<第1実施形態>
以下、図面に基づいて、本実施形態に係る情報提供ユニット100について説明する。本実施形態においては、車両に搭載された情報提供ユニット100を例に説明する。
本実施形態の情報提供ユニット100は、ユーザによる車両の制駆動力の状況、特に、制駆動力の余裕度に関する情報を提供する装置である。
図1に、本実施形態に係る情報提供ユニット100を含む車載装置1のブロック構成図を示す。本実施形態の車載装置1は、情報提供ユニット100と、車両コントローラ200と、各種車載センサ300(301〜310)と、情報提示装置400と、ナビゲーション装置500とを含む。情報提供ユニット100と上記各装置(200〜500)とは、CAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続され、相互に情報の授受を行う。
図1に示すように、情報提供ユニット100は、制駆動力の余裕度に関する情報を提示する処理を実行する制御装置10を備える。
まず、この制御装置10について説明する。本実施形態の制御装置10は、情報提供処理を実行するためのプログラムが格納されたROM(Read Only Memory )12と、このROM12に格納されたプログラムを実行することで、情報提供ユニット100として機能する動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)11と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)13と、を備える。なお、動作回路としては、CPU(Central Processing Unit)11に代えて又はこれとともに、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。
次に、図2に基づいて、情報提供ユニット100の制御装置10が備える処理機能について説明する。制御装置10は、車両情報を取得する車両情報取得機能Aと、車両の制駆動力を算出する制駆動力算出機能Bと、基準制駆動力を算出する基準制駆動力算出機能Cと、余裕度を導出する余裕度導出機能Dと、算出された余裕度を提示させる提示制御機能Eとを有する。また、本実施形態の制御装置10は、あわせて、基準制駆動力を補正する補正機能Fを備える。
この制御装置10は、各機能を実現するためのソフトウェアと、上述したハードウェアの協働により各機能を実行する。なお、これらの各機能は制御装置10以外の装置、例えば、車載されたABS(Antilock Brake System)、VDC(Vehicle Dynamics Control)のコントローラに実行させてもよい。
以下、上述した情報提供ユニット100の制御装置10が実現する主な機能についてそれぞれ説明する。
まず、情報提供ユニット100の車両情報取得機能Aについて説明する。制御装置10は、前後左右の各車輪速度、車速、操舵角、スロットル開度、マスターシリンダー液圧(ブレーキ踏力)、ブレーキON/OFF信号、ギア位置、横加速度、エンジン回転数、外気温などの車両情報を、各種車載センサ300(車輪速センサ(301),車速センサ(302),操舵角センサ(303),スロットル開度センサ(304),マスターシリンダー液圧センサ(305),(ブレーキ踏力センサ),ブレーキON/OFFセンサ(306)、ギア位置センサ(307),横加速度センサ(308),エンジン回転数センサ(309),外気温センサ(310))から、CAN(Controller Area Network)その他の車載LANを介して取得する。
次に、情報提供ユニット100の制駆動力算出機能Bについて説明する。
制御装置10は、車両情報に基づいて車両の制駆動力を算出する。制駆動力の算出手法は特に限定されない。本実施形態の制御装置10は、駆動力および制駆動力(Fx)、旋回時の横力(Fy)から旋回時における制駆動力を求める。なお、具体的な算出手法例は後述する。
続いて、基準制駆動力算出機能Cについて説明する。
本実施形態の制御装置10は、車両情報に基づいて、制駆動力との対比において基準となる基準制駆動力を算出する。本実施形態では、所定条件下では所定域の値となる制駆動力を基準制駆動力として定義する。たとえば、一定の性能を備える車両においては制駆動力が所定域の値となる傾向があり、一定の技能を備えるドライバが一定の車両を運転する場合は、制駆動力が所定域の値となる傾向がある。本実施形態では、車両が備える性能から導かれる車両特有の制駆動力、又はある運転技能を持つドライバの運転操作から導かれるユーザ特有の制駆動力を、基準制駆動力として定義する。
具体的に、本実施形態の制御装置10は、車両情報から推測された路面摩擦係数μに基づいて、その路面摩擦係数μにおける車両の最大制駆動力を基準制駆動力として算出する。また、本実施形態の制御装置10は、各値域の路面摩擦係数μに対応づけて蓄積された車両の制駆動力の平均値を、各路面摩擦係数μにおける制駆動力の代表値とし、これを基準制駆動力として算出する。
制御装置10は、基準制駆動力を算出する際に、車両情報に基づいて、路面摩擦係数μを推測する。車両情報に基づいて路面摩擦係数μを算出する手法は特に限定されず、一般に用いられる手法を採用することができる。本実施形態では、車両の前後加速度とスリップ率(駆動輪と非駆動輪の車輪速の差から算出)の相関から推定する手法を用いて、路面摩擦係数μを推測する。
続いて、基準制駆動力としての最大制駆動力と平均制駆動力(代表値の一例)の算出手法を説明する。
制御装置10は、車両情報から推測された路面摩擦係数μにおける車両の最大制駆動力Fmaxを算出する。制御装置10は、推測された路面摩擦係数μを用いて、その時の推定路面摩擦係数μにおいてタイヤをスリップさせずに発生させることができる最大の制駆動力(最大制駆動力:Fmax)を、クーロンの摩擦法則に基づいて以下の式を用いて算出する。
Fmax=μWg
ただし、gは重力加速度である。
また、制御装置10は、車両情報から推測された路面摩擦係数μに車両の制駆動力が対応づけられた蓄積情報(制駆動力の履歴)を参照し、各路面摩擦係数μにおける制駆動力の平均値(平均制駆動力)を算出する。この平均制駆動力を、各路面摩擦係数μにおける基準制駆動力(代表値)とする。なお、制御装置10は、各路面摩擦係数μにおける制駆動力の蓄積情報を処理し、その最大値、偏差値等を基準制駆動力として算出してもよい。
基準制駆動力の算出にあたり、制御装置10は、車両コントローラ200から取得する車両情報に基づいて車両が加速若しくは減速する操作タイミング又は旋回する操作タイミングを検出する。そして、その加速、減速または旋回の操作タイミングにおける制駆動力を路面摩擦に対応づけて蓄積する。
