以下、本発明の光導波路用フィルムの製造方法、光導波路用フィルム、光導波路、光電気混載基板および電子機器について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の光導波路用フィルムの製造方法に用いる塗布装置の構成を示す斜視図、図2は、本発明の光導波路用フィルムの製造方法を説明するための斜視図(部分的に欠損)、図3、4は、本発明の光導波路用フィルムの製造方法の第1実施形態を説明するための上面図および断面図、図5は、本発明の光導波路用フィルムを用いて本発明の光導波路を製造する方法を説明するための斜視図、図6は、図5に示す光導波路の断面図および光導波路の他の構成例を示す断面図、図7は、図5に示す光導波路を製造する方法の他の構成例を説明するための斜視図である。
図3、4に示す光導波路用フィルムの製造方法は、図5(c)または図7(c)に示すような帯状(短冊状)の光導波路10を製造するのに用いる光導波路用フィルム1を製造する方法である。
光導波路10は、長尺状のコア部14と、このコア部14を囲むように設けられた側面クラッド部15とが形成されたコア層13と、このコア層13の下方に積層されたクラッド層11と、コア層13の上方に積層されたクラッド層12とを有する。
このうち、コア層13は、その長手方向の両端部の膜厚が中央部の膜厚より厚くなっており、この膜厚の変化が連続的であることから、コア層13の下面は滑らかな曲面になっている。また、クラッド層11は均一な膜厚の層であり、このコア層13の曲面に沿って積層されている。これによりクラッド層11も湾曲している。
一方、コア層13の上面は平面である。そして、クラッド層12もクラッド層11と同様、均一な膜厚の層であり、このコア層13の平面に沿って積層されている。
上記の構成の光導波路10では、コア部14は、その側面を、側面クラッド部15および各クラッド層11、12で囲まれた状態となる。なお、以下では、側面クラッド部15および各クラッド層11、12をまとめてクラッド部ともいう。
光導波路10では、コア部14の一方の端部に入射された光を、コア部14とクラッド部との界面で全反射させ、他方の端部側に伝搬することにより、他方の端部から取り出すことができる。これにより、2点間において光通信を行うことができる。
コア部14の屈折率は、クラッド部の屈折率より大きければよいが、その差は、0.5%以上であるのが好ましく、0.8%以上であるのがより好ましい。一方、上限値は、特に設定されなくてもよいが、好ましくは5.5%程度とされる。屈折率の差が前記下限値未満であると光を伝達する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えても、光の伝送効率のそれ以上の増大は期待できない。
なお、前記屈折率差とは、コア部14の屈折率をA、クラッド部の屈折率をBとしたとき、次式で表される。
屈折率差(%)=|A/B−1|×100
以上のようなコア層13、クラッド層11およびクラッド層12の3層が積層されてなる光導波路10は、両端部の膜厚が中央部の膜厚より厚くなっており、その結果、中央部は可撓性が高く、両端部は剛性が高くなっている。このため、光導波路10は、中央部において耐屈曲性を高めることができ、一方、両端部では開口数が大きくなっていることから、接続相手先との結合損失を低減することができる。
以下、このような光導波路10の製造に用いられる光導波路用フィルム1、およびかかる光導波路用フィルム1を用いて光導波路10を製造する方法について順次説明する。
(光導波路用フィルムの製造方法)
<第1実施形態>
まず、光導波路用フィルムの製造方法の第1実施形態、かかる製造方法により形成される光導波路用フィルム、およびこれを用いて形成される光導波路について説明する。
光導波路用フィルム1は、図3(a)に示すように、中央部近傍の膜厚が相対的に薄く、縁部近傍の膜厚が相対的に厚いという形状的な特徴を有するものである。より具体的には、光導波路用フィルム1の各部の膜厚は、中心部が最も薄く、縁部に向かって放射状に徐々に厚くなっている。
このような光導波路用フィルム1を帯状に切断することにより、コア層13、クラッド層11およびクラッド層12のうちの少なくとも1層に用いられるフィルムを形成することができる。
本実施形態では、主に、光導波路用フィルム1を切断してコア層13を形成する場合を例に説明する。
図3(a)に示す光導波路用フィルム1は、[1]基材20上に液状樹脂組成物100を塗布し、液状被膜110を成膜する工程と、[2]液状被膜110を固化する工程とを有する製造方法により製造される。
以下、各工程について順次説明する。
[1]液状被膜110の成膜
[1−1]
まず、光導波路用フィルム1の原材料となる液状樹脂組成物100について説明する。
液状樹脂組成物100は、常温において流動性を有し、基材20上に層状に塗布した後、固化することにより光導波路用フィルム1を形成し得るものである。
本実施形態では、前述したように、コア層13の形成に用いられる光導波路用フィルム1を製造する方法について説明するが、コア層13の形成に用いるためには、光導波路用フィルム1の製造後、光導波路用フィルム1の一部の屈折率を変化させることにより、コア部14および側面クラッド部15を形成する必要がある。
光導波路用フィルム1の原材料となる液状樹脂組成物100は、ポリマー115と、添加剤120(本実施形態では、少なくともモノマー、助触媒および触媒前駆体を含む)とで構成される光誘発熱現像性材料(PITDM)を含有し、活性放射線の照射および加熱により、ポリマー115中において、モノマーの反応が生じる材料である(図2(b)参照)。
そして、液状樹脂組成物100を塗布することにより得られた液状被膜110中では、ポリマー(マトリックス)115が、実質的に一様かつランダムに分配され、添加剤120は、ポリマー115内に実質的に一様かつランダムに分散されている。このような液状被膜110を固化してなる光導波路用フィルム1では、その一部に活性放射線の照射または加熱がなされると、モノマーの反応が生じて反応領域と未反応領域との間に屈折率の差を生じさせる。その結果、コア部14と側面クラッド部15とを形成することができる。
ポリマー115には、透明性が十分に高く(無色透明であり)、かつ、後述するモノマーと相溶性を有するもの、さらに、その中で後述するようにモノマーが反応(重合反応や架橋反応)可能であり、モノマーが重合した後においても、十分な透明性を有するものが好適に用いられる。ここで、「相溶性を有する」とは、モノマーが少なくとも混和して、液状樹脂組成物100中や液状被膜110中においてポリマー115と相分離を起こさないことを言う。
このようなポリマー115としては、例えば、ノルボルネン系樹脂やベンゾシクロブテン系樹脂の環状オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾールが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体など)用いることができる。これらの中でも、特に、ノルボルネン系樹脂(ノルボルネン系ポリマー)を主とするものが好ましい。ポリマー115としてノルボルネン系ポリマーを用いることにより、優れた光伝送性能や耐熱性を有する光導波路用フィルム1を得ることができる。
また、ノルボルネン系ポリマーは、高い疎水性を有するため、吸水による寸法変化を生じ難い光導波路10を得ることができる。
ノルボルネン系ポリマーとしては、単独の繰り返し単位を有するもの(ホモポリマー)、2つ以上の繰り返し単位を有するもの(コポリマー)のいずれであってもよい。
比較的高い屈折率を有するノルボルネン系ポリマーとしては、アラルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。かかるノルボルネン系ポリマーは、特に高い屈折率を有する。
アラルキルノルボルネンの繰り返し単位が有するアラルキル基(アリールアルキル基)としては、たとえば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基、フルオレニルエチル基、フルオレニルプロピル基が挙げられるが、ベンジル基やフェニルエチル基が特に好ましい。
かかる繰り返し単位を有するノルボルネン系ポリマーは、極めて高い屈折率を有するものであることから好ましい。
また、ノルボルネン系ポリマーは、アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むノルボルネン系ポリマーは、柔軟性が高いため、かかるノルボルネン系ポリマーを用いることにより、光導波路用フィルム1に高いフレキシビリティ(可撓性)を付与することができる。
アルキルノルボルネンの繰り返し単位が有するアルキル基としては、たとえば、プロピル基、ブチル基、ベンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基が挙げられるが、ヘキシル基が特に好ましい。なお、これらのアルキル基は、直鎖状または分岐状のいずれであってもよい。
ヘキシルノルボルネンの繰り返し単位を含むことにより、ノルボルネン系ポリマー全体の屈折率が低下するのを防止し、かつ、高い柔軟性を保持することができる。
ここで、光導波路用フィルム1を用いて形成される光導波路10は、たとえば、600〜1550nm程度の波長領域の光を使用したデータ通信において好適に使用されるが、ヘキシル(アルキル)ノルボルネンの繰り返し単位を含むノルボルネン系ポリマーは、前述したような波長領域(特に、850nm付近の波長領域)の光に対する透過率が優れることから好ましい。
このようなノルボルネン系ポリマーの好ましい具体例としては、ヘキシルノルボルネンのホモポリマー、フェニルエチルノルボルネンのホモポリマー、ベンジルノルボルネンのホモポリマー、ヘキシルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとベンジルノルボルネンとのコポリマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本実施形態の液状樹脂組成物100は、添加剤120として、モノマー、助触媒(第1の物質)および触媒前駆体(第2の物質)を含んでいる。
