定義
“ケモカイン”とは、マクロファージ、B細胞、T細胞、好中球、好酸球、好塩基球、マスト細胞、例えば血管平滑筋細胞の様な平滑筋細胞等に作用する(例えばそれらの移動、増殖又は脱顆粒に影響すること、あるいはT細胞のTh1及びTh2サブタイプへの発生の免疫変調に影響することによる)前炎症性シグナル伝達成分のファミリーを意味する。好ましいケモカインは霊長類、例えばヒト起源であるが、本発明にはウシ、ヒツジ、ウマ、イヌ、ネコ又は齧歯類起源のものも、又ウイルスにコードされたケモカインも含まれている。
ケモカインはMCP-1(配列番号16)、MCP-2(配列番号17)、MCP-3(配列番号18)、MIG(配列番号45)、MIP1α(配列番号19)、MIP1ベータ(配列番号20)、RANTES(配列番号21)、PF4(配列番号46)、I-309(配列番号47)、HCC-1(配列番号48)、エオタキシン(配列番号25)、C10(配列番号49)、CCR-2(配列番号50)、ENA-78(配列番号52)、GROα(配列番号24)、GROβ(配列番号53)、IL-8(配列番号23)、IP、例えばIP-10(配列番号54)、SDF1α(配列番号22)、SDF1β(配列番号56)、GROα(配列番号57)、
MIP3α、TCA-3、CTAPIII、NAP、MARC/FYK、β−トロンボグロブリン、GCP、例えばGCP-2、PBP、HC14、MDC、Zsig-35、β−6、TECK、PARC、6Ckine、フラクタキン(fractakine)、DC-CK1、LIX、LKN、TARC、LARC、SCM-1、STCP1、LKN、SLC、LMC、IBICK、ILINCK、MCIF、MPIF、MIG、Zchemo-8(WO98/54326号参照)、Ckβ、例えばCKβ3、CKβ4及びCKβ13、CCF18.MRP-2、CCIII、CKα2、ENA、H1305、HCC、Dive-1、MGSA、DGWCC、TCA4、デンドロキン(WO97/29192号参照)、CC2/HCC1、CC3及びMIP1τ及び、ELC、vMIP-1、vMIP-II及びvMIP-IIIの様なウイルスにコードされたケモカイン(Kledalら、Science, 277、1656(1997)参照)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
“CXC”又は“α”ケモカインは、IL-8、PF4、IP10、NAP-2、GROα、GROβ、GROγ、SDF1、MIP2、MGSA、γIP、CTAPIII、β−トロンボグロブリン、MIG、PBP、NAP-2及びENA78を含むが、これらに限定されない。“CC”又は“β”ケモカインは、MCP-1、MCP-2、MCP-3、MCP-4、MCP-5、RANTES、エタキシン、LARC、TARC、C10、MIP1α、MIP1β、)I309、HCC-1、CKβ8、CCF18/MRP-2、MIP1τを含むが、これらに限定されない。ケモカインの第3の型はああ“C”ケモカイン、例えばリンホタクチンである。ケモカインの第4の型はフラクタキン(fractakine)又はニューロタクチン(neurotactin)の様な“CX3C”ケモカインである(Rollinsら、Blood、90、404(1997))。ケモカインの第5の型、CX2CケモカインはCCIIIを含む。
“ペプチド3”はケモカインのカルボキシル末端側半分内に一般に局在し(由来し)、且つ当分野既知の方法により決定された場合に少なくとも対応する原型のケモカインの活性を阻害するケモカイン由来ペプチドを意味する。ペプチド3はせいぜい30、好ましくは約3ないし約25、より好ましくは約3ないし約15、そして更により好ましくは約3ないし約11の、対応する原型ケモカイン、好ましくは例えばヒトケモカインの様な霊長類ケモカインである哺乳動物ケモカイン又はウイルスにコードされたケモカインのアミノ酸配列に対し相同である、あるいは同一である100%連続したアミノ酸配列を有するペプチジル残基を含む。
例えばMCP-1の活性を少なくとも阻害するMCP-1の好ましいペプチド3は例えば配列番号1に対応するアミノ酸配列を有するペプチド又はその断片あるいは誘導体であるペプチド(1−12)[MCP-1]である。発明の別の好ましい実施態様は、例えば配列番号7に対応するアミノ酸配列を有するペプチド又はその断片あるいは誘導体であるペプチド3(3−12)[MCP-1]である。好ましくは、発明のケモカインペプチド3はIL-8、PF-4又はNAP-2のペプチドを含まない。
表1に示すアラインメントの様なケモカインアミノ酸配列のアラインメントは、型もカイン内のペプチド3配列の局在を同定する一般的方法を提供する。一般に、非MCP-1ケモカイン内のペプチド3は、成熟型ヒトMCP-1の約残基46ないし約残基67に相当している。更に、ペプチド3はケモカイン活性を阻害するアミノ酸以外の成分、例えば原型ケモカイン中に存在しないアミノ酸残基(即ち融合蛋白質)、核酸分子又は抗体又はその断片あるいはビオチンの様な標的化成分の様なアミノ酸を、それらがペプチド3の生物学的活性を本質的に減少させない範囲で含んでもよい。活性の本質的減少とは、活性が約99%より大きく減少することを意味する。
同様の好ましくは、発明のペプチド、変異体、類似体又は誘導体は少なくとも1種類のケモカイン受容体に対し高い親和性、例えば約1μMないし約1nM、より好ましくは約1nMないし約1pMを有し、さらに好ましくは原型(“野生−型”)配列を持つ対応ペプチドに比べ、又は対応原型型もカインに比べ低いダッフィ結合を有する。しかし、特定の集団ダッフィを持つ個人を含んでおり、例えばアフリカ出身米国人は一定の率でダッフィ-である。即ち、これら集団の治療に有用な作用物質は、対応する原型ケモカインに比べ同等またはそれ以上のダフィ結合親和性を有するだろう。
ここで使用する場合、“分離され/又は精製された”とは、発明の治療作用物質のインビトロ調製、分離及び/又は精製を意味しており、従ってインビボの物質は関連しない。即ち、“分離された核酸分子”に関しては、それはゲノミック、cDNA、又は合成起源のポリヌクレオチド、又はその幾つかの組合せを含み、“分離された拡散分子”は、(1)“分離された核酸分子”が天然に見いだされるポリヌクレオチドの全てまたは一部と関連しておらず、(2)天然には連結していないポリヌクレオチドと作動可能に連結しており、又は(3)天然にはより大きな配列の一部として生じないものである。
分離された拡散分子は、少なくとも10塩基長の、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチド、あるいは何れかの型のヌクレオチドの修飾型であるヌクレオチドの重合形状を意味する。本用語は単鎖又は二本鎖型DNAを含む。用語“オリゴヌクレオチド”とは、ここでは天然に生じた、及び天然に生ずる、及び非天然に生ずるオリゴヌクレオチド結合により一つに連結した修飾型ヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドは長さが200塩基以下のポリヌクレオチドのサブセットである。好ましくは、オリゴヌクレオチドは10ないし60塩基長であり、最適には12、13、14、15、16、17、18、19又は20ないし40塩基長である。オリゴヌクレオチドは例えば変異体構築に関しては2本鎖でもよいが、通常例えばプローブに関しては単鎖である。
発明のオリゴヌクレオチドはセンス又はアンチセンスオリゴヌクレオチドのいずれも利用できる。用語“天然に生ずるヌクレオチド”とは、ここではデオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドを含むことを意味する。用語“修飾型ヌクレオチド”とは、ここでは修飾型又は弛緩型糖グループを持つヌクレオチドを含むことを意味する。用語“オリゴヌクレオチド結合”とは、ここではホスホロチオ酸エステル、ホスホロジチオ酸エステル、ホスホロセレノン酸エステル、ホスホロジセレノン酸エステル、ホスホロアニロチオ酸エステル、ホスホルアニラデート、ホスホルアニデート等の様なオリゴヌクレオチド結合を含むことを意味する。オリゴヌクレオチドは必要に応じ検出のための標識体を含むことができる。
用語“分離されたポリペプチド”はcDNA又は組換え体RNAによりコードされたポリペプチドを意味し、又は合成起源、あるいはそれらの幾つかの組合せであり、前記分離されたポリペプチドは(1)天然に見いだされる蛋白質とは関連せず、(2)同一源からのその他蛋白質を含まず、例えばヒト蛋白質を含まず、(3)異なる種からの細胞により発現され、又は(4)天然には生じないものである。
用語“配列相同性”とは、2つのアミノ酸配列間で一致した塩基の割合、又は2アミノ酸配列間で一致するアミノ酸の割合を意味する。配列相同性をパーセンテージ、例えば50%と表す場合、このパーセンテージはその他の複数の配列と比較されるモカイン由来配列の全長にわたっての一致数の割合を表す。一致を最大にするためのギャップは許可されている(2配列のいずれかに);通常15塩基以下の長さのギャップが利用され、6塩基以下が好ましく、更に2塩基以下がより好ましい。オリゴヌクレオチドをプローブ又は処理剤として利用する場合、標的核酸とオリゴヌクレオチド配列間の配列相同性は一般には可能なオリゴヌクレオチド塩基対組合せ20当たり17以上の標的塩基が適合する(85%);好ましくは可能塩基対合10あたり9以上の適合(90%)であり、そして更に好ましくは可能塩基対合20当たり19以上が適合する(95%)。
用語“選択的ハイブリダイズ”とは、検出可能且つ特異的な結合を意味する。発明のポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド及び断片は、非特異的核酸への検出可能な結合の測定可能な量を最小限にするハイブリダイゼーション及び洗浄の条件の下で、核酸鎖に選択的にハイブリダイズする。高厳密条件を利用することで、当分野既知であり、ここに論議されている選択的ハイブリダイゼーション条件を達成することができる。一般に発明のポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド及び断片と、興味の対象の核酸配列との間の核酸配列相同性は少なくとも65%であり、そして典型的には相同性が少なくとも約70%、約90%、約95%、約98%及び100%と増加することが好ましい。
2つのアミノ酸配列の間に部分的、又は完全な一致がある場合、これら配列は相同である。例えば相同性85%とは、2つの配列を最大一致を得るように並置した場合に、アミノ酸の85%が同一であることを意味する。一致を最大にするためにギャップが許されている(対合される2配列のいずれか);ギャップの長さは5以下であることが好ましく、2以下がより好ましい。
あるいは、ここでは2蛋白質の配列(またはそれらに由来する長さ少なくとも30アミノ酸のポリペプチド配列)が、変異体データマトリックス及びギャップペナルティー6以上のプログラムALIGNを利用したとき、アラインメントスコアが5以上(標準偏差単位で)である場合も、これら配列はここで用いられた用語の意味にて相同である。Dayhoff、M.O., in Atlas of Protein Sequence and Structure,1972、5巻、National Biochemical Research Foundation、pp.101-110及び同巻の付録2、p1-10を参照せよ。2配列またはその一部は、ALIGNプログラムを用い最適に並置された場合にそれらのアミノ酸が50%以上同一であれば、より好ましく相同的である。
用語“対応する”とはここではポリペプチド配列が参照ポリペプチド配列の全て、または一部に対し相同であること(即ち、同一であり、厳密ではなく進化的に関連している)、又はポリペプチド配列が参照ポリペプチド配列に同一であることを意味するときに用いられている。これと区別し、ここでは用語“相補的である”とは、相補的配列が参照ポリヌクレオチド配列の全て、又は一部に対し相同的であることを意味するのに用いられる。例示すると、ヌクレオチド配列“TATAC”は参照配列“TATAC”に対応し、参照配列“GTATA”に相補的である。
以下の用語は2またはそれ以上のポリヌクレオチド間の配列の関係を記載するのに用いられ:“参照配列”、“比較ウインドウ”、“配列同一性”、“配列同一性のパーセンテージ”、及び“本質的に同一”。“参照配列”とは、配列比較のための基礎になるものとして用いられる規定された配列である;参照配列はより大きな配列、例えば完全長cDNAの断片又は配列表内に掲載された遺伝子配列の様な配列のサブセットであるか、又は完全cDNAまたは遺伝子配列を含むであろう。
一般に、参照配列は少なくとも20ヌクレオチド長であり、大抵は少なくとも25ヌクレオチド長、そして多くは少なくとも50ヌクレオチド長である。2ポリヌクレオチドがそれぞれ(1)2ポリヌクレオチド間で同様である配列(即ち、完全なポリヌクレオチド配列の一部)を含み、そして(2)更に2ポリヌクレオチド間で異なる配列を含んでいる場合、2(またはそれ以上)ポリヌクレオチド間の配列比較は、典型的には2ポリヌクレオチドの配列を“比較ウインドウ”を通し比較することで実施され、配列類似性の局所領域を特定し、比較が行われる。
“比較ウインドウ”とは、ここでは少なくとも20連続ヌクレオチドからなる概念上の断片を意味し、そして2配列を最適に並置するためにこの比較ウインドウ内のポリヌクレオチド配列の一部には参照配列に比べて20%以下の付加又は欠失(即ちギャップ)を持っている。比較ウインドウを並置するための配列の最適並置は、SmithとBaterman(1981)Adv Appl Math2:482の局所相同性アルゴリズム、NeedlmanとWunsch(1970) J.Mol.Biol.48:443の相同的アラインメントアルゴリズム、PearsonとLipman(1988)Proc.Natl.Acad.Sci(USA)85:244による類似性検索法、これらアルゴリズムのコンピューター化された手法(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0、Genetics Computer Group,575 ScienceDr.,Madison、WisのGAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTA)又は検定により実施され、そして各種方法により得られた最適アラインメント(即ち比較ウインドウを通し最高の相同性パーセンテージを得たもの)が選別される。
用語“配列同一性”とは、2ポリヌクレオチド配列が配列ウインドウ全体を通し同一であること(即ち、ヌクレオチド−ヌクレオチドを基礎に)を意味する。用語“配列同一性のパーセンテージ”は、比較ウインドウ全体に随意並置された2配列を比較し、同一核酸塩基(例えばA、T、C、G、U又はI)が両配列に存在している位置番号を決定し適合位置数を得て、適合位置の数を比較ウインドウ中にある位置の総数で除し、その結果に100を乗ずることで配列同一性のパーセンテージを得ることで、計算される。
ここでは用語“本質的に同一”とは、少なくとも20、より多くは少なくとも20−50ヌクレオチドの比較ウインドウに関し、参照配列と比較してポリヌクレオチド配列が少なくとも85%の配列同一性を、好ましくは少なくとも90ないし95%配列同一性を、より一般的には少なくとも99%の配列同一性を有している特徴にあって、前記配列同一性のパーセンテージが比較ウインドウ全体にて参照配列の20%以下である欠失又は付加を含んでいるかもしれないポリヌクレオチド配列と参照配列とを比較することで計算される上記ポリヌクレオチドの特徴を意味する。参照配列は例えばヒトMCP-1の断片の様なより大型の配列のサブセットであろう、
ポリペプチドに用いたと同様に、用語“本質的に同一”とは、2ポリペプチド配列をデフォルトのギャップ荷重を用いたプログラムGAP又はBESTFITの様なもので最適に並置した場合に、これらポリペプチドが少なくとも約80%の配列同一性を、好ましくは約90%の配列同一性を、更に好ましくは少なくとも約95%の配列同一性を、最も好ましくは少なくとも約99%の配列同一性を有することを意味する。
ここで用いる場合、用語“標識体”または“標識化”とは検出可能なマーカーの取り込み、例えば放射線標識されたアミノ酸の取り込み、又は標識化アビジン(例えば光学的又は比色法により検出可能な蛍光マーカー又は酵素活性を含むストレプトアビジン)により検出可能なビオチニル化成分のポリペプチドに結合させることを意味する。ポリペプチドを標識する各種方法が当分野で知られており、また利用されている。
ポリペプチドに適した標識体例には以下があるが、これに限定されない;放射性同位元素(例えば3H、14C、35S、125I、131I)、蛍光標識体(例えばFITC、ローダミン、ランタ二ド、燐光体)、酵素標識体(西洋ワサビパーオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリフォスファターゼ)、化学発光体、ビオチニル化基、二次レポーターにより認識される所定ポリペプチドエピトープ(例えばロイシンジッパーペア配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)。幾つかの実施態様では、標識体は立体障害を減じるために各種長さのスペーサーアームにより結合される。
ここで用いられる“本質的に純粋な”とは、対象種が存在する主要種であり(即ち、モルベースで組成体中のその他個々の種に比べより豊富である)、好ましくは本質的に純粋な分画は、目的種が少なくとも存在する全ての高分子種の約50%(モルベース)を構成している組成体である。一般に本質的に純粋な組成体は、組成体中に存在する全高分子種の約80%より多くを、より好ましくは約85%、約90%、約95%及び約95%より多くを構成している。最適には、目的種は本質的に均一(通常の検出法により組成体中に汚染種が検出されない)に精製され、前記組成体は本質的に単一高分子種により成る。
ペプチド3またはペプチド2の単離「ケモカインペプチド変異体」は、対応するネイティブケモカインのアミノ酸配列と少なくとも50%、好ましくは少なくとも約80%、さらに好ましくは少なくとも約90%ではあるが100%未満の連続アミノ酸配列相同性または同一性を有する30以下、好ましくは約3〜約25、さらに好ましくは約3〜約18、さらに好ましくは約3〜約11のペプチジル残基を含むペプチドであり、例えば、Ser,ペプチド3(1−12)[MCP1](配列番号11)は、MCP-1、即ちペプチド3(1−12)[MCP-1](配列番号1)の対応するアミノ酸配列と100%未満の相同性を有する。本発明の変異体は、対応するネイティブケモカイン中に存在しないアミノ酸残基、および対応するネイティブケモカインに比較して内部欠失を含み得る。ケモカインペプチド変異体は、少なくとも1つのD−アミノ酸を有するペプチドを含む。
化学修飾、例えばエステル化、アミド化、還元、保護化等を施されるケモカインペプチドまたはペプチド変異体は、ケモカイン「誘導体」と呼ばれる。例えば、in vivoでのペプチドの安定性および生物学的利用能を改良することが知られている修飾は、例えば、1つ又はそれ以上のジスルフィド結合によるペプチドの環化である。好ましい修飾は、本発明のペプチドの環状逆配列誘導体(CRD)の合成である。
線状ペプチドは、ペプチドの逆(即ち、C末端からN末端へ)配列を用いて、すべてD−形態のアミノ酸で合成される。必要な場合には、付加的システイン残基がNおよびC末端に付加され(ペプチド配列がすでにNおよびC末端cys残基を有する場合)、それにより酸化的環化を可能にする。しかしながら、「CRD」という用語は、他のメカニズムによる、例えばペプチジル結合等による環化を含む。本発明の好ましい誘導体は、CRD-Cys0Cys13Leu4Ile11ペプチド3[MCP-1]またはCRD-Cys13Leu4Ile11ペプチド3(3−12)[MCP-1]である。
線状逆D(LRD)および環化前進L(CFL)誘導体も、「誘導体」という用語の範囲内に含まれる。LRD誘導体は、すべてD型のアミノ酸を有するペプチドの逆(即ち、C末端からN末端へ)配列を有するが、環化されない。CFL誘導体は、すべてL型アミノ酸を有するペプチドの前進(即ち、N末端からC末端へ)配列を有するが、付加的NおよびC末端cys残基(ペプチド配列がすでにcys残基をNまたはC末端位置に有する場合)を伴い、その後、酸化的環化または代替的方法による環化を伴う。本発明の他の「誘導体」としては、分枝鎖ペプチド、環状分枝鎖および分枝鎖環状ペプチドが挙げられる。
「ケモカイン類似体」とは、ケモカイン誘導性活性模倣するかまたは阻害する、あるいはケモカイン受容体と結合するかまたはそれに近接するが、しかしケモカイン活性を模倣しないかまたは阻害しない(中性)部分を意味するが、この場合、ケモカイン郵送性活性を模倣または阻害するか、あるいは受容体と結合するかまたは近接するが、中性である部分の一部分はペプチドではなく、そしてこの場合、類似体の活性部分は核酸分子ではない。本明細書中で用いる場合、「模倣する」という用語は、その部分がネイティブケモカインにより誘導される活性を誘導するが、しかし類似体による誘導がネイティブケモカインによる活性の誘導と必ずしも同一の大きさのものではないことを意味する。
本発明のケモカインペプチド、それらの変異体、類似体および誘導体は、シグナリング、例えばペプチドまたはポリペプチド分子、例えば抗体またはその断片または融合ペプチド、核酸分子、糖、脂質、脂肪、検出可能シグナル分子、例えば放射性同位元素、例えばγ線、常磁性分子または音波エミッター、小型化学物質、金属、塩、合成ポリマー、例えばポリラクチドおよびポリグリコリド、界面活性剤およびグリコサミノグルカン(これらは、他の部分がペプチド、変異体、類似体または誘導体の生物学的活性を変えない限りは、好ましくは、ケモカイン誘導性活性を模倣または阻害するペプチド、変異体、類似体Mたは誘導体と共有結合されるかまたは結合される)を引き出すかまたは阻害することなく、ケモカイン活性を阻害または模倣するか、あるいはケモカイン受容体と結合するかまたは近接する一部分以外の部分を包含し得る、ということも意図される。前記の部分と非共有的に会合するケモカインペプチド、変異体、類似体または誘導体も意図される。
本明細書中で用いる場合、「糖」とは、単糖、二糖、三糖および多糖を含む。その用語は、グルコース、スクロース、フルクトースおよびリボース、ならびにデオキシ糖、例えばデオキシリボース等を含む。糖誘導体は、国際特許出願WO96/34005およびWO97/03995に記載されたように都合よく調製され得る。糖は、エーテル結合を介して、式Iの残りの化合物と都合よく連結され得る。
本明細書中で用いる場合、ハロは、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードである。アルキルおよびアルコキシという用語は、直鎖および分枝鎖基の両方を意味するが、しかし個々の基、例えば「プロピル」に関しては、直鎖基のみを包含し、分枝鎖異性体、例えば「イソプロピル」は、特定的に言及される。アリールは、約9〜10個の環原子を有し、その中の少なくとも1つの環が芳香族であるフェニル基またはオルト縮合二環式カルボ環式基を意味する。
ヘテロアリールは、炭素および非ペルオキシド酸素、硫黄およびN(R4)(式中、R4は存在しないかまたは水素、(C1〜C4)アルキル、フェニルまたはベンジルである)、ならびにそれから誘導される、特にベンズ誘導性の約8〜10個の環原子のオルト縮合二環式複素環の基、あるいはプロピレン、トリメチレンまたはテトラメチレン二ラジカルをそこに縮合することにより得られるものから成る群から選択される1〜4個の異種原子からなる5または6個の環原子を含有する一環式芳香族環の環炭素を介して結合される基を包含する。
(式中、R1は、アリール、ヘテロアリール、アリール(C1〜C3)アルキル、クマリル、クマリル(C1〜C3)アルキル、クロマニルまたはクロマニル(C1〜C3)アルキルであって、この場合、任意のアリールまたはヘテロアリール基、あるいは任意のクマリルまたはクロマニル基のベンズ環は、ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルカノイル、(C2〜C6)アルカノイルオキシ、−C(=O)(C1〜C6)アルコキシ、C(=O)NRgRh、NRiRjから成る群から選択される1、2または3つの置換基で任意に置換され、
R2は、(C1〜C10)アルキル、(C3〜C6)シクロアルキル、(C3〜C6)シクロアルキル(C1〜C6)アルキル、(C1〜C10)アルコキシ、(C3〜C6)シクロアルキル(C1〜C6)アルコキシまたはN(Ra)(Rb)であり、
R3は、(C1〜C10)アルキル、(C3〜C6)シクロアルキル、(C3〜C6)シクロアルキル(C1〜C6)アルキル、(C1〜C10)アルコキシ、(C3〜C6)シクロアルキル(C1〜C6)アルコキシまたはN(Rc)(Rd)であり、
Yは、オキソまたはチオキソであり、
Zは、(C1〜C15)アルキル、(C3〜C6)シクロアルキル、(C3〜C6)シクロアルキル(C1〜C6)アルキル、(C1〜C15)アルコキシ、(C3〜C6)シクロアルキル(C1〜C6)アルコキシまたはN(Re)(Rf)であり、そして
Ra〜Rjは各々別々に、水素、(C1〜C10)アルキル、(C1〜C10)アルカノイル、フェニル、ベンジルまたはフェネチルであり、あるいはRaとRb、RcとRdおよびReとRf、RgとRhまたはRiとRjは、それらが結合される窒素と一緒になって、ピロリジノ、ピペリジノまたはモルホリノから選択される環を形成する)の化合物、あるいは製薬上許容可能なその塩である。
式(IV)の化合物の好ましい実施態様は、R1がアリール、ヘテロアリール、クマリルまたはクロマニルである式(IV)の化合物を含む。好ましくは、アリールはフェニルであり、ヘテロアリールはインドリルまたはピリジニルである。式(IV)の化合物の別の好ましい実施態様は、R2がN(Ra)(Rb)であり、そしてR3がN(Rc)(Rd)である式(IV)の化合物を含む。式(IV)の化合物のさらに別の好ましい実施態様は、Zが(C1〜C15)アルキルである式(IV)の化合物を含む。
さらに好ましい化合物は、R1がインドリルであり、R2がN(Ra)(Rb)であり、R3がN(Rc)(Rd)であり、YがSであり、Zが水素であり、そしてRa、Rb、RcおよびRdが各々メチルである式(IV)の化合物である。
式(IV)のさらに別の好ましい化合物としては、R1が2−ベンズイミダゾリルであり、R2がN(Ra)(Rb)であり、R3がN(Rc)(Rd)であり、Yがオキソであり、そしてZがN(Re)(Rf)である化合物、あるいは製薬上許容可能なその塩が挙げられる。式(IV)の別の好ましい化合物は、R1が2−ベンズイミダゾリルであり、R2がN(Me)2であり、R3がN(Me)2であり、Yがオキソであり、そしてZがN(Me)2である化合物、あるいは製薬上許容可能なその塩である。
本発明の別の好ましいケモカイン類似体は、式(V):
(式中、R4はNRkRlであり、
R5はNRmRnであり、
R6はNRoRpであり、
R7はNRqRrであり、
R8は、水素、ヒドロキシ、(C1〜C10)アルキル、(C3〜C6)シクロアルキル、(C3〜C6)シクロアルキル(C1〜C6)アルキル、(C1〜C10)アルコキシ、(C3〜C6)シクロアルキル(C1〜C6)アルコキシ、NRsRt、アミノ酸のアミノ末端または2〜約25アミノ酸残基のペプチドのN末端残基であり、
ここで、Rk、Rl、RoおよびRpは各々別々に、水素、(C1〜C10)アルキル、(C3〜C6)シクロアルキル、(C3〜C6)シクロアルキル(C1〜C6)アルキル、(C1〜C10)アルカノイル、フェニル、ベンジルまたはフェネチルであり、RmおよびRnは各々別々に、水素、(C1〜C10)アルキル、(C3〜C6)シクロアルキル、(C3〜C6)シクロアルキル(C1〜C6)アルキル、(C1〜C10)アルコキシ、(C1〜C10)アルカノイル、(C1〜C10)アルコキシカルボニル、9−フルオレニルメトキシカルボニル、フェニル、ベンジル、フェネチル、アミノ酸または2〜約25アミノ酸残基のペプチドのC末端であり、
RqおよびRrは各々別々に、水素、(C1〜C10)アルキル、(C3〜C6)シクロアルキル、(C3〜C6)シクロアルキル(C1〜C6)アルキル、フェニル、ベンジルまたはフェネチルであり、
RsおよびRtは各々別々に、水素、(C1〜C10)アルキル、(C3〜C6)シクロアルキル、(C3〜C6)シクロアルキル(C1〜C6)アルキル、フェニル、ベンジルまたはフェネチルである)の化合物、あるいは製薬上許容可能なその塩である。
好ましくは、 Rk、Rl、RoおよびRpは各々別々に、水素であり、RmおよびRnは各々別々に、水素、アセチル、(C1〜C10)アルキル、(C3〜C6)シクロアルキル、プロポキシ、ブトキシ、tert−ブトキシカルボニル、9−フルオレニルメトキシカルボニル、アミノ酸または2〜約25のアミノ酸残基のペプチドのC末端であり、RqおよびRrは各々別々に、水素、(C1〜C10)アルキルまたは(C3〜C6)シクロアルキルである。
ケモカインの別の好ましい類似体は、式(XIII):
(式中、R1は、アリール、ヘテロアリール、アリール(C1〜C10)アルキル、アリール(C1〜C10)アルカノイル、ヘテロアリール(C1〜C10)アルキルまたはヘテロアリール(C1〜C10)アルカノイルであり、
R2は、水素、(C1〜C15)アルキル、(C3〜C8)シクロアルキル、(C3〜C8)シクロアルキル(C1〜C10)アルキル、アリールまたはアリール(C1〜C10)アルキルであり、
R3は、水素または(C1〜C10)アルキルであり、R4は、水素または(C1〜C10)アルキルであり、R5はN(Ra)(Rb)であり、
R6はN(Ra)(Rb)であり、そして
RaおよびRbは各々別々に、水素、(C1〜C10)アルキル、(C1〜C10)アルカノイルまたはアリール(C1〜C10)アルキルであるか、あるいはRaおよびRbはそれらが結合される窒素と一緒になってピロリドン、ピペリジノまたはモルホリノ環を形成するが、この場合、あらゆるアリールまたはヘテロアリールが、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルカノイル、(C1〜C6)アルカノイルオキシおよびメチレンジオキシから成る群から別々に選択される1、2、3または4つの置換基で任意に置換される)の化合物、あるいは製薬上許容可能なその塩である。
式(XIII)の化合物に関しては、R1は特に3−インドリルメチルであり、R2は特にイソプロピル、tert−ブチルまたはフェニルであり、R3は特にメチルであり、R4は特に水素であり、R5は特にアミノであり、R6は特にジメチルアミノ、ベンジルアミノまたはヒドロキシベンジルアミノであり得る。
(式中、R1は、O(Ra)(ここで、RaはH、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルカノイル、(C1〜C6)アルカノイルオキシ、(C6〜C10)アリールまたは(C6〜C10)ヘテロアリールである)、またはN(Rb)(Rc)(ここで、RbおよびRcは各々別々に、Hまたは(C1〜C6)アルキルである)であり、
R2は、O(Ra)(ここで、RaはH、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルカノイル、(C1〜C6)アルカノイルオキシ、(C6〜C10)アリールまたは(C6〜C10)ヘテロアリールである)、またはN(Rb)(Rc)(ここで、RbおよびRcは各々別々に、Hまたは(C1〜C6)アルキルである)であり、
R3は、H、C(=O)またはC(=S)であり、
R4は、H、C(=O)、C(=S)、O(Ra)(ここで、RaはH、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルカノイルオキシ、(C1〜C6)アルカノイル、(C6〜C10)アリールまたは(C6〜C10)ヘテロアリールである)、またはN(Rb)(Rc)(ここで、RbおよびRcは各々別々に、Hまたは(C1〜C6)アルキルである)であり、
nは、0〜6のそれぞれを含む整数であって、ここで、あらゆる(C6〜C10)アリール、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルカノイルオキシ、(C6〜C10)ヘテロアリールまたは(C1〜C6)アルカノイルは、ハロ、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルカノイル、(C1〜C6)アルカノイルオキシ、(C1〜C6)アルコキシカルボニル、メトキシジオキシ、ヒドロキシ、C(=O)およびN(Rb)(Rc)(ここで、RbおよびRcは各々別々に、Hまたは(C1〜C6)アルキルである)から成る群から選択される少なくとも1角置換基で任意に置換される)の化合物、あるいは製薬上許容可能なその塩である。
式(X)のその他の特定の化合物としては、[3S]−3−(ウウデク−10−エノイルアミノ)ピペリジン−2,6−ジオン(化合物58,4)およびN−ベンゾイル−1−ピログルタメート(化合物58,12)が挙げられる。
式(X)のその他の特定の化合物を、以下の表に示す:
式(XI)の特定の化合物を、以下の表に示す:
式(XII)の特定の化合物は以下の表に示される。
式(IV)、(V)、(VI)、(XIII)、(XIV)、(X)、(XI)、(XIX)および(XII)の化合物、およびキラルセンターを有するペプチドである本発明の化合物は、光学的活性体およびラセミ体の形態において存在すると共に単離しうることが、当業者には理解されるであろう。例えば、本発明の化合物は、DまたはL形態のα−アミノ酸残留物またはそれらの混合物を含む。いくつかの化合物は多形性を示すことが可能である。本発明が、本明細書において記載される有用な特性を有する本発明の化合物の、あらゆるラセミ体、光学的活性体、多形性、または立体異性体の形態、あるいはそれらの混合物を包含することは、理解されるはずである。
光学的活性体の製造の仕方は技術上よく知られている(例えば、再結晶化技術によるラセミ体の分離によるか、光学的活性出発材料からの合成によるか、キラル合成によるか、またはキラル固定相を用いるクロマトグラフ分離による)。本明細書に記載された標準試験を用いて、または技術上よく知られている他の試験を用いて、化学運動性(chemokine)誘導活性を抑制するか、または増進するための化合物の能力を測定する仕方も、技術上よく知られている。
ラジカル、置換基および範囲に対する本明細書において一覧された、特定の、および好ましい値は、説明用のみであり、それらは他の決定値またはラジカルおよび置換基に対する決定範囲内の他の値を排除しない。特に、(C1〜C15)アルキルはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソ−ブチル、s−ブチル、ペンチル、3−ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、9−メチルウンデシル、ドデシルであることが可能である;(C1〜C6)アルキルはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソ−ブチル、s−ブチル、ペンチル、3−ペンチル、またはヘキシルであることが可能である;
(C1〜C3)アルキルはメチル、エチル、またはプロピルであることが可能である;(C3〜C6)シクロアルキルはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシルであることが可能である;(C1〜C10)アルコキシはメトキシ、エトキシル、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソ−ブトキシ、s−ブトキシ、ペントキシ、3−ペントキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、またはデシルオキシであることが可能である;(C1〜C6)アルコキシはメトキシ、エトキシル、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソ−ブトキシ、s−ブトキシ、ペントキシ、3−ペントキシ、またはヘクスオキシであることが可能である;
(C1〜C10)アルカノイルはホルミル、アセチル、プロパノイル、ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、またはデカノイルであることが可能である;(C1〜C6)アルカノイルはホルミル、アセチル、プロパノイル、ブタノイル、ペンタノイル、またはヘキサノイルであることが可能である;(C2〜C6)アルカノイルオキシはアセトキシ、プロパノイルオキシ、ブタノイルオキシ、ペンタノイルオキシ、またはヘキサノイルオキシであることが可能である;アリールはフェニル、インデニル、またはナフチルであることが可能である;およびヘテロアリールはフリル、イミダゾリル、テトラゾリル、ピリジル、(またはそのN−酸化物)、チエニル、ベンズイミダゾリル(またはそのN−酸化物)、ピリミジニル(またはそのN−酸化物)、インドリル、またはキノリル(またはそのN−酸化物)であることが可能である。
さらに、本発明の薬剤(例えば、ペプチド3、それの変異体または誘導体、式(IV)の化合物、式(V)の化合物、式(VI)の化合物、式(XIII)の化合物、式(XIV)の化合物、式(X)の化合物、式(XI)の化合物、式(XIX)の化合物、または式(XII)の化合物)は、「サッカリド共役」を生成するために、ヒドロキシル、アミドおよび/またはエステル基において、O−連結糖および糖鎖(例えば、サッカリド)を含むように変性することが可能であることが、理解される。好ましいサッカリド共役は、1個以上のサッカリドに連結されたペプチド誘導体CRD-Leu4IIe11Cys13ペプチド3(3〜12)[MCP-1]である。例えば、ペプチド誘導体は、アミノ端末および1個または両方のリシンε−アミノ基(例えば、実施例18において製造されたような)のいずれか、または両方へのアミノ配糖体結合によりサッカリドに連結することが可能である。
好ましくは、本発明の治療薬剤は、生物学的に活性である。化学運動性のペプチド、ペプチド変異体、それの類似体または誘導体の生物学的活性度は、いくつかは以下に述べられる技術上知られた方法により測定することが可能である。例えば、本発明の範囲内に入る生物学的に活性なペプチド3[MCP-1]変異体は、対応する自然のペプチド配列、例えば、ペプチド3(1〜12)[MCP-1](配列番号:1)、または自然の化学運動体、例えば、[MCP-1](配列番号:16)の活性度の少なくとも約1%、好ましくは少なくとも約10%、さらに好ましくは少なくとも約50%、およびまださらに好ましくは少なくとも約90%を有する。従って、本発明の範囲内に入るペプチド3変異体、例えば、Leu4IIe11Cys13ペプチド3(3〜12)[MCP-1]は、100μMでのペプチド3(1〜12)[MCP-1](配列番号:1)の最大活性度の少なくとも約1%、好ましくは少なくとも約10%、さらに好ましくは少なくとも約50%、およびまださらに好ましくは少なくとも約90%である抑制のためのED50を有する。
本明細書において用いられる「化学運動体誘導活性度」は、活性度が変更できるように、化学運動体、本発明の治療薬剤、または他の成分例えば、ウイルス性蛋白質を化学運動体受容体に結合すること、または物理的にごく近接している治療薬剤または成分を受容体に結合することを通して引き出される活性度を含むが、それには限定されない。化学運動体受容体は、CCR1(CC-CKRI)、CCR2a、CCR2b、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、HGBER32(WO98/09171)、CXCR1(IR8RI)、CXCR2、CXCR3、CX3CR1、CXCR4およびCXCR5を含むが、それらに限定されない。化学走性物受容体は、細胞移動、細胞活性化、ウイルスまたは寄生虫浸入、および代わりの炎症性化合物の放出などにおいて役割を果たす。
本明細書において用いられる「化学運動体誘導活性度に関係する適応症」は、アテローム性動脈硬化症、および例えば、ベーチェット症候群、巨細胞性動脈炎、多発性筋痛リウマチ、ウエゲネル肉芽腫症、チャーグ−ストラウス症候群脈管炎、ヘーノホ−シェーンライン紫斑病、カワサキ病、マイクロスコピック多発性アングリチス、タカヤス動脈炎、本態性寒冷グロブリン血症脈管炎、白血球クラスチックアングリチス、多発性動脈炎ノドサ、一次性肉芽腫性中枢神経系脈管炎、薬剤導入抗好中球細胞形質自己抗体(ANCA)関係の脈管炎、寒冷グロブリン血症脈管炎、狼瘡脈管炎、リウマチ脈管炎、シェーグレン症候群脈管炎、低補体血症性蕁麻疹脈管炎、グッドパスチャー症候群、血清病脈管炎、薬剤導入免疫複合体脈管炎、
異常新生小血管脈管炎(例えば、リンパ芽球増殖性新生物誘導脈管炎、骨髄芽球増殖性新生物誘導脈管炎、および癌腫導入脈管炎)、および炎症性腸疾患脈管炎、心筋梗塞、脳卒中、アテローム性動脈硬化症に続く急性虚血などの疾患;高血圧;再潅流傷害(Kumar et al., Circulation, 95, 693 (1997));大動脈瘤;静脈移植増殖(Stark et al., Athero., Thrombosis. and Vascular Biology, 17, 1614 (1997));脈管形成;高コレステロール血症;うっ血性心不全;カワサキ病;特に、血管形成術を受けている患者における狭窄症または再狭窄;骨粗しょう症などの病理的低骨ミネラル密度(Posner et al., Bone, 21, 321 (1997));
潰瘍性大腸炎;慢性閉塞性肺疾患;脳卒中;ヒト免疫欠損ウイルス(HIV)、化学運動体受容体を介しての細胞浸入という同じ機構による他のレンチウイルスまたはレトロウイルスでの感染、または他のウイルス、例えば、サイトメガロウイルス(Sozzani et al., J.Leukoc. Biol, 62, 30 (1997))による感染、またはウイルス性髄膜炎をもたらすウイルス感染;急性移植除去または遅延移植機能、同種移植片拒否および移植片対受容体疾患;移植脈管病;マラリアおよびプラスモジウムに関係する寄生虫による他の感染の結果;喘息;アトピー(IgE−介在成分)、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、過敏症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(IgE−介在)、および過敏症肺臓炎(高IgEおよび反応性Tセル)(鳩ブリーダー病、農民の肺疾患、加湿器肺疾患、麦芽取扱い者の肺疾患);
例えば、犬および猫など家の動物の、蚊に噛まれること、または他の昆虫にさされるアレルギー、毒アイビー、毒オーク、毒ウルシ、または他の皮膚抗原を含む抗原との接触などによる、哺乳動物におけるノミアレルギー性皮膚炎を含むアレルギー;蕁麻疹;湿疹;特発性の肺繊維症などの肺繊維症;嚢胞性繊維症;溶血尿毒症症候群(Van Setten et al., Pediatr, Res., 43, 759 (1998));1型糖尿病、クローン病、多発性硬化症、関節炎、リウマチ様動脈炎(Ogata et al., J.Pathol., 182, 106 (1997); Gong et al., I.Exp. Med., 186, 131 (1997))、系統的狼瘡エリテマトーデス、自己免疫(ハシモトの)甲状腎炎、肝炎および原発性胆汁性肝硬変などの自己免疫肝臓疾患、
甲状腺機能亢進症(グレーブズ病;甲状腺中毒症)、耐インスリン糖尿病、自己免疫アデイソン病(アデイソン疾患)、自己免疫卵巣症、自己免疫睾丸症、自己免疫溶血性貧血、発作性冷間ヘモグロビン尿症、ベチェット病、自己免疫血小板減少症、自己免疫好中球減少症、悪性貧血、赤芽球ろう貧血、自己免疫凝結異常、重症筋無力症、実験的アレルギー性脳脊髄炎、自己免疫多発神経炎、天疱瘡および他の水疱性疾患、リウマチ性心臓炎、グッドパスチャー症候群、心術後症候群、ショーグレン症候群、多発性筋炎、皮膚筋炎、および強皮症に限定されないがそれらを含む自己免疫疾患;
ブドウ膜炎または失明ヘルペス間質角膜炎などの眼の疾患;肝臓疾患;エルリキオシス(erhlichiosis)またはライム関節炎を含むライム病;異常造血;例えば、犬および猫などの家の動物用の局所的な耳掃除用として配合されることからの外耳炎;腹膜内癒着、例えば、術後、特に婦人科学の、または腸の手術後に成長する癒着(Zeynelogu et al., Am. J.Obstet Gynecol., 179, 438 (1998));手術後の傷跡;照射誘導繊維症;腎臓異常;外傷後の炎症、例えば、アテレクトミー、循環系手術、および組織置換、および人工器官の移植材料;例えば、常染色体優性多発性のう胞腎、糖尿病腎臓病、IgA腎臓病、間質性繊維症、または狼瘡による腎炎;
不適当な炎症からもたらされる他の疾患状態のみならず、例えば、過敏な、または炎症性腸症候群(Mazzucchelli et al., J.Pathol., 178, 201 (1996))、乾癬などの皮膚疾患(Gillitzer et al., Arch. Dermatol. Res., 284, 26 (1992))および扁平苔癬、遅れ型過敏症、アルツハイマー病(Jhonstone et al., J.Neuroimmunol., 93, 182 (1999))、慢性肺炎症、例えば、肺胞炎および肺肉芽腫、歯肉炎症または他の歯周病、および歯肉治療学的外傷に関係する骨性の炎症(Volejnikova et al., Am. J.Pathol., 150, 1711 (1997))、
過敏症肺臓炎などの過敏症肺臓疾患(Sugiyama et al., Eur. Respir. J., 8, 1084 (1995))、およびマスト細胞からのヒスタミン放出(Galli et al., Ciba Foundation Symposium, 147, 53 (1989))のアレルギー性鼻炎、またはマスト細胞腫瘍、1型過敏症反応(過敏症、皮膚アレルギー、蕁麻疹、アレルギー性鼻炎、およびアレルギー性胃腸炎)などの好塩基球からのヒスタミン放出に関係する炎症(Dvorak et al., J.Allergy Clin. Immunol., 98, 355 (1996));糸球体腎炎(Gesualdo et al., Kidney International, 51, 155 (1997));腹膜透析に関係する炎症(Sach et al., Nephrol. Dial. Transpklant, 12, 315 (1997));肺気腫;および膵臓炎を含むがそれらに限定されない。
本発明の範囲に包含されるその他の適応は、新生物形成、例えば組織球症、神経膠腫、肉腫、骨肉腫、骨腫(Zheng等、J.Cell Biochem.,70,121(1998))、黒色腫、カポジ肉腫、小細胞肺ガン、および卵巣癌ならびに化学療法に伴う骨髄抑制および粘膜炎;肺の炎症性偽腫瘍;例えばdisc手術後の脳または脊髄外傷(Ghirnikar等、J.Neurosci.Res.,46,727(1996);Berman等、J.Immunol.,156,3017(1996);痛風;肺疾患、例えば人間、牛、豚等の呼吸器シンシチウムウイルス感染、または肺傷害によるもの(Lukacs等、Adv.Immunol.,62,257(1996));成人呼吸窮迫症候群(Robbins, Pathologic Basis of Disease, Cotran等編、第5版);卒中;レフラー症候群;
慢性好酸球肺炎;肺線維症;創傷治癒;細菌感染、例えば細菌性腹膜炎、髄膜炎またはグラム陰性敗血症;トキシックショック症候群;肉芽腫症、例えばマイコバクテリア症、ニューモシスティス症、ヒストプラスマ症、ブラストミセス症、コクシジオイデス症、クリプトコックス症、アスペルギルス症、肉芽腫性腸炎、カンジダ症、異物肉芽腫症および腹膜炎、肺肉芽腫症、ウェゲナー肉芽腫症(Del Papa等、Arthritis Rheum.,39,758(1996))、らい病、梅毒、ネコひっかき病、住血吸虫症(Jacobs等、Am.J.Pathol,150,2033(1997))、珪肺症、サルコイドーシス(Iida等、Thorax, 52,431(1997);Car等、Am. J.Respir.Crit.Care Med.,149,655(1994))およびベリリウム症;致死性内毒血症(Zisman等、J.Clin.Invest.99,2832(1997));ならびに、
弱い炎症反応に伴う適応、例えば寄生虫感染、例えばリーシュマニア症(Moll, Bil.Abs.,104,21765(1997))、トリパノソーマ類、Mycobacterium IepraeまたはMycobacterium tuberculosis感染、蠕虫感染、例えば線虫(回虫);(鞭虫症、蟯虫症、回虫症、鉤虫、糞線虫症、旋毛虫症、フィラリア症);吸虫類(下痢)(住血吸虫症、肺吸虫症)、条虫(サナダムシ)(エキノコックス症、無鉤条虫症、胞虫症);visceral works、内臓幼虫移行症(例えばトキソカラ属)、好酸球性胃腸炎(例えば、Anisaki種、Phocanema種)、皮膚幼虫移行症(Ancylostoma braziliense、Ancylostoma caninum)、または真菌感染症、を包含するが、これらに限定される訳ではない。
本発明に係るペプチドはさらに、避妊薬として、または流産の誘発に、急性呼吸窮迫症候群、およびステロイドが常套的に使用される疾患(例えば、Behecrs colitisおよび喘息の再発)に対して有用である。
さらに、腫瘍壊死因子α(TNFα)と結びついている適応、例えば慢性関節リウマチまたは内毒血症、またはTNFαのレベルの上昇に付随する適応もまた本発明の範囲内に包含される。これらの適応は、エンドトキシンショック;クローン病;発熱、およびインフルエンザ様症状;急性間質性肺炎;敗血症および非敗血症性ショック;急性呼吸窮迫症候群;血栓塞栓状態;骨再吸収;関節炎;急性移植片対宿主病;らい病;マラリア;大脳マラリア;結核または癌の悪液質;および特発性線維症が包含されるがこれらに限定されない。
I.本発明の範囲に包含される治療物質の同定
本発明の実施に有用な物質は、ケモカインにより誘発される活性、例えば単球またはマクロファージの補充を、阻害または低減させ(例えばケモカインレセプターアンタゴニスト)、または増加、増大もしくは増強させる(例えばケモカインレセプターアゴニスト)物質を包含する。これらの物質は、例えば下に記載するようなインビトロおよびインビボ検定によって同定することができる。本発明の範囲に包含される物質が全てインビトロおよびインビボでケモカインにより誘発される活性を阻害または増強できる訳ではないことが理解できるであろう。本発明に係る治療物質は、直接的なレセプター結合アゴニストおよび/またはアンタゴニストであってよく、または異なった機構、例えばアンチセンス核酸とケモカインmRNAとの二本鎖の形成によって、または1以上の機構によって作用して、その結果、ケモカインにより誘発される活性の変化を導くことができる。
A.ペプチド、変異体、誘導体および類似体
1.インビトロ走化性
或る物質がケモカインにより誘発される活性、例えばマクロファージ補充を阻害するかどうかを決定するために、この物質の様々な量を、既知の化学誘引物質の存在下で細胞と混合する。例えば、或る既知の濃度範囲の物質、例えばケモカインペプチドを、トランスウェル平板の上部コンパートメントのウェル一つ一つで、所定の数(例えば104−106)のヒトTHP-1単球細胞と共にインキュベートする。
トランスウェル移動検定でTHP-1細胞の有意な移動を惹起することがわかっている濃度のケモカイン(例えばMCP-1,MIP1α、IL8またはSDF-1α)を下部コンパートメントに入れる(図1)。次に細胞を、移動を起こさせるに充分な時間、例えば4時間、37℃でインキュベートする。インキュベーションの後、細胞をピペットで静かにフィルターの上部から取り、単純PBS中の20mM EDTA 20μLを各々の上部ウェルに加え、4℃で20分間インキュベートする。培地を穏やかに流しながらフィルターを注意深く洗い流し、取り外す。
THP-1細胞の2倍希釈系列(29μL中)より成る標準曲線を調製して、移動した細胞数を正確に定量する。MTT保存染色溶液3μLを各ウェルに直接加え(RPMI-1640中5mg/mL、フェノールレッド無し。Sigma Chemical Co.。)、37℃で4時間インキュベートすることにより、移動した細胞を染色した。培地を各ウェルから注意深く吸引し、変換された色素をDMSO 20μLによって可溶化する。変換された色素の吸光度をELISA平板読み取り機を用いて595nmの波長で測定する。次いで標準曲線への内挿により、各ウェルにおいて移動した細胞の数を決定する(Imai等、J.Biol.Chem.272,15036(1997)をも参照されたい)。
細胞を数えるために好適な任意の方法、例えば、血球計を用いる計数、細胞をMTTと共にインキュベーション(上記を参照されたい)、またはFACS分析を使用することができる。TGF-βまたはその他の非ケモカイン化学誘引物質(例えばIL1βまたはTNFα)を使用する負の対照検定もまた実施する。その物質が細胞毒性であるかどうかを評価するため、同濃度の物質をTHP-1細胞と共にインキュベートする。1)移動を阻害するレベルでは細胞毒性でない、2)負の対照により誘導される移動の阻害について無効である、そして3)ケモカインにより誘導されるTHP-1移動を低減または阻害する、物質が、本発明の範囲に包含される物質である。
ヒト好中球、好酸球、肥満細胞、好塩基球、血小板、リンパ球または単球を使用する走化性検定で物質をスクリーニングすることもできる。単球については、新鮮な血液9mLを3.8%クエン酸ナトリウム1mLを入れた試験管に移し、室温で15分間放置する。この抗凝固血液5mLをPolymorphprep(商標)(Nycomed Pharma、オスロ)3.5mL上に注意深く積層し、製造者の指示に従って500gで35分間遠沈する。試料/媒質界面にある上部バンドは単球を含んでいる。この単球をガラスピペットで注意深く取り除き、当初の容量(5mL)に再構成する。細胞をPBS+10%牛胎児血清で洗浄し、400gで10分間遠沈する。洗浄工程を3回反復した後、細胞を計数する。細胞をRPMI-1640+10%牛胎児血清(FCS)中、1x107細胞/mLで再懸濁する。この単球を5%CO2の加湿雰囲気下に37℃で2日間培養する。
2日目に細胞を計数し、遠沈し、Geyの均衡塩類溶液+牛血清アルブミン(BSA)1mg/mL中で1x107細胞/mLに再構成する。単球、好中球または好酸球については5−8μmポリカーボネートフィルター、そしてリンパ球については3μmのフィルターを取り付けた48または96ウェル使い捨て走化性チェンバー内で、走化性を誘導する(Uguccioni等、Eur.J.Immunol.,25,64(1995);Loetscher等、J. Exp.Med.,184,569(1996);Weber等、J.Immunol.,4166(1995))(無PVP、ChemoTX、Neuroprobe Inc.、キャビンジョン、MD)。
