C3a EIA kit(BD Biosciences社製)等の市販の測定キットの中には、測定に供される血液試料の調製に際して、Futhan/EDTA入りの真空採血管を用いることを推奨しているものもある。
特表2008−509409号公報
ヘイバーマン(Habermann)、外16名、ガストロエンテロロジー(GASTROENTEROLOGY)、2006年、第131巻、1020〜1029ページ。
モルネス(Mollnes)、外2名、クリニカル・エクスペリメンタル・イミュノロジー(Clinical and Experimental Immunology)、1988年、第73巻、484〜488ページ。
フェイファー(Pfeifer)、外2名、クリニカル・ケミストリー(Clinical Chemistry)、1999年、第45巻第8号、1190〜1199ページ。
一方で、大腸癌等の特定の疾患の罹患者群において、血液中のC末端アルギニン欠損型C3a濃度が、健常者群よりも顕著に高いことが報告されている前記特許文献1や非特許文献1では、血漿中ではなく、血清中のC末端アルギニン欠損型C3a濃度を比較している。このため、単に血液中のC末端アルギニン欠損型C3a濃度を測定するのではなく、癌等の疾患の検出の指標とする場合には、血漿ではなく血清中のC末端アルギニン欠損型C3a濃度を測定することが好ましい。
しかしながら、強力なセリンプロテアーゼ阻害剤であるFuthanやキレート剤であるEDTAは、C3分解酵素と同様に血液凝固因子も阻害するため、Futhan及び/又はEDTA入りの真空採血管を用いた場合には、採血後の血液は凝固反応を伴わずに血漿となり、凝固反応後の血清を得ることはできなかった。なお、真空採血管への試薬の添加により血清が得られ、C末端アルギニン欠損型C3a濃度の上昇も抑制できる試薬はまだ存在しない。
これに対して、血清中のC末端アルギニン欠損型C3a濃度を測定している前記非特許文献1では、血清用チューブに採血後、氷中に2時間以内放置することにより、血液凝固反応を進行させた後、分離した血清を測定時まで−20℃で保存している。血液凝固反応を氷中で行うことにより、血液試料中のC末端アルギニン欠損型C3a濃度の上昇を抑制し得るためである。
ところが、実際の臨床現場では、採血後の血液試料は、一般に室温に保管され、すぐに冷却保存することは難しい。また、採血から血液凝固反応を経て遠心分離されるまでの時間も、30分間〜4時間と幅があり、検体間であってもそのときの状況によってさまざまである。さらに、一般に、血液検体が遠心分離された後には、上清の血漿/血清成分を別のチューブに移し変えることはなされず、沈殿部の血球成分と分離されることなく自動分析機に設置されるが、臨床検査では多数の検体を処理するため、自動分析機に設置された後も、最初の検体と最後の検体では1時間程度の解析までのタイムラグが生じてしまう場合が多い。そのため、通常の臨床検査の運用に基づいて、採取後調製された血清を用いてC末端アルギニン欠損型C3a濃度を測定すると、検体ごとの採血後の血液中でのC末端アルギニン欠損型C3a濃度の上昇の程度が不明であり、検体同士の正確なC末端アルギニン欠損型C3a濃度の比較ができず、癌等の疾患を、十分な精度特異度で検出することができない。
一方で、従来法のように、個々の検体に対して、冷却や一定処理時間内かつ迅速な処理を必要とする場合には、操作が煩雑となる上に、臨床検査現場ではイレギュラーな扱いとなる。このため、血清中のC末端アルギニン欠損型C3a濃度が、臨床検査マーカーとして普及することが難しくなる。
このように、血液中のC3a−desArg濃度は、血中に存在するC3切断酵素の影響により、室温保存することによって上昇することが知られており、このため、各種阻害剤で処理した血漿での測定が一般である。一方で、迅速かつ冷却処理して得られた血清中のC3a−desArg濃度の測定による癌検出の可能性が示唆されている。
本発明は、血清中のC末端アルギニン欠損型C3a濃度を疾患マーカーとした場合に、個々の検体に対して冷却や一定処理時間内かつ迅速な処理を必要とすることなく、臨床検査現場の運用に耐えうる簡便なフローにより、癌又は腺腫を高感度・高特異度で検出する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、驚くべきことに、癌患者から採取された血液試料及び健常者から採取された血液試料を、それぞれ室温保存し、得られた血清成分中のC末端アルギニン欠損型C3a濃度の時間経過を測定したところ、室温保存時間がある一定時間以上かつ一定時間以内であれば、癌患者から採取された血液試料と健常者から採取された血液試料とを、非常に高い感度・特異度で識別し得ることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
