以下、添付図面に従って本発明の実施形態について詳細に説明する。
<インクジェット記録装置の全体構成>
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の構成図である。このインクジェット記録装置10は、描画部16の圧胴(描画ドラム70)に保持された記録媒体24(便宜上「用紙」と呼ぶ場合がある。)にインクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yから複数色のインクを打滴して所望のカラー画像を形成する圧胴直描方式のインクジェット記録装置であり、インクの打滴前に記録媒体24上に処理液(ここでは凝集処理液)を付与し、処理液とインク液を反応させて記録媒体24上に画像形成を行う2液反応(凝集)方式が適用されたオンデマンドタイプの画像形成装置である。
図示のように、インクジェット記録装置10は、主として、給紙部12、処理液付与部14、描画部16、乾燥部18、定着部20、及び排出部22を備えて構成される。
給紙部12には、枚葉紙である記録媒体24が積層されており、この記録媒体24が給紙部12から処理液付与部14に送られ、処理液付与部14で記録面に処理液が付与された後、描画部16で記録面に色インクが付与される。インクが付与された記録媒体24は、定着部20で画像が堅牢化された後、排出部22によって搬送される。
以下、インクジェット記録装置10の各部(給紙部12、処理液付与部14、描画部16、乾燥部18、定着部20、排出部22)について説明する。
(給紙部)
給紙部12は、記録媒体24を処理液付与部14に供給する機構である。給紙部12には、給紙トレイ50が設けられ、この給紙トレイ50から記録媒体24が一枚ずつ処理液付与部14に給紙される。
本例のインクジェット記録装置10では、記録媒体24として、大きさ(用紙サイズ)の異なる複数種類の記録媒体24を使用することができる。給紙部12においてサイズ違いの記録媒体をそれぞれ区別して集積する複数の用紙トレイ(不図示)を備え、これら複数の用紙トレイの中から給紙トレイ50に送る用紙を自動で切り換える態様も可能であるし、必要に応じてオペレータが用紙トレイを選択し、若しくは交換する態様も可能である。
なお、本例では、記録媒体24として、枚葉紙(カット紙)を用いるが、連続用紙(ロール紙)から必要なサイズに切断して給紙する構成も可能である。
また、本例の給紙部12は、クリーニングシート(不図示)を供給する手段としても兼用される。給紙部12においてクリーニングシートを集積した用紙トレイ(不図示)を備え、印刷用の記録媒体24の紙種変更(サイズ変更)と同様に、自動制御によってクリーニングシートの用紙トレイから給紙されるように給紙経路を切り換える態様も可能であるし、必要に応じてオペレータがクリーニングシートの用紙トレイを選択し、若しくは交換する態様も可能である。
(処理液付与部)
処理液付与部14は、記録媒体24の記録面に処理液を付与する機構である。処理液は、描画部16で付与されるインク中の色材(本例では顔料)を凝集させる色材凝集剤を含んでおり、この処理液とインクとが接触することによって、インクは色材と溶媒との分離が促進される。
図1に示すように、処理液付与部14は、給紙胴52、処理液ドラム54、及び処理液塗布装置56を備えている。給紙胴52は、給紙部12の給紙トレイ50と処理液ドラム54の間に配置され、後述のモータドライバ176(図5参照)によってその回転が駆動制御される。給紙部12から給紙された記録媒体24は、この給紙胴52によって受け取られ、処理液ドラム54に受け渡される。
処理液ドラム54は、記録媒体24を保持し、回転搬送させるドラムであり、後述のモータドライバ176(図5参照)によってその回転が駆動制御される。また、処理液ドラム54は、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)55を備え、この保持手段55の爪と処理液ドラム54の周面の間に記録媒体24を挟み込むことによって記録媒体24の先端を保持できるようになっている。記録媒体24は、保持手段55によって先端が保持された状態で、処理液ドラム54を回転させることによって回転搬送される。その際、記録媒体24の記録面が外側を向くようにして搬送されるようになっている。なお、処理液ドラム54は、その外周面に吸引孔を設けるとともに、吸引孔から吸引を行う吸引手段を接続してもよい。これにより記録媒体24を処理液ドラム54の周面に密着保持することができる。
処理液ドラム54の外側には、その周面に対向して処理液塗布装置56が設けられる。処理液塗布装置56は、記録媒体24の記録面に処理液を塗布する装置であり、塗布される処理液が貯留された処理液容器と、この処理液容器の処理液に一部が浸漬されたアニックスローラと、アニックスローラと処理液ドラム54上の記録媒体24に圧接されて計量後の処理液を記録媒体24に転移するゴムローラとで構成される。この処理液塗布装置56によれば、処理液を計量しながら記録媒体24に塗布することができる。
処理液の膜厚は、描画部16のインクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yから打滴されるインクの液滴径より十分に小さいことが望ましい。例えば、インクの打滴量が2plのときには、液滴の平均直径は15.6μmである。このとき、処理液の膜厚が大きい場合には、インクドットが記録媒体24の表面に接触することなく、処理液内で浮遊する。そのため、ドットが拡がることができず、所望のドット径を得ることができない。そこで、インクの打滴量が2plのときに着弾ドット径を30μm以上得るためには、処理液の膜厚を3μm以下にすることが望ましい。
なお、本実施形態では、記録媒体24の記録面に処理液を付与する方式として、ローラによる塗布方式を適用した構成を例示したが、これに限定されず、例えば、スプレー方式、インクジェット方式などの各種方式を適用することも可能である。
処理液付与部14で処理液が付与された記録媒体24は、処理液ドラム54から中間搬送部26を介して描画部16の描画ドラム70へ受け渡される。
(描画部)
描画部16は、インクジェット方式でインクを打滴することによって入力画像に対応した画像を描画する機構であり、描画ドラム70、用紙抑えローラ74、及びインクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yを備えている。インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yはそれぞれ、マゼンダ(M)、黒(K)、シアン(C)、イエロー(Y)の4色のインクに対応しており、描画ドラム70の回転方向に上流側から順に配置される。
