ところで、上記した可動コイル型のものは、可動子にコイルが含まれることから、可動子に電流を流さなければならず、このための給電線に可動子の移動で断線を生じてしまうことがあり、信頼性に劣るという問題があった。
また、上記した可動磁石型のものは、性能向上を図るために高い磁束密度を得ようとした場合に永久磁石の重量が増大することになり、その結果、可動子の重量が増加することになるため、望むように性能向上が図れないという問題があった。
したがって、本発明は、信頼性を向上させることができ、しかも性能向上を容易に図ることができるリニアアクチュエータの提供を目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の請求項1記載のリニアアクチュエータは、固定子と、少なくとも一部に鉄部材を有し、前記固定子に対し往復動可能にその外側に設けられた可動子とからなるリニアアクチュエータであって、前記固定子はその軸線に沿って互いに平行な一対の平面部を有し、前記互いに平行な一対の平面部の一方の平面部の先端部と他方の平面部の先端部とを結ぶように互いの反対方向に向かって外方に延出する円筒面部を有しており、これら反対方向に向かって外方に延出する円筒面部の一方には、互いに前記往復動の方向に隣り合った状態で前記鉄部材に対向しかつ前記往復動の方向に直交して磁極を並べしかも互いの磁極の並びを逆にした状態で第1の一対の永久磁石が設けられており、前記円筒面部の他方には、前記第1の一対の永久磁石に対し前記往復動の方向における位置を合わせるとともに、互いに前記往復動の方向に隣り合った状態で前記鉄部材に対向しかつ前記往復動の方向に直交して磁極を並べしかも互いの磁極の並びを逆にした状態で第2の一対の永久磁石が設けられており、前記固定子に設けられた一対のコイルを備え、前記第1の一対の永久磁石および前記第2の一対の永久磁石は、前記往復動の方向に位置が合う永久磁石同士で前記鉄部材に対向させる磁極を逆にしていることを特徴としている。
これにより、固定子側のコイルの電流が一方向に流れた状態では、例えば、固定子、第1の一対の永久磁石の一方の永久磁石、鉄部材、第2の一対の永久磁石のうち往復動方向において第1の一対の永久磁石の一方の永久磁石と位置が合う一方の永久磁石、固定子のループで磁束が形成され、固定子側のコイルの電流が切り替えられ逆方向に流れた状態では、固定子、第2の一対の永久磁石の他方の永久磁石、鉄部材、第1の一対の永久磁石の他方の永久磁石、固定子のループで磁束が形成されることになる。これにより、固定子側のコイルの電流の方向を交互に切り替えると、固定子側の第1の一対の永久磁石および第2の一対の永久磁石において鉄部材に対し磁束を導く側を可動子の往復動の方向に交互に切り替えることになり、鉄部材すなわち可動子を往復動させることになる。このように、コイルと永久磁石とがともに固定子側に設けられるため、可動子側に給電する必要がなくなって、移動する可動子がコイルへの給電線に断線を生じさせてしまうことがなくなる。また、性能向上を図るために高い磁束密度を得ようとした場合に永久磁石の重量が増大しても、可動子の重量が増加することがない。さらに、可動子に磁石がないことから、可動子への着磁が作業が不要となる。加えて、上記した磁束のループで可動子を移動させることから、可動子の永久磁石に対し反対側に固定子の一部をバックヨークとして配置しない構成にできる。
また、固定子の外側に可動子を配置したので、全体として同じ大きさにした場合にコイルが小さくなるので、銅損失が少なくなり力を発生させる面積を大きくすることができて、効率を向上させることができる。
ところで、上記した本発明の請求項1に記載されたリニアアクチュエータ以外の他の構成のリニアアクチュエータであっても、上記目的を達成することが可能である。