モノマーは、後述する活性放射線の照射により、活性放射線の照射領域において反応して反応物を形成し、この反応物の存在により、液状被膜110において照射領域と、活性放射線の未照射領域とにおいて、屈折率差を生じさせ得るような化合物である。
この反応物としては、モノマーがポリマー(マトリックス)115中で重合して形成されたポリマー(重合体)、ポリマー115同士を架橋する架橋構造、および、ポリマー115に重合してポリマー115から分岐した分岐構造(ブランチポリマーや側鎖(ペンダントグループ))のうちの少なくとも1つが挙げられる。
ここで、液状被膜110において、照射領域の屈折率が高くなることが望まれる場合には、比較的低い屈折率を有するポリマー115と、このポリマー115に対して高い屈折率を有するモノマーとが組み合わせて使用され、照射領域の屈折率が低くなることが望まれる場合には、比較的高い屈折率を有するポリマー115と、このポリマー115に対して低い屈折率を有するモノマーとが組み合わせて使用される。なお、屈折率が「高い」または「低い」とは、屈折率の絶対値を意味するものではなく、ある材料同士の相対的な関係を意味する。
そして、モノマーの反応(反応物の生成)により、液状被膜110において照射領域の屈折率が低下する場合、当該部分が側面クラッド部15となり、照射領域の屈折率が上昇する場合、当該部分がコア部14となる。なお、後述する露光工程の説明では、前者の場合を例に説明する。
このようなモノマーとしては、重合可能な部位を有する化合物であればよく、特に限定されないが、たとえば、ノルボルネン系モノマー、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、エポキシ系モノマー、スチレン系モノマーが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、モノマーとしては、ノルボルネン系モノマーを用いるのが好ましい。ノルボルネン系モノマーを用いることにより、光伝送性能に優れ、かつ、耐熱性および柔軟性に優れる光導波路用フィルム1が得られる。
また、モノマーには、上記のモノマーに代えて、または、上記のモノマーとともに架橋性モノマー(架橋剤)を用いることもできる。この架橋性モノマーは、後述する触媒前駆体の存在下で、架橋反応を生じ得る化合物である。
架橋性モノマーを用いることにより、次のような利点がある。すなわち、架橋性モノマーは、より速く重合するので、光導波路用フィルム1の形成に要する時間を短縮することができる。また、架橋性モノマーは、加熱しても蒸発し難いので、蒸気圧の上昇を抑えることができる。さらに、架橋性モノマーは、耐熱性に優れるため、光導波路用フィルム1の耐熱性を向上させることができる。
架橋性ノルボルネン系モノマーとしては、連続多環環系(fused multicyclic ring systems)の化合物と、連結多環環系(linked multicyclic ring systems)の化合物とがある。
各種の架橋性ノルボルネン系モノマーの中でも、特に、ジメチルビス(ノルボルネンメトキシ)シラン(SiX)が好ましい。SiXは、アルキルノルボルネンの繰り返し単位および/またはアラルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むノルボルネン系ポリマーに対して十分に低い屈折率を有する。このため、後述する活性放射線を照射する照射領域の屈折率を確実に低くして、側面クラッド部15とすることができる。また、コア部14と側面クラッド部15との間における屈折率差を大きくすることができ、コア層13の特性(光伝送性能)の向上を図ることができる。
なお、以上のようなモノマーは、単独または任意に組み合わせて用いるようにしてもよい。
触媒前駆体(第2の物質)は、前記のモノマーの反応(たとえば、重合反応、架橋反応)を開始させ得る物質であり、後述する活性放射線の照射により活性化した助触媒(第1の物質)の作用により、活性化温度が変化する物質である。
この触媒前駆体(プロカタリスト:procatalyst)としては、活性放射線の照射に伴って活性化温度が変化(上昇または低下)するものであれば、いかなる化合物を用いてもよいが、特に、活性放射線の照射に伴って活性化温度が低下するものが好ましい。これにより、比較的低温による加熱処理で光導波路用フィルム1を形成することができ、熱の影響により光導波路用フィルム1の特性(光伝送性能)が低下するのを防止することができる。
また、活性化温度が低下した状態(活性潜在状態)において、触媒前駆体としては、その活性化温度が本来の活性化温度よりも10〜80℃程度(好ましくは、10〜50℃程度)低くなるものが好ましい。これにより、コア部14と側面クラッド部15との間に屈折率差を確実に生じさせることができる。
かかる触媒前駆体としては、Pd(OAc)2(P(i−Pr)3)2およびPd(OAc)2(P(Cy)3)2のうちの少なくとも一方を含む(主とする)ものが好適である。
助触媒(第1の物質)は、活性放射線の照射によって活性化して、前記の触媒前駆体(プロカタリスト)の活性化温度(モノマーに反応を生じさせる温度)を変化させ得る物質である。
この助触媒(コカタリスト:cocatalyst)としては、活性放射線の照射により、その分子構造が変化(反応または分解)して活性化する化合物であれば、いかなるものでも用いることができるが、特定波長の活性放射線の照射によって分解し、プロトンや他の陽イオンのカチオンと、触媒前駆体の脱離基に置換し得る弱配位アニオン(WCA)とを発生する化合物(光開始剤)を含む(主とする)ものが好適に用いられる。
弱配位アニオンとしては、たとえば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン(FABA−)、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン(SbF6−)が挙げられる。
この助触媒(光酸発生剤または光塩基発生剤)としては、たとえば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩やヘキサフルオロアンチモン酸塩の他、テトラキス(ベンタフルオロフェニル)ガリウム酸塩、アルミン酸塩類、アンチモン酸塩類、他のホウ酸塩類、ガリウム酸塩類、カルボラン類、ハロカルボラン類が挙げられる。
液状樹脂組成物(ワニス)100中には、必要に応じて、増感剤を添加するようにしてもよい。
増感剤は、活性放射線に対する助触媒の感度を増大して、助触媒の活性化(反応または分解)に要する時間やエネルギーを減少させる機能や、助触媒の活性化に適する波長に活性放射線の波長を変化させる機能を有するものである。
このような増感剤としては、助触媒の感度や増感剤の吸収のピーク波長に応じて適宜選択され、特に限定されないが、たとえば、9,10−ジブトキシアントラセン(CAS番号第76275−14−4番)のようなアントラセン類、キサントン類、アントラキノン類、フェナントレン類、クリセン類、ベンツピレン類、フルオラセン類(fluoranthenes)、ルブレン類、ピレン類、インダンスリーン類、チオキサンテン−9−オン類(thioxanthen‐9‐ones)が挙げられ、これらを単独または混合物として用いられる。
増感剤の具体例としては、2−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、4−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、フェノチアジン(phenothiazine)またはこれらの混合物が挙げられる。
液状樹脂組成物100中の増感剤の合有量は、特に限定されないが、0.01重量%以上であるのが好ましく、0.5重量%以上であるのがより好ましく、1重量%以上であるのがさらに好ましい。なお、上限値は、5重量%以下であるのが好ましい。
さらに、液状樹脂組成物100中には、酸化防止剤を添加することができる。これにより、望ましくないフリーラジカルの発生や、ポリマー115の自然酸化を防止することができる。その結果、得られたコア層13の特性の向上を図ることができる。
液状樹脂組成物(ワニス)100の調製に用いる溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒等の各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
上記のような液状樹脂組成物100は、基材20の上面に塗布される。
したがって基材20の上面は、液状樹脂組成物100を塗布する際の下地となるものであり、塗布された液状樹脂組成物100は、基材20の上面に沿って広がり、液状被膜110を形成する。
ここで、液状樹脂組成物100には流動性があるため、塗布された液状樹脂組成物100は重力(場合によっては遠心力)の影響で時間の経過とともに平滑化する。その結果、得られた液状被膜110の上面は、ほぼ水平になる。
このようにして得られた液状被膜110は、上面が平面である一方、下面は、基材20の上面の形状が転写されたものとなる。したがって、基材20の上面の形状を適宜設定することにより、具体的には上面に凹凸などを設けておくことにより、この凹凸によって基材20の上面の高さに差が生じるため、これを利用して目的とする形状の光導波路用フィルム1が得られることとなる。
基材20は、それ自体、部分的に厚さが異なっていることで上面に凹凸を有するものであってもよいが、平板状の基板と、その上に部分的に配置されることで、上面をかさ上げし、これにより上面に凹凸を生じさせる部材(調整部材)とを有するものであってもよい。すなわち、基材20は、複数の部材の組み合わせからなるものでもよい。