描画ドラム70は、その外周面に記録媒体24を保持し、回転搬送させるドラムであり、後述のモータドライバ176(図5参照)によってその回転が駆動制御される。また、描画ドラム70は、処理液ドラム54と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)71を備え、この保持手段71によって記録媒体24の先端を咥えて保持できるようになっている。記録媒体24は、保持手段によって先端が保持された状態で、描画ドラム70を回転させることによって回転搬送される。その際、記録媒体24の記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面にインクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yからインクが付与される。
用紙抑えローラ74は、描画ドラム70の外周面に記録媒体24を密着させるためのガイド部材であり、描画ドラム70の外周面に対向する位置に配置されている。具体的には、中間搬送部26からの記録媒体24の受渡位置よりも記録媒体24の搬送方向(描画ドラム70の回転方向)下流側であり、且つ、インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yよりも記録媒体24の搬送方向上流側に配置される。
中間搬送部26から描画ドラム70に受け渡された記録媒体24は、上述の保持手段によって先端が保持された状態で回転搬送される際、用紙抑えローラ74によって押圧され、描画ドラム70の外周面に密着される。このようにして、記録媒体24を描画ドラム70の外周面に密着させた後に、描画ドラム70の外周面から浮き上がりのない状態で、インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yの直下の印字領域に送られる。
インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yはそれぞれ、記録媒体24における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有するフルライン型のインクジェット方式の記録ヘッド(インクジェットヘッド)であり、そのインク吐出面には、画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルが複数配列されたノズル列が形成されている。各インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yは、記録媒体24の搬送方向(描画ドラム70の回転方向)と直交する方向に延在するように固定設置される。
上記の如く構成された各インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yから、対応する色インクの液滴が、描画ドラム70の外周面に保持された記録媒体24の記録面に向かって吐出される。これにより、処理液付与部14で予め記録面に付与された処理液にインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料)が凝集され、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体24上での色材流れなどが防止され、記録媒体24の記録面に画像が形成される。その際、描画部16の描画ドラム70は、処理液付与部14の処理液ドラム54に対して構造上分離しているので、インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yに処理液が付着することがなく、インクの不吐出要因を低減することができる。
なお、本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組合せについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
描画部16で画像が形成された記録媒体24は、描画ドラム70から中間搬送部28を介して乾燥部18の乾燥ドラム76へ受け渡される。
(乾燥部)
乾燥部18は、色材凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を乾燥させる機構であり、図1に示すように、乾燥ドラム76、及び溶媒乾燥装置78を備えている。
乾燥ドラム76は、その外周面に記録媒体24を保持して回転搬送させるドラムであり、後述のモータドライバ176(図5参照)によってその回転が駆動制御される。また、乾燥ドラム76は、処理液ドラム54と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)77を備え、この保持手段77によって記録媒体24の先端を保持できるようになっている。記録媒体24は、保持手段によって先端が保持された状態で、乾燥ドラム76を回転させることによって回転搬送される。その際、記録媒体24の記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面に対して溶媒乾燥装置78による乾燥処理が行われる。なお、乾燥ドラム76は、その外周面に吸引孔を設けるとともに、吸引孔から吸引を行う吸引手段を接続してもよい。これにより記録媒体24を乾燥ドラム76の周面に密着保持することができる。
溶媒乾燥装置78は、乾燥ドラム76の外周面に対向する位置に配置され、複数のハロゲンヒータ80と、各ハロゲンヒータ80の間にそれぞれ配置された温風噴出しノズル82とで構成される。
各温風噴出しノズル82は、所定の温度(たとえば50℃〜70℃)に制御された温風を一定の風量(12m3/分)で記録媒体24に向けて吹き付けるように構成され、各ハロゲンヒータ80はそれぞれ所定の温度(たとえば180℃)に制御される。
このように構成される溶媒乾燥装置78によって、乾燥ドラム76に保持された記録媒体24の記録面のインク溶媒に含まれる水分が蒸発され、乾燥処理が行われる。その際、乾燥部18の乾燥ドラム76は、描画部16の描画ドラム70に対して構造上分離しているので、インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yにおいて、熱乾燥によるヘッドメニスカス部の乾燥によるインクの不吐出を低減することができる。また、乾燥部18の温度設定に自由度があり、最適な乾燥温度を設定することができる。
また、乾燥ドラム76の表面温度は50℃以上に設定されている。記録媒体24の裏面から加熱を行うことによって乾燥が促進され、定着時における画像破壊を防止することができる。このとき、乾燥ドラム76の外周面に記録媒体24を密着させる手段を具備するとさらに効果的である。記録媒体24を密着させる手段としては、真空吸着、静電吸着など様々な方式を適用することが可能である。
なお、乾燥ドラム76の表面温度の上限については、特に限定されるものではないが、乾燥ドラム76の表面に付着したインクをクリーニングするなどのメンテナンス作業の安全性(高温による火傷防止)の観点から75度以下(より好ましくは60℃以下)に設定されることが好ましい。
