JP2010167320A - スライム抑制方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】水系水の酸化力を適正範囲に容易にかつ正確に維持することができ、水系内における金属に対する腐食を抑制した上で、充分なスライム抑制効果が得られるスライム抑制方法を提供する。
【解決手段】水系水にハロゲン系酸化物を含む薬剤を添加して水系のスライムを抑制するスライム抑制方法において、前記水系水の金属に対する腐食速度が一定範囲内になるように、前記薬剤の添加量を調整するスライム抑制方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、冷却水系、冷温水系などの水系において、各種微生物により発生するスライム障害の防止方法に関する。
冷却水系、冷温水系などの水系において、次亜塩素酸塩や次亜臭素酸塩等のハロゲン系酸化物を含む薬剤は、殺菌剤やスライム防除剤として使用されてきた(特開昭64−15200号公報)。
これらの薬剤は、抗菌スペクトルが広く、多くの細菌に有効であり、さらに、耐性菌が出にくいと云う利点を有しているが、それらの強力な酸化力ゆえに、水系の金属材質(鉄(炭素鋼)、銅等)に対する腐食性が強いという欠点も有する。
水系内のスライムによる障害を確実に防止するためには、水系内の残留塩素濃度をある程度高くする必要があるが、水系内の残留塩素濃度を高くすることは水系の各種設備、熱交換器等に使用される金属材料の腐食が早く進むこととなるので、残留塩素濃度を過度に高くすることは避けなければならない。
このようなことから、水系内にハロゲン系酸化物を含む薬剤を添加する場合、残留塩素濃度が適正範囲に維持されるように制御することが求められる。
ここで、従来は、ハロゲン系酸化物を含む薬剤の水系への添加に関し、微生物に有効な濃度と、金属に対する腐食性を加味して、水系中の遊離塩素濃度が0.1〜1.0mg/Lになるように添加するのが一般的であった(特開2000−140857公報、特開2003−80265公報)。
しかしながら、このような添加方法によっても、鉄、銅等の金属に対する腐食性を充分に抑えることができず、特に高価な熱交換器の銅材料に孔食が発生して問題となることがあった。
特開昭64−15200号公報 特開2000−140857公報 特開2003−80265公報 特開2001−179264公報 特開2002−254083公報 特表2003−503323公報 特表平11−506139号公報
本発明は、上記した従来の問題点を改善する、すなわち、水系水の酸化力を適正範囲に容易にかつ正確に維持することができ、水系内における金属に対する腐食を抑制した上で、充分なスライム抑制効果が得られるスライム抑制方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題に対して、水系中の遊離残留塩素濃度を0.01〜0.1mg/Lの範囲に維持することで、水系水のスライムを抑制する方法を提案した(特願2007−341258)。
しかしながら、水系水の酸化力を遊離残留塩素濃度として0.01〜0.1mg/Lなどの低濃度の範囲に維持することは技術的に容易ではなかった。
従来、水系中の遊離残留塩素濃度の制御方法として、電極法(ポーラログラフ式、隔膜式、ガルバニック式など)、比色法(オルトトリジン法、ジエチル−パラ−フェニレンジアミン法など)等により残留塩素濃度を測定する方法(特開2001−179264号)、酸化還元電位を測定する方法(特開2002−254083号)等が提案されている。しかしながら何れの方法も遊離残留塩素濃度の測定精度や検出下限、センサ類の感度や応答性、繰り返し精度等に問題があり、特に低濃度の遊離残留塩素濃度の制御において満足できるものではなかった。
ここで、本発明者等は鋭意研究の結果、水系水の金属に対する腐食速度を測定し、該腐食速度が一定範囲内になるように、水系水に添加するハロゲン系酸化剤の量を調整すると云う、従来技術とは全く異なる方法を取ることで、水系中の遊離残留塩素濃度で表される酸化力を、容易に、精度良く一定濃度範囲に維持可能であることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明のスライム抑制方法は、上記課題を解決するために、請求項1に記載の通り、水系水にハロゲン系酸化物を含む薬剤を添加して水系のスライムを抑制するスライム抑制方法において、前記水系水の金属に対する腐食速度が一定範囲内になるように、前記薬剤の添加量を調整することを特徴とするスライム抑制方法である。
