JP2010174983A - 揺動型歯車装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】二対の歯車対のうちの一方のみによって減速するようにした、一段減速の揺動型歯車装置において、減速歯車対における凸状歯と凹状歯との噛み合い剛性を高めて、歯飛びを防止する。
【解決手段】第1ないし第4の四つの円錐傘歯車A1〜A4のうち、固定歯車である第1歯車A1とこれに噛み合う第2歯車A2との間に歯数差を設けて、減速歯車対とする一方、出力歯車である第4歯車A4とこれに噛み合う第3歯車A3との間には歯数差を設けず、非減速の歯車対とする。第2歯車A2の凹状歯5の深さL2を相対的に深くすることによって凸状歯4(コロ4a)と深く噛み合わせ、両者の噛み合い剛性を高めて歯飛びを防止する。
【選択図】 図3

Description

本発明は、遊星歯車に相当する回転体を入力軸の傾斜部に取り付けて、これを揺動させつつ回転させるようにした揺動型歯車装置に関する。
従来より、この種の揺動型歯車装置は傾斜歯車減速機とも呼ばれ、その原理は知られていたが、互いに噛み合う歯車対の歯形を、高精度かつ低コストでの生産が困難な球面インボリュート歯形とする必要があり、実用化には至っていない。この点につき本発明の発明者は、球面インボリュート歯形に替えて、歯車対の一方の歯形をローラ状のコロによって構成した凸状歯とし、他方の歯形はコロに噛み合う凹状歯とすることを提案している(例えば特許文献1を参照)。
この提案に係わる揺動型歯車装置の概略構成および基本的な作動について図7を参照して説明する。図の例では四つの円錐傘歯車A1〜A4が設けられ、ハウジング6に固定された第1歯車A1と、出力軸2に取り付けられた第4歯車A4とが、互いに対向して入力軸1と同心状に配置されている。それらの中間において入力軸1には回転体3が支承され、この回転体3の軸方向両端にそれぞれ、前記第1歯車A1に噛み合う第2歯車A2と、前記第4歯車A4に噛み合う第3歯車A3と、が設けられている。
前記回転体3は、入力軸1の軸芯Gに対し所定角度の傾斜軸芯Hを有する傾斜部1aに回転自在に支承されている(その傾斜角度は、互いに噛み合う歯車対の各歯車間の歯数差、即ち基準ピッチ円直径の差に対応した偏心量になるように設定されている)。そうして傾斜部1aに支承されている回転体3は、入力軸1の回転により傾斜部1aが首振り運動をすると、この周りを揺動しながら回転して第2歯車A2を第1歯車A1に、また、第3歯車A3を第4歯車A4にそれぞれ噛み合わせていく。
このとき、回転体3の回転数は第1および第2歯車A1,A2の噛み合いによって規定され、第2歯車A2が1周期の揺動運動(入力軸1の1回転)について、第1歯車A1との歯数差に相当する分だけ該第1歯車A1に対し回転することによって減速がなされる。同様に第3歯車A3と第4歯車A4との間でも歯数差に応じた減速を行うことが可能であり、こうすれば二段階の減速がなされる。
そうして二対の歯車対にそれぞれ歯数差を与えて、二段階の減速を行うようにすると、これによるトータルの減速比R、即ち入力軸1が1回転するときの出力軸2の回転数は、第1ないし第4歯車A1〜A4のそれぞれの歯数をn1〜n4として、 R=1−(n1×n3)/(n2×n4) と表される。
より具体的に、n1=99、n2=100、n3=101、n4=100とすると、減速比R=1/10000となるし、n1=9、n2=10、n3=11、n4=10とすれば、減速比R=1/100となる。このように四つの歯車の歯数をそれぞれ任意に設定することによって高減速から低減速までの幅広い減速比が得られる。尚、そうして第1、第2歯車A1,A2の歯数差を1とすると、揺動運動の1周期につき両歯車A1,A2間で噛み合う歯が1つずれることになる。
また、前記提案に係わる揺動型歯車装置の特徴は、上述したように各歯車A1〜A4の噛み合い部にコロ4aを介在させたことにあり、このコロ4aの転動によって噛み合い摩擦を吸収することができる。図8に模式的に示すように、コロ4aは、第1歯車A1(第4歯車A4)に形成された凹溝4bに転動自在に配設されていて、この凹溝4bから突出する部分が概略半円柱状の凸状歯4を形成している。一方、第2歯車A2(第3歯車A3)には、断面半円形状の凹溝からなる凹状歯5が形成されている。
そして、前記のように揺動運動を行う回転体3が図に矢印Bで示すように回転すると、第2歯車A2(第3歯車A3)は矢印Cで示す方向に移動し、各凹状歯5と凸状歯4とを順に噛み合わせていく。このとき各凹状歯5と凸状歯4との間に生ずる摺動摩擦は、コロ4aの転動によって吸収されるようになり、コロ4aによる噛み合いに一定の与圧を与えてバックラッシュをゼロにすれば、噛み合い部の摩擦抵抗を低減し伝達効率と位置決め精度を高めることができる。
ところで、この種の揺動型歯車装置は、上述の如く二対の歯車対にそれぞれ歯数差を与えて二段階の減速を行うこともできるが、比較的低い減速比の場合において二段階の減速を行うようにすると、原理的に入力軸1の傾斜部1aの傾斜角を大きく設定せざるを得なくなり、これに伴い回転体3の揺動運動の振幅が大きくなって、振動や騒音が大きくなるきらいがある。
この点につき本発明の発明者は、第1歯車A1および第2歯車A2の間には歯数差を与えて減速歯車対とする一方で、第3および第4歯車の間には歯数差を与えず、これは非減速の歯車対とした一段減速の揺動型歯車装置について検証し、実際に回転体の揺動運動の振幅が小さくなって振動騒音の低減に有利になることを特許文献2に開示している。