このように構成された乾燥ドラム76の外周面に、記録媒体24の記録面が外側を向くように(即ち、記録媒体24の記録面が凸側となるように湾曲させた状態で)保持し、回転搬送しながら乾燥することで、記録媒体24のシワや浮きの発生を防止でき、これらに起因する乾燥ムラを確実に防止することができる。
乾燥部18で乾燥処理が行われた記録媒体24は、乾燥ドラム76から中間搬送部30を介して定着部20の定着ドラム84へ受け渡される。
(定着部)
定着部20は、定着ドラム84(「媒体保持手段」に相当)、ハロゲンヒータ86、定着ローラ(「ローラ部材」、「ヒートローラ」に相当)88、離型オイル供給ローラ(「オイル供給手段」に相当)89及びインラインセンサ90で構成される。ハロゲンヒータ86、定着ローラ88、及びインラインセンサ90は、定着ドラム84の外周面に対向する位置に配置され、定着ドラム84の回転方向(図1において反時計回り方向)の上流側から順に配置される。
定着ドラム84は、その外周面に記録媒体24を保持して回転搬送させるドラムであり、後述のモータドライバ176(図5参照)によってその回転が駆動制御される。また、定着ドラム84は、処理液ドラム54と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)85を備え、この保持手段85によって記録媒体24の先端を保持できるようになっている。記録媒体24は、保持手段85によって先端が保持された状態で定着ドラム84を回転させることによって、回転搬送される。その際、記録媒体24の記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面に対して、ハロゲンヒータ86による予備加熱と、定着ローラ88による定着処理と、インラインセンサ90による検査が行われる。なお、上記の定着ドラム84は、その外周面に吸引孔を設けるとともに、吸引孔から吸引を行う吸引手段を接続してもよい。これにより記録媒体24を定着ドラム84の周面に密着保持することができる。
ハロゲンヒータ86は、所定の温度(たとえば180℃)に制御される。これにより、記録媒体24の予備加熱が行われる。
定着ローラ88は、乾燥させたインクを加熱加圧することによってインク中の自己分散性ポリマー微粒子を溶着し、インクを被膜化させるためのローラ部材であり、記録媒体24を加熱加圧するように構成される。具体的には、定着ローラ88は、定着ドラム84に対して圧接するように配置されており、定着ドラム84との間でニップローラを構成するようになっている。これにより、記録媒体24は、定着ローラ88と定着ドラム84との間に挟まれ、所定のニップ圧(たとえば0.15MPa)でニップされ、定着処理が行われる。
また、定着ローラ88は、熱伝導性の良いアルミなどの金属パイプ内にハロゲンランプを組み込んだ加熱ローラによって構成され、所定の温度(たとえば60〜80℃)に制御される。この加熱ローラで記録媒体24を加熱することによって、インクに含まれるラテックスのTg温度(ガラス転移点温度)以上の熱エネルギーが付与され、ラテックス粒子が溶融される。これにより、記録媒体24の凹凸に押し込み定着が行われるとともに、画像表面の凹凸がレベリングされ、光沢性が得られる。
離型オイル供給ローラ89は、定着ローラ88の周面に離型オイルを付与する手段として機能する。離型オイルは、記録媒体24に打滴されたインクが定着ローラ88に付着する現象(インクオフセット)を防止するために定着ローラ88に塗布される。
例えば、図2に示すように、離型オイル供給ローラ89は、離型オイル含浸ウェブ91により所定量の離型オイルを供給され、供給された離型オイルを定着ローラ88に塗布する。定着ローラ88に離型オイルを付与する手段は、上記形態の他、離型オイルを含浸させた多孔質ローラを用いる態様、定着ローラ88の周面に向けてオイル噴射ノズルからオイルを噴射する態様、また離型オイル供給ローラ89を用いず、直接離型オイル含浸ウェブ91により塗布する態様など、様々な形態を採用し得る。
なお、図1の実施形態では、定着ローラ88を1つだけ設けた構成となっているが、画像層厚みやラテックス粒子のTg特性に応じて、複数段設けた構成でもよい。また、定着ドラム84の表面を所定の温度(たとえば60℃)に制御するようにしてもよい。
一方、インラインセンサ90は、記録媒体24に定着された画像について、チェックパターンや水分量、表面温度、光沢度などを計測するための計測手段であり、CCDラインセンサなどが適用される。
上記の如く構成された定着部20によれば、乾燥部18で形成された薄層の画像層内のラテックス粒子が定着ローラ88によって加熱加圧されて溶融されるので、記録媒体24に固定定着させることができる。また、定着部20によれば、定着ドラム84が他のドラムに対して構造上分離されているので、定着部20の温度設定を、描画部16や乾燥部18と分離して自由に設定することができる。
また、定着ドラム84の表面温度は50℃以上に設定されている。定着ドラム84の外周面に保持された記録媒体24を裏面から加熱することによって乾燥が促進され、定着時における画像破壊を防止することができるとともに、画像温度の昇温効果によって画像強度を高めることができる。
なお、定着ドラム84の表面温度の上限については特に限定されるものではないが、メンテナンス性の観点から75度以下(より好ましくは60℃以下)に設定されることが好ましい。
また、画像中の水分を揮発させ、高沸点有機溶剤を画像中に適量濃縮させた状態(具体的には、画像中に高沸点有機溶剤がインク打滴量の4%以上残存している状態)にしておくと、画像破壊を起こさない程度の強度を有しつつ、定着時に定着ローラ(加熱加圧部材)88の表面に対して変形しやすくなるので好ましい。さらに、画像中にバインダー成分を含む場合は、画像を予め加熱しておくと同様に、定着ローラ88の表面に対して、画像の追随性を期待でき、定着ムラをより効果的に防止できる。
ここで、「画像中に高沸点有機溶剤がインク打滴量の4%以上残存している状態」とは、定着処理時のタイミングにおける、インク打滴量に対する記録媒体表面に存在する画像中の高沸点有機溶剤の残留量の割合が4%以上である状態をいう。
このように構成された定着ドラム84の外周面に、記録媒体24の記録面が外側を向くように(即ち、記録媒体24の記録面が凸側となるように湾曲させた状態で)保持し、回転搬送しながら加熱加圧して定着させることで、水分を乾燥しきれず、多少のコックリングが発生しうる状態であっても、コックリングを矯正することが可能となる。
また、パルプ繊維の膨潤により記録媒体24の表面(記録面)に凹凸を発生させようとする力に対して、記録媒体24の表面を引き伸ばし、コックリングで発生する凹凸を緩和し平滑化した状態で定着ローラ(加熱加圧部材)88により定着できるので、コックリングに起因する定着ムラの発生を防止することができる。
