以下、本発明に係る導電性フイルムの製造方法、導電性フイルム及び透明発熱体の実施の形態例を図1〜図26を参照しながら説明する。
先ず、本実施の形態に係る導電性フイルムの製造方法にて製造される導電性フイルム10は、図1に示すように、複数の導電部12と複数の開口部14とを有し、導電部12と開口部14の組み合わせ形状がメッシュ形状Mとなっている。ここで、メッシュ形状Mとは、1つの開口部14と、該1つの開口部14を囲む4つの導電部12の組み合わせ形状をいう。
この導電性フイルム10は、車両のデフロスタ(霜取り装置)や、窓ガラス等の一部として使用可能な導電性フイルムである。この導電性フイルム10は、電流を流すことで発熱する透明発熱体としても機能し、図2に示すように、透明フイルム基材16と、該透明フイルム基材16上に形成された導電部12及び開口部14を備える。図3に示すように、この導電性フイルム10を透明発熱体18として使用する場合は、導電性フイルム10の対向する端部(例えば、図3の左右両端)に第1電極20a及び第2電極20bを形成し、第1電極20aから第2電極20bに電流を流す。これにより、透明発熱体18が発熱し、透明発熱体18に接する又は透明発熱体18を組み込んだ加熱対象物(例えば、建物の窓ガラス、車両用の窓ガラス、車両用灯具の前面カバー等)が加熱される。その結果、加熱対象物に付着していた雪等が取り除かれることになる。
そして、図1に示すように、この導電性フイルム10の導電部12は、一方向(図1においてx方向)に第1ピッチL1で並ぶ複数の第1金属細線12aと、他方向(図1においてy方向)に第2ピッチL2で並ぶ複数の第2金属細線12bとがそれぞれ交差して形成された金属メッシュパターン22を有する。なお、第1ピッチL1及び第2ピッチL2は、100μm以上6000μm以下から選択可能である。また、第1金属細線及び第2金属細線の線幅dは、5μm以上200μmから選択可能である。もちろん、透明性を向上させたい場合は、5μm以上50μm以下から選択してもよい。
第1ピッチL1という表現は、全ての第1金属細線12aが一定間隔で並ぶことを示すが、一部の第1金属細線12aについて、第1ピッチL1の長さを変えてもよい。この場合、隣り合う第1金属細線12aの間隔と表現した方が適切となる。これは、第2金属細線12bについても同様である。従って、隣り合う第1金属細線12aの間隔並びに隣り合う第2金属細線12bの間隔は、100μm以上6000μm以下が好ましく、さらに好ましくは、150μm以上1000μm以下である。
つまり、導電部12は、複数の第1金属細線12aと複数の第2金属細線12bにて構成された多数の格子の交点(交差部24)を有する金属メッシュパターン22を有し、交差部24間の導電部12は、少なくとも1つの湾曲を有する波線形状に形成されている。
特に、この導電性フイルム10は、湾曲が円弧状であって、交差部24間に2つの円弧26がそれぞれ山谷の方向を逆にして連続形成された形状を有する。各円弧26はそれぞれ中心角が75°〜105°とされている。好ましくはほぼ90°である。また、導電部12の交差角度はほぼ90°とされている。中心角の好ましい値並びに交差角度の好ましい値を「ほぼ90°」としたのは、製造ばらつきを考慮したものであって、理想的には、中心角及び交差角度は90°であることが望ましい。
また、導電部12の波線形状は、一定の周期を有する。周期は、円弧の配列周期をいう。すなわち、2つの円弧26がそれぞれ山谷の方向を逆にして連続配列された長さを1周期としている。図1の例では、交差部24間を1周期とした例を示している。1周期は、50μm〜2000μmが好ましい。ここで、交差部24の導電部12に沿った配列ピッチを、波線形状の周期で表すことも可能である。図1では、交差部24の導電部12に沿った配列ピッチは波線形状の1周期に相当することになる。従って、「交差部24の配列ピッチを、波線形状のn周期(nは実数)に規定する」として製造することも可能となる。このようなことから、本実施の形態では、導電部12の波線形状は、一定の周期を有するようにしているが、平行に隣接する波線形状の周期をそれぞれ異ならせて導電部12(金属メッシュパターン22)を形成するようにしてもよい。
また、導電部12の波線形状は、一定の振幅hを有する。振幅hは、互いに隣接する2つの交差部24を結んだ仮想線28を考えたとき、波線形状の山の頂上から仮想線28に垂線を引いたとき、山の頂上と交点(垂線と仮想線28との交点)間の距離を指す。振幅hは、10μm〜500μmが好ましい。本実施の形態では、導電部12の波線形状は、一定の振幅を有するようにしているが、交差部24間に並ぶ2つの円弧26の各振幅hをそれぞれ異ならせてもよいし、平行に隣接する波線形状の各円弧26の振幅を異ならせてもよい。
また、この導電性フイルム10は、図4に模式的に示すように、交差部24の配列に沿って隣接する任意の2つのメッシュ形状M1及びM2の各中心C1及びC2を結ぶ線分のうち、一方のメッシュ形状M1の中心から交差部24までの第1線分の長さLaと、他方のメッシュ形状M2の中心から交差部24までの第2線分の長さLbとが同じになっている。
また、図4に示すように、例えば第2金属細線12bの延在方向に沿って隣接する任意の2つのメッシュ形状M3及びM4の各中心C3及びC4を結ぶ線分のうち、一方のメッシュ形状M3の中心C3から第1金属細線12aまでの第3線分の長さLcと、他方のメッシュ形状M4の中心C4から第1金属細線12aまでの第4線分の長さLdとが同じである。
さらに、図4に示すように、各メッシュ形状Mの外周線上であって、且つ、メッシュ形状Mの中心Cに対して点対称の位置にある任意の一対の接線が互いに平行となっている。具体的には、図2において、例えば第1の一対の接線(1)(1)、第2の一対の接線(2)(2)、第3の一対の接線(3)(3)が挙げられているが、各一対の接線がそれぞれ互いに平行となっており、しかも、接線の方向は、第1の一対の接線(1)(1)、第2の一対の接線(2)(2)、第3の一対の接線(3)(3)でそれぞれ異なっている。光の屈折や回折は接線方向に強く現れるが、導電性フイルム10では、異なった接線方向が多数組み合わされた形態となるため、光の屈折や回折が拡散され、これにより、ぎらつきが目立たなくなる。
しかも、この導電性フイルム10では、開口部14の各開口面積がほぼ一定にしてあることから、全面的に回折光の干渉によるぎらつき等を抑制することができ、局部的にぎらつき等が目立つということがなくなる。
導電性フイルム10の全光線透過率は70%以上99%未満であり、80%以上99%未満、さらには、85%以上99%未満を実現することができる。
このように、導電性フイルム10においては、導電部12は、ほとんど直線部分を有さないことから、導電部12の交差部24上に回折ポイントが直線状に並ぶということがなくなり、交差部24上での干渉光の強度は小さくなる。これは、導電部12上でも同様であり、導電部12上での干渉光の強度も小さくなる。すなわち、メッシュ形状による回折光の干渉によるぎらつき等を抑制することができる。従って、導電性フイルム10は、例えば窓ガラス(建物、車両用の窓ガラス)や車両用灯具の前面カバーに取り付けられる透明発熱体18として好適となる。なお、波線形状への直線部分の形成は、適用する対象(窓ガラス、車両用灯具の前面カバー等)や波線形状の周期や振幅等を考慮して適宜選択すればよい。このことから、波線形状として正弦波曲線を採用してもよい。
また、導電性フイルム10は、1つのメッシュ形状Mの外周線上の円弧26の数が4k(k=1,2,3・・・)の関係を有する。そのため、全体の表面抵抗を低く保持することができ、透明発熱体に使用した場合の発熱効率や、太陽電池に使用した場合の発電効率をより高めることができる。
次に、上述した導電性フイルムを製造するための本実施の形態に係る導電性フイルム10の4つの製造方法(第1製造方法〜第4製造方法)について図5A〜図8Eを参照しながら説明する。
第1製造方法は、透明フイルム基材16上に設けられた銀塩感光層を露光し、現像、定着することによって形成された金属銀部と、該金属銀部に担持された導電性金属にて金属メッシュパターン22を形成する。なお、目的とする電気抵抗によっては、金属メッシュパターン22は金属銀部だけから構成されてもよい。
具体的には、図5Aに示すように、ハロゲン化銀31(例えば臭化銀粒子、塩臭化銀粒子や沃臭化銀粒子)をゼラチン32に混ぜてなる銀塩感光層34が塗布された感光材料を用意する。なお、図5A〜図5Dでは、ハロゲン化銀31を「粒々」として表記してあるが、あくまでも本発明の理解を助けるために誇張して示したものであって、大きさや濃度等を示したものではない。
その後、図5Bに示すように、銀塩感光層34に対して、後に第1金属細線12aとなる第1パターン33a及び後に第2金属細線12bとなる第2パターン33bの形成に必要な露光を行う。ハロゲン化銀31は、光エネルギーを受けると感光して「潜像」と称される肉眼では観察できない微小な銀核を生成し、第1パターン33a及び第2パターン33b(メッシュパターン22a)の潜像が形成される。この露光においては、後述するように、例えば図9に示すプロキシミティ露光装置(第1露光装置100A)が用いられる。
メッシュパターン22aの潜像を肉眼で観察できる可視化された画像にするために、図5Cに示すように、現像処理を行う。具体的には、メッシュパターン22aの潜像が形成された銀塩感光層34を現像液(アルカリ性溶液と酸性溶液のどちらもあるが通常はアルカリ性溶液が多い)にて現像処理する。この現像処理とは、ハロゲン化銀粒子ないし現像液から供給された銀イオンが現像液中の現像主薬と呼ばれる還元剤により潜像銀核を触媒核として金属銀に還元されて、その結果として潜像銀核が増幅されて可視化された銀画像(現像銀35)を形成する。
