しかしながら、特許文献1の超音波アクチュエータでは、圧電振動子の駆動電流の波高値変化は小さいため、正確な検出は難しく、高精度の位置制御が困難である。また、不均一部分の形状を、不均一部分以外の箇所と比べて大きく変化させることで、波高値変化を大きくすることは可能であるが、それにより駆動効率が低下するという新たな問題が生じる。また、特許文献2の超音波モータであっても、振動子と移動体とは面接触であることから、移動体の移動量が平均化されてしまい、高精度の検出は困難であるとの問題がある。
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、大型化および高コスト化せずに、正確な位置制御が可能である超音波アクチュエータを提供することである。
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明に係る一態様に係る超音波アクチュエータは、電気信号が入力されることで振動が励起される多層構造の圧電振動子と、前記圧電振動子に対して前記圧電振動子の積層方向側に位置する複数の突起部と、前記圧電振動子の振動状態を検出する振動状態検知電極とを有する振動体と、前記突起部と接触し、前記圧電振動子の振動により駆動される移動体と、前記移動体の位置情報を算出する演算部と、前記演算部により算出された位置情報に基づいて前記移動体の駆動を制御する制御部とを備え、前記振動状態検知電極は、前記圧電振動子の層間に設置された内部電極であって、前記複数の突起部の内、いずれかの突起部を、前記圧電振動子の積層方向に向かって、前記圧電振動子の端面に投影し、前記圧電振動子の端面の中心と、前記投影された突起部の頂点とを結ぶ仮想線と垂直である仮想面と交わらないように設置され、前記圧電振動子の振動状態の情報である振動検知電圧を出力し、前記演算部は、前記移動体に対する前記振動体の位置に応じて変化する、前記圧電振動子における共振状態を検出し、前記共振状態に基づいて移動体の位置情報を算出する。
これにより、圧電振動子の共振状態により、移動体の移動量や位置等の位置情報を算出し、それにより移動体の移動量等を制御するので、位置制御装置等を備える必要なく、位置制御が可能である超音波アクチュエータを実現できる。それにより、超音波アクチュエータの大型化および高コスト化を防ぐことができる。また、移動体の位置情報の検出も容易に行うことができる。また、振動体が突起部を有し、その突起部が移動体に接触する構成であるため、移動体から力が加わるのは突起部のみであり、圧電振動子における共振状態の変化の検出をデジタル的に行うことができる。そのため、振動検知電圧の値が高くなり、共振状態を高精度に検出することができ、より高精度の位置制御が可能である。また、振動状態検知電極を、検知する振動が顕著に現れる箇所に振動状態検知部を設置することになるので、高い振動検知電圧値を得ることができ、より正確な圧電振動子の振動状態の検出が可能となる。
また、本発明の他の一態様に係る超音波アクチュエータは、電気信号が入力されることで振動が励起される多層構造の圧電振動子と、前記圧電振動子に対して前記圧電振動子の積層方向側に位置する複数の突起部と、前記圧電振動子の振動状態を検出する振動状態検知電極とを有する振動体と、前記突起部と接触し、前記圧電振動子の振動により駆動される移動体と、前記移動体の位置情報を算出する演算部と、前記演算部により算出された位置情報に基づいて前記移動体の駆動を制御する制御部とを備え、前記振動状態検知電極は、前記圧電振動子の層間に設置された内部電極であって、前記複数の突起部の内、いずれかの突起部を、前記圧電振動子の積層方向に向かって、前記圧電振動子の端面に投影し、前記圧電振動子の端面の中心と、前記投影された突起部の頂点とを結ぶ仮想線と垂直である仮想面と交わり、前記仮想面に対して非対称であるように設置され、前記圧電振動子の振動状態の情報である振動検知電圧を出力し、前記演算部は、前記移動体に対する前記振動体の位置に応じて変化する、前記圧電振動子における共振状態を検出し、前記共振状態に基づいて移動体の位置情報を算出する。
これにより、圧電振動子の共振状態により、移動体の移動量や位置等の位置情報を算出し、それにより移動体の移動量等を制御するので、位置制御装置等を備える必要なく、位置制御が可能である超音波アクチュエータを実現できる。それにより、超音波アクチュエータの大型化および高コスト化を防ぐことができる。また、移動体の位置情報の検出も容易に行うことができる。また、振動体が突起部を有し、その突起部が移動体に接触する構成であるため、移動体から力が加わるのは突起部のみであり、圧電振動子における共振状態の変化の検出をデジタル的に行うことができる。そのため、振動検知電圧の値が高くなり、共振状態を高精度に検出することができ、より高精度の位置制御が可能である。また、振動状態検知電極を、検知する振動が顕著に現れる箇所に振動状態検知部を設置することになるので、高い振動検知電圧値を得ることができ、より正確な圧電振動子の振動状態の検出が可能となる。
また、上述の超音波アクチュエータにおいて、前記移動体は、前記移動体に対する前記振動体の位置に応じて、前記圧電振動子における共振状態が変化する構造を有し、前記演算部は、前記振動検知電圧に基づいて前記共振状態を検出し、前記共振状態に基づいて移動体の位置情報を算出することが好ましい。
これにより、振動検知電圧に基づいて移動体の移動量や位置等の位置情報を算出し、それにより移動体の移動量等を制御するので、位置制御装置等を備える必要なく、位置制御が可能である超音波アクチュエータを実現できる。そのため、超音波アクチュエータの大型化および高コスト化を防ぐことができる。また、移動体から力が加わるのは突起部のみであり、振動体全体に力が加わるわけではない。そのため、振動検知電圧の値が高くなり、共振状態を高精度に検出することができ、より高精度の位置制御が可能である。また、振動検知電圧により振動状態を検知することから、共振状態を容易に検出することができる。