(排出部)
図1に示すように、定着部20に続いて排出部22が設けられている。排出部22は、排出トレイ92を備えており、この排出トレイ92と定着部20の定着ドラム84との間に、これらに対接するように渡し胴94、搬送ベルト96、張架ローラ98が設けられている。記録媒体24は、渡し胴94により搬送ベルト96に送られ、排出トレイ92に排出される。
両面印刷を行う場合は、片面の印刷が終わった記録媒体24を排出トレイ92から給紙部12に戻し、記録媒体24を反転させて再度給紙を行う。排出部22から給紙部12へと記録媒体24を搬送する手段や記録面を反転させる手段については、自動の搬送機構、反転機構を備える態様が可能である。
(インクジェットヘッドの構造)
次に、各インクジェットヘッドの構造について説明する。なお、各色に対応するインクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号150によってインクジェットヘッド(以下、単に「ヘッド」ともいう。)を示すものとする。
図3(a)はヘッド150の構造例を示す平面透視図であり、図3(b)はその一部の拡大図であり、図3(c)はヘッド150の他の構造例を示す平面透視図である。また、図4は記録素子単位となる1チャンネル分の液滴吐出素子(1つのノズル151に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図3中の4−4線に沿う断面図)である。 記録媒体24上に形成されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド150におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド150は、図3(a)、(b)に示すように、インク吐出口であるノズル151と、各ノズル151に対応する圧力室152等からなる複数のインク室ユニット153を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(記録媒体24の搬送方向と直交する方向;主走査方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
記録媒体24の搬送方向(副走査方向)と略直交する方向(主走査方向)に記録媒体24の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図3(a)の構成に代えて、図3(c)に示すように、複数のノズル151が2次元に配列された短尺のヘッドモジュール150’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで長尺化することにより、全体として記録媒体24の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。また、図示は省略するが、短尺のヘッドを一列に並べてラインヘッドを構成してもよい。
各ノズル151に対応して設けられている圧力室152は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部の一方にノズル151が設けられ、他方に供給口154が設けられている。なお、圧力室152の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
各圧力室152は供給口154を介して共通流路155と連通されている。共通流路155はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路155を介して各圧力室152に供給される。
圧力室152の一部の面(図4において天面)を構成し、且つ、共通電極と兼用される振動板156には、個別電極157を備えた圧電素子158が接合されている。なお、樹脂などの非導電性材料によって振動板を形成する態様も可能であり、この場合は、振動板部材の表面に金属などの導電材料による共通電極層が形成される。
個別電極157に駆動電圧を印加することによって圧電素子158が変形して圧力室152の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル151からインクが吐出される。インク吐出後、圧電素子158が元の状態に戻る際、共通流路155から供給口154を通って新しいインクが圧力室152に再充填される。
本例では、ヘッド150に設けられたノズル151から吐出させるインクの吐出力発生手段として圧電素子158を適用したが、圧力室152内にヒータを備え、ヒータの加熱による膜沸騰の圧力を利用してインクを吐出させるサーマル方式を適用することも可能である。
かかる構造を有するインク室ユニット153を図3(b)に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
即ち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット153を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向については、実質的に各ノズル151が一定のピッチPN=d× cosθで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。
なお、本発明の実施に際してヘッド150におけるノズル151の配列形態は図示の例に限定されず、様々なノズル配置構造を適用できる。例えば、図3で説明したマトリクス配列に代えて、一列の直線配列、V字状のノズル配列、V字状配列を繰り返し単位とするジグザク状(W字状など)のような折れ線状のノズル配列なども可能である。 上述のように、記録媒体24の画像形成領域の全幅をカバーするノズル列を有するフルラインヘッドがインク色毎に設けられる構成によれば、描画ドラム70によって記録媒体24を一定の速度で搬送し、この搬送方向(副走査方向)について、記録媒体24と各インクジェットヘッド72M、72K、72C、72Yを相対的に移動させる動作を1回行うだけで(即ち1回の副走査で)、記録媒体24の画像形成領域に画像を記録することができる。かかるフルライン型(ページワイド)ヘッドによるシングルパス方式の画像形成は、記録媒体の搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシリアル(シャトル)型ヘッドによるマルチパス方式を適用する場合に比べて高速印字が可能であり、プリント生産性を向上させることができる。
なお、本発明の適用範囲はライン型ヘッドによる印字方式に限定されず、記録媒体24の幅方向(主走査方向)の長さに満たない短尺のヘッドを記録媒体24の幅方向に走査させて当該幅方向の印字を行い、1回の幅方向の印字が終わると記録媒体24の幅方向と直交する方向(副走査方向)に所定量だけ移動させて、次の印字領域の記録媒体24の幅方向の印字を行い、この動作を繰り返して記録媒体24の印字領域の全面にわたって印字を行うシリアル方式を適用してもよい。
