JP2010170800A - 信号伝送線路 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡易な構成で高周波信号伝送時における銅損を抑え、低損失な信号伝送線路を提供する。
【解決手段】信号の伝送に用いられる複数の導体(内部導体2a,2b)を備え、複数の導体(内部導体2a,2b)の各々は、互いに接触しないように配置されているとともに、互いに信号伝送方向距離に対して所定の頻度でリベット4により電気的に接続されている。
【選択図】図1
【解決手段】信号の伝送に用いられる複数の導体(内部導体2a,2b)を備え、複数の導体(内部導体2a,2b)の各々は、互いに接触しないように配置されているとともに、互いに信号伝送方向距離に対して所定の頻度でリベット4により電気的に接続されている。
【選択図】図1
Description
本発明は、信号の伝送に用いられる同軸ケーブルや導波管等の信号伝送線路に関する。
従来から、導波管や同軸ケーブル等の信号伝送線路は、高周波信号の伝送に用いられている。導波管は、マイクロ波からミリ波に及ぶ周波数領域において、伝送損失が同軸ケーブルに比して小さく、しかも同軸ケーブルよりも大きな電力を伝送できるといった特徴を有する。一方、同軸ケーブルは、導波管よりも寸法を小さくすることができ、さらに伝送周波数帯域を広くとることができるため、VHF〜UHF帯における高周波信号の伝送に使用されることが多い。
同軸ケーブルの伝送損失要因として、導電体の電気抵抗による損失、誘電体損失、及び放射損失が挙げられる。このうち放射損失は、例えば漏洩同軸ケーブル等のように意識的に電磁波放射を起こさせる場合を除けば無視できる程度である。また、誘電体損失は、一般的に周波数に1次比例して増加する。一方、導電体の電気抵抗による損失(以下、銅損と言う)は、周波数の平方根に比例して増加する。同軸ケーブルの損失は、周波数の平方根に比例しており、誘電体損失よりも銅損による損失が支配的である。さらに、通常の導波管は、管内部に誘電体を有していないため誘電体損失が無く、その損失は銅損が支配的である。
銅損による損失を減らすために、信号を伝送する導体の径を大きくして電気抵抗の低減を図ることが考えられる。そのため、例えばUHF帯の長距離伝送に用いる同軸ケーブルは、大口径同軸ケーブルを用いる必要がある。ここで、同軸ケーブルの伝送損失は、大部分が上述したように銅損によるものである。この銅損が生じる主な原因は、高周波電流の「表皮効果」によるものである。
表皮効果とは、高周波電流が導体を流れる際に、電流密度が導体の表面で高く、表面から導体の内部方向に向かって低くなる現象のことである。表皮効果により高周波電流が導体の表面しか流れないため、実効的な導体厚みは、周波数にしたがって薄くなる。例えば、10MHzの場合に、導体の実効厚みは約20μmであり、1GHzの場合には2μmとなる。すなわち、周波数が高くなるほど電流が表面へ集中するので、導体の実効的な電気抵抗は大きくなり、損失が発生する。
詳述すると、高周波電流が導体を流れる場合に、導体内の電流密度は、導体表面からの距離に対して指数関数的に減少し、導体中心部では電流は殆ど流れなくなる。このため、電流経路に寄与する実効的な導体厚みは、薄いものとなる。この実効厚みを表す指標であるSkin Depthは、電流密度が導体表面の1/eとなる導体表面からの距離で定義されている。ここで、eは、自然対数の底であり、約2.718である。
したがって、高周波帯域において信号伝送の際に生ずる損失は、銅損を主原因とするものであり、低損失の信号伝送線路が求められている。特許文献1には、所定の周波数範囲内において周波数に実質的に依存しない減衰特性を示し、また周波数に関して導体の位相応答を減少させる高周波信号伝送用の複合導体が記載されている。この複合導体は、伝導性基体及び当該伝導性基体上に配置された伝導性被覆を有しており、この伝導性被覆の透磁率及び導電率と伝導性基体の透磁率及び導電率とが所定の関係を有するものである。