また、本発明のスライム抑制方法は、請求項2に記載の通り、請求項1に記載のスライム抑制方法において、前記水系水の金属に対する腐食速度を電気的に測定することを特徴とする。
また、本発明のスライム抑制方法は、請求項3に記載の通り、請求項2に記載のスライム抑制方法において、前記水系水の金属に対する腐食速度の測定方法が、分極抵抗法であることを特徴とする。
また、本発明のスライム抑制方法は、請求項4に記載の通り、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のスライム抑制方法において、前記金属が銅であり、かつ、前記一定範囲が、0.5μm/年以上でかつ1.5μm/年以下であることを特徴とする。
本発明のスライム抑制方法によれば、金属と水系水とが接触する水系において、スライム抑制剤としてハロゲン系酸化物を含む薬剤を添加するに当たり、前記水系水の金属に対する腐食速度が一定範囲内になるように、前記薬剤の添加量を調整することで、水系中の遊離残留塩素濃度で表される酸化力を、容易に、精度良く適正濃度範囲に維持することが可能であり、ハロゲン系酸化物の過剰注入の恐れがないので、水系を構成する各種金属に対する腐食を抑制でき、又、ハロゲン系酸化物の注入不足の恐れがないので、充分なスライム抑制効果を得ることができる。
請求項2に記載のスライム抑制方法によれば、上記効果に加えて、リアルタイムないしそれに準じて水系水の金属に対する腐食速度を測定することができるので、水系水の酸化力をより確実に適正範囲に維持することができる。
請求項3に記載のスライム抑制方法によれば、水系水の腐食速度を分極抵抗法で測定するので、より正確かつより迅速にハロゲン系酸化物を含む薬剤を適切な濃度となるように添加することが可能となる。その結果、水系に接する機器の損傷を、より効果的に防止した上で、確実なスライム抑制効果が容易に得られる。
請求項4に記載のスライム抑制方法によれば、前記金属が銅であり、かつ、前記一定範囲が、0.5μm/年以上でかつ1.5μm/年以下であることにより、水系内における銅材料を用いる機器に対する損傷を効果的に防止した上で、充分なスライム抑制効果が得られるので、高価な熱交換機などの寿命を最大限に保つことができる。
図1は試験水の全残留塩素濃度を変化させたときの、腐食速度計による銅腐食速度測定値の推移、ポーラログラフ式残留塩素濃度計による残留塩素濃度測定値の推移、及び、酸化還元電位計による酸化還元電位(ORP)測定値の推移を、それぞれ示すグラフである。
本発明は、上述のように、水系水にハロゲン系酸化物を含む薬剤を添加して水系のスライムを抑制するスライム抑制方法において、前記水系水の金属に対する腐食速度が一定範囲内になるように、前記薬剤の添加量を調整することを特徴とするスライム抑制方法である。
本発明におけるハロゲン系酸化物としては、各種次亜塩素酸塩、各種次亜臭素酸塩等の次亜ハロゲン酸塩、ハロゲン化イソシアヌル酸塩、ハロゲン化ヒダントインなどが挙げられ、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いる。
本発明におけるハロゲン系酸化物として特に、次亜ハロゲン酸塩とスルファミン酸塩とを組み合わせてなるハロゲン系酸化剤、すなわち、特表2003−503323公報や特表平11−506139号公報に開示されている安定化次亜ハロゲン酸塩を用いると、水中の遊離残留塩素濃度を低レベルに維持することが容易であり、比較的低い腐食性でありながら高いスライム抑制性能を、長期間安定的に得ることができる。
安定化次亜ハロゲン酸塩としては、具体的には、次亜塩素酸塩とスルファミン酸塩とから得られる安定化次亜塩素酸塩、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム等から1種以上選ばれる臭素イオン源、次亜塩素酸塩、及び、スルファミン酸塩から得られる安定化次亜臭素酸塩が挙げられる。