(1) 血清中のC末端アルギニン欠損型C3a濃度を疾患マーカーとして疾患を検出する方法であって、前記疾患が癌又は腺腫であり、(a)被験者から採血された血液試料を、室温で保存することにより凝固させる工程と、(b)前記工程(a)の後、前記血液試料の血清成分のC末端アルギニン欠損型C3a濃度を測定する工程と、(c)前記工程(b)において得られた測定値を、予め設定された基準値と比較し、当該測定値が当該基準値よりも大きい場合には、前記被験者が癌又は腺腫に罹患していると判断し、当該測定値が当該基準値よりも小さい場合には、前記被験者が癌又は腺腫に罹患していないと判断する工程と、を有し、前記血液試料が採血された時点から、前記工程(b)における前記血液試料の血清成分のC末端アルギニン欠損型C3a濃度の測定開始時点までの、前記血液試料及びその血清成分を室温に置いた時間が、予め設定された基準時間範囲内の時間であることを特徴とする疾患の検出方法、
(2) 1又は2以上の疾患罹患者、及び1又は2以上の対照者から採血された血液試料のそれぞれに対して、(p1)血液試料を、室温で保存することにより凝固させる工程と、(p2)前記工程(p1)において、前記血液試料の血清成分のC末端アルギニン欠損型C3a濃度の経時的変化を測定する工程と、(p3)前記工程(p2)において得られた測定値に基づき、各血液試料に対して、室温における保存時間と、血清成分のC末端アルギニン欠損型C3a濃度との関係をプロットしたC末端アルギニン欠損型C3a濃度時間経過プロットを作成する工程と、を行い、前記工程(p3)において作成された各血液試料のC末端アルギニン欠損型C3a濃度時間経過プロットに基づいて、疾患罹患者から採血された血液試料と対照者から採血された血液試料とを予め設定された感度及び特異度で識別可能なC末端アルギニン欠損型C3a濃度を、前記工程(c)における基準値とし、疾患罹患者から採血された血液試料の血清成分のC末端アルギニン欠損型C3a濃度が前記基準値以上であり、対照者から採血された血液試料の血清成分のC末端アルギニン欠損型C3a濃度が前記基準値以下である保存時間の範囲を、前記基準時間範囲とすることを特徴とする前記(1)記載の疾患の検出方法、
(3) 前記血液試料が採血された時点から、前記工程(b)における前記血液試料の血清成分のC末端アルギニン欠損型C3a濃度の測定開始時点までの、前記血液試料及びその血清成分を室温に置いた時間が、前記基準時間範囲内の時間ではない血液試料に対して、同一被験者から採血された血液試料に対して再度前記工程(a)〜(c)を行うことを特徴とする前記(1)又は(2)記載の疾患の検出方法、
(4) 前記基準時間範囲が、1時間以上6時間以内であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか記載の疾患の検出方法、
(5) 前記血液試料が採血された時点から、前記工程(b)における前記血液試料の血清成分のC末端アルギニン欠損型C3a濃度の測定開始時点までの、前記血液試料及びその血清成分を室温に置いた時間の管理を、採血がなされた時間及びC末端アルギニン欠損型C3a濃度の測定が開始された時間を記録することにより行うことを特徴とする、前記(1)〜(4)のいずれか記載の疾患の検出方法、
(6) 時間の記録が、採血時間及び測定時間を、採血管へ直接記載する方法、採血管を番号化して記録する方法、採血管へ付加されたICチップに記録する方法、及び採血管へ付加されたバーコードを用いて記録する方法からなる群より選択される1の方法により行うことを特徴とする前記(5)記載の疾患の検出方法、
(7) C末端アルギニン欠損型C3a濃度の測定を、免疫学的手法により行うことを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか記載の疾患の検出方法、
(8) 前記疾患が、大腸癌又は大腸腺腫であることを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれか記載の疾患の検出方法、
を、提供するものである。
本発明の疾患の検出方法を用いることにより、被験者から採血された血液試料の血清成分中のC末端アルギニン欠損型C3a濃度を、臨床検査現場の運用に耐えうる簡便なフローにより測定し、当該被験者が癌又は腺腫に罹患しているか否かを、高感度・高特異度で検出することができる。すなわち、本発明の疾患の検出方法においては、血液試料が採血された時点から、当該血液試料の血清成分のC末端アルギニン欠損型C3a濃度の測定開始時点までの、当該血液試料及びその血清成分を室温に置いた時間が、予め設定された基準時間範囲内の時間であれば、癌又は腺腫を高感度・高特異度で検出することができる。このため、従来法では、一律にC末端アルギニン欠損型C3a濃度上昇を抑制するために、冷却や一定処理時間内かつ迅速な処理が必要とされていたが、この基準時間範囲を設定することにより、当該基準時間範囲内であれば、室温における保存時間や測定開始までの時間に、検体ごとの時間差があってもよく、通常の臨床検査室での運用にて運用することができる。
実施例1において、疾患検体(P1〜P10)のC3a−desArg濃度時間経過プロットを示した図である。 実施例1において、対照検体(C1〜C10)のC3a−desArg濃度時間経過プロットを示した図である。 比較例1において、疾患検体(P1〜P10)のC3a−desArg濃度時間経過プロットを示した図である。 比較例1において、対照検体(C1〜C10)のC3a−desArg濃度時間経過プロットを示した図である。