各ウェルの下部コンパートメントに29μLの化学誘引物質または対照を加える。枠付けしたフィルターをフィルター枠の角の穴に並べ、ウェルの上に位置させる。Geyの均衡塩類溶液25μL+BSA1mg/mLに入れた単球2.5x105を上部コンパートメントに加える。物質をMilliQ水に溶解し、Geyの均衡塩類溶液で連続希釈する。大抵の場合、連続希釈した物質を走化性チェンバーの上部コンパートメントに加える。このチェンバーは5%CO2の加湿雰囲気下に37℃で1.5時間インキュベートする。
2.酵素の放出
単球からのN−アセチル−β−D−グルコサミニダーゼの放出を利用して、或る治療物質がサイトカイン関連活性を阻害するかどうかを決定する。前もって加温した培地(136mM NaCl、4.8Mm KCl、1.2mM KH2PO4,1mM CaCl2,20mM Hepes、pH7.4,5mM D−グルコース、および1mg/mL無脂肪酸BSA)4mL中の単球1.2x106の試料をサイトカラシンB(2.7mg/mL)で2分間前処理し、次に、治療物質の存在下または不在下でケモカインにより刺激する。氷冷および遠沈により反応を3分後に停止させ、上清中の酵素活性を決定する(Uguccioni等、Eur.J.Immunol.,25,64(1995))。
或る治療物質がサイトカイン関連活性を阻害するかどうかを決定するために、好中球からのエラスターゼの放出を利用することもできる(Pereri等、J.Exp.Med.,1547(1988);Clark-Lewis等、J.Biol.Chem.,269,16075(1994))。
3.無サイトゾルCa 2+ 濃度([Ca 2+ ])変化
Fura-2(0.1nmol/105細胞)をロードした単球、好酸球、好中球およびリンパ球を、治療物質の存在下または不在下でケモカインによって刺激し、[Ca2+]iに関連する蛍光の変化を記録する(Von Tschanner等、Nature, 324,369(1986))。例えば、単球中のサイトゾルCa2+濃度を決定するため、1%アルブミン(w/v)および1mM CaCl2を添加したpH7.4,37℃のHEPES緩衝化塩水(145mM NaCl、5mM KCl、1mM MgCl2,10mM HEPES、および10mMグルコース)中で、単球をFura-2/AM 0.5μMと、37℃で30分間インキュベートする。
Fura-2をロードした後、細胞を300xgで5分間遠沈し、次にアルブミンを添加していない緩衝液に1.5x106細胞/mLの細胞密度まで再懸濁し、使用時まで室温で保存する。このプロトコルの結果、サイトゾルFura-2濃度は約100nMとなった。PBS+0.1%アルブミン(w/v)中のケモカインの連続希釈液(無菌濾過する)を細胞懸濁液のアリコート(0.7mL)に加える。単球懸濁液のFura-2蛍光を、4℃で単一励起、単一発光(500nm)波長のPerkin-Elmer LS5蛍光計で測定する。340nmの単一励起波長で測定した蛍光の変化から、[Ca2+]iを算出する。
対応する非形質転換細胞では発現されない、分子クローニングされたケモカインレセプターで安定的に形質転換された細胞における[Ca2+]iの測定は、本質上上記のように実施する。Fura-2/AMをロードした後、細胞(1x106/mL)は氷冷媒地(118mM NaCl、4.6mM KCl、25mM NaHCO3,1mM KH2PO4,11mMグルコース、50mM HEPES、1mM MgCl2,1mM CaCl2,0.1%ゼラチン(pH7.4)中に維持する。細胞懸濁液のアリコート(2mL)を前もって3mLプラスチックキュベット中で5分間37℃に加温し、マグネチックスターラーを使用し温度を37℃に管理して、蛍光を蛍光計(Johnson Foundation Biomedical Group)で測定する。励起を340nmに設定し、発光を510nmに設定する。[Ca2+]iは上記のように算出する。
カルシウム反応の交差脱感作時についての単球の研究のために、ケモカインを2分間隔で連続的に添加し、[Ca2+]iの経過を記録する。このタイプの研究で使用する濃度は各ケモカインによって異なり、[Ca2+]i運動性の最大反応を誘導することがわかっているレベルに設定する(Forssmann等、FEBS Lett.,408,211(1997);Sozzani等、J.Leukoc.Biol.,57,788(1995);Berkhout等、J.Biol.Chem.,272,16404(1997))。
4.ケモカイン結合および結合置換
一般に、特定の結合は、コールドコンピティターなしで結合した被標識剤の量マイナスコールドコンピティターの存在下で結合した被標識剤の量として計算される。変化する量のコールドコンピティター存在下での特定の結合の量は、例えば、スキャチャード分析を用いて、その被標識剤のセル上の結合箇所の数はもちろんのこと、被標識剤の会合常数を決定するのに使用できる。
この試剤は放射線標識法〔例えば、ヨウ素化〕あるいは適当な生化学タグ(例えば、ビオチン)、あるいは光活性化可能架橋グループの添加により標識できる。100μMより低い会合定数の試剤、すなわち、これは100μMの会合定数の試剤よりもより強力に結合し、またケモカイン受容体を表現する一つ以上の細胞タイプに対して、細胞当たり、約2500以上、好ましくは約10000以上、より好ましくは、25000を超える結合箇所を有する試剤は、本発明の範囲に入る。THP-1細胞は、細胞当たり少なくとも約5000 MCP-1受容体を有する。
例えば、単球を0.2%親ウシ血清および0.1%アジドを含む重炭酸無しのRPMI 1640培地に懸濁させる。放射線標識したケモカインペプチドを、増加する濃度の非標識ケモカイン(MCP-1, MCP-3, MCP-4, RANTESあるいはMIP-1α)の存在下あるいは不存在下で、37℃で15分間, 96−ウエルプレート中、0.2ml〔例えば、PBS + 0.5% FCS〕の最終体積で、1-2 x 106 細胞、例えば、THP-1細胞で培養する。培養後、0.5mlの氷冷洗浄緩衝液(20 mM Tris, 0.5 M NaCl, pH 7.4)を添加し、ブランドールセルハービスターを用いて、細胞をポリエチレンイミン処理したホットマンGF/Cフイルター上に集める。フイルターを4mlの冷たい洗浄緩衝液で洗浄し、ガンマーカウンターで、フイルターに結合している放射能をカウントする。
競合(competition)研究のために、4パラメターのロジスチック(cpmbound = cpmmax/(1 + ([L]/IC50)s) + cpmns, (ここに、cpmmaxはコンピティター無しの結合を、[L]はコンピティター濃度を、cpmnsは非特定結合を、またsは勾配係数を、それぞれ表す。))を使い、IC50を、カーブフィッティングプログラム(GrFit, Erithacus Software, London)で計算する。cpmboundは、細胞無し対照に対し補正する。Kdと特定の結合と結合する能力を得るために、GraFit best fit programを用い、ホモロガス変位実験からのデータを単一箇所リガンド結合方程式に適合させる。
ケモカインの、分子的にクローン化したケモカイン受容体で安定的に変換した細胞への結合は、放射線標識化した試剤を非標識ケモカインで希釈する点を除けば、本質的に、上述のようにして行われる。細胞は、放射線標識化した試剤プラスあるいはマイナス非標識ケモカインで37℃で30分間培養する(イマイら、上記;ソザー二ら(1995)、上記;ベルクハウトら、上記;WO97/22698を参照)。
5.対ケモカインダッフイー抗原受容体との結合(DARC)
治療剤のDARCに対する親和度、例えば、放射ヨウ素化MCP-1の赤血球の結合を抑制する治療剤の能力は、任意の従来法により決定できる。ケモカイン受容体に結合するよりもより低い会合定数〔すなわち、より強い結合〕でDARCへ結合する治療剤(すなわち、DARC選択比が1より小)であり、100μMよりも低い、好ましくは、10μMよりも低い、より好ましくは1μMよりも低い会合定数でDARC と結合する治療剤は、本発明の具体的な実施態様に有用である。対照的に、DARCと結合しないか、あるいはケモカイン受容体に対する親和度よりも大きな親和度で(すなわち、選択比が1より大)ではDARCと結合しない治療剤は本発明の他の実施態様に有用である。
6.ケモカインのコマイトジェン活動の抑制
多くのケモカインは低濃度のFCSはコマイトジェン的である、例えば、50ng/ml MCP-1 + 0.5% FCSは滑らかな筋肉細胞に対しては、マイトジェンである。治療剤の存在下あるいは不存在下で適当な細胞〔例えば、滑らかな筋肉細胞〕の上での普通のケモカインプラス低濃度(<5%)のFCSにより引き起こされるDNA合成を決定する当該技術分野で良く知られた検定は、このような抑制活動について治療剤をスクリー二ングするのに用いられる。ポレッカら(J. Vase. Res., 34, 58 (1997))を参照されたい。その開示は、参考文献としてここにあげる。
7.アゴニスト
発明の治療剤がケモカイン受容体アゴニストかどうかを決定するために、標識をつけた〔例えば、ビオチニル化した〕いろいろな量の治療剤を受容体を表わす細胞と混合する。例えば、THP-1細胞はMCP-1, MIP1a, SDF-1aおよびIL-8を表わし、Jurkat細胞はSDF-1に対する機能的受容体を表わす。ついで、細胞に対する被標識治療剤の親和度を決定する。かなりの親和度で受容体と結合し、シグナリングを誘起することにより受容体と相互作用する治療剤は本発明の範囲に入る。アゴニストあるいはアンタゴニストには入らないが、受容体と結合しあるいは受容体に近づくが、応答を引き出さない治療剤も本発明の範囲入り、中性治療剤と呼ぶ。
アゴニスト活動を有する治療剤はトランスウエルマイグレーションアッセイを用いて同定することもできる。このアッセイでは、細胞を治療剤のない上部の区画(図1を参照)に入れ、治療剤、例えば、ペプチド2[MCP-1]はいろいろな濃度でケモカインの代りに、低い区画に入れる。もし治療剤がアゴニスト活動を有するならば、アッセイの終わりには、低部の区画の、非活動性の対照を含む、すなわち、治療剤あるいは培地のみを含むウエル中よりは治療剤を含むウエル中で見出される。好ましくは、アゴニスト活動を有する治療剤はトランスウエルマイグレーションアッセイにおいては、プライマリー人間細胞、例えば、単球の移動をも刺激する。
さらに、弱い或いは中性のアゴニスト(受容体と結合するが、ネイティブケモカインとの結合とそれに続くシグナリングを抑制しない治療剤であり、シグナリングも誘起しない治療剤である)は、HIV gp120の結合を移動させる、特に、gp120のV3ループをTHP-1(Jurkat細胞)の表面に移動させる能力について治療剤をスクリーニングする事によって同定できる。いろいろな濃度の治療剤の存在下或いは不存在下で、細胞は、ビールス受容体と結合するのに効果的な量の、標識をつけた〔例えば、放射性ヨウ素化した〕組換えgp120プロテインと培養する。gp120結合を減少させるか、無くす治療剤は、本発明の範囲に入るアゴニスト或いは中性のアゴニストである。
8.インビボ
本発明の物質が炎症性の応答を阻害するか、それとも増大するかを判定するための迅速な方法は、本発明の物質の存在または不在下で動物の皮膚に選定されたケモカインを注射することである。或るのちの時点で適時動物を犠牲にし、ケモカインと試験物質の両者に曝露された動物のケモカイン注射部位の炎症細胞数と、ケモカインのみに曝露された動物のケモカイン注射部位の炎症細胞数とを対照動物に対して、例えば定量免疫蛍光により比較する。
B.本発明の核酸分子
1.本発明の核酸分子の供給源
本発明の核酸分子がケモカインペプチド、その変異体、またはその核酸補体をコード化するヌクレオチド配列の供給源には、当業界で周知の方法によりcDNAを取り出すことができる任意の真核の、好ましくは哺乳類の細胞源由来の完全またはポリA RNAがある。本発明のDNA分子の別の供給源には任意の真核細胞源から取り出されたゲノムライブラリーがある。さらに、本発明のDNA分子はインビトロで、例えばオリゴヌクレオチド約100個、好ましくは約75個、より好ましくは約50個、さらに一層好ましくは約40個をヌクレオチドの長さに合成することにより、あるいは特定のケモカインをコード化するDNAセグメントの部分をサブクローニングすることにより調製することができる。
2.ケモカインをコード化する遺伝子の単離
ケモカインをコード化する核酸分子は、Sambrook等の論文、Molecular Cloning:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, NY (1989)に記載されているような標準的な方法を用いて同定し、単離することができる。例えば、逆転写酵素PCR(RT-PCR)を使用してケモカインcDNAを単離し、クローニングすることができる。オリゴ−dTを逆転写酵素反応のプライマーとして使用して興味の対象のRNA配列を包含する単離されたRNA、例えばヒトの組織から単離された完全RNAから第一鎖cDNAを調製することができる。RNAは当業界で周知の方法により、例えばTRIZOL(登録商標)試薬(GIBCO-BRL/Life Technologies, Gaithersburg, MD)を用いて単離することができる。次いで得られた第一鎖cDNAをPCR反応で増幅する。
「ポリメラーゼ連鎖反応」すなわち「PCR」は、核酸、RNA、および/またはDNAの予め選択された断片量を米国特許第4,683,195号の記載に従って増幅する手順または方法を意味する。一般には興味の対象の領域の末端またはそれを越える領域に由来する配列情報を使用して少なくとも7〜8個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドプライマーを設計する。これらのプライマーは、配列が増幅される鋳型の向き合っている鎖と同一または類似であるはずである。
PCRを用いて特定のRNA配列;完全なゲノムDNA由来の特定のDNA配列;および完全な細胞RNA、バクテリオファージ、もしくはプラスミド配列から転写されたcDNA;などを増幅することができる。全般的には、Mullis等の論文、Cold Spring Habor Symp. Quant. Biol., 51, 263 (1987);Erlich編、PCR Technology, (Stockton Press, NY, 1989) を参照されたい。したがってPCRに基づくクローニング手法は、関係のある遺伝子またはポリペプチド配列の並びから推論される保存配列に依拠している。
プライマーは同定され、比較されたポリペプチドまたはヌクレオチドの高度保存配列に対応するように作成され、例えば別の真核ケモカインの配列比較によりプライマーを生成する。ケモカインをコード化するDNA分子については、アンチセンス鎖とアニールすることが予想される一つのプライマーが調製され、またセンス鎖とアニールすることが予想される別のプライマーが調製される。
各PCR反応の生成物を、アガロースゲルを介して分離し、全てをむらなく増幅した生成物をゲル精製し、周知のプラスミドベクターなどの適切なベクターに直接クローニングする。得られたプラスミドに制限エンドヌクレアーゼを加え、二重鎖プラスミドDNAのジデオキシシークエンシングにかける。
ケモカインをコード化するcDNAを同定し、単離し、クローニングする別の手法は、cDNAライブラリーをスクリーニングするものである。ケモカインをコード化するcDNAの全体または一部をコード化するDNA断片のスクリーニングは、ケモカインと関係があると考えられる遺伝子、例えば異なる種由来の特定のケモカインの相同染色体の間に高度に保存されている配列を有するプローブでライブラリーを探査することにより、あるいはケモカインを特異的に認識する抗体と結合するプラークをスクリーニングすることにより達成することができる。ケモカインと関係のあるまたはケモカインに対する抗体と免疫反応性のある配列を有するプローブと結合するDNA断片を適切なベクターにサブクローニングし、そしてシークエンシングを行ないおよび/またはケモカインの全体または一部をコード化する別のcDNAを同定するためのプローブとして用いることができる。
本明細書で使用されているように、「単離されたおよび/または精製された」という用語は、インビトロにおける天然の細胞環境由来のDNAまたはポリペプチド分子、および核酸またはポリペプチドのように細胞の他の要素に結合しているものに由来するDNAまたはポリペプチド分子の単離について言及したもので、シークエンス、複製、および/または発現されることが可能である。例えば、Sambrookら、前掲に明確にされているように、当該技術分野においてよく知られた方法として、「単離されたケモカイン核酸」は、少なくともケモカインの一部、またはその変異体、あるいはケモカインをコードする各々のRNA またはDANに対する相補鎖またはハイブリダイズであり、過酷な条件下でも安定して結合している相補的なRNAまたはDNAをコードする9対以上の連続した核酸塩基、好ましくは36対以上、さらに好ましくは45対、またはそれ以上の核酸塩基からなるRNAまたはDNAである。
このように、通常天然試料のRNAまたはDNAに付随する核酸の汚染が1分子もなく、且つ好ましくは、実質的にその他のほ乳動物のすべてのRNAまたはDNAがないという点で、RNAまたはDNAは「単離」されている。「通常、核酸試料に付随する核酸分子の汚染がない」という語句は、核酸は試料または天然の細胞に再導入されるものの、別の染色体に存在する、またはそうでない場合は、原料となる細胞に通常認められない核酸配列によってフランクされる場合を含む。単離されたケモカイン核酸の例としては、ヒトMCP-1をコードし、配列番号:16を有するMCP-1ポリペプチドと約80%、好ましくは少なくとも約90%、さらに好ましくは約95%の同一配列を共有するRNAまたはDNAである。
本明細書で使用されているように、「組み換え核酸」または「前もって選択された核酸」という用語は、例えば「組み換えDNAの配列または断片」または「前もって選択されたDNA配列または断片」のように、核酸のこと指す。例えば、適当な組織材料に由来するかまたは単離され、次いでインビトロで化学的に改変され、その結果、その配列が天然に存在しないか、または外因性DNAによって形質転換されていないゲノムでみられるような位置には存在しないであろう、天然の配列に相当する。
試料に「由来」する前もって選択されたDNAの例としては、与えられている生物内で有用な断片として同定され、それから本質的に精製された形で化学的に合成されるDNA配列であろう。このように試料から「単離された」DNAの例は、制限酵素のエンドヌクレアーゼを使用するなどの化学的手段によって該試料から切り出す、または取り出され、その結果更に本発明で使用するために遺伝子工学の方法論によって増幅するというような操作を行っているDNA配列で有用なものと思われる。
このように、制限酵素による切断から得られたDNA断片の回収または単離は、ポリアクリルアミドゲルまたはアガロースゲル上で分離し、既知の分子量を持つマーカーDNA断片の移動度と比較することで重要な断片を同定し、所望の断片を含むゲル片を取り出してDNAからゲル片を分離することで行うことができる。Lawnら、Nucleic Acid Res., 9, 6103(1981)、および Goeddelら、Nucleic Acid Res.,8 4057, (1980)を参照のこと。従って「前もって選択されたDNA」は、完全には合成のDNA配列、半合成のDNA配列、生物試料から単離されたDNA配列、およびRNAに由来するDNA配列、そしてこれらの混合物を含む。
本明細書で使用されているように、RNA分子に関して「由来する」という用語は、RNA分子が特定のDNA分子に対して相似の相補的な配列を有することを指している。
3.本発明における核酸分子の変異
ケモカインペプチドのアミノ酸配列における変異をコードする核酸分子は、様々な当該技術分野においてよく知られている方法により作成される。これらの方法には、天然の試料(天然に存在するアミノ酸の配列変異の場合)からの単離、またはオリゴヌクレオチドを介する(サイトーダイレクト)突然変異による作成、PCRによる突然変異、初期に作成された変異体のカッセト突然変異またはケモカインペプチドの非変異体が含まれるが、これに限定するものではない。
オリゴヌクレオチドを介する突然変異はケモカインペプチドのアミノ酸の置換変異体を作成するのに好ましい方法である。この技術はAdelmanら、DNA,2 183 (1983 )によって述べられているように、当該技術分野でよく知られている。簡単に説明すると、ケモカインDNAは、改変されてないか、または天然のケモカインDNAの配列を含むプラスミドまたはバクテリオファージの1本鎖からなるテンプレートDNAに、所望の突然変異をコードするオリゴヌクレオチドをハイブリダイゼーションさせることによって改変される。ハイブリダイゼーション後に、DNAポリメラーゼは、オリゴヌクレオチドプライマーを組み込み、ケモカインDNAの選択された改変をコードすることになるテンプレートの二番目の相補鎖を合成するために使用される。
一般的に、少なくとも25塩基の長さを持つオリゴヌクレオチドが使用される。最適なオリゴヌクレオチドは12から15塩基で、突然変異をコードするヌクレオチドの片側で、テンプレートに対して完全に相補的である。このオリゴヌクレオチドは、Creaら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 75,5765(1978) によって述べられたように当該技術分野でよく知られた技術を使って容易に合成される。
このDNAテンプレートは、バクテリオファージM13のベクター(市販されているM13mp18およびM13mp19が適当である)、またはVieraら、 Meth. enzymol.,153,3(1987)によって述べられたように1本鎖ファージの複製起点を含むベクターのどちらかに由来するベクターによって作成される。このように、突然変異を起こさせた本DNAは1本鎖テンプレートを作成するためにこれらのベクターの一つに挿入されてもよい。1本鎖テンプレートの産生はSambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press, N.Y.1989) 第4章21-41に述べられている。
あるいは、1本鎖DNAテンプレートは標準技術を使って2本鎖プラスミド(または他の)DNAの変性によって作成してもよい。
天然のDNA配列の改変(例えば、アミノ酸配列における変異体を作成する)ために、オリゴヌクレオチドが適切なハイブリダイゼーションの条件下で1本鎖テンプレートにハイブリダイズされる。DNAを重合する酵素は、たいていDNAポリメラーゼ Iのクレノウ断片であるが、合成のためのプライマーとしてオリゴヌクレオチドを使い、テンプレートの相補鎖を合成する。ヘテロ2本鎖分子がこのように形成されるので、1本鎖DNAはケモカインの突然変異体をコードし、他方(元来のテンプレート)は天然のままで、改変されていないケモカイン配列をコードしている。
このヘテロ2本鎖は、一般的に大腸菌JM101のように、適当な宿主細胞である原核生物に形質転換を起こさせる。細胞が成長した後アガロースプレートで培養し、突然変異を起こしたDNAを含む細菌の集落を同定するために32Pで標識したオリゴヌクレオチドプライマーを使ってスクリーニングする。突然変異を生じた部位が取り出され、一般的に宿主の形質転換に用いられる代表的な発現ベクターで、適当なペプチドまたはポリペプチド産生ベクターに組み込まれる。
上記に述べた方法は、両方のDNA鎖に突然変異(複数の突然変異を含む)を持つプラスミドを使い、ホモ2本鎖を作成するというように変更してもよい。その変更点は以下のようなものである;1本鎖のオリゴヌクレオチドは、上記に述べたように1本鎖のテンプレートにアニーリングされる。デオキシリボアデノシン (dATP)、デオキシリボグアノシン(dGTP)、デオキシリボチミジン(dTTP)の3種類のデオキシヌクレオチドの混合物が、dCTP-(αS)(アマシャムコーポレーションから入手可能)と呼ばれる修飾されたチオデオキシリボシトシンと組み合わされる。この混合物は、テンプレート-オリゴヌレオチド複合体に加えられる。この混合物にDNAポリメラーゼを添加すると、突然変異した塩基を除いてテンプレートと同一のDNA鎖が作成される。加えて、この新しいDNA鎖はdCTPのかわりにdCTP-(αS)を含み、制限酵素のエンドヌクレアーゼによる切断からDNA鎖を保護する働きがある。
ヘテロ2本鎖のうちテンプレートとなる鎖に適当な制限酵素でニックを入れた後で、テンプレート鎖は突然変異が誘発される部位を含む領域をこえて、EXoIIIヌクレアーゼ または別の適当なヌクレアーゼで切断することができる。その後、一部分だけ1本鎖の分子を残すために反応が停止される。完全なDNAヘテロ2本鎖は、4種類すべてのデオキシリボヌクレオチド三リン酸、ATPおよびDNAリガーゼの存在下でDNAポリメラーゼを使って合成される。それから、このホモ2本鎖分子は大腸菌JM101のような適切な宿主に形質転換さることができる。
例えば、本発明の好ましい態様は、単離され、精製されたDNA分子で、配列番号:1を持つペプチド3(1-12)[MCP-1]をコードする、前もって選択されたDNA断片からなり、このDNA断片は「サイレント」(図8参照)なヌクレオチド置換を持つ配列番号: 76または配列番号:76の変異体からなる。つまり、サイレントなヌクレオチドの置換がコドン内に存在するときは、同じアミノ酸は置換のないコドンによってコードされるように、ヌクレオチド置換を持つコドンによってコードされる。例えば、バリンは GTT、GTC、GTA、GTGのコドンでコードされる。成熟ポリペプチドにおいて配列番号:79の10番目のコドンにおける変異体(配列番号:79におけるGTC)は、GTCのかわりにGTT、GTAまたはGTGを含む。
一方、配列番号:1を持つペプチド3(1-12)[MCP-1]をコードする配列番号: 76における「サイレント」なヌクレオチドの置換は、Sambrookら、によるMolecular Cloning: A Laboratory Manual(1989)の図8および付表DのページD1を参照することで達成することができる。ヌクレオチドの置換は当該分野で知られた方法によりDNA断片に導入されることができる。Sambrookら、前掲を参照のこと。同様に、他のほ乳類、好ましくはヒトのケモカインをコードする核酸分子は同様の方法によって変更してもよい。
例えば、MCP-2 (配列番号:80), MCP-3 (配列番号:81), MCP-42 (配列番号:100), MIP1α (配列番号:82), MIP1β (配列番号:83), RANTES (配列番号:84), SDF1α (配列番号:85), IL8 (SEQ NO:86), GROα (配列番号:87), eotaxin (配列番号:88), MIG (配列番号:89), PF-4 (配列番号:90), I309 (配列番号:91), HCC-1 (配列番号:925), C10 (配列番号:93), CCR-2 (配列番号:94), ENA-78 (配列番号:95), GROβ (配列番号:96), IP10 (配列番号:97), SDF1β (配列番号:98), GROα (配列番号:99),
MIP3α, TCA-3, CTAPIII. MARC/FYK, β-トロンボグロブリン, GCP-2, PBP, HC14, MDC, TECK, PARC, CCF18/MRP-2, CCIII, CKα2, H1305, Dvic-1, DGWCC, TCA4, dendrokine, CC2/HCC1, CC3, and mip1γ、これに加えてウイルスによってコードされたケモカインであるvMIP-I、vMIP-II、vMIP-III、またはこれらに対する補体など、このように、少なくともタンパク質をコードする核酸分子は、アミノ酸の置換を生ずるようなサイレントなヌクレオチドの置換を有する本発明における核酸分子を産生するために変更されてもよい(下記のペプチド変異体を参照)。
C.インビボ試験
特定の作用物質が本発明の実施において有用であるかどうかをさらに決定するために、動物モデルをヒト疾患のために同定する。ヒト疾患のためのトランスジェニック動物モデルを、本発明の方法において有用な作用物質を同定するために使用することもできる。例えば、ヒト・アテローム性動脈硬化症に関係するケモカイン誘導マクロファージ漸増のモデルは、非限定的に、アポリポプロテインE(apoE)遺伝子のホモ接合欠失をもつマウス、ヒト・アポBを過剰発現するマウス、及びワタナベ遺伝性高脂血症ラビットを含む。自己免疫疾患のためのモデルは、DBA/1マウスにおけるコラーゲン誘導関節炎及びミエリン塩基性タンパク質誘導実験自己免疫脳脊髄炎を含む。
骨粗しょう症のためのモデルは、卵巣切除雌モット、マウス、サル、ラットであってヘパリン又はグルココルチコイドにより処理されたもの、並びにラットにおける懸濁液誘導骨粗しょう症を含む。HIV 感染のためのモデルは、SIV 、SIV 単離物、HIV 又はHIV 単離物によるサルの感染、HIV又はHIV単離物に感染したSCID-Hu マウス、又はHIV 又はHIV 単離物に感染したウサギを含む。レンチウイルス感染のための他の動物は、FIV に感染したネコ、EIAVに感染したウマ、そして(関節炎のための動物モデルでもある)CAEVに感染したヤギを含む。
抗炎症治療のための本発明の作用物質の効果は、炎症の程度、又は罹患組織のマクロファージ浸潤の程度により評価されうる。マクロファージ浸潤は、マクロファージを特異的に検出する抗体(例えば、mac-1 抗血清)で組織切片を染色することにより検出されうる。炎症又は疾患の他の兆候は、当業者に周知の技術を用いて、適当な臨床パラメーターを計測することにより検出されうる。例えば、apoEノックアウト・マウスを、作用物質、例えばCRD-Leu4ile11 ペプチド3により、例えば腹腔内注射により12週間の期間にわたり処理する。
一方、対照の同腹子は、生物学的活性の知られていない好適な対照ペプチドを受容する。12週間の終わりに、上記動物を殺し、そして上記作用物質の効果を、mac-1 抗血清を用いた定量的免疫組織化学による血管壁内のマクロファージ漸増の減少を計測することにより、そしてPaigen, Arteriosclerosis, 10, 316 (1990)に従ってオイル・レッドO染色を用いた組織化学による血管脂質病変形成の程度における減少を計測することにより評価する。
Apo(a)トランスジェニック・マウスは、脂質に富む食餌を摂取するとき発病する。これらの疾変は、マクロファージを全く含まない。これに反し、C57B16同系マウスは、apo(a)トランスジェニック・マウスにおけるものと同様のサイズ及び重度の脂質病変を顕出する。マクロファージに富む脂質病変を顕出する、apo(a)マウス、C57B16マウス、及び6の他のマウス株の病変を、炎症促進仲介物質、例えば、TNF-α、MCP-1、MIP-1α、IL1β 、ICAM-1、VCAM-1、及びP−セレクチンのレベルについての定量的免疫蛍光によりスクリーニングした。
TNF-α、MIP-1α、IL1β 、ICAM-1、VCAM-1、及びP−セレクチンは、全て、上記apo(a)マウス病変及びC57B16病変において同一レベルで発現された。従って、上記炎症促進仲介物質は浸潤に必要であるけれども、それらだけでは十分でない。全く反対に、MCP-1 は、apo(a)マウスの病変からは全く存在しなかったが、マクロファージ増加病変をもつ他のマウスの全てからの病変において高レベルで発現された。
SM−α−アクチンに特異的な抗体(平滑筋細胞;IA4 抗体)、マクロファージ(Mac-1 抗体)、及びMCP-1 で3重染色された病変をもつ血管壁の切片の共黒顕微鏡分析は、MCP-1 がマクロファージだけにより発現されていないことを示した。すなわち、平滑筋細胞とマクロファージの両者がMCP-1 を発現した。従って、MCP-1 は、アテローム性動脈硬化症のapo(a)マウス・モデルにおける失われた“炎症仲介物質”でありうる。これらの結果は、apo(a)マウス病変におけるMCP-1の欠如が、マクロファージの不存在の結果ではなく、その代わり、単球浸潤の欠如の原因に貢献しうることを示唆する。その上、これらの結果は、ケモカインMCP-1 がアテローム性動脈硬化症の血管炎症において役割を演じているという証拠を提供する。従って、MCP-1 は、上記ケモカインの漸増活性をブロックするアナログのための基礎を提供しうる。
MCP-1 以外のケモカインも、マクロファージ漸増、炎症及びアテローム性動脈硬化症の病因に、そして不適当な増殖に関係する他の病気に関係する。例えば、MIP1αは、多発性硬化症における不適当な炎症に関係している。従って、MIP1αからのペプチド2と3に類似の配列は、多発性硬化症の治療又は予防に特に有用でありうる。それ故、特定のケモカインが特定の病気に関係するとき、その特定のケモカインからの配列は、その病気を治療又は予防するために特に有用でありうる。本発明の範囲内の好ましい作用物質は、2以上のケモカイン、そして好ましくは全てのケモカインのシブナリングの阻害剤である。従って、特定の疾患プロセスに関係するもの以外のケモカインからの配列をもつケモカイン・ペプチド・アナログを調製することが好ましい。特定の疾患を治療するための特定の作用物質の選択は、生物学的利用能、毒性、DARC結合又は他の同様の基準に基づくことができる。
他のモデルは、非限定的に、肺損傷についてLukacs (Adv, Immunol., pp. 257-304, Academic Press (1996)) ; 腎炎についてLloyd et al. (J.Leuko. Biol., 185, 1371 (1997))及びTam et al. (Kid. Int., 49, 715 (1996)) ; 骨についてVolejnikova (Am. J.Pathol., 150, 1711 (1997) ; 脳についてGhinikar et al. (J.Neurosci. Res., 46, 727 (1996))及びRansoholf et al. (J.Leuko Biol., 62, 645 (1997)) ; マラリアについてKaul et al. (Am. J.Trop. Med. Hyg., 58, 240 (1995)) ; 腹膜炎についてAjeubar et al. (J.Leuko. Biol., 63, 108 (1998)) ;
全身性狼瘡についてFurukawa et al. (Lupus, 6, 193 (1997)) ; Suzuki et al. (J.Heart & Lung Transpl., 16, 1141 (1967)), Abbott et al. (Arch. Surg., 89, 645 (1964)), Corry et al. (Transpl., 16, 343 (1973)), Dworkin et al. (J.Heart Lung Transpl., 10, 591 (1991)), Laden et al. (Arch. Path., 93, 240 (1972))及びMitchell et al. (Transpl., 49, 835 (1990))(移植についてのもの);U.S.Patent No.5,661,132(外傷治癒についてのもの);Burhardt et l. (Rheum. Int., 17, 91 (1997))(炎症についてのもの);Elson et al. (Gastroenter., 109, 1344 (1998))(炎症性腸疾患についてのもの);
Hayes et al. (Arterio. Thromb. Vasc. Biol., 18, 397 (1998))及びWang et al. (Arterio. Thromb., 11, 1166 (1991))(心臓血管疾患についてのもの); Wegner et al. (Science, 247, 456 (1990)(肺へのエオシン好性浸潤についてのもの);Brahn (Ciinorth and Rel. Res., 265, 42 (1991)), Wooley (Curr. Op. Rheum., 3, 407 (1991))及びGay et al. (Curr. Op. Rheum., 7, 199 (1995), SCID-human synovial implant model))(リウマチ様関節炎についてのもの);Beamer et al. (Blood, 86, 3220 (1998)), Nakaguma (Int. J.Exp. Path., 76, 65 (1998)), Nanney et al. (J.Invest. Dermat., 106, 1169 (1996)), Nickoff et al. (AJP, 146, 580 (1995)), Sundberg et al. (Pathobiol., 65, 271 (1997)),及びWolf et al. (Int. J.Dermat., 30, 448 (1998))(乾癬についてのもの);及び
Conti et al. (Blood, 89, 4120 (1997)), Gonzalo et al. (JCI, 98, 2332 (1996)), Teiyeira et al. (JCI, 100, 1657 (1997)), Ceri et al. (Allergy, 52, 739 (1997)), Freed (Eur. Res. J., 8, 1770 (1998)), Griffitbs-Johnson et al. (Meth. Enzy., 288, 241 (1991)), Herz et al. (New Horizons in Allergy Immunoth., 25-32 Plenum Press, 1996)及びKane (Eur. Resp. J., 7, 555 (1991))(アレルギーについてのもの)により報告されたものを含む。
II.本発明の範囲内の作用物質の調製
A.核酸分子
1.キメラ発現カセット
本発明における形質転換のための発現カセットを調製するためには、組換え又は事前選択DNA 配列又はセグメントは、環状又は線状、2本鎖又は1本鎖であることができる。ケモカインをコードするmRNA配列に実質的に相補的なmRNA配列をコードする事前選択DNA 配列は、典型的には、反対方向(すなわち、5′→3′よりも3′→5′)にカセット内にクローン化された“センス”DNA 配列である。一般に、事前選択されたDNA 配列又はセグメントは、キメラDNA 、例えばプラスミドDNA の形態にあり、これは、得られた細胞系内に存在する事前選択されたDNA の発現を促進する制御配列により隣接されたコーディング領域を含むこともできる。
本明細書中に使用するとき、“キメラ”は、少なくとも2つの異なる種からのDNA 、又は同一種からのDNA であって、その種の“天然”又は野生型には生じないようなやり方で連結又は会合されたものを含むベクターを意味する。
ケモカイン又はその部分の転写単位として役立つ事前選択されたDNA 配列とは別に、その事前選択されたDNA の部分は転写されず、調節又は構造機能を発揮することもできる。例えば、事前選択されたDNA はそれ自体、哺乳動物細胞内で活性なプロモーターを含むことができ、又は形質転換標的であるゲノム内に既に存在するプロモーターを利用することもできる。このようなプロモーターは、CMVプロモーター、並びにSV40後期プロモーター、及びレトロウイルスLTRs(ロング・ターミナル・リピート・エレメント)を含む。但し、本分野に周知の多くの他のプロモーター要素も本発明の実施において使用されうる。
宿主細胞内で働く他の要素、例えばイントロン、エンハンサー、ポリアデニレーション配列等も上記事前選択されたDNA の部分でありうる。このような要素は、上記DNA の機能のために必要であってもなくてもよいが、転写、mRNAの安定性等に影響を及ぼすことによりそのDNA の改良された発現を提供しうる。このような要素は、細胞内の形質転換性DNA の最適な性能を得るために適宜上記DNA 内に含まれうる。
“制御配列”は、特定の宿主生物内の作用可能に連結されたコーディング配列の発現のために必要なDNA 配列を意味すると定義される。原核細胞のために好適な制御配列は、例えば、プロモーター、並びに場合によりオペレーター配列、及びリボソーム結合部位を含む。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニレーション・シグナル、及びエンハンサーを利用することが知られている。
“作用可能に連結された”とは、核酸が他の核酸配列と機能的な関係をもって配置されていることを意味すると定義される。例えば、プレ配列又は分泌リーダーのためのDNA は、ペプチド又はポリペプチドの分泌に参加するプレタンパク質として発現される場合、そのペプチド又はポリペプチドのためのDNA に作用可能に連結され;プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼす場合にそのコーディング配列に作用可能に連結され;又はリボソーム結合部位は、翻訳を容易にするように配置される場合、コーディング配列に作用可能に連結される。
一般に、“作用可能に連結された”とは、連結されているDNA 配列が連続しており、そして分泌リーダーの場合、連続的であり、かつ、リーディング相にあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは連続である必要はない。連結は、便利な制限部位におけるライゲーションにより行われる。このような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチド・アダプター又はリンカーが慣用法により使用される。
細胞内に導入されるべき事前選択されたDNA は一般に、形質転換しようとする細胞の集団から形質転換された細胞の識別及び選択を容易にするために選択マーカー遺伝子又はリポーター遺伝子又は両者を含むであろう。あるいは、選択マーカーは、別個のDNA 片上に担持され、そして共同形質転換手順において使用されうる。両選択マーカー及びリポーター遺伝子が、宿主細胞内での発現を可能にするために適当な調節配列と隣接されうる。有用な選択マーカーは本分野において周知であり、そして例えば、抗生物質及び除草剤耐性遺伝子、例えば、neo, hpt, dhfr, bar, aroA, dapA 等を含む。Lundquist et al. (米国特許第 5,848,956号)の表1に列記された遺伝子をも参照のこと。
リポーター遺伝子は、形質転換された可能性のある細胞を同定し、そして調節配列の機能を評価するために使用される。容易にアッセイされうるタンパク質をコードするリポーター遺伝子は本分野において周知である。一般に、リポーター遺伝子は、受容体生物又は組織中に存在せず又はそれにより発現されず、かつ、その発現がいくつかの容易に検出されうる特性、例えば酵素活性により顕出されるところのタンパク質をコードする遺伝子である。好ましい遺伝子は、E. coliのTn9 からのクロラムフェニコール・アセチル・トランスフェラーゼ遺伝子(cat )、E. coli のuidA座のベーターグルクロニダーゼ遺伝子(gus )、及びホタル・フォチナス・ピラリス(Photinus pyralis)からのルシフェラーゼ遺伝子を含む。上記リポーター遺伝子の発現は、そのDNA が受容体細胞内に導入された後の好適な時機にアッセイされる。
標的細胞を形質転換することができる組換えDNA を構築するための一般方法は当業者に周知であり、そして同じ組成物及び構築方法か本発明において有用なDNA を製造するために使用されうる。例えば、J. Sambrook et al., Molecular Cloning : A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laborotory Press (2d ed., 1989) は、好適な構築方法を提供する。
2.宿主細胞内への形質転換
組換えDNA は、ケモカインをコードするDNA 又はその相補体を含む発現ベクターによる形質転換により、特定の細胞内への導入のために有用ないずれかの手順、例えば、物理的又は生物学的方法により、宿主細胞、例えば哺乳動物、バクテリア、酵母又は皆虫細胞内に容易に導入されることができ、そのゲノム内に安定して組み込まれた組換えDNA をもつ形質転換された細胞が得られ、そうして本発明のDNA 分子、配列、又はセグメントはその宿主細胞により発現される。
宿主細胞内に事前に選択されたDNA を導入するための物理的な方法は、リン酸カルシウム沈降、リポフェクション、電子銃、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション等を含む。宿主細胞内に着目のDNA を導入するための生物学的な方法は、DNA 及びRNA ウイルス・ベクターの使用を含む。物理的方法の主要な利点は、それらがウイルスの病理学的又は癌遺伝子のプロセスと関係しないということである。
しかしながら、それらは、あまり正確でなく、しばしば多コピー挿入、ランダム組み込み、外来及び内因遺伝子配列の破壊、及び予想外の発現をもたらす。哺乳動物の遺伝子治療のためには、宿主ゲノム内に単一コピー遺伝子を正確に挿入する効率的な手段を使用することが望ましい。ウイルス・ベクター、そして特にレトロウイルス・ベクターは、哺乳動物、例えばヒト細胞内に遺伝子を挿入するためも最も広く用いられる方法になっている。他のウイルス・ベクターは、ボックスウイルス、単純ヘルペス・ウイルスI型、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス、等に由来することができる。
本明細書中に使用するとき、用語“細胞系”又は“宿主細胞”は、細胞のよく特徴付けされた均質な、生物学的に純粋な集団をいうと意図される。これらの細胞は、新形成である真核細胞又は本分野において知られた方法によりインビトロにおいて“不死化”されたもの、並びに1次細胞、又は原核細胞であることができる。上記細胞系又は宿主細胞は、好ましくは哺乳動物起源であることができるが、植物、皆虫、酵母、真菌又はバクテリア源を含む非哺乳動物起源の細胞系又は宿主細胞も使用されうる。一般に、事前選択されたDNA 配列は、宿主細胞のゲノム内に在るか、発現されない、又は高くは発現されない、又は過剰発現されるDNA 配列に関係する。
“トランスフェクト”又は“形質転換”は、そのゲノムが、少なくとも1の事前選択されたDNA 配列の存在により変更され又は高められているところのいずれかの宿主細胞又は細胞系を含むために本明細書中に使用され、そのDNA は、遺伝子工学の分野においては、“異種DNA ”、“組換えDNA ”、“外来DNA ”、“遺伝子操作された”、“非天然”、又は“外来DNA ”といわれ、そのDNA は単離され、そして遺伝子工学の方法により宿主細胞又は細胞系のゲノム内に導入されている。本発明の宿主細胞は、典型的には、プラスミド発現ベクター、ウイルス発現ベクター、又は単離された線状DNA 配列によるトランスフェクションにより作られる。好ましくは、トランスフェクトされたDNA は染色体内に組み込まれた組換えDNA 配列であり、これは、ケモカインをコードする遺伝子又はその相補体を含み、その宿主細胞は、自己又は“天然”ケモカインのかなりのレベルを発現してもしなくてもよい。
宿主細胞内の上記事前選択されたDNA 配列の存在を確認するために、さまざまなアッセイを行うことができる。このようなアッセイは、例えば、当業者に周知の“分子生物学”アッセイ、例えばサザン及びノーザン・ブロッティング、RT-PCR、及びPCR ;“生物学的”アッセイ、例えば、免疫学的手段により(ELISAs及びウェスタン・ブロット)又は本発明の範囲内にある作用物質を同定するために先に記載したアッセイにより、例えば、特定のケモカインの有無を検出することを含む。
導入された事前選択されたDNA セグメントから作られたRNA を検出及び定量するために、RT-PCRを使用しうる。PCR の適用においては、酵素、例えば逆転写酵素を用いてまずRNA をDNA に逆転写し、そして次に慣用のPCR 技術の使用を通じてそのDNA を増幅することが必要である。ほとんどの場合、PCR 技術は、有用ではあるが、そのRNA 産物の完全性を示さないであろう。RNA 産物についてのさらなる情報は、ノーザン・ブロッティングにより得られうる。この技術は、RNA 種の存在を示し、そしてそのRNA の完全性についての情報を与える。RNA 種の存在又は不存在は、ドット又はスロット・ブロット・ノーザン・ハイブリダイゼーションを用いても決定されうる。これらの技術は、ノーザン・ブロッティングの変法であり、そしてRNA 種の有無のみを示す。
着目の事前選択されたDNA セグメントを検出するためにサザン・ブロッティング及びPCR が使用されうるが、それらは、その事前選択されたDNA セグメントが発現されているかどうかに関する情報を提供しない。発現は、導入された事前選択されたDNA 配列のペプチド産物を特異的に同定し、又は宿主細胞内の導入された事前選択されたDNA セグメントの発現によりもたらされた表現型の変化を評価することにより評価されうる。
B.ペプチド、ペプチド変異体、及びそれらの誘導体
本発明の単離され、精製されたケモカイン・ペプチド、ペプチド変異体又はそれらの誘導体は、例えば、固相ペプチド合成法により又は組換えDNA アプローチ(上記参照)により、インビトロにおいて合成されうる。固相ペプチド合成法は、確立されており、そして広く使用される方法であり、これは、以下の文献:Stewart et al., Solid Phase Peptide Synthesis, W.H. Freeman Co., San Francisco (1969) ; Merrifield, J. Am. Chem. Soc., 85 2149 (1963) ; Meienhofer in“Hormonal Proteins and Peptides,”ed. ; C.H. Li, Vol.2 (Academic Press, 1973), pp.48-267 ; Bavaay and Merrifield,“The Peptides,”eds. E. Gross and F. Meienhofer, Vol.2 (Academic Press, 1980) pp.3-285 ; 及び Clark-Lewis et al., Meth. Enzyrnol., 287, 233 (1997)中に記載されている。
これらのペプチドはさらに、免疫アフィニティー又はイオン交換カラムの分画;エタノール沈降;逆相HPLC;シリカ上又はアニオン交換樹脂、例えばDEAE±のクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;SDS-PAGE;硫酸アンモニウム沈降;例えばSephadex G-75 を用いたゲルろ過;又はリガンド・アフィニティー・クロマトグラフィーによりさらに精製されることができる。
一旦、単離され、そして特徴付けられれば、与えられたケモカイン・ペプチドの、誘導体、例えば化学的誘導体は容易に作られることができる。例えば、本発明のケモカイン・ペプチド又はケモカイン・ペプチド誘導体のアミドは、カルボン酸基又は前駆体をアミドに変換するために本分野に周知の技術により調製されることもできる。C末端カルボキシル基におけるアミド形成のための好ましい方法は、適当なアミンを用いて固体支持体からそのペプチドを解裂させること、又はアルコールの存在下で解裂させて、エステルを得、その後所望のアミンによるアミノリシスを行うことである。
本発明のペプチド又はペプチド変異体のカルボキシル基の塩は、上記ペプチドを、所望の塩基、例えば水酸化金属塩基、例えば水酸化ナトリウム;炭酸又は重炭酸金属塩基、例えば炭酸ナトリウム又は重炭酸(炭酸水素)ナトリウム;又はアミン塩基、例えばトリエチルアミン、トリエタノールアミン等の1以上の等価物と、接触させることにより常法により調製されうる。
上記ケモカイン・ペプチド又はペプチド変異体のアミノの基のN−アシル誘導体は、最終的な縮合のためにN−アシル保護されたアミノ酸を使用することにより、又は保護された又は保護されていないペプチドをアシル化することにより調製されうる。O−アシル誘導体は、例えば、遊離ヒドロキシ・ペプチド又はペプチド樹脂のアシル化により調製されうる。いずれのアシル化も、標準的なアシル化試薬、例えばハロゲン化アシル、無水物、アシル・イミダゾール等を用いて行うことができる。両N−及びO−アシル化が適宜共に行われうる。
ホルミル−メチオニン、ピログルタミン、及びトリメチル−アラニンが、上記ペプチド又はペプチド変異体のN−末端残基において置換されうる。他のアミノ末端修飾は、アミノオキシペンタン修飾を含む(Simmons et al., Science, 276, 276 (1997)を参照のこと)。
さらに、ケモカイン・ペプチドのアミノ酸配列も、ケモカイン・ペプチド変異体をもたらすように修飾されうる。この修飾は、そのペプチド内の少なくとも1のアミノ酸残基を別のアミノ酸残基で置換すること、L型からD型を用いる置換、並びに他の周知のアミノ酸アナログ、例えば非天然アミノ酸、例えばα,α−2置換アミノ酸、N−アルキル・アミノ酸、乳酸、等を用いるような置換を含む。
これらのアナログは、ホスホセリン、ホスホトレオニン、ホスホチロシン、ヒドロキシプロリン、ガンマ−カルボキシグルタメート;馬尿酸、オクタヒドロインドール−2−カルボン酸、スタチン、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸、ペニシラミン、オルニチン、シトルリン、α−メチル−アラニン、パラ−ベンゾイル−フェニルアラニン、フェニルグリシン、プロパルギルグリシン、サルコシン、ε−N,N,N−トリメチルリジン、ε−N−アセチルリジン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリジン、ω−N−メチルアルギニン、そして他の類似のアミノ酸及びイミノ酸及びtert−ブチルグリシンを含む。
上記ペプチドの残基の中の1以上が、そのペプチドが生物学的に活性である限り変更されうる。例えば、ペプチド3[MCP-1 ]変異体、例えば、Ser7ペプチド3(1−12)[MCP-1 ]に関しては、その変異体が対応の非変異体ペプチド、例えば配列番号1をもつペプチドの生物学的活性の少なくとも約10%をもつことが好ましい。保存的アミノ酸置換が好ましい。すなわち、例えば、酸性アミノ酸としてのアスパラギン−グルタミン酸;塩基性アミノ酸としてのリジン/アルギニン/ヒスチジン;疎水性アミノ酸としてのロイシン/イソロイシン、メチオニン/バリン、アラニン/バリン;親水性アミノ酸としてのセリン/グリシン/アラニン/トレオニンである。