特公平7−56324号公報 特開2008−303906号公報
ところで上述した揺動型歯車装置では、第1および第2歯車A1,A2と第3および第4歯車A3,A4とが、回転体3の軸方向の各端面において180度の位相差を持って部分的に噛み合うことから、その回転体3の噛み合い位置には傘歯車A2,A3の回転中心線(傾斜軸芯H)に沿う方向のアキシャル力が作用し合い、歪みが生じることによって噛み合いが不適切になることがあるばかりか、過大な負荷がかかった場合には噛み合いが外れる(歯飛び)虞れもあった。
この点について本発明者は、前記後者の例(特許文献2)のように一段減速とした揺動型歯車装置について実験研究を重ねた結果、過負荷のかかったときに歯飛びの発生するのが、決まって減速歯車対である第1および第2歯車A1,A2の間であることを見出した。これは、減速歯車対の場合、凹状歯5の開口付近に凸状歯4(コロ4a)との干渉を回避するための干渉除去部が設けられており、この干渉除去部におけるコロ4aとの接触(噛み合い)によってアキシャル力が大きくなることによると考えられる。
このことを、後述する実施形態に係わる図4を参照して説明すると、減速歯車対である第1および第2歯車A1,A2は歯数が異なり、両者の軸芯同士が偏心した状態で噛み合うことになるので、最大噛み合い位置以外では歯すじ方向の母線が交差して、凸状歯4(コロ4a)と凹状歯5とが互いに捻れるような位置関係になる。このため、基本的には単純な円弧歯形である凹状歯5の開口付近からコロ4aとの干渉部を取り除いて、干渉除去部を設けなくてはならない。
そうして凹状歯5の開口付近に設けられている干渉除去部には、前記の如く捻れの位置関係でコロ4aが接触することになるが、この干渉除去部においては歯面の傾斜が緩くなることから、ここに接触するときにはコロ4aに作用する荷重Pの向きが変わり(図6(b)を参照)、その分力であるアキシャル力Fが相対的に大きくなって、歯飛びが起きやすくなるのである。
さらに、非減速の歯車対となる第3および第4歯車A3,A4においては、凹状歯5に干渉除去部は設けられておらず、相対的にアキシャル力が小さくなる結果、回転体3全体としてはアキシャル力に不均衡が生じて、減速歯車対の側から非減速歯車対の側に押されるようになり、このことによっても減速歯車対において歯飛びしやすくなると考えられる。
斯かる新規な知見に基づいて、本発明の目的は、二対の歯車対のうち一方のみによって減速するようにした一段減速の揺動型歯車装置において、その減速歯車対における凸状歯と凹状歯との噛み合い剛性を高めて、歯飛びの防止を図ることにある。
前記の目的を達成すべく本発明では、アキシャル力の大きくなりやすい減速歯車対において凹状歯を相対的に深く形成し、凸状歯との噛み合いが深くなるようにした。
すなわち、本願の請求項1に係わる発明は、四つの円錐傘歯車を備え、歯数n1の固定歯車としての第1歯車と、歯数n4の出力歯車としての第4歯車とを、互いに対向させて入力軸と同心状に配置するとともに、歯数n2の第2歯車および歯数n3の第3歯車が一体に設けられた回転体を、その第2歯車が前記第1歯車と噛み合い且つ第3歯車が前記第4歯車と噛み合うようにして、前記入力軸上の傾斜部に回転自在に支承し、この入力軸の回転によりその傾斜部において前記回転体が揺動運動を行うように構成した揺動型歯車装置を対象とする。
そして、前記第1歯車および第4歯車は、ピッチ円錐上において等間隔で歯車中心から放射状に延びる断面半円状の複数の凹溝と、この各凹溝内に転動自在に配置された円柱状のコロとからなる、等高歯としての凸状歯を備える一方、前記第2および第3歯車は、前記凸状歯に対応する凹状歯を備えるものとし、互いに噛み合い対をなす第1および第2歯車と、第3および第4歯車とのいずれか一方については、歯数差のある減速歯車対とし、他方については歯数差のない非減速の歯車対とした上で、前記減速歯車対における凹状歯の深さを、対応する凸状歯の凹溝の深さ以上に設定している。
前記の構成により、まず、四つの歯車のうち、出力側の第3歯車および第4歯車の間には歯数差を与えず、固定側の第1歯車および第2歯車の間での一段の減速作用で所要の減速比を得るように構成したことで、入力軸における傾斜部の傾斜角度を比較的小さなものとしながら所要の減速比が得られる。よって、その傾斜角によって支配される回転体の揺動運動の振幅が比較的小さくなって、振動騒音の低減に有利になる。尚、固定側の第1歯車というのは、それが全く回転しないことを意味するのではなく、遊星歯車機構において入出力軸のいずれでもない第3の軸に対応する歯車であることを意味する。
そうして第1および第2歯車の間で一段の減速作用を得るようにすると、上述したように両歯車の噛み合いの際に歯すじ方向の母線が交差して、互いに捻れるような位置関係になることから、干渉を避けるために凹状歯の開口付近に干渉除去部を設けなくてはならず、この干渉部とコロの外周との接触によってアキシャル力が大きくなってしまう。
これに対し本発明では、前記減速歯車対における第2歯車の凹状歯の深さを、対応する第1歯車の凸状歯の凹溝の深さ以上に、即ち相対的に深めに設定することで、凸状歯のコロとの噛み合いを深くしてその噛み合い剛性を高くすることができる。これにより、歯飛びの防止が図られる。凹状歯の深さは、対応する凸状歯のコロの半径以上に設定することが好ましい(請求項2)。
