JP2010170798A - 膜電極接合体及び燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】出力性能が改善された膜電極接合体及び燃料電池を提供する。
【解決手段】カソードと、アノードと、前記カソード及び前記アノードの間に配置された電解質膜とを具備する膜電極接合体であって、前記アノードは、前記電解質膜と対向するアノード触媒層と、アノード拡散層と、前記電解質膜と前記アノード触媒層の間に配置された、繊維長の中央値が0.1〜100μmの範囲にあるカーボン繊維及びプロトン導電性物質を含む多孔性保湿膜を備えることを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】カソードと、アノードと、前記カソード及び前記アノードの間に配置された電解質膜とを具備する膜電極接合体であって、前記アノードは、前記電解質膜と対向するアノード触媒層と、アノード拡散層と、前記電解質膜と前記アノード触媒層の間に配置された、繊維長の中央値が0.1〜100μmの範囲にあるカーボン繊維及びプロトン導電性物質を含む多孔性保湿膜を備えることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
本発明は、膜電極接合体及び燃料電池に関するもので、特に小型の液体燃料直接供給型燃料電池に好適なものである。
近年、リチウムイオン二次電池に代わって、小型の燃料電池が注目を集めている。特に、メタノールを燃料として用いた直接メタノール型燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell:DMFC)は、水素ガスを使用する燃料電池に比べ、水素ガスの取り扱いの困難さや、有機燃料を改質して水素を作り出す装置等が必要なく、小型化に優れている。
DMFCでは、アノード(例えば燃料極)においてメタノールの内部改質反応が生じ、二酸化炭素、プロトンおよび電子が生成する。一方、カソード(例えば空気極)では、空気から得られる酸素と、電解質膜を経て燃料極から供給されるプロトン、および燃料極から外部回路を通じて供給される電子によって水が生成する。また、この外部回路を通る電子によって、電力が供給されることになる。
発電反応によりカソードで生成した水は電解質膜を透過してカソード側からアノード側へ拡散し、メタノールの酸化分解に利用されるが、この水が不足すると、メタノールの内部改質反応の反応抵抗が高くなるため、十分な出力特性を得られなくなる。
そこで、導電性材料とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とを混合してシート状に成形したガス拡散補助層を、触媒層とガス拡散基材層との間に備える膜電極接合体が開示されている(例えば、特許文献1)。しかし、このような膜電極接合体では、過剰な水分が触媒層に保持され、メタノールが過度に希釈されることにより、出力低下をもたらすという不都合があり、このため出力を安定して高く発電することが困難となっていた。
一方、特許文献2には、電解質層と触媒層との間に、少なくともカーボン粒子と電解質材料とを含み、特定の気孔率を有する中間層を存在させることにより、ゾルゲル法によりプロトン伝導性ゲルからなる電解質層を作成しても触媒層内の気孔が電解質材料により埋められることがないので、触媒層へ反応ガスが充分に供給されることが開示されている。
特開2007−73415号公報
特開2003−151577号公報
本発明は、出力性能が改善された膜電極接合体及び燃料電池を提供しようとするものである。
第1の発明に係る膜電極接合体は、カソードと、アノードと、前記カソード及び前記アノードの間に配置された電解質膜とを具備する膜電極接合体であって、前記アノードは、前記電解質膜と対向するアノード触媒層と、アノード拡散層と、前記電解質膜と前記アノード触媒層の間に配置された、繊維長の中央値が0.1〜100μmの範囲にあるカーボン繊維及びプロトン導電性物質を含む多孔性保湿膜を備えることを特徴とする。
第2の発明に係る膜電極接合体は、カソードと、アノードと、前記カソード及び前記アノードの間に配置された電解質膜とを具備する膜電極接合体であって、前記アノードは、前記電解質膜と対向するアノード触媒層と、アノード拡散層と、前記電解質膜と前記アノード触媒層の間に配置された、粒径の中央値が0.01〜5μmの範囲にあるカーボン粒子及びプロトン導電性物質を含む多孔性保湿膜を備えることを特徴とする。
また、本発明に係る燃料電池は、第1及び第2のいずれかの発明に係る膜電極接合体を具備することを特徴とする。
本発明によれば、出力性能が改善された膜電極接合体及び燃料電池を提供することができる。
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る膜電極接合体及び燃料電池は、電解質膜とアノード触媒層の間に多孔性保湿膜を備えることを特徴とする。本実施形態で用いられる多孔性保湿膜は、繊維長が0.1〜100μmの範囲にあるカーボン繊維とプロトン導電性物質を含むことを特徴とする。
第1の実施形態に係る膜電極接合体及び燃料電池は、電解質膜とアノード触媒層の間に多孔性保湿膜を備えることを特徴とする。本実施形態で用いられる多孔性保湿膜は、繊維長が0.1〜100μmの範囲にあるカーボン繊維とプロトン導電性物質を含むことを特徴とする。