保存的アミノ酸置換は、側鎖に基づく分類をも含む。例えば、脂肪族側鎖をもつアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシンであり;脂肪族−ヒドロキシル側鎖をもつアミノ酸の群は、セリン、及びトレオニンであり;アミド含有側鎖をもつアミノ酸の群は、アスパラギン、及びグルタミンであり;芳香族側鎖をもつアミノ酸の群は、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンであり;塩基性側鎖をもつアミノ酸の群は、リジン、アルギニン、及びヒスチジンであり;そして硫黄含有側鎖をもつアミノ酸の群は、システイン、及びメチオニンである。
例えば、イソロイシン又はバリンによるロイシンの置換、グルタミン酸によるアスパラギン酸の置換、セリンによるトレオニンの置換、又は構造的に関連のあるアミノ酸によるあるアミノ酸の同様の置換が、得られた変異体ポリペプチドの特性に大きな影響を及ぼさないであろうと思われる。アミノ酸の変更が機能的なペプチドをもたらすかどうかは、そのペプチド変異体の比活性をアッセイすることにより容易に決定されうる。アッセイは、本明細書中に詳細に記載されている。
保存性置換を、典型的な置換の見出しの下に図9に示す。より好ましい置換は好ましい置換の下に示す。置換を導入した後、変異体を生物活性についてスクリーニングする。
本発明の範囲内にあるアミノ酸置換は、一般に、(a)置換の領域内のペプチド骨格の構造、(b)標的部位における分子の電荷もしくは疎水性、又は(c)側鎖のバルクを維持することへのそれらの効果において有意に異ならない置換を選択することにより行われる。天然の残基は共通の側鎖特性に基づいてグループに分けられる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met, Ala, Val, Leu, Ile;
(2)中性親水性:Cys, Ser, Thr;
(3)酸性:Asp, Glu;
(4)塩基性:Asm, Glm, His, Lys, Arg;
(5)鎖の方向に影響を与える残基:Gly, Pro;及び
(6)芳香族;Trp, Tyr, Phe
本発明は、非保存性置換を伴うペプチド変異体も包含する。非保存性置換は、上述のクラスの1つのメンバーを別のものに交換することを伴う。
ペプチドもしくは変異体ペプチドの又はペプチドもしくは変異体ペプチドのアミノ酸残基の酸付加塩は、そのペプチド又はアミンに、1又は複数の等価の要求される無機又は有機酸、例えば塩酸を接触させることにより調製することができる。ペプチドのカルボキシル基のエステルは、当業界の知られた通常の方法のいずれかによっても調製することができる。
更に、本発明の剤、例えばケモカインペプチドは、生体内でのそれらの安定性、例えば半減期又はバイオアベイラビリティーを増加させる様式で改変される。これらの改変された剤は“誘導体”と呼ばれる。このような誘導体を調製するための方法は当業界で公知である。ペプチドを安定化するための1つの方法は、還化ペプチドである誘導体を調製することである(EPA 471,453 (アミド結合)、例えばリシンとアスパラギン酸側鎖との間;EPA 467,701 (ジスルフィド結合);EPA 467,699 (チオエーテル結合)を参照のこと)。
生体内安定性を増加させることができる他の改変は、Jameconら(Nature, 368, 744 (1994);米国特許第 4,992,463;米国特許 5,596,078及び米国特許 5,091,396)に開示される。本発明の好ましい実施形態は、ケモカインペプチド又はそのペプチドのN及び/又はC末端への1又は複数のシステイン残基の付加により還化されている変異体、並びにD型アミノ酸の逆の配列(即ちC末端からN末端に読む)から構成されるペプチドである。この発明のより好ましい実施形態は、還化され、及びD型アミノ酸の逆配列で構成されたペプチド、即ちCRD 誘導体である。
本発明は、本発明の治療剤に特異的な抗体も含む。例えば、ウサギは、(RD-Leu4Ile11Cys13 ペプチド3(3−12)[MCP-1 ]で免疫化した。得られた抗血清は高いタイターを有したが、MCP-1 と交差反応しなった。その抗体は、(RD-Leu4Ile11Cys13 ペプチド3(3−12)[MCP-1 ]を検出するためのイムノアッセイに役立つ。
C.ケモカインアナログ
ケモカインアナログは、対応するペプチドのものと類似した特性を有する。これらのアナログは、“ペプチド擬態物(mimetics)”又は“ペプチドミメティクス”と呼ぶことができ(引用により本明細書に組み込まれるFauchere, J. (1986) Adv. Dru. Res 15 : 29 ; Veber and Freidingep (1985) TINS p.392;及びEvans ら (1987) J. Med. Chem. 30 : 1229)、コンピューターでの分子キデリングにより開発することができる。
これらのアナログは、当業界で知られた方法により、-CH2NH-, -CH2S-, -CH2-CH2-, -CH=CH- (cis及びtrans), -CH=CF-(trans), -CoCH2-, -CH(OH)CH2-、及び-CH2SO-からなる群から選択された結合により任意に置換された1又は複数のペプチド結合を有する構造を含み、以下の引用文献に更に記載される:Spatola, A.F. in“Chemistry and Biochemistry of Amino Acids, Peptides, and Proteins,”B.Weinstein, eds. Marcel Dekker, New York, P.267 (1983) ; Spatola, A.F., Vega Data (March 1983), Vol.1, Issue 3,“Peptide Backbone Modifications”(general review) ; Morley, J.S., Trends Pharm. Sci (1980) pp.463-468 (general review) ;
Hudson, D. et al., Int. J. Pept. Prot. Res. (1979) 14 : 177-185 (-CH2NH-, CH2CH2-) ; Spatola, A. F. et al., Life Sci (1986) 38 : 1243-1249 (-CH2-S) ; Hann, M.M., J. Chem. Soc Perkin Trans I (1982) 307-314 (-CH-CH-, cis and trans) ; Almquist, R.G. et al., J. Med. Chem. (1980) 23 : 1392-1398 (-COCH2-) ; Jennings-White, C. et al., Tetrahedron Lett. (1982) 23 : 2533 (-COCH2-) ; Szelke, M. et al. European Appln. EP 45665 (1982) CA ; 97 : 39405 (1982) (-CH(OH)CH2-) ; Holladay, M.W. et al., Tetrahedron Lett. (1983) 24 : 4401-4404 (-C(OH)CH2-) ; 及びHruby, V.J., Life Sci (1982) 31 : 189-199 (-CH2S-)。
これらの各々は引用により本明細書に組み込まれる。特に好ましいペプチド結合は-CH2NH-である。このようなアナログは、より大きな化学的安定性、増強された薬理特性(半減期、吸収、効力、効能等)、変化した特異性(例えば、広範囲の生物活性)、減少した抗原性、及び経済的に調製できることを有し得る。アナログの標識化は、通常、定量的構造−活性データ及び/又は分子モデリングにより予測されるアナログ上の非干渉位置への、直接的又はスペーサー(例えばアミド基)を介しての1又は複数のラベルの共有結合に関する。このような非干渉位置は、一般に、アナログが結合して治療効果を作り出す高分子との直接的接触を形成しない位置である。同じ型のD−アミノ酸での共通配列の1又は複数のアミノ酸の系統的置換(例えばL−リシンのかわりのD−シリン)も、より安定なペプチドを生成するために用いることができる。
1.ケモカイントリペプチドのアイソスター(式(IV)の化合物)
Z=CH3 ;R1 =インドリル;Y=O;及びX=CH3 である式(IV)の化合物は、N−tBoc−Nin BOC−L−トリプトファン−OH 及びシクロヘキセノンから調製することができる。例えば、2−シクロヘキセン−1−オンは、ジメチル銅酸リチウムと、トリメチルシリルクロライドの存在下で、反応に用いる用に、当業者に公知の方法(例えばHouse ら、J. Org. Chem., 40, 1460 (1975))により反応させることができる。
オルガノクプレートによるα−β不飽和ケトンの付加は、例えばHouse ら、J. Org. Chem. 31, 3128 (1966) に記載される。同様に、トリメチルシリルクロライドによるエノレートの捕獲は、House ら、J. Org. Chem. 36, 2361 (1971) に記載される。そのトラップされたエノレートは、次に、例えばRubottom (J. Org. Chem, 44, 1731 (1979))の方法に従って、アセトキシ−銀及びテトラブチルアンモニウムフルオライドの存在下でヨウ素分子の付加により、α−イオド誘導体に分解され、式 100のトランス−二置換化シクロヘキサノンを供する。
式 100のヨウ化物の2級アルコールへの変換、及びエステル、例えば無水酢酸とのエステルの形成は、式 101の化合物を生成する。
式 101の化合物は、かわりに、当業界で公知の手順を用いて、上述のトリメチルシリルエーテルエノレートの、α−ヒドロキシケトンへの変換、次のエステルの形成により調製することができる。
式 101の化合物は、例えば、ビニルマグネシウムブロマイドで、標準条件下でアルキル化し、(例えばヨウ素分子及び熱の存在下で)脱水して、式 102のジェンを生成することができる。
式 102のジェンとエチルアクリレート(Aldrich E970-6)との間のディールス−アンダー反応は、式 103の立体特異的かつ位置特異的生成物を供する。
例えば、還化反応は、密閉されたチューブ内で式 102の化合物とエチルアクリレートとを混合し、本質的にGreen ら(Adv. Pest. Control Fes. 3, 129 (1960))に記載されるように加熱することにより行うことができる。
式 103の化合物中の二重結合の酸化物開裂は、式 104の二酸を供する。
このような酸化的開裂は、便利には、オゾン分解により、又はクムム酸での酸化により行うことができる。例えば、酸中のCrO3を用いて、式 104の化合物は、本質的にEschenmoser & Winter, Science, 196, 1410 (1977) に記載されるように調製することができる。
POCl5 での二酸の活性化及び次のジメチルアミンとの反応は、式 105のジ−アミドを供する。
式 105の化合物のアセトキシ基の加水分解、次のメシレート(又は他の好適な脱離基)の形成、及びTHF 中でのヨウ化ナトリウムの添加は、式 106の化合物を供する。
式 106の化合物と式 107の化合物との、本質的にLygo and Rudd (Tetrahedron Lett, 36, 3577 (1995)) に記載されるような乾燥DMF 中無水炭酸カリウムの存在下での反応、次の例えばSmI2を用いるスルホネートの除去は、式 108の化合物を供し、それは、脱保護化して、アシル化し、R2 及びR3 がNMe2である式(IV)の化合物を供することができる。
式 107の中間体は、便利には、フェニルメチルスルホンから得られるジアニオンとの反応により、保護されたトリプトファン(例えばN−α−tBOC−Nin tBOC−L−トリプトファン−OH;Novabiochem 04-12-0201)から調製することができる。
式(IV)の化合物についての好ましい合成を以下の図に示す。
チオケトン誘導体(Y=S)は、保護されたトリプトファン107 のβ−ケトスルホン誘導体とチオケトン誘導体に変換する付加反応の挿入により合成することができる。例えば、ジチオール、例えば1,2−エタンジチオールとの反応はチオアセタールを形成し、それは、H2S の存在下で無水条件下で加水分解してチオケトンを生成することができる。
その変換は、〔2,4−ビス(4−メトキシ−フェニル)−1,3−ジチア−2,4−ジホス−フェタン−2,4ジスルフィド〕(Lawesson's Reagent)を用いて行うこともできる。式 106の化合物のチオケトン誘導体の反応は、Y=Sである式(IV)の化合物を供する。
インドリル以外のアリール置換基は、好適なアミノ酸の好適に保護されたβ−ケトスルホン誘導体を要求する。そのアミノ酸が直ちに利用できる場合、その反応は、例えばNovabiochem からの、好適なtBOC又はFmoc保護化アミノ酸(各々フェニルアラニン及びチロシン)を用いて行うことができる。そのアミノ酸が直ちに利用できない場合(例えばR=coumaryl)、好適に保護されたアミノ酸は、最初に、非標準的アミノ酸の合成について当業界で十分に確立された方法により調製しなければならない(例えば、Yuar及びHruby, Tetrahedron Lett, 38, 3853 (1997)を参照)。
以下に示す通り、式(V)の化合物は、便利には、式13のエステルから調製することができる。リチウムジイソプロピルアミドでの脱保護、次のブロマイド14でのアルキル化は式15の化合物を供する。エステルの、例えばジイソブチルアルミニウムヒドリドでの選択的還元は、式16のアルデヒドを供し、それは、PPh3=CF2 とのウィッテ化反応によりジフルオロアルケン17に変換することができる(Hayashi ら、Chemistry Letters, 1980, page 935-938 )。
アルデヒド18は、フェニルトリメチルアンモニウムトリブロマイドでの処理、次の標準条件下でのアセタールの形成により、Visweswariahらに記載されるのと同様の手順を用いてブロマイド19に変換することができる。そのブロマイドの対応するアルキルリチウムへの、n−ブチルリチウムでの処理及び次のジフルオライド17との反応による変換は、式20の化合物を生成する(Chemistry Letters, 1980、ページ935〜940 )。酸性条件下での脱保護は、アルデヒド21を供し、それは、PPh3=CF2 と反応させてトリフルオライド22を供することができる。次の、ブロマイド23から得られるアルキルリチウムでの22の処理は、式(V)の化合物を生成する。他の知られた種々の保護基が上述の手順で利用できること、及び特定の保護基が基R4 〜R8 の構造に依存して他のものより好まれ得ることが当業者に理解されよう。
式(XIII)の化合物は、以下のスキームに示すように調製することができる。
エステル108 の式 109のアミンとの反応は、式 110の酸を生成する。当業界で知られた技術を用いる(例えばN−ブロモスクシニミドでの)カルボン酸の活性化及び式11のアミンのカップリングは式(XIII)の化合物を生成する。
式(XIV) の化合物は、当業者に知られた手順を用いて、ヨヒンビンから調製することができる。実施例23に示すように、ヨヒンビンのナトリウムアミドでの処理は、R1 がアミノである式(XIV) の対応するアミドを供する。標準的条件を用いるこのアミドの更なるアルキル化又はアシル化は、式(XIV) の他の化合物を供する。
R3 及びR4 が環を形成する式(X)の化合物は、以下の一般的スキームを用いて調製することができる。
標準条件下でのアミン112 のアルシ化、次の閉環は、式 114の化合物を供し、それは、式(X)の化合物である。式 114の化合物は、他の式(X)の化合物を調製するための出発材料として用いることができる。
R3 及びR4 が環を形成する式(X)の化合物は、以下の一般的スキームを用いて調製することもできる。
例えばトリフルオロ酢酸を用いる、標準条件下でのカルバメート115 の加水分解は、Xが好適な対イオン(例えばトリフレート)である式 116の塩を生成する。必要とされる活性化酸(R,COOH)でのアミン塩116 の処理は、式 117の化合物を供し、それは式(X)の化合物である。式 116のアミン塩は、式(X)の化合物を調製するための特に有用な中間体である。
式(XII) の化合物は、便利には、当業界で知られた方法と同様の手順を用いて、リセルグ酸から調製することができる。例えば、式(XII) の化合物は、実施例24に記載されるように調製することができる。
他の有用なケモカインアナログは、上述の方法により同定することができる。特に、経口的にバイオアベイラブルで、安定でかつ効力あるケモカイン活性のインヒビターであるケモカインアナログが好ましい。
D.治療剤の標的化
ケモカインペプチド、その変異体、類似体又は誘導体は、治療剤を、細胞成分に特異的に結合する部分、例えば抗体又はそのフラグメント、レクチン、トランスフェリン(肝臓ターゲッティングのため)及び小分子薬剤に結合させ、治療的複合体を形成せしめることによって、特異的治療部位に標的化されうる。本発明の治療剤の標的化は、特異的な解剖部位での前記治療剤の濃度の増大を生じうる。更に、本発明の治療剤が結合部分に連結することは、in viro での前記治療剤の安定性を増大しうる。例えば、CD4 受容体に結合する抗CD4 模倣剤は、一部がHIV 補助受容体に結合する治療的複合体をもたらす様に、本発明の治療剤に連結しうる。これは、前記治療剤を特定の細胞型に対して標的化する能力を増強し、そしてその結果、その細胞型のHIV 感染を防ぎうる。
異常増殖にとって、抗腫瘍抗体、例えばNR-LU-10(抗癌腫)、NR-ML-5 (抗黒色腫)、又は抗CD45(抗リンパ腫)は、前記治療剤を特定の腫瘍型に局在化するのに有用でありうる。感染症にとって、病原特異的エピトープ、例えばmAb 17.41 (クリプトスポリジウム・パルバム(Cryptosporidium parvum))が適用されうる。関節リウマチを処置するための連合を標的化するために、抗滑膜又はコンドロイチン硫酸(例えばカタログ番号C8035, Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)抗体は、本発明の治療剤に連結しうる。喘息又は肺等を処置又は予防するために、気管支上皮に対することは、本発明の方法の使用のための免疫複合体を製造するのに有用でありうる。
特異的部位又は細胞型に対して本発明の治療剤を標的化するのに有用な他の抗体は、血管又はリンパ(例えば、Ulex europaeus−Iレクチン、カタログ番号U4754, Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)、血液凝塊又は血小板(例えば、カタログ番号F9902, F4639, F2506, F8512, Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)、T細胞(例えば、カタログ番号C7048 (CD3) ; C1805 (CD4) ; C7173 (CD5); 及びC7298 (CD7) ; Sigma Chemical Co. St. Louis, MO)、脳(例えば、カタログ番号S2644及びS2407, Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)、腫瘍(例えば、カタログ番号C2331, Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)、上皮細胞(例えば、カタログ番号E6011及びC1041, Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)、
線維芽細胞(例えば、カタログ番号F4771及びV4630, Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)、マクロファージ(例えば、カタログ番号M1919, Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)、胃の内腔(例えば、カタログ番号M5293, Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)、好中球(例えば、カタログ番号N1890及びN1768, Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)、腱(例えば、カタログ番号E4013, Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)、皮膚(例えば、カタログ番号K4252, Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)、乳房の組織又は上皮(例えば、カタログ番号C6930, Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)及び骨格筋(例えば、カタログ番号D8281及びD1033, Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)に特異的な抗体を含む。
悪性又はウイルス感染細胞を標的化するのに有用な免疫複合体を製造するために、悪性又はウイルス感染細胞上の表面抗原に特異性を有する抗体又はそのフラグメントは、本発明の治療剤に付着する。好ましくは、ケモカインペプチド又はその変異体は、抗体の重鎖のカルボキシル末端領域、例えばCH3 に対するペプチド結合を介して付着する。前記免疫複合体は、遺伝子操作技術、すなわちキメラ様免疫複合体をコードする核酸コンストラクトの形成によって製造されうる。
好ましくは、前記免疫複合体をコードする遺伝子コンストラクトは、5′から3′への配向において、重鎖の可変領域をコードするDNA セグメント、重鎖の定常領域をコードするDNA セグメント、及びケモカインペプチド、そのペプチド変異体、又は繰り返しをコードするDNA セグメントを含む。融合遺伝子は、それを発現する適当な受取り細胞のトランスフェクションのための発現ベクターに挿入される。混成鎖は、一価及び二価の免疫複合体を形成するための軽鎖(又は重鎖)の対応物と組み合わさられうる。
前記複合体のための重鎖の定常領域は、5つのアイソタイプ:アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ又はミューのいずれかから選択されうる。重鎖又は様々なサブクラス(例えば、IgG のサブクラス1〜4)が使用されうる。前記軽鎖はカッパー又はラムダのいずれかの定常鎖を有しうる。これらの免疫グロブリン領域のDNA 配列は当業界で公知である(例えば、Gillies et al., J. Immunol, Meth., 125, 191 (1989) 。
好ましい態様において、前記可変領域は標的抗原(病気の細胞、例えばガン細胞又はウイルス感染細胞と関係する抗原)に特異的な抗体に由来し、そして前記定常領域はCH1, CH2及びCH3 ドメインを含む。ケモカインペプチド又は変異体をコードする遺伝子は、例えば適当なリンカーによって、例えば(Gly4-Ser)3をコードするDNA によって、直接的に又は遺伝子間領域を介して、そのいずれかで定常領域をコードする遺伝子(例えば、CH3 のエキソン)の3′末端に、読み枠通りに結合する。
ある態様において、前記の遺伝子間領域は、タンパク質分解的開裂部位をコードするヌクレオチド配列を含んで成る。免疫グロブリンと、ケモカインペプチド又は変異体との間に入るこの部位は、標的部位での前記ケモカインペプチド又は変異体のタンパク質分解的放出を提供するために設計されうる。例えば、プロテアーゼに接触可能な部位での、リジン及びアルギニン残基の後のプラスミン及びトリプシン開裂は公知である。多くの他の部位特異的エンドプロテアーゼ及びそれらが攻撃するアミノ酸配列は公知である。
前記核酸コンストラクトは、前記のキメラ様免疫グロブリン鎖の発現を制御するために、可変領域をコードする遺伝子のための内因性プロモーター及びエンハンサーを含みうる。例えば前記可変領域をコードする遺伝子は、リーダーペプチド、軽鎖の場合、VJ遺伝子(結合している(J)セグメントで機能的に再編成されている可変(V)領域)又は重鎖の場合、VDJ 遺伝子、並びにこれらの遺伝子のための内因性プロモーター及びエンハンサーを含んで成るDNA フラグメントとして得られうる。あるいは、前記可変領域をコードする遺伝子は、内因性の制御因子とは別に得られ、そしてこれらの因子を提供する発現ベクターにおいて使用されうる。
可変領域遺伝子は、標準的なクローニング方法によって所望の抗体を産生する細胞から得られうる。特異的機能的に再編成した可変領域のためのゲノムライブラリーのスクリーニングは、適当なDNA プローブ、例えばJ領域のDNA 配列及び下流の配列を含むDNA セグメントの使用によって達成されうる。続いて、正確なクローンの同定及び確認が、クローン化した遺伝子のDNA 配列決定及び前記配列と、完全長の適切にスプライシングされたmRNAの相当する配列との比較によって達成される。
適当な可変領域をコードする遺伝子は、通常、Ig産生リンパ球から得られうる。例えば、腫瘍関連抗原又はウイルス抗原に特異的なIgに産生するハイブリドーマ細胞系は、標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技術によって生成されうる。これらのIg産生細胞系は、機能的に再編された型における可変領域遺伝子の供給源を提供する。前記可変領域遺伝子が典型的にマウス起源のものであるのは、マウスの系が広範な所望の特異性のIgの産生をそれ自身に与えるためである。
機能的に再編成された可変領域を含むDNA フラグメントは、所望の定常領域(又はその一部)をコードする遺伝子を含むDNA フラグメントに連結する。Ig定常領域(重鎖及び軽鎖)は、標準的な遺伝子クローニング技術によって抗体産生細胞から得られうる。2つのクラスのヒト軽鎖及び5つのクラスのヒト重鎖のための遺伝子がクローン化され、そしてこの様に、ヒト起源の定常領域がこれらのクローンから容易に入手可能となる。
混成IgH 鎖をコードする融合遺伝子が構築されるか、又は受容細胞への組み込みのための発現ベクターに挿入される。プラスミドベクターへの遺伝子コンストラクトの導入は、標準的な遺伝子スプライシング技術によって達成されうる。
キメラ様IgH 鎖は、完全な免疫グロブリンが同時に発現し、そして構築される様に、相当するL鎖と一緒に共発現しうる。この目的のために、重鎖及び軽鎖は同一又は別々のベクターに据えられうる。
受容細胞は通常リンパ球である。好ましい受容細胞はミエローマ(又はハイブリドーマ)である。ミエローマは、トランスフェクションした遺伝子によってコードされる免疫グロブリンを合成し、構築し、そして分泌することができ、そしてそれらはポリペプチドをグリコシル化することができる。特に好ましい受容細胞は、通常内因性の免疫グロブリンを産生しないSp 2/0ミエローマである。トランスフェクションしたとき、前記細胞はトランスフェクションした遺伝子コンストラクトによってコードされるIgのみを産生するだろう。トランスフェクションされたミエローマは、培養液又は分泌された免疫複合体が腹水から回収されうるマウスの腹膜において増殖しうる。他のリンパ球細胞、例えばBリンパ球は受容細胞として使用されうる。
キメラ様Ig鎖をコードする核酸コンストラクトを含むベクターを用いてリンパ球をトランスフェクションをする方法が複数存在する。ベクターをリンパ球に導入する好ましい方法は、スフェロブラスト融合によるものである(Gillies et al., Biotechnol, 7, 798-804 (1989) を参照のこと)。別の方法はエレクトロポレーション又はリン酸カルシウム沈澱を含む。
前記免疫複合体を産生する他の有用な方法は、前記コンストラクトをコードするRNA 配列の調製及び適当なin vitro又はin vivo 系でのその翻訳を含む。
組換え免疫グロブリンを精製するための方法は公知である。例えば、抗体を精製する公知な方法がプロテインA精製を含むのは、抗体のFc領域に結合するプロテインAの性質のためである。続いて、精製された免疫グロブリンの抗原結合活性が、当業界で公知の、例えばGilles et al., (J. Immunol. Methol., 125, 191 (1989))に記載の方法によって測定されうる。例えば、免疫複合体活性は、直接結合又は競合アッセイのいずれかのフォーマットにおいて、抗原でコートしたプレートを用いて決定されうる。
特に、ヒト型化抗体が調製され、そして続いて抗原に結合するそれらの能力についてアッセイされることが好ましい。抗原に結合するヒト型化抗体の能力を決定するための方法は、抗原−抗体の親和性をアッセイするための多くの既知の方法のうちのいずれかによって達成されうる。例えば、マウス抗体NR-LU-13は、多くの癌腫で発現する約40キロダルトンの糖タンパク質に結合する。この抗原は、Varki et al., Cancer Res., 44, 681 (1984) ; Okabe et al., Cancer Res., 44, 5273 (1989) において特徴づけられている。従って、NR-LU-13 抗原に結合するヒト型化抗体の能力を試験することは慣習的である。更に、この抗原のエピトープに結合する抗体の能力を評価するための方法が知られている。
ヒト型化抗体(又はそのフラグメント)は、治療目的のための方法において有用な道具である。治療目的のためにin vivo で投与するためのヒト型化抗体又は抗体複合体を適用するための基準を決定する場合、一般的に達成可能な標的化の比率が高く、そして腫瘍に運ばれる治療剤の絶対量が重大な腫瘍の応答を誘発するのに十分であることが望ましい。ヒト型化抗体を利用する方法は、例えば米国特許4, 877,868、5,175,343、5,213,787、5,120,526、及び 5,202,169において見出すことができる。
血管平滑筋細胞(VSMC)を標的化するために、VSMC結合タンパク質、例えば血管平滑筋細胞の細胞膜と会合するポリペプチド又は炭水化物、プロテオグリカンなどは治療的複合体を製造するために適用されうる。好ましい態様において、結合部分は、血管平滑筋細胞及び周皮細胞によって合成されるコロンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)によって例証され、そして約 250kDの適当な分子量を有するCSPG分子の別の部分(本明細書ではエピトープと称する)が特に好ましい。前記の 250kDの標的は、更に大きな 400kDのプロテオグリカン複合体の成分であるN結合型糖タンパク質である。
本発明の1つの現在好ましい態様において、血管平滑筋結合タンパク質は、血管平滑筋CSPG標的分子のエピトープに結合するNR-AN-01モノクローナル抗体(NR-ML-05のサブカルチャー)によって提供される。NR-ML-05と表されるモノクローナル抗体は、伝えるところによると黒色腫細胞によって合成される 250kDのCSPGに結合する(Morgan等の米国特許 4,897,255)。平滑筋細胞及び周皮細胞も、伝えるところによると 250kDのCSPG及び他のCSPGを合成する。平滑筋細胞に結合するNR-ML-05が開示された(Fritzberg の米国特許 4,879,255)。
サブカルチャーNR-ML-05、第85-41-4I-A2号、フリーズ#A2106は、American Type Culture Collection, Rockville, MDに寄託され、そして受託番号HB-9350 が与えられた。NR-ML-05は、本明細書で開示したサブクローンNR-AN-01に構造的かつ機能的に等しい親である。NR-AN-01は、特異的に 400kDのCSPGの標的と会合する血管平滑筋結合タンパク質、及びこの標的と会合する他の結合タンパク質のわずかな1つの例であり、そしてこの標的の他のエピトープも本発明の治療的複合体及び方法において有用である。
本発明者が、本発明の治療的複合体における血管平滑筋結合タンパク質としての、ヒトモノクローナル抗体又は「ヒト型化」マウス抗体の利用も考慮していることが認識されるだろう。例えば、マウスモノクローナル抗体は、マウスFv領域をコードするヌクレオチド配列(すなわち抗原結合部位を含む)を、ヒト定常ドメイン領域及びFc領域をコードするヌクレオチド配列で遺伝的に組み換えることによって、例えば欧州特許出願0,411,893 A2に開示されているものと同じ方法で「キメラ化」されうる。ヒト型化血管平滑筋が結合する相手は、宿主受容体における抗体又はポリペプチドの免疫反応性を低下せしめる利点を有することが認識され、そしてこのことは、それによってin vivo での半減期を増大し、そして逆の免疫反応の可能性を低下するのに有用となるであろう。N.Lonberg et al.(米国特許 5,625,126; 5,545,806及び 5,569,825);及びSurani et al. (米国特許 5,545,807)を参照のこと。
本発明の態様の、ガンの処置に有用な結合ペプチドは、ガン細胞などの細胞膜及び細胞質のエピトープと会合するものを含む。これらの結合ペプチドは無傷な細胞の膜表面及び破壊された細胞のエピトープ内にそれぞれ局在し、そして同化作用のための治療剤を標的細胞に輸送する。要求性の腫瘍細胞型に局在している最小のペプチド、模倣の有機化合物及びヒト又はヒト型化抗体も本発明の結合ペプチドとして有用である。その様な結合ペプチドは、既知の技術に従い同定され、そして構築又は単離されうる。本発明のこれらの態様の好ましい結合ペプチドは、少なくとも約10-6Mの会合定数で標的ペプチドに結合する。
抗体−ペプチド複合体を製造するのに有用な方法は当業界で公知である。例えば、米国特許 5,650,150を参照のこと。この開示は引用によって本明細書に組み入れられる。前記治療剤を、共有又は非共有結合を介して標的部分に連結させるための代表的な「カップリング」方法は、前記治療剤の反応基(例えば、ヒドロキシル、アミノ、アミド、又はスルフヒドリル基)と、標的部分の他の反応基(類似の性質のもの)との間に結合を形成するために反応する、化学的な架橋剤及び異なる二機能の架橋化合物(すなわち「リンカー」)を含む。
この結合は、例えばペプチド結合、ジスルフィド結合、チオエステル結合、アミド結合、チオエーテル結合などであってもよい。1つの例示的な例において、モノクローナル抗体と薬剤との複合体は、Morgan及びFoonによって(Monoclonal Antibody Therapy to Cancer : Preclinal Models and Investigations, Basic and Clinkal Tumor Immunology, Vol.2, Kluwer Academic Publishers, Hingham, MA)及びUhrによって(J. of Immunol. 133 ; i-vii, 1984)要約された。
前記複合体が放射性ヌクレオチドの細胞分裂停止剤を含む、別の例示的な例において、引用によって本明細書に組み入れられる、Fritzberg 等の米国特許 4,897,255は、有用であると思われるカップリング方法の教育的なものである。1つの態様において、治療的複合体は、ケモカインペプチド又は変異体に共有結合する血管平滑筋結合タンパク質を含む。この場合、連結の共有結合は、前記の血管平滑筋結合タンパク質の1又は複数のアミノ、スルフヒドリル、又はカルボキシル基と、前記ケモカインペプチド又は変異体との間に形成されうる。
本発明の好ましい態様において、抗体複合体は、予備的な標的化方法に使用される。本質的に、その様な予備的な標的化方法は、従来のガン診断又は治療と比較して向上した標的化の比率又は標的細胞の部位に対する増大した絶対量によって特徴づけられる。予備的な標的化方法の一般的な記載は、米国特許 4,863,713、 5,578,827、及び 5,630,996において見出すことができる。典型的な予備的標的化のアプローチを以下に要約する。
予備的標的化方法は、2つの一般的な型:3段階の予備的標的化方法及び2段階の予備的標的化方法がある。3段階の予備的標的化のプロトコールは、標的部位で局在化し、そして循環において希釈することが許容される、標的化部分−リガンドの複合体の投与を含む。これに、標的化部分−リガンドの複合体に結合し、そして血液から結合していない標的化部分−リガンドの複合体を除き、同様に標的部位で標的化部分−リガンドの複合体に結合する、抗リガンドの投与が続く。従って、前記の抗リガンドは標的部位に結合しない標的化部分−リガンドの複合体を除くことによって2つの機能を果たし、同様に標的化部分−リガンド:抗リガンド複合体を形成するために標的部位に付着する。最終的に、素速い全身からの除去を示す治療剤−リガンド複合体が投与される。
循環時の治療剤−リガンド複合体が標的部位に結合した、標的化部分−リガンド:抗リガンド複合体に極めて近くに接近するとき、前記複合体の抗リガンド部分は、循環している治療剤−リガンド複合体のリガンド部分に結合し、その結果、標的部位で、標的部分−リガンド:抗リガンド:リガンド−治療剤のサンドイッチを生成する。更に、結合していない治療剤が素速く除去されるリガンド(ゆっくりと除去される部分、例えば抗体又は抗体フラグメントではない)に付着するので、この技術は活性剤に対する標的でない暴露の低下を提供する。
あるいは、2段階の予備的標的化方法は、上文の同定した抗リガンドを投与する段階を省略している。これらの「2段階」の方法は、リガンド/抗リガンドの対の反対のメンバーと複合する治療剤の投与が後に続く、標的化部分−リガンド又は標的化部分−抗リガンドの投与を特徴とする。
2段階の予備的標的化方法における任意な段階として、除去機能を提供することを特異的に設計されるリガンド又は抗リガンドは、循環している標的化部分−リガンド又は標的化部分−抗リガンドの除去を容易にするために投与される。従って、2段階の予備的標的化のアプローチにおいて、除去される薬剤は、直接的に、あるいは標的化部分−抗リガンド又は標的化部分−リガンド複合体と結合した、あらかじめ投与した標的細胞を介して、そのいずれかで、標的細胞集団に結合する様にはならない。
予備的標的化方法における標的化部分は、限定される標的細胞集団、例えば腫瘍細胞に結合する。これに関して有用な、好ましい標的化部分は抗体(ポリクローナル又はモノクローナル)、例えばヒトモノクローナル抗体、又は「ヒト型化」マウス若しくはキメラ様抗体である。ヒト型化抗体のいくつかの例は、CHO が産生するもの、宿主、例えば植物(例えばトウモロコシ、大豆、タバコなど)昆虫、哺乳類、酵母、及び細菌が産生するものを含む。前記ヒト型化抗体は、抗体NR-LU-13と結合した抗原に結合するものであってもよい。好ましくは、前記ヒト型化抗体はN結合型グリコシル化をしておらず、又はそのN結合型グリコシル化が、免疫原性又は毒性を低下せしめる様に発現後に修飾されている。
標的化プロトコールの使用に適したリガンド/抗リガンド対は、ビオチン/アビジン又はストレプトアビジン、ハプテン及びエピトープ/抗体、そのフラグメント又は類似体を含み、これは模倣体、レクチン/炭水化物、Znフィンガータンパク質/dsDNA フラグメント、酵素阻害剤/酵素;並びにその類似体及び誘導体を含む。好ましいリガンド及び抗リガンドは、少なくともKA ≧109 M-1又はKD ≦10-9Mの親和性で互いに結合する。ビオチン/アビジン又はストレプトアビジンは、好ましいリガンド/抗リガンド対である。
通常、その様な予備的標的化方法は、好ましくは除去機能を提供する抗リガンドの投与を含む。前記除去は、血液中で循環している複合体の架橋及び/又は凝集におそらく起因し、このことは受容体のRES (細網内皮系)による複合体/凝集物の除去をもたらす。この型の抗リガンドの除去は、好ましくは多価分子によって達成される。しかし、RES によって除去されるのに十分な、それ自身に対する一価の分子も適用されうる。
あるいは、受容体を基にした除去機構、例えばAshwell 受容体又は他の受容体は、抗リガンド、抗リガンド複合体又はヒト型化抗体の肝臓を介する除去を提供するために、ヘキソース残基、例えばガラクトース又はマンノース残基の追加によって利用されうる。その様な除去機構は、上述したRES 複合体/凝集物の除去機構ほど、除去される薬剤の結合価に依存しない。
例えば、前記の標的化部分−リガンド又は標的化部分−抗リガンドが、除去を提供するために誘導体化されているならば(すなわち、ヘキソース残基の追加)、除去剤は必要ないはずである。好ましい除去剤は、米国特許 5,624,896及び 5,616,690;並びにPCT 出願公開番号WO 95/15978 に開示されている。
当業者は、本明細書の教示及び本明細書で引用した出願に基づいて、有効な治療的有効量及び処置のプロトコールを容易に決定しうる。このことは、要因、例えば特に選択される薬剤、輸送経路、標的部位の型、注目の標的部位についての標的部分の親和性、標的部分と正常な組織とのあらゆる交差反応性、患者の症状、数ある要因の中でも処置が単独で又は他の処置と組み合わせて有効であるかどうか、について依存するだろう。
例えば、予備的標的化の戦略におけるヒト型化抗体−アビジン又はストレプトアビジン複合体の場合、適当な投与量は約10〜約2500mg、更に好ましくは約50〜1500mg、及び最も好ましくは約 100〜800mg に及ぶ。リガンド−治療剤複合体の投与量は、通常、約 0.001〜約10mg、及び更に好ましくは約 0.1〜2mgに及ぶ。
通常、その様な予備的標的化方法は、除去剤の投与を含む。前記除去剤の投与量は、循環からあらかじめ投与した複合体を実質的に除去するのに十分な、すなわち少なくとも約50%、更に好ましくは少なくとも約90%、及び最も好ましくはほぼ 100%又は約 100%除去される量である。通常、前記除去剤はヒト型化抗体−ストレプトアビジン複合体の投与から数日後、好ましくは約1〜5日後、更に好ましくは少なくとも1〜2日後に投与される。通常、除去剤を投与する時期の決定は、標的の取り込み、及び標的部分複合体の内部での除去に依存する。
特に好ましい除去剤は、Ashwell 受容体が介在する除去を提供するもの、例えばガラクトシル化タンパク質、例えばガラクトシル化ビオチン化ヒト血清アルブミン(HSA )並びにガラクトース及びビオチンを含む小分子除去剤である。HSA を基にした除去剤の場合、除去剤の典型的な投与量は約 100〜1000mg、及び更に好ましくは約 200〜500mg に及ぶだろう。除去剤が投与されるならば、リガンド−治療剤複合体は、好ましくは約2〜12時間後に投与される。
前記複合体は、既知の投与方法によって投与されうる。既知の投与方法は、例えば数ある中でも腹腔内注射、静脈内注射、筋肉内注射、鼻腔内投与を含む。静脈内投与が通常好ましい。
III. 本発明の薬剤による処置を適用できる症状
本発明の薬剤は、ケモカイン誘導活性が関与する症状、例えば異常又は病理学的炎症過程に冒された哺乳動物の処置、そのおそれのある哺乳動物の予防、又はそのおそれのある哺乳動物を強化するのに有用である。これらのケモカインは生理学及び病理学の双方の多種多様な炎症過程に関与する。従って、広域ケモカイン阻害剤が多種多様な炎症疾患を処置又は予防するのに有用でありうる。更に、合理的にデザインされたケモカイン阻害剤、即ち、様々なケモカインに対する比特異性を有する阻害剤の利用は、広域ケモカイン阻害剤の慢性療法に関与する副作用を抑制又は阻害しうる。かくして、これらの阻害剤は特定の疾患を処置するようにデザインされることができ、これにより無関係な生理学的過程を中断することによる副作用を最小限とする。
アテローム硬化症
アテローム硬化症の発症は平滑筋細胞、内皮細胞及び炎症細胞、そして特に単球由来組織マクロファージ、B又はT細胞の関与する複雑な過程による。内皮細胞が活性化されると、それらは炎症細胞の管外遊出にとって重要な接着分子を発現する。例えば、TGFβ1ノックアウト(−/−)マウスでは、このサイトカインの不在は内皮細胞の活性化をもたらす。この活性化内皮細胞は、あらゆる接着分子のうちとりわけE−セレクチン、P−セレクチン及びICAM−1を発現し、それらは白血球の管外遊出に関与する。潜在的なプロ炎症性サイトカインも初期の血管損傷部位で発現される。TNF-α、IL-1、並びにいくつかのケモカイン、例えばIL-8及びMCP-1 がアテローム硬化症損傷において高レベルで検出されている。上記の結果は、ケモカインMCP-1 が特にアテローム硬化性血管炎症において役割を果たしていることを示す。
血管損傷の敏速な安定性は、総合的なプラーク負荷よりも、心筋梗塞の短期間、例えば数年間の危険性の重要な決定因子であることがよく知られている。マクロファージ浸潤の度合いがおそらくは比プラーク安定性の最大の決定因子であろう。少なくとも2つの要因がプラーク安定性に寄与している:マクロファージがその阻害剤を上まわる過剰量のマトリックス分解酵素(例えばマトリックス金属プロテイナーゼ)を分泌し、不安定な又は破裂したプラークの一般的な特徴であるマクロファージ濃厚なショルダー及び繊維状のキャップ領域における細胞外マトリックス(ECM )の損失をもたらすこと;並びにマクロファージ由来の泡沫細胞がおそらくは脂質の毒性酸化性代謝物に応答して壊死性となりはじめ、局所的な血管壁構造を更に不安定にする脂質のつまった細胞外プールをもたらすこと。
ケモカイン作用の阻害剤、そして特にMCP-1 の阻害剤はプラーク安定性を高め、それ故総合的なアテローム硬化性プラーク負担を抑える必要なく、心筋梗塞の危険性を敏速に下げることができうる。特に、本発明の薬剤は脂質損傷形成及び/又は脂質損傷進行を抑え、またプラーク安定性を高めることができうる(Boringら、Nature, 394, 894 (1998))。従って、本発明の薬剤、例えばペプチド3(1−12)[MCP-1 ](配列番号:1)、KQK ペプチド3[7−12](配列番号:9)、並びに変異体、例えばLeu4Ile11 ペプチド3(1−12)[MCP-1 ](配列番号:14)又はその誘導体(例えばNR58,4、Y−II及びL−II)は不安定な狭心症、アテローム硬化症、並びにその他の局所もしくは全身性脈管炎を特徴とする疾患、並びに血管壁炎症に付随して生ずる症状及び疾患、例えば心筋梗塞の処置及び/又は予防に有用でありうる。
更に、本発明の因子は脂質降下剤、例えばスタチン、又は TGF−ベータ高揚剤と組合せても有用である(例えば、その開示内容を引用して本明細書に組み込むWO96/40098を参照)。
骨粗しょう症
往々にして骨粗しょう症へと分類される低骨鉱物密度は骨芽細胞による骨マトリックス沈着と破骨細胞によるその後の再吸収との間での不均衡による。これら2つの動的な過程間でのバランスが骨密度を決定する。骨密度を高める一つの戦略はタモキシフェンの類似体、例えばラロキシフェンの利用であり、それは骨に対するエストロゲンの作用を模倣し、それ故骨芽細胞の分化を促進し(骨マトリックス沈着を高める)、且つ破骨細胞の補給を抑制する(再吸収を低める)。別の戦略は破骨細胞が骨へと補給されるメカニズムを直接阻害することによりマトリックス再吸収を抑えることにある。血漿及び尿中の骨マトリックス分解産物(例えばコラーゲンのN末端及びC末端テロペプチド並びにピリジニウム架橋)の測定は骨再吸収が骨粗しょう症において高まることを確証し、それ故破骨細胞活性の阻害が有効な治療戦略であることを証明するようである。
局所的に誘導される骨芽細胞とは異なり、破骨細胞は前駆細胞として骨に連続的に補給される。その前駆細胞は単球画分において循環し、そして単球と同一でありうる。補給されると、その前駆体は破骨細胞へと分化し、そして細胞死により死ぬまでマトリックスに吸収され続ける。従って、骨組織内の破骨細胞の数(それ故、破骨細胞活性)は破骨細胞補給過程を調節することにより敏速に調節できうる。
多数の証拠は、骨への単球の補給が、アテローム発生の際に生ずる血管壁への病理単球補給と分子状平行な現象であることを示唆している。特に、ケモカインMCP-1 が双方の過程において関与している。従って、MCP-1 阻害剤は単球補給を抑制し、それ故破骨細胞補給を抑制し、及び/又は破骨細胞へと分化する細胞の数を減らすのに作用し得、これは骨密度の急上昇を、例えば何年もではなく、数週間で達成せしめるであろう。本発明の治療剤の骨密度を高める能力は、骨密度の更なる低下は防ぐが骨密度を高めはしない既存の薬剤とは対照的である。従って、ペプチド3、例えばペプチド3(7−12)[MCP−1 ]並びにその変異体(例えばLeu4Ile11 ペプチド3(1−12)[MCP-1 ])及び誘導体(例えばCRD-Cys13Leu4Ile11ペプチド3(3−12)[MCP-1 ])は低骨密度の抑制又は予防に有用でありうる。特に、CCケモカインに対して特異性を有する誘導体、例えばKQK類似体及びWAQ 類似体が骨粗しょう症の処置に好適な薬剤である。
HIV 感染症及びAIDS
CD4 レセプターの他に、更なる細胞表層分子(共レセプターと称する)がHIV 単離体による細胞の生産的感染のために必要とされる。HIV 単離体は2つのサブタイプに分けることができ、それはそれらが単球/マクロファージ(M好性株)又はヘルパーTリンパ球(T好性株)に感染できるかに依存する。ケモカインリガンドによる実験はケモカインレセプターがHIV 共レセプターとして機能することを示唆する:MIP1α及びRANTESはM好性株による単球の感染を阻害し(T好性株によるT細胞の感染ではなく)、一方SDF-1 はT細胞感染を阻害した(単球感染ではなく)。更なる分子解析は、MIP1α/RANTESレセプターCCR-5 が単球上のHIV 共レセプターであり、SDF-1 レセプターCXCR-4(LESTR 及びフシンとも称される)がT細胞上の共レセプターであることを確証する。
感染の初期では、M好性ウィルスが主流であり、それは非シンシチウム形成性であり、毒性が弱く、そしてT−細胞を枯渇させないウィルスである。後期では、特異性はより毒性で、シンシチウム形成性のT好性株へと変換する。その株はヘルパーT細胞を枯渇させ、そして後天性免疫不全(AIDS)へと結びつく。その他のケモカインレセプター(例えばCCR2a 又はCCR3)を効率的に利用できるいくつかのHIV 単離体が報告されており、CCR5を主に利用するその他の単離体はCCR2aを低い効率でしか利用できない(Doranzら、Cell, 85, 1149 (1996) ; Rossら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95, 7682 (1998))。
これらの発見は、少なくとも感染が樹立しており、且つウィルス負荷が比較的高いとき、いずれかのケモカインレセプターの遮断が無効でありうることを示唆する(Cairnsら、Nat. Med., 4, 563 (1998))。このことは、今日までに発表された少数のケモカインレセプターアンタゴニストの好適な効果を制約する(Caims ら、Nat. Med., 4, 563 (1998))。これらのアンタゴニストは全て一の、又は小さなサブセットのケモカインレセプターに対して特異的なものである。従って、HIV を阻害するのに有効な薬剤を提供するには、この薬剤は複数のレセプターに対するウィルス結合を阻害することが好ましく、即ち、薬剤はケモカインレセプターに対して広域特異性を有しなければならないであろう。
遺伝子研究は、個体をHIV 感染に対して本質的に免疫するCCR5における突然変異を同定した。CCR5Δ32と称するこの突然変異はCCR-5 についての切頭型(トランケーション型)mRNAをもたらす。切頭型CCR-5 の発現は細胞表層上に任意の検出可能なCCR-5 タンパク質を生成しない。HIV 感染症に対して血清陽性なホモ接合突然変異個体の一報の報告があるが、この欠損についてホモ接合性な個体はHIV 感染症に対し、極めて高いウィルス負荷への曝露のもとでも総合的に耐性であることが報告されている。従って、このような所見はCCR-5 レセプターの効果的な遮断が感染症を効果的に予防しうることを示す。更に、CCR-5 媒介ケモカイン発信は正常な生理学において重要な役割をもたず、なぜなら CCR-5Δ32ホモ接合体はHIV 耐性以外に検出可能な表現型をもたないからである。
従って、ケモカインレセプターの阻害剤、例えばペプチド3、その変異体、類似体又は誘導体はHIV 感染を阻害することができ、なぜならこれらの薬剤は広域特異性を有するからである。以降に記述の通り(実施例5)、ペプチド3[MCP-1 ]はHIV 結合、並びにジャーカット細胞及びマクロファージの感染を阻害した。HIV 感染及び/又は複製を予防又は阻害する好適な薬剤はCRD-Cys13Leu4Ile11ペプチド3(3−12)[MCP-1 ]である。特に、ペプチド3、その変異体、類似体又は誘導体、例えばCRD-Cys13Leu4Ile11ペプチド3(3−12)[MCP-1 ]がHIV のM好性株の感染を阻害するのに特に有用でありうる。
ペプチド2、その変異体、類似体又は誘導体もHIV 感染及び/又は複製を予防又は阻害するのに有用であり、なぜならペプチド2はT細胞及びマクロファージ内でのHIV 複製を阻害するからである。好適な治療剤は天然又は野生型配列を有する対応のケモカイン又はペプチドと比べ、低いDuffy 結合力及び高い共レセプター親和力(少なくともnMの域)(実施例5参照)を有する。好ましくは、ペプチド2、その変異体、類似体又は誘導体、例えばLRD 誘導体がHIV のT好性株の阻害に有用である。
従って、ペプチド3、その変異体、類似体又は誘導体と、ペプチド2、その変異体、類似体又は誘導体との組合せがHIV 感染の予防又は処置に極めて有用でありうる。
かくして、これらの薬剤は、単独で、組合せて、又はその他の抗ウィルス療法との組合せで利用したとき、HIV 血清陽性患者及びAIDSに対して血清陽性な患者の進行の処置及び予防に有用である。組合せ利用する場合、感染個体を予めウィルス阻害剤(例えば逆転写酵素及びウィルス性プロテアーゼ阻害剤のカクテル)で処置しておき、次いで所定用量の一般ケモカイン阻害剤、好ましくはペプチド3、ペプチド2、それらの変異体もしくは誘導体、より好ましくはペプチド2[MIP1α]、その類似体又は誘導体を投与することが好ましい。更に、ウィルスの複製を理由にその他の療法(例えばプロテアーゼ阻害剤又は逆転写酵素阻害剤)に対する耐性が生じるため、ウィルス感染力を抑制する薬剤はこのような既存の療法の成功率を著しく高めうる。
特に、全ての既に開拓された治療用標的、例えば逆転写酵素又はウィルス性プロテアーゼとは異なり、ケモカインアゴニスト及び/又はアンタゴニストは、ウィルス自体ではなく、感受性な細胞を標的とする。ウィルスは迅速に突然変異してウィルスを標的とする薬剤に対して耐性な株を発生させることができるが、細胞はあまり簡単には突然変異できず、そして、突然変異淘汰圧はあるにしてもわずかである。ケモカイン共レセプターの利用を回避するためにHIV ウィルスの中で起こらなくてはならない突然変異の程度は、逆転写酵素を逆転写酵素阻害剤に対して耐性にするのに必要な突然変異よりもはるかに大きいようである。従って、ケモカイン類似体の投与は、単独でも、ウィルスを標的とする療剤との組合せでも有効であることを証明するようである。更に、ケモカイン阻害剤はin vivo で限られた副作用、即ち、限られた生理学的効果しかもたないようであり、それ故in vivo で使用したときに良好な治療指数を有する。
発作