(制御系の説明)
図5は、インクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース170、システムコントローラ172、メモリ174、モータドライバ176、ヒータドライバ178、プリント制御部180、画像バッファメモリ182、ヘッドドライバ184等を備えている。
通信インターフェース170は、ホストコンピュータ186から送られてくる画像データを受信する画像入力手段として機能するインターフェース部である。通信インターフェース170にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ186から送出された画像データは通信インターフェース170を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦メモリ174に記憶される。
メモリ174は、通信インターフェース170を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ172を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ174は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ172は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。即ち、システムコントローラ172は、通信インターフェース170、メモリ174、モータドライバ176、ヒータドライバ178、処理液付与制御部196、乾燥制御部197、定着制御部198等の各部を制御し、ホストコンピュータ186との間の通信制御、メモリ174の読み書き制御等を行うとともに、上記の各部を制御する制御信号を生成する。
メモリ174には、システムコントローラ172のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。なお、メモリ174は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。メモリ174は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
プログラム格納部190には各種制御プログラムが格納されており、システムコントローラ172の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。プログラム格納部190はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。外部インターフェースを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらの記録媒体のうち、複数の記録媒体を備えてもよい。なお、プログラム格納部190は動作パラメータ等の記録手段(不図示)と兼用してもよい。
モータドライバ176は、システムコントローラ172からの指示にしたがってモータ188を駆動するドライバである。図5には、装置内の各部に配置されるモータを代表して符号188で図示されている。例えば、図5に示すモータ188には、図1に示す給紙胴52、処理液ドラム54、描画ドラム70、乾燥ドラム76、定着ドラム84、渡し胴94などの回転を駆動するモータ、第1〜第3中間搬送部26、28、30の胴の回転を駆動するモータなどが含まれている。
ヒータドライバ178は、システムコントローラ172からの指示にしたがって、ヒータ189を駆動するドライバである。図5には、装置内の各部に配置されるヒータを代表して符号189で図示されている。例えば、図5に示すヒータ189には、図1に示す乾燥部18に設けられる溶媒乾燥装置78のハロゲンヒータ80などが含まれている。さらに、図1に示す乾燥ドラム76、定着ドラム84の表面を加熱するヒータも含まれている。
また、このインクジェット記録装置10は、処理液付与制御部196、乾燥制御部197、及び定着制御部198を備えており、システムコントローラ172からの指示にしたがって、それぞれ、処理液塗布装置56、溶媒乾燥装置78、及び定着ローラ88の各部の動作を制御する。
プリント制御部180は、システムコントローラ172の制御に従い、メモリ174内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッドドライバ184に供給する制御部である。プリント制御部180において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいて、ヘッドドライバ184を介してヘッド150の吐出液滴量(打滴量)や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
また、プリント制御部180には画像バッファメモリ182が備えられており、プリント制御部180における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ182に一時的に格納される。また、プリント制御部180とシステムコントローラ172とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ184は、プリント制御部180から与えられる画像データに基づいてヘッド150の圧電素子158に印加される駆動信号を生成するとともに、該駆動信号を圧電素子158に印加して圧電素子158を駆動する駆動回路を含んで構成される。なお、図5に示すヘッドドライバ184には、ヘッド150の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
センサ185は、装置内の各部に設けられる各種センサ類であり、図1に示したインラインセンサ90の他、温度センサ、位置検出センサ、圧力センサ、紙種・用紙サイズ検出センサ等が含まれている。センサ185の出力信号はシステムコントローラ172に送られ、システムコントローラ172は該出力信号に基づいて装置各部に対して制御信号を送り、装置各部の制御が行われている。
本例の場合、印刷に使用する記録媒体24のサイズの情報は、システムコントローラ172に入力され、クリーニングシートの供給の制御が行われる。つまり、システムコントローラ172は、クリーニングシート供給制御手段として機能する。
記録媒体24のサイズの情報を取得する手段としては、用紙サイズ検出センサや用紙トレイ選択信号などから自動的に取得する形態や、ユーザが所定の入力装置(ユーザインターフェース)等を操作して入力する構成も可能である。
<記録媒体への離型オイルの付着を防止する方法について>
