以下、図面に基づいて、本実施形態に係る距離計測システム100について説明する。本実施形態においては、車両に搭載された距離計測システム100を例に説明する。本実施形態の距離計測システム100は、車両周囲に存在する他車両、歩行者、道路設置物その他の物体までの距離を計測する。
図1に、本実施形態に係る距離計測システム100を含む車載装置1のブロック構成図を示す。本実施形態の車載装置1は、距離計測システム100と、障害物報知装置200と、運転支援システム300と、スピーカ400と、ディスプレイ500と、ブザー600と、車両コントローラ700とを含む。距離計測システム100と上記各装置(200〜700)とは、CAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続され、相互に情報の授受を行う。
図1に示すように、距離計測システム100は、制御装置10と、ライト20と、カメラシステム30とを有する。
まず、ライト20について説明する。図1に示すように、本実施形態のライト20は、第1ライト21と第2ライト22を有する。これら第1ライト21と第2ライト22は、任意の照射パタンに従う照射光を照射する。第1ライト21と第2ライト22は、微細な凹凸を有する反射鏡にバルブの光を反射・収束させて一定の照度パタンの光を照射させる。このリフレクタの鏡面の角度をコンピュータ解析等により設定し、任意の照射パタンの照射光を照射する。また、リフレクタの形状、リフレクタの反射面の曲率、リフレクタの反射面の反射率・吸収率を変化させることにより、任意の照射パタンに従う照射光を照射させてもよい。
図2に、第1ライト21と第2ライト22の車両への搭載例を示す。図2に示すように、第1ライト21は車両の右前方に設けられるとともに第2ライト22は車両の左前方に設けられ、それぞれが車両の前方を照射する。
次に、カメラシステム30について説明する。図1に示すように、本実施形態のカメラシステム30は、イメージセンサ31とメモリ32を含む。イメージセンサ31は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、CCD(Charge Coupled Device)その他の撮像素子である。メモリ32はイメージセンサ31の撮像した撮像データおよび撮像タイミングをメモリ32に記憶する。このメモリ32は、制御装置10の読み込みを受け付ける。図2に、カメラシステム30の車両への搭載例を示す。図2に示すように、カメラシステム30は、車両の進行方向の前方を撮像するように、イメージセンサ31の受光面を車両の進行方向に向けて設置する。
これらライト20とカメラシステム30は、次に説明する制御装置10の制御指令に従い動作する。
続いて、制御装置10について説明する。本実施形態の制御装置10は、物体までの距離の計測演算を実行する。本実施形態の制御装置10は、距離計測処理を実行するためのプログラムを格納したROM(Read Only Memory )12と、このROM12に格納されたプログラムを実行することで、距離計測システム100として機能する動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)11と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)13と、を備える。なお、動作回路としては、CPU(Central Processing Unit)11に代えて又はこれとともに、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。
次に、距離計測システム100の制御装置10が備える処理機能について説明する。制御装置10は、ライト20の照射を制御する照射制御機能と、カメラ30の撮像動作を制御する撮像制御機能と、輝度パタンを取得する輝度パタン取得機能と、指標値を算出する指標値算出機能と、各物体に対応する観測領域を識別する観測領域識別機能と、照射角度を算出する照射角算出機能と、観測領域に含まれる物体までの距離を算出する距離算出機能とを有する。そして、制御装置10は、各機能を実現するためのソフトウェアと、上述したハードウェアの協働により各機能を実行する。
以下、上述した距離計測システム100の制御装置10が実現する機能についてそれぞれ説明する。
まず、距離計測システム100の照射制御機能について説明する。
制御装置10は、車両に搭載された第1ライト21及び第2ライト22の点灯と消灯の制御を行う。本実施形態において、制御装置10は、左右2つの第1ライト21と第2ライト22に、次数の異なる照射角度の関数で表現される2種類の照度パタンの照射光を照射させる。