炎症過程は発作又は大脳虚血症の病理に関与している。発作の後の炎症反応の作用は有害であり、それ故炎症反応を予防又は抑制することにより供される利益がある。活性化好中球は血管の閉塞及び細胞障害物質の産生により大脳虚血症損傷を促進する。例えば、早期後虚血症回復及び血管白血球、主に好中球の脳への流入は本発明の薬剤の治療標的を司る。中枢神経系細胞による選択的ケモカイン発現は後虚血症血管白血球ターゲッティングにとって重要であり、例えばMCP-1 及びその他のケモカインは発作患者の中枢神経系において上昇調節される。
乾癬
乾癬はMCP-1 及び単球補給が関与する炎症障害である。本発明の治療剤、例えばペプチド3の局所塗布が乾癬の予防又は処置に好適であり、なぜならこのデリバリー方法は生体有用性の問題を軽減させるからである。局所投与される本発明の治療剤の誘導体、例えばCRD ペプチドは非誘導対応物と比べて高い生体有用率を示しうる。他方、乾癬は本発明の薬剤、例えばCRD-Leu4Ile11Cys13−ペプチド3(3−13)[MCP-1 ]、NR58,4、Y−II及びL−II)の全身投与により処置されうる。
自己免疫疾患
自己免疫疾患、例えば多発性硬化症、クーロン病、リウマチ様関節炎及び全身性エリテマトーデスは、自己反応性白血球により統合された免疫系の不適正な活性化を特徴とする。どの因子が自己抗原の当初の不適正な認識に結びつくかはまだ不明確ではあるが、数多くのプロ炎症性サイトカインが、組織崩壊の基となり、このような疾患が関与する死亡及び罹病へと結びつく持続性の炎症に関与している。このような炎症性サイトカインのうち、TNF-α及びケモカイン(特にMIP-1α )が関与している。
例えば、高いMIP-1 の発現が、ヒトの多発性硬化症といくつか共通の特徴を有するT細胞媒介自己免疫疾患のモデルである実験自己免疫脳脊髄炎において検出される。高いMIP1の活性は多発性硬化症を有する患者の大脳脊髄流体内でも検出される。ケモカインレベルを下げる抗体療法は自己免疫疾患の動物モデルにおいて有効であることが示されているが、この方法はタキフィラキシーを示し、そしてケモカインレベルを短期間しか低めず、そして人の治療には有効でないようである。対照的に、ケモカイン発信の一般のアンタゴニストは不適正な炎症を限りなく抑制するようである。従って、ペプチド3、その誘導体及び変異体は、限定することなく、I型糖尿病、多発性硬化症、リウマチ様関節炎及び全身性エリテマトーデス等の自己免疫疾患の予防及び/又は処置に有用でありうる。
更に、様々なケモカイン発現パターンが様々な自己免疫疾患に関係していることがあり、従って各々の自己免疫疾患はペプチド3の異なる誘導体又は変異体を要しうる。例えば、MIP1αは多発性硬化症において中心的な役割を果たしうる。従って、本発明のCC−特異的薬剤の投与は多発性硬化症の処置に利用できうる(例えばKQK 化合物、式(V)の化合物、又はSer7Glu8Glu9ペプチド3(1−12)[MCP-1 ])。
創傷を負った後、様々な細胞タイプの補給及び増殖、マトリックスの構築、並びに免疫監視の強化を包含する複雑な創傷治癒過程がある。胎児では(この場合、増強した免疫監視は必要でない)、この創傷治癒過程は正常な組織構造の完璧な回復に結びつく(例えば、正常な皮膚構造が切傷の後に回復する)。著しく対照的に、成人では、切傷は正常な皮膚構造が回復できない創傷治癒過程をもたらしてしまう。マトリックスは過剰量且つ不適正な立体的統合で構築される。これは傷跡をもたらす。状況によっては、例えば子供が火傷の如きひどい創傷を負ったときは、その傷跡は大過剰のマトリックス沈着を伴って肥大となり、そして特に醜くなる。
成人では、創傷を負った後の感染症のおそれが高い。白血球、特に好中球がその創傷部位に迅速に供給されるが、単球/マクロファージが創傷を負ってから数日後に現われ、肉芽腫性組織の急速形成をもたらす。抗体による研究はCXC ケモカイン、例えばIL-8が創傷部位への好中球の引き寄せに重要な役割を果たすこと、そしてIL-8産生の阻害が好中球の蓄積及びその後の傷跡形成の双方を抑えることを示唆する。CCケモカインを遮断する実験は同様にそれらがマクロファージの創傷部位への引き寄せを司り、そしてこれらの細胞が創傷の質を犠牲にして迅速な治癒を促進しうることも示す。従って、CXC もしくはCCケモカインのいずれか、又はその双方の阻害は創傷誘導炎症反応の抑制をもたらし得、その結果迅速な治癒と皮膚構造の良好な回復のバランスを促進する。
傷跡形成を予防もしくは抑制するため及び/又は創傷治癒を高めるため、本発明の好適な態様は創傷部位においてケモカイン作用を阻害する本発明の治療剤の局所塗布である。従って、広域ケモカイン阻害剤、例えばペプチド3(1−12)[MCP-1 ]、Leu4Ile11 ペプチド3(1−12)[MCP-1 ]、CRD-Leu4-Ile11ペプチド3[MCP-1 ]、NR58,4、Y−II、L−II又はWVQ 、又はそれらの組合せを投与してよい。他方、IL-8の選択的な阻害剤、例えばKEN 、又はMCP-1 の選択的な阻害剤、例えばKQK 、並びにそれらの組合せを投与してよい。
更に、広域阻害剤と選択的阻害剤との組合せを投与してよい。このようにして、創傷誘導化炎症過程の様々な成分が所望通りに調節でき、そして創傷はよりゆっくりと治癒されるようにすることができ(例えば抗生物質を同時に利用することにより、感染症から守られている条件下で)、しかも皮膚構造の回復を高めることができる。創傷治癒を処置又は増強する薬剤の効能の検討方法については、米国特許第 5,202,118号参照のこと)。
高血圧
高血圧はアテローム硬化症の危険因子である。本発明の薬剤が高血圧を抑制又は処置するのに有用であるかを検討するため、ウサギのモデルを採用する。ニュージーランド産白ウサギにアテローム発生食餌を3週間にわたり与え、プラーク形成を誘導する。各ウサギのグループの半分に本発明の薬剤を投与する。大動脈縮窄をウサギの一のグループにおいて、下胸大動脈の中央部のまわりにDarconバンドを巻きつけることで作成する(狭窄グループ)。別のウサギのグループには大動脈狭窄の生じない帯締め技術を施す。更に別のウサギグループは手術を施してないグループとする。大動脈内皮表層に結合する単球をバンドの基端及び遠端の標準の大動脈区画のエピフルオロセント顕微鏡観察で検討する。免疫組織化学は下記の抗体を用いて実施する:VCAM-1、RAM11 、CD11b 及びVIII因子。
薬剤を与えていないウサギでは、狭窄付近の大動脈の高血圧領域、単球接着及び内皮VCAM-1発現が増大し、内膜厚化及びマクロファージの蓄積が伴う。薬剤処置ウサギでは、単球接着及び内皮VCAM-1発現、内膜厚化及びマクロファージの蓄積は薬剤未処置ウサギと比べ低かった。従って、本発明の薬剤(例えばCRD-Leu4Ile11Cys13−ペプチド3(3−13)[MCP-1 ]、NR58,4、Y−II及びL−II)はヒトの高血圧に結びつき、そして原因となりうる血管再形成を緩和するのに有用でありうる。ところで、高血圧を処置するのに利用される本発明の薬剤はアドレナリン受容体結合能をほとんど又は全く有さないのが好ましい。従って、高血圧を処置するのに好適な薬剤には式(XIV) の化合物が除かれうる。
好塩基球媒介疾患
ぜん息は様々な細胞タイプ及び炎症媒介因子の流入に由来する過敏気路及び慢性炎症を特徴とする疾患である。ぜん息における全ての炎症媒介因子の相互作用及び因果関係は全体的に理解されていない。MCP-1 はいくつかの異なるエフェクター機能、例えば単球補給、好塩基球補給、リンパ球補給、単球活性化、又は好塩基球もしくは休止肥満細胞からのヒスタミンの放出の誘導を通じてぜん息において役割を果たしうる(Bischoffら、J. Exp. Med., 175 (5), 1271 (1992))。このような過程の阻害は疾患の症度を軽くするようである。ぜん息のようなアレルギー性疾患は単球/マクロファージ、リンパ球、並びに肥満細胞及び好塩基球から放出されたヒスタミン等の炎症媒介因子の複雑な相互作用を介して介入する。
ぜん息に関わる症状の処置又は抑制のための本発明の治療剤の投与のための好適な方式は吸引による。赤血球は気管には通常存在しないため、治療剤のDARC特異性は、その他の投与の方式と比べ、気管への投与にとってはあまり重要でない。
内毒血症
内毒血症はグラム陰性菌の細胞壁の主成分であるLPS により往々にして媒介される急性全身性疾患である。LPS はプロ炎症性サイトカインの放出を刺激する。MCP-1 及びMCP-2 は内毒血症において発現され、そして白血球を標的器官へと補給することによりその効果を発揮する。組換ネズミMCP-1 のLPS 負荷マウスへの腹腔内投与はそれらを内毒素死から守る(Zismanら、L. Clin. Invest., 99, 2832 (1997))。従って、本発明のこの態様において利用するのに好適なペプチドはMCP-1 及びMCP-2 ペプチドである。
心筋梗塞/急性虚血症
心筋梗塞は通常アテローム硬化性プラークの破裂に付随する血栓による冠状血管の急性閉塞の結果である。隣の心筋層への損傷及びその結果としての心不全は、虚血症時及び再灌流時に生ずる損傷に付随する。再灌流損傷は酸素フリーラジカル及び炎症媒介因子の増大に関与する。MCP-1 は再灌流時に上昇調節され、そして炎症媒介因子の鍵となる(Kumar ら、Circulation, 90, 1427 (1994) ; Kumarら、Circulation, 95, 693 (1997))。MCP-1 及びその結果としての炎症因子の抑制は心筋層に対するその回復時での損傷を抑え、また心不全の発症率を低めうる。
リウマチ様関節炎
リウマチ様関節炎は主として関節、しかしながら皮膚、血管、心臓、肺及び筋肉にも関与する多発−全身性炎症疾患である。リウマチ様関節炎の特徴的な病理には、関節内のマクロファージ及びリンパ球から成る非化膿性炎症細胞浸潤物の蓄積を包含する。MCP-1 はリウマチ様関節炎における滑液細胞及び浸潤性単球/マクロファージの双方により産生され、そして関節内の炎症細胞の蓄積に寄与すると考えられている。天然MCP-1 及びMCP-1 のアンタゴニスト(天然MCP-1 の残基9−76)を慢性関節炎のMRL-Lpr モデルで評価した。天然MCP-1 ではなく、アンタゴニストMCP-1 (9−76)による処置はこのモデルにおける慢性関節炎の症状及び組織病理を抑制した(Gongら、J. Exp. Med., 186, 131 (1997) ; Plater-Zyberk ら、Immunol. Lett., 57, 117 (1997) ; Wilder, Clin. Rheumat., 10, 259 (1996))。従って、ペプチド3、その変異体、類似体及び誘導体はリウマチ様関節炎の処置又は予防に極めて有用でありうる。
避妊
CXCR4 ケモカインレセプターについてのノックアウトマウスは胎芽死を示す。CXCR4 レセプター(実施例5参照)及びその他のケモカインレセプターをブロッキングする本発明の薬剤が同定された。従って、本発明の薬剤は流産を誘導する又は避妊薬を提供するのに有用でありうる。CXCR4 レセプターの遮断は伝統的な避妊の代替肢を供することができ、そして性交後に使用できうる。
IV.本発明の製剤の投与量、剤形及び投与経路
式(I)−(XV)及び(XIX) の化合物(その塩を含む)を含む本発明の医薬剤を、好ましくは、約0.01pM〜約 100nM、より好ましくは約0.01pM〜約5nM、更により好ましくは約 0.1pM〜約2nMの本医薬剤の血清レベルに達する様に、投与する。このレベルを達成するために、少くとも約0.01〜約 100mg/kg体重、より好ましくは約 0.1〜約30mg/kg体重の投与量で本剤を投与してよいが、他の投与量でも有益な効果が得られよう。投与量は、種々の要因、例えば限定でなく、選択した製剤、予防のためか治療のためか、そして生体利用度及びインビボ安定性のために製剤が修飾されているかどうか、ということに応じて変化するだろう。
センス又はアンチセンス核酸分子の投与は、その核酸分子を含んで成る発現カセット(WO93/02556参照)により形質転換された細胞の導入によって、あるいはその核酸分子の投与によって達成されうる(see, for example, Felgner et al., U.S. Patent No. 5,580,859, Pardoll et al., Immunity, 3, 165 (1995) ; Stevenson et al., Immunol. Rev., 145, 211 (1995) ; Molling, J. Mol. Med., 75, 242 (1997) ; Donnelly et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 772, 40 (1995); Yang et al., Mol. Med. Today, 2, 476 (1996) ; Abdallah et al., Biol. Cell, 85, 1 (1995))。核酸投与のための医薬剤形、投与量及び投与経路は、一般的に、例えばFelgner et al.(前出)に開示されている。
本医薬剤の投与量は、特定の症状を治療するために選択される。本医薬剤はまた、予防目的のための、好ましくは全身投与による、長期使用に用いることができる。
本医薬剤の投与は、例えば患者の生理状態、投与目的が治療であるか予防であるか、そして医師に既知の他の因子に応じて、連続的でも間欠的でもよい。本剤の投与は、予め選択した期間にわたって本質的に連続的であってもよいし、又は間隔をあけた投与の連続であってもよい。局所投与及び全身投与の両方が考えられる。
本医薬剤を含んで成る1又は複数の適当な単位投与剤形が、種々の経路、例えば経口、又は非経口、例えば直腸内、頬内、腔内及び舌下に、経皮、皮下、静脈内、筋内、腹腔内、気管内、肺内並びに鼻内に投与されうる。本剤は、場合により持続性放出のために製剤化されてもよい。本剤は、適宜、都合よく、個別の単位投与剤形であってよく、そして薬局に周知の任意の方法で調製されうる。この様な方法には、本医薬剤を、液体担体、固体基材、半固体担体、細分化された固体担体、又はそれらの組合せに組み込む過程、並びに、必要ならば、その生成物を希望の供給系に組み込む、又は成形する過程を含みうる。
本医薬剤を、経口投与のために調製する場合、好ましくは、それを、医薬に適する担体、希釈剤又は賦形剤と混合して、医薬製剤又は単位投与剤を作る。前記製剤中の活性成分の総量は、重量で 0.1〜99.9%である。「医薬に適する」とは、その担体、希釈剤、賦形剤及び/又は塩が、製剤中の他の成分に適応すること、そして患者に有害でないことを意味する。経口投与のための活性成分は、粉末又は顆粒;溶液、懸濁液又は乳状液の剤形であってよく、あるいはチューイングガムから活性成分を摂取するための合成樹脂などの達成可能な基材中に含まれてもよい。本活性成分はまた巨丸剤、舐剤又はペースト剤でもよい。
腔投与に適する剤形は、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、パスタ剤、灌注剤、滑沢剤、泡剤又はスプレー剤でよく、これらは、活性成分以外に、適当な担体を含んで成る。直腸投与に適する剤形は、座剤でよい。
本医薬剤を含む医薬製剤を、当業界に既知の方法により、周知で且つ容易に入手できる成分を用いて、調製することができる。例えば、本剤を、一般的な賦形剤、希釈剤又は担体により製剤化して、錠剤、カプセル剤、懸濁液、散剤などに成形することができる。前記製剤に適する賦形剤、希釈剤及び担体の例は、下記の充填剤及び増量剤、例えばスターチ、糖、マンニトール、及びシリカ誘導体;結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、HPMC及びその他のセルロース誘導体、アルギナート、ゼラチン、及びポリビニルピロリドン;保湿剤、例えばグリセロール;崩壊剤、例えば炭酸カルシウム及び重炭酸ナトリウム;溶解遅延のための剤、例えばパラフィン;再吸収促進剤、例えば第四アンモニウム化合物;界面活性剤、例えばセチルアルコール、グリセロールモノステアレート;吸着性担体、例えばカオリン及びベントナイト;並びに滑沢剤、例えばタルク、カルシウム及びマグネシウムステアレート、及び固体ポリエチレングリコールである。
例えば、本剤を含む錠剤又はカプレットは、緩衝剤、例えば炭酸カルシウム、酸化マグネシウム及び炭酸マグネシウムを含みうる。カプレット及び錠剤はまた不活性成分、例えばセルロース、ゲラチン化スターチ、二酸化ケイ素、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マグネシウムステアレート、微晶質セルロース、スターチ、タルク、二酸化チタン、安息香酸、クエン酸、コーンスターチ、鉱物油、ポリプロピレングリコール、リン酸ナトリウム、及び亜鉛ステアレートなどを含みうる。
本剤を含む硬又は軟ゼラチンカプセルは、不活性成分、例えばゼラチン、微晶質セルロース、ナトリウムラウリルスルフェート、スターチ、タルク及び二酸化チタンなど、並びに液担担体、例えばポリエチレングリコール(PEG)及び植物油を含みうる。更に、本剤を含む腸溶性コーティングしたカプセル又は錠剤は、胃での分解に抵抗性を示し、そして十二指腸の、より中性〜アルカリ性の環境内で溶解する様に設計されている。
本医薬剤はまたエリキシール、又は通常の経口投与のための溶液、又は非経口投与、例えば筋内、皮下又は静脈内投与のための適当な溶液としても製剤化されうる。
本医薬剤の製剤はまた水性又は無水の溶液又は分散液、あるいは乳状液又は懸濁液であってもよい。
従って、本医薬剤は、非経口投与(例えば注射、例えば一回大量注射又は連続点滴)のために製剤化されてよく、そしてアンプル、充填済みシリンジ、小量の点滴容器としての単位投与形、あるいは保存剤を添加した多数回投与用容器の形であってよい。本活性成分は、油性又水性担体中の懸濁液、溶液又は乳状液の形をとってよく、そして製剤化のための剤、例えば懸濁剤、安定剤及び/又は分散剤を含んでよい。あるいは、本活性成分は、適当な担体、例えば滅菌した無パイロジェン水により使用前に再構成するための粉末の形でもよく、これは、滅菌固体の無菌的な単離又は溶液からの凍結乾燥により得られる。
これらの製剤は、従来技術で周知である医薬に適する担体及び補助剤を含んでよい。例えば、水の他に、生理学的観点から容認される1又は複数の有機溶媒、例えばアセトン、エタノール、イソプロピルアルコール、グリコールエーテル、例えば商品名「Dowanol 」、ポリグリコール及びポリエチレングリコール、短鎖の酸のC1 −C4 アルキルエステル、好ましくはエチル又はイソプロピル乳酸、脂肪酸トリグリセリド、例えば商品名「Miglyol 」、イソプロピルミリステート、動物油、鉱物油及び植物油、並びにポリシロキサンから選択された溶媒を用いて、溶液を調製することができる。
本発明の組成物はまた濃化剤、例えばセルロース及び/又はセルロース誘導体を含んでよい。またそれらは、ゴム、例えばキサンタン、グアール又はカルボゴム、又はアラビアゴム、あるいはポリエチレングリコール、ベントン及びモンモリロナイトなどを含んでよい。
必要ならば、酸化防止剤、界面活性剤、その他の保存剤、フィルム形成性のケラトリティック(keratolytic )又はコメドリティック(comedolytic )な剤、芳香剤及び着色剤の中から選択される補助剤を加えることができる。また、その他の活性成分を、記載した症状又はその他の症状のために、加えてもよい。
例えば、酸化防止剤として、t−ブチルヒドロキノン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、並びにα−トコフェロール及びその誘導体が考えられる。局所適用のために主に調合される製剤は、クリーム、ミルク、ゲル、分散液又は微小乳状液、大きく又は小さく濃化されたローション、含浸したパッド、軟こう又はスティック、あるいはスプレーのエアゾル剤形又は泡剤、あるいは一塊の石けんの形であってよい。
更に、本剤は、持続放出する投与剤形などにも十分に適する。この製剤は、腸又は気管の特定の部分のみで、あるいは好ましくは前記部分で、可能ならば長期にわたって、本活性成分を放出する様に構成されうる。コーティング、外皮、及び保護マトリックスを、例えばポリマー物質、例えばポリラクチド−グリコレート、リポソーム、微小乳状液、ミクロ粒子、ナノ粒子又はワックスから作りうる。これらのコーティング、外皮、及び保護マトリックスは、内在型装置、例えばステント、カテーテル、腹腔用透析チューブなどをコーティングするために有用である。
本医薬剤は、経皮投与のためにパッチを介して供給されうる。医薬剤の経皮供給に適するパッチの例について、米国特許 5,560,922を参照のこと。経皮供給のためのパッチは、裏打ち層と、その中に医薬剤が分散又は溶解されたポリマーマトリックスと、1又は複数の皮膚透過促進剤を含んで成りうる。裏打ち層を、本剤が不透過である任意の適当な材料から作りうる。裏打ち層は、マトリックス層の保護カバーとして働き、且つ支持機能も提供する。
この裏打ち層は、ポリマーマトリックスと本質的に同じサイズであるか、又はポリマーマトリックスの横側にまで広がり、又はポリマーマトリックスの横側を被い、そして裏打ち層の拡大表面が接着のためにのベースとなりうる様に、作製されうる。あるいは、ポリマーマトリックスは、接着性ポリマー、例えばポリアクリレート又はアクリレート/ビニルアセテートコポリマーを含み、又はそれにより製剤化されうる。長期間の適用のために、微小孔を有し、そして/又は呼吸可能な裏打ちラミネートを用いることができ、従って皮膚の水和又は浸軟を最小にすることができる。
裏打ち層の作製に適する材料の例は、高及び低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリビニルクロライド、ポリエステル、例えばポリ(エチレンフタレート)のフィルム、金属箔、前記の適当なポリマーフィルムの金属箔ラミネートである。好ましくは、裏打ち層に用いられる材料は、金属箔、例えばアルミ箔を有する前記ポリマーフィルムのラミネートである。その様なラミネートでは、その中のポリマーフィルムは通常、接着性ポリマーマトリックスと接触している。
裏打ち層は、希望の保護機能及び支持機能を付与する適当な厚みを有しうる。適当な厚さは約10〜約 200ミクロンであろう。
一般的には、生物学的に容認される接着ポリマー層を形成するために用いられるこれらのポリマーは、成形された本体、薄い壁又はコーティング層(そこを通して医薬剤が、調節された速度で通過しうる)を形成することができるものである。適当なポリマーは、生物学的に及び医薬上適合し、非アレルギー性であり、そしてこの装置が接触する体液又は組織中で不溶性且つ適合性を有する。可溶性ポリマーの使用は避けるべきである。なぜなら皮膚の湿気による当マトリックスの溶解又は侵食が医薬剤の放出速度、及び除去の簡便さのために、投与単位がその場に留まる能力に影響を与えうるからである。
接着ポリマー層を作製するための典型的な例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/エチルアクリレートコポリマー、エチレン/ビニルアセテートコポリマー、シリコーンエラストマー、特に医薬等級のポリジメチルシロキサン、ネオプレンラバー、ポリイソブチレン、ポリアクリレート、塩化ポリエチレン、ポリビニルクロリド、ビニルクロリド−ビニルアセテートコポリマー、架橋ポリメタクリレートポリマー(水和ゲル)、ポリビニリデンクロリド、ポリ(エチレンテレフタレート)、ブチルラバー、エピクロロヒドリンラバー、エチレンビニルアルコールコポリマー、エチレンビニルオキシエタノールコポリマー;シリコーンコポリマー、例えばポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマー、ポリシロキサン−ポリエチレンオキサイドコポリマー、ポリシロキサン−ポリメタクリレートコポリマー、ポリシロキサン−アルキレンコポリマー(例えばポリシロキサン−エチレンコポリマー)、ポリシロキサン−アルキレンシランコポリマー(例えばポリシロキサン−エチレンシランコポリマー)など;セルロースポリマー、例えば、メチル又はエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びセルロースエステル;ポリカーボネート;ポリテトラフルオロエチレン;並びこれらの類似物である。
好ましくは、生物学的に容認される接着ポリマーマトリックスは、そのガラス転移温度が室温未満であるポリマーから選択されるべきだ。このポリマーは、必ずしも必要ではないが、室温で一定程度の結晶性を有しうる。架橋性モノマー単位又は部位を、前記ポリマーに組み込みうる。例えば、架橋性モノマーをポリアクリレートポリマーに組み込ことができ、その結果、そのポリマー内に医薬剤を分散した後にそのマトリックスを架橋するための部位が提供される。ポリアクリレートポリマーのための既知の架橋性モノマーは、ポリオールのポリメタクリルエステル、例えばブチレンジアクリレート及びジメタクリレート、トリメチルオールプロパントリメタクリレートなどを含む。前記部位を提供するその他のモノマーはアリルアクリレート、アリルメタクリレート、ジアリルマレエートなどを含む。
好ましくは、可塑剤及び/又は湿潤剤を、接着ポリマーマトリックス内に分散する。水溶性ポリオールは一般的にこの目的に適する。製剤中の湿潤剤の組み込みにより、当該投与単位が皮膚表面上の湿気を吸着することができ、従って皮膚刺激性を減弱し、そして当該供給系の接着ポリマー層が失活することを抑さえることができる。
経皮供給系から放出された医薬剤は皮膚の各層を通過できなければならない。医薬剤の通過率を上げるために、経皮供給系は、特に、皮膚の最外層、すなわち角質層(分子の透過に対して最も抵抗性を示す)の透過性を上げることができなければならない。医薬剤の経皮供給のためのパッチの作製は当業界に周知である。
吸入による上気管(鼻腔)または下気管への投与のために、本発明の医薬剤を、簡便には、吸入器、ネブライザー、又は加圧パック、又はエアゾルスプレー供給のその他の通常の方法により供給する。加圧パックは、適当な噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又はその他適当なガスを含みうる。加圧エアゾルの場合、その投与単位は、一定量を供給するためのバルブによって決定されうる。
あるいは、吸入又は吹き入れによる投与のために、当組成物は、乾燥粉末、例えば医薬剤と適当な粉末ベース、例えばラクトース又はスターチとの混合粉末の形であってよい。この粉末組成物は、例えばカプセル又はカートリッジ、あるいはゼラチン又はブリスターパックの形の単位投与形であってよく、それらから粉末が、吸入器、吹き入れ器又は定量式吸入器の助けを借りて、投与されうる。
鼻内投与のために、医薬剤を、鼻点滴、液体スプレーを介して、例えばプラスチックボトルのアトマイザー又は定量式吸入器を介して、投与しうる。アトマイザーの典型はミストメーター(Mistometer)(Wintrop) 及びメディハラー(Medihaler)(Riker) である。
本発明の医薬剤の局所供給はまた、疾患部位又はその近くに本剤を投与する種々の方法による。部位特異的又は標的化局所供給方法の例は、限定でなく、例示として、局所供給カテーテル、例えば注入型又は内在型カテーテル、例えば針式注入型カテーテル、シャント及びステント、又はその他の移植可能な装置、部位特異的担体、直接注入、又は直接投与である。
局所投与のために、医薬剤を、標的領域への直接投与に関して当業界に知られている通りに、製剤化しうる。この目的のための通常の剤形は、外傷用治療材、コーティングされた包帯、又はその他のポリマー外皮、軟こう、クリーム、ローション、パスタ、ジェリー、スプレー及びエアゾル、並びに歯みがきペースト及び口内洗浄剤、又はその他の適当な形、例えばコーティングされたコンドーム、を含む。
軟こう及びクリームは、例えば、水性又は油性ベースにより、適当な増量剤及び/又はゲル化剤を加えて、製剤化されうる。ローションは、水性又は油性ベースにより製剤化され、そして一般的には、1又は複数の乳化剤、安定剤、分散剤、懸濁剤、濃化剤、又は着色剤をも含むだろう。本活性成分はまた、米国特許 4,140,122;4,383,529;4,051,842に開示された通り、イオン導入法によって供給されてもよい。局所用製剤中に存在する医薬剤の重量%の種々の要因によって変化し、しかし一般的には0.01〜95重量%、典型的には 0.1〜25重量%であろう。
希望する場合、前記製剤を、本活性成分の持続放出性を付与する様に、ある種別の親水性ポリマーマトリックスとの組合せ、例えば天然ゲル、合成ポリマーゲル又はそらの混合物との組合せにより、適合させることができる。
点滴剤、例えば眼用又は鼻用点滴剤を、水性又は非水性ベースにより製剤化することができ、またこれは、1又は複数の分散剤、溶解剤又は懸濁剤を含みうる。液体スプレーは、簡単には、加圧パックから供給されうる。点滴剤は、単純な眼点滴用キャップ付きボトル、又は液体を一滴ずつ供給する様に適合されたプラスチックボトル、又は特に成形された密閉容器を介して供給されうる。
本医薬剤は、更に、口又はのどに局所投与するために製剤化されうる。例えば、本活性成分を、香り付きベース、通常スクロース及びアカシア又はトラガカントゴムを更に含むロゼンジ;不活性ベース、例えばゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアカシアゴム中に本組成物を含んで成るパステル;適当な液体担体中に本組成物を含んで成る口内洗浄剤;並びに、本発明の組成物を含んで成るパスタ及びゲル、例えば歯みがきペースト又はゲルとして製剤化しうる。
本文に記載の製剤及び組成物は、その他の成分、例えば抗微生物剤又は保存剤を含んでもよい。更に、本活性成分を、その他の医薬剤、例えば経口避妊薬、気管支拡張剤、抗ウィルス剤、例えば ddI、ddC、AZT、プロテアーゼ阻害剤、又はそれらの任意の組合せ、ステロイド、ロイコトリエン阻害剤、シクロスポリンA、メトトレキセート、アザチオプレン、抗IgE 、エンブレル(Enbrel)、キセナパックス(Xenapax )などと組合せて用いてもよい。
持続放出型投与製剤
本発明の持続放出型投与製剤は、その中に医薬剤が分散されたミクロ粒子及び/又はナノ粒子を含んで成りうる。このタイプの医薬投与製剤は、持続放出に適する任意の形態から成りうる。好ましい持続放出型投与製剤は1又は複数の下記特徴を有する。
・ミクロ粒子(例えば約 0.5μm〜約 100μmの直径、好ましくは約 0.5〜約2μm;又は約0.01μm〜約 200μmの直径、好ましくは約 0.5〜約50μm、より好ましくは約2〜約15μm)又はナノ粒子(例えば、約 1.0nm〜約1000nmの直径、好ましくは約50〜約 250nm;又は、約0.01nm〜約1000nmの直径、好ましくは約50〜約 200nm)、自由流動する粉末構造。
・一定期間、好ましくは約 0.5日〜約 180日、好ましくは約1−3日〜約 150日、又は約3〜約 180日、より好ましくは約10〜約21日で生物分解される様に設計された生物分解性構造;あるいは、約 0.5〜約 180日、より好ましくは約30〜約120日、又は約3〜約 180日、好ましくは約10〜約21日の期間で、医薬剤の拡散が生じうる非生物分解性構造。
・製剤を投与する標的組織及び局所的生理学的環境に対する生体適合性。生体適合性の生物分解性産物。
・医薬剤の安定且つ再現性のある分散の促進。このましくは、下記経路の一方又は両方により活性医薬剤の放出がおこる医薬剤−ポリマーマトリックスの形成のため。(1)投与製剤を介した医薬剤の拡散(医薬剤が、製剤の寸法ほ規定する成形されたポリマー又はポリマー混合物中で可溶である場合)。又は(2)投与製剤の生物分解に伴う、医薬剤の放出。並びに/又は、
・標的型投与製剤のために、粒子表面面積 150平方Åあたり、投与製剤結合に対して、好ましくは約1〜約10000 の結合タンパク質/ペプチドを有する、より好ましくは、投与製剤結合に対して最大で約1つの結合ペプチドを有する能力。投与製剤結合に対して結合するタンパク質/ペプチドの総数は、用いる粒子サイズに依る。結合タンパク質又はペプチドは、医薬投与製剤の粒子に、本文記載の通り、共有リガンドサンドイッチ又は非共有様式を介して結合することができる。
ナノ粒子の持続放出型投与製剤は好ましくは生物分解され、そして場合により、血管平滑筋細胞に結合し、そして主にはエンドサイトーシスにより、それらの細胞に進入する。このナノ粒子の生物分解は、前記リソソーム小胞及びリソソーム内で経時的に(例えば30〜120日 、又は10〜21日で)生じる。好ましい、より大きなミクロ粒子の投与製剤は、医薬剤を放出し、次に標的細胞に取り込まれる。
その場合、ほんの少数のより小さなミクロ粒子が貧食により細胞に進入する。医師は、標的細胞が、本製剤を取り込み、そして代謝する正確な機構が、それらの細胞の形態、生理活性及び代謝プロセスに依存することを理解している。粒子の持続放出型製剤のサイズは、細胞取り込みの様式の点でも重要である。例えば、より小さなナノ粒子は、細胞間の間質液と共に流れ、そして注入された組織に貫入しうる。より大きなミクロ粒子は、注入された最初の組織の間質内により容易に捕捉される傾向があり、従って医薬剤にとって有用である。
本発明の好適な持続的放出剤形は、生分解性マイクロ粒子、又はナノ粒子より成る。より好ましくは、生分解性マイクロ粒子、又はナノ粒子は、ランダムに、非酵素的に、治療薬を放出する加水分解性の開裂によって生分解される基質を含むポリマーにより形成され、それにより細孔のある粒子構造を形成する。
アルファ・ヒドロキシカルボキシル酸の縮合により誘導され、そしてラクトンと同属であるポリマーは、本発明における使用に好適である。特に好適な部分は、熱可塑性ポリエステル(例えば、ポリラクチド、又はポリグリコリド)又はラクチドのコポリマーとグリコリド成分の混合物、例えばポリ(ラクチド−co−グリコリド)により形成される。代表的な構造、ランダム・ポリ(DL−ラクチド−co−グリコリド)を以下に示す、要求するマイクロ粒子、又はナノ粒子特性を達成するためにXとYの値は本分野の専門家によって操作できる。
本発明の好適な粒子から成る剤形を形成する他の物資は、ポリオルソエステル、ポリアセタール(Polymer Letters、18;293ページ(1980))、ポリオルソエステルカルボネート(米国特許番号4,093,709)、その他を含む。
本発明の基質粒子を含む好適な乳酸/グリコール酸ポリマーは、エマルジョンに基づく方法により調製され、その方法は、溶媒抽出法の変法から構成される、例えばコウサー他、「ステロイドの徐放放出のためのポリ(ラクチド−co−グリコリド)ミクロカプセル」、Methods Enzymology、112:101〜116ページ、1985(マイクロ粒子中へのステロイドの包括);エルドリッジ他、「毒素中和抗体のレベルを亢進するスタフィロコッカス・エンテロトキシンB類毒素のアジュバントとしての生分解性、及び生体適合性ポリ(DL−ラクチド−co−グリコリド)微粒子」、Infection Immunity、59:2978〜2986ページ、1991(類毒素の包括);コーエン他、「乳酸/グリコール酸に基づく微粒子のタンパク質のための調節されたデリバリー・システム」、Pharmaceutical Research、8(6):713〜720ページ、1991(酵素の包括);及びサンダース他、「ポリ(DL−ラクチド−co−グリコリド)微粒子からの黄体形成ホルモン放出ホルモン類似物の徐放放出」、J.Pharmaceutical Science、73(9):1294〜1297ページ、1984(ペプチドの包括)に記載の方法を参照のこと。
一般に、本発明の粒子剤形を形成するやり方は、ハロゲン化炭化水素溶媒への前記ポリマーの溶解、それらの中への治療薬液(好ましくは水溶性)の分散、そしてポリマーの溶媒ではなくハロゲン化炭化水素溶媒の溶媒として働く添加剤の添加を含む。前記ポリマーは、ポリマー−ハロゲン化炭化水素溶液から溶液を含む治療薬の液滴に沈降し、そして治療薬を包括する。好ましくは前記治療薬は、本発明の持続的放出剤形の内部に実質的に均一に分散する。粒子形成に続き、それらを有機溶剤において洗浄し、そして硬化させた。室温で減圧下での乾燥の前に、水洗及び水溶性非イオン性界面活性剤洗浄の段階が続く。
生体適合性の目的において、前記粒子の基質中に分散した治療薬により特徴づけられた粒子剤形は、包装、貯蔵、又は投与に先立ち滅菌された。例えば、前記粒子には、構造、又は治療薬−ポリマー基質中に分散している治療薬の機能、又はそこに付着する結合タンパク質/ペプチドに不利な影響およぼさない放射線に対する被爆をもたらす、ガンマ放射線を照射できる。もし前記治療薬、又は結合タンパク質/ペプチドが非常に不利な影響をうけるならば、前記粒子剤形は無菌環境下で生産しうる。
本発明の粒子剤形からの前記治療薬の放出は、拡散でも起きうるし粒子基質の侵食でも起きうる。生分解速度は、治療薬放出の動態に直接的に影響する。生分解速度は、前記持続的放出剤形の組成、又は構造の選択により調節される。例えば、本発明の好ましい剤形中のラクチド/グリコリド比の選択は、タイス他、「生分解性の徐放放出非経口系」、Pharmaceutical Technology、26〜35ページ、1984に記載されるように;ケント他、「水溶活性ポリペプチドの微細封入」、米国特許番号4,675,189に記載の、加水分解ポリマー、例えばクエン酸、及び炭酸ナトリウムの比を変更した物質の封入により;
ラクチド/グリコリドポリマー中の治療薬の添加量(分解速度はそこに含まれる治療薬の量に反比例する)の変更により、上述主要部の添加量を変更するために異なる効果を表す、治療薬の共通ファミリーの好適な物質の慎重な選択により;そしてベック他、「ポリ(DL−ラクチド−co−グリコリド)/ノルエチステロン・マイクロ・カプセル:注射可能な生分解性避妊薬」、Biol. Reprod.、28:186〜195ページ、1983、に記載の、粒子サイズの変異、その他により行われることができる。全ての前記生分解速度調節の方法は、基質に含まれるポリマーの固有の粘性に影響を与え、それによりそれ自身の加水分解速度が変化する。
前記好適なラクチド/グリコリド構造は、哺乳類の生理的な環境において生体適合性がある。また、それら好適な持続的放出剤形は、それらの生分解性は乳酸とグリコール酸より形成され、この両者は哺乳類の正常な代謝産物である点で価値をもつ。
前記粒子剤形へのタンパク質/ペプチドの結合に必要な官能基は、粒子基質中に、又は粒子基質上に任意に含まれ、そしてそれらは、化学的分解が可能ではない重合体ユニット、又は化学的分解が可能な重合体ユニットに付着する。この目的に有用である、官能基は、ペプチドと作用するもの、例えばカルボキシル基、アミン基、スルフィドリル基、その他を含む。好適な結合増強成分は、基質を含む好適な(ラクチド−グリコリド)ポリマーの終端のカルボキシル基その他を含む。
V.生理液体における本発明の試薬(agent )の検出
血液及び尿中のペプチド3の分析を半透膜(SPS) HPLCカラム(制限されたアクセス媒体)で行った。血清または他のタンパク質含有サンプルをSPS カラム(例えば、4.6mm×250mmのカラムサイズのSPS-C18 、可動相:A:水中 0.1%のTFA 、B:アセトニトリル中 0.1%のTFA :0〜5分−5%B、5〜30分−60%B、30〜40分−5%B、検出器:215nm 、を用いる)。カラムの外側の相は半透膜を形成し、半透膜は大きな分子が内側相に達することを阻止する。小さい分子は半透膜を浸透して、内側の逆相と相互作用する。
PBS 中のペプチド3の標準( 1.5μg/ml〜1000μg/mlの範囲)を注入し、標準曲線を作った。20μlの血清及び尿を注入し、ペプチド3のピークの下方領域を得た。次いで、この標準曲線から濃度を計算した。この方法は生理液体サンプルにおける少なくとも約20μg/mlのペプチドを検出できる。
本発明のペプチドも、LC-MS を用いて、生理液体、例えば、尿または血清において、検出及び/または定量し得る。電子スプレイイオン化(ESI )を用いて、LCQ イオントラップ質量分析計(Thermoquest Finnigan, San Jose, CA)を 200℃までに設定された加熱された毛細管を用いて、電子スプレイ針に4.25KVを適用して、陽イオンモードで操作する。シースガスの流量を55単位に設定し、一方助剤ガスを止める。データは 500msの最大イオン時間及び1全マイクロ走査(total microscan )で得られる。分析は 2.0amの分離幅及び28%の衝突エネルギーに設定されたm/z 680.1を用いて、二重に荷電したイオンの破砕により発生した、m/z〔335-1400〕を用いる全走査(fullscan)MS及び/またはm/z〔280-1500〕を用いる全走査MS/MSを用いて実施する。
HPLC等級溶媒(J.T. Baker、フィリップスバーグ、NJの「Baker Analysed」)及びギ酸(99%、ACS、Sigma、セントルイス、MO)を用いた。C18 カートリッジを含有する「SafeGuard」ガードカラム(Phenomenex、トレンス、CA)を装備したZorbax Eclipse XDB-C18 3.0×150mm、3.5μm(「Zorbax」、Hewlelt Packard、パロアルト、CA)を35℃のカラム温度及び 400バールの最大圧力で操作する。流量は 0.500mL/分に設定する。
HP1100二進数システム(Hewlett-Packard 、パロアルト、CA)は、0.0〜3.0分で、0%B(アセトニトリル)及び 100%A(水/ 0.1%ギ酸)から始まる20分グラジエントを生じ、次いで 3.5分で15%Bまでの勾配を成し、12.0分まで平等に進行する。この溶出段階に12.0〜14.0まで95%Bまでの勾配を成し、一方流量が14.1分で 0.800mL/分まで増加する、高有機洗浄段階が続く。16.0〜16.5分で、このシステムを0%Bに再設定し、 3.5分間 0.800mL/分に再平衡させる。
あるいは、15分グラジエントを0〜2.5 分で98%A(水/ 0.1%ギ酸(アセトニトリル))から始め、次いで 2.5分から11分までで17%Bまでの勾配を成し、次いで11分で95%Bまでの勾配を成す。流量は11.1分で 0.800mL/分まで増加する。13.2分で、このシステムを15分まで1%Bに再設定する。LCQ 転換バルブを流れを8〜11分の間検出器に向けるように設定する。10μlの各サンプルをHP1100オートサンプラー(Hewlett-Packard 、パロアルト、CA)を用いて注入する。最初の条件の設定下、CRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-]が9.69分の保持時間で溶出する。
第2の設定で、CRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1 ](トリ酢酸塩)が 8.3分の保持時間で溶出するが、CRD-L-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1 ](トリ酢酸塩)は 8.9分で溶出した。
標準分析物を種々のレベルのCRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1 ]及び決まった量のCRD-L-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1 ]トリ酢酸塩を、「Sterile Acrodisc 130.2μm」フィルター(Gelman Sciences, Prod. # 4454 )でろ過したラットの尿、または血清に加えることにより調製する。ラットの尿中の次のレベルの遊離塩基CRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP1]を各々3回注入し、LCQuanを用いて処理し、次の標準曲線を生じさせた:0.05μg/mL、 0.1μg/mL、 0.5μg/mL、 1.0μg/mL、 2.0μg/mL、 3.0μg/mL、 5.0μg/mL、10μg/mL、20μg/mL、30μg/mL及び50μg/mL。上記のようにろ過した後ラットの尿サンプルを分析する。
ラットの血清サンプルを、予備的な精製なしか、そうでなければ、氷冷アセトニトリルでの液/液抽出後、一夜のspeed vac 中での溶媒の除去及び水/ギ酸(0.1%)またはHPLC等級の水で再構成した。速ふるい物(fast screen )について、上記のように分析する。例えば、 400μlの氷冷アセトニトリルを血清(約100μl)と混合し、 10,000rpmで10分間遠心する。 400μlの上清を新しい管に移し、真空乾燥させ、80μlのHPLC等級の水で再構成した。サンプルを 10,000rpmで10分間回転させ、LC-MS 分析のために2mlのHPLCバイアル中の 100μlのガラスインサートに70μlを移した。内部の標準、例えば、重水素化CRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1 ]をサンプル調製の間の損失を明らかにするために加えることができる。このようにして、標準曲線を作成する。
本発明をさらに下記の実施例により説明するが、これらに限定するものではない。
実施例1.Pan −ケモカインペプチド阻害剤の同定と特性化
ヒト及びマウスMCP-1 の両方をヒトケモカインレセプターに結合させ、かつ、ヒトケモカインレセプターにより、明確にシグナルを付与した。したがって、ヒトとネズミのMCP-1 の間の相同の領域は結合及び/またはシグナルに関与する領域を示すかもしれない。ヒト及びネズミのMCP-1 配列のアラインメントに基づき、MCP-1 における3つの領域を同定し、それらは調査したすべての種の間で保存されていた。
ヒトとマウスのMCP-1 配列(表1)の間で最も大きい配列相同性を有する3つのペプチド(12〜15マー)を製造し、95%より高い純度まで精製した。これらのペプチドをhMCP-1誘発THP-1 マイグレーションを阻害する能力についてスクリーニングした。非−ケモカイン、すなわち、 TGF−βについて同様な分析をした。キセノプス・レビス(Xenopus laeves) TGF−β1及び TGF−β−3並びにヒト TGF−β1及び TGF−β−3の配列を比較し、完全な相同性の3つの領域(各10マー)を同定した。
このアッセイのために、THP-1 細胞を10%のウシ胎児血清+20μmの2−メルカプトエタノールを補足したRPMI-1640 中に1ml当り4×105 細胞の密度で維持した。5μMのポリカーボネートフィルター(PVP なし、Chemo TX, Neuroprobe Inc. Cabin John)を取り付けた96−ウェルの使い捨て走化性チャンバー中に走化性を誘発させた。各ウェルの低い方のコンパートメントに29μlの化学誘引物質(組み換えヒトケモカイン、50ng/ml、すなわち、5.9mM )または対照(100ng/mlのTGFβ)を加えた。フレームをつけたフィルターのフィルターフレームの角に穴を整列させ、ウェルの上に置いた。25μlのRPMI-1640 中の5×104THP-1細胞を上方のコンパートメントに加えた。ペプチドをMilli Q 水に溶解し、次いで、媒体で連続的に希釈した。ほとんどの場合連続的に希釈したペプチドを走化性チャンバーの上方のコンパートメントに加える。チャンバーを5%のCO2 の湿気を与えた雰囲気中で、37℃で4時間インキュベートした。
インキュベーション後、細胞をフィルターの上からピペットで静かに取り出し、各々の上のウェルに20μlのPBS 中の20mMのEDTAを加え、混合物を4℃で20分間インキュベートした。次いで、フィルターを静から流れを用いて、培地で注意深く洗い流し、除去した。マイグレーションしたTHP-1 細胞の数を正確に定量するために標準曲線を作成した。曲線はTHP-1 細胞の2倍希釈シリーズに基づいた(上の標準29μl中に 100,000細胞)。マイグレーションした、そして別々のウェル中の細胞、標準中の細胞を3μlの MTTストック溶液で染色した。この溶液は各ウェルに直接加え(RPMI 1640 中に5mg/ml、フェノールレッドを含まない。Sigma Chemical Co.)、37℃で4時間インキュベートした。各ウェルから媒体を注意深く吸引し、転換した染料を20μlのDMSOで溶解化した。転換した染料の吸収をELISA プレートリーダーを用いて595nM の波長で測定した。各ウェル中でマイグレーションした細胞の数を標準曲線の内挿により決定した。
ペプチド1[MCP-1 ](第1表参照、配列番号2)、すなわち、ヒトMCP-1 のN−末端ペプチドは、マイグレーション阻害アッセイにおいて、弱い活性を示すだけであった(ED50>100μM、100μMで10%阻害、P=0.27)。ペプチド2[MCP-1 ](第1表、配列番号3)もケモカイン誘発マイグレーションの弱い阻害剤であった(ED50>100μM、100μMで19%阻害、P=0.09)。したがって、強いアゴニスト、すなわち、MCP-1 の存在下では、弱いアゴニストである、配列番号3を有するペプチド2[MCP-1 ]はそのレセプターからMCP-1 と置き換わる。しかしながら、強いアゴニスト、すなわち、MCP-1 の不存在下には、ペプチド2[MCP-1 ]は弱いアゴニスト特性を示し、すなわち、ペプチド2[MCP-1 ]は走化性を刺激した。意外にもペプチド2(1-15)[SDF1α]は、強力な pan−ケモカインアンタゴニスト特性を有していた。
対照的に、ペプチド3(1-12)[MCP-1 ](第1表、配列番号1)は、8±1μM(n=4)の50%阻害(ED50)を示す投与量でMCP-1 誘発THP-1 マイグレーションの高度に有効な阻害剤であった。典型的な投与量応答曲線を図2に示す。50μMより高い濃度では、配列番号3を有するペプチド3(1-12)[MCP-1 ]はすべてのMCP-1 誘発THP-マイグレーションを阻止する。
ペプチドがMCP-1 レセプターアンタゴニストであるかどうかを決定するために、このペプチドを下方のコンパートメント中のケモカインと引き合わせた(上記実験では上方のコンパートメント中の細胞に対してと対照して。トランス−ウェルTHP-1 マイグレーションアッセイ)。これらの条件下では、配列番号2を有するペプチド1[MCP-1 ]は、ペプチド1[MCP-1 ](配列番号2)を細胞とインキュベートした時の10%阻害に比較して、該細胞とインキュベートした時に 100μMで48%のMCP-1 誘発マイグレーションを阻害し、MCP-1 誘発ケモカインマイグレーションの今までそうであったものより有効な阻害剤であった。この結果は、ペプチド1[MCP-1 ](配列番号2)及びその誘導体がMCP-1 の二量体を崩壊し、不活性なモノマーを形成することによって作用することを示す、出版された記事と矛盾がない。
したがって、ペプチド1[MCP-1 ](配列番号2)はMCP-1 機能の古典的なレセプターレベルのアンタゴニストではない。全く対照的に、配列番号1を有するペプチド3(1-12)[MCP-1 ]は該細胞とよりもケモカインとインキュベートした時、非常に有効でなく(>99%の阻害に比べて、100μMで17%の阻害)、これは、配列番号1を有するペプチドが、ケモカインリガンドを結合することによるよりも、むしろ、該細胞と直接的に相互作用することによりMCP-1 誘発マイグレーションを阻害することを示唆している。この観察を確認するために、ペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号1)のN末端ビオチニル化誘導体の結合親和性を測定した。この誘導体はTHP-1 細胞の表面に約10μMのkaで結合した。
ペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号1)もMCP-1 の他の機能を阻害した。これは、レセプターの異なった組み合わせにより仲介されるのかもしれない。MCP-1 は、培養された平滑筋細胞のための 0.5%ウシ胎児血清との弱い共分裂促進因子であると報告されていた。 100μMのペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号1)が培養された平滑筋細胞についてのMCP-1 の共分裂促進作用を完全に阻止することが見い出され、これも、ペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号1)はMCP-1 レセプターアンタゴニストであるという仮説と矛盾しない。ペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号1)が異なった細胞型におけるMCP-1 に対する異なった応答を完全に阻害するという観察は、ペプチド3はMCP-1 に結合し、MCP-1 に応答してシグナルを出すことができる、すべてのケモカインレセプターの一般的なアンタゴニストであるかもしれないことを示唆している。
ペプチド3阻害のレセプター特異性を調査するために、MCP-1 レセプターよりも異ったレセプターによりシグナルを与えるケモカインにより誘発されたTHP-1マイグレーションのペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号1)阻害についてED50を決定した。代表的なケモカインは、β−ケモカイン(「CC」)、 MIP-1α及びRANTES並びに2つのα−ケモカイン(「CXC 」)、IL-8及び SDF-1αを包含する。したがって、ケモカインレセプターに対するペプチド3(1-12)[MCP-1](配列番号1)の特異性を決定するために、ケモカインファミリーに関連しないマイグレーション誘発剤として、そして、同定された、関連しないレセプターによりシグナルを与えることにより生物活性を引き出す試薬として TGF−βを選択した。
ペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号1)は、選択されたすべての4つのケモカインに対して、 MIP-1α≧MCP-1 >SDF1α≧IL-8の効能の順で、THP-1 マイグレーション誘発応答を阻害した(第2表参照)。対照的に、ペプチド1[MCP-1 ](配列番号2)またはペプチド2(1-15)[MCP-1 ](配列番号3)は、 100μMであったとしても、これらのケモカインのいかなるものに応答しても、20%より多くはマイグレーションを阻害しなかった(第2表)。ペプチド3は、約10μMの会合定数でTHP-1 細胞に結合する。
さらに、配列番号1を有するペプチド3(1-12)[MCP-1 ](並びにペプチド1[MCP-1 ](配列番号2)及びペプチド2(1-15)[MCP-1 ](配列番号3))は、 100μMですら、 TGF−βにより誘発されたTHP-1 マイグレーションを有意に阻害しなかった。まとめると、これらの結果は、ペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号1)は、ケモカインシグナル化の一般的な(すなわち、すべての試験したケモカインを阻害する)及び特異的な(すなわち、ケモカインのみを阻害する)阻害剤であることを示している。
ペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号1)はCXC ケモカインよりもCCケモカインに対して弱い選択性を示すにもかかわらず、 100μMでは、ペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号1)は試験されたケモカインファミリーのいずれかの任意のケモカインにより誘発されたマイグレーションの>99%を阻害する(第2表)。したがって、MCP-1 は多関連レセプターによりシグナルを与えるけれども、ペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号1)は、MCP-1 によって引き起こされた走化性及び分裂促進性シグナル化経路にあずかるすべてのレセプターを阻止する。
ペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号1)が一次ヒト単球によりTHP-1 細胞について有効であるという可能性を排除するために、3人のドナーからの新しく調製された末梢血液単球のケモカイン誘発マイグレーションについてのペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号1)の効果を試験した。THP-1 細胞に対する結果と同様に、 100μMのペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号1)は、(ペプチド1[MCP-1 ](配列番号2)またはペプチド2(1-15)[MCP-1 ](配列番号3)はそうでないが)、4つのケモカインの各々により誘発されるマイグレーションのすべてまたはほとんどすべて(>95%)を阻害したが、 TGF−β誘発マイグレーションには影響を及ぼさなかった。
したがって、ペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号1)は、広範囲の標的細胞(平滑筋細胞、THP-1,Jurkat T−細胞系統及び一次ヒド単球)に作用する、広範囲の炎症性ケモカイン前駆体(pro-inflammatory chemokaine)の阻害剤である。THP-1 細胞とは対照的に、一次ヒト単球のMCP-1 誘発マイグレーションのペプチド2(1-15)[MCP-1 ](配列番号3)の阻害(20%)は統計学的に有意であることに留意すること(第2表)。
実施例2.ペプチド3(1-12)[MCP-1 ]及びペプチド2[MCP-1 ]の断片及び変異体の結晶化
ペプチド3の断片が生物的活性及び選択性を有するか否かを決定するため、「半ペプチド」(half-peptide)を分析した(第3表):ペプチド3(1-3)[MCP-1 ]に対応するEICAPP(配列番号:8)、及びペプチド3(7-12)[MCP-1 ]に対応するKQKWUQ(配列番号:9)。ペプチド3(7-12)[MCP-1 ](配列番号:9)はCCケモカインシグナル伝達の阻害剤としてペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号:1)と同様に活性であったが、CXC ケモカインの阻害剤としてより顕著に活性であった(第4表)。これに対してペプチド3(1-6)[MCP-1 ](配列番号:8)は、阻害剤として、ペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号:1)に比べて非常に低活性であった。
ペプチド3(7-12)[MCP-1 ](配列番号:9)は本質的に選択性を示さず、7〜9μMの範囲内で、ED50で、試験したすべてのケモカインによる移動の阻害を示した。すなわち、これは全ケモカイン阻害剤であった。ペプチド3(1-6)[MCP-1 ](配列番号:8)は、ペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号:1)に比べてCCケモカインをあまり阻害せず(ED50=約30μM)、しかしCXC ケモカインをやや阻害した。選択性比率は、MCP-1 及びMCP-1 αの平均ED50をIL-8及びSDF1αの平均ED50で除したものとして定義される。
1より大きい選択性比率はCXC ケモカインに比べてCCケモカインのより大きい阻害を示し;1より小さい選択性比率にCCケモカインに比べてCXC ケモカインのより大きい阻害を示し;そして選択性比率1はケモカインのファミリーが同程度に阻害されることを示す。これは全体としてケモカインシグナル伝達の非常に弱い阻害剤であるが、ペプチド3(1-6)[MCP-1 ](配列番号:8)はCXC ケモカインについて2倍の選択性を示した。従って、ペプチド3(1-6)[MCP-1 ](配列番号:8)は、 0.7の選択性をもってCXC ケモカインの好ましい阻害剤であり、ペプチド3(7-12)[MCP-1](配列番号:9)は、選択性 1.1をもって、ケモカインの両クラスの好ましい阻害剤である。
ペプチド3(3-12)[MCP-1 ](配列番号:7)はペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号:1)に非常に類似した性質を有していた。この結果が示唆するところによれば、MCP-1 以外のケモカイン配列中で保存されていないペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号:1)配列の位置1及び2のグルタミン酸(E)及びイソロイシン(I)残基は受容体結合のために重要ではない。ペプチド3領域におけるすべてのヒトケモカイン配列の整列は、α及びβサブファミリーのほとんどすべてのケモカイン中に存在する共通の保存されたモチーフを示す。このモチーフはCX1DPX2X3X4WX5Q である。
さらに、種々の位置x1 〜x5 にアミノ酸のパターンが存在し、これはこれらの位置のアミノ酸の性質が受容体結合の選択性の決定に役割をはたすことを示唆する。例えば、CCケモカインファミリーにおいて。位置x1 は通常アラニン(A)によりしめられており、この位置は、SDF1(SDF-1 中ではイソロイシン(I))における場合を除き、CXC ケモカイン中では共通にロイシン(L)である。この仮定を試験するため、Leu4ペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号:10)の選択性をペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号:1)と比較した。
Leu4ペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号:10)は、Ala 含有ペプチド3(1-13)[MCP-1 ](配列番号:1)と比べて、CXC ケモカインの阻害剤として約4倍の効力の増加を示したが、CCケモカイン阻害の効力の低下は存在しなかった(第4表)。すなわち、、Leu4ペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号:10)はいくつかのCXC 選択性を示し(選択性比率0.37)、そしてトリペプチド以外の試験したすべての誘導体の最大のCXC 選択性であった(下に示す)。
上記位置x1 について示されるように、3種の異るアミノ酸のみが位置x5 に存在する(第1表)。CXC ケモカインIL-8及びMIP がそうであるように、ほとんどのケモカインが位置x5 にバリン(V)を有する。これに対して、SDF-1 及びIP10はこの位置にイソロイシン(I)を有し、他方ENA78 はこの位置にロイシン(L)を有する唯一のケモカインである。これらの結果が示すところによれば、Ile11 ペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号:13)は、Leu3ペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号:10)(選択性比率0.9)ほど顕著ではないが幾らかのCXC 選択性を示し、しかしながら予想外に、SDF-1 ではなくIL-8(この位置にバリンを有する)に最大の選択性を示した。この類似体は、トリペプチド以外で、IL-8シグナル伝達の最中選択的な阻害剤であった。すなわち、この類似体は他のケモカインに比べて約3倍のIL-8選択性を有していた。
Leu4及びIle11 置換の両方を有する類似体は、CXC ケモカインの阻害剤として、単一変異体Leu4ペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号:10)又はLeu11 ペプチド(1-12)[MCP-1 ](配列番号:13)に比べてなんらより高い選択性を示さなかった(第6表)。しかしながら、Leu4 Ile11ぺプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号:4)は、CCケモカインの阻害剤としては、ペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号:1)、又は単一変異体Leu4ペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号:10)もしくはIle11 ペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号:13)に比べて約5倍高い活性を示した。
従って、Leu4ペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号:14)は、ペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号:1)についての10μMに比べて、平均 2.3μMのED50をもってより高活性の一般的ケモカイン阻害剤であった。さらに、Leu4 Ile11ペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号:14)は、予想外にも、2.0 の選択性比率2.0 をもって、ペプチド3(1-12)[MCP-1 ]の中程度のCC選択性を維持した。
従って、驚くべきことには、ペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号:1)がヒトMCP-1 からの同系の(cognate )配列を含有するという事実にもかかわらず、Leu4 Ile11ぺプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号:1)は、MCP-1 シグナル伝達の阻害剤として、ペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号:1)に比べて約5倍高い活性を示した。さらに、Leu4 Ile11ぺプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号:1)は、Leu4 Ile11ぺプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号:14)と同様に、ペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号:1)のより高い親和性ペプチド類似体であった。
位置x2 〜x4 について、今日までに記載されているすべてのケモカインは、このトリペプチド領域に少なくとも1個の荷電したアミノ酸を有する(第1表)。多くのケモカインがx2 及びx4 をしめる2個の塩基性残基を有し(例えばMCP-1 中のKQK、 MCP-2 中のKER、及びSDF-1 中のKLK)他のものは2個の酸性残基を有する(例えば、MIP1α中のSEE、MIP1β中のSES、及びRANTES中のSES )。最近の版透(Mature Med. 3, 367 (1997))が示唆するところによれば、ケモカイン受容体の細胞外ループ中の電荷は、リガンド特異性の重要な決定因子であり、例えばSDF-1 に結合するCXCR4 は負に荷電しており、他方MIP1α、MIP1β及びRANTESに結合するCCR5は正に荷電している。従って、残基x2 〜x4 は受容体特異性に重要な役割を演ずるであろう。
この仮定を試験するため、幾つかの変異体を調製した:Ser7ペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号:11)は、MCP-1、MCP-2、エオタキシン(Eotaxin)、IL-8及びSDF-1中に存在する正に荷電したK残基を、 MIP-1α、MIP1β及びRANTES中に存在するヒドロキシル化S残基により置換する。しかしながら、この変化は選択性を顕著には変えなかった。特に、この変化は、MCP-1 シグナル伝達の阻害の効力を低下させず、MIP1αシグナル伝達の阻害の効力を増加させなかった(表4)。
唯一の穏和な変化は、ペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号:1)の中程度のCC選択性からSer7ペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号:11)変異体の中程度のCXC 選択性(選択性比率0.5)への穏和な移行であった。MCP-1 配列の同系(cognate)からMIP1α配列の同系にペプチドを変更する他の変異体Ser7Glu8Glu9 ペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号:12)は、より選択的なMIP1α阻害剤をもたらした。但し、他のすべてのケモカインに比率したMIP についての選択性はわずかに約3倍であった。
ペプチド3(1-12)[MCP-1 ]変異体はいずれも、 100μMにおいてさえ、THP-1 細胞の TGF−β誘導移動の阻害剤としてなんだ検出可能な活性を示さなかった(第4表)。従って、これらすべての変異体は、ケモカイン誘導シグナル伝達の高度に選択性の阻害剤であった。ペプチド3(1-12)[MCP-1 ]中のアミノ酸残基を、誘導される一般的ケモカイン阻害の効力を顕著に低下せしめる上記のケモカイン配列中に見出される他のアミノ酸への置換は存在しなかった。しかしながら、ある種の変更は選択性のシフトをもたらした。
例えば、ペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号:1)のCC選択性を、位置4(x1)におけるAからLへの変更、又は位置11(x5)におけるVからIへの変更により、CXC 選択性は変えることができる。特に、2つの変異体は、他のすべてのものについての平均ED50に対して1つのケモカインについての3倍以上の選択性を有していた。すなわち、Ile11 ペプチド3(1-13)[MCP-1 ](配列番号:13)はIL-8阻害について弱い全体的選択性を有し、そしてSer7Glu8Glu9ペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号:12)はMIP1αについて弱い全体的選択性を有していた。
要約すると、ペプチド3(1-12)[MCP-1 ]変異体はそれらのED50及びケモカインのαファミリー又はβファミリーについてのED50において小さい程度に変化するが、これらはすべてペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号:1)に類似していた。第6表の結果が示すところによれば、ペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号:1)及びペプチド3(1-12)[MCP-1 ]変異体は、MCP-1 、MIP1α、IL-8及びSEF1αケモカインにより誘導される移動を類似の程度に変化させた。幾つかのペプチド又はペプチド変異体はCCケモカインについてわずかな優位性を示したが、他はCXC ケモカインについてわずかな優位性を示し、2倍を超えるCC−特異性を示すものはなかった。ペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号:1)、ペプチド3(1-6)[MCP-1 ](配列番号:8)及びペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号:9)も有意なCC又はCXC 選択性を示さなかった。
実施例3.インビボ用途のための本発明の療法剤の同定、調製及び特性決定
A.誘導体
ペプチドは一般に化学的及び酵素的加水分解に感受性である。特に、ペプチドは胃内の酸性又はタンパク質分解的環境において安定でないので、通常、径口経路により取り入れられない。すなわち、化学的又は酵素的加水分解はインビボでのペプチドの非常に短い半減期をもたらす。インビボで加水分解に対して感受性の剤の半減期を延長するために、活性剤は、径口的に取り入れられ、改良された薬理動態を有し、そしてその投与がケモカインの活性を阻害する血中濃度を達成するように、修飾される。
例えば、サイクリック−リバーズ(cyclic-reverse)- D (CRD)ペプチドを調製することができる。CRD ペプチドは、逆の立体異性体(Lアミノ酸の代りにD−アミノ酸)を用いてのペプチドの逆転配列(C−末端からN−末端)を合成することにより調製される。次に、得られたペプチドはN−及びC−末端システイン残基を介して酸化される。これらの誘導体は、非−CRDペプチドに非常に類似する原子の立体配置を維持するが、酵素的加水分解を受けない。インビボで延長された半減期を示す他の誘導体にはチエニル又はピリジル誘導体が含まれる(例えば、米国特許No.4,992,463;米国特許No.5,091,396)。
例えば、ペプチド3誘導体を調製するために、Jameson ら、Nature, 368, 744 (1994)に従ってペプチド3(1-12)[MP-1]が修飾され、CRD-Cys13Leu4Ile11ペプチド3(3-12)[MCP-1 ](図3)が得られた。上に記載したインビトロ測定においてペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号:1)に非常に類似する性質を有するCRD-Cys13Leu4Ile11ペプチド3(1-12)[MCP-1 ]は、酸加水分解(pH2.0 にて2時間37℃で分解10%未満)及び酵素的分解(37℃、5ユニットのトリプシンにより2時間)の両方に対して安定であることが見出された。CRD-Cys13Leu4Ile11ペプチド3(1-12)[MCP-1 ]もまた、インビボ加水分解に対して酸性であり、そして療法的に有用な血漿濃度が達成されることが認められた(250μl塩水中1mgのCRD-Cys13Leu4Ile11ペプチド3(3-12)[MCP-1 ]の単一般腔内投与の24時間後>10μM)。
Leu4Ile11ペプチド3の、サイクリック−レバーズD(CRD)、鎖状レバーズ−D(LRD)、サイクリックフォワード(cyclic forward)L(CFL)、及び鎖状フォワードL(LFL)(すなわちペプチドの標準型)誘導体を調製し、そしてTHP-1 トランスウェル測定におけるそれらのMCP-1 阻害活性を決定した。結果は、
LFL-Leu4Ile11ペプチド3 1−5μM
LRD-Leu4Ile11ペプチド3 200−400nM
CFL-Cys13Leu4Ile11ペプチド3 500−700nM
CRD-Cys13Leu4Ile11ペプチド3 5−100nMであった。
これらの結果は、幾分驚くべきことには、環化及び逆−D誘導体化の両者は独立に活性を改良することを示している。この改良は、CRD 誘導体においては相加的である。すなわち、環化は、おそらくペプチドのコンホーメーションを拘束することにより活性を改良した。しかしながら、逆転−D誘導体は、おそらく分子の安定性を増加することにより有利であるとは予想されなかった。
CRD-Cys13Leu4Ile11ペプチド3(3-12)[MCP-1 ]は、MCP-1 により誘導されるTHP-1 移動の非常に活性な阻害剤であることが見出された(ED50が約1〜10μM)。親Leu4Ile11ペプチド3(1-12)[MCP-1 ](配列番号:14)に比べての上記の増加した活性は、インビトロにおいても、増加した安定性を反映しているであろう。あるいはそれはペプチドの増加したコンホメーション安定性を反映しているであろう。さらに、この化合物は、生来の全長MCP-1 と同一の親和性をもってシグナル伝達受容体に結合するが、シグナルを発生しない。
CRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)[MCP-1 ]が培養におけるコンカナバリンA又は破傷風毒素に対するT又はB細胞の増加を阻害するか又は増強するかを決定するため、CD4T細胞及びB細胞の増加をCFSE-FITC 細胞ラベリングにより測定した。50mgのCRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)[MCP-1 ]はCD4T細胞のConA増加を50%阻害し、そして5mgのCRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)[MCP-1 ]はCD4T細胞のConA増加を<3%低下せしめた。CRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)[MCP-1 ]は破傷風毒素に対するB細胞増加に効果を有しなかった。
特定のアミノ酸置換がペプチド誘導体CRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)[MCP-1 ]のコンホーメーションに影響するか否かを決定するため、コンピューターモデルを用いた。ペプチド配列をHyperChem 5.0 (HyperCube)に入力した。Amber Force Field パラメーター及びPolak-Ribiere アルゴリズムを用いて最小エネルギーコンホーメーションを探した。最初のモデルは、分子ダイナミックシミュレーション(300°K、2n秒)及び手動側鎖ローテーションの両方により操作され、次に数学的最適化を行い、これを見かけグローバル最小エネルギーコンホーメーションに達するまで行った。収劍標準(convergence criterion )は<0.01Kcal/molÅであった。この方法を用いて、約213.4Kcal/mol のエネルギーをもって、コンホーメーションが得られた。
動揺(perturbation)に対するモデルペプチドの感受性を試験するためジスルフィド結合を形成する末端システイン以外の各残基を各々にDからLに変化せしめ、そして全Dペプチドの最小コンホーメーションから始めて幾何再最適化した。これらの動揺について、各変異体はまず幾何最適化ルーチンを通り、次に分子ダイナミックシミュレーションし、次に別の幾何最適化を行った。
得られた変異体ペプチドを、ジスルフィド結合と隣接する1個の原子とをオーバーレイすることにより、全D型と比較し、そしてペプチド主鎖間の相異を視覚的に評価した。全体的コンホーメーションは位置2,3,4,8,9及び10のキラリティーの変化に対して非感受性であったが、位置5,6及び7のキラリティーの変化に対して感受性であった。一般に、側鎖位置の変化は、主鎖のコンホーメーションが有意に変化する場合を除き、小さかった。変異体のエネルギーは-187.9〜-226.1Kcal/mol で変化したが、このエネルギー変化(初期コンホーメーションについて-213.4)は、コンホーメーション変化と関連しなかった。
さらに、9位のアスパラギン酸を修飾する効果が、その側鎖カルボキシル基をD−アラニルアミドに変えることにより試験した。修飾されたペプチドの最小エネルギーコンホーメーションは、同じ最小エネルギーコンホーメーションから出発して、キラル変異の場合と同じルーチンを用いて求めた。残基9側鎖カルボキシルへのD−アラニンの縮合がペプチドのコンホーメーションの大きな変化を生じさせた。
これは、CRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)[MCP-1 ]に比べてのD-ala ペプチドの生物活性の有意なロスを示したインビトロ単球移動データーと一致する。すなわち、CRD-Cys13Leu4Ile11ペプチド3(3-12)を合成し(図13の左パネル)、そしてMCP-1 により誘導されるTHP-1 移動の阻害剤として、そのD-ala 誘導体に比べて1000倍活性であることが見出された(図13の右パネル)。D−アラニンは、アスパラギン酸とリジン残基との間の塩架橋の形成を妨害し、そしてこの誘導体を 100μMの濃度においてさえ不活性にする。
分子モデルが示すところによれば、D-Leu がL-Leu により置換されたCRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)[MCP-1 ]であるL-Leu-CRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)[MCP-1 ]はペプチド主鎖のコンホーメーションにほとんど変化をもたらさないはずである。L-Leu 誘導体を用いてのインビトロ移動研究は、それが同様に機能的活性を維持したことを示した。すなわち、本発明の生物的に活性な分子のコンホーメーションを維持する特定のアミノ酸置換を選択するために、分子モデルを使用することができるであろう。
下記のD−アミノ酸からL−アミノ酸への変化は、モデル化により評価されるペプチド主鎖の構造に有意なインパクトを有しなかった。
下記のD−アミノ酸からL−アミノ酸への変化は、この技法で評価したペプチド主鎖の構造に有意なインパクトを有していた。
B.DARC結合
生物学的利用能についてのさらなる考察は、治療薬の非特異的結合である。赤血球は、ケモカイン用ダフィ式抗原受容体(DARC)と呼ばれるシグナリング欠乏ケモカイン受容体または結合蛋白質を有する。この受容体はシグナル伝達をしないけれども、この受容体はケモカインに対する高い親和性(10nM)を有し、循環系からケモカインを取り除く役割を演ずることができる。残念ながら、DARCに対する高い親和性を有するケモカイン受容体アンタゴニストはいずれも赤血球上の結合部位の膨大なプールによって封鎖されるがゆえに、他の組織における増殖性ケモカインシグナリングの阻害には利用できない。
同様に、高い親和性によってDARCを結合するアゴニストは、特定のケモカイン受容体による増殖性シグナリングには利用できない。生体内での使用においては、糸球体濾過による1回目のパスにおいてDARCに結合しないペプチドが速やかに取り除かれるので、本発明の薬剤は、DARCに対する若干の親和性を有しているのが好ましい。従って、好ましい薬剤は、 100nM〜1mMの範囲、より好ましくは1μM 〜 100μM の範囲、さらにより好ましくは10〜 100μM の範囲のDARC結合(親和性定数)を有する。
ケモカインとDARCとの相互作用は親和性が高い(結合定数は5〜10nM)けれども、動力学的には、この相互作用は、結合速度および解離速度が極めて速いことを特徴とする。結果として、標識ケモカインと共に定温放置するとDARCの結合部位の飽和につながるけれども、結合されなかった標識を除去すると、数分以内に、結合された標識の殆どが失われる(90%超が3分以内に失われる)。結果として、この速い解離速度のために、結合された標識の量の測定が不可能または不正確なものとなるので、ビオチン化ペプチドの直接結合を分析することによってペプチドのDARCに対する結合を直接測定するのは難しい。
この困難を克服するために、種々の濃度のペプチドの存在下で、DARCを発現している赤血球を 125I標識MCP-1 と共に定温放置することによって、DARCと、ペプチド3(1−12)[MCP-1](配列番号:1)およびペプチド2(1−15)[MCP-1](配列番号:3)との会合のKaを見積もった。9mLの新たに採取した血液を、1mLの 3.8%クエン酸ナトリウムが入っている試験管に移し、室温において15分間放置した。
5mLの凝固防止血液を 3.5mLの Polymorphprep (NycomED Pharma, Oslo) の上に重層し、約4900m/s2( 500G)において35分間遠心分離した。赤血球を除去し、結合媒体(PBS および1mg/mLの脂肪酸の無いBSA 、pHは 7.4である)を用いて元の容量に戻し、約8800m/s2( 900G)において10分間遠心分離した。これを4回繰り返し、赤血球を数え、「v」底のマイクロタイター用プレートにおいてウェルあたり1×108 個の赤血球となるように調整した。赤血球を約6600m/s2( 670G)において5分間沈殿させ、非標識MCP-1 または試験薬剤の存在下で 0.5nMの 125I標識MCP-1 (比放射能は2000Ci/ミリモルである、Amersham)を含有している結合媒体中に再懸濁した。
結合が平衡に達した(37℃において30分)後、蔗糖密度勾配遠心法による5分間の遠心分離によって、結合されなかった標識から赤血球を分離した。次に、γ線計数シンチグラフィーによって、赤血球と会合した数を測定した。すべてのペプチドが無い状態での、ヒト赤血球上の 125I標識MCP-1 についての会合定数は5.45nMであった(この値は先述の報告書によるものである)。そのうえ、スキャッチャード分析により、赤血球あたりに 500〜1000の複写を有する単一の高親和性結合部位の存在が確認された(DARCの既知の性質と一致する)。従って、種々の濃度のペプチド(複数種であってもよい)の存在下でのこの分析による赤血球に結合している 125I標識MCP-1 の測定により、ペプチドのDARCに対する会合定数を正確に見積もることが可能となる。
また、DARC特異性比も測定した。このDARC特異性比は、DARCとの会合について見積もられたKaを生物学的活性についてのED50で割ったものであると定義する。1よりも大きいDARC特異性比は、ペプチドがDARCと不十分にしか会合せず、アンタゴニストまたはアゴニストのいずれかとして、ケモカインシグナリングの変更において、生物学的に利用可能であることを示す。約1のDARC特異性比は、ペプチドがDARCおよびTHP-1 シグナリング受容体に同等の親和性で結合することを示す。従って、このようなペプチドをさらに改質すること無しには、このようなペプチドを(ケモカイン阻害剤として)生物学的に活性な濃度とするのが困難である。1よりも小さいDARC特異性比は、DARCに対する親和性が、ケモカインシグナリング受容体に対する親和性よりもはるかに大きいことを示す。
ペプチド1[MCP-1](配列番号:2)(ケモカイン受容体には結合しないけれども、主にネガティブな様式で機能する)は、DARCへの結合をまったく示さなかった(見積もられたKaは 100μM 超であった)。著しく対照的に、弱いアゴニストであるペプチド2(1−15)[MCP-1](配列番号:3)は、DARCへの高親和性結合を示した。THP-1細胞上のケモカイン受容体に対するペプチド2(1−15)[MCP-1](配列番号:3)の会合定数を、2μM において、競合結合分析を使用して見積もった。
しかしながら、このペプチドは、赤血球を使用する競合結合分析によって評価しても、DARCに対する親和性が 500nM未満であった。従って、ペプチド2(1−15)[MCP-1](配列番号:3)は、THP-1細胞のケモカイン受容体に結合するけれども、これらの受容体によるシグナリングを阻害せず、そしてさらにより強くDARCに結合する(DARC選択性比は 0.1〜 0.2である)。従って、ペプチド2は、マラリアの治療または予防(DARC阻害を必要とするけれども、ケモカインシグナリングの変更を必要としない作用)のための好ましい治療薬である。
DARC受容体に対する非常に高い親和性を有するペプチド2(1−15)[MCP-1](配列番号:3)などのペプチドは(インビトロでは単に弱いアゴニストまたは中性のアゴニストであるけれども)、生体内において、強い生物学的アゴニスト活性を有する。そのうえ、ペプチド2、その変形および誘導体は、生体内において前炎症性が強いか、または、DARCがケモカインに結合する機能を発揮することを妨げることによって、現存する炎症を強く悪化させる。
循環系からケモカインを除去するためのシンクとしてDARCが機能する場合、ペプチド2の存在により、ケモカインの濃度が著しく高まる。ケモカインが循環系中に放出されている条件下(例えば、炎症時)では、ペプチド2は炎症を悪化させ、そのペプチドが無い状態よりも長く炎症を持続させ、さもなくば、炎症反応の質的性状を変化させ得る。これらの理由のために、低いDARC特異性比を有するペプチドは、改良された免疫機能を必要とする状態、病理学的に不適当な炎症反応を特徴とする状態の治療に有用である。
MIP1−αは、大きな親和性をもってDARCに結合しない唯一のケモカインであることが示されている。ペプチド2(1−9)[MCP-1]が約50μM のダフィ式親和性を有していたのに対して、ペプチド2(1−15)[MIP1−α](配列番号:5)は、MIP1−α受容体のための有効な受容体結合剤であり、DARCに関する優秀な特異性を有していた。すなわち、ペプチド2(1−15)[MIP1−α](配列番号:5)はDARCに結合しなかった(会合定数が50μM より大きい)けれども、THP-1細胞上のケモカイン受容体には強く結合した(会合定数は 100〜 900nMであり、結合部位の数は細胞あたり約 150,000である)。そのうえ、この薬剤は、MCP-1、MIP1−α、IL-8、またはSDF1−αによって誘起されるTHP-1細胞遊走を阻害しない。従って、この後者の薬剤は、生体内における中性のケモカイン受容体結合剤として特に有用であり、DARCに関する選択性が高い。
ペプチド3(1−12)[MCP-1](配列番号:1)は、ケモカイン受容体に結合するのと同等の親和性(低いμM の濃度範囲)でDARCに結合するけれども、DARCにも結合する。Leu4 Ile11ペプチド3(1−12)[MCP-1](配列番号:14)は、およそ1μM の濃度においてMCP-1 誘起遊走を阻害するけれども、DARC結合力が本質的にまったく無い(かつ、THP-1細胞上の受容体に対して少なくとも20倍の選択性を有する)。従って、Leu4 Ile11ペプチド3(1−12)[MCP-1](配列番号:14)などのペプチド3誘導体は、生体内においてアンタゴニスト特性を達成することができる。
ペプチド3[MCP-1]のより短い断片(例えば、ペプチド3(7−12)[MCP-1](配列番号:9))は、ペプチド3(1−12)[MCP-1](配列番号:1)についての 1.0に対して、段々により高いDARC特異性比を示した(ペプチド3(7−12)[MCP-1](配列番号:9)については約 3.0であった)。このことは、ケモカインシグナリング受容体特性が望まれる場合には、一般に、ケモカインのアンタゴニスト活性またはアゴニスト活性を十分に保持している、より短いペプチド断片が、全長ペプチドよりも好ましいことを示している。
ペプチド3(1−12)[MCP-1](配列番号:1)(DARC特異性比は1.00である)は、生体内におけるパン−ケモカイン阻害剤として有用でありそうもないけれども、Leu4 Ile11ペプチド3[MCP-1](配列番号:14)(DARC特異性比は 37.83である)、または、DARCには弱く結合する(会合定数は90μM である)けれども、THP-1細胞上のケモカイン受容体には非常に強く結合する(会合定数は 100〜 500nMであり、結合部位の数は細胞あたり約 150,000である)その誘導体(例えばCRD−Cys13Leu4 Ile11ペプチド3(3−12)[MCP-1])は、アテローム性動脈硬化症、骨粗鬆症、および自己免疫性疾患、およびHIV感染のための好ましい態様である(ケモカインシグナリング受容体結合機能)。そのうえ、CRD−Cys13Leu4 Ile11ペプチド3(3−12)[MCP-1])は、非常に類似のED50を有しつつ、MCP-1、MIP1−α、IL-8、およびSDF1によって誘起されるTHP-1細胞遊走を阻害した。
CRD−ペプチド2(1−15)[MCP-1]は、LFL誘導体と比較して、より多くの機能的潜在力、より低いダフィ式結合活性を有する。LRDペプチド2(1−15)[MCP-1]は、ダフィ式結合がおよそ 100倍少なかった(LFLについての 100μMに対して25μM であった)。
生物学的に利用可能な薬剤を調製するための代替法は、ケモカインの非ペプチド類似体の調製である(以下の例17〜22を参照されたい)。本発明の典型的な非ペプチド類似体には、WIQの同配体(例えば、ZがCH3 であり、YがOであり、XがCH3 であり、そしてArがインドリルである、式(IV)の化合物)が含まれる。この化合物は、DARCには結合しなかった(会合定数は30μM 以上であった)けれども、THP-1細胞上のケモカイン受容体には非常に強く結合した(会合定数は 100nM〜1μM であり、結合部位の数は細胞あたり約 150,000であった)。この薬剤は、非常に類似のED50を有しつつ、MCP-1、MIP1−α、IL-8、およびSDF1−αによって誘起されるTHP-1細胞遊走を阻害した。
他の好ましい類似体にはWxQの類似体が含まれる。例えば、xがGly(H)、Ala(Me)、EtGly(エチル)、Val(イソプロピル)、Ile(イソブチル)およびalloIle(アロイソブチル)である系列を使用したところ、もっとも活性の高い化合物はもっとも小さいアルキル側鎖を有するもの(GlyおよびAla)であり、Ileがもっとも活性が低い傾向がある(すなわち、WGQ>WAQ≫WEtG=WVQ=WAlloIQ>WIQ)ことが見出された。
脚注
a 「CC特異性」とは、SDF1およびIL-8に対する平均阻害性ED50をMCP-1およびMIP1−αに対する平均阻害性ED50で割ったものである。
b 「ダフィ式選択性」とは、赤血球への結合について見積もられたKaを各々のケモカインに対する平均阻害性ED50で割ったものである(ペプチド2については除く。以下の脚注dを参照されたい)。
c 「平均ED50」とは、各々のケモカインによって誘起されるTHP-1遊走の阻害についての平均阻害性ED50である(ペプチド2については除く。以下の脚注eを参照されたい)。
d ペプチド2系については、「平均ED50」は、THP-1細胞への結合について見積もられたKaである。
e ペプチド2系については、「ダフィ式選択性」は、赤血球への結合についてのKaをTHP-1細胞についてのKaで割ったものとして計算される。
f この印が付いているトリペプチド誘導体については、当該ペプチドが、4種の典型的なケモカインの1種に対して非常に特異的である。これらの場合、示されているED50は、上記ケモカインの阻害についてのものである。
n.d.=測定されていない。略語
CRD=環状の逆D誘導体
LRD=線状の逆D誘導体
CFL=標準的なL型ペプチドの環状誘導体
LFL=標準的な線状L型ペプチド[注意:特に述べない限り、すべてのペプチドはLFLである]
イタリック体のアミノ酸はD型アミノ酸であり、他のすべてはL型である。
--=この印が付いている2つのシステインの環化結合
例4.本発明のトリペプチド治療薬の調製およびキャラクタリゼーション
ペプチド3(1−12)[MCP-1]の断片が生物学的活性を有しているかどうかを特定するために、ペプチド3の断片を調製した。ペプチド3(1−12)[MCP-1](すなわち、WVQ)は、試験したすべてのケモカインの有効な阻害剤であることが見出された(第6表)。SDF1は配列WIQを有するけれども、多くの他のケモカイン(例えば、MCP-3、MIP1−α、MIP1−β、RANTES、EOTAXIN、およびIL-8)においては、10−12位(WVQ)のアミノ酸残基が保存される。
WVQは、ペプチド3(1−12)[MCP-1](配列番号:1)とは異なり、MCP-1以外のすべてのケモカインのより有効な阻害剤であり、およそ1μM のED50を有していたけれども、試験した典型的なケモカインの4種すべてを阻害した。従って、これらのペプチド(WVQおよびWIQ)並びにこれらのトリペプチドをベースとする非ペプチド類似体は、全特異性ケモカイン阻害剤である。そのうえ、WVQは良好なDARC選択性を有する(すなわち、10の選択性)ことが見出された。
ペプチド3(7−9)[MCP-1](すなわち、KQK)は、DARCに結合しなかった(会合定数は50μM 以上であった)けれども、THP-1細胞上のケモカイン受容体には非常に強く結合した(会合定数は 500nM〜1μM であり、結合部位の数は細胞あたり約 150,000であった)。この薬剤は、MCP-1によって誘起されるTHP-1細胞遊走を阻害した得れども、MIP1−α、IL-8、またはSDF1−αによって誘起されるTHP-1細胞遊走は阻害しなかった。
従って、2〜5μM のED50を有するKQKは、MCP-1の特異的な阻害剤であることが見出された(すなわち、たとえ 100μM においてさえも、MIP1−α、SDF1−α、またはIL-8によって誘起される活性にはまったく影響を及ぼさなかった)。4種のトリペプチドおよびランダムな配列のジペプチド(RGD、GGR、TTT、APG、およびVE)もまた試験した。これらはいずれも、上記ケモカインのいずれによって誘起された遊走を大きく阻害しなかった。従って、このトリペプチドKQKは、MCP-1活性の阻害に対して特異的であり、試験したすべてのケモカインよりも、MCP-1に対して 100倍を超える特異性を示した。
次に、ケモカイン配列において保存されるシステイン酸基の配列に基づく、MIP1−α、SDF1−α、およびIL-8からのKQKのトリペプチド当量を、ケモカインによって誘起されるTHP-1遊走のそれらによる阻害について試験した。各々の場合において、トリペプチドは、その同源のケモカインに対して非常に特異的であった(各々の場合における特異性が 100倍を超える)。例えば、SEE(MIP−αからの同源ペプチド)は、他のケモカインよりも、MIP−αに対して 100倍を超える特異性を示した。そのうえ、KLKはSDF1の特異的かつ有効な阻害剤であり、KENはIL-8の特異的かつ有効な阻害剤であった。保存的置換基が作られるトリペプチドは近縁のトリペプチドと同じ特異性を有し得ることが想定される。そのうえ、他のケモカインにおける対応するトリペプチドは、それらの同源ケモカインに対して特異的であり得る。
示されている各々のペプチド(WVQを除く)について、各数値は、 100μM の濃度のそのトリペプチドによる、その化学的誘引剤によって誘起される遊走の阻害率を示す(2回の実験の平均±範囲)。ダッシュは、統計的に有意な遊走の低減が無いことを示す(化学的誘引剤およびトリペプチドのすべての組み合わせを試験した)。トリペプチドWVQは、試験したすべての化学的誘引剤に応ずる遊走を阻害した。このトリペプチドについて示した数値は、阻害についてのED50である(少なくとも2回の測定の平均)。示したトリペプチドはいずれも、 100μMにおけるTGF−β1によって誘起された遊走を阻害しなかったことに注目されたい。太字の値は、各々のペプチドが誘導された元となる化学的誘引剤によって誘起された遊走の、各々のペプチドによる阻害を示す(すなわち、例えばKQKはMCP-1から誘導された)。
a DARCに結合するKQKの親和性定数は15μM である。
b MCP-1によって誘起される遊走を阻害するKQKについてのED50は7μM である。
c DARCに結合するWVQの親和性定数は2μM である。
例5.生体内における薬動力学および毒性
3H−D−Alaペプチド3(1−12)[MCP-1]( 3H−D−AlaをAspに結合させた)を静脈内(IV)ボーラスまたは皮下(SQ)ボーラスとしてマウスに与えた場合、血清濃度は1時間以内にピークに達した。この放射性識別ペプチドは、主に腎臓を介して、速やかに排出された(およそ4時間)。生体分布データは、主たる標的器官は腎臓であり、血液、肝臓および腸においてははるかに少量しか検出されなかったことを示した。 3H−D−Alaペプチド3(1−12)[MCP-1](DARC結合が無く、速やかに取り除かれた)とCRD−L−Leu4 Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1](ダフィ結合が弱く、血清半減期が良好であった)との直接比較は、本発明の薬剤が他の薬剤の半減期を増大させるのに特に有用であり得ることを示している。
変形LD50技法を使用して、CRD−L−Leu4 Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]についてのマウス静脈内LD50値を測定した。この LD50は11.4mg/マウスIVであった(これは 569mg/kgである)。これは、喘息モデルまたは内毒素血症モデルのいずれかにおいて見られる有効量の10倍多い(以下の例を参照されたい)。11mgの腹腔内投与では死に至らなかった。組織学的には、毒性は腎臓およびリンパ組織に限られた。
致死量においては、脾臓および腸に付随するリンパ組織において、リンパ球のアポトーシスが見られた。律速毒性は腎臓に対するものであった。急性腎細管性ネフローゼにおいて、量依存性増大があった。これは、腎臓によって非常に速やかに(1回目のパスで)排出される、より低分子量のペプチドの大量静脈内ボーラス( 569mg/kg)に起因するものと思われる。挫傷または大規模溶血後のミオグロビンまたはヘモグロビンの大規模放出を伴う患者においては、急性管状組織ネフローゼも見られる。
生体内における1または10mgのCRD−L−Leu4 Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]の急性ラット毒性研究の生体実験段階を使用したところ、試験薬剤投与に伴う臨床的に検出可能な変化は、10mgまでの量においては見出されなかった。すなわち、すべての動物がずっと臨床的に正常なままであった。血清化学、CBC、尿分析、屍検、または組織学において、量依存性変化または臨床的に有意な変化は見られなかった。約43μg/時のCRD−L−Leu4 Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]を連続的に7日間( 7.2mg)送出する浸透小型ポンプの皮下埋め込み術を用いる、ラットにおける7日間反復量毒性研究において、処理された動物における血清化学、CBC、尿分析、屍検、または組織学において、量依存性変化または臨床的に有意な変化は見られなかった。
従って、毒性研究により、CRD−L−Leu4 Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]は、効力を示す量の10倍を超える量で、齧歯類において安全であることが示されている(以下を参照されたい)。従って、有効な全ケモカイン阻害剤の全身投与は、急性または慢性(7日間まで)の副作用を伴わない。ゆえに、ケモカインの全阻害は、新規な抗炎症治療のための生存可能な戦略である。
例6.ラット皮膚炎モデルにおける本発明のCRD−ペプチドの使用
ラットのリポ多糖類(LPS)−及びMCP−誘発皮膚炎の予防において、本発明の薬剤の効力を評価するために、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]の3種類の投与量を投薬した。内毒素を含まないリン酸緩衝された食塩ビヒクルと一緒に500ng MCP-1又は100ng MCP-1を、皮下(腹部)注射し(陰性対照として)、そしてバクテリアリポ多糖類(LPS、陽性対照として)を皮下注射することによって、炎症反応を顕在化させた。各物質を異なる部位に注射した。
動物から得られた結果を、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]処置され、そしてPBS(希釈剤対照)処置された動物と比較した。皮膚内作用薬の投与の前30分に、パン−ケモカイン抑制剤CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]の、静脈内使用投与量(3、30又は300mg)及び皮下蓄積投与量(0.1、1又は10mg)(背側に)を受けた(例えば、図12を参照されたい)。注射後、20〜24時間で動物を犠牲にした。血清と尿を集めた。
作用薬注射した皮膚部位を集め、二分し、炎症反応の範囲を、例えば、3μg/mL、一晩、4℃で、MCP-1注射後、皮膚内の単核細胞/マクロファージの数を、抗CD14(Serotec製MCA342;クローンED2)を用いて測定する、病理学検査と定量免疫螢光検査(固定及び凍結)によって評価した。第二抗体は、室温で6時間、28μg/mLでの抗マウスFITC(Jakson ImmunoResearch製415-096-100)であった。さらに、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]の毒性を、組織分析のための10%中性に緩衝されたホルマリン中の組織試料:肺、肝臓、腎臓、脾臓、胸腺、心臓及び拮抗薬(試験薬)注射部位を集めることによって評価した。
典型的な試験結果を図7A及び7Bに示す。CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]での全身処置は、MCP-1誘発された単核細胞/マクロファージの漸増を完全に破壊した。これは、この薬剤を使った試験官内で見られるMCP-1誘発されたミグレーションの効力のある抑制と一致した。さらに、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]は、PBS単独を受けた部位、そしてまた未処置皮膚の常在組織単核細胞/マクロファージの数を減少させた。このことは、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]を用いた単独処置後24時間内の単核細胞/マクロファージ漸増の全身低下変動率と一致する。反対に、以下に記載する実験では、D−ala誘導体(図13)は、ミグレーションアッセイでのその試験官内活性の欠乏に従って、試験官内で効力を有しなかった(p=0.754)。
注射された細菌性LPSに反応する漸増した単核細胞/マクロファージの数の実質的な減少(>80%)も認められた。LPSは、500ng投与量においても、MCP-1よりも強力なマクロファージ漸増誘発物質であった。前述の実験は、TNF−αに対する抗体の中和化が、LPS誘発炎症を大きく低下させたので、LPS媒介マクロファージ蓄積は、TNF−α(非ケモカイン化学誘因物質)に大きく依存することを示唆した。しかし、内毒素血症モデル(例10)では、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]は、血しょうTNF−αのLPS誘発増加を大きく低下させ、ケモカインがTNF−αの誘発の役割を果たすことができ、ケモカイン信号化及びTNF−α信号化が、最大のLPS−誘発炎症のために必要となることができることを教示する。
MCP-1は、単核細胞/マクロファージ化学誘因物質としてかなり特効が有るけれども、LPSの皮下注射は、広範囲の白血球(T細胞及びB細胞並びに好中球を含む)の漸増を誘発する。ラットB細胞(Serotec製MCA1432)に対する特定の抗体を、10μg/mL、一晩、4℃で用いて、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]が、この白血球部分集団の漸増に影響を与えたかどうかを測定した。第二の抗体は、マウスFITC(Jakson ImmunoResearch製415-096-100)であった。単核細胞/マクロファージに関して、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]は、LPS注射部位に対するB細胞の漸増を実質的に抑制した(図7B)。
別の実験では、ラットの3つの群(n=5)を、PBS、「不活性」ペプチド3(図3に示すD−ala誘導体)、又はCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1](200μL皮下中10mg)を用いて皮下注射した。30分後、PBS、50ng LPS及び500ng MCP-1を、各ラットの腹側腹部の3つの別個の部位に注射した。24時間後に動物を犠牲にし、皮膚内部位を切除し、OCT 包埋媒体中で凍結した。5μm切片標本を、各ラットの皮膚内部位から集め、−20℃で保存した。
単核細胞(抗ラットCD14、Serotec)、T細胞、好中球(抗ラット顆粒球、Harlan Seralab)、Bリンパ球(抗ラットB細胞、Serotec)、並びにMCP-1、IL-8、及びTNF−α(抗マウスTNF−α、R及びD系)を測定した。8個の試験切片標本及び2個の対照切片標本を、2.5mmの距離をとおして、各動物の各部位のところを染色した。染色の最大変動は、一つの標本中よりも標本間であるので、NIH画像を用いて各動物及び各群において、中央値パーセンテージ領域を測定した。
図14のパネルAは、単核細胞のラットスキン表面パトロールの通常レベルを示す。MCP-1を500ng、ラット腹部に注射すると、単核細胞染色の著しい増加がある(図14、パネルB)。PBS(即ち、対照ペプチド)で処置すると、これらのレベルは変わらないままである。しかし、ラットを10mgのCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)で処置すると、炎症反応は破壊される(図14のパネルC及びD)。
LPS炎症部位(合計で3匹のラット)由来の切片標本を、定量免疫螢光検査法を用いるプロ−炎症サイトカイン及び細胞浸潤のために染色した。好中球、単核細胞、CD4+Tリンパ球、及びBリンパ球のための特定の抗体を用いると、データは、PBS及び不活性ペプチド対照と比較して、各場合において各細胞タイプのために染色された中央値パーセンテージ領域が破壊されたことを示した(図15)。さらに、TNF−α、IL-8、及びMCP-1を、同じ切片標本で測定すると、TNF−α、IL-8、及びMCP-1も、ラットを活性ペプチド(パン−ケモカイン抑制剤)で処置すると実質的に減少した。
さらに、いくつかの群は、種々の個々のケモカインに対する抗体の中和化を用いると、マウス内毒素血症モデルにおけるLPS炎症反応を変えなかったことを示した。従って、複数ケモカインが炎症反応経路においてTNF−αの上流に位置し、それらの単独での抑制は、TNF−αに上向き変動を抑制しないが、同時に複数の抑制(例えば、本発明のパン−ケモカイン抑制剤に対する反応)が、TNF−αの上向き変動を抑制又は破壊する。
従って、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]並びに他のペプチド3誘導体、類縁物及び変異体の抗−炎症効果は、マクロファージ(単核細胞)蓄積の低下又は抑制に限定されず、他の白血球サブセット(例えば、B細胞、好中球、及びCD+Tリンパ球)も抑制し、さらに、損傷内レベルのTNF−α、IL-8及びMCP-1を抑制した。
例7.ネズミの内毒素血症モデルにおける本発明のCRD−ペプチドの使用
マウス内毒素血症モデルを用いて、迅速様式での試験官内機能性抗炎症活性のために本発明の薬剤をスクリーニングした。雌CD−1マウスに、583μg LPSを用いて、最初の場所(腹側腹部)に注射した。そして、TNF−α、IFN−γ、IL-4及びMCP-1並びに炎症反応の他のマーカーのmRNA及びプロテインレベルを測定した。