具体的には、伝導性被覆層の厚さや伝導性基層及び伝導性被覆層双方の材料の性質等を変えることにより、この複合導体は、周波数に対する信号位相の応答および減衰を調整することを可能にしている。
すなわち、特許文献1に記載の複合導体は、高周波電流を表面の導電率の高い導体に集中させることで、表皮効果による導体の抵抗の変化を抑えている。
しかしながら、特許文献1に記載の複合導体は、伝導性基層及び伝導性被覆層の導電率と透磁率とが所定の条件を満たす必要があるため、当該伝導性基層及び伝導性被覆層に用いられる材質は限定的なものとなる。また、当該複合導体による効果は、所定の周波数帯域内においてのみ有効であるとともに、表皮効果による周波数に依存した高周波信号の減衰特性を周波数に依存しないものとすることができるというものである。
本発明は上述した従来技術の問題点を解決するもので、簡易な構成で信号伝送時における銅損を抑え、低損失な信号伝送線路を提供することを課題とする。
本発明に係る信号伝送線路は、上記課題を解決するために、信号の伝送に用いられる複数の導体を備え、前記複数の導体の各々は、互いに接触しないように配置されているとともに、互いに信号伝送方向距離に対して所定の頻度で電気的に接続されていることを特徴とする。
本発明によれば、簡易な構成で信号伝送時における銅損を抑え、低損失な信号伝送線路を提供することができる。
以下、本発明の信号伝送線路の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。図1(a)は、本発明の実施例1に係る信号伝送線路の基本構造を示す図である。また、図1(b)は、本実施例の信号伝送線路の断面図である。
本実施例の信号伝送線路は、図1に示すように、外部導体1と内部導体2a,2bとが誘電体3を挟んで同軸上に配置されている。また、図示されていないが、外部導体1の外周上には外皮が設けられている。
内部導体2a,2bは、本発明の「複数の導体」に対応し、信号の伝送に用いられる。すなわち、本実施例の信号伝送線路は、複数の導体により形成された内部導体2a,2bと、外部導体1とを同軸に配して同軸ケーブルを構成する。本実施例の信号伝送線路である同軸ケーブルが従来の同軸ケーブルと異なる点は、内部導体2a,2bが二重構造となっている点である。
複数の導体である内部導体2a,2bの各々は、間に絶縁体5を挟むことにより、互いに接触しないように配置されている。この絶縁体5は、上述した誘電体3と同じ材質を使用してもよい。なお、本実施例の内部導体2aと内部導体2bとの大きさは、ほぼ同程度とする。したがって、内部導体2aと内部導体2bとの間の距離は、非常に短いものとなる。
また、複数の導体である内部導体2a,2bの各々は、図1(a)(b)に示すように完全に接触しないわけではなく、互いに信号伝送方向距離に対して所定の頻度でリベット4により電気的に接続されている。ただし、本実施例における「リベット4」を使用した接続は1例であり、リベットのみならず導体であればどのようなものを接続に使用してもよい。例えば、「リベット4」を使用した場合における内部導体2a,2b間の接続は、「点接触」となるが、信号伝送方向距離に対して所定の頻度で内部導体2bの円周全体を覆うような導体を構成して「面接触」となるように構成することもできる。
なお、本実施例の信号伝送線路は、内部導体2a,2bの2つの導体による二重構造の例を説明するものであるが、必ずしも導体数は2つに限らず、三重構造や四重構造等の多層構造の内部導体を有するものでもよい。
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。上述したように、Skin Depthは、電流密度が導体表面の1/eとなる導体表面からの距離で定義されており、周波数の平方根に逆比例して小さくなる。その結果、実効的な電気抵抗が増加するため、銅損は増加する。