また、基準制駆動力の算出にあたり、制御装置10は、ドライバの経験に応じて基準制駆動力を補正する機能、及び/又は道路形状や天候などの状況に応じて基準制駆動力を補正する機能を備える。
次に、余裕度導出機能Dについて説明する。
制御装置10は、基準制駆動力に対する制駆動力の余裕度を求める。ここで基準制駆動力に対する制駆動力の余裕度とは、現在の運転において使用する制駆動力の基準制駆動力の全体に対する割合である。たとえば、基準制駆動力を100であるとき、現在の制駆動力が60である場合は、基準制駆動力に対する制駆動力の余裕度は60%又は40%となる。
続いて、余裕度の提示制御機能Eについて説明する。
制御装置10は、算出された余裕度をユーザに提示する。余裕度の提示手法は特に限定されないが、制御装置10は、基準制駆動力に対して、現在ドライバがどれくらいの度合いで制駆動力を利用しているかをユーザに知らせる観点から、制御装置10は、基準制駆動力に対して制駆動力が占める割合、基準制駆動力から制駆動力を引いた残量の基準制駆動力に対する割合を余裕度として提示させる。
続いて、本実施形態の情報提供ユニット100の制御手順を説明する。
図3は、本実施形態の情報提供ユニット100の制御手順の全体の流れを説明するためにフローチャート図である。本制御は情報提供ユニット100において一定時間間隔で実行される。また各機能を、ABSなどを制御する車両コントローラ200やナビゲーション装置500などに分散させる場合は、各機能を実現するプログラムを、コントロールユニットのメインプログラムから一定時間間隔で呼び出す。
まず、ステップS111において、制御装置10は、制駆動力Fを算出する。本実施形態の制御装置10は、取得された車両情報を用いて、駆動力および制駆動力(Fx)、旋回時の横力(Fy)を以下の手法により算出する。
Fx=Fa+Fb
ただし、Faは前後の駆動力、Fbは前後の制駆動力である。
まず、前後の駆動力Faを算出する。
Fa=Te・gr・η・Tconv・gf/r
ただし、Teはエンジントルク、grはトランスミッションギア比、ηは動力伝達効率、Tconvはトルコン比、gfはファイナルギア比、rはタイヤ半径である。
次に、前後の制駆動力Fbを算出する。
Fb=−2(Fbf+Fbr)
ただし、Fbfは1輪当りの前輪制駆動力、Fbrは1輪当りの後輪制駆動力である。
ここで、1輪当りの前輪制駆動力Fbfは、以下のようにあらわすことができる。
Fbf=BPf・((π・DWf2)/4)・BFf・(BRf/Wrf)
ただし、BPfは前輪ブレーキ圧、DWfは前輪シリンダ半径、BFfは前輪ブレーキファクタ、DRfは前輪ブレーキローター半径、Wrfは前輪タイヤ半径である。
さらに、1輪当りの後輪制駆動力は、下式のようにあらわすことができる。
Fbr=BPr・((π・DWr2)/4)・BFr・(BRr/Wrr)
ただし、BPrは後輪ブレーキ圧、DWrは後輪シリンダ半径、BFrは後輪ブレーキファクタ、DRrは後輪ブレーキローター半径、Wrrは後輪タイヤ半径である。
また、前輪ブレーキ圧BPf、後輪ブレーキ圧BPrは、例えば図4に示すマスターシリンダー液圧に応じて予め設定された特性マップから求めることができる。
また、ブレーキファクタ(BFf、BFr)とは、ブレーキ入力と出力の比を表す係数であり、ブレーキパッドやローターに使用される摩擦材とブレーキ形式で決定される。一般的にディスクブレーキでは0.6〜0.9程度で、ドラムブレーキでは1.5〜8程度である。
さらに、旋回時の横力(Fy)は、下式のようにあらわすことができる。
Fy=Yg・W
ただし、Ygは横加速度、Wは車両重量である。
制御装置10は、算出された制駆動力を逐次RAM13に記憶する。
続くステップS112において、制御装置10は、路面摩擦係数μを算出する。図5は、路面摩擦係数μの算出処理の一例を示すフローチャート図である。制御装置10は、設定周期毎(例えば、10msec)に路面摩擦係数推測処理を実行する。以下、各ステップについて説明する。
ステップS1において、制御装置10は、車輪速センサ301からの信号に基づいて各車輪FR(右前輪),FL(左前輪),RR(右後輪),RL(左後輪)の各車輪速VFR,VFL,VRR,VRLを演算し、ステップS2へ移行する。ここで、車輪速センサ301は、回転速度に応じて周波数が変化する信号の周期を計測することにより車輪速VFR,VFL,VRR,VRLを算出する。
ステップS2において、制御装置10は、駆動輪平均速度Vdと非駆動輪平均速度Vfを演算し、ステップS3へ移行する。この処理において、制御装置10は、車両が後輪駆動車の場合、駆動輪平均速度Vdと非駆動輪平均速度Vfは次式により求める。
Vf=(VFR+VFL)/2
Vd=(VRR+VRL)/2
ステップS3において、制御装置10は、非駆動輪の加速度Af(=車両加速度)を次式により演算し、ステップS4へ移行する。
Af=(Vf(1)−Vf(2))/△t
ここで、Vf(1)は今回の制御周期で演算された非駆動輪速度平均値、Vf(2)は前回の制御周期で演算された非駆動輪速度平均値、△tは制御周期である。
ステップS4において、制御装置10は、ステップS3にて求められた車両加速度Afの値に応じて、スリップ率Sを演算し、ステップS5へ移行する。スリップ率Sは、次式により求める。
Af≧0の場合
S=(Vd−Vf)/Vd
Af<0の場合
S=(Vd−Vf)/Vf
ステップS5において、制御装置10は、車両加速度Afとスリップ率Sの移動平均処理を行い、ステップS6へ移行する。
路面の凹凸等により、車輪速センサ1からの出力にはノイズ成分が含まれている。このセンサ出力に基づいて演算された車両加速度Afやスリップ率Sにもノイズが含まれるため、このままスリップ率Sに対する車両加速度Afの傾きを演算するとバラツキが大きくなり、推測される路面摩擦係数μの精度が低下する。そこで、車両加速度Afとスリップ率Sのノイズを除去する観点から移動平均処理を行う。なお、ここでは移動平均処理を行うが、2次フィルタ等のデジタルフィルタ処理を行うことでも同様の効果が得られる。
移動平均処理の演算式を次式に示す。
MAf=(Af(1)+Af(2)+Af(3)+…+Af(N))/N
MS=(S(1)+S(2)+S(3)+…+S(N))/N