LPS投与の30分前に、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]の3種類の投与量の一つを、静脈内使用投与量及び皮下ボルス投与量(背中)として投与した。LPS投与をしたPBS処置動物とLPS投与をしないPBS処置動物が陽性対照と陰性対照であった。2時間後、動物を安楽死させ血清を集めた。血清をセルペレットから分離し、サイトカインレベルのELISA分析まで凍結した。mRNA分析と組織病理学のために肺及び肝臓サンプルを集めた。CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]は、血清TNF−αの投与量依存減少を実証した。IL-4、IFN−γ及びMCP-1の血清レベル並びにmRNAレベルを測定した。
血清MCP-1及び肝臓MCP-1 RNAのレベルは、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]による変調無しにLPS処置された動物では上昇した。血清IL-4及びIFN−γ並びに肝臓IL-4 RNAのレベルは、全ての動物で低下したか、検出されなかった。肝臓IFN−γRNAは、LPS処置した全ての動物で増加した。CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]処置した動物の血清TNF−αでは、投与量依存性があり、高投与量群では、統計学的有意性に到達した。肝臓TNF−α RNAはLPS処置した全ての動物で高かった。
従って、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]処置したマウスは、TNF−αレベルでの変化によって免疫反応を変調できる。
例8.正常なサル及びマウス並びにネズミ喘息モデルにおける本発明のCRD−ペプチドの使用
CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]の投与量を増加すると、正常なマウスの肺内の細胞数及び細胞タイプが変わるかどうかを決定するために、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]を使って、静脈内、静脈内及び気管内、又は気管内単独注射を行った。注射後20〜24時間でマウスを犠牲にした。細胞の分離のために肺を集め、その後計数し、CD3、CD4、CD8、B220及びMac-1のために表面染色することによって特徴付けした。
肺から分離された細胞の総数は、PBS処置したマウスと比較して、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]を低投与量(0.3μg IV及び/又は10μg IT)受けた全ての群において高かった。PBS対照と比較して、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]を高投与量処置したマウスの肺から分離された細胞の総数においては大きな差は無かった。
FACS分析によると、高投与量CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]は、PBS対照と比較して、投与の全ての経路によるCD3、CD4、及びB220細胞の比率を大きく低下させた。反対に、投与の全ての経路において、低投与量CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]で処置された群のCD3、CD4、又はB220細胞の比率に大きな差は無かった。
さらに3つの実験によって、オバルブミンを気管内攻撃されたマウスの肺と血液の、肺疾患炎症性浸潤の低下、IgE抗体増加の抑制、及び特定の炎症性細部の比率変更のために、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]の二種類の投与量増加の能力を評価した。Gonzalo等のJ. Clin. Invest, 98,2332(1996); Gonzalo等のJ. Exp. Med., 188, 157(1998)を参照されたい。
最初の実験では、ケモカイン抑制剤を感作前とその後の攻撃前の両方に適用した。腹膜内の100μL PBS(希釈剤対照)中オバルブミン(OVA)0.1mgを用いてマウスを感作した。感作後8日目に、マウスは、パン−ケモカイン抑制剤CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]の静脈内使用投与量(0.3又は30μg)及び皮下(depo)投与量(10μg又は1mg)を受けた。CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]投与の30分後、気管内に1%オバルブミン又はPBS(希釈剤対照)でマウスを攻撃した。
感作後21日目に、マウスは、パン−ケモカイン抑制剤CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]の第二の静脈内使用投与量(0.3又は30μg)及び皮下投与量(10μg又は1mg)を受けた。CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]投与の30分後、気管内に2%オバルブミン又はPBS(希釈剤対照)でマウスを攻撃した。21日目のオバルブミン攻撃後3時間で、マウスを犠牲にした。組織検査並びに総細胞数計数微及びFACS分析のための細胞分離のために、肺を集めた。FACS分析のためにPBLを集めた。
FACS分析によると、OVA攻撃の前にPBSを受けたマウスと比較して、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]の2種類の投与量(0.3 IV/10μg静脈内又は30μg IV/1mg皮下)で処置したマウスの肺中のCD3、CD4、B220及びMac-1細胞の数が大きく低下した。CD8細胞の比率は全ての群で同じであった。さらに、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]マウスの肺から分離された細胞の総数はPBS処置したマウスと同じであったが、OVAとPBSで処置したマウスより著しく少なく、この薬剤が肺中の炎症性細胞のトラフィッキングを変えたことを示唆した。血液中では、OVA処置マウス(陽性対照)とPBS処置マウス(希釈剤対照)と比較して、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]の2種類の投与量で処置したマウスのCD3及びCD4細胞の比率が著しく高く、B220の比率が低かった。高投与量処置されたマウスは、他の全ての群と比較して、PBL区画ではMac-1細胞がより少なかった。
組織学的には、高用量のCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕で処置した全てのマウスは、PBSのみで処置したマウスと同様に肺における炎症性浸潤物が最小〜皆無であった。低用量のCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕を投与したマウスも、PBSとOVAで処置したマウスに比較して最小の炎症を有した。PBS OVAグループ(陽性対照)にのみ珍しい好酸球が観察されたが、これはOVA感作に対する予想通りの応答である。
IgEレベルは他の全てのグループに比べてPBSとOVAで処置したマウスで有意に高かった。IgEは、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕で処置したマウスの全グループでバックグラウンド以上には検出されなかった。よって、感作前とチャレンジ前のパン−ケモカイン阻害剤CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕による処置は、OVAに応答していずれかの炎症応答が起こるのを予防した。
CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕が試験物質の非存在下で感作されたマウスにおいてOVAに対する炎症応答を減少させることができるかどうかを調べるために、オボアルブミン誘発過敏症モデルにおいて第二の実験を行った。マウスを0.1 mgのオボアルブミンまたはPBS(希釈剤対照)で腹腔内感作した。感作の8日後、マウスに皮下用量(10.3μg,103μgまたは1.03 mg)のパン−ケモカイン阻害剤CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕を投与した。CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕投与から30分後、マウスを1%オボアルブミンまたはPBS(希釈剤対照)で気管内チャレンジした。
感作から15日、18日および21日後、マウスに皮下用量(10.3μg,103μgまたは1.03 mg)のパン−ケモカイン阻害剤CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕を投与した。CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕投与の30分後、マウスを21日目に2%オボアルブミンまたはPBSで気管内チャレンジした。チャレンジ後3時間目にマウスを犠牲にした。組織病理学検査のためと全細胞計数とFACS分析用の細胞の単離のために肺を回収した。IgEおよびIL-4レベルの測定のため血清を収集した。
IgE(60%)、IL-4(85%)、肺中の全細胞数(約50%)およびマクロファージ(74%)の用量依存性減少が観察された(図16A)。
FACS分析によると、OVAでのチャレンジ前にPBSのみを投与したマウスに比べて、100μgのCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕で処置したマウスでは肺中のマクロファージの比率が有意に低かった(図16B)。よって、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕はそれらの細胞の流入(trafficking)を変更した。組織学的には、高用量または中用量のCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕で処置した全てのマウスにおいて、該ペプチドで処置しなかったがOVAでチャレンジしたマウス(陽性対照)に比較して、肺中の炎症性浸潤物が少なかった。
PBSのみで処置したマウスは肺中の炎症が最小〜皆無であった。OVAでチャレンジした全てのマウスが肺に好酸球を有した。PBSのみで処置したマウス(陰性対照)と同様に、PBSとOVAで処置したマウス(陽性対照)に比べてCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕で処置したマウスではIgEレベルが有意に低かった(図16B)。同様に、血清IL-4レベルはマウスで有意に減少した(図16C)。よって、OVAチャレンジ直前のCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕による処置が、感作マウスにおけるOVAに対する炎症性応答を有意に減少させる。
第三の実験は、OVAで誘発される肺炎症を減少させるためのCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕の毎日投与の効能を評価するものであった。マウスを試験物質の非存在下で腹腔内的に0.1 mgのオボアルブミンまたはPBS(希釈剤対照)で感作した。初期感作から8日後、マウスを皮下経路により10.3μgもしくは1.03 mgのCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕または1.03 mgの不活性D−alaペプチドのいずれかで処置した。それらの処置は8日目から21日目まで毎日行った。
8日目に、処置から30分後に1%オボアルブミンまたはPBSにより気管内チャレンジした。15,18および21日目に、処置から30分後に2%オボアルブミンまたはPBSにより気管内チャレンジした。21日目に、オボアルブミンチャレンジの3時間後にマウスを犠牲にした。組織病理学検査のためと全細胞数およびFACS分析用の細胞の単離のために肺を回収した。エイコシノイドレベルの測定のため気管支肺胞洗浄液(BAL)を収集した。IgEおよびIL-4レベルの測定のため血清を収集した。サイトカインリコール応答のため脾臓を回収した。
低用量(10.3μg)のCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕で処置したマウスの肺では、陽性対照または不活性ペプチドで処置したマウスに比べて、有意に(p<0.05)低い全細胞数が観察された(図41)。FACS分析によると、低用量(10.3μg)のCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕で処置したマウスでは、陽性対照または不活性ペプチドで処置したマウスに比べて、肺中のマクロファージ数とB細胞数が有意に少なかった(図40)。加えて、高用量(1.03 mg)のCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕で処置したマウスでは、対照マウスに比べて、B細胞数が有意に(p<0.05)減少した(図40)。T細胞数には有意な差が見られなかった。
組織学的には、高用量または中用量のCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕で処置した全てのマウスで、炎症は減少したが取り除かれなかったけれども、該ペプチドで処置しなかったがOVAでチャレンジしたマウス(陽性対照)または不活性ペプチドで処置したマウスと比較して肺中の炎症性浸潤物がより少なかった。PBSのみで処置したマウスは肺中の炎症が最小〜皆無であった。CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕で処置したマウスを包含する、OVAでチャレンジした全てのマウスが、肺中に好酸球を有した。
一連の試験管内実験において、OVAに対する感作動物からの培養脾細胞のリコール応答を実施した。CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕で処置したマウスからの脾細胞は、未処置のマウス(OVA陽性対照)からまたは不活性ペプチドで処置したマウスからの脾細胞よりも、OVAに応答して起こるIL-4の生産が有意に少なかった(未感作マウスからの脾細胞における生産と同様に)(図40)。どの用量のCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕で処置したマウスでも、対照と比較して、IgEレベルが有意に減少した(p<0.05)(図41)。不活性ペプチドはBAL中のトロンボキサンB2を有意に減少させた(p<0.05)(図40)。異なる量がグループ内に人為的な差と大きな変動を加えるかもしれないけれども、好酸球レベル(トロンボキサンB2,ロイコトリエンB4またはプロスタグランジンE2)に有意な差は見られなかった。
それらの結果は、OVAチャレンジの直前に皮下注射により、8日目〜21日目まで毎日投与すると、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕が抗原OVAに対する暴露後に肺中へのマクロファージとB細胞の流入を減少させることを確証した。より重要なのは、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕は、喘息に強い関係がある、血清中のIgE抗体レベルと脾臓リコール培養物からの上清中のIL-4レベルを減少させたことである。IgE応答はIL-4とIL-5を生産するTh2細胞応答に依存する。従って、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕がOVAでのチャレンジにしてIgEを減少させる効果をもつという知見は、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕がIL-4とIL-5を減少させることを強く意味する。
別の実験において、BALB/cマウスを0.1 mgのオボアルブミン(OVA)またはPBS(希釈剤対照)で腹腔内感作した。初期感作から8日後、マウスを1%オボアルブミンまたはPBS(希釈剤対照)で気管内チャレンジした。15,18,21および34日目に、マウスを2%オボアルブミンまたはPBSで気管内チャレンジした。1回量のCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕が確定された喘息表現型を有するマウスにおいて肺炎症、IL-4またはIgEを減少させる効果を有するかどうかを調べるために、マウスを100μg i.v.ボーラスのCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕またはPBSで処置した。
処置から30分後にマウスを2%OVAにより気管内チャレンジし、そしてOVAチャレンジから3時間後にマウスを犠牲にした。100μgのCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕での毎日処置が肺炎症の後退を引き起こしそしてIL-4とIL-5レベルを減少させるかどうかを調べるために、21日目から34日目まで毎日CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕またはPBSをマウスに皮下注射した。34日目に、マウスを2%OVAかまたはPBSのいずれかで気管内再チャレンジした。チャレンジから3時間後にマウスを犠牲にした。21日目と34日目の犠牲後、組織病理学検査のためと全細胞数およびFACS分析用の細胞の単離のために肺を回収した。IgEおよびIL-4レベルの測定のため血清を収集した。サイトカインと抗体のリコール応答のため脾臓を回収した。
二週間の間CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕で毎日処置し、次いでOVAで再チャレンジしたマウスは、PBSで処置しそしてOVAまたはPBSで再チャレンジしたマウス(陽性対照)に比べて、肺中の全細胞数が有意に(p<0.01)少なかった(図27A)。FACS分析によると、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕で処置したマウスでは、陽性対照に比べて、肺中のマクロファージ、B細胞およびCD4+ T細胞の数も有意に少なかった(図27B,CおよびD)。加えて、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕で処置したマウスは、陽性対照に比べて有意に(p<0.05)減少した血清IgEレベルを有した(図28と第10表)。
OVAでの脾細胞の感作後(CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕添加なし)、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕により生体内処置したマウスからの培養上清中のIL-4,IgE並びに全IgGおよびIgMレベルは、陽性対照に比べて有意に(p<0.05)減少した(図30A,BおよびC;第9表)。リコール培養物において1週間まで抗体産生の完全な抑制が持続した(図30AとB;第8表及び第11表)。
しかしながら、培養2週間後は、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕で処置したマウスからの上清中の抗体レベルは陰性対照のものより高く、PBSで再チャレンジしたマウスのものと同等であり、そしてOVAで再チャレンジしたマウスのものより有意に(p<0.05)低かった(図30AとB)。組織学的には、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕で毎日処置したマウスからの肺は、正常マウスの肺と類似しており、そしてPBSで処置した後OVAで再チャレンジしたマウス(陽性対照)に比較して肺中の炎症性浸潤物が著しく少なかった。PBSのみで処置しそしてOVAで一度もチャレンジしなかったマウスは肺中の炎症が最小〜皆無であった。OVAでチャレンジした全てのマウスが肺中に好酸球を有した。しかしながら、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕で処置したマウスの肺では、好酸球を含むいずれの炎症細胞の数も少なかった。
21日目にOVAでチャレンジする前に1回量のCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕で処置しそして21日目に犠牲にしたマウスでは、肺中の全細胞数の有意な減少は見られなかった(図29D).しかしながら、OVAでの脾細胞の感作後には、PBSで処置したマウスに比べてIL-4およびIgEレベルの有意な(p<0.05)減少が観察された(図29Eと38)。
これは、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕が、確定された喘息表現型を有するマウスに2週間に渡り毎日投与すると、肺の炎症の後退を引き起こすことを確証した。加えて、OVAで再チャレンジした時、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕で処置したマウスは肺へのマクロファージ、B細胞およびCD4+ T細胞の流入を減少させた。このことは、そのような処置が抗原暴露の部位において炎症の再発を抑制することを示唆する。より意義深いのは、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)〔MCP-1〕が脾臓リコール培養物からの上清中のIE-4レベルと血清IgE抗体レベルを減少させたということである。脾細胞培養物中で生産される全IgGおよびIgM抗体の著しい減少も観察された。
シノモルガス(cynomolgus)サルを単鎖Fv(scFv)タンパクである抗原で免疫化した。各動物は事前に抗原の3回のi.v.インジェクションを受け、全て高い血清値を発現した。5頭の動物をランダムに2つのグループに分けた。2頭の動物はPBS処置した対照として用いられ、そして3頭の動物は50mg/kg CRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]でi.v.処置した。CRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]処置の30分後に、全ての動物に3.5mg/kgの抗原をi.v.チャレンジした。
さらに、以下の各々50μlの体積のPBS、50μgの抗原、5μgの抗原、0.5μgの抗原、500ngのMCP-1又は50ngのLPSを動物の皮内にチャレンジした。10分、30分、60分、4時間及び24時間で血清を回収した。CRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]インジェクションの24時間後に動物を屠殺し、そして完全な検死を行い、そして組織を組織病理検査のためにフィックスした。フィックスしそして凍結した皮膚のサンプルを組織病理検査及び免疫組織化学検査のために取った。
血液、脾臓及びリンパ節をマイグレーションアッセイ、増殖アッセイ並びに抗原特異性抗体及びシトキンリコールでの細胞機能評価のために取った。また、血液学的パラメータ及び血清化学検査のために血液をCRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]インジェクション前及びCRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]インジェクション後に分析した。LC-MS法(限界量=1μg/ml)によって、処置前、及び、インジェクションの10分後、30分後、60分後、4時間後及び20〜24時間後に血清レベルを評価した。CRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]インジェクションの前及び後に検尿を行なった。
PBS処置した対照(動物番号137及び144)と比較して、CRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]インジェクションの1回投与で処置した全ての3頭のサル(動物番号138、141及び143)は脾細胞、リンパ節細胞及び末梢血液リンパ球のリコール応答において抗原特異性抗体の検知可能なレベルが最も低かった(ポジティブ対照動物のPBLは培養に不充分な細胞数であるために評価を行なわなかった)(図33)。IL-4はPBS処置した対照のうちの1頭である1頭の動物(#144)で検知された。マイグレーションアッセイ及び増殖アッセイでは、一貫した応答/非応答動物がなかった。
皮内インジェクションサイトを組織病理学的に評価したが、2頭のポジティブ対照(MCP-1又はLPS)に対して炎症応答がなく、それ故、これらのサンプルについてはさらなる分析を行なわなかった。どの動物においても、臨床学的に有意な変化は血液学的結果において記録されなかった。CRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]で処置した後の血清化学プロファイルにおいて臨床学的に有意な変化は記録されなかった。血清中のCRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]のレベルをLC-MSを用いて測定した。
PBS投与したサルではCRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]を検知しなかったが、50mg/kgのCRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]を投与したサルではCRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]を検知した。処置後に両方のグループに属する幾つかの動物では尿のpHが下がり、そして比重が上がった。CRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]で処置した全ての3頭の動物の尿中には少量のタンパクがあった。両方のグループの幾つかの動物では尿中にケトンがあった。全ての3頭の処置した動物は処置の最初の4時間の後には検知可能なレベルの薬物があった(図41)。20〜24時間までに、薬物レベルは定量レベルを下回るまで落ちた(<1μg/ml)。
この研究では、CRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]が1回投与でデリバリーされたときには、脾細胞、リンパ節及び末梢血液リンパ球のリコール応答において抗原特異性抗体応答が低減されることが判った。行なった他のアッセイでは応答の欠如が一貫しない応答であった。小さいサンプルサイズは統計的分析を妨害する。作用物質をチャレンジしたサイトではなぜ皮内炎症応答が起こらなかったのか不明である。このように、CRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]の1回投与は、2つの異なる種でリコール応答で測定したときに、抗原特異性抗体応答を抑制する。
データは、また、CRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]が確立された炎症応答の後退を生じさせることを示し、このため、化学刺激抑制がT及びBリンパ球リコール応答の低減をもたらすことも示す。Tリンパ球リコール応答は、オバルブミンで刺激された細胞によるIL-4産生の評価により測定した。Bリンパ球リコール応答は、オバルブミンで刺激された細胞によるイミュノグロブリン産生の評価により測定した。両方の場合に、インビボでのCRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]の1回投与は、抗原チャレンジに応答して、IL-4,IgG+IgM又はIgEを産生する細胞の能力の統計的に有意な低減をもたらした。
これは、化学刺激抑制剤が既知のアレルゲンに対するB及びT細胞でのリコール応答を抑制することを初めて示したものである。これはアレルギー疾患における治療に非常に重要であり、そしてIL-4又はIgの異常増加が病態生理学的に寄与する自己免疫疾患、例えば、喘息、接触過敏症、アレルギー性鼻炎、リウマチ様関節炎、炎症性腸疾患、並びに、異常イミュノグロブリン産生又はハイパーガンマグロブリネミアにより起こる疾患、例えば、免疫媒介糸球体腎炎、マルチプル骨髄腫(特に、ベンスジョーンズタンパク(すなわち、尿中のイミュノグロブリン)を有する患者)、自己免疫溶血性貧血、重症筋無力症、グッドパスツール症候群(抗糸球体ベースメント膜誘導腎炎)自己免疫ブドウ膜炎、自己免疫甲状腺炎及び自己免疫膵臓島細胞破壊の疾患に非常に重要である。さらに、本発明の薬剤は、抗原に対する抗体の応答を抑制しようとする適応症に有用であることができる(例えば、投与制限性免疫抗原性を有する幾つかの免疫治療製品、例えば、抗体ベースの製品との組み合わせで)。
このように、CRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]が静脈及び皮下に、又は、皮下のみにデリバリーされるときに、抗原への暴露後に、肺へのリンパ球の輸送を変更した。より有意には、CRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]は肺中の細胞の炎症、IgE応答及び血清中のIL-4濃度を低減し、それらは喘息と強い相関がある。IgE応答はTh2T細胞応答に依存し、それはIL-4及びIL-5を産生する。それ故、CRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]がオバによるチャレンジ時にIgEを低減する効果が観測されることは、CRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]がIL-4及びIL-5も低減しうることを強く示している。
例9.好ましいトリペプチド及びその類似体
本発明の好ましいポリペプチドは、Xが20種の天然のアミノ酸の1つであるKXKペプチド、例えば、KQK及びKLK、並びに、KXKを有するペプチドを含む。下記のとおり、KXKペプチドは2つの明確なメカニズムにより抗炎症性である。幾つかのKXKペプチドはTGFベータアクチベータであり、そして他のものが化学刺激拮抗物質であり、幾つかはその両方である(第11表を参照されたい)。
KXKトリペプチドがTGF-ベータを活性化するか否かを試験するために、直接ELISAタイプのアッセイを使用することができる。CHO細胞で産生するリコンビナントヒト潜在TGF-β1(R&D Systems)を試験アクチベータでインキュベートした。例えば、200ngの潜在TGF-β1(20μg/ml)を試験ペプチドで100nMの最終濃度で37℃で90分間インキュベートした。インキュベーションの後に、TGF-βは、TGF-β1の潜在形態でなく、活性形態のみに結合するタイプII TGF-β1レセプター(R2X)のリコンビナントエクストラセルドメインでインキュベートされる(Clin.Chim.Acta.,235,11(1995)。例えば、1μgの精製されたR2Xは、50μlの100mMの炭酸ナトリウム中で4℃で2時間でマクシソープELISAプレートウェル上にコーティングし、そして非特異的なタンパク結合が、その後、室温で1時間、トリス緩衝塩溶液中の5%スクロース5%Tween-20でインキュベーションをブロックする。
TGF-βサンプルは、その後、振盪しながら室温で2時間、コートされそしてブロックされたウェルでインキュベートされる。各インキュベーションの間に、0.05%のTween-20を含むトリス緩衝塩溶液でウェルを3回すばやく洗浄する。試験ペプチドによるインキュベーションで潜在TGF-β1のいずれかが活性化されるならば、それはR2Xにより捕獲され、一方、残りの潜在TGF-β1は洗い流される。捕獲された活性TGF-β1は、その後、適切な検知剤、例えば、ペルオキシダーゼ結合ポリクロナール抗TGF-β抗体によるインキュベーションにより検知される。
例えば、振盪しながら室温で90分間、200μlの、ワサビペルオキシダーゼに結合したBDA19チキン抗TGF-β抗体でウェルをインキュベートする。結合したペルオキシダーゼは、その後、適切な色素源基質(例えば、K-BLUE TMB基質溶液)を用いて検知される。活性TGF-βの発生量は既知の量の活性TGF-β1(R&D Systems)を用いて構成される標準曲線の外挿により評価される。
化学刺激拮抗物質の活性は上記のTHP-1トランスウェルマイグレーションアッセイを用いて決定され、ここで、ペプチドは細胞とともに上部コンパートメントでインキュベートされ、一方、化学刺激物質は下部コンパートメントでケモアトラクタントとして使用される。4つの化学刺激物質を試験した:IL-8、SDF-1α、MCP-1及びMIPα。第11表の+はペプチドがこれらの4つのケモアトラクタント化学刺激物質のうちの少なくとも1つにより誘導されるマイグレーションの抑制剤として活性であったことを示す。+の数は各アッセイでの各ペプチドの活性の定量指示である。−はアッセイで検知可能な活性がないことを示し、n.d.はこのアッセイで与えられたペプチドの活性を評価する試みがこれまでなされていないことを示す。
KFKはRFKと同じくらい活性であった(Schultz-Cherryら、J.Biol.Chem.,270,7304(1995))。しかしながら、以前の報告とは非常に対照的に、KXKの他のメンバーもTGF-βアクチベータとして活性であった。例えば、KYKはKFKよりも活性であった。このため、リシンについてのアルギニンの置換は2位でのアミノ酸の範囲を増加し、それはTGF-βを活性化する。
KLK及びKIKはこれらの薬剤がデュアル作用抗炎症性分子であるから特に興味深い。これらのトリペプチドはSDF-1αレセプターCXCR4の特異的な拮抗物質であり、また、TGF-βを活性化する。このように、KLK、KIK及びその類似体及び誘導体は、それ故、幅広い範囲の抗炎症性疾患の予防又は治療のための特に有用な医薬となりそうである。
激しい移植拒絶に関係するようなグラフト好酸球減少症では、好酸球減少症リクルートメントの選択的抑制剤又はパン−化学刺激抑制剤(例えば、KKK又はその類似体)は特に有利であることができる。このような薬剤は単独で使用されても、又は、通常投与よりも少量のステロイド、例えば、激しい拒絶反応を抑制するために現在使用されているプレドニソロンとともに使用されてもよい。激しい副作用は激しい拒絶の間に使用されるプレドニソロン(又は他のステロイド)の多量投与に関連があり、ステロイドを投与する必要を低減するか又は無くす薬剤の使用は特に有用である。
KXK ペプチドのアナログ、例えばKQK のアナログも考慮される。(置換基としてR7を有する式Vの化合物中の)中央の鎖は、一般的な置換基Rにより置換される。ここで、Rはいずれかのアミノ酸からの側鎖である。これらのアナログ(例えば式(VI)の化合物のフルオロアルテンの一般的なクラス)は、 TGF−βの活性化及び/又はケモカインシグナル伝達の阻害が要求される広範囲の多様な疾患の治療のために役立つ。このクラスの分子の好適なメンバーを選択することにより、要求される分子の特性を操作することが可能である。
従って、KYK アナログの選択は、ケモカイン阻害の欠如下で TGF−βの強力な活性化を供するが、KLK のアナログは両方の特性を有する。KQK のアナログは1又は複数のケモカインレセプターに対して阻害作用を有するが、 TGF−βは活性化しない。従って、KYK 、そのアナログ、及び誘導体は、 TGF−β上昇制御が特に有益である疾患において、例えばアテローム性動脈硬化症又は骨粗しょう症において用いるために選択することができる。対照的に、KQK のアナログは、ケモカイン阻害が要求されるが TGF−β上昇制御が有益であり得ない場合、例えばHIV 感染の治療において選択することができる。
KXK ペプチド及びそのアイソスターは、 TGF−β上昇及びMCP-1 の選択的阻害が特に相乗的であるような場合に、低い骨無機質密度を治療するために役立ち得る。
KXK クラスの誘導体又はアナログは、単独で、又は炎症性疾患、又は本明細書に記載されるような他の疾患もしくは徴候の治療のための他の治療法と組み合わせて用いることができる。例えばKYK の誘導体又はアナログは炎症状態の治療のためにステロイドと一緒に用いることができ、通常用いるステロイドの標準的な投与量を低下させ、慢性的なステロイド使用に関わる副作用を減少させることができる。
位置1及び3におけるアミノ酸の保存性置換は分子の活性に影響を与えないことも考慮される。従って、(ペプチド内又は(VI)のようなアナログ内のいずれかの)リシン側鎖の一方又は両方を、アルギニル側鎖又はオルニチニル側鎖で置換することができる。
例10.本発明の剤の結合親和性
また、例示したもの以外の部分(ケモカインペプチド2又は3の同族体、その変種又は誘導体で、DARC及び/又はケモカインレセプターに特異親和力をもって結合するもの、例えば、機能性ケモカインレセプターに高親和力をもって結合するがDARCには低親和力をもって結合するもの、あるいはDARCには高親和力をもって結合するがケモカインレセプターには低親和力をもって結合するもの、を含む)を例えば上記したもののような方法を使用して同定してもよいということが予見される。
さらに、本発明の剤は、ケモカインレセプターの機能的マッピングにおいて有用である。例えば、ケモカインペプチド2とペプチド3の両方はナチュラルなケモカインリガンドが競争方法で結合するのを阻止する。しかし、それらのものは、それらのものが互いに結合するのを阻止せず、それらのものがレセプターの別個の領域に結合すること、そしてこれらの領域がナチュラルなリガンドの結合にとって重要であることを示している。加えて、ペプチド2は、それらの機能活性が異なる点においてペプチド3と区別される。ペプチド3は、レセプターに結合するばかりでなく、ケモタクシスの抑制によって示されるように、レセプターのシグナル化の機能活性を阻止する。
ペプチド2はケモタクシスを抑制しない。したがって、これらのペプチドは、一緒になった場合、機能活性を異にすることが重要であるケモカインレセプターの領域を同定するのにとりわけ有用である。これらの領域を一旦同定したとすると、構造的には出発化合物には関連がないかもしれないが機能的には関連する別のケモカインファンクションに対する特異抑制体に関して、コンビナトリアルライブラリーあるいはコンパウンドブランクをスクリーニングするためにそれらの領域を使用することができる。
さらに加えて、ケモカインの場合、ダイマーを形成して、興味あるレセプターを活性化することが重要である。本発明のペプチドの場合、ケモカインダイマーの形成に重要と思われるアミノターミナルドメインを欠いている。セルのシグナル化のためにダイマー形成が必要であるならば、本発明の剤が活性化を抑制することができる。それらの剤は、レセプターに結合できるが、例えばネーティブなケモカインリガンドをもってダイマーを形成することは不可能であるからである。
例11.ペプチド3の結合の研究
ビオチニル化ペプチド3はTHP-1 上のセル表面分子と相互作用することが示されたけれども、クローン化ケモカインレセプターを表すセルラインについてラジオリガンド競争実験で、ペプチド3は、ケモカインレセプターに対する結合に関して競争しなかった。ペプチド3がケモカインレセプターに結合するか否かを決定するため、THP-1 マイグレーションアッセイを使用して、ビオチニル化誘導体の抑制活性を評価し、かつそれを同じペプチドの標識なしのものと比較した。さらに、標識化合物が機能ビオチンを含有するか否かということ、すなわち、ビオチンがストレプタビジンを結合可能であるか否かということを示すため、競争ELISA を使用した。
材料
ヨウ素化PANTES及びヨウ素化MCP-1(Amersham )をMilliQ水中で更新して、濃度50nM(0.1μCi/μl)、特異活性2000Ci/mmole となした。ヨウ素化ストレプタビジン(Amersham)を原液濃度47nM(0.1μCi/μl)及び特異活性38μCi/μg(55,000Da)で得た。冷PANTES及びMCP-1 をR&Dシステム社(Minneapolis, MN )から購入し、10μg/ml(1.25μM)の無菌の PBS+1mg/ml脂肪酸不含BSA (FAF-BSA) (Sigma A-6003 )中で更新した。冷ストレペタビジン(Calbio-chem )を無菌のMilliQ中で濃度4mg/ml(90μm)に更新した。
FAF-BSA を一貫して使用した。すべての実験を、特に断りのある場合を除いて、Ruffing ら(Cell. Immunol.)189, 160 (1998))によって記載されるように、結合媒体(50mM HEPES, 1mM CaCl2, 0.5% FAF-BSA, pH7.5 )中で実施した。反応はすべて、特に断りのある場合を除いて、4℃で実施しかつすべての緩衝液を4℃に予備冷却した。
ビオチニル化ペプチドをシーケンスn'-CLDPKOKWIQC-c' (Affiniti Research)のN−ターミナルビオチンコンジュゲートとして合成し、HPLCにより純度>90%と確認した。あらゆる分子が、それと組み合わさったビオチンを有している。このペプチドをMilliQ水中で10mM原液濃度に更新し、必要となるまで、少量のアリコート中で凍結保存した。ポジチブコントロールとして、ペプチド2(1-15)[MCP-1 ]のN−ターミナルビオチン−標識誘導体を使用した。
AIDSリージントプログラムからHOS ペアレンタルセルとCCR1-15 及びCXCR4 形質転換体を得、供給元のデータシートに記載のように保持した。ケモカインレセプター表示のプラスミドに関する選択を培養の全体を通して維持した。CHO ペアレンタルセルとCXCR1及びCXCR2 形質転換体をDr. J. Navarro (South western University) TX, USA )から得、ケモカインレセプター発現の一定の選択下、供給元に指示されるようにして保持した。すべてのセルをほぼ4日ごとに約1:10の希釈比で分割し、既知濃度でリシーディング(reseeding )した。実験のため、フラスコからセルをEDTAで分離し、実験前の18〜24時間、約2×105 セル/ウェル(4.4×104セル/cm2)で記載される24個又は12個のウェルにリシーディングした。実験の時点で、すべてのウェルは公称濃度3×105 セル/ウェルであった。
結果
ビオチニル化ペプチドの性質
標準THP-1 マイグレーションバイオアッセイを使用して、ビオチニル化ペプチドをそれに対応する標識なしのペプチドと比較した。使用したケモカイン化学誘引物質は、RPMI 1640+10% FCS 中の 100ng/mlのMCP-1 であった。37℃で、5μmのフィルターを介して4時間にわたってマイグレーションを行わせた。化学誘引物質としてのMCP-1 は、マイグレートしたセルの数をほぼ3倍まで増加させ、また、ドーズ(dose)依存形態の場合、標識なしのペプチドの存在によってこれが抑制された。
抑制についてのED50は約9μMであり、このペプチドに関して先に報告されているデータ(2〜3μM)と一致している。標識したペプチドもまたMCP-1 誘起のマイグレーションを抑制し、より小さなED50(約4μM)(図20)を示した。この実験を2度反復したが、標識したペプチドと標識なしのペプチドの間に統計学的に有意な差は認められなかった。したがって、標識の添加は分子の機能に悪影響を及ぼさなかった。
ストレプタビジンの結合を可能とした標識ペプチドにおけるバイオチン部分の存在を競争ELISA によって確認した。簡単に述べると、ストレプタビジンをELISA プレートウェル(Nunc Maxisorp Plate )上に、4℃の50mM炭酸ナトリウムpH8.5 中、10pmole /ウェルで45分間にわたって塗布した。ブロッキング(TBS中で5%サッカロース/5% Tween20)後、プレートをいろいろな濃度の標識ペプチド3(塗布したストレプタビジンについて0.1倍から1,000倍モル過剰)と室温で1時間にわたってインキュベートした。
洗浄後、ビオチニル化マウス IgG (もしもストレプタビジンが標識ペプチドによってブロックされていなければ、その時のみに結合するであろう)を添加することによって、残留する遊離ストレプタビジンの検出を行った。結合したマウスIgG を検出するために抗マウスペルオキシダーゼを使用した。反応条件下、不動化ストレプタビジンに対する標識ペプチド3の結合は、機能的に見て不可逆的であった。したがって、ビオチニル化マウスIgG の引き続く結合を防止するのに必要な標識ペプチド3の濃度は、機能ビオチンを備えたペプチド3分子(すなわち、ストレプタビジンに結合可能なもの)(図21)の割合を示す尺度である。標識効率の割合は 100%であると評価され、ビオチンが同時合成的に添加されている事実と一致した。
ケモカインレセプターのオーバー発現ライン(Over-expressing lines)の特徴づけ
CCR5に結合した標識RANTESの速度論を確立するため、CCR5セルとそれらのペアレンタルラインを 500倍過剰の標識なしRANTESの不存在もしくは存在において0.05nMで標識RANTESにさらした。30分間〜4時間の間のいろいろな時間について、4℃もしくは室温のいずれかで結合を行わせた。すべてのデータを3回集めた。4℃でよりも室温のとき、僅かにす早く平衡が達成され、また、両ケースとも、2時間までに結合が完結した(図22A)。さらに、ペアレンタルラインに較べてCCR5で、冷時競争性が顕著に大であった(なお、ペアレンタルラインもまた、統計学的に顕著な高親和力のRANTES結合を示し、これらのセルについてCCR5レセプターがバックグラウンドレベルにあることを示した)(図22B)。この実験にもとづいて、すべての結合実験を4℃で2時間にわたって実施した。
平衡結合を発現させるために定められた条件の下でScatchard 分析を行った。この実験の目的は、セル表面における高親和力結合部位(CCR5レセプター)の数を推定することにあった。なぜなら、Scatchard 分析の全体は、結合部位の有効性によって結合が制限されるような条件下で行なわれ、加えたRANTES分子の数に依存しないからである。その結果、ペアレンタルラインでは約80,000結合部位/セルでありかつ高発現CCR5ラインえでは約 200,000〜400,000 結合部位/セルであることが判った。この情報を使用して、結合部位の数によって制限される平衡時に12ポイントのScatchard 分析をフルに行うのに必要な条件を計算した。
選んだ条件は、0.06〜25nM(2倍〜800 倍過剰)の濃度の冷RANTESの不存在もしくは存在において、3×105 個のセルに対して4℃で2時間にわたって添加される0. 03nMの標識RANTES 1.25ml であった。非特異結合の尺度として 800倍過剰のものを使用して、結合データについてScatchard 分析を実行した。判明したところによると、部位における親和力は約1nM(CCR5の予想の性質と一致;kd=0.4nM)であり、ペアレンタルラインでは 10,000部位/セルでありかつCCR5のオーバー発現ラインでは 200,000部位/セルであった。このことから、このセルラインにおいてはCCR5レセプターのオーバー発現をプラスミドが引き起こしていることを確認できる。
CCR5オーバ表現ラインにおけるCCR5レセプターの存在を直接標識(FITC−共役)のアンチCCR5抗体(Pharmingen ; Clone 2D7)を用いたイムノステイニング(Immunostaining)によって確認した。この抗体の場合、10μg/mlで顕著に高いステイニングを与え、FITC−標識の対照抗体(図23)でセル表面におけるCCR5プロテインの存在が確認された。より低い希釈比のとき、顕著なステイニングは観察されなかったけれども、共通して多くの直接標識抗体があり(多価検出の抗体結合のために増幅工程がない場合)、この抗体は約25μg/ml程度の濃度のときに使用が推奨される。機能面のデータとイムノフルオレセンスのデータの両方に基づいて、CCR5ラインが機能CCR5レセプターを発現していることは非常にあり得ることである。
CXCR1 及びCXCR2 特異抗体を使用してフローサイトメトリーを行ったところ、CXCR1 ラインはCXCR1 を発現したけれどもCXCR2 は発現しなかったこと、一方、CXCR2 ラインはCXCR2 を発現したけれども1は発現しなかったことが判った(図24)。CCR2のファンクショナルアッセイのため、RANTESを使用したフルScatchard 分析と同一の条件下で、ラジオ−ヨウ素化MCP-1 を使用して短縮Scatchard 分析を行った。ペアレンタルセルライン(最高親和力の結合部位のka>250nM)あるいはCCR-2 のオーバー発現ラインにおいて高親和力の結合部位は検出されなかった。機能MCP-1 結合部位を検出可能でなかったような条件下では、CCR-2 オーバー発現部位がプラスミドをそのまま維持しなかったことがうかがわれる。
本発明の標識ペプチドの結合
ペアレンタルHOS 、ペアレンタルCHO 及び8つのケモカインレセプターラインに対する標識ペプチド2及び標識ペプチド3の結合を比較した。それぞれの場合において、125I のラジオヨウ素化ストレプタビジンを使用してバイオチン標識ペプチドの結合体を検出した。それぞれの場合に、ストレプタビジンの添加量は、ケモカインレセプター部位の数よりも約50倍の過剰であることが計算された。さらに、(10μMで)添加された標識ペプチドの分子の数は、見積られた結合部位の数よりも105 倍の過剰であった。
したがって、これらの実験はすべて、結合部位の数が制限されるような条件の下で実施した。試験したセルラインのいずれに対しても標識ペプチド3の検出可能な結合は存在していないことが観察された(カウントされた結合の数は、ペプチドを添加しなかった場合に比較して顕著に多くはなかった)。しかし、ペプチド2は、ペアレンタルラインを含めたすべてのセルラインに対して、ほぼ同じ程度で結合していることが明らかであった(図25)。
ペプチド2のこの明らかな結合がセルに依存するか否か、あるいはプラスチック(あるいはセル培養中に使用された子ウシ胎児の血清の何らかの成分)に結合しているか否かを決定するため、次のような実験を行った。3種類のプレートを評価した:1つのものはHOS ペアレンタルセルを有し、もう1つのものはCCR5オーバー発現体を有し、そして第3のものは、セルを有しなかったが、FCS 含有の培地でインキュベートした。ペプチド2と、非常に少ない量のペプチド3が、セルを有していないウェルに結合した。数学的な分析から判ったところによると、セルを存在させた時に観察された結合はすべて、セルを有していないウェルに対してペプチドが結合できる能力として説明できる。また、ペプチド2の場合、ペプチド2の95%より多くがウェルに結合していることが、一方、ペプチド3の場合、そのペプチドの約5〜10%がウェルに結合していることが、これにより判った。
これらのペプチド物質が疎水性表面(例えばウェルのプラスチック)に結合するという性質はまた、実験用のプロトコールをある部位から他の部位に移した場合に(例えば、ペプチド物質を取り扱うために異なるプラスチックチューブを使用する場合に)認められるかなりの変動可能性としても説明することができる。
ペプチド3の場合、組み換えヒトケモカインレセプターのいずれに対してもそれが結合するという証拠は存在しなかった。発生した結合は非常に低い親和力(>>10μm)を有し、この相互作用がペプチド3に帰するケモカイン抑制活性に応答可能であるという可能性を排除するものであった。
結論
したがって、ペプチド3は、ケモカインレセプターの相互作用の研究に通常使用されている結合条件下あるいはいくつかのその他の結合条件下では、生体外において明らかな親和力をもってヒトのケモカインレセプターに結合しないということがわかる。1つの可能性をあげると、ペプチド3は、衝突的カップリングによって、あるいは非常に短いレジデンス時間を伴うメカニズムによって、ケモカインレセプターと相互反応できる。最も可能性のあるデータを判定すると、ペプチド3は機能性ケモカイン抑制体であり、直接レセプターきっ抗作用によるか、例えば、機能性レセプターリガンドの相互作用を防止することによるか、さもなければ、リガンドの機能に必要な第3の成分(レセプター又はリガンド以外)に結合させることによる。
したがって、ペプチド3は、既知のケモカインレセプターとは別のセル表面部位/レセプターに結合でき、セル外のマトリクス又はセル膜に組み合わさった成分(以下のものに制限されないが、グリコスアミノグリカン(GAG)、例えばプラズマ膜のGAG 成分、グリコチャリックス、プロテオグリカン、フィブリノーゲン、コンドロイチンサルフェート、ヘパリンサルフェート、ケラチンサルフェート、ヒアルロン酸、コラーゲン及びサルフェート化表面部分を含む)に結合でき、あるいは直接的又は間接的な手法でシグナル形質導入メカニズムに相互作用することができる。
別のレセプターあるいはセル外のマトリクスあるいはセル膜に組み合わさった成分に対するペプチド3の結合に関して、一旦結合が行われると、ペプチド3はケモカイン活性と相互作用するけれども、セルに結合しているリガンドを除去することもなければ障害することもない。THP-1 上におけるペプチド3の結合部位(レセプター)の数は、1000レセプター/セルであることが認められた(図28及び図29)。
このレセプターを精製するため、レセプターの架橋剤補助の精製のために合成の光活性化型誘導体を使用してもよく、さもなければ、リガンドブロッティングのアプローチを使用してもよい。リガンドブロッティングの場合、THP-1 セル(レセプターを有する)及びHOS(ヒトの骨肉しゅのセルライン)のセル(機能性レセプターを有しない)からのセル膜プロテインをゲル電気泳動法によって分離し、好ましくはプロテインの復元(例えば、一定の時間についてSDS の段階的低下を使用)後、バイオチン標識のペプチド3とインキュベートし、そしてストレプタビジンペルオキシダーゼで検出を行った。
別法により、あるいは上記に追加して、架橋性の親和性プローブ、例えばバイオチン-SLDPKQKWIQC-X (L−アミノ酸の前方リニアシーケンス)を合成する。Ser の目的は、分子内に1つのcyc 残基のみを除すためのものである。合成後、光活性化可能な架橋基をスルファヒドリル基を介して残存Cys13 残基、例えばAPDP(N−[4−(p−アジドサリチルアミノ)ブチル]−3’−(2’−ピリジルジチオ)プロピオンアミド)に結合させる。次いで、この誘導体をTHP-1 セルとインキュベートしてTHP-1 セル上のレセプターと結合させ、次いで、レセプターに対するAPDP基の共有架橋結合を誘導するUV光で反応物をフラッシュ露光する。