表皮効果は、一般的な同軸ケーブルの内部導体、外部導体のいずれにおいても生じるが、Skin Depthは同一である。この場合、実効電流経路の断面積は、各導体直径に比例するため、外部導体の実効抵抗は内部導体に比べて小さい。すなわち、銅損は、内部導体において生じるものが主となる。したがって、本実施例の信号伝送線路は、内部導体2a,2bによる二重構造を採用することにより、銅損による損失を低減させることを目的とする。
図2は、本発明の実施例1に係る信号伝送線路の等価回路を示す図である。通常構造の同軸ケーブル(内部導体が二重構造となっていないもの)の単位長あたりのキャパシタンスをCとし、インダクタンスをLとし、電気抵抗をRとすると、その特性インピーダンスZ0は、Z0=√(L/C)により表される。
一方、本実施例の信号伝送線路である同軸ケーブルは、2つの内部導体2a,2bによる二重構造を有する。したがって、内部導体2aと外部導体1との間のキャパシタンスは変わらないが、インダクタンス及び電気抵抗は、内部導体2aと内部導体2bとが並列回路を構成するため変化する。仮に外部導体1の電気抵抗を無視すると、二重構造の内部導体2a,2bを有する本発明の信号伝送線路は、従来の同軸ケーブルに比して単位長あたりの電気抵抗が約R/2に半減する。
本実施例の信号伝送線路である同軸ケーブルが有するインダクタンスは、両内部導体2a,2b間の相互インダクタンスMの値により異なるものとなる。仮に両内部導体2a,2b間の相互インダクタンスMが0と見做せる場合には、同一LRの並列接続であるため、単位長あたりのインダクタンスはL/2となる。この場合に、本実施例の信号伝送線路である同軸ケーブルの特性インピーダンスは、次式により表される。
逆に、両内部導体2a,2b間の結合が強く、相互インダクタンスM=1である場合には、インダクタンスLの値は通常の同軸ケーブルと同一となる。したがって、この場合における本実施例の信号伝送線路である同軸ケーブルの特性インピーダンスは、次式により表される。
Z=Z0 …(2)
Z=Z0 …(2)
したがって、本実施例の信号伝送線路のように二重構造の内部導体2a,2bを有する同軸ケーブルのインピーダンスは、内部導体2a,2bの構造に応じて(1)式と(2)式との間の値となる。
次に、同軸ケーブルを定電圧駆動した場合(ケーブルは特性インピーダンスで終端)の損失を計算する。信号原から供給される電力P及びケーブルの損失Lossは、以下に示す(3)式及び(4)式により表される。
P=E0 2/Z …(3)
P=E0 2/Z …(3)
(4)式に示すように、R/Zは、単位長あたりの損失率η(伝送電力に対する損失の比)を示す。通常の同軸ケーブルの損失率は、η0=R/Z0で表される。本実施例の信号伝送線路のように、二重構造の内部導体2a,2bを有する同軸ケーブルにおける損失率は、相互インダクタンスMの値に応じて以下に示す式の範囲の値となる。
すなわち、本実施例の同軸ケーブルにおける損失率は、相互インダクタンスMの値に応じてη0/2からη0/√2の間の値となり、相互インダクタンスMの値がいずれの場合であっても、通常の同軸ケーブルの損失率η0に比して損失率が低減することとなる。これは、本実施例の同軸ケーブルが二重構造の内部導体2a,2bを有することによる効果であるといえる。
内部導体2aは、仮に厚みを厚くしても高周波に対する実効電気抵抗は低減しない。そのため、内部導体2aの厚みは、SkinDepthの数倍程度で十分である。材質が銅の場合には、Skin Depthは、10MHzの周波数に対して約20μmとなり、1GHzの周波数に対しては約2μmとなる。仮に内部導体2aの厚みを厚くすると、内部導体2bの径を小さくせざるを得ないため、内部導体の構造を二重化することによる効果が少なくなってしまうことに設計者は注意する必要がある。
また、両内部導体2a,2b間の間隔を保つ絶縁体5の厚みは、薄い方が有利であるが、一般的には機械的強度などの条件を満たすように定められる。