本実施形態では、基材20は、図2に示すように、平板状基板21と、平板状基板21上に載置された円錐状をなす調整部材22とを有するものである。図2に示す基材20は、その上面の高さが部分的に異なっており、中心部の高さは、縁部の高さより高くなっている。ここで、中心部や縁部の「高さ」とは、基材20より下方にある任意の水平面からの距離である。
このような基材20上に液状樹脂組成物100を塗布すると、得られる液状被膜110は、中心部の膜厚が最も薄くなり、縁部に向かって膜厚が徐々に厚くなるような形状となる。そして最終的に得られる光導波路用フィルム1も、上述した液状被膜110と同様の形状となる。
また、液状被膜110の形状に対する影響を考慮した場合、平板状基板21の上面と調整部材22の上面との接続部は、著しい段差を伴うことなく連続的に繋がっているのが好ましい。これにより、基材20の上面に塗布された液状被膜110の下面に著しい段差が生じるのを防止し、結果的には段差を含まない光導波路用フィルム1を得ることができる。段差があると光導波路10を湾曲させた際に段差部分に応力が集中し易くなり、断線等の起点になり易いばかりか、急激な構造変化に伴い、光の漏れや散乱等を招くこととなり、伝送損失を生じ易いことから、液状被膜110に段差を生じさせないようにすることが好ましい。
このような平板状基板21および調整部材22としては、それぞれ、シリコン基板、水晶基板、ガラス基板等の無機系材料基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリイミドフィルム等の有機系材料基板等が挙げられる。
また、基材20上に成膜された光導波路用フィルム1は、後述する工程において基材20から剥離される場合もあるので、基材20の表面にあらかじめ、剥離を容易にする剥離層を形成しておいてもよい。これにより、剥離時に光導波路用フィルム1に対して損傷等生じることなく、基材20から剥離することができる。
かかる剥離層の構成材料としては、例えば、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。
[1−2]
次に、上述した液状樹脂組成物100を塗布する塗布装置について説明する。
塗布装置としては、基材20上に液状樹脂組成物100を供給し得る装置であれば、特に限定されないが、本実施形態では、図1に示す塗布装置500を例に説明する。
図1に示す塗布装置500は、テーブル510と、テーブル510に液状樹脂組成物100を供給可能なノズル522を備えたヘッド520とを有している。
テーブル510は、図1に示すように、基台511の上側に基台511に対して回転可能に配置されており、基台511を貫通して設けられる軸部(図示せず)と接合されている。軸部には、ギア(図示せず)が設けられ、このギアを介してモーター(図示せず)で駆動することにより、テーブル510は図1中のA方向に回転する。
基台511の幅方向の端部には、支持柱530が設置されており、支持柱530の上側(図1中の上側)には、基台511の後方向(図1中の奥側方向)に延出するレール531が設置されている。支持柱530の上端部には箱体532が、箱体532の先端側にはヘッド520が設置されている。また、箱体532は、レール531に沿って駆動するプーリーワイヤーやラック・アンド・ピニオン機構等により、図1中のC方向に移動可能になっている。
ヘッド520は、ヘッド部521と、ヘッド部521の下部に設けられ、下方向に向かって延出するノズル522とを有している。ヘッド部521とノズル522には、図示しないチューブが設置されており、液状樹脂組成物100が供給可能になっている。
ヘッド部521は、B方向に移動して箱体532の内部に収納可能になっている。箱体532の内部は、例えばラック・アンド・ピニオン機構のピニオンギアを駆動するモーターが内蔵されている。このモーターが正逆のいずれにも回転可能になっており、これによりヘッド部521がB方向に進退自在に移動可能になっている。
また、箱体532は、上述したようにC方向に移動可能になっているので、それに応じてヘッド520もC方向に移動可能になっている。したがって、ノズル522は、基台511の面方向で任意の位置に配置可能になっている。
このような塗布装置500を用いることにより、テーブル510上に円盤状の基材20を搭載し、基材20とノズル522とを相対的に移動しつつ、ノズル522から液状樹脂組成物100を塗布することにより、液状樹脂組成物100を基材20の上面の任意の位置に塗布することができる。なお、塗布装置500は、円コーターとも称される。
また、ヘッド部521の下部には、ノズル522に隣接して膜厚センサー523が設けられている。膜厚センサー523は、塗布前の基材20の上面までの距離と、塗布された直後の液状被膜110の上面までの距離とを測定するとともに、その測定値の差を液状被膜110の膜厚とし、この値を基材20やヘッド520の移動パターン、ノズル522の吐出パターンにフィードバックさせるようになっている。これにより、吐出量の誤差を校正するようになっている。
このような膜厚センサー523としては、レーザー光、赤外線、超音波等を用いた各種の測距センサーが挙げられる。これらの測距センサーは、塗布前の基材20までの距離と、塗布後の液状被膜110までの距離とを比較することにより、液状被膜110の膜厚を測定し得るものである。
[1−3]
次に、塗布装置500を駆動して液状樹脂組成物100を塗布する方法について説明する。
塗布装置500の具体的な駆動方法としては、(I)基材20を回転させつつ、ノズル522を図1のB方向またはC方向に移動させる方法、(II)基材20を固定した状態で、ノズル522を図1のB方向およびC方向に移動させる方法が挙げられる。そして、これらの駆動方法により、移動に伴うノズル522の軌跡が基材20上に螺旋を描くように、ノズル522と基材20とを相対的に移動させつつ、液状樹脂組成物100を吐出する。これにより、基材20上に円盤状の液状被膜110が形成される。
まず、(I)の方法について説明する。
基材20の中心と、テーブル510の回転中心とが一致するように、テーブル510上に基材20を載置する。なお、テーブル510には、基材20を固定する吸引方式または静電方式の吸着機構(図示せず)が設けられており、これにより基材20はテーブル510に確実に固定される。
なお、基材20は、前述したように平板状基板21と調整部材22とが積層されてなる積層体であるが、このうち平板状基板21は、その中心とテーブル510の回転中心とが一致するように配置されており、一方の調整部材22も、その中心とテーブル510の回転中心とが一致するように配置されている。
次いで、ヘッド部521を移動させ、図2(a)に示すように、ノズル522の先端部を基材20の中心上に配置する。この際、基材20の中心と、ノズル522の軸線とが一致するようにする。なお、ノズル522のこの位置を基準位置とする。
次いで、基材20をA方向に回転させる。回転が安定したら、ヘッド520を基準位置からB1方向へ移動させるとともに、ノズル522から液状樹脂組成物100を線状に吐出する。これにより、液状樹脂組成物100が基材20上に螺旋を描くように塗布されていくことになる。
そして、ノズル522が基材20の外周部に到達すると、液状樹脂組成物100の吐出を停止する。これにより図2(b)に示す円盤状の液状被膜110が形成される。
このような方法は、スピンコート法のように遠心力のみで成膜するものではないので、飛散する原料が低減され、しかも、原料の使用量はあらかじめ決められた吐出量だけに制限されるため、廃棄物の量を確実に低減することができる。その結果、装置のメンテナンスが容易になるとともに、製造コストの削減を図ることができる。
ここで、螺旋状に吐出される線状の液状樹脂組成物100において、半径方向に隣接する液状樹脂組成物100の線同士が、互いに接触しているか、または、吐出された液状樹脂組成物100が自重または遠心力により広がり、所定時間経過後に互いに接触し得るような間隔で吐出されるのが好ましい。これにより、形成される液状被膜110の膜厚を正確に制御することができる。
得られた液状被膜110を後述する工程で固化することにより光導波路用フィルム1が得られる。
ところで、光導波路用フィルム1は、前述したように中央部近傍の膜厚が相対的に薄く、縁部近傍の膜厚が相対的に厚いという特徴を有する円盤状のフィルムであり、このような形状的な特徴は、基材20の上面の高さが膜厚の差に反映されることによって得られるものである。
したがって、このような光導波路用フィルム1を形成するためには、液状被膜110の上面を水平にすることが好ましい。これにより、基材20の上面の高さは、そのまま液状被膜110の膜厚の差に反映される。液状被膜110の上面を水平にするためには、液状樹脂組成物100を塗布した後、所定の時間放置すればよい。これにより、流動性を有する液状樹脂組成物100の膜厚は重力(場合によっては遠心力)の影響で平均化され、平滑な液状被膜110が得られる。
液状樹脂組成物100の粘度は、20℃において、5〜1000Pa・s程度に設定されるのが好ましく、10〜600Pa・s程度に設定されるのがより好ましい。液状樹脂組成物100の粘度を前記範囲内に設定することにより、液状樹脂組成物100を途切れることなく連続的に吐出可能になるとともに、吐出された液状樹脂組成物100が適度に流れて、得られる液状被膜110の膜厚が確実に平均化される。したがって、上記のような粘度の液状樹脂組成物100を用いることにより、上面の高さが一定な液状被膜110を確実に形成することができる。
また、液状樹脂組成物100の膜厚が時間の経過とともに平均化する場合は、液状被膜110を放置しさえすればよいが、周囲の環境や液状樹脂組成物100の条件等によっては、長時間放置したとしても平均化しない場合がある。
このような場合には、基材20の上面の凹凸形状に合わせて、液状樹脂組成物100の塗布量を部分的に異ならせる必要が生じる。
ここで、液状被膜110の膜厚は、基材20の単位面積に対して塗布される液状樹脂組成物100の塗布量に比例する(または正の相関関係を有する)と考えられる。すなわち、単位面積に対する塗布量が多いほど液状被膜110の膜厚が厚くなると考えられる。したがって、基材20の上面の凹凸形状に応じて液状樹脂組成物100の単位面積当たりの塗布量を変化させることにより、上面の高さが一定な液状被膜110を形成することができる。