次いで、セルを破壊し、膜プロテインを抽出し、変性させる。プロテインミックスをストレプタビジンのカラムを通過させる。次いで、フルの変性(例えば、10Mの尿素を使用)によるかもしくはペプチドからAPDPのカプリングを外してレセプターをフリー化するであろう2−メルカプトエタノールを使用することによって、ペプチドとレセプターをストレプタビジンのカラムから分離する。次いで、精製したレセプターをN−ターミナルシーケンシング法によってかタンデム型のナノエレクトロスプレ方式を使用した質量分光法によって同定する。
ペプチド3がそのレセプターに結合した後、レスポンスを行うのに必要なプロテインをブロックしてもよく(例えば、ケモカイン誘起のマイグレーションに必要な特定のインテグリンをブロックしてもよく、但しSMLP又はTGFb誘起のマイグレーションではない)、ケモカインレセプターをダウンレギュレートしてもよく、あるいはシグナル形質導入メカニズムを干渉してもよい。シグナル形質導入メカニズムの干渉は、直接的又は間接的な方法(例えば、セル内カルシウムフラックス、cAMP、p13 、キナーゼ活性及びDAG を測定するアッセイを使用)で検出することができる。特に、カルシウムフラックスに関して、CRD-Leu4Ile13 ペプチド3(3-12)[MCP-1 ]は、MCP-1 誘起のカルシウムフラックスをブロックしなかったが、SDF-1 誘起のカルシウムフラックスをブロックした(図38)。
実施例12.虚血再潅流損傷のモデル
管内縫合糸(ILT)モデルは虚血再潅流損傷の象徴であり、それは虚血性病巣を与え、神経保護活性について候補化合物を試験するために製薬業界で広く使われている。雄Sprague Dawley飼育ラット(Charles Rivers, 約330g)を70/30% N2O/O2中2%ハロタンにより麻酔し、ILT アプローチを使って左中大脳動脈を90分間閉塞した(MCAo)。MCAoは内頚動脈中に3/0ナイロン縫合糸を置き、糸の先端がMCA の起点より約1mm向こうに置かれるように、その糸を大動脈分岐から約18mmほど前進させることにより達成される。必要な虚血期間の後、ナイロン縫合糸を外頚動脈の中に引き出し、通常の順行方向から損傷部分を再潅流させる。
手術期間の間を通して、直腸温度をモニタリングして熱ブランケットとフィードバック直腸温度プローブを使って37℃に維持し、そしてMCAoの前と直後に動脈血液ガスを測定した。虚血期間の間に、神経学的欠乏の評価を可能にするために再潅流前にラットを回復させた。神経学的欠損スコアを使って、閉塞の「質」を間接的に評価することができる。自発性右側円状歩行は良好な閉塞を表し、神経学的欠損が低い動物はその後の研究から除外した。
虚血の90分後、ラットを再び麻酔し、ILT を撤回した。データ収集者は試験化合物の正体に関して盲目であった。溶液AまたはB(それぞれ、PBS かまたはPBS 中 0.5mg/mlのCRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)[MCP-1 ])を2mg/mlの用量で正中静脈穿刺により投与した。大腿静脈カニューレを挿入し、皮膚下にトンネルさせ、頚の後ろから外に出した。これを利用して、一定静脈内注入(0.5mg/kg/hr)によりその後72時間に渡り化合物AまたはBを投与した。実験の3日間の時間枠は、このモデルを使ってラットに典型的に観察される最大炎症応答を包含する。
虚血性損傷は、従来型MRI (T2、分散およびプロトン密度列)により、MCAo後1日、2日および3日目に評価した。全てのMR操作について、麻酔を行い、酸素中1%(v/v)ハロタンにより維持した。直腸温度は37℃に維持した。MRIはSIS-200 画像診断分光計(Spectoroscopy Imaging Systems, Fremont, CA, USA)と直径75mmの家庭用8脚バードケージ高周波コイルを使って4.7Tで実施した。4×4cmの視界をカバーする 128×128 の取得行列を使って、目線の高さで始まり、吻から大脳を通って尾の方に進んでいく、25の連続冠スライスを取得した。各スライスは厚さ 0.9mmであった。
発作後72時間目の最終MR分析後、ラットを断頭し、脳を切除し、浸潤白血球の定量的免疫組織学分析の前まで−70℃で凍結保護溶媒中に新鮮保存した(図34)。CRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)[MCP-1 ]で処置した動物は、全ての時点において平均梗塞容積の50%減少(p<0.0001)を有した。
100 μmごとに脳を切片にし、好中球染色し、そして各損傷部分および対側性スライドに関して脳の4領域からの画像を収集した。損傷部分の陰影部において好中球蓄積の完全な抑制が観察された(定量的免疫蛍光測定により測定すると)(図47)。領域2と3は梗塞のコア部と重複しており、陰影部分により多くの好中球が観察された。これはおそらく、陰影部分が完全に潅流状態のままであるが、梗塞領域は血液供給が不足しているかまたは皆無であり、大部分壊死しているためであろう。領域1は大部分が陰影部分であり、最大の好中球数を有した。試験薬剤による阻害は陰影部分において統計的に有意(領域4でp<0.01、領域1でp<0.02)である。脳の対側性部位では有意な好中球蓄積も該薬剤の効果も観察されなかった。
例13. 3 H-CRD-L-Leu 4 Ile 11 Cys 13 ペプチド3(3-12)[MCP-1 ]及び標識なしのCRDペプチドのSDラット及びマウスにおける薬理速度論
オス(n=5、平均体重: 305g)及びメス(n=5、平均体重: 251g)のSDラットで頸静脈に手術用のカニューレを挿入したものをHilltop Laboratoriesから入手した。これらの動物を研究期間中Nalgene 代謝ケージで飼育し、エサと水を適宜与えた。
放射性同位元素標識のCRD-L-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)[MCP-1 ]ペプチド(分子量約1360, 2.0Ci mmol-1、注射用の滅菌水(SWI)中で)と標識なしのペプチドを調製した。合投与量に対するトリチウム含有ペプチド物質の影響を考慮に入れて、 100μgの全ペプチド及び 200μlのPBS 中の20μCiの3H-CRD-L-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)[MCP-1 ]の用量を調製した。それぞれのラットに約 200〜300 μlのペプチド溶液を含有する計量済みの注射器を使用して尾の側面の静脈にi.v.注射した。注射器を再び計量し、それぞれ別々の用量についての注射量を計算した。同じ溶液から、放射性同位元素標識のカウント用スタンダードを調製した。
注射後 0.17、0.5、1、2、4、6、20、28及び48時間に、頸静脈のカテーテルから一連の血液サンプル(約 300〜400 μL/タイムポイント)を取り出し、直ちに MICROTAINER(商標)血清分離チューブ(Becton Dickinson)に注入した。カテーテルを少量(20μL)のヘパリン溶液でフラッシュして凝固を防止し、そして、各サンプリングの際、血液容積分を 400μLの食塩水で置き換えた。血清チューブを遠心分離し、得られた血清(100μL)とセルペレット(計量済み)をModel 307 Packard サンプルオキシダイザーにより処理するためにサンプルコーン上に載置した。
残った血清にアリコートを加え、後日の分析のために凍結した。0〜4、4〜6、6〜10、10〜20、20〜28、28〜48、そして48〜72時間の時間間隔で尿をサンプリングした。別々に集めた尿のそれぞれ 100μLを酸化のためのサンプルコーン上に載置し、その残りをHPLC及びLC-MS による後日の分析のために凍結した。72時間のとき、ラットに麻酔をかけ、心臓に穿刺して採血し、頸部脱臼により安楽死させ、そして3H-CRD-L-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)[MCP-1 ]の生分布を調べるために解剖した。処理後のサンプルをPackard でカウントした。
血清薬物動態学
雄および雌の両方で、血清由来の放射能標識は急速に消失した。両性についての濃度対時間の線形プロットを図37Aに示す。注射から10分後の濃度は、雌で1238±138ng・ml-1(注射された量(i.d.)の12.45±1.39%に相当)であり、雄について1141±283ng・ml-1(14.38±3.46%i.d.に相当)であった。雌で絶対濃度値が小さかったようであるが、適用量が体重に合っていなかったことが、注射された量の百分率が示しているように、この違いの原因である。
注射から4時間後では、注射された量のわずかに約0.1%が血液中に存在していた。6時間後のデータを報告するが、これらの試料中に存在する放射能の量はバックグラウンドレベルの2倍を下回っていた。この低い放射能レベルは、構造に関連して特徴づけられるものではなく、動力学的モデリングの部分として考慮するに十分に強いものでもない。
血液中に存在する放射能の大部分は、血清分画中にある(合計数の12%未満は10分の時点で未洗浄の細胞ペレットにあった)が、この日は経時変化した(図38Bおよび38C)。細胞ペレットのデータは、4〜28時間の間で信頼性が低い(少ない数に帰因する)。48時間のデータは、細胞に関係する放射能の点で「リバウンド」を示唆するものであるが、極端に少ない量の材料を表している。この放射能が完全なペプチドの存在を反映しているのかどうかは分からない。
このデータは、両方の組の動物における2相クリアランスを示す。血清データに対して基本的な2コンパートメント・バイエクスポネンシャルモデル(two-compartment biexponential model)を使用して曲線フィッティング薬物動態分析を行った。実際の時間および濃度データをフィッティングプログラム(PK Analyst, MicroMath Scientific Software, Salt Lake City, UT)に入力し、モデル選択(例えば、静脈投与用塊薬、2コンパートメントディストリビューション)によりフィッティングした。計算濃度値を生じさせ、曲線をデータにフィットした。
このフィッティングから、以下の薬物動態学的パラメーターが生じた:
尿排出
雌のラットの尿のサンプリングは実験的操作エラーに支配された。5番のラットだけが、最初の4時間のうちに注射された適用量の>75%が除かれる雄のラットにおける排出と一貫するパターンを示した。雄のラット(14番のラットを除く全てのラットについて操作エラーを修正した。)の尿が最も一貫したデータをもたらした(図37D)。投与された量の大部分が、最初の4時間で尿中に排除された(86.6±16.5%i.d.)。
その後の実験によって、1.0または10.0mgの3H−CRD−L−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]を投与された雌のラットも、>80%i.d.排出した。この場合に、注射後、最初の2時間にわたって測定した。この高い尿排出速度は、血液由来の3H−CRD−L−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]の急速な排除、およびその後、解剖したラットで求められた低器官保持値と一貫する。
雄のラットから得られた尿を0.2μフィルターに通して濾過し(単位体積当たりの放射能量は減少せず)、そしてオンライン放射線検出を用いる勾配逆相HPLCにより分析した。ラット12および16から0〜4時間で、注射された調製物(標準として)の共溶出が観察された。放射能の単一ピークが両方の尿試料で確認された。このことは、完全な部分としての3H−CRD−L−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]の排出と一貫する。排出された分子の最も信頼のおける構造特性評価のため、雄のラットからの全ての尿試料をLC-MS-MSにより分析した。
電子スプレーイオン化(ESI)を使用するLCDイオントラップ質量分析器(Thermoquest Finnigan, San Jose, CA)を正イオンモードで操作した。加熱キャピラリーを200℃に設定し、電子スプレーニードルに4.25kVを印加した。シースガス流量を50ユニットに設定し、一方、補助ガスを止めた。500ミリ秒の最長イオン時間および1回の全マイクロスキャンでデータを得た。m/z 280〜1500のフルスキャンMSと、2.0amuの分離幅および28%の衝突エネルギーに設定されたm/z 680.1の2の電荷を有するイオンの断片化により生じるm/z 125〜1300のデータ依存フルスキャンMS/MSの2つの走査種目を使用して分析を行った。
HPLCグレードの溶剤(Baker Analyzed)をJ. T. Baker(Phillipsburg, NJ)から購入し、そしてギ酸(99%,ACS)をSigma(St. Louis, MO)から購入した。C18カートリッジ(Phonomenex, Torrence, CA)を含む“Safe Guard”安全カラムを備えたZorbax Eclipse XDB-C18 3.0×150mm, 3.5ミクロン(“Zorbax”, Hewlett-Packard, Palo Alto, CA)をカラム温度35℃および最高圧力400barで操作した。HP1100バイナリーシステム(Hewlett-Packard, Palo Alto, CA)は、0. 500ml/分の流量で、0.0分から0.8分までで水/0.1%ギ酸(A)中2%B(アセトニトリル)からある傾きを生じ、次に5分間で20%B(アセトニトリル)まで勾配を成した。
親油性混入物または代謝生成物を溶離させるために6.55分で0.800ml/分までの流量の増加と組み合わさって、有機内容物は、6分の時点でさらに増加して6.5分の時点で95%Bとなった。1.45分後、2%Bで0.800ml/分の流量でカラムを2分間再平衡化させた。HP1100自動試料採取器(Hewlett-Packard, Palo Alto, CA)を使用して各試料の10μlを注射した。これらの条件下、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]溶出物の保持時間は5.17分であった。
“Sterile Acrodisc 13 0.2μm”フィルター(German Sciences, 製品番号4454)により濾過されたラットの尿に様々なレベルの3H−CRD−L−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]を添加することにより標準的な被検体を調製した。以下のレベルの3H−CRD−L−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]標準をそれぞれ3回注射し、そして分析して標準曲線を作製した:0μg/ml(標準添加せず)、0.5μg/ml、1.0μg/ml、2.0μg/ml、3μg/ml、5μg/mlおよび10μg/ml。86.4%の未標識化合物および13.6%のトリチウム標識化合物を含む1回の適用量100μgの3H−CRD−L−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]を静脈注射した後、ラットの尿の試料を様々な時点で集めた。試料を、先に述べたように濾過した後、分析した。検出方法はたんに試料の未標識フラクションの分析を可能にするもので、全濃度は、測定した濃度に100/86.4を掛けることにより計算した。
最初の2〜3回目の採取(投与後20時間経過まで)で得た試料だけが、質量分析器の検出限界の範囲内で評価可能であった。幾つかの実験的矛盾(おそらくは方法エラーおよび低い試料濃度に帰因する、検定される量と計数データの変動)があったが、データから尿中の注入された放射能の>80%が、完全な環化した構造と整合する質量を有することが判った。これらの分析において、線状ペプチドを対照として検定した。線状の形態のものは、室温の尿中で急速に環化することが確認された。ラット血清での同様なインキュベーションからこれらの生体液中のペプチドの好ましいコンフォメーションが環化化合物であるらしいことを裏付ける、同様な結果が得られた。
血清中での環化する傾向を考慮すると、3H−CRD−L−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]が、尿中でその線状形態物への有意なin vivo還元を経て、そして酸化されて環化した形態のものに戻るということは起こりそうにないが、初期の時点(0〜6時間)全てにおける一連の血清分析から3H−CRD−L−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]の存在が確認されるまではこの可能性は排除できない。注射から10分後の血清のLC-MS-MS分析から、完全な3H−CRD−L−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]の存在が確認された。
標識ペプチドの要約
比較的小さい極性の高い分子についての薬物動態学的特徴は、3H−CRD−L−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]についての上記パラメータ値および構造と整合している。比較のため、抗生作用のあるアミカシン(比較的小さい(分子量約580)ポリカチオン性アミノグリコシド)は、同様な薬物動態学的特徴を示す(T12約2時間、尿排出98%、Vd=0.27L/kg)。この分配容量範囲内の分子は、細胞外液体に急速に分配されることがある。3H−CRD−L−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]は、腎臓排出を通じて急速かつほぼ定量的に取り除かれるようである。
静脈塊薬投与後の血清濃度は急速に減少し、2時間までには血液中に1%i.d.未満残留していた。同じ間隔にわたる血清/全血液における減少と蓄積的尿排出物における増加の間のバランスを考慮すると、3H−CRD−L−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]のかなりのフラクションが組織中でキレート形成されることを想像することは困難である。別の研究から得られた生体分布データは、この推測を実証しているようである。注射から3時間後に、検定した25の組織および器官で、たった約11%i.d.であった。
マウスでの研究を行い、雌BALB/cマウスは、10μgの3H−CRD−L−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]の皮下投与を受けた(図39〜40)。注射後30分で、平均血清濃度は503ng/gであり、この濃度は、同じ時点で雌ラットで記録された591ng/gと比較してより好ましい。これらのマウスについての30分の時点での生体分配データは、ラットについて得られた値と同様である。両方の種が同様な血液クリアランスおよび分配特性を示した。
未標識ペプチド材料および方法化学物質および試薬
HPLCグレードの水およびアセトニトリル(“Baker Analyzed”)をJ. T. Baker(Phillipsburg, NJ)から購入した。ギ酸(99%,ACS)、トリフルオロ酢酸(99+%,分光測定グレード)および12−エタンジチオール(90+%)をSigma(St. Louis, MO)から購入した。リン酸塩緩衝塩化ナトリウム溶液(Dulbecco’sリン酸塩緩衝塩化ナトリウム溶液、1×)をGibcoBRL(Grand Island, NY)から購入した。
質量分析にシースガスとして使用した窒素は、Byrne Specialty Gases(Seattle, WA)から購入した液体窒素シリンダー(純度99.998%)から抜き取った。注射用のヘパリンナトリウム、USP、1000単位/mlは、Provet(Seattle, WA)から購入した。検定標準の調製のための血清は、Hilltop Lab Animals(Scottdale, PA)から入手したSprague-Daeleyラット(平均体重265g)の血液から調製されたばかりのものであった。
ペプチド
CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]は、1357.7Da(モノアイソトピック)の分子量を有し、C末端でアミド化されており、純度>97%の三酢酸塩として製造(Multiple Peptides Systems, San Diego, CA)されたものであった。
CRD−L−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]は1357.7Da(モノアイソトピック)の分子量を有するもので、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]のジアステレオ異性体である。このジアステレオ異性体は、以下のようにしてD−ロイシンの変わりにL−ロイシンを挿入する固相ペプチド合成により合成したものであった:ペプチド合成は、FmocケミストリーとRinkアミド樹脂(PE Applied Biosystems, Foster City, CA)を使用してABI Applied Biosystems Peptide Synthesizer 430A(Foster City, CA)により行った。この合成の完了後、線状ペプチドをトリフルオロ酢酸/12−エタンジオチオール/水(95/2.5/2.5)により樹脂から切断した。
そのペプチドを、光ダイオード検出器(Rainin Instrument Company, Inc., Woburn, MA)を備えたDynamax HPLCを使用し、0.1%のトリフルオロ酢酸を含む水/アセトニトリルを適用して、調製用RP-HPLCにより精製した。単離された線状ペプチド(1359.7Da,モノアイソトピック)の正確な分子量を、Finnigan LCQイオントラップ(San Jose, CA)による非縮合化合物のESI/MS分析により確認した。線状ペプチドを、ペプチドの非常に稀釈された水溶液を、開放フラスコ内室温で、pH8.5で2日間攪拌することにより酸化的に環化させて頭−尾ジスルフィド結合を形成した。
分子内結合ペプチドを、先に述べたような調製用RP-HPLCにより精製した。得られたトリフルオロ酢酸塩を水に溶解させ、そして36倍モル過剰の予め洗浄されたAG 1-X2強陰イオン交換樹脂[分析グレード、200〜400メッシュ、アセテート形態(Bio-Rad Laboratories, Richmond, CA)]を充填したカラムに通して濾過した。溶出したペプチド三酢酸を集め、そして凍結乾燥した。ジアステレオマーの正しい分子量を、Finegan LCQイオントラップ(San Jose, CA)により非縮合化合物のESI/MS分析値によって確認した。先に述べたように光ダイオードアレイ検出器と結合したRP-HPLCと、非縮合化合物のESI/MS分析値により純度を評価した。
LC-MS分析
脱気装置、バイナリーポンプ、自動試料採取器およびカラムコンパートメント(Hewlett-Packard, Palo Alto, CA)を具備するHPシリーズ1100システムによりクロマトグラフ分離を行った。このクロマトグラフにZorbax Eclipse XDB-C18 3.0×150mm, 3.5ミクロンカラム(Hewlett-Packard, Palo Alto, CA)と、C18カートリッジ(Torrance, CA)を備えたPhenomenex“SafeGuard”安全カラムとを取り付け、そしてカラム温度35℃、最大圧力400barで操作した。500μl/分の流量を用いた。
CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]およびCRD−L−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]の分離のための移動相は、1%のギ酸(緩衝剤A)およびアセトニトリル(緩衝剤B)を含む水から構成されていた。加えた勾配は、0.5分間以内の17%Bへの2分間のすすぎで2%Bであり、次に無勾配的に7.5分間溶出させた。洗浄工程で95%Bを800μl/分の高流量で3分間添加し、次に2%Bで3分間の平衡化工程を行った。1つの試料につき10μlを注入した。CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]は8.3分間の保持時間で溶出し、CRD−L−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]は8.9分間の保持時間で溶出した。
分析カラムを、ESIを使用するThermoquest/Finnigan LCQイオントラップ(San Jose, CA)につないだ。質量分析器を正イオンモードで操作した。加熱キャピラリーを200℃に設定し、電子スプレーニードルに4.25kVを印加した。シースガス流量を55ユニットに設定し、一方、補助ガスを止めた。最長イオン時間500ミリ秒および全マイクロスキャン1回の自動化ゲインを使用するフルスキャンMSモード(m/z[335〜1400Da/z])でデータを得た。HPLC溶出物を分析の最初の6分間廃棄し、次に電子スプレー源に4分間送った。
検定用標準および試料の調製
CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]三酢酸塩およびCRD−L−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]三酢酸塩の2つの一次原液を水中11.3mg/mlの濃度で調製した。CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]三酢酸塩の使用溶液(working solution)を、その原液を水で10倍稀釈し、次に200倍に稀釈する一連の稀釈工程により調製した。さらに、CRD−L−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]三酢酸塩の1.13mg/mlの使用溶液を、その原液を水で稀釈することにより調製した。血清は、Microtainer血清分離管(Becton Dickinson and Co., Franklin Lakes, NJ)に未処理ラットの採取したばかりの血液を入れ、次に16,000gで10分間遠心分離にかけ、そして上層を採取することにより調製した。
標準曲線を生じさせるため、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]三酢酸塩使用溶液のうちの1つの2μlと、CRD−L−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]三酢酸塩使用溶液のうちの1つの2μlを、未処理ラットから調製されたばかりの血清96μlに加えることによって、13の検定用標準を調製した。処理されたラットにおけるCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]のレベルを求めるために、ペプチド注射後の一連の時間で採取された血液から血清を単離し、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]処理ラットからの各血清試料98μlに2μlの内部標準CRD−L−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]三酢酸塩使用溶液を加えた。
検定用標準およびラット血清試料の各々を400μlの氷温のアセトニトリルと混合し、そして16,000gで10分間遠心分離した。400μlの上澄みをEppendorf遠心分離管(Fisherブランドのポリプロピレン,Fisher Scientific, Pittsburgh, PA)に移し入れ、Savant Vac(Holbrook, NY)内で一晩減圧乾燥し、そして100μlのHPLCグレードの水に溶解させた。試料を16,000gで10分間回転させ、そしてその70μlを、LC-MS分析用の2mlのHPLCバイアル(Hewlett-Packard, Palo Alto, CA)内に置かれた100μlのガラスインサートに入れた。
検定用標準の最終濃度は、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]0.008μg/ml,0.04μg/ml, 0.08μg/ml,0.2μg/ml,0.4μg/ml,0.8μg/ml,2μg/ml,4μg/ml,8μg/ml,20μg/ml,40μg/ml,80μg/mlおよび200μg/mlであった。全ての試料は、16μg/mlの内部標準CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]を含んでいた。ブランク試料は、未処理ラットからの血清96μlに4μlの水を加え、次に液/液抽出し、そして先に述べたようにLC-MS分析のために再構成することにより調製した。
定量分析
LCQuanプログラム(Finnigan, San Jose, CA)を使用し、分離幅3uを使用してフルスキャン全イオンクロマトグラフィーから抽出されたCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]およびCRD−L−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]の3、2および1の電荷を有するイオン(m/z 453.6[M+3H]3+、m/z 680.0[M+2H]2+およびm/z 1358.7[M+H]+)のイオン電流の和をモニターすることによって、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]のレベルを求めた。
それぞれ16μg/mlのCRD−L−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]を含む、先に述べたように血清中に調製された13個の検定用標準を3回分析した。各標準で3つのデータ点を平均した後、CRD−L−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]に対するCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]の濃度比を対照として、被検体とCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]と内部標準CRD−L−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]のピーク面積比をプロットすることにより検定用曲線を作成した。
非重み付き線形回帰直線を、200ng/ml〜200μg/mlのCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]の濃度範囲をカバーするCRD−L−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]に対するCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]の濃度比にフィットさせた。シグナル対ノイズ比が3:1を超える最低濃度の検定用標準のレベルとして定量の下限(LLOQ)を求めた。この方法の正確さを、相対誤差(%)(RE)として計算し、そして精度を相対標準偏差(%)(RSD)として表した。
薬物動態分析
外科的に挿入された頸静脈を有する5匹の雌Sprague-Dawleyラット(平均体重265g)をHilltop Lab Animals(Scottdale, PA)から入手し、そしてthe Association for the Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Careにより承認された施設で飼育した。動物の使用を伴う全ての実験法は、the institutional Animal Care and Use Committeeにより承認されたものであり、動物はNalgene代謝ケージ(Nalgene Company, Rochester, NY)内で飼育し、アドリビタムに食餌および水を与えた。
60mgのCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]三酢酸塩を1.8mlのリン酸塩緩衝塩化ナトリウム溶液に溶解させ、そして300μlを各ラットの尾の側面部に注射した(8.8mg)。各ラットに注射したCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]の正確な量は、シリンジの注射前後の質量に基づいて計算した。
5匹のラットの各々から、処理前(採血前)ならびに注射後0.08時間、0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間、6時間、24時間、48時間および72時間で、頸静脈カテーテルを通じて各約300μlの血液試料を採取した。採取した血液を等容量のリン酸塩緩衝塩化ナトリウム溶液に置き換え、続いて抗凝固剤として約30μlのヘパリンを注射した。血液試料は即座に血清分離管に入れ、そして先に述べたように処理および分析した。0〜4時間、4〜6時間、6〜10時間、10〜28時間、28〜48時間、および48〜72時間の各間隔で尿を採取し、そしてAcrodiscフィルター(Sterile Acrodisc 13, 0.2μm,Gelman Sciences)に通して濾過した。
CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]の濃度を、先に述べたようにLC-MS分析により求めた(図示していないが尿試料のデータ)。次式:Conc(Time)=A・e-α・Time+B・e-β・Timeに従う薬物適用量入力と一次出力(モデル番号7)の基本的なバイエクスポネンシャル2コンパートメントモデルを使用するシミュレーションプログラム(PK Analyst, MicroMath Scientific Software, Salt Lake City, UT)を使用して曲線フィッティング薬物動態分析を行った。
結果LC-MS分析
CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1 ]及びCRD−L−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1 ]の検出のために質量スペクトルパラメーターを 500μl/min の流速において最適化し、そして作製したESI 陽性質量スペクトルはm/z 453.6([M+3H]3+)、m/z 680.0([M+2H]2+)及びm/z 1358.7([M+H])の3,2および1の電荷を有する分子イオンを示した。解析した濃度範囲で観察された最も豊富なイオンは[M+3H]3+又は[M+2H2+]イオンのいずれかであった。
ラット血清中のCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1 ]及びCRD−L−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1 ]の基底線分分離は逆相HPLC(RP-HPLC)により達成され、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1 ]が8.33(±0.04,n=108)分でまず溶出し、そしてCRD−L−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1 ]が8.94(±0.05,n=108)分で溶出した。血清中で調製したサンプル及びペプチド処置した動物の血清から単離したサンプルは全て2つの微量な物質を示した。それらの微量物質はCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1 ]及びCRD−L−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1 ]の前に溶出した。
一の微量物質はCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1 ]から形成され、他方はCRD−L−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1 ]から形成された。この反応を計算するため、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1 ]をその対応の微量物質及びCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1 ]のピークとして積分し、一方CRD−L−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1 ]はCRD−L−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1 ]の対応の微量物質及びCRD−L−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1 ]のピークとして積分した。干渉ピークはブランク血清サンプルでは検出されなかった。
定量分析
二重又は三重に荷電した種のシングルイオンモニタリング、あるいは二重又は三重に荷電した種から発生した生成イオンを検出する選択イオンモニタリングによる除タンパクしたラットの血清試料にスパイクされたCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1 ]の既知の量を定量する最初の試みは、20%超のRSD を有する高度に可変な結果をもたらした。同一の試料の一重、二重及び三重に荷電した種の合計のイオン電流を統合するためにSIM を利用する場合、再現性はRSD <15%と有意に向上した(データは示さない)。故に、ラット血清中のCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1 ]の濃度は、SIM モードのLC-MS によって定量した。
安定な同位体無しに、ジアステレオマーCRD−L−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1 ]は、内部標準として含めた。血清中の0.008、0.004、及び0.08μg/mlのCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1 ]を含む、解析した3つの最小のひとまとめの検量曲線の濃度は、検出が十分に可能ではなく、そしてLLOQは 0.2μg/ml未満として決定された(注射1回につき2ng)。検量範囲外で12%未満のRSD 、1日に±11%以内の正確性が精度のREであった。
CRD−L−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1 ]に対するCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1 ]の濃度比に対してプロットした脱タンパクしたラットの血清中のCRD−L−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1 ]に対するCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1 ]の濃度比の応答は、 200mg/ml〜 200μg/mlのCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1 ]の範囲で直線だった(r2=0.9996、傾き0.8488±0.005843)。曲線のYのインターセプト0.02653±0.02416は、有意でない妨害する不純物の量を示した。
ジアステレオマーが同一のプロトン化部位の存在する場合、theiのイオン化効率は同じであることが予想された。しかし、血清の検量曲線の傾きは、感度の差異を示す0.8488(±0.005843)として計算され、これはCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1 ]とCRD−L−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1 ]との間の電荷の競合における差異の結果であろう。
薬物動態分析
CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]を8.8mgの投与量でi.v.ボーラス投与で一回処置した5匹のラットの血清プロフィールを作成するために、本方法を適用した。注射後15分のラット5#から採集した一試料(この試料は17.7%のRSDを示した)以外は、すべてのラット試料の分析では、RSDが10%未満であり、良好な精度を示した。得られた5つの動物血清濃度曲線は、排出完了に近い後のサンプリング時点でSTDEV%を増加するにつれ、互いに近似した平行線となった。血清濃度は4時間以内にLLOQ以下に低下し、CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]は極めて迅速な排泄動態を示し、血清の平均半減期が略10分であることを示唆した。
血清薬物動態を評価するために、血清データセットすべての平均を、曲線適合薬物動態シミュレーション・プログラム(PK分析)により処理した。ボーラスi.v.インプットと一次アウトプットを有する基本的な二指数曲線2コンパートメントモデルを用いると、得られたデータと予測データはよく一致した(r2=0.9999)。前記の定量法を用いて、注射後いくつかの時点で採集した試料中の、尿レベルのCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]を測定して、蓄積尿排泄プロフィールを得た。全体で投与量の約70%が24時間で回収され、55%より多くが最初の2時間で排泄された。この高速度の尿排泄は、血管区間からのCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]の迅速排泄と一致し、かつイオン性の高極性小分子の薬学動態プロフィールと一致する。
検討
生物学的分子、例えば、ペプチド及びプロテインのESIポジティブ質量スペクトルは、プロトン化にアクセスできる多くの塩基性部位の存在のために、多重荷電種の特徴的なパターンを通常示す。一連の異なる荷電状態にあるイオンの強度比率は、かなり変動することがあるので、単一イオン又は選択的反応モニタリングを用いるLC-MSによる多重荷電化合物の定量を困難なものにする。すべての検出された荷電状態の合計イオン流から得られる曲線下の全領域を得るためにSIMを用いると、定量データの再現性を顕著に改良することができる。Carrascal等、J.Pharm.Bio.Ana.,17,1129(1998);Clarke等、FEBS Lett.,430,419(1998)。
粗い分析法に沿って高精度の定量測定を行うには、適切な内部基準を取入れることが更に必要である。質量スペクトル分析のための理想的な内部基準は、分析対象物とは分析上識別可能であるが、尚試料調製の際の分析対象物の減少量、マトリックス効果及び質量分析計に流れるイオン流を補正するように、略同等の物理的及び化学的性質を示すものである。これらの基準に極めてよく合致する一群の化合物は、安定な同位体類縁物である。
しかしながら、安定な同位体類縁物は合成が困難であることが多く、高価であり、かつ分析を妨害する同位体不純物を含有することが多い。安定な同位体が容易に入手できない場合は、分子量並びに物理的及び化学的性質が異なる構造上関連する分子が、内部基準として用いられることが多い。例えば、LC-ESI/MSによるペプチドの定量分析のためには、ペプチド同位形が内部基準として用いられてきた(Carrascal等、1998)。しかしながら、この場合、試料処理後に変動しうる回収量、並びに計器上の不一致を補償するためには二つの内部基準を取入れること必要であった。
安定な同位体類縁物と同様、アトロプ異性体及びジアステレオマーを含むある種の立体異性体は、類似の物理的及び化学的性質を有するにもかかわらず、分析上識別可能である(3月号、Advanced Organic Chemistry,Reactions,Mechanisms,and Structure,94〜116頁、John Wiley & Sons,Inc.,NY(1992)ので、内部基準として良い適格性を有する。ESI/MS定量データの再現性をさらに向上させるためには、SIMを適用して、すべての検出された荷電状態の合計イオン流から得られる曲線下の全領域を得ることができる。
ペプチドジアステレオマーであるCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]及びCRD−L−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]は、同一のアミノ酸組成、配列及び疎水性を有するので、試料調製の際、同様に分配し且つ反応することが期待される。RP−HPLCでは、3個の対数目盛りにわたる濃度範囲で基線分離が得られるが、前記ジアステレオマーは、同等のESI質量スペクトルを示すので同一の質量スペクトル分析法を用いて分析することができる。その結果、得られる検量曲線は、広範な動態範囲にわたって良好な厳密性及び精度を示した。処置ラットから採集した血清試料中のCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]の定量分析にこの方法を適用すると、良好な再現性を示し、予想される血清の薬学動態はイオン性高極性小分子の薬学動態と一致した。
結論として、容易に合成されるジアステレオマーであるCRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]は、内部標準として安定な同位体類縁物の好適な代替物であることが証明された。更に安定な同位体類縁物で導入される共溶出化合物又は同位体不純物の部分重複に起因する妨害の問題も引き起こさなかった。したがって、生物学的液体中の多重荷電ペプチドについての、手軽で信頼しうる定量が、内部基準としてのジアステレオマーを取入れたSIM法でLC-MSを用いて達成された。
実施例14.T細胞−依存性抗体応答の阻害
CRD−Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3−12)[MCP-1]で処理すると、T細胞−依存性抗体応答が阻害されるが、ヒツジ赤血球で免疫化されたマウスではT細胞−非依存性抗体応答を阻害しなかった(図36)。
実施例15.ペプチド3配列の例示
本発明の好ましいペプチド3剤としては、D−アミノ酸で形成される逆配列、例えば、aqiwkqkpdlc, cqiwkqkpdlc, dqiwkqkpalc, eqiwkqkpdlc, fqiwkqkpdlc, gqiwkqkpdlc, hqiwkqkpdlc, iqiwkqkpdlc, kqiwkqkpdlc, lqiwkqkpdlc, mqiwkqkpdlc, nqiwkqkpdlc, pqiwkqkpdlc, qqiwkqkpdlc, rqiwkqkpdlc, sqiwkqkpdlc, tqiwkqkpdlc, vqiwkqkpdlc, wqiwkqkpdlc, yqiwkqkpdlc並びに太字位置の各々にL−アミノ酸を有する剤、例えば、Cqiwkqkpdlcが挙げられる。前記の逆配列が環状化されているものも好ましい。
本発明の他の好ましいペプチド3剤としては、以下に限定されないが、ペプチド3(3−12)[MCP-1]の第二位に19個のアミノ酸の一つを有するもの、例えば、caiwkqkpdlc、cciwkqkpdlc、cdiwkqkpdlc及びcyiwkqkpdlc、並びにペプチド3(3−12)[MCP-1]の第二位にL−アミノ酸を有するもの、例えば、cQiwkqkpdlcが挙げられる。本発明の他の好ましいペプチド3剤は、ペプチド3(3−12)[MCP-1]の前記位置の各々に19個のアミノ酸の一つを有するもの、並びにそれらの位置にL−アミノ酸を有するもの、例えば、cqawkqkpdlc, cqywkqkpdlc, cqIwkqkpdlc cqiwkqkpdlc, cqiwkqkpdld, cqiwkqkpdly及びandcqiwkqkpdlCである。一連のペプチド3バリアント全体を、それらのケモカイン阻害活性について試験し、活性を有するものについてはそれらの効力(ED50)について試験した。
例16.ヘパリンをコートしたアガロースビーズへのMCP-1結合の阻害
ケモカインは細胞表面上のグリコスアミノグリカンに結合し、これはケモカイン受容体結合及びその後のシグナリングを促進する。CDR-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)[MCP-1]、パンケモカインインヒビターが競争的に125I-MCP-1のヘパリンをコートしたアガロースビーズへの結合を阻害するか否かを調べるため、Hoogerwerfらにより記載された方法(Biochemistry, 36, 13570 (1997))を用いた。約10-10〜10-7MのMCP-1の濃度を高めることにより、結合した125I-MCP-1が増加し、MCP-1マルチマー形成と一致した。
これは約10-7〜10-5MのMCP-1の濃度における単相置換曲線に従った。対照的に、CRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)[MCP-1]は10-11〜10-4Mの濃度においてヘパリンをコートしたアガロースビーズからMCP-1を置換せず、10-3Mほどの濃度のCRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)[MCP-1]はMCP-1と同じ程度にヘパリンへのMCP-1結合を阻害しなかった。このことは、CRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)[MCP-1]は生理学的に意味のある濃度においてヘパリン結合の競争抑制によりケモカインインヒビターとして機能しないことを示唆している(図42)。
例17.3-(ウンデカ-10-エノイルアミノ)-ジヒドロピリジン-2,6(1H,2H)-ジオン(R 1 が9-デセニルであり、R 2 が水素であり、R 3 及びR 4 がそれらが結合している原子と一緒になって5つの炭素原子及びN(H)を含む6員複素環を形成し、R 5 が水素であり、*で示す中心が(S)形態を有する式XVの化合物)の合成
L-グルタミン(14.62g、0.1mol)及びKOH(11.2g、0.2mol)を20℃において水(200mL)に溶解した。次いでTHF(200mL)中の10-ウンデセノイルクロリド(20.3g、0.1mol)の溶液を10分かけて加えた。この反応溶液を20℃において16時間攪拌し、次いで真空中で約250mLにした。
この溶液のpHが1になるまで濃HCl(約12M)を滴加した。濾過によって白色の固体沈殿を集めた。この固体を水(100mL)及びジエチルエーテル(100mL)で洗浄した。次いでこの固体を還流トルエン(500mL)に溶解し、存在する過剰の水をDean-Starkトラップを用いて周囲圧力において蒸留によって除去した。次いでこの溶液を20℃まで冷却した。16時間後、白色固体沈殿を濾過によって集め、EtOAc(500mL)から再結晶化させた。この固体を真空中で乾燥させ、白色粉末としてN-α-ウンデカ-10-エノイルグルタミン酸(9.36g、30%)を得た。
N-α-ウンデカ-10-エノイルグルタミン酸(8.00g、25.6mmol)をTHF(200mL)とDMF(20mL)の混合物に溶解し、この溶液を0℃に冷却した。N-ヒドロキシスクシンイミド(2.94g、25.6mmol)を加え、次いでDCC(5.26g、25.6mmol)を加えた。この反応溶液を0℃において1時間攪拌し、次いで25℃まで温め、この温度において24時間攪拌した。これを濾過し、濾液をEtOAc(400mL)と0.5MのHCl(aq)(300mL)の間で分配した。有機層を0.5MのHCl(aq)(300mL)で2回以上洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、真空中で蒸発させ、白色固体を得、これをクロマトグラフ(SiO2/EtOAc)にかけ、白色粉末を得た。この物質をEtOAcから再結晶化させ、白色結晶固体(3.14g、42%)を得た。
例18.3-(ウンデカ-10-エノイルアミノ)-ジヒドロキシピリジン-2,6(1H,2H)-ジオンの他の合成法
(S)-3-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)グルタルイミド(R1がtert-ブトキシであり、R2が水素であり、R3及びR4がそれらが結合している原子と一緒になって5つの炭素原子及びN(H)を含む6員複素環を形成し、R5が水素であり、*で示す中心が(S)形態を有する式XVの化合物、228mg、1mmol)をCH2Cl2(2mL)に溶解し、この溶液を0℃に冷却した。トリフルオロ酢酸(1mL)を滴加し、この反応溶液を1時間攪拌した。この反応溶液を真空中で蒸発させ、粘稠なオイルとして粗(S)-グルタルイミジル-3-アンモニウムトリフルオロアセテートを得た。
この物質をDMF(1.5mL)及び(i-Pr)2Net(1.5mL)に溶解させ、得られた溶液を25℃においてDMF中のBOP(442mg、1mmol)及び10-ウンデセン酸(1mmol)の溶液に加えた。この反応溶液を24時間攪拌し、次いでEtOAc(30mL)と0.5MのHCl(aq)(20mL)の間で分配した。有機層を0.5MのHCl(aq)(20mL)で2回以上洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、真空中で蒸発させ、白色固体を得、これをクロマトグラフ(SiO2/EtOAc)にかけ、表題の化合物を得た。
例19.ヨヒンバミド(Y−II、R 1 がアミノであり、R 2 がヒドロキシであり、R 3 が水素であり、R 4 が水素であり、そしてnが0である式XIVの化合物)の合成
ヨヒンビン(2g)を新たに調製したソーダミド(還流下で約100mLのアンモニアに3.6gのナトリウム金属を加えることにより調製)に加えた。この混合物を5〜6時間攪拌し、次いで冷却器を取り外し、液体アンモニアを蒸発させた。残留物質を温水と酢酸エチルの混合物(約1:1)に溶解した。振盪後、溶媒を分離させ、ロータリーエバポレータを用いて酢酸エチルを除去した。得られたオレンジ色の粉末を真空中で乾燥させ、表題のヨヒンバン-17-アミド(Y-II、1.8g、90%)を得た。その構造はNMRで確認した。
例20.リゼルジルグルタミン(R 1 がメチルであり、R 2 がアミン窒素原子を介して結合し、アミドを形成するグルタミンである式XVIIの化合物)の合成