一般に、同軸ケーブル内においては、TEM(Transverse Electro Magnetic)モードにより直交する電界と磁界が相互に影響を与えながら電磁波が進行する。しかしながら、本実施例のように内部導体が二重構造をとる同軸ケーブルは、内部導体2aが内部導体2bに対してシールドの役割を果たすこととなり、外部導体1と内部導体2bとの間において電磁界が発生しないため、内部導体2bにおける信号伝送が困難となる。そこで、複数の導体である内部導体2a,2bの各々は、互いに信号伝送方向距離に対して所定の頻度でリベット4により電気的に接続されている。
仮にリベット4が存在しない場合を考えると、内部導体2aと内部導体2bに流れる高周波電流間に振幅及び位相の差異が生じ得る。その結果、両内部導体2a,2b間のキャパシタンスC´を通して両内部導体2a,2bは電気的に容量性結合する。そのため、内部導体2a,2bに流れる電流と外部導体1に流れる電流との間の位相関係は、本来の同軸ケーブルのものと異なってしまい、伝搬特性を劣化させるとともに伝送損失を増加させる。
これに対してリベット4が存在する本発明の場合には、両内部導体2a,2bが電気的に接続されるため、内部導体2a,2b間の電位は同一に保たれる。内部導体2a,2b間の電位が同一であれば、キャパシタンスC´が大きくても電流は流れない。その結果、両内部導体2a,2bに流れる電流の振幅および位相は同一となり、同軸ケーブルの伝搬特性に影響しない。ただし、リベット4をあまりに多数配置してしまうと、内部導体2a,2bを二重構造としたことによる損失低減効果が薄れてしまうため、リベット4は適度な間隔で配置される必要がある。
リベット4を配置するケーブル方向(信号伝送方向)の間隔は、使用する最大周波数を目安に定めることができる。リベット4間隔がケーブル内波長に対して十分短い場合は、上記説明のように両内部導体2a,2bは電気的に接続されることになる。ケーブル内波長がリベット4間隔と同程度になると、上述した位相差が生じ始める。したがって、リベット4間隔は、同軸ケーブル内に伝送する信号波長の1/2程度が目安となる。
上述のとおり、本発明の実施例1の形態に係る信号伝送線路によれば、内部導体を二重構造とし、リベット4をケーブル方向に対して所定の頻度で配置するという簡易な構成で高周波信号伝送時における銅損を抑え、低損失な信号伝送線路を実現することができる。
具体的には、本発明を同軸ケーブルに適用することにより、表皮効果による伝送損失を数分の1から10分の1程度に低減することが可能である。低損失化の効果の一例を示すと、地下鉄車輌に地上デジタル波を再送信する場合に、通常の漏洩ケーブルで1km(伝送損失20dB)をカバーするには約10Wの送信機が必要である。しかしながら、本実施例の信号伝送線路である同軸ケーブルを採用することにより伝送損失が1/2になるのであれは、送信機出力は1Wで済む。さらに、伝送損失が1/4になるのであれば、送信機出力は0.3Wでよい。したがって本発明の信号伝送線路は、信号伝送線路たる同軸ケーブル自体の低損失化のみならず、当該同軸ケーブルを利用する装置全体の低損失化、小型化、低コスト化にも寄与しうる。
なお、図3は、本発明の実施例1に係る信号伝送線路の基本構造の別例を示す図である。図3に示す信号伝送線路が図1と異なる点は、内部導体2a,2bのみならず外部導体1a,1bが二重構造を形成している点である。
すなわち、外部導体1a,1bは、本発明の「複数の導体」に対応し、信号の伝送に用いられる。図3に示す信号伝送線路は、複数の導体により形成された外部導体1a,1bと、内部導体2a,2bとを同軸に配して同軸ケーブルを構成する。
複数の導体である外部導体1a,1bの各々は、間に絶縁体5aを挟むことにより、互いに接触しないように配置されている。また、外部導体1aと外部導体1bとの大きさは、ほぼ同程度とする。したがって、外部導体1aと外部導体1bとの間の距離は、非常に短いものとなる。
また、複数の導体である外部導体1a,1bの各々は、図3に示すように完全に接触しないわけではなく、互いに信号伝送方向距離に対して所定の頻度でリベット4aにより電気的に接続されている。