上述したように、インクジェットヘッドによる画像形成を終えたシート状(枚葉)の記録媒体24を定着ドラム84に巻き付けて保持し、当該定着ドラム84を回転させながら定着ローラ88を画像面に押し当てて定着を行う場合、定着ローラ88の表面に塗布した離型オイルが定着ドラム84の非通紙部分に付着することになる。
そのため、印刷に使用する記録媒体のサイズを変更して、変更前のサイズよりも大きなサイズの記録媒体を用いることとした場合、変更前の小サイズの記録媒体を使用していたときに定着ドラム84の非通紙部分に付着(残余)している離型オイルが問題となる。
仮に、このまま大きいサイズの記録媒体を給紙して当該記録媒体に画像を形成した場合、定着ドラム84上の離型オイルが記録媒体の裏面に付着する。このため、特に、当該記録媒体に両面印刷を行う際には、記録媒体に付着したオイルの影響で処理液及びインクが弾いてしまい、良好な画像を形成できないという問題がある。
このような課題に対し、本実施形態では、記録媒体のサイズを大きなサイズに変更した際に、その大サイズの印刷を行う前に、クリーニングシートを通紙することにより、定着ドラム84上の離型オイルを除去する。クリーニングシートは、サイズ変更後の大サイズの記録媒体と同等以上のサイズのものを用い、好ましくは定着ローラ88のローラ幅以上のシート幅を有するものとする。
これにより、目的の画像を印刷するために用いる大サイズの記録媒体の裏面に離型オイルが付着するのを防止することができ、良好に両面印刷を行うことが可能となる。
<クリーニングシートによる離型オイルの除去性と通紙性について>
表1は、クリーニングシートの浸透性(ここでは水に対するブリスト浸透係数で評価)と、離型オイルの除去性及び通紙性の関係について調べた実験結果である。
本実験において離型オイルの除去性は、クリーニングシートを5枚通紙した後に、記録媒体を通紙して当該記録媒体裏面へ塗布した下塗液(処理液)の塗布性で評価した。
表1の離型オイル除去性に関して、「○」は5枚の通紙で良好に離型オイルを除去できたことを示す。「△」は5枚の通紙ではNGであるが、10枚の通紙を行った場合に良好に離型オイルを除去できたことを示す。「×」は10枚通紙してもNGであったことをしめす。
また、表1の通紙性に関して、「○」は良好に通紙できたことを示す。「×」は1/5ほどの確率で通紙不良(クリーニングシートの破れなど)が発生したことを示す。「××」はほぼ毎回通紙不良が発生したことを示す。
なお、本実験では、クリーニングシートの浸透性を簡便に調べる指標として水に対するブリスト浸透係数を用いた。ブリスト浸透係数が大きいほど、よく液を吸い取るものであり、この値が小さいと、液を吸い取る能力(つまり、離型オイルの除去能力)は低いものとなる。
しかしながら、逆に、ブリスト浸透係数の値が大きすぎると、液を吸い取りすぎてクリーニングシートが定着ドラム84に張り付いてしまう。つまり、液が染み込みやすいシートほど、繊維間距離が広いものとなるため、シートの強度としては脆いものとなる傾向にある。
したがって、グリッパー85で咥えてクリーニングシートを搬送しようとするとき、オイルを多く吸収して定着ドラム84に張り付いてしまっていると、定着ドラム84から離れ難く、当該クリーニングシートの強度が脆くなることから、ちぎれたりすることがある。このように、ブリスト浸透係数の値が大きすぎるものは、通紙性が悪くなる。
表1によれば、離型オイルの除去性に関しては、ブリスト浸透係数が0.1[ml/(m2・msec1/2)]以上であることが好ましく、0.20[ml/(m2・msec1/2)]以上であることがより好ましい。
ブリスト浸透係数が0.20[ml/(m2・msec1/2)]以上の場合、クリーニングシートを5枚通紙することにより、記録媒体裏面への下塗り液(処理液)を良好に塗布することが可能であった。
また、通紙性に関しては、ブリスト浸透係数が0.50[ml/(m2・msec1/2)]以下であることが好ましい。ブリスト浸透係数が0.50[ml/(m2・msec1/2)]を超えると、クリーニングシートが離型オイルを吸収し過ぎ、シートが圧胴(定着ドラム84)から剥がれ難くなってしまい、破れてしまうなどの通紙不良が発生してしまう。
したがって、オイル除去性と通紙性を両立させるため、ブリスト浸透係数が0.1[ml/(m2・msec1/2)]以上0.5[ml/(m2・msec1/2)]以下であるクリーニングシートを用いることが好ましく、0.2[ml/(m2・msec1/2)]以上0.5[ml/(m2・msec1/2)]以下であることがより好ましい。
図6はクリーニングシートの通紙枚数と処理液の塗布ムラの関係を調べたグラフである。
横軸は通紙枚数を表し、縦軸は処理液の塗布ムラ(すなわち離型オイルの除去性)の評価を表している。「○」は塗布ムラが無く、良好に塗布されていることを示す。「△」は若干の塗布ムラはあるが許容できるレベルであることを示す。「×」は塗布ムラがNGレベルであることを示す。
ブリスト浸透係数の異なる複数種類のクリーニングシート(ここでは、4種類)について、それぞれ通紙枚数と処理液の塗布ムラを評価した結果が図6である。
図6によれば、ブリスト浸透係数が高いものほど、少ない通紙枚数で塗布ムラを許容レベルにすることが可能である。
<クリーニングシートの通紙枚数の制御について>
定着ドラム84に付着する離型オイルの量は、記録媒体サイズが変更される前の小サイズの記録媒体の印刷枚数、通紙時間と相関がある。即ち、印刷枚数が多いほど、定着ドラム84に付着する離型オイルの量は多く、通紙時間が長いほど、定着ドラム84に付着する離型オイルの量は多くなる傾向にあり、ある枚数(時間)を超えると飽和する。
したがって、記録媒体サイズが変更される前の小サイズの記録媒体の印刷枚数及び/又は通紙時間に応じて、クリーニングシートの通紙枚数を制御する態様が好ましい。例えば、印刷枚数と離型オイルの付着量の関係を実験的に調べ、各量のオイル除去に必要な通紙枚数のテーブルを記憶しておく。そして、記録媒体を大サイズに変更した際に、その変更前の小サイズの記録媒体の印刷枚数に基づき、テーブルを参照してクリーニングシートの通紙枚数を決定し、当該枚数のクリーニングシートを通紙するようにクリーニングシートの供給を制御する。
同様に、通紙時間と離型オイルの付着量の関係、或いは、印刷枚数と通紙時間の組合せと離型オイルの付着量の関係を実験的に調べ、各量のオイル除去に必要な通紙枚数のテーブルを記憶しておき、サイズ変更前の小サイズの記録媒体の通紙時間、或いは、印刷枚数と通紙時間の組合せに基づき、テーブルを参照してクリーニングシートの通紙枚数を決定してもよい。
上述した本実施形態に係るインクジェット記録装置10によれば、記録媒体サイズを小サイズから大サイズへと変更する際に、クリーニングシートを通紙し、定着ドラム84上の離型オイルを除去することにより、記録媒体裏面へのオイル付着が防止される。このため、当該裏面への処理液の塗布ムラが改善され、良好な両面印刷を実現することができる。