本実施形態においてカーボン繊維は、繊維長に対する断面の直径の比が、1:10以上である形状を有することが望ましい。ここで、繊維長とは、以下の方法で走査型電子顕微鏡(SEM)により測定された繊維長の中央値を意味する。
具体的には、カーボン繊維を、走査型電子顕微鏡(SEM)として株式会社ニコン製ESEM-2700Lを用い、倍率10万倍で多孔性保湿膜の観察を行う。繊維長は、得られた視野に繊維全体が含まれているものについて、その長手方向の端部から端部までの距離とする。また繊維径は、その繊維長の中央部における短軸方向の距離とする。
なお、製品から測定する場合には、まず、膜電極接合体をエポキシ樹脂で固め、膜電極接合体の断面が見えるように切断する。このとき、電極が矩形状の場合においては、膜電極接合体を長手方向と直交する方向の中央部において長手方向と平行に切断する。そして、その切断面の中央部および両端部から10%中央寄りの位置の合計3箇所の断面をそれぞれ切り取り樹脂に埋め込む。したがって、本発明の数値はそれら測定箇所3箇所で得られた値の平均値となる。そして、走査型電子顕微鏡(SEM)として株式会社ニコン製ESEM-2700Lを用い、倍率10万倍で多孔性保湿膜の観察を行う。
上記のような多孔性保湿膜を電解質膜とアノード触媒層の間に配置することにより、発電反応によりカソードで生成してアノード側に移行した水を、アノード触媒層の直近に水蒸気状態で保持することができる。これにより、アノード触媒層上で、水と高濃度燃料を混合させ、反応効率の高い希薄燃料とすることができる。また、多孔性保湿膜において水分を保持することにより、過剰な水分がアノード触媒層へ移動することを抑制し、燃料が過度に希釈されることを防ぐことができる。即ち、上記のような多孔性保湿膜を電解質膜とアノード触媒層の間に配置することにより、アノード触媒層への水の供給を適切に調節することが可能であり、これによって出力を向上させることができるとともに、長時間の安定発電を可能とすることができる。
本実施形態では、繊維長が0.1〜100μmの範囲に含まれるカーボン繊維を用いることにより、自立型の良好な多孔性保湿膜を形成することができる。ここで、良好な多孔性保湿膜とは、表面が滑らかであり、剥離やピンホールのない膜を意味する。表面の状態は顕微鏡などで観察することができる。繊維形状のカーボンは接触面が大きく絡みやすいため、膜を形成する際の結合力が大きく、良好な膜を形成することができると考えられる。
また、上記範囲のカーボン繊維を用いることにより、自立型の膜を形成することが可能であり、極めて薄い多孔性保湿膜を得ることができる。多孔性保湿膜が厚いと、電解質膜と触媒層との距離が大きくなり、発電効率が低下するが、本実施形態に従って、繊維長が上記範囲にあるカーボン繊維を用いることにより、より薄い多孔性保湿膜が得られ、その結果、高出力を達成することができる。
さらに、上記範囲のカーボン繊維を用いることにより、膜厚が小さいにもかかわらず、水透過量が小さい多孔性保湿膜を形成することができる。水透過量が小さいことにより水蒸気を保持することができ、これによってアノード触媒層への水の移動が抑制され、燃料が過度に希釈されることを防ぐことができる。
繊維長が100μmを超えるカーボン繊維を用いると、多孔性保湿膜を形成する際にカーボン繊維が凝集し、膜表面に凹凸が生じて粗くなり、膜厚が大きくなるとともに、水透過量も上昇する。そのため、このような多孔性保湿膜を備えた燃料電池は、出力が低く、また出力の低下率も高い。一方、繊維長が0.1μm未満のカーボン繊維を用いた場合は、多孔性保湿膜に破れが生じやすくなるため、結果として膜厚が大きくなる。さらに、水透過量も大きいため、このような多孔性保湿膜を備えた燃料電池は、出力が低く、また出力の低下率も高い。
カーボン繊維の繊維長は、0.1μm以上、10μm以下の範囲にあることがより好ましい。
多孔性保湿膜には、カーボン繊維とともにプロトン導電性物質が含まれる。カーボン繊維と共にプロトン導電性物質を含むことにより、多孔性保湿膜の形成を容易にすることができる。プロトン導電性物質には、保湿性の高分子材料が好適に用いられ、例えば、スルホン酸基を有するフッ素系樹脂(デュポン社製の商品名ナフィオン(登録商標)や旭硝子社製の商品名フレミオン(登録商標)のようなパーフルオロスルホン酸重合体等)、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂、無機物(例えば、タングステン酸、リンタングステン酸、硝酸リチウムなど)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本実施形態において、多孔性保湿膜は、例えば、カーボン繊維とプロトン導電性物質とを含むスラリーをスプレーコート法にて基材に塗布し、乾燥した後、得られた膜を基材から剥離することによって、作製することが可能である。
多孔性保湿膜の厚さは、10μm〜30μmの範囲にあることが望ましい。
さらに、本実施形態における多孔性保湿膜は、カーボン繊維とプロトン導電性物質の重量比が1:6〜1:25の範囲にあることが好ましい。カーボン繊維とプロトン導電性物質の重量比が1:6〜1:25の範囲にある場合、良好な多孔性保湿膜を形成することができ、そのような多孔性保湿膜を用いた膜電極接合体は、出力が高く、また出力の低下率も低く、長時間の安定発電を可能とすることができる。
上記のように形成された多孔性保湿膜は、アノード触媒層と熱圧着される。本実施形態におけるように、多孔性保湿膜を自立型の膜として予め形成し、これをアノード触媒層に積層することにより、多孔性保湿膜をより薄くすることができ、また、触媒層にひび割れが存在する場合であっても、燃料の透過を抑制しクロスオーバーを防ぐことができる。