ここで、MAfは移動平均処理後の車両加速度、MSは移動平均処理後のスリップ率、Nは移動平均処理に用いるデータの数である。また、Af(1)は今回の制御周期で演算された車両加速度、Af(2)は前回の制御周期で演算された車両加速度、Af(N)はN-1回前の制御周期で演算された車両加速度である。同様に、S(1)は今回の制御周期で演算されたスリップ率、S(2)は前回の制御周期で演算されたスリップ率、S(N)はN-1回前の制御周期で演算されたスリップ率である。
ステップS6において、制御装置10は、ステップS5で演算された移動平均処理後の車両加速度MAfと、移動平均処理後のスリップ率MSについて加重移動平均処理を行い、ステップS7へ移行する。一度の移動平均処理では、十分にノイズ成分や返送を抑えきれない場合があるため、さらに移動平均を行う。これにより演算に必要なデータ数の増加を抑えつつ、ノイズ等を低減できる。
加重移動平均処理を次式に示す。
DAf=(MAf(1)+MAf(2)+MAf(3)+…+MAf(M))/M
DS=(MS(1)+MS(2)+MS(3)+…+MS(M))/M
ここで、DAfは加重移動平均後の車両加速度、DSは加重移動平均後のスリップ率、Mは加重移動平均処理に用いるデータの数である。また、MAf(1)は今回の制御周期で演算された移動平均後の車両加速度、MAf(2)は前回の制御周期で演算された移動平均後の車両加速度、MAf(M)はM-1回前の制御周期で演算された移動平均後の車両加速度である。同様に、MS(1)は今回の制御周期で演算されたスリップ率、MS(2)は前回の制御周期で演算された移動平均後のスリップ率、MS(M)はM-1回前の制御周期で演算された移動平均後のスリップ率である。
ステップS7において、制御装置10は、ステップS6で演算した車両加速度DAfとスリップ率DSの関係が原点からずれていることに対する補正処理を行い、補正後の車両加速度DAF_Cを演算し、ステップS8へ移行する。
ステップS8において、制御装置10は、補正後の車両加速度DAF_Cと、加重移動平均後のスリップ率DSとに基づいて、車両加速度とスリップ率がそれぞれゼロの点(原点)から、その時々の車両加速度DAF_Cとスリップ率DSで決まる点を結んだ直線の傾きKを次式より求め、ステップS9へ移行する。
K=DAf_C/DS
この値Kは、図6に示すμ−S曲線(μは路面摩擦係数、Sはスリップ率)の立ち上がり勾配に対応するものである。
ステップS9において、制御装置10は、ステップS8で求めた傾きKに基づいて、路面摩擦係数μを確定し、処理を終了する算手段)。
例えば、K≧55である場合は、その道路の路面摩擦係数μは高く、「高μ路(μ=0.8以上)」と区分する。また、25<K<55である場合は、その道路の路面摩擦係数μは中程度であり、「中μ路(μ=0.4〜0.8)」と区分する。さらに、25≧Kである場合は、 その道路の路面摩擦係数μは低く、「低μ路(μ=0.4以下)」と区分する。この道路を区分するためのKの値域は、走行実験データ等から得る。
なお、図5に示す処理例では、路面摩擦係数μは、高μ路(μ≧0.8)、中μ路(0.8>μ≧0.4)、低μ路(0.4>μ)の3段階で推測するが、例えば下記のように4段階に区分することができる。
K≧55 高μ路:路面摩擦係数μが高い道路(μ≧0.8)
55>K≧35 中μ路:路面摩擦係数μが中程度の道路(0.8>μ≧0.5)
35>K≧20 低μ路:路面摩擦係数μが低い道路(0.5>μ≧0.3)
20>K 極低μ路:路面摩擦係数μがとても低い道路(0.3>μ)
但し、Kは前後加速度とスリップ率の原点とその時の前後加速度とスリップ率の点を結んだ直線の傾きである。
図3のフローに戻り、ステップS113において、制御装置10は、ステップS112で推測された路面摩擦係数μを用いて、基準駆動力を算出する。制御装置10は、基準駆動力として、最大制駆動力(Fmax)又は平均制駆動力(Fave)を算出する。
基準制駆動力が最大制駆動力(Fmax)である場合、制御装置10は、その時の路面摩擦係数μにおいてタイヤをスリップさせずに発生することができる最大の制駆動力(Fmax)をクーロンの摩擦法則に基づいて以式を用いて算出する。
Fmax=μWg
ただし、gは重力加速度である。
また、基準制駆動力が平均制駆動力(Fave)である場合、制御装置10は、後述する記憶処理によって蓄積された路面摩擦係数μと、その摩擦係数が推測された際の車両の制駆動力との対応情報を参照し、摩擦係数ごとの制駆動力の平均値を算出する。
さらに、ステップS114において、制御装置10は、各種情報の記憶処理を実行する。この処理において、制御装置10は、路面摩擦係数μの走行履歴を記憶する。この路面摩擦係数μの走行履歴は、基準制駆動力の補正処理に用いられる。また、制御装置10は、車両情報から算出された制駆動力を路面摩擦係数μに対応づけた対応情報を記憶する。この対応情報は、先述した平均制駆動力の次回の処理以降の算出に用いられる。
図7は、ステップS114に対応する記憶処理の一例を示すフローチャート図である。図7のステップS1141において、制御装置10は、路面摩擦係数μの道路の走行頻度を学習する。制御装置10は、図8に例示する走行履歴テーブルを備える。この走行履歴テーブルは、ステップS112で述べた4段階に区分された路面摩擦係数μごとに、その路面摩擦係数μの道路を走行した総走行時間と最終走行日時を記録するテーブルである。
制御装置10は、その走行履歴テーブルにアクセスし、処理時における路面摩擦係数μの道路の総走行時間を逐次カウントアップし、最終走行日時を現在の時刻に更新する。なお、総走行時間については上限値(例えば100時間)を設け、そこに達した場合は十分に運転経験を重ねたとみなすようにしても良い。また、総走行時間の代りに総走行距離を用いても良い。
続くステップS1142及びステップS1143において、制御装置10は、現在、自車両が使用する制駆動力を記憶する。
図9に基づいて、制駆動力について説明する。図9は最大制駆動力の概念を説明するための図である。図9に示すように、タイヤをスリップさせることなく発生できる前後左右の制駆動力は、その時の路面摩擦係数μから算出される最大制駆動力(Fmax)を半径とした円(最大摩擦円)で表わすことができる。そして、ドライバが使用している制駆動力(F)はその時の前後制駆動力(Fx)と横力(Fy)の合力となる(ちなみに、図9は左旋回加速時における例である)。
ここで、運転スキルの高いドライバほど発進加速やブレーキング、コーナー旋回において最大摩擦円により近い制駆動力を発生させて走行することができる。
