以下、本発明の光導波路の製造方法および光電気混載基板の製造方法について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<光導波路の製造方法>
まず、本発明の光導波路の製造方法について説明する。
図1は、本発明の光導波路の製造方法を説明するための斜視図、図2は、図1の部分拡大図(一部断面図を含む)、図3は、本発明の光導波路の製造方法を、図1のA−A線断面図において説明するための図、図4は、本発明の光導波路の製造方法を説明するための斜視図、図5は、図4に示す光導波路の製造方法により製造された光導波路を示す斜視図(一部、透過して示す)、図6は、本発明の光導波路の製造方法において、製造条件を変化させた様子を説明するための図である。なお、以下の説明では、図1、3、4中の上側を「上」、下側を「下」という。
図1〜4に示す光導波路の製造方法は、長尺状の3つのコア部11と、このコア部11を囲むように設けられた側面クラッド部12とが形成された内層1と、この内層1を囲むように設けられた外層2とを有する短冊状(帯状)の光導波路10(図5参照)を製造する方法である。
以下、光導波路10の各部について詳述する。
図5に示す内層1には、長尺状の3つのコア部11と、これらのコア部11の側面に隣接して設けられた側面クラッド部12とが形成されている。したがって、各コア部11は、その側方に位置する側面クラッド部12と、下方および上方に位置する外層2とからなるクラッド部16で囲まれている。
コア部11とクラッド部16との界面で全反射を生じさせるためには、界面に屈折率差が存在する必要がある。コア部11の屈折率は、クラッド部16の屈折率より高く、その差は、特に限定されないものの、0.5%以上であるのが好ましく、0.8%以上であるのがより好ましい。なお、屈折率差の上限値は、特に設定されなくてもよいが、好ましくは5.5%程度とされる。屈折率差が前記下限値未満であると光を伝搬する効果が低下する場合があり、また、前記上限値を超えても、光の伝搬効果のそれ以上の増大は期待できない。
なお、前記屈折率差とは、コア部11の屈折率をA、クラッド部16の屈折率をBとしたとき、次式で表わされる。
屈折率差(%)=|A/B−1|×100
このようなコア部11およびクラッド部16の各構成材料は、それぞれ上記の屈折率差が生じる材料であれば特に限定されないが、具体的には、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂のような各種樹脂材料の他、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス材料等を用いることができる。
本実施形態では、内層1において、コア部11と側面クラッド部12とが同一のベース材料(基本成分)で構成されており、コア部11と側面クラッド部12との屈折率差が、それぞれの構成材料の化学構造の差異により発現している。化学構造の差異により屈折率差を発現させるためには、内層1の構成材料として、紫外線、電子線のような活性エネルギー線の照射により(あるいはさらに加熱することにより)屈折率が変化する材料を用いるのが好ましい。
このように屈折率が変化する材料としては、例えば、活性エネルギー線の照射や加熱により、少なくとも一部の結合が切断したり、少なくとも一部の官能基が脱離する等して、化学構造が変化し得る材料が挙げられる。
具体的には、ポリシラン(例:ポリメチルフェニルシラン)、ポリシラザン(例:ペルヒドロポリシラザン)等のシラン系樹脂や、前述したような構造変化を伴う材料のベースとなる樹脂としては、分子の側鎖または末端に官能基を有する以下の(1)〜(6)のような樹脂が挙げられる。(1)ノルボルネン型モノマーを付加(共)重合して得られるノルボルネン型モノマーの付加(共)重合体、(2)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との付加共重合体、(3)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、および必要に応じて他のモノマーとの付加共重合体、(4)ノルボルネン型モノマーの開環(共)重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、(5)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との開環共重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、(6)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、または他のモノマーとの開環共重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂等のノルボルネン系樹脂、その他、光硬化反応性モノマーを重合することにより得られるアクリル系樹脂、エポキシ樹脂。
なお、これらの中でも特にノルボルネン系樹脂が好ましい。これらのノルボルネン系ポリマーは、例えば、開環メタセシス重合(ROMP)、ROMPと水素化反応との組み合わせ、ラジカルまたはカチオンによる重合、カチオン性パラジウム重合開始剤を用いた重合、これ以外の重合開始剤(例えば、ニッケルや他の遷移金属の重合開始剤)を用いた重合等、公知のすべての重合方法で得ることができる。
一方、外層2は、各コア部11の下部および上部に位置するクラッド部16を構成するものである。このような構成により、各コア部11は、その外周をクラッド部16に囲まれた導光路として機能する。
内層1の平均厚さは、特に限定されないものの、5〜100μm程度であるのが好ましく、10〜70μm程度であるのがより好ましい。