より好ましいのは、前記減速歯車対における凹状歯の断面を、コロとの接触点が凹状歯の相対的に開口寄りに位置するように、当該コロよりも大径の2つの円弧を組み合わせ、かつその円弧中心をオフセットさせて形成することでである(請求項3)。こうすれば、干渉除去部を除いた凹状歯の歯面とコロの外周面とが接触する(噛み合う)ときに、この接触点において両者間に作用する荷重のアキシャル方向の成分が比較的小さくなって、歯飛びの防止に有利になる。
一方で、非減速の歯車対となる第3および第4歯車の間では、上述したように相対的にアキシャル力が小さくなり、元々歯飛びは起き難いと考えられる。よって、ここでは凹状歯の深さを、対応する凸状歯の凹溝の深さと同程度に設定すればよい(請求項4)。
また、好ましいのは、前記非減速の歯車対においては凹状歯と凸状歯との接触角、即ち凹状歯の最深部から凸状歯のコロとの接触点までの当該コロの中心周りの角度を小さくすることで、アキシャル力を増大させる一方、減速歯車対においては反対に接触角を大きくすることで、アキシャル力を減少させることである(請求項5)。こうすれば、回転体に作用するアキシャル力の不均衡が是正され、減速側歯車対における歯飛びの防止に有利になる。
以上、説明したように本発明に係わる揺動型歯車装置によると、二対の歯車対のうち一方のみによって減速するようにした一段減速のものにおいて、その減速歯車対における凹状歯の干渉除去部と凸状歯との接触(噛み合い)に起因して、アキシャル力が大きくなり歯飛びしやすくなることに着目し、凹状歯を相対的に深く形成して凸状歯との噛み合い剛性を高めることによって、歯飛びの防止が図られている。
また、前記減速歯車対の凹状歯の断面を多重円弧状として、凸状歯との接触角を相対的に大きくすることで、アキシャル力を減少させる一方、非減速の歯車対においては接触角を相対的に小さくし、ここではアキシャル力を増大させることによっても、前記減速歯車対における歯飛びを抑制する効果が得られる。
以下に本発明の実施形態を図面に基いて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。また、以下の説明においては、図7、8を参照して上述した従来例(特許文献1)と同一ないし相当部分については同一の符号を付す。
(揺動型歯車装置の全体構成)
図1に示すように本発明に係わる揺動型歯車装置は、従来例(特許文献1、2)のものと同様に、減速比に対応した歯数に設定された第1ないし第4の四つの円錐傘歯車A1〜A4を備えており、そのうちの第1歯車A1および第2歯車A2と、第3歯車A3および第4歯車A4と、の二対の歯車対によって減速作用を行うものである。第1、第4歯車A1,A4は円柱コロ4aからなる凸状歯4を有し、それらと噛み合う第2、第3歯車A2,A3は断面円弧状の凹状歯5,5’を有している。
図の例では入力軸1と出力軸2とが同軸上に配置され、この出力軸2の内端(図の左端)には円盤状の拡径部が形成されるとともに、その端面の中央部に開口する中空部にベアリング20を介して、入力軸1の内端(図の右端)が回転自在に支持されている。この入力軸1には長手方向の略中央部にベアリング10を介して前記第1歯車A1が回転自在に取り付けられ、この第1歯車A1を介して入力軸1がハウジング6に支持されている。一方、出力軸2は、ベアリング21によってハウジング6に支持されており、前記拡径部の外周寄りの部位には第1歯車A1と対向するように、第4歯車A4が形成されている。
そうして互いに同心状に配置され、かつ軸方向に対向する第1および第4歯車A1,A4の中間において入力軸1に回転体3が支承されていて、その軸方向両端にそれぞれ設けられている第2および第3歯車A2,A3が、各々前記第1および第4歯車A1,A4に噛み合っている。この回転体3は、ベアリング30の外輪と一体に設けられ、入力軸1の軸芯Gに対して所定角度傾斜した軸芯Hを有する傾斜部1aに回転自在に取り付けられていて、その傾斜角は、第1および第2歯車A1,A2間の歯数差に対応して所定の偏心量になるように設定されている。
また、前記第1、第2歯車A1,A2の各ピッチ円を通る共通球面の中心点と、前記第3、第4歯車A3,A4の各ピッチ円を通る共通球面の中心点とが一致する点を原点Oとし、例えば図示の左右方向をX軸、上下方向をY軸とするXY座標(直交座標)のX軸上に入力軸の軸芯Gを配置する一方、原点Oから所定の角度傾斜する軸上に前記傾斜部1aの軸芯Hを配置すると、図示の角度位置においては第1および第2歯車A1,A2の噛み合い位置が座標平面の第2象限に位置し、これに対し概ね180度の位相差を持つ第3、第4歯車A3,A4の噛み合い位置は、第4象限に位置することになる。
そして、入力軸1が回転すると、その軸芯Gの周りに傾斜部1aが首を振るような運動をし、これに支承されている回転体3は揺動運動をしながら傾斜部1aの周りを回転して、第2歯車A2を第1歯車A1に、また、第3歯車A3を第4歯車A4に、それぞれ噛み合わせていく(これにより上記の噛み合い位置も移動する)。このとき、第2歯車A2は、1周期の揺動運動(入力軸1の1回転)につき、第1歯車A1との歯数差に相当する分だけ第1歯車A1に対して回転する。つまり、第1歯車A1と第2歯車A2との間で一段階の減速がなされる。一方、第3歯車A3と第4歯車A4との間には歯数差がないため、減速作用は生じない。
尚、前記のように第1歯車A1と第2歯車A2との歯数差が1の場合には、揺動運動が1周期進むと、第1歯車A1と第2歯車A2との間で噛み合う歯が1つずれる。また、同歯数差が2の場合は、揺動運動が1周期進むと噛み合う歯が2つずれる。同様にして歯数差がnの場合には、噛み合う歯がn個ずれることになる。