以下、第1の実施形態に係る膜電極接合体及び燃料電池を図1〜図3を参照して説明する。
図1に示す燃料電池は、膜電極接合体1と、この膜電極接合体1に燃料を供給する燃料分配機構2と、液体燃料を収容する燃料収容部3と、これら燃料分配機構2と燃料収容部3とを接続する流路4とから主として構成されている。
膜電極接合体1は、図1及び図3に示すように、アノード(燃料極)5と、カソード(空気極)6と、燃料極5及び空気極6の間に配置されたプロトン導電性の電解質膜7とを備えている。燃料極5は、燃料極ガス拡散層10と、燃料極ガス拡散層10に積層された燃料極触媒層8とを有する。多孔性保湿膜9は、電解質膜7と燃料極触媒層8との間に配置されている。
燃料極ガス拡散層10は、燃料極触媒層8に燃料を均一に供給する役割を果たすと同時に、燃料極触媒層8の集電体も兼ねている。燃料極ガス拡散層10は、例えば、カーボンペーパーから形成される。カーボンペーパーには、撥水性を付与しても良いし、撥水性を付与しなくてもよい。撥水処理には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなフッ素系樹脂を使用することができる。
一方、空気極6は、電解質膜7の他方の面と対向している空気極触媒層11と、空気極触媒層11に積層された空気極ガス拡散層12とを有する。空気極ガス拡散層12は、空気極触媒層11に酸化剤を均一に供給する役割を果たすと同時に、空気極触媒層11の集電体も兼ねている。空気極ガス拡散層12には、例えば、撥水処理の施されたカーボンペーパーを使用することができる。撥水処理には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなフッ素系樹脂を使用することができる。
燃料極触媒層8および空気極触媒層11に含有される触媒としては、例えば、白金族元素である、Pt、Ru、Rh、Ir、Os、Pd等の単体金属、白金族元素を含有する合金などを挙げることができる。具体的には、燃料極側の触媒として、メタノールや一酸化炭素に対して強い耐性を有するPt−RuやPt−Moなど、空気極側の触媒として、白金やPt−Niなどを用いることが好ましいが、これらに限定されるものではない。また、炭素材料のような導電性担持体を使用する担持触媒、あるいは無担持触媒を使用してもよい。
燃料極触媒層8、空気極触媒層11、及び電解質膜7はプロトン伝導性材料を含む。プロトン伝導性材料としては、例えば、スルホン酸基を有するフッ素系樹脂(デュポン社製の商品名ナフィオン(登録商標)や旭硝子社製の商品名フレミオン(登録商標)のようなパーフルオロスルホン酸重合体等)、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂、無機物(例えば、タングステン酸、リンタングステン酸、硝酸リチウムなど)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
燃料極ガス拡散層10及び空気極ガス拡散層12には、必要に応じて導電層13が積層される。これら導電層13としては、例えば、金、ニッケルなどの金属材料からなる多孔質層(例えばメッシュ)または箔体、あるいはステンレス鋼(SUS)などの導電性金属材料に金などの良導電性金属を被覆した複合材などが用いられる。電解質膜7と燃料分配機構2およびカバープレート14との間には、それぞれゴム製のOリング15が介在されており、これらによって膜電極接合体(MEA)1からの燃料漏れや酸化剤漏れを防止している。
図示を省略したが、カバープレート14は酸化剤である空気を取入れるための開口部を有している。カバープレート14とカソード6との間には、必要に応じて保湿層や表面層が配置される。保湿層は空気極触媒層11で生成された水の一部が含浸されて、水の蒸散を抑制すると共に、空気極触媒層11への空気の均一拡散を促進するものである。表面層は空気の取入れ量を調整するものであり、空気の取入れ量に応じて個数や大きさ等が調整された複数の空気導入口を有している。このようなカバープレート14を備えることにより、酸化剤を供給するためのブロワを用いることなく、酸化剤をカソード6に自然供給することができる。なお、酸化剤は、空気に限定されるものではなく、O2を含むガスを使用可能である。
燃料収容部3には、膜電極接合体1に対応した液体燃料が収容されている。液体燃料としては、各種濃度のメタノール水溶液や純メタノール等のメタノール燃料が挙げられる。液体燃料は必ずしもメタノール燃料に限られるものではない。液体燃料は、例えばエタノール水溶液や純エタノール等のエタノール燃料、プロパノール水溶液や純プロパノール等のプロパノール燃料、グリコール水溶液や純グリコール等のグリコール燃料、ジメチルエーテル、ギ酸、その他の液体燃料であってもよい。いずれにしても、燃料収容部3には膜電極接合体1に応じた液体燃料が収容される。
液体燃料の種類や濃度は限定されるものではない。ただし、複数の燃料排出口22を有する燃料分配機構2の特徴がより顕在化するのは燃料濃度が濃い場合である。このため、燃料電池は、濃度が80%以上のメタノール水溶液もしくは純メタノールを液体燃料として用いた場合に、その性能や効果を特に発揮することができる。