一方、外層2の平均厚さ、具体的には、各コア部11の下部に位置するクラッド部16および上部に位置するクラッド部16のそれぞれの平均厚さは、特に限定されないものの、3〜100μm程度であるのが好ましく、5〜50μm程度であるのがより好ましい。
なお、内層1の平均厚さは、外層2の平均厚さに対して、3〜20倍程度であるのが好ましく、5〜10倍程度であるのがより好ましい。
内層1および外層2の各厚さを前記範囲内に設定することにより、内層1にコア部11を形成したとき、コア部11が光通信において最適な横断面積を有するものとなる一方、外層2は、コア部11を覆うクラッド部16の一部として、光をコア部11内に閉じ込める作用(コア部11から光が漏れ出るのを防止する作用)を十分に担うものとなる。また、それとともに、光導波路10の厚さが必要以上に厚くなるのを防止することができる。
本実施形態では、内層1の構成材料と外層2の構成材料との間で、両者の間の屈折率差を考慮して適宜異なる材料を選択して使用することが可能である。したがって、外層2の構成材料は、内層1と外層2との境界において光を確実に全反射させるため、十分な屈折率差が生じるように低屈折率の材料を選択すればよい。なお、後に詳述するが、内層1の構成材料は、活性放射線の照射により屈折率が変化するため、外層2の構成材料の屈折率は、少なくとも内層1の構成材料の前記変化後の屈折率のうち、最も高い値(コア部11の屈折率)よりも低い値であることが求められる。これにより、外層2はクラッド部16の一部として機能し、コア部11から外層2に光が漏れ出るのを抑制することができる。その結果、コア部11を伝搬する光の減衰を抑制することができる。
また、光の減衰を抑制する観点からは、内層1と外層2との間の密着性が高いことが好ましい。したがって、外層2の構成材料は、内層1の構成材料よりも屈折率が低く、かつ内層1の構成材料と密着性が高いという条件を満たすものであれば、いかなる材料であってもよい。
以上のような内層1および外層2を構成する材料として用いるノルボルネン系ポリマーとしては、アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましく用いられる。アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むノルボルネン系ポリマーは、柔軟性が高いため、かかるノルボルネン系ポリマーを用いることにより、光導波路10に高いフレキシビリティ(可撓性)を付与することができる。
アルキルノルボルネンの繰り返し単位が有するアルキル基としては、例えば、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられるが、ヘキシル基が特に好ましい。なお、これらのアルキル基は、直鎖状または分岐状のいずれであってもよい。
ヘキシルノルボルネンの繰り返し単位を含むことにより、ノルボルネン系ポリマー全体の屈折率が上昇するのを防止することができる。また、ヘキシルノルボルネンの繰り返し単位を有するノルボルネン系ポリマーは、前述したような波長領域(特に、850nm付近の波長領域)の光に対する透過率が優れることから好ましい。
また、内層1および外層2を構成する材料として用いるノルボルネン系ポリマーとしては、アリールノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましく用いられる。アリールノルボルネンの繰り返し単位を含むノルボルネン系ポリマーは、アリールノルボルネンの繰り返し単位の含有率を適宜設定することで、その屈折率を容易に調整可能な材料となる。
さらに、内層1を構成する材料と外層2を構成する材料の双方が上記ノルボルネン系ポリマーであれば、内層1と外層2との相溶性を高めることができる。これにより、内層1と外層2との光学的および機械的な密着性を高めることができ、信頼性の高い光導波路10が得られる。
アリールノルボルネンの繰り返し単位が有するアリール基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基等が挙げられるが、フェニル基が特に好ましい。
なお、内層1を構成する材料および外層2を構成する材料の双方が上記のようなノルボルネン系ポリマーからなる場合、すなわち互いのベース材料が同一である場合には、互いのポリマー中に含まれる繰り返し単位の種類と比率(組成比)を異ならせることで、両者の間に屈折率差を生じさせることができる。
具体的には、外層2の構成材料として用いるノルボルネン系ポリマーは、含まれるアルキルノルボルネンの繰り返し単位の割合が、内層1の構成材料として用いるノルボルネン系ポリマーよりも大きくなるように調製されることが好ましい。一方、内層1の構成材料として用いるノルボルネン系ポリマーは、含まれるアリールノルボルネンの繰り返し単位の割合が、外層2の構成材料として用いるノルボルネン系ポリマーよりも大きくなるように調製されることが好ましい。
また、内層1の構成材料として用いるノルボルネン系ポリマーは、含まれるアルキルノルボルネンの繰り返し単位とアリールノルボルネンの繰り返し単位との比率が、質量比で好ましくは4:6〜7:3程度、より好ましくは4:6〜6:4程度となるように調製される。
一方、内層1の構成材料が上記のような組成比である場合、外層2の構成材料として用いるノルボルネン系ポリマーは、含まれるアルキルノルボルネンの繰り返し単位とアリールノルボルネンの繰り返し単位との比率が内層1の場合と異なっていればよく、その際の比率の範囲は、質量比で6:4〜9:1程度であるのが好ましく、7:3〜8:2程度であるのがより好ましい。