本発明の疾患の検出方法は、血清中のC末端アルギニン欠損型C3a(以下、C3a−desArg)濃度を疾患マーカーとして疾患を検出する方法である。より具体的には、被験者から採血された血液試料を室温保存することにより凝固させ、血清成分中のC3a−desArg濃度を測定する方法であって、採血時点からC3a−desArg濃度測定開始時点までにおける、室温での保存時間の時間長が予め定めた基準時間範囲内の時間である検体を用いて、癌又は腺腫(以下、癌等ということがある。)を検出する方法である。
血清成分中のC3a−desArg濃度を指標として、癌等の疾患を検出する場合に、採血直後の血液試料や、採血後に血液凝固させることなく4℃以下で保存した血液試料を用いた場合よりも、採血後一定時間室温で保存し、血液凝固(凝血)反応を進行させた血液試料を用いることにより、癌等の疾患を高感度及び高特異度で検出できる。この理由は明らかではないが、下記のように推察される。
本発明者らは、血液中のC3a−desArg濃度は、血液凝固反応に伴い100倍以上上昇することを、新たに見出した。これは、血液中でのC3a−desArgの産生は、C3切断酵素と同じセリンプロテアーゼである血液凝固因子の活性化に伴って起こるためと考えられる。一方、消化器系の癌では、生体内での血液凝固が促進しているという報告もある。これらの知見より、癌等の罹患者では、健常者(対照者)と比較して血液凝固活性が高く、このため、血液凝固反応を起こすことにより、疾患罹患者の血液試料中のC3a−desArg濃度と、対照者の血液試料中のC3a−desArg濃度との差が大きくなり、この結果、癌等の疾患を高感度及び高特異度で検出し得ると推察される。
本発明の疾患の検出方法によって検出される疾患は、癌又は腺腫である。本発明において、癌には悪性腫瘍も含まれる。例えば、大腸癌、肺癌、乳癌、肝癌、膵癌、食道癌、胃癌等が挙げられる。本発明においては、大腸癌又は大腸腺腫を検出する方法であることが好ましい。
具体的には、本発明の疾患の検出方法は、下記の工程(a)〜(c)を有し、下記血液試料が採血された時点から、下記工程(b)における前記血液試料の血清成分のC末端アルギニン欠損型C3a濃度の測定開始時点までの、血液試料及びその血清成分を室温に置いた時間が、予め設定された基準時間範囲内の時間であることを特徴とする。
(a)被験者から採血された血液試料を、室温で保存することにより凝固させる工程。
(b)前記工程(a)の後、前記血液試料の血清成分のC3a−desArg濃度を測定する工程。
(c)前記工程(b)において得られた測定値を、予め設定された基準値と比較し、当該測定値が当該基準値よりも大きい場合には、前記被験者が癌又は腺腫に罹患していると判断し、当該測定値が当該基準値よりも小さい場合には、前記被験者が癌又は腺腫に罹患していないと判断する工程。
なお、本発明の疾患の検出方法において、血液凝固反応を行う温度は、室温であればよく、特段の温度制御環境下で行う必要はないが、10℃〜37℃であることが好ましく、15〜30℃であることがより好ましく、20〜28℃であることがさらに好ましい。これらの温度範囲であれば、血液凝固反応と血液中のC3a−desArgの産生の両方が十分に進行し得るためである。
以下、工程ごとに説明する。
まず、工程(a)として、被験者から採血された血液試料を、室温で保存することにより凝固させる。具体的には、血液試料を採血管に採取した後、当該採血管をそのまま室温で保存する。
血液試料を採取する採血管としては、血液凝固反応や、C3からのC3a産生反応に対する阻害物質を含まない採血管であれば、特に限定されるものではなく、血清を取得する場合に一般的に用いられている採血管を使用することができる。例えば、真空採血管内に凝固促進剤としてシリカやガラス微粒子を添加した血清取得用の真空採血管を用いた場合には、当該真空採血管に静脈血を採血し、数回転倒混和した後、室温で保存することにより、血液が凝固し、血清成分が得られる。また、トロンビン等がさらに添加された高速凝血用の採血管を使用した場合には、一般的に、シリカやガラス微粒子のみを添加した血清取得用の真空採血管を使用した場合よりも、血液試料をより短時間で凝固させることができる。
次に、工程(b)として、凝固させた血液試料の血清成分のC3a−desArg濃度を測定する。測定に供される血清成分は、凝固させた血液試料を遠心分離処理した後に分取したものであってもよく、遠心分離処理を省略し、凝固させた血液試料の上清を分取したものであってもよい。
また、工程(a)の後、工程(b)を行うまでに長時間を要する場合には、工程(a)において得られた凝固させた血液試料を、血清成分のC3a−desArg濃度測定を行うまでの間冷蔵保存しておいてもよい。また、凝固させた血液試料を遠心分離処理し、分取した血清成分を冷蔵保存又は冷凍(凍結)保存しておいたものを、C3a−desArg濃度測定に用いてもよい。