ここで、減速比の設定についてより詳しく説明すると、この種の揺動型歯車装置においては、図7、8を参照して上述したように、二対の歯車対の少なくとも一方に歯数差を与えることによって一段、または二段の減速作用が得られ、高減速から低減速の幅広い減速比が得られるものであるが、特に低減速比とする場合には噛み合い歯車間の基準ピッチ円直径の差が大きくなりやすく、この差に対応して入力軸1の傾斜部1aの傾斜角が大きくなることから、回転体3の揺動運動の振幅が大きくなって振動的に不利になる。
このような振動はバランサーによって低減することも可能であるが、こうすると構造が複雑になり、コストが増大することになるから、この実施形態においては二対の歯車対のうち第1および第2歯車A1,A2による歯車対にのみ歯数差を与えて、いわゆる一段減速によって所要の減速比を得るようにしている。一例として、第1ないし第4歯車A1〜A4のそれぞれの歯数n1〜n4を、n1=99,n2=100,n3=100,n4=100とすれば、最終減速比Rは、R=1/100となる。
こうして一段減速とすれば、二段減速と比べて基準ピッチ円直径は大きくなるものの、基準ピッチ円直径の差は小さくすることができ、同一減速比を小さい傾斜角で得ることが可能になる。このように傾斜角を小さくすることによって振動の低減だけでなく、第1歯車A1と第4歯車A4との間の軸間距離の短縮化等も可能になる。
また、第1および第2歯車A1,A2の間での一段減速とした場合、第3および第4歯車A3,A4の歯数については同一であればよく、減速比に影響を与えることなく任意に設定することができるので、前記のように第3、第4歯車A3,A4の歯数を第2歯車A2の歯数と同じにすれば、四つの歯車のうちの3つの歯数が同じになって、生産効率の向上に貢献する。すなわち、第2および第3歯車A2,A3はいずれも回転体3の軸端に形成されるもので、同一の創成加工機によって形成されるからである。
さらに、第2、第3歯車A2,A3の歯数が同じになれば、この両歯車A2,A3の周方向の位相を一致させることができ、第1および第2歯車A1,A2の噛み合い位置と第3および第4歯車A3,A4の噛み合い位置とがちょうど180度ずれることになるから、これらの各噛み合い位置にそれぞれアキシャル力(回転体3の傾斜軸芯Hに沿う方向の力)の作用するタイミングが同じになって、回転体3の振動を低減する上で有利になる。
尚、一段減速とするに当たっては、二対の歯車対の一方のみに歯数差を与えればよく、減速作用を行うのは第1、第2歯車A1,A2であっても第3、第4歯車A3,A4であってもよいが、前記のように第1、第2歯車A1,A2間で減速することは歯車各部の潤滑性を維持する上でも好ましい。これは、第3、第4歯車A3,A4で減速を行うようにした場合、第1および第2歯車A1,A2の相互の噛み合い位置が変化せず、回転体3は揺動はするものの回転しないようになるので、その内部の潤滑剤が特定位置に偏り、各歯車A1〜A4の噛み合い部への供給が滞る虞れがあるからである。
(第1ないし第4歯車の歯形)
次に、本発明の特徴部分である第1ないし第4歯車A1〜A4の歯形について詳細に説明する。尚、凸状歯である第1および第4歯車A1,A4は基本的に同じ歯形なので、代表して第1歯車A1の説明のみを行い、異なる部分についてのみ第4歯車A4についても説明する。
−凸状歯−
第1歯車A1の凸状歯4は、図2に示すように円柱コロ4aを凹溝4bに位置決めして保持し、その歯すじ方向に歯厚,歯たけの等しい等高歯として構成している。同図(a)には軸芯Gに沿って見て示すが、コロ4aは第1歯車A1の歯数分だけ備えられ、その歯すじ方向の両端部においてリテーナ7,8により位置決めされている。また、コロ4aを保持する凹溝4bは、ピッチ円錐面上において、歯すじ方向全域において断面略一様のいわゆる等高凹歯として形成され、コロ4aを摺動可能に保持している。
前記各リテーナ7,8はいずれもリング状であり、外側のリテーナ7においては内周側に、また、内側のリテーナ8においては外周側に、それぞれ突出する係止爪が全周に亘って形成され、この各係止爪が第1歯車A1の係止溝に係止されている。リテーナ7,8はポリアミド系あるいはポリイミド系の樹脂にて形成され、自身が所定の外力の作用により変形することで、コロ4aの変位を弾性的に許容するものである。
そうして構成される凸状歯4(コロ4a)の歯すじ長さは、詳しくは後述するように回転体3の揺動運動に伴い凹状歯5との噛み合い位置が歯すじ方向にずれることを考慮して(図4を参照)、有効噛み合い長さが凹状歯5の歯すじよりも長く設定されている。また、コロ4aは、前記のように歯すじ方向両端をリテーナ7,8によって係止されているので、凸状歯4の長さはコロ4aの係止分の寸法も考慮して、さらに長く設定されている。
つまり、凸状歯4の歯すじ長さは、凹状歯5の歯すじ長さに対して有効歯すじ長さの差分とリテーナ7,8による係止分の長さが加算された寸法として設定されている。また、コロ4aの外径は、歯すじ方向全域において同一径である。