さらに、図3に示す信号伝送線路は、外部導体1a,1bの2つの導体による二重構造の例を説明するものであるが、さらに多数の導体による多層構造の外部導体を有するものでもよい。
このように、内部導体2a,2bを二重構造とするのみならず、外部導体1a,1bを二重構造とすることにより、信号伝送時における銅損を抑え、さらに低損失な信号伝送線路を実現することができる。
また、内部導体を従来の同軸ケーブルと同様の構造とし、外部導体のみを二重構造とすることも考えられ、この場合における同軸ケーブルも銅損による損失低減効果が期待できる。ただし、内部導体と外部導体のいずれか一方を二重構造とするのであれば、上述したように、内部導体のみを二重構造とした同軸ケーブルの方が外部導体のみを二重構造とした同軸ケーブルよりも損失低減効果が高い。
図4(a)は、本発明の実施例2に係る信号伝送線路の基本構造を示す図である。また、図4(b)は、本実施例の信号伝送線路の壁面構造図である。
本実施例の信号伝送線路は、図4に示すように、導体6a,6b,6cが同軸上に配置され方形の断面を有する管を構成している。すなわち、導体6a,6b,6cは、本発明の「複数の導体」に対応し、電磁波として伝播する信号の伝送に用いられる。複数の導体6a,6b,6cにより形成された中空の金属管は、導波管を構成する。なお、導波管の断面形状は方形に限らず円形等でもよいが、一般的なのは方形である。
電磁波は、当該管の中の形状や寸法、波長(周波数)に応じた電磁界を形成しながら管の中を伝搬する。導波管は、同軸ケーブルと異なり内部導体が無く、また誘電体損の原因となる誘電体が空気であるため、低損失で大電力の伝送が可能という利点を有する。
複数の導体6a,6b,6cの各々は、互いに接触しないように配置されているとともに、図4(b)に示すように、互いに信号伝送方向距離に対して所定の頻度で導体間接続突起7により電気的に接続されている。
なお、本実施例の信号伝送線路は、導体6a,6b,6cの3つの導体により内部壁面を三層構造とした例を説明するものであるが、必ずしも導体数は3つに限らず、さらに多くの導体による多層構造を有するものでもよい。
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。本実施例の信号伝送線路である導波管における中空の導体6a内を電磁波が伝搬する。その際、導波管に入射された電磁波は導体6aの壁面を反射しながら進行するため、壁面における銅損が発生する。しかしながら、本実施例の導波管の内部壁面は、3つの導体6a,6b,6cによる三層構造を有しているため、実施例1と同様に、インダクタンス及び電気抵抗が低減し、内部壁面における銅損を低減することができる。
また、複数の導体6a,6b,6cの各々は、互いに信号伝送方向距離に対して所定の頻度で導体間接続突起7により電気的に接続されているので、導体6a,6b,6c間に位相差及び振幅差を生じることが無く、伝搬特性の劣化を防止し、伝搬損失の低減を図ることができる。
導体間接続突起7を配置する間隔は、実施例1と同様に、使用する最大周波数を目安に定めることができる。導波管内を伝搬する信号波長が導体間接続突起7間隔と同程度になると、導体6a,6b,6c間に位相差が生じ始めるため、導体間接続突起7間隔は、1例として、伝送する信号波長の1/2程度が目安となる。
上述のとおり、本発明の実施例2の形態に係る信号伝送線路によれば、実施例1と同様の効果を得ることができる。さらに、導波管の内部壁面を多層構造とすることにより、本発明の銅損低減技術は、マイクロ波用の導波管へも応用できるため、極めて汎用性の高い技術であるといえる。
特に導波管は、マイクロ波の伝送に用いられるため、内部壁面におけるSkin Depthが非常に薄いものと考えられる。したがって、本発明のように、導波管の内部壁面を多層構造とする信号伝送線路は、非常に高い銅損低減効果を期待することができる。