現像処理を終えたあとに銀塩感光層34中には光に感光できるハロゲン化銀31が残存するのでこれを除去するために図5Dに示すように定着処理液(酸性溶液とアルカリ性溶液のどちらもあるが通常は酸性溶液が多い)により定着を行う。
この定着処理を行うことによって、露光された部位には金属銀部36が形成され、露光されていない部位にはゼラチン32のみが残存し、光透過性部38となる。すなわち、透明フイルム基材16上に金属銀部36と光透過性部38との組み合わせが形成されることになる。この段階で、金属銀部36による金属メッシュパターン22としてもよい。
そして、図5Eに示すように、例えばめっき処理(無電解めっきや電気めっきを単独ないし組み合わせる)を行って、金属銀部36のみに導電性金属40を担持させることによって、透明フイルム基材16上に金属銀部36と、該金属銀部36に担持された導電性金属40にて金属メッシュパターン22が形成されることになる。
そして、銀塩感光層34に対する露光にて使用されるフォトマスクとしては、後述するように、第1パターン33aの潜像及び第2パターン33bを形成するためのマスクパターンを有するフォトマスクが使用される。
次に、第2製造方法は、図6A〜図6Dにその一部を示すように、先ず、銀塩感光層34が塗布された感光材料を用意し(図6A参照)、その後、銀塩感光層34に対して、後に第1金属細線12aとなる第1パターン33aの形成に必要な露光を行う(図6B参照)。その後、銀塩感光層34に対して、後に第2金属細線12bとなる第2パターン33bの潜像の形成に必要な露光を行う(図6C参照)。この段階で、金属メッシュパターン22に沿ったメッシュパターン22aの潜像が形成される。この露光においては、後述するように、例えば図18に示すプロキシミティ露光装置(第2露光装置100B)が用いられる。その後、現像処理を行って、メッシュパターン22aの潜像を肉眼で観察できる可視化された銀画像(現像銀35)にする。その後の工程は、上述した図5D及び図5Eに示すように、定着処理を行って、露光された部位に金属銀部36を形成し、めっき処理を行って、金属銀部36のみに導電性金属40を担持させる。
次に、第3製造方法は、図7A〜図7Dにその一部を示すように、先ず、例えば透明フイルム基材16上に形成された銅箔42上にフォトレジスト膜44を形成した感光材料を用意し(図7A参照)、その後、感光材料のフォトレジスト膜44に対して、後に第1金属細線12aとなる第1パターン33aと後に第2金属細線12bとなる第2パターン33bの形成に必要な露光を行う(図7B参照)。フォトレジスト膜44は光が照射された部分が硬化するネガ型のフォトレジスト膜を使用している。この段階で、金属メッシュパターン22に沿ったメッシュパターン22aが形成される。これらの露光においても、後述する第1露光装置100Aが用いられる。
その後、図7Cに示すように、露光済みのフォトレジスト膜44を現像処理して、メッシュパターン22aに従ったレジストパターン46を形成し、その後、図7Dに示すように、レジストパターン46から露出する銅箔42をエッチングすることによって、金属メッシュパターン22を形成する。
この場合も、フォトレジスト膜44に対する露光にて使用されるフォトマスクとして、フォトレジスト膜44に第1パターン33a及び第2パターン33bを形成するためのマスクパターンを有するフォトマスクが使用される。
次に、第4製造方法は、図8A〜図8Dにその一部を示すように、先ず、透明フイルム基材16上に形成された銅箔42上にフォトレジスト膜44を形成した感光材料を用意し(図8A参照)、その後、感光材料のフォトレジスト膜44に対して、後に第1金属細線12aとなる第1パターン33aの形成に必要な露光を行う(図8B参照)。フォトレジスト膜44は光が照射された部分が硬化するネガ型のフォトレジスト膜を使用している。その後、フォトレジスト膜44に対して、後に第2金属細線12bとなる第2パターン33bの形成に必要な露光を行う(図8C参照)。この段階で、金属メッシュパターン22に沿ったメッシュパターン22aが形成される。これらの露光においても、後述する第2露光装置100Bが用いられる。
その後、図8Dに示すように、露光済みのフォトレジスト膜を現像処理して、メッシュパターン22aに従ったレジストパターン46を形成し、その後、図8Eに示すように、レジストパターン46から露出する銅箔42をエッチングすることによって、金属メッシュパターン22を形成する。
この場合も、フォトレジスト膜44に対する露光にて使用されるフォトマスクとして、フォトレジスト膜44に第1パターン22aを形成するためのマスクパターンを有する第1フォトマスクと、フォトレジスト膜44に第2パターン33bを形成するためのマスクパターンを有する第2フォトマスクとが使用される。
ここで、本実施の形態に係る製造方法の露光工程で使用されるプロキシミティ露光装置(以下、第1露光装置100Aと記す)について図9〜図17を参照しながら説明する。主に上述した第1製造方法及び第3製造方法での露光工程に適用した第1露光装置100Aについて説明する。
この第1露光装置100Aは、図9に示すように、長尺の感光材料101を供給するワーク供給部102と、感光材料101に第1パターン33a及び第2パターン33bによるメッシュパターン22aの潜像を形成する露光部104と、露光済みの感光材料101を巻き取るワーク巻取り部108と、複数本の感光材料101を連続して処理する際に、先に処理を終えた感光材料101の後端と、後続の感光材料101の先端とが接合されるワーク接合部110と、これらを統括的に制御する制御部112を備えている。
長尺の感光材料は、例えば図10A及び図10Bに示すように、透明フイルム基材16として、厚さt1=100μm、幅W0=650〜750mmの透明なPETフイルムが使用され、該PETフイルムの一方の面に銀塩感光層34(第1製造方法に対応)、又は銅箔42及びフォトレジスト膜44(第3製造方法に対応)が形成されており、100〜1000mの長さのものがロール状に巻かれてワーク供給部102にセットされる。
ワーク供給部102にセットされた感光材料101は、先端が引き出されて複数のローラに掛けられ、ワーク巻取り部108の巻取り用リール114に係止される。そして、搬送手段である巻取り用リール114及び露光ローラ116及び図示しない複数の駆動ローラが、モータ群118によって巻取り方向に回転されることにより、感光材料101は、ワーク供給部102からワーク巻取り部108に向かうワーク搬送方向Fに搬送される。この感光材料101のワーク搬送速度Vは、例えば、4m/分であるが、このワーク搬送速度Vは銀塩感光層34(又はフォトレジスト膜44)の感度や露光光源のパワーに応じて最適値が設計される。
露光部104は、露光ローラ116の外周に配置されるフォトマスク120と、このフォトマスク120に光を照射する露光光源である照明部122とから構成されている。図11A及び図11Bに示すように、フォトマスク120は、例えば、厚みt2=4.5mm、ワーク搬送方向Fのマスク長さLa=200mm、ワーク搬送方向Fに直交するマスク幅Wa=800mmの透明なソーダガラスで形成されたマスク基板124と、このマスク基板124の一方の面のパターンエリア126(有効長さL=200mm、有効幅Wb=760μm)内に形成されるマスクパターン128とからなる。
マスクパターン128は、例えば黒色の遮光パターンに、マスクパターン128の形状のスリットを形成して光が透過できるようにしたものである。なお、本来、遮光パターンを黒地で、スリットからなるマスクパターン128を白地で描くべきであるが、図面が煩雑になるため、図11Aでは、遮光パターンを白地で、マスクパターン128を黒線で描いている。
図11Aに示すように、マスクパターン128は、上述した金属メッシュパターン22と同形状、同寸法であり、ワーク幅方向に沿ってクロム蒸着によりマスク基板124上に形成されている。このマスクパターン128は、マスク基板124上に設けられたパターンエリア126内に、ワーク搬送方向Fに沿って複数個の周期パターン128a(図11C参照)が形成された形状を有する。パターンエリア126は、例えば、ワーク搬送方向Fのパターン長さLが200mm、ワーク幅方向のパターン幅Wbが760mmとされている。このように、パターンエリア126のパターン幅Wbがワーク幅W0よりも大きくされているのは、感光材料101が搬送時に蛇行しても、その幅方向の全域に確実にメッシュパターン22aの潜像を露光するためである。そのため、ワーク幅W0とパターン幅Wbは上記数値に限定されないが、W0<Wbの関係を有することが好ましい。
また、マスクパターン128をメッシュパターン22aとして感光材料101の銀塩感光層34(又はフォトレジスト膜44)に露光するために、パターンエリア126のパターン長さLと周期パターン128aの周期長さL0は、L0<Lの関係を有することが好ましい。本実施の形態では、パターン長さLが200mmで、周期長さL0が424μmであって、パターン長さLは周期長さL0に対して十分大きいが、これはフォトマスク120のたわみ等による像のねじれに配慮して、剛性を確保することを目的に設定したものであり、マスクパターン128を形成する必要性から決めたものではない。そのため、フォトマスク120の剛性が確保できる構造であれば、パターン長さLの寸法はもっと小さくてもよく、大判のフォトマスクを必要としないという点でコストダウンに繋がる長所となる。
フォトマスク120は、図12に示すマスク保持部130によって保持されている。マスク保持部130は、フォトマスク120を保持する保持枠132と、この保持枠132に保持されたフォトマスク120が、感光材料101との間にプロキシミティギャップLgを隔てて対面される露光位置と、感光材料101からプロキシミティギャップLg以上離されて隙間が形成される退避位置(図12中、二点鎖線で示す)との間で保持枠132を移動自在に支持する支持部134と、保持枠132を露光位置と退避位置との間で移動させる駆動部であるアクチュエータ136とから構成されている。