ドライバが普段使用している平均制駆動力の学習は次のように実行される。例えば、制御装置10は、図10に示すテーブルを備える。図10に示すテーブルは、車両情報から推測された路面摩擦係数μと、この摩擦係数μにおける車両の基準制駆動力とを対応づけて蓄積する対応情報の一態様である。制御装置10は、ステップS112で推測された路面摩擦係数μを4段階に区分し、各路面摩擦係数μに対する最大制駆動力と平均駆動力をこのテーブルに記録する。
具体的に、制御装置10は、処理時において推測された路面摩擦係数μから求められた平均制駆動力(Fa1〜Fa4)を用いて、S111で算出された前後の制駆動力(Fx)および横力(Fy)の合力を算出する。この算出された制駆動力の合力を蓄積された平均制駆動力に反映させるため、新たに算出された制駆動力を加えて再度平均値を算出し、平均制駆動力(Fa1〜Fa4)を更新する。
また、制御装置10は、各路面摩擦係数μに対する最大制駆動力として、S113で所定の算出式から求められた定数(FM1〜FM4)を予め記録する。
また、本実施形態において、平均制駆動力(Fa1〜Fa4)を算出するために記憶される、実際に使用された制駆動力は、加減速やコーナリング旋回などの特に大きな制駆動力を使用する場合の値に限定する。このため、図7に示すステップS1142において、制御装置10は、車両情報に基づいて、車両が加減速やコーナリング旋回の状態にあるか否かを判断する。具体的に、制御装置10は、加減速度や横加速度が所定値以上、スロットル開度が所定値以上などの場合にS1143に進み平均駆動力の記憶を実行する。
図11は、路面摩擦係数μと制駆動力との対応情報を蓄積する条件を説明するための図であり、対応情報の蓄積を加速/減速/旋回時に行うことにより、最大制駆動力と同様に、路面摩擦係数μと制駆動力Fとの間に所定の関係を求めることができる。
なお、ステップS114の記憶処理において、ABS(Antilock Brake System)やVDC(Vehicle Dynamics Control)/TCS(Traction Control System)などの駆動力を制御する動作が実行された場合には、この記憶処理をパスして制駆動力の対応情報の蓄積を行わないようにしても良い。また、その時の駆動力では不安定な車両挙動に陥る可能性が高いとみなして制駆動力の値(Fa1〜Fa4)を予め減少させてから記憶しても良い。
そして、路面摩擦係数μと制駆動力との対応情報の蓄積が完了したら、ステップS115へ進む。
図3に戻り、ステップS115以降の処理を説明する。ステップS115において、制御装置10は、必要に応じて、基準制駆動力の補正処理を実行する。この補正処理については、第2実施形態以降において詳述する。
続くステップS116において、制御装置10は、基準制駆動力に対する制駆動力の余裕度を、提示装置400を介して提示させる。本実施形態の制御装置10は、余裕度を、ナビゲーション用モニタ410を介し、基準制駆動力と制駆動力との面積比、体積比などその割合が視認しやすい態様で提示する。
図12及び図13は、余裕度を、キャラクタの画像を用いて提示する場合の例を示す図である。図12は、基準制駆動力として最大制駆動力Fmaxを採用する場合の余裕度を示し、図13は、基準制駆動力として最大制駆動力Fmaxを採用する場合の余裕度を示す。具体的に、図12は、余裕度を、最大制駆動力Fmaxに対する現在の制駆動力を、円柱の体積比、円の面積比により表現する提示例を示し、図13は、余裕度を、平均制駆動力Faveに対する現在の制駆動力を円柱の体積比、円の面積比により表現する提示例を示す。
図12及び13に示す例では、基準制駆動力(最大制駆動力(Fmax)または平均制駆動力(Fave))に対する現在の制駆動力(F)の割合が、所定値(例えば70%)未満であり、十分に余裕がある場合は安心した余裕のある表情のキャラクタを提示する。他方、基準制駆動力(最大制駆動力(Fmax)または平均制駆動力(Fave))に対する現在の制駆動力(F)の割合が、所定値以上で余裕が無い場合は不安そうな表情のキャラクタとともに速度を控え目にすることを提案するメッセージを提示する。このとき、注意を促すアラームを鳴らしてもよい。
また、図14は、最大制駆動力(Fmax)と平均制駆動力(Fave)と制駆動力Fとの関係を示す図である。図14に示すように、最大制駆動力(Fmax)は路面摩擦係数μに応じて算出される所定範囲の値であるが、実際の学習値である平均制駆動力(Fave)は、ドライバの運転能力に応じて変化する。図14に示すように、エキスパートドライバは最大摩擦円の半径に近い値になり、ビギナードライバは最大摩擦円の半径よりも小さな値になる。つまり、同じ路面摩擦係数μにおいて、同じ制駆動力を発生させた場合でも、平均制駆動力(Fave)に対する制駆動力の余裕度は変化する。
この観点から図12及び図13をみると、図12(A)は最大制駆動力が相対的に小さい場合に提示される余裕度の一例を示し、図12(B)は最大制駆動力が相対的に大きい場合に提示される余裕度の一例を示す。また、図13(A)はドライバが運転に慣れていないビギナーである場合、つまり平均制駆動力が小さい場合に提示される余裕度の一例であり、図13(B)はドライバが運転に慣れているエキスパートである場合、つまり平均制駆動力が大きい場合に提示される余裕度の一例である。
なお、余裕度の表示態様はこれに限定されるものではない。例えば、制御装置10は、余裕度を、スピーカ420を介して出力することができる。この場合、「現在の制駆動の余裕度は60%です。そろそろスピードを控え目にしましょう」などのテキストの発話音声を、スピーカ420から出力させてもよい。また、メータ内に単純なインジケータを設置し、基準制駆動力(最大制駆動力(Fmax)または平均制駆動力(Fave))に対する現在の駆動力(F)の割合が70%以上である場合は赤、50%以上である場合は黄色、50%未満では表示無しとしてもよい。
本発明は以上のように構成され、以上のように作用するので、以下の効果を奏する。
本実施形態の情報提供ユニット100によれば、警報が提示される状態になる前に、ユーザの運転操作による制駆動力の余裕度合いが提示されるので、警報の対象となる事象に対して十分な対応をすることができる。
つまり、自車の基準制駆動力(最大制駆動力(Fmax)または平均制駆動力(Fave))とドライバが実際の運転で使用している現在の制駆動力とを比較して提示することにより、ドライバは警報が発せられる状態に陥る前に、自身の運転についての余裕度を知ることができる。このため、ドライバは、警報が発せられる状況にならないように早めに対応することができる。また、ドライバは警報の対象となる事象に対して、十分な対応を行うことができる。