膜電極接合体1のアノード(燃料極)5側には、燃料分配機構2が配置されている。燃料分配機構2は配管のような液体燃料の流路4を介して燃料収容部3と接続されている。燃料分配機構2には燃料収容部3から流路4を介して液体燃料が導入される。流路4は燃料分配機構2や燃料収容部3と独立した配管に限られるものではない。例えば、燃料分配機構2と燃料収容部3とを積層して一体化する場合、これらを繋ぐ液体燃料の流路であってもよい。燃料分配機構2は流路4を介して燃料収容部3と接続されていればよい。
液体燃料を燃料収容部3から燃料分配機構2まで送る機構は特に限定されるものではない。例えば、使用時の設置場所が固定される場合には、重力を利用して液体燃料を燃料収容部3から燃料分配機構2まで落下させて送液することができる。また、多孔体等を充填した流路4を用いることによって、毛細管現象で燃料収容部3から燃料分配機構2まで送液することができる。さらに、燃料収容部3から燃料分配機構2への送液は、図1に示すように、ポンプ16で実施してもよい。あるいは、燃料分配機構2から膜電極接合体1への燃料供給が行われる構成であればポンプ16に代えて燃料遮断バルブを配置する構成とすることも可能である。この場合には、燃料遮断バルブは、流路による液体燃料の供給を制御するために設けられるものである。
燃料分配機構2は、図2に示すように、液体燃料が流路4を介して流入する少なくとも1個の燃料注入口21と、液体燃料やその気化成分を排出する複数個の燃料排出口22とを有する燃料分配板23を備えている。燃料分配板23の内部には図1に示すように、燃料注入口21から導かれた液体燃料の通路となる空隙部24が設けられている。複数の燃料排出口22は燃料通路として機能する空隙部24にそれぞれ直接接続されている。
燃料注入口21から燃料分配機構2に導入された液体燃料は空隙部24に入り、この燃料通路として機能する空隙部24を介して複数の燃料排出口22にそれぞれ導かれる。複数の燃料排出口22には、例えば液体燃料の気化成分のみを透過し、液体成分は透過させない気液分離体(図示せず)を配置してもよい。これによって、膜電極接合体1の燃料極5には液体燃料の気化成分が供給される。なお、気液分離体は燃料分配機構2と燃料極5との間に気液分離膜等として設置してもよい。液体燃料の気化成分は複数の燃料排出口22から燃料極5の複数個所に向けて排出される。
燃料排出口22は膜電極接合体1の全体に燃料を供給することが可能なように、燃料分配板23の燃料極5と対向する面に複数設けられている。燃料排出口22の個数は2個以上であればよいが、膜電極接合体1の面内における燃料供給量を均一化する上で、0.1〜10個/cm2の燃料排出口22が存在するように形成することが好ましい。燃料排出口22の個数が0.1個/cm2未満であると、膜電極接合体1に対する燃料供給量を十分に均一化することができない。燃料排出口22の個数を10個/cm2を超えて形成しても、それ以上の効果が得られない。
上述した燃料分配機構2に導入された液体燃料は空隙部24を介して複数の燃料排出口22に導かれる。燃料分配機構2の空隙部24はバッファとして機能するため、複数の燃料排出口22からそれぞれ規定濃度の燃料が排出される。そして、複数の燃料排出口22は膜電極接合体1の全面に燃料が供給されるように配置されているため、膜電極接合体1に対する燃料供給量を均一化することができる。
燃料分配機構2から均一に放出された燃料は、燃料極ガス拡散層10を拡散して燃料極触媒層8に供給される。燃料としてメタノール燃料を使用する場合には、次の式(A)に示すメタノールの内部改質反応を生じさせる必要がある。
CH3OH+H2O → CO2+6H++6e− …式(A)
内部改質反応で生成されたプロトン(H+)は、電解質膜7を伝導し、空気極触媒層11に到達する。空気極ガス拡散層12から供給される気体燃料(たとえば空気)は、空気極ガス拡散層12を拡散して、空気極触媒に供給される。空気極触媒に供給された空気は、次の式(B)に示す反応を生じる。この反応によって、水が生成され、発電反応が生じる。
内部改質反応で生成されたプロトン(H+)は、電解質膜7を伝導し、空気極触媒層11に到達する。空気極ガス拡散層12から供給される気体燃料(たとえば空気)は、空気極ガス拡散層12を拡散して、空気極触媒に供給される。空気極触媒に供給された空気は、次の式(B)に示す反応を生じる。この反応によって、水が生成され、発電反応が生じる。
(3/2)O2+6H++6e− → 3H2O …式(B)
発電反応により生じた水は、空気極6から電解質膜7を通して燃料極5に移動し、多孔性保湿膜9で保持される。多孔性保湿膜9が水を保持することにより、燃料極触媒層8に水が常時供給され、内部改質反応を生じさせるのに十分な量の水を安定して得ることができる。これにより、燃料極側での反応が十分に行われ、結果として高出力が得られる。また、水が燃料極側へ供給される量が多くなるため、メタノールクロスオーバー反応も抑制される。
発電反応により生じた水は、空気極6から電解質膜7を通して燃料極5に移動し、多孔性保湿膜9で保持される。多孔性保湿膜9が水を保持することにより、燃料極触媒層8に水が常時供給され、内部改質反応を生じさせるのに十分な量の水を安定して得ることができる。これにより、燃料極側での反応が十分に行われ、結果として高出力が得られる。また、水が燃料極側へ供給される量が多くなるため、メタノールクロスオーバー反応も抑制される。