保持枠132は、フォトマスク120の外周を前後から挟み込んで保持する。保持枠132には、背面側から螺合されてフォトマスク120に当接する調節ネジ138が幅方向に複数箇所設けられている。これらの調節ネジ138は、プロキシミティギャップLgの幅方向微小ひずみに対する微調整を行う調整部であり、保持枠132への締め込み量を加減することによってフォトマスク120が調節ネジ138に押され、保持枠132内で移動して全幅でギャップが同じになるように、プロキシミティギャップLgが調整される。
支持部134は、保持枠132に取り付けられるスライドガイド140と、このスライドガイド140をスライド自在に支持するスライドレール142等からなり、保持枠132を露光位置と退避位置との間でスライド自在に支持する。アクチュエータ136は、例えば、モータやソレノイド、エアシリンダ等が用いられ、保持枠132をスライドレール142上でスライドさせて露光位置と退避位置とに移動させる。プロキシミティギャップLgは、スライドレール142上の露光位置を決めるストッパの微調整により決定される。
アクチュエータ136は、支持部134に取り付けられ、移動子144がスライドガイド140に接続され、制御部112によって制御される。このアクチュエータ136は、露光時には移動子144を下方に突出させて保持枠132を露光位置に移動させる。また、感光材料101の接合部分がフォトマスク120の下を通過する際には、移動子144を引き込んで保持枠132を退避位置に移動させ、フォトマスク120と接合部分との干渉を防止する。退避位置は、フォトマスク120と接合部分との干渉を確実に避けるために、例えば、露光位置から50mm程度上方に設定されている。なお、支持部134には、露光位置へ移動した際の位置再現性の高い高精度なものが用いられているため、保持枠132の移動によってプロキシミティギャップLgがずれることはない。
一方、照明部122は、図13に示すように、レーザ出力装置146と、このレーザ出力装置146から出力されたレーザ光147をコリメートして平行光にするコリメートレンズ148と、レーザ光147を反射する反射ミラー150と、走査手段であるポリゴンミラー152及びモータ154とから構成されている。
レーザ出力装置146は、例えば、出力60mWのシングルモード半導体レーザ出力装置であり、銀塩感光層34に合せて波長が例えば405nmのレーザ光147を出力する。コリメートレンズ148は、例えば焦点距離3mmであり、図14に示すように、入力されたレーザ光147を長軸Lc=3.6mm、短軸Wc=1.2mmの楕円形の射影形状を有する平行光に変換する。このレーザ光147は、長軸Lcがワーク搬送方向Fに、短軸Wcがワーク幅方向に沿うように、フォトマスク120に照射される。
なお、レーザ光147の射影形状及び大きさは1/e2換算ビーム径であるが、これに限定されるものではなく、コリメートレンズ148により自由に設定することができる。また、60mWシングルモード半導体レーザを使用したが、レーザ定格出力を規定するものではなく、光源パワーが大きいほど設計余裕がとれるため、より好ましいといえる。例えば、2本のレーザを偏光合波して、パワーを上げたり、200mWのマルチモード半導体レーザを使ってもよい。また、半導体レーザとコリメートレンズ148によって作った平行光を集積して小さな面積に集光した光源によってパワーをあげて露光することも好ましい。
ポリゴンミラー152は、略円板形状の外周面に平板な反射面156が複数設けられたもので、反射面156に入射されたレーザ光147をフォトマスク120に向けて反射し、その際にモータ154によって回転されることにより、レーザ光147をフォトマスク120上で感光材料101の幅方向に走査させる。ポリゴンミラー152は18面の反射面156が設けられている。この反射面156により走査できる走査角度は20°であるが、この例では、走査角度θsとして10°を露光走査に利用する。また、10°の走査角度θsでフォトマスク120の幅方向全域を走査するために、ポリゴンミラー152の反射面156からフォトマスク120までの距離Lsを2250mmとしている。
露光走査に使用する走査角度θsを10°としたのは、ポリゴンミラー152の反射による露光時間のバラツキを小さくするためである。ポリゴンミラー152の反射面156は、回転方向の中央部と端部とで中心からの半径が異なるため、回転時の角速度の違いから走査速度が変化し、露光時間にバラツキが生じて露光品質が低下する。例えば、走査角度が10°のときには、反射面156の中央部と端部との走査速度の差は3.1%と小さいため、例えばメッシュパターン22aの潜像を形成するための露光に対する影響は少ない。しかし、走査角度が20°になると、走査速度の差は13.2%になり、走査角度45°では50%になるため、メッシュパターン22aの潜像の線幅や間隔が不均一になる等の露光不良が発生する。
なお、第1露光装置100Aを小型化するために、照明部122とフォトマスク120との距離を短くする場合には、ポリゴンミラー152による走査速度の変化に合せて、レーザ光147のパワーが変化するように制御するのが好ましい。銀塩感光層34(又はフォトレジスト膜44)は、トータルで露光される光量、すなわち、積算露光量に応じて感光濃度が規定されるが、この積算露光量は「積算露光量=トータル露光時間×光量」の関係を有する。そのため、この積算露光量が一定になるようにレーザ光147のパワー(光量)を可変させれば、露光品質を低下させずにメッシュパターン22aを露光することができる。
また、ポリゴンミラー152の反射面156の数を18面としたのは、ポリゴンミラー152の直径を100mm程度に抑えるためである。本来ならば20°の走査角度を有するポリゴンミラー152で10°の走査角度しか使用しない場合、露光光源の使用効率が50%となる。また、この50%の使用効率で必要な露光量を得るために、露光光源の光量も大きくする必要があるため、コスト的に不利である。しかし、露光光源の使用効率を上げるためにポリゴンミラー152の反射面156の数を36面にすると、ポリゴンミラー152の直径は600mm以上となり、部品加工コストが現実的でなくなるため、この例では18面を採用した。なお、ポリゴンミラー152の反射面156の数と露光光源の光量は対応関係にあるため、露光光源のパワーと銀塩感光層34(又はフォトレジスト膜44)の感度との組み合わせに応じて最適な反射面156の数を選択するとよい。
なお、レーザ走査はポリゴンミラー152に限ったものでなく、ガルバノ、レゾナントスキャナー他いろいろなアクチュエータが利用可能である。ただし、レーザ走査は、後述するが必ず1方向からのスキャニングとする必要があり、往復走査するタイプのアクチュエータでは片方向をオフする変調制御が必要となる。
次に、第1露光装置100Aによってメッシュパターン22aの潜像を露光する方法について図15を参照しながら説明する。
先ず、長尺の感光材料は、図15中、矢印Fで示すワーク搬送方向に搬送され、この搬送中に照明部30からフォトマスク120にレーザ光147が照射される。フォトマスク120に照射されたレーザ光147は、マスクパターン128のスリットを通って感光材料101に達し、図11Cに示すように、周期長さL0=424μmの周期パターン128aが搬送方向に沿って露光される。感光材料101とフォトマスク120との間には、例えば50μmのプロキシミティギャップLgが設けられており、周期長さL0分のワーク搬送に同期させてプロキシミティ露光を行うことにより、ズレの無い周期パターン128aが露光される。
本実施の形態は、感光材料101を停止させずに連続搬送しながら、該マスクパターン128が設けられたフォトマスク120を静止させた状態で、フォトマスク120の少なくとも1周期分のマスクパターン128の全域をカバーする露光領域に周期的(424μmの送りにあわせた周期)にプロキシミティ露光することが特徴となる。このことから、フォトマスク120の少なくとも1周期分のマスクパターン128の全域をカバーする露光領域とは、1周期分の周期パターン128aを露光するために必要な搬送方向424μm、幅方向750mmの領域を含む最小限の露光エリアをいう。
周期パターン128aの搬送方向の周期長さL0=424μm、感光材料101のワーク搬送速度をV=4m/分、周期パターン128aを露光するための露光周期をT、露光時間をΔT、マスクパターン128の最小線幅Dmin=10μm(図11C参照)としたとき、周期長さL0だけ感光材料101が搬送されるのに必要な時間は、L0/V=6.36msecとなる。この時間に1回のレーザ走査を行うように設計すると、露光周期T=6.36msecとなり、18面ポリゴンミラー152の回転数は、ω=524rpmとなる。このときのビーム走査速度Vbは、ポリゴンミラー152からフォトマスク120までの距離Lsが2250mmであるので、Vb=Ls・ω=123m/sec、レーザ光147の射影形状の幅方向の大きさは1.2mmなので、レーザ光147がこの走査速度で露光している露光時間はΔT=1.2/vb=9.8μsec、この間で感光材料101が送り方向に動く搬送量Lmは、V・ΔT=0.65μmとなる。
上記搬送量Lmは、露光時にフォトマスク120に対して感光材料101が搬送方向Fにずれる量となる。そのため、搬送量Lmがマスクパターン128の最小線幅Dminよりも大きくなると、周期パターン128aの線幅が太くなり露光 品質が低下する。露光品質を確保するには、V・ΔT<Dminにしなければならない。なお、本実施の形態では、V・ΔT=0.65μm<Dmin=10μmを満たすため、露光品質の低下は少ない。