具体的に、制御装置10は、照射角度の関数で表現される一方の照度パタンの照射光を第1ライト21に照射させ、一方の照度パタンとは次数の異なる照射角度の関数で表現される他方の照度パタンの照射光を第2ライト22に照射させる。
図3は、第1ライト21から照射される照射光の照度パタンと、第2ライト22から照射される照射光の照度パタンを説明するための模式図である。特に限定されないが、制御装置10は、第1ライト21には照射角度の1次関数で表現される一方の第1照度パタンで照射光を照射させるとともに、第2ライト22には、照射角度の3次関数で表現される他方の第2照度パタンで照射光を照射させる。
図3に示すように、本実施形態の制御装置10は、車両の右側に取り付けられた第1ライト21から照射角度θを変数とした1次式の第1照度パタン(式1)で照射光を照射させ、車両の左側に取り付けられた第2ライト22から照射角度θを変数とした3次式の第2照度パタン(式2)で照射光を照射させる。
Irr1(θ)=α×θ …(1)
Irr2(θ)=a×θ3+b×θ2+C×θ ・・・(2)
ただし、式(1)(2)において、θは照射光の照射角度、αは照度(明るさ)に係る任意の定数、a,b,cは任意の定数である。
ちなみに、本実施形態における照度パタンは、基準となる照射軸に対する照射光の照射角度θに応じて、所定の規則に従い照度Irr(明るさ:irradiance)が変化するパタンである。第1ライト21及び第2ライト22は、所定の照度パタンの照射光を照射するように加工された反射鏡を備える。
図4(A)及び(B)は、ライト20側から照射領域を見た場合の照度パタンのモデルを示す図である。図4(A)のモデルは、照射角度θを変数とした1次式の第1照度パタン(Irr1(θ)=α×θ)で照射光を照射した場合の明度を示す。図4(A)に示すように、照射光の明るさは、照射軸の中心から照射領域の外延に向かうにつれて、つまり照射角度が変化するにつれて、係数α(任意の定数)に応じて照度が低下(又は上昇)する。一方、図4(B)のモデルは、照射角度θを変数とした3次式の第2照度パタン(Irr2(θ)=a×θ3+b×θ2+C×θ)で照射光を照射した場合の明度を示す。図4(B)に示すように、照射光の明るさは、照射軸の中心から照射領域の外延に向かうにつれて、つまり照射角度が変化するにつれて、明暗の変化が2度発生する態様で照度が変化する。この明度の変化は、係数a,b(任意の定数)及び定数cに応じて適宜定義することができる。
第1照度パタンと第2照度パタンの組み合わせはこれに限定されず、第1照度パタンを照射角度θの1次式の照度パタンとし、第2照度パタンを照射角度θの2次式の照度パタンとしてもよいし、第1照度パタンを照射角度θの2次式の照度パタンとし、第2照度パタンを照射角度θの3次式の照度パタンとしてもよい。
次に、距離計測システム100の撮像制御機能について説明する。
制御装置10は、車両に搭載されたカメラシステム30の撮像タイミングの制御を行う。本実施形態の制御装置10は、第1ライト21と第2ライト22から照射された各照度パタンの照射光が物体の表面に当たり反射した反射光を、カメラシステム30にそれぞれ撮像させて、2種類の撮像データを得る。
図5は、車両に搭載されたカメラシステム30により、第1ライト21と第2ライト22が車両前方に存在する物体A,B,Cに第1照度パタンの照射光及び第2照射パタンの照射光を照射する状態を説明するための図である。ここで物体Aと物体Bは反射率が異なる物体であり、物体A及びBと物体Cとは車両からの距離が異なる物体である。また、図6は、図5の状態を車両の進行方向に対して垂直方向から(横側から)見た状態を示す図である。なお、図5及び図6では、図示が複雑になることを避けるため、第2ライト22からの照射光を中心に示すが、第1ライト21からの照射光も、第2ライト22からの照射光と同様である。
図5及び図6に示すように、第1ライト21及び第2ライト22から照射された照射角度に応じて明るさが変化する照射光は、物体A,B,Cに当たると、その照射光の反射光が発生する。そして、その反射光はカメラシステム30により撮像される。
特に限定されないが、本実施形態の制御装置10は、第1照度パタンの照射光が照射された後の所定時間経過後に、カメラシステム30に車両前方(照射光の照射方向)を撮像させる。これにより、第1照度パタンの照射光の反射光を撮像することができる。また、制御装置10は、第2照度パタンの照射光が照射された後の所定時間経過後に、カメラシステム30に車両前方(照射光の照射方向)を撮像させる。これにより、第2照度パタンの照射光の反射光を撮像することができる。