多層構造の導電体を予め製作しておき、これを用途に応じて加工・成型すると種々の信号伝送線路を効率的に製作することができる。図5は、本発明の実施例3に係る信号伝送線路に用いられる導体の構造を示す図である。ここで、図5(a)は、本実施例の信号伝送線路に用いられる導体の外観図である。また、図5(b)は、図5(a)に示す導体を複数重ねて形成した多層構造導電体の側面図である。また、図5(c)は、図5(a)に示す導体を複数重ねて形成した多層構造導電体の断面図である。
図5(b)(c)に示す多層構造導電体は、本発明の「複数の導体」に対応し、信号の伝送に用いられる。複数の導体の各々は、図5(a)に示すように、互いに電気的に接続するための接続突起11及び接続受孔12を有し、表面に金属メッキ9を形成したフィルム状絶縁体10である。詳述すると、図5(a)に示す導体は、フィルム状の絶縁体10に層間接続用の突起構造(接続突起11)及びその突起物に勘合する接続受孔12を成型したものの表面に金属メッキ9を施したものである。このフィルム状の導電層を必要枚数だけ重ねて圧着することにより、本発明の多層構造導電体を構成することができる。
複数の導体である多層構造導電体の各々のフィルム状絶縁体10は、表面の金属メッキ9が他のフィルム状絶縁体10の金属メッキ9と突起構造以外の部分で互いに接触しないように配置されている。
また、複数の導体である多層構造導電体の各々のフィルム状絶縁体10は、互いに信号伝送方向距離に対して所定の頻度で接続突起11及び接続受孔12により電気的に接続されている。すなわち、接続突起11は、金属メッキ9を施したフィルム状絶縁体10を複数枚重ねて圧着した際に、接続受孔12に嵌合され、フィルム同士の一面全体が接触しないように固定するとともに、当該嵌合部分において電気的に接続する。
接続突起11及び接続受孔12を配置する間隔は、実施例1,2と同様に、使用する最大周波数を目安に定めることができる。金属メッキ9を伝搬する信号波長が信号伝送方向距離に対する接続突起11及び接続受孔12の設置間隔と同程度になると、導体間に位相差が生じ始めるため、接続突起11及び接続受孔12の設置間隔は、1例として、伝送する信号波長の1/2程度が目安となる。
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。図5に示す多層構造導電体は、フィルム状の導電層を必要枚数だけ重ねて圧着することにより、銅損による損失を低減させる。また、フィルム状の導体同士は、接続突起11及び接続受孔12により電気的に接続されるため、各フィルム状絶縁体10の金属メッキ9に流れる電流同士に位相差が生ずるのを防止する。そこで、当該多層構造導電体を信号の伝送に用いることにより、低損失の信号伝送線路を実現することができる。
まず、本実施例の多層構造導電体を同軸ケーブルに応用して低損失の信号伝送線路を実現する場合を考える。例えば、図5に示すフィルム状の多層構造導電体を通常構造の同軸ケーブルの内部導体に巻きつけることにより、多層構造の内部導体を有する低損失の同軸ケーブルを実現することができる。さらに、フィルム状の多層構造導電体を通常構造の同軸ケーブルの外部導体に巻きつけることにより、多層構造の外部導体が形成される。
フィルム状の多層構造導電体は、メッキまたは超薄金属板などで構成されるため、低周波信号に対しては十分なSkin Depthが確保できない場合がある。しかしながら、上述したように通常構造の同軸ケーブルの内部導体あるいは外部導体に本実施例の多層構造導電体を巻きつけて形成した同軸ケーブルは、低周波信号に対しては通常の金属導体に電流が流れるため、通常の同軸ケーブルと同等の損失特性となる。一方、表皮効果が顕著となる高周波領域では、本実施例の多層構造導電体を利用した同軸ケーブルは、多層構造による銅損低減効果が働くため、低損失特性を得ることができる。
さらに、プラスティック等の適度な柔軟性を有する材質で内部導体形状を作成し、これに本実施例に示すフィルム状の多層構造導電体を巻きつけて同軸ケーブルを形成することも可能である。外部導体についても同様に作成すれば、軽量で且つ曲げ易い同軸ケーブルが実現できる。