また、本実施の形態では、レーザ走査によるレーザ光147の射影形状の大きさを長軸Lc=3.6mm×短軸Wc1.2mmとし、フォトマスク120の裏面には、レーザ光147の長軸Lcにほぼ等しい幅Wsを有するスリット166が設けられた遮光マスク168を配置し、それ以上の光がフォトマスク120に当たらないようにしている。そのため、レーザ光147の1走査による露光領域は、搬送方向3.6mm×幅方向750mmとなり、3.6/0.424=8.5個分の周期パターン128aを照射し、且つ、多重露光 が行われることになる。
これにより、フォトマスク120上に射影される露光光源の光の長さLc=3.6mm、Lc=3.6>L0=0.424を満たし、Lb/L0の商mはm=8となる。従って、ワーク搬送速度Vと露光周期Tとの間の関係が、(n−1)×(L0/V)=T(nは自然数)、且つ、2=<n<=m=8を満たすようにすると、n=2〜8の任意の数字を選択でき、最も多重露光回数を多くできるのは、n=2の場合である。本実施の形態では、上述のように、周期パターン128aの1周期分の長さだけ感光材料101が搬送されるのに必要な時間L0/V=6.36msecとし、この時間に1回のレーザ走査を行うため、n=2、T=6.36msecになるようにTとVとの関係を決めてある。
図16A及び図16Bに、レーザ走査による、感光材料101への露光状態を模式的に表した図を示す。なお、図16Aのフォトマスクのマスクパターンの形状及び図16Bのメッシュパターン22aは、実際には、図1、図11A及び図11Cに示すように、円弧26を有するパターンであるが、図示が複雑になるため、便宜的に直線で示してある。
図16Aのa〜eに示すように、レーザ光147の1走査により、フォトマスク120越しに8.5列分の周期パターン128aが順次左から右へ全幅を露光される。すなわち、図16Bのaに示すように、感光材料101には、ワーク搬送方向Fに8.5列分の周期パターン128aに対応するメッシュパターン22aが露光される。その間に、感光材料101はワーク搬送方向Fに周期長さL0分搬送されているので、感光材料101上のすでに周期パターン128aに対応したパターンが露光された部分の上から、この部分がフォトマスク120を通過するときに、同じパターンがフォトマスク120越しに重ね露光される。このときのワーク搬送速度Vと露光周期Tとが同期されていれば、潜像に重ねて露光がなされるため、周期パターン128aに対応したパターンに乱れは生じない。これを順次繰り返していくことにより、図16Bのa〜gに示すように、1つの周期パターン128aに対して必ず8.5回分の多重露光がなされることになる。なお、露光装置100の稼働開始時と稼働終了時には、段階的に露光回数が不足するので、この部分はNGとして抜き取られる。
上記の必要露光量について計算すると、4m/分の速度で感光材料101に対して750mm幅を露光するので単位時間あたりの露光面積は66.7mm/sec(4m/min)×750mm=500cm2となり、感材感度が例えば10μj/cm2の場合、10μj/cm2×500cm2=5mWの露光パワーが必要となる。さらに、マスクパターン128の開口率を9.75%、走査効率を50%、光学系の効率を50%と仮定すると、露光光源利用効率η=0.5×0.5×0.0975=2.4%となる。前述した5mWをこの効率で1回の露光にて得るには、光源パワーは5/2.4%=208mW必要となる。
本実施の形態による多重露光においては、多重露光回数分の積分値で決まる露光量を1回露光に比べて余計に照射できるので、その分光源パワーは小さくて済む。感材感度(2〜10μj/cm2程度)選択、及び光源パワー(50mW〜200mW)選択により、また、光源を複数個組み合わせ露光することでさらにハイパワー化できるので、フレキシブルな設計が可能である。
多重露光することのメリットは、上述した計算のように、露光回数を稼げるので光源の光量不足を補うことができる点があげられる。さらに、多重露光によって、光源の輝度分布の不均一性を平均化する効果があり、送り方向の輝度ばらつきによる露光量の不均一化を抑制することが可能である。また、横方向の走査も同様に走査方向の光源の輝度分布の不均一性を平均化する効果があり、走査によって走査方向の輝度ばらつきによる露光量の不均一化を抑制することが可能である。従って、多重露光と横走査との組み合わせによって、光源輝度分布がいかなる場合でも、設計上は積分効果でいつでも均一な露光量になる。これは、光源の輝度ばらつきを気にする必要がなくなるという点でコストダウンに大きくつながる。
本実施の形態の露光方法において、露光線幅のばらつきに大きく寄与するのは、上記の露光周期Tとワーク搬送速度Vとの関係であり、これらの同期がずれてしまうと同期ずれの分だけ露光がずれていくことになる。ずれが影響するのは、レーザ光147の長軸Lcであり、8.5回の周期パターン分が、ずれの累積として効いてくることになる。
例えば8.5回の多重露光で1%の速度ムラがあると、最大で37μmものずれを引き起こしてしまうことが分かった。従って、速度ムラによる同期ズレは極力小さくなるように設備側の速度同期、速度ムラの抑制設計を行い、0.2%以下にすることが好ましい。また、レーザ光147の射影形状を小さく設計すれば、その分は速度ムラに対する影響を小さくできるが、その分だけ多重露光回数は減るので、露光パワーが必要となってくる。
一方、レーザ光147の振れの影響は、フォトマスク120を介して露光しているため、露光量の変動になるが、パターン形状には影響せず、いつもマスクパターン128を露光していることになる。しかも多重露光のため、このレーザ光147の振れによる露光量変動のトータルとしては平均化されて、線幅に影響が出にくい設計となっている。従って、ポリゴンミラー152の面ブレや、各面156の角度精度がやや甘くても、露光形状に影響が小さく、安定した品質を保てる。
なお、露光ローラ116の偏芯や、露光ローラ116そのものの加工精度、軸のガタ等によって、プロキシミティギャップLgは露光ローラ116の回転周期で変化する。本実施の形態では、プロキシミティギャップLgのブレを20μm程度に抑えてあるが、ローラ加工、組み付けを精密に行えば数ミクロンオーダーで抑えることは可能である。なお、露光ローラ116上で露光することのメリットは、感光材料101のばたつきを抑えることができる点である。例えば、ローラ間に掛けられた感光材料101のフラット面でのばたつきは、一桁上の100μmオーダーの振れがあり、それに比べるとずっと小さく抑えることが可能である。これらがプロキシミティギャップLgのばらつきとなり、線幅に影響する因子となる。なお、実験では、数10μmの範囲のブレでは、露光品質に大きな影響はでない。上記のようにプロキシミティギャップLgを小さくしすぎると、機構的なばらつきから感光材料101とフォトマスク120が接触してしまい、フォトマスク120や感光材料101に傷が付くおそれがでてくるため、いくらかのマージンを含めてプロキシミティギャップLg=50μmに設定した。
次に、上述した第1露光装置100Aによる露光工程の概要について、図9の構成図及び図17のフローチャートを参照しながら説明する。
先ず、ステップS1において、感光材料101をワーク供給部102にセットする。感光材料101は、未露光の銀塩感光層34(又はフォトレジスト膜44)が塗布された厚みt1=100μm、幅W0=650〜750mmの長尺フイルムからなり、100〜1000mの感光材料101がリールに巻かれてワーク供給部102にセットされる。一方、ワーク巻取り部108には巻取り用のリール114がセットされ、感光材料101の先端が係止される。
この状態で、ステップS2において、照明部30は、レーザ出力装置146をオフ状態にしたまま、ポリゴンミラー152を回転する。
その後、ステップS3において、照明部122は、ポリゴンミラー152の回転数が設定された回転数に達したかを判別する。
ポリゴンミラー152の回転数が設定された回転数に達した段階で、次のステップS4に進み、感光材料101の搬送を開始する。
その後、ステップS5において、ワーク搬送速度Vが設定された速度に達したかを判別する。上述のように、ズレの無い多重露光を行うには、露光周期Tとワーク搬送速度Vとの間に一定の同期関係が必要である。また、露光周期Tとワーク搬送速度Vとを同期させるには、ポリゴンミラー152の回転数ωとワーク搬送速度Vとを同期させるのが最も簡単である。ワーク搬送速度Vと露光周期Tとの同期は、基準のクロックとして外部に例えば水晶発振器170(図9参照)を設け、制御部112は、このクロックを参照してすべての速度が所望の一定速度になるように制御する。これによって正確な同期を取ることができる。ポリゴンミラー152のスキャン開始信号は、ミラー156によってスキャンされるレーザ光147をフォトダイオード等の光検出器によって検出した信号を使うか、もしくはミラー156の制御信号で1面に1回出力されるパルス信号の立ち上がりを利用する。
ポリゴンミラー152の回転数ωとワーク搬送速度Vとが規定の条件(設定された速度)に達したら、次のステップS6に進み、照明部122のレーザ出力装置146は、レーザ光147を出力する。
なお、ポリゴンミラー152の回転数ωとワーク搬送速度Vとが同期してから露光を開始するのは、露光が適切に行われた部分とNG部分との識別を容易にするためである。ポリゴンミラー152の回転数ωとワーク搬送速度Vとが非同期の状態で露光を行ってもメッシュパターン22aの潜像は露光形成されるので、一見、良品のように見える場合も考えられ、目視による外観検査によりNG部を抜き取る場合、ヒューマンエラーが必ず発生し、NG混入のリスクを伴う。そのため、予め同期状態に達したかどうかを制御部112でモニタしておき、非同期状態ではレーザ出力装置146を動作させず、露光しなければ、必ずNGと認識することができる。従って、運転スタート/ストップの非同期帯では自動的にレーザ光147を出力しないようになっている。