また、本実施形態の情報提供ユニット100によれば、現在の制駆動力の比較の基準となる基準制駆動力を、自車両の車両情報から推測された路面摩擦から算出する最大制駆動力とする場合は、さらに、各車両の制駆動性能に応じた余裕度を提示することができる。ドライバは、自身が運転する車両の制駆動性能を基準とし、自身が使用する制駆動力の程度乃至余裕度を知ることができる。
また、本実施形態の情報提供ユニット100によれば、現在の制駆動力の比較の基準となる基準制駆動力を、車両情報から推測された路面摩擦と、その摩擦係数が推測された際の車両の制駆動力とを対応づけて蓄積された対応情報から算出する平均制駆動力(その他の蓄積された制駆動力の代表値)とする場合は、さらに、各車両の制駆動性能及び自身の運転能力に応じた余裕度を提示することができる。同一性能の車両であっても、運転者の技量によっては使いこなせる制駆動力の範囲が異なる。本実施形態の情報提供ユニット100によれば、各ユーザの過去の運転において使用する制駆動力の代表値から基準制駆動力(例えば平均制駆動力)を求め、この基準制駆動力との比較において現在使用する制駆動力の余裕度を提示することができる。これにより、ドライバは、自身が運転する車両の制駆動性能と自身の運転技能を基準とし、自身が現在使用する制駆動力の程度乃至余裕度を知ることができる。
このようにドライバの運転技能レベルに応じた余裕度を表示することができるので、表示内容がドライバの運転技能レベルに合ったものとなるため、上級者に対して煩わしさを感じさせないようにすることができる。
また、本実施形態の情報提供ユニット100によれば、過去の運転時における路面摩擦と車両の制駆動力との対応情報を蓄積する(生成する)際に、車両情報から車両が加速若しくは減速する操作タイミング又は旋回する操作タイミングを検出し、その操作タイミングにおける制駆動力を路面摩擦に対応づけて蓄積することにより、制駆動力の余裕度の算出に適した値を含む対応情報を生成することができる。また、ドライバが制駆動力の余裕度に注目するときの運転操作における制駆動力を含む対応情報を生成することができる。このような対応情報に基づいて、適切な基準制駆動力(平均制駆動力)を算出することができる。
さらに、基準制駆動力を算出するにあたって適切な値(制駆動力)を効率良く抽出することができ、代表値の計算を効率良く実行することができる。また蓄積するデータ量を削減することができる。
<他の実施形態について>
以下、他の実施形態について説明する。第2〜第4実施形態の情報提供ユニット100は、基準制駆動力の補正処理を行う補正機能Fを備える。第2〜第4実施形態の情報提供ユニット100は、図1及び2に示す第1実施形態の情報提供ユニット100の基本的構成を備える。
ここでは、重複する説明を避ける観点から、各実施形態について異なる点を中心に説明を行う。また、第1実施形態の説明に用いた図1〜図14は、以下の実施形態においても援用する。
各実施形態に係る補正機能Fは、ドライバの経験に応じて基準制駆動力を補正する補正機能と、車速に応じて基準制駆動力を補正する補正機能と、走行時における状況に応じて基準制駆動力を補正する補正機能を備える。
以下、各実施形態における各補正機能について説明する。
<第2実施形態>
第2実施形態の情報提供ユニット100が備える補正機能は、基準制駆動力をドライバの経験に応じて補正するものである。具体的に、本実施形態の補正機能F2は、走行履歴(走行の経験)から求められる走行頻度、走行経験の時間的な間隔に基づいて、基準制駆動力を補正する。
以下、図15〜図17に基づいて、第2実施形態の補正機能について説明する。
第2実施形態の制御装置10は、推測された路面摩擦とその道路の走行履歴を参照し、今回推測された路面摩擦の道路の走行履歴が所定値未満である場合は、基準制駆動力(最大制駆動力(Fmax)または平均制駆動力(Fave))を低く補正する。具体的に、制御装置10は、図3のステップS114の記憶処理(図7のステップS1141)により生成された走行履歴テーブルを参照し、今回推測された路面摩擦係数μの道路について、これまでに走行した経験が所定値未満である場合、路面摩擦係数μを算出する際に用いられる路面μ対応係数SDを変更し、基準制駆動力を低い値に補正する。これにより、これまで経験したことのない低い路面摩擦係数μの道路を走行する際には、基準制駆動力を低い値に補正することができる。ここで、路面μ対応係数SDは任意に定義することができ、たとえば、本例では、路面μ対応係数SDを、SD=Fave(平均制駆動力)/Fmax(最大制駆動力)とする。
また、第2実施形態の制御装置10は、推測された路面摩擦係数μとその道路の走行履歴を参照し、今回推測された路面摩擦の道路の走行履歴が所定値以上である場合は、今回推測された路面摩擦の道路の走行履歴、たとえば走行回数(経験値)に応じて、基準制駆動力を補正する。このとき、制御装置10は、走行回数が少ない場合には基準制駆動力を低い値に補正する。具体的に、制御装置10は、図3のステップS114の記憶処理(図7のステップS1141)により生成された走行履歴テーブルを参照し、今回推測された路面摩擦係数μの道路についての走行経験の回数に応じて、基準制駆動力の補正係数を設定する。これにより、経験に応じて基準制駆動力を補正することができる。特に、低い路面摩擦係数μの道路の走行経験が少ないドライバの運転時には基準制駆動力を低く補正することができる。ここで、補正係数は、路面摩擦係数μごとに走行履歴の値に応じて予め設定することが好ましい。
さらに、 第2実施形態の制御装置10は、推測された路面摩擦とその道路の走行履歴を参照し、車両情報から推測された路面摩擦が所定の閾値よりも低い値となるタイミングと、次に車両情報から推測された路面摩擦が所定の閾値よりも低い値となるタイミングとの時間の間隔に応じて、基準制駆動力を補正する。具体的に、制御装置10は、図3のステップS114の記憶処理(図7のステップS1141)により生成された走行履歴テーブルを参照し、今回、路面摩擦係数μが推測されたタイミング、すなわちその路面摩擦係数μの道路を走行したタイミングと、前回の路面摩擦係数μが推測されたタイミング、すなわちその路面摩擦係数μの道路を走行したタイミングとを読み出す。そして、制御装置10は、その両タイミングの差、つまり時間の経過を算出し、その時間間隔に応じて、基準制駆動力の補正係数を設定する。これにより、ドライバが路面摩擦係数μの低い道路をたまに走行する場合には、基準制駆動力を低く補正することができる。ここで、補正係数は、路面摩擦係数μごとに走行履歴の値に応じて予め設定することが好ましい。