血清成分のC3a−desArg濃度を測定する方法は、溶液のC3a−desArg濃度を測定し得る方法であれば、特に限定されるものではなく、公知の手法の中から適宜選択して使用することができる。本発明の疾患の検出方法においては、C3aのC末端アルギニンを切断してできた切断面(ネオエピトープ)を抗原とする抗C3a−desArg特異的抗体を使用した免疫学的手法を用いることが好ましい。このような免疫学的手法として、例えば、ELIA法やEIA法等がある(例えば、The Journal of Immunology、1988年、第141巻、553〜558ページ参照。)。また、抗C3a−desArg特異的抗体に対してC3a−desArgと競合的に結合する人工物質を用いた競合的免疫的測定法であってもよい。その他、Human C3a EIA kit(BD Biosciences社製)や、Complement C3a desArg competitive EIAキット(Assaydesign社製)等の市販のC3a−desArg測定用キットを用いてもよい。
その後、工程(c)として、工程(b)において得られた測定値を、予め設定された基準値と比較し、当該測定値が当該基準値よりも大きい場合には、前記被験者が癌又は腺腫に罹患していると判断し、当該測定値が当該基準値よりも小さい場合には、前記被験者が癌又は腺腫に罹患していないと判断する。なお、本発明において、基準値とは、室温における血液凝固反応により血液試料から得られる血清成分のC3a−desArg濃度を指標とした場合に、癌等の疾患罹患者から採取された血液試料(以下、「疾患検体」という。)と対照者から採取された血液試料(以下、「対照検体」という。)とを、予め定められた感度及び特異度で識別することが可能な一定のC3a−desArg濃度を意味する。
本発明及び本願明細書において、感度とは、C3a−desArg濃度を測定した全疾患検体(疾患罹患者群から採血された血液試料)のうち、C3a−desArg濃度がある一定の基準値を超えた陽性者数の割合を意味する。また、特異度とは、C3a−desArg濃度を測定した全対照検体(対照者群から採血された血液試料)のうち、ある一定の基準値を下回った陰性者の数の割合を意味する。
また、本発明及び本願明細書において、対照者とは、癌又は腺腫に罹患していない者を意味する。すなわち、対照者は、健常者であることが好ましいが、癌又は腺腫以外の他の疾患に罹患している者であってもよい。
本発明の疾患の検出方法において、血液試料が採血された時点から、工程(b)における当該血液試料の血清成分のC3a−desArg濃度の測定開始時点までの、当該血液試料及びその血清成分を室温に置いた時間(以下、「室温存在時間」という。)とは、血液試料中、又は血液試料から血清成分が分離された場合にはその分離された血清成分中において、C3から新たにC3aが産生され得る時間である。したがって、採血からC3a−desArg濃度の測定開始までの全操作を室温で行った場合には、血液試料が採血された時点からC3a−desArg濃度測定開始時点までが、室温存在時間である。一方、当該室温存在時間には、室温における血液凝固反応後の血球成分と血清成分に分離した血液試料を、C3a−desArg濃度を測定するまでの間冷蔵保存した場合の当該冷蔵保存時間は含まれない。また、血液凝固反応後の血液試料から血清成分を分離回収するために遠心分離処理を行う場合であって、当該遠心分離処理を室温で行った場合における当該遠心分離処理時間は室温存在時間に含まれるが、4℃等の低温条件下で行った場合における当該遠心分離処理時間は含まれない。同様に、分離回収された血清成分を、C3a−desArg濃度を測定するまでの間冷蔵又は凍結保存した場合には、当該冷蔵・凍結保存時間は室温存在時間に含まれない。その他、一度に多数の検体を測定する場合等のように、血液凝固反応後の血液試料から分離回収した後、凍結保存された血清成分を、再融解後にC3a−desArg濃度測定開始時まで室温で保存する場合には、この融解後の室温における保存時間も、室温存在時間に含まれる。
室温存在時間が短すぎる場合には、採決後の血液試料中のC3a−desArg濃度の上昇が不十分となり、疾患検体のC3a−desArg濃度と、対照検体のC3a−desArg濃度との差が小さく、疾患検出の感度が低くなる。逆に、室温存在時間が長すぎる場合には、採決後の血液試料中のC3a−desArg濃度の上昇が過剰となり、やはり、疾患検体と対照検体のC3a−desArg濃度の差が小さく、疾患検出の特異度が低くなる。
そこで、本発明の疾患の検出方法においては、室温存在時間を、予め設定された基準時間範囲内の時間とする。具体的には、室温存在時間を、室温における血液凝固反応により血液試料から得られる血清成分のC3a−desArg濃度を指標とした場合に、疾患検体と対照検体とを、予め定められた感度及び特異度で識別することが可能な一定の時間範囲(基準時間範囲)内の時間とする。室温存在時間を、予め定めた感度特異度をとる基準時間範囲内の時間に設定することにより、例えば、凝血時間(血液凝固反応時間)が短すぎてC3a−desArg濃度が十分上昇せず、癌等の疾患を検出できないおそれや、室温における保存時間が長すぎて、対照検体のC3a−desArg濃度が上昇しすぎ、対照検体と疾患検体との識別ができないおそれを、顕著に低減することができ、感度特異度の高い検出を行うことができる。