そして、ステップS7において、フォトマスク120を介して感光材料にメッシュパターン22aの潜像を露光形成する。この露光は、上述したように複数回の多重露光によって行なわれる。
上述のステップS7での露光処理は、制御部112からエンド信号が出力されるまで繰り返される(ステップS8)。
露光済みの感光材料101は、ワーク巻取り部108に巻き取られる。ワーク供給部102の感光材料101が無くなると、ワーク供給部102から制御部112にエンド信号が入力され(ステップS8)、次のステップS9において、感光材料101の搬送が停止され、次いで、ステップS10において、接合部110にて感光材料101の端末がカットされ、ワーク供給部102にセットされる新しい感光材料101の先端とテープ接合される。
感光材料101の接合後、再びワーク搬送が開始されるが、接合部分が露光ローラ116を通過する際にマスク保持部130がフォトマスク120を退避位置に移動させるので、フォトマスク120と感光材料101の接合部分とが接触して損傷することはない。接合部分の通過後は、フォトマスク120は再現よく露光位置に復帰され、所定のプロキシミティギャップLgが設定される。なお、この接合部分の通過時にも、レーザ出力装置146をオフ状態にしておくことが好ましい。
ワーク搬送によって接合部分がワーク巻取り部108で巻き取られたら、一旦停止して、巻き取り終端部を固定し、カットして、巻き終わった端末を端末テープ止めする。巻き取られた製品を取り出し、新たにリール114を供給してチャックした後、カットした感光材料101の先端をリール114に係止する。露光工程が以上で一巡し、この繰り返しによって製品が生産される。
なお、上述の例は、1軸送り出し及び巻き取りを例に取って説明したが、送り出し、巻き取りをそれぞれ2軸にして、切り替え時間を稼ぐ構成としてもよいし、リザーバー等を構成して完全に無停止切換えを行うように構成すればロスは最小にできる。
露光工程で露光された感光材料101は、その後、現像工程に搬送され、現像されて金属銀部36による金属メッシュパターン22が形成される。次のメッキ工程では、金属銀部36をメッキの核として、電解メッキにより銅メッキを行い、金属銀部36と導電性金属40とによる金属メッシュパターン22が形成され、本実施の形態に係る導電性フイルム10が完成する。
次に、上述した第2製造方法及び第4製造方法での露光工程に適用した第2露光装置100Bについて説明する。
この第2露光装置100Bは、図18に示すように、上述した第1露光装置100Aとほぼ同様の構成を有するが、以下の点で異なる。
この第2露光装置100Bは、図18に示すように、感光材料101の銀塩感光層34(又はフォトレジスト膜44)に第1パターン33aの潜像を形成する第1露光部104Aと、銀塩感光層34(又はフォトレジスト膜44)に第2パターン33bの潜像を形成してメッシュパターン22aの潜像とする第2露光部104Bとを有する。
第1露光部104Aは、露光ローラ116の外周に配置される第1フォトマスク120Aと、この第1フォトマスク120Aに光を照射する露光光源である第1照明部122Aとから構成されている。
図19Aに示すように、第1フォトマスク120Aに形成された第1マスクパターン128Aは、上述したメッシュパターン22aの潜像のうち、第1パターン33aの潜像を形成するためのパターンであり、クロム蒸着によりマスク基板124上に形成されている。この第1マスクパターン128Aは、複数の円弧26がそれぞれ山谷の方向を逆にして連続形成された形状を有する。
図18に示すように、第2露光部104Bは、露光ローラ116の外周に配置される第2フォトマスク120Bと、この第2フォトマスク120Bに光を照射する露光光源である第2照明部122Bとから構成されている。
図19Bに示すように、第2フォトマスク120Bに形成された第2マスクパターン128Bは、上述したメッシュパターン22aの潜像のうち、第2パターン33bの潜像を形成するためのパターンであり、クロム蒸着によりマスク基板124上に形成されている。この第2マスクパターン128Bは、複数の円弧26がそれぞれ山谷の方向を逆にして連続形成された形状を有する。
次に、上述した第2露光装置100Bによる露光工程の概要について、図18の構成図及び図20のフローチャートを参照しながら説明する。
先ず、ステップS101において、感光材料101をワーク供給部102にセットする。この状態で、ステップS102において、第1照明部122A及び第2照明部122Bは、レーザ出力装置146をオフ状態にしたまま、ポリゴンミラー152を回転する。
その後、ステップS103において、第1照明部122A及び第2照明部122Bは、ポリゴンミラー152の回転数が設定された回転数に達したかを判別する。
ポリゴンミラー152の回転数が設定された回転数に達した段階で、次のステップS104に進み、感光材料101の搬送を開始する。
その後、ステップS105において、ワーク搬送速度Vが設定された速度に達したかを判別する。上述のように、ズレの無い多重露光を行うには、第1露光部104Aでの露光周期T1及び第2露光部104Bでの露光周期T2と、感光材料101のワーク搬送速度Vとの間に一定の同期関係が必要である。また、各露光周期T1及びT2とワーク搬送速度Vとを同期させるには、第1照明部122A及び第2照明部122Bでの各ポリゴンミラー152の回転数ω1及びω2とワーク搬送速度Vとを同期させることにより行われる。
ポリゴンミラー152の回転数ω1及びω2とワーク搬送速度Vとが規定の条件(設定された速度)に達したら、次のステップS106に進み、第1照明部122A及び第2照明部122Bの各レーザ出力装置146は、それぞれ第1レーザ光147A及び第2レーザ光147Bを出力する。
そして、ステップS107において、第1フォトマスク120Aを介して感光材料101に第1パターン33aの潜像を露光形成する。この露光は、上述したように複数回の多重露光によって行なわれる。
続いて、ステップS108において、第2フォトマスク120Bを介して感光材料101(第1パターン33aの潜像が形成された感光材料101)に第2パターン33bの潜像を露光形成する。この露光は、上述したように複数回の多重露光によって行なわれる。
上述のステップS107での第1露光処理及びステップS108での第2露光処理は、制御部112からエンド信号が出力されるまで繰り返される(ステップS109)。
露光済みの感光材料101は、ワーク巻取り部108に巻き取られる。ワーク供給部102の透明フイルム基材16が無くなると、ワーク供給部102から制御部112にエンド信号が入力され(ステップS109)、次のステップS110において、感光材料101の搬送が停止され、次いで、ステップS111において、接合部110にて感光材料101の端末がカットされ、ワーク供給部102にセットされる新しい感光材料101の先端とテープ接合される。
露光工程で露光された感光材料101は、その後、現像工程に搬送され、現像されて金属銀部36による金属メッシュパターン22が形成される。次のメッキ工程では、金属銀部36をメッキの核として、電解メッキにより銅メッキを行い、金属銀部36と導電性金属40とによる金属メッシュパターン22が形成され、本実施の形態に係る導電性フイルム10が完成する。
次に、本実施の形態に係る導電性フイルム10において、特に好ましい態様であるハロゲン化銀写真感光材料を用いる導電性金属薄膜の作製方法を中心にして述べる。
本実施の形態に係る導電性フイルム10は、上述したように、透明フイルム基材16上に感光性ハロゲン化銀塩を含有する乳剤層を有する感光材料101を露光し、現像処理を施すことによって露光部及び未露光部に、それぞれ金属銀部36及び光透過性部38を形成し、さらに金属銀部36に物理現像及び/又はめっき処理を施すことによって金属銀部36に導電性金属40を担持させることで製造することができる。
本実施の形態に係る導電性フイルム10の形成方法は、感光材料101と現像処理の形態によって、次の3通りの形態が含まれる。
(1) 物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀黒白感光材料を化学現像又は熱現像して金属銀部36を該感光材料上に形成させる態様。
(2) 物理現像核をハロゲン化銀乳剤層中に含む感光性ハロゲン化銀黒白感光材料を溶解物理現像して金属銀部36を該感光材料上に形成させる態様。
(3) 物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀黒白感光材料と、物理現像核を含む非感光性層を有する受像シートを重ね合わせて拡散転写現像して金属銀部36を非感光性受像シート上に形成させる態様。
上記(1)の態様は、一体型黒白現像タイプであり、感光材料上に電磁波シールドフイルムや光透過性導電膜等の透光性導電性膜が形成される。得られる現像銀は化学現像銀又は熱現像銀であり、高比表面のフィラメントである点で後続するめっき又は物理現像過程で活性が高い。
上記(2)の態様は、露光部では、物理現像核近縁のハロゲン化銀粒子が溶解されて現像核上に沈積することによって感光材料上に透光性電磁波シールド膜や光透過性導電性膜等の透光性導電性膜が形成される。これも一体型黒白現像タイプである。現像作用が、物理現像核上への析出であるので高活性であるが、現像銀は比表面は小さい球形である。
上記(3)の態様は、未露光部においてハロゲン化銀粒子が溶解されて拡散して受像シート上の現像核上に沈積することによって受像シート上に電磁波シールドフイルムや光透過性導電性膜等の透光性導電性膜が形成される。いわゆるセパレートタイプであって、受像シートを感光材料から剥離して用いる態様である。
いずれの態様もネガ型現像処理及び反転現像処理のいずれの現像を選択することもできる(拡散転写方式の場合は、感光材料としてオートポジ型感光材料を用いることによってネガ型現像処理が可能となる)。