またさらに、多孔性保湿膜9が水を保持することにより、燃料極触媒層8に水が適度に供給されるため、燃料極触媒層8において燃料が過度に希釈されることがなくなる。このため、燃料極側の発電効率が増加し、燃料電池の出力性能を向上することができる。このように、多孔性保湿膜9により、燃料極触媒層8への水及び燃料の供給が安定化するため、燃料電池の出力の変動を少なくすることができ、またさらに、高出力を長期間に亘って維持することが可能となる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る膜電極接合体及び燃料電池について説明する。本実施形態に係る膜電極接合体及び燃料電池は、電解質膜とアノード触媒層の間に多孔性保湿膜を備えることを特徴とし、本実施形態で用いられる多孔性保湿膜は、粒径が0.01〜5μmの範囲にあるカーボン粒子とプロトン導電性物質を含むことを特徴とする。
次に、第2の実施形態に係る膜電極接合体及び燃料電池について説明する。本実施形態に係る膜電極接合体及び燃料電池は、電解質膜とアノード触媒層の間に多孔性保湿膜を備えることを特徴とし、本実施形態で用いられる多孔性保湿膜は、粒径が0.01〜5μmの範囲にあるカーボン粒子とプロトン導電性物質を含むことを特徴とする。
本実施形態において、カーボン粒子の粒径とは、以下に説明する方法で走査型電子顕微鏡(SEM)により測定された粒径の中央値を意味する。
具体的には、カーボン粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)として株式会社ニコン製ESEM-2700Lを用い、倍率10万倍で多孔性保湿膜の観察を行う。粒径は、得られた視野に粒子全体が含まれているものについて、その粒子が含まれる最小円の直径とする。
なお、製品から測定する場合には、まず、膜電極接合体をエポキシ樹脂で固め、膜電極接合体の断面が見えるように切断する。このとき、電極が矩形状の場合においては、膜電極接合体を長手方向と直交する方向の中央部において長手方向と平行に切断する。そして、その切断面の中央部および両端部から10%中央寄りの位置の合計3箇所の断面をそれぞれ切り取り樹脂に埋め込む。したがって、本発明の数値はそれら測定箇所3箇所で得られた値の平均値となる。そして、走査型電子顕微鏡(SEM)として株式会社ニコン製ESEM-2700Lを用い、倍率10万倍で多孔性保湿膜の観察を行う。
本実施形態に従う多孔性保湿膜を電解質膜とアノード触媒層の間に配置することにより、発電反応によりカソードにおいて生成され、アノード側に移行した水を、アノード触媒層の直近に水蒸気状態で保持することができる。これにより、アノード触媒層上で、水と高濃度燃料を混合させ、反応効率の高い希薄燃料とすることができる。また、多孔性保湿膜において水分を保持することにより、過剰な水分がアノード触媒層へ移動することを抑制し、燃料が過度に希釈されることを防ぐことができる。即ち、上記のような多孔性保湿膜を電解質膜とアノード触媒層の間に配置することにより、アノード触媒層への水の移動を適切に調節することが可能であり、これによって出力を向上させることができるとともに、長時間の安定発電を可能とすることができる。
本実施形態では、粒径が0.01〜5μmの範囲に含まれるカーボン粒子を用いることにより、自立型の良好な多孔性保湿膜を形成することができる。本実施形態において良好な多孔性保湿膜は、膜厚が薄く、表面が滑らかであり、さらに水透過量が低い膜である。
粒径が0.01μm未満であるカーボン粒子を用いると、多孔性保湿膜が破れやすくなる。一方、粒径が5μmを超えるカーボン粒子を用いると、多孔性保湿膜にシワが生じやすく、さらに膜厚が大きくなる。そのため、このような多孔性保湿膜を備えた燃料電池は、出力が低く、また出力の低下率も大きくなる。
カーボン粒子の粒径は、0.01μm以上、5μm以下の範囲にあることがより好ましい。
多孔性保湿膜には、カーボン粒子とともにプロトン導電性物質が含まれる。カーボン粒子と共にプロトン導電性物質を含むことにより、多孔性保湿膜の形成を容易にすることができる。プロトン導電性物質には、保湿性の高分子材料が好適に用いられ、前述した第1の実施形態で説明したのと同様なものを使用可能である。
本実施形態において、多孔性保湿膜は、例えば、カーボン粒子とプロトン導電性物質とを含むスラリーをバーコート法にて基材に塗布し、乾燥した後、得られた膜を基材から剥離することによって、作製することが可能である。
多孔性保湿膜の厚さは、10μm〜30μmの範囲にあることが望ましい。
さらに、本実施形態における多孔性保湿膜は、カーボン粒子とプロトン導電性物質の重量比が1:5〜1:20の範囲にあることが好ましい。カーボン粒子とプロトン導電性物質の重量比が1:5〜1:20の範囲にある場合、良好な多孔性保湿膜を形成することができ、そのような多孔性保湿膜を用いた膜電極接合体は出力が高く、また出力の低下率も低く、長時間の安定発電を可能とすることができる。
上記のように形成された多孔性保湿膜は、アノード触媒層と熱圧着される。本実施形態におけるように、多孔性保湿膜を自立型の膜として予め形成し、これをアノード触媒層に積層することにより、多孔性保湿膜をより薄くすることができる。また、触媒層にひび割れが存在する場合であっても、燃料の透過を抑制しクロスオーバーを防ぐことができる。
第2の実施形態に係る膜電極接合体及び燃料電池は、多孔性保湿膜がカーボン繊維に代わってカーボン粒子を含む以外は、上記第1の実施形態に係る膜電極接合体及び燃料電池と同様の構成を有することができる。