また、本実施例の多層構造導電体を導波管に応用して低損失の信号伝送線路を実現する場合を考える。導波管の内部空洞の形状をプラスティック等で形成し、これに本実施例で示す多層構造導電体を貼り付けて形成した導波管は、実施例2において述べた導波管と同様に低損失の信号伝送線路であり、且つ容易に構成することができる。ただし、導波管の内部空洞の形状をプラスティックで形成した場合には、プラスティックによる誘電体損失が問題となる。そこで、プラスティックで形成した内壁に多層構造導電体を貼り付けた後に、当該プラスティックを溶融等の手段により除去する必要がある。その場合には、フィルム状導電体の形状を所定の形状に保持するため、当該プラスティックを溶融除去する前に、フィルム状導電体の外側に形状を保持するための機構(例えば、別のプラスティックを貼り付ける等)を用意することが考えられる。
上述のとおり、本発明の実施例3の形態に係る信号伝送線路によれば、金属メッキ9を施したフィルム状絶縁体10を複数枚重ねて圧着して形成した多層構造導電体を使用するので、実施例1,2と同様に簡易な構成で高周波信号伝送時における銅損を抑え、低損失な信号伝送線路を実現することができる。
特に、信号を伝送させる導体がフィルム状に形成されているため、形状加工が容易であり、同軸ケーブルや導波管等の様々な信号伝送線路に応用可能であるという利点を有する。
また、本実施例の信号伝送線路に用いる多層構造導電体の各導体は、信号伝送方向距離に対して所定の頻度で接続突起11及び接続受孔12を設けることにより、多層構造を形成する各導体間で位相差が発生して伝送特性が劣化するのを防止することができる。
図6は、本発明の実施例4に係る信号伝送線路の基本構造を示す図である。ここで、図6(a)は、本実施例に係る信号伝送線路の側面図である。また、図6(b)は、本実施例に係る信号伝送線路の断面図である。
本実施例の信号伝送線路は、図6に示すように、外部導体1と内部導体2とが誘電体3を挟んで同軸上に配置されている。また、図示されていないが、外部導体1の外周上には外皮が設けられている。
内部導体2は、本発明の「複数の導体」に対応し、信号の伝送に用いられる。すなわち、本実施例の信号伝送線路は、複数の導体により形成された内部導体2と、外部導体1とを同軸に配して同軸ケーブルを構成する。本実施例の信号伝送線路である同軸ケーブルが従来の同軸ケーブルと異なる点は、内部導体2が多数の細い線条導体13を束ねることにより構成されている点である。
複数の導体である内部導体2の各々は、絶縁体により被覆された線条導体13であり、互いに接触しないように配置されている。
また、複数の導体である内部導体2の各々は、図6(a)(b)に示すように完全に接触しないわけではなく、互いに信号伝送方向距離に対して所定の頻度で接続部14により電気的に接続されている。すなわち、各線条導体13は、所定の頻度で絶縁被覆が除去された部分を有し、当該除去部分同士が電気的に接続されるように導体線等により構成された接続部14によって縛られている。
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。各線条導体13に流れる電流は、表皮効果のために各線条導体13の表面近傍に集中する。ここで、各線条導体13の半径をRaとし、同軸ケーブルの内部導体2に対応する半径をRinとすると、線条導体13の数Nは、一層あたり次式で近似することができる。
N≒2πRin/2Ra=πRin/Ra (6)
N≒2πRin/2Ra=πRin/Ra (6)
高周波電流の流れる経路は、導体の断面積に比例する。ここで、本実施例の内部導体2の断面積は、線条導体13を用いない場合に比べて次式のように増加するため、その分だけ電気抵抗が低下して銅損が減少する。
断面積比=(N2πRa)/(2πRin)=π (7)
断面積比=(N2πRa)/(2πRin)=π (7)
図6に示すように、線条導体13を多層に配置して断面積比を大きくすることにより、さらに伝搬損失の低減化を図ることができる。また、内部導体2のみならず、外部導体1を複数の線条導体13で構成することにより外部導体1の銅損を低減することも可能である。