ここでいう化学現像、熱現像、溶解物理現像、拡散転写現像は、当業界で通常用いられている用語どおりの意味であり、写真化学の一般教科書、例えば菊地真一著「写真化学」(共立出版社、1955年刊行)、C.E.K.Mees編「The Theory of Photographic Processes, 4th ed.」(Mcmillan社、1977年刊行)に解説されている。
(感光材料101)
[透明フイルム基材16]
本実施の形態の製造方法に用いられる透明フイルム基材16としては、プラスチックフイルム等を用いることができる。
本実施の形態においては、透光性、耐熱性、取り扱い易さ及び価格の点から、上記プラスチックフイルムはポリエチレンテレフタレートフイルム又はトリアセチルセルロース(TAC)であることが好ましい。
窓ガラス用の透明発熱体では透光性が要求されるため、透明フイルム基材16の透光性は高いことが望ましい。この場合におけるプラスチックフイルムの全可視光透過率は70〜100%が好ましく、さらに好ましくは85〜100%であり、特に好ましくは90〜100%である。また、本発明では、前記プラスチックフイルムとして本発明の目的を妨げない程度に着色したものを用いることもできる。
[保護層]
用いられる感光材料は、後述する乳剤層上に保護層を設けていてもよい。本実施の形態において「保護層」とは、ゼラチンや高分子ポリマーといったバインダからなる層を意味し、擦り傷防止や力学特性を改良する効果を発現するために感光性を有する乳剤層に形成される。
[乳剤層]
本実施の形態の製造方法に用いられる感光材料101は、透明フイルム基材16上に、光センサとして銀塩を含む乳剤層(銀塩含有層)を有することが好ましい。本実施の形態における乳剤層には、銀塩のほか、必要に応じて、染料、バインダ、溶媒等を含有することができる。
本実施の形態で用いられる銀塩としては、ハロゲン化銀等の無機銀塩が好ましく、特に銀塩がハロゲン化銀写真感光材料用ハロゲン化銀粒子の形で用いられるのが好ましい。ハロゲン化銀は、光センサとしての特性に優れている。
乳剤層には、銀塩粒子を均一に分散させ、且つ、乳剤層と支持体との密着を補助する目的でバインダを用いることができる。本発明において、上記バインダとしては、非水溶性ポリマー及び水溶性ポリマーのいずれもバインダとして用いることができるが、水溶性ポリマーを用いることが好ましい。
上記バインダとしては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリサッカライド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース等が挙げられる。これらは、官能基のイオン性によって中性、陰イオン性、陽イオン性の性質を有する。
乳剤層中に含有されるバインダの含有量は、特に限定されず、分散性と密着性を発揮し得る範囲で適宜決定することができる。
上記乳剤層の形成に用いられる溶媒は、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、酢酸エチル等のエステル類、エーテル類等)、イオン性液体、及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
本発明の乳剤層に用いられる溶媒の含有量は、前記乳剤層に含まれる銀塩、バインダ等の合計の質量に対して30〜90質量%の範囲であり、50〜80質量%の範囲であることが好ましい。
次に、導電性フイルム作製の各工程について説明する。
[露光]
上述した露光装置100にて露光を行うことが好ましい。なお、露光装置100については、詳述したので、ここではその説明を省略する。
[現像処理]
本実施の形態では、乳剤層を露光した後、さらに現像処理が行われる。現像処理は、銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる通常の現像処理の技術を用いることができる。
本発明における現像処理は、未露光部分の銀塩を除去して安定化させる目的で行われる定着処理を含むことができる。本発明における定着処理は、銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる定着処理の技術を用いることができる。
現像、定着処理を施した感光材料は、水洗処理や安定化処理を施されるのが好ましい。
現像処理後の露光部に含まれる金属銀の質量は、露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上の含有率であることが好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。露光部に含まれる銀の質量が露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上であれば、高い導電性を得ることができるため好ましい。
[物理現像及びめっき処理]
本実施の形態では、前記露光及び現像処理により形成された金属銀部の導電性を高める目的で、前記金属銀部に導電性金属粒子を担持させるための物理現像及び/又はめっき処理を行ってもよい。本発明では物理現像又はめっき処理のいずれか一方のみで導電性金属粒子を金属性銀部に担持させることが可能であるが、さらに物理現像とめっき処理とを組み合わせて導電性金属粒子を金属銀部に担持させることもできる。なお、金属銀部に物理現像及び/又はめっき処理を施したものを「導電性金属部」と称する。
[導電性金属部]
本実施の形態の導電性金属部の線幅は、5μm以上200μm(0.2mm)以下から選択可能であるが、透明発熱体の材料としての用途である場合、5μm以上50μm以下が好ましい。さらに好ましくは5μm以上30μm以下、最も好ましくは10μm以上25μm以下である。線間隔は50μm以上500μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは200μm以上400μm以下、最も好ましくは250μm以上350μm以下である。また、導電性金属部は、アース接続等の目的においては、線幅は20μmより広い部分を有していてもよい。
本実施の形態における導電性金属部は、可視光透過率の点から開口率は85%以上であることが好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることが最も好ましい。開口率とは、メッシュパターン22をなす金属部を除いた透光性部分が全体に占める割合であり、例えば、線幅15μm、ピッチ300μmの正方形の格子状メッシュの開口率は、90%である。
[光透過性部]
本実施の形態における「光透過性部」とは、導電性フイルム10のうち導電性金属部以外の透光性を有する部分を意味する。光透過性部における透過率は、前述のとおり、透明フイルム基材16の光吸収及び反射の寄与を除いた380〜780nmの波長領域における透過率の最小値で示される透過率が90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上であり、さらにより好ましくは98%以上であり、最も好ましくは99%以上である。
本実施の形態におけるメッシュパターン22は、3m以上連続していることが導電性フイルム10の生産性を高く維持するのに好都合である。メッシュパターン22の連続数が多いほどその効果は大きく、従って、透明発熱体を生産する場合のロスが低減できる優れた態様であるといえる。交差部24間の導電部12が少なくとも1つの湾曲を有する波線形状に形成されたメッシュパターン22の長尺ロールへの焼き付け露光の方法は、上述したようにパターンマスクを介して一様照射露光を行う方法と搬送移動される長尺ロールへレーザービームを照射する走査露光のいずれで行うこともできる。
連続して焼き付けられるメッシュパターン22の升目(メッシュ形状M)が多いと、ロール状にした場合にロール径が大きくなる、ロールの重量が重くなる、ロールの中心部の圧力が強くなり接着や変形等の問題を生じ易くなる等の理由で2000m以下であることが好ましい。好ましくは3m以上、より好ましくは100m以上1000m以下、さらに好ましくは200m以上800m以下、最も好ましくは300m以上500m以下である。
透明フイルム基材16の厚みは、例えば、0.01mm〜2.0mmから選択可能であるが、上述したように、ロールに巻き付けた際の重量や接着、変形等を考慮した場合、透明フイルム基材16の厚みは200μm以下が好ましく、さらに好ましくは20μm以上180μm以下、最も好ましくは50μm以上120μm以下である。
本実施の形態において、図1に示す導電性フイルム10の場合、例えば第1金属細線12aの交差部24を結ぶ仮想線に注目したとき、隣り合う仮想線が平行又は平行±2°以内であることが好ましい。
該光ビームの走査方法としては、搬送方向に対して実質的に垂直な方向に配列したライン状の光源又は回転ポリゴンミラーによって露光する方法が好ましい。この場合、光ビームは2値以上の強度変調を行う必要があり、直線はドットの連続としてパターニングされる。ドットの連続であるため一ドットの細線の縁は階段状になるが、細線の太さはくびれた部分の一番狭い長さを意味する。
本実施の形態においてメッシュパターン22は搬送方向に対して30°から60°傾かせることが好ましい。より好ましくは40°から50°であり、最も好ましくは43°から47°である。これはメッシュパターンが枠に対して45°程度の傾きとなるマスクの作成が一般的に難しく、ムラが出やすいあるいは価格が高い等の問題を生じやすいのに対して、本方式はむしろ45°付近にてムラが出にくいため、本実施の形態の効果がマスク密着露光方式のフォトリソグラフィやスクリーン印刷によるパターニングに対してより顕著な効果がある。
[導電性フイルム]