一方、コロ4aを保持する凹溝4bは、前記の如く歯すじ方向全域において断面略一様、つまり同一幅、同一深さの半円弧状とされているが、その断面形状は、図3(a)に示すように多重円弧にて形成されている。すなわち、凹溝4bの断面は、コロ4aよりも大径の2つの円弧を組み合わせ、かつその円弧中心をオフセットさせて、コロ4aとの接触点P0を凹溝4bの相対的に開口寄りに位置づけたものである。こうすると、その接触点P0から溝底に向かって凹溝4bの内周がコロ4aの外周から徐々に離間するようになり、溝底近辺にオイル溜りが形成される。
また、円柱状のコロ4aが、歯すじ方向の全域において凹溝4bとの接触点P0にて確実に支持され、その支持剛性が高くなるので、コロ4aが凹溝4bに強固に結合されて実質的に一体的な凸状歯4が構成される。しかも、そうして接触点P0における支持とすることは、加工精度の自由度拡大に対しても重要な意味を持つ。すなわち、仮にコロ4aとの接触を全面当たりとすると、その精度如何により実際の接触状態は部分当りとなってしまい、位置決めが不正確になる可能性があるが、上述のように接触点P0における線接触状態とすれば支持剛性を比較的安定的に確保しやすいのである。
さらに、上述のようにコロ4aとの接触点P0が凹溝4bの開口寄りになるということは、その接触角θ0(コロ4aの中心に対する凹溝4bの最深部から接触点P0までの角度)が比較的大きくなるということであり、これが凸状歯4の信頼性に貢献する。すなわち、前記のように組み合わされたコロ4aと凹溝4bとの間には、その接触点P0において接線に垂直な方向に荷重Pが作用することになるが、この荷重Pは、第1歯車A1のピッチ円錐と平行な方向の分力である回転伝達力Tと、同ピッチ円錐と垂直な方向の分力であるアキシャル力Fとに分解できる。
そして、アキシャル力Fはコロ4aを凹溝4bから脱落させるように作用するので、それが大きいほど凸状歯4が破損しやすくなるが、図から明らかなように接触点P0が凹溝4bの開口に近づくほど、即ち接触角θ0が大きくなるほど、アキシャル力Fは小さくなり、回転伝達力Tが大きくなるので、信頼性およびトルク伝達効率の双方が向上するのである。尚、接触角θ0はおおよそ45度よりも大きい角度にすればよい。
そうしてアキシャル力Fを小さくし、回転伝達力Tを大きくするという観点からはコロ4aを保持する凹溝4bを深くすることが望ましいが、図3から明らかなように、凹溝4bを深くすれば、その分、凹状歯5を浅めにせざるを得ず、今度は歯飛びの起きる可能性が高くなってしまう。
そこで、この実施形態では、以下に詳細に説明するように凹状歯5の開口付近に干渉除去部が設けられていて、アキシャル力の大きくなりやすい減速歯車対である第1および第2歯車A1,A2においては、同図(a)の如く凹状歯5を相対的に深く形成し、歯飛びの防止を図る一方、非減速の歯車対である第3および第4歯車A3,A4においては、同図(b)の如く凹状歯5’を凸状歯4の凹溝4bと略同じ深さL3=L4に設定している。
尚、図3(a)に示す第2歯車A2の凹状歯5には、その開口付近に以下に述べる干渉除去部が設けられているが、同図にはその干渉除去部がないものとして、凹状歯5の基本的な歯形を示している。
−減速歯車対の凹状歯−
まず、前記の第1歯車A1と噛み合って減速歯車対を構成する、第2歯車A2の凹状歯5の歯形について説明する。この凹状歯5は、基本的には凸状歯4(コロ4a)に対応する断面円弧状のものであるが、第2歯車A2は第1歯車A1との間に歯数差を有し、入力軸1の傾斜部1aにより所定の偏心量を持っている。このため、図4に模式的に示すように、両者は噛み合い始めから噛み合い終わりまでの間、最大噛み合い位置を除いて歯すじ方向の母線が交差するようになり、仮に凹状歯5を歯すじ方向に単純な直線状とした場合は、その開口付近において干渉が生じる。
そこで、第2歯車A2の歯形は、第1歯車A1の凸状歯4を創成転写した創成歯、或いは近似創成歯として形成される。具体的な方法は、本発明者が先の特許出願(特開平10−235519号)に詳細に開示しているように、保持手段によって保持したワークを、本発明の対象である揺動型歯車装置と同等の機構を介して駆動するように構成し、このワークを揺動運動させながらカッターホイルを歯すじ方向に移動させることにより、凸状歯4と干渉する部分を除去して、適切な歯形を形成する。
このような手法にて創成転写される凹状歯5の形状について、以下に詳細に説明する。図4は、第1および第2歯車A1,A2の噛み合いにあたって、第1歯車A1の凸状歯4としての等高歯に対し、第2歯車A2の凹状歯5を仮に同一深さ、同一幅の等高凹歯(干渉状況を説明する上での仮想形状)とし、第2歯車A2が矢印方向に揺動運動する際の凸状歯4(コロ4a)と凹状歯5との関係を2次元的に示した模式図である。
この図において第2歯車A2の歯数は第1歯車A1の歯数よりも多く設定され、その基準ピッチ円直径は歯数差分、大きく設定されるとともに、歯すじ方向中央に設定されている。また、第1歯車A1の中心は入力軸1の軸芯Gであり(出力軸2の軸芯でもある)、一方、第2歯車A2の自転の中心は入力軸1の傾斜部1aの軸芯Hであり、この中心点Hが中心点Gの周りを偏心回転する。
したがって、第2歯車A2が回転体3と共に矢印Bの方向に揺動運動、つまり偏心回転すると、等高歯としての凹状歯5とコロ4aとは所定の角度範囲Wにおいて噛み合うようになる。この場合、コロ4aと凹状歯5とは母線M1、M2に対して歯すじ方向に同一幅(同一径)に形成されているので、母線同士の重なる最大噛み合い位置W1においては適正な噛み合いとなるが、その前後の噛み合い角度位置では母線が互いに交差し、凹状歯5の開口付近とコロ4aとが互いに捻れの位置関係で干渉することになる。