また、本実施形態の制御装置10は、第1照度パタン及び/又は第2照度パタンの照射光を照射する直前にカメラシステム30に照射光の照射方向を撮像させ、照射光が照射されない状態の基準撮像データを取得することが好ましい。撮像される反射光には、照射光が物体に当たって生じた反射光に加えて、太陽光や街灯からの光などの照射光以外の光に由来する反射光が含まれている。このため、距離計測時の環境における反射光(照射光以外の光に由来する反射光)を撮像した基準撮像データを得ておき、照射光を照射する際に得られた撮像データからこの基準撮像データの輝度成分を差し引けば、照射光に由来する反射光のみの輝度情報を抽出することができる。なお、基準撮像データは、照射光の照射前のみならず、照射光の照射後所定時間経過後(照射光の反射光の影響がないタイミング)に取得(撮像)してもよい。
次に、距離計測システム100の輝度パタン取得機能について説明する。
本実施形態の制御装置10は、2種類の照射パタンの照射光の反射光を撮像した各撮像データから各画素について2種類の輝度パタンを取得する。つまり、第1照射パタンの照射光の反射光の撮像データから第1輝度パタンを取得し、第2照射パタンの照射光の反射光の撮像データから第2輝度パタンを取得する。
特に限定されないが、本実施形態の制御装置10は、照射光以外の光に由来する輝度成分を除去する観点から、カメラシステム30により取得された撮像データの輝度成分から、先述した基準撮像データに含まれる輝度成分を除去して、輝度パタンを取得する。
続いて、距離計測システム100の指標値算出機能について説明する。
制御装置10は、取得された2種類の輝度パタン(Img1(θi)とImg2(θi))に基づいて、各画素の指標値を算出する。
本実施形態の制御装置10は、第1照度パタンの照射光を照射した際に得られた第1輝度パタン(Img1(θi))で、第2照度パタンの照射光を照射した際に得られた第2輝度パタン(Img2(θi))を除して、指標値Qを求める。
ところで、撮像データから取得される2種類の輝度パタンのうち、一方の輝度パタンImg1(θi)は、理論上、第1照度パタンIrr1(θ)を用いて、次式(3−1)と表現することができる。
Img1(θi)=(r/d2)×Irr1(θ)…(3−1)
ただし、θiはカメラシステム30のイメージセンサ31から物体を見た撮像角度である。θiは、予め記憶されたイメージセンサ31の位置と、物体に対応する画素の位置とから求めることができる。また、rは物体の表面の反射率,dは距離計測装置から物体までの距離である。
さらに、Irr1(θ)に上述した式(1)を代入すると、一方の輝度パタンImg1(θi)は、次式(3−2)となる。
Img1(θi)=(r/d2)×α×θ…(3−2)
つまり、第1輝度パタンImg1(θi)は、次式(3)のように示すことができる。
また、撮像データから取得される2種類の輝度パタンのうち、他方の輝度パタンImg2(θi)は、理論上、第2照度パタンIrr2(θ)を用いて、次式(4−1)と表現することができる。
Img2(θi)=(r/d2)×Irr2(θ)…(4−1)
ただし、θiはカメラシステム30のイメージセンサ31から物体を見た撮像角度である。θiは、予め記憶されたイメージセンサ31の位置と、物体に対応する画素の位置とから求めることができる。また、rは物体の表面の反射率,dは距離計測装置から物体までの距離)である。
さらに、Irr2(θ)に上述した式(2)を代入すると、Img2(θi)は次式(4−2)となる。
Img2(θi)=(r/d2)(a×θ3+b×θ2+C×θ)…(4−2)
つまり、第2輝度パタンImg2(θi)は、次式(4)のように示すことができる。
すなわち、本実施形態における指標値Qを第1輝度パタンで第2輝度パタンを除した値と定義する場合は、指標値Qを下式(5)により表現することができる。
ただし、θiはカメラシステム30のイメージセンサ31から物体を見た撮像角度、αは照度(明るさ)に係る任意の定数、a,b,cは任意の定数である。
つまり、本実施形態においては、指標値Qを、照射角度θのみを変数とする関係式で表現することができる。
しかしながら、実際に、カメラシステム30の撮像データに基づいて得られる輝度パタンは、物体の距離、物体の表面の反射率に応じて異なる。