本実施の形態に係る導電性フイルム10における透明フイルム基材16の厚さは、上述したように、0.01mm〜2.0mmから選択可能であるが、5〜350μmであることが好ましく、30〜150μmであることがさらに好ましい。5〜350μmの範囲であれば所望の可視光の透過率が得られ、且つ、取り扱いも容易である。
物理現像及び/又はめっき処理前の支持体上に設けられる金属銀部36の厚さは、透明フイルム基材16上に塗布される銀塩含有層用塗料の塗布厚みに応じて適宜決定することができる。金属銀部36の厚さは、0.001mm〜0.2mmから選択可能であるが、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、0.01〜9μmであることがさらに好ましく、0.05〜5μmであることが最も好ましい。また、金属銀部36はパターン状であることが好ましい。金属銀部36は1層でもよく、2層以上の重層構成であってもよい。金属銀部36がパターン状であり、且つ、2層以上の重層構成である場合、異なる波長に感光できるように、異なる感色性を付与することができる。これにより、露光波長を変えて露光すると、各層において異なるパターンを形成することができる。
導電性金属部の厚さは、透明発熱体の用途としては、薄いほど窓ガラスの視野角が広がるため好ましく、発熱効率の点で薄膜化が要求される。このような観点から、導電性金属部に担持された導電性金属40からなる層の厚さは、9μm未満であることが好ましく、0.1μm以上5μm未満であることがより好ましく、0.1μm以上3μm未満であることがさらに好ましい。
本実施の形態では、上述した銀塩含有層の塗布厚みをコントロールすることにより所望の厚さの金属銀部36を形成し、さらに物理現像及び/又はめっき処理により導電性金属粒子からなる層の厚みを自在にコントロールできるため、5μm未満、好ましくは3μm未満の厚みを有する導電性フイルム10であっても容易に形成することができる。
なお、従来のエッチングを用いた方法では、金属薄膜の大部分をエッチングで除去、廃棄する必要があったが、本実施の形態では必要な量だけの導電性金属を含むパターンを透明フイルム基材16上に設けることができるため、必要最低限の金属量だけを用いればよく、製造コストの削減及び金属廃棄物の量の削減という両面から利点がある。
<接着剤層>
本実施の形態に係る導電性フイルム10は、窓ガラス等に接着剤層を介して貼着するようにしてもよい。
[変形例]
次に、本実施の形態に係る製造方法にて製造される導電性フイルム10の各種変形例(第1変形例〜第4変形例)について図21〜図26を参照しながら説明する。
先ず、第1変形例に係る導電性フイルム(以下、第1導電性フイルム10aと記す)は、図21に示すように、上述した導電性フイルム10とほぼ同様の構成を有するが、以下の点で異なる。
すなわち、この第1導電性フイルム10aは、交差部24間に1つの円弧26が形成された形状を有する。円弧26はそれぞれ中心角がほぼ90°とされている。また、導電部12の交差角度はほぼ0°とされている。「ほぼ90°」、「ほぼ0°」としたのは、製造ばらつきを考慮したものであって、理想的には、中心角は90°及び交差角度は0°であることが望ましい。
また、導電部12の波線形状は、一定の周期を有する。図21の例では、交差部24間を0.5周期とした例を示している。換言すれば、交差部24の導電部12に沿った配列ピッチは波線形状の0.5周期に相当することになる。ここで、1周期は、100μm〜4000μmが好ましい。
平行に隣接する第1金属細線12aは、各波線形状の山と谷がそれぞれ逆に対向するように配置形成され、同様に、平行に隣接する第2金属細線12bも、各波線形状の山と谷がそれぞれ逆に対向するように配置形成されている。従って、この第1導電性フイルム10aの金属メッシュパターン22は、図22に示すように、同一寸法を有する多数の円がマトリクス状に配列された形状を有する。
この第1導電性フイルム10aにおいても、図22に示すように、第1透明発熱体18aとして使用する場合は、第1導電性フイルム10aの対向する端部(例えば、図22の左右両端)に第1電極20a及び第2電極20bを形成し、第1電極20aから第2電極20bに電流を流す。その結果、第1透明発熱体18aが発熱することとなる。
導電部12の波線形状は、一定の振幅hを有する。振幅hは、20μm〜1000が好ましい。
この第1導電性フイルム10aでは、導電性フイルム10と異なり、開口面積が小さい第1開口部14aと、開口面積が大きい第2開口部14bが存在している。しかし、第1開口部14aと第2開口部14bの配列に規則性があり、x方向に沿って第1開口部14aと第2開口部14bが互い違いに配列され、y方向に沿って第1開口部14aと第2開口部14bが互い違いに配列されていることから、局部的にぎらつき等が目立つということがなくなり、全面的に回折光の干渉によるぎらつき等を抑制することができる。
このように、第1導電性フイルム10aにおいても、メッシュ形状による回折光の干渉によるぎらつき等を抑制することができることから、例えば窓ガラス(建物、車両用の窓ガラス)や車両用灯具の前面カバーに取り付けられる第1透明発熱体18aとして好適となる。
そして、例えば第1露光装置100Aを用いて露光を行って第1導電性フイルム10aを製造する場合は、フォトマスク120として、図21に示す金属メッシュパターン22と同形状、同寸法のマスクパターンが形成されたフォトマスク120を使用すればよい。
また、第2露光装置100Bを用いて露光を行う場合は、第1フォトマスク120Aとして、図21の第1金属細線12aのパターンに従って、平行に隣接する第1マスクパターン128Aの各円弧26の山と谷がそれぞれ逆に対向するように形成されたフォトマスクを使用し、第2フォトマスク120Bとして、図21の第2金属細線12bのパターンに従って、平行に隣接する第2マスクパターン128Bの各円弧26の山と谷がそれぞれ逆に対向するように形成されたフォトマスクを使用すればよい。
次に、第2変形例に係る導電性フイルム(以下、第2導電性フイルム10bと記す)を図23を参照しながら説明する。
この第2導電性フイルム10bは、図23に示すように、上述した実施の形態に係る導電性フイルム10とほぼ同様の構成を有するが、以下の点で異なる。
すなわち、複数の第1金属細線12aのうち、1つ置きの第1金属細線12a1(一方の第1金属細線12a1)は、湾曲が円弧状であって、交差部24間に2つの円弧26がそれぞれ山谷の方向を逆にして連続形成された形状を有する。複数の第1金属細線12aのうち、第1金属細線12a1以外の第1金属細線12a2(他方の第1金属細線12a2)は、湾曲が円弧状であって、交差部24間に4つの円弧26がそれぞれ山谷の方向を逆にして連続形成された形状を有する。
ここで、円弧の配列周期、すなわち、2つの円弧26がそれぞれ山谷の方向を逆にして連続配列された長さを1周期としたとき、一方の第1金属細線12a1の交差部24間の円弧の配列周期は1周期、他方の第1金属細線12a2の交差部24間の円弧の配列周期は2周期となっている。
つまり、第2導電性フイルム10bは、平行に隣り合う第1金属細線12a(一方の第1金属細線12a1及び他方の第1金属細線12a2)の各円弧の配列周期がそれぞれ異なる。
これは第2金属細線12bにおいても同様であり、一方の第2金属細線12b1における交差部24間の円弧の配列周期は1周期であり、他方の第2金属細線12b2における交差部24間の円弧の配列周期は2周期となっている。
もちろん、一方の第1金属細線12a1における交差部24間の円弧の配列周期をi周期、他方の第1金属細線12a2における交差部24間の円弧の配列周期をj周期とし、一方の第2金属細線12b1における交差部24間の円弧の配列周期をp周期、他方の第2金属細線12b2における交差部24間の円弧の配列周期をq周期としたとき、以下の関係を有するようにしてもよい。
(1) i≠j、i=p、j=q
(2) i≠j、i≠p、j=q、p≠q
(3) i≠j、i=p、j≠q、p≠q
(4) i≠j、i≠p、j≠q、p≠q
この第2導電性フイルム10bにおいても、導電部12は、ほとんど直線部分を有さないことから、回折光の干渉によるぎらつき等をさらに低減することができる。
また、第2導電性フイルム10bは、1つのメッシュ形状Mの外周線上の円弧26の数が4k(k=1,2,3・・・)の関係を有する。そのため、全体の表面抵抗を低く保持することができ、透明発熱体に使用した場合の発熱効率や、太陽電池に使用した場合の発電効率をより高めることができる。
そして、例えば第1露光装置100Aを用いて露光を行って第2導電性フイルム10bを製造する場合は、フォトマスク120として、図23に示す金属メッシュパターン22と同形状、同寸法のマスクパターンが形成されたフォトマスク120を使用すればよい。
また、第2露光装置100Bを用いて露光を行う場合は、第1フォトマスク120Aとして、次のようなマスクパターンを有するフォトマスクを使用する。すなわち、第1フォトマスク120Aは、図23の一方の第1金属細線12a1のパターンに従った一方の第1マスクパターン128Aと、図23の他方の第1金属細線12a2のパターンに従った他方の第1マスクパターン128Aとを有し、一方の第1マスクパターン128Aは、所定間隔ごとに2つの円弧26がそれぞれ山谷の方向を逆にして連続形成され、他方の第1マスクパターン128Bは、所定間隔ごとに4つの円弧26がそれぞれ山谷の方向を逆にして連続形成された形状を有する。
これは、第2フォトマスクについても同様であり、図23の一方の第2金属細線12b1のパターンに従った一方の第2マスクパターン128Bと、図23の他方の第2金属細線12b2のパターンに従った他方の第2マスクパターン128Bとを有する。