また、上述の超音波アクチュエータにおいて、前記演算部は、前記振動検知電圧の振幅または、前記振動検知電圧と前記圧電振動子の駆動電圧との位相差に基づいて前記共振状態を検出し、前記共振状態に基づいて移動体の位置情報を算出することが好ましい。
これにより、共振状態を容易に検出することができる。
また、上述の超音波アクチュエータにおいて、前記移動体における前記振動体と接する面が、前記移動体に対する前記振動体の位置に応じて、前記圧電振動子における共振状態が変化する構造を有することが好ましい。
これにより、圧電振動子の位置に応じて、振動検知電圧の振幅または、前記振動検知電圧と前記圧電振動子の駆動電圧との位相差を変化させることができるため、移動体の位置情報を確実に検出することができる。そのため、位置制御が可能である。
また、上述の超音波アクチュエータにおいて、前記移動体における前記振動体と接する面は、複数の異なる形状により形成されていることで、前記移動体に対する前記振動体の位置に応じて、前記圧電振動子における共振状態が変化することが好ましい。
これにより、圧電振動子の位置に応じて、振動検知電圧の振幅または、前記振動検知電圧と前記圧電振動子の駆動電圧との位相差を変化させることができるため、移動体の位置情報を確実に検出することができる。そのため、位置制御が可能である。
また、上述の超音波アクチュエータにおいて、前記移動体が複数の異なる材料により形成されていることで、前記移動体に対する前記振動体の位置に応じて、前記圧電振動子における共振状態が変化することが好ましい。
これにより、圧電振動子の位置に応じて、振動検知電圧の振幅または、前記振動検知電圧と前記圧電振動子の駆動電圧との位相差を変化させることができるため、移動体の位置情報を確実に検出することができる。そのため、位置制御が可能である。
また、上述の超音波アクチュエータにおいて、前記移動体における前記振動体と接する面または面近傍は、複数の異なる材料により形成されていることで、前記移動体に対する前記振動体の位置に応じて、前記圧電振動子における共振状態が変化することが好ましい。
これにより、圧電振動子の位置に応じて、振動検知電圧の振幅または、前記振動検知電圧と前記圧電振動子の駆動電圧との位相差を変化させることができるため、移動体の位置情報を確実に検出することができる。そのため、位置制御が可能である。
また、上述の超音波アクチュエータにおいて、前記移動体における前記振動体と接する面には、複数の溝部が形成されていることで、前記移動体に対する前記振動体の位置に応じて、前記圧電振動子における共振状態が変化することが好ましい。
これにより、圧電振動子の位置に応じて、振動検知電圧の振幅または、前記振動検知電圧と前記圧電振動子の駆動電圧との位相差を変化させることができるため、移動体の位置情報を確実に検出することができる。そのため、位置制御が可能である。
また、上述の超音波アクチュエータにおいて、前記移動体における前記振動体と接する面は、複数の摩擦係数を有することで、前記移動体に対する前記振動体の位置に応じて、前記圧電振動子における共振状態が変化することが好ましい。
これにより、圧電振動子の位置に応じて、振動検知電圧の振幅または、前記振動検知電圧と前記圧電振動子の駆動電圧との位相差を変化させることができるため、移動体の位置情報を確実に検出することができる。そのため、位置制御が可能である。
また、上述の超音波アクチュエータにおいて、前記共振状態において、前記移動体の予め決められた基準位置に対応する状態を有することが好ましい。
これにより、移動体と圧電振動子との絶対位置を検出することができ、より高精度の位置制御が可能である。
また、上述の超音波アクチュエータにおいて、前記移動体における前記振動体と接する面において、前記移動体の予め決められた基準位置に対応する箇所を有することが好ましい。
これにより、移動体と圧電振動子との絶対位置を検出することができ、より高精度の位置制御が可能である。
また、上述の超音波アクチュエータにおいて、前記振動検知電圧および前記圧電振動子における駆動電圧をそれぞれパルス信号に変換する、各パルス変換部を備え、前記演算部は、パルス信号に変換された前記駆動電圧および前記振動検知電圧の各パルスエッジ間隔に基づいて前記駆動電圧および前記振動検知電圧の位相差を算出し、その位相差に基づいて前記共振状態を検出し、前記共振状態に基づいて移動体の位置情報を算出することが好ましい。
これにより、駆動電圧および振動検知電圧の位相差の算出を容易に行うことができる。
また、上述の超音波アクチュエータにおいて、前記演算部は、前記振動検知電圧および前記圧電振動子における駆動電圧の位置情報を信号情報として算出することが好ましい。
これにより、位相差の違いを信号レベルの変化により表すことができるため、位相差の算出をより容易に行うことができる。
また、上述の超音波アクチュエータにおいて、前記振動状態検知電極は、前記圧電振動子の積層方向に向かって前記突起部を投影した場合に、その投影像と交わるように設置されていることが好ましい。
これにより、振動状態検知電極を、検知する振動が顕著に現れる箇所、すなわち突起部から伝わってくる移動体からの押圧力の影響をより強く受ける箇所に振動状態検知部を設置することになるので、高い振動検知電圧値を得ることができ、より正確な圧電振動子の振動状態の検出が可能となる。
また、上述の超音波アクチュエータにおいて、前記複数の突起部の内、前記いずれかの突起部以外の突起部は、前記仮想面近傍に設置されていることが好ましい。
これにより、振動状態検知電極が検知するべき振動以外の振動が生じにくくなり、検出の精度が高くなる。