つまり、距離は同じでも反射率の異なる物体Aと物体B(反射率:物体A>物体B)では、反射率が高いほど輝度が高くなる。また、反射率は同じでも距離の異なる物体Aと物体B(距離:物体A<物体B)では、距離が近いほど輝度が高くなる。
この様子を、図7に示す。図7(A)は、第1照射パタンの照射光が図5及び図6に示す物体A〜Cに当たって発生した反射光の撮像データから取得した第1輝度パタンを示す図であり、図7(B)は、第2照射パタンの照射光が図5及び図6に示す物体A〜Cに当たって発生した反射光の撮像データから取得した第2輝度パタンを示す図である。そして、図7(C)は、第1輝度パタンと第2輝度パタンから算出された画素ごとの指標値Qを示す図である。
このように、輝度の値は距離の相違及び反射率の相違の影響を受けるので、同じ距離に存在する物体A及びBの輝度の値は異なり、距離が異なる物体B及びCの輝度の値は共通する場合がある。
本実施形態では、2つの照度パタンの照射光を照射する際に撮像された撮像データから各画素の輝度パタン(各画素の輝度値)を抽出し、一方の輝度パタンで他方の輝度パタンを除算するので、物体の反射率r及び距離による光の減衰1/d2が消去されるとともに、変数となる照度角度の次数が異なるので照射角度θが残る。
その結果、指標値Qを照射角度のみを変数とする関係式(Q=(a×θ2+b×θ+c)/α)で表現することができる。つまり、指標値Qにおいては、物体までの距離と物体の反射率の影響を除去することができる。
さらに、距離計測システム100の観測領域識別機能について説明する。本実施形態の制御装置10は、算出された各画素の指標値の連続性に基づいて、撮像データに含まれる観測領域をそれぞれ識別する。
制御装置10は、画像上の全画素について指標値(図7(C)参照)を算出し、隣接する画素の指標値を比べることにより、指標値の連続性を観測する。具体的には、隣接する指標値の差が所定値未満である場合は指標値の連続性があると判断し、隣接する指標値の差が所定値以上である場合は、指標値の連続性が無いと判断する。
ここで、図6を参照して説明すると、撮像角度1から撮像角度2にかけては第1ライト21及び第2ライト22からの照射光の照射角度が連続的に変化するので、式(5)に示される指標値は図7(C)に示すように連続的に変化する。
しかし、撮像角度2の近傍においては、物体Aから車両からの距離が異なる物体Cに撮像対象が変化し、第1ライト21及び第2ライト22からの照射光の照射角度が連続的に変化せず、照射角度2から照射角度3へ変化する。このため、図7(C)に示すように、式(5)に示される指標値は連続的に変化しない境界が生じる。
また、撮像角度2から撮像角度3においては,撮像角度1から撮像角度2と同様に指標値は連続的に変化する。
つまり、物体の境界においては、指標値が連続しないことが判る。
従って、本実施形態では、各画素の指標値Qの連続性を観測し、指標値Qの不連続点で領域を分割し、指標値Qが連続する領域を一の観測領域として識別する。図5〜7に示すように、本実施形態における指標値Qの不連続点は、車両(距離計測装置100)からの距離が異なる独立の物体の境界と判断することができる。言い換えると、指標値Qが連続性を保つ観測領域は、車両(距離計測装置100)からの距離が等しい物体に対応する境界と判断することができる。このように、指標値Qの連続性に基づいて、同一距離に存在する物体に対応する観測領域を識別することができる。加えて、指標値Qが連続性を保つ観測領域の境界を、その物体の外延と判断することにより、その物体の形状を判断することができる
次に、距離計測システム100の照射角算出機能について説明する。
本実施形態の制御装置10は、識別された各観測領域の指標値Q(実測値)に基づいて、観測領域を照射する照射光の照射角度θを算出する。制御装置10は、実測された観測領域の2つの輝度パタンから求めた指標値Qの値に基づいて、指標値Q=(a×θ2+b×θ+c)/αの解である照射角度θを求める。
また、特に限定されないが、本実施形態の制御装置10は、各照度パタンの照射光を所定位置に配置した物体に照射した際に得られた基準撮像データの各画素の基準輝度パタンから算出された基準指標値を予め準備する。
この基準指標値は、実験的に求められる。具体的には、車両(距離計測装置)の前方の所定の各位置に物体を配置して、第1ライト21及び第2ライト22から照射光を照射する際に、カメラシステム20により撮像して撮像データを得る。このとき、第1ライト21及び第2ライト22の照射角度(の中心(照射軸))を変化させるため、すべての照射角度ごとに撮像データを得ることができる。つまり、既知の照射角度で照射光を照射した際の撮像データ、輝度パタンと、既知の物体までの距離とに基づいて、照射角度ごとの基準指標値を求める。基準指標値算出するにあたり、既知の照射角度に応じて計算式(たとえば、計算式((a×θ+b)/α)、又は計算式((a×θ2+b×θ+c)/α)を用いて、理論値としての基準指標値を予め算出する。制御装置10は、予め準備された基準指標値を記憶する。