このような本発明の光導波路10は、コア部11の材料の光学特性等によっても若干異なり、特に限定されないが、例えば、600〜1550nm程度の波長領域の光を使用したデータ通信において好適に使用される。
また、内層1の構成材料および外層2の構成材料としてそれぞれノルボルネン系ポリマーを用いることにより、内層1と外層2との間で熱膨張率が同等となり、温度変化に伴う光導波路10の変形や、内層1と外層2との間の剥離等を防止することができる。
なお、外層2の構成材料は、内層1の構成材料と異なり、紫外線、電子線のような活性エネルギー線の照射により(あるいはさらに加熱することにより)屈折率が変化しない材料であるのが好ましい。これにより、外層2は、活性エネルギー線を照射しても、屈折率がほとんど変化せず、活性エネルギー線の照射によってクラッド部16としての機能を失うことが防止される。
以上のような光導波路10は、本発明の光導波路の製造方法により製造される。
具体的には、図1〜4に示す光導波路の製造方法は、押出成形法により、基材6上に、内層形成用材料(第1の材料)で構成された内層1と、この内層1を囲むように設けられ、外層形成用材料(第2の材料)で構成された外層2とを有する、つづら折り状のパターンをなす帯状の成形体3を得る成形工程と、成形体3の一部の領域に活性放射線を照射することにより、内層1中にコア部11と側面クラッド部12とを形成し、つづら折り状のパターンをなす帯状の光導波路10を得る露光工程と、この光導波路10のうち、折り返し部分を切り落とす切断工程とを有する。
以下、各工程について順次説明する。
[1]成形工程
まず、光導波路10を形成するための材料を押出成形法により供給する押出成形装置5を用意する。
この押出成形装置5は、成形体3を形成するための材料を吐出するノズル50を備えている。このノズル50は、図2に示すように、内筒50aとそれを囲む外筒50bとを備える二重管構造となっている。そして、内筒50a内は、内層1を形成するための内層形成用材料1’を吐出する第1の吐出口51となっている。一方、内筒50aと外筒50bとの隙間は、外層2を形成するための外層形成用材料2’を吐出する第2の吐出口52となっている。
ここで、内層形成用材料1’は流動性を有する材料(例えば内層1の軟化物、溶融物、溶解物等)であって、固化することにより内層1を形成することができる。同様に、外層形成用材料2’も流動性を有する材料であって、固化することにより外層2を形成することができる。
一方、帯状の光導波路10を形成するための土台となる基材6を用意する。
基材6には、例えば、シリコン基板、二酸化ケイ素基板、ガラス基板、石英基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等が用いられる。
また、押出成形装置5は、ノズル50を、基材6の上面に対して平行に、基材6に対して相対的に移動可能にする駆動手段(図示せず)を備えている。
このような押出成形装置5は、基材6に対してノズル50を相対的に移動させつつ、第1の吐出口51からは内層形成用材料1’を吐出し、第2の吐出口52からは外層形成用材料2’を吐出するよう動作する。これにより、内層1と外層2との2層構造の成形体3が得られる。以下、このプロセスを詳述する。
本工程で成形される成形体3は、いかなる形状に押出成形されてもよいが、ここでは、図1に示す破線に沿うように、つづら折り状に押出成形された成形体3を形成する場合を例に説明する。
まず、基材6上に形成すべき成形体3の形状パターン(つづら折り状パターン)を、あらかじめ駆動手段に入力し記憶させる。駆動手段では、入力された成形体3の形状パターンに基づいて、ノズル50を基材6に対して相対的に移動させる。この際、この駆動手段は、ノズル50のみを駆動してもよく、基材6のみを駆動してもよく、双方を駆動するようにしてもよい。
次いで、駆動手段によりノズル50を移動させつつ、第1の吐出口51からは内層形成用材料1’を、第2の吐出口52からは外層形成用材料2’を、同時に吐出する。これにより、内層形成用材料1’と外層形成用材料2’とが一体化しつつ吐出され、ノズル50の移動経路に沿って、つづら折り状パターンをなす成形体3が基材6上に敷設されることとなる。
ここで、第1の吐出口51から内層形成用材料1’を吐出する際の吐出圧力と、第2の吐出口52から外層形成用材料2’を吐出する際の吐出圧力とを適宜調整することにより、最終的に得られる光導波路10の内層1の厚さと外層2の厚さとの比率を調整することができる。
また、内層形成用材料1’を吐出する際の吐出圧力は、好ましくは50〜500kPa程度、より好ましくは100〜300kPa程度の範囲内に設定され、外層形成用材料2’を吐出する際の吐出圧力は、好ましくは10〜200kPa程度、より好ましくは30〜150kPa程度の範囲内に設定される。
一方、第1の吐出口51の面積は、第1の吐出口51や第2の吐出口52から吐出される材料の吐出圧力に応じて異なるものの、好ましくは、第2の吐出口52の面積の0.2〜3倍程度とされ、より好ましくは、0.5〜2倍程度とされる。これにより、内層1の厚さと外層2の厚さとの比率を最適化することができる。
また、第1の吐出口51の横断面の外周、および、第2の吐出口52の横断面の外周は、それぞれほぼ真円であるのが好ましい。このような形状の各吐出口51、52は、吐出圧力が全体に均一に及びやすいため、一定方向に安定して材料を吐出することができる。その結果、寸法精度の高い成形体3が得られる。
ところで、基材6上に敷かれた内層形成用材料1’および外層形成用材料2’は、その自重により基材6の上面に沿って広がる(図3(a)参照)。その後、これらを自然的または強制的に固化させることにより、基材6上に、図3(b)に示すような扁平状(帯状)の成形体3が得られる。