例えば第一の関連発明としては、固定子と、少なくとも一部に鉄部材を有し前記固定子に対し往復動可能に設けられた可動子と、互いに前記往復動の方向に隣り合った状態で前記鉄部材に対向しかつ前記往復動の方向に直交して磁極を並べしかも互いの磁極の並びを逆にした状態で前記固定子に設けられた第1の一対の永久磁石と、該第1の一対の永久磁石に対し前記往復動の方向における位置を合わせるとともに、互いに前記往復動の方向に隣り合った状態で前記鉄部材に対向しかつ前記往復動の方向に直交して磁極を並べしかも互いの磁極の並びを逆にした状態で前記固定子に設けられた第2の一対の永久磁石と、前記固定子に設けられたコイルとを備え、前記第1の一対の永久磁石および前記第2の一対の永久磁石は、前記往復動の方向に位置が合う永久磁石同士で前記鉄部材に対向させる磁極を逆にしていることを特徴とするリニアアクチュエータが考えられる。
また、第二の関連発明としては、上記した第一の関連発明に係るリニアアクチュエータにおいて、前記第1の一対の永久磁石および前記第2の一対の永久磁石の組が前記往復動の方向における位置を合わせて複数組設けられていることを特徴とするリニアアクチュエータが考えられる。
このように、第1の一対の永久磁石および第2の一対の永久磁石の組が可動子の往復動の方向における位置を合わせて複数組設けられているため、さらに強力な永久磁石の磁界と電流による起磁力を得ることができる。
また、第三の関連発明としては、上記した第一または第二の関連発明に係るリニアアクチュエータにおいて、前記第1の一対の永久磁石および前記第2の一対の永久磁石の組が前記往復動の方向に隣り合った状態で複数組設けられており、前記鉄部材は、前記永久磁石の方向に突出する凸部が前記往復動の方向に隣り合って複数設けられていることを特徴とするリニアアクチュエータが考えられる。
このように、第1の一対の永久磁石および第2の一対の永久磁石の組が可動子の往復動の方向に隣り合った状態で複数組設けられており、これに合わせて鉄部材には可動子の往復動の方向に隣り合って永久磁石の方向に突出する凸部が複数設けられているため、ストロークは減少するが、歯数に比例して推力を増大させることができる。
さらに、第四の関連発明としては、上記した第一乃至第三のいずれかの関連発明に係るリニアアクチュエータにおいて、前記したリニアアクチュエータは、前記固定子は前記往復動の方向に積層された積層鋼板からなることが好ましい。
このように、固定子は可動子の往復動の方向に積層された積層鋼板からなるため、ムク材から削り出されて形成される場合に比して渦電流損失を低減することができ、焼結や圧粉鉄心で形成される場合に比してヒステリシス損を低減することができる。また、特に固定子を大型化する場合に、ムク材からの削り出しおよび焼結に比して製造が容易となる。
以上詳述したように、本発明の請求項1記載のリニアアクチュエータによれば、固定子側のコイルの電流が一方向に流れた状態では、例えば、固定子、第1の一対の永久磁石の一方の永久磁石、鉄部材、第2の一対の永久磁石のうち往復動方向において第1の一対の永久磁石の一方の永久磁石と位置が合う一方の永久磁石、固定子のループで磁束が形成され、固定子側のコイルの電流が切り替えられ逆方向に流れた状態では、固定子、第2の一対の永久磁石の他方の永久磁石、鉄部材、第1の一対の永久磁石の他方の永久磁石、固定子のループで磁束が形成されることになる。これにより、固定子側のコイルの電流の方向を交互に切り替えると、固定子側の第1の一対の永久磁石および第2の一対の永久磁石において鉄部材に対し磁束を導く側を可動子の往復動の方向に交互に切り替えることになり、鉄部材すなわち可動子を往復動させることになる。
このように、コイルと永久磁石とがともに固定子側に設けられるため、可動子側に給電する必要がなくなって、移動する可動子がコイルへの給電線に断線を生じさせてしまうことがなくなる。したがって、信頼性を向上させることができる。
また、性能向上を図るために高い磁束密度を得ようとした場合に永久磁石やコイルの重量が増大しても、可動子の重量が増加することがない。したがって、性能向上を容易に図ることができる。