上記実施形態に示したような、本発明に係る燃料電池は、その形態から、液体燃料と酸化剤の供給をポンプなどの補器を用いて行うアクティブ型燃料電池、液体燃料の気化成分をアノードに供給するパッシブ型(内部気化型)燃料電池、前述した図1〜図2に示すセミパッシブ型の燃料電池などが挙げられる。アクティブ型燃料電池では、メタノール水溶液からなる燃料について、その量が一定になるようにポンプで調整しながらMEAのアノードへ供給する一方、カソードに対しても空気をポンプで供給する方式が採られる。パッシブ型燃料電池では、MEAのアノードに気化したメタノールを自然供給で送り、一方、カソードに対しても外部の空気を自然供給することで、ポンプなどの余計な機器を装備しない方式が採られる。セミパッシブ型の燃料電池は、燃料収容部から膜電極接合体に供給された燃料は発電反応に使用され、その後に循環して燃料収容部に戻されることはない。セミパッシブ型の燃料電池では、燃料を循環させないことから、アクティブ方式とは異なるものであり、装置の小型化等を損なうものではない。また、セミパッシブ型の燃料電池は、燃料の供給にポンプを使用しており、内部気化型のような純パッシブ方式とも異なる。なお、このセミパッシブ型の燃料電池では、燃料収容部から膜電極接合体への燃料供給が行われる構成であればポンプに代えて燃料遮断バルブを配置する構成とすることも可能である。この場合には、燃料遮断バルブは、流路による液体燃料の供給を制御するために設けられる。
[実施例]
以下、本発明の実施例を説明する。
以下、本発明の実施例を説明する。
1.カーボン繊維を用いた多孔性保湿膜
<カーボン繊維>
実施例1として、繊維長の中央値が0.1〜1μmであり、嵩高さが45 mmのカーボン繊維を用い、実施例2として、繊維長の中央値が0.1〜10μmであり、嵩高さが34 mmであるカーボン繊維を用い、実施例3として、繊維長の中央値が10〜100μmであるカーボン繊維を用いた。各実施例のカーボン繊維の物性を下記表1に示した。
<カーボン繊維>
実施例1として、繊維長の中央値が0.1〜1μmであり、嵩高さが45 mmのカーボン繊維を用い、実施例2として、繊維長の中央値が0.1〜10μmであり、嵩高さが34 mmであるカーボン繊維を用い、実施例3として、繊維長の中央値が10〜100μmであるカーボン繊維を用いた。各実施例のカーボン繊維の物性を下記表1に示した。
なお、カーボン繊維の嵩高さは、100 ccのメスシリンダーにカーボン繊維1gを入れ、静置した後の高さを測定することにより決定した。嵩高さは放置後1時間で安定し略一定となったため、1時間静置後に測定を行った。
<多孔性保湿膜の作製>
上記実施例1のカーボン繊維、純水、1メトキシ2プロパノールおよびナフィオン(デュポン社製)溶液を容器に入れ、撹拌子を用いて撹拌し、スラリーを作製した。このスラリーをバーコート法によりガラス基材に一定厚で塗布した。室温でおよそ3時間放置し、基材に塗布したスラリーを乾燥させた。その後、乾燥したスラリーを基材から剥離し、多孔性保湿膜を得た。
上記実施例1のカーボン繊維、純水、1メトキシ2プロパノールおよびナフィオン(デュポン社製)溶液を容器に入れ、撹拌子を用いて撹拌し、スラリーを作製した。このスラリーをバーコート法によりガラス基材に一定厚で塗布した。室温でおよそ3時間放置し、基材に塗布したスラリーを乾燥させた。その後、乾燥したスラリーを基材から剥離し、多孔性保湿膜を得た。
上記実施例2及び3についても同様に多孔性保湿膜を作製した。また、比較例1として繊維長の中央値が0.1μm未満のカーボン繊維、比較例2として繊維長の中央値が100μm超のカーボン繊維を用いて、同様に多孔性保湿膜を作製した。いずれの多孔性保湿膜も、カーボン繊維の重量を1としたとき、プロトン導電性物質の重量が6であった。
<燃料極触媒層の作製>
白金ルテニウム合金微粒子を担持したカーボン粒子とナフィオン溶液DE2020(デュポン社製)と溶媒をホモジナイザで混合して約15%固形分のスラリーを作製し、これを燃料極ガス拡散層の一方の面にダイコーターを用いて塗布した。そしてこれを常温乾燥することにより、燃料極触媒層を形成した。
白金ルテニウム合金微粒子を担持したカーボン粒子とナフィオン溶液DE2020(デュポン社製)と溶媒をホモジナイザで混合して約15%固形分のスラリーを作製し、これを燃料極ガス拡散層の一方の面にダイコーターを用いて塗布した。そしてこれを常温乾燥することにより、燃料極触媒層を形成した。
<空気極の触媒層の作製>
白金微粒子を担持したカーボン粒子とナフィオン溶液DE2020(デュポン社製)と溶媒とをホモジナイザで混合して約15%固形分のスラリーを作製した。得られたスラリーを、基材の一方の面にダイコーターを用いて塗布した。そしてこれを常温乾燥して、基材から剥離し、空気極触媒層を形成した。
白金微粒子を担持したカーボン粒子とナフィオン溶液DE2020(デュポン社製)と溶媒とをホモジナイザで混合して約15%固形分のスラリーを作製した。得られたスラリーを、基材の一方の面にダイコーターを用いて塗布した。そしてこれを常温乾燥して、基材から剥離し、空気極触媒層を形成した。
<膜電極接合体(MEA)の作製>
電解質膜として、固体電解質膜ナフィオン112(デュポン社製)を用い、最初にこの電解質膜と空気極触媒層を重ね合わせ、さらに空気極触媒層に空気極ガス拡散層として気孔率が75%のカーボンペーパー(東レ(株)製TGP−H−060)を重ね合わせ、温度が135℃、圧力が40kgf/cm2の条件でプレスした。続いて、電解質膜の空気極を重ね合わせたのと逆の面に、実施例1〜3及び比較例1〜2の何れかの多孔性保湿膜を重ねあわせた。燃料極触媒層及び燃料極ガス拡散層を重ね合わせて、温度が135℃、圧力が10kgf/cm2の条件でプレスし、膜電極接合体(MEA)を作製した。なお、電極面積は、空気極、燃料極ともに12cm2とした。