なお、内層形成用材料1’の粘度および外層形成用材料2’の粘度は、それぞれ20℃において、5〜1000Pa・s程度に設定されるのが好ましく、10〜600Pa・s程度に設定されるのがより好ましい。各材料の粘度を前記範囲内に設定することにより、押出成形が断続的になって、成形体3が途切れ途切れになったり、押出成形後の成形体3の保形性が低下するのを抑制しつつ、前記各材料がその自重で基材6上に広がり、帯状の成形体3を容易に得ることができる。その結果、寸法精度に優れた成形体3を効率よく製造することができる。
以上のようにして、内層形成用材料1’で構成された内層1と、外層形成用材料2’で構成された外層2とを備える、つづら折り状パターンの成形体3が得られる。この成形体3の製造過程では、内層形成用材料1’と外層形成用材料2’とが一体化しつつ成形されるため、内層1と外層2との間の密着性を特に高めることができる。その結果、最終的に、内層1と外層2とが物理的および光学的に接した光導波路10が得られる。
なお、各材料を強制的に固化させる方法としては、各材料を加熱する方法、紫外線等のエネルギー線を照射する方法、ガスを吹き付ける方法、減圧雰囲気に放置する方法等が挙げられる。
ここで、内層1を構成する内層形成用材料1’は、ポリマーと、添加剤(少なくともモノマーおよび触媒を含む)とで構成される現像性材料を含有し、活性放射線の照射および加熱により、ポリマー中において、モノマーの反応が生じる材料である。
そして、得られた内層1中では、ポリマー(マトリックス)は、いずれも、実質的に一様かつランダムに分配され、添加剤は、ポリマー内に実質的に一様かつランダムに分散されている。これにより、内層1中には、添加剤が実質的に一様かつ任意に分散されている。
ポリマーには、透明性が十分に高く(無色透明であり)、かつ、後述するモノマーと相溶性を有するもの、さらに、その中で後述するようにモノマーが反応(重合反応や架橋反応)可能であり、モノマーが重合した後においても、十分な透明性を有するものが好適に用いられる。
ここで、「相溶性を有する」とは、モノマーが少なくとも混和して、内層形成用材料1’中においてポリマーと相分離を起こさないことを言う。
このようなポリマーとしては、前述した内層1の構成材料となる材料が挙げられる。
なお、ポリマーとしてノルボルネン系ポリマーを用いた場合、このポリマーが高い疎水性を有するため、吸水による寸法変化等を生じ難い内層1を得ることができる。
また、ノルボルネン系ポリマーとしては、単独の繰り返し単位を有するもの(ホモポリマー)、2つ以上のノルボルネン系繰り返し単位を有するもの(コポリマー)のいずれであってもよい。
このうち、コポリマーの一例としては、下記式(1)で表わされる繰り返し単位を有する化合物が好適に用いられる。
[式中、xは、1〜9の整数を表し、yは、1〜4の整数を表す。]
また、上記式中、m:nは、質量比で4:6〜7:3程度であるのが好ましく、4:6〜6:4程度であるのがより好ましい。
なお、コポリマーの種類としては、上記式(1)の2つの単位が任意の順序(ランダム)に並んだもの、交互に並んだもの、各単位がそれぞれ固まって(ブロック状に)並んだもの等のいずれの形態をとるものであってもよい。
ここで、ポリマーとして上記ノルボルネン系ポリマーを用いた場合、添加剤の一例として、ノルボルネン系モノマー、助触媒(第1の物質)および触媒前駆体(第2の物質)を含むものが好ましく選択される。
ノルボルネン系モノマーは、後述する活性放射線に照射により、活性放射線の照射領域において反応して反応物を形成し、この反応物の存在により、内層1において、照射領域と、活性放射線の未照射領域とにおいて、屈折率差を生じさせ得るような化合物である。
この反応物としては、ノルボルネン系モノマーがポリマー(マトリックス)中で重合して形成されたポリマー(重合体)、ポリマー同士を架橋する架橋構造、および、ポリマーに重合してポリマーから分岐した分岐構造(ブランチポリマーや側鎖(ペンダントグループ))のうちの少なくとも1つが挙げられる。
ここで、内層1において、照射領域の屈折率が高くなることが望まれる場合には、比較的低い屈折率を有するポリマーと、このポリマーに対して高い屈折率を有するノルボルネン系モノマーとが組み合わせて使用され、照射領域の屈折率が低くなることが望まれる場合には、比較的高い屈折率を有するポリマーと、このポリマーに対して低い屈折率を有するノルボルネン系モノマーとが組み合わせて使用される。
なお、屈折率が「高い」または「低い」とは、屈折率の絶対値を意味するものではなく、ある材料同士の相対的な関係を意味する。
そして、ノルボルネン系モノマーの反応(反応物の生成)により、内層1において照射領域の屈折率が低下する場合、当該部分が側面クラッド部12となり、照射領域の屈折率が上昇する場合、当該部分がコア部11となる。
触媒前駆体(第2の物質)は、前記のモノマーの反応(重合反応、架橋反応等)を開始させ得る物質であり、後述する活性放射線の照射により活性化した助触媒(第1の物質)の作用により、活性化温度が変化する物質である。
この触媒前駆体(プロカタリスト:procatalyst)としては、活性放射線の照射に伴って活性化温度が変化(上昇または低下)するものであれば、いかなる化合物を用いてもよいが、特に、活性放射線の照射に伴って活性化温度が低下するものが好ましい。これにより、比較的低温による加熱処理でコア部11および側面クラッド部12を形成することができ、他の層に不要な熱が加わって、光導波路10の特性(光伝送性能)が低下するのを防止することができる。
このような触媒前駆体としては、下記式(Ia)および(Ib)で表わされる化合物の少なくとも一方を含む(主とする)ものが好適に用いられる。
(E(R)3)2Pd(Q)2 ・・・(Ia)
[(E(R)3)aPd(Q)(LB)b]p[WCA]r ・・・(Ib)