本発明の疾患の検出方法においては、基準値及び基準時間範囲は、疾患を検出する前に、予め設定しておく。当該基準値及び基準時間範囲は、C3a−desArg濃度の測定方法の種類、疾患の種類、疾患検出時の室温等を考慮して、適宜決定することができる。本発明における基準時間範囲としては、例えば、1〜6時間であることが好ましく、1〜4時間であることがより好ましく、1〜2時間であることがさらに好ましい。
疾患検体及び対照検体の血清成分のC3a−desArg濃度の室温保存における時間経過を測定することにより、予め定めた感度特異度で疾患検体と対照検体とを識別可能な基準値と、保存時間の範囲を算出することができる。具体的には、下記の方法により、基準値及び基準時間範囲を予め設定することができる。
まず、従来法によって特定の臓器の癌又は腺腫と診断されたヒトを疾患罹患者、当該臓器に癌がないと診断されたヒトを対照者とし、1又は2以上の疾患罹患者(疾患罹患者群)から採血された血液試料(疾患検体)、及び1又は2以上の対照者(対照者群)から採血された血液試料(対照検体)を用意する。例えば、大腸癌又は大腸腺腫を検出する場合の基準値及び基準時間範囲を設定するためには、下部内視鏡にて大腸癌および大腸進行腺腫(Advanced Adenoma)の存在があると診断されたヒトを疾患罹患者、同じく下部内視鏡にてそれらの腫瘍がないと診断されたヒトを対照者とし、それぞれから採血し、血液試料を用意する。基準値及び基準時間範囲を設定するための疾患検体及び対照検体は、それぞれ、2検体以上であることが好ましく、10検体以上であることがより好ましく、30検体以上であることがさらに好ましい。なお、疾患検体数と対照検体数を揃える必要はない。
得られた疾患検体及び対照検体は、採血後直ちに室温で保存する。室温保存により、血液凝固反応が進行し、血清成分が得られる。そこで、これらの室温保存されている各検体の血清成分中のC3a−desArg濃度の経時的変化を測定する。C3a−desArg濃度の経時的変化は、複数の保存時間経過後のC3a−desArg濃度を測定することにより調べることができる。C3a−desArg濃度を測定するタイムポイント(室温保存開始からの経過時点)としては、特に限定されるものではなく、測定方法や疾患の種類等を考慮して適宜決定することができる。例えば、採血後30分から、8時間までの間の複数のタイムポイント、さらに好ましくは、採血後30分から、30分おきに6時間までの連続したタイムポイントを取得することが好ましい。
各検体は、測定するタイムポイント数に応じて、予め、複数本の採血管に採血されたものを用いることが好ましい。また、室温保存時間が0時間のタイムポイント(採血直後)のC3a−desArg濃度を測定することも好ましい。なお、採血直後のC3a−desArg濃度は、EDTA等の血液凝固阻害剤を添加した血液中のC3a−desArg濃度を測定することによっても得ることができる。
各タイムポイントにおける各検体の血清成分中のC3a−desArg濃度の測定は、前記と同様に行うことができる。測定に供される血清成分は、例えば、各タイムポイントにおいて、各検体を遠心分離処理して上清を回収することにより血清成分を得ることができる。回収された各タイムポイントの血清成分は、回収後速やかにC3a−desArg濃度測定を行ってもよく、回収後に冷蔵保存又は凍結保存し、全てのタイムポイントにおける血清成分を回収した後、必要に応じて再融解を行った後速やかにC3a−desArg濃度測定を行ってもよい。
C3a−desArg濃度測定の結果得られた測定値に基づき、各検体に対して、室温保存時間と血清成分のC3a−desArg濃度との関係をプロットしたC3a−desArg濃度時間経過プロットを作成する。疾患検体群と対照検体群とで、前記C3a−desArg濃度時間経過プロットを比較し、基準値及び基準時間範囲を設定する。具体的には、疾患検体群と対照検体群とを予め設定された感度及び特異度で識別可能なC3a−desArg濃度を基準値とし、疾患検体群の血清成分のC3a−desArg濃度が当該基準値以上であり、対照検体群の血清成分のC3a−desArg濃度が当該基準値以下である保存時間の範囲を基準時間範囲とする。
なお、血液凝固反応やC3切断反応は、酵素反応であり、一般的に温度の影響を受けやすい。このため、工程(a)における室温と、工程(p1)における室温は、ほぼ同定度(平均温度で±5℃)であることが好ましい。すなわち、本発明の疾患の検出方法においては、検出を行うたびに基準値等を設定する必要はなく、基準値等を設定したときの室温と、被験者から採血した血液試料に対して、疾患の検出を行うとき(すなわち、工程(a)を行うとき)の室温とが、ほぼ同程度の温度である場合には、既に設定した基準値等をそのまま使用することができる。一方、季節変動等により、既存の基準値等を設定したときの室温と、被験者から採血した血液試料に対して疾患の検出を行うときの室温とに、あまりに温度差がある場合には、新たに基準値等を設定しなおすことが好ましい。
本発明の疾患の検出方法においては、予め、疾患罹患者から採取された血液と対照者から採取された血液とにおいて、C3a−desArg濃度の時間変化を測定しておく等により、予め感度特異度を保つことが可能な時間範囲を設定し、各血液試料の室温存在時間が当該時間範囲内の任意の時間となるように検査を行うことができる。このため、本発明の疾患の検出方法は、多数の検体を高い精度で処理することが要求される臨床検査に特に好適な方法である。