本発明において、水系水の金属に対する腐食速度が一定範囲内になるように、前記薬剤の添加量を調整するが、このときの金属としては、その金属の腐食速度を測定することで、水系中の遊離残留塩素濃度で表される酸化力の調整が可能な材料であれば、特に限定されず、通常は、水系水に接触する機器に用いられる一般的な金属材料である鉄、銅、及び、これらの合金を用いる。特に、銅や銅合金を腐食速度の測定対象とすると、腐食速度と水系中の酸化力との相関性が高いので、水系中の遊離残留塩素濃度で表される酸化力を、より精度良く適正濃度範囲に維持することが可能であり、結果として銅材質以外の金属の腐食抑制にも繋がる。又、高価な熱交換器を構成する材質の腐食速度を、直接コントロールすることになるので、熱交換器の寿命延長にも有利である。
ここで金属の腐食速度とは、水質環境の腐食性を金属の腐食進行の度合いで表したものである。一般に、1年間の減肉量を減肉の深さで表した[mm/年、μm/年]、あるいは100cmの金属面の1日当たりの減肉量を重さで表した[mdd](mg/dm/day)で表示される。
ここで、単位[mm/年]と単位[mdd]は、下記の式(I)で換算することができる。
[数1]
[mm/年]=[mdd]×365(日)/(比重×10) ……(I)
式(I)中、比重は金属材料毎に定まり、例えば、炭素鋼では7.87、銅では8.96を用いることができる。
このような、腐食速度の測定法としては大別すると、テストピース法と電気的な測定法が挙げられる。
テストピース法とは、対象となる金属材料と同じ材質で試料片を作り、これを評価対象の水系水中に吊し、ある期間経過後に取り出して、試験前後の試料片の重量差から腐食減量を求めて腐食速度を算出する方法である。テストピース法は簡便な方法であり、腐食具合や腐食形態を目視できるという利点はあるものの、腐食速度の測定に一定期間を要するので、リアルタイムの測定や自動・連続測定ができない。
これに対して電気的な測定法は、水系水の腐食速度をリアルタイムで精度良く、連続的に測定可能である。
電気的な測定法の代表的なものとしては、分極抵抗法、電気抵抗法、電気化学ノイズ法等が挙げられる。
ここで、分極抵抗法とは、日本工業規格(JIS K 0100)にも、「工業用水腐食性試験方法」として規定されている電気化学的な測定方法であり、腐食速度の測定対象金属からなる電極を水系水に浸漬し、該電極に微少な電圧を掛けたときに流れる電流値を測定して、腐食状況を予測する手法である。水質の腐食性をモニタリングしてフィードバックするような管理システムに好適な腐食速度測定法である。
電気抵抗法は、水系水に浸漬された円柱形金属(腐食速度の測定対象)の表面が腐食すると円柱の径が細くなり、その結果両端間の抵抗値が大きくなることを利用して、腐食の状況をモニタリングする電気的な方法である。この方法は、腐食状況を予測することはできないが、プローブ(電極)の腐食量をリアルタイムでモニタリングでき、しかも腐食対象(液体、ガス等)を選ばないため様々なアプリケーションでの利用が可能である。
また、電気化学ノイズ法は、腐食時に「腐食した金属」から発生する電流と電圧とを測定して、それらの値から腐食状況を予測する電気化学的な方法であり、局部腐食や応力腐食割れのモニタリングに優れていると云われており、現在、実用化への研究が進められている。
本発明では、リアルタイムで水系水の金属に対する腐食性を測定できる方法であれば、上記した測定法以外であっても、用いることができる。
また、本発明は、上記構成により、通常の水系設備において一般的に用いられるすべての金属への活用が可能である。
例えば、水系水の銅に対する腐食速度を、0.5μm/年以上1.5μm/年以下の範囲に維持するように、ハロゲン系酸化物を含む薬剤の添加量を調整することにより、水系水の酸化力を高精度で所定の範囲に維持することができるので、充分なスライム抑制効果を安定的に得ることができ、そのとき、その水系水に接する機器、例えば、熱交換器の寿命を最大限に長くすることができる。
また、銅以外にも、軟鋼に対する腐食速度を特定の範囲とするように水系水の酸化力を制御する際に、その腐食速度の範囲を最適化することにより、水系水の酸化力を精度良く所定の範囲に維持することができるので、充分なスライム抑制効果を安定的に得ることができるとともに、その水系水に接する機器の寿命を最大限に長くすることが可能となる。この場合と同様に、ステンレス、黄銅その他の金属についても本発明を応用することができ、それぞれの金属で腐食速度の範囲を最適化することにより、水系水の酸化力を所定の範囲に維持することができる。