<インクについて>
本発明の実施に用いられるインクは、溶媒不溶性材料として、色材(着色剤)である顔料やポリマー微粒子などを含有する水性顔料インクが用いられる。
溶媒不溶性材料の濃度は、吐出に適切な粘度20mPa・s以下を考慮して1wt%以上20wt%以下であることが好ましい。より好ましくは画像の光学濃度を得るために4wt%以上の顔料濃度である。
インクの表面張力は、吐出安定性を考慮して20mN/m以上40mN/m以下であることが好ましい。
インクに使用される色材は、顔料あるいは染料と顔料とを混合して用いることができる。処理液との接触時における凝集性の観点から、インク中で分散状態にある顔料の方がより効果的に凝集するため好ましい。顔料の中でも、分散剤により分散されている顔料、自己分散顔料、樹脂により顔料表面を被覆された顔料(マイクロカプセル顔料)、及び高分子グラフト顔料が特に好ましい。また、顔料凝集性の観点から、解離度の小さいカルボキシル基によって修飾されている形態がより好ましい。
本発明に用いる着色インク液には、処理液と反応する成分として、着色剤を含まないポリマー微粒子を添加することが好ましい。ポリマー微粒子は、処理液との反応によりインクの増粘作用、凝集作用を強め、画像品位の向上させることができる。特に、アニオン性のポリマー微粒子をインクに含有せしめることにより、安全性の高いインクが得られる。
処理液と反応して、増粘・凝集作用を起こすポリマー微粒子をインクに用いることにより、画像の品位を高めることができると同時に、ポリマー微粒子の種類によっては、ポリマー微粒子が記録媒体で皮膜を形成し、画像の耐擦性、耐水性をも向上させる効果を有する。
ポリマーインクでの分散方法はエマルジョンに限定するものではなく、溶解していても、コロイダルディスパージョン状態で存在していてもよい。
ポリマー微粒子は、乳化剤を用いてポリマー微粒子を分散させたものであっても、また、乳化剤を用いないで分散させたものであってもよい。乳化剤としては、通常、低分子量の界面活性剤が用いられているが、高分子量の界面活性剤を乳化剤として用いることもできる。外殻がアクリル酸、メタクリル酸などにより構成されたカプセル型のポリマー微粒子(粒子の中心部と外縁部で組成を異にしたコア・シェルタイプのポリマー微粒子)を用いることも好ましい。
インクにポリマー微粒子として添加する樹脂成分としては、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂などが挙げられる。
ポリマー微粒子への高速凝集性付与の観点から、解離度の小さいカルボン酸基を有するものがより好ましい。カルボン酸基はpH変化によって影響を受けやすいので、分散状態が変化しやすく、凝集性が高い。
ポリマー微粒子のpH変化に対する分散状態の変化は、アクリル酸エステルなどのカルボン酸基を有する、ポリマー微粒子中の構成成分の含有割合によって調整することができ、分散剤として用いるアニオン性の界面活性剤によっても調整可能である。
ポリマー微粒子の樹脂成分は、親水性部分と疎水性部分とを併せ持つ重合体であるのが好ましい。疎水性部分を有することで、ポリマー微粒子の内側に疎水部分が配向し、外側に親水部分が効率よく外側に配向され、液体のpH変化に対する分散状態の変化がより大きくなる効果があり、凝集がより効率よく行われる。
また、ポリマー微粒子を、インク内に2種以上混合して含有させて使用してもよい。
本発明のインクに添加するpH調整剤としては中和剤として、有機塩基、無機アルカリ塩基を用いることができる。pH調整剤はインクジェット用インクの保存安定性を向上させる目的で、該インクジェット用インクがpH6〜10となるように添加するのが好ましい。
本発明のインクは、乾燥によってインクジェットヘッドのノズルが詰まるのを防止する目的から、水溶性有機溶媒を含有することが好ましい。このような水溶性有機溶媒には、湿潤剤及び浸透剤が含まれる。
水溶性有機溶媒としては、処理液の場合と同様に、例えば、多価アルコール類、多価アルコール類誘導体、含窒素溶媒、アルコール類、含硫黄溶媒等が挙げられる。
その他必要に応じ、界面活性剤、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、等も添加することができる。
<処理液について>
本発明の実施に際して用いる処理液(凝集処理液)として、インクのpHを変化させることにより、インクに含有される顔料およびポリマー微粒子を凝集させ、凝集物を生じさせるような処理液が好ましい。
処理液の成分として、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ビリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等の中から選ばれることが好ましい。
また、処理液の好ましい例として、多価金属塩あるいはポリアリルアミンを添加した処理液を挙げることができる。これらの化合物は、1種類で使用されてもよく、2種類以上併用されてもよい。
処理液はインクとのpH凝集性能の観点からpHは1〜6であることが好ましく、pHは2〜5であることがより好ましく、pHは3〜5であることが特に好ましい。
また、処理液は、乾燥によってインクジェットヘッドのノズルが詰まるのを防止する目的から、水、その他添加剤溶性有機溶媒を含有することが好ましい。このような水、その他添加剤溶性有機溶媒には、湿潤剤及び浸透剤が含まれる。これらの溶媒は、水,その他添加剤と共に単独若しくは複数を混合して用いることができる。
処理液には、定着性および耐擦性を向上させるため、樹脂成分を更に含有してもよい。樹脂成分は、処理液をインクジェット方式によって打滴する場合ヘッドからの吐出性を損なわないもの、保存安定性があるものであればよく、水溶性樹脂や樹脂エマルジョンなどを自由に用いることができる。
その他必要に応じ、界面活性剤、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線、吸収剤、等も添加することができる。
<実施形態の変形例1>
図1では、定着ローラ88に対向する媒体保持手段として、円柱面に記録媒体24を巻き付けて保持する定着ドラム84を例示したが、ドラム状のプラテンに限らず、平板形状のパレット、ベルトなどを採用することも可能である。
<実施形態の変形例2>
図1では、定着ローラ88の離型オイルが定着ドラム84の非通紙部分に付与することによる問題を解消する例を述べたが、定着ローラに限らず、他のローラ部材についても、同様の問題が発生する場合に、本発明を適用できる。
<実施形態の変形例3>
図1では、記録媒体24の片面のみに印刷を行うインクジェット記録装置10(片面機)を例示し、同装置によって両面印刷を実施する形態を説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されない。例えば、図1で説明した片面機の構成を2台つなげて、その間に用紙反転機構を設けた両面印刷機についても本発明を適用することができる。