各線条導体13に流れる電流は、構造の不完全性(中心軸からの偏心や各線条導体形状の不均一性等)により、その位相に差異が生じ得る。しかしながら、本実施例における信号伝送線路は、接続部14により使用する最大周波数に応じた間隔で各線条導体13を電気的に接続し、位相差の発生を防ぐことができる。
上述のとおり、本発明の実施例4の形態に係る信号伝送線路によれば、内部導体2(あるいは外部導体1)を複数の線条導体13からなる構造とするという簡易な構成で高周波信号伝送時における銅損を抑え、低損失な信号伝送線路を実現することができる。
また、本実施例の信号伝送線路は、接続部14をケーブル方向に対して所定の頻度で配置することにより、線条導体13間で電流に位相差が生じるのを防止し、伝送特性の劣化防止及び損失低減に寄与することができる。さらに、本実施例の信号伝送線路は、例えば、線条導体13として絶縁被覆されたエナメル線を採用することにより容易に実現可能である。
本発明に係る信号伝送線路は、高周波信号の伝送に用いられる同軸ケーブルや導波管等の信号伝送線路に利用可能である。
1,1a,1b 外部導体
2,2a,2b 内部導体
3 誘電体
4,4a,4b リベット
5,5a,5b 絶縁体
6a,6b,6c 導体
7 導体間接続突起
8 支持外壁
9 金属メッキ
10 フィルム状絶縁体
11 接続突起
12 接続受孔
13 線条導体
14 接続部
2,2a,2b 内部導体
3 誘電体
4,4a,4b リベット
5,5a,5b 絶縁体
6a,6b,6c 導体
7 導体間接続突起
8 支持外壁
9 金属メッキ
10 フィルム状絶縁体
11 接続突起
12 接続受孔
13 線条導体
14 接続部
Claims (6)
- 信号の伝送に用いられる複数の導体を備え、
前記複数の導体の各々は、互いに接触しないように配置されているとともに、互いに信号伝送方向距離に対して所定の頻度で電気的に接続されていることを特徴とする信号伝送線路。 - 前記複数の導体により形成された内部導体と、外部導体とを同軸に配して同軸ケーブルを構成することを特徴とする請求項1記載の信号伝送線路。
- 前記複数の導体により形成された外部導体と、内部導体とを同軸に配して同軸ケーブルを構成することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の信号伝送線路。
- 前記複数の導体の各々は、互いに電気的に接続するための接続突起及び接続受孔を有し、表面に金属メッキを形成したフィルム状絶縁体であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の信号伝送線路。
- 前記複数の導体により形成された中空の金属管が導波管を構成することを特徴とする請求項1記載の信号伝送線路。
- 前記複数の導体の各々は、絶縁体により被覆された線条導体であることを特徴とする請求項2記載の信号伝送線路。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2009011191A JP2010170800A (ja) | 2009-01-21 | 2009-01-21 | 信号伝送線路 |
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CN104347190A (zh) * | 2013-07-23 | 2015-02-11 | 一诺科技股份有限公司 | 多层导电金属线及其制造方法 |
-
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- 2009-01-21 JP JP2009011191A patent/JP2010170800A/ja not_active Withdrawn
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