本発明のスライム抑制方法では、例えば電気的な方法や電気化学的な方法で測定された腐食速度データを元にハロゲン系酸化物を含む薬剤の水系水への添加量を調整する。添加量の調整方法に特に制限はないが、通常、腐食速度設定範囲の下限値以下になった場合に、水系水にハロゲン系酸化物を含む薬剤を添加するポンプ(薬注ポンプ)を作動させ、上限値以上になった場合に停止させる。
本発明のスライム抑制方法では、例えば電気的な方法や電気化学的な方法で測定された腐食速度データをマイクロプロセッサ等に入力し、このマイクロプロセッサで、薬注ポンプを制御することにより、自動化することができる。
本発明の水系水におけるスライム抑制方法は、さらにその特性を改良するなどの目的で、本発明で用いる薬剤の効果が損なわれない限り、例えばアクリル酸系重合体、マレイン酸系重合体、メタクリル酸系重合体、スルホン酸系重合体、燐酸系重合体、イタコン酸系重合体、イソブチレン系重合体、ホスホン酸、ホスフィン酸、あるいはこれらの水溶性塩などのスケール防止剤、例えば、5-クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン等のイソチアゾリン系化合物、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド等のアルデヒド類、過酸化水素、ヒドラジン、ジチオール系化合物、メチレンビスチオシアネートなどのチオシアネート系化合物、ピリチオン系化合物、四級アンモニウム塩系化合物、四級ホスホニウム塩素化合物等のカチオン系化合物などのスライム防止剤、例えばベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール等のアゾール類、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のアミン系化合物、例えばニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸等のアミノカルボン酸系化合物、例えばグルコン酸、クエン酸、シュウ酸、ギ酸、酒石酸、フィチン酸、琥珀酸、乳酸等の有機カルボン酸など、各種の水処理剤を併用することができ、その場合も本発明に含まれる。
<基礎検討>
つくば市水道水(24時間曝気して脱塩素処理したもの)に、ハロゲン系酸化物を含む薬剤として、スルファミン酸ナトリウム20重量%、次亜塩素酸ナトリウム7重量%をそれぞれ含有する製剤品を、全残留塩素濃度として、最初に5mg/Lとなるように添加し、その後24時間後に25mg/Lとなるように追加添加し、その24時間後に全排水した後、つくば市水道水(脱塩素処理済)に交換した。このとき、銅材を電極とした分極抵抗法による腐食速度計(ローバック・コサスコ・システムズ社製CORRATER9030Plas)、ポーラログラフ法による残留塩素濃度計(アクアス社製アクアスレジスパRIC)、及び、酸化還元電位計(東亜DKK社製マルチ水質計MM−60R)の3種類のセンサを試験水に浸漬し、出力値の経時変化を調べた。また、併せてJIS K 0101 28.2に記載のジエチル−パラ−フェニレンジアミン比色法により遊離残留塩素濃度の測定も行なった。結果を図1に示す。図1中(a)は腐食速度計による銅腐食速度測定値の推移、(b)はポーラログラフ式残留塩素濃度計による残留塩素濃度測定値の推移、(c)は酸化還元電位計による酸化還元電位(ORP)測定値の推移を、それぞれ示す。
図1より、腐食速度の値は、遊離残留塩素濃度の値に鋭敏に追従することが判る。このことより、腐食速度を測定することで、水系中の微量の遊離残留塩素濃度を正確に把握することが可能と判断された。
一方、ポーラログラフ法による残留塩素濃度の測定では、0.1mg/L以下の微量の遊離残留塩素濃度の測定は困難であることが判る。さらに測定値が安定するまでに時間が掛かるので、薬注装置のフィードバック制御には好適でないことも判った。