また、上述の超音波アクチュエータにおいて、前記圧電振動子は、断面が略正方形である略四角柱形状であって、前記振動状態検知電極は、前記圧電振動子の断面において前記正方形の一辺の中央に設置されていることが好ましい。
これにより、振動状態検知電極を、検知する振動が顕著に現れる箇所に振動状態検知部を設置することになる。特に、突起部から伝わってくる移動体からの押圧力の影響をより強く受ける箇所に振動状態検知部を設置することになるので、高い振動検知電圧値を得ることができ、より正確な圧電振動子の振動状態の検出が可能となる。
本発明によれば、大型化および高コスト化せずに、正確な位置制御が可能である超音波アクチュエータを提供することができる。
以下、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
本発明の実施形態に係る超音波アクチュエータについて説明する。まず、本発明の実施形態に係る超音波アクチュエータを用いた、レンズ駆動ユニットの構成について説明する。図1は本発明の実施形態に係る超音波アクチュエータを用いた、レンズ駆動ユニットの構成について説明するための図である。レンズ駆動ユニット300は、デジタルカメラやデジタルビデオカメラのAF、ズーム、DVDのピックアップレンズの収差補正の駆動などに用いられる。図1に示すように、本実施形態に係る超音波アクチュエータ100の回転軸と一体に結合されたリードスクリュー21に一部が螺合されたレンズ支持部22bと、レンズ支持部22bにより支持されたレンズ22と、レンズ22の移動を制御する、リードスクリュー21と平行に設置された2本のガイドレール22aと、これらを覆うケース23と、超音波アクチュエータ100とを備えて構成される。なお、図1においては、超音波アクチュエータ100の電気的構成部分については、図示を省略している。
具体的には、レンズ22の外周部を支持しているレンズ支持部22bには貫通孔が形成され、その貫通孔にはガイドレール22aが貫通されていて、レンズ支持部22bはガイドレール22aに沿った方向のみ可動である。また、レンズ支持部22bはリードスクリュー21と螺合しており、リードスクリュー21がその軸を中心として回転することで、レンズ支持部22bがガイドレール22aに沿って駆動される。
このような、レンズ駆動ユニット300において、超音波アクチュエータ100が駆動することで、リードスクリュー21が右回転または左回転し、それにより、レンズ22と一体であるレンズ支持部22bが図1において左右方向に駆動する。つまり、レンズ駆動ユニット300は、直動レンズ送り機構を構成している。
このように、本実施形態に係る超音波アクチュエータ100は、例えばレンズ駆動ユニット300に用いられるが、これに限定されるわけではなく、他にも様々な用途に用いられている。
次に、本実施形態に係る超音波アクチュエータの機械的な構成について説明する。図2は本発明の実施形態に係る超音波アクチュエータの機械的な構成を説明するための図である。なお、図2においては、本実施形態に係る超音波アクチュエータの電気的な構成については、図示を省略している。図2に示すように、本発明の実施形態に係る超音波アクチュエータ100は、移動体であるロータ1と、ロータ1と接触する突起部2cを有する接触部2aおよび圧電振動子2bを有する振動体(ステータ)2と、振動体2の端部に設置された錘部5と、ロータ1の回転中心にロータ1と一体に設置された回転軸3と、回転軸3の軸受け27と、これらを覆うケース7と、ケース7の底面と振動体2とに接続され、振動体2をロータ1へと所定の付勢力で押し付けるバネ等の弾性体である加圧部6と、ケース7と接続された支持フレーム24と、支持フレーム24を貫通するように設置されたキャップ26と、キャップ26に形成された窪み26aに回転自在に嵌り込む球体である軸受け25とを備えて構成されている。
ロータ1は円板状である。回転軸3は、ロータ1の中心であって、前記円板の面に垂直方向に伸びるように配置されている。回転軸3はロータ1に一体的、または、かしめなどによる結合により構成されている。振動体2は、回転軸3を中心とする円板状の接触部2aおよび接触部2aに接合された圧電振動子2bとを備えて構成される。接触部2aは突起部2cを有していて、突起部2cがロータ1と接触している。突起部2cとロータ1との摩擦力によりロータ1が駆動することから、突起部2cを含む接触部2aは、例えば、アルミナ、ジルコニア等のセラミックス、超硬合金等の耐摩耗性の高い材料を用いればよい。なお、接触部2aは、例えばエポキシ等の剛性が高く、接着力が強い接着剤を用いて圧電振動子2bに固定されることとすればよい。圧電振動子2bは、圧電特性を示す圧電薄板と内部電極とが交互に積層されて構成されている。圧電振動子2bは製造のしやすさを考慮すると、直方体形状が好ましい。圧電薄板としては、例えばPZT(チタン酸ジルコニウム酸鉛)等からなる圧電セラミックス等の圧電素子の薄板を用いればよい。そして、内部電極を介して所定の電気信号が圧電振動子2bに送られることにより、圧電振動子2bは振動する。その振動により、圧電振動子2bに接続された接触部2aが振動し、ロータ1に接触している略球面を有する突起部2cも振動する。軸受け27は、回転軸3を回転自在に軸支する。具体的には、軸受け27により回転軸3はラジアル方向について支持されている。圧電振動子2bにおいて、接触部2aと接合している端部とは反対の端部に錘部5が設置されている。錘部5が設置されることで、振動体2の振動バランスが向上する。また、錘部5を設置することで、圧電振動子2bの振動の節の位置が錘部5側に移動するため、突起部2cの振動を大きくすることができる。例えば、錘部5は、比重の高いタングステンや、銅や鉄系のタングステン合金などとすればよい。