そして、制御装置10は、実際にカメラシステム20により撮像された撮像データの観測領域の第1輝度パタン(Img1(θi))で、同じ観測領域の第2輝度パタン(Img2(θi))を除して得た実測値である指標値Qが、予め準備された基準指標値から所定値以上外れていないか否かを判断する。制御装置10は、観測領域の指標値(実測値に基づく指標値)と、予め準備された理論値としての基準指標値)のパタンマッチングを行う。具体的には、識別された観測領域に含まれる画素の指標値(実測値)と、予め準備された基準指標値のうち観測領域に対応する領域に含まれる画素の基準指標値との差が所定値未満である場合は、その指標値に基づいて観測領域を照射する照射光の照射角度を算出する。つまり、識別された観測領域に含まれる画素の指標値(実測値)と、予め準備された基準指標値のうち観測領域に対応する領域に含まれる画素の基準指標値との差が所定値以上である場合は、何かしらの外乱が生じており、その指標値(実測値)の信頼性は低いと判断し、その値を距離計測処理には用いないようにする。このようにすることにより、距離計測の精度を向上させることができる。
最後に、距離計測システム100の距離算出機能について説明する。制御装置10は、算出された観測領域を照射する照射光の照射角度と、観測領域の撮像角度と、予め記憶された第1ライト21と第2ライト22とカメラシステム30のイメージセンサ31との位置関係に基づき、通常用いられる幾何学的な算出手法を用いて、観測領域に含まれる物体までの距離を算出する。
そして、制御装置10は、計測した物体までの距離を、所定の周期で障害物報知装置200及び/又は運転支援装置300へ出力する。
障害物報知装置200は、制御装置10から取得した物体までの距離が所定値未満となった場合は、障害物の接近を知らせる情報を出力する。具体的に、障害物報知装置200は、障害物の接近を知らせるテキスト音声をスピーカ400から出力し、障害物の接近を知らせるアイコンなどの画像情報をディスプレイ500に表示し、又は障害物の接近を知らせる警告音をブザー600から出力する。
また、運転支援装置300は、制御装置10から取得した物体までの距離が所定値未満となった場合は、車両コントローラ700を介して、物体への接近を回避するための制動を実行する。具体的に、運転支援装置300は、ブレーキを動作させる制動、車速を低下させる制動などを実行する。
続いて、図8及び図9のフローチャート図に基づいて、本実施形態の距離計測装置100の制御手順を説明する。図8は、撮像データに基づいて各画素の輝度パタンを求め、その情報を記憶するまでの制御手順を示すフローチャート図であり、図9は、輝度パタンから指標値を算出する処理から、距離の計測処理、障害物報知までの処理の制御手順を示すフローチャート図である。
以下、各図に示す各処理を説明する。
まず、図8のステップS100において、制御装置10は、第1ライト21に、照射角度に応じて1次式で照度を変化させた第1照度パタンの照射光を車両前方に向けて照射させる。
その後、ステップS101において、制御装置10は、カメラシステム30のイメージセンサ31に、ステップS100で照射した照射光が物体の表面に当たり反射した反射光を含む車両前方の画像を撮像させる。
続くステップS102において、カメラシステム30のメモリ32又は制御装置10のRAM13は、ステップS101でイメージセンサ31により撮像された画像情報、撮像のタイミングを記憶する。
そして、ステップS103において、制御装置10は、第1ライト21の照射を停止させる。
ステップS104において、制御装置10は、カメラシステム30のイメージセンサ31に、ステップS103で第1ライト21を非照射にした状態の車両前方を撮像させ、基準撮像データ画像を取得させる。基準撮像データは、ステップS100において照射する照射光以外の光に由来する反射光と扱うことができる。この基準撮像データは、ステップS101において取得した撮像データと同様に、メモリ32又はRAM13が記憶する。
続く、ステップS105において、制御装置10は、S102で保存した撮像データとS104で撮像した基準撮像データの輝度成分の差分をとる。これにより、ステップS100において照射する照射光のみに由来する反射光の撮像データを取得することができる。