これにより、平行に隣り合う第1金属細線12a(一方の第1金属細線12a1及び他方の第1金属細線12a2)の各波線形状の周期がそれぞれ異なり、平行に隣り合う第1金属細線12a(一方の第1金属細線12a1及び他方の第1金属細線12a2)の各波線形状の周期がそれぞれ異なる金属メッシュパターンを有する第2導電性フイルム10bを製造することができる。
次に、第3の変形例に係る導電性フイルム(以下、第3導電性フイルム10cと記す)について図24を参照しながら説明する。
この第3導電性フイルム10cは、図24に示すように、上述した第2導電性フイルム10b(図23参照)とほぼ同様の構成を有するが、以下の点で異なる。
すなわち、この第3導電性フイルム10cは、平行に隣り合う第1金属細線12a1及び12a2のうち、一方の第1金属細線12a1は各交差部24間が少なくとも1つの湾曲(例えば円弧26)を有する波線形状に形成され、他方の前記第1金属細線12a2は直線状に形成されている。
同様に、平行に隣り合う第2金属細線12b1及び12b2のうち、一方の第2金属細線12b1は各交差部24間が少なくとも1つの湾曲(例えば円弧26)を有する波線形状に形成され、他方の第2金属細線12b2は直線状に形成されている。
なお、一方の第1金属細線12a1及び一方の第2金属細線12b1の各波線形状の周期は1周期となっている。
この第3導電性フイルム10cにおいても、図示しないが、透明発熱体として使用する場合は、第3導電性フイルム10cの対向する端部に第1電極及び第2電極を形成し、第1電極から第2電極に電流を流す。その結果、透明発熱体が発熱することとなる。
このように、第3導電性フイルム10cにおいては、導電部12のうち、直線部分を有さない部分においては、導電部12の交差部24上に回折ポイントが直線状に並ぶということがなくなることから、メッシュ形状による回折光の干渉によるぎらつき等を抑制することができ、例えば窓ガラス(建物、車両用の窓ガラス)や車両用灯具の前面カバーに取り付けられる透明発熱体18として好適となる。
そして、例えば第1露光装置100Aを用いて露光を行って第3導電性フイルム10cを製造する場合は、フォトマスク120として、図24に示す金属メッシュパターン22と同形状、同寸法のマスクパターンが形成されたフォトマスクを使用すればよい。
また、第2露光装置100Bを用いて露光を行う場合は、第1フォトマスク120A及び第2フォトマスク120Bとして、次のようなマスクパターンを有するフォトマスクを使用する。すなわち、第1フォトマスク120Aは、図24の一方の第1金属細線12a1のパターンに従った一方の第1マスクパターン128Aと、図24の他方の第1金属細線12a2のパターンに従った他方の第1マスクパターン128Aとを有し、一方の第1マスクパターン128Aは、所定間隔ごとに2つの円弧26がそれぞれ山谷の方向を逆にして連続形成され、他方の第1マスクパターン128Aは直線形状を有する。
これは、第2フォトマスク120Bについても同様であり、図24の一方の第2金属細線12b1のパターンに従った一方の第2マスクパターン128Bと、図24の他方の第2金属細線12b2のパターンに従った他方の第2マスクパターン128Bとを有する。
これにより、平行に隣り合う第1金属細線12a1及び12a2のうち、一方の第1金属細線12a1が各交差部24間が少なくとも1つの湾曲(例えば円弧26)を有する波線形状に形成され、他方の前記第1金属細線12a2が直線状に形成され、平行に隣り合う第2金属細線12b1及び12b2のうち、一方の第2金属細線12b1が各交差部24間が少なくとも1つの湾曲(例えば円弧26)を有する波線形状に形成され、他方の前記第2金属細線12b2が直線状に形成された金属メッシュパターン22を有する第3導電性フイルム10cを製造することができる。
次に、第4の変形例に係る導電性フイルム(以下、第4導電性フイルム10dと記す)について図25及び図26を参照しながら説明する。
この第4導電性フイルム10dは、図25に示すように、上述した導電性フイルム10と同様に、一方向に第1ピッチL1で並ぶ複数の第1金属細線12aと、他方向に第2ピッチL2で並ぶ複数の第2金属細線12bとがそれぞれ交差して形成された金属メッシュパターン22を有する。
また、図26に模式的に示すように、上述した導電性フイルム10と同様に、第1線分の長さLaと第2線分の長さLbとが同じになっている。また、各メッシュ形状Mの外周線上であって、且つ、メッシュ形状Mの中心Cに対して点対称の位置にある任意の一対の接線が互いに平行となっている。
しかし、導電性フイルム10と異なり、例えば第2金属細線12bの延在方向に沿って隣接する任意の2つのメッシュ形状M3及びM4の各中心C3及びC4を結ぶ線分のうち、一方のメッシュ形状M3の中心C3から第1金属細線12aまでの第3線分の長さLcと、他方のメッシュ形状M4の中心C4から第1金属細線12aまでの第4線分の長さLdとが異なっている。図26の例では、長さLc>長さLdとなっている。なお、交差部24間を0.5周期とした例を示している。
この第4導電性フイルム10dにおいても、導電性フイルム10と同様に、異なった接線方向が多数組み合わされた形態となるため、光の屈折や回折が拡散され、これにより、ぎらつきが目立たなくなる。しかも、開口部14の各開口面積がほぼ一定にしてあることから、全面的に回折光の干渉によるぎらつき等を抑制することができ、局部的にぎらつき等が目立つということがなくなる。
しかも、1つのメッシュ形状Mの外周線上の円弧26の数が4k(k=1,2,3・・・)の関係を有するため、全体の表面抵抗を低く保持することができ、透明発熱体に使用した場合の発熱効率や、太陽電池に使用した場合の発電効率をより高めることができる。
そして、例えば第1露光装置100Aを用いて露光を行って第4導電性フイルム10dを製造する場合は、フォトマスク120として、図25に示す金属メッシュパターン22と同形状、同寸法のマスクパターンが形成されたフォトマスク120を使用すればよい。
また、第2露光装置100Bを用いて露光を行う場合は、第1フォトマスク120Aとして、図25の第1金属細線12aのパターンに従って、平行に隣接する第1マスクパターン128Aの各円弧26の山と谷がそれぞれ逆に対向するように形成されたフォトマスクを使用し、第2フォトマスク120Bとして、図25の第2金属細線12bのパターンに従って、平行に隣接する第2マスクパターン128Bの各円弧26の山と谷がそれぞれ逆に対向するように形成されたフォトマスクを使用すればよい。
なお、本発明に係る導電性フイルムの製造方法、導電性フイルム及び透明発熱体は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
また、本発明に係る導電性フイルムの製造方法、導電性フイルム及び透明発熱体は、以下の公報に開示された技術と適宜組合わせて使用するようにしてもよい。
特開2004−221564号公報、特開2004−221565号公報、特開2007−200922号公報、特開2006−352073号公報、国際公開第2006/001461号パンフレット、特開2007−129205号公報、特開2007−235115号公報、特開2007−207987号公報、特開2006−012935号公報、特開2006−010795号公報、特開2006−228469号公報、特開2006−332459号公報、特開2007−207987号公報、特開2007−226215号公報、国際公開第2006/088059号パンフレット、特開2006−261315号公報、特開2007−072171号公報、特開2007−102200号公報、特開2006−228473号公報、特開2006−269795号公報、特開2006−267635号公報、特開2006−267627号公報、国際公開第2006/098333号パンフレット、特開2006−324203号公報、特開2006−228478号公報、特開2006−228836号公報、特開2006−228480号公報、国際公開第2006/098336号パンフレット、国際公開第2006/098338号パンフレット、特開2007−009326号公報、特開2006−336057号公報、特開2006−339287号公報、特開2006−336090号公報、特開2006−336099号公報、特開2007−039738号公報、特開2007−039739号公報、特開2007−039740号公報、特開2007−002296号公報、特開2007−084886号公報、特開2007−092146号公報、特開2007−162118号公報、特開2007−200872号公報、特開2007−197809号公報、特開2007−270353号公報、特開2007−308761号公報、特開2006−286410号公報、特開2006−283133号公報、特開2006−283137号公報、特開2006−348351号公報、特開2007−270321号公報、特開2007−270322号公報、国際公開第2006/098335号パンフレット、特開2007−088218号公報、特開2007−201378号公報、特開2007−335729号公報、国際公開第2006/098334号パンフレット、特開2007−134439号公報、特開2007−149760号公報、特開2007−208133号公報、特開2007−178915号公報、特開2007−334325号公報、特開2007−310091号公報、特開2007−311646号公報、特開2007−013130号公報、特開2006−339526号公報、特開2007−116137号公報、特開2007−088219号公報、特開2007−207883号公報、特開2007−207893号公報、特開2007−207910号公報、特開2007−013130号公報、国際公開第2007/001008号パンフレット、特開2005−302508号公報、特開2005−197234号公報。