また、本発明の疾患の検出方法においては、室温存在時間が、予め設定された基準時間範囲の時間ではない血液試料に対しては、検出結果が信頼できないと判断することができる。この場合には、再度同一被験者から採血し、得られた血液試料に対して検査を行うことも好ましい。このように、採血から凝固、C3a−desArg濃度測定までの時間をトレースし、予め設定された基準時間範囲を超えた検体については検出結果を排除することにより、疾患の検出における感度特異度を保証することができる。
各血液試料の室温存在時間は、各工程を行った時間を記録することにより、基準時間範囲内の時間となるように管理することができる。具体的には、血液試料が採血された時間、及びC3a−desArg濃度の測定が開始された時間を記録しておくことが好ましい。本発明において、血液試料が採血された時点から、C3a−desArg濃度測定までの工程を全て室温で行う場合には、採血時からC3a−desArg濃度測定開始時までの時間が室温存在時間となることから、採血時点と測定開始時点のみを記録しておくことにより、これらの記録された時間に基づき、各血液試料の室温存在時間を簡便に管理することができる。凝固反応後の血液試料を冷蔵保存した場合や、遠心分離後に回収した血清成分を冷蔵・凍結保存した場合には、これらの処理の開始時点と終了時点の時間も記録しておくことにより、室温存在時間を管理することができる。
血液試料が採血された時間等の記録は、一般的に検体の処理日時等をトレースするために用いられる方法の中から、適宜選択して用いることができる。例えば、採血管に採血時間や冷蔵保存時間等を直接記載したり、血液試料から分離した血清成分を回収した血清用容器に冷蔵・凍結時間や測定開始時間等を直接記載してもよい。また、採血管や血清用容器を番号化したり、採血管や血清用容器に付加させたバーコードを用いて、各採血管等に対して採血や冷蔵・凍結保存、測定等の操作を行った時間を記録してもよい。その他、採血管等にICチップを付加させ、該ICチップに各操作を行った時間を入力することによっても、室温存在時間を管理することができる。
また、採血後の血液試料中のC3切断活性(C3a産生活性)を測定することにより、間接的に室温存在時間を見積もることができる。例えば、C3からC3aを産生する際に機能するC3切断酵素によって、C3aと同様に切断されるペプチドフラグメントを準備しておく。当該ペプチドフラグメントとしては、例えば、C3のフラグメントであって、C3切断酵素による切断部位を含むペプチドフラグメント等が挙げられる。予め一定量の当該ペプチドフラグメントを添加させておいた採血管に採血された血液試料を室温で保存すると、血液試料中のC3切断酵素により、当該ペプチドフラグメントが切断されて切断物が生成される。つまり、生成された切断物量は、血液試料中のC3切断活性に依存するため、血液試料中で新たに産生されるC3a−desArg量と相関する。このため、室温保存された血液試料の血清成分中の当該切断物量を指標として、当該血液試料の室温存在時間が基準時間範囲内か否かを判断することができる。
具体的には、基準値や基準時間範囲を設定する場合と同様にして、疾患検体と対照検体に対して、血清成分中のC3a−desArg濃度の測定とともに、切断物量を測定し、C3a−desArg濃度時間経過プロットに加えて、室温保存時間と血清成分の切断物量との関係をプロットした切断物量時間経過プロットを作成する。当該切断物の量は、当該切断物を抗原として作成した抗体との結合反応を利用した免疫的なアッセイによって検出することができる。これらのプロットから、前述したように基準値や基準時間範囲を設定し、当該基準時間範囲における切断物量の時間変化から、室温における保存時間が、当該基準時間範囲であることが予測可能な切断物量の範囲を算出する。血清成分中の切断物量が、この算出された範囲を超えた血液試料については、室温存在時間が基準時間範囲を超えているものと判定される。つまり、各血液試料に対して、採血時間等を記録せず、室温存在時間を測定していなかった場合でも、このようなペプチドフラグメントを予め採血管に添加しておくことにより、間接的に室温存在時間を推定し、検出結果の信頼性を判断することができる。また、切断物の量や濃度は、免疫学的方法で測定することができるため、C3a−desArgと同時に同一アッセイ内において測定することも可能であり、別アッセイ内において測定することもできる。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
<基準値及び基準時間範囲の設定>
大腸癌患者10名及び健常者10名から採血を行い、疾患検体10検体(P1〜P10)及び対照検体10検体(C1〜C10)を得た。1検体に対し、6本の採血管に採血した。この6本の採血管のうち、1本はEDTANaが予め添加された真空採血管とし、残りの5本は凝血促進剤が予め添加された真空採血管とした。なお、真空採血管には、テルモ社製のベノジェクトIIを用い、かつ、採血時点の時間を、各採血管にそれぞれ記載した。
各検体のうち、EDTANa含有採血管については、採血後直ちに4℃で遠心分離処理を行い、分離回収した上清(血漿)を、C3a−desArg濃度測定時まで凍結保存した。