そして、ステップS106において、制御装置10は、ステップS105において算出された輝度成分の差分に対応する撮像データをRAM13に保存する。
次に、ステップS110において、制御装置10は、第2ライト22に、照射角度に応じて3次式で照度を変化させた第2照度パタンの照射光を車両前方に向けて照射させる。
続くステップS111において、制御装置10は、カメラシステム30のイメージセンサ31に、ステップS110で照射した照射光が物体の表面に当たり反射した反射光を含む車両前方の画像を撮像させる。
続くステップS112において、カメラシステム30のメモリ32又は制御装置10のRAM13は、ステップS111でイメージセンサ31により撮像された画像情報、撮像のタイミングを記憶する。
そして、ステップS113において、制御装置10は、第2ライト22の照射を停止させる。
ステップS114において、制御装置10は、カメラシステム30のイメージセンサ31に、ステップS113で第2ライト22を非照射にした状態の車両前方を撮像させ、基準撮像データ画像を取得させる。基準撮像データは、ステップS110において照射する照射光以外の光に由来する反射光として扱うことができる。この基準撮像データは、ステップS111において取得した撮像データと同様に、メモリ32又はRAM13が記憶する。
続く、ステップS115において、制御装置10は、S112で保存した撮像データとS114で撮像した基準撮像データの輝度成分の差分をとる。これにより、ステップS110において照射する照射光のみに由来する反射光の撮像データを取得することができる。
そして、ステップS116において、制御装置10は、ステップS115において算出された輝度成分の差分に対応する撮像データをRAM13に保存する。
続いて、図9に示す処理へ移行する。
ステップS200において、制御装置10は、ステップS106で記憶された撮像データから得た第1輝度パタンで、ステップS116で記憶された撮像データから得た第2輝度パタンを除して、指標値を求める。この指標値は、撮像データの全画素について求める。第1輝度パタンで第2輝度パタンを除することにより、輝度パタンの距離と反射率の成分が消去され、変数が照射角度のみの関係式で表現される指標値を得ることができる。
さらに、ステップSS201において、制御装置10は、各画素の指標値を比較して連続性を観察する。制御装置10は、各画素の指標値をスキャンし、隣接する画素の指標値の差が所定値以上となる場合は指標値の連続性が無いと判断し、隣接する画素の指標値の差が所定値未満となる場合は指標値の連続性が有ると判断する。そして、隣接する画素の指標値が所定値以上変化する場合に、ステップS202へ進む。
続いて、ステップS203において、制御装置10は、隣接する画素の指標値の変化が所定値以上となる点を抽出し、この点又はこの点が連続する境界線で区切られた観測領域を識別する。つまり、隣接する画素の指標値の変化が所定値未満となる画素の集合領域を観測領域とし、識別された観測領域をRAM13に記憶する。なお、この観測領域を、物体の形状としてRAM13に記憶してもよい。
ステップS203において、制御装置10は、ステップS201,ステップS202の処理を全画素にわたり処理したかどうかを判断する。全画素の処理が終わっていない場合はステップS201へ戻り、全画素の処理が終わった場合はステップS300の処理へ移行する。
続いて、ステップS300において、制御装置10は、ステップS202で保存した観測領域毎に,実際に観測された撮像データ(輝度パタン)から算出された指標値と、予め準備された値であって、各照度パタンの照射光を所定位置に配置した物体に照射した際に得られた基準撮像データの各画素の基準輝度パタンから算出された基準指標値(理論値)とのマッチング処理を行う。すなわち、制御装置10は、予め準備された基準指標値のうち観測領域に対応する領域に含まれる画素の基準指標値との差が所定値未満である場合は、その指標値に基づいて観測領域を照射する照射光の照射角度を算出する。制御装置10は、識別された各観測領域の指標値Qであって、基準指標値との差が所定値未満である指標値Qに基づいて、観測領域を照射する照射光の照射角度θを算出する。制御装置10は、実測された観測領域の2つの輝度パタンから求めた指標値Qの値に基づいて、指標値Q=(a×θ2+b×θ+c)/αの解である照射角度θを求める。