さらに、可動子に磁石がないことから、可動子への着磁作業が不要となる。
したがって、製造が容易となってコストダウンを図ることができる。
加えて、上記した磁束のループで可動子を移動させることから、可動子の永久磁石に対し反対側に固定子の一部をバックヨークとして配置しない構成にできる。したがって、可動子の永久磁石に対し反対側の空間を有効利用できる。
また、全体として同じ大きさにした場合に、コイルが小さくなるので、銅損失が少なくなり力を発生させる面積を大きくすることができて、効率を向上させることができる。
また、上記した第一の関連発明に係るリニアアクチュエータであっても、上述した本発明の請求項1に記載されたリニアアクチュエータと同様に、固定子側のコイルの電流の方向を交互に切り替えると、固定子側の第1の一対の永久磁石および第2の一対の永久磁石において鉄部材に対し磁束を導く側を可動子の往復動の方向に交互に切り替えることになり、鉄部材すなわち可動子を往復動させることになる。
このように、コイルと永久磁石とがともに固定子側に設けられるため、可動子側に給電する必要がなくなって、移動する可動子がコイルへの給電線に断線を生じさせてしまうことがなくなる。したがって、信頼性を向上させることができる。
また、性能向上を図るために高い磁束密度を得ようとした場合に永久磁石やコイルの重量が増大しても、可動子の重量が増加することがない。したがって、性能向上を容易に図ることができる。
さらに、可動子に磁石がないことから、可動子への着磁が作業が不要となる。
したがって、製造が容易となってコストダウンを図ることができる。
加えて、上記した磁束のループで可動子を移動させることから、可動子の永久磁石に対し反対側に固定子の一部をバックヨークとして配置しない構成にできる。したがって、可動子の永久磁石に対し反対側の空間を有効利用できる。
また、上記した第二の関連発明に係るリニアアクチュエータによれば、第1の一対の永久磁石および第2の一対の永久磁石の組が可動子の往復動の方向における位置を合わせて複数組設けられているため、さらに強力な永久磁石の磁界と電流による起磁力を得ることができる。
また、上記した第三の関連発明に係るリニアアクチュエータによれば、第1の一対の永久磁石および第2の一対の永久磁石の組が可動子の往復動の方向に隣り合った状態で複数組設けられており、これに合わせて鉄部材には可動子の往復動の方向に隣り合って永久磁石の方向に突出する凸部が複数設けられているため、さらに強力な永久磁石の磁界と電流による起磁力を得ることができるとともに、凸部の端面に効率的に吸引力を作用させることができる。
また、上記した第四の関連発明に係るリニアアクチュエータによれば、固定子は可動子の往復動の方向に積層された積層鋼板からなるため、ムク材から削り出されて形成される場合に比して渦電流損失を低減することができ、焼結で形成される場合に比してヒステリシス損を低減することができる。また、特に固定子を大型化する場合に、ムク材からの削り出しおよび焼結に比して製造が容易となる。したがって、性能を向上させることができ、また、全体の大型化に伴う固定子の大型化に容易に対応することができる。
本発明の第1実施形態のリニアアクチュエータを図1〜図6を参照して以下に説明する。
第1実施形態のリニアアクチュエータ11は、ヨーク(固定子)12と、このヨーク12の内側に往復動可能に設けられた可動子13と、ヨーク12に固定された一対の永久磁石(第1の一対の永久磁石)14,15と、ヨーク12に固定された一対の永久磁石(第2の一対の永久磁石)16,17と、ヨーク12に固定された二つのコイル18とを備えている。