なお、塗布装置500のモーター(図示せず)、ノズル522による液状樹脂組成物100の開閉機構(図示せず)、およびヘッド520を駆動する機構には、それぞれ図示しない制御部が電気的に接続されている。この制御部は、これらの部位の駆動を協調的に制御することができるので、これにより形成される液状被膜110の上面の高さをより正確かつ確実に均一化することができる。
ここで、基材20やヘッド520の移動パターンには、基材20の回転速度、ヘッド520の移動方向と移動速度等のパラメーターがあり、また、ノズル522の吐出パターンには、液状樹脂組成物100の単位時間当たりの吐出量、吐出回数等のパラメーターがある。これらのパラメーターを例えば以下のように制御することにより、部分的な塗布量を調整し、上面の高さが一定な液状被膜110を形成することができる。
(i)基材20の回転速度を一定にする場合
まず、一定の回転速度で基材20を回転させる場合には、基準位置からB1方向へ移動させるヘッド520の移動速度を、中央部近傍では大きく、縁部近傍では小さくなるように制御する。これにより、ヘッド520が基材20の縁部近傍に滞在する時間は、中央部近傍より長くなり、縁部近傍にはより多くの液状樹脂組成物100を塗布することが可能になる。
しかしながら、ヘッド520を中央部から縁部に移動する際の移動速度の減少量は、基材20の周速の変化を考慮して決定される。つまり、基材20を一定の回転速度で回転させた場合、基材20の周速は中央部近傍から縁部近傍に向かうにつれて徐々に増加している。このため、ノズル522の吐出パターンが一定である場合には、ヘッド520を等速で移動させたとしても、単位面積に塗布される液状樹脂組成物100の塗布量は、中央部から縁部に向かって徐々に減少することとなり、一定の膜厚にはならない。そこで、液状被膜110の上面の高さを一定にするためには、ヘッド520が中央部近傍から縁部近傍へ移動するにつれて、ヘッド520の移動速度を、周速の増加率を上回る減少率で減少させるようにすればよい。これにより、単位面積に吐出される液状樹脂組成物100の塗布量は、中央部近傍では小さく、縁部近傍では大きくなる。
また、基材20の回転速度に加え、ヘッド520の移動速度も一定にする場合には、ノズル522の吐出パターンを変化させればよい。具体的には、ノズル522による液状樹脂組成物100の単位時間当たりの吐出量(吐出速度)を、ヘッド520が中央部近傍から縁部近傍に移動するにつれて、周速の増加率を上回る増加率で増加させればよい。この方法によっても、単位面積に吐出される液状樹脂組成物100の塗布量は、中央部近傍では小さく、縁部近傍では大きくなる。
なお、もちろん、ヘッド520の移動パターンと、ノズル522の吐出パターンの双方を変化させることにより、塗布量を変化させるようにしてもよい。
(ii)基材20の回転速度を可変にする場合
一方、基材20の回転速度を可変にする場合には、基準位置からB1方向へ移動させるヘッド520の位置に応じて、基材20の回転速度を制御する。
具体的には、ヘッド520が中央部近傍から縁部近傍に移動する際に、液状被膜110の上面の高さが一定になるように、基材20の上面の高さの変化に、基材20の周速の変化を加味した上で、基材20の回転速度をヘッド520の移動に応じて徐々に小さくする。このようにすれば、複数のパラメーターのうち、基材20の回転速度のみを可変パラメーターとし、その他のパラメーターは固定パラメーターとすることができるので、塗布装置500の制御がきわめて容易になる。
また、ヘッド520が中央部近傍から縁部近傍に移動する際に、いずれの位置においても基材20の周速が一定になるように、基材20の回転速度をヘッド520の移動に応じて徐々に小さくする。このようにすれば、中央部と縁部とで周速の差がなくなるため、周速の差による塗布量への影響も相殺されることとなる。その結果、例えばヘッド520の移動パターンがそのまま塗布量の変化に反映されることになるため、移動パターンの制御が容易になる。同様に、ノズル522の吐出パターンがそのまま吐出量の変化に反映されることになるため、吐出パターンの制御が容易になる。その結果、液状被膜110の上面の高さをより正確に均一化することができる。
以上、(i)、(ii)の方法により、液状被膜110の上面の高さを一定にすることができる。
なお、液状被膜110のうち、最も厚い部分(厚膜部)の膜厚は、最も薄い部分(薄膜部)の膜厚の1.1〜5倍程度であるのが好ましく、1.5〜4倍程度であるのがより好ましい。これにより、最終的に得られる光導波路10の中央部における耐屈曲性の向上と、両端部における結合損失の低減とを高度に両立することができる。
また、基材20の回転速度が速すぎる場合には、ノズル522から吐出された液状樹脂組成物100に大きなせん断力が働き、この力の作用によって液状樹脂組成物100が途切れてしまうおそれがある。このため、回転速度には、液状樹脂組成物100の粘性、基材20の大きさ等に応じて、液状樹脂組成物100が途切れない範囲で上限値を設定するのが好ましい。具体的には、回転速度の上限値は、諸条件に応じて設定されるものの、好ましくは100rpm、より好ましくは60rpmとされる。
また、前述したように、吐出された液状樹脂組成物100は自重または遠心力により広がる場合があるため、広がり切った時点での膜厚を液状被膜110の膜厚として捉える必要がある。したがって、例えばヘッド520の移動パターンを設定する際には、液状樹脂組成物100の広がり方を加味した上で設定されるのが好ましい。
なお、ヘッド520の移動速度が速すぎる場合には、液状樹脂組成物100の塗布の位置精度が低下するおそれがある。このため、ヘッド520の移動速度にも、液状樹脂組成物100の粘性、ノズル522の内径等に応じて、上限値を設定するのが好ましい。具体的には、移動速度の上限値は、諸条件に応じて設定されるものの、好ましくは2mm/sec、より好ましくは1mm/secとされる。
また、ヘッド520の移動パターンには、基準位置から縁部に向かうパターンのみでなく、縁部から再び基準位置に向かうパターンが加わってもよい。さらに、特定位置で停止したり、特定の区間を往復したりするようなパターンが加わってもよい。
さらに、ノズル522の吐出パターンも、途中で吐出を停止することがあってもよい。したがって、吐出パターンには、単位時間当たりの吐出量の他に、所定の領域に対する吐出回数というパラメーターも含まれることとなる。
よって、ヘッド520の移動パターンとノズル522の吐出パターンとを組み合わせることにより、部分的に塗布の回数を異ならせることができ、これにより、部分的に塗布量を異ならせるようにしてもよい。
この場合、1回目の塗布により形成された液状被膜を乾燥させた後、2回目の塗布を行うようにするのが好ましい。このようにすれば、複数回の塗布により液状被膜の膜厚が厚くなったとしても、1回目の液状被膜はすでに乾燥済みで膜厚が変化しないため、液状被膜の膜厚変化が抑制される。その結果、最終的に得られる光導波路用フィルム1の膜厚パターンの再現性も向上することとなる。
また、2回目の塗布を行う場合、すでに1回目で塗布された液状被膜を乾燥させた膜上に塗布されることになるため、塗布面が傾斜している場合もある。このため、この傾斜によって塗布された液状樹脂組成物100が流れるおそれもある。そこで、傾斜によって塗布量が変化することを加味した上で2回目の液状被膜の膜厚パターンを設定するのが好ましい。
また、ノズル522の先端と基材20の表面との距離(ギャップ)は、液状被膜110の膜厚より大きくし、ノズル522の先端と液状被膜110とが乖離する距離未満とする必要がある。液状被膜110の膜厚より前記距離が小さい場合、ノズル522の先端部が液状被膜110を削り取ってしまうおそれがあり、液状被膜110の膜厚より前記距離が大き過ぎる場合には、ノズル522の先端と液状被膜110とが乖離してしまうおそれがある。
一例として、ノズル522の先端と基材20の表面との距離は、0.01〜5mm程度であるのが好ましく、0.1〜2mm程度であるのがより好ましい。
液状被膜110の膜厚は、製造する光導波路用フィルム1の膜厚に応じて設定され、特に限定されないが、5〜200μm程度であるのが好ましく、30〜150μm程度であるのがより好ましい。膜厚が前記範囲内であれば、液状被膜110を安定して形成することができる。
次に、(II)の方法について説明する。
(II)の方法では、基材20を回転させず固定した状態で、ヘッド520の移動パターンおよびノズル522の吐出パターンを制御する以外は、(I)の方法と同様である。
すなわち、(II)の場合、基材20は固定されているため、基材20に対して螺旋を描くようにヘッド520の移動パターンを制御する。また、それとともにノズル522の吐出パターンを制御すればよい。これらの制御は、液状被膜110の上面の高さが一定になるように行われる。
以上、(I)、(II)の方法により、上面の高さが一定な液状被膜110が得られる。
なお、基材20の上面のうち、液状樹脂組成物100を塗布する領域を囲うように、あらかじめ土手のような凸条を設けておいてもよい。この凸条を設けることにより、塗布された液状樹脂組成物100が周囲に流れ続けてしまうのを防止することができる。その結果、得られる液状被膜110が目的とする膜厚より薄くなってしまうのを防止することができる。
また、上記(I)、(II)の方法によれば、比較的粘度の高い液状樹脂組成物100を用いることができるという利点もある。粘度の高い液状樹脂組成物100は、流動性が低いため、塗布後の液状被膜110の形状が、自重等によって意図せず変形し、目的とする形状から外れてしまうのを防止することができる。
なお、必要に応じて、塗布した液状樹脂組成物100の上面の高さを均一化する処理を行うことにより液状被膜110を得るようにしてもよい。