他方、識別された観測領域に含まれる画素の指標値(実測値)と、予め準備された基準指標値のうち観測領域に対応する領域に含まれる画素の基準指標値との差が所定値以上である場合は、何かしらの外乱が生じており、その指標値(実測値)の信頼性は低いと判断し、その値を距離計測処理には用いない。このようにすることにより、距離計測の精度を向上させることができる。
続くステップS301において、制御装置10は、ステップS300で算出された照射角度と、観測領域の撮像角度と、予め記憶された第1ライト21及び第2ライト22とカメラシステム30のイメージセンサ31との位置関係に基づいて、幾何学的手法により物体までの距離を算出する。制御装置10は、ステップS301において算出された物体までの距離を障害物報知装置200及び/又は運転支援装置300へ送出する。
そして、ステップS302において、制御装置10は、ステップS300及びステップS301の処理が、観測領域に含まれる全画素について行われたかを判断する。このとき、ステップS300及びステップS301の処理を観測領域に含まれる画素のうち、所定のピッチで配置される画素について実行してもよい。
ステップS303以降は障害物報知装置200及び/又は運転支援装置300の処理である。
ステップS303において、障害物報知装置200は、物体までの距離が所定値未満となった場合に、障害物の接近を報知するテキスト音声、アイコンなどの画像、ブザー音を出力させる。同じくステップS303において、運転支援装置300は、物体までの距離が所定値未満となった場合に、ブレーキ制動などの運転支援動作を実行する。
本発明は以上のように構成され、以上のように作用するので、以下の効果を奏する。
本実施形態の距離計測システム100によれば、反射率の異なる物体や、距離の異なる物体であっても、物体までの距離を正確に計測することができる。
また、本実施形態の距離計測システム100によれば、反射率の異なる物体や、距離の異なる物体であっても、物体の形状を正確に計測することができる。
すなわち、本実施形態の距離計測システム100は、次数の異なる照射角度の関数で表現される2種類の照度パタンの照射光を照射した際の2種類の輝度パタンから算出された指標値を用いて物体までの距離を計測するので、反射率の異なる物体や、距離の異なる物体であっても、物体までの距離や物体の形状を正確に計測することができる。
また、次数の異なる照射角度の関数で表現される2種類の照度パタンの照射光を照射した際の2種類の輝度パタンから算出された指標値の連続性を観察することにより、観測点から同じ距離に位置する物体に対応する観測領域を識別することができるので、反射率の異なる物体や、距離の異なる物体であっても、物体までの距離や物体の形状を正確に計測することができる。
すなわち、本実施形態では、次数の異なる照射角度の関数で表現される照度パタンで照射光の照射を行い、その光の物体面での反射をカメラシステム30で撮像して2つの輝度パタンを得て、画素毎に2つの輝度パタン値の除算を行うことで反射率や距離の違いによって発生するライト20(21、22)からイメージセンサ31までの光路における照射光の減衰率の影響を排除し、照射角度のみを変数とする指標値を算出する。そして、この指標値の連続性を観測することにより、イメージセンサ31から見ると連続的な位置にあるが、ライト20(21,22)から見ると照射角度が不連続になる点、すなわち距離が異なる物体の境界及びこの境界に区切られる観測領域を抽出することができる。さらに、抽出された観測領域の指標値(実測値)に基づいて観測領域ごとの照射角度を算出し、イメージセンサ31から見た撮像角度、照射光の照射角度、イメージセンサ31と第1ライト21及び第2ライト22の位置関係から三角測量により物体までの距離や三次元形状を計測するので、物体の反射率や、物体までの距離が異なるような場合であっても物体までの距離や形状を精度良く算出できる。
さらに、カメラで撮像したスリット光照射による露光量総和の違いから照射したスリット光照射の照射方向を算出するという、上述した従来の技術では、各スリット光の照射量総和が異なるように、照射光の照射強度と照射のON/OFFを制御するマスクパタンを変化させながら光を照射するので、照射光の照射強度を制御する機構とマスクパタンを変更させる機構などが必要となるが、本実施形態ではこのような機構が不要であるため、装置規模の拡大、コスト増及び処理時間の増大などの問題が発生しない。
また、第1照度パタンの照射光を照射した際に得られた第1輝度パタンで、第2照度パタンの照射光を照射した際に得られた第2輝度パタンを除することにより、輝度パタンに含まれる反射率の違いによる成分と距離の違いによる成分が除去された指標値を求めることができるので、反射率の異なる物体や、距離の異なる物体であっても、物体までの距離や物体の形状を正確に計測することができる。