ロータ1と、振動体2と、回転軸3と、軸受け27と、錘部5と、加圧部6とはケース7内に配置されている。なお、回転軸3はケース7内から外部に突出している。また、軸受け27の一部はケース7の外部に露呈している。振動体2はケース7に対して回転が規制され、ケース7の底面からロータ1方向に加圧部6により押圧されている。それにより、接触部2aはロータ1と高い圧力をかけられた状態で接触している。支持フレーム24は回転軸3が突出する側のケース7の端面に設置されていて、ケース7から突出された回転軸3は、支持フレーム24内へと伸びている。回転軸3の端面は凹面となっており、支持フレーム24に設置されたキャップ26の窪み26aに嵌り込んだ球体である軸受け25がその凹面に嵌り込むように配置され、回転軸3は回転自在に軸受け25に軸支される。具体的には、軸受け25により回転軸3はラジアルおよびスラスト方向について支持されている。キャップ26は支持フレーム24と螺合して貫通している。つまり、支持フレーム24およびキャップ26はねじ切りされていて、キャップ26を締めるあるいは緩めることで、回転軸3に沿った方向へのキャップ26の位置を調整できる。加圧部6により振動体2がロータ1に押し付けられていることから、ロータ1に結合された回転軸3は軸受け25からの反力を受けるが、その反力は回転軸3の回転中心で受けることになるため、回転軸3と球体である軸受け25との摩擦ロスを最小限に抑えることができる。超音波アクチュエータの作製時において、キャップ26の位置を調整して、振動体2およびロータ1間の押圧力を調整すればよい。そして、調整が完了すれば、接着することでキャップ26の位置を固定すればよい。このようにすることで、振動体2はケース7に対して回転が規制されながら、ロータ1との軸心が位置決めされ、保持される。
次に、本実施形態に係る超音波アクチュエータの電気的構成について説明する。図3は本発明の実施形態に係る超音波アクチュエータの電気的な構成を説明するための図である。図3に示すように、本実施形態に係る超音波アクチュエータ100は、図2に示した以外に、制御部11と、駆動電圧生成部12と、振動状態検知電極14と、検知電圧変換部15と、駆動電圧変換部16と、演算部17とを備えて構成される。なお、図3において、図2において示した機械的構成については、電気的構成の説明について必要な部材を示し、これら以外は図示を省略する。なお、制御部11と、駆動電圧生成部12と、駆動電流生成部13と、検知電圧変換部15と、駆動電圧変換部16と、演算部17とは、例えば基板上に抵抗、コンデンサ、コイル等の電子素子が配置されて構成される。
制御部11は、ロータ1が回転駆動するよう電気信号である駆動信号を発生させるものである。具体的には、駆動信号が接触部2aの図示されていない突起部2cに楕円回転運動を生じさせるように圧電振動子2bを振動させることで、突起部2cにより突き動かされるようにロータ1が駆動する。
駆動電圧生成部12は、制御部11により指示された前記駆動信号に応じた駆動電圧を発生させる。また、圧電振動子2bの駆動制御は電流で行うことから、駆動電流生成部13では、前記駆動電圧に基づいた駆動電流を生成する。駆動電流生成部13により生成された駆動電流は、駆動電流生成部13から出力され、圧電振動子2bに入力される。
振動状態検知電極14は、圧電振動子2bの振動状態を示す振動検知電圧を検知する電極であり、圧電振動子2bに設置されている。具体的に圧電振動子2bが振動することで、振動状態検知電極14から、圧電振動子2bの振動状態を示す信号である電圧(振動検知電圧)が出力される。より、具体的には、振動状態検知電極14は、圧電振動子2b内部に設置された電極である。それにより、圧電振動子2bの振動状態を直接検出することができ、高精度の検出が可能である。
検知電圧変換部15は振動状態検知電極14から出力された振動検知電圧をパルス信号に変換して演算部17に入力する。また、駆動電圧変換部16は駆動電圧生成部12で生成された駆動電圧をパルス信号に変換して、演算部17に入力する。このように、パルス信号に変換することにより、演算処理が容易になる。
演算部17は、検知電圧変換部15からの振動検知電圧および駆動電圧変換部16からの駆動電圧を対比して、その位相差を算出する。演算部17は、算出した位相差に基づきロータ1の移動量等の位置情報を算出して、制御部11に指示する。制御部11では演算部17から位置情報を考慮して駆動信号を作成する。なお、位置情報とは、ロータ1の移動量や位置等の、演算部17により算出した情報である。
次に、振動体2の構成について説明する。図4は本発明の実施形態に係る振動体の外観を説明するための図であって、図4(A)は振動体の平面図であり、図4(B)は圧電振動子の駆動電極が設置された側の側面図であり、図4(C)は圧電振動子の振動検知電極が設置された側の側面図である。図4(A)〜図4(C)に示すように、振動体2は突起部2c−1、2c−2、2c−3が設置された円形の接触部2aと圧電薄板が内部電極を介して積層された構成の圧電振動子2bを備えている。例えば、図4(A)に示すように、突起部2cは略球面を有し、接触部2aの中心軸に対して同心円上に等間隔(120度間隔)で3つ形成されている。これら突起部2cの各頂点がロータ1に接触している。また、図4(B)、図4(C)に示すように、圧電振動子2bの積層された各内部電極に信号を入力あるいは各電極から信号を出力するための駆動電極2b−1、2b−2、2b−3、2b−4、振動検知電極2b−5、接地電極2b−6が圧電振動子2bの各側面に設置されている。これら、駆動電極2b−1、2b−2、2b−3、2b−4、振動検知電極2b−5、接地電極2b−6には、図示していないがリード線やフレキ等がハンダや導電性接着剤等により接合され、信号を送受信する。