この処理としては、塗布した液状樹脂組成物100を水平面内で回転させる方法、塗布した液状樹脂組成物100をスキージーで掃く方法等が挙げられる。前者の方法によれば、液状樹脂組成物100に遠心力を付与し、液状樹脂組成物100の高さを平均化することにより上面の高さを均一化することができる。この場合の回転数は、前述した液状樹脂組成物100を塗布する際の基材20の回転数より高いのが好ましい。これにより、液状樹脂組成物100をより確実に均一化することができる。また、後者の方法によれば、液状樹脂組成物100の上面の高さを確実に均一化することができる。
このような処理を行うことにより、基材20やヘッド520の移動パターン、ノズル522の吐出パターン等を特に制御することなく、単に基材20上に液状樹脂組成物100を供給し、その後に上記の均一化処理を行うことによっても、上面の高さが均一な液状被膜110を形成することができる。
なお、上記処理を行う場合、処理に伴って液状被膜110の上面の高さが目減りする。したがって、上記処理を行う場合には、目減り分またはそれ以上の膜厚分を、あらかじめ液状被膜110の目標とする膜厚に加算しておくのが好ましい。
[2]液状被膜110の固化
次に、得られた液状被膜110を固化する。
液状被膜110を固化する方法としては、加熱、紫外線、遠赤外線などのエネルギー線の照射、ガスの吹き付け、減圧雰囲気に放置する等の方法が挙げられる。
これにより、液状被膜110は、その膜厚の比率を維持しつつ固化に至る。その結果、中央部近傍が薄く、縁部近傍に向かうにつれて徐々に膜厚が増大するような膜厚パターンを有する円盤状の光導波路用フィルム1が得られる(図3(a)参照)。
以上のように、本発明の光導波路用フィルムの製造方法によれば、基材20の上面を「成形型」のようにして、上面の形状を転写することにより、目的とする形状の光導波路用フィルム1を簡単に製造することができる。
特に、基材20の上面に塗布した液状樹脂組成物100は、重力または遠心力により高さが均一化され、得られた液状被膜110の上面は自ずと水平面に近づいていく。したがって、得られる光導波路用フィルム1の上面は自ずと平面になり、また下面には基材20の上面の形状が転写されることになり、その結果、複雑なプロセスを経ることなく、光導波路用フィルム1は目的とする形状に近づくこととなる。
また、従来は、作業者の熟練度によって液状被膜の膜厚パターンに著しいバラツキが生じていたのに対し、本発明によれば、「成形型」の転写により液状被膜110が形作られることから、液状被膜110の個体差を抑制することができる。その結果、中央部における耐屈曲性や、両端部における結合損失において、個体差の少ない光導波路構成用のフィルム(光導波路用フィルム1)を効率よく製造することができる。
(光導波路の製造方法)
次に、光導波路用フィルム1を用いて光導波路10を製造する方法について説明する。
光導波路10は、前述したように、コア層13、クラッド層11およびクラッド層12の3層からなる積層の帯状体であり、本実施形態ではこのうち、コア層13が光導波路用フィルム1を用いて形成される場合を例に説明する。
具体的には、光導波路10の製造方法は、[3]光導波路用フィルム1に露光を行いコア部14および側面クラッド部15を形成する工程と、[4]コア層13を形成するための光導波路用フィルム1とは別に、クラッド層11を形成するためのフィルム11’およびクラッド層12を形成するためのフィルム12’を用意し、光導波路用フィルム1を挟んでこれらのフィルム11’、12’を積層して積層体4を得る工程と、[5]積層体4を切断して光導波路10を切り出す工程とを有する。
以下、各工程について順次説明する。
[3]露光工程
まず、基材20上に成膜された光導波路用フィルム1のうち、コア層13の側面クラッド部15に対応する領域およびその外側の領域に活性放射線130を照射する。
この照射は、図3(b)に示すように、側面クラッド部15に対応する領域に開口(窓)1351が形成されたマスク135を用意し、このマスク135を介して行う。このマスク135は活性放射線130を遮蔽する領域が、コア部14を形成すべき領域に対応するように、基材20の中心を通過する帯状をなしており、それ以外の領域は開口1351である。
以下では、活性放射線130の照射により屈折率が低下し、照射領域125の一部が側面クラッド部15になる場合を例に説明する。
マスク135は、予め形成(別途形成)されたもの(例えばプレート状のもの)でも、光導波路用フィルム1上に例えば気相成膜法や塗布法により形成されたものでもよい。
マスク135として好ましいものの例としては、石英ガラスやPET基材等で作製されたフォトマスク、ステンシルマスク、気相成膜法(蒸着、スパッタリング等)により形成された金属薄膜等が挙げられるが、これらの中でもフォトマスクやステンシルマスクを用いるのが特に好ましい。微細なパターンを精度良く形成することができるとともに、ハンドリングがし易く、生産性の向上に有利であるからである。
また、マスク135と光導波路用フィルム1との間には、一般に数μm〜数十μmの隙間が設けられる(プロキシミティ露光)。これにより、露光位置の精度を高めるとともに、マスク135に付着していた異物が光導波路用フィルム1に移動してしまう不具合の発生を防止することができる。
用いる活性放射線130は、前述した助触媒に対して、光化学的な反応(変化)を生じさせ得るものであればよく、たとえば、可視光、紫外光、赤外光、レーザー光の他、電子線やX線を用いることもできる。これらの中でも、活性放射線130は、助触媒の種類、増感剤を含有する場合には、増感剤の種類等によって適宜選択され、特に限定されないが、波長200〜450nmの範囲にピーク波長を有するものであるのが好ましい。これにより、助触媒を比較的容易に活性化させることができる。
また、活性放射線130の照射量は、0.1〜9J/cm2程度であるのが好ましく、0.2〜6J/cm2程度であるのがより好ましく、0.2〜3J/cm2程度であるのがさらに好ましい。これにより、助触媒を確実に活性化させることができる。
前記マスク135の構成材料としては、照射する活性放射線130に応じて適宜選定される。具体的には、マスク135の構成材料としては、活性放射線130を遮光し得る材料とされる。このような特性を有するものであれば、マスク135の材料自体は、公知のいずれのものも使用することができる。
マスク135を介して、活性放射線130を光導波路用フィルム1に照射すると、活性放射線130が照射された照射領域125内に存在する助触媒(第1の物質:コカタリスト)は、活性放射線130の作用により反応(結合)または分解して、カチオン(プロトンまたは他の陽イオン)と、弱配位アニオン(WCA)とを遊離(発生)する。
そして、これらのカチオンや弱配位アニオンは、照射領域125内に存在する触媒前駆体(第2の物質:プロカタリスト)の分子構造に変化(分解)を生じさせ、これを活性潜在状態(潜在的活性状態)に変化させる。
ここで、活性潜在状態(または潜在的活性状態)の触媒前駆体とは、本来の活性化温度より活性化温度が低下しているが、温度上昇がないと、すなわち、室温程度では、照射領域125内においてモノマーの反応を生じさせることができない状態にある触媒前駆体のことを言う。
したがって、活性放射線130照射後においても、例えば−40℃程度で、光導波路用フィルム1を保管すれば、モノマーの反応を生じさせることなく、その状態を維持することができる。このため、活性放射線130照射後の光導波路用フィルム1を複数用意しておき、これらに一括して加熱処理を施すことにより、コア部14および側面クラッド部15を得ることができ、利便性が高い。
次に、光導波路用フィルム1に対して加熱処理(第1の加熱処理)を施す。これにより、照射領域125内では、活性潜在状態の触媒前駆体が活性化して(活性状態となって)、モノマーの反応(重合反応や架橋反応)が生じる。
そして、モノマーの反応が進行すると、照射領域125内におけるモノマー濃度が徐々に低下する。これにより、照射領域125と未照射領域140との間には、モノマー濃度に差が生じ、これを解消すべく、未照射領域140からモノマーが拡散(モノマーディフュージョン)して照射領域125に集まってくる。
その結果、照射領域125では、モノマーやその反応物(重合体、架橋構造や分岐構造)が増加し、当該領域の屈折率にモノマー由来の構造が大きく影響を及ぼすようになり、加熱前の屈折率を第1の屈折率とすると、それより低い第2の屈折率へと低下する。なお、モノマーの重合体としては、主に付加(共)重合体が生成する。
一方、未照射領域140では、当該領域から照射領域125にモノマーが拡散することにより、モノマー量が減少するため、当該領域の屈折率にポリマー115の影響が大きく現れるようになり、第1の屈折率より高い第3の屈折率へと上昇する。
このようにして、照射領域125と未照射領域140との間に屈折率差(第2の屈折率<第3の屈折率)が生じて、図4(c)に示すように、コア部14(未照射領域140)と側面クラッド部15(照射領域125)とが形成される。
上記加熱処理における加熱温度は、特に限定されないが、30〜80℃程度であるのが好ましく、40〜60℃程度であるのがより好ましい。また、加熱時間は、照射領域125内におけるモノマーの反応がほぼ完了するように設定するのが好ましく、具体的には、0.1〜2時間程度であるのが好ましく、0.1〜1時間程度であるのがより好ましい。
次に、光導波路用フィルム1に対して第2の加熱処理を施す。これにより、未照射領域140および/または照射領域125に残存する触媒前駆体を、直接または助触媒の活性化を伴って、活性化させる(活性状態とする)ことにより、各照射領域125、140に残存するモノマーを反応させる。
このように、各照射領域125、140に残存するモノマーを反応させることにより、得られるコア部14および側面クラッド部15の安定化を図ることができる。
この第2の加熱処理における加熱温度は、触媒前駆体または助触媒を活性化し得る温度であればよく、特に限定されないが、70〜100℃程度であるのが好ましく、80〜90℃程度であるのがより好ましい。