リゼルグ酸(2g)を乾燥DMFに溶解し、1.8gのPyBOPの添加によって活性化した。この反応溶液を室温において1時間攪拌し、1.4gのFmoc-L-グルタミンを加えた。16時間後、この反応混合物を濾過し、濾液を酢酸エチル(400mL)と0.5Mの水酸化ナトリウム(200mL)の間で分配した。有機層をアルカリで2回以上洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させて白色固体を得た。これを酢酸エチルから再結晶化させ、白色結晶固体としてリゼルジルグルタミン(L-II、1.1g、55%)を得た。
化合物L-IIはバリウム(Valium)と同様の溶解性を有することが見出された。従って、L-IIはバリウムの配合に有効であることが知られているキャリヤと組み合わせて投与用に配合することができる。例えば、L-IIは適当なポリヒドロキシキャリヤ(例えばポリプロピレングリコール)を含む医薬組成物で投与することができる。化合物L-IIはポリヒドロキシキャリヤ及び適当なアルコールを含む医薬組成物(例えば約10%〜50%ポリプロピレングリコール及び約5%〜15%エタノール、好ましくは約40%ポリプロピレングリコール及び10%エタノールを含む組成物)で投与することができる。
例21.ペプチド同族体のインビトロ及びインビボ評価
WGQは約1.75μMのED50でMCP-1により誘導されるTHP-1移動を阻害する(図43)。WGQの14の同族体が合成され、トランスウェルTHP-1移動アッセイにおいて評価した(図43)。構造的に関連する化合物であるサリドマイドについても評価した。すべての化合物はDMSO中で再構成した。
図43は、100μMにおけるこれらの化合物の効果及びMCP-1により誘導されるTHP-1移動の阻害率を示している。例えば、N-ウンデセ-10-エノイル類はMCP-1により誘導されるTHP-1移動をコントロールレベルまで阻害し、一方ベンゾイル類は100μMにおいて不活性であった(40%未満阻害)。興味深いことに、サリドマイドは100μMにおいてMCP-1により誘導されるTHP-1移動を阻害した。
50%以上THP-1移動を阻害した化合物について、ED50を測定した(図45)。1つの化合物N-ウンデセ-10-エノイルアミノテトラヒドロピリジンジオン(NR58,4又はA)はWGQよりも10倍以上(1〜100μM)THP-1移動を阻害した。50%以上THP-1移動を阻害する他の化合物のほとんどは約10〜20μMのED50を有していたが、バンジルグルタミド同族体は約40μMのED50を有していた(図45)。サリドマイドは約50μMのED50を有していた。
NR58,5及びサリドマイドがネズミの致死以下内毒素モデルにおいて炎症を抑制することを調べるため、36匹のメズのCD-1マウスを6つの群に分けた(第12表)。各動物には首の後ろのうなじに皮下投与により前処理(200μl)を行った。すべての前処理剤は動物1匹あたり1mg投与した(約40〜50mg/kg)。30〜45分後、群2〜6の動物に、腹膜内投与により300μlのPBS中の750μgの細菌リポ多糖(LPS)を投与した。群1の動物にはPBSのみを投与した。
3時間後(LPS後2時間)、すべての動物を麻酔し、心臓穿刺により殺した。約1mlの血液を採取し、血清を調製した。血液は室温において約2時間凝固させ、次いでこの血塊を広げ、血清を分け、テストを行うまで−20℃で保存した。各動物からの血清を、Quantikine Mキット(R & D system)を用いてTNF−αについて2回アッセイを行い、標準曲線の内挿により検量した。
問題とならない動物(<10pg/ml)ではほとんどTNF−αは存在しなかったが、LPS(約1500pg/ml)に対する応答は大きかった(図46及び第12表)。このLPS刺激の投与量依存阻害はCRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)[MCP-1]により観察された。予想通り、負対照化合物(不活性D-ala誘導体)では効果がなかった。CRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)[MCP-1]についての投与量応答は動物あたり約100μgの半最大量であった。動物あたり1mgにおけるNR58,4のカリウム塩はTNF−αを60%以上低下させた。しかし、NR58,4はCRDにまたはそれ以上にTNF−α放出を抑制し、これはインビトロにおいてケモカインインヒビターとして同じ能力を有するNR58,4がインビトロにおいて同様の抗炎症性をも有することを示唆している。
このマウスはこの医薬による治療の間に急性毒性を示さなかったが、NR58,4の投与部位に炎症がみられ、これは投与した溶液(カリウム塩を用いた)の比較的高いpHによるものであろう。
このように、NR58,4は少なくともCRD--Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)[MCP-1]と同程度に抗炎症剤として有効である(これは<100μMかつ≦10nMにおいて活性である)。さらに、NR58,4は、親油性分子として、インビボでかなり長い滞留時間を有しているであろう。興味深いことに、サリドマイドもインビボにおいてTNF−αレベルの低下において有効であるが、ケモカイン阻害によりその効果がやわらげられるかどうかは疑問である。それは、サリドマイドはNR58,4と比較してケモカインインヒビターとしての能力が4桁以上低いからである。
多くの物質についてのED
50(走化性アッセイにおけるMCP-1により誘導される移動を50%抑制するに必要な濃度)を
第13表に示す。
テストを行った各物質について、100pM〜100μMのテスト濃度(図51)及びMCP-1、RANTES又はMIP-1αにおいて「広範囲」アッセイを行った。SDF-1α及びIL-8についても同様のデータを集めた(表14を参照されたい)。この「広範囲」アッセイにおいて使用範囲を概算したならば、「狭い範囲」アッセイを概算したED50のいずれかのサイドで行う(図51)。これは3回繰り返し、正確なED50の値を得る。
例22.本発明の物質の結合特異性の特性決定材料及び方法
α2−アドレノレセプター結合について、膜(A-213、RBI/Sigma)を結合緩衝液 (75mMトリスpH7.4、12.5mM MgCl2及び2mM EDTA)に希釈した。例えば、10μlの膜を500μlの結合緩衝液に希釈し(すなわち1:50希釈)、これをチューブに入れた。冷競争剤又はテスト競争剤、例えば5μlの1mMオキシメタゾリン(O-110、RBI/Sigma、MilliQ水中の1mMストック)を加える。次いで放射性配位子(3H-RS-79948-197、TRK 1036、Amersham、250μl中50μCi、95Ci/mmolにおいて2.1μM)を加えた。
競争について調べるため、1nMを用いる。市販ストックを結合緩衝液に1:20で希釈することにより100×ストック(すなわち100nM)を調製し、各チューブに5μl加える。対照チューブは放射性配位子を有するが、膜は有しない。この混合物を攪拌し、簡単に回転させる。次いでこの混合物を水槽中で27℃において1時間インキュベートする。この混合物を真空中でGF/Cフィルターに通して濾過する。各フィルターはポリエチレンイミン(水中0.3%、33mlのMilliQ水に10%ストック(P-261、RBI/Sigma)を1ml加える)をあらかじめ吸収させておく。このチューブを2〜3mlの洗浄緩衝液(50mMTris pH7.4)で洗浄し、濾過する。次いでフィルターを3×5mlの洗浄緩衝液で洗浄し、風乾し、シンチレーションバイアルに入れ、4.5mlのシンチラントを加える。次いでフィルター上の活性を測定する。
5HT1aセロトニンレセプターについて、膜(S-160、RBI/Sigma)を結合緩衝液(50mMトリスpH7.4、10mM MgCl2及び0.5mM EDTA、使用直前に1mg/mlでアスコルベートを加える)に希釈した。例えば、10μlの膜を500μlの結合緩衝液に希釈する(すなわち1:50希釈)。冷競争剤又はテスト競争剤、例えば5μlの1mMオキシメタゾリンのような100×ストック溶液5μlを加える。次いで放射性配位子(3H-8-OH-DPAT、TRK 850、Amersham、250μl中250μCi、222Ci/mmolにおいて4.4μM)を加えた。競争について調べるため、配位子を用いる(例えば、市販ストックを結合緩衝液に1:30で希釈することにより100×ストック(すなわち150nM)を調製する)。
放射性配位子を有するが、膜は有しない対照チューブを準備する。このチューブを攪拌し、簡単に回転させる。この混合物を4℃において1時間インキュベートする。この混合物を真空中でポリエチレンイミン(Milliq水中0. 3%)をあらかじめ吸収させておいたにGF/Cフィルターに通して濾過する。このチューブを2〜3mlの洗浄緩衝液で洗浄し、濾過する。次いでフィルターを3×5mlの洗浄緩衝液で洗浄し、風乾する。シンチレーションバイアル中の乾燥させたフィルターに4.5mlのシンチラントを加え、トリチウムチャンネルにてフィルターをカウントする。
ドーパミンレセプター結合について、膜(D-179、RBI/Sigma)を結合緩衝液(75mMトリスpH7.4、12.5mM MgCl2及び2mM EDTA)に希釈する。例えば、10μlの膜を500μlの結合緩衝液に希釈し(すなわち1:50希釈)、これをチューブに入れる。冷競争剤又はテスト競争剤、例えば5μlの100×ストック溶液、5μlのハロペリドール溶液(H-100、RBI/Sigma、DMSO中)を加える。次いで放射性配位子(3H-Spiperone、TRK 818、Amersham、250μl中250μCi、95Ci/mmolにおいて10.5μM)を加える。競争について調べるため、0.5nMを用いる。市販ストックを結合緩衝液に1:210で希釈することにより100×ストック(すなわち50nM)を調製し、各チューブに5μl加える。
対照チューブは放射性配位子を有するが、膜は有しない。この混合物を攪拌し、簡単に回転させる。次いでこの混合物を水槽中で27℃において1時間インキュベートする。この混合物を真空中でGF/Cフィルターに通して濾過する。各フィルターはポリエチレンイミン(水中0.3%、33mlのMilliQ水に10%ストック(P-261、RBI/Sigma)を1ml加える)をあらかじめ吸収させておく。このチューブを2〜3mlの洗浄緩衝液(50mMTris pH7.4)で洗浄し、濾過する。次いでフィルターを3×5mlの洗浄緩衝液で洗浄し、風乾し、シンチレーションバイアルに入れ、4.5mlのシンチラントを加える。次いでフィルター上の活性を測定する。
オピオイドレセプター結合について、膜(O-116、RBI/Sigma)を結合緩衝液(75mMトリスpH7.4、12.5mM MgCl2及び2mM EDTA)に希釈する。例えば、10μlの膜を500μlの結合緩衝液に希釈し(すなわち1:50希釈)、これをチューブに入れる。冷競争剤又はテスト競争剤、例えば5μlの100×ストック溶液、5μlの100μMナルトリンドール溶液(N-115、RBI/Sigma、DMSO中)を加える。次いで放射性配位子(3H-Diprenorphine、TRK 1060、Amersham、250μl中250μCi、95Ci/mmolにおいて10.5μM)を加える。競争について調べるため、0.5nMを用いる。市販ストックを結合緩衝液に1:210で希釈することにより100×ストック(すなわち50nM)を調製し、各チューブに5μl加える。
対照チューブは放射性配位子を有するが、膜は有しない。この混合物を攪拌し、簡単に回転させる。次いでこの混合物を水槽中で27℃において1時間インキュベートする。この混合物を真空中でGF/Cフィルターに通して濾過する。各フィルターはポリエチレンイミン(水中0.3%、33mlのMilliQ水に10%ストック(P-261、RBI/Sigma)を1ml加える)をあらかじめ吸収させておく。このチューブを2〜3mlの洗浄緩衝液(50mMTris pH7.4)で洗浄し、濾過する。次いでフィルターを3×5mlの洗浄緩衝液で洗浄し、風乾し、シンチレーションバイアルに入れ、4.5mlのシンチラントを加える。次いでフィルター上の活性を測定する。
結果
競争結合アッセイを用いてケモカインレセプターへのA-Iの結合を調べた。これらの実験は「Horuk」条件(Hesselgesserら、J. Biol. Chem., 273, 15687 (1998))にて行った。但し、CCR-2又はCXCR-2発現CHO細胞(AIDS Reagent Program, MRC London)を用いた。各ケースにおいて、0.25nMのラベルした配位子の細胞への特異的結合を、100nM冷配位子により競争された結合したカウントとして調べた。各実験において、A-IはDMSO中のストック溶液から加えた(アッセイ中のDMSO最終濃度<0.1%)。
2つの典型的実験を図53に示す。ここでA-Iは、表14に示すED50と同様のk1条件でCCR-2へのMCP-1結合及びCXCR-2へのIL-8結合を阻害する。インキュベーション緩衝液としてPBSを用いて同様のデータが得られた。
関連するG蛋白結合7TMレセプター、例えばα2アドレノレセプター、5-HT-1αセロトニンレセプター、D2sドーパミンレセプター、及びδ-オピオイドレセプターに対するある種の物質の特異性を第15表に示す。すべてのケースにおいて、100μMがテストした最も高い濃度であった。>100μMを示す場合、いずれの濃度(100μMを含む)においても十分な効果は観察されなかった。
このように、CRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)[MCP-1]、A-I、ヨヒンバミド(Y-II)、L-II及びWVQは他のレセプターよりもケモカインに対する特異性が高い。対照的に、ヨヒンビン及びタリドマイドはケモカインインヒビターであるが、テストした他のG蛋白結合レセプターに対して高い活性を有している。例えば、ヨヒンビンはケモカインよりもアドレノレセプターに対して選択的であり、タリドマイドはケモカインよりもドーパミンレセプターに対して選択的である。A-Iは最も選択的である(セロトニンレセプター結合よりもMCP-1(Y-II)に対して約40,000倍選択的)。MCP-1(Y-II)に対するほとんどの蛋白剤は選択性が低く、αアドレノレセプター結合のケモカイン阻害についてわずかに1500倍の選択性を示す。
例23.グルコース抱合体の血漿ハーフライフ
本発明の物質の糖抱合体が高い血漿ハーフライフを有するか否か調べるため、CRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)[MCP-1]のグルコース抱合体を調製し、ラットに投与した。この抱合体はD-グルコース(50mM)とCRD-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)[MCP-1](1mM)をリン酸緩衝生理食塩水中で混合し、室温において16時間インキュベートすることにより合成した。次いでこの反応混合物を分析用HLPCにかけ、約30%の収率を示した。次いでこの物質をシアノボロヒドリドで処理し、シッフ塩基結合を減少させ、精製のためにグルコシドを安定化した。次いで安定化されたグルコシドを調製HPLCにかけ、一置換及び二置換グリコシドを別々に調製した。このモノグルコシドは>90%の純度で約10%の収率で得た。これはLys5-グルコシドとLys-7グルコシドの混合物である。
CDR-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)[MCP-1]モノグルコシドを3匹のラットに投与した(滅菌したPBS中、皮下にラットあたり5mg)。様々な時間においてi.v.カニューラから血液サンプルを採取し、血清中のCDR-Leu4Ile11Cys13ペプチド3 (3-12)[MCP-1]グルコシドを定量した。データについてワンコンパートメントフィットを用いて、CDR-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)[MCP-1]モノグルコシドについてのT1/2αは約7時間であることが測定され、これは未改質環式ペプチド(T1/2α=15分)に比較して25倍以上の増加を示した。
例24.アゴニスト活性
CDR-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)[MCP-1]のアゴニスト活性を評価するため、CDR-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)[MCP-1]を様々な濃度で移動チャンバーの下のコンパートメントに入れ、50,000THP-1細胞を上のコンパートメントに入れた。4時間後の下のコンパートメント中の細胞の数をバイタル染料MTTを用いて測定した。ケモカイン誘導移動に対する阻害効果がみられる濃度範囲(>1μM)においてはアゴニスト活性は検出されなかった。高い濃度(1μM及び10μM)において、この実験で移動の小さな刺激がみられたが、この移動応答の大きさは3. 25ng/mg再構成MCP-1にみられるよりも低かった。CDR-Leu4Ile11Cys13ペプチド3(3-12)[MCP-1]はインビボ濃度において十分なアゴニスト活性を有している。
ケモタキスチャンバーの底におけるMIP-1αの濃度はプレートの上チャンバー(細胞を有する)の半最大活性投与量の存在又は非存在で変化する。上記観察と一致し、インヒビターの非存在下においてMIP-1の濃度の増加によりまず移動を刺激し(約5ng/ml間での濃度において)、その後MIP-1αの増加が移動を低下させる。100ng/mlのMIP-1αにおいて、移動の刺激はない(図49)。この2相(又はベル形の曲線)は、ケモカインと同様の純粋なケモタクチック(ケモキネチックではない)であるプロ移動剤によりみられる。
このウェルの底におけるより高い濃度において、拡散は膜を通過する勾配を破壊し、標的細胞の周囲のレセプターはケモカインにより完全に占められる。勾配が存在しないと、ケモタクチック剤は移動を刺激しない。MIP1αに対する投与量応答をインヒビターの最大以下の投与量の存在下で行うと、同様の2相(又はベル形曲線)がみられる。しかし、この投与量応答曲線は高い濃度に著しくシフトする(このアッセイは予想されるシフトの程度を正確に示していないが、5〜100倍の範囲内にある)。この実験はMIP1α誘導ケモタキスに対して作用するインヒビターの作用の競争モードについての証拠となる。この実験は3つの繰り返し実験の典型であり、MCP-1を用いて行った。
例25.本発明の剤の結合アフィニティ
特定のアフィニティーでDARCおよび/又はケモカインレセプターに結合するケモカインペプチド2または3の類似体、それらの変種または誘導体を含む、例示された以外の部分、例えば、それらは機能的なケモカインレセプターに高アフィニティで結合するが、DARCには低いアフィニティーで結合するか、またはDARCには高アフィニティで結合するが、ケモカインレセプターに低いアフィニティーで結合するものは、上記したもの等の方法を用いて同定することができると想像される。
本発明の剤は、ケモカイン・レセプターの機能的なマッピングにおいて有用である。例えばケモカインペプチド2およびペプチド3の両方とも、競争的方法で天然のケモカインリガンドの結合をブロックする。しかしながら、それらは互いの結合をブロックせず、それらがレセプターの別個の領域に結合すること、およびこれらの領域の両方ともについて天然のリガンドの結合のために重要であることを示唆している。加えて、ペプチド2は、更に、それらの異なる機能的な活性で、ペプチド3から区別される。
ペプチド3はレセプターに結合するのみならず、化学走性の阻害によって示されるように、レセプター信号送りの機能的な活性をもブロックする。ペプチド2は、化学走性の阻害しない。したがって、これらのペプチドは一緒に、異なる機能的な活性において重要な、ケモカイン・レセプターの領域を同定するために特に有用である。一旦これらの領域が確認されたならば、構造的には出発化合物に関連しない可能性があるが、機能的には関連している別個のケモカイン機能に対する特異的インヒビターのためのバンク、またはコンビナトリアル・ライブラリをスクリーニングするために使用することができる。
加えて、ケモカインが問題となるレセプターを活性化するために二量体を形成することは重要である可能性がある。本発明のペプチドは、ケモカイン二量体形成にとって重要であると考えられるアミノ末端ドメインを欠いている。もし二量体形成が、細胞信号送りのために必要であるならば、本発明の剤は、それらがレセプターに結合することができるが、例えば、天然のケモカインリガンドによっては二量体を形成することができないように、活性化を阻害することができる。
例26.本発明の剤の抗HIV活性
本発明の剤が、細胞のHIV結合および感染を阻害することを示すために、(i)阻害剤無し、(ii)非活性のコントロールペプチドとしてのペプチドC(表17)、(iii)100μMペプチド3(1−12)[MCP-1](配列番号:1)、または、(iv)全てのCXCR-4レセプターと結合してこれをブロックすべき100ng/ml
SDF-1の存在下で、感染性T−トロピックHIVアイソレートと、ヒトT細胞由来Jurkat細胞をインキュベートした。培養において3週間後、培地の逆転写酵素アッセイによってウイルスのレプリカ作成を評価した。ペプチド3(1−12)[MCP-1](配列番号:1)が、HIVによるJurkat細胞感染の有効なインヒビターであることが見出された。
ペプチド2(l−15)[MCP1](配列番号:3)は、Jurkat細胞(Ka=250nM;B= 55,000 サイト/細胞)、およびTHP-1細胞;(Ka=300nM;B= 130, 000サイト/細胞)の表面上でケモカインレセプターに結合するが、ケモカインによる増殖性のシグナリングを阻害しないため、ペプチド2(1−15)[MCP-1)(配列番号:3)が、細胞エントリのためにHIVによって用いられるが、信号送りのためにMCP-1によって用いられないエピトープと結合し、阻害することが可能である。この仮説をテストするため、ペプチド2(1−15)[MCP-1](配列番号:3)がJurkat細胞のHIV感染を阻害するかどうか調べるために、上記と同様の感染アッセイを用いた。100μMでは、ペプチド2(1−15)[MCP-1](配列番号:3)は、ペプチド3[MCP-1](配列番号:1)より更に効果的であり、且つウィルスエントリの防止においてSDF1αと同様に効果的であった。
ペプチド2誘導体(図52)は、ペプチド3誘導体よりも、HIV(CXCR4仲介イベント)によるJurkat T細胞感染のより良好な阻害剤であるが、他方、驚くべきことにペプチド3誘導体がTHP-1細胞感染(CCR-5仲介イベント)のより良好な阻害剤であるに。したがって、ペプチド2およびペプチド3の組み合わせは、抗HIV療法、例えばM−トロピックおよびT−トロピック アイソレートによって、増殖性の感染を阻害するのために特に有用である可能性がある。
更に、LRDペプチド2(l−15)[MCP-1]が、CCR5/CXCR4に対して100のnMまたはこれより低いアフィニティ定数を有し、LFLペプチド2[MCP-1]と比較してダフィー(Duffy)結合において100倍の減少を示すため、LRD誘導体は、それらのLEL対応物(25μM対LELのための100μM)より更に有効である可能性がある。
HIVの阻害のための現在の療法は、ウィルス、例えば逆転写酵素阻害剤またはウイルスのプロテアーゼインヒビターに集中している。これらの療法は、限られた期間のためにのみ効果的である。個々の場合、ウィルスが急速なレプリカ作成を経ており、且つ阻害剤に耐性の突然変異体に有利な選択があるため、その効力は低減される。組合せ治療はより効果的であるが、それらは感染したる個人からのウィルスのクリアランスを与えそうにない。結局、薬剤カクテルを回避する突然変異体ウィルスが生じ、今や耐性のある個人において進行が再び生じるであろう。
したがって、共レセプターを回避するためにウイルスにおけるより大規模な突然変異が必要であるため、共レセプター阻害(すなわちウイルスのエントリ)に基づき、ウイルスタンパク質よりむしろ、宿主タンパク質をターゲットとする戦略が、より増大した効力を有する可能性がある。真に、CCR-5Δ32 ホモ接合体の感染に対する耐性は、少なくともウィルス個体群が小さい間は、ウィルスが容易に代替的な共レセプターの使用に適応さできないことを示唆する。したがって、本発明の剤、他の抗ウイルス療法(例えばプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤または、それらの組み合わせ)との組合せで使用することができる。
好ましくは、ペプチド2(1−15)[MCP-1]のSerl0変異体(SYRRITSSKSPKEAV)またはそのLRD Cys0Ser10Cys16誘導体(cvaekpsksstirrysc)、またはCRD誘導体が使用される。SYRRITSSKSPKEAVのDARC結合は、20μM〜100μMの範囲であり、抗HIV剤として1〜100nMの範囲において活性である。
例27.伝染力のための迅速スクリーニング方法
インビトロのHIV感染症のための現在のアッセイは、時間がかかり、且つ再現性に欠ける。例えば、感染は、放射標識されたRT基質を用いて、ウィルス性逆転写酵素(RT)活性の産生によってモニターされる。残念なことに、例えばJurkatヒトTセルライン等の高許容ラインを感染させるために実験室適合のHIV株を用いた際であっても、RT産生は低い。その結果、RT産生を測定可能にするように、充分な感染を生じさせるために、感染細胞を2週間以上培養することが必要である。
時間がかかることに加えて、このアッセイは多くの他の不利な点を有している;最も重大には、RT活性を検出可能にするように充分にウイルスのタイターを増大させるために、二次感染の多数ラウンドに依存する。その結果、一次感染における小さい差異が拡大し、および一次感染頻度が低いため、同じく処理したウェルの間の確率論的な差異が有意になる。そのアッセイはしたがって、ルーチンに用いられている24程度に多い反復試験で、個々の分析のための多くの反復試験ウェルを必要とする。
例えば典型的なアッセイにおいて、96−ウェルプレートにおいて24ウェルのJurkat細胞がHIVウィルスストックの反復試験アリコートにより感染され、1つの群がケモカイン補助受容体阻害剤としてのペプチド2による処理を受け;他の群はSDF1α(CXCR-4天然リガンド)を受け、第3の群は未処理である。3週間の後、細胞を収穫し、RT活性を測定した。未処理ウェルにおける変化係数は37%であった。その結果、ペプチド2は75%で、RT活性を阻害したが、これは高いウェル対ウェル変動性のためにp=0.02でのみ有意であった。これは、多くの反復試験を必要として、スクリーニング目的のためのアッセイを厄介なものとする。
代替的な方法は、例えば、免疫蛍光顕微鏡法によってHIVタンパクの直接可視化を用いることである。残念なことに、最も高度に発現されたHIVタンパク質(p24gag等)でも、細胞中でかなり低いレベルで存在する。したがって、感染の後、最も早い段階での直接検出は困難であり、エラーを生じやすい。したがって、免疫蛍光の感度を高めるために以下の方法が使用され、感染の後、24時間と72時間の間で正確にHIV感染細胞の数を正確に決定させたる。更に、この技術のSN比は、イメージ解析ソフトウェアを用いる感染細胞の自動化した計数を可能とする。
THP-1細胞のために、それらの細胞を、PMAとヒドラコルチゾンを用いてガラスマルチウェルスライド(例えば、16−ウェルチャンバー・スライド;ヌンク(Nunc))に付着させる。それらの細胞は、次いで種々のテスト剤の存在下でチャンバースライド内でウィルスに晒される。Jurkat細胞等の非付着性細胞に対しては、感染は、例えば、RTアッセイに関しての96−ウェル培養プレートにおいて、しかしながら分析より前に、製造者の指示に従ってcytospin装置を用いてガラススライドに付着される。ガラススライド上の感染細胞は、例えば氷冷アセトン中にスライドを浸すことにより、感染の後、24時間と72時間の間で固定される。免疫蛍光法に適合性を有する他の定量的な固定方法を用いてもよい(J. Histchem. Cytochem.,44,1043(1997)の定量的な免疫蛍光法手順の議論を参照)。
固定の後、例えば室温において30分間リン酸緩衝食塩水(PBS中3%のFAF-BSA)中の3%w/v脂肪酸フリーのウシ血清アルブミン中でのインキュベートにより、度細胞へのタンパク質の非特異的な結合をブロックする。または、他のブロック溶液(例えばPBS中5%のショ糖、5%のTween-20)を用いてもよい。ブロックしたセクションを、例えば、p24gagに特異的な抗血清を用いてHIVタンパク質のために次いで染める。スライドを、PBSで3%のFAF-BSA中で、適当な濃度(通常特異的IgGの1〜100μl/mlの範囲)で、抗血清で培養する。p24gag等の比較的高度に発現された抗原が好ましいが、他のHIV抗原に対する抗体を用いてもよい。
このインキュベーションは、少なくとも16時間、放置されるべきである。従来の免疫蛍光法手順は、典型的には1〜2時間の長さの一次抗体インキュベーション期間を用いるが、より長いインキュベーションは、バックグランドを増大せることなく、シグナルを増大させる(J. Histchem. Cytochem., 44, 1043 (1997))。インキュベーションを、信号のノイズ比に対する有害な影響なしで、最高36時間放置することができる。非結合抗体を、次いで洗浄して除く。他の洗浄レジーメンを使用できるが(洗浄の比較のためにJ. Histchem. Cytochem., 44, 1043 (1997)を参照)、典型的には、これはPBS中、3×3分の洗浄を含む。非結合一次抗体を検出するために、通常は、適切な蛍光団で標識された二次抗体を次いで用いる。しかしながら、一次抗体が抗原から脱落することを防止するため、一次抗体をその部分に後固定(post-fixed)する。
これは、例えば新たに製造されたPBS中の4%のパラホルムアルデヒドで室温で10分間スライドをインキュベートすることによって、達成することができる。更に3回の洗浄(例えばPBS中で3×3分間)の後、蛍光団に結合された一次抗体に特異的な二次抗体(例えば、抗体ウサギ−IgG FITCコンジュゲート、1〜100のμl/mlで)にスライドを晒す。このインキュベーションにおいて、非特異的な核の染料が含まれているべきである。例えば、ヘキスト(Hoechst)33342を、1〜100ng/mlにおいて使用することができ、またはプロピジウム アイオダイドを1〜100ng/mlにおいて使用することができた。
このインキュベーションは最小で約4時間、好ましくは少なくとも8時間であり、シグナル対ノイズの比に対して有害な効果なしで24時間まで放置することができる。非結合の二次抗体を除去するために、スライドを次いで、例えば、PBS中3×3分で洗浄し、Citifluor AFI等の適当なマウンティング剤でマウントする。マウントに続いて分析の前に、暗箱内で少なくとも18時間、しかしながら約72時間未満でスライドを放置する。
選択された二次抗体蛍光団(例えばFITC)、および選択された非特異的核染色(例えばヘキスト33342)の蛍光と別個に調べることを可能とするために、エピ蛍光可視化能力を有し、適当なフィルタセットを有する任意の適当な顕微鏡を用いて、分析をマニュアル的に行うことができる。視野の各場における細胞の数を、非特異的核染色数を視覚化するフィルタを用いて、核を計数することによって決定する。視野の同じ場におけるHIVに感染した細胞を、二次抗体に結合された蛍光団を視覚化するフィルタセットをスイッチすることによって次いで決定する。
個々の場合、細胞の数をマニュアル計数によって求めることができる。または、イメージ解析ソフトウェア(例えば、OpenLab software;improvision、英国)一貫したスレショルドを各像に適用し、そのスレショルドを超える別個の目的の数を数えるために用いることができる。スライドの上での密度によって必要ならば、像解析の分野において標準的な脱アグロメレーション アルゴリズムを適用することができる。イメージ取得の間照明条件の一定のセットが使用されるならば、および一定のスレショルドが適用されるならば、HIV染色細胞のフラクションは、主観的な考慮なしで迅速に、および正確に決定することができる。
例28.gp120結合をブロックするための本発明の剤の使用
多くの研究(例えばキメラのレセプターを用いる)は、HIVエンベロープタンパク質gp120と、CCRSレセプター上のケモカインリガンドに対する結合部位を局所化することを開始した。これらの報告は、gp120およびケモカイン結合の両方にとってN−末端領域が重要なことを示唆する(Wellsら、Methods, 10、126(1996);Rossら、J. Viol., 71、1918(1998);Alkhatibら、J. Biol. Chem., 272,19771(1997);Dragicら、J. Viol., 22,279(1998);Monteclaroら、J. Biol. Chem., 272,23186(1997)が、N末端領域のみならずレセプターの細胞外ループだをも含む同一でないサイトを除いては、二つの結合がオーバーラップすることをも示唆する(Rossら、J. Viol., 71、1918(1998);Faranら。J. Biol. Chem., 272,6854(1997))。
方法
ペプチド
標準的な固相化学によりAffinity(Exeter、英国)ペプチドを製造し、続いて逆相HPLCによって95%を超える純度に精製した。ペプチド2(成熟したヒトのMCP-1のアミノ酸28〜42に由来)は、シーケンスSYRRITSSKCPKEAV(配列番号:3)を有する。ペプチド3(成熟したヒトのMCP-1のアミノ酸51〜62に由来)は、シーケンスEICADPKQKWVQ(配列番号:1)を有する。標識したペプチドを、N末端ビオチン部分で合成した。HIV−1 IIIbおよびHIV−1 Balからのgp120のV3ループ(末端システイン残基を含む)の全長シーケンスと対応するペプチドをも合成した。全てのペプチドをTFA塩として製造し、滅菌MilliQに溶解して、10mMのストック溶液を与え、それを使用するまで−20℃で貯蔵した。
結合アッセイ
10%のウシ胎仔血清、2mMのグルタミン、20μMのβ−メルカプトエタノール、100U/mlのペニシリン、および100μg/m1のストレプトマイシンを補充したRPMI 1640培地中で、細胞(Jurkat T−細胞またはTHP-1細胞)を増殖させ、2×105および1×106細胞/mlで維持した。結合アッセイを行う前に、細胞をスピンアウトし(100×g;4分間)、および氷冷PBSで回洗浄した。106細胞(Jurkat細胞のために)、または4×105細胞(THP-1細胞のために)を含むPBS中の細胞サスペンジョンの体積を、V−底96ウェルプレート(ギブコBRL)の各ウエルにピペットで入れ、スピンアウトした(100×4分間)。
種々の濃度の未標識のペプチドの存在下または不存在下で、標識ペプチドを含む100μlの結合媒体(0.1%の脂肪酸フリーのウシ血清アルブミン(BSA)を含むPBS pH 7.2)中に、三つ組のウェルを次いで再懸濁した。プレートを、次いで氷上で90分間インキュベートした。細胞を380μlの氷冷PBSで3回洗浄し、各回に細胞をスピンアウトし(100×g;4分間)、および1:1000希釈でストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ(アメルシャム(Amersham)インターナショナル)を含む100μlの結合媒体中に再懸濁した。
細胞を更に15分間氷上でインキュベートして、任意の結合ビオチン化ペプチドを標識させ、次いで4回上記のように洗浄した。細胞を、次いで200μlのTMB基質(K-Blue、Bionostics)と室温で20分間インキュベートし、50μlの2M HClを加えて、反応を停止させた。そのプレートをスピンし(3,000×g;3分)、および着色した生成物の200μlを空の96ウェル ELISAプレートに移し、450nmでの吸光度を求めた。各アッセイのために、ブランク反応(ペプチドを加えない)の吸光度を、更なる分析の前に全ての読み取りから減じた。
スキャッチャード分析のために、既知量の標識化ペプチドが個々のペプチドのシステイン残基を介して誘導化セファロースビーズ(活性化チオール−セファロース4B;シグマ T8512)にカップリングした標準曲線を参照して、450nmにおける吸光度読み取りをカリブレートした。端的に、既知量のビオチン−標識したペプチド(1fモル〜1pモル)を、100μlのPBS中で、1mgの活性化チオール−セファロースビーズと37℃で1時間インキュベートした。遊離活性チオールを、次いで最終濃度10mMにシステインの添加によってブロックした。
ペプチド−複合化ビーズを、次いでPBS中で5回洗浄し、細胞に関して正確に上記したように処理した。ペプチドの既知量がビーズに結合された際に得られた450nmの読み取りを標準曲線を得るために用い、細胞で得られた吸光度読み取りを、結合した標識ペプチドの分子数に変換するためにその標準曲線を用いた。この方法は、結合標識ペプチドの1fモル未満の感度を有し、アフィニティーが中程度である場合、または結合部位の数が比較的に小さい場合でも、結合のスキャッチャード分析を与える。
標識ペプチド2による結合実験を、個々の反応において10nMの標識ペプチドで行った。標識ペプチド3を250nMで用い、特に断らない限り、HIV-1からのgp120のV3ループからの標識ペプチドを、100nMで用いた。
p24gagの免疫蛍光検出
Labofuge centrifuge(Haeraeus)中のプレートロータを3,000×gで5分間用いてスライドをスピニングすることにより、HIV感染に続くJurkat細胞を、8−ウェルチャンバスライド(ベクトン−ディキンソン)に対してに付着させた。次いで、それらのスライドを氷冷70%のエタノールに90秒間浸すことによって、付着したJurkat細胞またはTHP-1細胞を固定した。TBS中3%の脂肪酸フリーのの3%のBSAにより室温で1時間インキュベートすることにより、非特異的結合をブロックした。
細胞を、マウスモノクローナル抗−p24 gag抗体EH12E1(Fernsら、L. Gen. Virol., 68、1543(1987)); エイズ試薬プログラム、NIBSC)と室温でTBS中3%のBSAの10μg/mlとインキュベートした。非結合抗体をPBS中3×3分間洗浄で除去し、室温で10分間3.8%のリン酸緩衝ホルマリンpH 7.2でインキュベーションすることにより結合抗体をスライドに固定し、次いで更にPBS中更に3回、3分間で洗浄した。室温で6時間、3%BSA/TBS+1ng/mlヘキスト33342中で30μg/mlでロバ抗マウスIgG-FITCコンジュゲート(715-095-150;ジャクソン イムノリサーチ)を用いて、結合抗体を可視化した。
FITC照射条件(NIBAフィルターブロック、λex =470〜490nm、ダイクロイックミラー=505nm、λem=515〜550nm)およびUV照射条件(Chroma 3l000;λex=340−380nm、ダイクロイックミラー=400nm、λem=435〜485)両方で、Openlabイメージ分析ソフトウェア(Improvision)を実行しているPower Macintosh(登録商標) 8500に接続されたオリンパスProvis AX電子顕微鏡を用いて、チャンバスライドの各ウェルから、12の視野(100の倍率)を捕らえた。DlG Snapper frameグラッバーに接続された、1230〜1024画素フィールドにおいて10ビット深さのハママツC4742−05単色デジタルでイメージを取得した。撮影時間、増幅器ゲイン、およびオフセット値をOpenLabソフトウェアで制御し、実験を通して一定に維持した。
バックグランド(対物レンズの下でスライドなしで捕らえられたイメージ)を、デジタル的にあらゆるイメージから減じた。スレショルドを個々のイメージに適用したが、それは、同一の条件の下での非感染の染めたのイメージの画素の<1%を検出した最低のスレショルドであった。視野の個々の場でこのスレショルドを上回っている対象の数を、数えた。例えば、このプロセスは、図54Dの上部パネルにおいて示された視野で、9個の対象を検出し、下部パネルにおいて示された視野で1個の対象を検出した。UV照射条件の下で捕らえられたイメージを用いて、視野の同じ場における核の合計数を求めるために、同様の手順を用いた。視野の個々の場における核に対する陽性に染められた対象の割合を、p24 gagに対して染められた細胞のパーセンテージとして報告した。
結果
TIP-1およびJurkat細胞に対するペプチドの結合
ペプチド2およびペプチド3が、ケモカインレセプターの同じまたは異なるサイトに結合する可能性があるか否かをテストするのために、ビオチン化ペプチドの結合に対する非標識ペプチド3の影響、およびその逆を分析した。THP-1細胞に対するペプチド3の結合のためのアフィニティ定数は、100μMのペプチド2の存在下(8μM)および不存在下(7μM)において同様であった。同様に、ペプチド2のためのアフィニティ定数は、100μMのペプチド3(個々の場合に250nM)によって影響されなかった。これらのデータは、ペプチド2およびペプチド3が、ケモカインレセプター上で別個のサイトに結合することを示す。同様のデータは、Jurkat T細胞を用いて得られた。
gp120 結合に対するペプチドの効果
ケモカインレセプターに対するgp120 の結合はgp120 のV3ループ内の配列が関与するようである(Rossら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95, 7682 (1998) ; Cocchiら、Nat. Med., 2, 1244 (1996) ; Jiangら、Nat. Med., 3, 367 (1997))。従って、ペプチド配列をM好性Bal 株及びT好性III B株のV3ループから合成し、そしてこれらのビオチン化ペプチドのTHP-1 及びジャーカット細胞への結合を解析した。
gp120:V3 (Bal)のTHP-1 細胞への特異的結合が 100μMにて検出された(第17表)。これは細胞当りの結合部位の数の少なさとこの相互作用の中程度の親和力との組合せが結合の正確なスキャッチャード解析を妨げるにかかわらずである。対照的に、gp120:V3 (Bal)のジャーカット細胞への特異的結合は 500μMまでの濃度でさえも検出されなかった(第17表)。これらの所見は、gp120: V3 (Bal)が、ジャーカットT細胞でなく、THP-1 単球細胞の表層上で発現されるCCR5に特異的に結合する仮設と一致する、
Bal HIV IIIb由来のV3ループ配列に対応するN末端ビオチニル化ペプチド(gp120(IIIb)の末端システイン、残基303-339 を含む)を 100μMにてジャーカット細胞(反応当り106 細胞)又はTHP-1 細胞(反応当り4×105 細胞)と4℃で結合媒質の中でインキュベーションした。次に結合したペプチドをストレプトアビジン−ペルオキシダーゼでラベル化し、そして発色基質TMB を用いて可視化させた。各反応はビオチンラベルを欠く 100倍過剰量の同ペプチドの不存下又は存在下の双方で三重測定で実施し、非特異的結合の寄与を検討した。
100 μMでのgp120:V3 (IIIb)のジャーカットT細胞及びTHP-1 細胞の双方に対する特異的結合が検出されたが、ここでも細胞当りの結合部位の数の少なさ及び相互作用の中程度の親和力が結合の正確なスキャッチャード解析の妨げとなった。ジャーカット細胞への特異的結合力はTHP-1 細胞に対するものよりも約5倍高かった(表17)。これらの所見はgp120:V3 (IIIb)がTHP-1 及びジャカット細胞の双方で発現されるが、T細胞系ではより高レベルで発現されるCXCR4 に特異的に結合するという仮設と一致した。
インビトロにおけるHIV 感染に対するペプチドの効果
実験室で改作したT−向性単離物IIIbを用いたJurkat T−細胞のHIV 感染を、2つの異なるアッセイを用いてモニターした。まず、96−ウェル・プレート内のJurkat T−細胞を、1時間、ペプチド2、ペプチド3、媒体(ネガティブ・コントロールとしてのもの)又はSDF1α(ポジティブ・コントロールとしてのもの)のいずれかで前処理し、次に、HIV ウィルス(106 TCID50)に晒し、そして2〜3日間隔で、適宜、ペプチド、SDF1α又は培地単独でパルスした。
培養において2週間後、ウィルス感染の程度を、上記培養におけるウィルス複製の尺度として、その上清中の逆転写酵素活性を計測することにより評価した。ペプチド3(100μM)でなくペプチド2(100μM)は、HIV 暴露後のウィルス複製を顕著に阻害した(図5A)。これは、このペプチドが、インビトロにおいてHIV 感染性を阻害していたことを示唆している。細胞生存能力に対する効果は全く見られなかった。逆転写酵素活性は、6つの類似の実験において平均75%程阻害され、そして各ケースにおいて、ペプチド2により達成された阻害は、SDF-1α によるものと同様であった。
Jurkat T−細胞のHIV 感染を、ウィルスp24gag発現の高感度定量的免疫蛍光検出によってもモニターした。Jurkat細胞は、上記のように、ペプチド2(100μM)、ペプチド3(100μM)又はSDF1α(100ng/ml)の存在下又は不存在下でHIVにより感染された。感染から約48時間後、上記細胞を、サイトスピンを用いてガラス・スライドに付着させ、そして90秒間氷冷70%エタノール中への浸漬により固定した。p24gagの発現を、先に記載したように定量的免疫蛍光を用いて測定した(Mosedale et al., J. Histochem. Cytochem., 44, 1043 (1996))。
但し、1次抗体を、上記技術の感度を高めるためにパラホルムアルデヒドを用いて、上記切片に事後固定した。ウィルスの感染性を、(Hoechst 33342 核染色を用いて検出した)細胞の合計数の比率として表したp24gagについて染色された細胞数として表した。上記逆転写酵素アッセイの結果と一致して、ペプチド2とSDF1αは、80%を上廻る程ウィルス感染性(能)を阻害したが(図54B)、ペプチド3は感染性はなかった。
M−向性単離物によるTHP-1 細胞の感染は、高レベルのウィルス粒子を作らず、そしてこれ故、上記逆転写酵素アッセイは、上記感染の進行をモニターするためには十分に敏感ではなかった。しかしながら、p24gagの高感度免疫蛍光検出を用いてTHP-1 細胞のHIV 感染性を評価することができた。THP-1 細胞をヒドロコルチゾンとPMA により分化させ、次に TNFαで処理した。これは、ガラス・チャンバー・スライド上の接着性単層をもたらした。次にTHP-1 細胞を、上記Jurkat細胞に関するものと同様に、ペプチド2(100μM)、ペプチド3(100μM)、MIP1α(100ng/ml)又はSDF1α(100ng/ml)で処理した。
THP-1 細胞を、容易に検出できる感染を作り出すことが先に確認されていた濃度においてHIV 株で感染させ、そして固定及びp24gagのための染色の前72時間増殖させた。ペプチド2は、28±5%程THP-1 細胞のHIV 感染性を阻害したが(p<0.05;Mann-Whiney Uテスト)、ペプチド3は、80%を上廻る程THP-1 細胞の感染を阻害した(図54C、D)。
表18は、DARC結合、ケモカイン及びgp120のED50、並びに種々のペプチド2配列によるウィルス阻害パーセントを要約する。
考察
ヒトMCP-1 に由来する2つの異なるオリゴペプチド配列は、インビトロでHIV-1 単離体による細胞感染を阻害することができる。前記配列の1つであるペプチド2は、M指向性且つT指向性感染を阻害した。このことは、個別のケモカイン受容体を特異的に標的にする薬剤とは異なり(Cairns ey al., Nat. Med., 4, 563 (1998) ; Simmmons et all., Science, 276, 276 (1997)、単一分子よって、広範囲の関連補助受容体の使用を同時に阻害することが可能でありうることを示唆する。更に、このペプチドは実質的に、CXCR4 依存的なJurkat T細胞に、HIV感染を低下する(逆転写酵素の生産(75±10%阻害)又はp24gagの免疫蛍光染色(80±3%阻害)のいずれかで検査した)。
またペプチド2は、CCR5依存的なTHP-1 細胞のHIV 感染を低下する(免疫蛍光染色検査により28%±5阻害)。しかし、ペプチド2は、受容体を介したケモカインのシグナル伝達を阻害しなかった。なぜなら、SDF1α及びMIP1αの両方共が、ペプチド2の存在下で、THP-1 細胞に対して十分に化学走性を示したからである。もう一つのペプチド、ヒトMCP-1のアミノ酸51〜62に相当するペプチドは、CXCR4 依存性のJurkat T細胞のHIV 感染を阻害しなかった(しかしSDF1αによる化学走性を阻害した)が、CCR5介在性のTHP-1 細胞のHIV 感染を強く阻害した(免疫蛍光染色検査により83±7%阻害)。
選択されたアミノ酸置換を伴うケモカインレセプターを用いる広範囲の先の研究(例えば、Rossら、J. Virol, 前掲;Alkhatibら、前掲;Dragicら、前掲及びその中の引用文献を参照のこと)と一致して、本明細書に記載される結果で、HIV gp120 が、同一ではないがケモカインリガンド結合部位とオーバーラップする部位においてCXCR4 及びCCR5の両方に結合することを示唆する。Rossら(1995)及びDragicら(1998)の両方は、gp120 結合のためのCCR5のアミノ末端領域中の残基の重要性を強調する。但し、両方の研究は、そのレセプターの他の細胞外ループ内の残基がgp120 の生産的結合に役割を果たす可能性があることを認めている。
ペプチド2は、gp120:V3 ループペプチドが細胞に結合するのをブロックするので、これは、ペプチド2がそのレセプターのN末端領域内の部位に結合し得ることを仮設的に示唆する(図16を参照)。これは、CC−ケモカインのペプチド2領域内の残基がケモカインレセプターのN末端と相互作用することを示すWell及び共同研究者の研究と一致する(Monteclaroら、前掲;Lusti-Narasimhanら、J. Biol. Chem., 270, 3148 (1996) ; Lusti-Narasimhan ら、J. Biol. Chem, 270, 2716 (1995))。しかしながら、興味あることに、彼らは、ペプチド2配列内の位置2のチロシン残基がレセプター特異性を決定するために重要であることを示した:この位置にロイシンを有するケモカインはCXCRレセプターに結合したが、チロシンを有するケモカインはCCR レセプターに結合した。
本明細書に記載される結果は、(全体のケモカインの文脈におけるのと反対の)単離された15merペプチドとして、MCP-1 からのチロシン含有配列はCXCR及びCCR レセプターの両方と相互作用することができることを示唆する。実際、チロシン含有ペプチド2は、CCR5依存性M−向性感染よりCXCR4 依存性T−向性HIV 感染の有効なインヒビターであった。たとえあるとしても、 Tyr→Leu 置換をペプチド2配列に導入する効果を決定するのがおもしろいであろう。
Wellとその同僚による研究は、ケモカインリガンドの結合にCCR5のN末端領域を関連づけたが(Montecalaro et al., supra ; Lusti-Narasimham et al., J. Biol. Chem., 271, 3148 (1996) ; Lust : -Narasimahn et al., J. Biol. Chem., 270, 2716 (1995))、ペプチド2は、ケモカインの結果及びシグナル伝達に影響することなしにgp120:V3 ループの結合を阻害する。このことは、N末端領域の複数のアミノ酸置換が、gp120 の結合を阻害するが、天然のケモカインのリガンドによる結合及びシグナル伝達を阻害しないことを明らかにしたRoss等の研究(1998)と一致する。
はっきりと対照的に、ペプチド3はgp120:V3 ループの結合並びにケモカインの結合及びシグナル伝達の両方に必要なCCR5上の領域に結合する。従って、ペプチド3を用いる実験は、CXCR4 とCCR5との特性の差異を示唆し、ペプチド3はSDF1αのシグナル伝達を阻害するが、gp120:V3 ループの結合又はCXCR4 依存のHIV 感染に影響しない。ひとまとめに考えて、これらの観察はgp120 の結合部位及びケモカインのリガンド結合部位がCXCR4 受容体上で更にはっきりしているが(図16)、完全長のケモカインの結合が更にgp120 の結合を阻止しうることを示す(Cocchi et al., Science, 270, 1811 (1995) ; Zaquny et al., Proc. Natl Acad. Sci. U.S.A., 95, 3857 (1998) ; Wells et al., Methods, 10, 126 (1996))。
更に、本明細書において報告する所見は、ペプチド2及びペプチド3の双方のケモカインレセプターへの直接結合、並びにgp120:V3 ループ結合及びHIV-1 感染の阻害と一致する。また、これらのペプチドはgp120:V3 ループ結合を阻害する。しかしながら、単離されたV3ループペプチドと細胞との相互作用の親和力は中程度の親和力にすぎず、そしてケモカインレセプターとドッキングするインタクトウィルス粒子についての関連のモデルとはならないであろう。このことは、gp120 のその他の領域、例えばV1/V2ループも共レセプター結合に重要であることを示すデーターと一致する(Rossら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95, 7682 (1998))。
感染力の抑制は多種多様な機構に由来しうる。これらのペプチドは共レセプターへのウィルス粒子の結合の単純な競合阻害剤として作用しうる。他方、これらのペプチドはAOP-RANTESについて既に発表されているように(Mackら、J. Exp. Med., 187, 1215 (1998))ケモカインレセプターの内在化を誘導し、そのリサイクルを阻害することができ、それはたとえこのメカニズムがgp120:V3ループ結合の阻害を担わない場合でもそうであり、なぜならこれらの結合実験は4℃で実施したからである。
まとめると、ケモカインMCP-1 由来のオリゴペプチド配列はin vitroで全長ケモカインと似た程度でHIV 感染を阻害することができる。更に、今日までに発表されているケモカインアンタゴニストの中でとりわけ独特に、これらの配列の一つ(ペプチド2)はM好性及びT好性HIV 感染の双方を阻害し、単独の薬剤が様々なケモカイン共レセプターを利用するHIV の能力を同時にブロッキングし得る可能性を高め、それ故HIV 感染力に対するより完璧なブロッキングを供しうる。