その母線の交差角は、噛み合い始め位置W2および噛み合い終わり位置W3で最大になり、しかも交差方向が最大噛み合い位置W1を挟んで前後で逆の傾きとなるので、干渉部(図には斜線を付して示す)は、噛み合い始め位置W2から最大噛み合い位置W1までは、基準ピッチ円直径(PCD)の外側で凹状歯5の回転方向後側(図の右側)に現れる一方、基準ピッチ円直径の内側では回転方向前側(図の左側)に現れる。
また、最大噛み合い位置W1から噛み合い終わり位置W3までの角度範囲においては、干渉部は、基準ピッチ円直径の外側と内側にてそれぞれ凹状歯5の回転方向につき前記とは逆の側に現れる。よって、凹状歯5の開口部には、噛み合い始め位置W2から噛み合い終わり位置W3までの噛み合い範囲Wにおいて、基準ピッチ円直径を基点に歯すじ方向内外にそれぞれ拡大する鼓形状の干渉部が生じることになる。
この干渉部の大きさは、第1および第2歯車A1,A2の基準ピッチ円直径の差、言い換えると入力軸1の傾斜部1aの傾斜角の影響を受けて、その傾斜角が小さいほど(歯すじ方向、歯底方向、歯幅方向ともに)小さくなる。また、干渉部は、凹状歯5の歯すじ長さおよび基準ピッチ円直径の設定位置によっても影響を受けて、歯すじ長さが長くなるほど歯すじ方向端部での干渉幅が大きくなるとともに、歯すじ長さが一定であっても基準ピッチ円直径の設定位置を例えば歯すじ方向の内端若しくは外端に設定すると、反対側の端部における干渉幅が非常に大きくなってしまう。
よって、上述の創成加工によって除去する干渉部があまり大きくならないようにするために、干渉幅を支配する凹状歯5の歯すじ長さおよび基準ピッチ円直径の設定は、干渉幅が最小になるように最適化することが望ましい。干渉幅が大きくなるほど伝達効率が低下するとともに、干渉除去部との接触によってコロ4aに作用するアキシャル力Fが大きくなりやすく、歯飛びが起きやすくなるからである。
また、干渉幅の拡大は、加工形態の自由度および加工精度の自由度にも影響を与えるので、この実施形態では、第1および第2歯車A1,A2間における一段減速のみの設定による傾斜角1aを小さくするとともに、第2歯車A2の凹状歯5の歯すじ長さを第1歯車A1の凸状歯4に比べて大幅に短く設定し、かつ基準ピッチ円直径を歯すじ中央に設定することによって、干渉部の大きさを最小化し、精度の確保と生産性の自由度確保との両立を図っている。
図5に示すのは、前記のような干渉部を除去した状態の凹状歯5の歯形の一例であり、この図には、前記した噛み合い範囲Wにおいて最大噛み合い位置W1を含む前後5つの噛み合い位置での干渉部の除去状態を模式的に示している。すなわち、図中、歯底から開口端にかけて描かれている三角形状のエリアE1〜E4は、前記それぞれの角度位置ごとに発生する干渉部が除去された干渉除去部であって、第1エリアE1は、噛み合い始め位置における干渉除去部に相当し、基準ピッチ円直径PCDをはさんで回転方向前側および後側にそれぞれ位置する。
また、第2エリアE2は、噛み合い始め位置W2と最大噛み合い位置W1間の中間角度位置での干渉除去部に相当するエリアを示し、第3および第4エリアE3、E4は、それぞれ最大噛み合い位置W1から噛み合い終わりに向かっての前記と同様の干渉除去エリアを示す。尚、エリアE5は干渉の発生しない部分で、最大噛み合い位置W1でコロ4aの外周面が接触する、凹状歯5の基本的な形状のエリアである。
この図から明らかなように、各干渉除去部は、基準ピッチ円直径を基点に半径方向内外(歯すじ方向内外)に向かってそれぞれ拡大するが、傾斜角が小さいことに加えて基準ピッチ円直径が中央にあることと、歯すじ長さが短いこととによって、その拡大率は比較的小さく保たれている。尚、図示のエリアE1〜E5は本来、連続した回転の元では連続した曲面となり、エリアを画成する線は存在しないが、説明の都合上、前記の角度位置ごとの除去エリアを示したものである。
以上の説明から明らかなように、この実施形態においては傾斜角の最小化、歯すじ長さの短縮および歯すじ中央部への基準ピッチ円直径の設定により、歯すじ方向両端部における干渉除去部の拡大率を比較的小さくすることができ、その分、噛み合い始め位置および噛み合い終わり位置におけるコロ4aとの捻れが小さくなって、伝達効率が向上する。
尚、基準ピッチ円直径の位置については、歯すじ中央よりも若干外方に配置することも可能である。前記のように基準ピッチ円直径を歯すじ方向中心に設定した場合、半径方向内端と外端とではモジュールに差があることに起因して干渉幅の差が生じ、外端が内端より大きくなる傾向がある。この点、基準ピッチ円直径を中央よりもやや外方に設定すれば両者の干渉幅を等しくすることが可能であり、外端における干渉除去部の幅が大きくなり過ぎることを阻止できる。
ところで、上述のように第2歯車A2の凹状歯5の開口付近には干渉除去部が設けられていて、第1歯車A1の凸状歯4(コロ4a)との噛み合い範囲Wにおいては、母線の重なる最大噛み合い位置W1を除いて、凹状歯5の干渉除去部と凸状歯4のコロ4aとが互いに捻れの位置関係で接触するようになり(図4を参照)、このことによってアキシャル力Fが増大する。
すなわち、噛み合い範囲Wにおける凸状歯4(コロ4a)と凹状歯5との相対的な運動を、凹状歯5に対するコロ4aの相対運動として見ると、両者は1つずつ噛み合い位置がずれてゆくことから、図6(a)に模式的に示すように、コロ4aの中心が隣り合う凹状歯5の間を1つずつ移動する波形の軌跡を描くようになる。尚、図(a)の破線T1はコロ4aの外側端部の軌跡を、また、破線T2は長手方向中央部の軌跡を、さらに、破線T3は内側端部の軌跡をそれぞれ示している。