[式Ia、Ib中、それぞれ、E(R)3は、第15族の中性電子ドナー配位子を表し、Eは、周期律表の第15族から選択される元素を表し、Rは、水素原子(またはその同位体の1つ)または炭化水素基を含む部位を表し、Qは、カルボキシレート、チオカルボキシレートおよびジチオカルボキシレートから選択されるアニオン配位子を表す。また、式Ib中、LBは、ルイス塩基を表し、WCAは、弱配位アニオンを表し、aは、1〜3の整数を表し、bは、0〜2の整数を表し、aとbとの合計は、1〜3であり、pおよびrは、パラジウムカチオンと弱配位アニオンとの電荷のバランスをとる数を表す。]
式Iaに従う典型的な触媒前駆体としては、Pd(OAc)2(P(i−Pr)3)2、Pd(OAc)2(P(Cy)3)2、Pd(O2CCMe3)2(P(Cy)3)2、Pd(OAc)2(P(Cp)3)2、Pd(O2CCF3)2(P(Cy)3)2、Pd(O2CC6H5)3(P(Cy)3)2が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。ここで、Cpは、シクロペンチル(cyclopentyl)基を表し、Cyは、シクロヘキシル基を表す。
また、式Ibで表される触媒前駆体としては、pおよびrが、それぞれ1および2の整数から選択される化合物が好ましい。
このような式Ibに従う典型的な触媒前駆体としては、Pd(OAc)2(P(Cy)3)2が挙げられる。ここで、Cyは、シクロヘキシル基を表し、Acは、アセチル基を表す。
これらの触媒前駆体は、モノマーを効率よく反応(ノルボルネン系モノマーの場合、付加重合反応によって効率よく重合反応や架橋反応等)することができる。
助触媒(第1の物質)は、活性放射線の照射によって活性化して、前記の触媒前駆体(プロカタリスト)の活性化温度(モノマーに反応を生じさせる温度)を変化させ得る物質である。
この助触媒(コカタリスト:cocatalyst)としては、活性放射線の照射により、その分子構造が変化(反応または分解)して活性化する化合物であれば、いかなるものでも用いることができるが、特定波長の活性放射線の照射によって分解し、プロトンや他の陽イオン等のカチオンと、触媒前駆体の脱離基に置換し得る弱配位アニオン(WCA)とを発生する化合物(光開始剤)を含む(主とする)ものが好適に用いられる。
弱配位アニオンとしては、例えば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン(FABA−)、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン(SbF6 −)等が挙げられる。
この助触媒(光酸発生剤または光塩基発生剤)としては、例えば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩やヘキサフルオロアンチモン酸塩の他、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガリウム酸塩、アルミン酸塩類、アンチモン酸塩類、他のホウ酸塩類、ガリウム酸塩類、カルボラン類、ハロカルボラン類等が挙げられる。
また、内層形成用材料(ワニス)1’中には、必要に応じて、増感剤を添加するようにしてもよい。
さらに、内層形成用材料1’中には、酸化防止剤を添加することができる。これにより、望ましくないフリーラジカルの発生や、ポリマーの自然酸化を防止することができる。その結果、得られた内層1(光導波路10)の特性の向上を図ることができる。
以上のような内層形成用材料1’を用いて内層1が形成される。
このとき、内層1は、第1の屈折率を有している。この第1の屈折率は、内層1中に一様に分散(分布)するポリマーおよびモノマーの作用による。
また、以上の添加剤の説明では、モノマーがノルボルネン系モノマーの場合を例に説明したが、これ以外のモノマーとしては、重合可能な部位を有する化合物であればよく、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、エポキシ系モノマーやオキセタン系モノマーのような環状エーテル、スチレン系モノマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、添加剤中の触媒は、モノマーの種類に応じて適宜選択すればよく、例えば、アクリル酸系モノマーや上記環状エーテルの場合には、触媒前駆体(第2の物質)の添加を省略することができる。
[2]露光工程
[2−1] 次に、開口(窓)1351が形成されたマスク(マスキング)135を用意し、このマスク135を介して、成形体3に対して活性放射線(活性エネルギー光線)130を照射する(図3(c)参照)。
以下では、モノマーとして、ポリマーより低い屈折率を有するものを用い、成形体3中の内層1において、活性放射線130の照射に伴って照射領域125の屈折率が低下する場合を一例に説明する。
すなわち、ここで示す例では、活性放射線130の照射領域125が内層1中の側面クラッド部12となる。
したがって、ここで示す例では、マスク135には、形成すべき側面クラッド部12のパターンと等価な開口(窓)1351、具体的には、図3(c)に示すように、形成すべきコア部11のパターンを反転させたパターンの開口1351が形成される。この開口1351は、照射する活性放射線130が透過する透過部を形成するものである。なお、図3(c)では、3つのコア部11を有するマルチチャンネルの光導波路を形成すべく、成形体3の両端部を結ぶように設定された一部の領域に対応したパターンの開口1351がマスク135に設けられている。
なお、マスク135は、予め形成(別途形成)されたもの(例えばプレート状のもの)でも、成形体3上に例えば気相成膜法や塗布法により形成されたものでもよい。