続いて、本実施形態の情報提供ユニット100の制御手順を説明する。図15は、第2実施形態の補正処理の制御手順を示すフローチャートであり、低μ路の走行経験に応じた平均制駆動力(又は最大制駆動力)の補正処理の一例を示す。
本処理は、推測された路面摩擦係数μが所定値未満である場合、つまり走行路が低μ路である場合に実行される。
ステップS1151において、制御装置10は、先述した走行履歴テーブルを参照し、推測された路面摩擦係数μの走行頻度を取得する。そして、その路面摩擦係数μの道路の走行頻度がゼロである場合はステップS1152へ進み、ゼロでない場合はステップS1153へ進む。
ステップS1152において、制御装置10は、基準制駆動力を低く補正する。例えば、制御装置10は、図16に示すように推測された路面摩擦係数μが低μに該当して、これまでの総走行時間が0(即ちこれまで走行したことがない)の場合は、低い路面摩擦係数μに対する平均制駆動力(Fa2)を、式「Fa2=SD×FM2(ただし、SD=KF×Fa4/FM4)」を用いて補正する。このとき、補正係数となるFa4/FM4は、推測された路面摩擦係数μよりも高い路面摩擦係数μ´の平均制駆動力(Fa4)と最大制駆動力(FM4)の割合に基づいて補正する。なお、KFは補正係数で例えば0.5に設定され、極低μの場合は更に小さな値(例えば0.3)に設定しても良い。
この処理により、今までに低μ路を走行したことがないドライバがそのような低μ路を走行する場合に、基準制駆動力(平均制駆動力)を低く設定することができる。これにより、同じ制駆動力であっても余裕度を低く(基準制駆動力に対して制駆動力が占める割合を高く)提示することができ、ドライバの注意を喚起することができる。
続いて、ステップS1153において、制御装置10は、推測された路面摩擦係数μの走行頻度が予め設定された所定値未満であるか否かを判断する。そして、走行頻度が所定値未満である場合は、ステップS1154へ進み、そうでない場合はステップS1155へ進む。
ステップS1154において、制御装置10は、今回推測された路面摩擦係数μの道路の走行回数に応じて、基準制駆動力を補正する。制御装置10は、路面摩擦係数μが低い道路の走行回数が少ないほど、基準制駆動力をより低い値に補正する。
また、この補正処理では、低い路面摩擦係数μの道路の走行経験が少ないドライバに対する基準制駆動力(平均制駆動力)の補正を行う観点から次のような補正処理を行うこともできる。例えば、ステップS112における路面摩擦係数(μ)の推測結果が低い値μで、かつ総走行時間が所定値(例えば50時間)以下(走行経験自体が少ない)の場合は、低い路面摩擦係数μに対する平均制駆動力(Fa2)を、式「Fa2=SD×FM2(ただし、SD=KF×Fa4/FM4)」を用いて補正する。このとき、補正係数となるFa4/FM4は、推測された路面摩擦係数μよりも高い路面摩擦係数μ´の平均制駆動力(Fa4)と最大制駆動力(FM4)の割合に基づいて補正する。なお、KLは補正係数であり、前述のKFよりは大きな値(例えば0.7)に設定され、極低μの場合は更に小さな値(例えば0.5)に設定しても良い。
続くステップS1155において、制御装置10は、先述した走行履歴テーブルを参照し、前回、所定の閾値よりも低い路面摩擦係数μが算出されたタイミングと、今回、所定の閾値よりも低い路面摩擦係数μが算出されたタイミングとの時間の間隔、すなわち走行経験の時間的な間隔が所定値以上であるか否かを判断する。走行経験の時間的な間隔が所定値以上である場合はステップS1155へ進み、そうでない場合は終了する。
ステップS1156において、制御装置10は、走行経験の時間的間隔が所定値以上である場合は、基準制駆動力を低く補正する。この処理により、ドライバが、路面摩擦係数μの低い道路を暫く走行していない場合に、その基準制駆動力を(平均制駆動力)補正する。例えばステップS112において低い路面摩擦係数μが推測されたときの走行日時(最も最近の走行日時)と、現在の日時の差が所定値(例えば6ヶ月)以上の場合、つまり、路面摩擦係数μが低い道路の走行経験にブランクがある場合、例えば、ドライバが年に数回、スキー旅行に出かける場面を抽出し、その基準制駆動力を(平均制駆動力)補正する。
制御装置10は、低い路面摩擦係数μに対する平均制駆動力(Fa2)を式「Fa2=SD×FM2(ただし、SD=KI×Fa4/FM4)」を用いて補正する。このとき、補正係数となるFa4/FM4は、推測された路面摩擦係数μよりも高い路面摩擦係数μ´の平均制駆動力(Fa4)と最大制駆動力(FM4)の割合に基づいて補正する。なお、KLは補正係数で前述のKFよりは大きな値(例えば0.7)に設定され、極低μの場合は更に小さな値(例えば0.5)に設定しても良い。
図17は、上述した補正処理において、路面摩擦係数μと走行頻度との関係と、路面摩擦係数μと制駆動力との関係との対応を示す図である。図17に示すように、今まで低い路面摩擦係数μの道路を走行する経験が無い場合には、現在の制駆動力Ftに、低く修正した路面μ対応係数(SD=Fave/Fmax)を乗じて、基準制駆動力を設定する。これにより、基準制駆動力を低く補正することができる。 また、図17に示すように、低い路面摩擦係数μの道路を走行する経験が少ない場合には、その走行履歴に応じて基準制駆動力を設定する。
第2実施形態の情報提供ユニット100は、上述した第1実施形態の情報提供ユニット100と同様の作用及び効果を奏するとともに、以下の効果を奏する。
第2実施形態の情報提供ユニット100は、上述した補正機能を備えるので、補正後の基準制駆動力に対する余裕度を提示することができるため、ドライバの走行経験に応じて、適切な余裕度を提示することができる。
つまり、ドライバがこれまで経験したことのない低い路面摩擦係数μの道路を走行する際には、基準制駆動力を低い値に補正することができ、補正後の基準制駆動力に対する余裕度を提示することができる。
また、ドライバが低い路面摩擦係数μの道路の走行経験が少ない場合には、基準制駆動力を低く補正することができる。
さらに、ドライバが低い路面摩擦係数μの道路をたまに走行する場合には、基準制駆動力を低く補正することができる。
このように、本実施形態の情報提供ユニット100によれば、路面摩擦係数μが低い道路の走行経験が無い、少ない、又は走行経験に時間的なブランクがあるドライバに対して、低めの余裕度を提示することができるので、経験不足のドライバに慎重な運転を促すことができる。
<第3実施形態>
第3実施形態の情報提供ユニット100が備える補正機能は、基準制駆動力を車両の速度に応じて補正するものである。具体的に、本実施形態の補正機能F2は、車両情報から路面摩擦を推測する際に取得される車両情報に含まれる車速に応じて、基準制駆動力を補正する。