さらに、酸化還元電位も遊離残留塩素濃度の変化に対する変化量が少なく、また、測定値が安定するまでの時間も掛かるので、酸化還元電位による低濃度領域の水系水の酸化力の測定は実際的でないことが判った。
<実施例1>
東日本にある電気部品工場の冷却水系のうちの一つに、分極抵抗法による腐食速度計として、銅材を電極として使用したローバック・コサスコ・システムズ社製CORRATER9030Plasを設置し、水系水の腐食速度を連続的に測定し、測定結果が1.0μm/年以下になったときに薬注ポンプをオン、1.1μm/年以上になったときに薬注ポンプをオフするように薬剤注入装置を制御して、スルファミン酸ナトリウム20重量%、次亜塩素酸ナトリウム7重要%をそれぞれ含有する製剤品の、水系への注入を1ヶ月間継続した(実施例1)。
また、同時に、同工場の他の冷却水系に、ポーラログラフ式残留塩素濃度計として、アクアス株式会社製アクアスレジスパRICを設置して残留塩素濃度を連続的に測定し、測定結果が0.03mg/L以下になったときに薬注ポンプをオン、0.06mg/L以上になったときに薬注ポンプをオフするように薬剤注入装置を制御して、スルファミン酸ナトリウム20重郎%、次亜塩素酸ナトリウム7重量%をそれぞれ含有する製剤品の、水系への注入を1ケ月間継続した(比較例1)。
これらの試験期間中に60回、各冷却水系の遊離残留塩素濃度および全残留塩素濃度をJIS K 0101 28.2に記載のジエチル−パラ−フェニレンジアミン比色法により測定すると共に、それぞれの水系の冷却塔下部水槽に銅製(C1220)のテストピース(40mmx60mmx2mm)を浸漬し、試験終了後に腐食速度(mg/dm/day(mdd))を評価した。
また、試験終了後のこれらテストピースの表面を実体顕微鏡で観察し、ピッチング(孔食)の有無を観察した。さらに、各冷却塔下部水槽にスライドグラスを浸漬し、試験終了後に取り出して表面の付着物を拭い取って採取し、滅菌水10mLに懸濁して、得られた懸濁液のATP(アデノシン三リン酸)濃度をATPアナライザー(東亜ディーケーケー社製AF−100)で測定した。
これらの結果を表1に示す。
Figure 2010167320
表1より、本発明にかかるスライム抑制方法によれば、水系水の酸化力を適正範囲に精度良く維持することができ、このため、水系内における金属に対する腐食を抑制した上で、充分なスライム抑制効果が得られることがわかる。
<実施例2>
東京近郊都市の商業ビルの冷却水系に、腐食速度計として、銅材を電極として使用したローバック・コサスコ・システムズ社製CORRATER9030Plasを設置し、その水系水の腐食速度を連続的に測定し、測定結果が0.5μm/年以下になったときに薬注ポンプをオン、1.5μm/年以上になったときに薬注ポンプをオフするように薬剤注入装置を制御して、次亜塩素酸ナトリウム12重量%を含有する製剤品の注入を2ヶ月間継続した。
この期間中、JIS K 0101 28.2に記載のジエチル−パラ−フェニレンジアミン比色法により、1週間に1〜2回ずつ測定された遊離残留塩素濃度は全て0.01〜0.09mg/Lの範囲内であり、この期間に、この水系の冷却塔下部水槽に浸漬した銅製(C1220)のテストピース(40mmx60mm×2mm)の腐食速度は、0.3mddであり、テストピース表面にはピッチングは認められなかった。また、冷却塔の充填材にスライムの付着は認められなかった。

Claims (4)

  1. 水系水にハロゲン系酸化物を含む薬剤を添加して水系のスライムを抑制するスライム抑制方法において、
    前記水系水の金属に対する腐食速度が一定範囲内になるように、前記薬剤の添加量を調整することを特徴とするスライム抑制方法。
  2. 前記水系水の金属に対する腐食速度を電気的に測定することを特徴とする請求項1に記載のスライム抑制方法。
  3. 前記水系水の金属に対する腐食速度の測定方法が、分極抵抗法であることを特徴とする請求項2に記載のスライム抑制方法。
  4. 前記金属が銅であり、かつ、前記一定範囲が、0.5μm/年以上でかつ1.5μm/年以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のスライム抑制方法。
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