図5は本発明の実施形態に係る圧電振動子の各層における電極構成を示す断面図であって、図5(A)は第1の断面図であり、図5(B)は第2の断面図である。圧電振動子2bは図5(A)および図5(B)で示される各内部電極2d〜2hが形成された圧電薄板20と、内部電極2iが形成された圧電薄板20とが交互に積層された多層構造である。つまり、内部電極2d〜2hを有する内部電極の層と、内部電極2iを有する内部電極の層とが交互に積層され、それらの内部電極の層の間に圧電薄板20が挿入されている。なお、これら内部電極2d〜2iは圧電薄板20に銀パラジウムなどを印刷することで形成される。内部電極2d〜2gは、それぞれ圧電薄板20の各角付近に形成されている。
また、振動状態検知電極14である内部電極2hは圧電薄板20上であって、突起部2c−1、2c−2、2c−3のいずれか(例えば突起部2c−1)を、圧電振動子2bの積層方向に向かって投影した場合に、その投影像と交わる位置に設置されていることが好ましい。これにより、内部電極2hは、突起部2c−1とロータ1との関係により圧電振動子2bに生じる振動の振幅が大きい箇所に設置されることになる。このように設置されることで、振動状態検知電極14である内部電極2hは圧電振動子2bの振動の内、突起部2c−1とロータ1との関係により圧電振動子2bに生じる振動成分を多く含む振動検知電圧を出力することができる。それにより、より精度の高い検知が可能となる。つまり、内部電極2hの設置箇所は、突起部2c−1とロータ1との関係により圧電振動子2bに生じる振動がより大きい箇所が好ましい。
さらに、内部電極2hの設置箇所について図6および図7を用いて説明する。図6は本発明の実施形態に係る振動状態検知電極の設置箇所について説明するための図であって、図6(A)は圧電振動子の断面図であり、図6(B)は圧電振動子の斜視図である。なお、図6(A)は図5(A)と対応する図であり、図5(A)で用いた部材については説明を省略する。また、図6(b)は、圧電振動子2bを簡略化して直方体として示している。
また、図7は本発明の他の実施形態に係る振動状態検知電極の設置箇所にについて説明するための図であって、図7(A)は他の第1の実施形態を示す図であり、図7(B)は他の第2の実施形態を示す図であり、図7(C)は他の第3の実施形態を示す図である。なお、図7(A)、図7(B)、図7(C)は図5(A)と対応する図であり、図5(A)で用いた部材については説明を省略する。
まず、図6は、圧電振動子2bの端面に、突起部2c−1、2c−2、2c−3を圧電振動子2bの積層方向に向かって投影して示している。さらに図6には、突起部2c−1、2c−2、2c−3のうち、いずれかの突起部である突起部2c−1の頂点と、圧電薄板20の断面の中心31とを結ぶ仮想線32と、その仮想線32に垂直である仮想面33を示している。ここで、圧電振動子2bが振動し、ロータ1が駆動した場合に、ロータ1と突起部2c−1との関係により、圧電振動子2bに生じる振動により力が加わりにくい箇所、すなわち前記振動による振幅が小さい箇所が、この仮想面33上である。内部電極2hはロータ1と突起部2c−1との関係により生じる振動により、より力が加わる箇所に設置されることが好ましいことから、内部電極2hは仮想面33と交わらないように設置されることが好ましい。具体的には、内部電極2hは、上述した図6(A)および図6(B)に示されるように設置されることが好ましい。また、図7(A)に示すように、内部電極2hは、突起部2c−1の真下に設置されていなくてもよく、仮想面33と交わらなければよい。また、内部電極2hの設置箇所は、仮想面33から離れるほど、ロータ1と突起部2c−1との関係により生じる振動が大きくなるため好ましい。したがって、内部電極2hの面積が大きい場合は、仮想面33と交わっていても、大きい振動検知電圧が出力される可能性はある。しかし、内部電極2hが仮想面33対して対称であれば、仮想面33により分割される内部電極2hの各部分により出力される振動検知電圧が相殺されることになり、振動検知電圧の値は全体として小さくなる。そこで、図7(B)に示すように、内部電極2hが仮想面33と交わっていても、仮想面33に対して、内部電極2hを非対称とすればよい。それにより、内部電極2hからは、十分大きい振動検知電圧が出力される。したがって、内部電極2hは、仮想面33と交わっている場合は、仮想面33に対して非対称に配置されていることが好ましい。
また、突起部2c−1以外の突起部である突起部2c−2、2c−3と、ロータ1との関係により生じる振動は、ロータ1と突起部2c−1との関係による振動を阻害する場合がある。それを防ぐため、突起部2c−2、2c−3については仮想面33のより近傍に設置することが好ましい。例えば、図7(C)に示すように、突起部2c−2、2c−3がそれぞれ仮想面33と交わるように設置することが好ましい。なお、この場合は突起部2c−1、2c−2、2c−3が二等辺三角形を形成するように配置されるが、製造の容易さを考慮すると、突起部2c−1、2c−2、2c−3は正三角形を形成するように配置されることが好ましい。
また、圧電振動子2bが、端面が略正方形である略四角柱形状である場合は、圧電振動子2bの断面は略正方形であり、その正方形の1辺の中央に内部電極2hを設置することが好ましい。つまり、圧電薄板20が略正方形であり、1辺の中央に内部電極2hを設置すればよい。それにより、圧電振動子2bが突起部2c−1とロータ1との関係により振動した場合に、その振動が顕著に現れる箇所、すなわち振幅が大きい箇所に内部電極2hを設置することになるので、その振動成分を多く含む振動検知電圧値を得ることができ、より正確な圧電振動子の振動状態の検出が可能となる。