用いる活性放射線130は、助触媒に対して、光化学的な反応(変化)を生じさせ得るものであればよく、例えば、可視光、紫外光、赤外光、レーザ光の他、電子線やX線等を用いることもできる。
マスク135を介して、活性放射線130を成形体3に照射すると、活性放射線130が照射された照射領域125内に存在する助触媒(第1の物質:コカタリスト)は、活性放射線130の作用により反応(結合)または分解して、カチオン(プロトンまたは他の陽イオン)と、弱配位アニオン(WCA)とを遊離(発生)する。
そして、これらのカチオンや弱配位アニオンは、照射領域125内に存在する触媒前駆体(第2の物質:プロカタリスト)の分子構造に変化(分解)を生じさせ、これを活性潜在状態(潜在的活性状態)に変化させる。
なお、活性放射線130として、直描露光機等で用いられているレーザ光のように指向性の高い光を用いる場合には、マスク135の使用を省略してもよい。
ここで、つづら折り状のパターンをなす成形体3は、直線状部分と折り返し部分とが交互に繰り返し連結されたものである。したがって、成形体3は、複数の直線状部分と複数の折り返し部分とに分かれている。
本露光工程では、この複数の直線状部分に対して一括して活性放射線を照射するようにすれば、最終的に複数の光導波路10を一括して効率よく製造することが可能になる。この場合、用いるマスク135には、複数の直線状部分のそれぞれに対応して、形成すべき複数の側面クラッド部12のパターンと等価な開口1351が形成されたものが用いられる。
[2−2] 次に、成形体3に対して加熱処理(第1の加熱処理)を施す。
これにより、内層1の照射領域125内では、活性潜在状態の触媒前駆体が活性化して(活性状態となって)、モノマーの反応(重合反応や架橋反応)が生じる。
そして、モノマーの反応が進行すると、照射領域125内におけるモノマー濃度が徐々に低下する。これにより、照射領域125と未照射領域140との間には、モノマー濃度に差が生じ、これを解消すべく、未照射領域140からモノマーが拡散(モノマーディフュージョン)して照射領域125に集まってくる。
その結果、照射領域125では、モノマーやその反応物(重合体、架橋構造や分岐構造)が増加し、当該領域の屈折率にモノマー由来の構造が大きく影響を及ぼすようになり、第1の屈折率より低い第2の屈折率へと低下する。なお、モノマーの重合体としては、主に付加(共)重合体が生成する。
一方、内層1の未照射領域140では、当該領域から照射領域125にモノマーが拡散することにより、モノマー量が減少するため、当該領域の屈折率にポリマーの影響が大きく現れるようになり、第1の屈折率より高い第3の屈折率へと上昇する。
このようにして、照射領域125と未照射領域140との間に屈折率差(第2の屈折率<第3の屈折率)が生じて、コア部11(未照射領域140)と側面クラッド部12(照射領域125)とが形成される。
[2−3] 次に、成形体3に対して第2の加熱処理を施す。
これにより、未照射領域140および/または照射領域125に残存する触媒前駆体を、直接または助触媒の活性化を伴って、活性化させる(活性状態とする)ことにより、各領域125、140に残存するモノマーを反応させる。
このように、各領域125、140に残存するモノマーを反応させることにより、得られるコア部11および側面クラッド部12の安定化を図ることができる。
[2−4] 次に、成形体3に対して第3の加熱処理を施す。
これにより、得られる内層1に生じる内部応力の低減や、コア部11および側面クラッド部12の更なる安定化を図ることができる。
以上の工程を経て、図3(d)に示すように、内層1にコア部11および側面クラッド部12が形成される。そして、図4(a)に示すような、つづら折り状のパターンをなす光導波路10’が得られる。
また、本実施形態では、内層1のうち、照射領域125の屈折率が低下するとともに、未照射領域140の屈折率が上昇し、これによりコア部11と側面クラッド部12とが形成されるが、このとき、内層1を囲む外層2の屈折率は、コア部11の屈折率よりも低い必要がある。したがって、前述したように、外層2の構成材料は、その屈折率が、内層1の変化後の屈折率より低くなるように適宜選択される。
なお、本実施形態では、内層1の構成材料として、未照射領域140がコア部11となるような材料を例に説明したが、本発明はこれに限定されず、照射領域125がコア部11となるような材料であってもよい。すなわち、外層2の構成材料は、その屈折率が、内層1の変化後の屈折率のうち、最も高い値(コア部11の屈折率)よりも低ければ足りる。
また、例えば、第2の加熱処理や第3の加熱処理を施す前の状態で、コア部11と側面クラッド部12との間に十分な屈折率差が得られている場合等には、本工程[2−4]や前記工程[2−3]を省略してもよい。
[3]切断工程
前記工程を経て得られた、つづら折り状のパターンをなす光導波路10’は、直線状部分と折り返し部分17とが交互に繰り返し連結されたものである。
次に、この光導波路10’のうち、各折り返し部分17を切り落とす。この切り落とし作業は、好ましくは、直線状部分と折り返し部分17との境界を基材6ごと切断することにより行えば、光導波路10’の厚さが薄い場合でも安定して切断することができる。その結果、図4(b)に示すように、光導波路10’の直線状部分のみが残存し、複数の短冊状をなす光導波路10を一括して製造することができる。
各折り返し部分17の切り落とし作業には、ダイヤモンドカッター等を用いたダイシング(切削)法、レーザを用いたレーザ加工法等を用いることができる。
その後、必要に応じて、図4(c)に示すように、各光導波路10を基材6から剥離してもよい。剥離した各光導波路10は、単独で使用することもできるが、他の基材に貼り直して使用することもできる。