電解質膜として、固体電解質膜ナフィオン112(デュポン社製)を用い、最初にこの電解質膜と空気極触媒層を重ね合わせ、さらに空気極触媒層に空気極ガス拡散層として気孔率が75%のカーボンペーパー(東レ(株)製TGP−H−060)を重ね合わせ、温度が135℃、圧力が40kgf/cm2の条件でプレスした。続いて、電解質膜の空気極を重ね合わせたのと逆の面に、実施例1〜3及び比較例1〜2の何れかの多孔性保湿膜を重ねあわせた。燃料極触媒層及び燃料極ガス拡散層を重ね合わせて、温度が135℃、圧力が10kgf/cm2の条件でプレスし、膜電極接合体(MEA)を作製した。なお、電極面積は、空気極、燃料極ともに12cm2とした。
<燃料電池の組み立て>
続いて、この膜電極接合体を、空気および気化したメタノールを取り入れるための複数の開孔を有する金箔で挟み、燃料極導電層および空気極導電層を形成した。
続いて、この膜電極接合体を、空気および気化したメタノールを取り入れるための複数の開孔を有する金箔で挟み、燃料極導電層および空気極導電層を形成した。
上記の膜電極接合体(MEA)、燃料極導電層、空気極導電層が積層された積層体を樹脂製の2つのフレームで挟み込んだ。なお、膜電極接合体の空気極側と一方のフレームとの間、膜電極接合体の燃料極側と他方のフレームとの間には、それぞれゴム製のOリングを挟持してシールを施した。
また、燃料極側のフレームは、気液分離膜を介して、液体燃料収容室にネジ止めによって固定した。気液分離膜には、厚さ0.2mmのシリコーンシートを使用した。一方、空気極側のフレーム上には、空気取り入れのための空気導入口(口径4mm、口数64個)が形成された厚さが2mmのステンレス板(SUS304)を配置して表面カバー層を形成し、ネジ止めによって固定した。
上記したように形成された燃料電池の液体燃料収容室に、純メタノールを150ml注入し、温度45℃の環境で、出力の最大値を電流値と電圧値から測定した。また、計測開始時の出力に基づいて200時間後の出力から出力の低下率を求めた。
膜の評価は目視で観察することにより、シワ、ピンホールの有無、破れの有無などに基づいて評価した。
表2から明らかなように、繊維長の中央値が0.1μm〜100μmであるカーボン繊維を用いて作製された実施例1〜3の膜は、シワ、ピンホールなどがなく良好であった。また出力が高く、且つ、出力の低下率が低く、安定して高い出力が得られることが分かる。一方、繊維長の中央値が0.1μm未満のカーボン繊維を用いて作製された比較例1の膜は、破れが生じた。また、出力が低く、さらに出力低下率が高いことが分かる。繊維長の中央値が100μmを超えるカーボン繊維を用いて作製された比較例2の膜は、シワが存在し、出力が比較的低く、出力低下率も高かった。
次に、繊維長の中央値が0.1μm〜10μmであるカーボン繊維とプロトン導電性物質の重量比を変化させて、燃料電池の最大出力、及び出力の低下率を測定した。下記表3に示す重量比に従って、上記と同様に実施例4〜7の多孔性保湿膜を作製し、それぞれの多孔性保湿膜を用いて上記のように燃料電池を作製した。
形成された燃料電池の液体燃料収容室に、純メタノールを150ml注入し、温度45℃の環境で、出力の最大値を電流値と電圧値から測定した。また、計測開始時の出力に基づいて200時間後の出力から出力の低下率を求めた。各実施例について、最大出力、及び出力の低下率を下記表3に示す。
カーボン繊維の重量を1としたとき、プロトン導電性物質の重量が10〜22の範囲内にある場合、出力が高く、且つ、出力の低下率が低く、安定して高い出力が得られることが分かる。
2.カーボン粒子を用いた多孔性保湿膜
<多孔性保湿膜の作製>
粒径の中央値が0.02μmであるカーボン粒子、純水、1メトキシ2プロパノールおよびナフィオン(デュポン社製)溶液を容器に入れ、撹拌子を用いて撹拌し、スラリーを作製した。このスラリーをバーコート法によりガラス基材に一定厚で塗布した。室温でおよそ3時間放置し、基材に塗布したスラリーを乾燥させた。その後、乾燥したスラリーを基材から剥離し、実施例8の多孔性保湿膜を得た。
<多孔性保湿膜の作製>
粒径の中央値が0.02μmであるカーボン粒子、純水、1メトキシ2プロパノールおよびナフィオン(デュポン社製)溶液を容器に入れ、撹拌子を用いて撹拌し、スラリーを作製した。このスラリーをバーコート法によりガラス基材に一定厚で塗布した。室温でおよそ3時間放置し、基材に塗布したスラリーを乾燥させた。その後、乾燥したスラリーを基材から剥離し、実施例8の多孔性保湿膜を得た。
実施例9及び10として、粒径の中央値が0.1μm及び4μmであるカーボン粒子をそれぞれ用い、同様に多孔性保湿膜を作製した。また、比較例3として粒径の中央値が0.01μm未満のカーボン粒子、比較例4として粒径の中央値が5μm超のカーボン粒子を用いて、同様に多孔性保湿膜を作製した。
得られた多孔性保湿膜を用いて前述の実施例1で説明したのと同様にして膜電極接合体及び燃料電池を作製し、温度45℃の環境で、出力の最大値を電流値と電圧値から測定した。また、計測開始時の出力に基づいて200時間後の出力から出力の低下率を求めた。
膜の評価は目視で観察することにより、シワ、ピンホールの有無、破れの有無などに基づいて評価した。