そうして噛み合いの始まりおよび離脱の過程で凹状歯5に対し捻れの位置関係になるコロ4aの外周面が、同図(b)に示すように凹状歯5の干渉除去部に接触すると、この図から分かるように干渉除去部においては凹状歯5の歯面の傾斜が緩くなっていることから、接触点において凸状歯4(コロ4a)に作用する荷重Pの向きがアキシャル方向(図の上下方向)に偏向し、その分力であるアキシャル力が増大するのである。
つまり、減速側歯車対である第1および第2歯車A1,A2の間では、凸状歯4(コロ4a)と凹状歯5とが互いに捻れの位置関係で接触し、同時に噛み合う歯の数が多くなることによって、アキシャル力Fが増大するとともに、コロ4aの接触する干渉除去部の傾斜が緩いことによってもアキシャル力Fが大きくなってしまい、歯飛びが起きやすいという問題があった。
そうして干渉除去部との接触に起因してアキシャル力が大きくなるのは、減速歯車対である第1および第2歯車A1,A2の間のみであり、第3歯車A3の凹状歯5に干渉除去部が設けられていない非減速の歯車対(第3、第4歯車A3,A4)においてはアキシャル力は相対的に小さくなる。この結果、回転体3全体としてはアキシャル力に不均衡が生じて、第1および第2歯車A1,A2の側から第3および第4歯車A3,A4の側に(図1において右側に)押されるようになり、このことも第1および第2歯車A1,A2の間で歯飛びを生じる一因になると考えられる。
これに対しこの実施形態に係る揺動型歯車装置では、減速歯車対である第1および第2歯車A1,A2においては前記図3(a)に示すように凹状歯5の深さL2を、それが噛み合う第1歯車A1の凸状歯4の凹溝4bよりも深く形成し、さらに図の例では凸状歯4のコロ4aの半径よりも大きく設定している。このことで、第1歯車A1の凸状歯4と第2歯車A2の凹状歯5との噛み合いが十分に深くなり、その噛み合い剛性が高くなって、歯飛びの防止が図られる。
但し、図から明らかなように凹状歯5の深さと凸状歯4の凹溝4bの深さとはトレードオフの関係にあり、凹状歯5を深くするほど凸状歯4の凹溝4bは浅めにせざるを得ないから、コロ4aの保持には不利になってしまう。この点も考慮して図の例では干渉除去部を除いた凹状歯5の基本的な歯形について、その開口縁の面取りを除いた深さがちょうどコロ4aの半径くらいになるように、凹状歯5の深さを設定している。
さらに、前記のように干渉除去部を除いた凹状歯5の基本的な歯形は、上述した凸状歯4の凹溝4bと同じく多重円弧により形成し、図3(a)のように最大噛み合い位置W1にて凸状歯4と噛み合っている状態では、コロ4aとの接触点P1が凹状歯5の開口寄りになるようにしている。図の例では接触角θ1は80度くらいとかなり大きいので、その接触点P1においてコロ4aに作用する荷重Pのうち、回転伝達力Tの成分がかなり大きくなる一方、歯飛びを誘発するアキシャル力Fの成分はかなり小さくなり、このことによっても歯飛びの防止が図られる。
−非減速歯車対の凹状歯−
次に、第4歯車A4と共に非減速の歯車対を構成する第3歯車A3の凹状歯5’の歯形について説明する。この第3、第4歯車A3,A4は、互いに歯数および基準ピッチ円直径が同じであり、かつ両歯車A3,A4のピッチ円錐の頂点が原点O(偏心量ゼロ位置)と一致するように配置されている。このため、第3および第4歯車A3,A4の噛み合い過程においては上述した第1および第2歯車A1,A2の噛み合い過程のような(図4を参照)歯すじ方向の母線の交差は発生せず、凸状歯4と凹状歯5’とが捻れの位置関係で干渉することもない。
それ故に第3歯車A3の凹状歯5’には、上述した第2歯車A2の凹状歯5のような干渉除去部は必要なく、その歯形は、第4歯車A4のコロ4aに対応して歯すじ方向に概略同一断面の円弧状に、より詳しくは第1歯車A1の凹溝4bや第2歯車A2の凹状歯5と同様に二つの多重円弧からなる円弧状に形成されている。但し、回転体3が揺動しつつ回転することから、厳密には凹状歯5’の歯形も第1、第4歯車A1,A4の凹溝4bのように直線的に加工することはできず、第2歯車A3の凹状歯5と同様に創成加工によって形成している。
そうして干渉除去部の設けられていない第3歯車A3の凹状歯5’と第4歯車A4の凸状歯4(コロ4a)との噛み合いにおいては、上述した第1および第2歯車A1,A2のようにアキシャル力が大きくなることはないから、元々歯飛びは起き難いと考えられ、よって、第3歯車A3の凹状歯5’の深さは、それが噛み合う第4歯車A4の凸状歯4の凹溝4bの深さと同程度に設定されている。
また、第3歯車A3の凹状歯5’の断面形状は、前記した第2歯車A2の凹状歯5や第1、第4歯車A1,A4の凸状歯4の凹溝4bと同じく多重円弧状であるが、図3(b)に示すように凸状歯4(コロ4a)との接触角θ2は、第1、第2歯車A1,A2間における凸状歯4と凹状歯5との接触角θ1よりも小さく設定されていて、これによりアキシャル力Fの増大が図られている。
つまり、減速歯車対である第1、第2歯車A1,A2に比べて元々、アキシャル力の小さな第3、第4歯車A3,A4の間では、敢えてアキシャル力を増大させることにより、回転体3全体でのアキシャル力の不均衡を是正するようにしている。尚、図では接触角θ2は45度くらいであり、前記のような作用を十分に得るためには45度以下とするのが好ましいが、これに限るものではなく、接触角θ2を45度よりも大きく設定するすることも可能である。