なお、基材6の上面には、あらかじめ光導波路10の剥離を容易にするための剥離層が設けられていてもよい。
以上のような方法によれば、1回の吐出作業と1回の露光作業のみで、かつ、幅方向の短距離の切り落とし作業のみで(長手方向の長距離の切断作業を伴うことなく)、複数の短冊状をなす光導波路10を効率よく製造することができる。
また、同一の製造工程を経て製造された各光導波路10は、それぞれのコア部11およびクラッド部16の光学特性、熱的特性、機械的特性等の各種特性がほぼ同一である。このため、これらの光導波路10は、互いに接続した場合、相互の接続性や接続後の信頼性において優れたものとなる。
さらに、上述したような方法で製造された光導波路10は、その横断面形状が図3(d)に示すように、上方に突出するような湾曲線と基材6に接する直線とからなる片凸レンズ状をなしている。このような形状の光導波路10は、基材6に対して密着性が高く、また、形状的観点では剥離の起点となるような突起が少ないと言える。このため、光導波路10が、基材6上に敷設された状態で使用される場合、光導波路10と基材6との密着強度をより高めることができ、光導波路10の信頼性を高めることができる。
加えて、このような形状の光導波路10は、上面が湾曲面であるため、外光を反射し易く、外光のコア部11に対する侵入を抑制する機能も有する。このため、光通信の品質をより高めることもできる。
ところで、上述したような押出成形法を用いて光導波路を製造する方法は、従来も知られていたが、コア部の小径化や、マルチチャンネルにおけるコア部の高密度化に関しては、十分とは言えなかった。これは、押出成形法では、小径のコア部を製造することが技術的に困難であることに起因している。具体的には、コア部11の径や密度は、押出成形における内層形成用材料1’の押出条件(内層形成用材料1’の粘度や温度、押出圧力、ノズル50の寸法精度、ノズル50の移動速度等)に大きく依存しており、この押出条件を厳密に制御することは極めて困難であるためである。特にマルチチャンネルの光導波路を製造する場合、チャンネル間の均一性が確保されず、寸法精度が著しく低下する等、上記の問題点が特に顕著であった。
これに対し、本発明では、上述したように、露光工程を用いて内層1にコア部11と側面クラッド部12とを作り込むため、マスクの開口のパターン次第で、極めて小径のコア部11も高密度で形成することができる。
また、この方法では、マスク135の開口1351のパターンを変更するだけで、製造する光導波路10のコア部11の径や各コア部11間の離間距離を簡単に変更することができる。このため、種類の異なる光導波路10を少量ずつ生産するような場合、光導波路10の種類に応じてノズル50を頻繁に変更する必要がないので、光導波路10の生産効率をより高めることができる。
さらに、本発明では、マルチチャンネル用のマスク135を用いることにより、チャンネル間の均一性が確保され、寸法精度の高いマルチチャンネル用の光導波路10を効率よく製造することができる。
なお、成形体3の製造途中では、押出成形における内層形成用材料1’や外層形成用材料2’の押出条件を一定に保つことにより、外径が一定の成形体3が得られる。
また、成形体3の製造途中で、この押出条件(製造条件)を徐々に変化させれば、外径が漸増した部分または漸減した部分を有する成形体3が得られる。そして、このような成形体3を用いることにより、外径が漸増したり漸減したりしたテーパ部分を有する光導波路10が得られる。図6には、このようなテーパ部分を有する光導波路の一例を示している。
ところで、一般には、光導波路10の端部のうち、光の入射端側では、その外径が大きいことが好ましい。これは、外径が大きければコア部11の径も大きくなり、コア部11に光を入射する際の光軸のずれの許容範囲が大きくなるためである。
かかる観点から、光導波路10の入射端近傍には、入射端に向かって徐々に外径が増加するようなテーパ部分を有するのが好ましい。換言すれば、成形体3の入射端近傍を製造する際には、その外径が入射端に向かって徐々に増加するように、前記押出条件を徐々に変化させることが好ましい。このようなテーパ部分を有する光導波路10であれば、入射端における光軸のずれの許容範囲が大きくなり、光導波路10に対する光の入射効率が高くなる。その結果、光導波路10に入射する光量が増大し、光通信の品質をより高めることができる。
なお、上述したように、成形体3に対して、外径が徐々に増加するようなテーパ部分を形成するためには、例えば、材料の押出圧力(吐出圧力)を徐々に高めたり、ノズル50の移動速度を徐々に低下させたりすればよい(図6参照)。
一方、光導波路10の端部のうち、光の出射端側では、その外径が小さいことが好ましい。これは、外径が小さければコア部11の径も小さくなり、出射する光の指向性が高まるため、受光素子に光を入射させる際の入射効率が高くなるためである。
かかる観点から、光導波路10の出射端近傍には、出射端に向かって徐々に外径が減少するようなテーパ部分を有するのが好ましい。換言すれば、成形体3の出射端近傍を製造する際には、その外径が出射端に向かって徐々に減少するように、前記押出条件を徐々に変化させることが好ましい。このようなテーパ部分を有する光導波路10であれば、出射端から出射される光の指向性が高まり、受光素子に入射する光の入射効率が高くなる。その結果、光通信の品質をより高めることができる。
なお、上述したように、成形体3に対して、外径が徐々に減少するようなテーパ部分を形成するためには、例えば、材料の押出圧力(吐出圧力)を徐々に低下させたり、ノズル50の移動速度を徐々に高めたりすればよい(図6参照)。