上記ヨーク12は、その中心位置に貫通穴21が形成されることにより全体として角筒形状をなしている。貫通穴21は、円筒の内周面を所定の間隔をあけて二カ所その軸線に平行に切断した形状をなし互いに離間状態で対向する二カ所の円筒面部22と、各円筒面部22のそれぞれの両端縁部から円筒面部22同士を結ぶ方向に沿って外側に延出する第1の一対の平面部23と、各前記第1の一対の平面部23のそれぞれの円筒面部22に対し反対側の端縁部から前記第1の一対の平面部23と直交して外側に延出する第2の一対の平面部24と、円筒面部22同士を結ぶ方向に延在して各平面部24に対応するもの同士をそれぞれ連結させる平面状の内面部25とを有している。
ここで、二カ所の円筒面部22は、同径同長同幅をなしており同軸に配置されている。
また、前記第1の一対の平面部23、前記第2の一対の平面部24および内面部25の円周方向における両側に半径方向に凹む凹部30がそれぞれ形成されている。
なお、このヨーク12は、上記二カ所の円筒面部22と四カ所の平面部23と四カ所の平面部24と二カ所の内面部25とを有する形状に薄板状の鋼板をプレスで打ち抜いて基部材27を形成し、この基部材27を貫通穴21の貫通方向に複数、位置を合わせながら積層しつつ接合させた積層鋼板からなっている。
また、このヨーク12には、可動子13の内側に延出する形状のバックヨークは設けられていない。
ヨーク12においては、各内面部25と各内面部25に平行をなしてそれぞれ近接する外面部26との間の部分がコイル巻回部28とされており、その結果、このようなコイル巻回部28が二カ所互いに平行に設けられている。コイル巻回部28には内面部25の全幅にわたってコイル18が巻き付けられ、その結果、各コイル18はリング状をなしてヨーク12に固定されている。
上記永久磁石14,15は、円筒を所定の間隔をあけて二カ所その軸線に平行に切断した形状をなす同径同長同幅のフェライト磁石からなるもので、互いに同軸をなし円周方向の位置を合わせ軸線方向に隣り合った状態で並べられて一方の円筒面部22に接合固定されている。ここで、これら永久磁石14,15は、軸線方向に直交する方向に磁極を並べたラジアル異方性のもので、互いの磁極の並びを逆にしている。具体的には、貫通穴21の貫通方向における一側の永久磁石14は、N極14aが外径側にS極14bが内径側に配置されており、他側の永久磁石15は、N極15aが内径側にS極15bが外径側に配置されている。なお、永久磁石14,15の配列方向に直交する方向の両側にヨーク12の凹部30が配置されている。
上記永久磁石16,17は、円筒の内周面を所定の間隔をあけて二カ所その軸線に平行に切断した形状をなす同径同長同幅をなすフェライト磁石からなるもので、互いに同軸をなし円周方向の位置を合わせ軸線方向に隣り合った状態で並べられて他方の円筒面部22に、上記永久磁石14,15に対し円周方向の逆側に離間し貫通穴21の軸線方向における位置を合わせて接合固定されている。ここで、これら永久磁石16,17は、軸線方向に直交する方向に磁極を並べたラジアル異方性のもので、互いの磁極の並びを逆にしている。具体的には、貫通穴21の貫通方向における一側の永久磁石16は、N極16aが内径側にS極16bが外径側に配置されており、他側の永久磁石17は、N極17aが外径側にS極17bが内径側に配置されている。なお、永久磁石16,17の配列方向に直交する方向の両側にヨーク12の凹部30が配置されている。
以上により、一対の永久磁石14,15および一対の永久磁石16,17は、貫通穴21の貫通方向に位置が合う永久磁石同士で内径側すなわち可動子13側の磁極を逆にしている。すなわち、貫通穴21の貫通方向に位置が合う永久磁石14および永久磁石16は互いに内径側の磁極を逆にしており、貫通穴21の貫通方向に位置が合う永久磁石15および永久磁石17も互いに内径側の磁極を逆にしている。
可動子13は、中央に貫通穴31が形成されることにより円筒状をなしており、その外径が永久磁石14〜17の内径よりも若干小径とされている。この可動子13はヨーク12の円筒面部22の内側すなわち永久磁石14〜17の内径側に、これらと対向しつつ同軸をなすように挿入されることによって、ヨーク12に対して貫通穴21の貫通方向に往復動可能に設けられる。ここで、可動子13の軸線方向における長さは、ヨーク12の貫通穴21の貫通方向における長さよりも短くされている。