残りの凝血促進剤含有採血管については、採血後そのまま室温で、保存時間が0.5時間、1時間、2時間、4時間、又は6時間となるように保存した後、室温で遠心分離処理を行い、分離回収した上清(血清)を、C3a−desArg濃度測定時までそれぞれ凍結保存した。
各検体の血漿及び血清中のC3a−desArg濃度を、C3a EIA キット(Quidel社製)を用いて、添付のプロトコールに従って測定した。より詳しくは、凍結保存された各検体の血漿及び血清を再融解し、これらを希釈して、ELISAプレートにて測定を行った。測定結果を表1及び表2に示す。また、測定結果に基づき、各検体のC3a−desArg濃度時間経過プロットを作成した。図1は疾患検体(P1〜P10)のC3a−desArg濃度時間経過プロットを示した図であり、図2は対照検体(C1〜C10)のC3a−desArg濃度時間経過プロットを示した図である。
Figure 2010181275
Figure 2010181275
この結果、基準値を7000ng/mlとした場合に、血液試料の室温保存時間が1時間以上4時間以内の範囲であれば、疾患検体と対照検体とを、感度90%、特異度100%で識別できることがわかった。また、室温における保存時間が4時間を越えた場合には、特異度が最小で70%まで下がることもわかった。なお、図1及び図2中、太実線は、C3a−desArg濃度が7000ng/mlを示している。
一方、EDTANa含有採血管から回収された血漿検体では、表1の室温保存時間0hに記載の結果からも明らかであるように、疾患検体と対照検体におけるC3a−desArg濃度差が小さく、例えば、基準値を対照検体における最高値240ng/ml(C9)とした場合に、感度70%、特異度90%となった。これらの結果から、血漿検体中のC3a−desArg濃度を疾患マーカーとして疾患を検出する従来法よりも、本発明の疾患の検出方法を用いたほうが、より高い性能で癌や腺腫を検出し得ることが明らかである。
<被験者検体を用いた大腸癌の検出>
上記で設定した基準値及び基準時間範囲に基づいて、別の大腸癌患者2名及び健常者2名から採血された新たな疾患検体2検体(P11及びP12)及び対照検体2検体(C11及びC12)を評価した。
具体的には、まず、各被験者から凝血促進剤が予め添加された真空採血管に採血し、それぞれの採血時間を採血管に記載した。その後、通常の臨床検査室のフローにのっとり、遠心分離をした後、上清の血清成分中のC3a−desArg濃度を上記と同様にしてELISAキットにて定量した。なお、C3a−desArg濃度測定開始時までの操作は、全て室温で行われた。各検体に対する、採血時間、測定開始時間、室温存在時間(測定開始時間から採血時間までの時間)、及び血清成分中のC3a−desArg濃度を表3に示す。
Figure 2010181275
この結果、全ての検体の室温存在時間は1〜4時間以内であり、基準時間範囲内であり、検出結果は信頼できると判断された。また、P11及びP12検体では、C3a−desArg濃度が基準値(7000ng/ml)以上であり、大腸癌であると判断された。一方、C11及びC12検体ではC3a−desArg濃度が基準値以下であり、大腸癌に罹患していないと判断された。つまり、本実施例における検出結果と、従来の他の診断方法による診断結果が一致し、したがって、本発明の疾患の検出方法により、他の診断方法と同様に、大腸癌等を検出し得ることが確認された。
また、これらの結果から、本発明の疾患の検出方法により、迅速な検体処理や、冷却等の煩雑な操作を行うことなく、通常の室温保存での臨床検査室のフローで検査可能であることがわかった。
[比較例1]
採血後の検体を、室温ではなく4℃で保存した場合の、各検体中のC3a−desArg濃度の経時的変化を測定した。具体的には、実施例1において、基準値及び基準時間範囲の設定の際に用いたものと同じ検体{疾患検体10検体(P1〜P10)及び対照検体10検体(C1〜C10)}に対して、採血後の保存を4℃で行った以外は、実施例1と同様にして、血清又は血漿中のC3a−desArg濃度を測定した。
測定結果を表4及び表5に示す。また、測定結果に基づき、各検体のC3a−desArg濃度時間経過プロットを作成した。図3は疾患検体(P1〜P10)のC3a−desArg濃度時間経過プロットを示した図であり、図4は対照検体(C1〜C10)のC3a−desArg濃度時間経過プロットを示した図である。いずれの検体においても、室温保存した場合よりも、C3a−desArg濃度は低く、濃度の上昇は緩やかであった。これは、低温の保存により、C3の切断酵素の活性が抑制され、C3a−desArg産生スピードが抑えられたためと思われる。
また、疾患検体と対照検体とのC3a−desArg濃度の差が、室温保存した場合よりも小さくなることが確認された。測定結果に基づき、カットオフ値(基準値)を4400ng/mlとした場合に、血液試料の4℃保存時間が4時間以上6時間以内の範囲で疾患検体と対照検体とを識別すると、感度80%、特異度95%となり、いずれも実施例1と比べて低下した。また、疾患検体、対照検体で値が近接した検体が多く、測定精度によっては、判定が変わるグレーゾーンの検体の数が増えた。