また、加熱時間は、0.5〜2時間程度であるのが好ましく、0.5〜1時間程度であるのがより好ましい。
次に、光導波路用フィルム1に対して第3の加熱処理を施す。これにより、得られる光導波路用フィルム1に生じる内部応力の低減や、コア部14および側面クラッド部15の更なる安定化を図ることができる。
この第3の加熱処理における加熱温度は、第2の加熱処理における加熱温度より20℃以上高く設定するのが好ましく、具体的には、90〜180℃程度であるのが好ましく、120〜160℃程度であるのがより好ましい。また、加熱時間は、0.5〜2時間程度であるのが好ましく、0.5〜1時間程度であるのがより好ましい。
なお、例えば、第2の加熱処理や第3の加熱処理を施す前の状態で、コア部14と側面クラッド部15との間に十分な屈折率差が得られている場合等には、第2の加熱処理や第3の加熱処理を省略してもよい。
得られたコア部14の幅は、特に限定されないが、1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、20〜70μm程度であるのがさらに好ましい。
また、図4(c)に示す構成では、コア部14は、平面視で直線状に形成されているが、途中で湾曲、分岐等してもよく、その形状は任意である。
また、図4(c)に示す構成では、コア部14は、その横断面形状が正方形または矩形(長方形)のような四角形をなしているが、この形状も任意である。
以上、光導波路用フィルム1中にコア部14および側面クラッド部15を形成する方法について説明したが、これには上記以外に、すでに公知のフォトブリーチング法、直接露光法等を用いることもできる。
また、上記説明では、マスク135を介して所望の領域に活性放射線130を照射する場合について説明したが、活性放射線130がレーザー光のように指向性の高い放射線である場合には、マスク135の使用を省略することができる。このため、マスク135に付着していた異物が光導波路用フィルム1に付着するおそれがなくなる。
この場合、活性放射線130の線源は、光導波路用フィルム1に対して相対的に移動可能になっており、光導波路用フィルム1のあらゆる位置に対して局所的な露光が可能になっている。
このため、コア部14および側面クラッド部15の設計データ(CADデータ)に基づいて線源を相対的に移動させつつ、活性放射線130を照射することにより、所定の領域を正確に露光することができる。また、マスク135と線源の位置関係によって生じる露光位置の誤差、および、活性放射線130が線源から放射状に照射されることによる露光位置の誤差を考慮する必要がなくなるので、例えば光導波路用フィルム1のように上面の高さが一定でない対象物に対しても、正確な露光が可能になる。
なお、活性放射線130として用いられるレーザー光としては、例えば紫外レーザー光が挙げられ、ビーム径は5〜20μm程度に設定されるのが好ましい。
[4]積層工程
次いで、クラッド層11を形成するためのフィルム11’、および、クラッド層12を形成するためのフィルム12’を用意する。このフィルム11’、12’は、いずれも膜厚が均一であり、外径は光導波路用フィルム1とほぼ同じであるとする。
次いで、前記工程で形成された光導波路用フィルム1を基材20から剥離した後、図5(a)に示すように、この光導波路用フィルム1を挟んでフィルム11’とフィルム12’とを積層する。これにより、積層体4が得られる。
この積層体4は、各フィルムを圧着することにより一体化される。これにより、フィルム11’、光導波路用フィルム1およびフィルム12’が物理的、光学的に接合される。
この圧着作業は、加熱下で行われるのが好ましい。加熱温度は、フィルム11’、12’や光導波路用フィルム1の構成材料等により適宜決定されるが、通常は、80〜200℃程度が好ましく、120〜180℃程度がより好ましい。
ところで、フィルム11’およびフィルム12’は、膜厚が均一であり、例えば、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法等の各種塗布方法により成膜されたものを用いることができる。
また、フィルム11’およびフィルム12’の構成材料としては、コア部14より低屈折率の材料が用いられる。例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体、複合体(積層体)など)用いることができる。
これらのうち、特に耐熱性に優れるという点で、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂、またはそれらを含むもの(主とするもの)を用いるのが好ましく、特に、ノルボルネン系樹脂(ノルボルネン系ポリマー)を主とするものが好ましい。
ノルボルネン系ポリマーは、耐熱性に優れるため、これをフィルム11’およびフィルム12’の構成材料として使用してなる光導波路10では、光導波路10に導体層を形成する際、導体層を加工して配線を形成する際、光学素子を実装する際、等に加熱されたとしても、フィルム11’およびフィルム12’が軟化して、変形するのを防止することができる。
また、高い疎水性を有するため、吸水による寸法変化等を生じ難いフィルム11’およびフィルム12’を得ることができる。
また、ノルボルネン系ポリマーまたはその原料であるノルボルネン系モノマーは、比較的安価であり、入手が容易であることからも好ましい。
さらに、フィルム11’およびフィルム12’の材料として、ノルボルネン系ポリマーを主とするものを用いると、曲げ等の変形に対する耐性(耐屈曲性)に優れ、繰り返し屈曲変形させた場合でも、フィルム11’およびフィルム12’と光導波路用フィルム1との層間剥離が生じ難く、フィルム11’およびフィルム12’の内部にマイクロクラックが発生することも防止される。しかも、光導波路用フィルム1の構成材料として好適に用いられる材料と同種となるため、光導波路用フィルム1との密着性がさらに高いものとなり、最終的にクラッド層11(12)とコア層13との間での層間剥離を防止することができる。このようなことから、光導波路10の光伝送性能が維持され、最終的に耐久性に優れた光導波路10が得られる。
[5]切り出し工程
次いで、得られた積層体4を帯状に切断して光導波路10を切り出す。具体的には、図5(b)に示すように、コア部14の長手方向の一部を含むような長方形の領域を切断線CLで切断することにより切り出す。なお、この領域は、積層体4の中心を通過し、両端部が積層体4の縁部近傍に位置するように設定される。
また、図4(d)には、光導波路用フィルム1に対する上記切断線CLの位置関係を示す。
以上のようにして図5(c)に示す光導波路10が得られる。
この方法によれば、光導波路用フィルム1とフィルム11’、12’とを積層して積層体4を形成する際に、位置合わせを厳密に行う必要がないという利点がある。すなわち、積層体4を形成した後、積層体4の内側に位置する切断線CLで切断するため、光導波路用フィルム1やフィルム11’、12’の位置が多少ずれていても、ずれた部分が切断線CLに干渉しない限り、位置ずれの影響を無視することができる。このため、各フィルムを切断した後、積層する場合に比べて、より簡単に高精度の光導波路10が得られる。
なお、光導波路用フィルム1が前述したように「すり鉢状」をなしているため、切断性CLは、光導波路用フィルム1の中心に対して点対称の関係になるよう設定されるのが好ましい。これにより、得られたコア層13は、両端部の膜厚がほぼ同じになるため、形状的に左右対称で異方性の少ないものとなる。
コア層13の切り出しには、ダイヤモンドカッター等を用いたダイシング法、レーザーを用いたレーザー加工法等を用いることができる。
また、クラッド層11、12の平均膜厚は、コア層13の平均膜厚の0.1〜1.5倍程度であるのが好ましく、0.2〜1.25倍程度であるのがより好ましく、具体的には、クラッド層11、12の平均膜厚は、特に限定されないが、それぞれ、通常、1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、10〜60μm程度であるのがさらに好ましい。
ここで、図6(a)に、光導波路10の側面図を示す。
光導波路10は、両端部の膜厚が中央部の膜厚より厚くなっており、その結果、中央部は可撓性が高く、両端部は剛性が高くなっている。
図6(a)において、光導波路10の端部の膜厚をt1とし、中央部の膜厚をt2としたとき、t1は、t2の1.1〜5倍程度であるのが好ましく、1.5〜4倍程度であるのがより好ましい。これにより、光導波路10の中央部における耐屈曲性の向上と、両端部における結合損失の低減とを高度に両立することができる。
また、両端部の膜厚が厚いことにより、両端部における剛性を高めることができる。このため、光導波路10を接続相手先のコネクター等に差し込む場合、高い剛性により差し込み性が向上するとともに、光導波路10の両端部に大きな荷重が加わったとしても、光導波路10が破壊されるのを防止することができる。
また、図6(a)に示す光導波路10では、クラッド層11、12として膜厚が均一なものを用いているが、クラッド層11、12についても、コア層13と同様、光導波路用フィルム1から切り出されたものを用いるようにしてもよい。
図6(b)に示す光導波路10aは、コア層13として膜厚が均一なものを用い、クラッド層11、12として光導波路用フィルム1から切り出されたものを用いている以外は、光導波路10と同様である。
このような光導波路10aは、光導波路用フィルム1から切り出されたものを2層用いているため、光導波路10aの両端部の膜厚と中央部の膜厚との差をより広げることができる。このため、光導波路10aの中央部における耐屈曲性の向上と、両端部における剛性の向上とを、より高度に両立することができる。
また、コア層13の膜厚が均一であるため、光学的な設計が容易になるという利点もある。
なお、この場合、クラッド層11、12を形成するための光導波路用フィルム1には露光工程が不要であることは言うまでもない。
また、図6(c)に示す光導波路10bでは、コア層13およびクラッド層11、12の3層すべてについて、光導波路用フィルム1から切り出されたものを用いている以外は、光導波路10と同様である。