なお、この可動子13は、薄板状の鋼板をプレスで打ち抜いて内側に貫通穴31を有する円環状の基部材32を形成し、この基部材32を貫通穴31の貫通方向に複数、位置を合わせながら積層させて接合させた積層鋼板からなっている。
これにより可動子13は全体が鉄部材からなっている。
上記構造のリニアアクチュエータ11においては、両側のコイル18に交流電流(正弦波電流、矩形波電流)を同期して流す。ここで、両側のコイル18には、それぞれのコイル巻回部28よりも可動子13側の部分に、貫通穴21の貫通方向に沿って逆向きの電流を流すことになる。
なお、両側のコイル18に電流を流していない状態では、一対の永久磁石14,15によって、図2に二点鎖線で示すように、ヨーク12、永久磁石15、可動子13、永久磁石14およびヨーク12をこの順に結ぶループで磁束が形成されるとともに、一対の永久磁石16,17によって、ヨーク12、永久磁石16、可動子13、永久磁石17およびヨーク12をこの順に結ぶループで磁束が形成される。このとき、可動子13は停止状態とされる。
そして、例えば、図3に示すように、一方(図3における左側)のコイル18に、その可動子13側に貫通穴21の貫通方向における一方向(図3における紙面を裏から表に貫く方向)に流れるように電流を流すと、その内側のコイル巻回部28に一方向(図3における下方向)に起磁力が生じる。すると、一対の永久磁石14,15および一対の永久磁石16,17によって、この一方のコイル18側には、図3および図4に二点鎖線で示すように、ヨーク12、一対の永久磁石14,15のうちの一方(図3においては紙面奥側)の永久磁石15、可動子13、一対の永久磁石16,17のうちの貫通穴21の貫通方向において上記一方の永久磁石15と位置が合う一方の永久磁石17およびヨーク12を、この順に結ぶループで磁束が形成されることになる。これと同時に、他方(図3における右側)のコイル18に、その可動子13側に貫通穴21の貫通方向における逆方向(図3における紙面を表から裏に貫く方向)に流れるように電流を流すと、コイル巻回部28に一方向(図3における下方向)に起磁力が生じる。すると、図3に二点鎖線で示すように、一対の永久磁石14,15および一対の永久磁石16,17によって、この他方のコイル18側にも、ヨーク12、一対の永久磁石14,15の一方(図3においては紙面奥側)の永久磁石15、可動子13、一対の永久磁石16,17のうち貫通方向において上記一方の永久磁石15と位置が合う一方の永久磁石17およびヨーク12をこの順に結ぶループで磁束が形成されることになる。
以上によって、可動子13が貫通穴21の貫通方向における一方向(図3における紙面を表から裏に貫く方向、図4における右方向)に移動する。
次に、図5および図6に示すように、一方(図5における左側)のコイル18に、その可動子13側に貫通穴21の貫通方向における逆方向(図5における紙面を表から裏に貫く方向)に流れるように電流を流すと、その内側のコイル巻回部28に一方向(図5における上方向)に起磁力が生じる。すると、図5および図6に二点鎖線で示すように、一対の永久磁石14,15および一対の永久磁石16,17によって、この一方のコイル18側に、ヨーク12、一対の永久磁石14,15のうちの他方(図5においては紙面手前側)の永久磁石14、可動子13、一対の永久磁石16,17のうちの貫通穴21の貫通方向において上記他方の永久磁石14と位置が合う他方の永久磁石16およびヨーク12を、この順に結ぶループで磁束が形成されることになる。これと同時に、他方(図5における右側)のコイル18に、その可動子13側に貫通穴21の貫通方向における一方向(図5における紙面を裏から表に貫く方向)に流れるように電流を流すと、その内側のコイル巻回部28に一方向(図5における上方向)に起磁力が生じる。すると、図5に二点鎖線で示すように、一対の永久磁石14,15および一対の永久磁石16,17によって、この他方のコイル18側には、ヨーク12、一対の永久磁石14,15のうちの他方(図5においては紙面手前側)の永久磁石14、可動子13、一対の永久磁石16,17のうちの貫通穴21の貫通方向において上記他方の永久磁石14と位置が合う他方の永久磁石16およびヨーク12を、この順に結ぶループで磁束が形成されることになる。