内部電極2iは、圧電薄板20の略全面に形成されている。そして、これら内部電極2d、2e、2f、2gは、駆動電極2b−1、2b−2、2b−3、2b−4とそれぞれ接続されている。また、内部電極2hは、振動検知電極2b−5と接続されている。また、内部電極2iは接地電極2b−6と接続されている。駆動電極2b−1、2b−2、2b−3、2b−4は、駆動電流生成部13と接続され、振動検知電極2b−5は検知電圧変換部15と接続され、接地電極2b−6は接地されている。上記接続および接地については、図示していないが、リード線やFPC(フレキシブルプリント配線基板)等を介して行われる。なお、圧電薄板20が圧電特性を示すためには、これらに所定の分極処理を行う必要がある。
次に、このような、圧電振動子2bの振動およびそれによる突起部2c−1〜2c−3の振動について説明する。図8は屈曲1次モードを示す図である。また、図9は突起部の回転を説明するための図であって、図9(A)は接触部の側面図であり、図9(B)は接触部の平面図である。上述のように、圧電振動子2bにおいて、駆動電極2b−1、2b−2、2b−4、2b−3に高周波駆動信号(駆動電流)を、それぞれ位相を90度ずらして印加すると、内部電極2d、2e、2g、2fの各領域が90度位相のずれた伸縮振動を行う。駆動信号の周波数を共振周波数に近づけると、圧電振動子2bには、屈曲1次モードが、90度位相がずれて励起される。ここで、屈曲1次モードが励起された場合に、直方体である圧電振動子2bは、図8に示すように、2箇所の節Pにより1次の曲げ変形運動を左右に繰り返す。本実施形態に係る超音波アクチュエータ100の場合は、各駆動電極2b−1、2b−2、2b−4、2b−3に印加される高周波駆動信号は、それぞれ90度位相がずれていることから、圧電振動子2bには各内部電極2d、2e、2g、2fにより屈曲1次モードによる振動がずれながら生じる。それにより、接触部2aと接合された圧電振動子2bの先端は公転運動(首振り振動)を行う。そして、圧電振動子2bがこのような動きをすることで、圧電振動子2b上に設置された接触部2aの突起部2c−1〜2c−3は、図9(A)および図9(B)において、矢印で示したような楕円振動を行う。なお、隣接する各突起部2c−1〜2c−3の楕円振動はそれぞれ位相が120度ずれている。上述のように、ロータ1は接触部2aに押圧されている。したがって、ロータ1と突起部2c−1〜2c−3との間の摩擦係数は大きい。そのため、各突起部2c−1〜2c−3が上述の、位相が120度ずれた楕円振動を行うことで、ロータ1は突起部2c−1〜2c−3に突き動かされるように、回転駆動を行う。
また、ロータ1は、ロータ1に対する圧電振動子2bの位置に応じて、圧電振動子2bにおける共振状態が変化するような構造を有している。具体的には、ロータ1は、ロータ1が回転駆動する際に、圧電振動子2bに異なる力が周期的に加わるような形態を有している。例えば、ロータ1における接触部2aの突起部2c−1〜2c−3と接する面が一様ではないこととすればよい。つまり、ロータ1における突起部2c−1〜2c−3と接している面の形状が均一ではない、あるいはロータ1が異なる性質を有する複数の材料により構成されていること等で、振動検知電圧の振幅および振動検知電圧と圧電振動子2bの駆動電圧との位相差が変化するような構造を実現できる。より具体的には、例えば、ロータ1における突起部2c−1〜2c−3と接している面には複数の溝部が形成されていることとすればよい。また、例えば、ロータ1における突起部2c−1〜2c−3と接している面は複数の表面粗さを有していることとすればよい。また、例えば、ロータ1は異なる密度を有する材料もしくは異なる弾性度等を有する材料により形成されていることとすればよい。また、例えば、ロータ1における突起部2c−1〜2c−3と接する面または面近傍は、密度または弾性度等が異なる複数の材料により形成されていることとすればよい。このように、ロータ1における振動体2と接する面が一様でないことで、共振状態が変化する。具体的には、振動検知電圧の振幅および振動検知電圧と圧電振動子2bの駆動電圧との位相差が変化する。つまり、ロータ1が駆動している際に、ロータ1が上記構造を有していることから、振動している圧電振動子2bには異なる力がかかる複数の状態が存在することになる。圧電振動子2bが位置する箇所のロータ1の形態に応じて、圧電振動子2bには加わる力が異なることから、圧電振動子2bの共振状態が変化する。本実施形態に係る超音波アクチュエータは、この共振状態に基づいてロータ1の移動量等を検出する。
ここで、ロータ1における突起部2c−1〜2c−3と接する面について説明する。ロータ1においては、異なる形態を周期的に形成しておけばよい。それにより、高精度の位置決め制御を実現できる。例えば、ロータ1における振動体2と接する面には、ロータ1の円周に沿って周期的にその形状あるいは性質を変化させてある。具体的には、径方向に沿って伸びる複数の溝(凹部)が円周に沿って等間隔に形成されている。ここで、図10〜図14を用いて、ロータにおける振動体と接する面について説明する。図10はロータと接触部との分解斜視図である。図11はロータにおける接触部と接する面の形状を説明する図である。図12はロータおよび接触部の第1の要部拡大側面図である。図13はロータおよび接触部の第2の要部拡大側面図である。図14はロータおよび接触部の第3の要部拡大側面図である。
図10に示すように、振動体2(図示せず)の接触部2aは、ロータ1側の面に複数の突起部2c−1〜2c−3を備えている。ロータ1と接触部2aとの間には所定の付勢力がかかり、これらは密着している。この場合に、接触部2aは、突起部2c−1〜2c−3においてロータ1と接触している。したがって、ロータ1から力が加わるのは突起部2c−1〜2c−3のみであり、接触部2a全体に力が加わるわけではない。