このような光導波路10bは、光導波路用フィルム1から切り出されたものを3層用いているため、光導波路10bの両端部の膜厚と中央部の膜厚との差をさらに広げることができる。このため、光導波路10aの中央部における耐屈曲性の向上と、両端部における剛性の向上とを、より高度に両立することができる。
すなわち、両端部の膜厚がさらに厚いことにより、両端部における結合損失の低減および剛性の向上をさらに図ることができる。また、中央部の膜厚がさらに薄いことにより、中央部における耐屈曲性のさらなる向上が図られる。
なお、この場合も、クラッド層11、12を形成するための光導波路用フィルム1には露光工程が不要であることは言うまでもない。
また、上記の方法では、積層体4を形成した後、これから帯状の部分を切り出すことにより光導波路10を製造するが、以下のように積層工程と切り出し工程の順序を入れ替えるようにしてもよい。なお、この方法は、工程の順序が異なる以外は、前述の方法と同様である。
すなわち、まず、コア層13を形成するための光導波路用フィルム1を、図4(d)に示すように、切断線CLに沿って切断する。これにより、コア部14の長手方向の一部を抜き取るように、長方形のコア層13が切り出される。
その後、切り出された部分を基材20から剥離する。これにより、中央部の膜厚が薄く、両端部に向かって徐々に膜厚が増大する、図7(a)に示すようなコア層13が得られる。
次いで、クラッド層11およびクラッド層12を用意する。これらのクラッド層11、12は、膜厚が均一である。
次に、図7(b)に矢印で示すように、コア層13の下方にクラッド層11を、コア層13の上方にクラッド層12をそれぞれ積層し、3層を圧着する。これにより、クラッド層11、12とコア層13とが接合され、一体化する。その結果、図7(c)に示す光導波路10が得られる。
なお、これらの圧着については、前述した積層体4の圧着と同様にして行うことができる。
<第2実施形態>
次に、光導波路用フィルムの製造方法の第2実施形態について説明する。
図8、9は、本発明の光導波路用フィルムの製造方法の第2実施形態を説明するための上面図および断面図である。
以下、第2実施形態について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態に係る光導波路用フィルムの製造方法は、基材20の上面の形状が異なる以外は、前記第1実施形態と同様である。
図8(a)に示す光導波路用フィルム1は、中央部近傍と縁部近傍の膜厚がそれぞれ相対的に厚く、中央部と縁部との間に位置する環状の領域の膜厚がそれぞれ相対的に薄くなっている。
このような光導波路用フィルム1を、中心から縁部の間で、半径方向に沿って帯状に切断することにより、前記第1実施形態と同様、コア層13、クラッド層11およびクラッド層12のうちの少なくとも1層を形成することができる。
本実施形態では、主に、光導波路用フィルム1を切断してコア層13を形成する場合を例に説明する。
本実施形態において用いる基材20は、平板状基板21と、平板状基板21上に載置された平面視にて円環状をなす調整部材22とを有するものである。調整部材22の厚さは、図8(a)に示すように、円環の外縁および内縁において最も薄く、円環の外縁と内縁との中間部分において最も厚くなっている。調整部材22の厚さの変化が上記のようになっていることから、平板状基板21の上面と調整部材22の上面との接続部は、著しい段差を伴うことなく連続的に繋がったものとなる。
このような基材20では、中心部近傍および縁部近傍においては平板状基板21の上面が露出している一方、中心部と縁部との間に位置する円環状の部分においては調整部材22の上面が露出している。その結果、基材20では、上面の高さが部分的に異なっており、調整部材22が設けられた円環状の部分(以下、省略して「環状部分」とも言う。)の上面の高さは、中心部の上面および縁部の上面の高さより高くなっている。
このような基材20上に液状樹脂組成物100を塗布すると、得られた液状被膜110は、環状部分の膜厚が最も薄くなり、中央部および縁部に向かってそれぞれ膜厚が徐々に厚くなるような形状となる。そして最終的に得られる光導波路用フィルム1も、上述した液状被膜110と同様の形状となる。
以上のような基材20を用いることにより、図8(a)に示すような膜厚パターンの光導波路用フィルム1が得られる。
次いで、図8(b)に示すように、マスク135を介して活性放射線130を照射する。
図8(b)に示すマスク135は、活性放射線130を遮蔽する領域が、コア部14を形成すべき領域に対応するように、平面視にて基材20の中心から四方に放射する十字状をなしている。
活性放射線130の照射により、照射領域125は側面クラッド部15となり、未照射領域140はコア部14となる。その結果、図9(c)に示すように、平面視で十字状をなすコア部14と側面クラッド部15とが形成される。
次いで、図9(d)に示す切断線CLに沿って光導波路用フィルム1を切断する。図9(d)に示す切断線CLは、光導波路用フィルム1の中心から縁部の間に位置し、コア部14の一部を抜き取るような長方形の領域を切り出す線である。図9(d)では、4つの切断線CLが設けられることとなり、各切断線CLで囲まれた領域のそれぞれの端部は、光導波路用フィルム1の中心部近傍と縁部近傍とに位置するように設定される。
その後、切り出した帯状部分を基材20から剥離する。これにより、中央部の膜厚が薄く、両端部に向かって徐々に膜厚が増大するコア層13が得られる。
以上のような第2実施形態においても、第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
また、第2実施形態によれば、1つの光導波路用フィルム1から4つのコア層13を同時に形成することができる。このため、光導波路用フィルム1を効率よく利用することができ、廃棄物の量を削減することができる。
また、第2実施形態では、4つのコア層13を切り出す場合を例に説明したが、中心から縁部に向かって放射状に延びるコア部14の本数を増やすことにより、切り出し可能なコア層13の数を増やすこともできる。これにより、光導波路10の製造コストをさらに削減することができる。
また、第2実施形態では、光導波路用フィルム1の半径方向に沿って複数のコア層13を切り出すため、各コア層13間に形状の個体差が生じるのを防止することができる。さらに、個々のコア層13においても、形状の異方性が生じるのを防止することができる。
<第3実施形態>
次に、光導波路用フィルムの製造方法の第3実施形態について説明する。
図10、11は、本発明の光導波路用フィルムの製造方法の第3実施形態を説明するための上面図および断面図である。
以下、第3実施形態について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態に係る光導波路用フィルムの製造方法は、基材20の上面の形状が異なる以外は、前記第1実施形態と同様である。
図10(a)に示す光導波路用フィルム1は、中央部近傍の平面視にて略長方形の領域の膜厚が相対的に薄く、縁部に向かって徐々に膜厚が厚くなっている。
このような光導波路用フィルム1を帯状に切断することにより、前記第1実施形態と同様、コア層13、クラッド層11およびクラッド層12のうちの少なくとも1層を形成することができる。
本実施形態では、主に、光導波路用フィルム1を切断してコア層13を形成する場合を例に説明する。
本実施形態において用いる基材20は、平板状基板21と、平板状基板21上に載置された平面視にて略長方形をなす調整部材22とを有するものである。調整部材22の厚さは、図10(a)に示すように、長方形の短手方向の中心線近傍において最も厚く、中心線から長方形の両長辺に向かって膜厚が徐々に薄くなっている。調整部材22の厚さの変化が上記のようになっていることから、平板状基板21の上面と調整部材22の上面との接続部は、調整部材22の長辺において、著しい段差を伴うことなく連続的に繋がったものとなる。
このような基材20では、中心部近傍においては調整部材22の上面が露出している一方、縁部近傍においては平板状基板21の上面が露出している。その結果、基材20では、上面の高さが部分的に異なっており、調整部材22が設けられた略長方形の部分(以下、省略して「長方形部分」とも言う。)の上面の高さは、縁部の上面の高さより高くなっている。
このような基材20上に液状樹脂組成物100を塗布すると、得られた液状被膜110は、長方形部分の膜厚が最も薄くなり、縁部に向かって膜厚が徐々に厚くなるような形状となる。そして最終的に得られる光導波路用フィルム1も、上述した液状被膜110と同様の形状となる。
以上のような基材20を用いることにより、図10(a)に示すような膜厚パターンの光導波路用フィルム1が得られる。
次いで、図10(b)に示すように、マスク135を介して活性放射線130を照射する。
図10(b)に示すマスク135は、活性放射線130を遮蔽する領域が、コア部14を形成すべき領域に対応する形状をなしている。具体的には、マスク135は、長方形部分に重なり、かつ長方形部分の短手方向と平行に設けられた帯状をなしている。そして、本実施形態では、このようなマスク135が3つ、互いに平行に設けられている。
活性放射線130の照射により、照射領域125は側面クラッド部15となり、未照射領域140はコア部14となる。その結果、図11(c)に示すように、平面視で帯状をなす3つのコア部14と側面クラッド部15とが形成される。
次いで、図11(d)に示す切断線CLに沿って光導波路用フィルム1を切断する。図11(d)に示す切断線CLは、光導波路用フィルム1の各コア部14に沿って設けられ、各コア部14の一部を抜き出すような長方形の領域を切り出す線である。図11(d)では、3つの切断線CLが設けられることとなり、各切断線CLで囲まれた領域は、それぞれその両端部が、光導波路用フィルム1の縁部近傍に位置するように設定される。