以上、モノマーの拡散を利用して内層1中に屈折率差を形成するモノマーディフュージョン法による光導波路10の製造方法について説明したが、光導波路10の製造方法には、その他の方法を用いることもできる。
例えば、フォトブリーチング法では、活性放射線の照射により活性化する離脱剤(物質)と、主鎖と該主鎖から分岐し、活性化した離脱剤の作用により、分子構造の少なくとも一部が主鎖から離脱し得る離脱性基(離脱性ペンダントグループ)とを有するポリマーを含有する内層形成用材料1’を用いる。この内層形成用材料1’は、この層の一部に紫外線等の活性放射線を照射することにより、離脱性基が離脱(切断)され、その領域の屈折率が変化(上昇または低下)する。例えば、離脱性基の離脱に伴って屈折率が低下するものとすると、活性放射線の照射領域が側面クラッド部12となり、それ以外の領域がコア部11となる。
また、フォトブリーチング法において、脱離剤の種類によっては、モノマーディフュージョン法における加熱処理が不要となる。この場合、前述した[2−2]〜[2−4]の加熱処理は省略することができる。
<光電気混載基板の製造方法>
次に、本発明の光電気混載基板の製造方法について説明する。
図7、8は、本発明の光電気混載基板の製造方法を説明するための斜視図である。なお、以下の説明では、図7、8中の上側を「上」、下側を「下」という。
本発明の光電気混載基板の製造方法は、本発明の光導波路の製造方法を利用して、基材上に光導波路10を効率よく配設し、光電気混載基板100を製造する方法である。
具体的には、配線基板101の下面に2つの光素子103を搭載し、この配線基板101の上面に帯状の成形体を敷く工程と、この成形体を固化させるとともに、加熱処理を施し、光導波路10を得る工程と、光導波路10にミラー7を形成する工程とを経て、光電気混載基板100を製造することができる。
以下、各工程について順次説明する。
まず、配線基板101を用意し、その下面に2つの光素子103を互いに離間して搭載する(図7(a)参照)。
各光素子103が搭載される位置には、それぞれ、配線基板101を貫通するスルーホール102が形成されている。
また、配線基板101には、図示しない電気素子と、この電気素子と光素子103とを接続する図示しない電気配線が設けられている。これらにより、光素子103の発光または受光は、電気素子によって制御される。
次いで、配線基板101の上面に対して、押出成形装置5により、内層形成用材料1’および外層形成用材料2’を同時に吐出する。これにより、帯状の成形体を配線基板101の上面に敷設する。この際、押出成形装置5のノズル50と配線基板101との相対位置を調整して、2つのスルーホール102を通過する(つなぐ)ように、各材料を吐出する。その結果、吐出された材料はその自重で広がり、図7(a)に示すようにスルーホール102を覆う帯状の成形体が得られる。すなわち、光素子103の搭載位置に対応して敷設された成形体が得られる。
その後、成形体を固化させる。次いで、固化した成形体に対して前述した露光工程により、コア部とクラッド部とを形成する。
次いで、成形体に加熱処理を施す。これにより、2つのスルーホール102をつなぐように敷設された光導波路10を得る(図7(b)参照)。
次いで、敷設した光導波路10のうち、2つのスルーホール102に対応する位置に加工を施す。この加工では、例えば光導波路10の一部をV字状に切り取る。これにより、加工面の一部がミラー7となる。
このミラー7を形成した光導波路10を介して、2つの光素子103の間が光学的に接続されることとなる。すなわち、2つの光素子103の間で光通信を行うことができる光電気混載基板100が得られる(図8)。
以上のような方法によれば、光導波路10を形成すべき個所にのみ、内層形成用材料1’および外層形成用材料2’を吐出しさえすればよいため、例えばフォトリソグラフィー法のようなパターニング方法により光導波路を形成した後、この光導波路を配線基板に貼り付けて光電気混載基板を製造するといった従来の方法に比べて、材料の消費量や製造に要する工数を必要最小限に抑えることができる。このため、光電気混載基板100の製造コストの低減を図ることができる。
また、配線基板101上に成形体の敷設作業を、数値制御された装置で行うことにより、スルーホール102の位置と成形体3との位置を高い精度で合わせることができる。すなわち、光導波路10と光素子103とのアライメントを高精度に行うことができる。その結果、光通信の品質をより高めることができる。
このようにして製造された光電気混載基板100では、例えば、光配線(光導波路10)で伝送された光信号を、光素子103において電気信号に変換し、電気配線に伝達する。これにより、光配線の部分で、従来の電気配線よりも高速かつ大容量の情報伝送が可能になる。このような長所を活かして、例えばCPUやLSI等の演算装置とRAM等の記憶装置との間をつなぐバス等に、この光電気混載基板100を適用することにより、システム全体の性能を高めるとともに、電磁ノイズの発生を抑制することができる。
なお、かかる光電気混載基板100は、例えば、携帯電話、ゲーム機、パソコン、テレビ、ホーム・サーバー等、大容量のデータを高速に伝送する電子機器類に搭載することが考えられる。
以上、本発明の光導波路の製造方法および光電気混載基板の製造方法を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、任意の工程を追加してもよい。
例えば、光導波路10のコア部11は、平面視で直線状に形成されているが、途中で湾曲、分岐等してもよく、その形状は任意である。
また、前記実施形態では2層構造の光導波路10を製造する場合について説明しているが、3層以上からなる光導波路を製造する場合にも本発明を適用することができることは言うまでもない。