また、第1照度パタンの照射光を照射した際に得られた第1輝度パタンで、第2照度パタンの照射光を照射した際に得られた第2輝度パタンを除して求めた指標値の連続性を観察することにより、観測点から同じ距離に位置する物体に対応する観測領域を識別することができるので、反射率の異なる物体や、距離の異なる物体であっても、物体までの距離や物体の形状を正確に計測することができる。
さらに、第1照度パタンIrr1(θ)を照射角度の一次式であるIrr1(θ)=α×θとし、第2照度パタンIrr2(θ)を、照射角度の三次式であるIrr2(θ)=a×θ3+b×θ2+C×θとすることにより(ただし、θは照射光の照射角度、αは照度(明るさ)に係る任意の定数)とした場合も、上述したすべての作用及び効果を奏することができる。
また、次数の異なる照射角度の関数で表現される2種類の照度パタンの照射光を照射した場合において、第1照度パタンIrr1(θ)で第2照度パタンIrr2(θ)を除することにより、指標値を変数が照射光照射角度のみである関数として表現することができるため、実測された指標値に基づいて、撮像データにおける各画素の照射角度を算出することができる。
さらに、本実施形態において照射角度を算出する際に、予め実験を行って準備された基準指標値(理論値)と、観測領域に含まれる画素の指標値(実測値)とを比較し、指標値(実測値)と観測領域に対応する領域に含まれる画素の基準指標値との差が所定値未満である場合は、その指標値(実測値)に基づいて観測領域を照射する照射光の照射角度を算出する。これにより、何かしらの外乱が生じて異常な値となっている指標値(実測値)を照射角度の算出処理に用いないようにすることができる。このため、照射角度の算出、ひいては物体までの距離や物体の形状を高い精度で行うことができる。
加えて、本実施形態において輝度パタンを取得する際に、カメラシステム30は、反射光を撮像するタイミングに相前後して、照射光が照射されない状態の基準撮像データを取得し、制御装置10は、撮像データの輝度成分から基準撮像データの輝度成分を除去して、輝度パタンを取得するので、照射光以外の光に由来する反射光を除去することができる。つまり、照射光のみに由来する反射光の輝度パタンを取得することができるので、輝度パタンに基づいて算出される指標値、照射角度、ひいては物体までの距離や物体の形状を高い精度で算出することができる。
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
すなわち、本明細書では、本発明に係る距離計測装置の一態様として距離計測システム100を例にして説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
また、本明細書では、本発明に係る距離計測装置の一態様として、CPU11、ROM12、RAM13を含む制御装置10を備えた距離計測システム100を一例として説明するが、これに限定されるものではない。
また、本明細書では、本願発明に係る照射手段と、撮像手段と、輝度パタン取得手段と、指標値算出手段と、観測領域識別手段と、照射角算出手段と、距離算出手段とを有する距離計測装置の一態様として、ライト20と、照射制御機能と、カメラシステム30と、撮像制御機能と、指標値算出機能と、観測領域識別機能と、照射角算出機能と、距離算出機能とを実現する制御装置10を備えた距離計測システム100を例にして説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
また、本明細書では、本願発明に係る照射手段の一態様として、第1ライト21と第2ライト22とを備えるライト20を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
また、本明細書では、本願発明に係る撮像手段の一態様として、イメージセンサ31とメモリ32を備えるカメラシステム30を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
また、本明細書では、車両に搭載される距離計測システム100を例に説明したが、本実施形態の距離計測システム100は、車両のほか、二輪車、飛行機、船舶その他の移動する物体(移動体)に搭載することができる。また、本実施形態の距離計測システム100は、工作機械など処理対象となる物体を扱う機械に搭載することもできる。