その後、切り出した帯状部分を基材20から剥離する。これにより、中央部の膜厚が薄く、両端部に向かって徐々に膜厚が増大するコア層13が得られる。
以上のような第3実施形態においても、第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
また、第3実施形態によれば、1つの光導波路用フィルム1から3つのコア層13を同時に形成することができる。このため、光導波路用フィルム1を効率よく利用することができ、廃棄物の量を削減することができる。
また、第3実施形態では、3つのコア層13を切り出す場合を例に説明したが、調整部材22の長さを長くしたり、切断線CL同士の間隔を狭めたりすることにより、切り出し可能なコア層13の数を増やすこともできる。これにより、光導波路10の製造コストをさらに削減することができる。
<第4実施形態>
次に、光導波路用フィルムの製造方法の第4実施形態について説明する。
図12は、本発明の光導波路用フィルムの製造方法の第4実施形態を説明するための斜視図である。
以下、第4実施形態について説明するが、前記第3実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態に係る光導波路用フィルムの製造方法は、円コーターに代えて、ダイコーターにより液状被膜を形成するようにした以外は、前記第3実施形態と同様である。
まず、図12に示すように、平面視で長方形をなす基材20を用意する。
次いで、ダイコーター300により基材20上に液状樹脂組成物100を塗布し、液状被膜110を得る。
図12に示すダイコーター300は、長尺状の柱状部材で構成されたヘッド301を有している。このヘッド301は、長尺状の2つのヘッド部材302、303を組み合わせて構成されている。そして、2つのヘッド部材302、303の合わせ面には、長手方向に沿って延びる円柱状のキャビティ304が設けられている。
さらに、2つのヘッド部材302、303の合わせ面の一部には隙間が設けられており、この隙間は、ヘッド301の外表面とキャビティ304とを連結するスリット305を構成している。すなわち、スリット305の一方の端部は、ヘッド301の1つの面に、長手方向に沿って開口している。
このようなダイコーター300では、キャビティ304内に液状樹脂組成物100を貯留し、この液状樹脂組成物100をスリット305を介して吐出するよう構成されている。そして、液状樹脂組成物100を吐出しつつ、基材20に対してダイコーター300を相対的に移動させることにより、基材20上に所定の膜厚の液状被膜110を形成することができる。
ここで、本実施形態において用いる基材20は、平面視で長方形をなす平板状基板21と、平板状基板21上に載置された平面視にて略長方形をなす調整部材22とを有するものである。
このような基材20では、中心部近傍においては調整部材22の上面が露出している一方、縁部近傍においては平板状基板21の上面が露出している。その結果、基材20では、上面の高さが部分的に異なっており、調整部材22が設けられた略長方形の部分(以下、省略して「長方形部分」とも言う。)の上面の高さは、縁部の上面の高さより高くなっている。
このような基材20上に液状樹脂組成物100を塗布すると、得られた液状被膜110は、長方形部分の膜厚が最も薄くなり、縁部に向かって膜厚が徐々に厚くなるような形状となる。そして最終的に得られる光導波路用フィルム1も、上述した液状被膜110と同様の形状となる。
以上のような基材20を用いることにより、図10(a)に示す膜厚パターンと同様の膜厚パターンの光導波路用フィルム1が得られる。
以下、前記第3実施形態と同様にして、露光工程、積層工程および切り出し工程を経ることにより、中央部の膜厚が薄く、両端部に向かって徐々に膜厚が増大するコア層13を含む光導波路10が得られる。
以上のような第4実施形態においても、第3実施形態と同様の作用・効果が得られる。
また、第4実施形態によれば、平面視で円形以外の形状(例えば、長方形、正方形、多角形、菱形、平行四辺形等)の光導波路用フィルム1が得られるので、帯状のコア層13を効率的に切り出すことができる。このため、光導波路用フィルム1を効率よく利用することができ、廃棄物の量を削減することができる。
(光電気混載基板および電子機器)
図13は、本発明の光導波路を備える本発明の光電気混載基板の構成を示す平面図および斜視図である。
図13に示す光電気混載基板6は、帯状のフレキシブル基板からなる回路基板63と、回路基板63の一方の面側に重ねられた光導波路10と、回路基板63の両端部631の他方の面側に固定されたリジッド基板からなる2枚の回路基板64とを有する。
フレキシブル基板の具体例としては、例えば、ポリエステル銅張フィルム基板、ポリイミド銅張フィルム基板、アラミド銅張フィルム基板などに用いられる樹脂フィルムが挙げられる。
また、リジッド基板の具体例としては、ガラス布・エポキシ銅張積層板等のガラス基材銅張積層板、ガラス不織布・エポキシ銅張積層板等のコンポジット銅張積層板、ポリエーテルイミド樹脂基板、ポリエーテルケトン樹脂基板、ポリサルフォン系樹脂基板等の耐熱・熱可塑性基板といった有機系基板や、アルミナ基板、窒化アルミニウム基板、炭化ケイ素基板等のセラミックス基板などが挙げられる。
また、回路基板63には、図示しない電気配線パターンに接続された複数の端子632が設けられている。
さらに、光導波路10は、その両端部が、回路基板63の両端部631に固定されている。一方、光導波路10の両端部以外は固定されていない。
このような光電気混載基板6は、図13(a)に示すように伸張させた場合、伸張した回路基板63に沿って光導波路10も伸張した状態になる。
一方、光電気混載基板6は、図13(b)に示すように可撓性を有しており、回路基板63をその中央部近傍で折り返すように屈曲させた屈曲状態においても、屈曲した回路基板63に沿って光導波路10も屈曲した状態になる。この際、回路基板63の曲率半径と、光導波路10の曲率半径とは、必然的に異なるはずであるが、前述したように、光導波路10は、その両端部のみが回路基板63に固定されているため、上記のような曲率半径のずれを吸収することができる。
光電気混載基板6は、前述したような伸張状態と屈曲状態とを自在にとり得るため、接続を担う2点間の距離がその時々で変化するような使用形態においても、2点間の電気的および光学的な接続を維持することができる。
このように伸張状態と屈曲状態とを繰り返す場合においても、光導波路10は、中央部近傍の可撓性が高く、耐屈曲性に優れているため、断線を確実に防止することができる。このため、伸張状態と屈曲状態とを繰り返しても、光学的接続を担う光配線としての機能を長期にわたって維持することができる。
また、光電気混載基板(本発明の光電気混載基板)6では、例えば、光導波路10で伝送された光信号を、光デバイスにおいて電気信号に変換し、電気配線に伝達する。これにより、光配線の部分で、従来の電気配線よりも高速かつ大容量の情報伝送を可能にする。したがって、例えばCPUやLSI等の演算装置とRAM等の記憶装置との間をつなぐバス等に、この光・電気混載基板を適用することにより、システム全体の性能を高めるとともに、電磁ノイズの発生を抑制することができる。
具体的には、光電気混載基板6は、携帯電話、ゲーム機、パソコン、テレビ、ホーム・サーバー等、大容量のデータを高速に伝送する電子機器類に搭載される。このような光電気混載基板6を備えた電子機器(本発明の電子機器)は、内部の情報処理速度に優れた高い性能を発揮するものとなる。
また、光導波路10および光電気混載基板6は優れた可撓性を有するため、電子機器内に屈曲状態で実装することにより、実装スペースの効率化を図ることができる。このため、電子機器のさらなる小型化を図ることができる。
また、光導波路10および光電気混載基板6が、前述したような屈曲状態と伸張状態とをとり得ることから、例えばヒンジ部(またはスライド部)を有する携帯電話、ゲーム機、PDA、ノート型パソコン等の電子機器のヒンジ部(またはスライド部)に対して好適に用いることができる。例えば携帯電話において、ヒンジ部(またはスライド部)を介した2点間を光電気混載基板6で接続した場合、携帯電話のヒンジ部を閉じたときには、光電気混載基板6が屈曲状態をとり、ヒンジ部を開いたときには、光電気混載基板6が伸張状態をとることとなる。
前述したように光電気混載基板6は、屈曲状態と伸張状態とを繰り返しても長期にわたってその性能を維持することができるため、可動部を挟む2点間の光学的接続が、長期にわたって維持されることとなる。その結果、かかる光電気混載基板6を備えた携帯電話は、特に長期信頼性において優れたものとなる。
以上、本発明の光導波路用フィルムの製造方法、光導波路用フィルム、光導波路、光電気混載基板および電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を発揮し得る任意の構成と置換することができ、また、任意の構成が付加されていてもよい。
また、本発明の光導波路用フィルムの製造方法は、前記各実施形態に限定されるものではなく、任意の工程を追加してもよい。
また、前記各実施形態において、基材20上に液状樹脂組成物100を供給するのに用いる装置は、円コーター(塗布装置500)やダイコーター300に限られず、グラビアコーター、リバースロールコーター、バーコーター、ブレードコーター、ナイフコーター、エアナイフコーター、スピンコーター、カーテンコーター、スプレーコーター等が挙げられる。
また、前記各実施形態では、上面の高さが一定になるように液状被膜110を形成する方法について説明したが、液状被膜110に厚膜部と薄膜部とを形成し得るのであれば、必ずしも上面の高さを一定にする必要はない。例えば、図3(a)において、液状被膜110の上面の高さが、中央部から縁部に向かうにつれて徐々に高くなるように液状樹脂組成物100の塗布量を調整するようにしてもよい。これにより、得られる光導波路用フィルム1の膜厚の差はより大きくなり、最終的に得られる光導波路10は、中央部における耐屈曲性の向上と、両端部における結合損失の低減とを、より高度に両立したものとなる。