以上によって、可動子13が貫通穴21の貫通方向における逆方向(図5における紙面を裏から表に貫く方向、図6における左方向)に移動する。
そして、交流電流によって両コイル18への電流の流れの方向が交互に変化することにより、以上の作動を繰り返して、可動子13はヨーク12に対して貫通穴21の貫通方向に所定のストロークで往復動することになる。
以上に述べた第1実施形態のリニアアクチュエータ11によれば、コイル18が可動子13ではなくヨーク12に設けられるため、可動子13側に給電する必要がなくなって、移動する可動子13がコイル18への給電線に断線を生じさせてしまうことがなくなる。したがって、連続運転等に対する信頼性を向上させることができる。
また、永久磁石14〜17も可動子13ではなくヨーク12に設けられるため、性能向上を図るために高い磁束密度を得ようとした場合に永久磁石14〜17やコイル18の重量が増大しても、可動子13の重量が増加することがない。したがって、性能向上(推力アップ)を容易に図ることができる。
加えて、可動子13に永久磁石がないことから、可動子13への着磁が作業が不要となり、また、可動子13の製造時に可動子13には吸引力が働かないため、可動子13の製造が容易となる。したがって、製造が容易となってコストダウンを図ることができる。
加えて、上述したようなループの磁束で可動子13を移動させることから、可動子13の永久磁石14〜17に対し反対側すなわち内径側にヨーク12の一部をバックヨークとして配置しない構成にできる。したがって、可動子13の永久磁石14〜17に対し反対側すなわち貫通穴31側の空間を有効利用できる。具体的には、貫通穴31内に別途のシリンダやそのピストン等を配置する場合の設計自由度が大幅に増す。
加えて、ヨーク12は可動子13の往復動の方向に積層された積層鋼板からなるため、ムク材から削り出されて形成される場合に比して渦電流損失を低減することができる一方、焼結で形成される場合に比してヒステリシス損を低減することができる。したがって、性能を向上させることができる。また、特にヨーク12を大型化する場合に、ムク材からの削り出しおよび焼結に比して製造が容易となる。したがって、全体の大型化に伴うヨーク12の大型化に容易に対応することができる。
なお、永久磁石14〜17としては、上記したフェライト磁石以外にも、ネオジウム、サマリウムコバルト等の希土類系のものを用いたり、プラスチック磁石を用いることも可能であるが、フェライト磁石を用いるのがコスト低減の観点からより好ましい。
また、このリニアアクチュエータ11は、可動子13にバネを組み込んだり、外部に置かれたバネとの併用で共振させて使用されるのが一般的であるが、勿論、このまま使用することも可能である。
また、このリニアアクチュエータ11に位置、速度等を検出するセンサを設け、閉ループ制御を行うことで速度や位置の制御が可能なリニアサーボアクチュエータとして利用できる。
次に、本発明の第2実施形態のリニアアクチュエータを図7および図8を参照して以下に説明する。
第2実施形態のリニアアクチュエータ51は、ヨーク(固定子)52と、このヨーク52の内側に往復動可能に設けられた可動子53と、ヨーク52に固定された四組の永久磁石(第1の一対の永久磁石)54,55と、ヨーク52に固定された四組の永久磁石(第2の一対の永久磁石)56,57と、ヨーク52に固定された八つのコイル58とを備えている。