図11に示すように、ロータ1における接触部2aと接触している面には、ロータ1の中心を通り、径方向に沿って伸びる溝1aが形成されている。なお、溝1aは円周に沿って等間隔に形成されている。つまり、溝1aが形成されている箇所と形成されていない箇所とが交互に、ロータ1の円周上に沿って配置されている。このような構成であることから、圧電振動子2b(図示せず)が振動することによりロータ1に接触している突起部2c−1〜2c−3が楕円振動し、それによりロータ1が駆動した場合に、突起部2c−1〜2c−3は周期的に溝1aを通過することとなる。突起部2c−1〜2c−3が溝1aの形成箇所に位置する場合と、溝1aが形成されていない箇所に位置する場合とでは、接触部2aに加わる力が異なる。また、そのため、圧電振動子2bに加わる力も異なることから、圧電振動子2bの共振状態は変化する。また、図12に示すように、ロータ1は、接触部2a側の面を覆うように薄板1bを有していてもよい。このような構成とすることで、突起部2c−1(2c−2、2c−3)が溝1aを通過する際のガタツキを防止することができる。例えば、ロータ1は、ステンレスなどの金属からなる構成とすればよい。そして、溝1aはロータ1に機械加工やエッチングなどにより形成すればよい。また、薄板1bはステンレスなどとすればよい。なお、薄板1bには、耐摩耗性を向上させるため、窒化処理などを施しておくことが好ましい。ロータ1と薄板1bとは、それらの間に薄い接着層を形成するなどして接合、または、中心付近をスポット溶接などで結合すればよい。この場合は、突起部2c−1と薄板1bとが接触し、突起部2c−1の楕円振動により薄板1bがつき動かされるので、薄板1bからロータ1に回転駆動が確実に伝達される構成であればよい。また、このような構成において、溝1aが形成されている箇所には、空洞が形成されている。したがって、溝1aの形成箇所と、溝1aが形成されていない箇所とでは、薄板1bのばね定数が異なる。つまり、薄板1bにおいて溝1aの形成箇所は、溝1aが形成されていない箇所に比べて剛性が低い。したがって、薄板1bにおいて、溝1aの形成箇所に突起部2c−1が位置する場合は、圧電振動子2bの共振周波数は低下する。このように、ロータ1に対する突起部2c−1の位置に応じて圧電振動子2bの共振状態が変化する。
さらに、ロータ1における突起部2c−1と接する面に、溝ではなく、ロータ1の中心を通り、径方向に沿って伸びる低摩擦領域を形成してもよく、この場合は、例えば摩擦係数の異なる領域が交互に、ロータ1の円周上に沿って配置されている。摩擦係数を異ならすためには、例えば、表面粗さを変化させればよい。このような構成であれば、ロータ1が駆動する際にガタツキが生じることもない。また、突起部2c−1が位置する領域の摩擦係数により、突起部2c−1に加わる力が異なる。そのため、圧電振動子2bに加わる力も異なることから、圧電振動子2bの共振状態が変化する。
また、図13に示すように、例えば、ロータ1を形成する材料とは異なる材料1cを溝1aに充填することで、ロータ1が、円周に沿って周期的に、複数の異なる材料により構成されることとしてもよい。ロータ1を形成する材料とは異なる材料1cとしては、例えばロータ1を形成する材料よりも、密度の異なる物質、質量の異なる物質あるいは弾性度の異なる物質等とすればよい。なお、図14に示すように、ロータ1を形成する材料とは異なる材料1cの形成範囲を広げてもよく、例えば、ロータ1を形成する材料とは異なる材料1cが、ロータ1の半周分を占めることとしてもよい。このような構成とすることで、ロータ1における突起部2c−1(2c−2、2c−3)と接する面が複数の異なる材料により形成されていることとなる。これにより、突起部2c−1が位置する領域の材質により、突起部2c−1に加わる力が異なる。そのため、圧電振動子2bに加わる力も異なることから、圧電振動子2bの共振状態は変化する。また、ロータ1が駆動する際にガタツキが生じることもない。なお、ロータ1が異なる材料により構成される場合であっても、図12に示したように、ロータ1における突起部2c−1側の面は、薄板により覆われていてもよい。つまり、ロータ1における突起部2c−1と接する面近傍が複数の異なる材料により形成されている構成としてもよい。
上述のようにロータ1の相対位置に応じて、圧電振動子2bの共振状態が変化する。上述の溝1aや摩擦係数の異なる領域等が形成されることで、ロータ1の円周上に沿って2種類の領域が周期的に配置されていることから、圧電振動子2bの共振状態を監視することで、ロータ1の位置情報を算出することができる。
また、2種類の領域を周期的に設けることとしたが、これら2種類の領域とは異なる形状あるいは性質が異なる箇所を一箇所形成しておき、その位置をロータ1の原点位置(予め決められた基準位置)とすればよい。すなわち、ロータ1における突起部2c−1と接する面は、3種類の異なる形態を有することとし、そのうち1種類は一箇所のみ形成されていて、残りの2種類は周期的に交互に形成されていることとすればよい。また、ロータ1は3種類よりも多くの種類の異なる形態を有していてもよい。なお、ロータ1における突起部2c−1、2c−2、2c−3と接する面が一様でない形態について上述したが、この形態は上記したものに限定されることはなく、圧電振動子2bの共振状態を変化させ得るものであればよい。
ここで、共振状態の具体的な検出方法について説明する。具体的には、振動検知電極2b−5から出力される信号により共振状態の変化を検出することができる。すなわち、ロータ1が回転することで、駆動検知電極2b−5に接続される内部電極2hの形成箇所の圧電薄板20に加わる力は周期的に変化する。それにより、内部電極2hから出力される振動検知電圧および駆動電圧との位相差が変化する。なお、内部電極2hの設置位置については、振動検知電圧の値が、突起部2c−1〜2c−3のいずれかと、ロータ1との関係により生じる振動の振動成分を多く含むことが好ましい。具体的には、内部電極2hの設置位置は、上述した設置位置とすればよい。