以上、説明したように、この実施形態に係わる揺動型歯車装置によると、まず、四つの円錐傘歯車A1〜A4のうち、第1および第2歯車A1,A2の間には歯数差を設ける一方、第3および第4歯車A3,A4の間には歯数差を設けない一段減速の仕様としたことによって、回転体3の回転中心である軸芯Hの入力軸芯Gに対する傾斜角を小さくすることができ、この傾斜角によって支配される回転体3の揺動運動の振幅が小さくなるので、振動騒音の低減に有利になる。
また、そうして減速の行われる第1および第2歯車A1,A2の間では、凹状歯5の干渉除去部との接触に起因して凸状歯4(コロ4a)に作用するアキシャル力Fが大きくなりやすいことに着目し、ここでは凹状歯5を相対的に深く形成して、凸状歯4との噛み合い剛性を高めるとともに、多重円弧によって形成する凹状歯5の凸状歯4との接触角θ1を比較的大きくすることによって、アキシャル力Fが小さくなるようにし、これにより歯飛びの防止を図っている。
さらに、非減速の歯車対である第3および第4歯車A3,A4においては、凸状歯4と凹状歯5’との接触角θ2を比較的小さくすることによってアキシャル力Fをむしろ増大させ、回転体3に作用するアキシャル力の不均衡を是正することによっても、前記第1、第2歯車A1,A2間の歯飛びの防止が図られている。
尚、本発明に係わる揺動型歯車装置の構成は、前記の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、前記の実施形態においては、減速歯車対である第1および第2歯車A1,A2において凹状歯5の深さをコロ4aの半径以上に設定しているが、これは凹溝4bの深さ以上に設定するだけでもよい。
一方、非減速の歯車対である第3および第4歯車A3,A4においては凹状歯5’の深さを凸状歯4の凹溝4bと略同じに設定しているが、凹状歯5’の深さは凹溝4bよりもやや浅めに設定してもよいし、反対にやや深めに設定してもよい。
また、前記実施形態の各歯車A1〜A4における凸状歯4のコロ4aと凹溝4bとの接触角θ0や、或いは凸状歯4(コロ4a)と凹状歯5,5’との接触角θ1,θ2についても例示に過ぎないし、凸状歯4の凹溝4bや凹状歯5の断面を必ずしも多重円弧によって形成しなくてもよい。
本発明に係わる揺動歯車装置の断面図。 第1歯車を入力軸芯に沿って見た正面図(a)と、その一部を拡大して示す図(b)。 減速歯車対と非減速の歯車対とを対比して示す歯形の断面図。 第1および第2歯車の噛み合いにおける凸状歯(コロ)と凹状歯との関係を2次元的に示す模式図。 干渉部の除去された凹状歯の歯形の一例を示す拡大斜視図。 第2歯車の凹状歯に対する第1歯車の凸状歯(コロ)の相対運動を模式的に示す図であり、特に図(b)にはコロと干渉除去部との接触状態を示す。 従来の揺動型歯車装置の断面図(図1相当図)。 従来の揺動型歯車装置の噛み合い部の説明図。
A1〜A4 第1ないし第4の円錐傘歯車
E1〜E4 干渉除去部を示すエリア
1 入力軸
1a 傾斜部
2 出力軸
3 回転体
4 凸状歯
4a コロ
4b 凹溝
5,5’ 凹状歯

Claims (5)

  1. 四つの円錐傘歯車を備え、歯数n1の固定歯車としての第1歯車と、歯数n4の出力歯車としての第4歯車とを、互いに対向させて入力軸と同心状に配置するとともに、歯数n2の第2歯車および歯数n3の第3歯車が一体に設けられた回転体を、その第2歯車が前記第1歯車と噛み合い且つ第3歯車が前記第4歯車と噛み合うようにして、前記入力軸上の傾斜部に回転自在に支承し、この入力軸の回転によりその傾斜部において前記回転体が揺動運動を行うように構成した揺動型歯車装置であって、
    前記第1歯車および第4歯車は、ピッチ円錐上において等間隔で歯車中心から放射状に延びる断面半円状の複数の凹溝と、この各凹溝内に転動自在に配置された円柱状のコロとからなる、等高歯としての凸状歯を備える一方、前記第2および第3歯車は、前記凸状歯に対応する形状の凹状歯を備えており、
    前記第1ないし第4歯車のうちの互いに噛み合い対をなす、第1および第2歯車と第3および第4歯車とのいずれか一方については、歯数差のある減速歯車対とし、他方については歯数差のない非減速の歯車対とするとともに、前記減速歯車対における凹状歯の深さを、対応する凸状歯の凹溝の深さ以上に設定したことを特徴とする揺動型歯車装置。
  2. 前記減速歯車対における凹状歯の深さは、対応する凸状歯のコロの半径以上に設定されている、請求項1に記載の揺動型歯車装置。
  3. 前記減速歯車対における凹状歯の断面は、コロよりも大径の2つの円弧を組み合わせ、かつその円弧中心をオフセットさせて、コロとの接触点を凹状歯の相対的に開口寄りに位置づけたものである、請求項1または2のいずれかに記載の揺動型歯車装置。
  4. 前記非減速の歯車対における凹状歯の深さは、対応する凸状歯の凹溝の深さと略同じに設定されている、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の揺動型歯車装置。
  5. 前記非減速の歯車対における凹状歯と凸状歯との接触角は、減速歯車対における凹状歯と凸状歯との接触角よりも小さく設定されている、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の揺動型歯車装置。
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