上記ヨーク52は、その中心位置に貫通穴61が形成されることにより全体として円筒形状をなしている。貫通穴61は、円筒の内周面を所定の間隔をあけて二カ所その軸線に平行に切断した形状をなし円周方向に等間隔で配置される八カ所の円筒面部62を有している。ここで、円周方向に隣り合う円筒面部62同士の間は、半径方向外方に凹む凹部63とされており、その結果、円周方向に隣り合う凹部63同士の間には、円筒面部62を有する凸部64が形成されている。
ここで、八カ所の円筒面部62は、同径同長同幅をなしており同軸に配置されている。なお、このヨーク52は、図示は略すが、第1実施形態と同様に、上記八カ所の凹部63および凸部64を有する形状に薄板状の鋼板をプレスで打ち抜いて基部材を形成し、この基部材を貫通穴61の貫通方向に複数、位置を合わせながらを積層させつつ接合させた積層鋼板からなっている。
また、このヨーク52には、可動子53の内側に延出する形状のバックヨークは設けられていない。
第2実施形態において、ヨーク52の各凸部64には、軸線方向と円周方向とに交互に延在するようにコイル58が巻き付けられ、その結果、各コイル58はリング状をなしてヨーク52に固定されている。
上記永久磁石54,55は、円筒を所定の間隔をあけて二カ所その軸線に平行に切断した形状をなす同径同長同幅のフェライト磁石からなるもので、互いに同軸をなし円周方向の位置を合わせ軸線方向に隣り合った状態で並べられて共通の円筒面部62に接合固定されている。ここで、これら永久磁石54,55は、軸線方向に直交する方向に磁極を並べたラジアル異方性のもので、互いの磁極の並びを逆にしている。具体的には、貫通穴61の貫通方向における一側の永久磁石54は、N極54aが外径側にS極54bが内径側に配置されており、他側の永久磁石55は、N極55aが内径側にS極55bが外径側に配置されている。そして、このような一対の永久磁石54,55の組が四組、円周方向に一つおきに配置された各円筒面部32に放射状をなすように配置されている。
上記永久磁石56,57は、円筒の内周面を所定の間隔をあけて二カ所その軸線に平行に切断した形状をなす同径同長同幅をなすフェライト磁石からなるもので、互いに同軸をなし円周方向の位置を合わせ軸線方向に隣り合った状態で並べられて共通の円筒面部62に接合固定されている。ここで、これら永久磁石56,57は、軸線方向に直交する方向に磁極を並べたラジアル異方性のもので、互いの磁極の並びを逆にしている。具体的には、貫通穴61の貫通方向における一側の永久磁石56は、N極56aが内径側にS極56bが外径側に配置されており、他側の永久磁石57は、N極57aが外径側にS極57bが内径側に配置されている。そして、このような一対の永久磁石56,67の組が四組、円周方向に一つおきに配置された残りの各円筒面部32に放射状をなすように配置されている。
以上により、一対の永久磁石54,55および一対の永久磁石56,57は、貫通穴61の貫通方向に位置が合う永久磁石同士で内径側すなわち可動子53の磁極を逆にしている。すなわち、貫通穴61の貫通方向に位置が合う永久磁石54および永久磁石56は互いに内径側の磁極を逆にしており、貫通穴61の貫通方向に位置が合う永久磁石55および永久磁石57も互いに内径側の磁極を逆にしている。
ここで、円周方向に互いに離間して隣り合う一対の永久磁石54,55と一対の永久磁石56,57とが組となっており、このような組が、貫通穴21の貫通方向における位置を合わせて複数組具体的には四組設けられている。