図15は、振動検知電圧と駆動信号の周波数との関係を示すグラフであり、図16は、振動検知電圧および駆動電圧間の位相差と、駆動信号の周波数との関係を示すグラフである。図15において、縦軸は電圧を示し、横軸は周波数を示す。図15は、図12に示すようにロータ1に溝1aが形成され、薄板1bが形成された場合に、突起部2c−1が溝1aの形成箇所に位置している場合と、突起部2c−1が溝1aの形成されていない箇所に位置している場合について、電圧の振幅と周波数の関係を表している。図15において、実線は突起部2c−1が溝1aの形成箇所に位置している場合を示していて、破線は突起部2c−1が溝1aの形成されていない箇所に位置している場合を示している。このように、突起部2c−1が溝1aの形成されていない箇所に位置している場合と、突起部2c−1が溝1aの形成箇所に位置している場合とでは、振動検知電圧の振幅は異なる。なお、図15において、各線において、最大値における周波数が共振点である。実線の方が最大値における周波数が低いことから、突起部2c−1が溝1aの形成箇所に位置している場合の方が、圧電振動子2bの共振周波数が低い。なお、共振点の近傍で、振動検知電圧および駆動電圧間の位相差が大きく変化する。
また、図16において、縦軸は位相差を示し、横軸は周波数を示す。図16は、図12に示すようにロータ1に溝1aが形成され、薄板1bが形成された場合に、突起部2c−1が溝1aの形成箇所に位置している場合と、突起部2c−1が溝1aの形成されていない箇所に位置している場合について、振動検知電圧および駆動電圧間の位相差と、駆動信号の周波数との関係を表している。図16において、実線は突起部2cが溝1aの形成箇所に位置している場合を示していて、破線は突起部2c−1が溝1aの形成されていない箇所に位置している場合を示している。このように、前記位相差は、突起部2c−1が溝1aの形成されていない箇所に位置している場合と、突起部2c−1が溝1aの形成箇所に位置している場合とでは異なる。このように、突起部2c−1のロータ1に対する位置により、振動検知電圧および前記位相差が異なることから、振動検知電圧に基づいて、これらを算出することで共振状態の変化を検出することができる。
次に、本実施形態に係る超音波アクチュエータ100の動作について説明する。まず、制御部11がロータ1を駆動する指令のための電気信号である駆動信号を出力する。駆動電圧生成部12は、制御部11からの駆動信号に応じた駆動電圧を生成する。このとき、生成された駆動電圧は、駆動電圧変換部16にて検出され、パルス信号へと変換される。また、駆動電圧は駆動電流生成部13に入力され、駆動電流生成部13は駆動電圧に対応する駆動電流を生成する。なお、駆動電圧および駆動電流は交流である。駆動電流は、圧電振動子2bに入力され、圧電振動子2bが振動することで、各突起部2c−1〜2c−3は楕円振動を行い、それによって、ロータ1が駆動する。なお、このときに発生する振動検知電圧は、振動状態検知電極14(内部電極2h)により検出され、検知電圧変換部15に出力される。検知電圧変換部15は振動検知電圧をパルス信号に変換する。演算部17は、パルス信号とされた駆動電圧および振動検知電圧の位相差を求める。それにより、演算部17は、ロータ1の位置等を算出することができ、ロータ1の移動量等の位置情報を算出することができる。また、パルス信号を変換することで、位相差を信号情報(レベル)として検出することが好ましい。それにより、容易に位相差を検出することができる。また、演算部17が、振動検知電圧の振幅より、ロータ1の移動量等の位置情報を算出することとしてもよい。また、各突起部2c−1〜2c−3はロータ1と、その頂点で接触している。したがって、異なる領域の検出においては、それらの境界付近においても、正確に高精度に検出することができる。
位置情報の算出について、具体的に説明する。なお、ロータ1は、上述したように3種類の異なる形態を有することとする。1つは原点(予め決められた基準)状態であり、残りは第1の状態および第2の状態である。したがって、それぞれの状態に、例えば突起部2c−1が位置する場合には共振状態が互いに異なる。例えば、第1の状態と第2の状態とをそれぞれロータ1の中心に対して所定の角度ずつ交互に形成しておき、第1の状態、第2の状態を何回通過したかをカウントすればよい。所定の角度および通過回数よりロータ1の回転角を検出することができる。このように、振動体2とロータ1との相対位置の関係を検出することができる。また、原点状態も検出できることから、原点状態を何回通過したかをカウントしておくことで、ロータ1が何回転したかを容易に検出することができる。このように、突起部2c−1とロータ1との絶対位置の関係を検出することができる。また、これらを組み合わせることで、ロータ1の移動量や位置等の移動量等の位置情報を検出することができる。
また、本実施形態に係る超音波アクチュエータ100において、接触部2aは、ロータ1に突起部2c−1〜2c−3の頂点で接していることから、圧電振動子2bの振動状態の変化(共振状態の変化)を、デジタル的に検出することができる。すなわち、振動検知電圧および前記位相差の変化が顕著に表れることになり、位相差の検出が容易であり、より高精度の位置制御が可能である。
このようにして、演算部17で検出されたロータ1の位置情報は制御部11へと送られ、制御部11は演算部17において検出されたロータ1の位置情報を考慮して、ロータ1の駆動を制御することができる。それにより、ロータリーエンコーダ等を取り付けることなく、高精度の位置制御が可能な超音波アクチュエータ100を実現できる。
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。