これらの結果から、採血後の血液試料を室温で保存し、当該血液試料中のC3切断酵素活性を一定時間働かせる本発明の疾患の検出方法のほうが、C3切断酵素活性を抑制させる従来法よりも、疾患検体と対照検体とを精度よく識別し得ることが明らかである。
Figure 2010181275
Figure 2010181275
本発明の疾患の検出方法を用いることにより、臨床検査現場の運用に耐えうる簡便なフローにより、癌又は腺腫を所望の感度・特異度で検出することができるため、特に臨床検査等の分野において利用が可能である。

Claims (8)

  1. 血清中のC末端アルギニン欠損型C3a濃度を疾患マーカーとして疾患を検出する方法であって、
    前記疾患が癌又は腺腫であり、
    (a)被験者から採血された血液試料を、室温で保存することにより凝固させる工程と、
    (b)前記工程(a)の後、前記血液試料の血清成分のC末端アルギニン欠損型C3a濃度を測定する工程と、
    (c)前記工程(b)において得られた測定値を、予め設定された基準値と比較し、当該測定値が当該基準値よりも大きい場合には、前記被験者が癌又は腺腫に罹患していると判断し、当該測定値が当該基準値よりも小さい場合には、前記被験者が癌又は腺腫に罹患していないと判断する工程と、
    を有し、
    前記血液試料が採血された時点から、前記工程(b)における前記血液試料の血清成分のC末端アルギニン欠損型C3a濃度の測定開始時点までの、前記血液試料及びその血清成分を室温に置いた時間が、予め設定された基準時間範囲内の時間であることを特徴とする疾患の検出方法。
  2. 1又は2以上の疾患罹患者、及び1又は2以上の対照者から採血された血液試料のそれぞれに対して、
    (p1)血液試料を、室温で保存することにより凝固させる工程と、
    (p2)前記工程(p1)において、前記血液試料の血清成分のC末端アルギニン欠損型C3a濃度の経時的変化を測定する工程と、
    (p3)前記工程(p2)において得られた測定値に基づき、各血液試料に対して、室温における保存時間と、血清成分のC末端アルギニン欠損型C3a濃度との関係をプロットしたC末端アルギニン欠損型C3a濃度時間経過プロットを作成する工程と、
    を行い、
    前記工程(p3)において作成された各血液試料のC末端アルギニン欠損型C3a濃度時間経過プロットに基づいて、疾患罹患者から採血された血液試料と対照者から採血された血液試料とを予め設定された感度及び特異度で識別可能なC末端アルギニン欠損型C3a濃度を、前記工程(c)における基準値とし、
    疾患罹患者から採血された血液試料の血清成分のC末端アルギニン欠損型C3a濃度が前記基準値以上であり、対照者から採血された血液試料の血清成分のC末端アルギニン欠損型C3a濃度が前記基準値以下である保存時間の範囲を、前記基準時間範囲とすることを特徴とする請求項1記載の疾患の検出方法。
  3. 前記血液試料が採血された時点から、前記工程(b)における前記血液試料の血清成分のC末端アルギニン欠損型C3a濃度の測定開始時点までの、前記血液試料及びその血清成分を室温に置いた時間が、前記基準時間範囲内の時間ではない血液試料に対して、同一被験者から採血された血液試料に対して再度前記工程(a)〜(c)を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の疾患の検出方法。
  4. 前記基準時間範囲が、1時間以上6時間以内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の疾患の検出方法。
  5. 前記血液試料が採血された時点から、前記工程(b)における前記血液試料の血清成分のC末端アルギニン欠損型C3a濃度の測定開始時点までの、前記血液試料及びその血清成分を室温に置いた時間の管理を、採血がなされた時間及びC末端アルギニン欠損型C3a濃度の測定が開始された時間を記録することにより行うことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか記載の疾患の検出方法。
  6. 時間の記録が、採血時間及び測定時間を、採血管へ直接記載する方法、採血管を番号化して記録する方法、採血管へ付加されたICチップに記録する方法、及び採血管へ付加されたバーコードを用いて記録する方法からなる群より選択される1の方法により行うことを特徴とする請求項5記載の疾患の検出方法。
  7. C末端アルギニン欠損型C3a濃度の測定を、免疫学的手法により行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の疾患の検出方法。
  8. 前記疾患が、大腸癌又は大腸腺腫であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の疾患の検出方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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