可動子53は、中央に貫通穴71が形成されることにより円筒状をなす鉄部材72とこの鉄部材72の軸線方向における一側に設けられた主部73とを有しており、主部73は鉄部材72と同軸同径をなして隣り合う大径円筒部75と、この大径円筒部75の鉄部材72に対し反対側にこれよりも小径をなして同軸に設けられた小径円筒部76とを有している。なお、鉄部材72および大径円筒部75の外径が永久磁石54〜57の内径よりも若干小径とされている。この可動子53はヨーク52の円筒面部62の内側すなわち永久磁石54〜57の内径側に、これらと同軸をなすように挿入されることにより、ヨーク52に対して貫通穴61の貫通方向に往復動可能に設けられる。ここで、鉄部材72の軸線方向における長さは、ヨーク52の貫通穴61の貫通方向における長さよりも短くされている。また、小径円筒部76には内径側に通した軸等を固定するためのボルト78が半径方向に螺合されている。
なお、この可動子53は、主部73が非磁性材料であるエンジニアリングプラスチック等の合成樹脂からなっており、鉄部材72は焼結材からなっている。可動子53は、鉄部材72を入れ子とする合成樹脂のインサート成形により形成されている。
以上に述べた第2実施形態のリニアアクチュエータ51によれば、第1実施形態のリニアアクチュエータ11と同様の効果を発揮することができ、その上で、一対の永久磁石54,55と一対の永久磁石56,57との組が複数組具体的には四組に分配されていることから、ヨーク厚さを薄くでき、軽量化が図れる。
可動子厚さも薄くでき、可動部の軽量化が図れることから、応答性が改善される。
なお、第2実施形態においても第1実施形態と同様の変更等が可能である。
次に、本発明の第3実施形態のリニアアクチュエータを図9を参照して第2実施形態との相違部分を中心に以下に説明する。なお、第2実施形態と同様の部分には同一の符号を付しその説明は略す。
第3実施形態においては、一対の永久磁石54,55および一対の永久磁石56,57の各組に対し、円周方向における位置を合わせ貫通穴61の貫通方向に隣り合った状態で別の一対の永久磁石54,55および一対の永久磁石56,57の組がそれぞれ設けられている。すなわち、各一対の永久磁石54,55には、円周方向における位置を合わせ貫通穴61の貫通方向に隣り合った状態で一対の永久磁石54,55がそれぞれ設けられており、各一対の永久磁石56,57には、円周方向における位置を合わせ貫通穴61の貫通方向に隣り合った状態で一対の永久磁石56,57がそれぞれ設けられている。
また、鉄部材には、永久磁石の方向すなわち外径側に突出する環状の凸部80が貫通穴61の貫通方向すなわち可動子53の往復動の方向に隣り合って複数具体的には二カ所設けられている。ここで、貫通穴61の貫通方向における一側の凸部80が、貫通穴61の貫通方向におけるこれと同側に設けられた永久磁石54,55および永久磁石56,57との間で磁束を導く一方、貫通穴61の貫通方向における逆側の凸部80が、貫通穴61の貫通方向におけるこれと同側に設けられた永久磁石54,55および永久磁石56,57との間で磁束を導く。
以上に述べた第3実施形態のリニアアクチュエータ51によれば、第2実施形態と同様の効果を発揮することができ、その上で、一対の永久磁石54,55および一対の永久磁石56,57の組が可動子53の往復動の方向に複数組設けられているため、さらに強力な永久磁石の磁界と電流による起磁力を得ることができる。その上、鉄部材72には可動子53の往復動の方向に隣り合って永久磁石54〜57の方向に突出する凸部80が複数設けられているため、往復動のいずれにおいても凸部80の端面に効率的に吸引力を作用させることができ、その結果、可動子をより大きな力で駆動することができる。
なお、上述したすべてのリニアアクチュエータ11について、中心軸線側と外径側とで構成を反転させるようにしても良い。例えば、図10および図11に示すように、コイル18を含むヨーク12の外径側に永久磁石14,15および永久磁石16,17を配置し、永久磁石14,15および永久磁石16,17の外径側に往復動可能に円筒状の可動子13を設けるのである。このように構成すれば、全体として同じ大きさとした場合に、コイル18が小さくなるので、銅損失が少なくなり、力を発生させる面積を大きくすることができて、効率を向上させることができる。