以下、図18〜図20に基づいて、第3実施形態の補正機能について説明する。
図18は、第3実施形態の補正処理の制御手順を示すフローチャートであり、車両の速度に応じた平均制駆動力(又は最大制駆動力)の補正処理の一例を示す。
図18に示すように、基本的な処理は図3に示すフローと共通する。異なる点は、本実施形態では、ステップS112において推測された路面摩擦係数μと車速とを対応づけて記憶・蓄積するステップS1241とともに、車速に応じて基準制駆動力を補正するステップS1251の処理である。
ステップS1241において、本実施形態の情報提供コントローラ100の制御装置10は、総走行時間や平均駆動力(Fave)に加えて、路面摩擦係数μの推測結果を、路面摩擦係数μを推測するときの車速域に区分して、記憶する。図19は、路面摩擦係数μの推測値を、「高速」、「中高速」、「中低速」、「低速」の4段階に分類された車速域ごとに記憶する車速別路面μテーブルの一例を示す図である。具体的に、制御装置10は、図19に示す車速別路面μテーブルに、該当する車速と路面摩擦係数μのセルに、車両の走行時間を加算し、その車速でその路面摩擦係数μの道路を走行する総走行時間(ST11〜ST44)を逐次更新する。
また、車速別路面μテーブルには、S1241において記憶された車速と路面摩擦係数μごとの総走行時間に応じて設定された補正係数(K11〜K44)の値が書き込まれる。
そして、ステップS1251において、制御装置10は、ステップS1241において更新処理がなされた車速別路面μテーブルを参照し、各路面摩擦係数μにおける平均制駆動力(Fa1〜Fa4)を、速度域ごとに設定された補正係数を用いて補正する。
また、本実施形態では、図19に例示する補正係数(K11〜K44)は、図15に示すテーブルのように、各領域(車速と路面摩擦係数μにより特定されるセル領域)の総走行時間に応じて、路面摩擦係数μが低くなるほど各速度域の補正係数の値が低くなるよう設定する。図20は、車度域と路面摩擦係数μごとに定義された基準制駆動力の算出に用いられる補正係数テーブルの一例を示す図である。
そして、制御装置10は、平均制駆動力(Fa1〜Fa4)に補正係数(K11〜K44)を乗じて、平均制駆動力を補正する。例えば路面摩擦係数μが高く、かつ車速が高速域の場合は平均制駆動力Fa4に設定された補正係数K41を乗じて(K41×Fa4)、平均制駆動力Fa4を補正する。その後、ステップS116において、制御装置10は、補正後の平均制駆動力を用いて余裕度を提示する。
なお、本実施形態では基準制駆動力が平均制駆動力である場合を例にして説明したが、基準制駆動力が最大制駆動力である場合も同様の処理となる。
第3実施形態の情報提供ユニット100は、上述した第1実施形態の情報提供ユニット100と同様の作用及び効果を奏するとともに、以下の効果を奏する。
本実施形態の情報提供ユニット100は、車速域に応じて補正した基準制駆動力(平均制駆動力又は最大制駆動力)に基づいて、余裕度を提示するので、速度が高い領域ほどドライバに対してより慎重な運転を促すことができる。
<第4実施形態>
第4実施形態の情報提供ユニット100が備える補正機能は、走行路の天候、走行路の外気温、及び走行路の形状の3つの要因に応じて基準制駆動力を補正する。
以下、各補正処理について説明する。
まず、走行路の天候に応じた基準制駆動力の補正処理について説明する。
本実施形態の制御装置10は、自車両の走行地点を含む走行道路が属する地域の天候情報を取得し、取得された天候情報が雨天及び/又は降雪である場合は基準制駆動力を低く補正する。ここで、天候情報はナビゲーション装置500から取得する。
本実施形態のナビゲーション装置500は、図1に示すように、現在位置検出装置530と、地図データベース500と、道路情報取得装置520と、外部通信装置510とを有する。現在位置検出装置530は、GPS(Global Positioning System)が取得する情報に基づいて、自車両の現在位置を検出する。また、地図データベース500は、経路誘導処理に用いられる一般的な電子地図データであり、道路の曲率、道路の勾配などの道路情報を含む。また、外部通信装置510は、無線通信機能を備え、外部装置と情報の授受を行う。情報取得装置520は、外部通信装置510を介して、現在位置検出装置530により検出された現在位置(走行地点)を含む走行道路が属する地域の天候情報を外部情報提供サーバから取得する。情報取得装置520は、現在位置検出装置530により検出された現在位置(走行地点)から進行方向に所定量だけ離れた地点(走行が予定される地点)についての天候情報を取得してもよい。そうすることにより、将来、走行する地点における天候情報に基づいて基準制駆動力を補正することができる。
そして、本実施形態の制御装置10は、取得された天候情報が雨天及び/又は降雪である場合は、基準制駆動力を低く補正する。
次に、走行路の外気温に応じた基準制駆動力の補正処理について説明する。
本実施形態の制御装置10は、車両の車両コントローラ200から車両の外気温を取得する。車両の外気温は車載の外気温センサ310により検出される。
そして、本実施形態の制御装置10は、取得される車両情報に含まれる外気温が所定の閾値よりも低い値である場合は、基準制駆動力を低く補正する。
続いて、走行路の曲率・勾配に応じた基準制駆動力の補正処理について説明する。
本実施形態の制御装置10は、自車両の走行地点を含む走行道路の曲率及び/又は勾配をナビゲーション装置500から取得する。ナビゲーション装置500の情報取得装置520は、地図データベース500にアクセスし、現在位置検出装置530により検出された現在位置(走行地点)を含む走行道路の曲率及び/又は勾配を取得する。
そして、本実施形態の制御装置10は、取得された曲率及び/又は勾配が所定の閾値以上である場合は、基準制駆動力を低く補正する。
以下、図21に基づいて、第3実施形態の補正処理の制御手順を説明する。本制御は情報提供ユニット100において図3にの制御プログラムから呼出されて実行される。
ステップS1351において、制御装置10は、車両が走行する道路の状況(天候、気温、曲率)を取得する。具体的に、制御装置10は、ナビゲーション装置500の情報取得装置520から現在走行する道路が属する地域の天候情報とその道路の曲率及び/又は勾配を取得し、車両コントローラ200から外気温を取得する。