<他の装置構成への適用例>
上記の実施形態では、印刷用のインクジェット記録装置への適用を例に説明したが、本発明の適用範囲はこの例に限定されない。例えば、電子回路の配線パターンを描画する配線描画装置、各種デバイスの製造装置、吐出用の機能性液体として樹脂液を用いるレジスト印刷装置、マテリアルデポジション用の材料を用いて微細構造物を形成する微細構造物形成装置など、液状機能性材料を用いて様々な形状やパターンを得るインクジェット記録装置にも広く適用できる。
<付記>
上記に詳述した実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
(発明1):記録媒体に付着させるインクを吐出して前記記録媒体上に画像を形成するインクジェットヘッドと、前記画像が形成された前記記録媒体の当該画像の記録面に接触して回転するローラ部材と、前記ローラ部材へのインク付着を抑制するオイルを前記ローラ部材に供給するオイル供給手段と、前記オイルが付与された前記ローラ部材を前記記録媒体の前記記録面に接触させる際に当該記録媒体が保持される媒体保持手段と、前記記録媒体のサイズが変更され、変更前に使用していた記録媒体のサイズに比べて大サイズの記録媒体に画像を形成することになった場合に、前記媒体保持手段の媒体保持面に付着している前記オイルを除去するためのクリーニングシートを前記媒体保持手段に供給するクリーニングシート供給手段と、を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
本発明によれば、記録媒体サイズの変更時に、クリーニングシートによって媒体保持手段の媒体保持面上のオイルを除去するため、サイズ変更後の大サイズの記録媒体裏面へのオイル付着を防止することができる。これにより、オイルに起因する処理液の塗布ムラやインクの弾きによる画像不良を防止できる。
「記録媒体」は、連続用紙、カット紙、シール用紙、OHPシート等の樹脂シート、フイルム、布、配線パターン等が形成されるプリント基板、中間転写媒体、その他材質や形状を問わず、様々な媒体を含む。
搬送手段の形態には、円筒形状を有し、所定の回転軸の周りを回転可能に構成された搬送ドラム(搬送ローラ)や、搬送ベルトなどの形態が挙げられる。
(発明2):発明1に記載のインクジェット記録装置において、前記クリーニングシートの水に対するブリスト浸透係数が0.1[ml/(m2・msec1/2)]以上0.5[ml/(m2・msec1/2)]以下であることを特徴とするインクジェット記録装置。
発明2の態様は、オイル除去性と通紙性を両方同時にバランスよく満たす条件として好ましい。
(発明3):発明1又は2に記載のインクジェット記録装置において、前記変更前に使用していた記録媒体の印刷枚数及び通紙時間のうち少なくとも一つに応じて前記クリーニングシートの通紙枚数を制御するクリーニングシート供給制御手段を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
ローラ部材から媒体保持手段に付着するオイルの量は、サイズ変更前に使用していた記録媒体の印刷枚数やその通紙時間と相関があるため、サイズ変更前の印刷枚数や通紙時間に応じてクリーニングシートの通紙枚数を制御することによって、目的のクリーニング効果を達成しつつ、クリーニングシートの消費量を適正化できる。
(発明4):発明1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、前記ローラ部材は、前記記録媒体に形成された画像を定着させるヒートローラであることを特徴とするインクジェット記録装置。
画像定着部に配置されるヒートローラ(定着ローラ)について本発明を適用することができる。
(発明5):発明1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、前記媒体保持手段はドラム形状を有し、その円柱面に前記記録媒体を巻き付けて保持する構成であることを特徴とするインクジェット記録装置。
本発明は、ドラム形状を有する媒体保持手段を用いる構成に好適である。
(発明6):発明1乃至5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、前記大サイズの記録媒体は、その両面に画像が形成されるものであり、前記記録媒体のサイズを前記大サイズに変更後、最初に当該大サイズの記録媒体に画像を形成する前に、前記クリーニングシートが通紙されることを特徴とするインクジェット記録装置。
本発明は、両面印刷を行う場合に特に効果的であり、記録媒体の裏面側についても良好な画像を形成することが可能である。
(発明7):発明1乃至6のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、前記インクと反応する処理液を前記記録媒体に付与する処理液付与手段を備え、前記処理液が付与された前記記録媒体に対して前記インクジェットヘッドからインクが吐出されることを特徴とするインクジェット記録装置。
発明7の態様によれば、記録媒体裏面へのオイル付着が防止されるため、同裏面への処理液の塗布ムラが改善され、良好な画像形成が可能となる。
(発明8):発明1乃至7のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、前記クリーニングシートとして、大サイズの記録媒体と同等以上のサイズの記録媒体が用いられることを特徴とするインクジェット記録装置。
クリーニングシートとしての必要な物性値を満たせば、印刷用の記録媒体をクリーニングシートとして兼用することが可能である。
(発明9):インクジェットヘッドから吐出したインクを記録媒体に付着させて前記記録媒体上に画像を形成するインクジェット画像形成工程と、前記画像が形成された前記記録媒体の当該画像の記録面に接触して回転するローラ部材へのインク付着を抑制するオイルを前記ローラ部材に供給するオイル供給工程と、前記画像が形成された前記記録媒体を媒体保持手段に保持した状態で当該記録媒体の前記記録面に、前記オイルの付与された前記ローラ部材を接触させるローラ接触工程と、前記記録媒体のサイズが変更され、変更前に使用していた記録媒体のサイズに比べて大サイズの記録媒体に画像を形成することになった場合に、前記媒体保持手段の媒体保持面に付着している前記オイルを除去するためのクリーニングシートを前記媒体保持手段に供給するクリーニングシート供給工程と、を含むことを特徴とするインクジェット記録方法。
(発明10):発明9に記載のインクジェット記録方法において、前記クリーニングシートの水に対するブリスト浸透係数が0.1[ml/(m2・msec1/2)]以上0.5[ml/(m2・msec1/2)]以下であることを特徴とするインクジェット記録方法。