表4から明らかなように、粒径が0.01〜5μmの範囲にあるカーボン粒子を用いて作製された多孔性保湿膜を備えた実施例8〜10の燃料電池は、粒径が0.01μm未満の比較例3と、粒径が5μmを超える比較例4の燃料電池に比して、最大出力が大きいことが分かる。
次に、実施例11として、粒径が10μm〜25μmのカーボン粒子とプロトン導電性物質の重量比が1:8である多孔性保湿膜を作製した。該多孔性保湿膜を備えた燃料電池について、温度45℃の環境で、出力の最大値を電流値と電圧値から測定した。また、計測開始時の出力に基づいて200時間後の出力から出力の低下率を求めた。その結果を表5に示す。
実施例11の多孔性保湿膜を用いた燃料電池では、最大出力が大きく、また出力低下率が低いことが分かる。
3.水透過量の測定
次に、本発明の実施形態に係る多孔性保湿膜の水透過量の測定方法を説明する。水透過量の測定のため、図4〜6に示すような簡易的な測定装置を作製した。図4は、水透過量測定用の恒温槽40であり、図5は恒温槽40の内部の模式図である。恒温槽40の内部には、模擬セル50が配置され、模擬セル50は下方から熱源により熱せられる。符号42は本体熱電対を示し、符号41は恒温槽内部の蓋を示す。模擬セル50の上方にはセル排気側温度モニター43が設置され、模擬セル50の下方には層内床温度モニター44が設置される。図6は、模擬セル50の内部構造の模式図である。模擬セル50は、燃料タンク57、フェルトシート56、気化膜55、検体ホルダー54、検体53、2枚のシール材52、及び押さえ板51が、下からこの順序で重ねられる。
次に、本発明の実施形態に係る多孔性保湿膜の水透過量の測定方法を説明する。水透過量の測定のため、図4〜6に示すような簡易的な測定装置を作製した。図4は、水透過量測定用の恒温槽40であり、図5は恒温槽40の内部の模式図である。恒温槽40の内部には、模擬セル50が配置され、模擬セル50は下方から熱源により熱せられる。符号42は本体熱電対を示し、符号41は恒温槽内部の蓋を示す。模擬セル50の上方にはセル排気側温度モニター43が設置され、模擬セル50の下方には層内床温度モニター44が設置される。図6は、模擬セル50の内部構造の模式図である。模擬セル50は、燃料タンク57、フェルトシート56、気化膜55、検体ホルダー54、検体53、2枚のシール材52、及び押さえ板51が、下からこの順序で重ねられる。
測定は、燃料タンク57に水を入れ、検体ホルダー54に検体53である多孔性保湿膜を乗せて行う。40℃で35分間静置した後、燃料タンク57に含まれる水の重量変化を測定し、その減少分を水透過量とした。
図7は、上記実施例1、比較例1及び比較例2の多孔性保湿膜について測定した水透過量を示す。実施例1の多孔性保湿膜は、比較例1,2の膜と比較して膜厚が薄いにも拘わらず、水透過量が低く、水保持性能に優れていることが分かる。また、実施例1の方が、比較例1,2に比較し、製造時のバラツキも小さく、薄膜を薄く成膜することが可能であった。
以上に記載した実施形態では、パッシブ型DMFCを例に説明を行ったが、パッシブ型に限らず反応によって生成した水を燃料極側で利用する構造のものであれば、何らその燃料電池の方式について限定されるものではない。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。また、アクティブ型燃料電池及びセミパッシブ型の燃料電池においても、上記した説明と同様の作用効果が得られる。MEAへ供給される液体燃料の蒸気においても、全て液体燃料の蒸気を供給してもよいが、一部が液体状態で供給される場合であっても本発明を適用することができる。
1…膜電極接合体(MEA)、2…燃料分配機構、3…燃料収容部、4…流路、5…アノード(燃料極)、6…カソード(空気極)、7…電解質膜、8…燃料極触媒層、9…多孔性保湿膜、10…燃料極ガス拡散層、11…空気極触媒層、12…空気極ガス拡散層、13…導電層、14…カバープレート、15…Oリング、16…ポンプ、21…燃料注入口、22…燃料排出口、23…燃料分配板、24…空隙部。
Claims (5)
- カソード触媒層と、
アノード触媒層と、
前記カソード触媒層及び前記アノード触媒層の間に配置された電解質膜と、
前記電解質膜と前記アノード触媒層の間に配置され、繊維長が0.1〜100μmの範囲にあるカーボン繊維及びプロトン導電性物質を含む多孔性保湿膜と
を備えることを特徴とする膜電極接合体。 - 前記カーボン繊維と前記プロトン導電性物質の重量比が、1:6〜1:25の範囲にあることを特徴とする、請求項1に記載の膜電極接合体。
- カソード触媒層と、
アノード触媒層と、
前記カソード触媒層及び前記アノード触媒層の間に配置された電解質膜と、
前記電解質膜と前記アノード触媒層の間に配置され、粒径が0.01〜5μmの範囲にあるカーボン粒子及びプロトン導電性物質を含む多孔性保湿膜と
を備えることを特徴とする膜電極接合体。 - 前記カーボン粒子と前記プロトン導電性物質の重量比が、1:5〜1:20の範囲にあることを特徴とする、請求項3に記載の膜電極接合体。
- 請求項1〜4の何れか一項に記載の膜電極接合体を具備することを特徴とする燃料電池。
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JP2009011184A JP2010170798A (ja) | 2009-01-21 | 2009-01-21 | 膜電極接合体及び燃料電池 |
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