ステップS1352において、制御装置10は、走行道路が属する地域の天候又は天気予報(将来の天候)が雨天及び/又は降雪であるか否かを判断する。走行路の天候が雨天及び/又は降雪である場合はステップS1353へ進み、そうでない場合はステップS1354へ進む。
ステップS1353において、制御装置10は、基準制駆動力(平均制駆動力Faveを又は最大制駆動力Fmax)を、例えば以下のように補正する。
走行路の天候が雨天又は雨天に変化する場合は、現在の路面摩擦係数μが高い場合でも、基準制駆動力を低い値に補正する。具体的には、現在の路面摩擦係数μよりも低い路面摩擦係数μに対応づけられた値を基準制駆動力とする。
また、走行路の天候が降雪又は降雪に変化する場合は、現在の路面摩擦係数μが高い場合でも、基準制駆動力をさらに低い値に補正する。具体的には、現在の路面摩擦係数μよりも低い路面摩擦係数μに対応づけられた値を基準制駆動力とする。走行路の天候が降雪又は降雪に変化する場合は、走行路の天候が雨天である場合の基準制駆動力よりもさらに低い値をその基準制駆動力とすることが好ましい。
ステップS1354において、取得された外気温が所定値未満(例えば3℃未満、1℃未満等零度近傍の値)なった場合は、ステップS1355へ進み、そうでない場合はステップS1358へ進む。
ステップS1355において、制御装置10は、現在の路面摩擦係数μが高い場合でも、基準制駆動力をさらに低い値に補正する。具体的には、現在の路面摩擦係数μよりも低い路面摩擦係数μに対応づけられた値を基準制駆動力とする。
続くステップS1356において、走行路の曲率が所定値以上であり、走行路にカーブがある、又は、走行路の下り勾配が所定値以上であり、走行路に下り坂があると判断された場合、ステップS1357へ進む。他方、走行路にカーブ・下り坂が無いと判断する場合はステップS116へ進む。
ステップS1357において、制御装置10は、さらに、基準制駆動力を低い値に補正する。補正の手法は特に限定されないが、本実施形態の制御装置10は、式「 Fave=KR×Fave」を用いて、基準制駆動力を補正する。ここでKRは道路形状に応じた補正係数であり、例えば道路種別に応じて以下のように設定する。
走行道路の道路種別が高速道路である場合は、曲率半径400m以下または下り勾配3%以上の場合、KR=0.7とする。
走行道路の道路種別が一般道路である場合は、曲率半径100m以下または下り勾配5%以上の場合、KR=0.7とする。
なお、これらの補正値KRは、走行路の天候が雨天または降雪であり、かつ走行路における外気温が所定値未満(零度近傍)である場合に、さらに小さな値に設定してもよい。
その後、図3に示すステップS116へ進み、制御措置10は情報提示装置400を介して、余裕度を提示する。
提示される余裕度は、天候、外気温、道路形状(曲率・勾配)に応じて補正された基準制駆動力を基準とする値である。
図22及び図23は、本実施形態における余裕度の提示例を示す図である。図22は、外気温低下時に提示される余裕度の提示態様の一例を示す図である
図22に示すように、外気温の低下が検出された場合、制御装置10は、基準制駆動力の補正に伴い、平均制駆動力Faveに対応する円柱の直径を小さくして表示させる。
同じく図22に示すように、制御装置10は、さらに、基準制駆動力に対する制駆動力の余裕度が所定値(例えば70%)以上になると路面凍結を予測するメッセージを添えて控え目な運転を促す表示を提示させる。
また、図23に示すように、走行路に所定値以上の急なカーブが検出された場合、制御装置10は、この先にカーブがあることを示すメッセージを添えて控え目な運転を促す表示を提示させる。
第4実施形態の情報提供ユニット100は、上述した第1実施形態の情報提供ユニット100と同様の作用及び効果を奏するとともに、以下の効果を奏する。
第4実施形態の情報提供ユニット100は、上述した補正機能を備えるので、補正後の基準制駆動力に対する余裕度を提示することができるので、走行路の環境に応じて、適切な余裕度を提示することができる。
つまり、ドライバが雨天及び/又は降雪の状況下で運転する際には、基準制駆動力を低い値に補正することができ、路面の滑りやすさを考慮して、補正後の基準制駆動力に対する余裕度を提示することができる。
また、ドライバが、外気温が低く、凍結の可能性のある状況下で運転する際には、基準制駆動力を低い値に補正することができ、路面凍結の可能性を考慮して、補正後の基準制駆動力に対する余裕度を提示することができる。
さらに、ドライバが、カーブや下り坂のある状況下で運転する際には、基準制駆動力を低い値に補正することができ、路面の滑りやすさを考慮して、補正後の基準制駆動力に対する余裕度を提示することができる。
このように、天候、外気温及び道路形状(曲率・勾配)に基づいて基準制駆動力を補正することにより、道路の路面状況により変化する路面摩擦係数μに応じて基準制駆動力を補正することができるので、実際の路面状況に適合した余裕度を提示することができる。これにより、路面摩擦係数μが低くなる前に、前もってドライバに慎重な運転を促すことができる。
また、路面状態が変化する前に、補正された基準制駆動力をから求められた余裕度を提示できるので、十分な対応ができるように適切にアドバイスを行うことができる。
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
すなわち、本明細書では、本発明に係る情報提供装置の一態様として情報提供ユニット100を例にして説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
また、本明細書では、本発明に係る情報提供装置の一態様として、CPU11、ROM12、RAM13を含む制御装置10を備えた情報提供ユニット100を一例として説明するが、これに限定されるものではない。
また、本明細書では、本願発明に係る車両情報取得手段と、制駆動力算出手段と、基準制駆動力算出手段と、余裕度導出手段と、提示手段とを有する情報提要装置の一態様として、車両情報取得機能Aと、制駆動力算出機能Bと、基準制駆動力算出機能Cと、余裕度導出機能Dと、提示制御機能Eとを実現する制御装置10を備えた情報提供ユニット100を例にして説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
また、本明細書では、本願発明に係る基準制駆動力算出手段を有する情報提供装置の一態様として、補正機能Fをさらに実行する制御装置10を有する情報提供ユニット100を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。